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COP21 と産業の未来 - 日興アセットマネジメント

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COP21 と産業の未来 - 日興アセットマネジメント
2015 年 12 月
28
COP21 と産業の未来
チーフ・ストラテジスト
神山 直樹
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いよいよ中国・米国も参加、支援拡大に期待
企業の対応、投資の視点
環境技術と産業の未来
いよいよ中国・米国も参加、支援拡大に期待
国連気候変動枠組み条約第 21 回締約国会議(COP21)がフランス・パリ郊外で開幕した。投資とは結びつきが薄いと
思われるこのイベントは、実はさまざまな意味で投資家とかかわっている。分かりやすいポイントは、研究開発支援という
公的な資金の流れが生み出される可能性があるということや、企業が環境の視点から売上増とコストやリスク削減を考
えるということだ。
COP21 の実効性は、京都議定書よりも高まると期待される。大きな違いは、米国や中国を含めた主要排出国が参加
することで、「誓約と評価(プレッジ・アンド・レビュー)」方式が採用されることだ。米国は削減目標の達成に法的拘束力
がないことで、今回のパリ合意に参加できそうだ。中国も国内問題について対外的な約束を望まなかった。COP21 で
は、このような国々も「誓約」し「評価」することで、自国の目標を世界に約束し進展状況を共有することになる。
先進国はこれまで 2020 年までに官民合わせて 1,000 億米ドルまで支援を増やすと公約してきた。しかし、経済協力開
発機構(OECD)の試算では 2014 年時点で 620 億ドルにとどまっている。世界銀行は、COP21 で農業用水路やダム
などのインフラ、教育環境の整備、温室効果ガスの排出を減らす太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を促
す計画を提案する。
一方、新興国は、これまでの二酸化炭素(CO2)排出の多くが先進国の発展に起因するとして、新興国への支援拡大
を求める。例えば、インドは高温に強い作物の品種改良や洪水対策など(2,060 億米ドルと試算)、バングラデシュは災
害警報システムの導入、台風に強いビルの建設、再生可能エネルギーの利用拡大(同 670 億米ドル)、マダガスカル
は温暖化に対応した農業技術の導入、飲み水の確保(同 421 億米ドル)などとしている。国連環境計画(UNEP)が
178 ヵ国・地域について分析したところ、必要な金額を明示しているのは61ヵ国あり、合計は 1 兆 360 億米ドルだったと
いう。
安倍晋三首相は COP21 首脳級会合でスピーチし、気候変動対策に取り組む国への支援を 2020 年までに官民合わ
せて年間 1 兆円から 1 兆 3,000 億円に増額するとした。さらに、「気候変動対策と経済成長を両立させるかぎは革新
的技術の開発である」と述べ、「CO2 フリー社会に向けた水素の製造・貯蔵・輸送技術や、電気自動車の走行距離を
現在の 5 倍にする次世代蓄電池」を例示し、エネルギー・環境イノベーション戦略をまとめることを述べた。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で
はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資
産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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水素・燃料電池戦略のロードマップ(抜粋)
現在
利用
定置用
燃料電池
燃料
電池車
2020年頃
【業務・産業用の市場投入(2017年)】
家庭用を含め、自立的な普及拡大
【バス市場投入予定(2016年)】
自立的な普及拡大
製造
自家発用の本格導入開始
水素発電
水素の
製造
2030年頃
発電事業用の本格導入開始
海外未利用エネルギー由来から
の製造・輸送・貯蔵を本格化
(資源エネルギー庁の資料をもとに日興アセットマネジメントが作成)*上記は現時点の計画であり、将来を約束するものではありません。
※現状、化石燃料(天然ガスやナフサなど)から製造している
企業の対応、投資の視点
政府の研究開発への支出が期待される一方で、企業経営者も具体的な行動を示している。マイクロソフト創業者のひ
とりビル・ゲイツ氏は、COP21で、クリーンエネルギーの開発促進を目指すプロジェクト「ブレークスルー・エネルギー・コ
アリション」を発表し、オバマ大統領は感謝を表明した。この基金には、各国の政府機関、投資ファンド、企業経営者な
どが出資するとされる。例えば、中国の電子商取引大手アリババのジャック・マーCEO(最高経営責任者)、米フェイス
ブックのマーク・ザッカーバーグ CEO、米ヒューレット・パッカード(HP)のメグ・ホイットマン CEO、英ヴァージングループ
のリチャード・ブランソン氏、ソフトバンクの孫正義会長、アマゾンのジェフ・ベゾス CEO、投資家のジョージ・ソロス氏など
も名を連ねる。
ゲイツ氏は「風力や太陽光など再生可能エネルギーは大きな進歩」と述べ、「突破口は民間企業が開くだろう。だがそ
の基礎となる研究への資金提供は政府にしかできない」と指摘した。同基金では、クリーンエネルギーの大規模生産に
つながる有望なプロジェクト、特に発電および電力の貯蔵、輸送、産業利用、農業、エネルギー効率を高めるプロジェク
トの5分野について重点的な支援を行なうという。
環境技術と産業の未来
COP21 を投資の観点からみれば、これから社会が選ぶ投資先のひとつは環境技術だ、ということが明確になる。政府、
NPO、企業などの投資資金が、再生可能エネルギー、農業、水素等へのインフラなどさまざまな関連分野に投じられ
ることになる。このことは、社会の動きに対して敏感に対応しようとする企業にとってチャンスになるだろう。環境関連商
品などの売上増のみならず、規制対応によるコスト削減や訴訟リスク低下などが、企業と株主にとって利得となろう。
経済英語で財のことを goods というが、これは good なものがたくさんあるという意味だ。そもそも(友情や愛情など特定
の関係を前提とするものでない限り)多くの場合、良いものは良く売れるものでもある。地球温暖化を抑えることは「良い」
ことだと人々が気づいて社会が受け入れることで、企業は良い(good)ものを商品(goods)として経済活動の中に取り
入れることができる。COP21 が地球温暖化防止に向かう政府などの支援行動をますます強めていくのであれば、環境
にかかわる産業において、新たな資金やアイデア、ニーズなどが企業の活動を高めていくことになると期待される。
■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で
はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資
産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま
す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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