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先端教養科目:最新の電子情報技術
H24.11.14 最新の電子情報技術 光通信の話 工学研究科電気電子情報工学専攻 井上 恭 情報伝達は何らかの媒体/物理量を介して行われる (音声) (糸電話) (トランシーバー) (黒電話) 現在の通信システムの伝達 媒体は主に光ファイバ 伝達される情報はもっぱらデジタル信号 物理量(電圧など) アナログ信号 デジタル信号 時間 1 1 0 1 1 1 0 1 「ビット」 時間 利点:波形が崩れても元に戻せる → 情報伝達に便利 様々な信号処理が可能 → 計算機を代表とする情報処理 1秒当りのビット数が多いほど伝達情報量は多い 情報通信量の単位:bps (bit-per-second) ちなみに、ブロードバンド(Broad 送られるビット列のパターンは様々。 Band)とは 基本周波数 「10101010」 f0 時間 f0 2 「10001000」 時間 f0 4 「10000000」 時間 ・ ・ ・ 成分数 一般の信号は様々なパターンの組み合わせ = 多数の周波数成分の重ね合わせ 周波数 ・ ・ ・ だから、周波数範囲が広いほどたくさんの情報が送れる。 時間 成分数 成分数 時間 0 周波数 0 ブロードバンド信号 周波数範囲(バンド)の広い(ブロード)信号 = 情報量の大きい信号 ブロードバンドサービス 情報量の大きい通信サービス 周波数 光通信は古くからあった のろし (伝達媒体は空間) 信号灯 が、本格的な通信システムは電気から 無線通信 電話線(銅線) ビット情報を運ぶ物理量は電気の振動(電磁波) 「0」 「1」 「1」 「0」 「1」 「0」 振幅変調(AM) 時間 「0」 「1」 「1」 「0」 「1」 「0」 周波数変調(FM) なお、1秒間あたりの振動数 = 周波数 (ヘルツ, Hz) 基本周波数が高いほど情報伝達には有利 「0」 「1」 「1」 「0」 「1」 「0」 基本周波数:高 時間 「0」 「1」 「0」 基本周波数:低 周波数多重伝送 ch.1 ch.2 ch.3 周波数 そこへ、光通信研究が登場 レーザーの発明(1960年) 最初のレーザー発振器 ◆周波数の高い電磁波を出力 ◆単色性 ◆指向性が良い 電磁波の周波数 104 106 108 1010 1012 1014 1016 1018 周波数(Hz) 名称: 長波 中波 短波 超短波 マイクロ波 ミリ波 赤外線 可視光線 紫外線 X線 高い周波数 → 情報伝送量:増大の可能性 単色性 太陽光 プリズム レーザー プリズム 多チャンネル化の可能性 指向性 光エネルギーの有効利用 レーザー He-Neレーザーを使った空間光通信実験@霞ヶ関ビル But、これだけではまだ足りない こんな研究もあった レンズ導波管 当然、無理 ブレイクスルー1 実用向き光源の登場 半導体レーザーの室温動作(1970年) ブレイクスルー2 光伝送用の伝送媒体登場 低損失な光ファイバの実現(1970年) 損失 (dB/km) 損失L 0 dB 10 dB 20 dB 30 dB 透過率T 1.0 0.1 0.01 0.001 T 10 L / 10 年 これらを契機に、光通信の研究が本格化 では、光ファイバとは 光が屈折率の違う境界面で全反射しながら伝搬 光ファイバの一番の特長は低い伝搬損失 散乱や吸収のために光が減衰 1kmあたり約 0.2dB (透過率 95.5%) 10kmあたり約 2dB (透過率 63%) 一方、同軸ケーブル(銅線)に電気信号を通す場合、 周波数が高いほど伝搬損失が大きくなる。 ex. 10dB/km for 10MHz 光ファイバ伝送系 送信器 同軸ケーブル伝送系 送信器 受信器 中継器 中継器 中継器 受信器 ついでながら、光通信についてよくある誤解 「光は速いから通信に向いている」 (光速は高速) がしかし、 スピードが速いからといって情報量が多いわけではない。 単位時間当たりに送れるビット数は同じ。 そもそも、電磁波の伝搬速度は大体みな同じ。 光ファイバの低損失性を活かすべく研究が進展 損失 (dB/km) 光ファイバの損失の波長依存性 1.2 0.8 第二世代 0.4 第三世代 0 1.0 1.2 1.4 波長 (mm = 10-6 m) 1.6 0.8mm帯 伝送 1.3mm帯 伝送 低損失 光ファイバ 分散シフトファイバ 光変調器 室温発振 半導体レーザ 1.5mm帯 WDM伝送 1.5mm帯 単一伝送 光増幅器 光導波路 (AWG等) 単一モード半導体レーザ 年代 1970 1980 1990 最初は0.8mm帯: 当初は、長波長帯が低損失であることが分かっていなかった。 最初の室温発振半導体レーザが0.8mm帯だった。 次に1.3mm帯: 第2の低損失帯。 通常シングルモードファイバの分散=0。 ファイバ伝送では、損失の他にも分散が重要な要因 分散: 波長によって伝搬速度が異なる性質 1パルスが複数の周波数成分から成っていると、 連続パルス列だと、 通常ファイバは波長1.3mmで分散ゼロ 通常ファイバ コア クラッド 分散値 (ps/km/nm) 通常ファイバ 分散シフトファイバ 分散フラットファイバ 波長 (mm) しかも、普通の半導体レーザーは複数波長光を出力 ファブリペロー型半導体レーザ しかしやはり、1.5mm帯(最低損失波長帯)へ 分散シフトファイバの開発 屈折率 半径方向 単一波長出力半導体レーザの開発 DFB型半導体レーザ さらに、光ファイバ増幅器の開発 ~伝搬損失の克服~ 光ファイバ増幅器 信号光 1.55mm 光結合器 ポンプ光レーザ エルビウムイオン添加 ファイバー(数m~数十m) 利得:1000 ~ 10000倍 さらに、波長多重伝送技術の開発 ~低損失波長帯の有効利用~ 損失 (dB/km) 1.2 0.8 0.4 0 1.0 1.2 1.4 1.6 波長 (mm) 光受信器(l1) 光送信器(l1) 光送信器(l2) 光送信器(l3) 光送信器(l4) 光 合 波 器 一括増幅 光 分 波 器 光受信器(l2) 光受信器(l3) 光受信器(l4) 情報伝送量の変遷 伝送容量(Gbit/s) 100 波長分割多重 (WDM)伝送 10 単一波長 伝送 1 0.1 0.01 1970 光ファイバ 半導体レーザ 1980 year 1990 光ファイバ増幅器 2000 さらに、波長を利用した経路設定 ~単なる信号伝送からの進化~ 光ファイバ通信は現在の通信システムの屋台骨 光通信の話 おしまい このスライドはホームページに掲載 「井上恭」で検索→「井上恭 - 極限光通信工学領域」→「講義ノート」