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OJTのすすめ
次世代の教職員を育てる
OJTのすすめ
~学校で育てるために~
大 阪 府 教 育 委 員 会
は じ め に
大阪府では、今後、教職員の「大量退職」、「大量採用」の時期を迎え、数年の内に
約半数の教職員が入れ替わることが見込まれています。
新しく採用された教職員が学校に新たな風を吹き込み、そのことによって学校が活性
化されていくとの期待が大きい一方で、ベテランの教職員が大量に学校を去っていくこ
とから、これまで培ってきた大阪府の教育の財産がうまく継承されるよう、初任者をは
じめとする経験の少ない教職員(以下「初任者等」という。)の育成を図ることが急務
となっています。
これまで、大阪の多くの教職員が、各学校の実情にあった様々な実践を通じて積み重
ねてきた教育の財産を、これからもきちんと引き継ぎ、その土台の上に、教育活動をさ
らに発展させていくためには、新しく採用され、学校に迎えられた教職員が、大阪府に
おける教育の新たな担い手として育っていくことが鍵を握っていると言っても過言では
ありません。
同時に、中堅の教職員についても、初任者等にとって有益なモデルとなり、今後の学
校運営の中心的役割を果たすために、さらなる資質 能力の向上を図ることが重要な課題
となっています。
これらの教職員の育成を図るためには、校長・副校長のリーダーシップのもと、教頭、
首席、指導教諭等を中心として、学校全体で組織的に取り組むことが必要です。
大阪府教育委員会では、こうした認識のもと、府立学校教職員のキャリアステージに
応じた研修体系として「キャリアアッププラン」を構築し、大阪府教育センターを中心
に、初任者研修、新規採用者研修をはじめ、フォローアップ研修(教職2~9年目)、
10 年経験者研修、マネジメント研修など、その充実を図ってきたところです。
また、初任者等の育成においては、大阪府教育センター等で実施される校外研修の他、
校内での研修が重要な位置を占め、両者は車の両輪の関係にあります。初任者研修対象
者が配置された学校では、初任者指導教員を中心に、各校での校内研修に取り組み、効
果を上げていますが、より効果を高め、さらに次年度以降にも育成の視点に沿った取組
みを進めていくためには、学校全体で校内研修の重要性が共有され、これまで以上に校
内研修の充実が図られることが大きな課題となっています。
本冊子では、従来からの「校内研修」をより広く捉え、「OJT(On the Job Training)」
という用語を用いています。本文で詳述していますが、OJTとは、日常の業務を遂行
していく中で、意図的・計画的・継続的に資質能力を高めていく教育体系を広く総称す
るものです。学校におけるOJT機能の強化を図ることで、学校全体で初任者等を育成
し、学校の活性化と教育力の向上を図り、もって児童・生徒への支援を充実させていく
ことが、本冊子作成の大きな目的です。
各学校においては、本冊子を活用し、多くの教職員が初任者等の育成を積極的に進め
ていただくようお願いします。
平成 20 年 3 月
大阪府教育委員会
目
次
はじめに
序章
第1章
OJTとは?…………………………………………………………………………………………
1
OJTをすすめるポイント………………………………………………………………………
7
【1】OJTを組織化しよう
【2】OJTをはじめる前に……
8
9
【3】ビジョンを共有しよう
10
【4】多様な学びの方法を追究しよう
11
【5】ポイントをしぼり、段階的に育成しよう
12
【6】取組みの評価と次年度の方針
13
[第 1 章の補足]
14
第2章
OJT
こんなときどうする……………………………………………………………………17
【1】ビジョンの共有
18
(1)あなた(指導教員等)自身の振り返り
(2)初任者等と「育成・成長のビジョン」を共有する
(3)育成計画を立ててみよう
【2】組織的に行うための「仕掛け」
23
(1)体制をつくり、学校として育てることを意識化する
(2)「報・連・相」を忘れずに!
【3】コーチング
25
(1)コーチング・マインドとスキル
(2)コーチング・スキル
(3)相手を認めるコーチング・マインド
【4】メンタリング
28
(1)メンタリング
(2)メンターとメンティ
(3)メンターに求められるもの
(4)メンターとしての留意点
【5】具体的な指導に際して
31
(1)「児童・生徒を理解する」ということ
(2)授業力の向上のために
(3)分掌の仕事
(4)学級経営
(5)人権侵害事象、虐待、いじめ等への対応
(6)ともに学び、ともに育つ
(7)保護者・地域との関わり
参考資料一覧 ………………………………………………………………………………………………… 43
序
章
- 1 -
【1】
教職員の資質向上
教職員の資質向上を図るための手法や形態はいろいろと考えられます。
例えば、共通のニーズや経験等を持った教職員が、職場を離れて同じ場所に集まり、
講義や演習などを通じて資質の向上を図る方法です。大阪府教育センター等で行われる
研修はこの代表的なもので、初任者研修や10年経験者研修、管理職研修、教科等の研
修、人権教育の研修など、様々な研修が行われています。
また、学校の中で教職員が集まり、講師等を招いて講義や演習を行う形態もあり、一
般に「校内研修」や「職場研修」などと呼ばれています。研修を行う場が学校であるた
め、学校の状況等に応じて課題設定ができ、その解決を図るために有効な方法です。
その他に、教育公務員特例法に基づき、「授業に支障のない限り、本属長の承認を受
けて、勤務場所を離れて(同法第22条第2項)」行う研修(いわゆる「承認研修」ま
たは「職専免研修」)や、勤務時間外に自発的に資質向上のために大学院等で学ぶ場合
等(いわゆる「自主研修」)もあります。
これらの研修は、他校の様子を情報交換で知ったり、専門的な知識を体系的に学ぶ機
会となるなど、いずれも、教職員にとっては大変有意義なものとなっています。
一方、教職員は、学校で、日常の教育活動や校務分掌等の業務を通じて、児童・生徒
や保護者、他の教職員等と関わりながら、多くの経験をし、成長していきます。この経
験は教職員として非常に重要で、実際に児童・生徒と接していく際の姿勢やスキル、そ
れぞれの学校や他の教職員の中に蓄積された教育活動の「知恵」を身に付ける好機とな
ります。
ですから、教職員の資質能力の向上のためには、この機会を「教職員として訓練され
る場」にすることが有効となります。教職員が仕事を通して自然に育っていくのを待つ
のでなく、意図的に育成する場とする、ということです。
【2】
「OJT」と「Off-JT」
以上のように考えると、教職員があくまで自主的・自発的に行う研修を除き、教職員
の育成には、大きく分けて二つの柱があるということになります。
その一つが「OJT」です。これは「On the Job Training」を略したもので、「日常
の業務遂行を通じて、職務を遂行するための資質能力を高めていく教育体系」を指して
います。
もう一つが「通常の業務とは異なる場で行われる教育体系」で、OJTに対して
「Off-JT(Off the Job Training)」と呼ばれています。これは一般的な「集合
研修」のイメージであり、通常、あるテーマを設定し、講師やファシリテーターなどが
中心になって行う講義や演習等を通じて、研修のために集まった参加者が知識を 習得し
たり、理解を深めたりする活動です。
これに対しOJTは、校長・副校長、教頭、その他の先輩教職員が、育成の対象とな
る教職員に対し、その教職員の個性や能力に応じて、必要な知識やスキルを、実際に仕
事を進める中で身につけさせていく個別的な研修です。
- 2 -
このOJTは仕事に直接役立つ能力の向上を目的としています。OJTを進めるにつ
れ、OJTの効果が仕事
の遂行に反映され、対象
教職員としてのスキル・アップ
となる教職員が、着実に
教職員としての仕事を行
えるようになっていきま
す。このことは、OJT
を指導する教職員にとっ
てもやりがいを感じさせ
専
門
知
識
の
習
得
体
系
的
な
相互に補完
Off-JT
る活動であり、その意味
では互いのプラスになる
知
恵
・
暗
黙
知
の
獲
得
教
職
員
と
し
て
の
OJT
初任者等経験の少ない教職員
活動でもあります。
このように、日常の教育活動を通じて教職員を育成していくこと、しかも、そうした
教職員の育成を、学校において意図的、計画的、継続的に行っていこうとする のが、O
JTの基本的な考え方です。
【3】
初任者等を育成するためのOJT
かつては、初任者等が先輩教職員等から特別に指導を受けたり、授業を見せてもらっ
たりする機会はほとんどなく、むしろ、「先輩の教育活動を自分でこっそり見て、そこ
から学べ」という不文律があったような感さえあります。ベテランの教職員 や初任者研
修の指導教員の中には、「自分たちの初任時代には何も教えてもらわなかった。」とい
う方もいるかもしれません。
しかし、学校を取り巻く環境の急激な変化や教育課題の多様化、深刻化の中で、学校
や教職員に期待される業務範囲の広がりや、児童・生徒の変化、保護者をはじめとする
社会の教職員に対する見方の変化など、様々な要因が複雑に絡み合い、ベテランの教職
員でさえ対応に苦慮するような事案も生起するようになりました。
そのような中にあっても、初任者等が自信を持って十分に自らの力を発揮し、児童・
生徒を支援することができるように、意図的にその資質向上を図ることが学校全体とし
ても必要になってきました。
また、特に若い 初任者等にとっては、一番の目標やロールモデルとなり、相談しやす
い、「少し先輩」という年齢層の教職員が少ないという状況があります。先輩が忙しく
働く姿を見て、相談することに遠慮がちになっている初任者等もいるかもしれません。
このような点を考えると、今は、初任者等が、学校で先輩教職員の背中を見ながら自然
と育つことが難しい時代になっていると言えるでしょう。そのため、先輩教職員が初任
者等に対して、知識を実践につなげる「知恵」や「コツ」といったものを意図的に伝え
ることが必要になっています。
先輩教職員にとっても、初任者等を指導することは自らの教育活動等を振り返ること
にもなり、結果としてさらなるパワーアップが図られることが期待できます。
- 3 -
【4】
効果的なOJTをすすめるために……
初任者等の教職員は小さな失敗に学びながら成長していく面があります。しかし、ま
だ経験が少ない段階で対処困難な事例にぶつかり、完全に自信をなくしてしまうことも
あります。それを防ぐためには、先輩教職員は各々の初任者等の力量を考えながら、徐々
に経験を積ませたり、困難な事態に組織的に対応することを助言したりし、これらを通
じて教職員としての力量を高めていくことが大切になります。その中心となるのがOJ
Tで、OJTを通して、初任者等に「知恵」や「コツ」、教職員としての姿勢などを意
図的に伝えていくことが重要です。
OJTを効果的に行なうためには、初任者等の現状を十分に把握し、本人に応じた目
標を定め、有効な支援とスケジュールを検討し、計画的・意図的・継続的にOJTを実
施することが必要です。また、一人の指導者だけで初任者等を育てるわけではなく、先
輩教職員がそれぞれの得意な仕事・場面で関わりを持つことも重要です。例えば、先輩
教職員からの「どの分野は誰が詳しい」といった情報も、初任者等には非常に有効な支援
となります。
本冊子では、こうしたOJTを充実させていくうえで参考となる事項をまとめました。
【5】
本冊子の活用について
初任者等を育成するため「学校全体でOJT
を進める」には、その中心となって初任者等の
学校での児童・生徒
支援・指導の強化
指導にあたり、OJTを進めていく先輩教職員
が必要です。
初任者研修対象者については、指導教員や教
科指導員がその中心的な役割を担います。
初任者等の
資質能力の向上
しかし、それ以外にも、首席・指導教諭(以下
「首席等」という。)をはじめ、例えば初任者
等が配属された分掌長や学年主任、部主事など
も、大きな役割を担っています。
初任者研修対象者以外の経験の少ない教職員
OJT の充実
についても、校長・副校長、教頭、事務(部)長、
首席等や分掌長等を中心に、学校の中で育てて
学校全体での
いかなければなりません。
もちろん、その他の先輩教職員も、日常の業
務を遂行する中で、初任者等に身近な存在とし
て、OJTに関わっていくことが求められてい
初任者等の育成の
意図的、計画的、
継続的取組み
ます。
このように、現実に、学校で初任者等の育成に関わっている教職員や、 先輩として後
輩の育成に関わっていくことになる教職員に、ぜひ、本冊子を活用していただき、初任
者等を、学校全体で育てていってほしいと考えています。
- 4 -
【6】
本冊子の構成
本冊子は大きく2部構成をとっています。
第1章は「OJTをすすめるポイント」と題して、OJTを進める上で必要な考え方
などを記しました。一度通読し、全体像を確認してから初任者等の育成を始めてくださ
い。
第2章では、タイトルを「OJT
こんなときどうする」とし、Q&A方式やワーク
シートなども用いて、OJTを始める際のポイントや、初任者等の悩みに対 する先輩教
職員からの支援や助言のポイント等について、ヒントとなる考え方を紹介しています。
必要なときに、必要なところを開いて、ヒントを探すことも可能な構成としています。
また、ワークシート等に直接書き込むことができますので、あなた自身の「指導用ノ
ート」としても活用してみてください。
本書を有効に活用しながら、各学校でのOJTを活性化させ、教職員 の育成の充実を
図ってください。
参考「本冊子の構成図」
基礎編
序
章
O
J
T
と
は
?
実践編
【1】ビジョンの共有(pp.18~22)
(1)あなた自身の振り返り
(2)初任者等と「育成・成長のビ
ジョン」を共有する
(3)育成計画を立ててみよう
【1】教職員の資質向上
【2】
「OJT」と「Off-JT」
【3】初任者等を育成するための OJT
【2】組織的に行うための「仕掛け」
【4】効果的な OJT をすすめるために…
(pp.23~24)
…
(1)体制をつくり、学校として育
てることを意識化する
(2)
「報・連・相」を忘れずに!
【5】本冊子の活用について
【6】本冊子の構成
【3】コーチング(pp.25~27)
(1)コーチング・マインドと
スキル
(2)コーチング・スキル
(3)相手を認める
コーチング・マインド
pp.1~5
【1】OJT を組織化しよう
第
1
章
O
J
T
を
す
す
め
る
ポ
イ
ン
ト
O
J
T
【2】OJT をはじめる前に……
【4】メンタリング(pp.28~30)
(1)メンタリング
(2)メンターとメンティ
(3)メンターに求められるもの
(4)メンターとしての留意点
【3】ビジョンを共有しよう
【4】多様な学びの方法を
追究しよう
【5】ポイントをしぼり、
段階的に育成しよう
【5】具体的な指導に際して
(pp.31~42)
( 1 )「 児 童 ・ 生 徒 を 理 解 す る 」
ということ
(2)授業力の向上のために
(3)分掌の仕事
(4)学級経営
(5)人権侵害事象、虐待、いじめ
等への対応
(6)ともに学び、ともに育つ
(7)保護者・地域との関わり
【6】取組みの評価と次年度の方針
[第 1 章の補足]
(参考1)「OJT の効能」
(参考2)「学びの方法」
(参考3)「スモール・ステップ」
(参考4)「A 先生
サポート・チーム」
pp.7~16
第
2
章
こ
ん
な
と
き
ど
う
す
る
pp.17~42
- 5 -
- 6 -
第 1 章
- 7 -
【1】OJTを組織化しよう
初任者等の育成は、ごく少数の人間が関わって行うというものではありませ
ん。例えば初任者研修対象者については、指導教員や教科指導員が指導の中心
的な役割を担っていますが、これらの教職員だけが初任者の育成にあたればい
いというものではありません。また、その他の経験の少ない教職員に対しても
校内で積極的にOJTを進めることが重要です。
初任者等を効果的に育成するために、学校として、校長・副校長を先頭に、
教頭や事務(部)長、首席等、部主事、分掌長、学年主任、その他の先輩教職員
がそれぞれの役割で関わりながら、初任者等の育成にあたる必要があります。
そのために、次のような点に留意して、学校としての体制づくりに努めてく
ださい。
1 初任者等を中心とした連携の輪をつくる
学 校全 体 で初 任 者等 を育成 す ると い って も 、多 くの場 合 はそ う した 取組 み が自然 と でき る も
の で はあ り ませ ん 。学 校全体 と して O JT を 行う という こ との 大 切さ が共 有 されな い と、 ど う
しても、指導教員等一部の者が指導をするという暗黙の了解ができてしまうこともあります。
そこで、教頭や首席等、また指導教員は、こうした体制づくりを意識的に行ってください。
ま ず は、 初 任者 等 が属 する学 年 や分 掌 の長 、 教科 指導員 や 教科 の 主任 等 に、 初任者 等 の育 成
についての協力を依頼しましょう。
2
学年や分掌等ごとに、初任者等のサポート役をつくる
初任者等が配属された学年や分掌の取組みは、通常、初任者等に非常に大きな影響を与えます。
学年主任や分掌長等は、初任者等の育成に、積極的に関わるように努めてください。
その際、例えば学年や分 掌内での、初任者等の「サポート役」を、初任者が相談しやすい教 職
員に依頼することも効果的です。主任や部長だけで初任者の効果的な育成はできないものです。
初任者等の身近にいる「先輩教職員」のちょっとしたアドバイスが、大きな効果を発揮します。
(→16 ページ(参考4)参照)
3
情報交換を密に行う
初任者等に意識的に声をかけてくれる教職員等が決まっていけば、その人たちの間で、情報交
換を密にするよう心がけてください。
首席等や指導教員は、学年主任、分掌長等、教科指導員等と意識的に情報交 換をすること、ま
た学年主任、分掌長等や教科指導員等は、サポート役の教員との情報交換が重要です。
こうして、それぞれの役割で初任者等を育成していく輪をつくっていく中で、その輪が次第に
大きくなり、より多くの教職員が初任者等に関わる体制づくりが進んでいくことになります。
また、日常的な情報交換は、例えば、初任者等のつまずきなどの防止にも効果があります。
4
キーワードは「報・連・相」
情報交換を密にするためには、報告・連絡・相談(「報・連・相」)が重要 です。初任者等に
は、「報・連・相」の重要 性を理解させ、先輩教職員に対する報告、連絡、相談を十分に行うよ
う指導します。
また、初任者等を指導する先輩教職員も、初任者等の状況やOJTの進捗状況など、各学校の
体制に応じて、校長・副校長、教頭、首席等に、十分な報告、連絡、相談を行うよう心がけまし
ょう。(→24 ページ参照)
23~24 ページ参照
- 8 -
【2】OJTをはじめる前に……
中心になって初任者等の指導にあた る教職員は、これから長い間、何度もい
ろいろな面から初任者等にアドバイスをすることになります。時には本人にと
って厳しい話もしなければなりません 。
そんなとき、初任者等が納得してアドバイスを受け入れてくれれば、指導に
あたる教職員もホッとし、また「よいアドバイスをしよう」という気持ちにな
れるはずです。そんな「 よい人間関係」を築くことからスタートです。
人間関係の基礎がコ ミュニ ケーションにあるこ とは言 うまでもありません が、初 任者等を指導
する際には次の点を心がけましょう。
①相手からの話を待つのではなく、特に最初の内は自分から言葉をかける。
→初任者等の持つ 遠慮や不 安などの気持ちを 和らげて あげてください。 このこと は信頼関
係を築く第一歩になります。
②初任者等も一人前の大人であり、一人の社会人として尊重する。
→人間関係の適切な「距離感」を保つことは、信頼関係を築く基本です。
③一人で指導するのではなく、多くの教職員で関わるという意識で初任者等に接する。
→多くの教職員 から声 をかけてもらえれば 、初任 者等の中に「多くの 教職員 に支えられて
いる」という気 持ちも芽生 えてきますし、 学校や仕事 等に対する不安 の緩和にも 役立ち
ます。また初任者等が早く学校になじむことにもつながります。
適切なアドバイスをするには、相手のことをよ
く知る必要があります。強みや弱み、能力、適性
など、コミュニケーションを行いながら、初任者
等をよく観察し、理解を深めましょう。
また、コミュニケーションはあくまでも「双方
向」のものですから、相手に自分の話を聞いて欲
しければ、自分も相手の話を聞くのが当然です。
一方的に指示するだけでなく、初任者等の話をよく聞き、共感的な態度で接す
ることの重要性は、今さら 強調する必要はないでしょう。
そして初任者等の得意なことで自分が少し苦手なことなどがあれば、その点
については逆にアドバイスを求めるなど、一方的な指導関係にならないような
配慮ができれば、初任者等にも気持ちの余裕がもてるのではないでしょうか。
初任者等は、教職員としての経験が少ないことは否めませんので、指導する立場から見ると未
熟なところも多々あることでしょう。しかし、それで当然です。自分の初任の頃を思い出しなが
ら、あたたかく見守る姿勢を保ってください。
初任者等を指導する立場にあるからといって、自分が完全無欠な教職員である必要はありませ
ん。指導する立場の教職員にも「強み」もあれば「弱み」もありま す。そのことは、指導を受け
る初任者等にもすぐにわかります。無理をせず、自然な関係を築いてください。
また、指導する際に は人材 育成の手法であるコ ーチン グ(→ 25~27 ページ 参照 ) やメンタリ
ング(→28~30 ページ参照)なども参考にしてください。
14 ページ(参考1)参照
- 9 -
【3】ビジョンを共有しよう
OJTは、日常の業務遂行を通じて教職員の資質能力の向上を図るものです
が、初任者等が業務を遂行する過程で様々な力を自然に身につけるまで待つと
いうのではなく、あくまでも、意図的、計
画的、継続的に育成を図っていくことが大
切です。
そのためには、育成計画が必要です。
その際、指導する教職員も指導される初任
者等も、その育成プログラムの内容等に十
分納得して意欲的に取り組めることが重要
です。
【計画を立てるために】(→22 ページ参照)
* 初任者等の現状を理解するため、例えば 授業や児童・生徒指導の場面をよく観察し、「よい点」
や「改善すべき点」を把握しましょう。
* 本人の「強み」を具体的に指摘し(例えば「コミュニケーションを とるのが苦手な生徒と接す
るのがうまいね。そういうところはあなたの『強み』だと思う」など。)、こう した「強み」を
発揮できる場面での指導機会を計画するなど、強みを伸ばすよう工夫しましょう。
* 初任者等が少し苦手そうな場面などは、先輩教職員とペアを組んで指導することができるよう
に計画するなど、初任者等への負荷が大きくなりすぎないように工夫し、自信を失わないように
配慮するなど、慎重に対応しましょう。
* OJTとOff-JTは、いわば車の両輪にあたりますので、大阪府教育センターでの研修等
を有機的に関連させることが必要です。初任者研修対象者については、どのような「校外研修」
が、いつ実施されるのか、指導教員等は十分に把握して、OJTの計画を考えてください。また
その他の初任者等については、府教育センターからの研修募集時等に、どの研修を受けるとよい
かなどのアドバイスをしてください。
* 同年輩の教職員と話す機会は、特に初任者等にとっては貴重な機会です。可能ならそのような
機会を設定しましょう。校外研修や府教育センターの「カリキュラムNAViプラザ」などは、
そうした機会としても有用ですので、積極的に活用しましょう。
「今年1年間に何をするのか」 といった「プログラムの具体的な内容」はも
ちろん重要ですが、それを決める前に必要になるのが、初任者等が「どんな教
職員になりたい」と思っているのか、指導教員等が「どんな教職員になってほ
しい」と思っているのかということについて、指導教員等と初任者等が率直に
話し合うことです。そうした話し合いを通じて、漠然としたものでもかまいま
せんので、初任者等の数年後の「あるべき姿」=「目標」やそこに至るための
「ビジョン」を共有することができれば、初任者等の意欲や納得感を強めて今
後の取組みを進めていくことができるでしょう。
OJTの計画を立てる際に、校長の描く「育成のビジ ョン」を中心に、指導教員 をはじめとす
るサポート・チームと初任者等が中期的な目標を共有するため、例えば次のような項目について
話し合いましょう。
*互いの理想の教職員像
*初任者等が、教職員になってやりたいと思っていること
*先輩教職員として、初任者等にやってほしいと思っていること
*初任者等の得意なこと、苦手なこと
*今、一番困難を感じていること
18~22 ページ参照
- 10 -
【4】多様な学びの方法を追究しよう
初任者等の教職員としての資質向上を図るために、様々な方法(手法)が考
えられます。ここでは、よく知られているものも含めて、いくつかの方法につ
いて紹介しますので、是非、OJTの中で取り入れてください。
1
初任者等に取り組ませたいこと
(1)研究授業
研究授業は、各学校でも 取り組まれていますが、初任者研修でも必ず年に1回は実施するよ
う指導しています。
初任者が年間2回の研究授業を行い、全教職員ができるだけどちらか1回には参加して研究
協議を行うよう取り組んでいる学校もあります。
具体的に研究授業を指導する際のポイント等を 33~34 ページに掲載していますので、これ
らを参考に初任者等の授業力向上に取り組んでください。
(2)「相互授業観察」
例えば教職経験が少ない者どうしや経験豊かな者と少ない者で、互いの日常の授業を観察し
合い、意見交換を行 ってみましょう。お互いによいところを取り入れあうなどすることで、授
業力の向上につながります。
交代でメンバーの授業をビデオにとって、ビデオを観ながら協議を進めるのも有効です。
(3)模擬指導(ロールプレイ)
問 題 行 動 を 起こ し た 生 徒を指 導 す る 場 面 や 、 特 定 の状況 で の 保 護 者と の 対 応 場面 な ど を 設
定 し 、 数 人 の単 位 で ロー ルプ レ イ を 行 いま す 。 首席 等や 指 導 教 員 、あ る い は生 徒指 導 主 事 等
が指導者として、基本的な留意点等を指導します。
2
初任者等を指導する教職員に心がけてほしいこと
(1)「コーチング」、「メンタリング」
「 コ ー チ ン グ」 は 、 「 問題の 解 決 策 や 答え は 、 す べてそ の 人 の 中 にあ る 」 と いう前 提 で 、
適 切 な 支 援 を行 う こ とに よっ て 、 相 手 のや る 気 や能 力、 可 能 性 を 引き 出 し てい こう と い う 考
え 方 に 基 づ いて い ま す。 「相 手 の 話 を よく 聴 く スキ ル( 傾 聴 の ス キル ) 」 など のス キ ル を 用
いながら、相手を尊重し、その自発性と答えを引き出していきます。(→25~27 ページ参照)
「 メ ン タ リ ング 」 は 、 知識・ 経 験 の 豊 富な 者 が 、 そうで な い 者 を 、ロ ー ル モ デルや 成 功 モ
デ ル を 提 示 する な ど 様々 な方 途 に よ っ て支 援 し 、育 成効 果 を 高 め よう と す るも ので す 。 ( →
28~30 ページ参照)
ど ち ら も 人 材育 成 の 効 果的手 法 と し て 企業 で も 注 目を集 め て い ま すが 、 学 校 現場で も 有 効
な手法と考えられます。
(2)「オフサイト・ミーティング」的な場づくり
「オフサイト・ミーティング」とは、「気楽にまじめな話をする場」を設定して議 論をし、
重要課題についての新しい発想を引き出したり、そのための前提となる風通しのよい職場 づく
りを進めようとする会議や研修の手法です。
学校であれば、放課後や空き時間などちょっとした時間に、例えば分掌や教 科の部屋、職員
室の作業スペースなどで、教育や学校の課題などについて、初任者等と一緒に「気楽にまじめ
な雑談をする」ことは、初任者等にも非常によい勉強になります。
15 ページ(参考2)参照
- 11 -
【5】ポイントをしぼり、段階的に育成しよう
教科指導をはじめ、生徒指導等の校務分掌などで、学校での業務を実際に指
導していく際には、そのときそのときの初任者等や生徒等の状況を踏まえ、ポ
イントをしぼって指導していくことをこころがけましょう。
一つずつハードルを越えていくことで、初任者等に自信を持たせながらモチ
ベーションを保って取組みを継続させることができ、良い効果が期待できます。
例えば、授業を 観察して指導する場合な
ど、最初のうちは、どうしても多くの課題
次 回 は「 一人 ひ とり の 表
情 を 見 る 」と い う点 を 目
標 に し てみ て は?
そ う で すね 。そ の点
を 意 識 して み ます。
が見つかり、あれもこれもと指 摘してしま
いがちです。初任者等の課題のうち、まず
は努力すればすぐに改善できそうなもの
を一つ選んで重点的に指導し、次回にその
点が進んでいれば、そこをきちんと認めた
上で、二つ目の課題を次の目標にするとい
うように、意識してポイントをしぼり、段
階的に指導していくことも重要な手法と
改善すべき点をしぼる
いえます。
また、ある業務を一から教える場面などでは、「やってみせる→説明する→
やらせてみる→チェックする」という段階を踏んで行うなどの工夫も有効です。
様々な場面でスキルを定着させる場合などに使われる手法で、初任者等の指導
にも有効でしょう。
例えば、生徒指導部で放課後に遅刻指導を行うとして、次のような
進め方を参考にしてください。
①
先輩教職員が実際に生徒を指導している場面を初任者等に観察
させる。
②
生徒を指導した後、生徒の状況や特に留意した点等、指導のポ
イントを初任者等に説明する。
③
別の生徒の遅刻指導を、先輩教職員が指導を観察できる状態で、
初任者等に行わせる。
④
先輩教職員が初任者等の生徒指導をチェックし、良い点をほめ、
改善すべき課題を確認する。
この場合、①については、初任者等が先輩教職員の指導を観察でき
る場面を意図的に設定することが重要です。例えば「同じ部屋で仕事
をしているのだからこれまでも見ているはず」とか、「自分でアンテ
ナをはって吸収すべきだ」などというだけではなく、初任者等を育成
するための場面を意図的に設定する、ということです。そのことが、
初任者等にも「今は指導を受ける場であること。注意深く観察して、
吸収すべきであること」という意識を持たせる前提となります。
16 ページ(参考3)参照
- 12 -
【6】取組みの評価と次年度の方針
初任者等の育成は1年間の取組みが終了すれば終わりというものではありま
せん。その後も多くの経験を積みながら、教職員としての資質の向上を図って
いく必要があります。
そのためには、取組みのフィードバックが重要です。例えば1年間、初任者
等育成の取組みを行ったなら、その取組みを具体的に評価し、改善された点、
新たにその教職員の強みとして考えられるようになった点、取り組んだものの
課題として残った点、新たに課題として見えてきた点などを具体的に挙げなが
ら、指導の中心となった教職員と初任者等で共通
認識を持ち、初任者等が次年度の取組み課題や目
教職員としての
標を具体的に設定できるよう話し合いましょう。
課題
OJTにおいてもこうした評価をしっかり行うこ
P
*授業力
*生徒とのコミュニ
とが、初任者等の育成につながります。
ケーション力
*…………
育成のための
取組み
D
*研究授業
*生徒指導のロール
プレイ
*…………
取組結果の
評価
C
*授業のポイントが
わかりにくい。
*生 徒への声 かけ は
よくできた。
*…………
次年度の
課題設定
A
*授業の組み立て方
法の工夫
*課題生徒への対応
*…………
まず、1年間の取組みを通じて、「改善された点」や「で
きるようになったこと」などから話し合うことがよいでし
ょう。
その上で、初任者等がどのような点を課題として考えて
いるのかについて、よくその考えを聞き、指導教員等とし
ての意見をいうようにすることが、納得感を高めます。
いずれにせよ、できるだけ具体的に話し合いをし、初任
者等が実現可能な具体的目標を設定できるよう指導し、そ
の上で、長期的な目標についても示唆をするなど、初任者
等が意欲を持って取り組めるよう指導しましょう。
また、「新たに取り組みたいと感じるようになったこと」
などについても話し合うとよいでしょう。
取組みの評価が次年度の取組みへの動機付けにつながる
ようにすることが重要です。
また、指導の中心となった教職員は、初任者等
と話し合って共有した目標・課題等について、校
長・副校長、教頭、首席等にも報告したり、ある
いは、初任者等に自分で報告させるなどして、学
校が組織的に初任者等の育成に取り組んでいくよ
う働きかけましょう。
校長・副校長、教頭、首席等は、指導の中心と
なった教職員も交えて、学校組織としての初任者
等育成の取組みについて評価し、次年度につなげ
ていきましょう。
指 導 の 中 心 と な っ た 教 職 員が 初 任 者 等 と 一 緒 に 行 う 評価 活 動 で は 、 初 任 者 等 が 次年 度 以 降 に 取 り
組 む 方 向 を 明 確 に し 、 そ の動 機 付 け と す る こ と が 、 重要 な 目 的 で す 。 そ し て こ の評 価 活 動 で 明 ら か
に な っ た こ と を 次 年 度 の OJ T 計 画 に 反 映 し 、 O J Tの 取 組 み を 進 め て い き ま す。 こ う し た P D C
A サ イ ク ル ( Plan-Do-Check-Action) を 繰 り 返 し て い く こ と が 、 初 任 者 等 の 育 成 に つ な が り ま す 。
この点について、初任者等の理解を深めた上で、評価活動を行うようにしてください。
- 13 -
[第 1 章の補足]
(参考1)「OJTの効能」
OJTの目的は、初任者等が教職員として着実に仕事をできるようにしていくことで
す。しかし、この他にも次のような「OJTの効能 」が考えられます。
1
初任者等の学校への帰属意識を高める
初任者等が、安心して教育活動等に取り組めるかどうかについては、配属された学校
(とその職員集団)に対する帰属意識が大きな鍵を握っています。その学校への高い帰
属意識が児童・生徒への愛情を強めることにもつながり、児童・生徒理解や生徒指導面
等での大きな力ともなり得ます。
初任者等の学校への帰属意識を高めることについては、初任者等と先輩教職員との
「仲間意識」が大きな役割を担います。OJTを通じて、先輩教職員から初任者等に対
するコミュニケーションが積極的に行われることが、「仲間意識」の醸成につながりま
す。是非、積極的にコミュニケーションを図ってください。「相手も大人だから、何か
あれば自分から相談に来るだろう」とか、「わからなかったら聞きに来るだろう」、「し
っかりしてそうだから、一人でやるだろう」などという 思い込みは禁物です。初任者等
の取組みを把握し、悩みを理解するよう努めながら、初任者等が意欲的に取組みを続け
ていけるよう励ましてください。
先輩教職員からのいろいろな配慮や働きかけが、初任者等から先輩教職員に気軽に話
しかけたり、相談したりしやすい雰囲気をつくりま す。そのことが、初任者等の職員集
団への信頼感や仲間意識、ひいては学校への帰属意識を高めることにもつながります。
2
先輩からの一言が、悩み解決の糸口に
学校の教育活動の中で、初任者等の教職員は色々な場面で悩んでいることでしょう。
それも当然。その悩みに向き合ってこそ、教職員として成長していくものです 。
だからといって、誰にとっても自分一人で悩み続けるのは辛いもの。また、悩みを乗
り越えるのに、ちょっとした支援が必要になることもあります。中には「悩んでいる」
こと自体を「ダメ」と思いこんでいる場合もあるようです。
こんな時、例えば先輩教職員が自分の初任時代の悩みを話して聞かせるだけで、気持
ちが軽くなることもあります。先輩からの一言が悩み解決の糸口になるかもしれませ
ん。
先輩として、時には厳しいことをいわなければならないときもあるでしょうが、その
後は、また笑顔で気軽に声をかけることを忘れずに、初任者等の成長を後押ししてくだ
さい。そのことが児童・生徒の受ける教育の質を高めることにつながります。
3
先輩も育つOJT
OJTを行うことで先輩教職員の資質向上も期待できます。初任者等を指導する中で
自分自身の教育活動を振り返ることや、初任者等に授業や生徒指導の場面を見せるため
より丁寧に行うようになること、初任者等からの質問に答える中で自分自身の考えが整
理できること、初任者の意欲を高めようと様々に工夫することなどが、スキルアップに
通じます。
- 14 -
(参考2)「学びの方法」
教職員の育成については、11 ページの本文以外に下の表に例示したような方法など、多
くの方法が考えられます。初任者等の育成のために、その課題に応じた手法を用いること
が重要です。指導教員等として、どのような手法があるのかということについて、様々な
情報を入手するよう努めてください。
<その他の学びの方法例>
方
法
例
授業案の共同作成
概
要
教職員どうしで授業案・指導案を共同で検討・作成し、
それぞれ授業を実施して、改善に向けて意見交換をする。
それぞれの教職員が自分の強みや弱み等を理解すること
や、授業改善等が期待できる。
アクション・リサーチ
教職員が自らの課題について、その解決を図るために、
計画に基づき実践を行い、その結果を具体的に観察・検討
し、改善・発展につなげていく方法。学校では、無意識的・
日常的に行われていると思われる活動であるが、枠組みを
定めながらシステマティックに行い、成果を上げようとす
るもの。
授業改善はもちろん、授業改善を行おうとする動機付け
や、専門性の向上等が期待できる。
教育実践プレゼンテー
ション
初任者の配置校に、初任から数年を経た教職員がいるよ
うな場合に、その教職員に、これまでの数年間の取組みを
振り返りって自己の実践をプレゼンテーションしてもら
い、その後に意見交換をする。
初任者に対する動機付けと、経験者自身の教育活動の改
善が期待できる。
QCサークル
「QC」は Quality Control の略で、商品やサービスの
品質改善を目指す企業活動から生まれてきた方法。職場で、
小人数で行われる業務改善のための活動が「QCサークル」
と呼ばれる。
学校では、数人の教職員で、授業改善を目指すようなチ
ームを作って活動するなどの方法や、学校運営の改善を考
える活動なども考えられる。
小集団で活動することにより、参加者の意識、意欲や達
成感の高まり、コミュニケーションの深化等が期待できる。
*これらの詳細については、様々な書籍や研究がありますので、参考にしてください。
- 15 -
(参考3)「スモール・ステップ」
初任者等を指導する際に「スモール・ステップ(Small Step)」という
発想も意識してみてください。小さな段階をいくつも踏みながら、目標
に向かっていくという考え方です。
次のように考えてみましょう。
何らかの業務について、最も上手くできた場合を「10」とした場合、
今はどのくらいの段階か考えてみます。仮にそれが「5」だと初任者等
が考えていたら、初任者等に「それを6にするにはどうしたらいいと思う?」と質問し 、
それができるように取り組ませてみるということです。達成感を感じつつ、意欲の面から
も取組みの面からも次の目標が立てやすいように進めていくという発想も大切です。
理想的な教職員像や理想的な教育を追究するあまり、目標を大きく捉えすぎて、なかな
か到達点を確認できなかったり、達成感を得られなかったりすることを繰り返し、モチベ
ーションが低下していくことがあります。できれば、短期間で実現できそうな大きすぎな
い目標を立てながら、一つひとつ達成していき、変化を実感しながら、少しずつ教職員と
して成長していくような取組みを、ぜひ、初任者等と相談しながら進めてください。
例えば、生徒とのコミュニケーションをもっと深めることが必要だと感じている初任者等に、ど
のようなアドバイスが有効でしょうか。
まず、「あいさつ」が考えられますが、仮にその初任者等が、朝の あいさつはよくしているなら
どうでしょうか。
この場合、「言葉をつなぐ」というようなアドバイスも考えられます。
朝のあいさつの後に、生徒の名前を呼んだり、「元気?」とか、部活で指導している生徒なら「昨
日はがんばってたな」とか、何でもいいから「一言だけ言葉をつなぐ」ということを目標にしてみ
ます。そうすれば、生徒から言葉が返ってくるかもしれません。そうした「言葉のつながり」を積
み重ねていくことで、コミュニケーションも深まり、生徒との心のつながりが育っていくきっかけ
となるのではないでしょうか。
(参考4)「A先生サポート・チーム」
初任者の教諭が配置されたときの例を紹介します。
大学を出たばかりのAさんが、初任者の教諭としてある学校に配属されました。
その学校には、Aさんと年齢の近い先輩教諭が3人いました。
A さ ん が 配 属 さ れ る と 、指 導 教 員 が 中 心 に な っ て 、A さ ん の 研 修 が 始 ま り ま すが 、 そ の と き に 、
3 人 の 先 輩 教 諭 が A さ ん のサ ポ ー ト 役 を 買 っ て 出 ま した 。 3 人 は 、 機 会 が あ れ ばA さ ん の 授 業 を 見
学 し 、 自 分 た ち の 授 業 も 見せ 合 い 、 4 人 で 授 業 や 教 材、 教 具 に つ い て の 意 見 交 換を 続 け ま し た 。 も
ちろん、指導教員も折を見て話の輪に入ります。
まさに「Aさんサポート・チーム」がつくられたのです。
Aさんは 、先輩た ちの多 くの貴重な アドバイ スを受 けながら、 教諭とし
ての1年目をスタートすることができました。
同時に、 3人の先 輩教諭 も Aさんに 対する「 指導」 を通じて、 自分たち
の授業や生 徒との関 わり方 など、多く のことを 振り返 りながら実 践を進め
ていくこと ができ、 教諭と しての成長 につなが ったよ うです。こ の取組み
は、3人の先輩教員に対する「OJT」でもありました。
初任者等 が配属さ れた学 校の校長・ 副校長、 教頭を はじめ、首 席等や指
導教員、あ るいは学 年主任 や分掌長等 の皆さん には、 こうした「 仕掛け」
もお願いしたいところです。
- 16 -
第 2 章
- 17 -
【1】ビ ジ ョ ン の 共 有
(1)あなた(指導教員等)自身の振り返り
経験の少ない教職員を指導するにあたり、まず自分自身の教職員生活を振り返ってみま
しょう。
Q1:自分が初めて教壇に立った頃のことを思い出してみましょう。
あなたはなぜ、この職業につきたいと思ったのですか?
Q2:あなたが初めて教壇に立ったころ、どんなことを不安に思ったり、悩んだりしま
したか?
Q3:あなた自身が、今、悩んでいることはありますか。もしあれば、それはどんなこ
とですか。また自分の学校で相談をするとすれば、誰に相談することができますか?
- 18 -
<初任者等の指導にあたる前に>
→Q1
「なりたい」という思いを大切に
「教職員になりたい」と思った理由は、人それぞれだと思います。
例えば、「子どもに○○のおもしろさを伝えたい」とか、「○○を大切にする心を育てた
い」とか、きっと教職員が百人いれば、百の理由があることでしょう。
あなたもそうだったように、新しく「学校」という世界に入ってきた教職員にも、やはり
そうした思いがあります。
その気持ちを大切にしながら、初任者等の指導にあたってください。そうした指導教員等
の姿勢が、初任者等にとって大きな支えや励ましになることでしょう。
→Q2
不安を解消し、楽しさを覚えることが大切
どんな職業でもそうでしょうが、毎日、イヤイヤ働いていると、心身ともに疲れ果ててし
まいます。
教職員になりたての頃は、自分の抱いていたイメージと学校や児童・生徒の状況との差に
とまどいを覚えたり、児童・生徒が授業についてきてくれないと感じたり、児童・生徒との
関係がうまく築けなくて自信を失ったりと、不安や
悩みを持つことが多くあります。もちろん、経験豊
かな教職員でも同じです。
でも、教職員には、児童・生徒との関係の中で、
楽しいこと、面白いこと、やりがいを感じること、
そうした機会が多くあることを、先輩の教職員はみ
んな知っています。これらを経験することによって、
不安が和らいだり、またがんばろうという気持ちを
高めたりすることもできます。
初任者等を指導する皆さんは、是非、児童・生徒
との関係の中で、「今日はこんな面白いことがあっ
た」、「こんないいことがあった」と初任者等に伝
えてあげてください。
→Q3
みんな何かに悩んでいる……
それでも、悩みがなくなるわけではないでしょう。経験豊かな教職員にもそれなりの悩み
があります。初任者等も同じ学校の教職員ですから、時には、自分の悩みを初任者等に話し
てみるのもいいのではないでしょうか。自分自身も誰かに話すことで問題の整理ができます
し、「先輩でも悩むんだ」という「発見」は初任者等の心の負担を軽くする効果とともに、
初任者等が悩みを話しやすくなる効果もあります。また、ベテランがかつての自分の失敗を
語れば、その内容は初任者等の取組みに大きなヒントや教訓を与えることとなるでしょう。
こうしたことの積み重ねが、初任者等が、あなたという信頼できる先輩教職員を見つける
ことにつながっていくのです。
- 19 -
(2)初任者等と「育成・成長のビジョン」を共有する
経験の少ない教職員を指導するにあたり、あなたがその教職員に伝えたいこと、また初
任者等の思っていることを、まとめてみましょう。
Q4:あなたは、初任者等の(
さん)に対して、教職員としてどんな「思い」
を、特に伝えたいと思いますか?
Q5:あなたは、(
さん)が、どんなことができるようになればいいと思い
ますか。「10 年後」、「5 年後」、「今年」にわけて、できるだけ具体的に書いてみ
ましょう。
<10 年後>
<5 年後>
<今年>
- 20 -
<初任者等と議論してみましょう>
→Q4
教職員の仕事って何?
私たち教職員の仕事って何でしょうか?
このことは、これまでにも様々に語られてきた
テーマですし、人それぞれに、違う受けとめ方があると思います。
また、同じ人でも、これまでの経験を通じて捉え方が変化してきているかもしれません。
一度、初任者等とこうした話をしてみましょう。もしかしたら、初任者等にとっては、あ
まり深く考えたことがない事柄かも知れません。しかし、これから教職員としてプロフェッ
ショナルになっていくためには、意識しておかないといけないことでしょう。指導にあたる
教職員からこの話題を持ちかけてみてください。
でもその前に、指導にあたる教職員自身が、このことについて自分の言葉でまとめてみて
ください。
→Q5
求められる人物像
「教職員の仕事ってなに?」という問いに「正解」はないでしょうし、また「どのような
教職員が理想か?」という問いに対しても同じことが言えるでしょう。
でも、教職員なら、このような資質は備えておいてほしい、このような能力は身につけて
ほしいという点をいくつかあげることはできます。
次に、大阪府教育委員会が公立学校教員の募集に際して示している人物像をあげておきま
すので、自分の考えをまとめたり、初任者等と議論する際の参考にしてください。
【大阪府教育委員会が求める人物像】
◎豊かな人間性
何より子どもが好きで、子どもと共感でき、子どもに積極的に心を開いていくことができる人
◎実践的な専門性
幅広い識見や主体的・自律的に教育活動に当たる姿勢など、専門的知識・技能に裏打ちされた指導力を備えた人
◎開かれた社会性
保護者や地域の人々と相互連携を深めながら、信頼関係を築き、学校教育を通して家庭や地域に働きかけ、その思い
を受け入れていく人
さて、(
さん)と話をしてみて、どうでしたか?
Q6:実際に話をして、(
さん)は、どんな教職員になりたいと言っていま
したか?
- 21 -
(3)育成計画を立ててみよう
OJTは、計画的・継続的・意図的に行うことが重要です。そのためにも、初任者等と
十分話し合いながら、計画を立てて行うようにしてください。ただし、「一度決めた計画
は固定的なもの」とは考えずに、状況によって修正しながら、弾力的に取り組んでいきま
しょう。
参考例として、高等学校に配属された初任者の教諭Fさん(地歴:世界史担当、2年副
担任、生徒指導部)の育成計画を掲載します。
(参考例1)年間計画
月
学習指導
学級・分掌
生徒指導
校外研修(教育C)
4
*生徒の学習活動を観
*分掌の業務を知る。
*生徒の名前を早く覚
*学校教育の今日的課
察する。
*HR活動の実際を観
*生徒の興味・関心を
引き出す工夫につい
察する。
える。
*教職員の服務
く行う(できるだけ
*社会人マナー
名前を呼ぶ)。
*授業づくり①
*頭髪指導を行う。
て考える。
5
*授業の流れを考え
題と展望
*生徒への声かけを多
*4月の出欠状況を確
*校外学習で生徒との
認。生徒理解につい
コミュニケーション
て考える。
を深める。
る。
*公開授業①
*人権について考える
①
*生徒理解を深めるた
めに①
(参考例2) 4 月月間計画(区分順)
時期
区分
重点項目
4月
学習指導
*授業中の生徒の学
中旬
具体策
*授業中、生徒の活動をしっかり観察
習活動の様子をつ
①全体的な生徒の学習活動の印象を答える。
かむ。
②具体的な生徒の活動の様子を説明する。
4月
*生徒を授業に引き
下旬
つけるための工夫
をする。
*導入の工夫
①生徒が興味を持ちそうなエピソードを使ってみる。
②写真・図版を使ってみる。
*話し方、表情の工夫
①スマイル・トレーニングをする。
②話し方のメリハリを意識する。
4月
上旬
学級・分掌
*分掌の業務を知
る。
*生徒指導部長の説明
①どんな業務があるかを知る。
②問題行動が起きた時の対応の原則を知る。
*頭髪指導を行う。
*頭髪指導の実践
①N教諭の頭髪指導を観察する。
②自分で頭髪指導を行う。(N教諭が観察し、助言)
③助言を踏まえ、頭髪指導を行う。
4月
中旬
*HR活動の状況を
知る。
*担任が行うHR活動を見学
①担任の話し方、表情等に注目する。
②担任が特に工夫をしていたと思われるところを考える。
③上記をもとに、担任と話し合いをし、担任の考えを知る。
- 22 -
【2】組織的に行うための「仕掛け」
(1)体制をつくり、学校として育てることを意識化する
各校でOJTを進める校内体制を構築することが重要です。それぞれの教職員には、次
のような役割が考えられます。
校長・副校長
教頭・事務(部)長
首席・指導教諭
分掌長・学年主任・
部主事
初任者指導教員・
教科指導員
経験豊かな教職員
中堅教職員
経験の少ない教職員
・中期的な人事計画を作成し、学校目標の達成に向け、中堅教職員・経験の
少ない教職員の育成に努める。
・校長・副校長を助け、中堅教職員・経験の少ない教職員の育成に努める。
・校内でOJTを推進するため、教職員の共通認識の確立に努める。
・事務(部)長は、事務職員等のOJTの中心となり、育成に努める。
・学校のOJTの中心となり、中堅教職員・経験の少ない教職員の育成に努
める。
・担当する部署等を中心に、OJTを通じて中堅教職員・経験の少ない教職
員の育成に努める。
・初任者研修対象者に対するOJTの中心となり、育成に努める。
・教職員のロールモデルになる。
・OJTによる後輩教職員の育成をサポートする。
・初任者等の教職員のロールモデルになる。
・OJTによる後輩教職員の育成をサポートする。
・日々の実践とその振り返りや、先輩教職員を見て、自らの資質向上を図る。
・OJTによる後輩教職員の育成をサポートする。
Q7:OJTにおけるあなたの役割を具体的に記入してみましょう。
Q8:より多くの教職員に初任者等と関わってもらうために、必要と思われること
を具体的に記入してみましょう。
- 23 -
ア
校長・副校長、教頭、事務(部)長の役割
校長・副校長は、教職員の育成のため、個々の教職員の育成ビジョンを立て、「評価・
育成システム」の面談等を通じ、課題の共有化を図る必要があります。
また、教頭や事務(部)長は、校長・副校長の育成ビジョンに基づき、育成の支援に努
めるとともに、校内での体制づくりや雰囲気の醸成を進めましょう。その際、例えば経
験豊かな教職員や中堅教職員に対して、具体的に「先輩として○○先生を育てることに
力を発揮してほしい」などの助言をすることが、学校全体のOJTの活性化を促します。
イ
首席・指導教諭の役割
首席や指導教諭には、学校のOJTの中心としての役割が求められています。校長・
副校長の描く人材育成のビジョンをもとに、校長・副校長、教頭とも相談しながら、校
内のOJTの設計図を描き、役割分担を作成しながら、体制づくりを進めてください。
また、OJTの進捗状況も適宜チェックしながら、教職員の育成に努めましょう。
ウ
分掌長・学年主任・部主事の役割
担当する分掌・学年・部に所属する教職員、特に中堅教職員や初任者等に対しては、
様々な場面で指導・助言を行う機会があるでしょう。しかし、それにとどまらず、首席
等とも相談しながら、意図的、計画的、継続的にOJTを進めてください。分掌長、学
年主任、部主事は、これらの教職員の実際の指導場面に近く、OJTに大きな役割を果
たします。
エ
初任者指導教員・教科指導員
初任者研修対象者の指導教員・教科指導員は、初任者研修対象者の育成の中心的な役
割を担います。校長・副校長、教頭等や首席等とも十分に相談しながら、初任者に対す
るOJTに努めてください。
オ
その他の教職員の役割
校内のそれぞれの教職員は、自ら意識しなくとも、後輩教職員の育成に大きな役割を
果たしています。特に経験豊かな教職員や中堅教職員は、例えば、初任者等が「あんな
先生になりたい」とか、「あんな授業ができるようになりたい」と考えるようなロール
モデルになっている場合も少なくありません。後輩教職員の育成を考えたとき、身近に
そうした教職員がいることが、大きな役割を果たします。
まず、こうした自らの役割を自覚することが、大切です。
また、OJTによる後輩教職員の育成を、積極的にサポートしてください。
(2)「報・連・相」を忘れずに!
取組みを組織的に行うには、報告・連絡・相談が欠かせません。特に校長・副校長、教
頭、首席等には、定期的な「報・連・相」を心がけましょう。
*報告……仕事の結果や進捗状況などを関係者に知らせること。
例)Fさんには、現在、◇◇の取組みをしてもらっています。
*連絡……仕事の判断や自分の意見を伴わない事項について、関係者に知らせること。
例)明日、Fさんの6限目の授業を観察することになっています。
*相談……仕事の進め方や今後の方針等について、関係者と相談し、指示、アドバイス、参
考意見などをもらうこと。
例)Fさんの11月の研究授業は、□□のような形で進めようと思うのですが。
- 24 -
【3】コ ー チ ン グ
(1)コーチング・マインドとスキル
「コーチング」というのは、人材育成の手法の一つで、「問題の解決策や答えは、すべ
てその人の中にある」という前提で、適切な支援を行うことによって、相手のやる気や能
力、可能性を引き出していこうという考え方に基づいています。「相手の話をよく聴くス
キル(傾聴のスキル)」や「相手を認めるスキル(承認のスキル)」、「相手の答えを引
き出すスキル(質問のスキル)」などのスキルを通じて、相手を尊重し、その自発性と答
えを引き出していきます。
Q9:「5月にはいって授業があまりうまくいきません……」と悩んでいる初任者のA
先生。確かに、生徒の反応もあまりいいとは言えず、机に伏せてしまう子も少なくあ
りません。A先生自身はいろいろと努力はしているようですが……
さて、指導教員としてあなたはどのような指導をA先生に対して行いますか?
<あなたならどのように指導していきますか。ポイントを箇条書きにしてみましょう。>
Q10:あなたはA先生と話し合ってみることにしました。あなたは、どのようなことに
注意して、A先生と話をしますか?
<A先生と話をするときに、ポイントと考えられることを箇条書きにしてみましょう。>
- 25 -
(2)コーチング・スキル
ア
話を聴く(傾聴のスキル)
いつも明るくがんばっている初任者のK先生が、少しふさぎ気
味です。指導教員のS先生は心配して職員室で声をかけました。
そのとき、次の【パターンA】と【パターンB】ではどのような違いがあるでしょうか?
【パターンA】
【パターンB】
S「どうしたの?」
S「どうしたの?」
K「いい授業ができなくて……」
K「いい授業ができなくて……」
S「そうお?
S「いい授業が?」
ちゃんと教えてるよ。教材研究
もできてるし。」
K「はい。生徒を見ていると、そう思えてきて…」
K「いえ、そんなことなくっ…」
S「そうなんだ…それで…?」
S「大丈夫よ!
K「生徒の反応がよくないんです。」
後はちょっと生徒の反応が
よくなれば。自信を持って!」
S「反応が?」
K「はい…ありがとうございます。」
K「もっとこう、生き生きとしてほしいのに…」
この二つのパターンでは、Kさんの反応が違っています。【パターンA】では、Sさん
はKさんを励まそうとしていますが、Kさんは自分の抱えている問題を自分から話すこと
が難しくなりました。
コーチングでは、「答えはすべてその人の中にある」ということを前提にしていますか
ら、それを引き出すために、相手が話しながら、自ら気づいていくことが重視されます。
そのために、「うなずき、あいづち、アイコンタクト、確認(繰り返し)」などを用いな
がら、相手に安心感を与えつつ、相手の言いたいことを、最後まできちんと聴くことが大
切になります。
イ
相手を認める(承認のスキル)
Kさんが初めての公開授業を終えました。その直後、SさんがKさんに話しかけます。
【パターンC】
【パターンD】
S「お疲れ様。緊張した?」
S「お疲れ様。生徒の反応、よかったじゃない。」
K「はい。とっても…」
K「ありがとうございます。でも時間がなくて。」
S「最後、少し時間が足りなかったようね。」
S「準備に随分がんばったしね。私も嬉しいわ。」
K「すみません。」
K「はい。ありがとうございます。」
S「ううん。全体的にはよかったわ。」
S「学年主任のTさんも喜んでたよ。時間配分
は次の課題にしようか。」
上の【パターンC】と【パターンD】を見て、Kさんの「次もがんばろう」という気持
ちが、どちらが高まるでしょうか。また、それはなぜでしょうか?
例えば、毎朝「おはよう」とあいさつをする。これも相手の存在を認めているからこそ、
あいさつをするのです(言い換えれば、あいさつをしないのは、相手を無視するのと同じ、
ということにもなります)。そのときに、例えば「おはよう。○○さん」と相手の名前を
呼ぶことも、相手に対するより強い「承認」になります。
また、相手の行動の結果や成果、そのプロセスを承認することが、仕事の上では重
要になってきます。その伝え方として、「YOU メッセージ」、「Iメッセージ」、「WE
メッセージ」などがあります。(次ページ参照)
上の【パターンD】には、このような「承認のメッセージ」がちりばめられています。
- 26 -
*「YOU メッセージ」……「あなたは~だ」という伝え方。Ex)「よくがんばったね。」
*「I メッセージ」……「私は~だ」という伝え方。Ex)「私も嬉しいよ。」
*「WE メッセージ」……「我々(組織等)は~だ。」という伝え方。Ex)「首席も感心してたよ。」
例えば「おはよう、○○さん、朝からよく頑張ってるね!」というのは YOU メッセージです。
また前ページの「準備に随分がんばったしね。私も嬉しいわ。」というのは YOU メッセージ
と I メッセージを組み合わせたものといえます。
ウ
相手から答えを引き出す(質問のスキル)
授業で悩むK先生から相談を受けたS先生。何とかK先生に元気を取り戻してもらおう
と支援します。
さて、次の【パターンE】と【パターンF】では、何か違いがあるでしょうか?
【パターンE】
【パターンF】
S「授業のどこがいけないと思う?」
S「どんな授業をしたいの?」
K「考えさせることができていないような気が
K「みんなが考えてくれるような……」
します。」
S「考えさせたいのね。どうしたら考えるように
S「なぜ考えさせられないのかな?」
なると思う?」
K「発問の仕方が悪いのかも…」
K「考えるような発問をするのはどうでしょう?」
S「じゃ、発問を工夫しましょうよ。」
S「いいわね。」
K「わかりました。考えてみます。」
K「じゃ、発問を工夫してみます。」
S「がんばってね。」
S「がんばってね。」
この二つのパターンでは、これからKさんが取り組もうとすることは同じ結果になりま
した。でも、少しKさんの反応が違っていますね。【パターンE】では、結局SさんがK
さんに「指示」を出す形になっています。それに対し、【パターンF】では、Kさんが自
発的に取り組むという形になりました。
質問にもいろいろな方法がありますが、相手に考えさせること、相手が自分で答えを見
つけ、自ら取り組むよう導くことが重要になります。
例えば、授業中にあることができなかった初任者がいたとします。その人に「なぜあな
たはできなかったんだろうか?」(このような質問を「否定質問」といいます。)と質問
するのと、「できるようになるには、どうしたらいいと思う?」(「肯定質問」といいま
す。)と質問するのとでは、少しニュアンスが異なります。こうした質問法を使い分ける
ことで、初任者等の力を引き出すことも意識してみてください。
(3)相手を認めるコーチング・マインド
コーチングで最も重要なことは、「相手を認める気持ち」や「相手を伸ばしたいという
気持ち」、「相手の成長を信じる気持ち」などの「コーチング・マインド」であり、その
前提のもとで、(2)で紹介したスキルやテクニックが生きてくることになります。また、
ほめることだけがコーチングではなく、場面によって叱ることも当然あります。
もちろん、分掌の事務業務など、初任者等がはじめて行う業務については、一から教え
ること(「ティーチング」)が必要です。これらをうまく使い分けながら、初任者等の力を引
き出し、成長を支援してください。
- 27 -
【4】メ ン タ リ ン グ
(1)メンタリング
「メンタリング」も人材育成の手法の一つです。
例えば、自分のこれまでの教職経験を振り返ったとき、「あのころ、あの先輩がいたか
ら今の私がある」とか、「自分はあの先輩に育ててもらった」と感じる場合もあるでしょ
う。このように、どの職場にあっても、その職場で豊富な経験を持つ「先輩」が、経験の
少ない「後輩」の面倒を見て、仕事面や心理面等での成長を支援し、そのおかげで経験の
少ない者が職場になじんで、その職場で一定の役割を果たしながら一人前に育っていった
という例があります。
これは、「人材育成」という点では大きな効果があります。しかし、たまたま面倒見の
よい先輩がいてくれるかどうかや、先輩と後輩に十分な信頼関係が築けているかどうかと
いう「偶然性」によって、この関係が成立したり、効果が大きく異なったりするという側
面もあります。
メンタリングは、こうした先輩と後輩のよい関係を、より多くの者に広げ、意図的、計
画的、継続的に経験の少ない者を育成するため制度化された人材育成プログラムの一つと
いうことができます。
コーチングでは、先に紹介したように「問題の解決策や答えは、すべてその人の中にあ
る」という前提に立ち、その答えを引き出していこうと支援します。しかし、全くはじめ
て教職を経験するような初任者の場合は、教職員としての知識や経験、また新たに配属さ
れた学校の職員としての知識や経験をあまり持っていませんので、いきなりコーチングか
ら入っても答えをどう引き出していいのかわからない、というときもあります。
こうしたときには、その職場での経験や知識も豊富な先輩が、「自分の経験を語ること
によってヒントを与える」などの支援をする方が、効果的な場合があります。
Q11:これまでのあなたの教職経験の中で、「この人のおかげで今の自分がある」とか、
「この先輩が私を育ててくれた」という先輩、あるいは、あなたが頼りにしていた先
輩について、どんな点が頼りになり、また相談できたのでしょうか?
<できるだけ具体的に思い出しながら、箇条書きにしてみましょう。>
- 28 -
(2)メンターとメンティ
メンタリングでは、経験の少ない人を支援する者を「メンター」と呼びます。これは古
代ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」に登場する「メントル」という人物の名前を語源
としているそうです。またメンタリングを受ける立場にある人を「メンティ」または「プ
ロテジェ(被保護者の意)」と呼びます。
メンタリングでは、メンターは、基本的に1対1の関係で、継続的にメンティを支援す
ることになります。初任者研修対象者を指導する指導教員も、このメンターの役割を果た
しているといえます。一般的には、メンティに対するメンターを、その組織内の「先輩」
から一人選び、一定の期間を決めて、メンタリングを行います。
(3)メンターに求められるもの
メンターは、経験の少ないメンティが職場の一員として、そ
の仕事や役割を遂行しながら、一人前の教職員に成長していく
ことを支援します。その支援の領域は、仕事の遂行という側面
と、仕事を遂行するために必要な心理的・社会的な側面という
二つの領域に及びます。例えば、仕事面については、学習指導
や生徒指導という教職員の仕事を進めていくための支援があげ
られます。また、単に教職員としての仕事ができるようになる
ために支援するというだけではなく、メンティが自ら教職員と
して理想像を構築し、その実現に向けて進んでいくように支援
することも含めています。心理的・社会的な支援としては、その職場で他の教職員とよい
人間関係を保っていくための支援や、様々な悩みの相談にのることなどが考えられます。
そのため、メンターは、場面に応じて、メンティに対する教育者的な役割、助言者や支援
者、時には保護者的な役割が必要になってきます。また先輩教職員としてロールモデルを
示すことも必要です。
メンターの役割はこのように広範囲に及んでいます。先に示した「コーチング」も、メ
ンターが行う活動(これを「メンタリング」と一般に呼びます。)で用いられる手法の一
つということができます。
(4)メンターとしての留意点
メンターとしてメンティを支援する際には、一般に次のような点に留意することが必要
となります。
ア
信頼関係の構築に努める
メンティはメンターとの人間関係を通じて成長していきます。そのため、両者の間に
は信頼関係が極めて重要になります。自然発生的に職場の先輩が後輩のメンターとして
の役割を果たすような場合なら、メンティにとって信頼できる先輩がメンターになる場
合が多いと考えられます。しかし、組織内で、後輩のメンターに指名され、その支援を
行う場合には、メンターは意識的に信頼関係を構築する必要があります。
そのためには、十分なコミュニケーションに加えて、メンティを尊重することやメン
ティの立場に立って考えること、プライバシーなどの秘密を守ること等も必要です。
- 29 -
イ
よく観察する
メンターがメンティに対して、必要なときに適切な支援を与えるためには、メンティ
をよく観察し、今、どのような状態にあるか、どのような能力や適性を持っているのか
等について、把握する必要があります。それによって、基本的なことを教える(ティー
チング)のか、コーチングの手法を使うのか判断したり、また、言葉をかけるにしても、
そのときの心理状態等にあわせて最も効果的な言葉が何かを判断したりすることができ
ます。
ウ
傾聴する
メンタリングの場は、メンターが自分の価値観や考え方をメンティに押しつける場で
はありません。メンティが何を考え、何を問題としているのか、自分自身について話す
ことが重要で、そのことが自発的な行動につながっていきます。どうしても言わなけれ
ばならないことは、十分に話を聴いた後でアドバイスしましょう。
また、メンターが忙しいときはメンティから話しかけたり質問したりしづらいもので
す。できるだけ、メンティが話しかけやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
エ
質問する
一般的に、メンティに質問するときは「はい」や「いいえ」で答えるような質問(限
定質問)ではなく、具体的に答えられるような質問(拡大質問)をするほうが望ましい
といえます。
また、質問をするときには、できるだけその理由を説明するようにこころがけましょ
う。そうすることで、メンティが安心して答えることができます。
オ
定期的にミーティングを行う
それぞれの状況に応じて、メンターとメンティが、定期的にミーティングを行うよう
にします。
もちろん、普段、仕事をしながら、話をきいたり、助言や支援をしたりすることが大
切ですが、メンターとメンティの正式なミーティングの時間をとり、改めてメンティの
話をじっくり聞き、メンティの求めに応じて、メンターが自らの経験を語ったりする機
会を設けましょう。そのような場を設定し、互いにこれまでの取組みを振り返ったり、
これからのメンティの取組みを検討したりすることが大切です。
カ
意欲を高めるフィードバックを行う
メンタリングでも、積極的にメンティの強みや長所を評価します。また、フィードバ
ックに際しては、メンティの意欲を高め、動機付けにつながるよう心がけましょう。
キ
組織として取り組む
自然発生的な「先輩―後輩」関係など私的なメンタリングではなく、組織として取り
組むことが大切です。初任者研修対象者は指導教員がメンターとなりますが、他の経験
の少ない教職員等に対しても、メンターを誰がやるのか決め、1年間、取り組みましょ
う。そして、年度末にはその取組みを評価し、次年度以降の育成計画に反映しましょう。
- 30 -
【5】具体的な指導に際して
(1)「児童・生徒を理解する」ということ
Q12:初任者のBさんが授業を終えて学年職員室に帰ってきました。困った様子で「5
組のCが、ここのところずっと授業に遅れてくるんですよ。何度も注意したんですが
直らなくて…。どうしたらいいでしょうか?」とあなたに尋ねました。
<あなたならどのように助言しますか?>
Q13:初任者のBさんが授業を終えて学年職員室に帰ってきました。困った様子で「3
組のDが、ずっと授業中にしゃべってて、他の生徒もそれに同調してきてるんです。
今日は 1 時間に5回も注意したんですが……。どうしたらいいでしょうか?」とあな
たに尋ねました。
<あなたならどのように助言しますか?>
- 31 -
→Q12
児童・生徒を理解することの大切さ
一人ひとりの児童・生徒には、家庭環境、学校等での友人関係など、その児童・生徒固有
の様々な背景があり、多かれ少なかれ、それらが児童・生徒の言動に影響を与えています。
仮に、ある児童・生徒が学校のルールに違反したとして、その行動そのものは許されませ
んし、毅然とした態度で叱ることが大切です。しかし、それ
だけで終わっていいのでしょうか?
その児童・生徒が、なぜそうした行動に走ったのか、その
児童・生徒の生活背景をしっかりと捉えた上で、その児童・
生徒の立場に立って、この児童・生徒の様々な行動の意味を
理解することが、そしてその理解に基づいて児童・生徒を支
援・指導していくことが、根本的な解決につながる一歩にな
ります。
例えば、いつもは大きな声で返事をするのにその日は元気
がない児童・生徒がいたら、どう判断したらよいでしょう。体調がよくないのでしょうか。
寝不足なのでしょうか。家で保護者とけんかしたのかもしれません。
何気なく見える現象でも、背景に何かがある可能性を秘めており、一面のみを判断するの
ではなく、生活背景やその児童・生徒の思い・願いなどをつかみながら、児童・生徒を支援
するよう助言しましょう。
→Q13
児童・生徒理解のために
児童・生徒について知っておくべき事柄は多くあります。例えば「生徒カルテ」や「生
徒指導カード」などに記載してある基本的な情報はもちろん、児童・生徒と日々向き合
う中で、表情や声音・口調の変化、友達関係、家庭環境などをしっかり捉えることが大
切です。また、障がいのある児童・生徒であればその障がいの特性や支援の方法につい
ても知っておかなければなりません。
家庭訪問や学級懇談会などの機会を捉えて保護者から児童・生徒の様子を教えてもら
うことも重要です。学校と家庭で様子の異なる児童・生徒は少なくありません。
高等学校では、教科担任制が行われていますし、部活動などもあり、自分以外の多く
の教職員がその児童・生徒と関わっています。そうした教職員から、気になる児童・生
徒の状況を聞いてみることは、その児童・生徒について、多くの情報を得られるととも
に、それらの教職員のその児童・生徒に対する見方(理解の仕方、支援の仕方)を知る
こともでき、大いに役立つと言えます。また、支援学校では、ティーム・ティーチングを
行う教員間での共通理解を図ることが欠かせません。
個人情報の扱いには十分に注意しながらも、児童・生徒の情報については、関係教職
員間で十分に共有し、学校組織として対応するように努めることが重要です。
初任者等の経験の少ない教職員は、こうしたことを「何となく知ってはいる」けれど
も、児童・生徒の重要なサインに気づきながら、実際に他の教諭に報告していなかった
り、自分の中だけで「抱え込んでいる」というようなことも考えられます。このあたり
の教職員としての「機微」を身につけることができるよう、丁寧に対応してあげてくだ
さい。
- 32 -
(2)授業力の向上のために
Q14:初任者のEさんは、授業を終えて職員室に帰ってくると大きなため息をつきまし
た。聞くと授業中に、生徒たちの無気力・無関心な様子に心を痛めているようです。
Eさんから、「何とかよい授業をして、彼らを惹きつけたい」と相談を受けました。
<あなたならどう対応しますか?>
よい授業をつくっていくために、考えること、調べておくこと、準備することは、細かく
見ていけばそれこそ山ほどあるでしょう。例としては次のようなことが考えられます。
*授業目標の明確化
*教科・教材の内容に関する十分な知識
*児童・生徒にとってわかりやすく内容を伝えるための手法についてのスキル
*「課題設定」・「課題追究」・「交流・振り返り」などの「学習の流れ」の構成の工夫
*児童・生徒の発達段階やレディネス、ニーズの把握
*他の教職員から授業を見てもらってアドバイスをもらうこと
*授業の評価と改善の工夫
*児童・生徒との日頃からのコミュニケーションや信頼関係の構築
*学級全体の雰囲気作り・集団づくり、授業時のルールづくりの工夫
*他の教職員の授業を多く見てのよい点の吸収
【「小さくて面白い」ことを集めよう!】
他の教職員の授業を見学したり、生徒指導場面を見るのは、初任者等の教職員にとって、大変参考に
なります。他の教職員がどのような思いをもっているか、どのように指導を工夫しているか、児童・生
徒とどのような関係を築いているか、そうしたことを知ることができるよい機会です。
ところで、他の教職員の授業や指導等の場面を見るときに、「『小さなことだけど面白かった』とい
うことを見つけてノートなどに記して集めておこう」と指導してみましょう。そうすることで、他の教
職員が経験の中で身につけてきた「ちょっとした発想」や「ちょっとした工夫」に気づくことができる
ようになり、児童・生徒を指導する際の有効な方法を体得していく支援にもつながります。
- 33 -
「よい授業かどうか」という判断は、「その授業をどのような観点で評価するか」という
ことにより異なります。そのため、よい授業づくりのためには、「求める授業」、「よい授
業とは何か」、「どのような観点から授業を評価するか」という点について、学年や教科、
さらに学校全体で共有化を図ることも必要です。そのことは「どんな児童・生徒を育ててい
くのか」という学校全体のビジョンにも関わりますので、学校として組織的に「よい授業づ
くり」をめざすことが重要です。例えば、Eさんの言葉や思いをきっかけに、学校全体とし
て授業力の向上を図る取組みにつなげていくなど、管理職とも相談し、検討してみてはどう
でしょうか。
「よりよい授業づくり」のためには、「研究授業」を行
い、授業評価や研究協議等を通じて授業改善に取り組んで
いくことが大切です。そこで、初任者等が「研究授業」を
行う際の指導・助言のポイントを紹介します。
*研究授業までの事前の取組み
・児童・生徒の実態把握のための情報交換を活発化させる。
・設定された研究授業の日時との関係で、授業計画のうちのどの段階のものを実施する
のか、本人の意志・意欲を尊重しながら、十分に検討する。
・明確な目標(授業内容と授業技術)を設定する。
・児童・生徒の実態に沿った内容(質・量、興味・関心を高める工夫など)となってい
るよう留意する。
*研究授業を観察する観点の例(初任者等の状況に応じてポイントをしぼって指導することも必要です。)
・教室内の児童・生徒の様子
「生徒全体が集中しているか」、「積極的に考えたり活動したりしているか」、「授
業規律は保たれているか」、「教師との関係は良好か」等
・授業案の進行の様子
「児童・生徒の活動や理解度を把握しながら進行しているか」、「児童・生徒の発
言等をうまく取り上げながら進めているか」、「児童・生徒が活動する場面が十分
に確保されているか」、「児童・生徒への支援は適切か」、「次時へのつながりが
明確で、意欲をもたせているか」、「家庭学習や自主学習の意欲につながる工夫が
なされているか」、「授業者は生き生きと授業を進めているか」等
・授業の技術
「声の大きさ、話すスピード・間、言葉の明瞭さ、表情等は適切か」、「説明が明
快でわかりやすいか」、「板書が児童・生徒の理解や思考を助けるものとなってい
るか」、「児童・生徒が答えやすい発問内容や発問の仕方になっているか」、「予
想外の解答等に対して余裕を持って対応しているか」等
・全体を通して
「特によかった点」、「自分がやるならこう工夫するという点」等
*研究授業後の研究協議
・授業の評価は授業の改善に用いるという評価の目的を明確にする。
・「こういう工夫もできるのでは?」という建設的な意見を出して協議する。
・授業者が「次回もがんばろう」と意欲を持って協議を終了できるように進める。
- 34 -
(3)分掌の仕事
Q15:Fさんは初任者として今年赴任してきました。生徒指導部に所属し、あなたは同
じ部に所属する先輩として、Fさんのサポートをしています。ある日、Fさんが何気
なくあなたに言いました。「教師って、授業をするのが仕事だと思っていました。分
掌の仕事もあって…たいへんですねえ」
<あなたならどのように助言しますか?>
分掌によってその業務は様々に異なり、直接児童・生徒の指導を行うところもあれば、教育
課程の編成や学校行事の企画・準備等を通じて児童・生徒の教育活動を支えるところなどもあ
ります。各分掌は、学校がその教育目標を達成する上で不可欠の役割を担っています。また、
これらの分掌の業務を通じて教職員が教育活動の共通理解や生徒理解を深めるという側面や、
教職員の集団としての力量・結束を高めていくという面もあります。
分掌の業務については、講師経験等のない初任者には、自分が学校に通っているときの経験
ではわからないことも多く、まったく初めての仕事となる場合が多いでしょう。また、講師等
の経験者でも、学校によってかなりやり方の異なるところもあるでしょうから、最初は、一か
ら仕事を教える必要があります(ティーチング)。そうした場合は、例えば 12 ページ後段の「4
段階で指導する」などの指導方法も参考にしてくだ
さい。
分掌の業務はOJTの絶好の機会であり、OJT
によって業務を遂行できるようになっていきます。
各分掌の主事(主任)を中心に、部員全体で初任者
等の育成を図っていくという雰囲気づくりから始
め、意図的、計画的、継続的なOJTを行ってくだ
さい。
- 35 -
Q16:新規採用のG養護教諭が配属されました。同じ保健部に属する先輩として、あな
たは何かとGさんの相談にのっています。あるとき、Gさんが「保健室の仕事で精一
杯です。保健部の仕事とか、校外との連携なんてとてもとても。どうしたらいいのか」
と相談にきました。
<あなたならどのように助言しますか?>
養護教諭は「児童の養護をつかさどる」(学校教育法 28 条。中学校、高等学校等で準用)と
法律にありますが、その仕事には、例えば次のようなものがあります。
*学校保健情報の把握(児童・生徒の心身の健康状況・健康上の課題の把握等)
*保健管理・保健指導(児童・生徒の健康状況や健康上の課題に応じた個別の指導、ホー
ムルーム活動等での指導、健康診断に伴う指導等)
*救急処置(日常の救急処置、学校行事等での救急処置等)
*健康相談活動(心身の健康に関する相談活動等)
これらの仕事には、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、その他医療機関・相談機関等との連
携も欠かせませんし、校長・副校長、教頭、担任をはじめとする校内の教職員や保護者との連
携・協力も重要になります。
保健室の運営や保健指導・保健管理、保健関係の行事など、養護教諭が参画する業務は多く
ありますが、これらはもちろん養護教諭が一人でやるわけ
ではありません。保健部をはじめ、学校組織で行っていく
ことが必要です。
必要なら、保健室の運営も含めた保健部としての業務を
一度洗い出して、新規採用の養護教諭の育成の観点から業
務分担の見直しを行うなどの対応についても検討してく
ださい。
- 36 -
(4)学級経営
Q17:年度末が近づき、初任者のHさんもいよいよ来年度から担任です。でも本人は不
安な様子で、「担任を持つときに、どんなことに注意したらいいんでしょうか」と指
導教員のあなたに聞きに来ました。
<あなたならどのように助言しますか?>
学級には多くの児童・生徒がいます。その一人ひとりはどのような児童・生徒なのでしょう
か。毎日、児童・生徒と向き合う中で、その表情、言動、それらに現れてくる感情、性格や、
友人関係、生活背景、家庭環境など、把握すべき情報はたくさんあります。これらをしっかり
ととらえ、一人ひとりの成長を支援していくことが求められます。
その際、保護者との連携は欠かすことができません。懇談会や家庭訪問、日常的な連絡等を
通じて、保護者から児童・生徒の状況や、保護者自身の思いなどを聞くことも大切です。
また、学年団をはじめ他の教職員とも学級の児童・生徒についての十分な情報交換を行う必
要があります。
保護者や他の教職員に対して、学級についての情報発信を積極的に行
うように努めることも大切です。守秘義務や個人情報の保護には十分に
留意した上で、様々な機会に学級の児童・生徒の様子について話をして
みることや、あるいは「学級通信」の発行なども有効な手段になります。
またこれらを通じて、児童・生徒や保護者、他の教職員に、学級担任
としての思いを伝えていくことができるでしょう。
担任として、学校教育目標のもと、どのような人に育ってほしいのか、どのような学級をつ
くっていきたいのか、そうしたビジョンをしっかり描いておくことが必要です。児童・生徒の
実情を踏まえつつ、担任としてのビジョンを構築し、保護者ともそのビジョンの共有を図りな
がら、学級経営を進めるようアドバイスしましょう。また学級経営を進める上で重要な視点と
して、「児童・生徒の良さを伸ばす」という視点、「児童・生徒の変化を見ながら学級経営を
進める」という視点、「児童・生徒どうしのつながりを見る」という視点などがあげられます。
- 37 -
(5)人権侵害事象、虐待、いじめ等への対応
Q18:初任者のIさんが、指導教員のあなたのところにやってきて、「2組のJが隣の
クラスのLを『○○○(アニメに登場するキャラクター名)』って呼んだんです。Lは
少し笑いながら『なにー』って返事してJのところに行ったんです。でもLの様子を
面白おかしくからかっているような気がして…。どうしましょう…」と相談に来まし
た。
<あなたならどのように対応しますか?>
ア
児童・生徒の立場に立って考える
児童・生徒は、学校生活を送る中で、自分の生活や学力、あるいは将来への不安等自分の
問題、周りの人たちとの関係、さらには地域、社会、世界の動きへの関心など、様々な思い
を抱えて生活しています。仲の良い関係に見えていても、その中で、一人の児童・生徒が仲
間からの言動に嫌な思いを持っていることもあります。また、その気持ちを相手に言えない
ような人間関係に苦しんでいる場合もあります。その言動を行っている児童・生徒自身が、
家庭環境や人間関係など、自分が抱えている課題に日々苦しんでいる場合もあります。
そうした児童・生徒の思いに共感し、児童・生徒の立場に立って考える姿勢が大切です。
学校における児童・生徒一人ひとりの置かれている状況や心理を理解するように努める必要
があります。
イ
人権侵害事象
人権侵害またはそれに類似する事象が発生した場合、その初期対応が非常に重要になるこ
とはいうまでもありません。まずは、その場で注意、制止し、人権侵害である理由を指摘す
ることが大事です。その後は、他の教職員と協力して、被害を受けた生徒へのフォローを最
優先としつつ、原因となる言動をした生徒やその周囲の生徒への指導・支援が緊急に必要に
なります。例えば人権を侵害するような発言があった場合なら、「発言の問題点を指摘」し、
「発言をした生徒への注意」、「発言を受けた生徒への声かけ」等を行った上で、関係教職
員(担任、学年主任、人権教育担当者、教頭等)に報告し、学校全体として、今後の対応を
検討することなどが必要です。
人権を侵害する事象が生じた場合は、被害を受けた児童・生徒の人権を守ることを最優先
として取組みを進める必要があります。被害を受けた児童・生徒自身が、人権を侵害する事
象の問題性を指摘できないことがあり、また、指摘できないことに自尊心を著しく傷つけら
れることもあります。さらに同じようなことが繰り返されるのではないかという不安を強く
抱くこともあります。そうした児童・生徒や保護者の思いや願いを十分に受けとめ、支える
ことが必要です。直接被害を受けていなくても、生起した人権侵害の対象となる児童・生徒
に対しても同様の配慮とケアが必要になります。
- 38 -
*セクシュアル・ハラスメント
セクシュアル・ハラスメントの被害を受けた児童・生徒には、生徒の訴えを十分に聴き、
児童・生徒の訴えに共感の気持ちを伝え、「あなたは悪くない」というメッセージを折に
触れ、伝えることが必要です。そうでないと、例えば「なぜ逃げなかったのか」などとい
った不用意な教職員の発言で、被害を受けた児童・生徒が一層傷つくことが考えられます。
これを二次被害といいます。
とが必要です。また、虐待を受
チェックシート(例示)
A.児童生徒の身体的特徴
□ 不自然な傷や火傷等の外傷、治療を受けていない傷など
□ 体重増加が不良、低栄養状態やアンバランスな発達の遅れなど
□ 身体や服装の汚れなど
B.児童生徒の行動的特徴
□ 落ち着きがない
□ 過度な警戒心を持つ
□ 給食での過食、お替わりを繰り返す
□ 乱暴・攻撃的な言葉使い
□ 他の児童生徒をいじめる、生物に対する残虐な行為
□ 虚言、万引き等
□ 単独での非行、盛り場等の徘徊・家出
□ 理由のはっきりしない欠席・遅刻・早退
□ 帰宅するのをいやがる
C.保護者、家庭の特徴等
□ 学用品を持たせない
□ 明らかに家事が長期間、放棄されている
□ 子どもへの否定的な態度や言葉が多い
□ 不自然な言い訳や話に矛盾点が多い
けていると思われる場合は速
*一つだけで虐待と判断するのではなく、総合的に判断すること
*虐待
近年、保護者等による児童・
生徒への虐待も大きな問題と
なっています。これには、「身
体的虐待」、「性的虐待」、「ネ
グレクト」、「心理的虐待」な
どがありますが、学校の教職員
などが児童・生徒の様子を通じ
て、虐待の早期発見に努めるこ
やかに子ども家庭センター等
に通告しなければなりません。
(大阪府教育委員会「子どもたちの輝く未来のために」(平成 16 年 3 月発行)p3)
教職員が、虐待を早期に発見するための「気づき」のポイントとしては、例えば上の表
のような例があげられます。
*いじめ
また、「虐待」同様、学校の教職員による「気づき」が極めて重要なものに「いじめ」
があります。
まず、すべての教職員は、いじめは「どの学校でも、どの児童・生徒にも起こり得る」
という危機意識を持ち、児童・生徒の発する小さなサインを見逃さないようにしなければ
なりません。そして児童・生徒からの訴えに対しては、児童・生徒の心の痛みに共感し、
寄り添いながら話を聴いてケアにつながるようにします。
一方、教職員は、「いじめ行為は、絶対にやめさせる」という揺るぎない信念と強い姿
勢を持って指導するとともに、いじめにかかわった児童・生徒の背景や課題を理解し、か
けがえのない存在として受けとめる姿勢が重要です。
学校においては、人権が尊重された教育活動がなされることが重要です。そのため、教職
員は豊かな人権感覚・人権意識をもち、児童・生徒と接することが必要です。
人権侵害等の事象、虐待、いじめは、どこの学校でも起こりえます。発
生を未然に防止するよう努めるとともに、万一、そうした事象が発生した
場合にも迅速かつ適切な対応ができるよう、教職員全体が意識しておくこ
とが必要となります。校内での研修等に加え、学校の教職員がそうした姿
勢を初任者等に対して常に見せておくことも、初任者等の意識を高める上
で大きな役割を果たします。
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(6)ともに学び、ともに育つ
Q19:初任者のMさんが、指導教員のあなたのところにやってきて、「高機能自閉症の
生徒がいる場合、具体的にどのように支援をしたらいいのでしょうか。教えてもらえ
ませんか」と頼みにきました。
<あなたならどのように助言しますか?>
学習面や行動面・生活面において、指導上配慮が必要な児童・生徒がいる場合、その児童・
生徒の行動が、LD・ADHD・高機能自閉症等の発達障がいを原因として起こっていること
があります。教職員の中には、これらの児童・生徒について「どのように指導していけばよい
のか」、「困ったな」と思っている人がいるかもしれませんが、困っているのはその児童・生
徒自身であることを理解して、児童・生徒の立場に立って、適切な指導と支援をおこなう必要
があります。
例えば、ある高等学校で、時間割表を掲示してあるにもかかわらず、毎日全教科の教科書を
持って登校していたという生徒もいます。読むことや、聞いて理解することが難しい生徒にと
っては、教職員の指示を聞き取ることは困難なことであり、不注意から教職員の指示を聞き忘
れることとは原因が異なるのです。
これらの生徒に対する学校における配慮の例としては、次のようなことがあげられます。
*簡単な言葉で、具体的な指示をする。
*指示をしたことが適切に伝わったか、行動を確認する。
*複数の指示を一度にしない。
*質問については、具体的に可能な限り「はい」「いいえ」等で答えられるものにす る。
これらの児童・生徒の指導にあたっては、「個別の教育支援計画」及び「個別の指導計画」
を必要に応じて作成し、障がいのない児童・生徒に対しても発達障がいについての理解を深め
る取組みが重要であり、保護者、校内委員会、関係・専門機関との有機的連携や、全教職員に
よる情報の共有化と全校レベルでの取組み等が不可欠となります。
初任者等に対しても、こうしたポイントを踏まえ、担任との連携を密にするなどのアドバイ
スをお願いします。
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Q20:あなたの勤務する支援学校に3人の初任者が配属され、Nさんがその指導教員の
一人になりました。Nさんは指導教員をするのは初めてです。緊張した面持ちで、去
年、初任者の指導教員をしていたあなたのところに、「指導教員として特にどんな点
に留意したらいいでしょうか」と相談にきました。
<あなたならどのように助言しますか?>
支援学校では、様々な障がいのある幼児・児童・生徒が学んでおり、教職員
には、まず、一人ひとりの幼児・児童・生徒の障がいの状況や保護者の希望を
的確に把握し、一人ひとりのニーズにあった適切な支援を行うことが求められ
ます。
乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な支援を行う必要から、福祉・医療など
の関係機関との連携を行い、保護者の参画のもとに「個別の教育支援計画」を策定し、長期的
な観点で指導に当たる必要があります。また、そのためにも、具体的でわかりやすい「個別の
指導計画」を作成し、短期的・中期的な目標を明確にしていくことが大切です。
初任者等の指導にあたっては、こうした点を踏まえつつ、例えば次のような点をアドバイス
する必要があるでしょう。
*
幼児・児童・生徒の指導にあたっては、人権尊重の観点に立
って十分な配慮を行うこと。
*
保護者との十分な連携を図ること。
*
幼児・児童・生徒の「障がい」を理解し、個々それぞれに異
なる状態や発達段階を的確に把握すること。
*
短期的な目標と長期的な目標を明確にし、指導内容及び指導
方法を具体化すること。
支援学校における教科・領域等の指導についてはティーム・ティーチングを基本にしていま
す。「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」に基づき、幼児・児童・生徒の実態や課題
を的確に把握するとともに、ティーム・ティーチングを行う教員間で、授業を展開していくた
めの役割分担を明確にし、十分な共通認識が持てるようにすることが大切です。指導教員とし
ては、教科の担当者会議や学年・グループ会議などの運営についても心配りをしてください。
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(7)保護者・地域との関わり
学校には、保護者から様々な相談や要望、時には苦情が寄せられます。こうした相談等に対
して、教職員が対応する際の基本的なポイントをいくつか紹介しますので、初任者等の指導に
あたって参考にしてください。
ア
かかわりの基本は「傾聴・共感・整理」
*まず、十分に保護者の話を聴くこと。
・保護者の思いを最後まで十分聞く。
・保護者が誤解していても、すぐに割り込んだり、否定したりしない。
・保護者の「子どもを思う気持ち」を理解する。
*第一声は共感の言葉を
・「つらい思いをさせました」「大変でしたね」「ご心配をおかけしました」など。
*事実を整理し、確認していく
・うなずきや言葉で共感を伝えながら、事実と想像と感情を整理して状況を把握する。
・保護者の安心につながるよう、落ち着いた温かさで受けとめること。
*「子どものために、今できる、現実的で具体的なことを、一緒に考えましょう」という
空気を生み出すことが重要。
イ
具体的な提案・指示、約束の履行
*具体的な対応策を求められたら「いつまでに、何をするか」をはっきり答える。
・一人で決められないことや迷う場合は、いつまでに返答するかを約束し、関係者と相
談する。
・頼まれたこと、約束したことなどは、整理して確認しながら、その場でメモする。
ウ
アドバイス
*児童・生徒に関して保護者にしてほしいことを助言する。
・はっきりと、具体的にできそうなことにしぼって助言する。
エ
事後報告
*学校での児童・生徒の様子や周りの状況、対応策の進行状況などを保護者に報告する。
オ
保護者に対して学校の対応の理解を求めるとき
*保護者に理解を求める内容を十分に校内で検討した上で、できる限り複数で対応する。
<不信感を招く対応例>
*児童・生徒のトラブルに慣れている教職員が、保護者の思いの深刻さを理解できず、「そ
んなことですか」と軽く受けとめてしまう。
*教職員が学校で見ている児童・生徒の様子にこだわって、「そんなはずはない」という
受け答えをして保護者の感情をこじらせる。
*不確かな事項と憶測で説明したり、隠そうとしている印象を与える。
「学校の常識は社会の非常識」などとよく言われます。あるいは「教職員は社会経験が不足
している」などの指摘もあります。これらが妥当な指摘かどうかは別にして、教職員も一社会
人として、保護者や地域の方がどのように学校や社会を見ているのか、あるいは「世間」が教
職員にどのような視線を注いでいるのか、そうしたことを常に意識しながら、プロの教職員と
して、保護者や地域の方と対応していくことが求められています。
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参考資料一覧
*「教職員人権研修ハンドブック」(大阪府教育委員会、平成 19 年 3 月)
*「次世代を担う教員の育成のために」(大阪府教育委員会、平成 18 年 7 月)
*「人権教育推進プラン」(大阪府教育委員会、平成 11 年 3 月)
*「学校における人権教育推進のための事例集[事象を教訓化し、学校の取組を前進させるた
めに]」(大阪府教育委員会、平成 14 年 11 月)
*「子どもたちの輝く未来のために」(大阪府教育委員会、平成 16 年 3 月)
*「教職員による児童・生徒に対するセクシュアル・ハラスメントを防止するためにQA集」
(大阪府教育委員会、平成 15 年 3 月)
*「高等学校におけるLD・ADHD・高機能自閉症等のある生徒の理解と支援のために」(大
阪府教育委員会、平成 18 年 3 月)
*「いじめSOS
チームワークによる速やかな対応をめざして
いじめ対応プログラムⅠ」
(大阪府教育委員会、平成 19 年 6 月)
*「『いじめNO!』宣言
子ども・大人・地域
みんなの力で
いじめ対応プログラムⅡ」(大
阪府教育委員会、平成 19 年8月)
*「学校組織運営に関する指針」(大阪府教育委員会、平成 18 年 12 月)
*「保護者とのかかわりハンドブック(保護者との適切なかかわりのために)(改訂第四版)」
(大阪府教育センター、平成 20 年 1 月)
*「平成 19 年度
初任者研修の手引
であい
ふれあい
たかめあい」
(大阪府教育センター、
平成 19 年 3 月)
<教職員人権研修ハンドブック>
子どもたちを取り巻く状況は大変厳しく、いじめ、
不登校、児童虐待など課題は山積しており、子ども
たちの人権に深くかかわる課題の解決にむけて、人
権教育が果たす役割はますます重要になってきてい
ます。
また、教職員の大量採用、大量退職の時期を迎え、
各学校では、教職員の世代交代が急速に進んでいま
す。学校現場においては、経験の少ない教職員が、
さまざまな場面で悩んだり、困ったりしながら、子
どもと向き合っています。そうした日々の教育実践
における悩みにこたえ、大阪におけるこれまでの人
権教育の取組みと成果を、次世代を担う教職員にも
継承し、さらに充実・発展させることを目的として、
本ハンドブックを作成しました。
教職経験のまだ少ない教職員の皆さんは、繰り返
し読み、日々の教育実践に活用してください。そし
て、「補足と発展」や「チェック」のところで紹介
しているさまざまな資料についても、ぜひ読むよう
にしてください。(「はじめに」より)
http://www.pref.osaka.lg.jp/kyoishinko/kotogakko/gakkokeieishien/jinken/handbook.html
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大阪府は「こころの再生」府民運動を推進しています。
“愛”言葉は「ほめる、笑う、しかる」
教育委員会事務局
電 話 06(6944)6369
教育振興室 高等学校課
平 成 20 年 3 月 発 行
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