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Yoshida Press Release
Embargoed Advance Information from Science The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science http://www.aaas.org/ 問合せ先:Natasha Pinol +1-202-326-6440 [email protected] Science 2013 年 10 月 25 日号ハイライト 輪郭のはっきりした顔、丸い顔、ハート形の顔 ―― 遺伝が顔の形に及ぼす影響 被引用度の最も高い論文は古い情報と新しい情報のバランスが良い 痛みに耐えられるよう進化したマウス 酸素によって複雑になるグラフェンの成長 輪郭のはっきりした顔、丸い顔、ハート形の顔 ―― 遺伝が顔の形に及ぼす影響 Chiseled, Round or Heart-Shaped -- Genetic Influences on the Face 彼女は彼のハンサムで輪郭のはっきりした顎に魅かれ、彼は彼女のハート形の頬に魅かれた ―こうした微妙な顔の形の変化は遺伝子の影響によるが、今回の新しい報告で、そうした遺 伝子の特定が進んだ。顔の形の微妙な違いは、しばしば人間にとって非常に重要である。し かし、遺伝子がどのような微調節を行って顔の形を決めているのかは謎であった。口唇口蓋 裂などの問題を引き起こす遺伝子変異は科学者らによって同定されている。今回 Catia Attanasio らは、これまでよく知られていなかった、より微妙な顔の形の変化を遺伝子がどの ように微調整しているのかについてさらなる解明に取り組んだ。これまでの哺乳類の研究で は、エンハンサーという、遺伝子発現の増加・減少を調節する微量な DNA が、さまざまな 身体構造の形に影響していることが示されている。Attanasio らは、顔の形質に特異的に関与 する遺伝子を標的とするエンハンサーの同定に取り組んだ。まず、顔の形成が活発に行われ ているマウスの胎仔組織を調べ、関与する可能性のある数千個のエンハンサーを発見した。 エンハンサー活性の自然な変化が顔の形をどのように調節しうるかを明らかにするため、頭 蓋顔面に関与する遺伝子に影響することが知られている 3 つのエンハンサーについて、それ らを欠損するマウスを作製した。ついで、マイクロ CT を用いて、これらマウスの 8 週齢時 に頭蓋骨の詳細な 3D 画像を撮影した。正常なマウスと比較して、欠損マウスの頭蓋骨は正 常な頭蓋骨より長さが長いか短く、あるいは幅も広いか狭いかのいずれかであった。重要な こととして、エンハンサーを欠損させても口蓋裂や突出した顎、あるいはその他の有害な発 達は引き起こされず、みられたのは微細な変化のみであった。この研究は、エンハンサーの 配列が変化すると、顔の形状も少し変わりうることを示した最初の実験データの一部である。 また、多くのエンハンサーがそれぞれわずかな変化をもたらすというこの同じ考え方が、ヒ トにもあてはまる可能性があることから、今回の研究は、ヒトの顔の形状のさまざまな変化 に関する理解を深めるうえで有用と思われる取り組みへの道を開くものである。 Article #8: "Fine Tuning of Craniofacial Morphology by Distant-Acting Enhancers," by C. Attanasio; A.S. Nord; Y. Zhu; I. Plajzer-Frick; A. Holt; R. Hosseini; S. Phouanenavong; J.A. Akiyama; M. Shoukry; V. Afzal; E.M. Rubin; L.A. Pennacchio; A. Visel at Lawrence Berkeley National Laboratory in Berkeley, CA; M.J. Blow; E.M. Rubin; L.A. Pennacchio; A. Visel at U.S. Department of Energy Joint Genome Institute in Walnut Creek, CA; Z. Li; B. Ren at University of California, San Diego School of Medicine in La Jolla, CA; D.K. Liberton; B. Hallgrímsson at McCaig Bone and Joint Institute in Calgary, AB, Canada; D.K. Liberton; B. Hallgrímsson at Alberta Children’s Hospital Research Institute in Calgary, AB, Canada; D.K. Liberton; B. Hallgrímsson at University of Calgary in Calgary, AB, Canada; H. Morrison; D.R. FitzPatrick at Medical Research Council in Edinburgh, UK; H. Morrison; D.R. FitzPatrick at University of Edinburgh in Edinburgh, UK; D.R. FitzPatrick at Royal Hospital for Sick Children in Edinburgh, UK; Z. Li at EMD Millipore in Temecula, CA. 被引用度の最も高い論文は古い情報と新しい情報のバランスが良い Highest-Impact Papers Strike Balance Between Old and New 革新的な新情報が盛り込まれることにより、その科学論文の被引用度は高くなるか。そうと も限らないことが新たに報告された。これはやや驚きの結果である。というのも、科学にお いて革新は高く評価される概念だからである(ベンジャミン・フランクリンが伝説に残るよ うな避雷針の実験を行って名声を得たこと考えてみればよい)。しかし新しい考えは受け入 れられ難くもある。実際、既存の情報に基づいた考えは論文の読者が新しい発見を理解する 際の足掛かりになる場合がある。ただし、誰かが過去にやったことを単に焼き直しただけで は独自性に欠ける。ある程度は発表される論文に革新的要素を盛り込む必要がある。科学者 らがこういったことにどのように取り組み、発表する論文の中で古い情報と新しい情報のバ ランスを取っているのか、また、バランスを取ることと、その影響については、今のところ あまり分かっていない。Brian Uzzi らは、科学論文の成功に影響する革新的な情報と既存の 情報の組み合わせの解明を試みた。彼らは科学研究の大規模データベースである Web of Science に 50 年間にわたって収録された約 1,800 万本の科学論文を分析した。各論文に古い 情報と新しい情報がどの程度混在するかを調べるために、各論文の引用文献一覧の中のさま ざまなジャーナルを調査した。そこでは個々のジャーナルはさまざまな知識分野を示してい る。Uzzi らは情報に得点を付ける方法を考案し、その方法によって、常套性と新規性が共に 高い論文は引用度が 2 倍高い傾向にあることを発見した。また、チームで研究を行う科学者 らは単独で研究を行う科学者らに比較して自分たちの論文に革新的な情報を組み込む傾向が 高いかどうかも調査した(共同研究は革新を促すと言われることが多い)。その結果、3 名 以上の科学者から成る研究チームが書いた論文は極めて新しい要素が盛り込まれている率が 約 40%も高い傾向にあることが判明した。Uzzi らの研究により、持続的な影響力のある科 学研究は新しい情報と熟知された情報のバランスが良いこと、および、チームを組むことが そういった研究を生み出すための重要な手段であることが示された。 Article #14: "Atypical Combinations and Scientific Impact," by B. Uzzi; S. Mukherjee; M. Stringer; B. Jones at Northwestern University in Evanston, IL; M. Stringer at Datascope Analytics in Chicago, IL; B. Jones at National Bureau of Economic Research in Cambridge, MA. 痛みに耐えられるよう進化したマウス The Mice That Evolved to Resist Pain バークスコーピオン(サソリの一種)は、動物界で最も痛い針を突き立てることが知られて いるが、砂漠に住むバッタネズミは全く意に介さない。これは、バッタネズミがこのサソリ の毒に対するユニークな耐性を進化させているためであり、バッタネズミは針を感じること なくこのサソリを食べることができるそうである。このタイプの進化はまれである。一般的 に疼痛シグナルは、組織の損傷やその他の健康上の問題があることを知らせるという重要な 役割を果たしているためである(これが、餌になる生物が持つ有痛性の防御用毒に対する耐 性をわざわざ進化させる捕食者が少ない理由である)。Ashlee Rowe らは、バークスコーピ オンの毒がバッタネズミと通常のイエネズミに与える影響を検討した。その結果、これらの 毒素はバッタネズミの感覚ニューロンの発火を阻害し、イエネズミの感覚ニューロンの発火 を強く活性化することが明らかになった。Rowe らは一連の実験を準備し、サソリ毒が 2 種 類のよく知られた哺乳類の疼痛受容体(電位依存性ナトリウムチャネル、NaV1.7 および NaV1.8)にどのように影響を与えたか解明した。サソリ毒は、ほかの哺乳類に与える影響と 同じようにイエネズミの NaV1.7 を活性化させたが、バッタネズミの NaV1.7 は活性化させな かった。詳細に調べたところ、バッタネズミの NaV1.8 チャネルが、バークスコーピオンの 毒に結合し NaV1.7 などの隣接したナトリウムチャネルを阻害できる特定のアミノ酸変異を 持つことが明らかになった。事実、バークスコーピオンの毒は、バッタネズミが一時的にす べての痛覚を感じないようにするようである。このバッタネズミのユニークな防御機構は、 痛みを感じる濃度の二酸化炭素に耐えることができるハダカデバネズミの防御機構に似てい る(研究に関連している)。Gary Lewin らの Perspective で、これらの知見と併せて、いくつ かの臨床的意義を詳細に説明するとともに、ちょうどバークスコーピオンの毒がバッタネズ ミの痛みをおさえるような、新たな鎮痛剤を創り出すという製薬会社の望みに光を当てる。 Article #9: "Voltage-Gated Sodium Channel in Grasshopper Mice Defends Against Bark Scorpion Toxin," by A.H. Rowe; H.H. Zakon at The University of Texas at Austin in Austin, TX; Y. Xiao; T.R. Cummins at Indiana University School of Medicine in Indianapolis, IN; M.P. Rowe at Sam Houston State University in Huntsville, TX; H.H. Zakon at Marine Biological Laboratory in Woods Hole, MA; A.H. Rowe at Michigan State University in East Lansing, MI. Article #3: "Natural Selection and Pain Meet at a Sodium Channel," by G.R. Lewin at Max Delbrück Center for Molecular Medicine in Berlin, Germany. 酸素によって複雑になるグラフェンの成長 Graphene Growth Complicated by Oxygen なぜグラフェン(ナノスケール研究を支える、原子 1 個分の厚さの炭素層)は、研究室によ って出来上がりが著しく異なるのだろうか?従来、グラフェンを成長させる足場として銅表 面が使用されてきたが、新たな研究により、銅表面上の酸素量が、グラフェンが成長する大 きさや速度に影響を及ぼす可能性があることが示された。具体的に言うと、Yufeng Hao らは、 銅表面の酸素原子がグラフェンの核形成を妨げ、端部がギザギザに枝分かれした特大サイズ のグラフェン結晶に成長するのを促進することを発見した。一方、銅表面から酸素原子を取 り除くと、端部が明確な小型の結晶に成長するという。Hao やその他の研究者らは、銅表面 を酸素にさらす時間を様々に変えて、銅表面上で成長するグラフェン結晶の違いを観察した。 予測通り、酸素にさらす時間が長いほど、銅表面上で成長するグラフェン結晶は速く大きく なる。こうしたグラフェン結晶の質は(成長させる表面の酸素の有無にかかわらず)、機械 的に剥離した業界標準的なグラフェンの質に類似しているという。彼らは本研究成果に基づ き、(ガス圧を変更することや、銅表面を滑らかにすることに加えて)酸素で銅表面を処理 することも、グラフェン結晶の成長を微調整する新たな方法になりえると、示唆している。 Article #17: "The Role of Surface Oxygen in the Growth of Large Single-Crystal Graphene on Copper," by Y. Hao; H. Chen; X. Wang; H. Chou; C. Tan; B. Fallahazad; C.W. Magnuson; E. Tutuc; R.S. Ruoff at University of Texas at Austin in Austin, TX; M.S. Bharathi; H. Ramanarayan; Y.-W. Zhang at A*STAR in Singapore; L. Wang; P. Kim; J. Hone at Columbia University in New York, NY; Y. Liu; B.I. Yakobson at Rice University in Houston, TX; S. Nie; K.F. McCarty at Sandia National Laboratories in Livermore, CA; L. Colombo at Texas Instruments Incorporated in Dallas, TX.