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再生はチームかつ現場レベル での実践が必須

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再生はチームかつ現場レベル での実践が必須
TAM-21_052-056/特集2 06.6.29 4:02 PM ページ 54
再生はチームかつ現場レベル
での実践が必須
事業再生における戦略立案からファイナンス要件の充足はかなり専門性の高いチームレベルかつ現場レベル
でのワークアウトが欠かせない。事業再生へのファイナンスの実行においては特に個人レベルの業務知識及び
業務範囲では十分に責任を全うできない。事業再生はまさにチームによるターンアラウンド業務の執行であ
り、戦略的実行性を専門家と経営者が有機的に関連し合うことが重要である。
タムラトラストグループ ターンアラウンドファイナンス代表
滝川 慶昭
意向を意識した内容となりやすい
■再生計画履行中の二次破綻が散見
3 例えば正確な財産評定を行わないまま再生計
2000年の民事再生法の施行、2002年の会社更生法改
画履行の当初から支払キャッシュレベルが高い
正とその施行(2003年)等と並行するように会計の諸
設定としたり、また債務免除益等の税金支払を
原則の変更も行われてきた。事業再生コンサルティン
安易なレベルで考慮したため資金不足に陥って
グを主な業務としている我々にとっては、これらの外
しまう
部環境の変化は追い風の感があるが、わが国における
などが挙げられる。
これらの変化は欧米先進諸国のそれと比較して文化的
再生計画案の承認を得るための賛成票獲得を目的
レベルまでの定着にはいま少しの時間と国民経済的な
とした再生債権者寄りの弁済計画が多いと述べた
レベルまでの理解深耕が必要と考えている。
が、民事再生法187条によると、再生計画の変更が
さて、こういった新しい環境下での事業再生につ
生じる場合は、再生債務者、監督委員、再生債権者
いては2000年以降に取組まれたものであるが、特に
等の申立により再生計画の変更ができる。これにつ
自主再建型の再生会社において再生計画履行中に二
いては再生計画案の立案から認可まで関与された
次破綻の危機に晒される、ないしは実際に二次破綻
方々には当然周知の内容であるが、最近よく見られ
を起こすケースが見られるようになっている。ここ
るのは、すでに実質的に二次破綻している、ないし
ではまず、その要因と背景について検証したい。
は、すでに再生させるのに手遅れの局面まで進行し
ているケースである。その背景には、当初の再生計
■民事再生計画実行から破綻の要因
画案策定における関連プレイヤーたちの実現性に対
民事再生手続申立後、再生計画案の認可を受け、
する認識の薄さが大いにあるだろう。また、冒頭で
再生計画の履行に入ったものの、再生計画の履行を
事業再生という概念について、わが国では欧米諸国
継続できないケースが散見されるようになった。こ
に比べて文化的レベルまで定着してないと述べた
のような再生計画の実行性欠如については、再生計
が、これは経営破綻から事業再生を実行する段階
画策定における弁済計画の甘さが主因である場合が
で、これに関わる者が事業再生に関して、当該債務
多い。その背景としては、
者等が持つ“破綻”という羞恥心に対して寛容性を
1 再生計画案が債務者側の事情を中心に作成さ
持たずに事業再生に対して国民経済的な意義まで高
れるために客観的な実行性に欠ける計画となり
め、そして深く受け入れていくという、いわゆる
やすい
「懐の深さ」がわが国では未だ現実的ではないから
2 再生計画案における弁済計画が再生債権者の
であろう。
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また、再生に関連する関係者の一部は、要するに
現場再生は現場の実行力から
“自己の利潤達成のため”のビジネスという観点で
のみ、かかる事業再生の案件を見ているからであろ
実行性
事業再生業務の
質的向上の背景
う。最近、欧米の経営大学院では倫理という観点か
・法律の改正
・会計諸規則の変更
・金融工学の応用
らビジネスを自己及び他の利益のために遂行してい
くという理念を持った戦略的方法論を徹底して教え
従来型の
コンサル
ている。しかし、国内プレイヤー、特に事業再生の
事業再生
コンサル
事業再生への要請
解決案の提案
現場を実践または経験してきていないプレイヤーに
おいてはこの部分が欠如しているのではないかと不
不良債権処理前
金融機関
コンサル
安に感じるのは筆者だけではないだろう。
個人の有資格者
コンサル
■事業再生コンサルタントとその実行性
事業再生に関する現行法制の創生は米国で1987年
場合が多いようである。一方、米国での事業再生コ
に成立した米連邦倒産法の更正手続き(チャプター
ンサルティングは、当該債務者または経営者が申立
11)といえるだろう。これによりそれまでは開始要
を行う状況では、すでに方向性を持った事業戦略の
件として裁判所が行う審査手続を必要としていた
組換えを中心とした再生事業計画の実効性調査は、
が、この要件を必要とせずに債務者による申立によ
ある程度進んでいることが多い。これにかかわる人
って裁判所の開始決定がなくとも手続きが開始でき
材も当該事業または企業を熟知した弁護士、会計士
るようになった。
あるいはインベストメントバンカー等が事業再生コ
これは債務者である再建途上の企業経営者にその
ンサルタントのチームとして参画している。機動的
地位で業務執行をさせる(いわゆるDIP:Debtor in
に事業再生を目的として遂行していくプロフェッシ
Possession(占有継続債務者))というもので、事
ョナルチームである。ここ数年の事例では、米エン
業再生の主役は経営者にあることが確保されること
ロンの再上場が印象的であるが、このようなチーム
となった。このために再生計画の策定は、「再生事
が再生を主導できる立場にある場合は、事業再生の
業の経営戦略策定→財産状況の把握→法的処理の整
目的を達成できる確度は非常に高まる。また、この
合性検証」という行程を踏み、経営者主導による経
ようなチームの出身者が米国内外で経営者としての
営方針、経営戦略の実行という再生を意図する事業
経験を積み、さらに事業再生へのビジネスコンサル
体の迅速な経営環境の変化への対応が可能となり、
タントとして回帰してくるのであるから、その層の
既存の事業内容を見直す機動的な機会を経営者に与
厚さが窺える。まさに、チームによる機動性が実行
えることになったわけである。財務分析や法的処理
力という力強い段階にまで昇華しているといえる。
の検証も通常、弁護士または会計士等により並行し
■事業再生は現場主義で業務の
責任範囲を規定する
て行われるが、あくまでスピードを重んじる観点か
ら経営者を中心に戦略的な構想を現実に落とし込ん
だところまでの実践的な検証が全てにおいて優先さ
日本国内では経営者が民事再生法等の申立を検
れ、実行されていくことになる。このことは敢えて
討している場合は、まず顧問の税理士、会計士、
強調しておきたい点である。
弁護士へ相談することが多い。現状では、経営者
の間で事業再生に関する専門のコンサルティング
日本においては、民事再生法が2000年に登場した
会社の存在はあまり知られてない。
が、その流れはおおむね、事業再生における「法的
さて、事業再生において再生計画案を策定する際
処理の検証→裁判所への申立→財産評定→再生事業
に、経営者がまず相談できるのは日本国内の場合
計画の策定」という流れを辿る。
一般的には、当初の段階(一次破綻の場合)で事
は、このような個人レベルでの専門家が多いだろ
業再生に携わる専門家は、当該企業の顧問である弁
う。しかし、事業再生の現場で重要なことは、ファ
護士、会計士、税理士あるいは金融機関等が務める
イナンス(資金調達)に関する成否と、再生計画を
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実行するに際して業務執行を忠実に成し得る人材の
いる。再生企業において緊急に検討されるべき事業
確保が要件である。戦略立案からファイナンス要件
戦略の変更または事業再生計画案の策定においても
の充足、これはキャッシュフローが再生案の作成段
このように日米間で再生計画立案のアプローチに違
階と実行段階で現実的に達成可能であることを客観
いが出てくるのも日米での社会学的な現象の差によ
的に検討する手法と再生のためのファイナンスの源
るものであろう。
泉を確保するというかなり専門性の高いチームレベ
筆者は前職で勤務した企業において、現場主義を
ルでの、かつ現場レベルでの実行(ワークアウト)
徹底的に教え込まれた。この約20年間、欧州、米国
が欠かせない条件である。このために個人レベルで
そしてアジア(特に日本・韓国)は目まぐるしく、
の、また個人的なセクショナリズムを主張するよう
経済の局面を変えてきたが、同様に経営の手法も連
な専門家は、しいては計画案の実行において足かせ
動して様々な変遷を経ることとなった。前職で勤務
となる場合もある。事業再生へのファイナンスの実
した企業が戦後小さな町工場として生まれ、僅か数
行において、特に個人レベルの業務知識及び業務範
十年の間に世界的大企業へと成長したのは、常に経
囲では十分に責任を全うできないことは、今まで事
営に関して健全な緊張感を持っており、それは例え
業再生を体験された方々には共通して認識される点
ば弁護士、会計士といった「知識」の専門家に頼らず
と思われる。
に実践のビジネスプロフェッショナルとして現場で
米国内で行われている事業再生は、まさにチーム
起きている問題を常に解決力と実行力をもって遂行
によるターンアラウンド業務の執行であり、戦略的
してきた賜物ではないかと思っている。前職の経営
実行性を弁護士、会計士、コントローラー等といっ
者たちは、旧海軍の技術将校として戦後日本の荒野
た事業再生のサイドにいる専門家と経営者が有機的
を、技術現場の「ターンアラウンド・オフィサー」と
に関連し合い、再生という目的のために各人がもつ
してここまで再生させた方々であったと、そのDN
専門性をイールド・マネジメントの現場で実践して
Aを継ぐものとして申し添えておきたい。
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