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幕藩体制の動揺 - 広島県立教育センター

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幕藩体制の動揺 - 広島県立教育センター
地理歴史科(日本史B)学習指導案
広島県立賀茂高等学校
植
Ⅰ
田
稔
授業計画
1
日
時
2
実施クラス・教室
3
単元名
4
単元について
平成24年11月30日(金)
6時間目
2年2組・社会科教室
幕藩体制の動揺
(1)単元観
高等学校学習指導要領日本史Bの内容「(5)近世の社会・文化と国際関係
ウ国際環境の変化と
幕藩体制の動揺」には「欧米諸国のアジアへの進出,学問・思想及び産業の新たな展開に着目して,
幕藩体制の動揺と近代化の基盤の形成について理解させる。」とある。そして,高等学校学習指導要
領解説地理歴史編には,「幕藩体制の動揺については,内的要因として,商品経済の発展に伴う農民
層の分解と農村における商品生産の拡大という幕藩体制の構造的変化により起こったものであるこ
と」に着目させること,さらに「農村や都市の変化の様子や幕府・諸藩の窮乏,百姓一揆・打ちこわ
しなどの増加などに着目して,幕府・諸藩がそれらに対してどのように対処したのか,諸改革の基本
的な動向と特徴を把握させる」ことが求められている。
近代日本の形成とアジアの内容本単元「幕藩体制の動揺」では,1716 年~ 1840 年代(享保期~天
保期),将軍でいえば8代将軍吉宗~12代将軍家慶の時期をあつかう。この時期は,幕藩の財政悪
化,農村の崩壊,都市問題の深刻化,そして欧米列強の接近など幕藩体制が動揺した時期である。幕
府や諸藩ではこれらの問題に対し,いわゆる「改革」政治をおこなって局面の打開を図ったが,幕藩
体制の根本原理である石高制(年貢米納制)を前提とする政策では解決の見込みは立たず,多くの課
題をかかえたまま開国・幕末の社会変動を迎えることになる。本単元では欧米列強の接近を除く幕藩
体制の動揺をあらわす諸事象の原因を貨幣経済の進展(全国ネットの流通と農村への貨幣経済の浸透)
に求めるとともに,それが幕藩体制の仕組みの中では解決できない問題であることを構造的に理解す
ることを目的として授業を組み立てる。
(2) 生徒観
本校第2学年は7クラス。文科型3クラス,理科型4クラス。第2学年での地理歴史科の選択科目
では,文理共通しての必履修科目「世界史A(2単位)」に加えて,文科型は「日本史B(4単位)」
と「地理B(4単位)」の選択,理科型は「地理B(2単位 )」の履修となっている。本時のクラス
2年2組は文科型,習熟別クラス編成でのAクラス(標準クラス)である。
生徒は素直・従順で,授業態度も良く,与えられた課題に対してはまじめに取り組むが,自ら主体
的に学習を深めていこうとする意欲は今ひとつである。特に本単元のように,経済の原理を取り入れ
て理解することや,構造的に社会の現象を捉えることなどに課題がある。
-1-
(3) 指導観
シラバスとの関係で,相当なスピードで,内容を進める必要があり,知識注入型の授業に陥りがち
であるが,その中でも考察の過程に重点を置くために発問に工夫をこらした「探究型」の授業を展開
したいと考えている。そのため,生徒の知的好奇心を高め,思考力・判断力・意志決定力を育むこと
を目標とした授業を行う。手段として授業展開に対応したワークシートを授業で活用する。定期考査
では論述説明問題を多く取り入るなど,評価の段階にまで思考力や表現力を求めることで指導に一貫
性を持たせる。
5
単元の目標
18世紀~19世紀前半(享保期~天保期)に幕藩体制が動揺していったことを,幕藩権力の財政難,
農村の崩壊と都市問題の発生,鎖国体制の動揺,幕藩体制を否定する価値観の形成の4つの観点から
分析させ,幕藩制動揺の原因を「探究」させる。
6
単元の指導計画(9時間)
小
単
元
(1) 享保の改革と社会の変容
(2) 田沼時代と寛政の改革
7
授業タイトル
時間配当
①享保の改革
2時間
②飢饉と一揆
2時間(本時)
①田沼時代の幕政改革
1時間
②寛政の改革
1時間
(3) 文化文政時代と天保の改革
文化文政時代と天保の改革
1時間
(4) 列強の接近
列強の接近(鎖国体制の動揺)
1時間
(5) 化政文化
化政文化
1時間
本時の目標(2時間)
幕藩体制の動揺を表す事象の一つである“大飢饉の発生”と“百姓一揆の増加と変質”,そしてそ
れらの結果としての“農村の崩壊”と“都市問題の発生”を分析させ,それらの原因及び影響を探究
させる。
8
単元の評価規準(本時を含む)
関心・意欲
・態度
幕藩体制の動揺の原因をつきとめることに対する関心と課題意識をもち,主体的・意
欲的に探究しようとしている。
思考・判断 (1)享保改革の諸政策を「元禄・正徳期から顕著になった幕藩支配の矛盾点の克服」とい
う視点から論理的に考察している。
(2)18世紀以降の大飢饉・一揆の発生を享保期以降の幕政・藩政改革による収奪強化,お
よび農村への貨幣経済浸透と百姓の階層分化から多面的に考察している。※本時は(2)
-2-
資料活用の 幕藩制動揺に関する資料から,探究に必要な必要な情報を読み取る技能を身に付ける。
技能・表現 (1)史料を読解し,キーワードと探究に必要な記述をピックアップする技能を身に付ける。
(2)統計・グラフ・図などを探究に必要な形に加工したり,探究に必要なデータを読み解
く技術を身に付ける。
知識・理解
18 世紀~ 19 世紀前半は幕藩制社会の動揺期であることを(1)~(5)の視点から理解し
ている。
(1)石高制を基礎とする幕藩制の下で,元禄頃から貨幣経済が発達(市場経済の発達)し
た結果,「米価安諸色高」というアンバランスな物価状況が生まれ,幕府財政を圧迫し
た。
(2)享保改革は幕府の財政再建を主たる目的とする政治改革で,貨幣経済が農村に広く浸
透していることを前提とした再建政策が実施され,一時的ではあるが幕府財政は好転し
た。
(3)享保改革で農村の余剰を収奪した結果,農村の自然災害などに対する耐性は低下し,
大飢饉が発生するようになった。また,享保期以降は百姓一揆が急増し,一揆の形態も
代表越訴から強訴・打ちこわしに変化した。
(4)農村への貨幣経済の浸透にともなって,本百姓の没落,百姓の階層分化が起こり,地
主制が広まった。その結果,小作などの貧農の増加によって,領主の収奪や自然災害
などに対する耐性が著しく低下した百姓が増加し,飢饉,一揆発生の原因となった。
(5)享保期以降の農村の崩壊によって,農村から都市への人口流出が激しくなり,都市で
は下層町人が増加し,失業問題,生活環境問題,犯罪の増加,打ちこわしの増加など
の都市問題が発生した。
9
10
※本時は(4),(5)
使用教科書・副教材
教科書
「詳説日本史B」 (山川出版社)
副教材
「新詳日本史」(浜島書店),「精選日本史史料集」(第一学習社)
参考文献
1)横山十四男著
『百姓一揆と義民伝承』(歴史新書85)
日本歴史11
教育社
2)深谷克己
「百姓一揆」『
( 岩波講座
3)深谷克己
「幕藩制社会と一揆」『
( 一揆/一揆史入門』(東大出版会)所収
-3-
近世3』
1977 年
所収)
1976 年
1981 年)
Ⅱ.授業展開
(1)-②
飢饉と一揆(1/2時間)
学習内容
発問(教師の活動)
天明の大飢饉 ◆史料を読んで,どのようなことが書か
れているか読み取ってみよう。
導
○史料で記述されている状態を何とい
うか。
○史料の飢饉はいつ,どのようにして
入
起こったのか。
資
料
教授・学習活動
生徒が習得していく知識・技能
T:史料読解を指 ◆史料から江戸時代に発生した飢饉について関
史料「天
示する。
心をもつ。◇史料読解。
明の大飢 P:史料を読む。 ○史料は飢饉の悲惨な状況をあらわしている。
ノートの
饉」
○1782年の冷害,83年の浅間山噴火を原因とする
T:発問する。
「天明の大飢饉」が起こった。東北で被害が大きく
p202記述 P:教科書で調べ
て答える。
餓死者は数万とも90万人ともいわれる。
江戸時代の三 ○江戸時代の大飢饉はいつごろ発生 ノートの T:発問する。
○江戸時代の三大飢饉は
大飢饉
しているか。
享保の飢饉 1732年~ 西日本 虫害など
グラフ「百 P:教科書などで
姓一揆の
調べて答え
天明の飢饉 1782年~ 冷害,浅間山噴火
天保の飢饉 1833年~ 大雨,冷害
推移」
る。
1730年代からちょうど50年ごとに発生している。
飢饉と一揆
○飢饉と百姓一揆の発生にはどのよう ノートの T:発問する。
○大飢饉が発生した年には,一揆の発生件数が急
な関係があるか。
増している。飢饉の発生と一揆の発生は関連が
グラフ「百 P:グラフを見て
ある。
姓一揆の
答える。
○飢饉が発生した年に一揆が急増す 推移」
○自然災害などで生産が大きく損なわれた年に,幕
T:発問する。
るのはなぜか。
P:予想して答え
府や藩が年貢徴収などを行おうとすると,百姓は
る。
生活を守るため要求をかかげて直接行動を起こ
した。
○大飢饉が発生し,百姓一揆が急増
したのはいつ頃からか。
本時の課題① ●享保の頃から大飢饉が発生し,百
姓一揆が急増したのはなぜか。
を提示
展
開
飢饉・百姓一 ○飢饉発生の原因は何か
揆発生の原因
○自然災害は18世紀以降の固有ので
きごとか。
○江戸時代前半には自然災害を原因
とする飢饉は起きていないか。
○寛永の飢饉も餓死者が出たが,18
世紀の飢饉に比べると被害が小さ
く,一揆の発生件数も少ないのはな
ぜか。
○享保期の頃から大きな被害をともな
う大飢饉が発生するのはなぜか。
○享保期,幕府はどのような政治をお
こなったか。
○享保の改革で幕府が財政再建に一
定の成果をあげることができたのは
なぜか。
○享保の改革の結果,大飢饉が発生
するようになったのはなぜか。
○享保期から百姓一揆が急増するの
はなぜか。
百姓一揆の形 ○百姓一揆の形態にはどのようなもの
態変化
があるか。
教科書
T:発問する。
○大飢饉が発生し,百姓一揆が急増したのは,
1730年の享保の飢饉が発生した頃,江戸幕府が
グラフ「百 P:グラフを見て
8代将軍吉宗のもとで享保の改革をおこなってい
姓一揆の
答える。
推移」
た頃からである。
T:発問する。
● 享保の頃から大飢饉が発生し,百姓一揆が急増
したのはなぜか,説明できるようになることが本時
P:本時の課題を
把握し,予測
の課題である。
する。
T:発問する。
○飢饉発生の直接的原因は自然災害である。
P:答える。
T:発問する。
○自然災害は18世紀以降の固有のできごとではな
P:答える。
く,いつでも起こりうることである。
教科書 T:発問する。
○江戸時代前半,1642年~,全国的な異常気象
P179 P:答える。
(大雨,洪水,干ばつ,霜…)によって,大飢饉が
T:説明する。
発生している。(四大飢饉に数えられる「寛永の飢
饉」)
○寛永の飢饉では,幕府・各藩が飢饉対策を積極
ノートの T:発問する。
的におこない,飢饉の再発防止のため,百姓の
グラフ「百 P:予測し,答え
負担を軽減するとともに,勧農政策を実施して生
姓一揆の
る。
産力の向上に努めたため,飢饉の被害は最小限
推移」 T:説明する。
(復習内容であ
に抑えられ,一揆発生件数も少なかった。
ることを確認)
【文治政治への転換,元禄の経済発展の背景】
T:発問する。
○幕府が飢饉発生の対策を怠ったので,大飢饉が
P:予測する。
発生したのかもしれない…
既習 T:発問する。
○享保の改革では幕府財政再建のため,定免制の
ノート P:答える。
採用,専売制の導入などによって,農村に蓄積さ
T:説明する。
れた商品作物生産(農間余業)によって得られた
(復習内容であ
余剰を収奪した。 その結果,農村の余剰および
ることを確認)
余剰蓄積の機会が奪われたため,災害時への耐
P:答える。
性が低下し,大飢饉が起こりやすい状況が作り出
T:説明する。
された。
T:発問する。
○享保期からの百姓一揆急増の原因も飢饉発生の
P:答える。
原因と同様に説明できる。
ノート T:説明する。
○百姓一揆は広い意味では違法な手段による「お
P:説明聞く。
上」に対する要求運動を意味し,その手段により,
①愁訴,②越訴,③強訴,④打ちこわし,⑤蜂起
などに分類される。
ノートの
展
開
○百姓一揆の形態は時期によって,ど
のように変化しているか。
◆統計資料をグラフ化してみよう。
○享保期の前と後では一揆の発生形
態はどのように変化しているか。
本時の課題② ●享保前後で一揆の形態が変化する
の提示
のはなぜか。
○元禄・正徳期までの百姓はどのよう
にして問題の解決をはかろうとして
いるとがうかがえるか。
○元禄・正徳期までの百姓が権力者
を信頼していたのはなぜか。
ノートの T:発問し,作業 ○享保期前の元禄・正徳期では,越訴・愁訴が多く
統計資
を指示する。
く,蜂起や打ちこわしは非常に少ない。
料およ P:作業し,グラ ○享保期後の享保・宝暦期では,強訴が最も多くな
びグラフ
フや統計資料
り,打ちこわしも増加してきた。
から答える。
T:発問する。
P:答える。
T:発問する。
P:答える。
○享保期以降の百姓はどのようにして
問題の解決をはかろうとしているか。
T:発問する。
P:答える。
○享保期以降の百姓が権力者を信頼
しないのはなぜか。
T:発問する。
P:答える。
○元禄・正徳期までの百姓には権力者に対する信
頼感があり,その力を借りて,問題解決を図ろうと
している。
○権力者が百姓の生活を保障を大前提として,年
貢を徴収している。
「財の余らぬ様, 不足なき様に…」
百姓の余剰を完全には収奪しない。(農間余業か
ら得られる収益の黙認)=幕藩財政にゆとりあり
幕藩権力と百姓は共存関係にある。
○享保期以降の百姓には権力者に対する信頼感
がなく,その力を頼んでも問題は解決されないと
考えている。そのため,実力を行使して,要求を
認めさせようとしている。
○権力者は百姓の「幸福」を全く無視して,年貢を
徴収している。
「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」
百姓の余剰,さらに余剰を蓄積する機会が奪わ
れ,自然災害に対する耐性が奪われた。
=百姓の余剰をめぐり,幕藩権力と百姓が階級
的に対立。
終 本時のまとめ ●享保期以降,大飢饉が発生し,百 本時の T:発問し,文章 ○享保改革に見られるように幕藩財政再建のため
姓一揆が急増したのはなぜか。
ノート,
にまとめるよ
に農村の余剰を収奪すると,自然災害への耐性
結
●享保期以降,百姓一揆の形態が代 メモなど
う指示する。
が弱められ,大飢饉が発生しやすい状況が生ま
表越訴型から強訴・打ちこわしなど
P:答えを文章に
れた。農村を大飢饉に導く幕藩の政策は百姓か
実力行使を伴うものに変化したのは
まとめる。
らの信頼を低下させ,一揆の形態は実力行使をと
なぜか。
もなう強訴や打ちこわしが主流となった。
(1)-②
飢饉と一揆(1/2時間)
学習内容
発問(教師の活動)
百姓一揆の原 ◆史料 A,Bは百姓一揆の原因を論
因
じたものである。それぞれ,どのよう
導
なことが書かれているか読み取って
みよう。
○史料 Aでは百姓一揆はなぜ起こると
論評しているか?
入
前時の復習
資
料
プリント
史料
A『秘本
玉くし
げ』
B『世事
見聞録』
○史料 Aの一揆の原因とされる「上の 前時の
非」とは具体的にはどのようなことを ノート
さすのだろうか。前時の授業内容か
ら推測してみよう。
○史料 Bでは百姓一揆はなぜ起こると
論評しているか?
本時の課題① ●史料 Bのような福有人と困窮人とが
の提示
偏っている農村 (百姓の階層分化)
はどのようにして生まれ,社会にど
のような影響を与えたのか。
教授・学習活動
生徒が習得していく知識
T:史料読解を
○元禄時代の武士のあり方に関する二つの価値観
指示する。
(戦国型武士道と元禄型武士道)の対立が赤穂
事件の背景であった。
P:史料を読む。
T :発問する。
P :答える。
T :発問する。
P :答える。
T :発問する。
P :答える。
T :課題を提示。
P :課題を確認。
○史料 Aでは,一揆は百姓の困窮から起こるが,そ
の背景には「上を恐れない」意識が百姓にあり,
その意識は「上の非」によるとして,一揆発生の責
任は為政者にあるとしている。
○「上の非」とは幕藩権力が自己保存(財政再建)
のため,百姓の「幸福」を全く無視して(飢饉対策
を講じることなく),年貢を徴収していったことでは
ないだろうか。【前時の授業内容の復習】
○史料 Bでは,一揆は必ずしも領主が年貢を責め
取るから起こるのではない!と述べている。
そして,一揆が起こる場所では
福有人と 困窮人と
その
ゆうよ
が偏っていて,その土地の
有余のもの
が大勢の
こまえ
小前から富を奪っているので,その苦痛から一揆
が起こると分析している。
◆本時は百姓の階層分化の原因とその社会的影
響を学ぶ。
百姓の階層分 ○百姓が階層分化した農村はどのよう プリント
化
な状態になるか。
史料
○百姓が階層分化した農村では一揆
展
が発生しやすいのはなぜか。
開
T :発問する。
P :資料読解し,
答える。
○富はごく一部の地主(豪農)層に集中し,多数の
百姓は貧しく,富を蓄積することができない。
一揆が発生しやすい状況が村内でつくられる。
貧しい百姓=小作層にとって,富を奪い取るの
は,領主ではなく,高額の小作料を取る地主。
貧しい百姓が階級的に対立するのは,村内の地
主。 村役人となった地主(豪農)の不正を追及
し,公正な村の運営を求める小百姓・小作人によ
る村方騒動が多発!
百姓の経営規 ○統計資料では百姓の経営規模はど プリント T :作業を指示す ○17世紀後半から没落する本百姓が増加しはじ
模の推移
のように変化しているか。
資料
る。
め,享保期には43%の百姓が水呑百姓になって
◆データをグラフにあらわしてみよう。 河内国下 P :作業し,資料
いる。水呑百姓はその後も増加し,天保期には60
小坂村の
を読解し,答え
%を越えた。
データ
る。
百姓の階層分 ◆統計資料のデータの村に近い,摂 プリント
化の原因
津国の豊かな農家の家計簿から,こ 資料
商業的農業と
の時代の農業経営実態を見てみよ 摂津国西
階層分化
う。
成郡農家
○資料の農家の農業経営の特徴はど の家計簿 T :発問する。
○資料の農家は米・麦などの穀物のほか綿・菜種な
こにあるか?
P :資料読解し,
どの商品作物を生産しているばかりか,木綿織な
答える。
どの手工業製品も生産し,販売している。
商業的農業経営 を行っている
○資料の農家の経営規模は3町歩で,本百姓の中
○資料の農家の収支はどうなっている
では大規模農家で,「豪農」にあたる。
T :発問する。
か。
P :資料読解し, ○年貢と食用分の残りを販売したとして,穀物の収
答える。
益は2貫240匁,商品作物販売の収益2貫789匁
で収益の合計が約5貫,年貢,自家消費を除く支
出の合計が約4貫で,差し引き約1貫の黒字経営
である。
T :発問する。
○商業的農業経営の特徴は何か。
○高い生産力と高収入で黒字経営ができる。
P :答える。
○木綿栽培などでは,肥料などに多額の経費を必
要とする。
○販売価格によって収入が大きく左右される。
○商業的農業はハイリスク・ハイリターンな経営!
○商業的農業が広まると農村社会は
○経営に成功した場合は,富を蓄積し,地主小作,
T :発問する。
どのように変化するか?
P :答える。
手工業経営(問屋制家内工業,のちに工場制手
工業も),また在郷商人として多角経営を行う「豪
農」に成長する 。
○経営に失敗した場合は,借金による質流れ,土地
の売却などによって土地を失い(本百姓の水呑百
姓化),地主などから年貢より高負担を強いられる
小作や賃稼ぎなどを行うか,農村を捨てて都市に
流出することになる。
貧農の増加と農民の流出による農村の荒廃。
都市問題
○百姓が流出した都市ではどのような
○百姓は都市で生きるために必要な知識・技能に
T :発問する。
問題が発生するか。
P :答える。
不足しているため,低賃金・不安定な仕事にしか
つけず,貧しい都市下層民が急増する。
○スラム街の形成から,衛生問題,犯罪増加,生活
不安からの暴動(打ちこわし)など都市問題が発
生する。
本時のまとめ
MQ解決
終
結
次時の予告
●貨幣経済の農村への浸透(商業的
農業の展開)に起因する百姓の階
層分化は,享保期以降の社会にど
のような影響を与えたか。
T :発問し,文章 ● 貨幣経済の農村への浸透(商業的農業の展開)
でまとめるよう指
に起因する百姓の階層分化によって,農村では
示する。
災害への耐性のない貧農が増加し,大飢饉・一
P :文章でまとめ,
揆が発生するようになった。飢饉や農村からの人
答える。
口流出によって農村は崩壊した。一方,人口流
入著しい都市でも貧民が増加し,様々な都市問
題が発生した。
●農村崩壊は幕府財政を再び悪化させ,都市問題
は幕府の地盤を揺さぶった。幕府は再び幕政改
革に迫られる。
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