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中国自動車業界 市場調査報告書

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中国自動車業界 市場調査報告書
中国自動車業界
市場調査報告書
(上海発)
2012年3月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
本報告書に関する問い合わせ先:
日本貿易振興機構(ジェトロ)
機械・環境産業部
機械・環境産業企画課
〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32
TEL: 03-3582-1673
Email:[email protected]
【免責条項】
ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的損害および
利益の喪失については、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロがかかる損害の可
能性を知らされていても同様とします。
© JETRO 2012
本報告書の無断転載を禁ずる。
中国自動車業界市場調査報告書
第 1 章 中国自動車業界の発展背景 .......................................................................................................... 1
1.1
2010 年中国自動車業界の発展とマクロ経済の関わり ........................................................ 1
1.1.1
農業 ...................................................................................................................................................... 1
1.1.2
工業 ...................................................................................................................................................... 1
1.1.3
投資 ...................................................................................................................................................... 1
1.1.4
消費 ...................................................................................................................................................... 2
1.1.5
物価 ...................................................................................................................................................... 2
1.1.6
貿易 ...................................................................................................................................................... 2
1.1.7
所得 ...................................................................................................................................................... 2
1.1.8
マネーサプライ ................................................................................................................................. 2
1.2
自動車業界における関連政策およびその影響........................................................................ 3
1.2.1
2010~2011 年に国家が公布した自動車業界関連のマクロ調整政策.................... 3
1.2.2
2010~2011 年における自動車業界関連政策の影響分析 ......................................... 5
第 2 章 2010 年中国自動車業界の発展状況 ......................................................................................... 8
2.1
中国自動車業界の基本状況 ........................................................................................................... 8
2.1.1
定義 ...................................................................................................................................................... 8
2.1.2
分類 ...................................................................................................................................................... 8
2.1.3
国民経済における自動車業界の位置付け .......................................................................... 8
2.1.4
中国自動車業界の発展あらまし............................................................................................... 9
2.2
WTO 加盟後の中国自動車業界発展状況 ............................................................................. 10
第 3 章 2010 年中国自動車関連業界の発展概況 .............................................................................. 12
3.1
川上産業の市場発展状況 ............................................................................................................. 14
3.2
川下産業の市場発展状況 ............................................................................................................. 16
第 4 章 中国自動車メーカーの財務状況分析 ....................................................................................... 19
4.1
中国自動車メーカーの資産分析 ................................................................................................. 19
4.2
中国自動車メーカーの負債分析 ................................................................................................. 20
4.3
中国自動車メーカーの収入分析 ................................................................................................. 20
4.4
中国自動車メーカーのコスト分析................................................................................................ 21
4.5
中国自動車メーカーの支出分析 ................................................................................................. 21
4.6
中国自動車メーカーの収益力分析............................................................................................. 22
第 5 章 2010 年中国自動車業界の収益力および生産販売状況 ................................................... 22
5.1
中国自動車業界のコスト................................................................................................................. 22
5.1.1
生産コスト........................................................................................................................................ 23
5.1.2
販売コスト........................................................................................................................................ 24
5.1.3
納税コスト........................................................................................................................................ 24
5.1.4
寄託・輸送コスト ........................................................................................................................... 25
5.2
中国自動車業界の生産販売状況 ............................................................................................... 25
第 6 章 中国の自動車輸出入状況 ............................................................................................................ 30
6.1
自動車輸出入の発展概要 ............................................................................................................. 30
6.2
自動車輸出入の総量分析 ............................................................................................................. 32
6.3
輸出入車の平均価格分析 ............................................................................................................. 34
第 1 章 中国自動車業界の発展背景
1.1 2010 年中国自動車業界の発展とマクロ経済の関わり
国家統計局のオフィシャルサイトにて公開されている 2010 年の国民経済指数を示すデータ
によると、2010 年、中国の国内総生産(以下、「GDP」)は 39 兆 7,983 億人民元に達し、不変価
格から算出した成長率は前年比 10.3%と、2009 年の成長率を 1.1%上回っている。このうち、第一
次産業は 4 兆 0,497 億人民元、前年比成長率 4.3%、第二次産業は 18 兆 6,481 億人民元、前年
比成長率 12.2%、第三次産業は 17 兆 1,005 億人民元、前年比成長率 9.5%をそれぞれ記録して
いる。以下、各産業の具体的な発展状況およびマクロ経済状況について略述する。
1.1.1
農業
農業は安定した成長を続けており、2010 年の食糧総生産量は 5 億 4,641 万トンに達し、前年
比成長率 2.9%を記録した。これで 7 年連続のプラス成長となった。
1.1.2
工業
工業は緩やかな成長を続けており、企業収益も大幅に伸長している。一定規模以上の企業
(主営業収入が 500 万人民元以上の企業。以下同様。)に限ると、2010 年の工業総生産額は前
年から 15.7%増加し(対前年比増加率)、成長率 4.7%(2005 年を基準に算出)となっている。地区
別で見た工業総生産額の増加率(2009~2010 年)は、東部地区 14.9%、中部地区 18.4%、西部
地区 15.5%となっている。また、生産販売比率も極めて良好な状況にあり、一定規模以上の企業
の生産販売比率(2010 年)は 97.9%、前年比 0.2 ポイント上昇している。
1.1.3
投資
投資環境は良好な状況を維持しており、継続的に改善されている。2010 年の固定資産投資
額は 27 兆 8,140 億人民元、前年比増加率 23.8%(価格要素を差し引いた実際の増加率は 19.5%)
を記録したが、成長率(2005 年を基準に算出)は 6.2 ポイント減尐した。地区別で見た固定資産
投資額の増加率(2009~2010 年)は、東部地区 22.8%、中部地区 26.9%、西部地区 26.2%となっ
ている。また、不動産開発投資額(2010 年)は、4 兆 8,267 億人民元、前年比増加率 33.2%であっ
1
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た。
1.1.4
消費
マクロ的な経済消費は比較的急速に伸びており、各業界とも人気商品の売れ行きは順調で
ある。2010 年の消費財小売総額は 15 兆 4,554 億人民元、前年比増加率 18.4%(価格要素を差
し引いた実際の増加率は 14.8%)を記録した。
1.1.5
物価
2010 年の市場物価指数は前年から上昇しており、特に食品価格の上昇幅が大きい。2010 年
の全国物価指数は、前年から 3.3 ポイント上昇している。
1.1.6
貿易
輸出入総額は順調な伸びを見せている。2010 年の輸出入総額は 2 兆 9,728 億米ドル、前年
比増加率 34.7%を記録しており、その内訳は輸出総額が 1 万 5,779 米ドル(前年比増加率 31.3%)、
輸入総額が 1 兆 3,948 億米ドル(前年比増加率 38.7%)である。 貿易黒字額は若干減尐し、前
年から 6.4 ポイント減尐の 1,831 億米ドルとなった。s
1.1.7
所得
国民所得は安定的に増加し続けており、増加スピードで言えば、農村部が都市部を上回って
いる。2010 年の全国家庭所得は一人当たり 2 万 1,033 人民元、前年比増加率 11.5%となった。
うち、可処分所得は 1 万 9,109 人民元、前年比増加率 11.3%(価格要素を差し引いた実際の増加
率は 7.8%)である。
1.1.8
マネーサプライ
マネーサプライは安定的に増加し、人民元の預金・貸出金増分は減尐した。2010 年 12 月末
のマネーサプライ(M2)残高は 72.6 兆人民元、前年同期比 19.7%の増加率を記録している(成長
率は 8.0 ポイント減尐)。また、M1 残高は 26.7 兆人民元、前年同期比 21.2%の増加となった(成
長率は 11.2 ポイント減尐)。
2
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以上をまとめると、中国のマクロ経済は、高度成長期から安定成長期を迎えるための重要な
時期にあると言える。中央政府は、科学技術面の発展を維持しつつ、経済機構の調整および
経済モデルの再構成に向けて戦略を練っている最中であり、国民生活の保障、調和的・安定的
社会の実現という前提下において、中国経済が、理想的な消費を生み出す市場を今後も維持
できるとすれば、自動車業界のさらなる活性化は間違いないだろう。自動車業界は日進月歩の
世界であり、特に近年は地球環境に配慮したエコカーや新エネルギー車が大きな注目を集めて
いる。ここに中国自動車業界がどのように絡んでいくか。それを感知し、的確な予測を立てるた
めには、マクロ経済の動向も常にチェックしておきたいところである。
1.2 自動車業界における関連政策およびその影響
1.2.1
2010~2011 年に国家が公布した自動車業界関連のマクロ調整政策
2010~2011 年に公布された主要政策一覧表
分類
日付
政策名
要点解説
新エネルギー車産業を、省エネ・エコロジー産業、次世代 IT
産業、バイオ産業、ハイエンド装備製造産業、新エネルギー産
業、新素材産業の各産業と並ぶ国家の重点育成・発展産業とす
る政策。これらを総称して七大重点戦略新興産業とした。財政
戦略的新興産業
的支援、税優遇、貸付および融資条件の緩和など多方面から
産業
2010 年
の育成および発展
の国家援助を盛り込んでおり、新エネルギー車産業に関して
政策
9月8日
を速めることに関
は、動力電池、駆動モーター、電子制御システム、各種コア技術
する決定
の発展を突破口としたプラグインハイブリッドカー、純電気自動
車の推進を基本的理念とする。
同時に、燃料電池自動車に関連する最先端技術の研究開発
に注目し、エネルギー効率が高く、かつ排気量の尐ないエコカー
の普及を目標として掲げている。
3
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国が指定する五つのモデル都市において個人が新エネルギ
ー車を購入、登記、使用する場合、中央財政が関連企業に対し
個人による新エネ
て一括の補助金を支給することを定めた政策。また、動力電
ルギー車購入を奨
池、充電ステーションなどの規格化された基礎施設の建設に対
励する補助金の試
しても適当額の助成金が支払われる。補助金の金額はバッテリ
験的運用に関する
ーのエネルギーに応じて異なる。支給条件を満たしている場合、
通知
3,000 人民元/1,000 ワットアワーが支給基準となり、プラグインハ
2010 年
5 月 31 日
イブリッドカーの場合は最高で 5 万人民元/台、電気自動車の場
合は最高で 6 万人民元/台が支給される。
自動車買換政策の施行日が 2010 年 5 月 31 日から 2010 年
12 月 31 日へと延長されたことに伴い、自動車買換補助金の申
請受理締切日も 2010 年 6 月 30 日から 2011 年 1 月 31 日へと
自動車買換政策
延長された。自動車買換に関する具体的な政策内容は、《「自
財政
2010 年
の実施延長に関
政策
6 月 18 日
する通知
動車買換実施弁法」の公布に関する通知》、《自動車買換補助
金基準の調整事項に関する財政部および商務部の通知》、《自
動車買換補助金と自動車購入税の減税政策の同時享受許可
に関する財政部および商務部の通知》の各公布済み通知を基
準としている。
エコカー普及補助金の速やかな支給、およびエコカー普及リ
ストに登録された車種がリストの公布日から直ちに補助金の対
象となることを保証すべく、当該政策が通知された。
エコカー普及補助
国家政策である補助金制度を厳格に執行するために、自動
2010 年
金の支給を適切に
9月2日
行うことに関する
車メーカーおよびディーラーのエコカー販売価格を補助金込み
の価格とし、政府から消費者に補助金を支給する形とした。ま
通知
た、エコカーの販売元メーカーおよびディーラーに対し、財政部
への販売状況報告義務が課されたと同時に、政策違反時の罰
則規定が強化された。
4
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使用期間 6 年以上 15 年未満の地方旅客運送車(車長 4.8m
以上 7.5m未満)を回収業者に供出し、かつ当年に更新する場
2011 年老朽車の
合、車両 1 台当たり 1 万 1,000 人民元の補助金が支給される。
財政
2011 年
廃車・更新補助金
政策
5 月 20 日
の支給範囲および
また、使用期間 8 年以上 15 年未満の都市バス、および使用期
間 10 年以上 15 年未満の大型トラックには、それぞれ 1 万 8,000
基準
人民元/台の補助金が支給される。非動力型のフルトレーラー、
セミトレーラーは、いずれも補助金の支給範囲外である。
新エネルギー車とエコカーが明確に区分されるようになり、電
気自動車とプラググインハイブリッドカーは新エネルギー車とし
エコカーおよび新
産業
て、非プラグインハイブリッドカーはエコカーとして定義される。
2011 年末
エネルギー車産業
政策
このカテゴライズに応じて今後の補助金政策における限度額
発展計画
が決まり、製造コストの高い新エネルギー車に対して、より多く
の補助金が支給されることになる。
表1
1.2.2
出所:上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2010~2011 年における自動車業界関連政策の影響分析
2010~2011 年においては、一連の優遇政策が継続されたことに加え、後述するエコカー奨
励金、燃費明示の義務化などの政策が自動車販売量の増加基調を後押ししたと言える。
【エコカー奨励金】
2010 年 5 月下旬、中国政府は《“省エネ製品販売促進政策”エコカーの普及実施細則》を公
布した。中央財政部は、当該細則において、エンジン排気量が 1.6 リットル以下であり、かつ稼
動燃費が現行基準の 20%程度を下回るガソリン車、ディーゼル車の購入者を対象とした 3,000
人民元/台の奨励金給付を盛り込み、メーカーの車両販売時において購入者に給付すること
を規定している。
エコカー奨励金政策の実施に伴い、全 4 タイプ、272 車種のエコカーが相次いで普及リスト上
に登録され、消費者は、これらの車種を購入すれば 3,000 人民元の奨励金を受け取ることがで
きることとなった。実際に 10 万人民元前後の車種を購入した場合、3,000 人民元の奨励金に加
5
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えて自動車購入税においても優遇を受けられる(併せて 5,000 人民元以上の効果を得られる)
ため、一般市民の関心を多く集めた。当該政策は中国国内の自動車市場におけるエコカーの
普及を確実に促進させたと言えるだろう。
【燃費明示の義務化】
2010 年元日、《小型車の燃料消費量標識管理規定》が公布され、最大設計重量 3.5 トン以下
の全ての乗用車および小型商用車に対し、燃費を示すラベルの貼付およびその車両の市区、
郊外、総合の 3 状況下における燃料消費量の明示を義務付け、消費者による自動車購入時の
参考項目となるようにした。
当該政策は、自動車メーカーによるエコカーの研究開発力増強を促しただけでなく、自動車
産業全体の省エネ化、イノベーションに向けて一定の役割を果たした。特に、ガソリン価格の継
続的な高騰に悩まされる今日においては、消費者のエコカーに対する関心をリードする政策だ
と言えるだろう。
【新車両船舶税法】
2011 年 2 月 25 日、全国人民代表大会常務委員会の審議において、《中華人民共和国車両
船舶税法》が採択され、2006 年 12 月 29 日に公布された《中華人民共和国車両船舶税暫定条
例》が廃止されることとなった。新法は 2012 年 1 月 1 日から施行される。最新の《車両船舶税
法》における最大の改正内容は、排気量に応じた 7 段階の課税が新たに規定されたことであり、
その課税額は 60 人民元から 5,400 人民元までとなっている。
具体的には、排気量 1.0 リットル以上 1.6 リットル以下の車両に課される基準税額/年が、現行
の 360~660 人民元から 300~540 人民元に、排気量 1.6 リットル超 2.0 リットル以下の車両に課
される基準税額/年が、現行の 660~960 人民元から 360~660 人民元へと、それぞれ引き下げ
られる。即ち、低排気量の車両が税制面で優遇されることになる。
但し、今回の法改正は現行法を大きく覆すものではなく、現行法を多尐アレンジしたに過ぎな
いとの見方もある。いずれにせよ、2011 年末には“駆け込み需要”を狙った年末商戦が繰り広
げられた。
6
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【エコカー・新エネルギー車産業計画の策定】
工業情報化部、科学技術部などの各部門が制定に携わった《新エネルギー車産業計画
(2011~2020 年)》が、更なる調査研究および考察を経た上で、最終的に《エコカー・新エネルギ
ー車産業計画(2011~2020 年)》(以下、「計画」という)として国務院に提出された。近日中に公
布されるものとみられている。
「計画」によると、将来 10 年において、中国の新エネルギー産業のコア技術に対する投資額
は 1,000 億人民元に達する見込みである。また、一部の報道等によると、2011~2020 年の 10
年間で中央財政から投入される 1,000 億人民元のうち、500 億人民元は、エコカー・新エネルギ
ー車産業の発展を目的とした特別資金に充当されることがわかっている。コア技術の研究開発
並びに産業化を重点的に支持するとともに、共同開発メカニズムの構築を促すことが狙いとみ
られる。特別資金 500 億人民元は、300 億人民元が新エネルギー車の産業モデル確立に、200
億人民元がハイブリッドカーを中心としたエコカーの産業モデル確立に、それぞれ充てられる。
また、別途 100 億人民元の予算が組まれ、自動車コア部品産業の発展と、モデル都市における
基礎施設の建設プロジェクトに使用されるとみられている。
今回の「計画」は、中国のエコカー・新エネルギー車産業にとってのカンフル剤とも言えるべき
内容で、巨額の投資もさることながら、国家としての方向性を明確に定めたことによって、無計
画投資、二重投資、過剰設備能力の出現といった問題を未然に防ぐ役割を担っている。「計画」
では、2020 年までの目標として、主に以下の内容が明記されている。
(1) 新エネルギー車の生産販売規模が 100 万台超の企業集団の育成および形成(1~2 グルー
プ)
(2) 新エネルギー車の生産販売規模が 50 万台超の企業集団の育成および形成(3~5 グルー
プ)
(3) 新エネルギー車の総生産販売規模が 200 億ワットアワー、かつ電池関連材料の研究開発
能力・生産能力を備えるリーディングカンパニーの育成および形成(2~3 社)
(4) リチウムイオン動力電池材料・セパレーター・電解質などのコア材料の生産を基幹事業とす
る企業の育成および形成(2~3 社)
(5) ドライブモーター、オートマチックトランスミッション(AT)の生産を基幹事業とし、自社で知的
所有権を有するメーカーの重点的育成および形成(2~3 社)
(6) 国際的競争力を備え、かつ自動車電子デバイス、パワーエレクトロニクスデバイスの生産
に特化した企業集団を、完成車メーカーが統合・再編によって新設することへの重点的支
援(それぞれ 1 社)
7
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第2章
2010 年中国自動車業界の発展状況
2.1 中国自動車業界の基本状況
2.1.1
定義
本報告書で言う「自動車」とは、動力によって駆動し、4 枚あるいは 4 枚以上の車輪を備える
非レール型の車両を指す。人間や貨物の輸送を主な用途とするが、輸送車両の牽引などにも
使用される。通常、自動車はエンジン、シャシー、ボディ、電装設備の 4 つの基本部品から構成
される。
2.1.2
分類
自動車は一般的に乗用車と商用車に分けられる。乗用車とは、その設計、技術の特性から
主に乗客およびその手荷物、あるいは臨時貨物の運送に使用される自動車を言う。乗用車の
座席数は 9 座席(運転手の座席含む)以下であり、普通乗用車(セダン)、多目的車(ミニバン、
SUV)、特殊用途車、クロスオーバー車などに細分化することができる。一方、商用車とは、その
設計、技術の特性から乗客および貨物の運送に特化した自動車を言う。商用車は、バス、トラッ
ク、セミトレーラーなどに細分化することができる。
2.1.3
国民経済における自動車業界の位置付け
自動車産業は国民経済において非常に重要な位置を占めており、一つの国家・地域の経済
を牽引するほどの影響力を有すると言っても過言では無い。自動車産業は、鉄鋼産業、冶金産
業、ゴム産業、石油化学産業、合成樹脂産業、ガラス産業、機械産業、電子産業、紡績産業な
どの関連産業を牽引するだけでなく、メンテナンスサービス業、商業、保険業、運送業、インフラ
建築業など、数多くの業界を発展させることができる。また、様々な新技術、新素材、新生産工
程、新設備を受け入れる土台として相当の生産規模および市場規模を形成し、巨大な生産額、
利益、税収を生み出すとともに、多くの雇用を創出している。
8
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2001~2009 年の全国工業生産額に占める自動車工業生産額の割合
単位:億人民元、%
全国工業生産額に占める
年
自動車工業総生産額
当年の全国工業生産額
自動車工業生産額の割合
2001
4,433.2
95,449.0
4.64
2002
6,224.6
110,776.5
5.62
2003
8,357.2
142,271.2
5.87
2004
9,463.2
201,722.2
4.69
2005
10,223.3
251,619.5
4.06
2006
13,937.5
316,589.0
4.40
2007
17,242.0
386,747.0
4.46
2008
18,780.5
507,448.0
3.70
2009
23,437.8
548,311.0
4.27
表2
出所:2001~2009 年《中国自動車工業年鑑》、2010 年《中国機械工業年鑑》
注:全国工業生産額について、2001~2006 年は「国有企業および一定規模以上の非国有企業」、2007 年~
2010 年は「一定規模以上の企業」のデータを使用。
2.1.4
中国自動車業界の発展あらまし
中国自動車業界の発展については、大まかに次の 3 期に分けることができる。
第 1 期:1953 年の創生期から 1978 年の改革開放前までを指す。自動車業界発展の基礎が
築かれた時期であり、長春第一汽車の創立が、この時期における代表的な出来事である。第
一汽車は 1953 年に設立され、1956 年、第一号の生産車となる「解放」が製造された。
第 2 期:1978 年から 20 世紀末までを指す。中国自動車業界が大きく発展を遂げた時期であ
ると同時に、業界全体のシステムが構築された時期でもある。乗用車からトラックまで、業界全
体が成長軌道に乗り始め、中国自動車業界にとっては、経済体制の計画段階から実際の市場
に目を向け始めるターニングポイントであったと言える。特に商用車産業の発展は特筆すべき
9
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点であり、生産能力の向上に伴い、その製品ラインナップはますます充実していった。商用車に
関して言えば、一定の独自開発力を備えるようになった。また、大型車、小型車の不足は徐々
に解消されていき、乗用車を含む自動車生産ラインの大枠が完成されるに至った。
第 3 期:21 世紀以降、即ち、中国の WTO 加盟後を指す。自動車業界のみならず中国経済そ
のものが爆発的に伸び、中国国民の購買力の高まりに伴い、自動車業界の市場規模、生産規
模が急速に拡大していった。この 10 年という期間で、中国自動車業界は安定した成長ラインを
描き、その勢いは今なお維持されていると言えるだろう。
2.2 WTO 加盟後の中国自動車業界発展状況
WTO に加盟するまで、中国自動車業界の全体的な発展レベルは明らかに見务りするもので
あった。産業規模自体が小さく、市場競争力も未発達だったため、高度の保護状態にあったと
言えるだろう。
WTO 加盟後、中国市場全体の発展とともに自動車業界も急速な成長を見せ、みるみると規
模を拡大していった。WTO 加盟後の初期において実施されていた自動車業界およびその関連
分野に対する関税保護政策などが、中国国内の自動車メーカーと一定の競合関係を生み出し
てしまったものの、自動車業界以外の外資政策が大幅に調整されたことから外資企業の進出
が始まり、自動車業界においても、製品のアップグレード、部品産業のローカライゼーション、自
主ブランドの創立、技術移転および共同研究開発といった多方面の恩恵を受けることとなった。
また、外資企業の進出は、製品品質やサービスレベルの向上、低コスト化を促進し、中国自動
車業界に前向きな影響をもたらした。世界経済のグローバル化に対し、中国政府も消費政策、
市場参入政策などを適時投下したことで WTO という枠組みの中で着実に地位を確立していき、
絶好の好機を逃さず、市場の開放競争に勝ち残ったと言えるだろう。
WTO 加盟後の 10 年において、中国の自動車販売量は 2001 年の 234 万台から 2010 年の
1,826 万台へと飛躍的な成長を遂げた。この記録的な成長によって中国は一躍、世界一の自動
車生産販売大国として全世界の自動車販売量の 22.38%(2009 年)を占める自動車超大国とな
った。(2001 年は 4.27%)
10
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2001~2010 年の中国自動車生産販売量
単位:万台
年
生産量
販売量
2001
234
237
2002
325
325
2003
444
439
2004
507
507
2005
571
576
2006
728
722
2007
888
879
2008
935
939
2009
1,379
1,364
2010
1,826
1,806
表3
出所:2001~2010 年《中国自動車工業年鑑》
中国の自動車業界は近年目覚しい発展を遂げていると同時に、新たな試練に直面している
とも言えるだろう。2011 年は、原材料の高騰だけでなく、引き締め政策や業界構造の調整といっ
た多方面からの影響も受けている。2011 年 4 月、中国自動車業界は、急速な成長が始まって
以来、初のマイナス成長を記録しており、2011 年の市場伸び率は 10%を割り込むことが予想さ
れている。
2009 年、2010 年と爆発的な伸びを見せた中国自動車業界も、今年に入ってからは、その勢
いに多尐の陰りがみられるようだ。2011 年 1~6 月の上半期を分析するに、市場の販売量成長
率は前年同期比 8%に満たなかった。ただ、それでも中国自動車業界の将来性は明るいと言わ
ざるを得ない。13 億という人口からすると、自動車の購買層はまだまだ一部に限られており、自
家用車を所有する人は決して多くない。言い換えれば、市場全体に未開拓の部分を多く残して
いる。2011 年、中国自動車市場は、2,300 万台の販売台数を記録するとみられている。
11
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国内の自動車販売量順位の推移
単位:万台
年
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
米国
米国
米国
米国
米国
米国
米国
米国
中国
中国
1,747
1,713
1,679
1,729
1,744
1,705
1,645
1,349
1,364
1,806
日本
日本
日本
日本
日本
中国
中国
中国
591
579
583
584
585
722
879
939
独国
独国
中国
中国
中国
363
355
439
507
576
英国
中国
277
325
順位
1
2
3
4
仏国
5
275
伊国
6
264
中国
7
237
表4
出所:2001~2010 年《中国自動車工業年鑑》
第 3 章 2010 年中国自動車関連業界の発展概況
自動車業界は長大な産業チェーンから成り立っており、川上から川下まで数えると、およそ
150 余りの産業が関わり合っていると言われる。産業チェーンの川上は、主に鉄鋼産業、機械
設備産業、非鉄金属産業、電子デバイス産業、ゴム産業、ガラス産業などの各産業によって構
成されている。一方、川下はと言うと、主に道路建設業、運送業、金融業、保険業、メンテナンス
業などが含まれる。自動車業界は産業同士の関連度が高く、高効率の業界だと言える。また、
12
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資金面、技術面においても各産業が密接な関係にある。
ガ
ラ
非
ス
鉄 鉄
ゴ
等
原 ム 金 鋼
属
材
料
部品メーカー
完成車メーカー
消
費
者
意
識
の
変
化
高
速
道
路
利
用
料
金
関
連
政
策
ガ
ソ
リ
ン
代
運 物
輸 流
左
右
す
る
要
素
自
動
車
の
消
費
量
を
ディーラー
直接消費者
関
設 連
備 生
産
電
子
部
品
広
告
サ
ー
ビ
ス
金
融
サ
ー
ビ
ス
各
そ お 種
の よ 事
他 び
業
自動車業界は、巨大な産業規模と付随産業の牽引作用を備えていることから、直接的な就
業機会だけではなく、間接的な就業機会も相当に創出している。自動車関連業界は、現場スタ
ッフ、サービススタッフのいずれにおいても圧倒的な雇用者数を保有するが、特に後者に関して
は 1980 年代以降大幅に増加しており、雇用者全体の比率において顕著な伸びを見せている。
13
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中国自動車業界の急速な発展は、階下の産業を発展方向へと導き、巨大な利益空間を生み
出していると言えるだろう。
3.1 川上産業の市場発展状況
中 国 自 動 車 業 界 の川 上 産 業 には、主 に金 属 採 掘 、計 器 メーター、皮 革 、機 械 製 造 、
製 錬 加 工 、ゴム、化 学 原 料 などを始 めとする多 くの産 業 が関 わっており、自 動 車 製 造
業 と自 動 車 川 上 産 業 は 1:10 の産 業 と言 われる。即 ち、自 動 車 メーカー1 社 の収 益 が、
付 随 する 10 社 の収 益 を左 右 することになる。それゆえ、中 国 自 動 車 業 界 の繁 栄 に 伴
って川 上 産 業 全 体 が急 成 長 していることは、しごく自 然 な傾 向 であると言 える。
川 上 産 業 の中 でも、特 に自 動 車 部 品 産 業 が極 めて重 要 な位 置 にあることは言 うま
でもなく、自 動 車 製 造 業 全 体 の約 50%を決 定 付 けるだけの価 値 を有 すると言 っても過
言 ではない。しかし、中 国 の自 動 車 部 品 産 業 はある種 の困 難 にも直 面 しており、例 え
ば急 速 なコア部 品 の電 子 化 、それに伴 う国 外 からの輸 入 への依 存 、国 際 原 油 価 格 の
高 騰 などが最 たる例 として挙 げられる。
また、自 動 車 業 界 の発 展 は、鉄 鋼 産 業 の存 在 無 くしては語 れない。中 国 産 自 動 車
の鉄 鋼 材 料 は基 本 的 に自 国 での供 給 で賄 っているが、これは、自 動 車 産 業 の持 続 的
な発 展 における重 要 なポイントの一 つでもある。国 家 統 計 局 のデータによると、 2010
年 の中 国 鉄 鋼 メーカーの粗 鋼 生 産 量 は 6 億 3,722.99 万 トンに達 し、前 年 から 6,504.76
万 トンの増 産 、前 年 比 成 長 率 11.37%を記 録 している。自 動 車 業 界 の発 展 段 階 から考
察 するに、中 国 自 動 車 業 界 の中 でも鉄 鋼 市 場 に関 する需 要 量 は極 めて高 く、収 益 力
もあるため、今 後 、中 国 の鉄 鋼 産 業 は長 期 的 な発 展 が見 込 めるだろう。 (表 5 を参 照 )
14
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2005~2010 年 鉄 鋼 関 連 材 料 の生 産 量
年
鋳鉄(万トン)
前年比成長率(%)
粗鋼(万トン)
前年比成長率(%)
鋼材(万トン)
前年比成長率(%)
2005
34,375.19
28.12
35,323.98
24.86
37,771.14
18.12
2006
41,245.19
19.99
41,914.85
18.66
46,893.36
24.15
2007
47,651.63
15.53
48,928.80
16.73
56,560.87
20.62
2008
47,824.42
0.36
50,305.75
2.81
60,460.29
6.89
2009
55,283.46
15.60
57,218.23
13.74
69,405.40
14.80
2010
59,733.34
8.05
63,722.99
11.37
80,276.58
15.66
表 5
出 所 :国 家 統 計 局
ゴム製 品 は自 動 車 製 造 コストの 6%前 後 を占 め、全 世 界 における年 間 ゴム消 費 量 の
70%以 上 が自 動 車 産 業 によって消 費 されている。自 動 車 産 業 によって消 費 されるゴム
のうち、60%がタイヤに、40%がその他 のゴム製 品 に使 用 される。中 国 自 動 車 業 界 全 体
の発 展 は、タイヤ業 界 にも好 影 響 を及 ぼしており、国 家 統 計 局 のデータによると、 2010
年 のゴムタイヤ生 産 量 は 77,611.83 万 本 、前 年 比 増 加 率 18.31%であった。成 長 率 は
7.95 ポイントの減 尐 だったが、安 定 した成 長 を維 持 しており、この流 れは今 後 も続 くと
みられている。(図 1 を参 照 )
2006~2010 年 ゴムタイヤ生産量
生産量
(万本)
90,000
80,000
26.63
増加率
30.00
26.26
28.21
77,611.83
65,601.56
70,000
55,832.97
60,000
50,000
(%)
25.00
20.00
18.31
51,956.94
15.00
43,547.08
10.00
40,000
5.00
30,000
0.00
20,000
-5.00
-6.94
10,000
0
-10.00
2006
2007
2008
2009
2010
図 1
出 所 :国 家 統 計 局
15
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中 国 の自 動 車 生 産 量 と 自 動 車 保 有 量 の 大 幅 な増 加 は 、 自 動 車 用 合 成 樹 脂 の 応
用 領 域 の発 展 につながり、その使 用 量 は年 々増 加 している。現 在 、エコノミーセダン 1
台 当 たりの合 成 樹 脂 使 用 量 はおよそ 50~60kg、ミドルエンドからハイエンドのセダンだ
と 1 台 当 たり 60~80kg である。車 種 によっては 100kg に達 する場 合 もある。また、軽 ・
中 トラックには 80kg 以 上 が使 用 され、自 動 車 1 台 当 たりの合 成 樹 脂 使 用 量 は、自 動
車 総 重 量 の 5~10%を占 める。国 家 統 計 局 のデータによると、工 業 用 合 成 樹 脂 の需 要
量 は、2000 年 には約 32 万 トンだったが、2005 年 には約 52 万 トン、2010 年 には約 128
万 トンと、急 速 に伸 びていることがわかる。うち、ポリオレフィンの需 要 量 は 23 万 トンで、
今 後 もふた桁 成 長 を続 けていくことが予 測 されている。
自 動 車 業 界 の 川 上 産 業 とは、 即 ち 、自 動 車 生 産 に必 要 不 可 欠 な板 バネ 、合 金 パ
ーツ、タイヤ、電 子 設 備 などの各 種 部 品 を自 動 車 メーカーに納 めるサプライヤーである
ことから、川 上 産 業 は主 に生 産 コストを左 右 し、各 自 動 車 メーカーの高 効 率 化 実 現 に
対 して、直 接 的 な影 響 を与 えると考 えられる。同 時 に、自 動 車 業 界 の変 化 も川 上 産 業
に対 するニーズを大 きく左 右 し、相 互 に作 用 し合 う関 係 であることから、自 動 車 業 界 全
体 を観 察 する上 で、川 上 産 業 の動 向 は重 要 な要 素 の一 つと言 える。
3.2 川下産業の市場発展状況
中 国 自 動 車 業 界 の 川 下 産 業 には 、主 に 陸 上 輸 送 、自 動 車 リー ス、自 動 車 金 融 、
自 動 車 保 険 、メンテナンスサービスなどの産 業 が含 まれる。
自動車業界の発展に伴い、中国の陸上道路網は絶えず拡大を続けており、2010 年末には、
自動車道の総距離 400 万キロメートルを突破した(400.82 万キロメートル)。2009 年から 14.74
万キロメートル増長しており、“第 11 次五ヶ年計画(2006~2010 年)”の期間全体で、66.30 万キ
ロメートルの増長となっている。また、2010 年の全国自動車道密度は、41.75 キロメートル/100
平方キロであり、こちらは前年比 1.53 キロメートル/100 平方キロ、“第 10 次五ヶ年計画(2001
~2005 年)”の終結時から 6.90 キロメートル/100 平方キロ、それぞれ増加している。(図 2 を参
照)
16
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2006~2010 年 全国自動車道総距離および密度
総距離
(万 km)
密度
(km/100 km2)
450.0
45.0
400.0
40.0
350.0
35.0
300.0
30.0
250.0
25.0
200.0
20.0
150.0
15.0
100.0
10.0
50.0
5.0
0.0
総距離 (万 km)
密度(km/100 km2)
2006
345.7
2007
358.4
2008
373.0
2009
386.1
2010
400.8
36.0
37.3
38.9
40.2
41.8
図 2
0.0
出 所 :中 国 交 通 運 輸 部
中 国 の自 動 車 道 建 設 への投 資 は一 貫 して増 加 傾 向 にあり、2010 年 の投 資 額 は 1
兆 1,482 億 人 民 元 に達 した。前 年 比 18.8%の増 加 率 が物 語 る通 り、交 通 インフラの整
備 は、国 家 を挙 げた一 大 プロジェクトの一 つとして数 えることができる。 (図 3 を参 照 )
2006~2010 年 自動車道建設投資額および増加率
投資額
(億人民元)
増加率
(%)
45.0
14,000
11,482
12,000
35.0
9,669
10,000
40.0
30.0
8,000
6,231
6,490
6,881
25.0
20.0
6,000
15.0
4,000
(億人民元)
10.0
2,000
5.0
0
0.0
2006
2007
2008
2009
2010
図 3
出 所 :中 国 交 通 運 輸 部
17
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自動車業界の川下産業は輸送業が牽引しており、国家の関連政策による支援および大型車
両の高速道路利用料金の減額といった制度が功を奏し、輸送費の水準は一時よりも下向きに
なった。これが追い風となり、自動車道輸送業は理想的な成長速度を維持している。2011 年 1~
6 月において自動車道輸送業は前年同期から大幅に成長し、目下、中国自動車道の旅客運送
量、貨物運送量、旅客・貨物取扱量は、いずれも他の輸送方式による同量の総和を遥かに上回
っている。現在、総距離 210~230 万キロメートル程度の自動車道が、人口 20 万以上の都市高
速と 90%連結しており、高速道路総距離は 5 万キロメートルに達する。専門家の予測では、中国
の自動車道輸送業は、将来的に供給過剰に陥るとされている。
自動車リース業は、主要川下産業の一つとして挙げることができるだろう。自動車業界の高度
成長をベースに、また、中国国民の生活意識やライフスタイルの変化に伴い、車両を自己保有
するよりも、より手軽なリース方式を選択する家庭あるいは個人が増えつつある。リース方式は、
車両自体への投資を節約できるだけでなく、駐車代、保険代、メンテナンス費用といった固定費
が発生しないといったメリットがあり、マイカー管理の煩わしさを一掃することが可能である。そ
のため、自動車リース業に対するニーズは、ますます高まっている。
自動車メンテナンス業も、川下産業において重要な産業である。自動車メンテナンス業は、ア
フターケア・修理サービス業と、ロードサービス業とに分類され、それぞれ独立した業界とされる。
アフターケア・修理サービス業は、技術的なサポートによって車両の耐用年数を引き伸ばすこと
を目的とした、自動車の流通に欠かことのできない部分である。現在の中国では、自動車メンテ
ナンス業に従事する企業を、その役割ごとに、1 類企業(大修理および小修理)、2 類企業(基礎
メンテナンス)、3 類業者(補充メンテナンス)、総合性能検査ステーション(品質保証検査)といっ
た形で分類しており、各セクターが協力しながら自動車メンテナンスのネットワークおよび市場マ
ップを形成している。オンライン公開資料によると、2010 年、中国には自動車メンテナンス業者
が 35 万近く存在し、就業人口は 245 万人に上るという。また、自動車メンテナンス業の産業総生
産額は 3,000 億人民元に達し、国家経済においてますます重要な存在になりつつある。
中国金融業界の発展は、自動車金融という新語に市民権を与えるに至った。自動車金融とは、
主に自動車の生産、流通、売買および消費といった一連の過程において為される融資などの金
融活動を指し、一般的に、資金調達、貸付、担保手形・株式の発行あるいは取引、並びに関連
の保険・投資活動が含まれる。自動車金融の特徴として、資金量が大きいこと、回転周期が長
18
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いこと、値動きが比較的安定しており付加価値が高いことなどが挙げられる。自動車金融業も、
川下産業の一つとして数えることができる。現在、中国の自動車金融業は穏やかな成長を続け
ており、自動車ローン市場における保険会社の役割は日に日に薄れつつある。その代わりに、
自動車ローンを専門的に扱う企業が台頭し始めており、今後一大産業となるだけのポテンシャ
ルを有していることから、銀行と自動車金融企業の全面戦争が間もなく開始されるとの見方が強
い。
自 動 車 業 界 における川 下 産 業 は、製 品 に対 す る消 費 者 ニーズと深 い関 係 にあり 、
販 売 台 数 を直 接 左 右 する だけの影 響 力 を有 する 。自 動 車 業 界 に 対 する 中 国 の国 家
戦 略 を観 察 する と、川 上 産 業 だ けでなく 、川 下 産 業 も 非 常 に重 要 視 しており 、 絶 えず
投 資 を繰 り返 していることがわかる。自 動 車 業 界 全 体 の流 れを把 握 する中 で見 落 とし
がちな部 分 ではあるが、川 下 産 業 の持 つ影 響 力 は決 して小 さくない。
第 4 章 中国自動車メーカーの財務状況分析
4.1 中国自動車メーカーの資産分析
資産状況シート
表6
項目
2009 年
2010 年
2011 年上半期
資産総額(万人民元)
124,664,475.4
168,181,346.3
169,614,088.9
増加率(%)
23.81
33.2
21.67
総資産回転率 (回転)
1.4
1.6
0.8
出所:国家統計局、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
注:本表におけるデータは、全て「完成車生産企業」を対象としており、本章におけるその他の表についても
同様である。また、注記が無い限り、本報告書における「自動車メーカー」は、「完成車生産企業」を指す。
表 6 からわかる通り、2010 年の資産総額は 2009 年からある程度上昇し、その増加率も
2009 年の数字を約 10 ポイント上回っている。中国自動車メーカーの資産総額が順調な伸び
を見せていることから、全体的に良好な状況を保っていると言えるだろう。また、2010 年の、
19
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中国自動車メーカーによる完了済み固定資産投資額は累計で約 4,487 億人民元、前年同期
比 38.05%の増加となった。月別の投資額も、1~2 月を除き、毎月 30~40%の前年同期比増加
率を保っており、安定した投資が為されている。
このほか、2010 年の固定資産投資金財源は約 4,971 億人民元で、そのうちの約 96 億人民
が前年の剰余金である。2011 年の資金財源は約 4,867 人民元となっており、自己資金が
3,814.61 億人民元、財源の 85.50%を占める。
4.2 中国自動車メーカーの負債分析
債務償還能力シート
項目
2009 年
2010 年
2011 年上半期
資産負債率(%)
59.40
61.11
60.71
流動比率
110.95
104.83
---
当座比率
87.89
86.70
---
利子(負債)カバレッジ比率(-)
28.06
78.26
81.97
表7
出所:国家統計局、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2009 年から 2010 年にかけて資産負債率がわずかに上昇しているが、在庫回転率やバランス
シート状況を加味すると、中国自動車メーカーの資産負債率は全体的に標準数値を保っており、
流動比率、当座比率ともに若干のマイナスとなっているものの、なお可処理範囲にある。
4.3 中国自動車メーカーの収入分析
收入分析シート
表8
項目
2009 年
2010 年
2011 年上半期
主要営業収入(万人民元)
156,512,121.6
215,439,825.1
118,712,037.0
出所:国家統計局、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2010 年の自動車販売台数は前年比増加率 32.37%だったが、販売総額はそれを上回る 37.65%
20
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の増加を記録している。様々な要因が考えられるが、ハイエンドモデル車の生産販売量が上昇
トレンドにあることも関係しているだろう。
4.4 中国自動車メーカーのコスト分析
コスト分析シート
項目
2009 年
2010 年
2011 年上半期
主要営業コスト(万人民元)
128,282,020.60
161,738,293.90
96,968,175.60
表9
出所:国家統計局、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2010 年の主要営業コストは前年比 26.08%増だったが、販売総額の増加率(2009~2010)が
37.65%だったため、粗利率は上昇しており、全体的に見れば良好な数字と言える。
4.5 中国自動車メーカーの支出分析
支出分析シート
項目
2009 年
管理費用支出(万人民元)
7,023,666.50
7,818,023.70
4,286,952.30
財務費用支出(万人民元)
539,112.80
142,523.20
-5,494.80
支払利息 (万人民元)
452,627.30
245,486.70
146,659.90
表 10
2010 年
2011 年上半期
出所:国家統計局、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2009 年から 2011 年上半期までの 2 年半における中国自動車メーカーの費用支出状況を見る
と、2010 年に管理費用が激増していることがわかる。これは、鉄鋼、金物、消耗品の価格が上
昇したことに加え、工程費、人的コストなどが高騰したことに起因している。また、支払利息が割
高に感じられるが、こちらは自動車メーカーの大量生産化に伴う銀行貸付の大幅な増加が関係
しており、自動車業界への資金流入量の増加を物語っている。
21
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4.6 中国自動車メーカーの収益力分析
収益力シート
項目
2009 年
2010 年
2011 年上半期
販売利益率(%)
7.83
9.60
10.00
原価利益率(%)
8.24
10.40
10.84
販売粗利率 (%)
18.04
18.10
18.32
主要営業利益率(%)
14.75
15.16
14.98
販売純利益率(%)
6.72
9.60
10.00
欠損(%)
22.31
23.54
29.09
表 11
出所:国家統計局、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
上記の表 11 は、中国自動車メーカーの好調ぶりを示すに相応しい内容となっている。いずれ
も収益力指数を表したデータであるが、特に売上純利益率の伸び幅が顕著である。今後、中国
自動車メーカーがコスト管理面でのノウハウを蓄積していけば、更なる収益力を獲得することも
可能だろう。
第 5 章 2010 年中国自動車業界の収益力および生産
販売状況
5.1 中国自動車業界のコスト
あらゆる業界において、収益力を分析するためには、発生し得る全てのコストについて先に把
握する必要がある。通常、自動車のコストには、生産コスト、販売コスト、納税コスト、輸送コスト
などが含まれる。自動車の生産から流通の過程において費やされる直接労働、間接労働がダ
イレクトにコストを形成することからも、多くの自動車メーカーが、再生産(Reproduction)モデル
の実現に向けて、市場での販売を通じたコスト回収を目指しながら一定の利益を生み出してい
る。本章では、中国の自動車メーカーの主要コストについて先に略述する。
22
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5.1.1
生産コスト
生産コストに含まれるものとして、原料コスト、人的コスト以外にも、設備・所有権の割当コスト、
部品の輸出入コスト、管理コスト、研究開発コストなどが挙げられる。
原料コスト:自動車の生産に必要な原材料、例えばフレームに使われる鉄鋼、タイヤに使われ
るゴム、車窓に使われるガラスなどが挙げられる。これらのコストは、自動車のコストを構成す
る最たるものである。
人的コスト:企業の生産、経営、労務提供などの一定期間内の活動において、労働者を使用す
ることで発生する直接コスト・間接コストの総和を指す。一般的に、労働者賃金、福利などの支
出が含まれる。中国は充実した労働力を有し、世界規模で見ればその人的コストは比較的低い
とされるが、自動車業界は技術集約型、資本集約型の業界に属すことからも大量の専門スタッ
フが求められ、他の業界と比較すると、その人的コストは決して低くない。また、近年の自動車
業界の急成長に伴い、自動車業界に従事する労働者の賃金も、相応に上昇している。人的コ
ストは、生産コストにおける主要部分と言える。
設備・所有権の割当コスト:自動車の生産にあたっては、金型、取付器具を含む大量の大型設
備が必要となる。当該コストは、車種ごとの販売量予測といった関連状況を基に、自動車 1 台 1
台に割り当てられる。また、合弁メーカーによる生産、あるいは OEM 生産である場合、所有権
や商標使用料に関するコストが発生し、毎回の生産販売時における分割方式あるいは一括方
式のいずれかによって割り当てられる。
部品コスト:部品コストは最も可視的なコストである。自動車部品には、板バネ、フレーム、エン
ジン、ギア、更にはハンドル、シート、ライトなど数多くの部品が含まれる。これら部品の調達、
製造にかかるコストは数字として表しやすい。ただ、いくつかの合弁メーカーは、大量生産の開
始直後において多くの部品を中国国外から輸入する際に、関税率の変動や輸送費の高騰とい
った不可視の要素によってコストを圧迫されることがある。
研究開発コスト:研究開発は、全ての完成車メーカーにとって不可欠なものであり、市場および
顧客のニーズを満たすためには、常に新商品をリリースしていかなければならない。国際的な
グループ企業ともなると、かなりの資金(各年度の収入に応じた固定比率である場合が多い)を
23
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研究開発に投入するが、多額の資金をかけた研究開発の末に完成した商品が市場で失敗して
しまうと、その資金損失を下請けを含む各メーカーが負担せざるを得なくなることが多々ある。
また、一部の費用損失は、消費者にも跳ね返ってくることがある。
5.1.2
販売コスト
自動車コスト全体に占める販売コストの割合は低くない。一台の自動車が生産ラインから下りて
きた時点で、「商品」として見なされる。この「商品」をいかに売りさばいていくか、これこそ、メー
カーが頭を悩ませるところである。自動車の販売コストには、主に PR 活動コスト、広告宣伝コス
ト、無償メンテナンスコストなどが含まれる。
PR 活動コスト:商品のスムーズな市場流通のためには、各地の政府機関における各階層との
良好なパイプラインを築く必要があり、ここに一定のコストが費やされることがある。
広告宣伝コスト:企業が、各種メディアを通じた宣伝、あるいはノベルティーの配布などの方
法によって、自社商品に対する消費者の購買意欲を高めること、即ち、販売促進を目的とする
活動に使われるコストである。
無償メンテナンスコスト:自動車業界においては、自動車が消費者の手に渡った後、一定の
無償メンテナンス期間を設けるのが一般的である。本期間内に発生し得る各種コストは、綿密
な計算の上で、事前に自動車価格に組まれることが多い。
5.1.3
納税コスト
中国において、自動車メーカーが課される税金は主に以下の通りである。
増値税:増値税とは、物品の販売あるいは加工、修理、組立といった役務の提供、および物品
の輸入を営む組織並びに個人に対して課される付加価値税を指し、日本の消費税に近い。一
般企業の場合、基本税率は 17%である。増値税の加算分が企業の商品販売価格に組み入れ
られることで、最終的に消費者の負担となることも尐なくない。中国の全税収のうち、増値税は
約 3 割を占める。
24
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消費税:消費税とは、中国において特定の贅沢品に課される税金であり、日本の消費税とは性
質が異なる。化粧品や自動車などが消費税の対象として含まれ、自動車の消費税は排気量に
応じてメーカーから徴収される。中国の自動車販売量の圧倒的多数を占める排気量 1.0 リットル
超 2.5 リットル以下の自動車に対する税率は 9%(2011 年現在)であるが、2008 年 9 月 1 日の
税率調整によって、排気量 3.0 リットル超 4.0 リットル以下の自動車が 15%から 25%、排気量
4.0 リットル超の自動車が 20%から 40%へと、排気量の大きい自動車に対する大幅な増税が通
知された。
車輌船舶税:中国国内において、公安、交通、農業、漁業、軍事などの管理部門に合法的に登
記される車両、船舶は、その種類に応じて、規定の計算方法および基準額に基づく納税義務が
発生する。資産税の一種である。
5.1.4
寄託・輸送コスト
寄託コスト:自動車の生産と倉庫保管は表裏一体の関係にあり、広大な国土を有する中国にお
いては、貨物の寄託先を広範囲に分散させる必要がある。地価の高騰や、あらゆる貨物の流
通量が急増したことから、ここ数年、倉庫寄託コストは緩やかに上昇している。
輸送コスト:寄託コストと同じく、輸送コストの上昇も各メーカーにとって悩ましい問題である。輸
送距離が長い中国では常に綿密な地域戦略を練らなければならず、ある地域における需要供
給バランスが崩壊すると、輸送コストが跳ね上がってしまう可能性が非常に高い。
5.2 中国自動車業界の生産販売状況
2010 年の中国自動車生産量は 1,826.47 万台(前年比 32.44%増)、販売量は 1,806 万台(前年比
32.37%)に達し、引き続き世界一の座をキープしている。
内訳は、乗用車が生産量 1,389.71 万台(前年比 33.83%増)、販売量 1,375.78 万台(前年比
33.17%増)、商用車が生産量 436.76 万台(前年比 28.19%増)、販売量 430.41 万台(前年比
29.9%)となっている。詳細は次項の表 12 を参照のこと。
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2010 年中国の自動車生産販売状況
自動車生産量
前年比増加率
自動車販売量
前年比増加率
(万台)
(%)
(万台)
(%)
総量
1,826.47
32.44
1806.19
32.37
乗用車
1389.71
33.83
1375.78
33.17
セダン
957.59
28.17
949.43
27.05
多目的車
45.10
79.89
44.54
78.92
SUV
133.80
103.38
132.60
101.27
クロスオーバー車
253.22
26.36
249.21
27.77
436.76
28.19
430.41
29.90
バス
35.86
29.93
35.62
31.30
トラック
285.48
22.72
283.13
25.83
セミトレーラー
36.25
74.11
35.46
67.98
8.86
8.07
8.69
4.93
70.31
36.60
67.51
35.53
商用車
その他(バス類)
その他(トラック類)
表 12
出所:中国自動車工業協会
次項の表 13 は、2010 年における自動車販売台数(商用車含む)が多かった企業を、上位から
順に記したものである。市場シェアの 86.36%が上位 10 社によって占められている。2009 年と比
べると、上位 10 社の顔ぶれに大きな変化は無いが、上位 3 社による市場シェアが 2.63 ポイント
減尐しており、その牙城を崩さんとする中堅企業の勢いが見て取れる。
だが、中国工業情報化部が 2011 年度に開催した「関連企業の合併・再編に関する会議」にお
いて、国内自動車メーカーの広域的な企業統合の制限が提起された。そのため、実際の法的規
制が始まる前に、年間生産販売量 1 万台レベルの自動車メーカーをターゲットとした大企業の企
業買収が急速に進むと予測されている。そうなれば、業界のトップレベルに位置する企業が今
後更に市場シェアを拡大していくとも考えられる。いずれにせよ、中国自動車業界は戦国時代の
様相を呈しており、四大モーターズの動向に注目が集まっている。
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2010 年自動車販売台数上位 10 社
順位
企業名
販売台数(万台)
市場シェア(%)
1
上汽
355.84
19.70
2
東風
272.48
15.09
3
一汽
255.82
14.16
4
長安
237.88
13.17
5
北汽
148.99
8.25
6
広汽
72.42
4.01
7
奇瑞(CHERY)
68.21
3.78
8
比亜迪(BYD)
51.98
2.88
9
華晨
50.14
2.78
10
江淮
45.85
2.54
表 13
出所:中国自動車工業協会
続いて、表 14 は乗用車の販売台数に絞った順位表であり、グループ企業傘下のメーカーある
いは独立メーカーを対象としている。上位 10 社による乗用車の総販売台数は 779.36 万台、市場
シェアの 57%を占め、上位 3 社は 100 万台の大台を突破した。2009 年と比べると、上位 4 社には
順位変動が無く、もはや定位置を確保したようにも見えるが、反面、6~10 位の座を巡って毎年
熾烈な競争が繰り広げられている。
2010 年国産乗用車販売台数上位 10 社
順位
メーカー名
販売台数(万台)
市場シェア(%)
1
上汽 GM 五菱
113.56
8.31
2
上海 GM
101.21
7.40
3
上海ワーゲン
100.14
7.32
4
一汽ワーゲン
87.00
6.36
5
重慶長安
71.00
5.19
6
北京現代
70.30
5.14
27
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7
奇瑞(CHERY)
67.48
4.94
8
東風日産
66.10
4.83
9
比亜迪(BYD)
51.98
3.80
10
一汽トヨタ
50.59
3.71
表 14
出所:中国自動車工業協会
下記の表 15 は、2010 年の乗用車販売台数を車種別で表したものである。上海ワーゲンの
LAVIDA、上海 GM の Cruze などが大幅な販売増を記録しており、人気の高さがうかがえる。また、
上位 10 車種のうち、ワーゲン系が 4 車種ランクインしており、根強い存在感を示している。日系メ
ーカーの販売車はランクインしなかった。上位 10 車種の総販売台数は 213.84 万台、乗用車の
総販売台数の約 23%を占める。
2010 年国産乗用車販売台数上位 10 車種
順位
車種
メーカー名
1
F3
比亜迪(BYD)
26.39
-9.30
2
LAVIDA
上海ワーゲン
25.16
71.80
3
Elantra
北京現代
23.33
-2.55
4
Jetta
一汽ワーゲン
22.45
-0.20
5
Excelle
上海 GM
22.25
-7.73
6
SANTANA
上海ワーゲン
21.14
2.28
7
夏利(Charade)
天津一汽
19.86
34.6
8
Cruze
上海 GM
18.77
103
9
旗雲(banner cloud)
奇瑞(Chery)
17.34
6.99
10
Sportline
一汽ワーゲン
17.25
38.70
表 15
販売台数(万台) 前年比増加率(%)
出所:中国自動車工業協会
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2009~2010 年 排気量別で見た乗用車(セダン)販売状況
(万台)
800
600
400
200
(排気量)
0
1L 未満
1-1.6L
1.6-2.0L
2.0-2.5L
2.5-3.0L
3.0L 超
2009
44.04
474.14
165.88
58.28
4.78
0.19
2010
67.62
595.56
215.27
64.23
6.67
0.07
図4
出所:中国自動車工業協会
上の図 4 から、排気量 1~2 リットルの乗用車の販売量が群を抜いており、かつ前年からの伸
び幅も突出していることがわかる。国家が低排気量の自動車を推奨していることもあり、この傾
向は今後も続くだろう。
2010 年の SUV 販売台数上位 5 車種は、次の表 16 の通り。SUV の分野では、日系メーカー
の人気がうかがえる。上位 5 車種の総販売台数は 54.64 万台、SUV 全体の総販売台数の 41%
を占める。
2010 年国産 SUV 車販売台数上位 5 車種
順位
車種
メーカー名
販売台数(万台)
1
哈弗(Harvard)
長城汽車
15.01
2
CRV
東風ホンダ
14.00
3
RAV4
一汽トヨタ
9.81
4
Highlander
広汽トヨタ
8.10
5
聖達菲(Santa Fe)
華泰汽車
7.72
表 16
出所:中国自動車工業協
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本章 5.2 で記した各データから、中国自動車メーカーの生産販売状況についての結論として、
まず、生産販売比率のバランスが取れていることが挙げられるだろう。2010 年の各メーカー在庫
量は、約 50 万~60 万台と、比較的良好な水準を保っている。また、それぞれの車種ブランド、モ
デルともに安定して数字を伸ばしており、特に低排気量車の販売量増加が顕著である。
第 6 章 中国の自動車輸出入状況
6.1 自動車輸出入の発展概要
近年、中国の完成車の輸出入について、その発展と変化が中国国内の自動車市場に大きな
影響を及ぼしていることは言うまでも無い。完成車の輸入、輸出ともに、中国自動車市場あるい
は自動車関連企業にとって、国際市場の開拓につながるものである。
中国の完成車輸出入状況は、国家によるマクロ調整の影響を受けて若干落ち込んだ 2005
年を除き、2001 年から 2008 年にかけて着実な成長が見られる。しかし、2008 年の国際的金融
危機を受け、2008 年末からその成長も次第と下降線を辿り、2009 年には大幅に衰退した。この
まま衰退が続くかと思われたが、2010 年に入ると、世界経済の復興に伴い、ほぼ元の状態まで
輸出入量を回復させている。
まず、自動車輸入状況をデータで見ると、その輸入先がいくつかの国に集中していることが
わかる。2010 年の対中自動車輸出額を順位で示すと、上から順に日本、ドイツ、韓国、アメリカ、
イギリス、メキシコ、スロバキア、ベルギー、オーストリア、ポルトガルとなり、上位 10 ヵ国からの
自動車輸入台数は 78.92 万台、総輸入台数の 97%を占める。(図 5 を参照)
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2010年 国別で見た中国の自動車輸入先(上位10ヶ国)
1.07
日本
1.05
0.65
2.44
2.53
3.13
単位:%
ドイツ
韓国
25.48
4.33
アメリカ
イギリス
8.01
メキシコ
スロバキア
ベルギー
8.74
オーストリア
ポルトガル
23.93
その他
図5
出所:中国自動車工業協会
輸入車のブランド力は非常に高く、特に高級車の人気がうかがえる。ベンツやBMWといった
世界的にも有名な超高級車が大いに支持されており、時に供給不足に陥るほどである。この現
象は、中国の富裕層の増加を如実に反映していると言えるだろう。
中国自動車工業協会が発表したデータによると、2010年、中国の自動車総生産量は1,826.47
万台に達し世界一の座についたものの、その輸出量はわずか54.48万台にとどまり、生産量に
占める割合は2.98%であった。この2.98%という数字は、2008年の水準を下回っているだけでなく、
世界の主要自動車生産国の中でも最低レベルに位置する。欧州諸国、日本、韓国などの自動
車輸出大国は言うまでもなく、国際的な自動車輸出拠点であるタイ、メキシコ、更にはインド、ブ
ラジルといった、非輸出依存国の水準にも及んでいない。(表17を参照)
欧米・アジア・アフリカなどの自動車生産国において自動車輸出量が生産量に占める割合
国名
2007 年
2008 年
2009 年
オーストリア
98.91%
99.23%
77.57%
ドイツ
75.07%
74.45%
68.78%
イタリア
50.65%
54.79%
45.37%
日本
56.48%
58.11%
45.58%
韓国
69.68%
70.14%
61.17%
31
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タイ
53.53%
56.23%
55.24%
トルコ
74.62%
79.35%
72.33%
南アフリカ
33.16%
52.67%
47.59%
表 17
出所:上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
6.2 自動車輸出入の総量分析
2008~2010年 完成車輸出入状況の推移
(万台)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
輸入
輸出
輸入前年比
輸出前年比
81.36
68.07
56.62
41.01
2008
42.08
36.96
2009
図6
(増加
120.00%
100.00%
80.00%
60.00%
40.00%
20.00%
0.00%
-20.00%
-40.00%
-60.00%
2010
出所:中国自動車工業協会
上記図 6 からわかる通り、2009 年と比較した 2010 年の自動車輸出入量は、数字として伸び
を見せただけでなく、輸入量が輸出量を大幅に上回るという新たな現象も生じている。国内経済
の着実な回復、市場ニーズの高まりを受けて爆発的な成長を遂げた 2010 年の自動車輸入は、
輸入台数 81.36 万台(前年比成長率 93.33%)、輸入総額 306.40 万米ドル(前年比成長率 99.73%)
を記録した。いずれも史上最高記録であり、近年の平均記録を大幅に超える結果となった。一
方、自動車輸出はと言うと、世界経済の緩やかな回復、特にブラジル、ロシアなどの新興市場
国のいち早い復興を受けて上昇に転じ、V 字回復とも言えるべき成長を見せた。最終的に輸出
台数 56.62 万台(前年比成長率 53.17%)、輸出総額 69.86 万米ドル(前年比成長率 34.68%)を記
録したものの、2007 年、2008 年における 60 万台以上の輸出実績からは、なお一定の開きがあ
る。
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2007~2010 年 乗用車・商用車の輸入量推移
乗用車
(台)
商用車
乗用車増加率
商用車増加率
(増加率)
900,000
100.0%
800,000
80.0%
700,000
60.0%
600,000
500,000
40.0%
400,000
20.0%
300,000
0.0%
200,000
-20.0%
100,000
0
-40.0%
2007
2008
図7
2009
2010
出所:中国自動車工業協会、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
上のグラフから、自動車輸入においては乗用車が圧倒的多数を占め、かつ上昇傾向にある
ことがかわる。
2007~2010 年 乗用車・商用車の輸出量推移
乗用車
(台)
商用車
乗用車成長率
商用車成長率
(増加率)
400,000
120.0%
350,000
100.0%
80.0%
300,000
60.0%
250,000
40.0%
200,000
20.0%
150,000
0.0%
-20.0%
100,000
-40.0%
50,000
-60.0%
0
-80.0%
2007
図8
2008
2009
2010
出所:中国自動車工業協会、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
上のグラフを見るに、自動車輸出における一つの動向として、商用車の輸出動向が停滞気味
であるのに対し、金融危機の影響を受けつつも乗用車の輸出は上昇傾向にあることが挙げら
れる。特に 2010 年は総輸出台数に占める両者の割合がほぼ均等であることから、乗用車の輸
出台数が商用車の輸出台数を追い抜く日も近いとみられている。
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6.3 輸出入車の平均価格分析
2001~2010 年完成車の輸入状況(台、万米ドル)
2001 年
数量
2002 年
金額
数量
2003 年
金額
数量
金額
乗用車
61,776
126,094.7
115,047
260,587.3
153,591
443,756.5
商用車
8,952
42,309.9
11,359
54,119.4
18,119
83,835.1
合計
70,728
168,404.6
126,406
314,706.7
171,710
527,591.6
2004 年
2005 年
2006 年
乗用車
162,077
459,486.8
155,175
468,222
218,624
693,369.6
商用車
13,577
82,130.6
6,490
48,878.9
9,149
62,757.8
合計
175,654
541,617.4
161,665
517,100.9
227,773
756,127.4
2007 年
2008 年
2009 年
乗用車
302,096
982,770.3
395,799
1403,259
409,225
1,435,439.8
商用車
12,034
117,599.7
13,970
123,049.7
11,471
111,691.7
合計
314,130
1,100,370
409,769
1,526,309
420,696
1,547,131.5
2010 年
乗用車
791,126
2,889,909.0
商用車
22,219
188,643.1
合計
813,345
3,078,552.1
表 18
出所:中国自動車工業年
中国自動車工業年鑑の自動車輸入状況を表すデータから、中国の自動車輸入量および輸入
総額(為替レートは考慮しない)は、WTO 加盟後 10 年間、2005 年を除いて毎年増加していること
がわかる。特に 2009 年から 2010 年にかけての増加幅には目を見張るものがあり、それぞれ
2009 年の約 2 倍となった。中国自動車市場における完成車輸入市場が、上昇基調にあることは
間違いない。
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2001~2010 年 輸入車の平均価格推移
(万米ドル)
12.00
10.00
8.00
6.00
4.00
2.00
0.00
2001
乗用車の平均輸入価格 2.04
商用車の平均輸入価格 4.73
2.38
総合平均輸入価格
2002
2.27
4.76
2.49
図9
2003
2.89
4.63
3.07
2004
2.83
6.05
3.08
2005
3.02
7.53
3.20
2006
3.17
6.86
3.32
2007
3.25
9.77
3.50
2008
3.55
8.81
3.72
2009
3.51
9.74
3.68
2010
3.65
8.49
3.79
出所:中国自動車工業協会、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2001 年から 2010 年にかけて、乗用車、商用車の平均輸入価格は上昇傾向にある。完成車輸
入台数のうちの大半を乗用車が占めることから、乗用車の平均輸入価格が、ほぼそのまま総
合平均輸入価格に反映されており、いずれも緩やかな直線を描いていることがわかる。これに
対し、商用車の平均輸入価格は比較的大きく変動しており、年ごとにバラつきはあるものの、乗
用車の平均輸入価格と比較すると急激に上昇している。
次に、自動車輸出状況を表すデータを見てみよう。(表 19 を参照)
2001~2010 年完成車の輸出状況(台、万米ドル)
2001 年
数量
2002 年
金額
数量
2003 年
金額
数量
金額
乗用車
3,579
3,273.2
2,270
3,359
7,795
6,117.2
商用車
13,812
16,679.2
19,690
19,799.6
37,982
31,073.4
合計
17,391
19,952.4
21,960
23,158.6
45,777
37,190.6
2004 年
2005 年
2006 年
乗用車
73,213
17,214.2
47,185
39,609.3
126,344
93,665.3
商用車
63,045
48,259.1
127,018
118,849.5
217,035
219,799.4
合計
136,258
65,473.3
174,203
158,458.8
343,379
313,464.7
2007 年
2008 年
2009 年
乗用車
264,501
208,617.1
318,593
245,917.4
153,005
110,198.6
商用車
349,911
521,950.7
362,415
717,073.2
217,025
408,837.8
合計
614,412
730,567.8
681,008
962,990.6
370,030
519,036.4
35
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2010 年
乗用車
282,368
186,098.8
商用車
284,285
512,315.0
合計
566,653
698,413.8
表 19
出所:中国自動車業界年鑑
乗用車の輸出は、2002 年と 2005 年にマイナス成長はあったものの、2001 年から 2008 年にか
けて比較的良好な成長を続けていると言える。また、商用車の輸出状況は更に良好であり、金
融危機の煽りを受けつつも、現在に至るまで着実に成長していることがわかる。WTO 加盟後に
おける中国貿易全体の優位性が、次第に自動車輸出にも反映されるようになり、自動車輸出に
関しては高度成長期に突入したとの総評が妥当だろう。確かに、2008 年の金融危機の影響に
よって、2009 年の輸出状況はデータ上大幅に下落したが、2010 年にはほぼ元の水準まで回復
するほどの急成長を見せている。金融危機以前の水準には後一歩及ばないものの、自動車輸
出が今後更なる成長を遂げることは、まず間違いない。
2001~2010 年 輸出車の平均価格推移
(万米ドル)
2.50
2.00
1.50
1.00
0.50
0.00
2001
乗用車の平均輸出価格 0.91
商用車の平均輸出価格 1.21
総合平均輸出価格
1.15
図 10
2002
1.48
1.01
1.05
2003
0.78
0.82
0.81
2004
0.24
0.77
0.48
2005
0.84
0.94
0.91
2006
0.74
1.01
0.91
2007
0.79
1.49
1.19
2008
0.77
1.98
1.41
2009
0.72
1.88
1.40
2010
0.66
1.80
1.23
出所:中国自動車工業協会、上海彦陽投資諮詢有限公司データベース
2001 年以降、乗用車、商用車ともに平均輸出価格は大きく変動している。乗用車の輸出価格
に関しては、2004 年を最低点としてその後は比較的安定した状況にあり、0.7~0.85 万米ドルの
範囲内で推移している。一方、商用車の輸出価格は、2001~2003 年にかけて下降線を辿った
が、乗用車と同じく、2004 年を最低点として大幅に上昇していることがわかる。2009 年、2010 年
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は乗用車、商用車ともに輸出価格が下降傾向にあるが、これは、金融危機からいち早く抜け出
したいという国家の思惑から自動車輸出関連の政策調整が実行されたことに起因すると考えら
れる。
本章の各データから、輸入車の平均価格が輸出車の平均価格を未だ大きく上回っているとい
う事実に行き着く。2005 年以降は輸出車の平均価格も緩やかに上昇しているものの、輸入車の
平均価格と大きな開きがあることは否めない。いくつかの要因があるだろうが、主な理由として
考えられることとして、まず、ジープなどの高価格車の輸入量が最も多いことが挙げられる。これ
に対し、輸出量が最も多いのはトラックやセダンの中でも低価格車に該当する車種である。次に、
中国の自動車輸出先が、アルジェリア、ベトナム、シリア、エジプトなどの非先進国に集中してい
ることが挙げられる。これらの国の購買力は相対的に低いため、輸出価格を高く設定しにくい。
また、第 3 の理由として、中国の輸出戦略も関係していると考えられる。中国がいくら高度成長
期にあるとは言え、中国産自動車のブランド力、国際市場での競争力は、世界の先進国と比べ
ると見务りがする点は否定できない。国際市場で生き残るためには、なおも低価格戦略に頼ら
ざるを得ないという事情があると言える。
2001~2010 年自動車平均輸出価格と平均輸入価格の差
(倍)
7
6
5
4
3
2
1
0
2001
2002
2003
2004
2005
図 11
2006
2007
2008
2009
2010
出所:本報告書の表 18 および表 19 に基づく製作
目下、中国は世界で最も急速に発展し続けている国であり、とりわけ、自動車業界の発展は目
覚ましい。2004 年は、完成車の平均輸出価格が圧倒的に低かったために、輸入車価格と輸出
車価格の差が最も大きく開いた 1 年であった。2005 年以降は徐々に価格差を縮めてきていたが、
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2010 年、価格差が再度開いている。しかし、これは関連政策(自動車輸出企業への優遇政策な
ど)による一時的な現象とみられており、中国自動車業界の国際的競争力が高まるにつれて、
今後、中国が自動車輸出大国へとシフトしていく可能性は非常に高い。同時に、自動車輸出価
格も相応に上昇するとみられ、輸入車との価格差は、継続的に縮小していくことが予想される。
以上
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