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感動体験みやざきの森 宮崎県森林環境教育
∼「宮崎県森林環境教育プログラム ティーチャーズガイド」発行に寄せて∼ 「環境の世紀」と言われる今日、資源の有限性が認識される中で、 「循環型社会」 の構築が求められ、地球温暖化防止や生物多様性の保全など森林のもつ多面的な 機能に対する期待が高まっています。 これらの豊かな森林の恵みを享受しながら、森林から環境との調和や資源の循 環利用について学び、森林と人とが共生する社会の実現を目指すことが重要です。 しかしながら、科学技術の進歩や社会経済の進展等に伴い、現代に生きる私た ちの生活の利便性が向上する一方で、子どもたちが自然とふれあう機会は極端に 減少しています。 このようなことから、県では、森林内での様々な体験活動等を通じて、人々の 生活や環境と森林との関係について理解と関心を深める「森林環境教育」の機会 を広く提供していくこととしています。 このことが、次の世代を担う子どもたちの自然環境における体験活動を促進し、 子どもたちの「五感」の回路を開き、ひいては感受性を磨くことになり、子ども たちの「生きる力」や「命の尊さを感じる豊かな心」を育むことにつながるもの と期待しています。 このティーチャーズガイドは、森林環境教育を実践する先生や指導者のための ガイドブックとして、対象者に応じて色々な活動を柔軟に実行できるよう多様な プログラムが用意されています。子どもたちが(場合によっては大人も)、奥深 い森林だけでなく校庭や森林公園など身近な所で体験できるものもあります。 本書が活用されることによって、子どもたちの自然とのふれあいが促進され、 森林などの自然環境がいかに偉大、かつ寛容で、かけがえのないものであるかを 肌で感じ、気づき、そして地球環境のために自分たちで考え、行動する仲間が増 えることを期待してやみません。 平成17年3月 宮崎県環境森林部長 1 もくじ はじめに 1 プログラムについて 3 本書の位置付け 4 本書の構成 6 体験的な学びのために 9 学齢にあった活動、教科学習との関連について 12 感性のとびらを開く 15 1 色さがし∼自然の色に着目した活動∼ 16 2 音を思い描こう∼意識的に音を聴く∼ 20 3 さわってさがそう∼触覚に焦点を当てた活動∼ 26 葉っぱであそぼう 31 4 葉っぱじゃんけん∼葉っぱのラインナップ 32 5 葉っぱでアート 36 6 葉っぱでお絵かき 40 7 こすりだし葉っぱ図鑑 44 木と仲良くなろう 49 8 木の身体検査 50 9 木のプロフィール 58 10 ヒストリー hisTree 64 11 変、竹林 68 教室で木を学ぶ 73 12 漢字る自然∼漢字の中に自然を観る∼ 74 13 木の用途を調べよう 80 14 やっタネ!誰が遠くに飛ばすか選手権 86 15 民話の中の木に出会う 90 知的な森の冒険 ∼複合的なプログラム 95 16 大きな木に会いに行こう 96 17 学校に木を植える 100 活動さくいん 105 資料編 107 森林環境教育に活用できる宮崎県内の文化施設 108 森林環境教育におすすめの県内のフィールド情報 109 参考資料 110 プログラム改善のための情報提供(フィードバック)のお願い114 執筆担当者 115 さいごに 116 2 プログラム に つ い て 3 本書の位置付け 「森林を通じた教育・森林環境教育」 林を題材にしていくことにより、結果として環境学 習が促進されるでしょう。まずは直接的な「自然体 「環境教育」という言葉は、使う人あるいは受け 験」の機会を作ること、そして児童・生徒に森や木 取る人によって多少ニュアンスが異なっている場合 に関心を持ってもらうことが重要だと考えます。 があります。「環境教育」の位置付けを考えるとき、 そして「森林を通じた教育」が森林の理解や保全 しばしば「In, About, For」という整理が使われま の教育にもつながるものであることは言うまでもあ す。つまり、 りません。 環境(自然)の中での教育(In) 環境についての教育(About) 宮崎県の指導者のためのガイドブック 環境(保全)のための教育(For) 本書は、宮崎県の学校や地域社会において森林環 の三つ整理です。この三つは重なり合う部分があ 境教育を実践する際の「先生や指導者のためのガイ りますが、それぞれ異なるアプローチだと言えます。 ドブック(ティーチャーズガイド) 」として作成さ これは森林環境教育にも当てはめて考えることがで れました。森林での自然体験をベースにした教育活 きるでしょう。 動を学校教育の中で行うことを想定し、宮崎県の森 本書は、上の三つのすべての要素を含んでいま 林が教育の場として活発に活用されることを大きな すが、もう少し的確な言葉として、「森林を通じた 目的としています。森林での自然体験は、環境教育 教育(Through)」というアプローチを考えました。 としてはもとより、児童・生徒のいろいろな側面で つまり「木や森を教育の場や題材として活用するこ の成長を助けるでしょう。自然は子ども達を育て、 と」を大きなテーマにしました。森林環境教育を、 はぐくむ力を持っているのです。 森林で行う教育(in)、森林についての教育(About) 、 宮崎県は全国有数の森林を有する地域です。地域 森林保全のための教育(For)というように考える と、小・中学校のカリキュラムの中で取り組む機会 は、理科や社会科のほんの一部に限られてしまいま の森林を教育の場として積極的に活用することは、 「宮崎ならではの教育」の推進に繋がるものである と考えます。平成 15 年に宮崎県教育委員会が打ち す。しかしながら、「森林を通じた教育」と考える 出した「宮崎の教育創造プラン ∼宮崎ならではの ならば、可能性はたいへん広がり、理科や社会にと 教育∼」の中には、 「宮崎ならではの教育とは、恵 どまらず、国語、図画工作、総合的な学習の時間、 まれた自然、先賢の精神、豊かな人情などの本県の あるいは算数など、ほとんど全ての教科に関連させ 教育資源を生かしながら、 『確かな力を基盤とした て行うことが可能になります。木や森林はきわめて 感動と感性の教育』を推進することをとおして、 『ふ 多面的な特性を持っているので、学校のほとんどの るさとを愛し、自分に自信と誇りを持ち、夢や希望 教科と関連性を見つけ出すことができるのです。 を抱いて社会に貢献する気概を持つ子ども』の育成 このことは環境教育の機会を増やすという観点か をめざすものです。 (後略) 」と記されています。 らも重要です。環境教育だけを目的とした教育機会 宮崎の豊かな森林を活用した教育の展開は、まさ を特別に設けなくても、様々な教育活動において森 にこのような「宮崎ならではの教育」を具現化する 4 方法の一つだとも言えるでしょう。 身近な森林や学校で実施できる活動を重視 本書のプログラムを学校現場で活用して頂くた めに、学校における教育活動の枠組みの中で取組が 可能であることに配慮しました。収録された活動は 自然豊かな原生林の中でも実施できますが、主たる フィールドとして想定したのは、遠足等でしばしば 利用される都市部の自然公園や、社寺林のように地 域に残された身近な森林、そして校庭・教室などで す。 教科指導、遠足や文化祭などの特別活動、道徳 など、さらには学校の卒業記念などによく行われ る「記念植樹」なども、森林環境教育の観点でプロ グラム化することができます。新しい取組はもちろ んですが、既存の枠組みの中に森林環境教育を取り 入れて頂きたいと考えます。 さらに学習素材としての森林は様々な教科と関連 していることから、クロスカリキュラム(教科横断) 的な取組も可能になるでしょう。 5 本書の構成 本書の本体は、森林の中での活動や、森や木に関 森林における学習活動の出発点として、自然の中で 連した教育活動を紹介した「活動集」の部分です。 「活 遊び、まずは自然を直接体験することが重要です。 動集」を中心に、その使い方や位置付けを紹介した このカテゴリーで紹介した活動は、知識の習得より 「プログラムについて」(今読んで頂いている部分で も、児童・生徒自身が主体的に自然と関わることや、 す)と、「資料編」の3章で構成されています。 五感を働かせて自然を感じ取ることを重視します。 なお、本書では教育的なねらいを持って組み立て その中で、自然の多様性、面白さなどをテーマにし ていきます。 られた(デザインされた)一連の活動、あるいは活 動集全体を「プログラム」と呼ぶことにします。 以下に「活動集」部分の編集の仕方や構成につい 「葉っぱで遊ぼう」 て解説します。 森林での学習活動の導入的な素材として「葉」を 取り上げます。 「葉」は学習の素材として入手が簡 五つのカテゴリー 単であり、だれもが容易に手にとって観察すること 本プログラムでは、活動を五つのカテゴリーに分 れています。 けて収録しました。各カテゴリー内では、いくつか の基本となる活動と、バリエーション(変形)や発 ができます。また、持ち帰ることができる点でも優 「木と仲よくなろう」 展のアイデアが書かれています。活動のほとんどは 児童・生徒が自然を理解しようとするとき 1 本 1 多少のアレンジをすることで、小学生から中学生ま 本の木は、森林の構成要素の一つとして、また長い で(大人も!)を対象に実施することができます。 時間的な感覚を感じるスケールの一つとして、児童・ 各カテゴリーについて説明をしましょう。 生徒の理解を助ける重要な役割をします。このカテ ゴリーの活動では、 「木」そのものを題材に、自然 「感性のとびらを開く」 観察や表現活動を行います。1 本の木から様々な情 報を引き出したり、想像力を働かせて木を表現し 人は優れた五感を持っていますが日常生活では必 たり、木を通して森林を身近に感じていきます。 ずしもそれを十分に働かせずに過ごしています。森 の中で意識的に五感を活性化することはとても大事 だと考えます。そしてさらに「芸術的な感性」や「神 「教室で森を学ぶ」 秘さや不思議さに目をみはる感性」* を呼び覚ませ 一般に学校教育の現場において、自然度の高い森 ることを「感性のとびらを開く」と表現しました。 林にでかけて野外活動を実施する機会はそう多いも のではありません。野外に出かける貴重な時間を、 より意義の大きなものにするために、教室で行う 事前学習や事後学習はたいへん重要であると考えま * レイチェル・カーソンの著書「センスオブワンダー」(新 潮社)の中に重要なキーワードとして登場する「Sense す。このカテゴリーでは、野外での学習活動の前後 of Wonder」を、翻訳者の上遠恵子さんは「神秘さや不 に行う活動や、教室や学校の周辺で行うことのでき 思議さに目をみはる感性」と訳されている。 る森林に関係した学習活動を扱います。 6 「知的な森の冒険 ∼複合的なプログラム」 性の保全は重要視されています。環境教育の第一歩 として、児童・生徒に体験を通して多様性を実感し 他のカテゴリーの中で紹介した活動を引用しなが てもらうことが必要であると考えます。 ら、複数日の時間をかけて展開する複合的なプログ ラムを提案します。各活動のページの中でも「プロ 「つながり(関係性)」 グラムの展開」のアイデアを示していますが、ここ 生物種や環境要素が個々に単体で存在している では、もう少し大きな学習のテーマを設定して、長 のではなく、お互いに関わりを持っているという い時間を使って取り組む学習活動をイメージしてい 理解は環境教育上重要であると考えます。例えば、 ます。必要な時間数は多くなるので、総合的な学習 森の木々は互いに関わりながら生活していますし、 の時間や特別活動の時間を使ったり、教科横断(ク 様々な生きものに住み場所や栄養を提供していま ロスカリキュラム)的な計画がのぞまれます。 す。木を題材にしながら、様々な生きものや環境要 複合的なプログラムの一つは、遠足などのように 素とのとつながりを扱っていきます。 郊外に出かけて森林について学ぶ、野外を中心にし たプログラムです。郊外の森のイメージとしては、 自然度の高い原生林的な場所よりも、各地域の身近 「変化・時間」 な場所に残されている「鎮守の森」のような社寺林 自然は絶えず変化しています。自然を固定され や、遠足で行くことのできるような森林公園的な場 たものとしてでなく、 「変化するもの」としてとら 所を想定しています。 える視点はたいへん重要だと考えます。森は時間の もう一つは、教室内や校庭、学校周辺をフィール 経過に伴って起こる変化を学ぶのに適したフィー ルドです。木々が花を咲かせたり、 葉を落としたり、 ドとして行う複合的プログラムを提案します。 季節によって、あるいはもっと長い時間をかけて 大きく変化していきます。環境についての理解を深 めるためには、人間の一生を遙かに超えた長い時間 四つの基本概念 の概念を持つことも重要です。数百年や数千年生き 続ける木は、そのような時間を感じとるための、生 既に述べたように、本書は自然を直接体験するこ きた「ものさし」になるでしょう。 とを重視した内容になっていますが、同時に概念的 な理解も必要だと考えています。森林や木を題材に 「人と自然」 した環境教育において、児童・生徒に学び取って欲 しい「基本的な概念」として、次の四つを想定しま 人の歴史は自然との関わり合いの歴史でもありま した。 す。農耕文化の到来以降、私たち日本人のくらしは 森を切り開くことで成り立ってきました。一方で森 「多様性」 は私たちに様々な恵みをもたらし続けています。森 は日本人の精神的なよりどころだとも言えます。森 多様性は自然の持つ最も重要な特徴であるととも と人の関係をみることは、森林環境教育において重 に、私たちにとって自然が魅力的であることの理由 要なテーマになるでしょう。 の一つでもあります。環境保全の観点からも、多様 7 活動集の読み方、活用の仕方 でくくられた斜体の部分は、参加者に対する言葉か 本資料では、合計 17 個の活動事例を収録しまし けの例です。参考程度に読んでください。 た。それぞれの活動事例の中には、「バリエーショ ン例」や「プログラムの発展」の事例が示されてい 「活動の背景」 るので、それを合わせると 80 近くの活動が紹介さ それぞれの活動が、森林環境教育においてどのよ れていることになります。それぞれの現場の状況や うな意味を持つかなど、各活動の背景となる事柄、 必要性に合わせてご活用頂きたいと思います。 各活動事例の基本的な構成は次のようになってい ます。 注意点などについて説明してあります。 「バリエーション例・プログラムの展開」 プログラム集として本書の最も大きな特徴はこの 「タイトルのページ」 部分にあると考えています。一つの活動のアイデア 各活動事例の最初の 1 ページ(活動タイトルの は部分的に変更したり、次の活動を追加することに あるページ)には、もっともオーソドックスな手法 よって、状況に即したものになります。また異なる を短い文章とイラストで解説しています。あまり時 「ねらい」を持った別の活動へ転換したり、発展さ 間のない方は、このページだけでも活動の概要を知 せていくことができます。このことは活動の実践に ることができますので、まずここを読んでください。 おいてきわめて重要です。 「バリエーション例」 や 「プ 細かい解説や発展例などは、すべて 2 ページ以降 ログラムの展開」の項では、様々な変更や発展のア に配置しました。 イデアを提供します。ここを読んで頂くことで、活 動の意義をより明確にすることができるでしょう。 「タイトルと概要」 さらに現場の指導者がそれぞれのアイデアを加え て、オリジナルのプログラムを考えてください。 タイトルの下に書かれた短い文章は「活動の概要」 です。どのような活動なのかをできるだけ簡潔に書 きました。 「ねらい」 ここには標準的な「ねらい」の設定例を書きまし た。「ねらい」は本来指導者がそれぞれの状況に合 わせて設定するものですので、これを参考に学習の 流れに合った「ねらい」を設定してください。 「進め方」 プログラムの標準的な進め方を示しました。 「 」 8 体験的な学びのために なぜ体験が重要なのか 環境教育の分野で児童・生徒が学ぶべきことには 2つの領域があるように思えます。それは「自然や 社会」の領域と「自分自身」の領域です。 「自然や社会」を理解するためには、「概念」的な 理解(例えば生態系の概念など)が不可欠です。い わゆる科学的なアプローチや、知識を得るための学 習はこの分野をカバーすることができるでしょう。 一方、環境教育の目標 * を達成するためには「概 念的な理解」だけでは十分ではありません。例えば 概念的な学習によって「森林は人間にとって重要だ」 という知識が得られたとしましょう。しかし「森林 は大切なんだって・・」という知識が増えただけで はあまり大きな変化は起きないでしょう。 「自然を 大切にしたい」と願う気持ちや、自ら問題に関わろ うとする意思は、個人の「心」の中に「感情」とし て起こるものです。これは頭での理解だけで得られ るものではありません。そこで重要になるのが「体 験」に他なりません。「体験」は個人の内部に様々 な「気づき」をもたらします。 環境教育は「自然や社会」についての理解と「自 分自身」の中に起こる気づきを関係づけること、言 い換えれば、「概念的な理解」と「体験的な学び」 を統合させるものだと言えるかもしれません。 「生きる力」のような教育テーマで行われる総合 的な学習の時間でも、同じ理由から体験を重視した 教育活動が必要だと考えられます。 指導者の役割 * 環境教育の目標を示した文章にはいろいろなものがあり 体験を重要視した学習における指導者の役割は、 教科書を中心とした知識や概念の学習における教師 ますが、国連人間環境会議の文章から引用すると、「自己 を取り巻く環境を自己のできる範囲内で管理し規制する 行動を,一歩ずつ確実にすることのできる人間を育成す の役割とは異なります。体験的な学習の場において ることにある(国連人間環境会議 1972)」とされていま の指導者の役割は「指し示し、導くこと」ではあり す。それにより「持続可能な社会」の実現を目指すのです。 9 ません。指導者の主な役割は、児童・生徒が主体的 総合的な学習の時間によく行われる「調べ学習」で に学ぶために「体験の場」をつくり、学習を側面や は、児童・生徒に「調べたい」という十分な動機が 後方から支援する事です。それらの支援の役割には、 ないままに学習が進行してしまう場合があります。 目標の設定、児童・生徒が主体的になるための動機 学習の目標が「調べる」ということであっても、ま 付け、適切なアドバイス、励まし、体験したことを ずは楽しい体験から入り、児童・生徒の主体性を引 概念と結びつけるための情報提供や援助などが含ま き出していくことが重要です。本書の活動事例の中 れます。 に、楽しさを重視したものがたくさん含まれている 指導者の対応には状況に合わせた臨機応変さが求 のはそのためです。 められます。体験的な学習の場で想定される指導者 の役割をプログラムの基本的な進行に沿ってまとめ 「うけとめる」 ておきたいとおもいます。 体験を重視した教育活動では、児童・生徒が自ら 感じたり気がついたことを、できるだけ大切にしな 「プログラムの計画」 くてはなりません。児童・生徒の発言や感想に否定 的な反応をしたり、あらかじめ教師が用意していた プログラムという言葉はすっかり日本語に溶け込 結論に無理矢理結びつけることは、児童・生徒の主 んだように気軽に使われていますが、「プログラム」 体性を削ぐことになります。児童・生徒の発言や表 とは一体何なのでしょうか? 世の中で「プログラ 現がたとえ的を得ていなかったり、指導者の意図と ム」と呼ばれるものには色々なものがあります。例 ずれたものであっても、それを受けとめる心の余裕 えば、コンピュータのプログラム、音楽会、運動会 を持ちたいものです。そもそも「感じたこと」には のプログラムなどなど・・。これらに共通して含ま 正しいものや間違ったものがあるわけではありませ れていることを考えてみましょう。それはおそらく ん。また、 児童・生徒の理解が事実と異なる場合でも、 「ねらい」と「順序立て」です。 すぐさまそれを否定するのではなく、児童・生徒自 環境教育のプログラムにおいても、 「ねらい」と、 身がそのように理解した事自体をまず「うけとめ」 、 それを達成するための効果的な「順序立て」をデ それから機会を見て必要な情報を伝えるようにしま ザインすることが必要です。それを考えるのが指 す。そのタイミングは必ずしも直後とは限りません。 導者の最初の役目です。 「うながす」 「つなげる」「展開する」 体験的な活動は、単体で考えるのでなく、次の体 体験的な学びの場を創り出すためには、まず参加 験や、教科の学習など、いろいろなものに「つなげ 者に体験を「うながす」必要があります(無理矢理 て」いくことが非常に重要です。本書の活動事例の やらせたのでは主体的な体験にならない)。つまり、 中でも展開させるアイデアを掲載することを重視し 児童・生徒が体験を「やってみたい」と思うことが ました。 重要です。そのために一番必要なのは「楽しさ」で 展開の方向には、さまざまな方法があります。例 はないでしょうか。体験が楽しそうなもの、楽しい えば、 ものであれば、子ども達はすぐに主体的になります。 10 単純な体験 → 複雑な体験 活動集の中では、簡単に「感想を言い合う」と 感覚の一つに焦点を当てた活動 か、 「ふりかえる」などと書かれていますが、この 部分こそ指導者の力量がもっとも発揮される部分で →別の感覚に焦点を当てた活動 あり、重要かつ難しい部分でもあります。 体験する → 表現する 参加者は「体験」を通して必ず何かを感じていま 体験的な学習 → 概念的な学習 す。それを引き出していきます。 予測してみる → 観察する 観察する → 考察する 調査する → まとめる 一つの素材 → 別の素材 一人の体験 → 参加者同士の交流を促す体験 (その逆も) 一人で集める(ものや情報) → 何人かが集めたものを合わせる 森林での活動 → 学校や家庭での活動 自分の地域についての学習 → 他の地域についての学習 まだまだあると思います。このような展開例のい くつかを、各活動紹介の中で示しています。 「ふりかえり」と「わかちあい」 体験の重要性、楽しさの重要性を強調してきまし たが、単に楽しい体験をしただけで十分なわけでは ありません。指導者はプログラムの後半に、参加者 の体験を「学びとして結晶させる」ことを考えなく てはなりません。自然体験型の環境教育の分野で言 われる「ふりかえり」、「わかちあい」と呼ばれる時 間がそのための時間です。この時間で、参加者は自 らの体験を振り返り、自分が感じたり気づいたりし たことを明確にし(ふりかえり)、さらに、参加者 同士報告し合うことによってそれを深めていきます (わかちあい)。 11 学齢にあった活動、教科学習との関連について 本書の活動の多くは、比較的シンプルな体験活動 に取り入れるとよいでしょう。体験が重要であるこ をベースに作られているので、活用しだいで幅広い とは小さい世代と同様ですが、体験を解釈して言葉 年齢層に対応することができます。ただし、学校 や絵などで表現したり、新聞にまとめたりという作 での教科学習が児童・生徒の発達段階に合わせて計 業ができるようになります。単発の体験で終わらせ 画されるのと同様に、環境教育においても年齢層に るのでなく、継続した学習を行うことが期待されま よって焦点を当てるべき部分が異なってきます。指 す。算数や理科、社会等の教科学習において扱われ 導者は対象となる児童・生徒の年齢や状況に合わせ る学習のテーマも、森林での学習と関連させること て、ねらいや課題の設定を調整し活動を計画する必 のできる内容が多くなってきます。特に「総合的な 要があります。 学習の時間」のねらいと環境教育で扱われるテーマ ここでは、自然体験型の環境教育において年代別 は共通する面が大きく、森林環境教育と総合的な学 習の時間との親和性は非常に高いと言えます。 に重要となる項目について簡潔に述べます。 「幼児∼小学 2 年生ぐらいまで」 「中学生以上」 論理的な思考ができるようになり、観察したこと この年代に特に必要なのは、何よりも自然の中で を一般化したり、自分に当てはめることができるよ の直接体験でしょう。現代の社会では子ども達の自 うになります。自然や社会の仕組みや概念に関する 然体験の機会が年々減少していくことが懸念されて 理解も無理なくできるでしょう。同時に社会の中で います。子ども達が自らの自然観や世界観を醸成し の責任も生じ、社会参加や他者との合意形成等も課 ていく土台として木や虫に触れたり、匂いを嗅いだ りといった自然を直接的に体験する多様な機会を提 題になります。 供したいものです。論理的な考え方や動植物に関 ただし体験の重要性が低くなるかと言えば、そん する知識よりも、自然の不思議さや美しさ、面白さ なことはありません。小さい子どもから年配の方ま を感じることに焦点を当てることが重要です。それ で、自然体験には大きな意義があります。その位置 により自然や環境に関心を持つように促していきま 付けが少し変化するだけです。 す。 また、この年齢の子ども達を対象として表現活動・ 「学校の教科学習と森林環境教育」 創作活動を行う場合は、人に伝えるというよりは表 文部科学省の平成 10 年の学習指導要領の改訂で 現そのものを楽しんでできるようになることに留意 は、それまでの多くの知識を押し込むことになり して下さい。 がちであった教育の基調を転換し、 「生徒に自ら学 び考える力を育成することを重視した教育を行うこ 「小学3年∼6年ぐらいまで」 と」が必要とされています。その取組例として例示 されている、話し合いや討論(国語科) 、事例を選 次第に言語能力が高まり、複雑な課題の理解が可 択した問題解決的な学習(社会科) 、見通し・目的 能になったり、経験を文章や言葉で説明することが を持った観察・実験(理科) 、作業や体験を伴う算 できるようになります。相手の立場に立って物を考 数(数学)的活動の充実(算数科)等は、いずれも えることが可能になるのでグループワークを積極的 12 本書で紹介している活動のねらいと非常に近いと考 えています。 学校のカリキュラムと本書の活動の関連について 表にまとめましたので参考にして下さい。 表:本書の活動と学校における教科学習との対応 1 色さがし 小 1 小 2 小 3 小 4 小 5 小 6 中学 主に関連する教科 ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 図工・理科・生活 伝統色を探そう △ △ ○ ○ ○ ◎ ○ 国語・図工・社会 色に名前をつけよう △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ 図工・国語・理科 目立つ色、目立たない色 △ △ ○ ○ ○ ◎ ○ 理科・図工 色鬼 ◎ ◎ ○ ○ △ △ ○ ○ ○ ○ ◎ 図工・理科 スケッチ 2 音を思い描こう 生活・体育・図工 ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ 音楽・図工 森の中で耳を澄ませる ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 音楽・生活 音の地図づくり ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 音楽・生活・社会 集めた音を分類する ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 音楽・理科 サウンドオフ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ 理科・音楽・生活 おとしたものは? ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 理科・生活 3 さわってさがそう ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 図工・理科 匂いで探す ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 生活・理科 触覚の伝言 ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 理科・国語 くりかえし言葉をさがせ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 生活・音楽・国語 くりかえし言葉で集まれ! △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ 音楽・国語 ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ 生活・理科 △ △ ◎ ○ ○ ○ ○ 理科 ◎ ○ ○ ○ ○ 理科 4 葉っぱじゃんけん 葉っぱのラインナップ 自然について学ぶ理科的な展開 5 葉っぱでアート ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 生活・図工 お面作り ◎ ◎ ○ ○ △ △ 生活・図工 地上に絵を描く ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 生活・図工 葉っぱステンドグラス ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 生活・図工・理科 葉っぱのちぎり絵 ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 生活・図工 葉っぱステンシル ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 生活・図工 草花あそび △ △ ◎ ◎ ○ ○ 社会・理科・図工 ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 図工・理科・生活 葉っぱで絵手紙 △ △ ◎ ◎ ○ ○ ステンドグラス塗り絵 ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ 6 葉っぱでお絵かき 13 ○ 図工・国語・理科 図工・理科・生活 7 こすりだし葉っぱ図鑑 小 1 小 2 小 3 小 4 小 5 小 6 中学 主に関連する教科 ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 図工・理科・生活 木の幹のこすりだし図鑑 △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ 理科・図工 こすりだしでお絵かき △ △ ◎ ◎ ○ ○ △ 図工・理科 8 木の身体検査 △ △ ◎ ○ ○ ○ ○ 算数・理科 木の高さを測る △ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ 算数・理科 木の太さを測る △ △ △ △ ◎ ○ ○ 算数・理科 枝の広がりの幅を測る △ △ △ △ ◎ ○ ○ 算数・理科 △ △ △ ◎ ○ 算数・理科・図工 ○ ○ ◎ ○ ○ ○ △ △ △ ◎ ○ 算数・理科 △ △ ◎ ◎ 算数・理科 ◎ ○ ○ ○ ○ 理科・図工 ○ ○ ○ ◎ ○ 理科 △ ◎ ○ ○ ○ 算数・理科・図工 ○ ○ ◎ ○ ○ 社会・図工・理科 樹齢を推定する ◎ ◎ ○ ○ ○ 社会・理科 木を時間的なスケール・・・歴史を考える ◎ ◎ ○ ○ ○ 社会・理科・図工 方眼紙に木をスケッチする 教室で木を再現する 一本の木に葉は何枚あるか? 葉の面積はどれくらい? 9 木のプロフィール △ △ △ △ 木と他の生きものとの関係を調べよう 木のプロフィール、別の季節編 10 ヒストリー hisTree 11 変、竹林 家の中で竹をさがそう △ △ ◎ ◎ ○ ○ △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ことわざや慣用句の中に竹を探そう 竹林を見に行こう 12 漢字る自然 △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ 『木』を含む漢字の意味を考える 人の名前の中から『木』を探す ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ もとの形を思い描こう △ △ ◎ ◎ ○ ○ 漢字で自然を描く △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ 漢字って感じ 13 木の用途を調べよう 算数・理科・図工 社会・図工・理科 社会・理科 ○ 国語・理科 社会・理科 国語 ○ 国語・理科 国語 ○ 国語・図工・理科 国語・図工 ◎ 国語・図工・理科 △ △ ○ ○ ◎ ○ 社会 伝統的な木製品を調べる △ △ ◎ ◎ ○ ○ 社会 食品としての木 △ △ ○ ○ ◎ ○ 社会・理科・家庭 木の戸籍調べ △ △ ◎ ○ ○ 社会 街の中での木の役割 ○ ○ ◎ ○ ○ 社会・理科 ○ ○ ○ ◎ ○ 理科・社会 ○ ○ ○ ○ ○ 国語・道徳 ○ ○ ◎ ○ 森のタネを集めよう、分けてみよう ○ ○ ◎ ○ ○ 理科 散布型で分けてみよう ○ ○ ○ ◎ ○ 理科 生きものにとっての木の役割 物語の中の木 ○ ○ 14 やっタネ!誰が遠くに飛ばすか選手権 図工・理科 15 民話の中の木に出会う ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ △ 国語・図工 昔話のその後は? ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 国語 ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 国語・理科 ○ ◎ ◎ 社会・理科・特別 ○ ○ ◎ 社会・理科・特別 ○ ○ ○ 社会・理科・特別 16 大きな木に会いに行こう 大きな木の詩 17 学校に木を植える 学校ビオトープ 苗木作り ○ ○ ○ ○ 社会・理科 ※「総合的な学習の時間」は、ほぼ全ての活動に関連しているので「関連する教科」欄への表記を省いた。 ※学習指導要領または発達段階に対応する度合いを三段階で示した(平成 16 年現在)。 ◎:最も対応している ○:対応している △:活動内容や課題の設定を工夫すれば対応できる 14 感性のとびらを開く 人は優れた五感を持っていますが日常生活では必ずし もそれを十分に働かせずに過ごしています。森の中で意 識的に五感を活性化することはとても大事だと考えま す。そしてさらに「芸術的な感性」や「自然の不思議さ に心をときめかせる感性」を呼び覚ますことを「感性の とびらを開く」と表現しました。森林における学習活動 の出発点として、自然の中で遊び、まずは自然を直接体 験することが重要です。このカテゴリーで紹介した活動 は、知識の習得よりも、児童・生徒自身が主体的に自然 と関わることや、五感を働かせて自然を感じ取ることを 重視します。その中で、自然の不思議さや多様性などを テーマにしていきます。 15 1. 色さがし ∼自然の色に着目した活動 自然の色に着目し、自然の中から「色見本」と同じ色のものを 探し出す活動です。「色さがし」を出発点に、様々な方向に展開が 可能です。 ねらい: 色を探し出す活動を通じて、自然の中で楽しく遊ぶとともに、 自然の多様性に関心を持つきっかけを作ります。 進め方: ・折り紙や、色鉛筆など、「色見本」になるものを用意します。 ・「色見本」を参加者に配り、自然の中からできるだけ同じ色を探 してくるように促します。 「自然の中には様々な色がありますね。皆さんに配った色見 本と同じ色もこの森の中にあるでしょうか? 数分間時間 をとるので探してみましょう。」 用 意:色見本(折り紙や色鉛 筆など) 時 間:30 分∼ 1 時間 「同じ緑色でも、いろいろな色があるはずですよ。そっくり な色を探して下さいね・・・」 扱われる基本概念:多様性 関連する教科:国語、図画工作、 理科、総合的な学習の時間 「持ってこられるものだったら、この場所まで持ってきて下 さい。植物なら、全部じゃなくて花びらや葉っぱ一枚だけ 持ってくるようにして下さい。」 指導上の注意点: 危険な場所を避け、探しに行 く範囲を明確に指示する。 出 典:類似した活動が様々な プログラム集に紹介されてい ・どんなものが見つかったか、ひとりずつ発表してもらいます。 16 る。 ●活動の背景 「クレヨンや色鉛筆と同じ色のセットを作る」 参加者に、8 色や 12 色のクレヨン(もしくは色 色をテーマにした活動は、自然の多様性に触れ 鉛筆)のセットを渡し、それと同じ色のセットを自 る最も易しいアプローチの一つだと思われる。 「多 然物から集めてもらう。グループワーク向き。 様性」は、自然の持つ重要な性質の一つであると共 に、自然体験を楽しいものにする大事な着眼点でも 「それぞれが着ている服と同じ色を探す」 ある。多様性を学ぶ視点には、生物種の多様性を始 めとして、環境の多様性、生活史や生活型の多様性 「皆さんが着ている服の色にできるだけそっ など様々な切り口があるが、それらの多くは理解す くりな色を探してきましょう! 同じ色が見つ るために生物の種名などある程度の予備知識を必 かるかな?」 要とする。色に着目した活動はそのような予備知識 人工的な色と、自然の色の違いなどについて発見 をいっさい必要とせず、かつ多様性を実感しやすい があるかもしれない。 点で優れている。 また、単純な「色さがし」を出発点に、様々な方 「ラッキーカラーを探せ!」 向に発展させていくことができる。 占いの本などに出ている「ラッキーカラー」を紹 色をテーマにした活動を行う際には、色覚に障害 介して、参加者それぞれが自分のラッキーカラーを を持つ参加者への配慮が必要である(このことは聴 探してくるような設定はどうか。占いなどが好きな 覚など他の感覚に焦点を当てた活動にも当てはま 中学生ぐらいの年代には楽しい動機付けになるかも る)。学校の学習で行う場合特にこの点には注意し しれない。 たい。 色を探しに出かける前には、どんな色が見つかり やすいかを質問するとよい。探し始める前、緑系の ●バリエーション例1:いろいろな色見 色が見つかりやすいと思う人が多いが、実際には色 本、動機付けの工夫 見本のようにハッキリした緑色は自然の中では見つ けにくいものである。事前に予測を促すことで、体 「色さがし」の活動で使用する「色見本」は指導 験から気づくきっかけを増やすことができるだろ 者がもっとも工夫できる部分である。例えば色鉛筆 を使用する場合、12 色などの色数の少ないセット う。 よりも、思いきって 70 色ぐらいのセットを使った また探してきたものを発表する際には、色が目立 方が活動をより楽しいものにできるだろう。 つように、白や黒の布を引いたり、テーブルの上な それ以外にもアイデア次第でいろいろなバリエー どに並べるなどの工夫もしたい。参加者が探したも のを同時に一覧すると、色の多様性の印象がさらに ションが考えられる。以下にいくつかの例を示す。 強まるだろう。 17 * 伝統色の色見本、及び参考書としては、大日本インキ化 学工業株式会社から出版されている「日本の伝統色」や 「日本の伝統色̶その色名と色調 」長崎 盛輝著 などが ある。 ●バリエーション例2:参加者同士の交 多く、日本人がいかに感性豊かに自然を観察し、表 現してきたかをうかがい知ることができる。例えば 流を促す 「色さがし」は、色の多様性に焦点を当てたプロ グラムだが、比較的手軽に実施できる活動なので、 森林における学習やレクリエーションの導入として 植物を題材にした色名には「萌葱色(もえぎいろ) 」 、 「檜皮色(ひわだいろ) 」 、 「朽葉色(くちばいろ) 」 、 「老竹色(おいたけいろ) 」 、 「裏葉色(うらはいろ) 」 などがある。 「色さがし」の発展型として、このよ 実施することも勧められる。そのような場合、個人 うな色の名前から想像して色を探してみる活動も の課題として取り組ませる他、参加者同士の交流を 興味深い。 促す設定を加えることができる。このような手法は、 また、伝統色名だけでなく、 「優しい色」 、 「暖か 参加者同士の打ち解け合いを促進するとともに、色 い色」 、 「さみしい色」 、 「ねむい色」などの言葉から についての印象をより深いものにすることにつなが 自分なりの色を探して、他の人と比べるような手法 る。 もよいだろう。 さらに一歩進めて、自然の中で見つけたお気に入 「色を交換する」 りの色に、自分で名前を付けてみるのもよい。以下 ・色見本(色紙や色鉛筆)から、参加者それぞれに に、オーソドックスな色探しの後に行う発展型のア 一番好きな色(あるいは秋らしい色、春らしい色 イデアを示す。 など)を選んでもらう。参加者同士でペアをつく り、選んだ色見本を交換する。 ・それぞれ自然の中から色を探してきて、交換した 「伝統色を探そう」 人に返す。 概要: ・感想を言い合おう。 伝統的な色の名称から想像力をはたらかせて、色 を探してくる。 「グループで色を探す」 ねらい:日本語の色表現の豊かさを感じる。 ・色見本を3∼4人のグループに 1 セット渡し、グ ループ対抗で色を探す。 ・どのグループが一番そっくりの色を見つけてきた か楽しく品評会を行う。 進め方: ・日本の伝統的な色の名称とその色見本 * を用意す る。 ・色の名称だけを示し、参加者はその名前から想像 される色を探してくる。 ●プログラムの展開:色を表現する言葉 ∼ 国語的な展開 日本語の色の名称は 1000 種類を優に超えると いう。日本語の色名には動植物を題材にしたものが ・探してきたものを見せながら、どうしてそれを選 んだかを一言コメントしてもらう。 ・色見本を提示して実際の色と探してきたものと比 べてみる。 ・色の名前の持つ意味を考えてみる。 18 「色に名前をつけよう」 様々な着色をした小さな人工物(小さな紙片や、 木片など)を配置する。20 ∼ 50 個ぐらい配置 概要: するとよいだろう。 自然の中で見つけた色にオリジナルの名前をつ ・参加者は一定の時間(例えば 1 分)で、できるだ ける。 けたくさん探し出してくる。 ねらい:自然をよく観察し、言葉で表現してみる。 ・探し出したものは、見つけた順番に並べる。 進め方: ・探す時間の終了後、どのような色が見つけやすかっ ・森の中の自然物で、もっとも自分が気に入った色 たか質問する。 を一つ探してくる。 ・自然の中の昆虫の体色や、植物の実、花の色など ・それに自分のオリジナルの名前を付けてみる。 にどのような意味があるか考えてみよう。 ・自然物を見せながら、色の名前を発表する。どう してその名前にしたかも話してみよう。 ●色に関連した様々な活動 「色さがし」の活動の前か後に、色に着目した遊 ●プログラムの展開:自然の中での色の びや、色に関係した様々な活動を行い、学習の流れ 意味 ∼理科的な展開 を作ることができるだろう。いくつか例示する。 花の色や、動物の体色などにはそれぞれ生物学的 「色鬼(いろおに)」 な意味がある。もっとも分かりやすいのは昆虫の保 護色(隠蔽色)や、鳥に食べられて種を運んでもら 伝統的な鬼ごっこ遊びの一つ。オニが具体的な色、 う植物の実の目立つ色などであろう。色探しの活動 例えば「赤!」と宣言する。オニ以外の人は、逃げ の発展の一つとして、自然の中でどのような色が目 立ち、どのような色が目立たないかを考えてみよう。 ながらその色を探す。宣言された色のものに触れて いればオニにはつかまらない。色が見つからないう ちにオニにタッチされた人はオニを交代する。 「目立つ色、目立たない色」 「色さがし」の前の導入としてどうか。 概要: 「スケッチ」 草むらや地面の上に、様々な色の付けた人工物を 配置して、一定時間の間に探してみる。 一連の「色さがし」の活動を行い、色の多様性を ねらい: 体験した後、図画工作等のスケッチなどの活動につ 自然の中で目立つ色、目立たない色について参加 なげる。 者自ら体験し、生物の体の色の意義を考えてみる。 進め方: ・指導者は、参加者が見ていない間に、地面の上に 19 2. 音を思い描こう ∼意識的に音を聴く∼ 絵の風景から音を想像してみる活動です。街の音と森の音を比 較します。実際に森の音を聴いてみたくなったら森に出発です。 ねらい: 音をイメージすることで「森の音」への関心を高めます。 進め方: ・街中と森の中の様子が描かれた 2 種類のワークシートを用意し ます(右ページ参照)。 ・初めに街中の様子が描かれたワークシートを配ります。 「この絵からはどんな音がきこえてきますか? 音をマンガ のように文字で表現して描いてみてください。音の大きさ を字の大きさや太さで表現するなど工夫をするとおもしろ いですよ・・」 ・どんな音を描いたか発表してもらいます。小グループで見せ合っ てもよいでしょう。 ・次に森の様子が描かれたワークシートを配り、同じ作業をしても 用 意:ワークシート、筆記具 時 間:約 30 分 らいます。 扱われる基本概念:多様性、つながり、 ・「森の中にもたくさんの音があるようですね。みなさんが 関連する教科:図画工作、総合的な学 描いた音は森の中で実際に聞こえるでしょうか? 誰も描 いていない音も聞こえてくるかもしれませんね。行って確 かめてみましょう。」 人と自然 習の時間 指導上の注意点:聴力に障害をもつ参 加者に十分配慮したい。 出 典:自然教育研究センターオリジ ・森に出かけて実際の森の音を聞いてみます。 ナル 20 ●活動の背景 うに、視覚をふさぐことによって、他の感覚に集中 聴覚は自然観察においてとても重要な感覚であ させることができる。音を聴く場合も目を閉じさせ る。わずかな音でも、音の特徴や大きさ、パターン、 ることは効果的だ。多くの場合目を閉じることは、 方向、距離などによって自然の様子を知ることがで きる。また、その時目に見えていないものでも過去 おしゃべりを防ぐことにも貢献する。 に音を聞きながら見た経験があれば、その時の「音 「これから 3 分間目を閉じて、森の音を聴いて の経験」からそのものを認識することができる。 みましょう。おしゃべりはだめですよ。3 分間 立ったらどんな音が聞こえたか話し合ってみま 日常生活において、私たちは大量に溢れる音の情 しょう・・」 報の中から必要な音を選択して聴いているが、それ はその音が何の音なのかを認識した経験があるから 音の種類が何種類あるか数えさせてもいい。 できるのである。逆に言えば自然の中に入った時に 「一人になる」 「経験したことのない音・聞いたことのない音」は 無意識に除かれ、「聞こえているが聴いていない状 森の音を聴くときに、そばに人がいると集中しに 態」にはならないだろうか。 くかったり、その人の出す音が気になってしまう場 音をテーマにした活動の目的は「自然の中で音を 意識して聴くことができるようになる」ことである。 「音の経験」がなくても、自分の聴覚のすばらしさ 合が多い。じっくり音を聴いてもらうためには短い 時間でも一人になることが効果的である。森の中で お互いの気配を感じないぐらいに散らばらせたり、 を認識して、意識的に聴くことによって世界は広が るだろう。そのようにして認識できる自然の音を増 やしていきたい。 ●プログラムの展開 1:森の中で耳を澄 ませる 森の音を想像した後は、ぜひとも実際に森の中で 耳を澄ませる活動を行い、自然の中で聴覚を働かせ ることによって世界が広がる体験をさせたい。 森の中で耳を澄ませ、意識的に音を聴くために、 いろいろな課題の設定や言葉かけの手法が考えられ る。 「目を閉じる」 「さわってさがそう」のところでも触れているよ 22 ●プログラムの展開 2:音を集める 耳を澄ませる活動の発展として、森の中の音を集 める(記録する)活動も音を意識化することを助け るだろう。森に来る前に「音を思い描こう」の活動 をやった場合は、森で実際に集めた音と、事前に想 像した森の音を比べてみたい。 遊歩道などで行う場合は、道上に等間隔で配置する 「音の地図づくり」 ようにしてもよいだろう。後に紹介する「音を集め る」活動では、特に一人になることが必要である。 概要: 一人ずつになって音を聴き、聞いた音をカードに 「耳に手を当てる」 書く。地面か紙の上に全員のカードを置きながら音 聞き耳をたてるときによくするように、耳の後ろ 地図を作る。 に手を当てると音を大きくする効果がある。大きな 進め方: ウサギの耳などに例えて試させるとよい。また、耳 ・カードや付箋紙(10cm 四方ほどの大きさ)を参 に手を当てることは音の方向を確かめる効果があ 加者一人当たり 10 枚ほど渡す。 る。耳に手を当てながら体を回転させて聴きたい音 ・聞こえた音を文字で表現して描くこと( 「音を思 の方向に向くように促してもよいだろう。 い描こう」と同様に) 、一枚に一つの音を書くこ 「いろいろな音に焦点を当てる」 とを伝える。 ・範囲と時間を決め、ひとりずつ好きな場所に移動 遠くを見ていると目の前のものが見えないという する。なるべく他の人と離れた場所を選び、話さ ことがあるが、音でも同じことが言える。遠くから 聞こえてくる鳥の声や風の音に耳を向けていると、 足元の音に気づかない場合がある。言葉かけやワー ずに音を聴くよう伝える。 ※ひとりで音を聞く時間は、移動時間をのぞいて 、 少なくとも 5 分以上で設定するとよい。 クシートを使って、いろいろな音に耳を向けるよう ・参加者全員、音を記録した紙を持ち寄る。 に促そう。 - 一番遠くから聞こえる音は 「どんな音が聞こえましたか? みなさんが描い たカードを使って音の地図を作りましょう」 - 一番近くから聞こえる音は ・模造紙などの大きな紙にカラーマーカーなどを - 一番大きな音は 使って付近の地図を書く。地図の方向がわかるよ - 一番小さな音は う東西南北や、わかりやすい道や木、建物などを - 一番心地よい音は 描くとよい(地図の中央を今いる場所としてもよ - 不快な音は い) 。 ・聞こえてきた方向や距離を思い出しながら音カー 23 ドを地図上に置いていく。 ●バリエーション例:音に関する様々な ・出来上がった音の地図を「音を思い描こう」で予 想したものと比べてみよう。 活動 ・活動を通して感じたことや気づいたことを話し合 う。 「サウンドオフ」 森の中で特に印象に残る音の一つは生きものの鳴 「集めた音を分類する」 き声だろう。春から夏にかけては野鳥の鳴き声が、 音の地図をつくることのバリエーションとして、 夏から秋には昆虫の鳴き声が目立ってくる。生物は 音の分類をする手法も考えられる。集めた音を分類 音によってコミュニケーションをとっており、鳴き することにより環境の特徴が見えてくることを体験 声にはそれぞれ意味がある。ゲームを通して生きも できる。 のの鳴き声の意味を考えてみよう。 進め方: 概要: ・「音の地図づくり」と同様にカードを使って音の 動物の鳴きまねを頼りに、自分と同じ種類の声を 分類を試みる。 出している人を探し当てるゲーム。 ・どのように分類するかを話し合う(あるいは指導 者が指示をする)。 進め方: ・森に住む鳥や昆虫の種類とその鳴き声が書かれた カードを数種類、人数分用意する。例えばウグイ 分類の例 ス(ホー・ホケキョ) 、シジュウカラ(ツツピー、 - 自然の音、人工の音 - 遠い音、近い音 ツツピー) 、ヒグラシ(カナカナカナ)など。 ・参加者に一枚ずつカードを配る。カードは他の人 に見せてはいけない。 - 高い音、低い音 - 心地よい音、不快な音 - 連続している音、単発の音 - 上の方からする音、下の方からする音 ・指導者の合図でカードに書かれた鳴き声を発しな がら、同じ声を出している仲間をさがして集まる。 ・足場のよい安全な場所であれば目隠しをして実施 するとよい。人数が多い場合は、半分が安全確保 - 森のいい音ベストテン のために円を作って、もう半分がその円の中で目 - 森だけの音、街にもある音 ・音を集めた環境の特徴を話し合う。活動を通して 感じたこと・気づいたことを話し合う。 ※2つに分けるだけでなく、音の高低と遠近など、 2つ以上の特徴に注目して4つ以上のマスに分類 するような手法も考えられる。 隠しをして実施するようにするとよい。 ・同じ種類の仲間全員が集まったら鳴くのをやめる。 ・グループごとに鳴いてもらい、何の生き物の声か 発表してもらう。 ・森では鳥や昆虫が盛んに鳴いているが、それにど 24 表: 「おとしたものは?」の 記録用紙例 このような表を配布する か、板書するとよい。 のような意味があるのか考えるように促す。 ・次に三人から数人の小グループを作り、話し合い によってグループとしての予想を決定する。 「おとしたものは?」∼自分の聴く能力を知る ・グループワークの練習としての意義を持って活動 野生動物が優れた聴覚を持っているように、人 間もまた微妙な音の違いを聞き分けるすぐれた耳を 持っている。自分たちの聞き分けの能力に焦点を当 ててみよう。また、この活動はグループで話し合い ながら合意(コンセンサス)をつくっていく合意形 成実習のプロセスを持っているので、グループでの 学習活動に取り組む際の導入(グループワークの練 習)としても適している。基本的に室内での活動で ある。 する場合、次のような話をして、話し合いの大事 さを強調しておくとよい。 「まずは個人でどのような予想をしたか発表し 合ってください。次に話し合いによってグルー プでの予想を一つにしぼります。大事なのは、 グループのみんなが発言すること、そして他の 人の意見をしっかり聞くことです・・。多数決 やだれかの独断で決めるのではなく、納得いく まで話し合って決めて下さいね。話し合いがう 進め方: まく進めば、個人の予想よりグループの予想の ・動物の優れた聴覚についての話。 結果が正解に近くなるはずですよ・・」 ・結果発表。自分たちの聴覚の素晴らしさを気づか 「イルカやコウモリの仲間は、目が見えないと せたい。 ころでも、音を聴くことによって障害物を避け ・うまく話し合いができたかについてのふりかえり。 たり、餌を捕まえたりできます。イルカは音を 聴くことで、物がある場所だけでなく、その形 や材質までも知ることができるそうです・・。 出典: 私たち人間はどうでしょう。人間も動物に負け 「サウンドオフ」出典不明。ニュージーランドのナチュラ ないよい耳を持っているかもしれません。実験 リストの方が日本で行ったワークショップで紹介された ものを改変して収録。 をしてみましょう・・」 ・参加者には見えないようにしながら、机の上に物 を落として音を出す。落とす物は、児童・生徒が よく知っている物、例えば、ハサミ、ものさし、 鉛筆、10 円玉などがよい。 ・参加者は、まず個人で落とした物体が何なのかに ついて考えてメモをとる(表参照)。できるだけ 細かく、例えば硬貨なら種類も予想する。これを 3∼ 5 種類実施する。 25 「おとしたものは?」SMILE(聖マーガレット生涯教育研 究所)のプログラムを元に作成。 ※その他は自然教育研究センターオリジナル。 3. さわってさがそう ∼触覚に焦点を当てた活動 視覚を使わずに、自然物を手でさわって特徴をつかみ、同じも のを自然の中から探してきます。自然から情報を得る手段の一つ として「手でさわる」という方法にフォーカスします。 ねらい: ・手触りから感じられる自然物の特徴に気づきます。 ・自分が持っている触覚の能力に気づきます 進め方: ・中の見えない袋の中に、手触りに特徴のある自然物を一つ入れ ます。 ・袋の中の自然物を手だけで触って、自然物の特徴をつかんでも らい、周辺の自然の中から同じものを見つけてくるように促し ます。 用 意:自然物を入れる袋や箱 時 間:30 分∼ 1 時間 扱われる基本概念:多様性 関連する教科:国語、図画工作、理科、 「大きさや形、感触はどんなふうですか? よーく触って覚 えてね。同じものを自然の中から探してきてください・・」 ・入れ物の中のものと持ってきたものが同じかどうか、みんなで 答え合わせをします。 総合的な学習の時間 指導上の注意点:ウルシの仲間などの かぶれやすい植物などに対する安全 上の配慮が必要である。 出 典:自然観察の手法として広く行 ・触ることで分かったこと、探しものをして気づいたことなどを 話し合います。 26 われている。 小林毅氏考案 ●活動の背景 「ミステリーボックス」 手頃な大きさのダンボール箱などに、きれいな紙 自然物を認識するとき、人は視覚に頼る傾向があ るが、視覚からは得られない情報もたくさんある。 自然観察では触覚や嗅覚などの感覚を働かせること を貼りつけて、 「ミステリーボックス」をつくろう。 手の入れ口は、のぞけないような工夫をしたい。箱 にすると、振ると音が出るので、触覚に合わせて聴 によって、より多面的に自然をとらえられるはずで 覚の要素を加えることもできる。 ある。それにより自然体験は豊かなものになる。自 身の自然体験を振り返ったとき、触覚や嗅覚、例え 「さわって袋」 ば虫を手に持ったときの感触や、草の匂いなどが強 く記憶に刻まれて残っているのではないだろうか。 子ども達は、いたずらが大好きだから、ルールを 視覚以外の感覚を働かせるもっとも有効な方法 やぶって袋の中をのぞこうとする子もいるかもし は、視覚を使わないようにすることであり、本プロ れない。のぞきにくいように袋を工夫するとよい。 グラムでもそのような手法を用いている。 上図を参照のこと。 自然物をさわる際、ただ単にさわるだけでなく「触 「めかくし」 覚」という人に本来備わっている能力を再認識する ように働きかけたい。私たちが持っている「触って ものを認識する力」は想像以上に優れたものである。 自然の中で活動する前に、自分の持つ感覚の素晴ら 袋や箱は、ミステリーの要素があって興味を引き つける効果があるが、一方で片手でしか触れないと いう欠点がある。やや難しい対象物をじっくり触っ しさを実感しておくと、その後の活動において積極 てもらうのであれば、目かくしをさせるとよい。目 的にその感覚を使ってみようと、自然体験に対する かくしをすると、手ざわりに集中することができ 期待感がふくらむことだろう。 る。 また、さわるときに手のひら以外の部分を使うこ ともできる。手の甲、指先、頬など・・・。手のひら ●バリエーション例:さわらせ方の工夫 よりも敏感な部分も多く、手のひらでは感じなかっ たことが他の部分では感じられることがある。人に 手触りに焦点を当てた活動において、どのような よって敏感な部分は違ってくるので、自分にとって さわらせ方をするかによって参加者の積極性は大き の一番の触覚ポイントを見つけるのもいいかもしれ く異なってくる。「さわってみたい」という気持ち ない。 にさせる工夫が大切である。自然物を入れる入れ物 やさわらせ方を工夫してみよう。 27 ●プログラムの展開1:後に扱う題材を 学習へと自然に展開していくことができる。例えば 上記の活動の後、常緑樹と落葉樹の葉の違いや、針 触る対象物にする 葉樹と広葉樹の葉の違いに展開が可能であろう。 「さわってさがそう」は、参加者の児童・生徒に 同じように木の実なども対象にすることができ 触覚を認識してもらう活動であるが、これを、自然 る。 に関する学習への導入的な役割で実施することも できる。学習で扱う題材(素材)を触らせることで、 ●プログラムの展開 2:他の感覚を使っ その対象物に関心を持たせていくことができる。例 てさがす えば、葉や木の実など、その日の学習の主要な題材 になるものを触る対象にするのである。以下に、葉 触覚を働かせて探し物をした後に、嗅覚や聴覚な に関する学習の導入に「さわってさがす」を行う例 ど他の感覚に焦点を移していく展開も、自然な展開 を示す。 であり効果的であろう。 「さわってさがす」とほぼ 同じ手法が、嗅覚や聴覚でも可能である。 「葉を題材にした学習への導入」 概要: 「匂いで探す」 葉に様々な種類や特徴があることを手触りの観点 概要: から学び、後の学習につなげる。 嗅覚を頼りに探し物を行い、自然の匂いや、自分 進め方: に備わっている匂いの感覚を再認識する。 ・参加者にめかくしをさせ、2∼3種類の葉をよく 触ってもらう。 ・堅さや、手触りなど、特徴を言葉で表現するよう に促す。 「葉っぱを見ないで、手触りだけで調べて、同 進め方: ・中身の見えないビンや、プラスチックのケースな どに匂いのする自然物を入れる。 ・ふたを開けて参加者に嗅いでもらう。 「どんな匂いがした? 今まで嗅いだことのあ じ種類の葉っぱを探してくることができるか な? まずは、よく触ってみよう。堅さや形は どうかな? 周りにはギザギザがあるかな? ざらざらしてる?」 ・二人もしくはそれ以上のグループで、課題に出さ るものに似ているかな?」 ・同じものを自然の中から探してきてもらう。 ・正解をみてみよう。 ・感想を話し合おう。 れた葉っぱと同じ葉っぱを見つけてくるようにう がなす。 葉などは、少しちぎって手で揉むと匂いを感じや すいので、参加者に教えるとよい。対象物としては、 ・集めてきた葉を、手触りの特徴で分けてみよう。 匂いの強いヨモギやクスノキ、サンショウ、ハマゴ ウなどの葉、キンモクセイやクチナシの花などが考 触る対象を「葉」に絞ることにより、葉に関する えられる。 28 ●プログラムの展開 4:言葉でさがす 聴覚でもまた同じようなアプローチが可能であろ う。聴覚については「音」に関する活動を紹介した ∼国語的な展開 ページと重複するのでここでは省略する。 「くりかえし言葉をさがせ」 ●プログラムの展開 3:触覚を言葉で表 日本語では、さわって感じられる感触を、 「くり 現する かえし言葉」 、すなわち擬態語、擬声語で表すこと がしばしばある。その種類は非常に多い。例えば、 シンプルな活動である「さわってみよう」は、他 柔らかい様をあらわす言葉であっても、 「へなへな」 、 の要素を加えていくことで、様々な方向に展開させ 「ふにゃふにゃ」 、 「てれてれ」 、 「くにゃくにゃ」な ていくことができる。そんな事例の一つとして、 触っ ど、いくつもの言葉をあげることできる。しかもこ た感触を言葉で表現して人に伝えてみる要素を入れ れらは少しずつニュアンスが違うことに気づかされ てみよう。感覚は人それぞれ違うものであり、その る。このような言葉の微妙なニュアンスと手触りの 違いに気づく機会になるかもしれない。また、参加 両方を活動に組み込んでみよう。 者同士の交流をうながすこともできる。 「触覚の伝言」 概要: 概要: くりかえし言葉が表す自然物をみつけてくる。 自然物を触った感触を言葉で表現する。その言葉 進め方: の情報をヒントに別の人がさがしにいく。 ・日本語のくりかえし言葉について説明する。 進め方: ・触った感じが連想できるような「くりかえし言葉」 (ふわふわ・つるつる・ざらざらなど)を一つ発 ・2 人 1 組をつくる。 表する。 ・1 人が袋や箱に入れた自然物を触わり、感覚で得 ・参加者は、周りの自然の中から、与えられたくり られる情報、例えば感触、大きさ、重さなどを言 かえし言葉にできるだけ合ったものを探してく 葉で表現してペアの人に伝える。このとき、それ る。 が何であるか(例えば葉っぱであるなど)は言っ てはいけない。 ※ 30 秒以内に、など、短時間で区切ったほうが考 えすぎずにゲーム感覚で見つけられる。 ) ・ペアのもう1人は、その情報を元にその自然物を 探し出してくる。 ・全員が拾ってきたものが見えるように輪になって 発表しあう。 ・拾ってきたら、正解を見てみよう。 ・感想を話し合う(ふりかえり、わかちあい) 。 この活動にも参加者同士の交流の要素を入れてみ ・ペアの二人がそれぞれ別々のものを触り、情報を ると次のようになる。 交換して互いに探してくるような設定にしてもよ い。 29 「くりかえし言葉で集まれ!」 概要: 同時に言葉を言ってみよう・・ せ∼のっ・・」 ・感想を話し合おう。 くりかえし言葉から連想して拾ってきたものを頼 参加者の年齢によっては、課題とする「くりかえ りに、同じ言葉を与えられた人どうし集まる。 し言葉」に適度に紛らわしいもの、例えば「つるつ 進め方 る」と「すべすべ」などを混ぜておくと多少の混乱 ・「くりかえし言葉」が一つずつ書かれたカードを が生じて面白い。 参加者の人数分用意する。このとき、同じ言葉の 教室での教科学習につなげる展開として、国語の 書かれたカードが 3 ∼ 5 枚ずつあるように準備 時間などに、物語などの中からくりかえし言葉(擬 する。たとえば 20 人のグループなら、5種類の 態語・擬声語)をさがしてみる学習を行ってもいい 言葉を用意して、4枚ずつ同じカードがあるよう だろう。童話作家の宮沢賢治の物語には特徴あるく にする。 りかえし言葉が頻繁に登場し、印象的な文章表現を ・参加者一人一人に、「くりかえし言葉」の書かれ 作り出している。 たカードを配る。このとき、参加者はそれぞれ自 分のカードだけを見て、他人のものは見ない。 出典 ・参加者はそれぞれのカードに書かれた「くりかえ 「くりかえしことばを探せ」:八尾哲史氏考案のプログラム し言葉」にぴったりのものを一つ、自然の中から 「森の擬音まつり」を改変。 探してくる。できるだけぴったりのものが探せる 「くりかえし言葉で集まれ」:自然教育研究センターオリジ ように、少し長めに時間をとる。 ナル。 ・再集合したら、拾ってきたものを見せ合いながら、 同じ言葉を与えられた人同士でグループになるよ う促す。このとき、カードを見せたり、言葉を教 え合ってはいけない。 「実は皆さんに配ったカードの中には、同じ言 葉が何枚かずつ入っていたんですよ。どの人と 同じ言葉だったか分かるかな? では、カード は見せずに拾ってきたものを見せ合いながら、 同じ言葉だと思う人と集まってみましょう。お 互いの拾ったものをよく触って間違いないか確 認してみて下さいね・・」 ※参考図書 「さわる・五感の本 はじめての発見」クロード・デラフォッ ・与えられた言葉を確認する。 ス他著、手塚千史訳、岳陽舎 「同じ言葉の人がうまく集まれたかな? それ じゃあ、集まったグループごとに、大きな声で ※擬態語、擬声語は「オノマトペ Onomatopoeia」ともいう。 30 葉っぱで遊ぼう このカテゴリーでは、森林での学習活動の導入的な 素材として「葉」を取り上げます。 「葉」は学習の素材 として入手が簡単であり、だれもが容易に手にとって 観察することができます。また、持ち帰ることができ る点でも優れています。 31 4.葉っぱジャンケン ∼葉っぱのラインナップ 自分で集めてきた葉っぱを使い、葉っぱのいろいろな特徴に注 目しながらジャンケン遊びをします。 ねらい: ・いろいろな種類の葉があることに気がつきます。 ・葉の持つ様々な特徴を見る視点を持てるようになります。 進め方: ・参加者はそれぞれ活動を行っているフィールドの中を歩いて、 葉っぱをよく観察し、いろいろな特徴を持った葉を5枚ひろって きます(5 分から 10 分ぐらい時間を取ります)。 ・ペア(二人組)をつくってジャンケン勝負の始まりです。 ・「葉っぱジャンケン」では、毎回勝敗を決めるテーマを進行役が 発表します。例えば、一番大きな葉っぱ勝負、葉の縁にギザギザ がたくさんある葉っぱ勝負・・などなど。 ・相手に見せないように、勝てそうな葉を 1 枚選んで、「はっぱっ ぱ!」の合図とともに前に出します。 時 間:約 30 分 扱われる基本概念:多様性 関連する教科:生活科、理科、総合的 な学習の時間 「さあ、次のテーマは一番分厚い葉っぱ勝負です・・ 準備 はいいですか? それでは大きな声で『はっぱっぱ!』・・」 ・与えられたテーマに、より特徴が合っている方が勝ちです。勝っ たら相手の葉をもらいます。引き分けの場合、勝負に使った葉っ ぱを交換します。 用 意:特になし 32 指導上の注意点:ウルシの仲間などの かぶれやすい植物などに対する安全 上の配慮が必要である。 出 典:山のふるさと村ビジターセン ター平成 12 年環境教育活動報告書(自 然教育研究センターオリジナル) 少し歩くだけでも森ではたくさんの種類の葉が見つかる(尾鈴山にて) ●活動の背景 する展開が予定されている場合は、図鑑に出ている 何気なく見ているとどれも同じように見える木の 縁のぎざぎざ)の有無、葉柄(葉の柄の部分)の長 葉の形態の特徴に注目できる課題、例えば鋸歯(周 葉も、注意深く観ると様々な特徴があり、木の種類 さなどを出題するとよい。 によって異なっている。たった 1 枚の葉でもきわ めて多面的な属性を持っている。例えば、色、形、 模様、大きさ、厚さ、手触り、柄の部分(葉柄)の その他ジャンケン勝負の課題として使えるものを 以下に挙げておく。 ・一番赤い葉 長さ、葉脈、反り具合、匂いなど、挙げればきりが ・一枚にもっともたくさんの色が含まれている葉 ないほどだ。このような属性から感じることのでき る葉の多様さは、そのまま木の多様性につながって ・細長い葉っぱ いる。 ・たくさん毛が生えている葉 葉っぱジャンケンは、自然の中での活動への導入 ・もっとも虫食いが多い葉 として楽しい活動であると同時に、自然の多様性を ・もっとも早く土に戻りそうな葉 実感したり、植物を識別する視点を体験的に学ぶた ・食べて美味しそうな葉 めにたいへん優れた活動である。この活動から様々 ・葉脈が複雑な葉 な展開が可能である。状況に合わせてねらいを設定 し有効に展開していきたい。 ・つるつるした葉 ●バリエーション例 ・匂いの強い葉 ・形が複雑な葉 ・トイレ草(トイレットペーパーの代わりに使用す 「葉っぱジャンケン」で用いるジャンケン勝負の る)としてもっとも有用な葉 課題は、その後の展開の伏線であることを意識して ・香りのよい草 出題したい。例えば、葉から植物の種名を調べたり 33 葉柄(葉の柄の部分)が長い順にならべている。 ●プログラムの展開 1:遊びを通した自 に着目して葉をグループ分けしたり、何かの基準 で順番に並べてみるように促す。 然観察 「葉っぱジャンケンで葉のいろいろな特徴を見 てきましたが、そのような葉の特徴のどれかに 「葉っぱのラインナップ」 注目して、目の前にある葉をグループ分けした 「葉っぱジャンケン」の活動において、参加者は り、1つの基準で順番に並べてみたりしてみて 葉を様々な角度から観察し、葉がいろいろな特徴を ください。まずは相談しながらいくつか試して 持っていることを体験している。これをさらに進め みましょう。面白いのができたら他のグループ て葉をグループ分けしたり、順番に並べてみるのが に見てもらいますので、そのままにしておいて 「葉っぱのラインナップ」である。並べることで、 ください。何の特徴で並べたかを他のグループ さらに葉の多様さに気づくだろう。また、特定の属 性に着目してグループ分けしたり、序列を付ける行 為は自然科学の基本的な手法の一つであり、参加者 の人に当ててもらいます・・」 ・各グループのところを全員で見に行き、どんな基 準で並べたか考える。 は遊びを通じてオーソドックスな自然観察の過程を 体験することになる。 本活動で葉を並べて見る際、葉の特徴が見やす 概要: いように野外テーブルやベンチの上などに配置する 葉の特徴のいくつかに着目して、集めた葉を分類 か、もしくは黒や白の布を下に敷くと見栄えがずっ したり、順番に並べてみる。 とよくなる。 進め方: ・5 ∼ 7 人のグループを作り、メンバーの持ってい ●プログラムの展開 2:自然について学 る葉を 1 つに集める。1 人 5 枚の葉を持っている ぶ理科的な展開 場合、6 人グループだと 30 枚の葉があることに なる。 「葉っぱジャンケン」によって、葉の特徴を観察 ・グループで相談しながら、葉の持つ特徴の一つに しているので、以下のような理科の学習への展開は 34 非常にスムーズにできるものと思われる。 ・常緑樹と落葉樹の違い * ・針葉樹と広葉樹の違い ・周辺にある木の種類調べ (→こすりだし葉っぱ 図鑑) 例えば、校内にある木の種類を調べる活動を行う 前に、校庭において葉っぱジャンケンを行い、集め た葉から、校内の木の種類を調べていくという展開 が考えられる。そのような場合、44 ページの「こ すりだし葉っぱ図鑑」につなげてもよいだろう。 * 常緑樹は落葉しないというように理解しがちなので注意 したい。冬に全ての葉を落とす落葉樹に対し、常緑樹は 一年中葉が付いているが、葉は更新される。 35 5. 葉っぱでアート 葉を使い、葉の形や色を生かした創作活動に取り組みます。 ねらい: ・葉にはいろいろな形や色があることに気がつきます。 ・自然の素材で遊ぶ楽しさを知ります。 進め方: ・形や色に特徴のある葉を 1 枚用意し、葉を何か(例えば動物など) に見立てることができないかを質問します。 「この葉っぱ、じっと見ていると、何か別のものに見えてき ませんか? 例えば私には、キツネの顔に見えるのだけれ ど・・」 ・何か別のものに見立てることのできる葉や面白い形の葉っぱを 集めてきてもらいます。 用 意:画用紙、のり、クレヨン、絵 の具など 時 間:約 30 分 ・葉っぱの形を活かしながら、画用紙の上に自由に並べて貼り付 けます(クレヨンや絵の具で絵を描き足しても構いません)。 ・でき上がった作品にタイトルを付けて、全員の作品が見えるよ うに並べ「展覧会」を行います。 扱われる基本概念:多様性 関連する教科:生活科、図画工作、総 合的な学習の時間 指導上の注意点:ウルシの仲間などの かぶれやすい植物などに対する安全 ・各自、作品を紹介し、葉っぱで遊んで気づいたこと、工夫した 点などを発表します。 上の配慮が必要である。 出 典:山のふるさと村ビジターセン ター平成 11 年環境教育活動報告書(自 然教育研究センターオリジナル) 36 ●活動の背景 ●バリエーション例 1:いろいろな作品 本活動は前述の「葉っぱジャンケン」と同様に、 葉の色や形の多様性に着目した活動であるが、児童・ 生徒自身が、自ら創ったり表現したりする要素が中 作りの課題 葉を材料にした作品づくりは画用紙に貼り付ける 以外にも様々な課題の設定が考えられる。特に、野 心になっている点が異なる。表現する活動はゲーム 外において材料を採集して作品づくりまで行う場 的な活動以上に個人の主体性を引き出す効果が期待 合、葉が湿っていたり、逆に乾燥しすぎたりしてい できる。そのような位置付けで実施する場合、作品 て、貼り付けるには適さない場合がある。そのよう としての出来映えよりも、それぞれが楽しんで取り な場合、画用紙に貼るよりも、作品の保存を考えず 組めるようにすることに配慮したい。 にその場で完結してしまう手法の方が適している。 課題の設定は参加者の年齢や実施環境等によって 「お面作り」 工夫することが望まれる。左ページで紹介した活動 は「お絵かき」が好きな年代(小学校低学年など) には楽しく実施できるだろう。 ホオノキ、トチノキ、ヤツデ、インドゴムノキな ど大きい葉がある場合、お面を作る活動は子どもの また樹木や葉に関する学習の導入としても実施可 関心を引きつけやすい。目の部分に穴を開けて、お 能である。例えば、それぞれの作品に使用した葉が 何の樹木の葉かを調べるなどの展開が考えられる。 森林や木をテーマにしたプログラムを継続的に実施 面のまわりに葉っぱで装飾をする。工夫次第で色を 塗ったり、または目玉シール(丸いシールにマジッ クで目を描いたもの)を貼ってもいい。 する場合、学習活動の進行に伴って、教室の壁に木 の絵や、葉の標本などが掲示されていくと視覚的に 「地上に絵を描く」 面白い。 地面をキャンバスに見立てて、葉などを使って絵 なお、葉を使った表現活動は、葉が色づく秋が最 を描く。最初に枝などで額縁を作ってから取り組む も適している。また、常緑の葉ばかりだと彩りに乏 とやりやすい。生き物、風景、今日見たもの・ ・など、 しく、硬くて利用しにくいので、ある程度落葉樹が 絵のテーマを提示してもよい。個人作業にしてもよ 混ざっているようなフィールドが望まれる。 基本的には落ち葉を利用するとよいが、生の葉を 使う場合は、取りすぎないように注意が必要であろ う。 また、作品として残すのであれば、落ち葉を古新 聞や古雑誌等に挟んで 1 ∼ 2 日押して乾燥させて から使用するとよい。拾ったその場で作ることもで きるが、乾燥に伴って縮んだり変色するなどして保 存性はよくない。 37 いし、キャンバスを大きくして2∼4人ぐらいのグ ・葉を貼り付けたい場所に木工用ボンドをぬる。 ループでの共同作業として行うこともできる。創っ ・下絵の上に、握りつぶして細かくした葉っぱを絵 た作品を持ち帰ることはできないが、写真などで記 録しておくとよいだろう。 「葉っぱステンドグラス∼雨天時の活動」 雨天時には、雨で濡れた窓ガラスを利用して葉を 使った表現活動を実施することができる。 進め方: ・外から濡れた葉を拾ってくる。 が隠れる程度にかぶせる。 ・葉っぱを軽く押さえ余分な葉っぱを落とす。 ・色の違う葉を絵の具のように使い分けて、表現す る。 ・作品の発表。 ・ふりかえり、わかちあい。 「葉っぱステンシル」 ・窓ガラスをキャンバスに見立て、葉っぱを貼り付 概要: けていく。模様を作ってもよい。 葉をステンシル(模様を刷り出すための型)とし ・窓ガラスの光に透かされた葉っぱを一歩ひいて眺 て使い、葉の形を生かした絵を描く。 めてみる。 ・作品にタイトルを付けよう。 ・気づいたこと、新しい発見について発表しあう。 常緑樹の葉は厚みがあり硬いため、窓ガラスに貼 り付きにくい。薄い葉っぱを探すように促してもよ 進め方: ・好きな形の葉を拾ってくる。 ・ハガキや画用紙などの上に葉っぱを糊またはセロ ハンテープで仮止めする。 ・葉っぱの周囲を絵の具で縁取るように彩色する(ス ポンジや、ブラシと目の細かい網を利用するとよ いし、うまく貼り付く葉、貼り付かない葉の違いに ついて取り上げて、葉をテーマにした学習につなげ ることもできるだろう。 「葉っぱのちぎり絵」 概要: 乾燥した落ち葉を細かく砕き、それを画材として い) 。 ・紙から葉をはがすと、縁取られた形だけが現れる。 ・現れた形を活かしながら、絵の具やクレヨン等で 絵を描く。 ・出来上がった作品の「展覧会」 。 ・ふりかえり、わかちあい。 「ちぎり絵」をつくる。 進め方: ・画材として使用する葉を拾い集めて乾燥させてお 「作品発表の方法」 野外で作成し作品発表まで行う場合、発表の方 く(落葉樹の方が適している)。 法にも工夫したい。例えば麻ひもと木製の洗濯ば ・画用紙に鉛筆で絵の下書きをする(下絵は大まか さみなどを用意しておくと、木と木の間にひもを なものにする)。 38 張り、絵を洗濯ばさみでぶら下げて即席の展示場 ・地域の草花遊びについて、身近な大人や年配の人 所を作ることができる。野外に効果的に展示する に取材してみよう。 ことによって作品をより引き立たせることができ ・周辺の自然に出かけ、実際に遊びを試してみよう。 るだろう。 ・調べたこと、試してみたこと、不思議に思ったこ 発表の際は、工夫した点や、表現しようと思っ と等について、記録をまとめて発表しよう。 たことなど、作者に一言ずつコメントをもらうと よい。 ●プログラムの展開「草花あそび」 ∼生活科・総合学習的な展開 現代の子どもに比べると、昔の子ども達は自 然の中で遊ぶ機会が多く、ごく普通に葉っぱや草 花などの自然素材を使って遊んでいた。笹の葉で 舟を作ったり、松葉やオオバコで相撲をしたりと いった昔ながらの自然素材での遊びは「草花あそ び」などの名称で呼ばれている。今の子どもたち は「草花あそび」の経験がどれくらいあるのだろ うか? 本項で紹介した、葉を使った活動も広い 意味で草花遊びの範疇に入るだろう。これをきっ かけにして、地域に昔から伝わる「草花あそび」 へと展開していくことはたいへん意義があると思 われる。素朴な自然体験としてだけでなく、地域 の人と自然とどのように関わってきたかについて 学ぶきっかけになったり、遊びの伝授を通じて異 世代が交流する機会を創っていくことができる。 「『草花あそび』をテーマにした調べ学習のア イデア」 ・知っている、またはやったことのある草花あそび について、友だちと話し合ってみよう。 ・図書館や資料館などで、草花遊びについて調べて みよう。 39 6. 葉っぱでお絵かき 植物の葉や実などを絵の具として利用してお絵かきを楽しみます ねらい: ・自然の素材を使って楽しく遊びます。 ・植物がさまざまな色を持っていることに気がつきます。 進め方: ・自然の絵の具を使って絵を描く方法を説明します。 「これからお絵かきを始めます。絵の具がないって? 絵の 具は自然の中から探してきます・・」 用 意:クリップボード、画用紙(小 ・周りにある雑草の葉などを手で少し揉んで、画用紙に擦りつけ、 色が付く様子を見せるとよいでしょう。 さい物)、ぬれタオルやハンカチ、鉛 筆など。 時 間:30 分∼ 1 時間 「葉っぱでも、種類が違えば色が違いますよ。植物の実や土 なども色が出るかもしれません・・」 扱われる基本概念:多様性 関連する教科:図画工作、理科、生活科、 総合的な学習の時間 注意点:雑草が多いところなど、植物 ・色見本を作ります。 「まずは、この周りから色が出そうなものを取ってきて、色 見本を作りましょう。」 を採集しても影響がない場所を選ぶと ともに、採集をする際の注意点を事前 に伝える事。一箇所から大量に取らず ・色見本を参考にしながら、自然の絵の具で絵を描きます。 ・作品を並べて、わかちあいとふりかえり。どんな材料からよい 色が出たかや、気が付いた事、感想などを発表します。 ・時間があれば、図鑑で植物の名前を調べて、色見本を完成させ ます。 40 に必要な分を少量だけちぎることや、 道路に散らかさないことなど。また、 有毒な物などもあるので口に入らない ように注意する事。 出 典:山のふるさと村ビジターセン ター平成 12 年環境教育活動報告書 ●活動の背景 「葉っぱで絵手紙」 子ども達が植物を探したり、手にとってつぶした 概要: り、手に汁を付けたりすることによって、植物の瑞々 植物の汁を使って身近なものや風景を写生し、筆 しさや色の豊かさなどを感じる原体験の機会になる ペンで言葉を添えて、絵手紙風に仕上げる。 事を期待して活動を行いたい。 進め方: 植物の汁を紙にこすり付けてみると、予想した色 ・野外または屋内の決められた範囲内で、写生する とは違う色が出たり、同じような葉であっても種類 モチーフを決める。 が違うと微妙な違いがあって面白い。また実や花で ・ 「葉っぱでお絵かき」と同様に、身近に生えてい は、鮮やかな見た目に反してそれほど色が出ないも る植物などを使い絵を描く。ただし、文字を書く のもある。自分で試してみるまで結果が分からない 余白を少し残しておくように指示する。紙はハガ という面白さがこの活動には含まれる。活動中は作 キ大の物を使う。 品の出来栄えや色を上手く出せたかということより も、児童・生徒自身が主体的にいろいろ試したり、 工夫をしているかを大切にしたい。 絵手紙が全国的に普及するきっかけを創った人物 と知られる小池邦夫氏は、 「下手でいい、下手がいい」 を絵手紙のモットーとして紹介している。上手い、 葉などで描いた絵は意外に保存性がよく、教室の 壁などに掲示しても極端に色があせたりはしない。 発色がよく、見栄えのする材料としては、ヨモギの 下手にこだわらずにのびのび描く事が面白さにつな がるということであろう。児童・生徒がのびのびと お絵かきを楽しめるように言葉かけを行いたい。 葉(緑)、タケニグサの果実(オレンジ色) 、クワや ・筆ペンを使って余白に言葉を書く。 ヨウシュヤマゴボウの果実(紫)、ツツジの花(ピ 言葉は絵のモチーフを説明したものである必要は ンク)、ツユクサの花(青)、アサガオの花などがあ ない。その日の自然体験の印象や、自分のモットー、 る。そのような材料が豊富な場所を選んで実施する だれかへのメッセージなど、自由に書く。むしろ絵 とよいだろう。 との間にギャップがあった方が面白い場合が多い。 古くから植物や土は染料として人の生活に利用さ ・完成した作品を並べ展覧会を行ない、自慢の色や れており、自然物の利用について学ぶ際の導入とし 工夫した点を発表しあう。 てもよいだろう。 なお、自然物を消費する事なども考慮に入れて、 画用紙は小さめの物を利用するとよいだろう。例え ・切手を貼って誰かに送ろう。 「ステンドグラス塗り絵」 ばハガキ大の画用紙などが売られている。 概要: ●バリエーション例 光の透けるトレーシングペーパーの塗り絵を用意 し、葉などを絵の具の代わりにしてぬり絵をする。 自然の絵の具を使って絵を描く手法を使って創る 進め方: 作品を「絵手紙」風にしたり、「塗り絵」するなど ・下絵を厚手のトレーシングペーパーに印刷したも のバリエーションが考えられる。 41 のを用意しておく(あまり複雑な下絵にしないほ うがステンドグラスらしくなる)。次ページは例。 ・トレーシングペーパーに植物の色を自由につけて いく。 ・完成したら太陽に透かしてみたり、透明な窓に貼 り付けたりしてみよう。 出典: 「葉っぱで絵手紙」および「ステンドグラス塗り絵」:自然 教育研究センターオリジナル。 42 ステンドグラス塗り絵図案例:これを少し厚めの トレーシングペーパーにコピーする。 43 7. こすりだし葉っぱ図鑑 こすりだし(フロッタージュ)の手法を使って、オリジナルの葉っ ぱ図鑑を作る活動です。 ねらい: ・葉の形や葉脈のパターンには様々な種類がある事に気づきます。 ・活動するエリアにある代表的な木(葉)を確認します。 進め方: ・校庭や公園でよく目にする木の葉を 1 枚思い出しながら紙に描 いてみます。 ※案外細かい形を覚えていないことに気づかせ、野外で実際に葉っ ぱを観察することの動機付けをします。 ・こすりだしの仕方を説明します(コインなどで練習してもよい)。 ・いろいろな葉っぱを探して、ワークシート「葉っぱ図鑑」の六 つのマスに、こすりだしをして来ます。 用 意:紙、ワークシート、色鉛筆等、 クリップボード、ハサミ、図鑑 「いろいろな形の葉っぱを見つけて、校庭の木の葉っぱ図鑑 を作りましょう・・」 時 間:30 分∼ 1 時間 扱われる基本概念:多様性 関連する教科:図画工作、理科、生活科、 ・ワークシートを折って「ミニブック」の図鑑をつくります。 ・皆で見せあいながら、一番お気に入りの葉についてや、発見し たことなどについて話しあいます(わかちあい・ふりかえり)。 ・時間があれば図鑑を使って、葉の特徴から木の名前を調べてみ ましょう。 44 総合的な学習の時間 注意点:葉をむしらずに、落ち葉か、 木についたままでこすり出しするよう に伝えます。 出 典:山のふるさと村ビジターセン ター平成 12 年環境教育活動報告書 ミニブックの作り方 ●活動の背景 ●バリエーション例 本活動は、観察した記録が資料として残る点で、 本活動は様々に変形することができる。 葉を題材にした他の活動と異なっている。 「こすり 「1 枚の紙に 1 枚の葉をこすりだす」 だし(フロッタージュ)」の手法は、絵を描くこと に苦手意識を持つ人でも気楽に取り組める点や、短 ミニブックは、1 枚のシートから小冊子を作るこ 時間で正確に記録できる点がスケッチより優れてい とができるので、持ち物が簡素になることに加え、 る(逆に対象をよく観る要素は少なくなる) 。校庭 児童・生徒が楽しく作業を進めることに効果的であ や公園など特定のエリアの中にある木々を観察して る。一方で、大きな葉の場合はスペースに収まらな 記録を残したい場合などに特に適しているだろう。 いという欠点もある。紙のサイズを A3 などに拡大 本活動そのものは、ゲーム的に実施することができ する方法もあるが、紙がクリップボードより大き るが、「こすりだし」をした葉の種名を図鑑で調べ いと児童・生徒にとっては扱いにくい。大きな葉 たり、葉以外の特徴を書き込んだりすることによっ が多い場所で実施する際や、それぞれの木について て、実施場所の代表的な木の葉っぱ図鑑が容易にで 丁寧に観察し、こすりだし以外の記録も紙上に残し きあがる。そこからさらに別のテーマの学習に展開 たい場合などは、ミニブック方式をやめて、B5 程 していくことができるだろう。 度の紙 1 枚に葉 1 枚をこすりだすようにしてもよ こすりだしの方法は少し丁寧に教えるとよい。画 いだろう。その際、柔らかい紙(厚めの半紙など) 材としては、鉛筆、色鉛筆、クレヨンなどが利用で の方が綺麗にこすり出せるので、色々な紙を試して きる。こつとしてはできるだけ鉛筆等を寝かせて、 みたい。 芯を広く当て、薄く均一に塗ることである。株式会 社サクラクレパスから発売されている「クーピーペ 「木の幹のこすり出し図鑑」 ンシル」は全体が芯でできているため、こすりだし こすりだしの手法を使った記録に適している他の には非常に適しているので勧めたい。 題材としては木の幹の模様がある。幹の模様にも 45 様々なパターンがあって興味深い。作業の過程で 樹皮にも個性があることに気づくだろう。ただし、 葉よりは少し作業が難しい。時間をかけて実施す るなら、次のような方法もある。 ・半紙のような薄手の紙を水でぬらし、紙を幹に押 し付ける。 ・その上から、インクを含ませたテッシュペーパー (または脱脂綿)をたたくようにして色を付ける。 ・やぶれないように紙をはがし乾かす。 「こすりだしでお絵かき」 こすり出しの手法を使って、自由な「お絵かき」 を楽しむこともできる。葉や幹、石などの形やパ ターンを利用して好きな絵を描いても楽しい。葉の 場合、葉脈がはっきりした葉は特に面白い模様が出 るので、児童・生徒が楽しんで取り組めるように促 したい。 46 ワークシート例 48 木と仲よくなろう 児童・生徒が森林を理解しようとするとき 1 本 1 本 の木は、森林の構成要素の一つとして、また長い時間 的な感覚を感じるスケールの一つとして、児童・生徒 の理解を助ける重要な役割をします。このカテゴリー の活動では、「木」そのものを題材に、自然観察や表現 活動を行います。1 本の木から様々な情報を引き出した り、想像力を働かせて木を擬人化したり、木を通して 森林を身近に感じていきます。 49 8. 木の身体検査 1 本の木を題材にして、森林の専門家と同じように木の高さや 太さなどについて調べます。 ねらい ・様々な角度から木を調べ、大きさを実感します。 進め方 ・二人∼数人のグループで、調べたい 1 本の木を選びます。 ・自分たちの体を「ものさし」として使って木の大きさを測るので、 まず自分たちの背の高さ、腕の長さ、指の長さ、歩幅などを調べ、 「からだのものさしワークシート」に記入します。 ・誰かが木の横に立ち、その人の身長を「ものさし」にして木の 高さを測ります。 用 意:ワークシート、筆記具、クリッ プボード、巻尺 時 間:1 時間∼ 2 時間 扱われる基本概念:変化・時間、つな がり 関連する教科:算数、理科、総合的な ・自分の腕や指の長さを「ものさし」にして幹周り(円周)を測 学習の時間 指導上の注意点: ります。 巨樹などは保護されている場合があ ・歩幅を使って枝の広がりの幅を測ります。 ・記録を「木の身体検査ワークシート」にまとめます。 ・調べるときに気がついたことや感じたことを発表し合います。 50 る。危険箇所の調査を含めて事前に下 見をしたい。 出 典:自然観察の手法として古くか ら行われている。 からだ の ものさし ワークシート ●活動の背景 専門家が森林を調査する際、基礎データとして のものさしを使うことによって木と自分の大きさを 標準となる木や特定のエリア内のすべての木につい 比べて実感すること、木に直接触れる機会を持つこ て、木の高さ(樹高)や太さ(胸高直径)などの測 とをねらっている。 定を行う。それによって森林の状態や資源量を把握 また、この活動では簡単な算数の計算や長さの単 することができる。 位が出てくるので、学年により算数の授業に合わせ 本活動は、専門家の調査と同じような調査項目に て実施するとよい。教室で習った算数をフィールド ついて、児童・生徒自身が「体のものさし」を使っ で実際に活用することは、算数の理解にも貢献する て木を測定する活動である。その過程でじっくり木 だろう。 を観察し、木に親しみを持つこと、さらに自分の体 51 しんたいけんさ 木の身体検査ワークシート ●バリエーション例 木の高さや太さの測定にはいろいろなバリエー ションが考えられる。 「木の高さを測る」 専門家の調査の場合、オーソドックスな手法とし て、木の横にポールを立てて、離れたところからポー ※硬い三角定規を目に近づけると危険なので、紙を ルを基準にして木の高さを推定する方法がある。こ 使うこと。 のポールを身長に置き換え、木の横に誰かが立ち、 ※正確に出す場合は、地面から目までの高さをたす 必要がある。 その人の身長で何人分かを離れたところから観察し て計算で木の高さを算出させるとよいだろう。 算数で二等辺三角形や角度について学習する学年 から最も遠い枝先の下に人を立たせ、距離を歩幅で (小学校4年)であるならば、垂直二等辺三角形を 測るとよいだろう。枝の広がりが測れたら、そこか 使用して測定する方法(図参照)も実施できる。 ら 1 本の木の枝が広がっている面積を算出するの も面白い。 「木の太さを測る」 枝が広がっている面積 専門家の調査では通常、胸高直径 * として地面から = 枝の広がりの半径 枝の広がりの半径 1.2m の高さの場所の直径を測定する。児童・生徒 円周率 木の太さや枝の広がりは、データの正確さを重視 の場合は、目の高さぐらいの場所にするとよい。本 するなら巻き尺を使ってもよい。 活動のワークシートでは幹周りの長さ(円周)にし てあるが、円周率を学習する小学校5年以上であれ ●プログラムの展開 1:木を再現する ば幹周りの長さから直径を算出してもよいだろう。 直径 = 幹周りの長さ 円周率(3 もしくは 3.14) 基本的な活動として測定項目に挙げた木の高さ、 太さ、枝の広がりに加えて、木のラフスケッチを描 「枝の広がりの幅を測る」 いておくと、学校に帰ってから調査した木を絵とし て再現することができる。1 本の木について時間を 枝の広がりの長さは樹幹幅(じゅかんはば)と呼 ばれ、正確には一番長い部分と短い部分の径を計り、 足して 2 で割って算出する。上を見上げながら幹 かけて学習を深めていく場合では、題材としている 木の絵を記録することには大きな意味がある。 「方眼紙に木をスケッチする」 * 胸高直径(きょうこうちょっけい) :通常幹の太さを測る 概要: 場合、地面(斜面の場合山側)から 1.2m の高さの直径 調べてきた木の絵を方眼紙に描いてみる。 を測定し、これを胸高直径とする。 53 図:1 本の木の葉の総数を求める このようなワークシートを配布するとよいだろう。 ●プログラムの展開 2:葉っぱの数を推 進め方: 定する ・樹高と幹の太さ、枝の広がりは実測しているので、 そのデータを利用する。あとはラフスケッチを参 いったい 1 本の木には何枚ぐらいの葉がついて 考に思い出しながら木の絵を描こう。 いるのだろうか? この質問を自然好きの大人にし ・木が描けたら、スケールとして自分の姿も描き入 てみても自信のある答えが返ってくることはまず無 れよう。 い。想像した数字を聞いてみると、答える人によっ て4桁ぐらいの幅で違っていたりする。木の大きさ 「教室で木を再現する」 測定の発展として、葉の数を考えてみよう。葉の枚 巨樹を調査してきたような場合は、実物大で再現 数をすべて数えることは困難だが、計算によってだ してみたい。それによって木の大きさを改めて実感 いたいの数を推定することはできる。ここから先は することができるだろう。次のようなアイデアが考 計算が複雑なのでどちらかというと高学年向けにな えられる。 る。 ・幹の太さをヒモで再現する:麻ヒモや紙テープな どを木の幹周りと同じ長さに切り、幹の太さを教 「1 本の木に葉は何枚あるか?」 室の床や壁に再現してみよう。 概要: ・幹の太さや木の高さ、枝の広がりを、手をつない 手分けをして 1 本の木に付いている葉の数を算 で再現する:子ども達の手の長さを足し算し、手 出してみる。 をつないで木の幹の太さや高さを表現してみよ う。 ・校庭の地面の上に実物大の木の絵を描いてみよう。 進め方: ・木を前にして葉の数を想像してもらう。 (メモを 取っておく) 54 図:葉の面積の求め方(例) 計算可能かどうか十分に下見したい。あまり巨大 「この木には一体どれぐらいの数の葉っぱがつ な木は数えるのがたいへんである。また低木の場 いていると思う? 想像してみてください・・」 合、幹と枝がはっきりしないのでかえって数えに 「全部数えるのはたいへんだけれど、手分けを くい。シラカシやユズリハ、ケヤキ、ヤマモモな すれば計算で予測することができます・・・」 どは比較的数えやすい。 ・6 人から9人ぐらいの調査チームを作る。 ※どれを大枝、 小枝とするかが一番難しい。木によっ ・手順の説明。木の枝を「大枝」と「小枝」に分け て具体的に、 「大枝は腕(足)の太さぐらい」 、 「小 て考え、分担して数を調べ、最後にかけ算で推定 枝は親指の太さぐらい」などと分かりやすいよう の葉の総数を算出する(前ページの図参照) 。 に表現を工夫したい。 ・チームを3つの担当に分ける(一つの担当が 2 ∼ 3 人)。担当は以下の通り。 「葉の面積はどれくらい?」 1. 大枝の数を数える 「1 本の木に葉は何枚あるか?」をさらに発展さ 2.1 本の大枝から生えている小枝の数を数える せて、すべての葉の面積を足すとどれくらいの広さ (数本の大枝について調べ平均する)。 になるのかを考えても面白い。葉は太陽の光を受け 3.1 本の小枝に付いている葉の数を数える(数本 て栄養を作り出す。また葉は雨のしずくを受けとめ の小枝について調べ平均する)。 たり表面から水分を放出(蒸散)している。1 本の 木がどれくらいの面積で太陽光や雨を捕まえている ・それぞれの数値を掛け合わせて葉の総数を算出す のか。それは、樹冠(枝の広がり)が占めている面 る。 葉の総数 = 大枝 小枝(平均) 葉の数(平均) ・想像した数と比べてみよう。 積と比べるとどれくらいの広さなのだろう? 進め方: ・1 枚の葉の面積を計算する。大小いくつかの葉に ※人数が多いと混乱するので、各担当について 2 ついて計算し平均するとよい。計算の仕方は葉の ∼ 3 人(したがって 1 グループ 6 ∼ 9 人)で実 形によって工夫してみよう(上図参照) 。 施するとよいだろう。 ・ 「1 本の木に葉は何枚あるか?」で求めた葉の総 ※木によって数えにくいものがあるので、指導者は 55 数のデータを使って、葉の総面積を計算する。例 えば、1 枚の葉が 10 平方センチメートルで、葉 の総数が 3 万枚の場合は次のようになる。 10 平方センチメートル 30000 枚 = 300000 平方センチメートル = 30 平方メートル ・1 本の木の枝の広がりが占めている面積を計算し て、葉の総面積と比べてみよう。 ・これらの数字からいろいろなことを想像してみ る。 - 葉は何の役に立っているのか? - 落葉樹では毎年すべての葉が落ちる。葉はどこに 行くのか? - すべての葉の重さはどれくらいになるのか? - 枝の広がりが占めている面積にくらべ、葉の面積 が大きいのはなぜか? - 木の種類によってどのような違いがあるだろう か? 出典:「1 本の木に何枚の葉があるか?」、「葉の面積はど れくらい?」は自然教育研究センターオリジナルプログ ラム(原案:田畑伊織)。 56 57 9. 木のプロフィール 1 本の木を題材にいろいろいな視点から自然観察を行い模造紙 等にまとめる活動です。 ねらい: ・木の特徴をよく観察することを通して、木の個性や環境との関係、 他の生物との関わりなどに気づきます。 進め方: ・観察の項目が書かれた課題シートと、記録のための紙(ワークシー トやカード)を配布します。 「気に入った木を 1 本選んで、その木のことをよく調べて みましょう。あとでその木をみんなに紹介してもらいます。 お友だちや家族のことを紹介するには、まずその人のこと をよく知らなくてはいけませんね。木も同じです・・・」 ・校庭や公園等で、1 本の木を選びます。学習の計画に合わせて、 観察しやすい木、学ぶ素材の多い木を指導者が選んでもよいで しょう。 用 意:ワークシート、筆記具、クリッ プボード 時 間:1 時間∼ 2 時間 扱われる基本概念:変化・時間、つな がり 関連する教科:理科、総合的な学習の 時間 ・課題シートに沿って、観察やスケッチをします(二人∼数人の 指導上の注意点: 有毒な生物などに注意。 グループワークがよいでしょう)。 ・記録したスケッチやワークシートなどを模造紙に貼ってまとめ ます。 58 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル きょう やること リスト □画用紙に木の全体をスケッチする。 □葉をスケッチする(こすりだしでも OK)。 □花や実がついていないか探して、あればス ケッチする。 (木の下に花や実が落ちていないかな?) □幹を手で触って、手触りを言葉で表現してみ よう。 □木に何か別の生きものが住んでいないか、訪 れていないか調べてスケッチする。 (昆虫、鳥、他の植物、キノコなど) □木に名前を付けてみよう。 □時間が残ったら本当の名前を調べてみよう。 課題シートの例 59 ワークシート例 写真上:樹冠を見上げてみると・・(尾鈴 山にて) 写真下:ヤマウルシを高いところから見下 ろしている。葉が重ならないように放 射状に広がっている。 ●活動の背景 「木の身体検査」では、木の大きさや葉の数など の観点から木を調べたが、本活動では木の種類ごと に異なっている葉、花、樹皮などの特徴、そして木 と環境の関係や、他の生物との関係を主なテーマと する。 毎日そばを通って見ている校庭の木であっても、 細かい特徴までは見ていないことがほとんどであろ う。1 本の木の個性について詳細に調べることは、 色々な木を見るときの比較対象を手に入れることで もある。さらに一度調べた木を違う季節に観察すれ ば季節変化をはっきりと感じることができる。 森の中にある木は、環境や他の生物とかかわりな がら生きている。隣り合う木とは樹冠部分で光を奪 い合っているし、木の枝や幹にはシダ植物などが着 生したり、つる植物が巻き付いていることが多い。 る。課題のバリエーションとしては次のようなもの 花や実には昆虫や野鳥が訪れたり、枝には虫が卵 が考えられる。 を産み付けているかもしれない。弱った木にはキ 「違った角度から観る」 ノコが生え始めていることもあるだろう。道脇の 木では根元を人が歩くことによって土壌が踏み固め 木を観察する際、観る角度を変えてみるように促 られ、根が露出してしまっていることもしばしばで すと、新しい発見が得られる場合がある。 ある。木の個性を知るのと同時に、このような周辺 ・見上げる:木の下に立って樹冠を見上げると、枝 の環境や他生物との関わりにも気づかせたい。 の水平的な広がりや、隣の木との関係が見えてく スケッチをすることは、自然観察の重要な手法の 一つである。絵を描くことの目的は、 「よく観ること」 と「記録する」ことである。低い年齢層の活動では、 特に前者が重要である。上手い下手よりも、よく観 る。樹木が十分に成長した森では、隣り合う木の 枝が重なり合わずに光を分け合っている様子が観 察できる(写真上) 。 ・見下ろす:橋の上や屋上などの高いところから木 て描いているかを重要視したい。 を見下ろしてみると、木の葉が効率よく光を受け られように、枝の長さや向きをうまく調整して広 ●バリエーション例:課題の設定 げているのを観察することができる。これは本活 動とは別に、アカメガシワやヤマウルシ、モミな 課題シートに示す項目は、学年によって適宜内容 どの幼樹で観察してみると面白い(写真下) 。 を調整する必要がある。前々ページの図は一例であ 61 「五感をはたらかせる」 項目を含めたい。課題シートの例に示したものの他 に次のような観察の視点が考えられる。 「感性のとびらを開く」のカテゴリーで示したよ - 木の幹に昆虫や昆虫の卵などがついていないか。 うな、感性をはたらかせる活動を先に実施せずに本 活動に取り組む場合は、スケッチなどといっしょに - 木の根元に何か住んでいないか。 五感をはたらかせる課題を入れるとよいだろう。例 - 落ち葉の下に何か住んでいないか。 えば次のような項目が考えられる。 - 木に生きものが住み着きそうな穴はないか。 - 葉を揉んで匂いを嗅ぐ。 - 葉には何かに食べられた痕はないか。 - 幹の匂いを嗅ぐ。 - 木の下に、動物の糞や、餌を食べた痕がないか。 - 葉の色を記録する。 - キノコは出ていないか。 - 幹の手触りを言葉で表現する。 - 何かに生長をじゃまされていないか。 - 葉の手触りを言葉で表現する。 これらの視点から気が付くことのできる他の生物 - 耳を澄ませて木の周りの音を聴く。 との関係には、食物連鎖関係や、種子散布、花粉の - 木の幹を触って温度を感じる。 媒介といった様々な自然の仕組みが含まれている。 本活動において全てを扱うことはできないが、子ど も達自身が発見した事柄や、不思議に感じた事柄を 「こすりだし(フロッタージュ)の活用」 適宜次の学習へとつなげていきたい。 スケッチの数を減らして作業の時間を短縮したい 場合、葉や幹については「こすりだし(フロッター ●プログラムの展開 1:植物と生きもの ジュ)」の手法が有効である。手軽に特徴を記録す の関係について学ぶ∼理科的な展開 ることができる。44 ページの「こすりだし葉っぱ 図鑑」の活動で紹介したように、こすりだしに適し 木を観察する際の課題に、他の生物との関係の視 た筆記具を用意するとよい。 点を含めた場合、植物と虫など生きもの同士の関係 に発展させるとよい。小中学生の児童・生徒にとっ 「木の下に落ちているものをみてみよう」 て理解しやすく、理科の教科でも扱われている概念 木の下に落ちている物にはさまざまな情報が隠さ としては、 「植物が昆虫などの餌やすみかとして利 れている。例えば木の実や花は、高い枝よりも木の 用されていること」 、 「植物の花粉が風や昆虫によっ 下に落ちている物の方がずっと見つけやすい。同じ て運ばれていること」などがあげられる。前者は小 木でも時期によって様々な物を落下させる。また、 学校3年、後者は小学校5年のカリキュラムから登 その木の芽生えや稚樹が見つかることもある。 「他の生物とのかかわりに気づくための課題」 場してくる。 「木と他の生きものとの関係を調べよう」 他の生物とのかかわりに気づくことは本活動の大 概要: きなねらいの一つである。課題の中にはそのための 木と生きものの関係について調べてみる。 62 進め方: ・自分たちが観察した木で観られた生きものは、な ぜそこにいたのか、木とどのような関係があるの か考えてみる。 ・それ以外に、木と他の生きものにはどんな関係が あるか考える(調べる)。 昆虫の中には、特定の種類の植物(食草)だけを 食べて成長する種類が多い。子ども達にとって、身 近なアゲハなどを例に挙げて、図鑑などで調べてみ るとよいだろう。 ・調べたことをまとめよう。発表しよう。 ●プログラムの展開 2:季節を変えて観 察する 本活動で、1 本の木の特徴をじっくり観察したこ とによって、様々な「変化」に気がつくとができる。 学校の教科に関連させて行う場合もっとも有効なの は「季節変化」に焦点を当てることであろう。小学 校4年の理科では、「動物の活動や植物の成長は季 節とかかわりがある」ことが扱われている。大きな 変化としては、開花、結実、落葉などであるが、周 りで観られる生きものも変化するだろう。またとき には台風や人によって枝が折られたりするかもしれ ない。そのようなハプニングも学習の題材としてい きたい。 「木のプロフィール、別の季節編」 進め方: ・季節を変えて、再び「木のプロフィール」を行う。 参考資料: 「20 本の木のノート」 いわさゆうこ 文化出版局 時期については、開花や落葉などのタイミングに 「どんぐりノート」 いわさゆうこ 文化出版局 うまく合うように配慮したい。 「木の本」 高森登志夫・萩原信介 福音館書店 「図解 樹木の診断と手当て 木を診る 木を読む 木と ・前回と変化していたことを探してみよう。 語る」堀大才・岩谷美苗 農文協 ・感想を話し合おう。発表しよう。 63 10.ヒストリー hisTree* 木をよく観察し、その木の過去や未来を想像してみる活動です。 ねらい: *「木の歴史」を扱うので、History の 時間的な変化を意識して木を見られるようになります。 と こ ろ を hisTree と 表 記 し て み ま し た。 進め方: ・調べる木を 1 本選びます。姿から歴史が感じられるような「気 になる木」を選ぶとよいでしょう。 ・木やその周辺をよく観察するよう促します。 「この木はどれくらい前からここに生えているのでしょう か? 木がこれまでどのように成長してきたか、これか らどうなっていくのか、この木の歴史を考えながら、よ 用 意:ワークシートもしくは画用紙 く観察してみましょう。折れた枝がありますか? 根はど など、クリップボード、クレヨンや色 んな状態ですか? 他の木や動物との関係はありそうです か?・・」 鉛筆など。 時 間:1 時間∼ 2 時間 扱われる基本概念:変化・時間、人と ・三つのグループに分かれ、それぞれ「50 年前の木の様子」、「20 年前の木の様子」、「20 年後の木の様子」を想像してみます(課 題にする年数は、木の大きさなどによって調整します)。 ・想像した木の様子を、絵と短い文章にまとめます。 ・一番遠い過去を想像したグループから、未来を想像したグルー プまで、順番に連続して発表し、 「木の歴史」を再現していきます。 ・終わったら改めて木を見て感想を言い合います。 64 自然、つながり 関連する教科:社会、図画工作、理科、 総合的な学習の時間 指導上の注意点: 危険な場所、危険性物などの確認。 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル(第 27 回インタープリタートレー ニングセミナーで発表された大島久美 子氏のアイデアを元にしています。) の想像図 ●活動の背景 「観察の仕方」 木の歴史を考えるためには、木の状態や周辺の環 自然観察において、私たちの目に映っている木 境、他の生物や人との関係などを十分に観察させる や森の現在の有り様は決して固定されたものでは ことが大事である。観察の部分をより丁寧にやるの なく、連続した変化の断片を見ているのだという理 であれば、 「木のプロフィール」や「木の身体検査」 解は重要である。現在の状態は言ってみれば「長編 映画の一コマ」を見ているに過ぎない。その前後に などの活動を組み合わせるとよいだろう。 は現在に至るまでの過去と、これから変化していく 本活動を比較的短時間の中で取り組む場合は、観 未来がつながっている。このような時間的な視点を 察よりも「想像する」ことが中心になる。その場合 持って自然をみることは環境教育においても非常に も環境や他の生物との関係についての視点を持って 大切である。 観てみることは促したい。 人の数世代に渡って生き続ける木の姿には木が過 ごしてきた時間、さらにはその木が他の生物や人間 「まとめ方」 とどのように関わってきたかといった歴史が刻み込 想像したことをまとめるスタイルとしては、前 まれている。木を観察し、木が育ってきた過程や今 ページのワークシートが標準的なフォーマットと 後を想像してみることを通して自然が時間とともに なる。個人もしくは 2 ∼ 3 人の小グループでのグ 変化していることを実感させたい。 ループワークとして取り組ませる場合は、このワー クシートをコピーして使うことができる。数人での ●バリエーション例:課題設定 グループワークの場合や、連続したプログラムとし て実施する場合は、後で教室等に掲示したときの見 栄を考えて、画用紙や模造紙などの大きな用紙を使 「想像する年代」 用した方がよいだろう。絵はクレヨンやカラーマー 児童・生徒に想像を促す年代として、その木の稚 カーなどを適宜使用させたい。まず個人でワーク 樹の時代(下草に埋もれるような小さい頃) 、ある シートに記入させ、その後にグループワークで大き 程度大きくなってからなどを取り上げたい。例のよ な紙にまとめるという手順も考えられる。 うに具体的に何年前と指定して想像させる方法の場 言葉の表現は、想像した木の状態を短い言葉で記 合は、指導者がその木のおおまかな年齢を推定して 述する方法の他、物語のナレーションのように書い 適当な年代を設定したい(例えば大きな木の場合は たり、あるいは木自身が語る台詞として書くように 200 年前から始めるなど)。また、年代ではなく「赤 指示する方法もある。このような手法により発表を ちゃんの時代」、「子どもの時代」といった設定の仕 楽しい物にすることができる。いずれにしてもうま 方も考えられる。 く例示して動機付けしたい。 66 「発表の仕方」 「木を時間的なスケールにして地域の歴史を 考える」 発表は、木の過去から未来に順番に進むように発 表者を並べ連続的に行う。グループメンバーに絵を 木の年齢を考える活動と平行して、その木が幼樹 持つ役割や言葉を読み上げる役割などを割り当てる であったころ地域がどんな時代であったか、自分の とよい。グループメンバーが体を使って演劇的に木 祖先の誰の時代だったか(おじいさん? ひいおじ を表現するような手法も考えられる。 いさん?)などについても考えてみたい。 例えば課題の出し方としては次のような方法が考 ●プログラムの展開 : 木を時間的なスケー えられる。 ルにして地域や家族の歴史を考える 次のことを調べてみよう ・ 「木」が生れた頃(例えば 100 年前)の地域はど 木の歴史を想像した後の展開として、実際に木の んな様子だっただろう?(町並みは、人々の暮ら 年齢を調べたり、木の歴史と地域や家族の歴史を関 しは・・) 地域の歴史を調べてみよう。 連させて調べていく展開が考えられる。 ・ 「木」が生れた頃、あなたの家族(先祖)はどん な様子だっただろう(誰の時代だったか、どんな 「樹齢を推定する」 暮らしをしていたのか・・) 家族の歴史を調べ 木の年齢(樹齢)を想像したり推定したりする過 てみよう。 程は子ども達の時間に対する感覚を養うよい機会と なるだろう。樹齢の推定は専門的な領域であるが、 観察の対象にした木が校庭の木や街路樹、社寺林等 ※同じように、50 年前や 50 年後を考えるように 課題を出してもよい。 左頁の活動で作成した木の歴史の想像図に、調べ の木である場合、関係者に取材をすることによって たことを並べて表現してみよう(イラスト参照) 。 樹齢が推定できるかもしれない。児童・生徒の調べ 学習として取り組むのも興味深い。 また巨樹や文化財などに指定された木の場合は、 専門家による樹齢の推定や伝承が資料に掲載されて いる。最初からそのように樹齢が推定されている木 を対象にして活動を始める方法もあるし、樹齢が紹 介されている資料を参考にして、自分たちが対象に した木について年齢を想像してみてもよいだろう。 実際の推定は木の大きさだけでなく様々な角度から の検討が必要であるが、児童・生徒の学習活動とし ては推定の正確さが必ずしも重要なわけではないの で、想像のレベルでも十分意義がある。 67 11. 変、竹林 竹の観察や工作を通じて、竹のもつさまざまな性質を見つけ出 す活動です。竹と人の関係や、現在の竹林の問題点について学ぶ きっかけをつくります。 ねらい: ・竹の植物としての特徴を体験的に学びます ・竹を人間がどのように利用してきたか、さらには竹林の問題な どについて学ぶきっかけをつくります。 進め方: ・竹林に行きます(土地所有者に了解を得ておきます)。 ※地域の方、地主さんに協力していただき、竹の話をしてもらっ てもいいでしょう。 ・何本かの竹を切り倒し、適度な長さに分割して持ち帰ります。 ・ヤスリやノコギリなどの道具を用意し竹で工作をします。 「どういう手触りがしますか? どんな香りがしますか?」 ・竹の特徴に関心を向けるような言葉かけを行い、工作中にも観 察を促します。 用 意:竹、ノコギリ、ヤスリ、ナタ、 剪定ばさみ、ボンド、小刀 時 間:1 時間∼ 2 時間 扱われる基本概念:人と自然 関連する教科:社会、図画工作、総合 的な学習の時間 指導上の注意点: ・杉などの木材と比べながら竹の特徴を書き出します。 68 刃物の使用には十分な注意が必要。 「竹の特徴」 材は・・ 生態は・・ - 木質である。 - タケノコができる。 - 生長点が節ごとにある。 - 中空である。 - 生長が早く約 2 ヶ月で生長が終わる。 - 均一な太さである。 - 地下茎でつながり、1 つの個体が広い - 材に弾力があり強靭である。 面積を占めて、(種類によっては)竹 - 繊維がそろっていて縦に割りやすい。 林をつくる。 - やわらかい。 - 開花の周期が長い(記録では、モウソ - 熱を加えると容易に曲がる。 ウ チ ク は 67 年、 マ ダ ケ で 120 年 が ある)。 その他・・ - いろいろな道具、楽器などに使われてい る。 - 草と木の中間的な性質をもっている。 - 北限は日本(笹の北限はサハリン)。 - 日 本 で は 12 属 150 種、 世 界 で は - 炭を作ることができる。 600 種類あるとも言われている。 - 消臭効果がある。 ●活動の背景 竹は加工しやすいことや適度な弾力を持つこと る。 など材料として優れた特性を持つことから、農器具 竹は、地下茎(ちかけい)と呼ばれる地中を這う や生活のための道具、あるいは遊具の素材、さらに 太い茎を持ち、四方に広がる地下茎からタケノコを は食用等として多用途に利用されてきた。そのため 出す。そのため、地上の環境に関係なく地面から出 人々の生活の場には竹林が維持されて、里山の景観 たタケノコが稈(かん)を伸ばし、早いものでは、 の重要な構成要素の一つとなってきた。しかし、石 一日で 120cm も伸びた記録がある。そのため、竹 油化学製品が安価で大量生産できる素材として使わ 林に接した雑木林やスギ・ヒノキの植林地を飲み込 れるようになり、竹で作られてきた物はプラスチッ むように竹林面積を広げ、地域によっては山全体が クなどに取って代わってきている。 竹林になっているところさえ見られる。竹林の管理 平 成 14 年 度 の デ ー タ に よ る と、 日 本 の 森 林 や、竹の活用はこれからの山林の大きな課題になる 総 面 積 約 25,121,000ha の う ち、 竹 林 面 積 は 約 と考えられている。 156,000ha(約 6%)になり、年々面積を増やし ている。九州全体の竹林面積は約 61,000ha で、 全国の約 40 パーセントを占めている *。また、材 をとるための竹材林は、九州では全国の約 69 パー セントを占め、次に多い中国地方の約 20 パーセン トと比較しても断然高い数値である。日本では暖か *「平成 15 年度 森林・林業白書(森林及び林業の動向に関 い地方ほど竹林が多く、竹の産業が盛んだが、一方 する年次報告)社団法人 日本林業協会 で、使われなくなった竹林が大きな問題になってい 69 「竹コップ」 「竹箸」 ●バリエーション例:工作で作る物の例 工作は竹に親しむことや、材としての特性を体験 的に理解することを目的としているので、どんな内 容でも構わない。以下には簡単で短時間に実施でき、 かつ生活の中で実際に利用できるものの例を紹介し た。竹とんぼや水鉄砲、竹馬といった昔からの遊具 も児童・生徒の関心を引きやすいだろう。年齢によっ て適切な課題を出したい。 なお、竹は自分達で切り出してくる設定になって いるが、これは竹林を実際に観ることを目的にして いるためで、本来工作用の材料としては少し前に採 取して自然乾燥させた方が割れにくい。 「竹コップ」 「竹箸」 竹で作る箸は、木材から作るよりも手軽でまっす おそらく最も簡単な竹の工作の一つ。 ぐにつくることができる。指導者が事前に竹を適度 ・コップにするのに適当な太さの竹を用意する。 ・コップの底にする節から 2cm ほど下に印の線を 書く。もう一方は、節を挟んで適当な幅(コップ の高さになる)のところに線を書く。 ・線を目印にノコギリで切る。 ・コップの上側(唇があたる部分)にやすりをかけ て滑らかにする。 な長さに切り、ナタで割っておくと良いだろう。 ・材料の竹を配る ・自分にあった長さになるよう余分を切り落とす。 ・ナイフで削る。 ・ほぼ形が整ったらやすりで仕上げて完成。 ・給食の時に実際に使ってみよう。 70 「割ってみよう、曲げてみよう」 る。 進め方: 竹の材としての特徴を学ぶために、いくつかの手 ・菜箸や竹とんぼなど、竹を材料にしたものを見せ 法を行ってみるとよい。 る。 「竹は昔からいろいろな道具をつくる材料とし 「竹は昔から色々なことに利用されてきました。 て使われてきました。自分たちで作業してみて 皆さんのうちにも竹でできたものがあります すぐれている理由を考えてみましょう。」 か? 明日までに探してみましょう・・」 縦に 2 つに割った竹を配り、道具を使わずにさ ※農村地域の歴史のある家屋で調べると、驚くほど らに割ってみる。 たくさんのものが竹から作られていることを発見 ・ナタで竹を割ってみる →繊維がそろっていて縦 できるだろう。博物館や郷土資料館、古民家園な に割りやすい。 どでの調べ学習を設定するのも勧められる。 言うまでもなく刃物を使う場合は十分な注意が必 ・自宅と古い民家の生活を比べてよう。 要である。安全管理のためにも、道具の扱いに慣れ た地元の方をゲストティーチャーに招き、指導して ・どのような用途に使われていたか整理してみよう。 頂いたり、高度な工作のデモンストレーションをし ※竹でできているものを分類して整理してみたり、 てもらうのも面白い。 どのような使い方が多いのかについてまとめ、壁 ・火をあててみよう。 新聞などで発表してもよいだろう。 竹は火をあてて熱を加えると、驚くほど柔らかく、 加工しやすくなる。たとえば、竹ひごを一度水でぬ ・プラスチックより竹の方が優れている点を考えて みよう。 らし、アルコールランプで熱を加えると、折れずに ※廃棄の際に環境への負荷が少ない、燃やしても有 曲げられるようになる。曲げることができたら、再 毒物質が出ない、環境ホルモンの心配がない、修 度水に浸して冷ますと、形が固定される。 理がしやすいなど。 「ことわざや慣用句の中に竹を探そう」 ●プログラムの展開 1:竹をさがそう ∼国語的な展開 ∼竹と人の暮らし 竹は身近なところで多様な用途に使われてきた。 人が暮らしの中でどのように竹と関わってきたかに ・ 「竹」をつかったことわざや慣用句を探してみる。 ・いくつかについて、竹の性質のどのようなことを 表しているかを考えてみる。 ついて調べてみたい。 例)慣用句と竹の性質(慣用句の意味ではない) 「竹を割ったような性格」→ 縦に割れる性質 「家の中で竹をさがそう」 「竹に油を塗る」→ 表面がつるつるしている性質。 概要: 「竹にすずめ」→ 竹林はスズメの集団ねぐらにな 生活の場で竹がどのような用途で使用されている ることが多い。 か、自宅や博物館などで調べてリストアップしてみ 71 「木に竹を接ぐ」→ 竹と木は性質が違う。 - タケノコを採っているか。 - その他、竹林をどのように利用しているか。 ●プログラムの展開 2:身近な竹林を調 ・竹林の活用について考えてみよう。 べよう:∼総合学習的な展開 ※プラスチックなどの新素材の登場によって、竹が 材料として使われる機会は激減している。しかし 竹林は日本中に広く存在し有効に活用されてき 問題となっている日本の竹林の現状を考えると、 た。しかし竹の需要が減ったことから、現在多くの 竹の新たな利用の方法を考えなければならない。 場所で利用されなくなり、放置された竹林が問題に 竹は早いもので1日に1m 以上も生長し、伐採し なっている。身近な竹林を観察し、竹林の現状や竹 ても次々と生えてくるため、計画的に育てればエ 林の使われ方が日本人の生活の変化とともにどのよ コロジカルな素材と言える。現在、さまざまな企 うに変わっているかを調べてみることは、身近な環 業などで竹を素材とした繊維や道具などがつくら 境や人と自然の関わりを考えるよい題材になるだろ れている。またフェノール樹脂注入処理によって、 う。 竹材の防虫効果を格段にあげている実験結果もあ り、これからの竹利用は新たな可能性を多く含む 「竹林を見に行こう」 ものとなっている。 概要:地域にある竹林を訪れ、竹林の状態や利用の ※タケノコなどを積極的に消費することも大事であ され方を調べてみる。 る。竹の工作やタケノコ採りなどを学校の行事化 して、地域の竹林を健全な状態で維持することに 進め方: 子ども達が協力するような仕組みを検討してはど ・学校や家のそばに竹林がある場所を知っているか うだろう。 どうか質問する。 ・場所を 1 ∼ 2 カ所選び観察に出かける。管理され た竹材林と放置林の 2 カ所を見る設定もよい。 資料: ・次のような視点で観察する。 平成 15 年度 森林・林業白書(森林及び林業の動向に関す - 人が入れるぐらいまばらな林か、入りにくい藪 る年次報告) 林野庁 社団法人 日本林業協会 になっているか。 「竹資源 新素材『竹』の産業化が始まった」 清岡高敏 - 林床に他の植物が生えているか、竹だけの林に マネジメント社 なっているか。 竹の世界 Part1 室井ひろし 地人書館 竹の世界 Part2 室井ひろし 地人書館 ※いずれも前者が管理されている竹林の特徴。 竹を知る本 室井ひろし 地人書館 - 周辺の自然林や植林へ竹が侵入していないか。 竹のはなし 上田弘一郎 PHP 研究所 ・地主さんや近所の人に取材しみよう。 - 以前と比べて竹林の様子は変わっているか(面 積や状態)。 72 教室で木を学ぶ 学校教育や社会教育の現場において、自然度の高い 森林にでかけて野外活動を実施する機会はそう数多く 設定できるものではありません。野外に出かける貴重 な機会を、より意義の大きなものにするために、教室 で行う事前学習や事後学習はたいへん重要であると考 えます。このカテゴリーでは、野外での学習活動の前 後に行う活動や、教室や学校の周辺で行うことのでき る森林に関係した学習活動を扱います。 73 12. 漢字る自然 ∼漢字の中に自然を観る∼ 「木」という漢字が樹木の形をかたどって作られた文字(象形文 字)であることを知り、知っている漢字の中から「木」が含まれ ている漢字を探します。 ねらい: 漢字の成り立ちを知ることで、自然と漢字の深いつながりに気 づき、昔の人がどのように自然を観て、漢字に表現してきたかを 考えます。 進め方: ・両手と両足を大きく開いて「大の字」作って見せて、何の漢字 に見えるか質問します。 「何かの漢字が見えますか? 大きいという字ですね。約 三千年前、中国の人は『大きい』を表す文字をこの姿から 作りました。」 ・「木」の字の成り立ちのイラスト(右ページ)を見せます。 「これも昔の人があるものの姿から作った漢字の元の形で す。みなさんがよく使う字ですよ。何を見て作った何の字 でしょう。」 用 意:筆記具 時 間:約 30 分 ・すでに習った漢字の中から「木」が含まれた字を探してみます。 ・みつけた字を一人一つずつ発表します。 扱われる基本概念:人と自然、時間・ 変化 関連する教科:国語、総合的な学習の ・漢字の意味も考えながら、昔の人がどのように考えてその字を 作ったのか想像し、気づいたことや感じたことを出し合います。 ・木以外の要素にも興味を拡げます。 74 時間 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル 「木」の字の成り立ち ●活動の背景 様々な意味のつながりを持っている。 「木」が部品 漢字は私たちの生活に欠かせない文字である。小 として使われている漢字を題材に、どのようにして 学校 6 年間で 1006 個の漢字を覚え、毎日数え切 その漢字が作り出されたのかを想像してみたい。例 れないほどの漢字を目にし、使っている。しかし漢 えば、 「林」や「森」は分かりやすし、 「休」なども 字の使い方は「書くこと」よりも「見る」ことが多 情景が目に浮かぶ。 「果」という字は「木」にたわ くなったのではないか。パソコンなどでローマ字や わに果実がなっている情景が表現されている。 仮名のキーを打てば簡単に漢字に変換される。つま また「木」という字の、いろいろな位置に「一」 り漢字を記号として使っているのである。 の印をつけると、別の字になり、意味が様々に変化 漢字は三千年以上前に作られ、今もなお生き続け する。 「本」という字では根本を指し示す場所に印 ている文字である。ものの形をかたどって作られた がついている。根本がしっかりしていないと木は倒 象形文字をはじめ、それらを組み合わせて作られた れてしまうので大事なところという意味がある。本 会意文字など、漢字はただの記号ではない。字が表 す語意や字の形そのものに意味があるだけでなく、 三千年前の人々の考えや目にしていた自然の有り様 とは反対に、木の先に印をつけ、木のてっぺん「こ ずえ」を示したのが「末」である。枝葉の先のことで、 本に対して主要でないことを意味している。大事な を感じることができる「生きた文字」なのである。 こととそうでないことがひっくり返ると「本末転倒」 「漢字」を「感じ」ながら使うことが少なくなっ になるわけだ。さらにこれから伸びる小枝に印をつ た今、あらためて漢字の生まれた背景(成り立ち) けると、未完成の「未」になる *。これからどんな を知り、漢字の中に見られる自然にも目を向けたい。 に大きくなるのかはわからないので「まだ」という 意味がある。 木が立っている姿がそのまま字形になった「木」 。 ●バリエーション例 「『木』を含む漢字の意味を考える」 * 木材の丸太では、木の枝先に近い方を末口、根本に近い 方を元口と表現する。 漢字は単体で存在するものではなく、漢字どうし 75 * 名前の漢字をテーマにした活動は外国人の児童・生徒が いる場合などは配慮が必要。 たくさんの漢字の中に「木」が含まれていることは、 種類があるが、児童・生徒が興味を持ちやすいのは 人と木が強い結びつきを持ってきた事を示している やはり象形文字であろう。小学校の国語でも漢字の のではないだろうか。 字形を実物と結びつける指導が行われる。この部分 「人の名前の中から『木』を探す」 漢字の中に木を探すことのバリエーションとし は環境教育的な要素を含めての展開が可能である。 「もとの形を思い描こう」 て、名字や名前の中に「木」を始めとする自然物を 概要: 表す漢字をさがしてみるのも興味深い。クラスの中 象形文字の字形と語の意味から、その漢字がどの だけでも木や自然に関する名前がたくさん見つかる ような自然の様子や形から作り出されたのかを想像 のではないだろうか。このことも私たちと自然のむ し、絵に描いてみる。 すびつきの強さを示しているように思われる。 ねらい:昔の人々が目にしていた自然を思い描く。 進め方: ・各自の名前の中に「木」を探してみる。 ・黒板に書き出してみる。 進め方: ・象形文字についての説明と例示。 「川という字は川が流れる様子から、鹿という ・「木」以外の自然を表す漢字で同様に実施する。 字は長い角をもった雄鹿の形から作られまし 火・水・雨・日・月・土など た。この様に物の形をかたどって作られた漢字 ※「木」以外の漢字は数が多いと思われるので、4 ∼ 6 人程度のグループを作って、グループのメン バーの名前について実施するとよいだろう。例え を象形文字といいます。」 ・いくつかの漢字を示し、それがどのような自然の 様子から作られたか想像して絵を描いてみるよう ば、 に促す。 木:1(木・杉・松) 「土・魚・雨・馬・水・生の六つの漢字はすべ 土:2(塩・坂) て象形文字です。昔の人は、どういった自然の 水:2(池・泰) 様子からこの字を作ったと思いますか? 想像 のように、紙に書いてまとめてみるとよい。 ※「幸」のように「土」の意味で使われていないの に「土」が字の中に含まれている漢字もあるが、 して絵に描いてみましょう・・」 ・描き方は自由。指導者は正しい答えを出すことや 上手く絵を描こうとすることより、漢字から思い それも選択肢に含めてよい。「必ずしもそのもの 浮かぶ自然のようすを自由な発想で描くことが大 の意味で使われていない字もたくさんある」こと を伝えるとよい。 ●プログラムの展開:象形文字 切であることを伝える。 ・できた絵を発表しあう。 ・イラスト「ものの かたちから つくられた漢字」 を参考に、象形文字の成り立ちをみてみる。 後述するように、漢字の成り立ちにはいくつかの 「みなさんの想像と比べてどうですか? 三千 76 年前の中国の人々は毎日どんな自然を目にして 暮らしていたのでしょうね・・」 「漢字って感じ」 漢字と自然体験を組み合わせる事もできる。自然 ※象形文字については小学校 1 年の教科書で扱わ の中で、自由な発想で新しい漢字を創作して発表す れているので、実施する学年によって課題にする る。少し大きな学年から大人向け。 文字の種類は適宜変更するとよい。「休」や「岩」 、 「男」などの会意文字から情景をイメージさせて も面白いかもしれない。 進め方: ・一人ずつ、静かに自然を感じる時間を作る。 「ふしぎだな・おもしろいな・きれいだな、な 「漢字で自然を描く」 ど気持ちが動く自然のようすをひとつ見つけて 下さい。見つけたら、その場に静かに座り、そ 概要:象形文字をつかって絵を描く。 ねらい: 漢字が生まれた昔の自然のようすを想像する。 のようすを漢字で表現してみましょう。」 ・筆ペンとカードを配り、時間と範囲を決め、ひと りずつで作業をする。 進め方: ※既成の漢字は使わなくてもよい。決まりごとを ・「『自然を描こう』漢字リスト」を配り、それらが 物の形やその特徴から作り出された字(象形文字) であることを説明する。 作らず、自由な発想と表現で。 ・どのような自然を観て創ったのか、オリジナル漢 字を発表する。 「これらの漢字の中には、昔の人たちが観てい ※少人数の場合は一人一人のみつけたものを見に行 た自然物が描かれています。」 き、全員で共有するとよい。 ・リストにある象形文字だけを使って風景の絵を描 ※他の活動を含んだ自然体験プログラムの最後のま くように指示する。画材としては毛筆や筆ペン、 とめとして実施する事もできる。 絵の具などがよい。 「漢字をいくつ使っても、何を使っても、何色 出典:山のふるさと村平成 12 年環境教育活動報告書(原 で書いてもいいです。大きくしたり縦長にした 案は吉武美保子氏) りして多少形を変えてもかまいません。」 ・一人ずつ自由に描く。 ・発表して、感想を言い合う。 「三千年前の人たちはほんとうに、みなさんが 描いたような風景をみていたのかもしれませ んね。漢字は昔の人の思いや、見ていた物の姿 を今に伝えるタイムカプセルのようなもので す・・」 78 ●資料:漢字について 方を意味範疇の記号に用いて書き表す方法/ ・漢字とは中国人が約三千年前から自国語を表すの 杜・板・枯・倍の類。 - 仮借:ある語に当てるべき漢字がない場合、 に用い、日本を始めとして、中国文化の大きな影 響を受けた周辺の諸国でも使用してきた文字。 本来の意味は違う音のほかの漢字を借りて当て ・現在、国語を表記する文字には、漢字および仮名 たもの/食物などを盛る器の豆 ( とう ) をまめ の意に用いる類。 があるが、ひらがな・カタカナはどちらも漢字の 草書体の省略形やその一部をとったものからでき - 転注:ある漢字の本来の意義をほかの近似し ているので、国語を表す文字の起源はすべて漢字 た意義に転用すること。ジオンをかえるのを普 ということになる。 通とする/「わるい」の意の「悪(アク) 」を「憎 む」の意(字音「ヲ」 )とする類。 ・漢字には、文字としての字形とそれが表す語の音 ・情報:常用漢字の中に・・ と意味の3要素がある。 - 木へんの漢字 211 字。 ・漢字のでき方には六つの場合があることが漢の時 代に発見され、これを総称して六書(りくしょ) と呼んでいる。六書は指事・象形・会意・形声(以 - 木へんの漢字 1 字で木の名前を表している漢 字 88 字。 上構成原理による分類) ・仮借 ( かしゃ )・転注(以 - 木が含まれている漢字 725 字。 上運用による分類)である。このうち、指事と象 形とによって基本文字が作られ、この基本文字を 参考資料: 組み合わせて複合文字をつくるのが、会意と形声 「図説 漢字の成り立ち事典」 辻井京雲 教育出版 である。 「漢和辞典」 旺文社 - 指事:事柄や数などの象徴的な概念を記号化 「感じの漢字」 高橋政巳著 扶桑社 して字形とする方法/一・二・上・本の類。 - 象形:物の形をかたどって字形とする方法/ 日・月・人・木の類。 ※象形文字はものの全形を写実的に描くものより、 その特徴を捉えて象徴的に表しているものの方が 多い。天に輝く日と月、日は常に円い、月は満ち 欠けするから半ばかけた形で表される。羊と牛で はどちらも角に着目し、羊は角が巻いているのに 対して、牛は角が前に突き出た形で表す。 - 会意:漢字を結合し、それらの意味を合わせ て書き表す方法/人 + 言 = 信。 - 形声:漢字を結合し、一方を発音の記号、他 79 13. 木の用途を調べよう 生活の中で使われている木に注目してみる活動です。木で作ら れた物を、教室や家の中で探してみます。 ねらい: 木は、人の生活に深い関わりがあり、欠かせないものであるこ とに気がつきます。 進め方: ・教室で質問します。 「この教室の中に、木で出来ているものは何種類ぐらいある と思う? まずは数を予想してみよう・・」 ・各自の予想した数を出し合います。 「では、実際に調べて数えてみましょう。」 ・木で出来ていると思うものを挙げてもらい黒板に書き出していき ます。黒板や棚などだけでなく、鉛筆や紙などの文具も木から できていることを気づかせます。 ・さらに音楽室や体育館などについても調べます。音楽室の楽器や スピーカー、体育館の床や跳び箱などにも木がたくさん見つか るでしょう。 用 意:筆記具 時 間:30 分∼ 1 時間 扱われる基本概念:つながり、人と自 然 ・最初の予想と比べてどうだったか、また、実際に数えてみて気 づいたこと、木に関して発見したことなどについて話し合いま す(ふりかえり、わかちあい)。 関連する教科:社会、総合的な学習の 時間 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル 80 ●活動の背景 雑にしたり、グループに違う課題を出して分担して もよいだろう。 「木」は私たち人間の生活にさまざまな形で関わっ ている。建築材、家具などの一目で木とわかる木製 「木を探す場所を変える」 品を始め、紙、コルク、ゴムなど、一見は分からな 子どもたちが利用する下記のような場所で、さら いけれど木を原料としているものもあり、私たちは に「木」を探してみよう。教室では見つからない木 実に多くの木に由来する物品を利用している。木の 製品がみつかるはずだ。 果実や種子、樹液など、木から得られる食品も数多 い。道具や食品としてだけではなく、夏の暑さをし - 自宅 のぐ日除けや、家を強風から守る防風林として植え - ホームセンター・商店街 られることも多い。また木は古くから信仰の対象と - 古代博物館・歴史資料館 して人々の精神的な拠り所にもなってきた。神社や お寺の境内には大きな木が残されている。さらに視 「伝統的な木製品を調べる」 野を広げれば、二酸化炭素を酸素に変え、光から有 森林資源に恵まれた宮崎県には地域の特産として 機物を生み出す生産者として、生態学的にも不可欠 木や竹を使った工芸品がある。高千穂神楽面、久峰 な存在である。 うずら車、都城大弓等など、地元の町や県内で作ら 木について学ぶアプローチの一つとして、木で れている工芸品を調べてみよう。それぞれ、どんな 作られた身近な物に目を向けてみることも意義があ 木から作られているのかを図鑑で確認してみるとよ る。私たちの周りに木でできた物がたくさんあるこ い。地域の文化を知る機会にもなるだろう。 とや、用途によって違う種類の木が利用されている こと、日本だけでなく外国産の木も多いことなど、 多くの学びが得られるだろう。最初は一目で分かる 「食品としての木」 木製品を中心に、子どもたち自身の関心や発見を促 食品になる植物というと、野菜などの草本を想像 しながら、段階的に木の性質や役割に関する情報へ しがちだが、果実や香辛料など木に由来する物も少 と展開していくとよいだろう。 なくない。食品に注目して木を探してみるのも面白 「森林は大切」とよく耳にはしても、普段の生活 い。 でどれだけ人が森林に頼っているかを実感する機会 ●プログラムの発展 1:どんな木が使わ は多くない。日常生活における自分たちと木との結 びつきを知ることは、後に森林の働きや保全につい れているのか ∼社会科的な展開 て学ぶ際にも意味を持つに違いない。 身の回りに木製品があふれていることが分かった ら、次のステップとして、どんな種類の木で作られ ●バリエーション例: ているのか、どこからやってきたかについて調べて 教室の中だけでは木製品が少ない場合や、少し時 みたい。木製品はその特性にあわせて多様な種類の 間をかけて調べる課題にする場合は、課題を多少複 木から作られている。 81 * 三菱鉛筆株式会社ホームページ http://www.mpuni.co.jp/ トンボ鉛筆のホームページ http://www.tombow.com/ 資料: 「木材のふしぎ - 年輪はかたる - 」大阪自然史博物館 第 15 回特別展解説書 「木の戸籍調べ」 鍵盤、支柱などにそれぞれ違う材料が使われている。 ギターでも最低でも3種類以上の木が使われる。楽 概要: 器によく使われる木としては、 トウヒ類(松の仲間) 、 身近な木製品の木の種類、原産地を調べる。 カエデ類、クルミの仲間などがある。楽器の素材に 進め方: ついても、メーカーのホームページなどで調べるこ とができる。 ・自分が普段使っている木製品(家具・文具・楽器 など)の中から調べる物をいくつか選ぶ。いくつ - ピアノ:トウヒ類、カエデ類、ブナなど か候補を示して、音楽好きなら楽器、スポーツ好 - ギター:トウヒ類、杉の仲間(シダー) 、クルミ きならスポーツ用品など、それぞれの児童・生徒 (ウォルナット) 、カエデ類、シタン(ローズウッ が関心を持てる物を選ばせるとよい。 ド)など ・素材ラベルや使用説明書などから、使用されてい - バイオリン:トウヒ類、カエデ類 る木の種類や原産地を調べる。 - 和太鼓:ケヤキ 必要に応じて、家族に聞いたり、製品のメーカー - 太鼓のばち:カシ類、ホオノキ、キリ に問い合わせたりするとよい。もっとも情報があっ - 尺八:竹 て手軽に調べられるのはインターネットである(や - 沖縄三味線:クロキ、クワ や安易ではあるが)。 楽器以外でも、将棋盤や下駄、印鑑、櫛などは、 例えば、鉛筆の軸の素材は、大手鉛筆メーカーの ホームページ * に紹介されている。ちなみに鉛筆は 昔から特定の材が使われている。 カリフォルニア産のインセンスシダー(スギの仲 ・調べた結果を発表する。 間)で作られている。合板の家具等はラワン材など ・みんなの結果を持ち寄り、気づいたことや疑問に 感じたことを話し合おう。 で作られているものが多いと思われるが、合板素材 のメーカーのサイトにはしばしば素材や木の産地が 紹介されている。 ●プログラムの発展 2:タウンウォッチ ・種類が分かったら図鑑で調べてみよう。 ング ・原産地がわかったら、世界地図で場所をチェック 木は材料としてだけではなく、様々な目的で人に してみよう。 利用されている。教室から出て街を歩き、自分たち 身近な木製品を調べていると、意外に素材が多様 の住む街の中で見られる木々の役目を考えてみよ で興味をひかれる。 う。タウンウォッチングでは、木製品に着目するの - つまようじ → ほとんどがシラカバ ではなく、市街地、住宅地、農地などにおいて、植 - かまぼこ板 → ほとんどがモミ えられている(あるいは保存されている)木々がど のような役割を担っているのかを、観察と想像の両 - バット → アオダモ 方から考えさせたい。 楽器は特に木の種類が音に直接影響するので、材 料にこだわって作られている。ピアノの場合、響板、 82 「街の中での木の役割」 「生きものにとっての木の役割」 概要: 概要: 街を歩きながら植えられた木を観察し、それらの 鳥や昆虫などの生きものにとって、木がどのよう 役目を考える。 な役割を果たしているかを考え、リストアップする。 進め方: 進め方: ・地図を用意し、活動する範囲を指定する。学校周 ・グループごとに生きものを 1 種類割り当てる。割 辺の歩いて回れる範囲で、街路樹、防風林、防砂林、 り当てる「生きもの」としては次のようなものが 垣根、果樹園、植林地、公園など、さまざまな要 考えられる。 素のある場所を含めたい。指導者が歩くコースを - 森に住む鳥 設定してもよい。 - リス ・二人∼数人程度のグループでの活動とする。 - ムササビ ・木のある場所を観察しながら歩き、木がどのよう - アゲハチョウ な用途で植えられているか、あるいは保存されて - クワガタムシ いるかを考えながら記録していく。 - 小学生 ・歩いたルートの簡単な地図を模造紙に描き、木の ・それぞれの生きものについて木がどのような役割 あった場所を地図の中に書き込む。木の絵を描き を持っているかを考え、リストアップする。必要 込んで絵地図のようにすると楽しい。 に応じて図鑑などの資料を用意するとよい。 ・観察したそれぞれの木がどのような役目を持って ・班ごとに(生きものごとに)画用紙などにまとめ いるかについてグループで話し合い、木の絵のと て発表する。 ころに役目を記入する。 木は生きものたちにとって直接的に餌になる他、 ・タウンウォッチングをして気が付いたこと、印象 巣材の供給、繁殖の場、ねぐら、外敵から身を隠す 深かった木の役割などについて発表する。 場所、雨や日差しを避ける場所などとして役立って ・教室や家の中での木の調査と合わせて、人にとっ いる。これらは人にとっての木の役割とある意味で ての木の役割をまとめてみよう。 共通している。 ムササビやヤマネなどの樹上性の動物の場合は、 ●プログラムの展開 3:木と生物の関係 木を使って移動するため、単体の木が必要なだけで を考える なく、森としての連続性を必要としている。 また特定の種類の木を必要とする生きものも多 街や人にとって木が必要であると同じように、森 に住む生きものにとっても、木はなくてはならない。 自分たちにとっての木の役割と平行して、生きもの い。特に昆虫類は特定の種類の植物だけを餌にする 食性を持つ物が多く、その種類(食草)がないと生 息できない。例えば、アゲハはサンショウなどのミ にとっての木の役割を考えてみたい。 カン類、アオスジアゲハはクスノキの仲間等、日南 83 海岸を分布の北限とするツマベニチョウはギョボク 「おぼえていろよ 大きな木」佐野洋子 講談社 をそれぞれ食草としている。 「木のうた」イエラ・マリ ほるぷ出版 ※宮崎市の大淀川学習館には昆虫類の食草を集めた温室が 地域の昔話を題材にする場合は 91 ページも参照 あり、昆虫と植物の関係を学ぶのに適している。 の事。 ●プログラムの展開 4:木の登場する物 語を読む 木は物質的な面からも、精神的な面からも人の生 活を豊かにしてくれている。古今東西の物語の中に は、しばしば自然を象徴する存在として木や森が登 場し、読む人に強い印象を残す。よくできた物語は 観察などの自然科学的なアプローチとは異なる教育 的な力を持っていると思われる。木の役割を考える 一連の活動の後半に物語を題材として活用すること は、木に対する学習をより多角的なものにする効果 があるだろう。 「物語の中の木」 概要: 絵本や物語を題材に、木と人の関係、自分と自然 の関係などを考える。 進め方: ・木が登場する物語を読む(読書や読み聞かせなど、 学齢によって手法を選択する)。 ・感想を話し合う(あるいは感想文を書く)。 題材とする物語としては、以下のようなものが例 としてあげられる。 「大きな木」 シェル・シルヴァンスタイン 篠崎書 林 「木を植えた男」ジャン・ジオノ あすなろ書房 ※アニメーション映画作品としてビデオも出てい る。 84 85 14. やっタネ! 誰が遠くに飛ばすか選手権 紙の工作で、小豆(あずき)を誰が一番遠くに飛ばすことがで きるか競争します。 ねらい: * 植物は種類によって、果実の状態で ・植物のタネ * が遠くに運ばれる仕組みを、工作しながら考えます。 ・植物と他の生物との関わりについて考えるきっかけにします。 運ばれるものや、種子が運ばれるも のがあります。ここでは果実や種子 などの散布体を総称して「タネ」と 表す事にします。 進め方: ・植物のタネが遠くに運ばれるために工夫をしていることについ て簡単に説明します。 「植物は動物と違って歩く事はできませんが、タネを遠くに 運ぶための様々な工夫をしています。どんな工夫があると 思いますか?」 ※考えるヒントとして、実物のタネや絵を見せてもよいでしょう。 ・ルールを説明します。 用 意:ワークシート、紙、ハサミ、 セロテープ、小豆 「課題は遠くに飛んでいくタネをつくることです。用意した 材料だけで遠くに飛んでいくタネを工夫してみましょう」 ・ジャングルジムなどの高いところから順番に飛ばして飛んだ距 離を競います。 時 間:約 1 時間 扱われる基本概念:つながり 関連する教科:理科、図画工作、総合 的な学習の時間 指導上の注意点:高いところから飛ば ・本物の風散布の種子も飛ばしてみます(みんなが作ったものと、 どちらが飛ぶかな?)。 す場合、転落防止に最大限の配慮が 必要 出 典:自然教育研究センターオリジ ・実際の植物がどのような工夫をしているか観察します。 86 ナル 課 題:小豆(あずき)を使ってタネを遠 くに飛ばす工夫を考えます。 競技の方法:ジャングルジムの上からタネ を飛ばします。 ルール 1:投げたり、指の力で弾いてはい けません。 ルール2:使える材料は紙(A4 の 4 分の 1 の大きさ)とセロテープだけです。 ルール3:小豆を加工する(つぶすなど) ことはできません。 ルール4:紙を加工するのにハサミなどを 使う事ができます。 ● 活動の背景 ●バリエーション例 普段「静的」なイメージで捉えられやすい植物で タネのモデルを飛ばす競争の際、条件を変えて複 数の競技を行ってもよいだろう。例えば高さの条件 あるが、実際は生物としてきわめて動的な側面も持 ち合わせている。その一つが「種子散布」である。 植物は自ら歩きはしないものの、分布を拡大するた を変えて、一つは室内で椅子の上から飛ばす、もう 一つは校庭のジャングルジムから飛ばすなど。風の ない室内では、距離ではなく滞空時間を競ってもよ めのダイナミックな仕組みを持っている。種子散布 い。実際の植物でも、高さによって異なる散布方法 は自然観察のテーマとして魅力的である。タネの運 が採用されていると考えられる。例えば、カエデ類 ばれ方には風に乗って運ばれる風散布を初め、水の のようなプロペラ型は、ある程度樹高がないと距離 流れに乗って運ばれる水散布、動物によって運ばれ が稼げないのに対し、コクサギやホウセンカなどの る動物散布、機械的に弾かれて飛び散るような自動 自動散布は背丈の低い場合に有効である。 散布などがある。 アイデアがあまり広がっていかないときは、いろ 本活動では、児童・生徒自身が遊びながらタネを いろなヒントを出して発想を拡げさせたい。例えば、 遠くに運ぶ工夫を考え、その後に実際のタネを観察 細かく切り込みを入れた紙に種子をぶら下げるとタ する事によって、植物が巧妙なしくみを持っている ンポポのタネのようにふわふわ落ちるし、紙を棒状 事を実感させたい。 に丸めて、一端をセロテープで机に固定すると、紙 タネの実物としては、カエデの仲間のようにプロ をバネの様に使って自動散布のようにタネを飛ばす ペラ状の翼をもったものや、綿毛をもったタネを用 ことができる。いずれにしても事前の情報はあくま 意したい。綿毛を持ったタネではタンポポ類が身近 でヒントに止めたい。最初上手くいかなくても、実 だが、小さくて見にくいので、テイカカズラやサカ 際のタネを観察した後に、再度工夫する時間を設け キカズラ、キジョランなど大型のタネがあるとなお ればよい。 よい。シデ類や、枝先の葉といっしょに風に舞うケ ヤキなどのタネもよいだろう。 ●プログラムの展開 本活動の課題で考える対象になるのは風散布が中 心になるが、紙を丸めてセロテープで机に固定しバ 学校での学習の後はぜひ野外観察につなげたい。 ネのように使って自動散布の工夫もできる。 87 特に秋には、植物の種類の多い場所なら 10 分程度 「クルミやドングリのような大きなタネはどん の時間でもたくさんの種類のタネを集める事ができ な生き物と、どんなつながりを持っていると思 るだろう。 いますか?」 集めたタネは、並べてみるだけでも多様性を感じ 「散布型で分けてみよう」 る事ができるし、高学年では運ばれ方(散布型)で 概要: の分類を試みて、様々な散布様式の学習へ発展させ 森の中で集めたタネを散布型で分類し、植物のタ てもよいだろう。 ネが遠くに運ばれる仕組みや森の生きもの同士のつ ながりを考える。 「森のタネを集めよう、分けてみよう」 概要: 森や公園を歩き、様々な植物のタネを集めて観察 する。タネが遠くに運ばれる工夫について考える。 進め方: ・ 森や公園の中でいろいろなタネを集める。 ・植物の種子散布について説明をする。 ※適宜資料なども用意する。中学生以上であれば、 進め方: ・森や公園の中を歩き、グループワークでいろいろ な種類のタネを集めてくる。 次ページの「参考」を配布してもよい。 ・ 目の前にあるタネを散布型で分類してみる。 「どのような運ばれ方をするタネが多いかな? ※タネをいれるケースとして、たくさんのマスに 仕切られた小物入れなどを用意すると観察しやす く、楽しく実施できる。 ・集めたタネを集め、いくつかに分類してみるよう 見逃していたタネはないかな?」 ・散布型を考えながらもう一度タネを集めてくる。 ・ それぞれの植物が持っている散布の仕組みや、植 物と動物の関係などについて話し合う。 促す。 ・どうやって分類するか話し合う。 ・どのような基準で分類したかキーワードを付箋紙 かカードに記入する。 ※例えば、色や大きさ、形などの分類基準が考えら れる。 「その他の発展のアイデア」 ・くっつくタネを、ルーペや実体顕微鏡で観察する。 ・集めたタネを植えてみる。 ・観察したことを踏まえて、再度紙でモデルを作っ てみる。 ・分類したものを眺めながら、自然の仕組みを考え るきっかけになるような言葉をかけて話し合いを 促す。 参考資料: 「木と動物の森づくり̶樹木の種子散布大作戦」 斎藤新一 「遠くまで飛んでいきそうなタネはどれでしょ 郎 八坂書房 う?」 「種子散布 助けあいの進化論< 1 >鳥が運ぶ種子」 上田 恵介 築地書館 「いちばん動物に関係あるタネはどれだと思い 「種子散布 助けあいの進化論< 2 >動物たちがつくる森」 ますか?」 上田恵介 築地書館 「種子はひろがる」中西弘樹 平凡社 88 参考:いろいろなタネ(種子散布型) ∼食べられてひろがる∼(被食散布) ∼くっついてひろがる∼(付着散布) ドングリの仲間:ネズミやリスなどの小型哺乳類、 足元に生える草本植物に多く、果実にかぎやとげ クマなどの大型の哺乳類のほか、カケスやオシド 状の突起をもつオナモミや、イノコヅチ、ササクサ、 水に濡れると果実の周りにネバネバの液を出すオオ リ、ヤマガラなどの鳥類が運んで食べる。食べ残 バコのように、林道の道端で多く見られる。森の中 したものの一部から発芽することが多く、食べ残 を歩く哺乳類の体毛に付着し、他の場所で落下する。 し型散布とも呼ばれる。また、樹木から落下して 転がっていくことから重力散布と言われる事もあ る。 ∼風にのってひろがる∼(風散布) 赤い実:鳥類に食べられる果実の中ではもっとも多 い色で、周りの緑色との補色関係であるため目立 タンポポの仲間やテイカカズラのように果実に つ。果肉は消化されるが、果肉の中にある種子は 消化されずにフンと一緒に落とされて発芽する。 クロガネモチやマンリョウなど鳥類が丸呑みする 綿毛をもつものや、カエデの仲間やシデの仲間のよ うに葉や果実が変形して翼をもった状態のものがあ る。いずれも種子や果実に毛や翼(よく)を持ち、 のに適した 5mm ほどの果実が多い。鳥の餌台の 乾燥した状態で風にのりやすい構造になっている。 周辺や、鳥散布の木の周辺には、鳥のフンから発 芽した実生がよく観察される。 黒い実:赤い実に比べ脂肪分が多く、小鳥のほか、 野ネズミなどの小型哺乳類に食べられることも多 ∼その他の散布の方法∼ 自動散布:ホウセンカやツリフネソウ、コクサギの い。赤い実よりも目立たないように見えるが、紫 ように機械的に弾いてタネを飛ばす。 外線を反射し、それを感じることのできる動物に 水散布(海流散布・水流散布) :海岸や川辺の植物 はよく見えているとされる。クスノキやハイノキ に多い。オニグルミなど。 の仲間など照葉樹に多く、赤い実と同様に 5mm アリ散布:タネにアリの好きな付属物が付いていて、 ほどの果実が多い。ホルトノキのように 1cm を アリが運んだ場所から発芽する。スミレ類やタケ 超えるものもある。 ニグサなど。 甘い実:ヤマモモやカキ、アケビ、ミカンの仲間な ど大型で甘い果実は、食用として人間にも栽培さ れている。森の中では、主としてサルやクマなど の大型の哺乳類に食べられる。 89 15. 民話の中の木に出会う お話の中に木がどのように描かれているか注意しながら物語を 読み、想像して絵を描いたり、実際の木を見に行ったりします。 ねらい: ・昔の人々が木や森とどのように関わっていたかを物語から感じ 取ります ・実際の木を見るときの視点を物語から得ます。 進め方: ・木が登場する民話を読み聞かせます。 ※地域に伝わる話であればなおよいでしょう。 ※学年によって、児童・生徒に音読させるなどの手法もよいでしょ う。 用 意:民話の資料、画用紙など 時 間:約 1 時間 扱われる基本概念:人と自然 ・物語の感想や、物語の中に出てきた木について感じた事を話し 関連する教科:国語、総合的な学習の 時間、図画工作 合います。 ・物語に出てきた木が、どのような木か想像して絵を描きます。 ・実際にその種類の木を野外に見に行ったり、図鑑で調べてみます。 90 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル ●活動の背景 た姫が漂着し、村人たちは親身に看病する。その後、 昔の人々は、木を単に資源や生物としてだけでな 村が津波におそわれた時、姫が松の木の下で琴を弾 くと津波がおさまる。琴ひき松は後に、琴姫の松と く、あるときは親しみ深い隣人として、あるときは 山の神様の宿る場所として捉えてきた。現代に暮ら 呼ばれるようになる。 す私たちもまた木にしめ縄をまいたり、おみくじを 椎葉山ものがたり(ヤマザクラ) 木に結んだり、巨樹を訪ねて楽しんだり、木と様々 日向の奥山椎葉村に、下関壇ノ浦の戦いで源氏に な精神的なつながりを持って暮らしている。私た やぶれた平家の落人たちが、農民として懸命に暮ら ちが木を理解しようとするときに、自然科学的な視 している。ある春の日、山菜採りをしに山に登った 点を持つ事は重要であるが、それだけに固執するな ところ、遠い谷が白い旗でかがやいている。白い旗 らばバランスを欠いた物になってしまうかもしれな をかかげた源氏の追っ手に違いないと思った平家の い。 落人たちは、自らの命を絶つ。しかし、源氏の白旗 民話の中にも木は頻繁に登場する。昔から語り継 と思われたのは、満開のヤマザクラの花で、その花 がれている話の中には、人が生活の中で自然とどの を旗に見間違えたのであった。 ように関わってきたかを学ぶ素材がたくさん含まれ 米良の上うるし(ウルシ) ている。 米良荘(今の児湯郡西米良村)の山中に、 蛇淵(じゃ 国語の教科書に掲載されている物語の中にも木は ぶち)と呼ばれる深い淵がある。うるしかき(ウル しばしば登場するので、そのような部分を学習する シの木の汁を集める仕事)をする兄弟が、蛇淵の底 機会に合わせて、森林環境教育のプログラムを実施 に生うるしのたまりを発見するが、それをひとりじ したい。情景を想像しながら楽しく物語を読むとい めしようとした兄は、竜の彫り物を沈めておく。弟 う点において国語の授業にも貢献するものと思われ は彫り物に驚き逃げ帰ってしまう。兄がしめしめと る。 淵に潜るが、彫り物は本物の竜になっており、兄 弟は二度とうるしを採ることが出来なくなってしま ●バリエーション例:木が登場する民話 う。 県内外の民話等から、具体的な樹木の名前が登場 海幸彦山幸彦(カツラ) するものをいくつか紹介する。 コノハナサクヤヒメの子どもであるウミサチヒコ (ホデリ命)とヤマサチヒコ(ホヲリ命)という兄 「宮崎県の民話・神話」 弟にまつわる神話。ヤマサチヒコが神聖なカツラの 木に登る場面がある。 琴姫の松(マツ) 土々呂(今の延岡市土々呂町)の入り江に美しい 「他地域の民話」 松の木があった。海風に吹かれると葉がさらさらと ゆれ、それが琴の音のように聞こえたので、琴ひき 水ふきイチョウ(京都府の民話) 松と呼ばれていた。ある日、その入り江に琴を持っ 天明の大火の際、本能寺のイチョウからいきなり 91 水が噴出し、多くの人が助かったという。別に、こ 喜寺や塔御堂、真木大堂の仏像などは、この 1 本 の話は、西本願寺のイチョウで、天明の大火ではな のカヤの木からつくられたという。 く、火事にあったのは西本願寺隣の興正寺だとする おりゅうヤナギ(兵庫県の民話) (ヤナギ・ヘクソ 説もある。 カズラ) 空をとんだ大クスのとびら(三重県の民話) (クス 村娘おりゅうはヤナギの木が好きで、いつも木の ノキ・カシ・シイ・ハゼ) 側にいるうちに、ヤナギの精との間に男の子が生ま 江戸時代初期の頃、桑名城主が多度神社への参拝 れる。ある日、京都の三十三間堂の棟木に、このヤ の帰りに、カシやシイ、ハゼなど七種類の木をやどっ ナギが使われることになる。他の木々に助けられ、 て七色に輝くクスノキを見つける。クスノキは香り 切られまいとするヤナギだが、ヘクソカズラの裏切 がよく虫もつきにくいので、城の修築に使われるこ りでついに切られる。切り倒されたヤナギを京に運 とになる。多度の村人たちは、神様の大クスを切る ぼうとするが動かない。おりゅうの子どもが木をな とたたりがあるのではと噂しあったが、とうとうク でると、やっと動き出したという。 スノキは切り倒され、一枚扉にされたクスノキには 縁切りエノキ(東京都の民話) 見事な夫婦ヅルが彫られる。しかし、城の落成祝い 家の金を盗む息子に困り、父は庭のエノキの洞に の宴の最中、突然大きな音を立てて、クスの扉は多 金を入れた瓶を隠す。息子が母を押しのけ、枝を切 度の山の方へ飛んでいってしまう。 り払い洞の瓶を盗んだところ、突然母が死ぬ。家に 乳イチョウ(千葉県の民話) 戻った父は、あのエノキの姿は、苦労で身を削られ 度重なる冷害と不漁、姑の嫌がらせで、赤ちゃん た母の心だと諭し、息子は心を改める。庭のエノキ にやる乳の出ない母が、お寺の僧に乳が出るように は縁切りエノキと呼ばれ、悪縁を断ち切ろうとする なりたいとすがる。すると、次の日から乳が出るよ 人々に信仰されるようになる。 うになる。噂を聞いた多くの女の人たちも同じよう に救われる。僧が亡くなり、村人が墓前にイチョウ 「童話・絵本」 の木を植えると、イチョウは大きく育ち、木から乳 モチモチの木(斎藤隆介 作 ) 房のようなものが垂れ下がる。村人は乳イチョウと 臆病で一人で便所にも行けない小さな男の子が、 呼ぶようになる。 倒れたおじいさんを助けるために夜の暗い道を、お 富喜寺のカヤの木(大分県の民話)(カヤ・ヘクソ 医者さんに走っていく・・・。勇気とは何か教えて カズラ) くれる素敵なお話の中に、 重要な役どころとして「モ 人聞菩薩という偉人が、高田(今の大分県豊後高 チモチの木(トチノキ) 」が登場する。 田市)にある大きなカヤの木でお堂を建てることに 教科書にも採用されている有名な童話。岩崎書店 した。しかし、何度斧で切り口を入れても、翌日に から美しい切り絵の挿し絵の入った絵本が発売され は元通りになってしまう。カヤの木や他の木々にバ ている。 カにされ続けていたヘクソカズラは、木こりにカヤ の木を切り出す方法を教え、木は切り倒される。富 92 参考資料: ●プログラムの展開 「松谷みよ子のむかしむかし 7」 松谷みよ子 講談社 「全国県別民話集 ふるさとの民話 全 47 巻」 日本児童 文学者協会編 偕成社 「昔話のその後は?」 「宮崎県の民話」「大分県の民話」「三重県の民話」「奈良県 の民話」「京都府の民話」 児童・生徒の想像力を働かせる手法として、民話 「兵庫県の民話」「東京都の民話」「千葉県の民話」「どんな の続きを自由に考えてみるという手法もある。 民話ききたい?」 進め方: 「日本の神話 第 6 巻 うみさち やまさち」 赤羽末吉・ ・お話のさらに続きがありそうな民話を読んだり、 舟崎勝彦 あすなろ書房 物語の途中までを読み聞かせる。 ・作文用紙を配り、各自お話の続きをつくる。ある 琴姫の松︵伝説・延岡市︶ 一 * 部分を紹介。 土 々 呂︵ 今 の 延 岡 市 土 々 呂 町 ︶ が、 ま だ し ず か な 入 り 江 で、 そ の は ず れ に あ る 霧 島 神 社 の 森 に﹁ 琴 ひ き の 松 ﹂ と よ ば れ る 松 の 木 が そ びえておったころの話しじゃ。 その松は、枝ぶりのいいうつくしい木で、海 か ら 風 が ふ い て く る と、 葉 が さ ら さ ら と ゆ れ る 音 が、 ま る で 琴 を ひ い て い る よ う に き こ え たので、そんな名がついておったんじゃ。 土 々 呂 の 人 び と は、 こ の 木 を だ い じ に し て いて、漁にでるときはにはかならず、 ﹁琴ひき の松﹂に手をあわせてたいりょうをいのって からでかけていった。 あ る 夏 の 夕 方、 浜 辺 に す む 太 一 と い う 男 の 子 が、 じ い さ ん に つ れ ら れ て、 イ カ つ り に で かけた。 ︵中略︶ おきてみろ。みょうな船がうかんじょ ﹁太一、 るぞ。 ﹂ じいさんの声に太一が目をさますと、もうあ けがたちかくなっていて、朝もやの中にぼうっ と、 大 き な 船 が う か ん じ ょ る。 こ の あ た り で は 見 た こ と の な い、 屋 形 船 と よ ば れ る、 や ね のついたりっぱな船じゃった。 ﹁ 太 一 よ、 舟 を つ く る で︵ つ け る か ら ︶ 、ちょ いと中をのぞいちみろ。 ﹂ 93 「宮崎のむかし話」比江島重孝 鉱脈社 いはグループで話し合う。 ・考えたストーリーを発表する。 じ い さ ん は そ う い う と、 小 舟 を そ の ふ し ぎ な船に近づけ た 。 太 一 は 少 し き み が わ る か っ た が、 舟 ば た を ま た い で そ の 船 に と び う つ っ た。 船 の 上 の へ や は、 ぴ っ た り と 戸 が し ま っ て お る 。 そ っ と 戸 を あ け た 太 一 は び っ く り し て、 こ し を ぬ か しそうになっ た 。 へやの中はあざやかないろどりのうす絹や 錦 で う つ く し く か ざ ら れ、 い い か お り が た だ ﹁ な に も 気 が ね す る こ た ね え。 口 は あ れ え が、 おった。 までながれてきた小野小町︵平安初期の有名 し京のみやこから、この日向︵いまの宮崎県︶ 松の根もとには小さなほこらがあった。むか ︵中略︶ ほこらをたてたのだ。 知 っ て、 そ の た ま し い を な ぐ さ め る た め に、 らそった、うつくしく、かしこい女だったと れ た 女 の 人 が、 む か し は み や こ で 一、二 を あ ころだった。村のもんはのちに、そのおちぶ この松の下で一夜をすごした、といわれると な女流歌人︶が、だれも宿をかす人がなくて、 みな気のいいやつばかりじゃ。 ﹂ ﹁ゆっくり養生して、はようたっしゃになりな いよ︵なりなさいよ︶ 。うちは、むすめがひと りふえたとおもえばいいんじゃから。 ﹂ じ い さ ん も、 お と う も そ う い う て、 家 中 で 親身にむすめを看病してやった。 ︵中略︶ そんなある日のこと。 よ っ て お る。 ま ん 中 に は 、 ふ か ふ か の ふ と ん が し い て あ っ て、 そ の 上 に、 青 白 い 顔 を し た 土々呂の村を大じしんがおそった。 ゴーッ、ゴーッと海がなって、沖に黒い山 がもりあがり、きばのような白い波がしらが つぎからつぎへとおしよせてきた。いまにも、 この霧島山までのみこんでしまいそうないき おいだ。あまりのおそろしさに、子どもたち はなきさけび、おとなたちはいきをのんだ。 ﹁津波がくるぞーっ。 ﹂ までとどくほどにふくれあがった。 琴をかなではじめたのだ・・・ るう海にむかってなげた。そして、しずかに あがると、かみにさしていたくしを、あれく そのときだ。太一のとなりで、りょうてを あわせいのっておったむすめが、ふいに立ち ﹁女や子どもは、山へにげろーっ。 ﹂ ︵つづく︶ ︵中略︶ ﹁琴ひきの松﹂がかぜ 山 の て っ ぺ ん で は、 にあおられ、ざわざわと枝をゆらしておった。 ※﹁宮崎県の民話﹂偕成社刊より引用。 村のもんは、口ぐちによびかわした。 ご ろ ご ろ と す が た を あ ら わ し、 沖 で は 海 が 天 沖 の ほ う ま で ひ い て い っ た。 海 の 底 の 大 岩 が とびおきて浜へでた村のもんの目のまえで、 海 の 水 が、 も の す ご い い き お い で、 な ん 里 も いう山なりがひびいた。 村じゅうがぐっすりとねしずまった夜ふけ、 い き な り ぐ ら ぐ ら っ と 大 地 が ゆ れ、 ゴ ー ッ と む す め が、 よ こ に な っ て お っ た ん じ ゃ 。 む す めのまくらも と に は 、 琴 が お い て あ っ た 。 ﹁じいちゃん、女の人がねちょる。﹂ 太 一 の 声 に、 じ い さ ん も び っ く り し て 屋 形 船にのりうつ っ て き た 。 ﹁むすめごよ、あんた、どっからきなった︵き なさった︶?︶﹂ じ い さ ん が た ず ね て も、 む す め は へ ん じ も でけん。 ﹁ こ り ゃ、 え ろ う よ わ っ ち ょ る ぞ 。 太 一 、 舟 に 帆 を は れ。 は よ う つ れ ち も ど ら に ゃ 、 え れ えことになる。﹂ ︵中略︶ むすめは、ひとことも口をきかなかったが、 黒 い ひ と み に は、 な び だ が き ら り と ひ か っ て 94 知的な森の冒険 ∼複合的なプログラム∼ 他のカテゴリーの中で紹介した活動を引用しながら、複 数日の時間をかけて展開する複合的なプログラムを提案し ます。各活動のページの中でも「プログラムの展開」のア イデアを示していますが、ここでは、もう少し大きな学習 のテーマを設定して、長い時間を使って取り組む学習活動 をイメージしています。必要な時間数は多くなるので、総 合的な学習の時間や特別活動の時間を使ったり、教科横断 (クロスカリキュラム)的な計画がのぞまれます。 95 16. 大きな木に会いに行こう 「大きな木」のある森へ出かける活動を中心にして、教室での事 前学習と事後学習も含め、「木」をテーマにした様々なアプローチ の学習を展開していきます。 ねらい: ・自分たちの住む地域に残された「大きな木」について調べる過 程で、木を身近に感じ、自然に関心を持ちます。 ・木を通して地域を見直したり、木の役割や、人と木の関係など について学びます。 進め方のアウトライン: 「教室での事前学習」:木に関する学習の導入として、児童・生徒 が野外で実際に木を観察したくなるような活動を行い、自分た ちの地域にある「大きな木」を見に行く事を動機付けます。 「野外での学習の計画づくり」:児童・生徒が中心となって野外で の学習の計画をたてます。例えば地図をみながら、大きな木の ありそうな森を探したり、森に行ってどんな事をするかを相談 します。 「大きな木に会いに行く」:森に出かけて「大きな木」に出会い、 木を調べたり、様々な自然体験をします。 時 間:2 日以上 扱われる基本概念:人と自然、変化・ 時間、つながり 関連する教科:総合的な学習の時間、 国語、理科、社会 「教室での事後学習」:野外での体験で感じたり、調べたりした事 を絵に描いたり、まとめたりします。児童・生徒が関心を持っ た事柄についてさらに掘り下げていきます。 指導上の留意点:保存されている樹木 は、根元への立ち入りが禁止されてい る場合も多いので要注意。 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル 96 「大きな木に会いに行こう」プログラムの流れ * 参考資料 「森をまもる文明 支配する文明」安田喜憲 PHP 研究所 1. 教室での事前学習 「『森の思想』が人類を救う」梅原猛 小学館 例「民話の中の木に出会う」 * 巨樹についての資料 「みやざき巨樹の道 歴史とロマンを訪ねる」池田隆範 鉱 「漢字る自然」、「漢字で自然を描く」 脈社 「葉っぱジャンケン」など 「ひむか巨樹マップ」 2. 野外での学習の計画づくり 3. 大きな木に会いに行く 共生のシステムを持った生活林が維持されてきた。 例「色さがし」 また、平地の市街地でも神社や寺院などの敷地に、 「木のプロフィール」「木の身体検査」 いわゆる鎮守の森が残されており、都市の中の憩い 「ヒストリー hisTree」など の場所になっている。宮崎県内の市街地にもその様 4. 教室での事後学習 な場所がたくさんある。太古おそらく鬱蒼と覆われ 例「樹齢を推定する」 ていたであろう平地の森が、わずかながら「鎮守の 「木を時間的なスケールにして地域の 森」として点々と残されているのである。西欧の教 歴史を考える」 会などには通常社寺林のような森は見られない。こ 「木の用途を調べよう」 のような違いは、縄文時代以来森を畏敬し、万物に 「街の中での木の役割 」「生きものに 神が宿ると考える日本人の精神的風土によるものだ とっての木の役割」 「葉っぱでアート」 「物語の中の木」 など と考えられている。日本人の自然観の中には、森の 文化に立脚した再生、循環、共生の思想が息づいて いるのである *。 宗教・思想的な観点は除いたとしても、これから の森林保全や、森林と人の関わりを考えるとき、私 ●プログラムの背景 たちが文化的に持っている森への感情や、森から得 ている精神的は影響を排除することはできない。自 このプログラムを実施するフィールドは、それぞ 然観察を通じて科学的に森林を理解していくことと れの地域に残された「鎮守の森」のような場所をイ 共に、森や自然を敬う気持ちや、森を心地よいと思 メージして考えられている。鎮守の森にはしばしば えるような自然観を醸成する機会が必要であると考 「大きな木」が残されている。 える。 「大きな木」のある森と出会うことにはその 存在感のある「大きな木」は、生きものとしての ような意味がある。 木の素晴らしさや、人と木の関係を学ぶ格好の題材 である。「大きな木」がそこにある事の意味や、木 ●バリエーション例 が過ごしてきた時間などについて思いをめぐらせた い。 「教室を森にしよう」 文明が早くから発達したヨーロッパでは、歴史の きわめて早い段階から森林の伐採が進行し、主だっ 森に出かけ「大きな木」に出会う活動を中心にし た古い都市周辺では森林地帯は著しく限られるまで て、様々なバリエーションが可能である。総合的な に至った。日本でも農耕文化の到来以来、森林は伐 学習の時間や他の教科の中にも木を題材にした学習 採され、さらに都市化とともに急速に森は失われて を取り込んで機会を増やしたい。例えば理科、社会、 いったが、西欧世界のそれとは明らかに異なってい 図画工作、国語(含む書写)などで取り組むことが る。日本には現在もかなりの面積の森が残されてい できるだろう。 る。山岳地帯はもちろんであるが、人々が居住して いる場所でもつい最近までは「里山」という循環・ 97 プログラムが進行するに伴って、教室の中に、児 童・生徒が描いた絵や、習字の作品、壁新聞などが 木がそこにある事の意味を考えられるような活動を 次々に増えて、最終的には教室が森のようになった 行う。木をよく観察する「木のプロフィール」 、あ ら楽しい。また、学習の履歴を積み上げていくとい るいは「木の身体検査」と「ヒストリー hisTree」 う意味では、近年海外から紹介されて多くの取組事 を組み合わせておこなってもいいだろう。現地の時 例が報告されている「ポートフォリオ」の導入も検 間はできるだけ体験の時間に使い、絵を描いたり、 討の価値がある。 まとめたりする作業はできるだけ教室に戻っての事 後学習にまわすとよい。ただし事後学習に必要な材 「教室での事前学習」 料や情報は忘れずに持ち帰る。例えば、 「葉っぱで アート」に使う葉など。 木に関する学習にあたって、まず木に関心を持た せる活動を行いたい。校庭を使って「感性のとびら を開く」のカテゴリーに紹介した「葉っぱジャン 「教室での事後学習」 野外で体験した事を表現したり、まとめたりする ケン」や「色さがし」などの活動を行ってもよいだ 作業を通じて、学んだ事を明確にし、体験をより印 ろう。室内での活動としては「民話の中の木に出会 象深いものにしていく。 「木の身体検査」の中に記 う」や「漢字る自然」、「漢字で自然を描く」などを 述した「教室で木を再現する」は特に勧めたい。教 行い、昔から人が木と関わり合ってきた事を実感さ 室の床にテープで「大きな木」の幹周りの大きさを せたい。その上で、自分たちの住む地域にも昔から 再現すると、木の大きさが改めて実感できるだろう。 残されてきた「大きな木」のある森があることを知 実物大は無理としても、木全体を教室に再現するの らせる。 も面白い(次ページ写真参照) 。 「野外での学習の計画づくり」 「ヒストリー hisTree」の中のプログラム展開と して記述した「木を時間的なスケールにして地域の 目的地は最終的に指導者が決めるとしても、地域 歴史を考える」も勧められる。 の地図を拡げ、どのような場所に「大きな木」のあ 個人の課題としては「葉っぱでアート」や、オー る森がありそうか、また「大きな木」に出あったら ソドックスに「大きな木」の絵を描くのも意義深い 何をするかについても児童・生徒といっしょに検討 だろう。また「物語の中の木」の手法で、木に対す したい。 る感性を拡げていきたい。 「大きな木に出会ったら何をしたい?」 ●プログラムの展開 「大きな木に会いに行く」 森では、直接的な自然体験をできるだけたくさん 季節を変えて「大きな木」を見に行ったり、樹齢 行いたい。「感性のとびらを開く」のカテゴリーで や地域の人の木との関わりを調べるなど、さまざま 扱ったさまざまなプログラムを状況に合わせて実施 な展開が考えられる。児童・生徒が体験を通じて関 する。 心を持ったことを、さらに深く掘り下げるような学 「大きな木」については木の大きさを実感したり、 習(調べ学習)を行い、表現して誰かに伝えるよう 98 な流れを作りたい。 がする」など。 表現するプログラムを追加で一つ紹介する。 ・5∼ 8 人ぐらいのグループを作り、全員のカー ドを集める。 「大きな木の詩」 ・皆で相談しながら、カードに書かれたすべての 言葉を使って一編の詩を作る。 概要:学習を通じて感じた事を「大きな木の詩」に まとめる。 ※カードに書かれていない言葉は極力追加しない。 進め方: ・朗読会をしよう! ・「大きな木」の学習を通じて感じた言葉を一人 2 ・ 「大きな木」の絵を描いている場合は、絵といっ しょに掲示するとよい。 ∼ 3 個ずつカードに記入する(1 枚のカードに一 つの言葉)。 ※書く言葉は単語か短い文章にする。例えば、 「た 出典:スティーブ・ヴァン・メーター氏のワークショッ くましい」とか「ずっと立っていた」、「いい匂い プで紹介された活動を元に作成 ※「木をかこう」 ブルーノ・ムナーリ 著須賀敦 子訳 に紹介されている手法で木を描いている。 99 17. 学校に木を植える 木の役割や、人や動物との関係について学び、その知識を活か しながら学校の緑化プランを考え、実際に 1 本の木を植えます。 ねらい: ・子ども達自身が木の役割を考え、目的を持って木を植えること を通じ、環境に関わることの意義や面白さについて学びます。 ・木を植えることを通じて、地域や自然と自分との結びつきを深 めます。 進め方のアウトライン: ・ゲーム的な活動を通じて、学校内にどのような木があるかをお おまかに把握するとともに、木に関心を持たせます。 ・人にとっての木の役割や、木と動物の関係などについて学ぶ活 動を行います。 ※木について様々な視点を持っていた方がよいので、時間が取れ る場合は、木に関する様々な学習を行うとよいでしょう。 ・現在の学校の平面図(簡潔な物で可)を用意します。既存の平 面図に木に関する情報が少ない場合は、調査して、植栽されて いる植物の種類などの情報を書き込みます。 ・学校を、人や生きものにとって住みやすい場所にすることを目 的に、学校の敷地がどうなったらよいか、グループで検討して オリジナルの学校緑化プランを作ります。 ・検討したプランに沿って実際に 1 本の木を植樹します。 100 時 間:2 日以上 扱われる基本概念:人と自然、変化・ 時間、つながり 関連する教科:総合的な学習の時間、 国語、理科、社会 指導上の留意点:植樹については、緑 化プラン作りの前に目標として示すの でなく、プラン作りに取り組んだ後に 新たな課題として示すことに留意して 下さい。 出 典:自然教育研究センターオリジ ナル ンを考えること」と「1 本の木を植えること」を行 為目標とした。その過程には様々な教育的な意義が 生じると思われる。 ●バリエーション例 「校内の木に関心を持たせる」 ●プログラムの背景 本プログラムで目標にしている緑化プラン作りに 向かうためには、まず校内の代表的な植物の種類や、 この一連の活動は、学校の卒業記念などに行われ どこに何が生えているかについて、おおまかに把握 る記念植樹を、森林環境教育の観点からプログラム させたい。また、プログラムの導入的な部分でもあ 化したものである。通常の記念植樹ではおそらく植 るので、いきなり調べ学習的に始まるよりも、楽し える樹種や場所などを教員側が決めていると推測さ いゲーム的な活動を行い、十分な動機付けを行い れるが、児童・生徒自身の考えに基づいてそれらを たい。 決定できたら、木に対する思い入れが増すに違いな 「葉っぱジャンケン」は導入プログラムとして適 い。 しているので、豊富に木がある場合は「葉っぱジャ 一方、学校における環境学習の手段として「ビオ ンケン」から入り、集めた葉っぱを分類して種類を トープ」が注目を浴びるようになってきた。 「ビオ 調べていくような展開が勧められる。 トープ」とはドイツ語の BIO(生物)と TOP(場所) こすりだしの手法に向いたサクラ類などの落葉樹 をつなげた合成語で、『野生生物の生育場所』と訳 がある場合は「こすりだし葉っぱ図鑑」もよいだろ される。都市化により自然が失われる中で、自然を う。樹種がごく少数に限られている場合は、別の手 保全することと共に、自然を復元することの重要性 法を考える必要がある。 が指摘されている。それに伴い市民や行政、企業な ど様々な主体によってビオトープ創りの取組が始 まっている。ビオトープは、地域に在来の樹種にこ 「人と木、木と動物の関係性について学ぶ」 だわる点や、生きものの生息地としての機能を重視 この部分は、緑化プランを考えるための予備知識 する点で従来の造園的な緑化と異なっている。また を得ることを目的にしている。人がどのような用途 ビオトープづくりの過程やその維持、モニタリング に木を活用しているか、日陰や防風といった実益的 などは環境教育的な素材に満ちていることから、学 な側面だけでなく、 「心を和ませる」など精神的な 校での取組も全国的に広まっている。しかし学校で 部分での関わりについても意識させたい。また木が のビオトープ作りには校内でのコンセンサスづくり あることで、鳥や昆虫などの生きものの生息に貢献 や予算、技術などハードルは低くない。 できることも学ばせたい。時間的な制限で「街の中 このような背景から、本プログラムでは多くの現 での木の役割」や「生きものにとっての木の役割」 場で手軽に取り組めることに配慮して、「緑化プラ 101 が実施できない場合は、教室内で写真などの教材を 使って同様の目的の活動を行うとよいだろう。 合意のしやすい 4 人から 6 人ぐらいの人数がよい また「物語の中の木」の手法を使って、木が人に だろう。現在の平面図を作業用に数枚コピーしてグ ループに渡す。グループは時間をかけてディスカッ 及ぼす影響や、木を植えることの意味を考えさせる ションを行い、少し大きめの画用紙や模造紙にプラ のも大きな意味がある。 ンをまとめる。 「緑化プランを作る」 発表会を行い、グループごとにプランを発表する。 中学や高校などで取り組む場合は、廊下などに張り 用意する平面図の見本を次ページに示す。プラン 出し、投票をしてもらうコンペティション方式も考 作りはシミュレーションとして行うものなので、平 えられる(競争することは、やる気を高めるための 面図は簡潔な物で構わない。ただし、現在の植栽木 方策で、目的ではないので要注意) 。 などは少し丁寧に書き込みたい。この部分は児童・ 生徒自身に調査させることもできるし(その方が好 「1 本の木を植える」 ましい)、時間を節約するのであれば指導者が準備 することもできる。 プランをすべて実現することは難しいが、プラン プラン作りにあたっては目的を明確に示す。例え の考え方に沿って、1 本の木の植樹をぜひ行いたい。 机上で終わるか、たとえ 1 本でも実際に行うかは ば、「今よりも人や生きものにとって住みやすい学 校にするためにはどうしたらいいか?」など。また、 学校内で花が咲いたり、鳥や蝶などが訪れたら魅力 大きな違いがある。どのような木を植えるかは、話 し合いで決定する。学校には予算や管理上の制限も 多々あると思われるが、できるだけ児童・生徒の考 ある学校になるというようなイメージもあらかじめ 共有したい。視点としては次のような項目が考えら えに沿って実現するように大人側も努力したい。 れる。 なお本プログラムでは、児童・生徒にスタート時 点で緑化プラン作りや木を植えるという目標を示す - 木陰を作る木を植える。 のではなく、一つの活動が終わったら次の目標を提 - 花や実を楽しめる木を植える。 示していく形をとりたい。 - 一年中花が咲いている学校にする。 - 風よけになるように木を植える。 - 児童・生徒の遊びの場になるように木を植える。 - もの作りの材料になるような木を植える。 - 野鳥に餌を提供する実を付ける木を植える。 - 昆虫の食草になる木を植える。 - バッタなどが棲めるような草原を作る。 - 生きものが棲める水辺を作る。 ●プログラムの展開 「学校ビオトープ」 本プログラムのような取組を通して、関係者の合 意や協力が得られるようであれば、ビオトープ作り へと向かうのもたいへん興味深い。学校におけるビ オトープに関しては、様々な事例報告や資料がある。 プラン作りはグループワークで行う。意見交換や 102 「苗木作り」 重ね合わせて見るという意義もある。時が経過して 植樹するための苗を学校で育てるような手法も考 えられる。ただし、苗の生長には時間がかかるので、 長期的な取組になる。入学時にドングリなどを植え 学校に戻って来た子ども達は、自分たちの植えた木 を探すだろうか? そのような思い入れが持てるよ うに指導できたら素晴らしいと思う。 て卒業時に植樹したり、上の学年が蒔種して育て た苗を後輩が数年後に植樹するというような、世代 を超えた活動に発展させられるかもしれない。 木を植えることは、木の生長と自分自身の成長を 103 * 緑化用の苗木については、次のところに相談して下さい。 ・環境森林部自然環境課緑化推進係 (0985-26-7159) ・(社)宮崎県緑化推進機構(0985-31-7759) ・各市町村「緑の募金」窓口(市町村みどり推進会議) ●活動さくいん 【ア行】 集めた音を分類する 24 家の中で竹をさがそう 71 生きものにとっての木の役割 83 一本の木に葉は何枚あるか? 54 色鬼 19 色さがし 16 色に名前をつけよう 19 枝の広がりの幅を測る 53 大きな木に会いに行こう 96 大きな木の詩 99 おとしたものは? 25 音の地図づくり 23 音を思い描こう 20 お面作り 37 102 漢字る自然 74 木と他の生きものとの関係を調べよう 62 木の戸籍調べ 82 木の身体検査 50 木の高さを測る 53 木の太さを測る 53 木のプロフィール 58 木のプロフィール、別の季節編 63 木の幹のこすりだし図鑑 45 木の用途を調べよう 80 教室で木を再現する 54 39 くりかえし言葉で集まれ! 30 くりかえし言葉をさがせ 29 こすりだしでお絵かき 46 こすりだし葉っぱ図鑑 44 ことわざや慣用句の中に竹を探そう 71 24 さわってさがそう 26 81 触覚の伝言 29 スケッチ 19 ステンドグラス塗り絵 41 竹林を見に行こう 72 地上に絵を描く 37 伝統色を探そう 18 伝統的な木製品を調べる 81 103 28 【ハ行】 葉っぱじゃんけん 32 葉っぱステンシル 38 葉っぱステンドグラス 38 葉っぱでアート 36 葉っぱで絵手紙 41 葉っぱでお絵かき 40 葉っぱのちぎり絵 38 葉っぱのラインナップ 34 葉の面積はどれくらい? 55 ヒストリー hisTree 64 人の名前の中から『木』を探す 76 68 53 【マ行】 街の中での木の役割 83 民話の中の木に出会う 90 昔話のその後は? 93 目立つ色、目立たない色 19 もとの形を思い描こう 76 物語の中の木 84 森のタネを集めよう、分けてみよう 森の中で耳を澄ませる 88 22 【ヤ行】 【サ行】 サウンドオフ 食品としての木 方眼紙に木をスケッチする 75 草花あそび 67 変、竹林 木を時間的なスケール地域の歴史を考える 67 『木』を含む漢字の意味を考える 樹齢を推定する 匂いで探す 学校ビオトープ 78 34 苗木作り 100 漢字で自然を描く 自然について学ぶ理科的な展開 【ナ行】 学校に木を植える 78 88 【タ行】 【カ行】 漢字って感じ 散布型で分けてみよう やっタネ!誰が遠くに飛ばすか選手権 105 86 106 資 料 107 編 ●森林環境教育に活用できる宮崎県内の文化施設 宮崎県の自然・歴史・産業・民俗について学ぶ 宮崎県総合博物館 宮崎市神宮 2-4-4 TEL: 0985-24-2071 宮崎県立図書館 宮崎市船塚 3-210-1 総合文化公園内 TEL: 0985-29-2596 みやざき歴史文化館 宮崎市大字芳士 2258-3 TEL: 0985-39-6911 西都市歴史民俗資料館 西都市大字妻 1241-1 TEL: 0983-43-0846 宮崎県立西都原考古博物館 西都市大字三宅字西都原西 5670 TEL: 0983-41-0041 同古代生活体験館 同 上 TEL:0983-43-5002 森林・自然環境について学ぶ 森の科学館(宮崎県林業総合センター内)東臼杵郡西郷村大字田代 1561-1 TEL: 0982-66-2004 照葉樹林文化館 綾町南俣大口 5691-1 TEL: 0985-77-2055 えびのエコミュージアムセンター えびの市末長 1495-5 TEL: 0984-33-3002 大淀川学習館 宮崎市下北方町 5348-1 TEL: 0985-20-5685 リバーパル五ヶ瀬川 延岡市牧町河口付近埋立地内 TEL:0982-42-3005 宮崎市宮脇町 38-3 TEL: 0985-23-2700 河川について学ぶ 科学について学ぶ 宮崎科学技術館 その他、施設・フィールド探しに役立つウェブサイト 宮崎県都市公園ガイド http://www.pref.miyazaki.jp/doboku/kouen/m-kouen-gesui/web/index.html 財団法人 宮崎県公園協会 http://www.mppf.or.jp/ 108 参考資料 木や森林に関する資料にはきわめてたくさんの種 やせた土地に木を植えて森をつくった男と森を利 類があります。ここでは、本書の中で引用した図書 用する人々の話。 を中心に、森林環境教育に役立つ資料を選りすぐっ て紹介します。 「おぼえていろよ おおきな木」 佐野洋子 講談社 身近にある木の大切さを、なくしてから初めて気 づくおじさんの話。平易な文章と表現で小さい子 子ども向けの図書 どもも楽しめる。 「20 本の木のノート」 いわさゆうこ・大滝玲子 文化出版局 身近でみられる木と木にまつわるトピックスをイ 「木のうた」 イエラ・マリ著他 ほるぷ出版 1 本の木を中心にした四季の移り変わり。文章は なく、きれいな絵だけで綴られている。 ラストで分かりやすく紹介。子どもだけでなく大 人も十分に楽しめる。本プログラム集内の活動 「木 のプロフィール」の参考資料として役に立つ。 「モチモチの木」 斎藤隆介・滝平二郎 岩崎書店 トチノキのある家に住むおじいさんと臆病な男の 子の話。トチノキが重要な役どころで描かれてい 「どんぐりノート」 いわさゆうこ・大滝玲子 文化 る。 出版局 ドングリとドングリのなる木のことがよくわか る。子どもにも大人にもおすすめ。 「さわる・五感の本 はじめての発見」 クロード・ デラフォッス他著 手塚千史訳 岳陽舎 「木の本」 高森登志夫・萩原信介 福音館書店 「かぐ・五感の本 はじめての発見」 クロード・デ ラフォッス他著 手塚千史訳 岳陽舎 木や葉の形が細かなイラストで描かれている。絵 本としても、簡易的な図鑑としても利用できる。 五感の不思議に気づく絵本。大人と子どもが一緒 に楽しめる。 「たねのずかん とぶ・はじける・くっつく」 高森 登志夫・古矢一穂 福音館書店 さまざまなタネがイラストで紹介されている。タ 「木をかこう」 ブルーノ・ムナーリ著 須賀敦子訳 至光社 ネのプログラムを行うときは役に立つ。 「大きな木」 シェル・シルヴァンスタイン著他 篠 崎書林 教科書にも掲載されている有名な物語。木の恵み 民話・神話 「全国県別民話集 ふるさとの民話」全 47 巻 「宮 や人と自然の関わりについて考えさせられる。 崎県の民話」 「大分県の民話」 「三重県の民話」 「奈 良県の民話」 「京都府の民話」 「兵庫県の民話」 「東 「木を植えた男」 ジャン・ジオノ著他 あすなろ書 京都の民話」 「千葉県の民話」 「どんな民話ききた 房 い?」他 日本児童文学者協会編 偕成社 110 「松谷みよ子のむかしむかし 7」松谷みよ子 講談社 「木の見かた、楽しみかた ツリーウォッチング入 「宮崎のむかし話」 比江島重孝 鉱脈社 門」 八田洋章 朝日新聞社 「日本の神話 第 6 巻 うみさち やまさち」 赤羽末 ツリーウォッチングのポイントが紹介されてお 吉・舟崎勝彦 あすなろ書房 り、これから自然観察を始める人に最適。 <林業的なアプローチ> 指導者(大人)向けの資料 「森の手入れ、森の遊び」 中川重年 社団法人全国 林業改良普及協会 <植物・樹木・森林について> 「森を知る、森を楽しむ」中川重年 社団法人全国 「原寸イラストによる落葉図鑑」 吉山寛・石川美枝 子 文一総合出版 林業改良普及協会 「まちの森生活 ソフト林業入門」中川重年他 社団 法人全国林業改良普及協会 白黒のイラストからなる葉っぱ図鑑。葉脈や鋸歯 林業家の知識や技術を、一般の人が楽しめる活動 などの葉の特徴が細かく描かれているので、葉の として紹介しており森での活動にたいへん参考に 識別に役立つ。 なる。 「図解 樹木の診断と手当て 木を診る 木を読む 木と語る」 堀大才・岩谷美苗 農文協 樹木医による、木の見方がわかる本。イラストと 平易な文章からなり、樹木の知識が少ない人にも 分かりやすい。 <竹の関係> 「竹の世界 Part1」 室井ひろし 地人書館 「竹の世界 Part2」 室井ひろし 地人書館 「竹資源 新素材 『竹』の産業化が始まった」清岡 高敏 マネジメント社 「森林の 100 不思議」 日本林業技術協会編 東京 書籍 「森の木の 100 不思議」 日本林業技術協会編 東 「竹を知る本」 室井ひろし 地人書館 「竹のはなし」 上田弘一郎 PHP 研究所 「平成 15 年度 森林・林業白書(森林及び林業の 動向に関する年次報告) 」 林野庁 社団法人日本 京書籍 林業協会 「森林の環境 100 不思議」 日本林業技術協会編 東京書籍 <タネの関係> 1 つの不思議につき 2 ページほどで紹介されてい る。読み物としても面白く、森林に関する豆知識 を得られる。 「タネはどこからきたか?」 鷲谷いづみ・埴沙萠 山と渓谷社 種子の工夫について必要最低限の文章で紹介。写 「木材のふしぎ - 年輪はかたる - 」 大阪自然史博物 館 第 15 回特別展解説書 真が多い。 「種子はひろがる」 中西弘樹 平凡社 111 「探して楽しむ ドングリと松ぼっくり」 平野隆久 会編 平凡社 写真 山と渓谷社 野外活動で出会う可能性のある危険な動植物と、 美しい写真で構成され、図鑑としても使える。 その応急処置等の方法が分かる。 「木と動物の森づくり - 樹木の種子散布大作戦」 斎 藤新一郎 八坂書房 「種子散布 助けあいの進化論〈1〉鳥が運ぶ種子」 上田恵介 築地書館 「種子散布 助けあいの進化論〈2〉動物たちがつ くる森」 上田恵介 築地書館 <森と人間の歴史・文化、巨樹> 「森をまもる文明 支配する文明」安田喜憲 「『森の思想』が人類を救う」梅原猛 小学館 「みやざき巨樹の道 歴史とロマンを訪ねる」池田隆 範 鉱脈社 ウェブサイト <森林関係> 「NHK 教育テレビ『たったひとつの地球』 」 http://www.nhk.or.jp/tatta/ja/frame.html NHK 教育テレビの番組ウェブサイト。森林・海 など、いろいろな自然環境の情報がある。 「みんなの森データ編(社団法人国土緑化推進機構) 」 http://www.minnanomori.com/index.html 森林についての情報満載。子ども用に作られてお り分かりやすい。 「ひむか巨樹マップ」 <環境教育その他> 「センス・オブ・ワンダー」 レイチェル・カーソン 著 上遠恵子訳 新潮社 環境教育に関わる多くの人の必読書として有名な <地域の情報> 「県緑化推進機構」 http://www.miyazaki-midori.org/ 緑の募金や森林ボランティア団体の紹介などがあ 本。 「森の楽校」 小林毅 山と渓谷社 森の中で遊ぶヒントが満載。 「日本の伝統色」 大日本インキ化学工業株式会社 「日本の伝統色 - その色名と色調」長崎盛輝 青幻舎 「いろさがし」の参考資料として。色の名前の多 さに驚く。 「図説 漢字の成り立ち辞典」 辻井京雲 教育出版 「感じの漢字」 高橋政巳 扶桑社 「野外における危険な生物」 ( 財 ) 日本自然保護協 る。 「みやざきの環境」 http://eco.pref.miyazaki.jp/ 宮崎の環境に関する様々な事例が紹介してある。 「社団法人宮崎県林業協会」 http://www.m-forest-a.or.jp/kyoukai.html 宮崎県の森や林業の情報がある。 「みやざき ひむか学ネット」 http://www.pref.miyazaki.jp/kyouiku/kikaku/ himukagaku/ 地域の自然や文化の情報が子どもにも調べられる ようにまとめられている。宮崎県教育庁教育企画 112 室 のサイト。 フォーラム内) 以下の事例集が見られる。 <ビオトープ関連> - 中学校での「総合的な時間」に役立つ「自然体 験アクティビティ集」 「日本ビオトープ協会」 - 小学校での総合的な学習の時間に役立つ身近な http://www.biotope.gr.jp/ 自然から気づききっかけプログラム集 「全国学校ビオトープ・ネットワーク 」 -「総合的な学習の時間」に役立つ川や海などの http://www.ds-j.com/nature/jsbn/ 水辺でできる自然体験アクティビティ集 <木材> <海外のウェブサイト> 「みやざき製材品カタログ」 http://www.pref.miyazaki.jp/rinmu/ringyokan/ 「National Wildlife Federation」 index.html http://nwf.org/ 宮崎県林務部木材振興課 のサイト。建築材など 米国の自然保護団体。子ども向けの環境教育アク に関する情報。 ティビティが充実している。 「三菱鉛筆株式会社」 「Envirolink」 http://mpuni.co.jp/ http://www.envirolink.org/ 「株式会社トンボ鉛筆」 環境関係の情報が大量に得られる。 http://www.tombow.com/ エンピツの材質について調べられる。 <活動事例集> 自然体験活動や環境教育のプログラムが紹介され ているサイト。 「自然観察の森ティーチャーズガイド『はじめの一 歩』」 h t t p : / / w w w . n a t s . j e e f . o r. j p / k a n s a t s u / teacher.html 自然大好きクラブの「自然観察の森へ行こう!」 のページから入る。 「キッズネイチャープログラム」 http://www.jeef.or.jp/ (社団法人日本環境教育 113 <プログラム改善のための情報提供(フィードバック)のお願い> 本書のプログラムをよりよいものに改善していくために、実施された指導者からの建設的なフィード バックをお待ちしております。 森林環境教育プログラムのフィードバック ●お名前 ●実施場所 ●所属(学校等) ●実施日 ●実施対象(学年など) ●実施した活動 ●実施しての感想・参加者の反応 ●改善点のご提案 ●その他のご意見 FAX 送信先:宮崎県環境森林部自然環境課緑化推進係 0985-38-8489 114 ●執筆担当者 プログラムについて 本書の位置付け 古瀬浩史 本書の構成 古瀬浩史 体験的な学びのために 古瀬浩史 学齢にあった活動、教科学習との関連について 古瀬浩史・仲上美和 活動集 1. 色さがし 古瀬浩史 2. 音を思い描こう 杉本幸子・古瀬浩史 3. さわってさがそう 古瀬浩史・仲上美和 4. 葉っぱじゃんけん 古瀬浩史 5. 葉っぱでアート 仲上美和 6. 葉っぱでお絵かき 仲上美和・古瀬浩史 7. こすりだし葉っぱ図鑑 仲上美和 8. 木の身体検査 古瀬浩史 9. 木のプロフィール 古瀬浩史 10. ヒストリー hisTree 古瀬浩史 11. 変、竹林 秋元秀友 12. 漢字る自然 杉本幸子 13. 木の用途を調べよう 古瀬浩史・仲上美和 14. やっタネ!誰が遠くに飛ばすか選手権 古瀬浩史・秋元秀友 15. 民話の中の木に出会う 古瀬浩史・仲上美和 16. 大きな木に会いに行こう 古瀬浩史 17. 学校に木を植える 古瀬浩史 資料集 仲上美和・古瀬浩史 イラスト:辛島晴美 ※上記の活動や、本書内で紹介した他の活動には、執筆者とは別に原案の考案者が いる場合があります。出典や原案の考案者は可能な限り各ページに記載しました。 転載する場合などは必ず出典を明記して下さい。 115 さいごに 本書の制作をお手伝いさせて頂いたスタッフが、調査のため宮 崎県の森林を訪ね歩いた際、もっとも強く印象に残ったことは、 「森 と人との距離が近い」ということでした。日向灘に面した平地の 市街地から、山に向かってほんの少し車を走らせると、急速に勾 配がきつくなり、川は渓谷へと姿を変え、奥深い森が突然現れます。 市街地の中にも小さな森がみられ、郊外にはたくさんの巨樹があ りました。 物理的に距離が近いという事はたいへん素晴らしい事だと感じ ました。さて、子ども達と森との気持ちの上では距離はどうでしょ うか? 生涯学習審議会の平成 11 年の答申によれば、現代の子ど も達の約半分(女子で 54%、男子で 37%) は木登りの経験がない ということです。森の探検よりもコンピュータゲームの世界の探 検に夢中な子どもが多いのかもしれません。 私たちの社会が持続していくためには、森と人との関わりをあ らめて見直していくことが必要だと言われています。 本書が宮崎の子どもたちと森の距離を小さくする事に、少しで も役立てば幸いです。 「感動体験 みやざきの森」 宮崎県森林環境教育プログラム ティーチャーズガイド 平成 17 年 3 月 25 日発行 発行:宮崎県環境森林部自然環境課 宮崎市橘通東 2 丁目 10 番 1 号 電話 (0985)26-7159 制作:株式会社 自然教育研究センター 116