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発表資料
人の動きに調和した 移動ロボット技術 埼玉大学 大学院 理工学研究科 准教授 小林 貴訓 1 従来技術とその問題点 • 電動車いすやセグウェイなどの個人用移動体, 自動的に動く電動台車などの普及が始まっている • 移動ロボットの分野では,自己位置同定,経路計画, 障害物回避手法などの研究が盛ん • 移動ロボットが周囲の歩行者と混在するためには, 周囲の人の動きと調和して移動できる必要がある 移動ロボット技術 人物行動計測技術 人と調和したロボットの動作デザイン 2 ロボット車いす 少子高齢化社会を背景に車いすの潜在的需要が増加 車いす利用時はだれかと行動を共にすることが多い 介護者不足,老老介護など,介護者を支援する必要性 -歩くこともでき,歩いた方が良い場合も多いが, 高齢者介護施設などでは効率や安全のために 車椅子を使う -被介護者は人に頼りたくない,迷惑をかけたくない と思っている 同伴者と協調して 自律移動するロボット車いす 環境や人など周囲の状況 同伴者との会話 を考慮した協調追従 3 社会背景 少子高齢化社会を背景に車いすの潜在的需要が増加 – 65歳以上人口のおよそ30%が 移動に補助が必要 – 電動車いすは全車椅子中約6% 金額ベースで30%程度 – 市場規模は2014年頃で年間 60億円(約2万台).30万円/台 現役世代に対する高齢者の割合が 50%を超える超高齢社会の到来 平成27年版 情報通信白書 電動車いすのうち,シニアカーの出 荷台数が2000年以降減少著しい 一方,簡易型の電動車いすの出荷 は微増傾向 電動車いす安全普及協会 http://www.den-ankyo.org/society/transition.html 4 介護施設では 同伴者と協調移動できるロボット車いすの開発 5 これまでに開発済みの基盤技術 同伴者の見守りの下,自律移動できるロボット車いす – 横に並んで移動できる – 1人で複数台を移動できる – 自動走行中の障害物の回避 顔を見て会話がしやすい 同伴者の負担減 6 車いすの自律移動 レーザ測域センサと車いすのオドメトリを利用 自己位置推定 – 事前に収集したセンサデータより地図を作成 – 地図上の位置と姿勢(向き)を推定 経路に沿った自律移動 – スタート地点とゴール地点 の指示により経路を生成 レーザ 測域センサ オドメトリ: 車輪の回転速度 7 施設内地図の利用 事前収集した計測点データを統計量で表現 時系列フィルタリング処理により自己位置を推定 自己位置推定と目的地までの移動 50m 70m 介護施設内の 環境を計測 自己位置推定 のための地図 を作成 小型レーザ側域センサ1台で実現 8 障害物の回避 車いすが走行してよい「道路」を追記した地図を利用 基本的に指示された軌跡に沿って真っ直ぐ走行 障害物(医療機器,配膳車等)があるときは,幅と奥行きを 考慮して,もとの経路と平行に走行 軌跡 障害物 障害物があり、目的地に 到達できない 障害物を回避する軌跡 十分な幅があり、奥まで 進めそうな箇所を走行 これまでの移動ロボットは障害物からできるだけ離れた場所を 走行するアルゴリズムを用いることが多い 進路予期が難しくなる.蛇行・乗り心地の悪化をまねく 9 車いす搭載センサによる同伴者の観察 レーザ測域センサと全方位カメラの組合せ – 身体の位置,向き,顔の向きなどを計測可能 顔の向き 身体の位置 身体の向き 相補的なセンサの組み合せと情報の統合的利用 計測範囲の重畳とコンパクトな構成 10 同伴者の行動計測 パーティクルフィルタによる追跡 – 仮説の評価を双方のセンサで行い統合 – 全方位カメラ画像での 評価は識別器を利用 Time t 1 Sample 全方位カメラ 画像による評価 運動モデル ランダムウォーク Time wti,cam i i t w 尤度の統合 wti,laser wti,cam i t ,laser w t sample1 sample2 レーザ測域センサによる評価 11 レーザ測域センサによる仮説評価 unobservable contour 肩のあたりの身体を水平に計測した ときに予測される輪郭 (x,y ) θ observable contour evaluation points レーザ測域センサとの位置関係によ り形状が変化する楕円形の一部 laser range sensor 楕円上の各点と実際に得られた 距離データとの差の最大値で評価 w exp 2 d max d d max の計算の高速化のために距離画像を利用 12 同伴者の追跡 13 複数人物の追跡 複数センサ情報の統合 パーティクルフィルタの仮説尤度計算をGPGPUで並列化 Laser range sensor B d dmax c d 0 Evaluation points b a b 0 a c 距離画像変換 Observed contour Laser range sensor 14 グループ識別 複数人物の追跡結果から,一緒に移動する グループを識別 15 グループ識別のための特徴量 近くにいる i d 話すときに相手のほうを見る j i j i, j 同じものを一緒に見る j j i i i 相手に対する 身体の向き 2人の間の 距離 i, j 歩調を合わせて歩く j v 同じ目的地に行く j j i 2人の速度の差 2人の身体の向きの差 i, j j i i v j 立ち止まっているときは 速度特徴量は使わない 2人の進行方向の差 16 グループ識別の様子 17 BLEによる同伴者の近接性の認識 車いすは自律移動が可能なので, 同伴者が近くに居ることだけ分かればよい – スマートフォンでできないか? – Bluetooth Low Energy(BLE)の 電波受信強度を利用 BLE受信機 BLE発信機 強 車いすの周囲1m 車いす 送信機 : 送信機 各送信機からの受信強度を用いて おおよその位置を特定できないか 弱 18 スマートフォンによる同伴者の認識 スマートフォン所持者(同伴者)が近くにいると動く 19 車いすの呼び出し返却の自動化 車いすは利用者毎に仕様が異なることが多い – スマートフォンで特定の車いすを呼び寄せたい 20 ショッピングカート ロボット車いすの自律移動機能をショッピングカートに 21 ロボット化ユニット 汎用性を考慮した構成 – モータインタフェース以外はハードウェアの改造不要 – 躯体変更時の影響を最小化して汎用性を確保 電動移動体に設置 ユニットハウジング LANケーブル ソフトウェア ユニット ユーザの スマートフォン レーザ測域センサ モータインタフェース用 ソフトウェア 安全装置 USB ハードウェア ユニット BLE発信機 内蔵IMU モータ インタフェース 駆動 モータ 車輪回転量センサ 22 会話状況に基づく位置関係の変化 同伴者がリモコンで車椅子を操作する状況を観察 – – 車椅子に対する同伴者の相対位置は自由 「会話タスク有り」と「会話タスク無し」で実験 会話タスク 世界遺産を車椅子搭乗者と 同伴者で協力して地図から探す 23 会話時の併進 会話タスク有りのときは 同伴者は併進 会話タスク無しのときは 同伴者は後ろから操作 100% 0 80% 60% 7 5 40% 20% 1 0% 会話タスクあり 横位置 会話タスクなし 後位置 会話時はなるべく併進しようとする 24 グループで会話しながら移動 会話タスクを与え,車椅子利用者2名と同伴者2名が グループで移動する状況を観察 会話タスク ①被験者4人1グループで,1人1枚ずつ食材がかかれたカードを引く ②折り返し地点で調味料がかかれたカードをグループで1枚だけ引く ③出発地点に再び戻ってくるまでの間に食材と調味料を使った献立を決める ※車椅子はリモコンで遠隔操作 25 複数車いすのフォーメーション 縦一列 • 参与の枠組みが4人を包括しない • 会話の分裂も 斜め 横並び • 4人を包括する参与の枠組みを形成できる • O空間,Fフォーメーションの形成がみられる 縦一列は避け,少し横にずらす 26 フォーメーションと会話のしやすさ 4人での会話のしやすさ 「フォーメーションは4人で会話しながら 移動するのに適していましたか?」 思う 7 6 5 4 3 2 1 思わない 横一列 斜め 縦一列 10グループ 40人 27 複数のロボット車いすと協調移動 28 想定される用途と実用化に向けた課題 • 人と共在する様々な移動ロボットに応用が可能 介護施設 病院 車いす リネン材 医療機器 収納棚 ショッピングモール 商店街 工場 買い物カート 部品搬送 ベビーカー 組み立て台車 • 実用化に向けては,費用対効果をふまえた コストダウン,安全性の担保が課題 29 企業への期待 • 電動移動体の普及は始まったばかり • ロボット化を契機に電動移動体の普及が進む可能性 • 製品の安全性やコストダウンの目標レベルは応用先 (製品イメージ)によって変わる • 市場ニーズと製品イメージを共有させていただき, 実用化に向けた議論させていただきたい • オールインワンパッケージにこだわらず,人物追跡や 自己位置同定など,一部の技術を応用し,企業保有 技術との統合で新たな製品,サービスを創出したい 30 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :自律移動車椅子 :特願2008-027708 :埼玉大学 :久野義徳、小林貴訓 • • • • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :自律移動車椅子 :特願2009-019767 :埼玉大学 :久野義徳、小林貴訓 31 お問い合わせ先 埼玉大学 研究機構 アンビエント・モビリティ・インターフェイス研究センター TEL&FAX: 048-714-2009 e-mail: [email protected] 32