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I–2
目 次 ダ イ ジ ェ ス ト 版 ------------------------------------------------------------------------------1 韓 国 の 特 殊 教 育 に 関 連 す る 用 語 及 び 表 記 に つ い て ( 用 語 解 説 ) ------------------ -3 Ⅰ ま え が き ---------------------------------------------------------------------------------------------5 Ⅱ 韓 国 の 教 育 概 要 ------------------------------------------------------------------------------------6 Ⅲ 調 査 研 究 を 進 め る に あ た っ て -------------------------------------------------------------------8 1 事 前 研 修 会 の シ ニ ア ア ド バ イ ザ ー の 講 義 内 容 要 約 ---------------------------------------8 2 日 本 国 内 に お け る 本 テ ー マ の 課 題 ----------------------------------------------------------13 3 本 テ ー マ に 対 す る 訪 問 国 の 概 要 -------------------------------------------------------------14 4 調 査・研 究 テ ー マ と 訪 問 先 等 ------------------------------------------------------------------15 Ⅳ 調 査 結 果 --------------------------------------------------------------------------------------------16 Ⅴ 全 体 の 考 察 と ま と め ------------------------------------------------------------------------------34 Ⅵ 研 修 成 果 の 活 用 レ ポ ー ト -------------------------------------------------------------------------38 Ⅶ 新 た な 可 能 性 を 求 め て ---------------------------------------------------------------------------52 Ⅷ 団 員 名 簿 --------------------------------------------------------------------------------------------57 ※個人情報保護の観点から、掲載を差し控えます。 Ⅸ 研 修 日 程 概 要 ---------------------------------------------------------------------------------------58 Ⅹ あ と が き --------------------------------------------------------------------------------------------59 資料編 資料1 韓 国 の 個 別 化 教 育 計 画 と 日 本 の 個 別 の 指 導 計 画 の 比 較 ----------------------------1 資料2 一 学 級 あ た り の 児 童 生 徒 数 国 際 比 較 ------------------------------------2 資料3 社 会 的 企 業 育 成 法 ----------------------------------------------------3 資料4 <プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 資 料 か ら の 抜 粋 >国 立 特 殊 教 育 院 紹 介( 和 訳 )----------12 資料5 <プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 資 料 か ら の 抜 粋 >地 域 社 会 と 共 に 生 き る ミ ラ ル ス ク( 和 訳 ) -----------------------------------------------------------------------------------------------17 資料6 <パ ン フ レ ッ ト >京 畿 道 特 殊 教 育 支 援 セ ン タ ー 生 態 学 院( 和 訳 )-------------22 資料7 <招 待 論 文 >韓 国 特 殊 教 育 の 概 要 ----------------------------------------26 実施要項等 平 成 24 年 度 教 育 課 程 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ ラ ム 実 施 要 項 -------------------1 平 成 24 年 度 教 育 課 程 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ ラ ム 実 施 計 画 ( 別 紙 1 ) ---------3 平 成 24 年 度 教 育 課 程 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ ラ ム 事 前 研 修 会 日 程 -------------6 平 成 24 年 度 教 育 課 程 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ ラ ム 事 後 研 修 会 日 程 -------------7 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 派遣テーマ:特別支援教育の充実(I-2団)ダイジェスト版 派遣国:韓国 派 遣 期 間 : 平 成 24年 10月 29日 ( 月 ) ~ 11月 7日 ( 水 )( 10日 間 ) 調査研究項目 ① 韓国の教育行政における特殊教育の体制 ② 韓国における就労支援の制度とその実際 ③ 韓国の特殊教育における教育環境の整備 調査結果 調査により「韓国の特殊教育の充実を高めているもの」 は,以下の5点にまとめられる。 ・韓国における特殊教育の変化 ・現場のサポート体制,特殊教育のサポートシステム ・障がい者の社会参加における学校と社会的企業の関係 ・教員研修,情報機器の活用,保護者との連携 ・インクルーシブ教育システムを支える関係機関との連携,協力 主な考察 ・ 特殊教育の制度的な変遷により,共生社会の実現と障害者の社会的自立と参加を目標 に特殊教育対象者においては,出生から成人になるまでの教育について国が責任を持 つ個別的に必要なものについては国が支援を行うという方針のもと様々な整備が行わ れた。 ・ 企業がその社会的責任として支援している「社会的企業」の存在は,単に障がい者に 職を提供することに止まらず,質の高い製品づくりや,地域や特殊学校との連携を進 め地域の問題を改善に寄与している。さらに,障がい者が主体的に生きるという生き 方に影響を及ぼしている。 ・ 幼児児童生徒の個々の能力や保護者のニーズに応じて,発達段階別教科書を有効に活 用したり,情報機器等の教材・教具を活用したりして教育を行っている。教職員も研 修を重ね,子どもの自立と社会参加を促すための教育が行われている。 調査結果を学校現場等で生かすために(研修成果の活用) ・ 韓国における特殊学級や通常学級の指導の在り方,特殊教育支援センターの仕組みを 参考とし,日本における特別支援学校のセンター的機能の更なる活用を推進する。 ・ 韓国における, 「 社 会 的 企 業 」の 現 状 や ,障 が い 者 の 就 労 に 関 す る 法 制 度 等 を 参 考 と し て,各県市における地域や特別支援学校との連携及び障がい者の就労支援について検 討する。 ・ 韓国における特殊学校や特殊学級などの一般学校の現状を参考として,各校における 教員の児童生徒一人一人に応じた指導力や特別支援教育の充実を図る。 -1- 平 成 24 年 度 教 育 課 程 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ ラ ム I-2 団日程表 月日(曜日) 訪問先等 滞在地等 大阪発 移 動 ( 航 空 機 : 約 2時 間 15分 ) 釜山着 オリエンテーション 1 10月 29日 ( 月 ) 2 10月 30日 ( 火 ) 釜山 3 10月 31日 ( 水 ) 釜山 4 11月 1 日 ( 木 ) 5 11月 2 日 ( 金 ) 牙山市 6 11月 3 日 ( 土 ) ソウル 7 11月 4 日 ( 日 ) ソウル 8 11月 5 日 ( 月 ) ソウル 9 11月 6 日 ( 火 ) ソウル 10 11月 7 日 ( 水 ) 釜山 牙山市 午前:釜山特殊教育支援センター訪問 午後:釜山東来中学校訪問 午前:社会的企業研究院訪問 午後:ローデム職業リハビリセンター 午前:天安牙山へ移動 午後:韓国国立特殊教育院訪問 午前:韓国教員大学校訪問 午後:鳳徳初等学校訪問 午前:研修成果のまとめ,資料の整理 午後:教育課題に関する調査研究 終日:教育課題に関する調査研究 午前:栗洞生態学習院訪問 午後:私立ミラル学校(自閉症教育領域) 午前:公立城南恵恩学校訪問 午後:職業リハビリテーションセンター ソウル 午前:研修資料等の収集・整理 大阪着 午 後 : 移 動 ( 航 空 機 : 約 2時 間 ) -2- 帰国 韓国の特殊教育に関連する用語及び表記について(用語解説) 社 会 的 企 業 (Social Enterprise)と は 障 害 者 を 含 む 何 ら か の「 弱 さ 」を も つ 人 々 の 働 き 口 を 創 出 す る 仕 組 み で あ る 。 韓 国 の 社 会 的 企 業 は 社 会 的 企 業 育 成 法 ( 2007 年 制 定 , 同 年 7 月 施 行 ) の も と に「 脆 弱 階 層 に 社 会 サ ー ビ ス ま た は ,職 場 を 提 供 し 地 域 社 会 に 貢 献 す る こ と に よ っ て 地 域 住 民 の 生 活 の 質 を 高 め る な ど の 社 会 的 目 的 を 追 求 し な が ら ,財 貨 お よ び サ ー ビ ス の 生 産・販 売 や 営 業 活 動 を す る 企 業 と し て 認 定 を 受 け る 者 」と 規定されている。 ま た ,本 法 第 2 条 第 2 号 で は「 社 会 的 目 的 を 追 求 す る 企 業 で あ る こ と 」, 「営 業 活 動 遂 行 企 業 で あ る こ と 」, そ し て 「 認 定 さ れ る 要 件 を 備 え て い る こ と 」 の 3つの要件を全て満たさなければならないとされている。 脆弱階層とは ① 帯 月 平 均 所 得 が 全 国 世 帯 月 平 均 所 得 の 60%以 下 で あ る 者 ② 高 齢 者 (55 才 以 上 の 者 ) ③ 障 害 者 (重 度 障 害 者 含 む ) ④ 売春被害者 ⑤ 長期失業者 な ど , 雇 用 労 働 部 長 官 が 脆 弱 階 層 と 認 定 し た 者 (社 会 的 企 業 育 成 法 施 行 令 第 2 条 各 号 )と し て い る 。 こ の 中 で 長 期 失 業 者 と は ,失 業 期 間 が 1 年 以 上 で ,か つ 以 下 の ① ~ ⑦ の 条 件を満たす者である。 ① 年 お よ び 一 部 の 経 歴 断 絶 女 性 (女 性 の 早 期 退 職 者 ,あ る い は 既 婚 後 の 就 業 停止者) ② 北 朝 鮮 離 脱 住 民 (脱 北 者 と 同 義 ) ③ 家庭内暴力被害者 ④ 片親家族支援法の対象保護者 ⑤ 結婚移民者 ⑥ 更 生 保 護 対 象 者 (刑 余 者 あ る い は , 同 様 の 理 由 で 就 職 が 困 難 な 者 ) ⑦ 犯罪被害者保護法による救済対象者 (社 会 的 企 業 育 成 法 施 行 令 一 部 改 正 , 2010 年 12 月 9 日 ) 社会的企業育成法の法的規定とその内容 韓 国 の 社 会 的 企 業 育 成 法 は 目 的 ,定 義 ,社 会 的 企 業 の 認 定 ,支 援 方 策 な ど の 条 項 で 構 成 さ れ て い る 。 社 会 的 企 業 育 成 法 は 2007 年 に 制 定 さ れ て 同 年 7 月 に 施 行 , 2010 年 3 月 に 改 正 さ れ , 2011 年 1 月 に 再 施 行 さ れ た 。 こ の 法 は ,社 会 的 企 業 の 設 立・運 営 を 支 援・育 成 し て ,韓 国 社 会 で 充 分 に 供 給 で き な い 社 会 サ ー ビ ス を 拡 充 し ,新 し い 働 き 口 を 創 り 出 す こ と に よ っ て ,社 会統合と国民生活の質の向上に尽くすことを目的とする。 -3- 特殊教育補助員とは 韓国には特殊学校や特殊学級に有給の「特殊教育補助員」を置いている。 特殊教育補助員の役割は,学級担任教師の要請により学生指導を補助するこ と が で き る と 政 府 の 指 針 に 明 示 さ れ て い る 。第 一 に ,教 師 の 指 示 と 監 督 の 下 , 特殊教育対象学生の排泄と食事指導,補助器着用,脱衣,健康保護および安 全生活指導などの個別支援を担当している。第二に,学習資料および学用品 準備,移動補助,教室や運動場での学生活動補助,学習資料製作支援など特 殊教育対象学生の教授- 学習活動支援を担当している。第三に,適応行動促 進および不適応行動管理支援,同年齢の学生との関係形成支援,行動指導の ためのプログラム管理など特殊教育対象学生の問題行動管理支援業務を担当 している。特殊教育補助員の資格は特別に規定されていないが,関連経験が あ る 人 の う ち 各 学 校 で 自 主 的 に 採 用 し た 後 教 育 庁 で 実 施 さ れ る 60時 間 以 上 の 研修を受けなければならない。 ( 兵 庫 教 育 大 学 『 特 別 支 援 教 育 コ ー デ ィ ネ ー タ ー 研 究 』 ( 6号 ) 2010年 3月 P.20-21引 用 ) 公益勤務要員とは 1995 年 に 新 設 さ れ た 制 度 。 身 分 は 軍 人 。 公 益 勤 務 と は , 徴 兵 検 査 の 結 果 , 医学的に現役の服務が不可能と判定された者や父母・兄弟に戦没・殉職・服 務不可能な戦傷・公傷を負った軍警がいる者,一部実刑宣告者・受刑者・執 行猶予者など身体的な事情等で軍務につくのが無理な人が,兵役の代替とし て国の機関や地方自治体,公共団体,社会福祉施設での,公的機関の公益目 的遂行に必要な社会福祉,保健・医療,教育・文化,環境・安全・警備など 社会サービス業務・行政業務の支援に関する服務を指す。基本的には自宅か ら 毎 日 通 勤 (平 日 9 ~ 18 時 ,土 曜 日 9 ~ 13 時 )し 日 曜 日 は 休 み 。勤 務 地 に よ っ ては,昼夜交代制や合宿制になることがある。多くは「行政官庁要員」にな るが,中には政府機関の推薦で「国際協力奉仕要員」や「芸術・体育要員」 になる場合もある。希望者が,特殊教育に関わる。 転換教育とは よりよい成人になるために,就労や自立を促し,社会生活に適応させるた めの教育。日本でいう移行支援教育。 特殊教育とは 日本でいう特別支援教育のことを特殊教育という。特別支援学級は特殊学 級といい,通常の学級は通常学級,小・中学校のことを一般学校という。 -4- Ⅰ まえがき I-2団 団長 島田 保彦 特別支援教育の充実を派遣テーマとし,韓国における特殊教育の現状や課題を調査・分 析をすることとなりました。日本の団としての韓国視察は今回が初めてと聞いており,韓 国の特殊教育の事情に精通されている,広島大学 落合俊郎教授のアドバイスの下,団員 全員が,日本に最も近い国,韓国の特殊教育の現状を初めて知る貴重な機会を得たことに 感謝と期待を持ち臨むこととなりました。 ご承知のとおり,日本は,現在,国連障がい者に関する権利条約に署名し,特別支援教 育に関しては,インクルーシブ教育システム構築推進のために,批准に向けた国内法の整 備を課題としつつ,体制強化に努めている状況です。 今回,日本におけるインクルーシブ教育システム構築推進のための研究として,10 日間 の日程による視察先は,釜山,牙山,ソウルの3都市で,具体には,特殊教育支援センタ ー,公立小・中学校の通常学級,特別支援学級,公立・私立の特殊学校,国立特殊教育院, 韓国教員大学校,職業リハビリテーションセンターと多岐にわたりました。タイトな日程 ではありましたが,実際の施設や授業等の見学をとおして,国連障がい者に関する権利条 約を批准し,約4年になる韓国の現状や課題を把握できました。 韓国における特殊教育の状況については,基本的には,日本の学校制度とよく似た形態 です。具体には,障がい児の約7割が地域の小・中学校に進み,特殊学級を設置して,IEP (個別化教育計画)による指導を中心に通常学級で交流学習も実施されており,状況に応 じ,日本の特別支援教育支援員にあたる人的配置もあります。また,特殊教育枠採用とな る教員は大学時から特殊教育専門課程を履修しており,教員研修にも力点が置かれていま す。詳細は,後述の報告に委ねますが,日本と同様に,障がい者に対する福祉分野での保 障等を含め,教育・福祉トータルでの施策の充実が課題となっており,今後,両国がそれ ぞれの施策の展開を情報交換しつつ取り組みを進めれば,意義深いものになると考えます。 最後に,今回の視察に関し,訪問先の関係機関,関係学校から心よりの歓迎と丁寧な応 接をいただいたことにまず感謝し,本研修を主催する独立行政法人教員研修センター,落 合俊郎教授,関係の方々に厚くお礼を申し上げます。今後は,団員の先生方が,それぞれ の県市において,所期の目的通り,広く成果を研修等において広めていただき特別支援教 育の充実につなげていただくよう期待します。 -5- Ⅱ 韓国の教育概要 韓国の学校教育は,教育基本法,初等・中等教育法に基づき行われている。初等・中等 教育法の定めるところにより,幼稚園から高等学校までの各学校段階を対象として教科等 の構成,時間,内容などの基準を定めた『教育課程』 (日本の学習指導要領に相当する。現 在,第 7 次教育課程)がそれぞれ教育科学部から告示されている。 また,1991 年 3 月に「地方教育自治に関する法律」が制定された。中央政府から公示さ れた教育課程の内容を基準として,市・道教育庁の監督の下,学校は地域と学校の実情に あわせた細部指針と単位学校別教育課程を決められる。教育の均等な機会を保障させ,一 定な質的レベルを維持できるようになった。 就学前教育は,3~5歳児を対象として幼稚園で実施されている。 義務教育は6~15 歳(特殊教育の対象者においては,3~18 歳)の9年である。初等教 育は,6歳入学時6年間初等学校で行われる。(5歳児童の入学も認められている。)前期 中等教育は,3年間中学校で行われる。(中学校は,2002 年に義務教育化された。) 後期中等教育は,3年間普通高等学校と職業高等学校で行われる。普通高等学校は,普 通教育を中心とする教育課程を提供するもので,各分野の英才を対象とした高等学校(芸 術高等学校, 体育高等学校, 科学高等学校, 外国語高等学 校)も含まれ る。職業高等 学校は,職業 教育を提供す るもので,農 業高等学校, 工業高等学校, 商業高等学校, 水産・海洋高 等学校などが ある。 図1 韓国の学校系統図 (文部科学省『教育指標の国際比較 平成 17 年版』平成 17 年 1 月 P.96) -6- 韓国では 1974 年から「高等学校平準化制度」を導入し施行している。平準化制度とは簡 単に言うならば,すべての高等学校を平準化する,つまり学校間格差をなくすことを目的 とする制度である。学校毎に個別の入学試験を行って学生を選抜するのではなく,私立・ 公立関係なく定められた学校群毎に選抜試験あるいは中学校での内申書の成績をもとに合 格者を決めた後,抽選により該当地域にある一般系高等学校に学生を配分する入試実施方 法(以下,「抽選割り当て方式」という。)である。※1 高等教育は,4年制大学(医学部など一部専攻は6年),4年制教育大学(初等教育担当 教員の養成),及び2年制あるいは3年制の専門大学で行われる。大学院には,大学,教育 大学及び成人教育機関である産業大学の卒業者を対象に,2~2.5 年の修士課程と3年の 博士課程が置かれている。 また,成人や在職者のための継続・成人教育機関として,放送・通信大学,産業大学,技 術大学(夜間大学),高等技術学校,放送・通信高等学校が設けられている。 〈引用・参考文献〉 文部科学省明石書房 「韓国,諸外国の教育動向 2008 年度」2009 年8月 文部科学省,韓国,諸学国の教育の動き,独立行政法人国立印刷局,平成 19 年 文部科学省,韓国,諸外国の初等中等教育,財務省印刷局,平成 14 年 (財)自治体国際化協会,概要,韓国の教育自治,2004 年 ※1(財)自治体国際化協会,平準化制度とは, Clair Report No. 339 (June 23, 2009) -7- 韓国の近代教育政策 Ⅲ 1 調査研究を進めるにあたって 事前研修会のシニアアドバイザーの講義内容要約 (1)国連障害者の権利条約批准に向けて 障害者の権利に関する条約が 2006 年 12 月に国連総会によって採択され,2008 年 5月に発効した。我が国においては,2007 年9月に同条約に署名し,現在批准に向 けての検討が行われている状況である。これを受けて,文部科学省では平成 24 年 年7月 23 日に「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のため の特別支援教育の推進(報告)」が中央教育審議会初等中等教育分科会によって出 された。今後同様の報告書等が法務省や国土交通省,厚生労働省からも出される予 定である。 現在,主要国で障害者権利条約を批准していないのは,アメリカ合衆国,ロシア, 日本だが,アメリカ合衆国については ADA という同条約よりも厳しい法律があるの で,実質的には日本とロシアの2カ国になっているというのが現状である。 同条約を批准するということは日本国憲法と教育基本法の間に位置するほどの 効力があり,法務省,国土交通省,厚生労働省関係の基本法も同様であるので現在 国内法の整備をしているところである。 (2)21 世紀前半の日本を考える 私たちが直面すると思われる困難や課題には以下のようなものがある。 ① 人口構造の問題 少子高齢化による納税者の減少 ② 世界で最も高い財政赤字 GDP 比の財政赤字や政府債務残高 が主要国の中でも厳しい状況にある のは図1のとおりである。 ③ IMF のシナリオ 日本が財政破綻を起こした場合を 図1「事前研修会資料」より 想定して,既に IMF(国際通貨基金)は「ネバ ダレポート(2001)」と呼ばれる日本再建プログラムを作成した。IMF から資金 供与を受けて IMF の管理下に入れば,借金の返済が最優先課題とされ,公共部 門が大幅に削減されることは過去の例からみても明らかである。 -8- ④ 東日本大震災 更なる「脆弱性」背負ってしまった。 ⑤ 格差社会 表1の資料でも明らかなように,日本は世界でも有数の格差社会になってし まった。このことを自覚し,一億総中流の意識から脱却する必要がある。 表1 主要国のジニ係数(CIA,2010) 「事前研修会資料」より ⑥ 社会福祉と資本主義の共生 これまでの福祉は,右肩上がりの経済成長を背景として国や地方公共団体が 中心となって行ってきたが,今後の日本を再生していくためには,超少子高齢 化社会,財政的な課題,グローバル化や TPP への対応,効率化・高度化による 雇用なき経済成長などの課題も克服していかなければならない。 ⑦ 特別支援教育と通常教育の連携の必要性 特別支援教育は「障がい児」のみを対象とし,通常の教育は特別支援教育と 無関係という意識が強い。通常の学級に知的障がいのある児童生徒が在籍してい た場合などは,合理的配慮をどのようにすればよいかを考えていかなければなら ない。 これら,日本が現在置かれている様々な状況を考えると,障がい児の学校卒 業後の生活を従来のように福祉を中心とする枠組みの中でだけで考えていくこ とは困難になってくるのではないか。そして,生徒が学校を卒業して就労する 地点をゴールと考えるならば,新学習指導要領が述べているように就学前教育 から高等学校(高等部)教育までの連携した支援が必要になってくる。先の見 -9- 通しをもって各学校・学部が次の学校・学部へとバトンをつなぐように個別の 指導計画や個別の教育支援計画を作成していく必要があるのではないか。 (3)最近の国内での特別支援教育に関する動き 2007 年文部科学省は,「特別支援教育は,幼児児童生徒への教育にとどまらず, 障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍でき る共生社会の形成の基礎となるものであり我が国の現在及び将来の社会にとって 重要な意味を持っている。」(19 文科初第 125 号平成 19 年 4 月 1 日)と示し,特別 支援教育は,“我が国の共生社会の基礎となるべき”という重要性が指摘された。 そして,現在は,障害者の権利条約批准のための国内法づくりが行われている。 先に述べた「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特 別支援教育の推進(報告)」 (平成 24 年7月 23 日)の主な項目は次のとおりである。 ・ 共生社会の形成に向けて ・ 就学相談・就学先決定の在り方について ・ 障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその 基礎となる環境整備 ・ 多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進 ・ 特別支援教育を充実させるための教職員専門性向上等 (4)韓国の特殊教育 1994 年に特殊教育振興法によって統合教育に対する国の義務を規定した。2008 年には,特殊教育法の制定により個別化教育の充実が図られるとともに義務教育の 範囲が拡大され,出生から成人になるまでの教育は国が責任を持って行うことを定 めた。これにより幼稚園(幼稚部)から高校(高等部)卒業後までの教育が保証され るようになり,それに伴って 2011 年から 2012 年にかけ教育課程の改正も行われて いる。1997 年~1998 年の財政破たんによる IMF による財政管理も特殊教育施策,特 に後期中等教育に大きな影響を与えた。 このような教育環境の整備とともに,就労に向けた職業教育の充実などのキャリ ア教育に対しても力を入れている。 職業教育を重視した特別支援学校の例 ① 公立城南惠恩学校:知的障害領域 高等部専攻科(高校卒業後の2年間の過程)では,就労に向けての「転換教 - 10 - 育」に力を入れている。主な作業内容としては,企業からの下請け軽作業,バ リスタ,もやしの栽培(試験的),動・植物物の飼育,観賞魚の飼育など。 ② 私立ミラル学校:自閉症領域 主な作業内容としては校内喫茶室(外来者利用可能)においてのバリスタ・パン の販売実習,花の販売,陶器の小物の制作と販売など。また,日本とは異なり企 業の寄付なども充実している。 (5)韓国の社会的企業の取り組み 2007 年社会的企業育成法の成立により社会的企業が導入され,全勤労者中脆弱者 層(社会的弱者)を 50%以上雇用し,サービスの 50%以上を脆弱階層に提供すると 規定された。 ① 韓国における社会的企業とは 「脆弱階層に社会サービス,または職場を提供し,地域社会に貢献することに よって,地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的を追求しながら,財貨お よびサービスの生産・販売や営業活動をする企業として認定を受けるもの。」 (姜・落合 2011) なお,ここでいう脆弱階層とは,高齢で収入の少ない人,障がい者(精神障害 者も含む),売春被害者,長期失業者,刑了者,脱北者,家庭内暴力被害者,片 親家族,結婚移民者などの社会的弱者ことである。 日本での類似した制度として特例子会社があげられるが,雇用の対象が障がい 者に限られてお り,韓国の社会的 企業の対象の方 が幅広いことが 分かる。 図2は,社会的 企業の種類を分 かり易く図示し たものである。そ 「事前研修会資料」より の設立の母体は様々である。 - 11 - ② 社会的企業の実際 ア 韓国の社会的企業の主な職種 村おこし,都市再開発,都市農村連携,エコ代替エネルギー事業,有機農業, 生産・加工・流通,学校給食ならびに配食事業,リサイクル委託事業,伝統家 屋・文化財保護など イ 社会的企業の具体的業務内容の一例 (ア)工場やデパートからの寄贈品(企業の社会的責任:CSR)の販売 (イ)包装や外箱の破損した商品を譲り受け安価で販売 (ウ)一般から寄贈されたリサイクル品の販売 (エ)食用排油によるロウソクや石鹸の制作と販売 (オ)清掃(請負)作業など (6)おわりに 同じ東アジアの中で,既にインクルーシブ教育が実践されている韓国。そこで は,障害者関連の法律・教育環境(教科書等)の整備,社会的企業,就労に向け た職業教育の充実を図るキャリア教育など,一定の実績をあげてきている。これ らの取り組みは財政危機を克服していく中で実践されてきたものであり,財政危 機に直面している我が国においても今後の特別支援教育の在り方を考えていく 上で参考になる点も多いのではないか。 【参考・引用文献】 韓国の社会的企業の現状と課題 広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践セ ンター研究紀要 no.9 ,P.39-50,2011 図1:財務省ホームページより引用 図2:大学の機能を活用した障害のある人々の就労支援・継続的雇用に向けた研究 ―キャリア教育,職業実習そして継続雇用への一貫した取り組みに向けて― 広島大学学部・附属学校共同研究機構研究紀要第 39 号 2011.3,P.33- 38. 表1:CIA(アメリカ中央情報局)のホームページデータをもとに落合が作成 - 12 - 2 日本国内における本テーマの課題 2012 年2月,障害者制度改革―中央教育審議会初等中等教育分科会 特別支援教育 の在り方に関する特別委員会報告―において,インクルーシブ教育システム構築のた めの特別支援教育の推進として強調されているのは以下の3点である。 (1)医療,保健,福祉,労働等との連携を強化し,障害のある子どもの社会参加を 行う。 (2)地域社会の中で積極的に活動し,その一員として社会参加を行う。 (3)障害のある子どもと周囲の子どもが共に学び合うことを学校において進めるこ と。 こうした取り組みが,インクルーシブ教育システムの構築につながり,国連が採択 した『障害者の権利に関する条約』の定義に照らし,批准していくための手立てを示 していると言える。 しかし,日本では,教育の分野において,そのための教育環境の整備や就学相談, 就学先決定の手続きの在り方,就労支援等,論議がされ,共生社会の形成に向けた具 体的な施策は現在,進行中である。 一方,韓国では障害のある児童生徒の約7割が地域の学校で学んでいる。しかし, 合理的配慮の前に学級定数や教材・教具の整備状況など合理的配慮の基礎的環境は, 日本の状況よりも厳しい。このような状況で「具体的なインクルーシブ教育システム 構築のモデル」 「就労に向けた取り組みや教育環境の整備」等をどのように行っている のかを学ぶ貴重な機会である。 この学びを,今後の日本におけるインクルーシブ教育システムを構築し,共生社会 を実現させるための提案や,有効な取り組みに結び付けられるのではないかと考える。 - 13 - 3 本テーマに対する訪問国の概要 韓国の特殊教育(日本で言う特別支援教育)は,1994 年の「特殊教育振興法」の改 正により統合教育の理念が取り入れられ,一般学校における統合教育が進められるよ うになった。同時に,個別化教育(日本における個別の支援計画にあたる)について も規定され個別化教育計画の作成も義務付けられた。そして,2008 年に特殊教育振興 法は廃止され, 「障がい者等に対する特殊教育法」が実施された。この法律で,特殊教 育対象者においては,出生から成人になるまでの教育について国が責任を持ち,その 対象が障がい児だけでなく社会的・経済的な困難が原因で教育的困難を生じている子 どもも対象とした。そして,個別的に必要な教育等については国が支援を行うという 方針のもと,様々な整備が行われた。 韓国の特殊教育の対象者においては,義務教育の範囲が拡大し3歳の幼稚園課程か ら高等学校課程卒業までを義務教育期間とし,3歳未満及び高等学校課程後の専攻科 課程は無償教育である。特殊教育の対象者の教育環境としては,日本と同じように特 殊学校(日本で言う特別支援学校)と一般学校(日本では「通常の学校」と表記され る)があるが,対象者の7割以上は一般学校に在籍している。特殊学級は高等学校に も設置されている。一般学校では特殊学級か統合学級に在籍している。統合学級に在 籍している場合は,個別化教育計画に基づき支援を受けながら一般教育課程で一日の すべての時間を統合学級で学習している。特殊学級在籍の場合は,一部の時間は特殊 学級で個別の教育を受け,その他の時間は統合学級で他の子どもと共に学習している。 特殊学級のない一般学校に在籍している対象者には,特殊教育支援センターの教師等 が適宜訪問し支援している。特殊学級では,教育庁(日本で言う教育委員会)の審査 を受け,必要となれば特殊教育補助員や公益勤務要員等が,教育活動を補助している。 また,特殊教育振興法の時代には治療教育として教育課程の中に含まれていた理学 療法や作業療法,言語治療,感覚・運動・知覚訓練等は教育関連サービスとして学校 教育の分野から分離され,保護者が必要と思う支援を外部の専門的な機関で受け,か かった費用の一定額を国が支援するという方法に変わっている。 そして,韓国では,学校卒業後の社会へのスムーズな移行のために進路および職業 教育を強化している。特殊学校や高校の特殊学級には,職業リハビリ訓練や自立生活 訓練を実施するための専攻科を設置しているところも多い。 専攻科では,企業と連携した作業学習や職業訓練等が行われたり,高校の特殊学級 - 14 - に特殊教育支援センターの教師が出向き,職業訓練等を行ったりしている。 日本では,地域の特別支援教育のセンターとしての役割を特別支援学校が担うとい う位置づけになっているが,韓国では,各行政区域の教育庁に設置された特殊教育支 援センターがその役割を担っている。そこでは,特殊教育対象児の早期発見,診断と 評価,巡回教育,進路・職業教育,特殊学級の担任や統合学級の教師に対して,また 対象児の家族に対しての研修,関連サービスの支援等が行われている。 4 調査・研究テーマと訪問先等 本団は,教育行政関係者,小中学校や特別支援学校の教員で構成されている。事前 研修会では,各地域,各立場での取り組みについて情報交換を行った。 さらに,シニアアドバイザーからの指導・助言を受けて調査の方向性と具体的な調 査内容について検討した結果,3つの課題に絞り,それぞれの課題をグループに分か れて現地での調査・研究を計画し実施した。 <各グループの調査・研究テーマと訪問先等> 調査・研究 テーマ 調査内容の事前計画の概要 訪問先 ・インクルーシブ教育システム ・韓国国立特殊研究院 韓国の教育行 を支える関係機関との連携, ・釜山市特殊教育支援センター A 政における特 協力 ・城南市特殊教育支援センター 殊教育の体制 ・就学前の相談体制と支援体制 ・城南市ユルトン生態学習園 ・社会的企業(現代) ・障がい者の社会参加における 韓国における ・江南地区職業リハビリテーシ 社会的企業の役割 B 就労支援の制 ョンセンター ・職業リハビリテーションの実 度とその実際 ・ローデム職業リハビリテーシ 際 ョンセンター ・国立鳳徳初等学校 ・統合学級における特殊教育の 韓国の特殊教 ・公立釜山東来中学校 サポートシステム C 育における教 ・私立ミラル学校 ・教科書やICT活用等具体的な 育環境の整備 ・公立城南恵恩学校 支援方法,環境作り ・国立韓国教員大学校 - 15 - Ⅳ 1 調査結果 Aグループ【テーマ:韓国の教育行政における特殊教育の体制】 (1)調査・研究テーマの設定理由 2006 年6月に国連総会において, 「障がい者に関する権利条約」が採択された。 日本政府も 2007 年9月に署名はしたものの,未だ批准には至っていない状況で ある。 2012 年 12 月には,127 の国や地域が批准している。韓国も 2008 年に同条約を 批准している。 日本において,この条約の批准に向けて教育の分野では,インクルーシブ教育 システム構築に向けた様々な検討が行われており,平成 24 年 7 月 23 日には,文 部科学省初等中等教育局中央教育審議会から「共生社会の形成に向けたインクル ーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進について」の報告が公表さ れたところである。 本グループでは,同条約の先進批准国であり,日本の教育システムに近い韓国 において,同条約批准後,どのような教育が行われているのか,それを支える仕 組みはどのようになっているのか,またどのような課題があるのか。など,今後 の日本におけるインクルーシブ教育システム構築に向けての参考とするため,教 育行政にスポットを当て,インクルーシブ教育システムを支える制度や関係機関, 特殊教育支援センターの役割について調査・研究することとした。 (2)調査項目 ① 韓国の特殊教育に関する変遷 ② 教育委員会等における特殊教育の取り組み ・教育委員会等における特殊教育に係る組織 ・韓国の特殊教育における教育委員会等の役割 ③ 特殊教育支援センターの取り組み ・釜山特殊教育支援センターの支援内容・方法 ・城南特殊教育支援センターの支援内容・方法 ・ユルトン生態学習院の取り組み ④ 韓国国立特殊教育院の取り組み - 16 - (3)調査結果 ① 釜山広域市教育庁(日本の教育委員会に当たる)の説明から 釜山市の特殊教育の現状 特殊教育対象者の児童生徒数は 5,653 人 (特殊学校児童生徒数:1,668 人) (特殊学級児童生徒数:2,712 人) (一般学級児童生徒数:1,273 人) (特殊学校:13 カ所) 図1 (特殊学級:459 カ所) 特殊教育の生徒,教師の分類 (統合教育:667 カ所) (特殊教育支援センター:6カ所) ② 釜山特殊教育支援センターについて ア 概要 韓国の中でも中心的な支援センターである。特に関連サービスが充実して おり,障がいのある生徒の余暇活動を支援するための,土曜プログラム(ク ラブ活動等)は好評であり多くの生徒が利用している。中でもバリスタ教育 の施設設備は充実しており,人気があるとのことであった。 平日は教師と共に参加すると高校の授業単位にもなり,進路職業教育の 場としても活用されている。 また,歩行訓練等を学校の自立の時間に行わず,外部の専門機関(クリ ニック等)で行い,その費用を支援センターが支払う治療教育支援というシ ステムがある。 さらに,これらの活動に当たっては,障がい者の人権保護のためのモニ ター団を常設している。 イ 職員構成:専門職2人,巡回教師 22 人,事務官3人他,57 人 ウ 事業内容 ・相談事業:主に特殊教育に関する相談や早期発見のための診断評価 - 17 - ・巡回教育:主に在宅生徒中心に巡回教師が家庭,施設,学校を訪問し支援 ・進路職業教育:主に中高校の特殊学級生徒を対象にした職業教育 ・研修教育:主に特殊教育,統合学級教師に対する研修 ・関連したサービス支援:治療支援,通学支援,土曜プログラム(軽音楽, 書道,茶道など) ,特殊学校特殊学級の放課後の学校の運営,教材・教具 の支援,補助器具の貸し出し ③ 京畿道城南市教育支援庁の説明から ア 城南市の特殊教育の現状(2012.11.5 現在) 城南市における特殊育対象児数 1,337 人 (特殊学校児童生徒数 431 人) (特殊学級児童生徒数 710 人) (一般学級児童生徒数(統合教育) 196 人) (幼 25,小 72,中 34,高 65) (特殊学校数 2カ所(431 人) (特殊学級数 132 学級(710 人) (特殊教育支援センター 1カ所) ※城南市の学校数 269 校,学生数 141,297 人,教員数 7,486 人(含む特殊 学校) イ 関連機関 「城南市ユルトン生態学習院」 「城南放送高校」(インターネット通信によるサイバー高校) 「城南市青少年保健センター」 「城南市家族女性課」 「城南市保育女性センター」 その他協力医療機関(整形外科2 - 18 - 眼科2 耳鼻科2 小児精神科1) ④ 城南特殊教育支援センターについての説明から ア 概要 京畿道教育庁管轄の特殊教育支援センターは道内に 25 か所あり,城南市 には,城南特殊教育支援センターが設置されている。城南市教育庁では「教 職成長 NTTP」 (教員のための新しい研修プログラム)と“コンサルティング” と呼ばれる教員をサポートするシステムが機能し,これらが特殊教育に携 わる教員にも活用されている。城南特殊教育支援センターは乳幼児期の早 期教育および診断評価から進路・職業教育にいたるまで関連機関との連携 を重視しながら支援が行われている。支 援 で は ,障 が い の あ る 乳 幼 児 に 対する早期教育支援と統合教育対象者への支援を特に重要と位置付 け支援事業を展開している。 イ 職員構成 チーム長1人,巡回特殊教師1人,リハビリ福祉教師1人,乳幼児教師 1 人,治療士7人(作業治療士3,言語治療士4)特殊学校治療士2人,イ ンターン教師1人,臨床心理士2人 ウ 事業内容 ・早期発見(含む情報管理)および診断・評価(含む編成・配置) ・特殊教育支援(補 償 教 育 , 巡 回 教 育 , 教 授 学 習 資 料 開 発 , 個 別 化 教 育) ・特殊教育関連サービス支援(補助工学機器支援,教材の貸出,家族支援, 放課後活動支援,進路および職業教育支援,障がい者人権保護) ・治療支援(言語治療・物理治療・作業治療) ・研修,教授学習活動支援 ⑤ ユルトン生態学習院(地域社会統合事業) ア 概要 障 が い の あ る 人 と な い 人 の 境 界 や 壁 を な く す こ と( 障 が い 者 が 作 っ た も の へ の 偏 見 を な く す な ど ) を 目 的 に 設 立 さ れ ,進 路 指 導 の 事 - 19 - 業 や 転 換 教 育 事 業 を 主 に 行 っ て い る 。移 行 支 援 的 事 業 と な り ,学 校 に 進 学 す る あ る い は ,社 会 に 進 出 す る と い っ た 障 が い 者 を 対 象 と し ている。 イ 主なプログラム ・移行教育園芸プログラム ・園芸治療プログラム:ヒーリングガーデン,情緒や心身の安定を 図る。 ・生 態 体 験 プ ロ グ ラ ム:園 芸 治 療( 栽 培 等 )を 行 い 運 動 機 能 の 向 上 , 達成感を得る。 ウ 事業内容 ・バ リ ス タ カ フ ェ テ リ ア な ど 様 々 な 施 設 の 開 放 と 接 客 訓 練 の 場 。 (コ ーヒー無料) ・リハビリの相談,保護者や対象とした相談,カンファレンス ⑥ 韓国国立特殊教育院 ア 概要 日本の文部科学省にあたる 韓国の教育文化科学部の直轄研 究所であり,特殊教育を充実さ せ障がい者の暮らしの質を向上 させるために 1994 年に設立され た。訪問したのは新設された二番 目の研究所である。 組織は4つの課と6つのチームで成り立っており,研究機能を果たす特定職 の公務員と行政支援を担当する一般職の公務員で構成されている。 イ 具体的な業務内容 ・特殊教育に関する国の全般的な現状を把握する様々な調査研究活動 ・国家政策を立てるための様々な研究活動 ・特殊教育に必要な教育課程の開発 - 20 - ・障がい児が使う様々な教科書や一般の学校に通う障がい児のための教材の開 発 ・ジャーナルの出版を出版し,特殊教師に対して最新の情報を提供 ・最新テーマに関するセミナーの開催 ・特殊教師の指導の力量を強化するための研修 ・その他(インターネットでの遠隔研修,障がいのある児童が学校内でいじめ や性暴力等の虐待を受けることがないように,健常な児童生徒や教師に対す る教育を行う為の支援,学校現場で障がい児の進路や職業教育を適切に行う ための支援,障がいのある学生のための進路や職業教育に関する資料の開発, また,それに関わる教師に対するワークショップや研修の実施,障がい児が インターネットを活用して学習できるような支援,大学に進学した障がい者 の学習支援,生涯学習の支援等を行っている。) ウ 韓国の特殊教育に関する制度の変遷 韓国の特殊教育の制度に関する歴史には3回の大きな変化があった。1977 年に障がい者に対する教育についての最初の法律である「特殊教育振興法」が 制定された。同法は 1994 年に改正されたが,これは新しい法律を制定するに 匹敵する改正であり,新しい時代の幕開けとなった。 改正の具体的内容としては,特殊教育対象者の小・中学校課程が義務教育と なり,早期教育も無償で受けられるようになったこと,重度の障がいで在宅と なっている義務教育年齢の対象者への巡回教育,統合教育の義務づけ等が新た に定められた。 また,2007 年には特殊教育振興法を廃止して「障がい者等に対する特殊教育 法」が制定され現在に至っている。この法律により義務教育の範囲が拡大し, 特殊教育対象者は幼稚園から高校課程までが義務教育とされた。また,乳児期 の健診で定期的にスクリーニング検査を実施し,障がいがあると疑われる場合 は特殊教育の対象者とすること,特殊教育支援センターの設置,教育の予算で 医学や心理学の領域にある関連サービスが個別のニーズに応じて提供される こと,大学教育,生涯教育への支援も国の主導で行われることとなった。一言 で言うと「出生から成人するまでの教育は国が責任を負う。個別的に必要なも のに対して支援をする。」ということである。 - 21 - エ 統合教育について 特殊学校でないところに特殊教育対象者が就学することを統合教育と見なし, 「一般学校の特殊学級に在籍する」と「一般学級に在籍する」の2つのパターン がある。家から一番近い学校に通学することが特殊学級設置の目的であり,法律 により,障がいが重度であることを理由に一般学校への入学を拒むことはできな い。 オ 特殊教育に関する研修について 特殊教育に関する一般教員向けの研修内容は,障がい児の特性理解が大半を占 める。特殊教育対象者が一般学級で学ぶ場合,レベルの違う子どもたちに対して どのように教育し,学級運営をするのかなどを討論する内容もある。また,特殊 教育対象者以外の生徒や保護者に対して行う障がい理解教育は,学期に1回ほぼ 強制的に行われている。 カ 関連サービスについて 特殊教育法の制定以前は教育課程の中の治療教育として,日本の自立活動に当 たる内容やリハビリテーション的な内容が含まれていた。しかし,理学療法など は個々に必要性に違いがあるので,治療教育を個別的なサービスとして関連サー ビスに分離し,保護者が必要な治療を選んで外部機関で医学や心理学の領域にあ るサービスを受けられることとなった。保護者はかかった費用を国に請求し,上 限はあるものの補助が受けられる。 (4)考察 城 南 市( 人 口 約 150 万 人 )に お い て は ,特 殊 教 育 の 教 育 対 象 者 1,337 人 中 一 般 学 級( 完 全 統 合 )に 196 人( 14.7% ),特 殊 学 級( 132 学 級 )に 710 人 ( 53.1% ), 特 殊 学 校 ( 2 校 65 学 級 ) に 431 人 ( 32.2% ) が 在 籍 し て い る 。 統 合 教 育 を 受 け て い る 割 合 は , お よ そ 68% で あ る 。 統 合 教 育 を 支 え る 仕 組 み と し て は ,特 殊 学 校・特 殊 学 級・学 校 在 籍 の 幼 児児童生徒への充実した教育を実践するための教員の資質向上のための プ ロ グ ラ ム や ,教 員 を サ ポ ー ト す る 各 種 コ ン サ ル テ ィ ン グ 事 業 の 展 開 が あ った。 さらに多様な関係機関と有機的に連携することで教育や支援の質が高 められている。 - 22 - ま た ,こ の よ う な 活 動 全 般 を 人 権 保 護 の 視 点 で ,チ ェ ッ ク す る た め に 常 設モニター団が構成されていることも特徴の一つといえる。 特 殊 教 育 支 援 セ ン タ ー 及 び 関 連 機 関 に は ,様 々 な 支 援 の た め の 機 能 を 集 中 さ せ る と と も に ,教 員 と そ の 他 の 専 門 家 や 行 政 職 員 が そ れ ぞ れ の 役 割 を 明 確 に し ,グ ロ ー バ ル な イ ン ク ル ー シ ブ 教 育 シ ス テ ム の 展 開 を 目 指 し て い る。 釜山市においても,障がいのある子どもが,十分な支援を受けられる体制や運 営がなされていた。特に,学校の教育課程の一部を支援センターで専門職の教師 が教育するシステムや,土曜日プログラムの中のバリスタ教育などは,職業教育 として設備面も充実していた。 韓国では,特殊教育対象者を国の責任として早期に発見し,適切な療育や教育に 結びつける仕組みが導入されている。無償で乳児期からの療育が受けられ,それ以 後も個々に合った医療等のサービスが保障されていることが,障がい児をもつ保護 者の負担軽減につながっている。 日本に お い て は ,特 別 支 援 学 校 が 特 別 支 援 教 育 地 域 支 援 セ ン タ ー と し て の 役 割 を 担 っ て お り ,そ の 運 営 は ,管理職のリーダーシップの下に各学校で指 名されている特別支援教育コーディネーターが中心となっている。 本調査から,日本と韓国の教育行政上の共通点として,韓国における一般教員へ の特殊教育のサポート体制の必要性,保護者の負担軽減の必要性は同じであること があげられる。相違点としては,その必要性に対して韓国は制度化されていること, 活 動 全 般 を 人 権 保 護 の 視 点 で ,チ ェ ッ ク す る た め に 常 設 モ ニ タ ー 団 が あ る こ と ,法制度の上で義務教育の期間における関連サービス等の充実があることがあ げられる。 韓 国 に お け る こ れ ら の 取 り 組 み は ,特 別 支 援 学 校 が 特 別 支 援 教 育 の 地 域 支 援 セ ン タ ー と し て の 役 割 を 担 っ て い る 日 本 の 現 状 の 中 で も ,身近な支援 に生かせる部分があることが分かった。 - 23 - 2 Bグループ【テーマ:韓国における就労支援の制度とその実際】 (1)調査・研究テーマの設定理由 日本においては,2011 年8月5日に障害者基本法の一部を改正する法律が公 布・施行された。この中で「インクルーシブ教育システム構築の推進について」 の記述があり,「雇用の機会の確保」「個々の障害者の特性に応じた雇用の安定」 を謳っている。 また,2010 年度文部科学白書によると特別支援学校高等部(本科)卒業者の就 職率はここ 10 年間 20%前後を推移し,2003 年の 19.4%を底に 2008 年に 24.3%, 2010 年は 23.6%である。一方,施設や医療機関への入所は 2010 年で 65.5%であ ることから,障がいのある生徒の進路保障への取り組みは依然厳しい現状にあると 考える。加えて,雇用無き経済成長とも言われるこれからの社会において,今まで のように右肩上がりの好況に支えられてきた従来型の福祉施策はいずれ立ち行か なくなってしまう懸念がある。 韓国では 1994 年に障がい者教育特例法の大幅改正がなされ,1997 年の財政危機 を機に「資本主義と社会福祉」の共生のための意識変革が唱えられ,その流れの中 で 2007 年に社会的企業育成法が成立した。同時期に障がい者差別禁止法が制定さ れ,社会的企業が増えて障がい者の雇用先にもなっている。我が国でもキャリア教 育の必要性・重要性は多くの学校で唱えられている。 そこで,韓国の社会的企業の取り組みの役割とその実情を知り,日本が実現しよ うとしているインクルーシブ教育システムの出口となる「共生社会の実現」「自己 実現としての進路保障」の参考とするため,以下の調査を行うことにした。 (2)調査項目 ① 障がい者の社会参加における社会的企業の役割 ・社会的企業とは何か。設立の背景や現状 ・社会的企業を推進する社会的研究院の事業内容 ② 社会的企業における雇用の実際とその内容 ・設立の背景とその展望 ・実際の就労職種 ・社会の意識の実際と変化 ③ 職業リハビリテーションセンターの役割とその現状 - 24 - ・活動目的とその内容,活動の実際と今後の目標 (3)調査結果 ① 社会的企業(社会的企業研究院) ア 社会的企業設立の背景 失業等脆弱階層の人たちの生活問題や障がいのある人たちの教育,生活支援 等,社会の問題を改善し,解決していくには政府の援助が重要になるが,十分 な援助ができていないのが現状であった。 そこで,そうした社会の問題を企業の問題として捉え,社会問題を改善し, 社会貢献に寄与するねらいがあった。 イ 社会的企業の5つの役割 (ア)持続発展可能な経済活動を通じた経済的富の創出に寄与する。 (イ)社会的ニーズを満たす。 (ウ)地域社会を再建する。 (エ)良質の公共サービスを提供,革新する。 (オ)倫理的市場を勧奨するなど,経済的・社会的有用なツールとして地域発 展と革新に中心的な役割が果たせ,社会統合に寄与する。 ウ 社会的企業の現状 2007 年 1 月社会的企業育成法が制定され,同年7月より施行されたことによ り,各地で認証される社会的企業が増えてきた。2012 年 10 月現在 702 ヶ所, 約2万人が雇用されている。(何割が障がい者であるかは未定)予備社会的企 業は約 1,400 ヶ所,その他に村や町の共同体企業が 800 ヶ所ある。 エ 社会的企業研究院(釜山)の概要 (ア)目的 社会的企業経済の活性化,ネットワークの構築(データベース化) (イ)設立の経緯 社会的企業育成法制定の 1 年前(2006 年)に設立された。 (ウ)主な活動内容 広報活動(マガジンや学術誌,単行本の発行,先進国の事例紹介や成果 の分析) - 25 - ② ローデム職業リハビリテーションセンター ア 設立の背景 会社設立までに,この地域の現状(住民の生活状況,障がい者の雇用の実態, 障がい者が働くことの意味,社会統合への手立て等)について調べ,以下の4 点のビジョンを描いた。 (ア)障がい者雇用による社会統合 (イ)障がい者自身の主体的な役割の強化 (ウ)社会的企業からの提供品(おもちゃ)の販売と消毒によるリサイクル活動 (エ)倫理的な評価<障がい者の製品は質が低いという評価>からの脱皮 イ 職業種目及び仕事の現状 環境に優しいキャンドル「ローデムナム エコキャンドル」の制作→キャンドル技術 の特免許を取得し,「キャンドルアカデミ ー」という広報活動を地域の幼稚園や学校 <キャンドル製品の一例> で行った。 また,幼児用おもちゃの販売(エコトイ) の消毒はじめ,駅のトイレ等の消毒事業 (クリ-ンアップ)にも参入→おもちゃの 販売では,優先購入制度(障がい者が生産 する品物あるいはサービスを公共団体が優 <おもちゃの洗浄風景> 先的に購買あるいは活用する制度)を活用している。 ウ 学校や地域との連携 地域の事業所や学校と様々な提携を結ぶ。例えば,特殊学校の生徒の現場実 習や高校3年次2学期以降,希望する生徒との雇用契約を結ぶこともある。 ③ ア 江南区職業リハビリテーションセンター 役割 「一個人としての障がい者の人格を認め,仕事の場を見つけていくこと」を 目的とし,2008 年に設立,2009 年本格始動し,その目的を達成するために, 以下の3つの活動を支援している。 - 26 - (ア)障がい者保護作業場の運営 (イ)ハヌリ中間保護施設の運営 (ウ)障がい者特化事業 イ 現状 障がい者保護作業場として「ミラル保護作業 <石鹸製造の様子> 場(食用油の廃油による石鹸作成・賃加工)」「ミラルベーカリー(製パン・製 菓)」「ウリプラス作業場(カフェ・花・賃加工)の3カ所を運営。保護作業場 の就労者は,現在 101 名である。そのうち知的 障がい・自閉症等が 64%,重度重複障がい者が 26%。多くは近隣の自宅やワークハウスから通 勤可能な障がい者である。 ウ 地域との連携 建設当時は反対意見も多く課題もあったが, <花の賃加工の様子> 現在は多くの地域住民に理解を得て,カフェやベーカリー等を利用する地域住 民も多く,地域の中にあるセンターとして地域福祉事業を行っている。 (2)考察 韓国においては,障がい者の就労を支援する法律「社会的企業育成法」が制定さ れ,それに基づいた環境を整備することにより,企業としての責任や役割が高まっ ている。特に,ローデム職業リハビリテーションセンターでは,地域の現状を調査 し,問題や課題をどこに抱えているのかを丁寧に分析したうえで,ビジョンを立て るなど,設立までの手続き過程を重要視してきた。 また,障がい者が地域で主体的に活動していくために,特許技術を取得するなど, 質の高い製品・商品づくり,サービスの提供を目指す経営方針の確立と同時に高校 や特殊学校にも広報し,障がい者の就労先を広げていた。 さらに,職業リハビリテーションセンターでは「障がい者の人格を認め,仕事の 場を見つけていく」という目的達成のため,保護作業場・中間保護施設・特化事業, 作業場や保護施設などを運営し,障がいの程度により各自の目標を定められるよう にしていた。自立を支援するためのこれらの取り組みにより,障がい者の労働意欲 の向上を図るとともに,社会全体で人権を守り,雇用の質が確保されるよう学校・ 地域・行政が一体になった活動が持続的に行われている点に学ぶことが多くあった。 - 27 - 3 Cグループ【テーマ:教育環境の整備について】 (1)調査・研究テーマの設定理由 平成 17 年 12 月に中央教育審議会から出された「特別支援教育を推進するための 制度の在り方について」(答申)では,障がいのある幼児児童生徒の教育の基本的 な考え方について,特別な場で教育を行う「特殊教育」から,一人一人のニーズに 応じた適切な指導及び必要な支援を行う「特別支援教育」に発展的に転換する,と いう考えに基づき,盲・聾・養護学校制度と小・中学校における制度的見直しにつ いて述べられている。 また,ノーマライゼーションの理念の浸透等により障がいの概念や範囲が変化し, LD・ADHD・高機能自閉症により学習や生活面で特別な教育的支援を必要とし ている児童生徒が増加傾向にある。しかし,幼稚園,小・中学校,高等学校等にお ける特別な教育的支援が必要な児童生徒等に適応できる指導内容や指導方法が十 分に確立されていない現状がある。 そこで,教育課程や教育システムなどの参考になる内容を見出したいと考え,韓 国における幼稚園,小・中学校,高等学校等と特殊学校における特殊教育にかかわ る状況や教育内容を調査することとした。 (2)調査項目 ア 統合学級における特殊教育のサポートシステムについて (ア)教育課程の種類 (イ)統合学級,特殊学級の実情 (ウ)障がい種別による支援方法 (オ)教員向けの特殊教育にかかわる研修の状況 (カ)小・中学校と特殊教育支援センターとの連携 イ 教科書やICT活用等具体的な支援方法,環境作りについて (ア)教科書の種類と学習内容 (イ)情報機器や,教材・教具等の活用方法 ウ その他 (ア)学校をとりまく状況について (イ)関係諸機関との連携(保護者,地域との交流等) - 28 - (3)調査結果(説明依頼又は訪問先ごと) ① 鳳徳初等学校(国立) ア 学校概要 鳳徳初等学校は,2004 年 に創立され忠清北道にある。 現在全校児童は 710 名,30 学級,内 1 学級が, 特殊学 級である。特殊学級在籍児童 は8名で,うち6名が知的障 がい児,2名が肢体不自由児 である。 イ 統合教育(時間制特殊学級) (ア) 時間制特殊学級 主に知的障がい児の教育で,必要に応じて,特殊教育補助員が統合学級(日本 の通常の学級)においての学習に対して支援を行ったり,特殊学級での学習を行 ったりしている。特殊教育補助員が支援を行わない時には,個別化教育計画を統 合クラスの担任に渡し,個別の理解度に応じて統合学級で学習する。 (イ) 完全統合学級 一般の教育課程で学習可能な子ども,主に肢体不自由児に対して行われている。 個々の能力に応じて教育を行い,週2回,特殊教育支援センターの治療担当教師 が行う巡回指導を活用している。校内の移動については,特殊教育補助員が支援 する。 ウ 障害者理解教育 対象児童が在籍する学級に対しては,3月と 12 月に障がい児理解教育を行う。 また,学校全体では,障がい者の日(4/20)に合わせて,4月に障がい者理 解プログラムが2回行われる。さらに,随時必要に応じて指導を行う。 エ 個別化教育計画 保護者も参加し個別化支援チームでの話し合いが3月に行われる。 - 29 - ② 釜山東来中学校 ア 学校概要 東来中学校は, 1898 年創立 (1951 年, 東来府学校が高等 学校と本校に分離)の釜山広域 市内の中心部にある男子中学校 で, 現在全校生徒は 735 名, 20 学級, 内1学級が, 特殊学級 である。在籍生徒は, 12 名(聴覚障がい1, 知的障がい6, 行動情緒障 がい1, 自閉症1, 学習障がい3)である。 イ 統合教育 必要に応じて,特殊教育補助員が統合学級においての学習に対して支援を 行ったり,特殊学級での学習を行ったりしている。問題行動が起きた時には, 特殊教育補助員が対応をする。 ウ 特殊教育 特殊教育担当教師を中心に, 特殊教育補助員, 公益勤務要員が, 基本教 科や芸術体育教科,転換教育や進路職業の指導を行う。 エ 年間運営計画 入学時より3週間の適応期間が設けられ,行動観察や知能・能力検査を行 い,保護者とともに個別化教育計画を作成する。そして,対象生徒の共通理 解を図る教職員研修が行われる。また,統合学級において対象生徒の支援を する生徒に対する教育が行われる。9月にも適応期間が設けられている。個 別化教育計画に基づいて,性教育,進路職業プログラムの参加,現場体験学 習,生活指導などが行われる。2月には,個別化教育計画の評価を行う。 ③ ア Miral School(私立ミラル学校) 学校概要 キリスト教の精神に基づいて,情緒及び行動障がい児,知的障がい児の特性と 能力に応じた適切な教育を行い,社会的な統合の促進と特殊教育の質的発展に尽 くすために 1997 年に設立された私立の特殊学校である。幼稚部,小学部,中学 - 30 - 部,高等部,専攻科があり,現在 205 名の 児童生徒等が在籍している。自閉症の児童 生徒等は全体の 80%を占めている。 イ 地域住民に開かれた学校 講堂は結婚式場,会議室はセミナー会場, 体育館は礼拝や各種行事会場,音楽堂はコ ンサートホール,美術館は展示室等として 〈音楽堂〉 地域住民に施設(コンサートホールになる音楽堂)を広く開放している。それに より,理解を深めたり交流を図ったりしている。 ウ 自閉症児への教育―応用行動分析に基づいた教育プログラム 幼稚部段階から応用行動分析(ABA)と個別的なニーズに応じた課題分析による 段階別教授-学習方法(DTT プログラム)を取り入れている。1学期間で 15 程度の 個別の教育目標を立て取り組んでいる。毎回到達度を評価し,80%到達で次の目 標に取り組む。学期末には折れ線グラフにし数値化することで,評価が見てわか るようにしている。 エ ボランティアの活用 年2回以上,定期的にボランティアを募集し,約 200 名のボランティアが各学 級で児童生徒の生活指導や現場体験学習をサポートしている。 オ 高等部の転換教育の実践 地域の一般企業や公共機関(郵便局や図書館等),職業訓練センターとの協力に よる転換教育を週1回以上実施している。 ④城南恵恩学校(公立) ア 学校概要 1982 年京畿道で最初に公立特殊学校として設立。現在 37 学級,幼稚・小学・ 中学・高等・専攻・訪問の各部から成る。児童・生徒数は 221 人で,知的障がい 72%,肢体不自由 14%,自閉症 13%,その他1%となっている。 創立 30 周年を迎え全国の特殊教育をリードし,エコロジーに基づいて美しい 自然環境を保っている。2003 年には,全国美しい学校大会最優秀校に選ばれた。 - 31 - イ 学習中心の教育 教育課程を9つのレベで構成し,運営を充実させている。 実践的な個別化教育を目指し,全校児童・生徒一人一品の認証制度を導入・運用 している。 授業方法の改善研究会を通して授業コンサルティングの実施を行っている。 ウ 幸せな教室(学級経営) 正しい生活教育を実践するために,個別教化育計画を実施し学級別の教育課程 を運営している。また,社会適応能力を伸ばすために,助け合いによる統合教育 を実施している。 さらに,将来の準備のために職業教育プログラムを運営している。 エ 安全な学校 健康な学校生活のために口腔保健室の 運営を通じた児童・生徒の定期的口腔ケ アを実施している。 また,基礎体力強化のために希望者に トレッキングを実施し,さらに,災害予 防体験教育や学校の安全を守る運営を行っている。 <口腔保健室> ⑤ 国立韓国教育大学校 (チョン・ドンヨン教授の説明から) ※国立韓国教育大学校は,1984 年に創立された大学で,第一から第四学部(幼児 初等教育系・人文社会教育系・科学工学教育系・芸術体育教育系)の学部がある。 ア 韓国の特殊教育における教育課程 韓国の教育課程は 10 年ごとに改正されていたが,1997 年からは社会発展と変 化が著しいため必要に応じて改正をするようになった。2011 年に特殊教育の教 育課程が改正告示され,2013 年から年次的に適応される予定である。従来は特 殊教育の基本教育課程がⅠ,Ⅱ,Ⅲ水準の3段階のグループで構成されていた が,小学校1~2年群,3~4年群,5~6年群,中学校1~3年群,高等学 校1~3年群としてその範囲を拡張した。 今回の改訂における理念は,①障がい児もできるだけ一般児童生徒と同じ教 - 32 - 育経験を共有すること,②教科教育を受けること,③個別の特殊教育的ニーズに 対応し支援する方向をもつこと,④学校単位での自主性をもった教育課程を開発 することである。 イ 教科用図書について 重度知的障がいの場合,自立生活 を送るためには,意思疎通・社会技 術が必要であり,一般の児童・生徒 が経験する内容を素材として提供す <教科用図書> ることを重視し開発された。 また,経験できることは限られているため,電子著作物を開発している。 (4)考察 鳳徳小学校では,施設・教材教具が充実している。例えば,個々の能力や保護者 のニーズに応じて,発達段階別教科書を有効に利用したり,教具を活用したりして 教育を行っていた。 釜山東来中学校では,保護者の気持ちを尊重し,教職員研修を重ねたり,対象生 徒を支援する生徒の協力を得たりしながら,子どもの自立を促すための教育が行わ れている。統合教育が行われている学級を見学した際,一人一人の教育的ニーズに あった指導場面は見られなかった。 城南恵恩学校では,幼稚部から専攻科まで一貫した教育がなされ,生徒の幸せを 目指して,卒業後もきちんと就職できるようにサポートする仕組みがあった。 また,学校の社会とのつながりについては,企業が社会貢献の一つとしてガーデ ニングのコーナーや壁面のイラストなどのペイント,大型の教材などを寄付したり, 市の歯科医師会がデンタル・チェアーを寄贈したり,ボランティアで歯科医や美容 師が定期的に子どもの身だしなみを指導したりしている。 ミラル学校では,広く地域住民に施設・設備を開放したり多数のボランティアが 児童生徒の学習を支援したりして,地域全体が学校をしっかりとサポートしている。 統 合 教 育 で 一 般 学 級 に 属 し て い る 障 が い 児 の 学 習 保 障 を す る た め に ,一 般教育課程の教科書の内容に合わせた特殊教育用の教科書も作成されて い る 。 ま た , ネット配信やDVDの開発も進み,指導しやすい環境を国の責任に おいて進めている。 - 33 - Ⅴ 全体の考察とまとめ 国連障がい者に関する権利条約については,日本も批准に向けて準備を進めているが, 韓国は批准先進国である。欧米の主要国も既に批准しているが,中でも韓国は教育のベ ースとなる基礎的な環境において日本との共通点が多い中での批准である。例えば,6 -3-3-4制である点,他の OECD 諸国と比較して,一学級あたりの人数が多い状況 や,教員一人当たりが担当する児童生徒数が多い点などである。 そこで,今後の日本におけるインクルーシブ教育システム構築に向けた取り組みを 教育行政や学校現場において進めるに当たり,日本と比較検討し,参考とするため韓 国を調査・研究の対象とした。 ここでは,三つのテーマで調査・研究を行った結果の全体を「インクルーシブ教育 システムを支える社会のしくみ」と「特殊教育の内容の充実」の2つの側面から考察 する。 1 インクルーシブ教育システムを支える社会のしくみ 日本が目指すインクルーシブ教育システムは,「多様な学びの場」のどの場において も,一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育を受けられるようにすることである。 韓国における特殊教育の実際から,参考となる取り組みについて以下の3点にまとめ る。 (1)治療教育の充実による「多様な学びの場」における専門的な教育の保障 韓国には,通常学級や特殊学級に在籍していても治療教育(専門的な教育)を公 費の補助により受けることができる制度がある。 専門家(日本でいう理学療法士や言語聴覚士,作業療法士等)が一般学校を訪れ て,特殊教育対象の幼児児童生徒に治療教育を行うことや,特殊教育支援センター に特殊教育対象の幼児児童生徒が出向き治療教育を受けることができるという制 度である。 このように,韓国では,一般学校に在籍していても公費補助により治療教育が受 けられることにより,専門的な教育が保障されるとともに保護者や本人の負担軽減 にもなっているのである。 日本では,今般の特別支援学校の学習指導要領の改訂のポイントとして,外部専 門家の活用が打ち出されたところであり,その活用は今後の課題である。 韓国のこの取り組みは,専門性の高い治療教育が特殊学校でも特殊学級や通常学 - 34 - 級でも同様に保障され,日本が目指している「多様な学びの場」における一人一人 の教育的ニーズに応じた教育の在り方の一つとして参考となる。 また,一般教員の特殊教育に関する専門性を補うことができるので,本人や保護 者,さらには担当する教員にとっても大変心強い取り組みである。 (2)バリスタ教育に見る「多様な学びの場」における職業教育の実際 日本において特別支援学校が担っている地域の特別支援教育のセンターとしての 役割を,韓国では,特殊教育支援センターが担っている。 しかも,韓国における特殊教育支援センターは,日本における特別支援学校のセ ンター的機能よりもさらに多くの役割を果たしている。 例えば,調査した特殊教育支援センターでは,様々なプログラムを用意しており, 特殊教育の対象者である通常学級や特殊学級に在籍する特殊教育対象の児童生徒に 対して行う職業教育に関連するプログラムも充実していたのである。 そのプログラムの一つにバリスタ教育がある。施設設備は本物のカフェのように 整っていて大変人気が高いということであった。調査した特殊学校のいずれにも同 様の施設設備があり,バリスタ教育は盛んであった。 また,職業リハビリセンターにおいては,カフェを実際に営業することも活動の 一つになっていた。さらに,ユルトン生態学習院においては,品質にこだわったコ ーヒーを提供しており,学校を卒業した後も含めて,バリスタ教育は特殊教育対象 者の職業教育の中心であると考えられる。また,移行教育センターとして,特殊学 校や高等学校特殊学級に在籍している生徒が短期的に訓練を受ける場所にもなって いた。 日本でも,高等特別支援学校である東京都立永福学園や南大沢学園などは,スタ ーバックスコーヒージャパン株式会社の支援を受けるなどして韓国と同様の施設設 備を整え,職業教育を行っている学校もある。しかし,特別支援学級や通常の学級 に在籍している生徒はその施設を使った教育を受けることは難しい状況である。 現在,日本では,埼玉県の支援籍,東京都の副籍といった取り組みや,居住地交 流などの交流及び共同学習により,ある程度多様な学びの場は体験できる仕組みが あるが,そこで行われる学習を教育課程にしっかりと位置付けることが課題となっ ている。 - 35 - 韓国では,一般学級に在籍していても,特殊学級に在籍していても,特殊学校に 在籍しているのと同じように教育課程に位置づけ,職業教育が受けられる仕組みに なっていた。 (3)企業の社会貢献にみる韓国における共生社会の実際 調査した特殊学校には多くの企業や団体が寄付や寄贈,ボランティアをして,教 育活動を支えている状況があった。 例えば,音楽ホール,ガーデニングスタイルの休憩場所,口腔保健室,美容室な ど大変充実した施設設備があった。これらはすべて企業や団体の寄付であり,特に, 歯の治療をする口腔保健室や美容室では定期的に無料で診察や整髪をしてくれると いう。環境問題への対応は多いがこういった社会貢献は日本では少ない。 このように社会全体が特殊教育を支えているという韓国の状況は,法制度による ところが大きいとのことであったが,日本においても,社会貢献の在り方について, 韓国のこれらの事例を紹介し,日本の企業に働きかけることは現状でも可能である と考える。 また,韓国には,失業などの生活問題や障がいのある人たちへの生活支援などの 社会問題を改善し,社会貢献に寄与する目的で作られた「社会的企業」が設立され ている。これは、社会的企業育成法の制定及び施行によるところが大きい。 さらに,障がい者の作った製品を優先的に購入しなければならないという優先購 入制度があることにより,企業にとっては,障がい者を雇用するメリットが大きい ため障がい者の雇用率アップにつながっている。これらの法律や制度が障がい児の 卒業後の生活を支える仕組みにもなっている。 2 特殊教育の内容の充実 韓国における特殊教育の内容の充実としての日本との違いの一つは,特殊教育対象 児のための教科書の種類の多さである。 日本では,一般図書を教科用図書として選定することも可能であるが,拡大教科書, 点字教科書,文科省著作本(いわゆる星本)など種類は韓国に比べて少なく,操作性 にも限りがある状況である。 韓国の教科書は,内容の段階の多さもさることながら,シールを貼るなどの操作が - 36 - できる教科書もあった。 また,通常学級で使用されている教科書と同様の内容について,特殊教育対象児の 障害の程度や発達段階によって文字の大きさや説明のわかりやすさなどから選べる状 況があり,多様な学びの場における一人一人に応じた教育を行う基礎的な環境の一つ になっていた。 以上,本調査により,韓国における教育行政の取り組み,学校現場の取り組み,社 会全体の取り組みなどを2つの側面から日本と比較検討し,これから日本がインクル ーシブ教育システムを構築させていくために必要な「基礎的環境の整備」と「合理的 配慮」についての参考となる取り組みを知ることができた。 - 37 - Ⅵ 研究成果の活用レポート (研修成果の活用例 その1) (団名)I-2 1 研修名 (テーマ)特別支援教育 (訪問国)韓国 韓国におけるインクルーシブ教育システムの現状 ~日本と韓国との比較から日本の今後の課題について考える~ 2 目的 ・韓国のインクルーシブ教育を支える法制度や教育行政における特殊教育の体制に関し て研修した内容を伝達する。 ・班別討議の時間を設定し,日本の特別支援教育の現状と比較する中で,インクルーシ ブ教育システムの構築に向けての課題について考える機会とする。 3 対象 県,市町村教育委員会担当者,小,中,高等学校長,特別支援学校長 4 日程・技法及び内容 (1) 時間 1時間 30 分 (2) 技法 講義(パワーポイントによるプレゼンテーション)【講義資料参照】及び班 討議 (3) 内容 ① 韓国の特殊教育の概要について 特殊教育の制度的な変遷,統合教育,個別化教育,進路及び職業教育,教育課程 と教科用図書,教員の研修,社会的企業等について説明。 ② 研修報告 韓国特殊教育院,地方の特殊教育センターの役割や,教育現場との連携等につい て紹介しながら,インクルーシブ教育の在り方等について日本の特別支援教育との比 較を交えながら報告する。 ③ 今後の展望等についての討議 国連障がい者に関する権利条約の批准を視野に入れ,今,日本が取り組むべきイ ンクルーシブ教育システム構築を推進するための方策,また,障がい者の生涯にわた る支援の在り方について意見交換をする。 (4) 期待される効果 日韓の特別支援教育に関する法制度や支援環境について比較することにより,参加 者がそれぞれの部署で今後取り組むべき課題を明確化することができ,インクルーシ ブ教育の推進につながることが期待できる。 - 38 - 【講義資料】 (プレゼンテーション資料の抜粋) - 39 - - 40 - - 41 - (研修成果の活用例 その2) (団名)I-2 (テーマ)特別支援教育 (訪問国)韓国 1 研修名 海外派遣研修から見えた本県の障害のある人の就労支援の今後について 2 目的 海外研修をとおして得た情報の還元及び,本県の就労支援の在り方につ いての投げかけとする 3 対象 特別支援学校進路担当,特別支援教育課,県雇用促進課 4 日程・技法及び内容 (1) 時間 1時間 (2) 技法 講義形式【講義資料参照】及び協議 (3) 内容 ① 研究課題 ア 社会的企業とは (ア)社会的企業の定義 (イ)社会的企業の種類 イ 韓国の社会的企業 (ア)社会的企業の取り組み (イ)社会的企業の職種と社会的企業の構成員 ウ 韓国の障害者雇用について エ 社会的企業のメリット オ 研修報告 (ア)社会的企業研究院 (イ)ローデム福祉センター (ウ)江南職業リハビリテーションセンター (エ)職業教育を重視した特別支援学校 ②研究協議 本県の今後の展望に向けた提案,検討,協議 (4) 期待される効果 韓国の障がい者の就労支援を紹介することで,大幅な雇用の増加が見込めない本 県の実情の打開の参考となればと考えた。 現行制度にない韓国の取り組みは,新たな視点や枠組みにとらわれない自由な発 想を生み出し,障がい者の雇用への契機となる可能性がある。 また,その根源的な考え方は,福祉ではなく,利益を生み出す点にある。現在あ る福祉施策とミックスしながら「自己実現としての進路保障」をよりすすめる観点 から,できうる範囲でその仕組みを取り入れていくことが有用であると考える。今 後の特別支援学校卒業後の就労への取り組みの一助となるよう期待したい。 - 42 - 【講義資料】 本県における持続可能な障がい者雇用とは ~韓国の社会的企業にみた障がい者雇用のあり方についての報告から~ 1 研修概要 (1)研究課題 「本県における持続可能な障がい者雇用とは ~韓国の社会的企業にみた障がい者雇用のあり方についての報告から~」 ① なぜ,社会的企業を取り上げたのか 全国的に見て特別支援学校の卒業生の就労については厳しい状況にある。本県 でも例に漏れず,県下特別支援学校の進路担当者は毎年頭を痛め,進路先は本 人・家族・そして学校として十分に満足ゆく結果を出せているとは言い難い。そ の原因は,長引く不況による雇用減であり,また国及び県の財政悪化が挙げられ る。障がい者支援のための補助金の支出もままならず,福祉施策においても十分 な保障があるとは言い難い。さらには今後の福祉分野においても現行施策の維 持・継続は困難が予想される。そんな中,特別支援学校に通う児童生徒数は増え 続け,高等部卒業生の就職難の状況は悪化するばかりである。今までのように好 況を当て込んでの右肩上がりの福祉施策を転換するパラダイムシフトを起こす べき時期にきているといえる。 今回の韓国で見た社会的企業の存在は今後の障がい者雇用を考える上で大いに 参考になると考える。そもそも,社会的企業とは 1997 年の韓国の IMF 危機が発 端であり,国の財政状況は現在の我が国日本とも重なる状況にある。当時韓国の 財政状況は逼迫し,大幅な政策転換を迫られた。失業者が大量に発生し,その解 決の為に社会的企業が立ち上げられた。韓国の社会的企業の構成メンバーは社会 的弱者と呼ばれる階層の人々で,障がい者雇用においても「福祉から納税者に」 というかけ声のもと,社会的企業への必然性が高まっていった。 韓国の社会的企業の発生とその持続可能性に関してひとつの大きな要因がある と考える。それは「社会的企業育成法」という法律である。これは社会的企業の 成立には国・行政のバックアップが必要ということを表しているものと考える。 日本でも社会的事業所として,社会的企業のような理念を持つ障がい者事業所 - 43 - がある。(※例えば箕面市は,「社会的雇用制度の創造により,一人の障がい者が 非就労から就労へシフトすることで,最大年間約 90 万円の社会的コストを削減 できるとしている。」と報告している。) そこで,本報告書では,韓国における社会的企業を取り巻く環境や現状から本 県の障がい者の雇用促進のヒントを見出し,特別支援学校と行政が共に共通理 解・認識の上に障がい者の雇用に関する課題の解決の一助になればと考え社会的 企業の調査・研究の結果を取り上げた。 ア 社会的企業とは 一言で言えば「社会の問題を企業で解決する理念の一つ」といえる。産業革命 期にイングランドとスコットランドで生活必需品を買うための共同組合組織が 始まりとされる。その後小さな政府化がすすめられる中で,諸問題の解決を全て 政府が行う代わりに,選択肢の一つとして社会的企業が誕生した。 (ア)社会的企業の定義 社会的企業の定義とは「社 会的価値の創造」「経済的な 価値を創造」の2点を満たす ものであるとされる。図1は 社会的企業の位置づけと社 会的企業の種類である。 (イ)社会的企業の種類(図2) (図1) Aの領域は,行政の一部門 の民営化や公務員の企業 によるもの,Bはボランテ ィア組織が収益を上げる もの,Cは企業が社会的課 題の解決を収益事業とし て行うものを指している。 さらに,いずれにも属さな いものがあるとしている。 (図2)英国における社会的企業の概念図 - 44 - イ 韓国の社会的企業 韓国の社会的企業は以下のように規定されている。 ・脆弱階層に社会サービス,または職場を提供し,地域社会に貢献することに よって,地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的を追求しながら,財貨 及びサービスの生産・販売や営業活動をする企業として認定を受けるもの (表1) ・社会的目的を追求する企業 ・営業活動遂行企業 ・認定される要件を備えている。 成功条件は ・政府の後押し ・社会の成熟 ・社会的企業の努力 の3点とされている。(表1に役割をまとめた) (ア)社会的企業の取り組み 主に次の2点が挙げられる。 ・1997 年財政危機に陥り,障がい者など脆弱階層の失業が著しく増加した。こ の問題を乗り越える方策として保健福祉家族部の「自活支援事業」と雇用労 働部の「社会的職場事業」が実行され,2000 年以後の産業構造の変化による 福祉などの社会サービスの需要増加と雇用創出の観点から,社会的企業が導 入され,全勤労者中,脆弱階層を 50%以上雇用し,サービスの 50%以上を脆 弱階層に提供すると規定されている。 ・2007 年 7 月「社会的企業育成法」対象:脆弱階層(低所得者,高齢者,障碍 者:重度障碍者を含む,など) (イ)社会的企業の職種,社会的企業の構成員は以下の表2,3の通り。 ウ (表2) 障がい者の雇用について 一般企業や社会的企業で働くの は主に知的障がい・精神障がいのあ る人で,重度心身障害者は保護作業 所で働いたり保護施設へ通ったり している。 - 45 - (表3) エ 社会的企業のメリット ・韓国の社会的企業は認証制を導入しており,認証を受けることで人材の補助が 得られたり,法律で社会的企業の商品を優先したりして購入を促すよう定めら れている。 ・社会的企業をバックアップする一般企業にとっては企業のイメージアップにつ ながったり,その結果売り上げが増加したりしている。 ・国にとっては,本来の福祉としての支出が減ったり,抑えられたりする。これ らがよい循環となり社会的企業や障がい者に対する意識が変化し,障がい者が ますます社会で働きやすくなるという効果にもなっている。 オ 研修報告 今回の研修では「社会的企業振興院」,社会的企業である「ローデム職業リハ ビリテーションセンター」 , 「江南職業リハビリテーションセンター」,職業教育 を重視した特別支援学校を訪問した。 (図3) (2)研究協議 以上を見て感じたことが以下の6点である。 ・ 障がい者雇用についての可能性を開いた。 ・ 企業が率先して社会的企業等障害者雇用を進めることで,倫理的な投資(消費 者)が増えた。 ・ 社会的企業をバックアップすることは,スポーツ支援よりも有用で,強力な社 会的効果があるのではないか。 ・ 社会的階層の低い人たちに光を当てた。 ・ 社会の認識や雰囲気をつくることで,差別や偏見の解消が一気に進む可能性が ある。 ・ そのために法律をはじめ,社会的にバックアップする体制が不可欠である。 先の「社会的企業の成功条件」にあるように,国などの行政のバックアップは欠 かせない。(1)でも取り上げたように,それが社会的企業育成法である。法律に よる後ろ盾は大きく,企業がよりどころとして社会的企業を支援し,それが国民の 意識改革の大きな力となっていると考えられる。 - 46 - 特別支援学校高等部や専攻科において職業教育が行われている。高等学校の特殊学級在籍生 徒が移行教育訓練センターとして,活用できる。実際の企業を模してタイムカードを作ったり、公立 学校において企業の下請けを誘致したりと、実践的な教育が行われている。このように官民挙げて の取り組みが日常的に行われている。(ペットショップや園芸店からの借り受けだけではなく,委託 育成を行い,「賃金」が支払われる) (図3) 訪問先の様子 - 47 - (3)今後の展望に向けた提案,検討,協議 (本県がさらに住みよい県になり,モデルケースとして全国に発信するための5つ の提案) ① 「障がい者」とひとくくりにせずに,積極的に働ける人材の発掘をする。 ※韓国は「障がい者を納税者にする」。ことに積極的であった。日本における「障がい者 =福祉」という一般的な考えを改める必要性を広く訴える必要があるのではないか。 ② 社会の「障がい者雇用」への雰囲気作りをすすめるために,行政を含めた率先し た「障がい者雇用」とその啓発を図る。 ※韓国でも社会的企業を取り巻く環境としての雰囲気作りは,非常に重要ととらえていた。 すでに本県では様々な形で「障がい者」を雇用しているが,行政における「障がい者雇 用」が,雇用者側の実体験として啓発を行うことは有用であると考える。 ③ 特別支援学校高等部・専攻科における,企業の下請けの誘致やコラボレーション の一層の促進を図る。 ※県内においては調理科のある高校がお弁当などの商品開発に企業とコラボレートして いる。韓国では大手企業の下請けを公立学校で受けていた。このような仕組みを特別支 援学校の職業教育に取り入ることにより,「障がい者雇用」がより進むと考える。 ④ 雇用促進と福祉のハイブリッドを積極的に進める斬新な施策を展開する。 ※韓国では,福祉分野での生活支援より資本主義的考えが先行したという。日本において は,働ける人はどんどん働いて,支援の必要な人には手をさしのべる,そんなベストミ ックスができる社会の仕組みができればと考える。 ⑤ 支援の対象は「障がい者」だけでなく,高齢者など社会的弱者も含める。 ※韓国の社会的企業は「脆弱階層」とよばれる人たちを対象としている。 「障がい」者に 関わらず支援ニーズの高い高齢者なども巻き込んだ施策であると考える。 【参考・引用文献】 (1) 「大学の機能を活用した障害のある人々の就労支援・継続的雇用に向けた研究 ~キャリア教育, 職業実習そして継続雇用への一貫した取り組みに向けて~,広島大学学部・附属学校共同研究機構 研究紀要<第 39 号 2011.3>pp.33- 38」. 落合俊郎その他 (2) 「 『韓国におけるソーシャル・エンタープライズの現状と最近の発展』, (財)日本障害者リハビリ テーション協会 日英高齢者・障害者ケア開発協力機構,国際セミナー報告書,ヨーロッパとアジ アのソーシャル・ファームの動向と取り組み ソーシャル インクルージョンを目指して,67-68」. 鄭成晃(2008) (3) 「ソーシャル・エンタープライズ 社会起業の台頭,中央経済社」.谷本寛治(2006) (4) 「 『社会的雇用』による障がい者の自立支援」 .箕面市(2010) - 48 - (研修成果の活用例 その3) (団名)I-2 1 研修名 2 目的 (テーマ)特別支援教育 (訪問国)韓国 韓国の特殊教育の現状 特殊教育全般と特殊学校や一般学校(特殊学級や統合学級)の現状を知り,各 校における児童生徒一人一人に対する指導方法や支援体制の在り方を考える。 3 対象 校長,教頭及び教諭 4 日程・技法及び内容 (1)時間 1時間 (2)技法 講義形式(パワーポイントによるプレゼンテーション)【講義資料参照】 及び意見交換 (3)内容 ① 韓国について ② 韓国の特殊教育の概要について 特殊教育の制度的な変遷,統合教育,個別化教育,進路及び職業教育,教育課程 と教科用図書,教員の研修,社会的企業,特殊教育支援センター等について知る。 ③研修報告 小学校,中学校,特殊学校における児童生徒への具体的な指導や支援,教室環境, 教材・教具,補助器具,教員への研修,施設設備,関係機関との連携等の特殊教育 の実際について,日本の特別支援教育との比較をしながら紹介する。 ④今後の展望等についての意見交換 ・韓国と日本の教育課程や教育環境等を比較し,日本の特別支援教育の発展のた めに取り入れられること,実践可能な内容について意見交換をする。 ・将来を見据えた進路・職業教育の在り方について意見交換をする。 (4)期待される効果 ・韓国の特殊教育の実情と日本の現状と比較し,よりよい教育内容について参加 者それぞれの立場から意見を交換することによって,今後のインクルーシブ教 育システム構築に対する理解促進を図ることができると考える。 - 49 - 【講義資料】 (プレゼンテーション資料の抜粋) 2. 特殊教育 ① 特殊教育対象者の教育環境 特殊教育の対象者は,3歳~高等学校課程卒業が義務教育 (3歳未満及び高等学校課程後の専攻科課程《2年間》は無償教育) 特殊教育の対象者に選定されると, ①一般の学校の統合学級,②一般の学校の特殊学級, ③特殊学校のいずれかに就学する。 ※ 対象者の7割が①、②に在籍している。 ※ 教育庁(日本における教育委員会)の審査を受け,必要となれ ば補助員 や公益勤務要員等が置かれ,教育活動を補助して いる。 特殊教育補助員とは,本市における特別支援教育補助員や,教育活動支援員にあたる。 定期的に教育庁の研修を受けなければならない。公益勤務要員とは,兵役の代替として 行政に関わる仕事を行う人で,身分は軍人。両者ともに教員免許がいらない分,単独で の指導はできない。特殊教師の補助を行う。 教科用図書 身体測定について (2種類) 服の着脱について ふく 教科用図書は,発達段階(5 段階)に応じてある。服の着脱や,食事の仕方,学校生 活での事柄など多岐に渡り,子どもたちが身辺自立できるような教材になっている。切 り取りができたり,シールもついていたりしている。また,ネット配信やDVDの開発 も進み,指導しやすい環境を国が義務として進めているようである。 - 50 - 学校がペットショップから委託され,熱帯魚を育てている。子どもたち一人一人の責任 で育て,一定期間育てたものをペットショップに返す。トレーニングルームやカラオケル ームなど余暇活動ができる施設もある。また,口腔保健室や美容室があり,週1回程度ボ ランティアで歯科医の医療的ケアや美容師が来て,子どもたちに身だしなみを教えている。 統合クラスの生徒に対しては,問題行動があった場合補助員や統合クラスの担任が対応 をする。 - 51 - Ⅸ 新たな可能性をもとめて I-2団 シニアアドバイザー 落合 俊郎 1.はじめに 日本は,2007 年9月 28 日,国連において国連障がい者に関する権利条約に署名した。 その後,内閣府に「障がい者制度改革推進会議」が設置され,各省庁が関係する国内法の 設置に努力してきた。これまで,主要国の中で条約を批准していない国は,アメリカ合衆 国,ロシアそれに日本が挙げられた。ご承知の通り,アメリカには国連障がい者に関する 権利条約よりも強い国内法があるので,議論の対象から外れると言ってよいだろう。昨年 9月に,ロシアが国連障がい者に関する権利条約を批准したので,日本が一人,取り残さ れたようなかたちになっていた。日本は明文法ではなく慣習法的な「合意」で障がい者の 権利を保障しているという論点もある。しかし,世の中が「善人」のみであれば,慣習法 でも社会はうまく動くが,社会・経済的な苦境に立たされた場合,一人ひとりがそれを守 ることは大変困難になる。 社会経済的な動きと特別支援教育の変化を比較すると次のことが言える。世界の障がい 児教育の流れに大きな影響を与えたウォーノック報告についてみると,ウォーノック委員 会が動き出したのが保守党のマーガレット・サッチャーが教育科学大臣の時であり,諮問 が始まると政権が労働党に移行し,ウォーノック報告が諮問される過程で 1976 年財政破た んを起こしIMFの管轄下に入るという歴史を歩んだ。そして,ウォーノック報告は 1978 年5月に英国議会を通過した。1979 年4月に再び保守党政権に移行し,マーガレット・サ ッチャーが首相になった。ウォーノック報告はその作成に4年かかった。日本は国連障が い者に関する権利条約の批准に 5 年かけ,同じように諮問中に政権の交代を見た。 これからも社会,教育,特別支援教育に大きな変革が求められる時代が続くだろう。イ ンクルーシブ教育システム構築に関しても,発達障がいのある子どもの課題の解決を中心 とする施策以外に,社会・経済的な問題で学習や行動に困難が生じている子どもの課題解 決を含めないと,日本が求める共生社会(ソーシャル インクルージョン)の構築が難し いのではないか。 2.なぜ韓国を訪問したのか。 私は,平成 24 年度教育課題研修 指導者海外研修プログラム:特別支援教育の充実I- 2団の対象として,韓国への海外派遣を提案し同行した。それは以下の理由からである。 - 52 - (1)距離的に近く,文化背景が類似していること ご存知のように韓国は隣国であり,行き来に非常に容易であることがあげられる。ち なみに広島から東京に行くよりも,ソウルのほうが飛行機で 10 分短い時間でいくことが できる。言語的にも,日本語と韓国語という違いがあるが,文法構造はほぼ同じで,基 本は同じ漢字を韓国読みハングル表記,日本語読み漢字仮名混じり表記していること, 文化的にも非常に類似していること。教育については,日本と同様,儒教的な背景が強 く,学校教育における規律や規則のなかの類似点あるいはそれよりも強いものを求める 傾向があること。これまで,海外との比較というと欧米との比較が多かったのだが,同 じアジアのそれも隣国の韓国との比較をすることによって,相互の課題がより明確にな るのではないかと思ったからである。 (2)国連障がい者に関する権利条約の批准に対する懸念の払拭 国連障がい者に関する権利条約の批准に対する議論が始まったころ,インクルーシブ 教育システムが構築されれば,特別支援学校や特別支援学級がなくなり,全ての障がい のある児童生徒が通常の学校の通常の学級のなかに就学するという風評がでた。しかし, インクルーシブ教育の歴史が長い欧米でも,特別支援学校や特別支援学級がなくなった 国はない。日本では現在,中央教育審議会答申・報告等で,インクルーシブ教育システ ムと特別支援学校や特別支援学級との連携をどのように構築していくか模索している段 階である。しかし,日本の現場では経験したことがないので不安があることは否めない。 また,障がい者の差別の禁止に関する法律や,当事者や保護者の権利を保障し,合理的 配慮を実施しながら授業を行うということについてのイメージができにくいのではない だろうか。 韓国では 1994 年の改訂特殊教育振興法によって,インテグレーション,保護者の権利 の保障,再審請求権,差別の禁止と差別に対する罰則規定等が設定され,2008 年からは インクルーシブ教育システムが実行されるなど,国連障がい者に関する権利条約の議定 書をそのまま実施されたような法律が整備された。 インクルーシブ教育システムの実施には合理的配慮を実行しなければならないが,合 理的配慮の前に学級定数や教材・教具の整備状況など合理的配慮の基礎的環境を整備し なければ非常に困難である。韓国の基礎的環境は日本よりも低いともいえる。学級定員 や教員一人当たりの担当する児童生徒の数が日本より多い数少ない OECD の中の国のひ とつである。このような状況にある国の中でインクルーシブ教育システムを実施した場 - 53 - 合,日本よりも教員へのプレシャーは高くないのだろうか。さらに,日本よりも激しい といわれる「受験戦争」の中でインクルーシブ教育システムは可能なのだろうか。国連 障がい者に関する権利条約批准後の日本の状況を予測するには格好のモデルといえるの ではないだろうか。 (3)高等学校における特別支援教育のあり方 日本では,平成 25 年度から新しい高等学校学習指導要領が完全実施される。新しい学 習指導要領は,これまで以上に特別支援教育と接近しており,学習に遅れのある生徒に 対しては義務教育年限の内容で授業を組めることや,学校設定科目・教科によって生徒 のニーズにあった教育課程を組めるようになった。一方,韓国では高等学校に日本でい う特別支援学級が設置され,障害のある生徒に特別支援教育が行われている。どちらが よいか今後の動向を見る必要がある。韓国では特別支援教育が幼稚園から高等学校まで 義務化されている。日本でも高等学校の授業料が無料になっているという点で類似して いるが,義務教育化されることは,さまざまな責任が政府に付加されることでもある。 例えば教科書にしても,小学校,中学校,高等学校に特別支援学級や統合学級が設置さ れ,交流又は共同学習を行ったり,インクルーシブ教育システムを行う場面での教科書 も整備したほうが便利である。理論的に言えば,正規の授業で使用する教科書に準ずる 「学習に遅れのある児童生徒」のための教科書も必要になる。日本の星本は知的障害の ある児童生徒のための教科書だが,障がい特性に合わせるだけでなく通常の学級の教科 書に準じた内容の教科書が必要となる。インクルーシブ教育システムの場面で,通常学 級の教員が多くの児童生徒の教育を行いながら,合理的配慮のために,毎日,教材・教 具を作成することは想定できない。韓国では,特別支援学校,特別支援学級で使用され る教科用図書は9科目の教科書 25 冊,指導書9冊,補助資料2種類が作成されている。 これらの図書の作成過程や方法は,インクルーシブ教育システムの構築に向けた合理的 配慮を考えるとき日本においても重要であろう。 (4)財政問題と障害者施策 現在,多くの国々が財政問題で苦しんでいる。韓国は 1997~98 年に財政破たんを起こ し,いわゆる「IMF 危機」を経験した。IMF から資金を借り,その指導のもと行財政組織 のリストラ,労働効率の改善等,さまざまな「改革」が行われた。その結果,多くの会 社が倒産し失業率が高まった時期があった。日本からみると,日本企業がかつては優位 だった産業領域に,韓国企業が入り込む図式と捉えがちである。しかし,韓国側から見 - 54 - れば「雇用なき経済成長」といわれるように,失業問題や社会的格差の増大による社会 不安が指摘されるようになった。日本でもこのような問題が出てこないだろうか。世界 で最も高齢化率が高く,高齢化を加速しながら人口減少の位相に入り,社会的格差も主 要 OECD 諸国の中では第2位と高く,韓国と比較すると高齢化率も社会的格差も日本のほ うが高い状況だからである。このような中で,社会福祉の新しいあり方の探究や会社の 社会的責任をこれまで以上に高くすべき時期にきていると言えるだろう。例えば,利潤 を追求しない社会福祉施設と利潤を追求する会社の折衷的な存在である社会的企業を日 本でも考える必要があるのではないだろうか。日本では国家公務員から始まり,地方公 務員の給与が大幅に削減されるほどの財政状況になっている。このような中で,障がい のある人もない人も共に生きる「共生社会」の構築を目指すことは,社会レベルでは, 社会福祉と市場主義の共生と言ってもよいのではないだろうか。このことは社会福祉対 象者も社会に貢献する「役割相乗型社会」を作っていかなければ大変な財政状態にきて いると言っても過言ではない。欧米で生まれた社会的企業は,香港,シンガポール,韓 国でも法律化され,障がい者だけでなく,さまざまな「社会的弱者」の生活保障と社会 参加を可能にしている。日本でも NGO や NPO の社会的貢献が大きくなっているが,社会 的企業の設立を考慮すべき時代にさしかかったといえるだろう。韓国における社会的企 業の現状と課題を見ることは,障害のある生徒の就業や社会参加のあり方について参考 になるのではないかと考えた。 (5)教員がおかれている状況について 現在,日本の教員がおかれている状況は厳しいものがあるといわれている。特別支援 教育がこれまで以上に進展し,特別支援教育制度に在籍する児童生徒の割合がこの十年 間に 1.5 倍に増えた。特別支援教育の分野では,教員一人当たりが担当する児童生徒数 も徐々に増えてきている。一方,通常の教育の分野では校内暴力の増加や要保護・準保 護が必要な児童生徒の増加,通常の学級に在籍する発達障がいと類似した児童生徒の増 加など,さまざまな課題が生じている。このような状況の中で,教員が病休を取る理由 として 60%以上が精神疾患によるという結果がでている。日本でも国連障がい者に関す る権利条約の批准に向けて新しい施策等さまざまなことが準備されているが,韓国の状 況を見ると国連障がい者に関する権利条約を批准した後の法制度は,ほとんど制度化さ れているといってもよいだろう。さらに, 「受験戦争」といわれる教育状況,教員だけで なく教育機関へのアカウンタビリティー(会計責任)の強化,儒教的な文化背景による教 - 55 - 職への強い期待,PISA による成績でも日本と同等,あるいはそれ以上の成績を出してい る状況だが,合理的配慮に必要な基礎的環境条件の厳しさを見ると,日本の教員よりも かなりかなり厳しい状況で働いているのではないかと予想できる。このような中で韓国 の教員はどのように働いているのだろうか。日本でも早晩,国連障がい者に関する権利 条約が批准されるだろう。そのとき日本で何が起きるのか,懸念されるようなことが起 きるのかを知る試金石として韓国の存在があるのではないかと考えた。以上の理由から 韓国を研修対象として選んだ。 今回の韓国訪問は領土問題等で日韓関係がギクシャクしている中,出発前に先生方に は大きな懸念があったのは事実である。しかし,今回訪問してみると,受け入れ機関か ら大歓迎を受けた。そして,韓国の教員の皆さんが元気で働いている姿を見て安堵さえ 覚えた。特別支援教育の分野を含めて,日韓の交流が本当の意味で役に立つ日が来てい ることを実感した次第である。 本報告書が日本と韓国の特別支援教育,インクルーシブ教育システムの発展と,両国 の友好関係の強化の一助になれば幸いである。 - 56 - Ⅷ 団員名簿 ※個人情報保護の観点から、掲載を差し控えます。 受講番号 都道府県等 氏 名 所 属 団長 大阪市 島田 保彦 大阪市教育委員会 特別支援教育担当 副団長 岐阜県 折戸 敏仁 岐阜県教育委員会 学校支援課 シニアアドバイザー 落合 俊郎 広島大学 26 茨城県 中村 隆史 茨城県立盲学校 27 茨城県 宮山 敬子 茨城県教育庁 特別支援教育課 58 山梨県 小林 達也 富士川町立増穂中学校 69 山梨県 秋山 保美 山梨県立わかば支援学校 70 山梨県 雨宮 清貴 山梨県立ろう学校 96 三重県 萱原 崇 104 滋賀県 川崎 慶子 長浜市立びわ中学校 126 滋賀県 平岡 宮子 滋賀県立野洲養護学校 127 滋賀県 林﨑 博子 滋賀県立甲良養護学校 165 愛媛県 近藤 美智男 新居浜市立中萩小学校 177 高知県 宮地 暁男 高知県立中村養護学校 238 大阪市 山本 育輝 大阪市立川辺小学校 三重県立特別支援学校北勢きらら学園 - 57 - Ⅸ 研修日程概要 日次 月日(曜日) 滞在地等 1 10月29日(月) 大阪発 釜山着 2 3 4 調査施設及び調査内容等 関西国際空港発 → 移動(航空機:約2時間15分) *調査研究内容の確認、公式訪問スケジュールの確認 釜山 午前:釜山特殊教育支援センター訪問 *支援センターの運営と現状について概要説明 *教員の研修について説明及び意見交換 午後:釜山東来中学校内特殊学級訪問 *中学校における統合教育の実際の様子見学 *特殊学級における授業参観 10月31日(水) 釜山 午前:社会的企業研究院訪問 *社会的企業の国際動向と韓国の現状について概要説明 *社会的企業研究所の取り組みについて説明 午後:ローデム職業リハビリセンター *学校と社会的企業の関係について概要説明 *実際の作業の様子及び施設見学 11月1日(木) 釜山 牙山市 午前:天安牙山へ移動 午後:韓国国立特殊教育院訪問 *特殊研究院の取り組みについて概要説明 *特殊教育振興法改正に伴っての特別支援教育の変化について講義 午前:韓国教員大学校 *チョン・ドンヨン教授より教育課程と教科用図書についての講義 *電子著作物の紹介 午後:鳳徳初等学校 *統合学級における学習支援の参観 *特殊学級担任より、特殊教育についての説明 10月30日(火) 5 11月2日(金) 牙山市 6 11月3日(土) ソウル 午前:研修成果のまとめ、資料の整理 午後:教育課題に関する調査研究 7 11月4日(日) ソウル 終日:教育課題に関する調査研究 8 11月5日(月) ソウル 午前:ユルトン生態学習院訪問 *京畿道城南市特殊教育センター概要説明 *城南市の教育現状と栗洞生態学習院の概要説明 午後:私立ミラル学校(自閉症領域) *児童生徒への個別化教育計画及び指導の支援方法 *施設設備の見学 午前:公立城南恵恩学校訪問 *公立の特殊学校の取り組みについて概要説明 *施設見学 午後:江南職業リハビリテーションセンター *センターの取り組みについて概要説明 *利用者の活動の様子及び施設見学 9 11月6日(火) ソウル 10 11月7日(水) ソウル 大阪着 午前:研修資料等の収集・整理 午後:移動(航空機:約2時間) - 58 - 帰国 X あとがき I-2団 副団長 折戸 敏仁 平成 24 年8月に全国から集まった 15 名が初めて顔を合わせた事前研修会から始まった I-2団の海外派遣プログラムが,平成 25 年2月6日の事後研修会をもってすべて終了し ました。 私たちの研修を支えていただいたすべての方々のおかげで、団員一人一人が各自の役割 と責任を果たし,成果をあげることができたすばらしい研修となりました。この場をお借 りして,心からお礼を申し上げます。 さて,平成18年12月に国連総会で障がい害に関する権利条約が採択されて以降,世界的 に教育制度はよりインクルーシブな方向に移行しつつあります。韓国においてはこのイン クルーシブ教育システムを法律に位置づけ,国として取り組んでいるということで,その 特殊教育の現状や成果・課題を調査・分析することが今回の研修のテーマでした。日本に とって「近くて遠い国」ともいわれる韓国の地で,実際に学校でインクルーシブ教育シス テムが行われている状況を参観できたこと,教育行政についてその成果と課題を聴取でき たこと,また,法律に位置づけられた「社会的企業」の存在や意義,活動を確認できたこ となどは大変貴重な経験であり,大きな収穫でした。また一方で,日韓それぞれの国で教 育制度に違いはあるものの,児童生徒の指導に対する教員の情熱に変わりはないというこ とも実感しました。 少子化,超高齢社会,グローバル化など社会情勢の大きな変化の中で教育も大きな変革 を求められています。今回,日本を離れての研修をとおして,私は,広い視野で物事を眺 め,互いの国の違いを認め,よさを認め合って情報を共有していくことの大切さを再確認 しました。また,今後、これまで以上にグローバルに教育を考えていく必要性を感じてい ます。その点においても今回の研修は示唆に富んだ,大変意義のあるものであったと感じ ています。 今回の海外派遣において,各団員はそれぞれの立場で自国での実践に生かせるよう貪欲 に研修に取り組み,課題を解決してゆきました。その過程をとおして,団としての「絆」 が強固なものになったと感じています。各団員がこの「絆」をこれからも大切にし,研修 をとおして学んできたことを自らの教育活動で実践することにより,それぞれの県市の, ひいては日本の特別支援教育がより一層充実発展していくことを祈念しています。 - 59 - 資 資料1 料 編 韓国の個別化教育計画と日本の個別の指導計画の比較---------------1 提供:平成 24 年度教育課題顕幽指導者海外派遣プログラム 事前研修会資料広島大学 資料2 落合俊郎教授(崔,2010) 一学級あたりの児童生徒数国際比較---------------------------------------2 出典:平成 22 年度文部科学省科学白書 資料3 社会的企業育成法---------------------------------------------------------------3 提供:雇用労働部(社会的企業課),02-2110-7171 資料4 <プレゼンテーション資料からの抜粋> 国立特殊教育院紹介(和訳)-------------------------------------------------12 提供:国立特殊教育院 資料5 <プレゼンテーション資料からの抜粋> 地域社会と共に生きるミラルスクール(和訳)-------------------------17 提供:私立ミラル学校 資料6 <パンフレット> 京畿道特殊教育支援センター生態学院(和訳)--------------------------21 提供:京畿道特殊教育支援センター 資料7 <招待論文> 韓国特殊教育の概要------------------------------------------------------------25 提供:広島大学教育学研究科付属特別支援教育実践センター 韓 国 の 個 別 化 教 育 計 画 と 日 本 の 個 別 の 指 導 計 画 の 比 較 ( 崔 , 2010) 項 目 韓国 日本 改訂 特殊教育振興 法 ( 1994) 障碍者などに対する 特 殊 教 育 法 ( 2008) 学習指導要領 ( 1999) 対 象 全ての特殊教育対象 者 全ての特殊教育対象 者 重 複 障 害,自 立 活 動時 内 容 項 目 プロフィール,現在 の学習水準,長・短 期教育目標,教育開 始と終了時期,教授 の方法,評価計画, その他委員会が定め る事項 プ ロ フ ィ ー ル ,現 在 の 学 習 水 準 , 教 育 目 標 , 実 態 把 握,指 導 目 教育方法,評価計画, 標, 関連サービスの内容 指導内容 と方法など 実態把握,指導目 標,指導内容,評 価 作 成 者 5 人 以 上 10 人 以 下 (委員長「学校長」 含む)で構成,委員 会の構成及び運営な どに関する必要な事 項は当該学校の学則 として定める 保護者,特殊教育教 員 ,一 般 教 育 教 員 ,進 路・就職教育担当教 員 ,関 連 サ ー ビ ス 担 当 スタッフなど 教 員 の 協 力 ,専 門 の医師との連携 (解説) 教 員 間 の 協 力 ,必 要に応じて外部 の専門家や保護 者等と連携を図 っていく(解説) 結 果 報 告 説 明 規定なし 学期ごとに学業到達 度 評 価 を 実 施 し ,結 果 を特殊教育対象者ま た は ,対 象 者 の 保 護 者 に報告 規定なし 学習状況や結果 の評価について 説明(解説) 作 成 時 期 毎学年が始まる前 (学期中配置された 場合は,その日より 30 日 以 内 ) 教育措置決定後作成 (毎学期が始まった 日 よ り 30 日 以 内 ) 転 校時送付 規定なし 規定なし 意見陳述の機会を与 える 個別化教育支援チー ムの一員 保護者との連携 に十分配慮する 必要がある(解 説) 保護者から話を 聞く(解説) 障碍を理由に入学拒 否した場合,学校長 に罰金 障碍を理由に入学拒 否 し た 場 合 ,学 校 長 に 罰 金 。保 護 者 を 個 別 化 教育支援チームから 排除した場合に罰金 を課す なし なし 保 護 者 参 加 罰 則 事 項 学習指導要領 ( 2009) 全ての障害児 ※韓国語で「障がい」を漢字表記では「障碍」となっているので,表内の韓国の資料を障 碍と表記した。 -1- -2- 社会的企業育成法 [施行2011.1.1] [法律第10220号、2010.3.31,他法改正] 雇用労働部(社会的企業課),02-2110-7171 第1条(目的)この法は社会的企業の設立・運営を支援して社会的企業を育成して私たちの社 会で充分に供給されることができない社会サービスを拡充して新しい働き口を創り出すこと によって社会統合と国民の生活の質向上に尽くすのを目的とする。 [専門改正2010.6.8] 第2条(定義)この法で使う用語の意味は次のようである。 1."社会的企業"というのは脆弱階層に社会サービスまたは、働き口を提供したり地域社会に 貢献することによって地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的を追求しながら財貨及 びサービスの生産・販売など営業活動をする企業として第7条により認証受けた者をいう。 2."脆弱階層"というのは自身に必要な社会サービスを市場価格で購入するところに困難があ ったり労働市場の通常の条件で就職が特に困難な階層をいって、その具体的な基準は大統領 令に定める。 3."社会サービス"というのは教育、保健、社会福祉、環境及び文化分野のサービス、その他 にこれに準ずるサービスとして大統領令に定める分野のサービスをいう。 4."連係企業"というのは特定の社会的企業に対し財政支援、経営諮問など多様な支援をする 企業としてその社会的企業と人的・物的・法的に独立している者をいう。 5."連係地方自治団体"というのは地域住民のための社会サービス拡充及び働き口創出のため に特定の社会的企業を行政的・財政的に支援する地方自治団体をいう。 [専門改正2010.6.8] 第3条(運営主体別役割及び責務)①国家は社会サービス拡充及び働き口創出のために社会的 企業に対する支援対策を樹立して必要な施策を総合的に推進しなければならない。 ②地方自治団体は地域別特性に合う社会的企業支援施策を樹立・施行しなければならない。 ③社会的企業は営業活動を通じて創り出した利益を社会的企業の維持・拡大に再投資するよ うに努力しなければならない。 ④連係企業は社会的企業が創り出す利益を取ることができない。 第4条削除<2010.6.8> -3- 第5条(社会的企業育成基本計画の樹立)①雇用労働部長官は社会的企業を育成して体系的に 支援するために「雇用政策基本法」第10条にともなう雇用政策審議会(以下"雇用政策審議会 "という)の審議を経て社会的企業育成基本計画(以下"基本計画"という)を5年ごとに樹立し なければならない。 ②基本計画には次の各号の事項が含まれなければならない。 1. 社会的企業に対する支援の推進方向 2.社会的企業の活性化のための条件造成に関する事項 3.社会的企業の運営支援に関する事項4.その他に社会的企業の育成及び支援のために大 統領令に定める事項 ③雇用労働部長官は基本計画にともなう年度別施行計画を毎年樹立・施行しなければならな い。 ④基本計画及び年度別施行計画の樹立・施行に必要な事項は大統領令に定める。 [専門改正2010.6.8] 第5条の2(市・道別社会的企業支援計画の樹立など)①特別市長・広域市長・道支社及び特別 自治道支社(以下"市・道支社"という)は管轄区域の社会的企業を育成して体系的に支援する ために大統領令に定めるところにより市・道別社会的企業支援計画(以下"支援計画"という) を樹立して施行しなければならない。 この場合支援計画は基本計画と関連するようにしな ければならない。 ②市・道支社は第1項により支援計画を樹立した時には大統領令に定めるところによりその 計画を雇用労働部長官に提出しなければならない。 ③雇用労働部長官は樹立された支援計画の内容などが優秀な市・道に別途の支援ができる。 [本条新設2010.6.8] 第6条(実態調査)雇用労働部長官は社会的企業の活動実態を5年ごとに調査して、その結果を 雇用政策審議会に通知しなければならない。 [専門改正2010.6.8] 第7条(社会的企業の認証)①社会的企業を運営しようとする者は第8条の認証要件を整えて雇 用労働部長官の認証を受けなければならない。 ②雇用労働部長官は第1項にともなう認証をしようとするなら雇用政策審議会の審議を経な ければならない。 -4- [専門改正2010.6.8] 第8条(社会的企業の認証要件及び認証手続き)①社会的企業で認証受けようとする者は次の 各号の要件を全部整えなければならない。 1.「民法」にともなう法人・組合、「商法」にともなう会社または、非営利民間団体な ど大統領令に定める組織形態を整えること 2.有給勤労者を雇用して財貨とサービスの生産・販売など営業活動をすること 3.脆弱階層に社会サービスまたは、働き口を提供したり地域社会に貢献することによっ て地域住民の生活の質を高めるなど社会的目的の実現を組織の主な目的とすること。 この 場合その具体的な判断基準は大統領令に定める。 4.サービス受恵者、勤労者など利害関係者が参加する意志決定構造を整えること 5.営業活動を通じて得る収入が大統領令に定める基準以上であること 6.第9条にともなう定款や規約などを整えること 7.会計年度別に配分可能な利潤が発生した場合には利潤の3分の2以上を社会的目的のた めに使うこと(「商法」にともなう会社の場合だけ該当する) 8.その他に運営基準に関して大統領令に定める事項を整えること ②雇用労働部長官は社会的企業を認証した場合にはその事実を官報に掲載しなければならな い。 ③社会的企業認証の方法及び手続きに関して必要な事項は雇用労働部令に定めて、社会的企 業認証審査基準は雇用労働部長官が告示する。 [専門改正2010.6.8] 第9条(定款など)①社会的企業で認証受けようとする者は次の各号の事項を書いた 定款や規 約など(以下″定款など"という)を整えなければならない。 1.目的 2.事業内容 3.名称 4.主な事務所の所在地 5.機関及び支配構造の形態と運営方式及び重要事項の意志決定方式 6.収益配分及び再投資に関する事項 7.出資及び融資に関する事項 -5- 8.従事者の構成及び任免に関する事項 9.解散及び清算に関する事項(「商法」にともなう会社の場合には配分可能な残余財産があ れば残余財産の3分の2以上を他の社会的企業または、公益的基金などに寄付するようにする 内容が含まれなければならない) 10.その他に大統領令に定める事項 ②第1項にともなう静観などが変更された場合には変更日から14日以内にその内容を雇用労 働部長官に報告しなければならない。 [専門改正2010.6.8] 第10条(経営支援など)①雇用労働部長官は社会的企業の設立及び運営に必要な経営・技術・ 税務・労務・会計などの分野に対する専門的な諮問及び情報提供など支援ができる。 ②雇用労働部長官は第1項の支援業務を大統領令に定める政府外郭機関や民間団体に委託す ることができる。 [専門改正2010.6.8] 第10条の2(教育訓練支援など)雇用労働部長官は社会的企業の設立・運営に必要な専門担当 者の育成、社会的企業勤労者の能力向上のために教育訓練を実施することができる。 [本条新設2010.6.8] 第11条(施設費などの支援)国家及び地方自治団体は社会的企業の設立または、運営に必要な 敷地購入費・施設費などを支援・融資したり国・公有地を賃貸することができる。 第12条(公共機関の優先購買)①「中小企業振興に関する法律」第2条第8号にともなう公共機 関の長(以下"公共機関の長"という)は社会的企業が生産する財貨やサービスの優先購買を促 進しなければならない。 ②公共機関の長は「中小企業製品購買促進及び販路支援に関する法律」第5条第1項により購 買計画を作成する場合には社会的企業が生産する財貨及びサービスの購買計画を区分して含 ませなければならない。 [専門改正2010.6.8] 第13条(租税減免及び社会保険料の支援)①国家及び地方自治団体は社会的企業に対し「法人 税法」、「租税特例制限法」及び「地方税特例制限法」が決めるところにより国税及び地方 税を減免することができる。 <改正2010.3.31> -6- ②国家は社会的企業に対し「雇用保険及び産業災害補償保険の保険料徴収などに関する法 律」にともなう雇用保険料及び産業災害補償保険料、「国民健康保険法」にともなう保険料 及び「国民年金法」にともなう年金保険料の一部を支援することができる。 第14条(社会サービス提供社会的企業に対する財政支援)①雇用労働部長官は社会サービスを 提供する社会的企業に対し予算の範囲で公開募集及び審査を通じて社会的企業の運営に必要 な人件費、運営経費、諮問諮問費用などの財政的な支援ができる。 ②雇用労働部長官は連係企業または、連係地方自治団体から支援されている社会的企業に第 1項にともなう支援をする時にはその連係企業や連係地方自治団体の財政支援状況を考慮し て事業費を追加で支援することができる。 ③財政支援対象の選定要件及び審査手続きなどに関して必要な事項は雇用労働部令(領)に 定める。 [専門改正2010.6.8] 第15条(連係企業の責任限界)連係企業は社会的企業の勤労者に対し雇用上の責任を負わない 。 第16条(連係企業などに対する租税減免)国家及び地方自治団体は社会的企業に寄付する連係 企業・法人または、個人に対し「法人税法」、「所得税法」、「租税特例制限法」及び「地 方税法」で決めるところにより国税及び地方税を減免することができる。 [専門改正2010.6.8] 第16条の2(社会的企業の日)①国家は社会的企業に対する理解を深めて社会的企業家の活動 を奨励するために毎年7月1日を社会的企業の日にしながら、社会的企業の日から1週間を社 会的企業週間にする。 ②国家と地方自治団体は社会的企業の日の趣旨に適合した行事など事業を実施するように努 力しなければならない。 [専門改正2010.6.8] 第17条(報告など)①社会的企業は事業実績、利害関係者の意志決定参加内容など雇用労働部 令に定める事項を書いた事業報告書を作成して毎会計年度4月末まで雇用労働部長官に提出 しなければならない。 この場合雇用労働部長官は雇用労働部令に定める方法により事業報 告書を公表することができる。 -7- ②雇用労働部長官は社会的企業を地図・監督して、必要だと認める場合には社会的企業及び その構成員に対し業務に必要なみて関係書類の提出を命じることができる。 ③雇用労働部長官は第1項により提出された事業報告書を基礎で社会的企業の運営に対する 評価ができる。 ④雇用労働部長官は第1項から第3項までにともなう見て事項の検討、地図・監督及び評価を した結果必要ならば是正を命令することができる。 [専門改正2010.6.8] 第18条(認証の取り消し)①雇用労働部長官は社会的企業が次の各号のどれ一つに該当するこ とになれば認証を取り消すことができる。 1. 偽りやその他の不正な方法で認証を受けた場合2.第8条の認証要件を整えられなくな った場合 ②雇用労働部長官は第1項により認証を取り消そうとするなら聴聞をしなければならない。 ③認証取り消しの具体的基準及び細部手続きは雇用労働部令に定める。 [専門改正2010.6.8] 第19条(類似名称の使用禁止)社会的企業ではない者は社会的企業または、これと類似の名称 を使ってはならない。 第20条(韓国社会適正な時期アップ振興院の設立など)①雇用労働部長官は社会的企業の育成 及び振興に関する業務を効率的に遂行するために韓国社会適正な時期アップ振興院(以下"振 興院"という)を置く。 ②振興院は法人でする。 ③振興院はその主な事務所の所在地で設立登記をすることで成立する。 ④振興院は次の各号の事業を行う。 1.社会的企業家養成と社会的企業モデル発掘及び事業化支援 2.社会的企業のモニタリング及び評価 3.業種・地域及び全国単位社会的企業ネットワーク構築・運営支援 4.社会的企業ホームページ及び統合情報システム構築・運営 5.その他にこの法または、他の法令などにより委託受けた社会的企業と関連した事業 6.第1号から第5号までの事業に付いた事業 ⑤政府は予算の範囲で振興院の設立・運営に必要な経費を出演することができる。 -8- ⑥振興院に関してこの法に規定したのを除いては「民法」財団法人に関する規定を準用する。 ⑦振興院は国家、地方自治団体、教育・研究機関などの公共機関に業務遂行に必要な資料を 提供するように要請することができる。 ⑧振興院の役職員は「刑法」第129条から第132条までの規定にともなう罰則の適用では公務 員で見る。 ⑨振興院の役職員または、役職員だった寝る職務上知ることになった秘密を漏洩したり他の 用途で使ってはならない。 ⑩雇用労働部長官は振興院を地図・監督して、振興院に対し業務・会計及び財産に関して必 要な事項を報告するようにしたり所属公務員に振興院に出入りして帳簿・書類、その他の物 を検査するようにすることができる。 ⑪振興院の静観、理事会・役員、会計、関係機関との業務協力、その他に振興院の設立・運 営などに必要な事項は大統領令に定める。 ⑫振興院ではない者は韓国社会適正な時期アップ振興院または、これと類似の名称を使用で きない。 [本条新設2010.6.8][従来第20条は第21条に移動<2010.6.8>] 第21条(権限の委任及び委託)①この法にともなう雇用労働部長官の権限は大統領令に定める ところによりその一部を地方自治団体の場または、地方労働官署の場に委任することができ る。 ②雇用労働部長官は次の各号の業務を振興院に委託することができる。 1.第6条にともなう社会的企業活動に関する実態調査 2.第7条第1項にともなう社会的企業認証に関する業務 3.第9条第2項にともなう定款などの変更に関する報告書の受理 4.第10条の2にともなう教育訓練の実施 [専門改正2010.6.8][第20条で移動従来第21条は第23条に移動<2010.6.8>] 第22条(罰則)第20条第9項を違反して職務上知ることになった秘密を漏洩したり他の用途で 使った者は3年以下の懲役または、1千万ウォン以下の罰金に処する。 [本条新設2010.6.8] 第23条(過怠金)①次の各号のどれ一つに該当する者には1千万ウォン以下の過怠金を賦課す る。 -9- 1. 第17条第4項にともなう是正命令を履行しない者 2.第19条を違反して社会的企業または、これと類似の名称を使った者 ②次の各号のどれ一つに該当する者には500万ウォン以下の過怠金を賦課する。 1.第9条第2項にともなう静観などの変更に対する報告義務を履行しない者 2.第17条第1項にともなう事業報告書作成・提出義務を怠ったり偽りやその他の不正な方法 で作成した者 3.第17条第2項にともなう報告をしなかったり偽りで報告した者または、書類を提出しなか ったり偽りで提出した者 4.第20条第12項を違反して韓国 社会的企業振興院または、これと類似の名称を使った者 ③第1項及び第2項にともなう過怠金は大統領令に定めるところにより雇用労働部長官が賦課 ・徴収する。 [専門改正2010.6.8][第21条で移動<2010.6.8>] 付則<法律第8217号、2007.1.3>この法は2007年7月1日から施行する。 付則<法律第8361号、2007.4.11> (中小企業振興及び製品購買促進に関する法律)第1条(施行 である)この法は公布した日から施行する。 ただし、…<省略>… 付則第9条第7項の改正規定は2007年7月1日から…<省略>…施行する。 第2条ないし第8条省略第9条(他の法律の改正)①ないし⑥省略⑦法律第8217号社会的企業育 成法一部を次の通り改正する。 第12条第2項中"「中小企業振興及び製品購買促進に関する法律」第10条第1項"を"「中小企 業振興及び製品購買促進に関する法律」第12条第1項"でする。 ⑧ないし<17>省略第10条省略付則<法律第9685号、2009.5.21> (中小企業製品購買促進及び 販路支援に関する法律)第1条(施行である)この法は公布後6ヶ月が経過した日から施行する 。 第2条から第6条まで省略第7条(他の法律の改正)①から⑩まで省略⑪社会的企業育成法一部 を次の通り改正する。 第12条第1項中"「中小企業振興及び製品購買促進に関する法律」"を"「中小企業振興に関す る法律」"にして、同じ組第2項中"「中小企業振興及び製品購買促進に関する法律」第12条 第1項"を"「中小企業製品購買促進及び販路支援に関する法律」第5条第1項"でする。 ⑫から<37>まで省略第8条省略付則<法律第10220号、2010.3.31> (地方税特例制限法)第1条 (施行である)この法は2011年1月1日から施行する。 - 10 - 第2条及び第3条省略第4条(他の法律の改正)①から⑬まで省略⑭社会的企業育成法一部を次 の通り改正する。 第13条第1項及び第16条中"「地方税法」"を各々"「地方税特例制限法」"でする。 ⑮から<45>まで省略第5条省略 - 11 - 韓国国立特殊教育院紹介プレゼンテーション資料からの抜粋 韓国国立特殊教育院(KNISE) ミッション(任務) 特殊教育の振興、及び、障害者の生活の質向上 韓国国立特殊教育院(KNISE) 高等教育・ 生涯教育 政策立案 現場支援 リサーチ カリキュラ ム ・教科書開 発 職業・キャリ ア向上のた めの教育 人権保護 現職教員 研修 情報支援 組織 & 人事 現在の統計 組織図 専門職員 総務部門 統括長 企画・研究部門 Lカリキュラムチーム 教科書チーム 総括 長 研修部門 人権保護チーム キャリア・職業教育チーム 情報支援部門 1 上級教育研究者 6 教育研究者 19 合計 26 一般職員 等級5 1 等級6 4 等級7 4 等級8 1 等級9 2 合計 12 公務員 高等教育チーム 生涯教育チーム - 12 - 公務員 全職員 44名 6 1. 特殊教育政策と基礎研究 目的 政策策定のための実情調査・特殊教育の基礎研究の仮データを基に、特殊教 育向上のため質の高い計画を策定する 特殊教育 実情調査 特殊教育 基礎研究 政策 研究 特殊教育経時的調査基礎研究+ 4タイプ 教科書活用・教材のための点訳マニュア ルの開発 + 1タイプ 第4次特殊教育振興のための基礎研究5ヵ年計画の策定 2. 特殊教育カリキュラム・教科書開発 目的 特殊教育のカリキュラム・教科書の普及、学習素材・試験ツールの開発、障害を 持つ生徒の学ぶ権利の保障を通じ、教育成果を向上させる カリキュラ ム開発 教科書 開発 教材・学 習素材の 開発 特殊教育の共通カリキュラム・選択カリキュラムの効果的管 理の研究 + 1タイプ 96の特殊教育の基本・共通カリキュラム本を編集する 幼児障害者統合教育のため の教授・学習素材 + 5タイプ - 13 - 3. 学問研究/広報活動 目的 特殊教育に関する最新の情報を提供し、研究報告・特殊教育における最新のト レンドの発表、国際交流協力の機会を与える 特殊教育 ニュースレ ター 特殊教育 研究出版 国内・国際 セミナー の開催 特殊教育の季刊誌「特殊教育ニュースレター」 年に4回発行 特殊教育の公式学術誌「特殊教育研究」 年に2回発行 国内セミナー開催:3月 国際セミナー開催:7月 韓国・日本合同セミナー開催:7月 4. 照準を合わせた研修の実施 目的 特殊教育に関する専門的能力を伸ばし、カスタマイズ、照準を合わせた研修を行うこ とにより、特殊教育の質を向上させる <集団研修:38コース、5,088研修者><遠隔研修:32コース、9,360研修者> 資格 研修 特殊教育(初級)高等資格認定教員コース(3コース) 職務 訓練 特殊教育学校(学級)、統合学級教員コース (19コース) 海外 研修 障害を持つ生徒の家族のための海外研修 (2コース) 特別 研修 特別研修:視察、カスタマイズされた研修、保護者研修 (14コース) 遠隔 研修 教員職務研修、特殊教育支援職員研修(32コース) - 14 - 5. 障害を持つ生徒の人権保護の促進支援 目的 組織的な障害者児童の人権促進、人権保護、人権支援のための全国規模の変革 人権保護 関連研究 素材開発・ セミナー 人権保護 支援制度 の構築 障害タイプ・性教育・現状分析・管理素材開発 + 2タイプ 障害を持つ生徒と家族のための自衛能力教育素材開発(5 種類)人権保護セミナーの二段階運営 保健・福祉省、韓国全国人権委員会など、複数の機関の協 力による、特殊教育支援センターの恒久的監視会議の運営 6.障害を持つ生徒のためのキャリア・職業教育の強化 目的 障害を持つ生徒の社会的統合・生活の質向上を目的としたキャリア・職業支援 キャリア・ 職業教育 のための 実質基準 の策定 キャリア・職業情報システムのサー ビス・運営の向上 + 3タイプ キャリア・ 職業教育 の支援制 度の構築 特殊教育と福祉の合同企画 障害者のための福祉サービスワーク ショップ + 5タイプ キャリア・ 職業教育 の活性化 キャリア・職業教育の活性化 障害を持つ生徒と指導員のための職 業訓練 + 5タイプ - 15 - 7.特殊教育におけるデジタル格差を克服するための情報支援 目的 誰もが使用できる実践的な教授・学習活動支援を通じ、特殊教育における知識情報シス テム及び最先端情報技術を構築する 特殊教育にお ける情報支援 ネットワークの 構築 障害を持つ児 童のための教 授・学習支援 コンテンツ開 発・配布 全国規模の 特殊教育 情報会議 特殊教育の情報システムのサイト運営 障害を持つ生徒のための最先端支援研究・開発 + 7タイプ 視覚・聴覚障害補助素材の撤廃、EBS放送による教育素材 点字企画 + 3タイプ 特殊教育学校(学級)生徒のための全国情報会議 障害を持つ生徒のための全国eスポーツ会議 8. 障害を持つ生徒の高等教育・生涯教育支援のための研究・組織推進 目的 障害を持つ生徒の高等教育・生涯教育支援のための研究・組織を推進することにより、 教育機会の拡大と質の向上を図る 高等教育 研究・ 学問 [高等教育研究・学問] 大学の障害者支援センター運営マニュアルの開発 高等教育 支援 大学の遠隔教育支援センター運営(156名による支援) 障害を持つ大学生のための支援企画支援マネージャーの養 成 + 4タイプ 生涯教育 支援 障害を持つ成人向け大学生涯教育プログラムの支援 読み書きカリキュラム・素材開発(15タイプ) + 4タイプ - 16 - 私立ミラルスクール紹介プレゼンテーション資料からの抜粋 § § § § § § § § § § § § § § 式 § 幼 稚 部 課 程 編成 学級 1 男 生 徒 數 小学部 2 中学部 1 2 3 4 5 6 小 計 1 2 3 小 計 1 2 3 2 2 2 12 2 2 2 6 7 5 6 10 10 10 48 13 12 14 39 1 2 3 小 計 専 攻 科 3 3 3 9 2 高等部 15 18 20 53 区 分 計 11 女 2 5 4 1 5 3 4 22 3 7 4 14 4 3 4 11 3 計 4 12 9 7 15 13 14 70 16 19 18 53 19 21 24 64 14 本館 区分 教室 特別室 管理室 治療室 体育館 講堂 その他 고 計 数 29 16 7 4 1 1 3 59 別館 区分 美術館 コンサート ホール 体育館 講堂 数 1 1 1 1 5 水 遊 び場 インライン スケート場 カフェ 計 1 1 1 12 1996. 12.14 学校設立の認可 1997. 3. 1 初代校長 (권정순) 就任 1997. 3.10 開校 (13学級 : 幼稚部3学級, 小等部10学級) 2001.12.15 生涯教育優秀学校表彰 2002.11. 2 別館竣工 2003.11. 1 2代校長(권영섭)就任 2005. 4. 4 순천향 大学産学共同プログラム実施 2005. 9.12 日本大分大学附則特殊学校と姉妹縁組を結ぶ 2007. 3.10 開校10周年記念行事 2007. 8. 3 ネパールミラル学校と姉妹縁組を結ぶ 2007.12.26 別館増築 2008.12. 9 NEIS 活用優秀機関選定表彰 (教育科学奇術部長官) 2010. 9. 1 3代校長(양문봉)就任 2012. 2.15 幼稚․小等部(第14回),中学部(第11会),高等部(第8 回 )卒業式,専攻部(第2 回)修了 2012. 3. 1 30学級編成 (幼稚1, 小等12, 中学6, 高等9, 専攻2) 教員 校 長 教 頭 幼 稚 小 学 中 学 高 等 保 健 栄 養 Edu Care 小 計 庶 務 技 能 運 転 調 理 そ の 他 小 計 計 男 1 1 • 5 5 10 2 • • • 24 1 5 4 • 4 14 38 女 • • 1 12 6 8 1 1 1 6 29 1 • • 4 26 31 60 計 1 1 1 17 11 18 3 1 1 6 53 2 5 4 4 27 45 98 ボランティア活動 才量活動 教育補助員活動 学生礼拝 学校適応活動 スクールバス 運営 放課後学校 教員研修 生活指導 保護者参加 校ㄱ技 指導 委員会運営 Educare運営 - 17 - 一般職 専 攻 ㅛ 主要な教育活動と特色事業 障害児 への 主要な教育活動と特色事業 学校教育 の質的 障害を持つ 向上 認識改選 参加意識 鼓吹 人への 申し 込 み ㅗ ボラン ティア 教育 ボラン ティア 配置㻌 ボラン ティア 活動 ボラン ティア 評価 事後 指導 管理 조 主要な教育活動と特色事業 主要な教育活動と特色事業 ♠教育委員会, 江南区役所 支援 ♠大学卒特殊教育関連者 優先 配置 学習活動 生活指導 フィールドワーク 補助 補助 活動補助 学校の行事 活動補助 ♠ 週5-6日勤務 ♠ 特別支援センターで支援される補助員 助員, 公共勤労 事業で支援されている補 活用 ㄹ 지의 ㅊ主要な教育活動と特色事業 主要な教育活動と特色事業 ♠対象 : 小、中、高全生徒 ♠目的 : 学生の現能力及び保護者のニーズ ♠運営 : 放課後、夏休み、冬休み 運営 ♠期間 : 2012. 3. 2 ~ 3. 27(4週間) ♠ 科目 : コンピューター、体育、美術、音楽、運動 ♠ 保護者との相談、各種心理検査実施 ♠ 別途の講師 - 18 - 主要な教育活動と特色事業 主要な教育活動と特色事業 保育担当 講師 5名配置 基本生活 習慣の 指導 “一緒に 守ろう” 計画、 問題行動 改善 共稼ぎ家庭 生活 訓練室 運営 実施 平日 09:0018:00 優先選定 小学部 運営 ㅛ 主要な教育活動と特色事業 Educare 運営 教育、治療、 保育が連携さ れたサービス 主要な教育活動と特色事業 ♠学生の住所 分布に基ずいた路線 設定 ♠ 定期教職員研修 – 教職、信仰、同好員研修 ♠ 自由研修 – 情報化、体育、その他 ♠ 現場体驗の時 活用 ♠ ソウル情緒障害教育研究会研修(夏、冬) ♠ 運転士、バス補助員に対し安全教育 実施 ♠ 海外研修 ♠ 研究会運営 ♠ 補助員活用 ㅇ리 主要な教育活動と特色事業 ミラル父母大学運営 保護者会儀 : 主要な教育活動と特色事業 教務会議 保護者 参加授業 10週間 企画会議 毎月 人事委員会 一週目の 木曜日 個別教育運営委員会 特殊教育対象者診断・評価委員会 学校運営委員会(PTA) - 19 - 学校施設の全面的な開放 コンサートホール: ミラル音楽会 開催 ミラル美術館 : 文化観光部登録 セミナ室 :格種集会 講堂、食堂 :結婚式、ミラル宣教団集会 体育館、インラインスケート場 Jini-Jolie 、 喫茶店 : 住民の休息空間 学校施設の全面的な開放 学校施設の全面的な開放 学校施設の全面的な開放 ㅊ ミラ 南! 南 ! ※ 韓国の特殊教育現場の先頭に立つ学校と してのプライド -学生たちを心底から愛し、彼らの 潜在的な能力と個性を発見し熱心に指導する -父母たちに信頼を受ける学校 -地域社会から愛される学校として位置付ける - 20 - - 21 - ※詳しい内容は各地域の 教育支援庁特殊教育センターに お問い合わせ下さい 特殊教育対象生徒の選定・配 置 特殊教育運営委員会の審査 特殊教育対象者選定の可否 及び教育支援内容の決定 特殊教育支援センターが診 断・評価を実施 特殊教育支援センターに診 断・評価を依頼 特殊教育対象者の選定・配置 の申請(学校又は保護者) 特殊教育対象者の選定及び配置・支援 幸せな学校、差別のない教育福祉の実現 031‐412‐4631 031‐618‐0682 031‐455‐5034 安山 平澤 軍浦・義王 031‐945‐2341 031‐834‐1461 031‐536‐2505 031‐584‐0280 漣川 抱川 加平 031‐556‐9218 九里・南楊州 坡州 031‐912‐1591 高陽 031‐860‐4345 東豆川・楊州 031‐997‐0961 金浦 031‐847‐4685 031‐677‐2722 安城 議政府 031‐334‐7552 龍仁 070‐7012‐9865 031‐631‐9347 利川 始興 031‐772‐2801 楊平 031‐764‐4055 02‐2615‐9655 光明 廣州・河南 070‐7096‐7470 富川 031‐377‐4329 031‐380‐7027 安養・果川 華城・烏山 031‐758‐4860 城南 031‐886‐8482 031‐898‐5675 水原 驪州 代表電話 特殊教育支援 センター cafe.daum.net/ gapyongspedu Spedu.goepc.kr www.ycsesc.go.kr www.pjedu.co.kr www.gnspecial.net www.gyspedu.co.kr Scse.dyoe.kr www.ujbse.or.kr Ts.goesh.kr www.gpoe.kr www.goean.kr www.yiscse.kr Icscse.kr www.yp‐sesc.kr www.goegh.kr spesial.goehs.kr sepcial.goeyj.kr www.kengu.go.kr sesc.goept.kr www.goeas.kr special.goegm.kr www.bcscse.go.kr ayspecila.goeay.kr www.kensn.go.kr www.swscse.go.kr ホームページ 京畿道特殊教育支援センターの連絡先 京畿道教育庁 京畿道特殊教育支援センター 幸せな学校、差別のない教育福祉の実現 - 22 - 特殊教育支援センターは 特殊教育対象者の早期発見、 診断・評価・情報管理、 特殊教育の研修、 教授、学習活動の支援、 特殊教育関連サービスの支援、 巡回教育等を行っています。 京畿道の25の地域教育庁には 障害者及び特別な教育的ニーズがある方 のための特殊教育支援センターがありま す。 京畿道特殊教育支援センター 役割と機能 特殊教育支援センター ♠障害幼児給食費の支援の案内 ・幼稚園の特殊学級に配置された特殊教育 対象の幼児 ♠障害幼児に対する無償教育費の支援の案 内 ・幼稚園特殊教育対象の幼児 (幼稚園または併設幼稚園、特殊学級及び 保育園の幼児を除く) ♠障害幼児に対する義務教育の案内 ・満3歳以下の幼稚園課程の特殊教育対象 者 ♠障害を持つ新生児に対する無償教育の支 援 ・障害の早期発見及び早期教育をもって障 害を矯正し、軽減させる 障害新生児・幼児特殊教育支援が 「障害者等に対する特殊教育法」により 次のように実施されます。 ▶医療・教育・保育・職業など関連機関ネッ トワークの構築 地域の関連機関協議体の構築 ▶物理治療、作業治療等の治療支援の実 施 ▶補助工学機器、学習補助器、教材・教具 の貸与 ▶家族及び相談の支援 特殊教育関連サービスの支援 ▶特殊教育対象者の早期発見 ▶特殊教育対象者の診断・評価の実施 特殊教育対象者の診断・評価の支援 ▶障害新生児・幼児の特殊教育支援 ▶個別化教育支援チーム支援等教授 - 学習活動支援 ▶一般学校に在籍する特殊教育対象者の 特殊教育支援 ▶特殊教師及び統合学級の教員研修支援 ▶特殊教育対象者の情報管理 ▶特殊教育対象者の進路及び職業教育の 支援 特殊教育活動の支援 - 23 - 内 容 分花植物、生け花、押し花、アロマ等 定 員 5人以上 対 象 成人障害者、精神障害者、一般地域住民 費 用 要問合せ 回 数 要問合せ(一回性体験プログラム可) 備 考 予約必須 教育時間 1時間~1時間30分 園芸治療は多様な対象者に専門的な治療を施し、身体 的・精神的・認知的リハビリを手助けし、生活の質の向 上に役立させる。 園芸治療事業 Horticultural Therapy 進路教育・セミナー 特殊学校及び特殊学級の保護者を対象に障害者で ある子女に対する正しい理解及び正しい進路方向を 設計できるように進路教育・セミナーを実施します。 バリスタ 進路相談 障害者の進学と職業選択に関する多様な情報を提供 し、正しい進路計画を立てるように支援します。 教育時間 1時間30分 費 用 要問合せ 対 象 回 数 定 員 教育時間 費 用 特殊学校・特殊学級の在学生 1期10~15回がメド 10名 1時間30分 要問合せ 知的・自閉性障害者を対象に身体的・精神的ス トレスを解消し、認知能力を向上させ、意思疎 通の技術訓練が可能になる多様な園芸治療プ ログラムを実施し、社会適応力の向上を目指し ます。 園芸 対 象 知的・自閉性障害者 回 数 1期10~15回がメド 定 員 2~6人 バリスタ職業体験プログラムは職業体験教育の一環であ り、知的・自閉性障害人を対象として職業教育・バリスタ課 程教育を実施し、職業力量の教科及び社会性の向上を目 指します。 転換教育事業 Transitional Educadion 進路相談・教育 Career Counseling - 24 - 城南市栗洞生態学習院は、「障害者の幸せな生活」を重視します。私 たちは「土を踏み、花の香りの中で健やかな楽しく汗を流す教育と訓 練」、「障害者と非障害者が一同に集まり、交流できる出会いと体験」 の場を提供するために、努力して参ります。 勿論、苦しくても生きていかなければならないのが人生ですが、我が 国社会は障害者に「幸せよりも努力と忍耐」に多くの焦点を当て、こ れを求めてきたのも事実です。 特に、職業的重症障害人である知的障害・自閉性障害・清泉障害者 に対し「険しい世の中を生きていくための鍛錬」という大義名分の下、 幸せな生活より努力する生活の方を重視してきました。 和が国社会は障害者に対し、「努力して社会構成員として自立し、リ ハビリに成功すること」を、要求してきました。 Transitional Education Center for the Disabled 城南市栗洞生態学習院 Seongnam city‐yuldong 城南市栗洞 生態学習院 社会統合的 事情の遂行 転換教育と リハビリの場 施設の現状 事務棟 事務室、映像教育室、職業体験実習室「カフェと欄シュア」、 休憩所、ボイラー室 温室棟 治療庭園「グリーン・マル」 屋 外 野外体験場、駐車場、グリーン・マル畑 機関の現状 設 立 城南市 運営法人 社会福祉法人 地球村社会福祉財団 用途地域 保健緑地地域 規 模 土地(5,308㎡)、造成面積(2,780㎡)、建物面積(848,04 ㎡) 障害者の生活 の質の向上 ビジョン ミッション 障害者が環境と地域社会に適応できるように支援し、 社会統合プログラムを通じた共同体の実現を目指します。 城南市栗洞生態学習院は 障害者のための 転換教育の実習の現場として 障害者に園芸及び バリスタ教育を通じた 転換教育・園芸治療・地域社会統合 事業を提供する施設です。 城南市栗洞生態学習院 Introduce 韓国特殊教育の概略 韓国国立公州大学校 金參燮 翻訳:中国長春大学特殊教育研究院 崔明福 本稿は、韓国の特殊教育・障害者雇用からみた日本の特別支援教育・障害者雇用の課題についての議 論を目的とした比較教育学的国際セミナーの一環として、韓国の特殊教育の概観を述べた上で当面の課 題を探る。 Ⅰ.韓国特殊教育の概略 韓国の特殊教育の概略について①「障害者などに対する特殊教育法」の制定背景及び主な内容と②特 殊教育の現状(特殊教育対象者、特殊学校、統合教育、巡回・病院学校の現状)に分けて述べる。 1. 「障害者などに対する特殊教育法」の制定背景及び主な内容 1) 制定背景 1977年12月31日に法律として制定・公布された「特殊教育振興法」は、当時韓国の障害者教育を公的 に保障し始めたものであり、全国の市・都に公立特殊学校及び特殊学級が設置されるなど特殊教育発展 の軸を作る法的根拠になった。その間、特殊教育振興法は9回にかけて改正が行われたが、特に1994年の 全面改正では統合教育及び個別化教育など新しい教育仕組の導入、障害のある児童生徒の適切な選定・ 配置など手続き的権利を強化するための特殊教育運営委員会の導入など画期的な措置が含まれている。 しかし、2000年代に入ってから韓国の特殊教育は世界的動向の影響を受け、現場からは様々な問題が 出始めた。政府はこのような問題を冷遇しにくい立場に置かれ、「特殊教育振興法」が現場の課題を解 決するには不十分であるということを認識した。特に、「特殊教育振興法」は初等・中等教育を中心と して定められており、障害のある乳・幼児及び成人のための教育支援に対する規定が不十分で、国家及 び地方自治団体の特殊教育支援に対する具体的な役割が明確に規定されていないため、法律の実効性の 保証に限界があるという問題が提起された。 このような社会変化による特殊教育現場の新しいニーズと最近の動向を反映するとともに充実した特 殊教育政策を定着させるため,「特殊教育振興法」を全面改正し、2007年5月25日に「障害者などに対す る特殊教育法」(法律 第8483号、2007.5.25制定、2008.5.26施行)を制定した。 2) 「障害者などに対する特殊教育法」の主な内容 新たらしく制定された「障害者などに対する特殊教育法」の主な内容について ①特殊教育の定義 ② 特殊教育対象者の義務教育年限拡大 ③差別禁止 ④教員の資質向上 ⑤特殊教育支援センターの設置 及び運営 ⑥特殊教育実態調査 運営 ⑩統合教育 ⑪個別化教育 ⑦障害の早期発見 ⑧特殊教育対象者の選定及び配置 ⑨教育課程の ⑫進路及び職業教育 ⑬巡回教育 ⑭特殊学校及び特殊学級の設置 - 25 - 基準 ⑮大学課程の障害学生支援及び生涯教育支援の順に述べる。 (1) 特殊教育の定義 「障害者などに対する特殊教育法」(以下特殊教育法とする)では治療教育を削除し、職業教育を教 育課程運営に含め、特殊教育関連サービス概念を導入するなど特殊教育の意味を大幅に修正し、次のよ うに定めている。 “特殊教育とは、特殊教育対象者の教育的ニーズを満たすため、特性に適合した教育課程及び第2号に よる特殊教育関連サービスの提供を通じ行う教育を言う。” 特殊教育関連サービスは、米国の障害者教育改善法(IDEIA: The Individuals with Disabilities Education Improvement Act of 2004)で定めている関連サービスに近い用語で、特殊教育対象者の 教育に必要な人的・物的サービスを意味しており、①相談支援 ②家族支援 ③治療支援 ④補助 員支援 ⑤補助工学機器支援 ⑥学習補助機器支援 ⑦通学支援 ⑧情報アクセシビリティーなど がここに含まれる。 (2) 特殊教育対象者の義務教育年限拡大 現在、韓国は全ての国民に対し小学校及び中学校教育課程の義務教育を実施している。しかし、特 殊教育対象者の場合は幼稚園課程から高等学校課程までの義務教育を受けなければならない。また、満3 歳未満の障害乳児教育と高等学校以後の専攻科課程は無償教育である。つまり特殊教育対象者の義務教 育年限は3~17歳で、障害児の無償教育の年限は0~20歳(専攻科1~3年含む)である。義務教育実施年 限の拡大は、特殊教育対象者のニーズ把握、学級の増設、教員の確保など教育要件を備える期間が必要 であるということから,2010年から2012年まで年次的に適用してきたが、2012年からは満3歳以上の全て の障害幼児が義務教育を受けることになった。 (3) 差別禁止 1977年「特殊教育振興法」の制定当時から特殊教育対象者であることを理由に、あるいは障害を理由 に,入学の志願者拒否及び入学試験合格者の入学拒否などを禁止した。しかし,教育現場でしばしば頻 発する具体的な教育活動状況での差別行為を禁止するため、積極的な権利救済を規定する必要性が強調 されるようになった。 特殊教育対象者が幼稚園、小・中学校、高等学校及び大学に入学する際、障害を理由に入学の志願を 拒否したり入学の選定に合格したが入学を拒否したりするなど、教育機会を確保する過程において障害 を理由に差別することを禁止している。このような教育機会を提供することにおいてだけではなく、教 育活動全般に渡って差別行為を禁止するために特殊教育関連サービスの提供、授業参加及び校内外活動 参加、個別化教育支援チームへの参加など保護者参加、そして入学選定など具体的な事項においての差 別禁止を規定している。また、教育機関の長だけではなく国家及び地方団体に対しても上記のような差 別行為禁止に対する責任を明示している。特殊教育対象者及び保護者の差別禁止は「障害者差別禁止及 び権利救済などに関する法律」(2011.6.7制定、2011.12.8施行)と関連し、障害者教育において生 - 26 - じる差別行為に対する処罰規定が強化された。例えば、障害者差別行為が悪意的だと認定されれば3年以 下の懲役または、3千万ウォン以下の罰金に処することができるようになった。また、教育責任者が全て の校内外活動で障害を理由に障害者の参加を制限、排除、拒否できないように規定している。 (4) 教員の資質向上 国家及び地方自治団体が主管として行われる資格研修及び職務研修に特殊教育に関連する内容を必ず 含まなければならないが、180時間以上実施される資格研修と60時間以上実施される職務研修には必ず特 殊教育に関する内容が含まれなければならない。また、通常教育の教員に対しては特殊教育と関連した 職務研修課程を、特殊教育教員に対しては通常の教科課程に対する職務研修をそれぞれ別途に独立され た職務研修として実施しなければならない。特に、特殊教育教員の統合教育の力量を強化するために通 常の教育課程に関する職務研修過程を開設及び運営するように規定したことは、統合教育の環境の中で 特殊教育対象児童生徒の教育課程修正及び協力教授で特殊教育教員の役割がより拡大されるものと期待 される。 (5) 特殊教育支援センターの設置及び運営 特殊教育支援センターを下級教育行政機関別に設置及び運営し、特殊教育対象者の早期発見、診断・ 評価、特殊教育研修、教授・学習活動の支援、特殊教育関連サービス支援、巡回教育などを担当する。 このような業務を遂行できる別途の施設を設置した上、業務を担当する特殊教育分野の専門担当者を配 置することによって、一つの下級教育行政機関に2か所以上の特殊教育支援センターを運営することがで きる。 (6) 特殊教育実態調査 国家は特殊教育政策を樹立するため、3年ごとに特殊教育実態調査を実施しなければならない。実態調 査には特殊教育関連サービスの提供状況、障害者の生涯学習課程及び施設の運営状況などが含まれる。 特殊教育実態調査とは別途に障害のある大学生の教育福祉実態調査及び評価を行うことで2005年から定 期的に実施している。 (7) 障害の早期発見及び教育支援 満3歳未満の障害乳児は無償教育を受ける。すなわち、年齢に関わらず特殊教育対象者に選定されると 特殊学校や特殊教育支援センター、または在宅で無償教育を受けることができる。また、障害の早期発 見のための無償選別検査実施、または乳幼児健康診断結果を活用することができる。2007年11月から実 施された乳幼児健康診断制度が次第に定着し始め、多くのの乳幼児が医師の健康診断を通じ障害、また は障害の危険要素を確認することができ、教育機関から通知されるシステムが定着されつつある。 (8) 特殊教育対象者の選定及び配置 特殊教育対象者は、①視覚障害 性障害 ②聴覚障害 ③精神遅滞 ④肢体不自由 ⑤情緒•行動障害 ⑥自閉 ⑦コミュニケーション障害 ⑧学習障害 ⑨健康障害 ⑩発達遅れなど10種類の障害カテゴリ ーに該当する者の中で、特殊教育を必要とする者に診断・評価された人を示す。これは障害者であれば - 27 - 必ずしも特殊教育対象者にされるのでなく、学習障害や発達遅れのように障害者福祉法上の障害者では なくても特殊教育対象者に選定されることができる。 特殊教育対象者に選定されると特殊教育運営委員会が学校配置に対する審査をした後、①通常学校の 通常学級 ②通常学校の特殊学級 ③特殊学校の中で、いずれかに配置し教育しなければならない。こ れは統合された教育環境を提供するという法律の趣旨に基づき可能なかぎり統合教育を優先的に実施す ることを意味する。 (9) 教育課程の運営 特殊教育機関の幼稚園・小学校・中学校・高等学校の教育課程は、障害の種別及び程度を考慮し教育 科学技術部令として定め、乳児の教育課程と専攻科教育課程は教育監の承認を受け学校長が決める。 2011年11月16日、特殊教育の教育課程が改正告示され2013年から年次的に適用される予定である。従 来は特殊教育の基本教育課程がⅠ、Ⅱ、Ⅲ水準の3段階で構成されていたことを、小学校1~2学年群、3 ~4学年群、5~6学年群、中学校1~3学年群、高等学校1~3学年群としてその範囲を拡張した。現在新し い教育課程による教科書を開発している。 (10) 統合教育 2011年4月現在、通常学校の通常学級(17.8%)と特殊学級(52.2%)で統合教育を受けている児童生 徒は、全体の特殊教育対象児童生徒の70%に達するなど、通常学校で統合する児童生徒が継続的に増加 する傾向である。 このような傾向を反映して現行法では特殊教育対象者を可能なかぎり統合された教育環境に配置する よう居住地から最も近い学校に通えるようにした。無論、対象者の障害程度・能力・保護者の意見など を総合的に判断し、特殊教育運営委員会の審議を経て教育長、または教育監が最終決定をすることにな る。そして特殊教育対象者が在学している通常学校の長に特殊教育対象者の障害類型・程度などを考慮 し教育課程の調整、補助員支援、学習補助機器支援、教員研修などに関する統合教育計画を樹立・施行 するよう規定することによって、統合教育の成功的な実行が可能になるよう制度的整備を行った。 特殊学級が設置されていない通常学校に配置された特殊教育対象者に、特殊教育を提供するため特殊 教育支援センターの教員が訪問して支援をすることができる。また特殊教育支援センターを中心に統合 教育を受けている児童生徒にも特殊教育関連サービスを提供できる。 (11) 個別化教育 1994年全面改正された「特殊教育振興法」において初めて個別化教育計画を作成及び運営するように 規定された。現行法においては保護者、特殊教育教員、通常教育教員、進路及び職業教育担当教員など、 各児童生徒をよく知っているあるいは各児童生徒の教育的ニーズ領域の専門性を持っている人々が参加 するようにしている。また、新学期が始まった日より30日以内に個別化教育計画を作成するよう規定し ている。 (12) 進路及び職業教育 最近では特殊教育対象者の職業教育だけではなく、学校卒業後職場あるいは独立された成人生活への - 28 - 移行に必要な全ての相談と指導ができるようにする進路教育に対する関心が増大されているが、現行法 はこのような傾向を反映し職業教育及び進路教育を強調している。 今までは、高等学校課程を設置した特殊学校に専門技術教育をするため授業年限が1年以上である専攻 科を置けるようにしてきたが、今後は特殊教育対象学生の特性・能力・障害類型またはニーズなどに合 わせ職業リハビリ訓練だけではなく、自立生活訓練を実施するために専攻科を運営することができ、特 殊学級にも専攻科を設置できるようになり専攻科運営が多様化,拡大されると考える。 (13) 巡回教育 巡回教育は通常学校の通常学級,障害者福祉施設,児童福祉施設,家庭,治療機関などにいる特殊教 育対象者のために特殊教育教員が巡回しながら教育することであり,1994年に初めて規定された。巡回 教育によって特殊教育対象者が配置された環境には関係なく実質的な教育機会と学習権が保障されるこ とになった。巡回教育の授業日数は毎学年度150日を基準とするものの、指導・監督機関の承認を受け30 日範囲で減らすことができるが、最少120日まで調整することができる。 (14) 特殊学校及び特殊学級の学級設置基準 現行法は幼稚園・小学校・中学校・高等学校別にそれぞれ4人・6人・6人・7人を基準として1学級を設 置できるように規定しており、特殊教育対象者個人の特性と能力に応じた個別化された教育を真に実行 することができるようになった。 特殊教育教員の配置基準は学級数基準から児童生徒数基準に改善され、特殊教育対象児童生徒4人当た りに教員1名が配置されるよう規定されているが、都市と農村・山村・漁村教育の均衡的発展、特殊教育 支援センターの運営状況及び特殊教育対象者の地域別の分布などを考慮し、配置基準の40%の範囲で加 減し特殊教育教員の定員を配置することができる。 (15) 大学課程の障害学生支援及び生涯教育支援 1995学年度から導入された特殊教育対象者大学特別選考制度の施行に伴い、大学に入学する障害のあ る大学生が増加されることにつれ、障害のある大学生の実質的な学習権を保障し教育福祉を向上させる ための措置として、障害学生支援のための法的機構が必要になってきた。現行法は、大学の長はその大 学に障害のある大学生が10人以上在学する際には特別支援委員会を設置及び運営しなければならないと 規定している。 国家及び地方自治団において学齢期が過ぎた障害者のために一般の生涯教育施設で障害者生涯教育課 程を運営できるようにした。また障害者に限定する別途の施設として学校形態の障害者生涯教育施設を 設置することができるようにしながら、一般の生涯教育施設が基本的に備えるべき施設・設備以外に障 害者便宜施設を備えるようにしている。このように、教育機関と一般生涯教育機関に障害者のための生 涯教育課程が備えられ、また学校形態の障害者生涯教育施設が設置され学齢期に教育機会を逃した障害 成人にも教育機会を提供することができるようになった。 2. 特殊教育の現状 - 29 - 我が国の特殊教育対象者の幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の全課程の教育は「障害者などに対 する特殊教育法」第3条第2項により義務教育とされている。 2011年4月現在、全国155個所の特殊学校で24,580人の特殊教育対象児童生徒が特殊教育を受けており、 特殊学校で特殊教育を担当している教員は7,054人である。2010年度の特殊学校の状況と比較してみると、 特殊学校の児童生徒数は804人増加、学級数は65学級増設、教員数は316人増員された。 2011年4月現在、我が国の特殊教育対象児童生徒、特殊学校、通常学校での特殊教育、巡回教育、病院学 校の現状をみると以下のとおりである。 1) 特殊教育対象児童生徒の現状 表1は、2011年4月現在我が国の特殊教育対象児童生徒の現状を示す。 表1 特殊教育対象児童生徒の現状 区分 通常学校 特殊学校 全体特殊教育対象児童生徒 通常学級 計 24,580 43,183 14,741 161 82,665 視覚障害 1,495 344 466 10 2,315 聴覚障害 1,153 916 1,597 10 3,676 知的障害 15,819 25,498 3,789 26 45,132 3,371 4,079 3,211 66 10,727 429 1,766 622 - 2,817 1,917 4,312 580 - 6,809 コミュニケーション障害 86 790 749 6 1,631 学習障害(LD) 20 4,188 1,398 - 5,606 健康障害 35 472 1,722 - 2,229 発達障害 255 818 607 43 1,723 24,580 43,183 14,741 161 82,665 障害乳児 195 - - 161 356 幼稚園 783 924 1,660 - 3,367 小学校 7,115 22,414 5,595 - 35,124 中学校 6,079 10,951 3,478 - 20,508 高等学校 7,553 8,878 4,008 - 20,439 専攻科 2,855 16 - - 2,871 24,580 43,183 14,741 161 82,665 6,245 6,598 187 10,006 障 肢体不自由 児 害 情緒・行動障害 自閉症障害 領 童 特殊学級 特殊教育 支援センター 域 生 計 徒 課 数 程 計 学校及びセンター数 155 9,664 学級数 3,842 8,415 13,679 41 25,977 特殊学校(級)教員数 7,054 8,658 - 222 15,934 特殊教育補助員配置数 2,294 5,930 712 - 8,936 表1を基に特殊教育対象児童生徒の学校課程別及び障害領域別分布をグラフとして示したのが図1、図2 である。 - 30 - 2) 図1 学校課程別特殊教育対象児童生徒の現状 図2 障害領域別特殊教育対象児童生徒の現状 特殊学校の現状 2011年4月現在、我が国の特殊学校の設立別及び障害領域別の状況は以下のとおりである。 (1) 特殊学校の設立別状況 特殊学校の設立別状況を表2、図3に示す。 - 31 - 表2 特殊学校の設立別状況 区分 学校数 学級数 児童・生徒数 教員数 国立 5 166 946 334 公立 59 1,733 11,313 3,168 私立 91 1,943 12,321 3,552 計 155 3,842 24,580 7,054 その他 私立 58.7% 図3 特殊学校の設立別状況 (2) 特殊学校の障害領域別状況 2011年4月現在、特殊学校障害領域別状況を表3、図4に示す。 表3 障害領域別学校数 障害種類 学校数 特殊学校の障害領域別状況 計 視覚障害 聴覚障害 知的障害 肢体不自由 情緒障害 12 18 100 18 7 - 32 - 155 図4 3) 特殊学校の障害領域別状況 通常学校での特殊教育の現状 通常学校での特殊教育は特殊学級と通常学級で行われる。 (1) 通常学校の特殊学級現状 2011年4月現在、6,080個の幼稚園、小・中学校、高等学校に設置されている8,415の特殊学級において 43,183人の特殊教育対象者が特殊教育を受けている。特殊学級において特殊教育を担当している教員は 8,658人であり、2010年度特殊学級の状況と比較してみると特殊学級設置校は448個増加、特殊学級は623 個増設、担当教員は387人増員された。 学校課程別における特殊学級の現状を表 4、図 5 に示す。 表 4 学校課程別の特殊学級の現状 学校級 学校数 学級数 児童・生徒数 教員数 幼稚園 254 287 924 289 小学校 3,781 4,897 22,414 4,883 中学校 1,461 1,971 10,951 1,999 747 1,258 8,878 1,482 専攻科 2 2 16 5 計 6,245 8,415 43,183 8,658 高等学校 - 33 - 図5 (2) 学校課程別の特殊学級の現状 通常学校での統合教育の現状 2011年4月現在、全国6,598個の幼稚園、小・中学校、高等学校に設置されている13,679の通常学級に 14,741人の特殊教育対象者が配置され統合教育を受けている。 通常の学級で行われている教育課程別の統合教育の現状を示したのが表5である。 表5 教育課程別の統合教育の現状 学校級 学校数 学級数 児童・生徒数 幼稚園 1,119 1,481 1,660 小学校 2,637 5,349 5,595 中学校 1,557 3,201 3,478 高等学校 1,285 3,648 4,008 計 6,598 13,679 14,741 4) 巡回教育及び病院学校の現状 (1) 巡回教育の現状 巡回教育を担当している教員数は、特殊学校24人、特殊学級520人、特殊教育支援センター676人、計 1,436人である。 巡回教育の運営状況を示したのが表6である。 - 34 - 表6 巡回教育の運営状況 児童生徒数 機関 区分 在宅 施設 学校課程 通常 医療 学校 計 幼稚園(障害 乳児を含む) 小学校 中学校 学級数 高等 学校 教員 数 計 特殊学校 から巡回․ 391 603 3 - 997 68 352 259 318 997 228 240 29 291 1,963 23 1,052 538 350 1963 426 520 9 3,672 4130 661 1,724 1,026 719 4,130 41 3,963 7,090 752 3,128 1,823 1,387 7,090 派遣 特殊学級 か ら 巡 521 1,122 305 144 回・派遣、 兼任 特殊教育 支援セン - 676 * ター 計 1,217 1,869 654 1,436 ※特殊教育支援センター巡回講師481人を含む (2) 病院学校の現状 2011年4月現在、在宅・施設・病院・学校などにおいて巡回・派遣形態として実施される巡回教育は、 特殊学校の228学級において997人、特殊学級426学級において1,963人、特殊教育支援センターにおいて 4,130人を対象に実施されている。 病院学校の現状を表7に示す。 表7 病院学校の現状 学校 数 月平均 教 員 及 病院名 児童生 び 担当 徒数 教育庁 付属病院学校 (21 개) 者数 教育庁と病院間の協約及自運営病院学校 (11 校) 釜山大学病院、東亜大学医療院 ソウル大学病院 仁済大学釜山百病院、嶺南大学医療院, SEVERANCE HOSPITAL 大同大学病院、慶北大学病院 漢陽大学病院, 佳泉医大附属吉病院 ソウル峨山病院 仁荷大学付属病院、忠南大学病院 32 1,190 57 三星ソウル病院 蔚山大学病院、国立癌センター 国立ソウル病院 江原大学病院、 江陵峨山病院 忠北大学病院,、檀国大学天安病院 ソウル市立子ども病院 全北大学病院、 和順全南大学病院 韓国原子力病院 慶尚大学病院、国立釜谷病院 ソウル聖母病院 * 梁山釜山大学病院、全南国立羅州病院 ※2011年度新設病院学校 5) 特殊教育の変化推移 - 35 - * 慶熙大学医療院、ソウル高麗大学九老病院 近年我が国の特殊教育は大きく変化している。特殊学校・特殊学級数、特殊教育対象児童生徒数及び 特殊教育担当教員一人当たりの児童生徒数の変化をみると以下のようである。 (1) 特殊学校・特殊学級の変化について 近年障害児の統合教育の拡大に伴い、特殊学校数は大きく増加してはいないものの、特殊学級は増え 続けている傾向であり、最近5年間は年平均786学級増加した。 通常学校において統合教育を受けている特殊教育対象児童生徒数が増加することにより、特殊学校の 児童生徒は重度・重複の障害児が増える傾向を示している。 (2) 特殊教育対象者児童生徒数の変化について 2011年特殊教育対象児童生徒数は82,665人で2010年より2,954人増加した。近年特殊教育対象児童生徒 の教育機会の拡大及び支援サービスの強化により、特殊教育対象者に登録する児童生徒の数が持続的に 増加している傾向である。 特殊教育支援は、無償教育支援、特殊教育補助員配置、特殊教育機関終日制、放課後学校運営、特殊 教育支援センター運営支援、治療支援提供、病院学校の設置及び運営、通常学校障害者便宜施設設置、 特殊教育対象児童生徒の学校給食費などの支援、障害乳児無償教育支援、学校企業運営など進路職業教 育支援、障害意識改善事業などの形態として行われている。 (3) 特殊教育担当教員一人当たりの平均担当児童生徒数について 2011年特殊教育担当教員一人が実際に担当している平均児童生徒数は5.2人であることが明らかにさ れた。「障害者などに対する特殊教育法」においては、特殊学校及び特殊学級教員配置基準に関して児 童生徒4人当たり教員1人を配置するとして規定している。 表8は年度別の特殊教育現状を要約したものであり、図6は児童生徒・学校・教員・学級数の変化推移 をグラフで示したものである。 表8 区分 特殊学校数 特殊学級数 計 児 障害乳児 幼稚園 童 小学校 生 中学校 徒 数 高等学校 専攻科 教員数 ’03 ’04 年度別の特殊教育の現状 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10(A) ’11(B) B-A 137 141 142 143 144 149 150 150 155 5 4,102 4,366 4,697 5,204 5,753 6,352 6,924 7,792 8,415 623 53,404 55,374 58,362 62,538 65,940 71,484 75,187 79,711 82,665 2,954 - - - - - - 288 290 356 66 1,932 2,677 3,057 3,243 3,125 3,236 3,303 3,225 3,367 142 30,838 30,329 31,064 32,263 32,752 33,974 34,035 35,294 35,124 -170 11,055 11,326 12,493 13,972 15,267 16,833 17,946 19,375 20,508 1,133 8,779 10,207 10,756 11,851 13,349 15,686 17,553 19,111 20,439 1,328 800 835 992 1,209 1,447 1,755 2,062 2,416 2,871 455 9,175 9,846 10,429 11,259 12,249 13,165 13,997 15,244 15,934 690 ※特殊教育対象児童生徒:障害のある児童生徒の中で、特殊教育対象者に選定され特殊学校、特殊学級、通常の学級に在 学している児童生徒を示す。 - 36 - 図6 年度別の児童生徒・学校・教員・学級数の変化推移 Ⅱ.課題と展望 今日、障害者のためのサービスの方向は正常化(ノーマライゼーション)だと言える。障害者の正常 化は、一般人と可能なかぎり同じ環境で食べて、寝て、勉強して、遊んで、生活することを強調する。 しかし、正常化される環境が何かによって言葉も違ってくる。例えば、同じだったり似ていなければな らない環境が学校である場合には?主流化(mainstreaming)という言葉を使用し、その環境が地域社会 である場合には脱収容化(ノーマライゼーション)という言葉を使用する。そして、主流化は分離教育で はない統合教育により実践され、脱収容化は分離収容ではない地域への社会的統合により実践される。 つまり、統合はノーマライゼーションの原理を実現しようとする実践的・実際的な方法の一つである(金 參燮、2008)。 韓国の場合、まだ群集アプローチによる障害児教育モデル(障害ごとに分けて教育する障害児教育) が依然として優勢を見せているものの、最近では脱収容化の傾向と同じように、主流化運動は障害者も ‘正常’な人々と違いがあるという考え方から,事実はそれほど差があるのではないということを強調 するほうに変化している。このような考え方の変化と、これを実行しようとしてきた多くの人々の努力 により1994年1月特殊教育振興法(1977年制定)が改正された。しかし、特殊教育の概念の変化及び専門 性の向上という時代的必要性が提起され、2007年5月「障害者などに対する特殊教育法」(法律第8483号 新規制定2007.05.25)が新たに制定され2008年5月から施行されている。 新しい法が制定、公布されるにつれ韓国の特殊教育は様々な側面において急激な変化が起きている。 しかし、その変化は順調だけではない。障害物があまりにも多い。その障害物の中でも多くの人々が憂 慮していることについて幾つか述べたい。なお、これは筆者の主観的判断によるものである。 第一、「特殊教育法」の諸規定が守られていないことである。 新しい法はいわゆる‘当事者主義が大きく反映された法’として指摘を受けるほど、障害児の保護者 - 37 - の立場を大きく反映したことを誰も否認し難い。従って障害児の保護者のニーズはその幅が広くなって いるだけではなく、その強度も次第に高まっている。法がよく守られない場合には、当事者だと言える 特殊教育対象者またはその保護者は、国家や地方自治団体を相手に意見を陳情するのは当然である。し かし、しばしばその矛先が特殊教育教員に向かって来る場合が多くなってきた。特殊教育教員は法的規 定を守ると同時に保護者の要求にも応じなければならないことで大変な状況に置かれている。法の規定 によれば、特殊学校や特殊学級の1学級当たりの人数は幼稚園、小・中学校、高等学校別にそれぞれ4・ 6・6・7人である。また特殊教育対象児童生徒4人当たり1人の特殊教育教員が配置されるべきであるが、 国の財政不足で法の趣旨が台無しになっている。 第二、一般教員と社会が障害のある児童生徒または特殊教育に対する意識がまだ憂慮するほどの段階 に止まっている。 韓国の特殊教育の核心的要素である統合教育が成功するためには、様々な前提条件が満たされなけれ ばならないが、その中でも一般教員と一般の保護者の障害のある児童生徒または特殊教育に対する態度 が何より重要である。しかし、現実はそうではない。統合教育に向けた特殊教育政策により一般教育教 員にもアカウンタビリティーが求められているが、一般教員の反応はまだ冷ややかである。その理由は 障害のある児童生徒や特殊教育に対する否定的な態度による側面も一部あると言えるが、ほとんどは障 害のある児童生徒または特殊教育に対する理解不足に起因するものであると把握されている。また、社 会全体の障害者に対する否定的態度が不安である。最近ソウルのある高級アパート付近に障害者施設が 入るのを反対するアパート入居民のデモを見ながら、障害者に対する一般市民の視線はまだ冷たいとい う事実を改めて感じた。 第三、統合教育が口先だけで終わっているということを指摘せざるを得ない。 統合教育が成功するためのもう一つの条件は、彼らの能力と水準に適した教育課程の修正(または教 授の適合化)を通じて個別化教育が成り立たなければならない。ところで、通常学校の特殊学級で勤め ている特殊教育教員は、各児童生徒のレベルに合わせ教育課程を修正できる能力をある程度備えている と判断される。しかし、完全統合教育の状況に置かれた特殊教育対象児童生徒を教えている通常学級の 教員は教育課程の修正や個別化教育に対する別途の教育を受けていない教員がほとんどである。その結 果、通常学級の中の特殊教育対象児童生徒は酷く表現すれば‘ダンピングされている’状況である。口 先だけで完全統合教育が行われており、彼らの統合教育のための実際的な支援は行われていない。この ような問題を改善するため「特殊教育法」は国家及び地方自治団体の主管で行われる資格研修及び職務 研修に特殊教育に関連する内容を含むよう規定しているだけではなく、通常教育の教員に対しては特殊 教育と関連した職務研修過程を、特殊教育教員に対しては通常教科教育に関する職務研修課程をそれぞ れ別途の独立した職務研修として実施しなければならないと規定している。しかし、その結果は微妙で ある。 既に述べた韓国特殊教育の課題は、他の国においても同じように当面の課題として指摘されていると 聞いている。今日のシンポジウムのように比較教育的研究と議論を通じて共通の課題を解決できる改善 策を見つけることを願っている。 - 38 - Ⅲ.参考文献 교육과학기술부 (2011). 2011 특수교육연차보고서. 서울: 저자. 김병하 (2011). 한국특수교육론: 우리나라 특수교육(학)의 정체성. 대구: 대구대학교 출판부. 김원경ㆍ이석진ㆍ이은주ㆍ권택환 (2010). 특수교육법 해설. 서울: 교육과학사. 金參燮 (2010). 특수교육의 심리학적 기초. 서울: 시그마프레스. 金參燮ㆍ임경원 (2008). 통합교육 둘러보기. 서울: 시그마프레스. 金參燮 (2012). 특수교육의 개요. 김삼섭 강민채 강우정 권회연 외, 특수교육학개론.(pp. 16-35). 서울: 신정. 장애인 등에 대한 특수교육법(법률 제 8483 호 신규제정 2007. 05. 25.) - 39 - 実 施 要 項 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 実 施 要 項 ・・・・・・1 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 実施計画(別紙1 ) ・・・・・・3 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 事 前研 修 会 日 程表 ・・・・・・6 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 事 後研 修 会 日 程表 ・・・・・・7 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 実 施 要 項 1 目的 教育現場が抱える重要な教育課題に対応する研修指導者を養成するため、当該課題に ついて先進的に取り組む諸外国に各地域の指導者を派遣し、その成果を教育委員会が実 施する研修内容に活かし、教員研修の一層の充実を期する。 2 主催 独立行政法人教員研修センター 3 共催 文部科学省 4 研修概要(派遣テーマ、趣旨、目的・視点、派遣予定地域、派遣予定期間など) 別紙1のとおりとする。 5 参加者 (1)参加者資格 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校及び幼稚園の教職員並び に教育行政機関の職員であって、派遣テーマに関して、地域の中核的な役割を担う指 導者となる者 (2)参加者の推薦手続 ① 参加者の推薦は、各都道府県・指定都市教育委員会(以下「推薦者」という。 )に おいて、参加候補者を取りまとめ、 「インターネット受講者推薦登録システム」によ り、平成24年5月2日(水)までに、独立行政法人教員研修センター(以下、 「セ ンター」という。 )に行うこと。 ② 推薦者は、参加候補者からの「参加申込書」 (別紙様式1)をセンターに提出する こと。 ③ 都道府県教育委員会は、指定都市を除く市町村教育委員会からの参加候補者を併 せて推薦すること。 ④ 推薦者は、別紙1の派遣テーマの趣旨及び目的・視点等に留意のうえ、推薦を行 うこと。なお、派遣団ごとの人数を調整する必要がある場合、第一希望または第二 希望のテーマの派遣団に配属されないこともありうることに留意すること。 (3)参加者、所属団の決定 センターは、上記(1) (2)を踏まえ、派遣団ごとの人数を調整し、参加者及び所 属団を決定し、推薦者に通知する。 (4)所属団の決定後の提出書類 ① 参加者は、 「平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラムにおける調査を 希望する課題等について」 (別紙様式2)を作成し、平成24年6月29日(金)ま でに、センターに提出すること。 ② 推薦者は、 「研修成果活用の計画書」 (別紙様式3)を作成(参加者ごとに作成す るものではない)し、平成24年7月31日(火)までにセンターに提出すること。 -1- 6 事前研修会、事後研修会 参加者は、センターの実施する事前研修会及び事後研修会に出席すること。 事前研修会:平成24年8月に2日間実施。 開催通知は参加者決定時に通知する。 事後研修会:平成25年1月~2月に2日間実施。 開催通知は11月に通知予定 7 研修の中止、研修期間中の一時帰国 やむを得ない理由で、研修を中止して帰国する場合や、一時的に帰国する場合は、推 薦者及びセンターの許可を受けなければならない。 8 研修成果の報告等 派遣団は、帰国後、別に定めるところにより「研修成果報告書」を作成し、センター に提出すること。 9 派遣経費の取り扱い (1)海外派遣に要する経費のうち、 「研修に直接必要な経費」の一部(20万円)をセンターが 負担する。 なお、 「研修に直接必要な経費」とは以下のものをいう。ただし、日本国内の宿泊費 ・交通費は、 「研修に直接必要な経費」に含まないものとする。 ア 渡航費(空港施設利用料、空港税等を含む) イ 食事料(国家公務員の旅費に関する法律に基づく日当相当として算出) ウ 宿泊費 エ 交通費(国外のものに限る) オ 調査研究に要する経費 (学校・教育関係機関等訪問にかかる経費等) (2)参加者の決定以降に、参加者が辞退等を行った場合、辞退等に伴い発生した費用 は、原則として推薦者または参加者の負担とすること。 10 その他 (1)団長及び副団長の派遣経費については、センターが負担する。 (2)派遣テーマに関し専門的知識を有する者( 「シニアアドバイザー」という)を参加さ せる場合の派遣経費については、センターが負担する。 (3)推薦者は、参加者が作成する提出資料の内容確認を行い、必要に応じ指導を行った 上で提出すること。 (4)推薦者は、参加者に対し研修に係る必要経費、都道府県等の補助額、自己負担額等 を説明した上で推薦すること。 (5)本研修終了後、参加者からアンケート等を行う。また、研修終了から一定期間(約 1年)経過後に、参加者に研修の成果活用に関する事後アンケート調査を行う。 (6)この要項に定めるほか、当該研修に関し必要な事項は、センター理事長が定める。 -2- -3- 2 2 2 趣旨 派遣予定国 11/18(日)~11/29(木) 12日間 ○複数言語(公用語及び第二言語としてのドイツ語、母国語 等)を対象とした言語教育システムや初等・中等教育における オーストリア 教員養成等の視察 ○本派遣テーマに資する言語教育や教員養成・現職教員研修 の在り方に関する調査研究 PISA型学力の 育成 PISA型学力では、「読解力」、「数学的リテラシー」、「科学 的リテラシー」の向上が求められている。新学習指導要領に おいても、知識・技能の習得、それを活用するために必要な 思考力・判断力・表現力等の育成を重視し、課題解決的な学 習や探究的な活動の充実を図っている。PISA調査の上位の 国における取組みを調査し、成果と課題について把握・分析 し、そこから得られる知見の活用方法等を考える。 フィンランド ○PISA型学力の基礎ならびにPISA型学力の意味に関する正し フィンランド い理解をねらいとした視察 ○日本型コンピテンシーの在り方に関する考察 ○生きる力の育成やPISA型学力の向上のための取組及び実 態に関する調査 ○未来の学力を踏まえた日本の教育の方向性を検討 10/15(月)~10/26(金) 12日間 10/29(月)~11/9(金) 12日間 10/20(土)~10/31(水) 12日間 10/1(月)~10/12(金) 12日間 10/3(水)~10/13(土) 11日間 派遣期間 別紙1 ○学校経営の概要、学校評価を活用した学校改善の仕組み、 サポートスタッフを活用した授業づくり・学校経営の仕組み、教 イギリス 職員育成の仕組み等に関する調査 ○日本における学校経営の改善にとって具現化可能な方策の 検討 ○学力向上に向けた学校経営の改善支援の評価活動を含む 仕組みに関する訪問調査(支援を行う諸機関及び支援を活用 アメリカ する学校) ○日本あるいは各地域の学校経営改善への還元策の検討 目的・視点 言語は知的活動の基盤であるとともに、コミュニケーション や感性・情緒の基盤でもあり、豊かな心を育む上でも、言語 言語力・コミュニ 能力を高めていくことが重要であるとされている。このことか ケーション力の育 ら、諸外国の学校における言語能力やコミュケーション能力 成 の育成の取組について調査し、成果と課題について把握・分 ○各教科等における言語活動の充実において、個の学習及び 析するとともに、そこから得られる知見の活用方法等を考え 他者との関わりの中での授業展開を重視している学校教育事 フィンランド 情を視察 る。 ○日本における学校教育において参考とすべき内容に関する 考察 学校の自主性・自律性を高め、保護者や地域に開かれ、信 頼される学校づくりを進めるために、実効性のある学校経営 の改善が求められている。学校経営をより効果的・効率的な 学校経営の改善 ものとするための改善方策について、諸外国の学校における 学校経営の改善や学校評価等の取組について調査し、成果 と課題を把握・分析するとともに、そこから得られる知見の活 用方法等を考える。 派遣テーマ ※1 参加者の所属団は、希望する派遣テーマを参考に調整させていただきますが、推薦時に希望した派遣テーマに配属できない場合もあります。 ※2 訪問先は主に学校又は教育行政機関等です。具体的な訪問先は、事前研修会開催前に教員研修センターのホームページに掲載する予定です。 C-2 C-1 B-2 B-1 A-2 A-1 派遣 団数 団名 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 実施計画 -4- 2 2 1 学校安全・防災 教育の推進 学校においては、児童生徒の発達段階に応じて、社会や 職業への円滑な移行を図るために、必要な知識・技能や勤 労観・職業観等を育成し、児童生徒が将来の基盤を築き、自 キャリア教育の充 立して生きていくことができるようにするキャリア教育を充実さ 実 せることが求められている。このことから、諸外国の学校にお けるキャリア教育の現状や取組を調査し、成果と課題につい て把握・分析し、そこから得られる知見の活用方法等を考え る。 生徒指導・教育 相談の充実 学校においては、事件・事故・自然災害等に対応した総合 的な学校安全計画や危機等発生時の対処要領の策定によ る的確な対応及び地域との連携による学校安全体制の整 備・強化が重要な課題となっている。子どもたちの健やかな 成長を目指す基盤としての安全で安心な環境を確保するた め、諸外国の学校における学校安全・防災教育、安全防災 管理・組織活動等の取組を調査し、成果と課題を把握・分析 し、そこから得られる知見の活用方法等を考える。 学校においては、児童生徒に望ましい生活習慣を身に付 けさせる教育や規範意識を培うための教育の充実及び児童 生徒の悩みに対して適切かつ可能な限り迅速に対応するこ とが求められている。このことから、諸外国の学校における生 徒指導・教育相談等の現状や取組を調査し、成果と課題に ついて把握・分析し、そこから得られる知見の活用方法等を 考える。 趣旨 派遣テーマ 10/8(月)~10/19(金) 12日間 ○キャリア教育の充実のための教育課程や教育活動の在り方、教 職員の資質能力の向上、学校外との連携、教材の開発等に関す る訪問調査 イギリス ○訪問調査を通して得た知見の日本あるいは各地域への還元策 を検討 ○各学校段階におけるキャリア教育のカリキュラム及び実践の視 察 11/12(月)~11/23(金) ○カリキュラム実施状況と結果及びキャリア発達の捉え方に関する オーストラリア 12日間 調査 ○日本における教育現場への活用可能性の検討 10/8(月)~10/19(金) 12日間 ○コミュニケーションスキルやソーシャルスキルの育成に関する実 践視察 アメリカ ○怒りのコントロール、アサーショントレーニング、ミデュエーション を通した体験的な学びの探究 10/8(月)~10/19(金) 12日間 ○規範意識を培うための学校、家庭、社会が有する社会構造及び それらを支える価値規範(文化構造)を踏まえた教育制度と地方文 ドイツ 化に関する視察及び分析 ○日本あるいは各地域が抱える課題に対する解決策の検討 派遣期間 10/15(月)~10/26(金) 12日間 派遣予定国 ○学校安全・防災教育を積極的に推進し、成果を上げている国の 関係機関及び団体・学校への訪問 アメリカ ○日本における学校安全・防災教育の推進に有益と考えられる施 策や教育内容等を学ぶ 目的・視点 ※1 参加者の所属団は、希望する派遣テーマを参考に調整させていただきますが、推薦時に希望した派遣テーマに配属できない場合もあります。 ※2 訪問先は主に学校又は教育行政機関等です。具体的な訪問先は、事前研修会開催前に教員研修センターのホームページに掲載する予定です。 F-2 F-1 E-2 E-1 D-1 派遣 団数 団名 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 実施計画 -5- 2 派遣期間 子どもたちの「生きる力」を育むためには、学校・地域・家庭 等が教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚し、相互に 連携・協力に努めることが不可欠である。このことから、諸外 学校と地域等の 国の学校における社会体験活動や、地域・家庭・各種団体 連携 等と学校との連携の在り方、行政機関の支援体制等の現状 や取組を調査し、成果と課題について把握・分析し、そこから 得られる知見の活用方法等を考える。 障害の程度や重複化、発達障害を含む多様な障害への対 応等、特別支援教育の更なる充実が求められている。このこ とから、諸外国の学校における校内支援体制、家庭や関係 特別支援教育の 機関及び他校種との連携、並びに専門的な相談・助言体制 充実 等、計画的・組織的な支援の在り方について現状や取組を 調査し、成果と課題について把握・分析し、そこから得られる 知見の活用方法等を考える。 イギリス フィンランド 10/29(月)~11/7(水) 10日間 11/19(月)~11/30(金) 12日間 ○基礎学力の向上や市民性の教育における学校・地域・PTA・教 会の連携に関する視察及び調査 イギリス ○子どもの問題行動を解決するための連携に関する現地視察 10/9(火)~10/20(土) 12日間 ○学校と地域の連携・協働の在り方に関する視察及び調査 10/29(月)~11/9(金) ○社会体験活動、学校支援ボランティア、学校支援地域本部、コ オーストラリア 12日間 ミュニティスクール等の視察及び調査からの考察 ○学校現場におけるインクルーシブ教育及び社会的企業の法制 化された状況での障害者福祉の実態調査 韓国 ○訪問国の実態調査からの今後の日本の特別支援教育の在り方 の探究 ○子どもへの支援の充実を図るための、教育理念や教育形態及 び運用に関する実態と取組の調査 フランス ○学校を含めた教育機関で取り組んでいる指導上の工夫とその課 題に関して、日本の現状との相互比較を通して検討 ○学校教育の情報化・ICT活用を通した教育方法及び校務効率 化等の状況調査(イギリス) ○教育方法に定評のあるICT活用の状況調査(フィンランド) ○両国比較を通して見る日本における望ましい学校教育の情報 化・ICT活用の在り方の検討 9/24(月)~10/5(金) 12日間 派遣予定国 社会の情報化の急速な進展に伴い、ICTを活用した21世 紀にふさわしい学校や授業の在り方についての検討が求め られている。このことから、諸外国の学校におけるICTを活用 学校教育の情報 した「分かる授業」の実現、児童生徒の情報活用能力の育 化・ICTの活用 成、校務の情報化など、学校教育の情報化の推進方策等に ついて、諸外国における現状や取組を調査し、成果と課題の 把握・分析を通して、そこから得られる知見の活用方法等を 考える。 目的・視点 10/29(月)~11/9(金) 12日間 趣旨 国民の誰もが身近にスポーツに親しむことができる生涯ス ポーツ社会の実現や児童生徒の体力・運動能力の向上、心 身の健康に関する関心が高まっている。このことから、諸外国 ○スポーツ(身体活動)を通じた教育に関してカナダの実態と取組 スポーツ・健康教 の学校における学校・家庭・地域等が協働して行う体力・運 の調査 カナダ 育の推進 動能力の向上策、地域スポーツクラブとの連携、心身の健康 ○日本あるいは各地域の学校体育への還元策の検討 教育及び健康相談等の現状や取組を調査し、成果と課題に ついて把握・分析し、そこから得られる知見の活用方法等を 考える。 派遣テーマ ※1 参加者の所属団は、希望する派遣テーマを参考に調整させていただきますが、推薦時に希望した派遣テーマに配属できない場合もあります。 ※2 訪問先は主に学校又は教育行政機関等です。具体的な訪問先は、事前研修会開催前に教員研修センターのホームページに掲載する予定です。 J-2 J-1 I-2 2 1 H-1 I-1 1 G-1 派遣 団数 団名 平成24年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム 実施計画 平成24年度 教育課題研修指導者海外派遣プログラム 事前研修会日程表 1日目 日 程 8:45~9:00 研 修 内 容 (15) 団長・副団長・シニアアドバイザー受付 9:00~9:55 (55) 団長・副団長・シニアアドバイザー事前協議 9:30~10:00 (30) 団員受付 10:00~10:10 (10) 10:10~10:40 (30) 10:40~10:50 (10) 開会式 研修オリエンテ-ション 10:50~11:50 (60) 講義〔教員研修センター主任指導主事〕 11:50~12:00 (10) 分科会の日程説明・移動 休 憩 12:00~13:00 (60) 自己紹介等 13:30~15:00 (90) 講義〔シニアアドバイザー〕 15:10~15:20 (10) 全体会場 昼休憩 13:00~13:30 (30) 15:00~15:10 (10) 会 場 分 科 会 派遣日程の説明〔担当旅行社〕 休憩 分科会場 (各団別) 調査・研究テーマの協議 15:20~17:00 (100) 係別協議 2日目 日 程 研 修 内 容 副団長打合せ 8:50~9:00 (10) 9:00~12:00 分 (180) 科 調査・研究テーマの班別協議とまとめ 会 12:00~13:00 (60) 13:00~14:00 (60) 14:00~14:10 (10) 14:10~15:30 (80) 15:30~15:40 (10) 会 場 事務局 分科会場 (各団別) 昼休憩 研修成果報告書の内容等の協議 休 憩 分 科 会 渡航手続き等〔担当旅行社〕 閉会式 -6- 分科会場 (各団別) 平成24年度 教育課題研修指導者海外派遣プログラム 事後研修会日程表 1日目 日 程 研 修 内 容 11 : 00 ~ 12 : 00 (60) 団長、副団長、シニアアドバイザー打合せ 12 : 00 ~ 13 : 00 (60) 会 場 事務局 昼休憩 13 : 00 ~ 13 : 10 (10) 開会式(各団で実施) 13 : 10 ~ 14 : 10 (60) シニアアドバイザーによる海外研修の振り返り 14 : 10 ~ 14 : 20 (10) 休憩 分科会場 (各団別) 14 : 20 ~ 17 : 00 (160) 研修成果の活用レポートの協議とまとめ 2日目 日 程 9 研 修 内 容 8 : 50 ~ : 00 (10) 副団長打合せ 9 : 00 ~ 12 : 00 (180) 研修成果報告書の協議とまとめ① 12 : 00 ~ 13 : 00 (60) 会 場 事務局 分科会場 (各団別) 昼休憩 13 : 00 ~ 14 : 20 (80) 研修成果報告書の協議とまとめ② 14 : 20 ~ 14 : 30 (10) 休憩 14 : 30 ~ 14 : 50 (20) シニアアドバイザーからのまとめ 14 : 50 ~ 15 : 00 (10) 閉会式(各団で実施) -7- 分科会場 (各団別)