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ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD

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ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD
一 般 論 文
FEATURE ARTICLES
ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD
TW-170VD Drum Type Washer-Dryer
今井 雅宏
河野 哲之
村瀬 弘樹
■ IMAI Masahiro
■ KONO Tetsuyuki
■ MURASE Hiroki
東芝(現 東芝家電製造(株))
が2000 年2 月に業界初のDD(Direct Drive)
モータ搭載のドラム式洗濯乾燥機を発売以来,
洗濯乾燥機需要が急拡大し,2007年度には洗濯機総需要の31%を占め,いっそうの拡大が見込まれている。これは,住環境
やライフスタイルの変化によって,天日干しできないあるいはしたくないことが要因と考えられており,更なる乾燥仕上がりの向上
やランニングコストの低減が望まれている。このため,ドラム式洗濯乾燥機の乾燥方式には,従来から採用されていたヒータ方式
に加え,乾燥時の消費電力量の大幅低減と水を使わない除湿により,ランニングコストを大幅に低減でき,低温乾燥でしわや布傷
みも少ないヒートポンプ方式が採用されるようになってきている。
当社も,ドラム式洗濯乾燥機用ヒートポンプユニットを開発し,それを搭載して業界 No.1のランニングコスト低減を実現したエ
アコンサイクルドラムTW-2500/2000VCを2006 年7月に発売し,好評を博している。ただし,ヒートポンプ方式には製品の
価格アップや質量増といった問題もあり,ヒートポンプ方式の改善と同時に,ヒータ方式での更なるランニングコストの低減と仕
上がりの向上が望まれている。
このような背景から,ヒータ方式でありながらヒートポンプ方式に近い仕上がりとランニングコストの低減を実現したドラム式
洗濯乾燥機 TW-170VDを開発し,2006 年11月に発売した。
Since Toshiba introduced the industry’
s first drum type washer-dryer equipped with a direct drive (DD) motor into the market in 2000, the demand
for washer-dryers has rapidly expanded and they are expected to account for a 31% share of the washing machine market in FY2007.
This is
because people have become unwilling or unable to dry laundry in the open air due to inadequate living environments or changes in lifestyles.
the other hand, a need has still existed for further improvements in drying finish and reduction in washing costs.
drying method was introduced in addition to the conventional heater-drying method.
On
For these reasons, a heat pump
The amalgamation of the two methods promises a considerable
reduction in total power consumption and in water consumption because heat pump drying eliminates the use of cooling water for dehumidification
when laundry is dried.
Accordingly, the running cost is greatly reduced while, at the same time, laundry is free of wrinkles and damage because it
is dried at a low temperature.
Toshiba Consumer Marketing Corporation. released the TW-2500/2000VC drum type washer-dryer in July 2006 after developing an exclusive
heat pump unit.
This model has the industry’
s lowest running cost and enjoys a good reputation.
continue to face the issues of price and weight.
However, models equipped with a heat pump
To overcome these issues, reduction in running costs and improvements in drying finish of the
heater drying method are still required in addition to further development of the heat pump method.
Against this background, we developed and released another type of drum type washer-dryer, model TW-170VD, in November 2006.
This model
is a reasonably priced heater-drying drum type washer-dryer that offers drying finish close to that of heat pump models.
1
まえがき
ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD(図 1)は,ヒータによる加
熱乾燥方式を採用しながら,従来のヒータ方式の欠点であっ
た乾燥による衣類のダメージを防止し,乾燥仕上がりを格段
に向上させるとともに,乾燥時のランニングコストを従来比で
約 7 % 低減した商品である。
このために,乾燥の進み具合に応じてヒータのパワーを最
適に可変できるヒータパワーコントロールと,乾燥仕上がりを
低温で行うために外気を導入するエアウィンドコントロールを
開発し,搭載している。この二つのコントロール機能を総称し
てハイブリッドエアエンジンと呼んでいる。
52
図 1.ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD ̶ ハイブリッドエアエンジンの搭
載で,乾燥仕上がりを格段に向上させた。
TW-170VD drum type washer-dryer
東芝レビュー Vol.62 No.7(2007)
ここでは,このハイブリットエアエンジンを使った乾燥仕上
し口付近の平均温度は一定でもその変動は大きく,温度が
がり向上の原理と効果について説明するとともに,このエンジ
高いところでは,衣類がダメージを受ける80 ℃を超えていた
ンを搭載することで可能となった新機能についても併せて述
(図 3)。このため,ヒータの制御をリレーから半導体スイッチ
ング素子の双方向サイリスタに変更し,ヒータへの通電を位相
べる。
制御することで温風吹出し温度を一定に保ち,過熱による衣
2
ハイブリッドエアエンジンによる仕上がりの向上
類のダメージを少なくするヒータパワーコントロールを開発した
(図 4)。
乾燥仕上がりを向上させるためには,乾燥時に衣類に加わ
また,乾燥時の衣類のしわは,乾燥の初めや途中のなま乾
る熱ストレスを少なくすることがポイントとなる。乾燥される
き状態で発生するのではなく,乾燥率が 98 % 以上の仕上げ
衣 類のうち,特にアクリルやポリウレタンなどの化学繊 維は
乾燥時に発生する。よってこのとき,温度を下げて衣類のダ
熱に対する耐力がなく,約 80 ℃でダメージを受けることがわ
メージを少なくすることがポイントとなる。
。このため,乾燥は 80 ℃以下の温度で行う
かっている(図 2)
ことが必要である。
最適温度の設定が可能
ところが,従来のヒータ方式は,槽内の温度を検出しなが
ダメージ温度
繊 維
200 ℃
綿,麻
180 ℃以上
温度を一定コントロール
→衣類に熱ストレスを与えない
140 ℃以上
100 ℃
ポリエステル,毛
一
般
論
文
温 度
らヒータをリレーで ON/OFFし制御していたため,温風吹出
80 ℃以上
時 間
0℃
アクリル,ポリウレタン
図 2.衣類の種類とダメージ ̶ アクリルやポリウレタンなどの化学繊維は,
80 ℃でダメージを受ける。
ヒータ電力
(W )
⒜ 吹出し口の温度変化
1,400
700
Specific damage temperature of individual textile materials
時 間
⒝ ヒータ制御
衣類のダメージ温度
図 4.ヒータパワーコントロールの吹出し温度 ̶ ヒータパワーコントロール
は最適温度に保つことが可能で,衣類のダメージが少ない。
温 度
Constant outlet temperature of drying air by controlled heater power
外気
ヒータ
温度の変化が大きい
→過熱が発生する
排気口
ファン
排気
内部循環
時 間
ヒータ電力(W)
⒜ 吹出し口の温度変化
吸気口
1,400
700
水冷熱交換器
時 間
⒝ ヒータ制御
図 3.従来のヒータ制御による吹出し温度 ̶ 従来の制御は,ON/OFF 制
御のため温度変化が大きい。
Outlet temperatures of drying air by conventional heater control
ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD
図 5.エアウィンドコントロールの概念 ̶ 乾燥末期に排気口を開き,吸気
口から外気を導入する。
“Air wind control”drying system that brings in exterior air
53
このため,乾燥率 97 % の状態になると,ヒータ通電を停止
3.1 ヒート除菌脱水
するとともに,本体上後部に設けた排気口を自動的に開くこと
乾燥機能を使わず外干しや部屋干しをする場合,冬場は乾
で吸気口から乾いた外気を導入し,しわのつきにくい温度ま
きにくい,部屋干しすると衣類がにおう,といった不満がある。
で下げながら仕上げ乾燥を行うように制御している。これが
これを解決するため,脱水終了後に,ハイブリッドエアエンジ
今回開発したエアウィンドコントールであり,しわの少ない乾
,衣類
ンでドラム内の温度を約 65 ℃に約10 分間保ち(図 8)
。
燥仕上がりと消費電力の低減を同時に実現している(図 5)
を除菌(注 1)する“ヒート除菌脱水”機能を搭載した(図 9)。
以上 述べたヒータパワーコントロールとエアウィンドコント
ロールによるハイブリッド乾燥方式を開発し(図 6)
,乾燥後
の衣類の縮みや傷み及びしわを低減し,天日干しに近い乾燥
洗い
高速回転&プリヒートで ドラム内温度 取出し時の
約 65 ℃,約 10 分 布温度を
しっかり脱水
約 40 ℃に
で除菌
残水量が従来の 1/2
洗濯
温度(℃)
。
仕上がりを実現できた(図 7)
プリヒート
脱水
ハイブリッド乾燥
クールダウン
温風乾燥(ヒータパワー 乾燥(エア
コントロール)
ウィンドコント
ロール)
80
乾燥前半
ヒータ:強
風 量 :大
乾燥後半
ヒータ:弱
風 量 :小
ハイブリッドエアエンジン
+
Ag 抗菌コート
銀イオンで抗菌
乾燥終盤
ヒータ:OFF
風 量:中,排気口:開
プリヒート脱水
ヒート除菌
あったか仕上げ
時 間
従来機種
60
TW-170VD
40
消費電力
7 %カット
20
100
2,300
700
図 6.ハイブリッド乾燥の制御 ̶ ヒータパワーコントロールとエアウィンドコ
ントロールで衣類のダメージを低減する。
Steps of hybrid drying with“air wind control”drying system
熱に弱いプリントが変形
Dehydration with heat sterilization
2,450
消費電力量(Wh)
プリントが変形しにくい
図 8.ヒート除菌脱水 ̶ 脱水後にハイブリッドエアエンジンを使い,衣類を
除菌する。
天日干しと変わらない
仕上がり
試験布 1 枚(10×10 cm)当たりの生菌数
(大腸菌,黄色ぶどう球菌)
ドラム内温度(℃)
100
ヒート除菌脱水
すすぎ
7
10
6
10
5
10
4
10
大腸菌
24 万個
黄色
ぶどう球菌
270 万個
3
10
2
10
10
ほぼゼロ
1
除菌脱水前
除菌脱水後
(財)
日本食品分析センター調べ
図 9.ヒート除菌脱 水の効果 ̶ 大 腸菌や黄色ぶどう球菌もほぼゼロと
なる。
Disinfection effect of dehydration with heat sterilization
⒜ 天日干し
⒝ 従来のヒータ乾燥
⒞ ハイブリッド乾燥
図 7.ハイブリッド乾燥後の仕上がり ̶ 天日干しに近い仕上がりを実現
した。
Comparison of finishing quality after sun-drying, conventional heater
drying, and hybrid drying
3.2 ヒート除菌消臭
衣類へのダメージが少ない約 70 ℃の温 風を当てて衣類,
寝具,クッションなどからにおいをはがし,水熱交換器のシャ
ワー状の水から出るマイナスイオンでにおいをキャッチして機
“ヒート除菌消
外へ排出することにより除菌(注 2)及び消臭する,
3
ハイブリッドエアエンジンによる新機能
TW-170VD は,ハイブリッドエアエンジンにより二つの新機
能を搭載し,清潔志向のニーズに応えている。以下に,その概
臭”機能を搭載した。ぬいぐるみ,帽子など洗えないものや熱
に弱いデリケートな衣類も安心して除菌及び消臭できる。
ヒート除菌消臭の仕組みを図 10 に,消臭性能の確認結果
を図 11 に示す。
要を述べる。
(注1),
(注 2) (財)日本食品センター試験成績書発行番号:第 306100821-001号
54
東芝レビュー Vol.62 No.7(2007)
乾燥ヒータ
ファン
マイナスイオンで
消臭
マイナスイオンが
においをキャッチ
熱で除菌
熱でにおいを
はがす
新開発
サスペンション防振ゴム
新開発
振動吸収ベローズ
サスペンションの
防振ゴム形状を最適化
ドラムと本体をつなぐ
ベローズ硬度を最適化
マイナスイオン
におい
ドラムから台板に
伝わる振動が減少
図 10.ヒート除菌消臭の仕組み ̶ 約 70 ℃の温風で除菌し,マイナスイオ
ンで消臭する。
Principle of sterilization and odor elimination of dehydration with heat sterilization
ドラムから本体に
伝わる振動が減少
ハイグリップ脚
図 12.低振動化技術 ̶ 水槽の振動を本体に伝わりにくくし,騒音を低減
する。
Vibration isolation technology applied to TW-170VD washer-dryer
6 段階
臭気強度
レベル
無臭
ほとんど
におわない
少しにおう
明らかに
におう
強く
におう
極端に
強くにおう
0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
焼肉臭
今回開発したドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD は,ヒータ方
防虫剤
式の乾燥性能をワンランクアップした商品に仕上げることがで
たばこ臭
きた。
焼肉臭
ヒート
除菌消臭
防虫剤
あとがき
においをほとんど
感じないレベルまで消臭
たばこ臭
しかし,ユーザーのニーズは変化し,そのレベルも上がって
いくと思われる。今後も,それらのニーズに応えるとともに,
新たな価値を提案できる商品の開発に取り組んでいきたい。
図 11.ヒート除菌消臭の消臭性能確認結果 ̶ 気になるにおいを感じない
レベルまで消臭する。
Odor elimination effect of dehydration with heat sterilization
今井 雅宏 IMAI Masahiro
4
低騒音・低振動化への取組み
東芝家電製造(株)愛知工場 ランドリー技術部長。
ドラム式洗濯乾燥機の商品開発に従事。
Toshiba HA Products Co., Ltd.
当社は,DD モータを更に進化させた S-DD(SuperDD)
エン
ジンと制振技術で,低騒音については業界 No.1を維持してき
河野 哲之 KONO Tetsuyuki
たが,今回,サスペンションの防振ゴム形状の最適化と,水槽
東芝家電製造(株)愛知工場 ランドリー技術部主務。
ドラム式洗濯乾燥機の商品開発に従事。
Toshiba HA Products Co., Ltd.
と本体をつなぐベローズと呼ばれるゴム部品を柔らかくするこ
とにより,1,500 rpmの超高速で回転する脱水槽の振動を本
体に伝わりにくくして本体の振動を低減し,業界 No.1(注 3)の低
村瀬 弘樹 MURASE Hiroki
騒音化を実現した(図 12)。
東芝家電製造(株)愛知工場 ランドリー技術部。
ドラム式洗濯乾燥機の乾燥制御技術の開発に従事。
Toshiba HA Products Co., Ltd.
(注 3) 2006 年11月7日現在,当社調べ。
ドラム式洗濯乾燥機 TW-170VD
55
一
般
論
文
初 期
5
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