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桑波田啓之調査役に聞く - JBIC 国際協力銀行
INTERVIEW JBICは「海外展開支援融資ファシリティ」の一環として、2013年11 月、チリ共和国のアントコヤ銅鉱山開発プロジェクトを進めるMinera チリの銅鉱山の権益取得及び 開発事業を支援 資源安定確保と日系企業のビジネス支援を両立 資源ファイナンス部門 鉱物資源部 第1ユニット 菊池邦康 ユニット長、桑波田啓之 調査役に聞く Antucoya(アントコヤ社)に対し、1億9,500万米ドル(JBIC分)限度 のプロジェクトファイナンス(PF)による貸付契約を結びました。ま た、同プロジェクトに参画する丸紅(株)に対しても、4億7,900万米 ドル(JBIC分)限度の貸付契約を結びました。丸紅がアントコヤ社の株 式30%を取得し、アントコヤ銅鉱山の開発を行うことで、同鉱山で生 産される銅地金の3割が日本の電線・伸銅品メーカーの海外生産拠点な どに供給される予定です。 日系企業の海外における 銅需要拡大に応える 銅は、日本の産業にとって必須の金属資源ですが、 電力インフラ整備を進める新興国を含めて世界的な需 要増が見込まれています。かつて世界有数の銅産出国 であった日本も、現在は銅地金の原料となる精鉱の全 菊池 ユニット長 量を輸入しており、銅資源の安定確保が大きなテーマ となっています。 日本の電線・伸銅品メーカー等の銅ユーザーは、海 桑波田 調査役 アントコヤ銅鉱山開発 プロジェクトに対する プロジェクトファイナンス 2013年11月5日に、JBICはMinera Antucoya との間で、1億9,500万米ドル 外での需要増に対応するため、海外展開を進めてお ランサ銅鉱山などの実績もあり、これまでに築いた良好 ています。 また、大手電線・伸銅品メーカーにヒアリングを行 鉱して品位を高めた銅精鉱を日本などに輸出するもの 等、様々な角度からプロジェクトの評価を行いました。 り、日系企業の海外生産拠点における銅需要も高まっ な信頼関係をもとに課題を解決することができました。 「これまでの支援プロジェクトは、硫化銅鉱石を選 い、海外における高品質な銅地金に対するニーズの増加 でしたが、本件では、選鉱しにくい酸化銅鉱石に含ま れる銅分を硫酸で抽出して電気製錬を行う技術によ 公的金融機関を含む様々な国の金融機関が参加した本件 特色です。丸紅によるアントコヤ社の株式取得によ の調印に至ることができました」と桑波田調査役は調印 は、スポンサーのみならず時にレンダー間の意見調整も り、鉱山サイトで銅地金にまで仕上げることが大きな 大変でしたが、粘り強い交渉により、最終的に融資契約 り、同鉱山の年間平均生産量約8万トンの3割(約2.4万 までの経緯を語ります。 アジアを中心とする日系電線・伸銅品メーカーなどに チリ、銅資源メジャーとの「互恵」を促進 トン)を丸紅が引き取り、需要拡大が見込まれている 販売する予定です」と菊池ユニット長は説明します。 初の銅地金プロジェクト支援 酸化銅鉱石を原料とするプロジェクトは、 チリだけでな く世界の銅資源メジャーが注目しています。 「硫化銅鉱石は浮遊選鉱という選鉱法が確立している 「JBICにとって、銅地金のみを生産する鉱山開発プ のに対し、 酸化銅鉱は選鉱が難しいために今回採用され カナダ輸出開発公社、 (株)みずほ銀行、 は国際商品市場で取引されるコモディティなので、ス 長期的に銅鉱石の減少が見込まれている中、 技術確立後 Natixis、Corpbanca、Banco del Estado de いう商慣行がありません。単一の事業収益から返済い また、 本鉱山では、 酸化銅鉱床の下に硫化銅鉱床の存在 ル) であり、チリのアントコヤ銅鉱山の開 が下落した場合などを想定したリスク対策が不可欠で 性があります」 と桑波田調査役は、 アントコヤ鉱山開発の 源メジャーの英国法人Antofagasta PLC(アントファガ 「さらに、 グローバル経済が進展する中で、 銅の原産国 JBICがPFを供与したロスペランブレス銅鉱山やエスペ ら海外の日系銅ユーザーへ直接銅を供給するという銅地 (JBIC分)限度のPFによる貸付契約を締結 しました。本融資は、 ドイツ復興金融公庫、 (株)三井住友銀行、ING Capital LLC、 Chileとの協調融資(総額6億5,000万米ド 発に必要な資金を融資するものです。 アントコヤ銅鉱山権益取得・ 開発事業に対する融資 2013年11月27日、JBICは、丸紅(株) と、 民間金融機関との協調融資で4億7,900万 米ドル(JBIC分)限度の貸付契約を締結し ました。 本融資は、 アントコヤ銅鉱山開発プロジ ェクトの実施主体であるMinera Antucoya の株式の30%を親会社であるAntofagasta ロジェクトに対する支援は初のケースでした。銅地金 た技術が確立するまでは利用されていませんでした。 中 ポット取引ないしは1年契約が原則で、長期引取りと の現在では酸化銅鉱石は重要な銅供給源となっています。 ただくPFでは、販売先が見つからない場合や販売価格 も期待されており、 更なる銅資源の確保につながる可能 す。幸い、JBICは、アントコヤ社の親会社である銅資 今後について語ります。 スタ社)と90年代からの付き合いがあり、さらに、 のチリにおいて採掘∼製錬まで行い銅地金の形でチリか 金供給ルートの確立に貢献できることも大きなポイント です。 本プロジェクトを通じて、 日本企業と銅資源メジャー であるアントファガスタ社との関係強化にもつながり、 日 本の中長期的な銅資源確保にとっても大きな意義のある プロジェクトであると考えています」 と菊池ユニット長は 総括します。 PLCから取得するために必要な資金及び なお、 本プロジェクトは、 Euromoney社発行のProject 金を丸紅に融資するものです。 the Yearのひとつに選出されました。 アントコヤ銅鉱山の開発に必要な長期資 Finance Magazine誌、 Infrastructure Journal誌のDeals of