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学部1-2年生用
大学等で開発経済学関連の講義を担当されている方へ • このスライドは、戸堂康之著の教科書『開発経済学入門』(新世 社)の第2章を基に書かれたものです。 • 教科書の図は3色刷りですが、このスライドの図はフルカラーに なって見やすくなっています。 開発経済学入門 第2章 新古典派経済成長論 • この教科書を大学等の講義に利用する場合には、必要事項を承 諾いただければ、全ての章のPPTファイルをお渡しすることができ ますので、希望される方は戸堂([email protected])までご連絡 ください。 • それらのPPTファイルをご自分の講義等で使用される場合には、 自由にPPTファイルを改変されてもかまいません。 戸堂康之 早稲田大学政治経済学部 2 経済成長(1人当たり実質GDPの成長)の 2つの源泉 1.1 生産と消費の仕組み 労働者 労働力 生産物 (付加価値) 資本ストック 資本の所有者 (設備・機械等) 技術 所得 (銀行、株主等) 残りは貯蓄 貯蓄=投資 (閉鎖経済の 場合) 所得の一部は 消費 3 • 資本蓄積 – 1人当たりの資本ストック(パソコン、機械、建 物、インフラ[道路、インターネット網]など)↑ 1人当たり生産量↑ • 技術進歩 – ただし、技術進歩とは広く定義されるべきもの • 工学的新技術・新商品開発 • 生産現場での「カイゼン」 • 経営・労務・財務・営業における改革 – 「イノベーション」というより「創意工夫」 4 2.2 ソロー・モデル 生産関数 • 仮定 ① 閉鎖経済 • 海外からの資金や財の流出入はない ② 一定の貯蓄率 • 所得のうち一定の割合を貯蓄 金融機関を経て、最終的には生産活動に 投資 ③ 一定の人口成長率(人口=労働者数) ④ 一定の技術進歩率 • どのようにすれば技術がより進歩するかに ついては考察しない 5 ソローモデルの均衡 6 低い資本ストックから始まる長期的な変化 7 8 2.3 技術進歩を想定したソロー・モデル 1人当たり資本ストック 長期的には 一定の成長率 資本減耗や人口増加による 1人当たり資本ストックの減少分 Aにおける レベル 時間 技術進歩によるシフト 1人当たり生産 投資による1人当たり資本 ストックの増加分 A G H I 長期的には 一定の成長率 Aにおける レベル 1人あたり資本ストック量 時間 9 10 貯蓄率・投資率の増加の効果 資本減耗や人口増加による1人あたり 資本ストックの減少分 投資による1人あたり 資本ストックの増加分 (貯蓄率が高い時) 2.4 投資率・人口成長率の増減に よる定常状態の変化 (貯蓄率が低い時) A 11 G1 G2 1人あたり資本ストック量 12 1人当たり実質GDP(ドル,PPP,2011年) 500 50 00 50000 人口成長率の増加の効果 シンガポール 米国 日本 英国 資本減耗や人口増加による 1人あたり資本ストックの減少分 (人口増加率が高い時) マレーシア ペルー (人口増加率が低い時) タイ中国 インドネシア インド ベトナム 投資による1人あたり 資本ストックの増加分 カンボジア ナイジェリア ザンビア ・ タンザニア マリ リベリア 0 20 40 投資率(%,1980-2011年平均) 東アジア 南アジア アフリカ 中南米 60 先進国 その他 出所:Penn World Table 8.0 A G1 G2 1人あたり資本ストック量 13 14 1人当たり実質GDP(ドル,PPP,2011年) 500 5000 50000 2.5 条件付き収束 シンガポール 米国 日本 英国 • 絶対収束 – 所得が低いほど、所得成長率が高い • 条件付き収束(本来のソローモデルの結論) – 定常状態から離れていれば離れているほど、 成長率が高い – 貧困国の定常状態が低ければ、 その成長率は必ずしも高くない マレーシア 中国タイ ペルー インドネシア インド ベトナム カンボジア ナイジェリア ザンビア ・ タンザニア マリ リベリア 0 東アジア 1 2 3 人口成長率(%,1980-2011年) 南アジア アフリカ 中南米 4 先進国 その他 出所:Penn World Table 8.0 15 16 収束の直観的な理由 kが小さいとき 1人当たり生産 (対数目盛) 資本の限界生産物(「収益率」)が大 A国(投資率が高い、または 人口成長率が低い) 投資によって生産が大きく上昇 長期的には 同じ成長率 一定の割合を貯蓄するので、貯蓄も大きく上昇 資本ストックは急激に上昇 貧しいときには 非常に高成長 つまり、kが小さいときには資本ストックの増加分 が大きく、経済の成長が早い 1人当たり実質GDP成長率(%,PPP,1960-2011年) -2 0 2 4 6 資本の限界生産物:1単位の資本を追加的 に投入することによって得られる生産物の 増加分 貧しくても 低成長 中国 タイ インド マリ 2.6 政策の効果 • 貯蓄率・投資率の向上 – 農村部の金融機関の拡充 シンガポール • 日本の郵便貯金、現代のモバイルバンキング マレーシア ペルー インドネシア – 海外からの投資の誘致 • 人口成長率の減少 – 1人っ子政策・避妊教育の拡充 – ただし、技術進歩を阻害するかも(後述) • 技術進歩率の向上 – 次章で詳述 英国 米国 タンザニア ・ ザンビア ナイジェリア 500 東アジア 5000 1人当たり実質GDP(ドル,PPP,1960年) 南アジア アフリカ 時間 18 17 条件付き収束は成り立っている 日本 B国(投資率が低い、または 人口成長率が高い) 中南米 先進国 50000 その他 出所:Penn World Table 8.0 19 20 ソローモデルの結論のまとめ • 長期的には、1人当たりGDP成長率=技術進歩率 – 資本蓄積だけで長期間成長することはできない (資本蓄積が進むにつれ、資本の「収益率」が 下がるので) – 技術進歩なしには、長期的に成長できない • 短期的には、資本蓄積による成長が可能 – 投資↑ 短期的成長↑ 長期的な所得レベル↑ • 条件付き収束が成り立つ 21