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速報:2007 年 2 月時点での地方公共団体の都市計画分野における空間
(社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 6 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 速報:2007 年 2 月時点での地方公共団体の都市計画分野における空間データの整備状況 A quick report :questionnaire to local authorities about the current situation concerning geographic information in February 2007 阪田 知彦 *・寺木 彰浩 **・樋野 公宏 ** SAKATA Tomohiko*, TERAKI Akihiro**, HINO Kimihiro** Abstract: This is a quick report of a questionnaire to local authorities carried out by Building Research Institute in February 2007. It investigates the current situation concerning maps and information about buildings. In this survey, we got a lot of answers from local authorities and grasped the latest situation of spatial data. Keywords: Questionnaire, Local Authorities, Geographic Information. アンケート調査,地方公共団体,空間データ 1 した視点からの既往の報告 9), 10), 11), 12), 13) もある . 調 査時点から時間が経過しており ,GIS を取り巻く状況 が劇的に変化しつつある近年の状況を把握するには十 分でない . 一方,筆者らは 2005 年 2 月に地方公共団体の都市 計画分野での空間データの整備状況に関する悉皆的 な把握を目的として,全国の都道府県と基礎自治体 へのアンケート調査を実施した(以降,前回調査,と する). この調査の概要については,都市計画報告集 No.4-3 にて報告した 14). 前回調査の時期は,いわゆる「平成の大合併」が進 行中であり , 調査票の発送時から回収時にかけ,基礎 自治体の数が大幅に変化していた . これは,単に自治 体数の変化だけでなく,地図・データの状況が大きく 変化する転機でもある. さらに,政府は 2005 年 9 月に測位・地理情報シス テム等について,関係行政機関相互の緊密な連携・協 力を確保し,総合的かつ効果的な推進を図るため,内 閣に各府省局長級からなる「測位・地理情報システム 等推進会議」を設置し,2007 年 3 月に「GIS アクショ ンプログラム 2010」を打ち出した.また,議員立法で「地 理空間情報活用推進基本法」が上程され,2007 年 5 月 23 日に成立した(平成 19 年法律第 63 号,5 月 30 日公布, 2007 年 8 月下旬施行予定).この法律は,地理空間情 報の活用を推進するための施策について基本理念を定 めたもので,基盤地図情報の整備に必要な施策を国や 自治体が講ずることとしているほか,国が保有する基 盤地図情報を原則としてインターネットを利用して無 目的 本稿は ,2007 年 2 月時点の地方公共団体の都市計画 部局が整備する空間データの整備状況に関するアン ケート調査の概要についての速報である. 地方公共団体で , 業務として日常的にこれらのデー タを作成・維持管理・更新している代表的な部局とし ては,固定資産税部局,建築部局,都市計画部局があ げられる. 都市計画分野はわが国で建築物に関する情報を大い に活用している分野の一つである . 担当部局では都市 計画法第 6 条に基づき , 都市計画に関する基礎調査が 概ね 5 年に 1 度実施されている . この際に建築物の現 況用途を悉皆的に把握する調査が実施されることが多 く , 市街地の現況を把握する基礎的な資料として広く 用いられている . また,さまざまな情報を組み合せる ことによって , 市街地の状況の把握・分析 , 各種の計 画・事業の検討・立案などを行う . 従来こうした作業は紙媒体で行われることが多かっ たが , 特に阪神淡路大震災以降,地理情報システム (Geographic Information System: GIS) による都市 計画・まちづくりの分野における支援システムの導入 が進んでおり , これまでにも数多くの事例が紹介され ている(1). また事例報告にとどまらず , 都市計画分 野での GIS の導入状況の調査報告も散見される(2). こうした支援システムの導入・利用状況を考察する 上で , 単なるシステムの導入状況のみならず , 地図 データの整備状況や各種の都市に関する調査への GIS の利用に関する悉皆的な実態把握も必要である . こう * 正会員 国土交通省国土技術政策総合研究所(National Institute for Land and Infrastructure Management) (調査当時:独立行政法人建築研究所(Building Research Institute) ** 正会員 独立行政法人建築研究所(Building Research Institute) -8- (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 6 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 図1 調査票(市区町村用) 償で提供することが盛り込まれている. これらの施策により,今後いわゆるベースマップと いわれる部分についての共用化がより一層図られるた め,地方公共団体での GIS 自体の利活用がさらに進む ものと思われる.しかし,前述のとおり,都市計画業 務においては,ベースマップだけでなく,様々な情報 (属性)を乗せる必要が高く,これらの施策等が即利 活用への推進力になるかについては,継続的な状況把 握が必要である. こうした背景より,筆者らは前回調査から 2 年が経 過した時期である 2007 年 2 月に,地方公共団体での 空間データの整備状況に関する悉皆的把握を目的とし て,全国の都道府県および市区町村を対象としたアン ケート調査を実施した.以降,その調査概要と集計結 果について報告する . 2 表1 調査結果(調査全体:本稿対象外を含む) 回収状況 団体区分 都道府県 市 区 基礎 町 自治体 村 小計 全体 配布数 47 781 23 836 195 1,835 1,882 回収数 回収率 未回収 (% ) 47 100.0 0 713 91.3 68 22 95.7 1 713 85.3 123 150 76.9 45 1,598 87.1 237 1,645 87.4 237 表2 調査結果(本稿での分析対象) 回収状況 団体区分 都道府県 市 区 基礎 町 自治体 村 小計 全体 調査の概要 配布数 47 775 23 603 42 1,443 1,490 回収数 回収率 未回収 ( %) 47 100.0 0 708 91.4 67 22 95.7 1 517 85.7 86 37 88.1 5 1,284 89.0 159 1,331 89.3 159 調査は,独立行政法人建築研究所住宅・都市研究グ ループが調査主体となって,2007 年 2 月 1 日現在の, 都道府県 47 団体,および,特別区(図表中「区」と呼ぶ) と政令市を含む全ての市町村 1,835 団体(表 1)に対 して依頼状・アンケート票(図 1)を送付した.今回 ているため調査対象部署を広げ,「都市計画担当・ま (4) は都市計画区域を有しない市町村 (3) に対しても実施し ちづくり担当」宛として送付した . -9- (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 6 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 3 調査結果の概要 本章では,主な調査結果について概 要を述べる. a)紙による地図の作成状況(図2) 都道府県については 36 団体 (76.6%) が紙の地図を作成している . 基 礎 自 治 体 の う ち 市 で 96.4%, 町 で 96.7%, 村で 89.2% が紙の地図を作成し ている . 紙による地図の作成の割合は, 特別区を除けば,団体区分による大き な差はみられない . 直近の作成・修正年次 回答は,ファックスまたは建築研究所のインター 0 都道府県 11 36 0.0 23.4 76.6 (n=47) ネットサイトに設けた回答専用のページ(5) によって 基礎自治体 42 1 1,241 受け付けた.回答締切は 2007 年 2 月 16 日とした . ま 3.30.1 96.7 (n=1284) た ,2007 年 2 月 23 日に未回答の団体に督促した.最 市 0 695 080 98.2 (n=708) 終的には,2007 年 5 月 1 日までに回答のあったもの 1 区 8 13 4.5 36 4 59.1 (n=22) までを今回の分析対象とした. 町 500 170 配布数と回答の得られた団体数の概要を表 1 に示 0.0 3.3 96.7 (n=517) す . 回収率は,都道府県では 100.0%,基礎自治体で 0 村 33 4 10.8 0.0 89.2 (n=37) は 87.1% ,調査全体では 87.4% であった. 上段:度数 未回答 下段:母数に対する比率(%) 未作成 作成 全ての回答を対象とする調査全体の集計は今後実施 図2 紙による地図の作成・修正の状況 する予定であるが,本稿では,前回調査との比較を 含めて,都市計画区域を有する基礎自 度数 度数 0 50 100 150 200 25 0 0 5 10 15 治 体 (1,443 団 体 ) に つ い て 実 施 し た 1 1971 0 1972 0 1 集計結果を元に概要を報告する.した 0 1973 0 1974 0 0 がって,以降の集計対象は表 2 に示す 1975 0 0 団体についてのものである.なお,対 0 1976 0 1977 0 0 象の都市計画区域を有する基礎自治体 0 1978 0 1979 0 0 は ,2005 年 3 月末の時点で都市計画区 1980 0 1 1 1981 0 域を有する基礎自治体が合併に際して 1982 0 0 もそのまま都市計画区域を有するもの 0 1983 0 1984 0 0 と見なして抽出した 15). 1985 0 1 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 17 14 25 20 24 25 33 27 41 1 1 0 2 93 94 90 89 4 5 4 4 累積 累積 125 3 202 12 216 28 1 累積 都道府県 累積 基礎自治体 b)紙による地図の直近の作成・修正年 次(図3) 図3 紙による地図の作成・修正の年次(直近) 紙による地図の直近の作成または修 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 正の年次は,都道府県については,2006 年が最も多く 都道府県 0 19 17 0.0 52.8 47 2 (n=36) 全体の 1/4 を占める.また最も古いもので,1998 時点 基礎自治体 8 557 666 .5 44.9 53 7 (n=1241) のものであることより,概ね 10 年以上前の紙による 市 12 368 315 地図を使用している団体は無い. (n=695) 52.9 45.3 1.7 基礎自治体では,2000 年を境に大きく状況が変化 区 0 3 10 0.0 (n=13) 76.9 23 1 している.特にこの 2 年間に作成・修正された団体が 町 6 322 172 200 件を超えており,基礎自治体の約 2 割はこの時期 (n=500) 34.4 64 4 2 村 0 に作成・修正を行っている.その理由として,市町村 26 7 0.0 (n=33) 21.2 78 8 合併をきっかけに,合併後の行政区域内についての地 上段:度数 作成 未作成 未回答 下段:母数に対する比率(%) 図を作製した団体が多いのではないかと考えられる. 図4 電子化した地図の作成状況 - 10 - (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 6 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 図3 紙による地図と電子化による整備の状 況の比較 紙地図 0 作成済 未作成 未回答 総計 電子化 作成済 未作成 都道府県 未回答 小計 作成済 未作成 市 未回答 小計 作成済 未作成 区 未回答 小計 作成済 未作成 町 未回答 小計 作成済 未作成 村 未回答 小計 作成済 基礎 未作成 自治体 未回答 全体 小計 19 17 0 36 368 315 12 695 10 3 0 13 172 322 6 500 7 26 0 33 557 666 18 1,241 3 8 0 11 8 5 0 13 2 5 1 8 0 17 0 17 2 2 0 4 12 29 1 42 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 22 25 0 47 376 320 12 708 13 8 1 22 172 339 6 517 9 28 0 37 570 695 19 1,284 直近のデータ化・更新年次 区分 度数 2 4 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 度数 50 100 4 6 12 16 1 0 46 48 45 52 2 1 2 累積 2 累積 67 4 101 123 3 1 0 150 1 1 0 0 0 16 5 10 累積 15 20 0 100 200 都道府県 300 累積 400 500 600 基礎自治体 図5 電子化した地図の作成年次 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% c)電子化の状況(図4) 都道府県 0 6 5 2 4 8 紙による地図を空間データとして整備しているかど (n=19) 0.0 31.6 26.3 10.5 21.1 42.1 3 うか ( 以下 , 単に「電子化」と呼ぶ ) についてみてみる . 0.5 334 61 83 68 8 都道府県のうち ,19 都道府県 (52.8%) が地図を電子 基礎自治体 .4 (n=557) 60.0 11.0 14.9 12.2 化しており,前回調査より大幅に増加(4 団体)した . わからない ラスター形式 ベクター 形式 混在 その他・不明 未回答 基礎自治体では 44.9% の団体で電子化がされている. 上段:度数 下段:母数に対する比率(%) 前回調査では,37.1% であったため,この 2 年間で 7% 図6 電子化の形式 程度上昇した.団体区分別に見てみると,特別区で 度数 度数 100 200 300 400 500 600 0 5 10 15 20 0 76.9%, 市 で 52.9%, 町 で 34.4%, 村 で 21.2% が 地 図 を 行政界 487 18 電子化しており , 自治体規模が大きいほど電子化して 町丁(目)界 403 9 452 11 等高線 いることがわかる . また,市町村合併の影響があるた 基準点・ 344 9 水準点 め単純には比較できないが,前回調査と比べてどの団 海・河川・用水路・ 433 12 湖沼など水面 60 4 道路中心線 体区分でも電子化率は上昇している (6). 217 6 今回の調査では,紙で地図を整備したところに対し, 真幅道路 153 4 並木 電子化の有無を尋ねるという想定の設問とした.本稿 484 8 建物 n=19 n=557 201 8 境界 においても基本はこの設問に従った集計結果を掲載し 土地利用 (M A.) (M.A.) 過去の災害 23 0 発生箇所 ている.しかし,結果には,「紙での地図は整備して 非可住地 37 1 地域地区など 315 13 いないが,データは作成した」と回答した団体(表 3) 都市計画規制 都市計画道路など 387 11 都市施設 も,都道府県で 3 団体,基礎自治体で 12 団体(表中 区画整理事業など 224 10 都市計画事業 網掛の箇所)あった.今後の調査ではこうした観点を 48 2 その他 取り入れた設問が必要になると考えられる. 都道府県 基礎自治体 d)電子化の年次(図5) 都道府県については,前回調査以降に電子化した団 体が,約 1 割を占める.また最も古いもので,1999 年 時点のものである. 基礎自治体では,紙による地図の場合と同様に 2000 年を境に大きく状況が変化しており,特にこの 2 年間 に作成・修正された団体が 100 件を超えており,基礎 自治体全体の約 4 割はこの時期に作成・修正されたも のである. 図7 整備した地物 e)電子化の形式と電子化した地物(図6・図7) 都道府県で地図を電子化している 19 団体のうち,最 も多い整備方法がベクター形式であった.このことは 基礎自治体でも同様で,地図を電子化している 557 団 体の 6 割が , 全てのデータをベクター形式としてい た . 一方,ラスター形式での整備率は都道府県の方が 基礎自治体よりも高い.同様に,形式を組みあわて(混 在)整備している場合も,都道府県の方が多い.これ らは,都市計画関連業務において,最低限の集計など のためのデータについてはベクター形式とし,その他 - 11 - (社)日本都市計画学会 No. 6 都市計画報告集 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 0% 10% 都道府県 (n=19) 20% 30% 40% 4 21.1 基礎自治体 (n=557) 50% 60% 70% 80% 90% 6 31.6 9 47.4 173 31.1 整備されていない 0 0 0.0 28 12 5.0 2.2 344 61.8 整備されている 100% 建物の情報が地図にない 未回答 上段:度数 下段:母数に対する比率(%) 図8 建物属性データの整備状況 1 度数 2 3 4 0 建物用途 4 地上階数 4 20 40 度数 80 100 3 n=4 (M.A.) 160 51 123 3 その他 140 123 4 構造 築年数 120 142 2 地下階数 60 都道府県 建物用途属性の分類数 0 52 n=173(M.A.) 28 基礎自治体 図9 整備された建物属性データの種類 は表示・閲覧の機能のみに徹し , 可能な限りコストを 抑えるようにしたものではないかと推察される . このことは,電子化した地物について見てみるとよ くわかる.図 7 は,電子化した団体を対象として整備 した地物を集計したものであるが,都道府県は行政界 はほぼ全部の団体で整備したと回答している.これは 基礎自治体でも同じである. 一方,行政界の整備率の高さに比べて,町丁目界や 建物は,都道府県と基礎自治体で整備率に大きな違い が見られた.これは,都道府県と基礎自治体における 都市計画業務の違いによるものであると思われる. 図10 f)建物属性データの整備状況(図8) 整備されている電子化された地図における用途など の建築物の属性の整備状況について見てみる . 電子化 された地図のうち都道府県では 21.1% が,基礎自治体 では 31.1% が,何らかの建物属性を整備しており,基 礎自治体の方が 10% 程度整備率が高くなっている . た だし,地物として建物が整備されている自治体に対し ては,都道府県では 31.1%,基礎自治体では 33.4% で あり,あまり違いはないことがわかる. 5 1 1 2 1 1 0 1 0 1 1 1 2 1 8 4 7 7 3 1 9 12 6 1 3 1 3 2 1 4 7 3 4 8 3 1 3 0 3 1 6 n=142 0 2 2 14 5 1 1 2 3 4 5 5 6 5 8 2 9 10 0 1 11 1 12 4 13 1 17 1 18 19 0 1 20 1 21 2 31~ 1 41~ 1 51~ 未回答 図11 15 10 0 「建物用途」属性の分類数(基礎自治体) 0 構造属性の分類数 g)整備された建物属性データの種類(図9・図10・図 11) 整備されている属性データを図 9 に示す.都道府県 では,母数が少ない(4 件)ものの,建物用途・地上階数・ 構造属性は 100% の整備率である.基礎自治体でも, 建物用途(82.1%) ・地上階数(71.1%) ・構造属性(71.1%) の整備率が高く,逆に地下階数・築年数は低い傾向に ある.これは前回調査でも同じ傾向であった. 次に,基礎自治体について,建物用途(図 10)と構 造(図 11)についての分類数について見てみよう.度 数は広くばらついている . 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41~ 61~ 81~ 101~ 未回答 10 15 20 25 30 24 25 25 10 n=123 12 「構造」属性の分類数(基礎自治体) 建物用途の分類数は 22 分類(12 団体)が最も多く, 次いで 21 分類(9 団体),15・34 分類(8 団体)が多い. - 12 - (社)日本都市計画学会 No. 6 都市計画報告集 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 0% 10% 20% 都道府県 (n=19) 7 36.8 基礎自治体 (n=557) 200 35.9 整備されている 30% 40% 50% 60% 70% 6 31.6 80% 6 31.6 284 51.0 整備されていない 90% 土地利用の情報が地図にない 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31~ 41~ 51~ 61~ 71~ その他 未回答 0 0.0 50 9.0 5 0 100% 23 4.1 未回答 上段:度数 下段:母数に対する比率(%) 図12 土地利用属性データの整備状況 h)土地利用属性データの整備状況(図12・図13) 整備されている電子化された地図における土地利用 属性の整備率を示したのが図 12 である.都道府県・ 基礎自治体とも,概ね 36% 程度の団体で土地利用属性 が整備されている. 次に,基礎自治体についての土地利用属性の分類数 を示したのが図 13 である.分類としては,12 分類(26 団体),14 分類(22 分類)が多く,全体の約 4 割を占 める.これは,前回調査でも採用数の多い分類数であっ たが,今回調査では団体数が逆転している. 15 20 25 30 1 1 1 0 2 5 2 7 5 11 8 26 9 22 土地利用属性の分類数 22 分類が最も多い理由として建物用途現況に基づくも のと推察される.前回の調査では,32 分類(これは固 定資産上の家屋用途分類に沿っていると推察される) も多かった(14 団体)が,今回は逆に少なく(3 団体) なっている. 一方,構造分類は,2 ~ 5 分類が多く構造属性を整 備している団体の 6 割を占める. 以上の状況より,属性情報の整備においては,各団 体で個々の団体の目的・状況などに応じてアレンジし ているものと思われる . 10 7 7 4 4 4 6 2 3 2 3 0 2 5 5 n=200 1 3 16 3 0 2 1 4 16 図13 「土地利用」属性の分類数(基礎自治体) 0% 10% 20% 30% 40% 都道府県 (n=19) 50% 60% 70% 80% 90% 16 84.2 100% 0 0.0 3 15 8 基礎自治体 (n=557) 409 73.4 135 24 2 13 23 市 (n=368) 275 74.7 84 22 8 9 24 i)電子化した地図を利用するシステムの整備状況(図 14・図15) 電子化された地図を活用するシステムについて見て みよう. 図 14 は,電子化された地図を整備している団体を 母数としたシステムの整備状況を見たものである.都 道府県では 16 団体(84.2%),基礎自治体では 409 団 体(73.4%)がシステムを導入している.しかし,見 方を変えれば,都道府県で 1/6 強,基礎自治体で 1/4 程度の自治体では,データを整備してもシステムを導 入していない.基礎自治体では,区での導入率が 100% となっており,次いで市(74.7%),町(70.3%)となっ ている.前回調査と単純に比較して,区が 20% 増となっ た他は,市・町に関してはほぼ同じような傾向である. 次に,システムを導入した自治体が利用する場合の 環境がどの程度用意されているかという観点より,シ ステムを操作する人材の状況について見てみたものが 図 15 である.都道府県・基礎自治体ともに,約 8 割 の自治体では,部署内に操作をできる人材がいること - 13 - 区 (n=10) 10 100.0 町 (n=172) 48 27 9 121 70.3 村 (n=7) 3 42.9 導入済 0 0 0.0 0.0 3 17 1 14 3 3 42 9 未導入 未回答 上段:度数 下段:母数に対する比率(%) 図14 電子化した地図を利用するシステムの整備状況 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 都道府県 (n=16) 13 81.3 1 6.3 基礎自治体 (n=409) 328 80.2 31 7.6 市 (n=275) 14 5.1 229 83.3 区 (n=10) 100% 1 1 6.3 6.3 45 5 11 0 1.2 27 5 9.8 1.8 0 0 0.0 10 100.0 町 (n=121) 87 71.9 村 (n=3) 17 14 0 2 66.7 部署内にいる 庁内にいる 0 いない 未回答 17 14 0 1 33.3 0 00 0 00 上段:度数 下段:母数に対する比率(%) 図15 システムの操作について (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 6 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 0 2 地形図の 作成 4 度数 6 8 0 50 100 度数 150 200 252 6 237 2 230 7 住民サービス 3 1 300 237 9 都市計画図書等 の作成 事業計画等の 立案検討 庁内の情報 共有 250 229 2 都市計画基礎調査 その他 10 135 n=19 (M.A.) 54 都道府県 n=557 (M.A.) 基礎自治体 図16 利用目的 がわかる.基礎自治体について団体区分別に見てみる と,区を除けば,村よりも町,町よりも市の方が部署 内で操作できる人材を擁していることがわかる. k)利用目的(図16) 整備した電子化された地図と導入したシステムをど のような目的で利用しているかを見てみた.都道府県 では,都市計画法第 6 条で定められた都市計画基礎調 査での利用(56.2%)が最も多く,次いで庁内での情 報共有(43.8%)が多い.基礎自治体では,地形図の作成・ 都市計画基礎調査・都市計画図書の作成・事業計画等 の立案検討・庁内の情報共有の目的で約 6 割近くの団 体で利用されていることがわかる.一方,住民サービ ス(閲覧・インターネットでの公開)については,ま だ 1/3 程度とまだ利用を推進する余地が大きく残って いる. 4 まとめ 以上,調査結果の概要を見てきた. 本調査は,高い回収率に恵まれ,調査の主目的であ る地方公共団体での空間データの整備状況を把握する 上で十分なデータを得ることが出来た.特に,基礎自 治体に関しては,市町村合併後の地図や空間データ, GIS などの状況についての把握が出来た. 本稿は,調査結果の速報であるため,主立った項目 に関しての単純集計を元にした分析に終始した.合併 前後の変化についても,前回調査との集計値での比較 を試みたが,今後,個々の団体の比較による詳細な分 析が必要である. これらの,詳細な分析については,稿を改めたい. [謝辞] 本調査に御協力頂きました地方公共団体の都市計 画・まちづくり担当の皆様に,誌面を借りて厚く御礼 申し上げます. 調査の実施にあたって,郡司喜代氏,藤田英恵氏, 田上桂子氏,久保谷麗子氏にご尽力頂いた.記して感 謝の意を表したい. なお本稿は,文部科学省科学技術振興調整費「危機 管理対応情報共有技術による減災対策」の平成 18 年 度委託費(独立行政法人建築研究所委託分)で行った 研究の一部をとりまとめたものである. [注] (1) 例えば , 文献 1), 2), 3), 4) などがあげられる . (2) 例えば , 文献 5), 6), 7), 8) などがあげられる . (3) 従来は,全ての市で都市計画区域を有することが常識であっ たが,平成の大合併によって,都市計画区域を持たない市が 2005 年 3 月末現在で6団体あった. (4) 回答された団体のうち,都市計画区域を持たない団体からの 回答部署は,建設関係,企画・総務系などからの回答であった. (5) 建築研究所のインターネットサイトに設けた回答専用のペー ジについては以下の方法によりセキュリティに配慮した . ・回答ページの URL は調査の依頼状のみに記載され , 他からのリ ンクは無い . ・各団体に固有のユーザー名およびパスワードを定め , 依頼状の みに記載した . ユーザー名およびパスワードを正しく入力し ない限り , 回答の記入はできない . ・所外からの回答ページへのアクセスは調査期間中のみ可能であ る. (6) 空間データを整備済みの団体と未整備の団体が合併した場合 は,集計値同士を比較すると,見かけ上の整備率の増減を見 ていることになる.今回は速報性を重視し分析を省略したが, 質問項目にある「整備領域に関する項目」の詳細な集計が必 要である. [参考文献] 1) 村井俊治編 (2002) 自治体で活躍する GIS , 日本測量協会. 2)NPO 国土空間データ基盤推進協議会 ,NPO 国土空間データ基 盤推進協議会 , 統合型 GIS ポータル「自治体の導入状況」, http://www.gisportal.jp/case/index.html, 2007 年 5 月 31 日. - 14 - (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 6 2007 年5 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, May, 2007 3) 碓井照子監修・GIS コラボレーションフォーラム編 (2003) 自 治体 GIS の現状と未来 , 日本工業新聞 . 4) 月刊『地方自治職員研修』編集部 編 (2002) 電子自治体ハン ドブック , 公職研 . 5) 国土空間データ基盤推進協議会 (1997) 空間情報技術入門 , 国 土空間データ基盤推進協議会 . 6) 情報政策研究会 (2002) 地方自治コンピュータ総覧平成 13 年 度版 , 丸井工文社 . 7) 田中公雄・今井修・寺木彰浩 (1995) 自治体における GIS 取り 組み動向 , GIS - 理論と応用 - vol.3 no.1,61-68. 8) 横山巌・樗木武 (1997) 自治体における地理情報利用と GIS 整 備のあり方に関する調査報告 , 第 32 回日本都市計画学会学術 研究論文集 ,127-132. 9) 寺木彰浩・有田智一・岩田 司 (1997) 地方公共団体の都市計 画分野における地理情報システムの利用状況 , GIS - 理論と応 用 - vol.5 no.2 ,37-41. 10) 真鍋陸太郎・寺木彰浩 (1999) 市町村の都市計画分野におけ る地理情報システムの導入状況と今後の課題 ,GIS - 理論と応 用 - vol.7 no.2,43-52. 11) 真鍋陸太郎・大方潤一郎・小泉秀樹 (1998)『都道府県での都 市計画分野における地理情報システムの整備・活用に関する現 状と課題 ,GIS 学会講演論文集 ,Vol.7, 211-216. 12) 阪田知彦・石井儀光・寺木彰浩 (2002) 地方公共団体におけ る都市計画分野の GIS の利活用に関するアンケート調査 , 第 11 回地理情報システム学会研究発表大会論文集 ,167-171. 13) 阪田知彦・石井儀光・飯塚裕介・寺木彰浩(2004)基礎自治 体の都市計画部局での地形図整備と GIS の利活用動向に関する アンケート調査,都市計画報告集,2, 118-123. 14) 寺木彰浩・阪田知彦(2005)速報:地方公共団体の都市計画 分野における空間データの整備状況に関する調査,都市計画報 告集,No.4-3,77-82. 15) 国土交通省都市・地域整備局(2006)「平成 17 年(2005 年) 都市計画年報」, 国土交通省都市・地域整備局都市計画課 . - 15 -