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北陸農政局土地改良事業地区営農情報誌

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北陸農政局土地改良事業地区営農情報誌
北陸農政局 土地改良事業地区営農情報誌
Vol.26 平成28年3月発行
平成28年4月にパイプライン
の全線通水が予定されている
国営九頭竜川下流地区
大区画に整備された美しい
田園空間が広がる水田地帯。
良質かつ冷涼な水により、生
産性の高い農業の展開が期
待されている。
写真:九頭竜川下流地区(12,000haを潤す鳴鹿大堰)
写真:大区画に整備された圃場
目
次
パイプライン化による水田農業の新たな展開∼国営九頭竜川下流地区∼
1
次世代型水利システムについて
2
「国営佐渡地区」 畑地かんがい営農推進の取組
3
「国営手取川流域地区」優良経営体事例調査結果の概要
6
表紙でご紹介した九頭竜川下流地区は、国営事業や関連事業により、鳴鹿堰堤掛かり地区の開水路を
パイプライン化し、農業用水の再編によって生み出される余剰水により、周辺地域の水源転換等を行い用
水の安定供給を図るものです。平成27年度に主要な工事を完了するため、平成28年春から全線通水が可
能となり、パイプラインを通してきれいで冷たい農業用水が受益農地に安定供給されることになっています。
ここでは、本地区に設置している技術検討委員会が「パイプライン化による水田農業の新たな展開」のイ
メージを取りまとめていますのでご紹介します。
「パイ プライン化による水田農業の新たな展開」のイメージ
【夜間の水管理作業の自動化のための機器】
(タイマー機能付多機能給水栓)
夜間かんがいとは
稲の登熟期である夏場において、
夜間に水を入れて水田の温度を抑え、
昼夜の温度差を大きくすることで、
米の品質向上を図る。地球温暖化に
よる高温障害への対策手法の一つ。
1
農村人口が減少し、大規模・少数の担い手が地域の水利用の大宗を占める農業構造となった場合に、
円滑に対応できるような新たな農業水利システムの構築が必要となっています。
農林水産省では、平成27年度新規事業として、国営水利システム再編事業(農地集積促進型)を創設
し、担い手と土地改良区の需給調整や担い手の水管理の省力化を可能とするICTの導入など新たな農
業水利システムの構築を推進するに当たって必要なノウハウの蓄積を行うこととしています。平成28年
度から、大規模なパイプラインシステムが整備された先進地区である、九頭竜川下流地区(福井県)、長
良川用水地区(岐阜県)においてICTを活用した実証試験を全国で初めて実施します。
□実証方法
※スマートホンやタブレットをアクセスポイントとして遠隔操作し水管理+水稲の夜間か
んがいで、米の品質等向上を図る実証。
夜間かんがいの実施により、米の品質向上を図るには、最も天候に左右されることが
あるため、タイマー機能で決まった間隔日と時間ではなく、農家自らの判断で実施。
全国初!ICT化実証
(水管理の省力化)
国営九頭竜川下流地区
の取組一例
(スマホを使って遠隔操作)
夜間かんがい(遠隔操作)
田4枚、面積約4ha
遠隔対応給水栓11セット
□出穂後
A農家さん、今日は暑いから、早めに水を入れて稲のストレスを
なくそう。
※夜の間に温度が高いと呼吸量が増え、デンプンを消費します。
その抑制の手段として夜間かんがいがあります。
冷たい水を、夕方から夜間に与えることによりストレスをなくし、
品質の良い米ができます。
2
‰先進地視察の概要
山形県東根市・南陽市
平成25年度に基幹的な国営造成施設であるダムや幹線用水路が完成し、関連事業による末端
ほ場までの畑地かんがい用水の供用開始がまたれる、佐渡地区の営農者や関係機関担当者ら15
名が、平成27年7月9日から7月10日にかけて、東根市土地改良区(山形県東根市)とアスパラガス
実証ほ場(山形県南陽市)への畑地かんがい先進地視察を実施しました。
東根市土地改良区の案内の下、畑地帯総合整備事業等で畑地かんがい施設が整備された樹園
地で、おうとうや西洋なし(ラ・フランス)のかん水状況を視察し意見交換を行いました。
おうとうや西洋なしへの散水状況を視察
東根市土地改良区の理事との意見交換
また、山形県置賜総合支庁のアスパラガス自動かん水技術実証ほ場では、農業技術普及課加
藤主任専門普及指導員と営農者紺野さんの案内の下、低コストで日射量に応じたかん水ができる
「日射制御型拍動自動かん水装置」(近畿中国四国農業研究センター開発)を視察し意見交換を行
いました。
「日射制御型拍動自動かん水装置」の概要
40W 程度のソーラーパネルで駆動する小型の水中ポンプを使い、1.5m 程度の高さに設置したタンクに少しずつ
水をくみ上げ、タンクに一定量の水が溜まると、弁が開き、勢いよく水を送水します。この仕組みを利用して、広い面
積に点滴かん水チューブでかん水する装置です。
アスパラガス自動かん水実証ほ場を視察
(中央にソーラーパネルと拍動タンク)
視察参加者からは、現地でかん水を間近に見て、「佐渡地区で畑地等へのかん水方法を農家に
広く普及したい」、「その年の降雨に左右されず毎年安定した収量・品質を確保するためにはかん水
が必要」、「用水に掛かる管理費用と増収及び労力節減を比較すると非常に効果が高い」、「病害虫
防除等への活用もできかん水設備は有効だ」といった声が聞かれました。
3
‰モデルほ場のかん水調査結果の概要
佐渡市
かん水区では、果実肥大!
(1)柿へのかん水効果
柿は、散水チューブを設置し、樹下かん水を、5月∼9月までの1回当たりのかん水量5㎜程度を無
降雨日が続いたときに行いました。
平成26年度はかん水区と慣行区(無かん水区)の50個の果実品質について調査を行った結果、かん
水区では肥大が良く、収穫果の規格別比率(図1)をみると、慣行区より、かん水区では2L以上の果
実数が多い結果になり、かん水による果実肥大効果は良好でした。収穫量は、かん水区は大玉傾向
にあることから慣行区より約1.2倍程度が期待できます。なお、糖度や品質に大きな差はみられません
でした。しかし、除草のたびに散水チューブを巻くなどして行わなければならないため工夫が必要とい
う課題が見つかり、今後、散水手法を検討の上、現地での実証に取り組みます。
散水チューブによる柿の樹下かん水
図1 収穫果の規格別比率
(2)アスパラガスへのかん水効果
アスパラガスは、簡易的なかん水設備として塩ビ管と散水チューブにより、4月下旬∼8月下旬ま
でに株元かん水を14回、計358㎜行いました。調査は慣行区とかん水区の規格別収穫束数につい
て行い、かん水区の収穫量は慣行区・羽茂地区と比べ、10a当たり収量が約6割(約400㎏)高い結
果となりました(図2)。この結果、かん水による効果は大きく収量・販売額とも増加しました。
1,037Kg
632Kg
607Kg
かん水チューブによる
アスパラガスの株元かん水
羽茂地区平均
慣行区
かん水区
図2 収穫量の比較(10a当たり)
アスパラガスは、
100g=100円で
取引。かん水によっ
て、収入が増加しま
した!
4
10a当たり約40万円増加!
‰畑地かんがい講演会の開催
佐渡市
北陸農政局は、平成27年12月10日にJA羽茂大ホールにおいて、平成27年度畑地かんがい営農
講演会「ダムの水をつこうて儲けんかっちゃ!」を開催し、モデルほ場調査結果、先進地視察概要の
報告会に引き続き、宮崎県畑かん営農推進室の竹田博文さんから「畑かんマイスター制度を導入し
た畑かん営農推進の取組」を、宮崎県えびの市の畑かんマイスターの笹原淳一郎さんから「畑かんを
活用した信頼される産地づくりについて」と題して講演していただきました。なお、当日は80名(佐渡市
内農家22名、関係機関58名)が参加しました。
笹原さんは、散水チューブや大型スプリンクラーを利用した
かん水による、グリーンボール(キャベツ)定植時の活着促進
やさといもの収量向上を実践しています。また、露地栽培にお
いて自動給水装置を利用し、散水作業の省力化と水資源の
有効活用を図るなど先進的な取組を行っています。
講演では、畑かんを推進し始めた当時の苦労や、現在①定
時②定量③定品質④定価格による安定した農業経営を目指
している話をされ、参加者も熱心に耳を傾けていました。
宮崎県畑かんマイスター
笹原 淳一郎 氏
□参加者からの主な質問
①販売額はどの程度か?
→ 資材や機械導入経費があるので、それほど
儲かっていない。赤字を出さないようにしている。
②地域の水利用調整方法は?
→ 地域を7つのブロックに分けて、ブロック
ローテーションによりかん水を実施しており、1
日置きに各ブロックで水が使用できるようにして
いる。
講演会の様子
今回掲載しました「国営佐渡地区」畑地かんがい営農推進の取組の内容については、北陸農政局
ホームページでご覧いただけます。
(北陸農政局HP) http://www.maff.go.jp/hokuriku/nnjigyou/einou/index.html
野菜まめ知識
グリーンボール
グリーンボールは、キャベツの一品種。小ぶりのボー
ル形で、葉の中まで緑色を帯び、肉厚のわりに柔らかい。
通常のキャベツ(寒玉)より寒さに弱いので冬場はあま
り出回らないが、キャベツよりカロチンやビタミンCな
どを多く含んでいる。
5
‰調査の趣旨
北陸農政局農村環境課では、土地改良事業によって整備された農業生産基盤を活用して、優れた
営農を展開している経営体から、経営ノウハウや事業効果の発現状況を聞き取り、その結果を事例
として蓄積しており、今回ご紹介する石川県の国営手取川流域地区は平成27年度調査に基づくもの
です。
‰調査結果の概要
経営体名
株式会社
六星(ろくせい)
有限会社
岡元農場
JAののいち
ヤーコン倶楽部
六星の加工品「豆板餅」
経営面積
設立年度:平成19年
平成10年
75ha
平成26年
136ha
設立年度:平成9年
平成17年
16ha
平成27年
30ha
設立年度:平成21年
平成17年
10ha
平成27年
10ha
六星の直売所
基幹作物
主な営農改善のポイント
水稲、野菜
等
★6次産業化
もち米の生産ともち加工に力を入れ、生
産・加工・販売をトータルで行う6次産業化
を実践している。
水稲、
丸いも
★栽培技術の確立・向上
プレミアム米の生産に取り組むとともに、
能美市特産品の「加賀丸いも」の肥培管理
等の確立・向上を図っている。
水稲、
ヤーコン
★流通・販売の工夫
ヤーコンの栽培技術の確立・向上に努め
るとともに、ヤーコン焼酎等の加工品生産
に取り組んでいる。
収穫したヤーコン
国営事業概要
ヤーコン焼酎
位置図(石川県)
事 業 種:国営かんがい排水事業
関係市町:金沢市、小松市、白山市、能美市、
野々市市及び川北町
受益面積:7,402ha
事業期間:平成25年度∼平成32年度
事業目的:用水改良
主要工事:頭首工1箇所、用水路L=1.9km 等
岡元農場の「加賀丸いも」
今回掲載しました優良経営体事例の詳細は、これまでに調査を行った事例と併せて、農林水産省
ホームページでご覧いただけます。
(農林水産省HP) http://www.maff.go.jp/j/nousin/nouti/einou_info/e_keiei_zirei/index.html
6
<編集発行>北陸農政局国営土地改良事業地区営農推進検討連絡会
編集事務局:農村振興部農村環境課
〒 920-8566 金沢市広坂2-2-60 TEL 076-263-2161 (内線3454)
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