...

参照点構造による数量調の多義性の説明

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

参照点構造による数量調の多義性の説明
『東 京 大 学 言 語 学 論 集 』31(2011.9)165-186
参照 点構造 による数量詞の 多義性 の説明
中栄 欽 一
キー ワー ド:作 用 域 、参 照 点 構 造 、 際 立 ち 、 コ ンテ キス ト等 、 節 の 中 の トピ ッ ク、 限 定 、 不 定
要 旨
Someone
loves everyone.のよ うに複 数 の数 量詞 を含 む文 は 多義性 が 生 じる。 この 多義 性 は 作用 域 の 作
用 に よる もの で生 成文 法 で は一般 にquantifierraising(QR)お よびc統
相 手の 数量 詞 をc統
名詞 句 をLF(論
御 に よ り説 明 され る。構 造 上、
御 す る位 置 にあ る数 量詞 は広 い 作用 域 を取 る こ とが で き るか ら、 数 量詞 を 含 む
理形 式)に お い て非顕 在的 に移 動 させ るこ とに よ り作用 域 に優 劣 を生 じ させ 、 多義
性 を説 明す るもの で あ る。someoneがeveryoneをc統
解釈 に な り、逆 で あれ ばeveryone>someoneの
御 す る位 置へ 移 動す れ ばsomeone>everyoneの
解 釈が 得 られ る。 この 多義 性 は参 照 点構 造 を使 っ て説
明す るこ とが で きる。someoneが 参 照点 とな って命題(タ ー ゲ ッ ト)を 解 釈す れ ば 前者 の解 釈 が 得 ら
れ 、everyoneが 参 照 点 とな る と後者 の解 釈 が得 られ る。数 量詞 の多 義性 を この参 照 点構 造 で説 明 す る
た めに は 、参 照点 を決 定 す る際 立 ち とは何 か 、ま た どの よ うに参 照点 が 決 定 され るか が 問題 とな る。
これ らの点 に 関 し、2章 お よび3章 で ス コー プの ヒエ ラル キー に基 づ いて 多義 性 の判 定 方 法 を論 じた
久 野 ・高見(Kuno,Susumu
and Takami,Ken-ichi 2002 QuantifierScope)の エ キ スパ ー ト ・シ ステ ム をべ
一 ス に検討 し
、この検 討 結果 に基づ き4章 で参 照点 構 造に よ る数量 詞 の多 義性 解 釈 の メカ ニズ ム を提
案す る。 またvan Hoek(1995,1997,2007)は
代 名飼 の 照応 関係 を参 照 点構 造 に よ り説 明 してい るが 、
この場 合 の参 照点 とな るた めの 条件 は 数量 詞 の多義 性 の場 合 と比べ 異 な る点 が あ る。5章 で この違 い
を 比較 検討 してそ の理 由 を明 らか にす る。
1.は
じめ に
複 数 の 数 量 詞 を 含 む 次 の よ う な 例 文 は 多 義 性 が 生 じ る 。1
(1)Someoneloveseveryone.
「ど の 人 も(皆
を)愛
し て い る 人 が い る 」(someone>everyone)
「ど の 人 に と っ て も 誰 か が そ の 人 を 愛 して い る 」(evelyone>someone)
こ の 多 義 性 は ス コ ー プ(作 用 域)の 作 用 に よ る も の で 生 成 文 法 に お い て は 一 般 にquantifierraising
(QR)お
よ びc統
(論 理 形 式)に
御 に よ り説 明 され る 。QRはMay(1977)の
用 語 で 数 量 詞 を 含 む 名 詞 句 をLF
お い て 非 顕 在 的 に 移 動 さ せ る こ と に よ り数 量 詞 の ス コ ー プ に 優 劣 を 生 じ さ せ 多
1数 量詞 とは 数や 量 を表す 表 現 で
、some,any,aな どを指 す。 ま たWH句
を受 け るの で数 量飼 に含 め る。
一165一
も数量 詞 上昇 と似 たWH-misingの
摘用
中栄
欽一
義 性 を説 明 す る もの で あ る。2っ の 数 量詞 が含 まれ る文 で 相 手 の 数 量詞 をc統
る数 量詞 は広 い ス コー プ を とる こ とが で き るか ら、QRに
御 す る位 置 に あ
よっ てsomeoneがeveryoneをc統
御
す る位 置 へ 移 動 す れ ば 前者 の解 釈(以 降 「表 面解 釈 」 と呼ぶ)に な り、 逆 で あ れ ば後 者 の解 釈
(以降 「
反 転 解 釈 」 と呼ぶ)が 得 られ る。 この多 義性 は参 照 点 構 造 を使 っ て 説 明 す る こ とが で
きる。someoneが 参 照 点(referencepoint)に な って命 題(タ ー ゲ ッ ト)を 解 釈 す れ ば 表 面解 釈 が
生 じ、everyoneを 参 照 点 とすれ ば反 転 解 釈 とな る。参 照 点 はLangacker(1991,1993)の
る。認 知 的 に あ ま り際 立 ち(prominence)が
用語 で あ
高 くな い事 物 を探 す とき に 、人 は ま ず そ れ よ りも際
立 ち が 高 い事 物 にア クセ ス し、そ れ を手 が か りに して 目当て の 事 物 に た ど り着 くこ とが で き る。
参 照 点 とは 、 こ の よ うな 人 間 の 基本 的 な認 知 能 力 にお け る 「
際 立 ちの 高 い 手 が か り」 を指 して
言 う。Langackerは 、直接 見つ け に くい 北極 星 は 、まず 際 立 ち が 高 く見 つ けや す い 北 斗 七 星 を 見
つ け、 そ れ を手 が か りに北 極 星 に た ど り着 く こ とがで き る とい う例 を示 して い る。 この 手 が か
りが 「参 照 点 」、 目 当て の事 物 が 「ター ゲ ッ ト」、参 照 点 に よっ て ア クセ スす る こ とが で き る概
念 的 領 域 が 「ドミニオ ン(支 配領 域)」 と呼 ばれ る。
①:タ
ー ゲ ッ ト
⑧:参
照点
◎:Conceptualizer(概
D:ド
ミ ニ オ ン(支
→:心
念 主 体)
配 領 域)
的接触
この 能 力 の 言語 面 へ の 適 用 例 と してLangackerは 所 有 構 文 を挙 げ て い る。thecat'sfieasとい う句
で は タ ー ゲ ッ トの しらみ に た ど り着 くた めに そ の居 場 所 で あ る猫 が 参 照 点 とな っ て い る。 また
vanHoek(1997)は
生 成 文法 で は束 縛 原 理 に よ り説 明 され る代名 詞 の 照応 関係 を 参 照点 構 造 に
よ って 説 明 して い る。 この よ うに 参 照点 能 力 は 多 くの 言 語 使用 面 に現 れ る重 要 な認 知 能 力 で あ
る。 本 論 文 の 目的 は こ の参 照 点 能 力 を用 いて 、数 量詞 が 複 数含 まれ 多 義 性 が 生 じる文 の解 釈 の
メ カニ ズ ム を 説 明す る も ので あ る。2章 お よび3章
で、 ス コー プ の ヒエ ラル キー に基 づ い て 多
義 性 の 判 定 方 法 を 論 じたKunoandTakami(2002)の
エ キス パ ー・ト ・シ ステ ム を参 考 に際 立 ち と
は何 か 、 さ らに どの よ うに して参 照 点 が決 定 され るか を検 討 し、 この検 討 結 果 に基 づ き4章 で
参 照 点構 造 に よ る数 量 詞 の多 義 性 解 釈 の メ カニ ズ ム を提 案 す る。 またvanHoek(1995,1997,
2007)は 代 名詞 の照 応 関係 を参 照 点 構 造 に よ り説 明 して い る が 、 この 場 合 の 参 照 点 とな るた め
の 条 件 は数 量 詞 の 多 義性 の場 合 と比 べ 異 な る点 が あ る。 この 違 い を5章 で比 較 検 討 して そ の理
由 を 明 らか にす る。
一166一
参照点構造 による数量詞 の多義 性の説明
2.際
立 ち とは何 か
、 際 立 ち とス コー プの 関 係
あ る 数 量 詞 が 他 の 数 量 詞 よ り際 立 ち が 高 い と は 具 体 的 に どの よ うな 状 態 を 指 し、 ま た ス コ ー
プ と どの よ うに 関 わ る の で あ ろ うか 。 こ の 点 に 関 して はKunoandTakami(2002)の
数量詞 のス
コー プ に 関 す る 主 張 が 示 唆 に 富 ん で い る の で 、 ま ず これ を 検 討 した い 。KunoandTakarni(2002)
は 数 量 詞 の ス コ ー プ の 解 釈 は 統 語 、 特 異 性 、 意 味 、 談 話 ・語 用 論 的 な 種 々 な 要 素 の 相 互 作 用 で
決 定 され る と主 張 して い る 。 中 で も 次 の9つ
の フ ァ ク ター が最 重 要 だ と して い る。
(a)subjectQ>objectQ>obliqueQ,Q=Quantifiert主
語 の 数 量 詞 は 目的 語 の 数 量 詞 よ り も広
い ス コ ー プ を と る 。 目的 語 の 数 量 詞 は 斜 格 の 数 量 詞 よ り も広 い ス コ ー プ を と る 。
(b)LefthandQ>RighthandQ:左
側 の数 量詞 は右 側 の 数 量詞 よ りも広 い ス コー プ を とる。
(c)HumanQ>NonhumanQ:人
間 を 表 す 数 量 詞 は 非 人 間 を 表 す 数 量 詞 よ り も広 い ス コ ー プ を
とる。
(d)speakerlHearerQ>Third-PersonQ:話
者 ・聴 者 を 表 す 数 量 詞 は 第 三 者 を 表 す 数 量 詞 よ り も広
い ス コー プ を とる。
(e)MoreD(iscourse)-1inkedQ>LessD-linkedQ:話
題 に 関 係 して い る数 量 詞 は 話 題 と 関 係 が 少
な い も の を指 す 数 量 詞 よ り広 い ス コ ー プ を と る 。
(bMoreActiveParticipantQ>LessActiveParticipantQ:活
動 的 な 対 象 を表 す 数 量 詞 は 活 動 的 で
な い 対 象 を 表 す 数 量 詞 よ り も広 い ス コ ー プ を と る 。
N.B.こ
の 原 則 は 主 語 以 外 の 名 詞 に 適 用 され る。
(9)MoreSpecificQ>LessSpecificQ:特
定 な対 象 を表 す 数 量詞 は不 特 定 な対 象 を表 す 数 量 詞 よ
り も 広 い ス コ ー プ を と る。
(h)Each>OtherQumtifiedExpressions:Eachは
他 の 数 量詞 よ りも広 い ス コー プ を と る。
Each>some(+Nsg)1someone(sg)1Numera1>every>all>most>many>severa1>some
(+Np1)1someone(pl)>afew
(i)TopicalizedQ>NontopicalizedQ:統
語 的 に トピ ッ ク化 し た 数 量 詞 は 統 語 的 に ト ピ ッ ク 化 し
て い な い数 量詞 よ りも必 ず 広 い ス コー プ を取 る。
KunoandTakami(2002)の9原
理 に 基 づ くス コ ー プ のQuantifierhiera1℃hyは
個 々 の 事 例 の積 み 上
げ か ら 経 験 的 に 導 き 出 され た も の で あ る。(Kuno1991)
例 え ば 、LefthandQ>RighthandQで
あれ ば 次 の よ うにな る。
(2)a.IintroducedeveryonetosomeguestS.
b.Iintroducedsomegueststoeveryone.
2つ の 文 と も 多 義 性 が あ る が(2a)で
はevery>someの
し た)の
人 か の お 目 当 て の 客 が い て 、 そ の 客 に み ん な を 紹 介 し た)
方 がsome>everyの
解 釈(何
よ り強 い 。一 方(2b)はsome>everyの
らLefthandQの
方 がRighthandQよ
解 釈(皆
解 釈 の ほ う がevery>someの
をそ れ ぞ れ 、何 人 か の 客 に紹 介
解 釈 よ り強 い 。 こ の こ と か
り広 い ス コ ー プ を 取 る とい う結 論 が 得 ら れ る 。 同 じ よ う に
し て 他 の フ ァ ク タ ー の ス コ ー プ の 優 劣 も 決 定 さ れ る。 こ こ で 注 目す べ き は 、 各 フ ァ ク タ ー に お
け る ス コー プ の ヒエ ラ ル キ ー は 次 に 示 す よ う に 際 立 ち 度 の ヒエ ラ ル キ ー とみ な す こ とが で き る
一167一
中栄
欽一
こ とで あ る。
(a)subjectQ>objectQ>ObliqueQに
つ い て はLangacker(1991:323)の
主 張 す る 文 法 関係 にお
け る 際 立 ち 度 の 差 に 他 な ら な い 。 す な わ ち 、 文 法 関 係 の 中 で 最 も 際 立 ち が 高 い 参 与 者(ト
ェ ク タ ー)は
主 語 で あ り、 次 に 際 立 ち が 高 い 参 与 者(ラ
ン ドマ ー ク)が
ラジ
目的 語 で あ る。 目的 語
と斜 格 の 間 に も 同 様 の トラ ジ ェ ク タ ー と ラ ン ドマ ー ク の 関 係 が 成 り立 ち 、 目 的 語 の 方 が 斜 格 よ
り も 際 立 ち が 高 い 。(b)か
ら(g)に
(b)LefthandQ>RighthandQに
っ い て も い ず れ も 際 立 ち 度 の 差 と捉 え る こ とが で き る 。2
つ い て:他
に 差 が な け れ ば 、文 中 で 先 に 現 れ る も の の 方 が 後 か ら
現 れ る も の よ り 、 一 般 的 に 際 立 ち が 高 い と 言 え る だ ろ う。
(c)HumanQ>No曲u㎜Qな
らび に(d)Speaker/HearerQ>Third-PersonQに
うなempathyhierarchy(共
感 度 階 層 一 自分 か ら 見 て 共 感 を 持 つ 対 象 の 順 番)に
ついては次の よ
基 づ い て い る。
Speaker>hearer>human>anima1>physicalobject>abstractentity(Langacker1991:307)
共 感 度 が 高 い と言 う こ と は 際 立 ち 度 が 高 い と い うこ とに 他 な ら な い 。
(e)MoreD(iscourse)-linkedQ>LessD・
ParticipantQ、
・linkedQ、(f)MoreActiveParticipantQ>LessActive
お よ び(9)MorespecificQ>LessspecificQに
つ い て も明 らか に際 立 ち度 の 差 で
あ る。
(h)Each>OtherQuantifiedExpressionsに
き く 、詳 し く は3章
つ い て は"each"の
持 つ 語彙 の特 殊 性 に負 うと こ ろが 大
の(C)eachの
特 殊 性 で 述 べ る が 、これ も 際 立 ち の 差 と捉 え る こ と が で き る 。
(i)TopicalizedQ>NontopicalizedQは
トピ ッ ク と な っ た 数 量 詞 は 他 方 の 数 量 詞 よ り当 然 際 立 ち が
高 い 。 し か も 反 転 解 釈 を 許 さ な い 絶 対 的 な 強 さ と 言 え る 。 以 上 の よ うに 、9つ
の フ ァ ク ター に
お け る ス コ ー プ の ヒエ ラ ル キ ー は 、 数 量 詞 の 際 立 ち の 差 を 示 す 具 体 例 と 見 な す こ と が で き る 。
した が っ て こ の デ ー タ は 際 立 ち の 差 と は 何 か を 具 体 的 に 示 す と と も に 、 際 立 ち が 高 い 数 量 詞 は
低 い 数 量 詞 よ り広 い ス コ ー プ を 取 る こ と を 示 し て い る。 ま た こ の デ ー タ は 、 参 照 点 構 造 に お い
て は 際 立 ち が 高 い 方 の 数 量 詞 が 参 照 点 とな る こ とか ら 、 参 照 点 とな る 数 量 詞 が 他 方 よ り広 い ス
コ ー プ を 取 る こ と を 示 唆 して い る。
3.数
量 詞 の 多 義性 一KunoandTakami(2002)の
主張
次 に複 数 の 数 量 詞 が含 まれ る文 にお いて 、相 手 よ り広 い作 用 域 を とる数 量 詞 が どの よ うに 決
定 され るの だ ろ うか。KunoandTakami(2002)はQuantifierScopeExpertSystem(QSES)と
呼ぶ計
算 式 に も とづ き、以 下 の よ うな 多義 性 の判 定 を行 う。9フ ァ ク ター の 各項 目は それ ぞれonevote
を持 っ て い る。 主 語 や 目的語 な ど に現れ る数 量詞 が(a)か
ら(i)ま で の項 目に い くつ 該 当す る
か を調 べ て獲 得 票 数 を集 計 す る。 総 獲 得票 が 多 い数 量詞 の 方 が相 手 よ り広 い ス コー プ を得 る。
2ト ラ ジェ クター
、ラ ン ドマ ー クはLangackerの 用語 で ある。あ る認知 され た領 域 内 の構 造 は、そ の 際 立ち の違
い に よって 、背 景的 要 棄 と して機能 す るべ 一 ス と、 焦点化 され 際 立 ちの大 きい プ ロ フ ァイ ル と呼 ばれ る部分 と
に分 かれ る。 トラジ ェ クター はプ ロフ ァイ ル され た 事物 の うち、最 も際立 ちが 高 い部 分 を指 し、 ラン ドマー ク
は その 次 に際 立 ちが 高い 部分 を指 す。
一168一
参照 点構 造に よる数量詞の多義性 の説 明
票 差 が 少 な け れ ば 、 ど ち ら の 数 量 詞 で も広 い ス コ ー プ を と る こ とが 可 能 な の で 多 義 性 が 生 じ る
と判 定 す る 。 逆 に 票 差 が 大 き け れ ば 、 獲 得 票 が 少 な い 数 量 詞 は 広 い ス コ ー プ を と る こ と が で き
ず 、 多 義 性 は 生 じな い 。 これ を 具 体 例 で 示 す 。
(3)EverystUdentadmiressomeprofessor.[ambiguousl(KunoandTakami2002Chapter2(68b))
Everystudent:3votes(Baseline,subjectQ,LefthandQ)
someprofessor2votes(Baseline,some(+Nsg)>very)
CompositeExpert:AmbigUous(every-wide:some-wide=3:2)
(4)EachstUdentadmiressomeprofessor.[unambiguous](KunoandTakami2002(68a))
Eachstudent:4votes(Baseline,SubjectQ,LefthandQ,Each>some(+Nsg))
someprofessor.1vote(Baseline)
CompOsiteExpert:Unambiguous(each>some)
こ の 結 果(3)は
得 票 数 が 接 近 し て い る の で 、 ど ち ら の 数 量 詞 も 相 手 よ り広 い ス コ ー プ を と れ る 。
こ の た め 多 義 性 が 生 じ る。 ま た(4)で
は そ の 差 が 大 き い た めeachstudentが
る 解 釈 しか 存 在 しな い と の 結 論 が 得 られ る 。KunoandTakami(2002)の
量 詞 の ス コ ー プ の ヒ エ ラ ル キb・
…一
に 注 目 し て 、 こ れ をQSESに
化 し て 判 定 す る 点 に 特 徴 が あ る。 た だ し例 外 と し て 次 の2点
TopicaliZedQは
他 のQSES項
目 に 対 しvETOを
広 い ス コー プ を と
多義 性 の判 別 方法 は数
も とつ く 得 票(得
点)に
よ り計数
を 挙 げ て い る 。例 外1:QSES(i)の
持 っ て い る。 す な わ ち トピ ック とな っ た数 量詞
は 他 の 項 目 に 打 ち 勝 ち 、 必 ず 広 い 作 用 域 を 持 っ 。 例 外2:得
られ た 解 釈 が プ ラ ク テ ィ カ ル に 見
て あ り得 な い も の で あ れ ば そ の 解 釈 は 消 え る 。
(5)AnoakgrewffOmeveryacorn.(KunoandTakami2002(82))
こ の 例 文 はQsEsの
得 票 数 に よ れ ば 、anoakが4votes(Baseline,S呵
に 対 しeveryacornは1vote(Baseline)で
は あ る がan>eveIyの
㏄tQ,LefthandQ,an>every)
解 釈 は な い 。全 て の ど ん ぐ り が 一
本 の 樫 の 木 に 育 つ こ と は 現 実 問 題 と して あ り得 な い か ら で あ る 。 こ の よ う に あ る 解 釈 が 生 ま れ
て も 、 そ れ が 現 実 社 会 に あ り え な い 話 で あ れ ば 、 そ の 解 釈 は 生 じな い と い う こ と に な る 。Kuno
andTakami(2002)は
「ど ち ら の 数 量 詞 が 広 い ス コ ー プ を と る か 」(本 論 文 の テ ー マ に 即 し て 言 え
ば 、 「ど ち ら の 数 量 詞 が 参 照 点 と な る か 」)と い う点 に つ い て 、 こ の よ うに9フ
ァク ター の得 票
数 を 単 純 に 合 計 し た エ キ ス パ ー ト ・シ ス テ ム を 使 用 して い る が 、 こ の 主 張 に は 疑 問 が あ る 。 最
大 の 問 題 点 は 、QSESは
す べ て の 項 目に一 票 を与 えて い る が各 項 目は影 響 力 が違 う とい う点 で
あ る 。 次 に こ の 項 目 間 の 影 響 力 の 差 に っ い て 検 討 した い 。
(A)Subjectの
特 殊 性(subjectは
単 な る 一 票 で は な い)
Subjectは 多 く の 場 合 、 話 者 ・聴 者 の 意 識 の 中 心 で あ り、1日情 報 で あ る 。 す な わ ち 始 め か ら トピ
ッ ク と し て の 地 位 を も っ て い て 際 立 ち が 高 い 。QSESで
ン トと 重 な る こ と が 多 い 。
(i)Subjectは
通 常 同 時 にLefthandQで
(il)SubjectはHumanQで
(漁)HumanQはMoreActiveQで
ある
あ る こ とが 多 い
ある
一169一
見 て も、 次 の よ う にSubjectは
他のポイ
中栄
欽一
(IV)HumanQはSpeakerHearerと
な る こ とが あ る
多 義 性 が あ る 文 で は 、 解 釈 の 強 さ は 同 等 で は な い 。 例 え ば(1)の
解 釈 がeveryone>someoneよ
例 で はsomeone>everyoneの
り強 い が 、 こ の よ う な 際 立 ち の 優 劣 はQSESの
決 め られ な い の で あ ろ う か 。 こ の 点 に 関 し てKunoandTakami(2002)の
計 算 を しな けれ ば
計 算 は 興 味深 いデ ー タ
を 示 して い る 。 そ れ は ほ と ん ど の 例 文 で 、 得 票 数 の 計 算 を す る と 主 語 と な る 数 量 詞 が 目的 語 と
な る 数 量 詞 と 比 べ て 同 等 か 、 よ り広 い 作 用 域 を と っ て い る 事 実 で あ る 。 点 差 は 様 々 で あ る が 、
ど ち ら の 数 量 詞 の 方 が 際 立 ち が 高 い か と 言 う点 だ け に 的 を しぼ る と ほ ぼ 一 貫 し た 結 果 が 得 られ
る 。3ま
た 得 票 数 の 差 が 大 き くunarnbiguousと
判 定 し て い る 例 文 で も 、す べ て 主 語 の 数 量 詞 が
広 い ス コ ー プ を 取 っ て い る 。 以 上 の 事 実 は トラ ジ ェ ク タ ー で あ る 主 語 が ラ ン ドマ ー ク で あ る 目
的 語 よ り際 立 ち 高 い と い う こ と を 裏 付 け て い る 。 した が っ てQSESは
、 際 立 ち度 に優 劣 が あ る
こ と を 示 す デ ー タ で あ る と 同 時 に 、 主 語 の 数 量 詞 は 目的 語 の 数 量 詞 よ り基 本 的 に 際 立 ち が 高 い
と い う事 実 を 裏 付 け る デ ー タ で も あ る 。 主 語 や 目 的 語 自体 の 際 立 ち の 差(QSES(a)SubjectQ>
ObjectQ)の
ほ か に 、 際 立 ち に 差 を つ け る 数 多 く の 要 素 を 拾 い 上 げ 、 そ れ を 得 票 数 で 集 計 して
比 較 し て も、 最 終 的 に はLangackerの
言 う トラ ジ ェ ク タ ー と ラ ン ドマ ー ク の 際 立 ち の 差 や よ く
知 られ たgrummaticalrelationshierarchyで
1997他)に
あ るS呵ect>DirectObject>Oblique(Keenan&Comrie
一 致 す る と い う事 実 は 大 変 興 味 深 い 。
(B)QSEsの(e)MoreDlinkedQの
特 殊 性(単
な る1票
で は な い)
あ る コ ン テ キ ス トを 想 定 し、 そ の 中 の 談 話 を 受 け て 発 話 され た と 考 え る と 得 票 差 どお り の 結 論
に は な ら な い ケ ー ス が あ る。
(6)ManyofuSlyouhatesomeprofessors.(KunoandTakami2002(65b))
Unambiguous(many>some)
QSESの
判定をみ ると
Manyofus!you:6votes(Baseline,subjectQ,LefthandQ,speakerlhearerQ,MoreD。linkedQ,
Many>some(十Np1))
someprofessors:1vote(Baseline)
CompOsiteExpert:Unambiguous(㎜y>some)
と な り、some>㎜yの
鰍
が な い と して い る 。 しか し コ ン テ キ ス トを 世 間 一 般 の 話 と し て で
は な く 、自分 た ち の 学 校 の 中 と 狭 い 範 囲 に 限 定 して 、話 題 に して い た 評 判 の 悪 いsomeprofessors
に 注 目 し た と仮 定 す る と(上 の 判 定 表 のMoreD-1inkedQがsomeprofessorsの
票 差 は 縮 小 す る が 、 ま だ5対2で
くは あ る(特
3例
定 の)教
あ る)、someprofessorsが
サ イ ドに 移 動 し得
広 い ス コー プ を 持 つ
「我 々 生 徒 の 多
授 達 を 嫌 っ て い る 」 と い う解 釈 も十 分 成 り立 つ 。 筆 者 の2名
外 は主語 が 無生 物 で際 立 ちが 低 く
、 目 的 語 にeachが
使 わ れ て い る(a)の
のインフォ
よ う な ケ ー ス と(b)の
よ うな ト
ピ ック化 であ る。
(a)Whatisworryingeachofyou?(KunoandTakami2002(63e)[ambiguous】what-Wide:each・wide=3:5)
Φ)ManyofthesebookS,allofushavereadwithgreatenthusiasm.【unarnbiguous】
al1)(b)に
はal且>manyの
解 釈が な い。
一170一
働o㎝d飴
㎞i2002㈹
㎜y>
参照点構造 による数量 詞の多義性の説明
一 マ ン トに 聞 い た と こ ろ2名
と も こ の 文 は 多 義 性 が あ る と の 回 答 が あ っ た(ど
ち らの解 釈 が強
い か と い う点 で は 意 見 が 分 か れ た)。 こ の よ うに コ ン テ キ ス トを 与 え て み る と 、 必 ず し もKuno
andTakami(2002)の
主 張 す る 点 数 表 どお り に は な ら な い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 例 を あ げ る 。
(7)WhodidJohnintroducetoeveryone?(KunoandTakami2002(64g))
who:3votes(Baseline,ObjectQ,LefthandQ)
cveryone:1vote(Baseline)
CompositeExpert:Unambiguous(who>everyone)
こ の 計 算 か ら 、(7)はunambiguousと
結 論 付 け て い る。 特 段 の コ ン テ キ ス トが な い 場 合 は こ の
主 張 を 受 け 入 れ られ る が 、(7)も
な)人
コ ン テ キ ス トが あ れ ば 、 例 え ばJo㎞
が 世 話 好 き な(仲
人好き
で 、何 人 も交 際 相 手 を若 い 人 達 に 紹 介 してい る とす る と、 当然 それ ぞれ の 人 に別 の人 を
紹 介 す る だ ろ う か ら 、 「ジ ョ ン は そ れ ぞ れ 皆 に 誰 を 紹 介 し ま した か?」
こ の 点 に つ い て の イ ン フ ォ ー マ ン トの 解 答 は 、1名
トが あ れ ばeveryone>whoも
はJo㎞
と 言 う解 釈 も 得 られ る 。
がmatchmakerの
あ り う る と の 回 答 で 、1名 はeve!yone>whoの
い(miXedjudgmentbetWeenunacceptableandfUllyacceptable)、
よ うな コ ン テ キ ス
解 釈 は判 断 しづ ら
つ ま りこの 解 釈 が ま っ た く生 じな
い とい う こ と で は な い と の 回 答 で あ っ た 。 こ の よ うに コ ン テ キ ス トが 前 提 と な っ て い る 場 合 に
はQSESの
(C)eachの
得 票 に大 き な差 が あ って も単純 にそ の 結 論 どお りに は な らな い と言 え る。
特 殊 性(eachは
単 な る1票
(8)Whoisbullyingeachdog?(著
で は な い)
者 の 作 例)
こ の 例 文 に お け る 作 用 域 をQSESに
よ り計 算 す る と
who:4votes(Baseline,subjectQ,LefthandQ,HumanQ)
eachdog=2votes(Base1㎞e,each)
CompositeExpert:Ambiguous(who-wide:each-wide=4:2)
と な りwhoを
参 照 点 と す る解 釈 の 方 が2倍
ト2名 の 判 断 で は 、1名 はeach>whoの
arebullyingthem.Whoarethey?と
数 が 少 な く て もeachの
解 釈 す な わ ちForeachdog,therearedifferentpersonswho
の 解 釈 の 方 が 強 い と の 回 答 で あ っ た 。 こ れ はeachdogの
持 つ 「
個 々 、順 次 性 」が 強 く影 響 し て 単 な る1票
ら で は な か ろ うか 。eachが
ー ム が で き あが る
も 強 い と い う判 定 に な る が 、著 者 の イ ン フ ォ ー マ ン
得票
以 上 の 働 き を して い る か
使 わ れ る こ とに よ り、それ ぞ れ の 犬 につ い て 尋 ね て い る とい うフ レ
。その結果
「そ れ ぞ れ の 犬 に つ い て 、 誰 が い じ め て い る の か 」 と い う解 釈 が
生 じ る た め と考 え ら れ る 。 以 上 の よ うに 、 数 量 詞 問 の 際 立 ち の 差 を 決 定 す る 要 因 は 、Kunoand
Takami(2002)が
主 張 す る よ う にQsEsの9フ
ァ ク タ ー の 単 純 集 計 で は な い と言 え る 。主 語 の 数
量 詞 は 圧 倒 的 に 際 立 ち が 高 く 、 常 に 参 照 点 と な り う る が 、 目 的 語 の 数 量 詞 で もMoreDlinkedQ
やeachが
使 わ れ る と、 しば しばSubjectQよ
り広 い 作 用 域 を 取 れ る 事 例 を 見 た 。 次 章 で は こ の
問 題 点 に 基 づ き 代 案 を 提 案 す る。
4.参
照 点構 造 に よ る説 明
1章 で 参 照 点 能 力 と して 説 明 した よ うに、人 間 は際 立 ちが あ ま り高 くな い 事 物(タ ー ゲ ッ ト)
一171一
中栄
欽一
に 直接 ア クセ ス す る こ とが 困難 な 場 合に 、 まず 際 立 ちが 高 い事 物(参 照 点)に ア クセ ス し、 そ
れ を手 が か りに して 目当 て の ア クセ ス しに くい 事物 にた ど り着 く とい う認 知 能 力 を持 って い る。
例 え ば 、 この 能 力 が 言語 面 で機 能 して い る例 と して次 の よ うな トピ ック構 文 を あ げ る こ とが で
き る。Thesebooks,wehavereadwithgreatenthusiasm.こ
の 文 で は トピ ック で あ るthesebOokSが
参 照 点 とな り、 話題 は これ らの本 に関 す る もの で あ る こ と を示 し、 文 の命 題(タ ー ゲ ッ ト)は
そ の知 識 領 域 の 中 で 解釈 され る。 この よ うに参 照 点 を手 が か りにす る こ とに よ り命 題 が 適 切 に
解 釈 され る。 この 認 知 能 力 は数 量詞 の 多義 性 の 解 釈 に応 用 す る こ とが で き る。 数 量 詞 が 複 数 含
まれ て い て多 義 性 が 生 じる 文 を解 釈 す る際 に、 際 立 ち が最 も高 い 数 量詞 を 参 照 点 に選 び 、そ の
ドミニ オ ン(参 照 点 に 関 す る知識 領 域)の 範 囲 の 中 で 文 の命 題 を解釈 す る こ とに よ り適 切 な解
釈 が 得 られ る。 次 の 文 を例 に この 関係 を見 てみ よ う。
(9)Fourboysdatedthreegirlsinaweek.(KunoandTakami2002(80))
まず 主 語 の 数 量詞fourbOysが
参 照 点 とな る ケー ス(表 面解 釈)を 検 討 す る。主 語 は トラジ ェ ク
ター と して節 の 中 で最 も際 立 ちが 高 い文 法 関係 参 与 者 で あ る た め(KunoandTakami2002で
QSES(a)Sutj㏄tQ>ObjectQ)、
は
他 に特 別 な要 因 が ない 限 りデ フ ォル トで 参 照 点 とな る。主 語fbur
boysが 参 照 点 と して機 能 す る と、 これ を手 が か りと して ア クセ ス可 能 な ドミニ オ ン(主 語four
boysに 関 す る知 識領 域)が 想 定 され 、そ の 領域 内で 節 の命 題(タ ー ゲ ッ ト)が 解 釈 され る。 節
の命 題 が 参 照 点fourboysの
ドミニ オ ンの 中 で解 釈 され る とい うこ とは 、 話 題 はfourboysに
す る こ とを意 味 し、後 続 の動 詞 句datedthreegirlSinaweekは
話 題 のfburboysの
関
属 性 を述 べ て い
る と捉 え られ る。 す な わ ちfourboysは 節 中 の トピ ッ ク(clause・internaltopic)として機 能 す る。
4こ の 心 的接 触 の流 れ に よ りthreegirlsはfourboyの
ドミニ オ ン の 中 に入 るた め、fourboysが
threegirlsよ り広 い ス コー プ を持 つ 表 面 解釈 が得 られ る。す な わ ちそ の プ ロセ ス は 、主 語(ト ラ
ジ ェ ク タ ー)→
高 い 際 立 ち→
参 照 点→
広 い 作用 域 とな る。 この とき 参 照 点fourboysは
specificな(限 定 され た)人 物 と して解 釈 を受 け る。 なぜ な ら、参 照 点 は ター ゲ ッ トに ア クセ ス
す る 「手 が か り」 と して機 能 して い るか らで あ る。 「手 が か り」に な り うる もの は際 立 ちが 高 く
か つ 限 定 され た 事物 で あ る。 不 定 の 事 物 で は 「
手 が か り」に な りえ な い。conceptuali2er(概 念 主
体)が あ る 事物 を参 照 点 と して意 識 す る こ とは、 そ の事 物 をspecificな(限 定 され た)事 物 と
捉 え る こ とが で き るか らで あ る。 す なわ ちfourboysは
「(話題 に して い た)そ の4人 の少 年 」、
あ るい は 「こ こに4人 の少 年 が い る。そ の 少年 達 は …
」とこれ か ら話 題 に 取 り上 げ るspecific
な(限 定 され た)4人
の 少 年 と解釈 され る(以 下 「
限 定 解 釈 」 とい う)。 この よ うに 参 照 点 とな
る数 量 詞 は 必 ず 限 定解 釈 を受 け る。一 方 、thieegirlSは限 定 化 され ず 、このgirlSは 単 に 少 女 とい
うタイ プ と して捉 え られ る。 す な わ ち少 女 が3人 で あれ ば 誰 で も よい と解 釈 され る(以 下 「
不
定解 釈 」 とい う)。threegirlsにつ い て も限 定解 釈 す る こ とが で き る が 、 そ の揚 合 は多 義 性 が 生
4vanHoekは
次 の よ う に述 べ て い る
。Rcferencepointsare,intuitivelyspeaking,localtopics-elementswhichthe
conceptualizer(theSpeakeroraddressee)usestocontextUaliZeotherelements...._ReferencepOintSareeleinentswhichase
prominentwiaiinthediscourseandsoservetosetupthecontextSWithinwhichtheconceptUalizermakescontactwithother
entities.(vanH㏄k1995:313)
一172一
参照点構造 に よる数量詞の多義性 の説明
じな い 。 こ の 結 果four>threeの
different)girlsinaweekが
解 釈Therewerefourboyseachofwhomdatedthree(pOssibly
得 られ る 。
そ れ で は ど の よ う な 場 合 に 目的 語 の 数itgathreegirlsが
(反 転 解 釈)の
主 語fourbOysよ
り広 い 作 用 域 を取 る
だ ろ う か 。 文 法 関 係 ヒエ ラ ル キ ー か ら 見 れ ば 目 的 語 は ラ ン ドマ ー ク で あ り トラ
ジ ェ ク タ ー で あ る 主 語 よ り際 立 ち が 低 い 。 し た が っ て 主 語 は 通 常 は デ フ ォ ル トで 参 照 点 と な る
こ と が で き る 。 そ れ に も か か わ らず 目的 語 の 際 立 ち が 主 語 に 勝 り 、 際 立 ち の 逆 転 が 起 き る 理 由
は 何 か 。 そ の 最 大 の 要 因 は コ ン テ キ ス トの 存 在 で あ る 。 例 え ば 、 目的 語threegirlsが
い た3人
の 少 女 で あ り 、そ の 少 女 達 に 焦 点 が 当 た っ て い る と 目 的 語threegirlsの
fourboysよ
り高 く な っ てthreegirlsが
-1inkedQ>LessD-1inkedQ)。
際 立 ちが 主 語 の
参 照 点 と して 機 能 す る(KunoandTakamiQSES(e)MoreD
ま たthreegirlsに
関 し て こ の よ うな コ ン テ キ ス トが 与 え ら れ て い な
い 場 合 で も 、threegirlsを 誰 で も よ い 不 定 の3人
の で は な く 、 「こ こ に あ る3人
話 題 に して
の 少 女(単
にtype--specificな
存 在)と
の少 女 が いて 、 そ の少 女 を問 題 に す る と …
threegirlsに 注 目 し、 そ の 立 場 に 立 つ 状 況 を 想 定 す る と 、threegirlsに
解釈す る
」 とい うよ うに
焦 点 が 当 た り際 立 ち が 向
上 す る 。これ は 共 感 度 階 層(自 分 か ら 見 て 共 感 を 持 つ 対 象 の 順 番)に お い てthreegirlsをfourboys
よ り身 近 な 存 在 と捉 え る こ と か ら生 じ る 際 立 ち の 逆 転 で あ る(KunoandTakamiのQSESの
ク ター には 直撒
Third-PersonQは
ファ
当 す る も の が な い カs、(c)HumanQ>No曲u㎜Q、(d)Speaker/HearerQ>
共 感 度 階 層 の 一 例 で あ る)。 ま た3章
で 述 べ た よ う に 目的 語 にeachが
る と し ば しば 主 語 の 際 立 ち を 上 回 る。Langacker(1991:132)は
使 用 され
主 語 の数 量詞 は最 も際 立 ち が 高
い が 、 そ れ 以 外 に 際 立 ち が 主 語 を 上 回 る例 と し て"heaVystress"や"newinfbrmation"を
い る 。 目的 語 の 際 立 ち を 主 語 よ り高 め る こ れ らの 要 因 を ま と め て
と に す る 。 こ の よ う に 、threegirlsが
girlsの ド ミ ニ オ ン(知
識 領 域)の
中 で 解 釈 され る 。 節 の 命 題 が 参 照 点threegirlsの
関 す る も の で あ る こ と を 意 味 す る。す な
そ の ド ミニ オ ン に 入 れ る た め 、thieegirls
り広 い ス コ ー プ を 持 つ 反 転 解 釈 が 得 られ る 。 こ の と きthreegirlsは
い た る 「手 が か り 」 で あ る か ら 限 定 解 釈 を 受 け 、fourboysは
少 年 と 言 う タ イ プ と し て 捉 え られ る 。 少 年 が4人
不 定 解 釈 さ れ る(こ
参照点
→
広 い 作 用 域 と な る。 こ の 結 果 、throe>fourの
eachofwhomfour(pOssiblydifferent)boysdatedinaw㏄kが
girls>fourboysを
タ ー ゲ ッ トに
のboysは
で あ れ ば 誰 で も よ い 。 な おfourbOyも
釈 さ れ る と 多 義 性 は 生 じ な い)。 す な わ ち そ の プ ロセ ス は 、 目 的 語(コ
際 立 ち→
ドミニ オ ン の
節 の 中 の トピ ッ ク と し て 機 能 しAsforthreegirls,fourboysdatedtheminaweek
と解 釈 され る 。 参 照 点 で あ るthreegirlsはfourboysを
がfourbOysよ
「コ ン テ キ ス ト等 」 と呼 ぶ こ
参 照 点 に な る と タ ー ゲ ッ トで あ る節 の 命 題 は 参 照 点three
中 で 解 釈 され る と い う こ と は 、話 題 は こ のthreegirlsに
わ ちthreegirlsは
あげて
単に
限定解
ン テ キ ス ト等)→
高い
解 釈Therewerethreegirls
得 られ る 。 な お 初 め は 反 転 解 釈three
思 い つ か な か っ た 人 で も 、 そ の 後 しば しば こ の よ うに 目 的 語 が 広 い 解 釈 を と
る 例 に 接 す れ ば 、コ ン テ キ ス トが 与 え られ て い な く て も反 転 解 釈 の 選 択 は 容 易 に な る で あ ろ う。
これ は 一 種 の慣 用化 と言 え る。
数 量 詞 のSpecificity(限
定 性)の
判 定 手 段 に 関 し て は 、Haspelmath,Martin(1997)が
る よ う に い く つ か の テ ス トが あ る 。 例 え ば(1)specificNPの
一173一
みdiscoursereferentが
述べてい
得 られ る
中栄
欽一
(anaphoricpronounで
受 け る こ と が で き る)。(2)specificNPの
言 い 換 え が 可 能 で あ る 。(3)specificNPは
みexistentialsentence(存
在 文)に
話 者 に よ りそ の 存 在 が 前 提 され て い な け れ ば な ら な い
等 で あ る。 上 記 例 文 の 表 面 解 釈 に お い て は 、 い ず れ も こ れ ら の テ ス トを ク リ ア ー し て い る 。(1)
に 関 して はFourboysdatedthreegirlsinaweek.Theyareourhighschoolfootballteamplayers.と
名 詞theyで
受 け る こ とが で き る 。(2)に
girlsinaweek.と
つ い て はTherewerefourboyseachofwhomdatedthree
存 在 文 に 言 い 換 え 可 能 。(3)に
人 の 少 年 」、 あ る い は 「こ こ に4人
話 者 がspecificな
代
つ い て も 、fourboysが
の 少 年 が い る。 そ の 少 年 達 は …
、 「
話 題 に し て い た そ の4
」 と限 定 解 釈 で き る の は
少 年 の 存 在 を 前 提 に して い る か ら で あ る。 他 に 有 力 な 判 定 手 段 と して は
Fauconnier(1985,1987)に
よ る メ ン タ ル ・ス ペ ー ス理 論 が あ る。 こ の 理 論 に よ る と 、言 語 は 現 実
世 界 を 直 接 表 現 す る 手 段 で は な く、 認 知 レベ ル に メ ン タ ル ・コ ン ス トラ ク シ ョ ン を 作 り出 す 指
令 で あ る と す る。 例 え ばthreegirlsのspecificityに
関 して 言 え ば 、quantifierで あ るfourbOySが
ス ペ ー ス ビ ル ダ ー と して メ ン タ ル ス ペ ー スquantifierspaceQを
quantifiersPaceQに
設 定 す る 。threegirlsが
設 定 さ れ る と 、non-specific(fourboys>threegirls)の
threegirlsがoriginspace(話
者 の 現 実 ス ペ ー ス)Rに
この
解 釈 が 得 られ る 。 ま た
設 定 され る とSpecific(threegitls>fourbOys)
の 解 釈 が 得 られ る。従 来 、意 味 や 論 理 の レベ ル に お け る 構 造 的 曖 昧 性 と 分 析 され て き た も の が 、
メ ン タ ル ・ス ペ ー ス 理 論 で は 当 該 数 量 詞 が ど ち ら の ス ペ ー ス(RかQ)に
設 定 され る か とい う
配 置 の 問 題 と して 捉 え る 点 が 特 徴 で あ る。 以 上 の よ う に 数 量 詞 のspecificityの
判 定手 段 につ い
て は 各 種 の 主 張 が あ り、 そ れ ぞ れ に 特 徴 が あ る 。 本 論 文 の 目的 は こ れ ら の 比 較 ・分 析 で は な い
の で 、 これ 以 上 立 ち 入 ら な い が 、 これ ら の 判 定 手 段 に く らべ 参 照 点 構 造 に 基 づ く分 析 は 、 参 照
点 に な る 事 物 は タ ー ゲ ッ トに 至 る 手 が か りで あ り、 手 が か り と な り え る も の はsp㏄i5cで
れ ば な ら な い と い う こ と か ら 、 参 照 点 と な る数 量 詞 はspecificで
な け
あ る と の 結 論 を ス ト レー トに
得 る こ と が で き る 。 そ の 意 味 で 数 あ るspecificity判 定 方 法 の 中 で 最 も簡 明 で あ る と言 え よ う。
例 文(1)Someoneloveseveryone.に
お い て も プ ロ セ ス は 同 様 で あ る。 主 語 は トラ ジ ェ ク タ ー と
して 節 の 中 で 最 も 際 立 ち が 高 い 文 法 関係 参 与 者 で あ る た め 、 他 に 特 別 な 要 因 が な い 限 り
someoneは
デ フ ォ ル トで 参 照 点 と な る 。 こ の 表 面 解 釈 に お い てsomeoneは
物 」、 あ る い は 「こ こ に あ る 人 物 が い る 。 そ の 人 に つ い て 語 る と …
て 捉 え ら れ る 。someoneがspecificで
あ る こ と はsomeoneの
と え ばSomθoneinmyclassloveseveryoneinyourclassと
話題 に した
「そ の 人
」 と 限 定 され た 人 物 と し
名 前 ま で 特 定 で き な くて もよ い。た
い う例 で 言 え ば 、 話 者 が こ のsomeone
が 誰 で あ る か 知 ら な く て も 、 さ ま ざ ま な 状 況 証 拠 か ら 誰 か が い る と考 え れ ばspecificで
あ る。
これ は 上 で 述 べ たspecificityの テ ス トか ら も証 明 で き る 。 こ の 発 話 に 続 い てSosomeoneinmy
classloveseveryoneinyourclass,butwedon't㎞owwhoitis.と
someoneをanaphoricpronoun`it'で
NPの
みdiscoursereferentが
き る 。 一 方 、everyoneは
要 求 す るeveryoneの
someoneが
続 け る こ と が で き る。 す な わ ち 、
受 け る こ と が で き 、上 で 述 べ たsp㏄i行cityの テ ス ト(1)sp㏄i5c
得 られ る(anaphoricpronounで
受 け る こ とが で き る)を
限 定 化 さ れ ず 、 不 定 解 釈 され る。everyoneの
ク リア ー で
不 定 解 釈 とは 分 散解 釈 を
語 彙 特 性 か ら、個 々 の構成 員 が 不 定解 釈 され る こ と を意 味 す る。 す な わ ち
愛 す る 対 象 人 物 は 限 定 され ず 、 単 にeveryoneの
一174一
構成 員 で さ え あれ ば誰 で も よい。 こ
参照 点構造 に よる数量詞の多義性 の説明
の 結 果someone>everyoneの
解 釈Thereissomeonewholoveseveryoneが
次 に 目的 語 の 数 量 詞everyoneが
広 い 作 用 域 を と る ケ ー ス(反
得 られ る 。
転 解 釈)を
取 り上 げ る 。 文 法 関
係 ヒエ ラ ル キ ー か ら 見 れ ば 目 的 語 は ラ ン ドマ ー ク で あ り トラ ジ ェ ク タ ー で あ る 主 語 よ り際 立 ち
が 低 い が 、次 の よ うな コ ン テ キ ス トが あ る と 目 的 語evelyoneの
く な り、evαyoneが
際 立 ち が 主 語 のsomeoneよ
り高
参 照 点 と して 機 能 す る。た と え ば 事 前 に 以 下 の よ う な 会 話 が あ っ た とす る 。
A: Nobodycaresaboutme.1'mcomplete且yalone."
B: You'rewrong.Someoneislookingoutforyou.Youjustdon'trealizeit.There'snotasingleperson
whomnobodyloves、"
(こ の 会 話 の 後 に)
B:``Someoneloveseveryone."
こ の よ うな コ ン テ キ ス トが あ る と 、愛 され る 側 で あ るeveryoneの
立 場 に 立 っ状 況 を 想 定 す る こ
と が で き る 。す な わ ち 共 感 度 階 層 に お い てeveryoneをsomeoneよ
り身 近 な 存 在 と捉 え る こ と か
ら 生 じ る 際 立 ち の 逆 転 が 起 き る 。 そ の 結 果eveIyoneに
焦 点 が 当 た り 、everyoneの
際立 ちが
someoneよ
り 高 く な っ て 参 照 点 と な る 。 こ の と きeveryoneは
限 定 解 釈 を受 け る。 す な わ ち
everyoneの
各 構 成 員 は 構 成 員 で あ れ ば 誰 で も よい と一 律 に 扱 われ る の で は な く、 構 成 員 を
個 々 ・順 次 的 に 取 り上 げ て 、 そ れ ぞ れ の 立 場 か ら相 手someoneと
aさ ん の 場 合 に はXさ
も 誰 か が)と
んが …
、bに
い う よ うにeveryoneの
す な わ ちeveryoneはspecificな
く て も 、everyoneの
つ い て はYさ
の 関 係 を捉 え る こ とに な る。
んが …
、cの
分に
個 々 の構 成 員 ご とに 文 の命 題 を捉 え る構 図 が で き あが る。
存 在 と捉 え ら れ る。 ま た こ の よ うな コ ン テ キ ス トが 与 え ら れ な
構 成 員 を 不 定 な 人 物(構
成 員 で さ え あ れ ば 誰 で も 同 じ)と 見 る の で は な く 、
個 々 の メ ン バ ー の 独 自 性 が 問 題 に な っ て い る と 考 え 、everyoneの
う状 況 を 想 定 す る と 共 感 度 階 層 に お い てeve!yoneがsomeoneよ
ち が 高 く な る 。 事 実eve1yone>someoneの
個 々 の 構 成 員 の 立 場 に 寄 り添
り上 位 と な り、everyoneの
thereissomeonewholoveshim!her.)が
際立
解 釈 は 、 本 文 に 挙 げ た よ うな コ ン テ キ ス トが 事 前 に
与 え られ て い な く て も 可 能 な 人 が 多 い 。5そ の 結 果 、everyone>someoneの
eve1yoneの
場 合 は …(自
得 られ る 。 こ の と きsomeoneは
構 成 員 の 一 人 ひ と りに つ い て の
解 釈(Foreveryone,
限 定 され た 人 物 で は な く
単 な る相 手 で あ る 「
不 定 の 誰 か 」に す ぎ な い 。
5上 記 の英 文 に相 当す る 日本 文 「
誰か が 誰 もを愛 してい る」 の解釈 につ いて は
、「
誰か」〉 「
誰 も」 の解 釈 しか
得 られ ない とす る人 が 多 い。 しか しこの発 話 も次 の よ うなコ ンテ キス トが あれ ば 、 「
誰 も」 〉 「
誰 か 」 の解 釈 が
可能 と筆 者 は考 え る。
A:「
み ん な俺 の こ となん か ど うで もい いの だ。 俺 は この世 で一番 孤 独 だ」
B:「
そ ん な こ とは な い。 誰 かが 君 を心配 してい る のに気 付 か ない だけ なの だ。 誰 か らも愛 され て い ない 人 間
な んて この 世 には い ない よ。j
このよ うに 目的 語 「
誰 も」 の立場 に立つ 状 況が想 定 され た あ とに、 「
誰 かが 誰 も を愛 して い る」 とBが 続 け る と
「
誰 も」 〉 「
誰 か」 の解 釈 が可能 とな る人 も多 いの で はな いだ ろ うか。 コンテ キ ス トが ない と、 「
誰 も」 〉 「
誰
か」 の解 釈 が で きな い人 が 日本 語 話者 に 多い ことは 興味 深 いテ ーマ で あ る。 お そ ら く 日本語 には 「
か きまぜJ
が あ り、 「
誰 も」 〉 「
誰 か 」の 意味 で は 「
誰 もを誰 かが愛 して いる」 とい う言い 回 しを使 うこ とが慣 用 化 して い
る こ とな どが 関係 してい る と思 われ る。
一175一
中栄
欽一
someoneが
た また ま同 一 人(=限
定 され た 人 物)を 指 す 場 合 は 、表 面 解 釈 と同 じ結 果 とな り多
義 性 が 生 じな い。
数 量詞 の 多義 性 は こ の限 定 、 不 定 の転 換 か ら捉 え る こ とが で き る。 例 文(9)Fourboysdated
threegirlsinaweekに
お い て こ の 関係 を図 示す る と次 の よ うに な る。
図2に お いてfourboys>threeghlsの
解 釈 は(1)、threegirls>fourboysは(4)で
不 定 の組 み 合 わ せ に は 理 論 上他 に(2)、(3)が
あ る。 限 定 、
存 在 す る が 、(2)に お い て は 、fourbOysな らび に
threeghlsが 共 に限 定 化 され て お り多義 性 は 生 じない 。(3)は"不
定 な4人 の 少 年 が 不 定 な3人
の少 女 を愛 して い る"と い うこ とに な り、 メ ッセ ー ジ と して意 味 をな さな い。 ま た この 関係 は
主語 と 目的 語 が 数 量 詞 の 組 み 合 わせ で はな く、一 方 が 定名 詞 で初 めか ら限 定 され て い る場合 も
同様 に説 明 で き る。 た と えば 次 の よ うな文 章 は多 義 性 が 生 じない 。
(10)Jolmloveseverygirl.
この場 合Jo㎞
が 参 照 点 と な りeve1yが
不 定 とな る表 面解 釈 「Jo㎞ は どの少 女 も愛 して い る 」
(上図 の(1))と
、eve1yが 参 照 点 とな り限定 化 され る(構 成 員 ご とに 相 手 を見 る)反 転 解 釈
(上図 の(2))が
得 られ る が、 反 転 解釈 の場 合 、 それ ぞ れ の相 手 はす べ て 特 定 のJo㎞
とい う
こ とに な るた め 、そ の 解 釈 は 表 面 解釈 と変 わ らな い。 した が っ て こ の文 は一 つ の 解 釈 しか 得 ら
れ ず 、多義 性 が 生 じな い こ とに な る(everygh1が
参 照 点 とな る反 転 解 釈 が 存 在 しな い とい うこ
とでは な い。 反 転 解 釈 は存 在 す るが 、結 果 的 に表 面解 釈 と同一 とな る と言 う意 味 で あ る)。
数 量 詞 と述語 の間 の 作 用 域 の 多 義性 に 関 して も、参 照 点構 造 に よっ て 説 明 す る こ とが で き る。
た とえば 次 の例 文 は多 義 性 が あ る。
(11)舳 」
㎞e舳
㎜
㈹mstoBmtohavewonagoldmeda1.ffox2000:46)
例 え ば コ ンテ キ ス ト等 が あ ってBmが
っ て い る場 合 、 あ る い はBmの
Americanrunnerは
あ る特 定 のAmericanrunnerを
応 援 して い る こ とが分 か
喜 ぶ 様 子 を 見 て そ の こ とが 想 像 で き る 場 合 な ど で は 、an
際 立 ち が 高 い た め参 照 点 とな って そ の ドミニ オ ン(anAmericanrunnerに
関
す る知 識 領 域 一Bi11が 応 援 してい る人 物 で あ る こ と)の 中 で節 の 命題(タ ー ゲ ッ ト)が 解 釈 さ
れ る。 節 の命題 施
のanAmericanrunnerに
㎞ 醐
一
の ドミニオ ンの 中で 解 釈 され る とい うこ と は、 命 題 は こ
関 す る も ので あ る こ とを意 味 し(す な わ ちanArnericanrunnerは
一176一
節 の中
参照 点構造 に よる数量詞の多義性 の説明
の トピ ッ ク と 理 解 され)、 そ の 結 果BillhassomeAmericanrunnerinmind,itseemstoBillthatthat
particularArnericanrunnerwonagoldmedal,(Bmに
は 応 援 して い るArnericanrunner(限
て 、そ の 選 手 が 金 メ ダ ル を 取 っ た よ う に 思 わ れ た)と
>seems)。
定)が
い う解 釈 が 得 ら れ る(anAmericanrunner
一 方 、Bil1が 特 に 心 に 描 く選 手 が い な い 場 合 で 、 周 りの 米 国 人 が 喜 ぶ 様 子 を 見 てBi11
が 米 国 選 手 の 誰 か が 金 メ ダ ル を 取 っ た と察 した よ うな 場 合 に は 、anAmericannunnerは
高 く な い た め 参 照 点 に は な らず に(す
っ た よ うに 思 わ れ た)と
際立ちが
な わ ち トピ ッ ク に は な らず)、ItseemstoBillthatsome
Americanrunnerorotherwonagoldmedal.(Billに
も う1例
い
は 誰 かAmericanrunner(不
定)が
金 メダルを取
い う解 釈 が 得 られ る(s㏄ms>anAmericamrunner)。
挙 げ る。
(12)Jo㎞wa鳴tomaπyaJapanesegir1.
コ ン テ キ ス ト等 が あ っ て 、Johnが
い る 場 合 は 、aJapanesegirlは
性 はJohnが
特 定 の 日本 人 女 性 と 結 婚 し た い と 望 ん で い る こ と が 分 か っ て
際 立 ち が 高 い た め 参 照 点 とな っ て そ の ド ミニ オ ン(そ
結 婚 し た い と 望 ん で い る 女 性 で あ る こ と)の 中 で 節 の 命 題(タ
れ る 。 節 の 命 題 がaJapanesegirlの
Japanesegirlに
ー ゲ ッ ト)が 解 釈 さ
ド ミニ オ ン の 中 で 解 釈 さ れ る と い う こ と は 、 話 題 は こ のa
関 す る も の で あ る こ と を 意 味 し(aJapanesegirlが
て)、 「Jo㎞ に は 意 中 の 日本 人 の 女 性(限
と い う解 釈 と な る(aJapanesegirl>want)。
定)が
節 の 中 の トピ ッ ク と解 釈 され
い て 、 彼 は そ の 人 と 結 婚 した い と 望 ん で い る 」
これ に 対 しJo㎞
が 単 に 日本 人 女 性 と結 婚 した い と
望 ん で い る だ け で 特 定 の 人 物 が い な い 場 合 は 、aJapanesegir1は
は な らず(し
の 日本 人 女
際 立 ち が 高 くな い た め 参 照 点 と
た が っ て トピ ッ ク に は な らず)、 「Jo㎞ は 誰 か 日本 人 の 女 性(不
と望 ん で い る 」 と い う解 釈 が 得 ら れ る(want>aJapanesegirl)。
定)と
結 婚 した い
な お 当 然 の こ とな が ら次 の 例 文
に は 多義 性 が生 じな い。
(13)JohnwantStomarryacertainJapanesegirl.
こ の 文 に お い て はacertainJapanesegirlが
wantし
初 め か ら 限 定 化 され て お り、acertainJapanesegirl>
か 存 在 しな い 。 した が っ て 多 義 性 が 生 じ な い 。
ま た 、Antecedent-containedDeletionに
つ い て はQRを
用 い て 次 の よ うな 説 明 が さ れ て い る
が 参 照 点 構 造 に よ っ て 説 明 す る こ とが で き る。
(14)JohnkissedeveryonethatSallydid【vpe].(Hornstein,Norbert1994)
に お い て 、emptyVPに
コ ピv・
一
一
で き るVPはkissedeveryonethatSallydid[vpe】
で あ るが 、 これ
を 単 純 に コ ピー し て 挿 入 す る とkissedeveryonethatSallydid[kissedeveryonethatSallydid【vpe]1
と な り 、 い わ ゆ るregressproblem(遡
did[vPe]にQRが
及 問 題)を
生 じて し ま う。 これ に 対 しeveryonethatSally
適 用 され た と 考 え る とLFでTPに
did[vpe]】]】i[n・Jo㎞kissedti]】
付 加 さ れ て 、 【TP【everyone[that【sally
と い う構 造 が で き る。 こ のemμyVPにkissedkを
入 す る と 、[rv【everyone[that[Sa1lydid【vpkissedti]】 】]i[TpJohnkissedq]]と
コ ピ ー して 挿
な り 、regressproblemが
解 消 され る 。 こ の 問 題 は 参 照 点 構 造 を 使 っ て も説 明 す る こ と が で き る。Jo㎞kissedeveryonethat
Sallydid[vpe]に
と 、everyoneの
お い て は 、 主 語 で あ るJo㎞
の 際 立 ち が 高 く 参 照 点 と な る 解 釈(表
際 立 ち が 勝 っ て 参 照 点 と な る 解 釈(反
一177一
転 解 釈)が
面 解 釈)
生 じ る 。everyonethatSallydid
中栄
Iwe】
欽一
が 参 照 点 と な る と 、 節 の 命 題(タ
ー ゲ ッ ト)は
こ の 参 照 点 の ド ミニ オ ン の 中 で 解 釈 され
る。 こ の 心 的 ア ク セ ス に よ り 、 参 照 点everyonethatSallydid【vpe]は
topic)と 捉 え られ 、主 語 を 含 む 残 余 の フ レー ズJo㎞kissedは
トピ ッ ク の 属 性 を 表 わ す 部 分 と解
釈 され る 。す な わ ち 命 題 がasforeveryonethatSallydid[vee】
に 分 か れ る 。 こ の 場 合 、 削 除 さ れ た 動 詞did【vpe]は
ー されdid[
vpkissed]と
とJo㎞kissedhim!herの
属 性 部 分 のJohnkissedか
な る 。 そ の 結 果regressproblemを
釈 の 場 合 、 トピ ッ ク 部 分 はJo㎞
トピ ッ ク(clause。intemal
(15)はeveryone>Jo㎞
で あ り 、属 性 部 分 はkissedeveryonethatSallydid[vpe】
】 と な る の でregressproblemが
の 解 釈 は 図2の(2)と
な る の で 、 ス コ ー プ の 面 か ら はeveryone>Jo㎞
everyone>someoneの
thatSallydidが
Sallydidlvpe]が
regTessproblemが
コ ピ
とな る。
が コ ヒ。
一 されdid[vpkissed
生 じ解 釈 不 能 と な る。 し た が っ て 例 文
の 解 釈 しか 得 られ な い が 、こ の 反 転 解 釈 の 存 在 に よ り遡 及 問 題 が 解 消 さ
れ る 。eveIyone>Jo㎞
か し こ の 文 のJo㎞
らkissedが
回 避 す る こ とが で き る。 一 方表 面 解
こ の 概 念 分 離 で はdid[we]はkissedeveryonethatSallydid[vpe】
everyonethatSaltydid【vpe】
二 つ の概 念
同 様 に 、Jo㎞>everyoneの
解 釈 と結 果 的 に 同 一 と
の 解 釈 しか 得 ら れ な い こ と は 分 か り に く い 。 し
を 数 量 詞 に 置 き 換 え たSomeonekissedeveIyonethatSallydid.に
解 釈 しか 得 ら れ な い の で(unambiguous)、
おいては
ス コ ー プ の 解 釈 か ら もeveryone
参 照 点 と な っ て い る こ とが 分 か る 。反 転 解 釈 しか 得 られ な い 理 由 はeveryonethat
参 照 点 に な れ ばregressproblemを
回 避 で き る が 、someoneが
参照点になる と
生 じて し ま い 解 釈 不 能 に な る か ら と考 え れ ば 説 明 が で き る 。
以 上 述 べ て き た こ とは次 の よ うに ま とめ るこ とが で き る。 文 中 に複 数 の 数 量詞 が あ る場 合 、
際 立 ち が 高 い 方 の 数 量 詞 が 参 照 点 と な る 。 主 語 の 数 量 詞 は トラ ジ ェ ク タ ー と し て 最 も 際 立 ち が
高 い た め デ フ ォ ル トで 参 照 点 と な る こ とが で き 表 面 解 釈 が 得 られ る 。 しか し 目 的 語 の 数 量 詞 が
コ ン テ キ ス ト等 の 存 在 に よ っ て 主 語 の 数 量 詞 よ り際 立 が 高 く な る と
、 目的 語 の 数 量 詞 が参 照 点
と な り反 転 解 釈 が 得 られ る。 目 的 語 の 数 量 詞 の 際 立 ち を 高 め る 要 因 の 最 大 の も の は コ ン テ キ ス
トの 存 在 で あ る が 、 そ の 他 に も 共 感 度 階 層 な ど各 種 存 在 す る 。 参 照 点 と な る 数 量 詞 は 節 の 中 の
トピ ッ ク(clause-internaltopic)と
して 機 能 す る。 ま た こ の 数 量 詞 は 必 ず 限 定 解 釈 を 受 け る 。 な
ぜ な ら 、参 照 点 は タ ー ゲ ッ トに い た る 「
手 が か り」 だ か ら で あ る 。 「手 が か り」 に な り う る も の
は 際 立 ち が 高 く か つ 限 定 され た 事 物 で あ る 。複 数 の 数 量 詞 が 存 在 す る 文 で 多 義 性 が 生 じ る の は 、
こ の よ うに ど ち ら の 数 量 詞 で も参 照 点 に な る 可 能 性 が あ る か ら と 考 え られ る 。 た だ し、 常 に ど
ち ら の 数 量 詞 で も 参 照 点 に な れ る わ け で は な い 。 多 義 性 が 生 じな い ケ ー ス が あ る こ と を6章
で
論 じる。
5.参
照 点 の 決 ま り方:代 名 詞 の照 応 関 係 との 違 い
これ ま で 、参 照 点 の 決 定 は文 法 関 係 ヒエ ラル キー にお い て優 位 に あ る こ とが 第 一 の 要 因 で あ
るが 、 文法 関 係 が 劣位 の数 量 詞 の コ ンテ キ ス ト等 に よ る際 立 ち の 向上 が第 二 の 要 因 で あ っ て 、
この第 二 の要 因 の 存 在 が数 量詞 の多 義性 に 関係 してい る こ とを 見 て き た。 しか し、vanHoekの
参 照点 構 造 に よ る代 名 詞 の照 応 関係 の 説 明 を見 る と、参 照 点 の決 定 の され 方 に 数 量 詞 の場 合 と
違 い がみ られ る。次 にそ の 理 由 に つ いて 考 え てみ た い。vanHoekは
一178一
代 名 詞 の 照 応 関係 にお け る
参照点構 造に よる数最詞 の多義性 の説明
参 照 点 の 決 定 の され 方 に っ い て 、 参 照 点 は 基 本 的 にcomplementchain(補
定 され る と 主 張 し て い る 。complementcha㎞
語 も 含 む)の
部 連 鎖)に
と は 文 中 の 動 詞 の 補 部(項
よ って 決
を 指 す 。 した が っ て 主
間 の 際 立 ち の 差 を い う。 主 語 は 一 番 際 立 ち が 高 い の で 、 他 の 補 部 に 対 して 参 照 点
と な る 。直 接 目 的 語 は 二 番 目 に 際 立 ち が 高 い の で 、主 語 を 除 く他 の 補 部 に 対 して 参 照 点 と な る。
す な わ ち 、 文 法 関 係 の ヒエ ラ ル キ ー(Subject>DirectObject>Oblique(Keenan&Comrie1977))
に 従 う。 ま た 、 補 部 は プ ロ フ ァ イ ル され て い る の で 参 照 点 に な れ る が 、 修 飾 句 の 中 の 要 素 は プ
ロフ ァ イル され な い の で 、 基 本 的 に 参 照 点 に な る こ とが で き な い。 こ の 主 張 に よれ ば 文 法 関係
で 劣 位 に あ る 要 素 は 参 照 点 に な る こ と が で き な い 。 しか し 、 数 量 詞 の 多 義 性 の 場 合 は 文 法 関 係
で 劣 位 に あ る 数 量 詞 で も コ ン テ キ ス ト等 が あ れ ば 参 照 点 に な る こ と を 見 て き た 。 代 名 詞 の 照 応
関 係 で は 文 法 関 係 で 劣 位 に あ る 数 量 詞 は な ぜ 参 照 点 に な れ な い の だ ろ うか 。 い くっ か の 例 文 を
べ 一 ス に 、 数 量 詞 の 多 義 性 と 代 名 詞 の 照 応 関 係 に お け る 参 照 点 の 決 定 の 仕 方 の 違 い を 分 析 し検
討 す る。 まず 主 語 と修 飾 句 に 数 量 詞 が使 われ てい る例 文 を検 討 す る。
(15)SomeonevotedagainstJuntaineverycity.(著
こ の 文 で はevery>someoneの
解釈
者 の 作 例)
「
す べ て の都 市 で 誰 か が 軍事 政 権 に反 対 投 票 を した」 が 得
られ る 。 こ れ は 修 飾 句 の 中 のeveryが
コ ン テ キ ス ト等 の 存 在 に よ り 、 主 語someoneを
て 参 照 点 と な っ て い る こ と を 示 し て い る 。vanH㏄kの
際 立 ち が 高 い の は 主 語 、 目的 語 、obliqueな
差 し置 い
主 張 に よれ ば 、 通 常 プ ロ フ ァ イ ル され 、
どの 項 で 、 こ の 中 か ら 参 照 点 が 選 ば れ る が 、 こ の 文
例 は さ ら に 際 立 ち が 低 い 修 飾 句 の 中 の 要 素 も参 照 点 に な れ る こ と を 示 して い る 。一 方 、vanHoek
(1995(9a),(20b),(20c))は
次 の 例 文 を 挙 げ 、修 飾 語 や 修飾 句 内の 要 素 は 参 照 点 には な れ ない と主
張 し て い る 。(下 線 は 同 一 指 示 を 示 す)
(16)a零Ltlikes」2g1h!n,smother.
b塗1LtholdSwildpartiesin』g[h!g'sapartrnent.
c*Inよ ⊇h旦'sapartment,Sh!gholdswildparties.
例 文(16a)が
非 文 と な る 理 由 をvanHoekは
参 照 点 とな り 目 的 語Jo㎞'smotherを
次 の よ う に 説 明 し て い る 。主 語 は 際 立 ち が 高 い の で
そ の ド ミニ オ ン に 入 れ る 。 主 語 に 代 名 詞 が 使 わ れ て い る の
で 、 会 話 当 事 者 間 で は 誰 を 指 し て い る か が 分 か る に もか か わ ら ず 、 そ の 代 名 詞 の ド ミニ オ ン の
中 に あ る 同 一 指 示 の 対 象 にlowaccessibilitymarlcerで
あ るJo㎞
とい うフル ネ ー ム が 使 われ て い
る 。 こ の た め 奇 異 な 感 じを 与 え て 非 文 と な る 。 例 文(16b)、(16c)で
で あ るinJohn'sapartmentは
はprocess・internalmOdifier
主 語 の ド ミニ オ ン の 中 で 解 釈 さ れ る。6主
文 の 主語 に 代名 詞 が使
わ れ て い て 対 話 者 に は 誰 を 指 し て い る か 明 白 で あ る に も か か わ ら ず 、 そ の 代 名 詞 の ド ミニ オ ン
に 入 っ て い る 同 一 指 示 の 対 象 にlowaccessibilitymarkerで
6
vanHoekに
よ れ ばprocess-imernalmodifierと
あ るJohnと
い う フ ル ネ ー・
ム が 使 われ
は プ ロセ ス 概 念 の 中 の 一 部 を 表 す が 、 補 部 の よ うに 概 念 の 中 の
プ ロ フ ァ イ ル され た 部 分 で は な く 、 道 具 、 着 点 、 起 点 な ど を 表 す 修 飾 句 、 空 間 ・時 間 の 状 況 を 表 わ す 修 飾 句 、
動 作 主 の 心 理 状 態 を衷 す 修 飾 句 な ど と し て い る 。 こ のprocess・internalmOdifierの
「お よ そVP・mOdifierに
相 当す る 」 と指 摘 して い る。
一179一
概 念 に つ い てTakami(1999)は
中栄
欽一
て い る 。 こ の た め 奇 異 な 感 じ を 与 え て 非 文 と な る。 ま たvanHoek(2007)で
appearinthedominionofacorreSpondingreferencepOint(代
名 詞 は 参 照 点 とな っ て い る 先行 詞 の ド
ミニ オ ン の 中 に 入 っ て い な け れ ば な ら な い)と
と な る 理 由 は 代 名 詞heが
名 詞Jo㎞
はApronounmust
述 べ て い る 。 した が っ て 上 記 例 文(16)が
非文
の ド ミニ オ ン に 入 っ て い な い た め と い う こ と に な る 。つ ま
り修 飾 句 の 中 の 要 素 は 参 照 点 に な れ な い と の 主 張 で あ る 。 修 飾 句 の 中 の 要 素 が 参 照 点 に な れ る
か 否 か につ い て 、 この よ うに数 量 詞 の ス コー プ と代名 詞 の 照 応 関係 で は 異 な る よ うに 見 え る。
こ の 理 由 は 何 で あ ろ うか 。 代 名 詞 の 照 応 関 係 の 例 文(17)と
き 換 え た 例 文(18)の
、 そ の 名 詞 、 代 名 詞 を数 量詞 に 置
比 較 に よ り検 討 し て み た い 。
(17)*旦 皇heldwildpartiesin,EStlm'sapartment.
(18)Someoneheldwildpartiesineveryone'sapartment.[ambiguous]
(17)が
非 文 と な る 理 由 は 上 記 のvanHoekの
説 明 の 通 り で あ る 。 つ ま りprocess-internalmodifier
の 中 の 要 素 は 参 照 点 に な れ な い と の 主 張 で あ る 。 しか し(18)の
文 例 はeveryone>someone「
ど
の 人 の ア パ ー トで も 誰 か が ワ イ ル ド ・パ ー テ ィ ー を 開 い た 」 の 解 釈 が 得 ら れ 、 コ ン テ キ ス ト等
に よ っ てeveryoneが
ambiguousで
参 照 点 に な る こ と を 示 して い る(筆
者 の イ ン フ ォ ー マ ン トは2名
あ る と 指 摘 し て い る 。 た だ しsomeone>everyone、everyone>someoneの
とも
うち どち
らの 解 釈 が 強 い か と い う点 に つ い て は 意 見 が 分 か れ た)。な ぜ 数 量 詞 の 多 義 性 の 例 で は 修 飾 句 の
中 の 要 素 が 参 照 点 に な る こ と が で き て 、 代 名 詞 の 同 一 指 示 の 例 で は な れ な い の だ ろ うか 。 こ の
数 量 詞 の 多 義 性 と代 名 詞 の 同 一 指 示 の 違 い は 次 の よ うに 考 え られ る 。 第 一 点 は 参 照 点 と な る た
め の 条 件 の違 い で あ る。 参 照 点 構 造 にお い て は 際 立 ちの 高 い 要 素 が参 照 点 とな る。 代 名 詞 の 照
応 関 係 の 場 合 も 同 様 で あ る が 、 さ ら に も う一 つ 条 件 が あ る。 名 詞 と そ の 代 わ り と して 使 わ れ る
代 名 詞 の 間 に は 参 照 点 構 造 に お い て 一 方 的 な ア ク セ ス の 順 番 が 存 在 す る 。Jo㎞
物 で あ る 場 合 、Jo㎞
ク セ ス はJo㎞
の 代 わ り にheと
→heの
ゲ ッ トで あ るheに
とheが
同一 人
い うの で あ っ て 、 そ の 逆 で は な い か ら参 照 点 構 造 で も ア
方 向 で あ る こ と が 必 要 で あ る。 す な わ ち 、Jo㎞
到 達 す る の で あ る 。 名 詞Jo㎞
を手 が か り と して ター
の 方 が 参 照 点 と な り、 代 名 詞heを
そ の ドミ
ニ オ ン に 入 れ る と い う一 方 向 性 が 要 求 され る 。vanH㏄k(2007)がApronounmustappearintle
dominionofacorreSpondingreferencepoint.と
主 張 して い る の は こ の 理 由 に よ る 。 そ の た め に は 、
名 詞 の 際 立 ち が 代 名 詞 よ り強 く な け れ ば な らな い 。 こ の 条 件 は 代 名 詞 の 特 性 か ら生 じ る 制 約 と
言 え る。 一 方 、 数 量 詞 の 多義 性 にお い て は 、 ど ち らの数 量 詞 で も際 立 ち が 高 い方 が参 照 点 に な
り 、そ こ か ら 相 手 に ア ク セ ス す る こ と が で き る。例 文(18)Som60neheldwildpaniesineveryone's
apartment,に
お い て は 、 ど ち ら か が 必 ず 参 照 点 に な ら な け れ ば な らな い と い う制 約 は な い 。 し
た が っ てevelyoneが
参 照 点 と な っ て も よ く、 そ の 場 合someoneはeveryoneの
構 成 員 ご とに不
定 の 人 物 を想 定 す れ ば よ い。 第 二 点 は 際 立 ちの 高 さに 影 響 を与 え る 要 因 の 違 い で あ る。 例 文
(17)坦gheldwildpa慮iesin迦'sapa宜mentの
れ る も の の 、ア ク セ ス がheか
らJo㎞
例 で は 、 主 語 のheが
参 照 点 に な る解 釈 が 得 ら
で は 上 記 の 理 由 か ら 同 一 指 示 は 成 り立 た な い 。そ れ で は 、
Jo㎞ が 参 照 点 に な る こ とが で き る で あ ろ うか 。 も し これ が で き れ ば 名 詞 か ら 代 名 詞 へ と い う ア
ク セ ス 上 も 問 題 が な く同 一 指 示 が 可 能 とな る。例 文(18)の
一180一
数 量 詞 の 多 義 性 の ケ ー ス はeveryone
参照点構造 による数量詞 の多義性 の説明
が コ ン テ キ ス ト等 の 存 在 に よ り際 立 ち がsomeoneよ
しか し代 名 詞 の 同 一 指 示 の 場 合 はJo㎞
とheは
り高 く な っ て 参 照 点 に な る こ と が で き る 。
同 一 人 物 で あ る。同 じ人 物 を 意 味 す る 二 者 の 片
方 だ け に 作 用 す る コ ン テ キ ス ト等 は 存 在 し な い 。 二 者 が 別 の 事 物 で あ る 例 文(18)と
文(17)で
は コ ン テ キ ス ト等 に よ っ て 主 文 の 主 語 で あ るheよ
で き な い の で あ る 。 す な わ ち 、Johnの
りJo㎞
異 な り例
の 際 立 ち を 高 め る こ とが
際 立 ちが勝 る に は 、 こ の よ うな意 味上 の違 い で は な く、
文 法 関 係 ヒエ ラ ル キ ー の 優 位 性 を 得 る 以 外 に は な い 。 こ れ も 代 名 詞 の 特 性 か ら生 じ る 制 約 と言
え る 。 代 名 詞 の 照 応 関 係 に お い て 際 立 ち の 高 さ を決 定 す る 要 因 と してvanHoekはcomplement
chain(補
部 連 鎖)とlinearorder(線
形 順 序:順
序 が 先 で あ る こ と)の
ほか に次 の よ うな トピ ッ
ク 構 文 化 を あ げ て 、"topicalizinganominalmakesitareferencepointinrelationtotheentire
clause..."と
主張 して い る。
(19)*Him,John'swifecan'tstand.(vanH㏄kl997(10))ト
ピ ッ ク で あ る 代 名 詞 が 参 照 点 と な り、
そ の ド ミニ オ ン に 名 詞 が 入 っ て い る た め 非 文 。
この よ うに、 代 名 詞 の 照 応 関 係 に お い て 際 立 ち の高 さを決 定 す る要 因 は 補 部 連 鎖 、線 形 順 序 、
ト ピ ッ ク 構 文 とい ず れ も 統 語 的 要 因 で あ る こ とが 特 徴 で あ る 。KunoandTakani(2002)のQSES
の 分 類 で み て も 、 他 の 要 因(c)Human>Nonhuman,(d)Speaker/Hearer>ThirdPerson,(e)More
D-linked>LessD-linked,(OMoreActiveParticipant>LessActiveParticipang(g)MoreSpecificQ>
LessspecificQ,(h)Each>other(1!uantifiedExpressionsな
ど は 、二 者(Jo㎞
とhe)が
同一 とい う前
提 な の で す べ て 該 当 し な い 。 つ ま り二 者 が 同 一 の 事 物 を 指 す 場 合 、 際 立 ち の 高 さ に 影 響 を 与 え
られ る の は 統 語 的 要 因 で あ る こ と が 分 か る 。7さ
ら にDirectObjectとObliqueに
れ て い る ケ ー ス を 見 て み よ う。KunoandTakami(2002)の
例 文(2)を
数 量詞 が使 わ
再 度 取 り上 げ る 。
(20)a.IintroducedeveryonetosomeguestS.[ambiguous】
b.IintroducedsomeguestStoeveryone.[ambiguous]
上 記 の 文 例 で は 、 文 法 関 係 の ヒエ ラ ル キ ー(DirectObject>Oblique)に
が 参 照 点 と な る解 釈 、す な わ ち(20a)で
7し
も か か わ らず 、Oblique
は 「
私 は 皆 を 何 人 か の ゲ ス ト(限 定)に 紹 介 し た 」(some
か し代 名 詞 の 照 応 関 係 の 場 合 で も 次 の よ う に 統 語 的 要 因 以 外 の 要 因 が 際 立 ち に 影 響 を 与 え る ケ ー ス が あ
る。Takarni(1999:231)で
はbackWardanaphoraが
がprocess-internalmodifier内
(2b)の
可 能 とな る 要 因 と してcausality(因
果 関 係)を
挙 げ 、vanHoek
の 要 素 は 参 照 点 に な れ な い た め 不 適 格 と して 扱 っ て い る 下 記 例 文(1a),(2a)も(1b),
よ う に 原 因 が 明 確 で あ れ ば 適 格 に な る と指 摘 して い る 。
(1)a*§ 厘,sintolclablewhen血talksaboutlinguistics.
b.§むe'sintolerable写vhen幽9㏄sintohySterics.
(2)a.*旦 皇studiedve1yhardbefore幽gotma㎡ed.
b.」目皇trainedveryhardbeforealghnfina1IygotintotheOlympieteam.
こ の 指 摘 はprocess・internalmodifierは
主 文 主 語 の ドミ ニ オ ン に 入 る と い うvanH㏄kの
主 張 に 対 す る反 論 で あ る。
しか し 、 代 名 詞 の 照 応 関 係 の 場 合 、 片 方 だ け に コ ン テ キ ス ト等 を 作 用 させ る こ と は で き な い が 、 こ の 例 は そ れ
と 異 な り修 飾 句 の 高 い 際 立 ち が そ の 中 の 名 詞 に 反 映 し名 詞 の 際 立 ち を 高 め 、 そ の 結 果 名 詞 が 参 照 点 と な っ た と
考 え る こ とが で き る 。 し た が っ て 代 名 詞 の 照 応 関 係 に お い て 、 名 詞 の 際 立 ち に 影 響 を 与 え る 新 た な 意 味 上 の 要
因 を 提 示 し た も の で あ っ て 、 参 照 点 構 造 に よ る 代 名 詞 の 照 応 関 係 の 説 明 自体 に 対 す る 反 証 で は な い と 考 え られ
る。
一181一
中栄
欽一
>every)、(20b)で
は 「
そ れ ぞ れ 皆 に 何 人 か の ゲ ス ト(不 定)を
で あ る 。 す な わ ちDirectObjectとObliqueの
Obliqueが
可能
組 み 合 わせ で も、文 法 関係 で際 立 ちが 弱 い方 の
参 照 点 と な れ る こ と を 証 明 して い る 。 一 方 、 代 名 詞 の 照 応 関 係 で は ど うで あ ろ うか 。
(21)a」willintroduce」 迦'snewteacherto血
b.*Iwillintroduceihscnewteacherto」
(21a)はdirectobject>obliqueの
凱.(Takami1999(41))
迦.
ヒ エ ラル キ ー に よ り際 立 ち が 高 いMaIyが
と な る が 、(21b)は 同 じ理 由 で 代 名 詞herが
guestsが
紹 介 した 」(every>some)が
参 照 点 と な り適 格 文
参 照 点 とな り非 文 と な る 。これ は 、everyoneとsome
異 な る 人 物 を 指 す 数 量 詞 の 場 合 と違 い 、Maryとherは
同 一 人 物 な の でMa!yだ
けが
コ ン テ キ ス ト等 の 働 き に よ り際 立 ち が 高 く な る こ と が で き な い か ら で あ る 。 した が っ て こ の 場
合 も 、 数 量 詞 の 多 義 性 で は 文 法 関 係 が 劣 位 の 要 素 で も コ ン テ キ ス ト等 の 作 用 に よ り参 照 点 に な
る こ とが で き る が 、 代 名 詞 の 照 応 関 係 で は そ れ を 許 さ な い こ と が 見 て 取 れ る 。 目的 語 と 修 飾 句
の 中 に 数 量 詞 が 使 わ れ る 場 合 は ど うで あ ろ うか 。
(22)SallygaveSamapresentforeverybinhday.(著
者 の 作 例)
こ の 文 は 多 義 性 が あ り次 の 二 通 りの 解 釈 が で き る 。
a>eve!y「SallyはSamに
あ る き ま っ た(限
every>a「SallyはSamに
毎 年 誕 生 日に 何 か し ら(不
eveIy>aは
定)プ
レセ ン トを 毎 年 誕 生 日 に あ げ た 」
定)の
プ レ ゼ ン トを あ げ た 」
毎 年 の 誕 生 日の 個 別 性 が 強 調 さ れ る ケ ー ス で あ る 。 こ の 場 合 は 修 飾 句 の 中 のevery
が 参 照 点 に な りえ る 。 ち な み に 著 者 の イ ン フ ォ ー マ ン トは 二 人 と も 、 本 文 例 は 多 義 性 が あ り、
し か もevery>aの
(1995(25))は
解 釈 の 方 が 強 い と の 意 見 で あ っ た 。一 方 、代 名 詞 の 照 応 関 係 に 関 してvanHoek
次 の 説 明 を して い る。
(23)a.Sallygave魎ahamsterforasbinhday」
b.*Sallygave」 血ahamsterfbr§
(23a)で
はSamがhisの
参 照 点 と な っ て お り 同 一 指 示 が 可 能 で あ る が 、 目的 語 の 位 置 に 代 名 詞
が 使 わ れ て い る(23b)で
は 同 一 指 示 が 出 来 な い 。 目的 語 は 主 語 以 外 の す べ て の 補 部 に 対 し て 参
照 点 と な る(vanHoek1995:321)と
eve1yは
皇Eゴsbirthda)ら
の 理 由 か ら で あ る。 数 量 詞 の 場 合 例 文(22)で
見 る よ うに、
参 照 点 に な り うる。 こ こ で も代 名 詞 の 同一 指 示 と数 量 詞 とで は 際 立 ちに影 響 を 与 え る
要 因 の違 い が 見 て 取 れ る。 そ の理 由は 、数 量 詞 の場 合 と異 な り代名 詞 の 同一 指 示 で は名 詞 と代
名 詞 の 指 す 対 象 は 同 一 で あ る た め 、 片 方 だ け が コ ン テ キ ス ト等 の 影 響 を 受 け 際 立 ち が 高 く な る
こ と が で き な い か ら と 考 え られ る 。
6。 多義 性 が 生 じな い ケー ス
先 に 見 た よ うにKunoandTakami(2002)は
多 義性 が生 じな い ケ ー ス と して 、得 られ た解 釈 が
プ ラ クテ ィカル に見 て あ り得 な い もの で あれ ば そ の解 釈 は 消 え る と主張 して 、(5)Anoakgrew
fromeveryacorn.の
例 をあ げ て い る。 しか しこの ケー ス は双 方 の 数 量詞 とも参 照 点 とな る こ と
が で き2つ の解 釈 が 生 じるが 、 そ の うちの一 つ が プ ラ クテ ィカ ル な理 由 で消 滅 す る もの で 、最
初 か ら参 照点 に なれ な い わ け で は ない 。 これ に対 して一 方 の 数 量詞 の際 立 ちが 非 常 に 強 く、参
一182一
参照点構造 による数量 詞の多義性の説明
照 点 が最 初 か ら一 方 に 限 定 され るケ ー ス で は 当初 か ら多 義性 が 生 じな い。 そ の 一 っ は構 文 の 働
き に よ る も の で 、 例 え ばManyofthesebooks,allofushavereadwithgreatenthusiasm.の
ピ ッ ク 構 文 で は 、 ト ピ ッ ク と な っ て い るManyofthesebooksが
よ うな ト
強 調 され て 際 立 ち が 圧 倒 的 に 高
く 、こ れ を 参 照 点 に し て 文 の 命 題(タ ー ゲ ッ ト)が 解 釈 され る 。す な わ ちallofusはManyofthese
booksの
ド ミニ オ ン に 入 る 。 ま た 次 の よ う な 二 重 目的 語 構 文 も 同 じ理 由 で 多 義 牲 が 生 じ な い 。
(24)Johnassignedonestudenteveryproblem.[㎜biguous〕(KunoandTakami2002(78a))
文 法 関 係 の ヒ エ ラ ル キ ー で は 直 接 目的 語(everyproblem)〉
間 接 目 的 語(onestudent)で
あ る
が 、 二 重 目的 語 構 文 で は 間 接 目 的 語 が 直 接 目的 語 を 所 有 す る と い う 二 重 目 的 語 構 文 の 構 文 的 意
味 か ら 、recipientlbeneficiaryで
ー に勝 る
あ るonestUdentの
際 立 ち が 非 常 に 高 く 、文 法 関 係 の ヒ エ ラ ル キ
。 こ の た め 所 有 者 で あ る 間 接 目 的 語 が 参 照 点 と な る と 考 え られ る 。 こ の た め 直 接 目 的
語 で あ るeveryproblemが
参 照 点 と な る解 釈 を 許 さず 多 義 性 が 生 じ な い 。 同 様 の ケ ー ス は 代 名
詞 の 同 一 指 示 に 関 して も 存 在 す る 。vanHoek(1997(14))で
は 次 の 例 文 を 示 し、 文 法 関 係 の ヒエ
ラル キ ー に 関 わ らず 、recipientorbeneficiaryがprimarylandmarkと
し て 参 照 点 と な る と 指 摘 して
い る。
(25)a.Igave」SanlhifibOok.
b.*Igave』 血Sgm'sbook.
以 上 の よ う に 二 重 目的 語 構 文 に お い て はrecipient!beneficiaryで
あ る間 接 目的 語 の 際 立 ちが 非 常
に 高 く コ ン テ キ ス ト等 の 影 響 が 働 か ず 多 義 性 が 生 じ な い 。 二 番 目 はpointofview(観
く ケ ー ス で あ る 。vanHoekはpointofviewと
はconceptUaliZer(概
念 主 体)が
点)が
働
そ れ を 通 じて 対 象
と な る 概 念 を 解 釈 す る の で 、参 照 点 で あ る と 主 張 して 次 の 例 文(vanHoek1995(24))を
示 して い
る。
(26)a.Maπytold』 幽that1里should行ndabe賦erjob.
b.*Malytold血thatl回
皿should㎞dabe"erjob.
tellの よ うな 動 詞 の 目 的 語 は 従 属 節 の 中 の 要 素 に 対 し てcognizerあ
る い はviewerと
解 釈 され る
た め 心 的 ア ク セ ス の 流 れ は 目 的 語 か ら 従 属 節 に 向 か い 、 そ の 逆 が 存 在 し な い 。 そ の た め(26a)
で は 同 一 指 示 が 可 能 で あ る が(26b)は
viewの
非 文 と な る 。こ れ と 同 じ よ う に 数 量 詞 の 参 照 点 もpointot
働 き で 心 的 ア ク セ ス の 方 向 が 一 方 向 に 制 限 され る と多 義 性 が な く な り、同 様 の 事 実 が 指
摘 で き る。
(27)Marytoldsomeonethateveryoneshouldfmdabetterjob.
こ の 文 は 例 文(26)に
お け る 名 詞 、 代 名 詞 を 数 量 詞 に 置 き 換 え た も の だ が 、someone>everyone
の 解 釈 し か 得 られ な い 。上 記 の 理 由 で 心 的 ア ク セ ス の 流 れ がsomeoneか
らeveryoneへ
向 か う方
向 し か 存 在 し な い た め で あ る 。 数 量 詞 の 多 義 性 は ど ち ら の 数 量 詞 で も参 照 点 に な る こ と が で き
る た め 生 じ る 。 こ の 場 合 ど ち らの 参 照 点 か ら で も 相 手 の 数 量 詞 ヘ ア ク セ ス で き る こ と を 前 提 と
し て い る 。 した が っ て 上 記 の ケ ー ス の よ うに 初 め か ら 一 方 向 か ら の 心 的 ア ク セ ス し か 許 さ な い
場 合 は 当 然 の 結 果 と して 多 義 性 は 生 じな い 。
一183一
中栄
7.ま
欽一
とめ
数 量詞 が複 数 含 まれ てい る文 で は多 義 性 が生 じる。これ は生 成 文 法 で は 一般 にQRとc統
御
で 説 明 され るが 、参 照 点 構 造 に よ り説 明 す る こ とが で き る こ とを述 べ た。 ま たvanHoekは
代
名 詞 の 照応 関係 を参 照 点構 造 に よっ て説 明 して い るが 、参 照 点 とな る理 由 が 数 量 詞 の ケ ー ス と
異 な る。 しか しそ れ は 参 照 点構 造 の矛 盾 で は な く、 代名 詞 の 特 性 か ら生 じる 制約 で あ る こ とを
示 した。 参 照 点 構 造 に よ る数 量詞 の多 義 性や 代 名 詞 の照 応 関 係 の 説 明 で 問題 とな る こ とは 、 際
立 ち の 高 さに影 響 を与 え る各種 の要 因 の 整理 と分析 で あ る。 際 立 ちが 高 い 数 量詞 が 参照 点 に な
る こ とは 明 らかで あ るが 、 際 立 ち に影 響 を 与 え る要 因 は様 々で あ るか ら、 これ を い か に整 理 ・
分 析 す る か とい う点 が 重 要 で あ る。KunoandTakarni(2002)のQSESは
際 立 ち の 高 さに 与 え る
各 種 の 要 因 を数 多 く示 して お り有益 な分 析 で あ るが 、各 要 因 の 強 さを 同 等 と見 な して い る点 に
問 題 が あ る。 指 摘 した よ うに そ の強 さは 決 して 同一 で は ない 。 本 論 文 で は 際 立 ち の 高 さに影 響
を与 え る要 因 を2つ
の グル ー プ に 整理 した。1つ は文 法 関 係 の ヒエ ラル キー(Langacker1991
の トラジ ェ ク ター 、 ラ ン ドマ ー ク、vanHoek1995,1997に
Takarni2002で はQsEs(a)subjectQ>objectQ>ObliqueQ)で
お け るcomplementchain、Kunoand
あ る。 主 語 は圧 倒 的 に 際 立 ち が
高 く他 に 特別 な要 因 が ない 限 りデ フ ォル トで参 照 点 とな る。2つ
目は 文 法 関係 ヒエ ラル キー が
劣位 で あ っ て も 、際 立 ちの 逆 転 を許 す コ ンテ キ ス ト等 の存 在 で あ る。 この2つ の 要 因 に よ る際
立 ち の 高 さの交 替 、 図 地 反 転 が 多義 性 が 生 じる理 由で あ る。 生 成 文 法 に お け る 統語 構 造 に基 づ
くス コー プ の分 析 は曖 昧 性 を排 除 して明 解 で あ り、 ま た数 量 詞 の 多 義性 だ け で な く否 定 の解 釈
な ど他 の ス コー プ に 関 して も一 元 的 に説 明 で き る メ リッ トが あ る。 一 方 、 どち らの数 量詞 が ど
の よ うな 理 由 で相 手 よ り高 い位 置 に上 昇 す る のか 、 あ る い は上 昇 し易 い の か(そ の解 釈 の 方 が
強 い の か)と い っ た点 につ い て は 、統 語 的 理 由 だ けで は説 明 しきれ な い よ うに 思 われ る。 認 知
文 法 上 の ア プ ロー チ で あ る参 照 点構 造 に よる説 明 は 、 これ を際 立 ちの 差 で 説 明す る こ とが で き
る。 ま た 参 照 点 は トピ ック と して機 能 す る こ と、参 照 点 は限 定 化 され る とい う事 実 を ス トレー
トに 説 明 で き る メ リ ッ トが あ る。 複 雑 な 言語 現 象 を一つ の 理 論 に よっ て す べ て説 明す る こ とは
困 難 と考 えれ ば 、生 成 文 法 、認 知 言 語 学 の双 方 か らア プ ロー チ す る こ とは相 互補 完 の観 点 か ら
意 義 が あ る と思 われ る。
一184一
参照点構造に よる数量詞 の多義性 の説明
参照文献
Fauconnier,Gilles(1988) Quantification,roles and domains.In: UmbertoEco et al. (eds.)Meaningand
MentalRepresentation,61-80.Bloomington:IndianaUniversityPress.
Fox, Danny(2000)Economyand SemanticInterpretation.London:The MITPress.
Haspelmath,Martin(1997)IndefinitePronouns.Oxford:Clarendonpress.
Hornstein,Norbert (1994) An argumentfor minimalism:the case of antecedent-containeddeletion.
LinguisticInquiry25: 455-480.
Keenan, Edward L. and Bernard Connie (1977) Noun phrase accessibilityand universal grammar.
LinguisticInquiry8: 63-99.
Kuno,Susumu(1987)Functionalsyntax:Anaphora,discourseand empathy.Chicago:The Universityof
ChicagoPress.
Kuno,Susumu(1991)Remarkson quantifierscope.In:HeizoNakajima(ed.) CurrentEnglishlinguistics
inJapan, 261-287.Berlin:Moutonde Gruyter.
Kuno,Susumuand Takami,Ken-ichi(2002)QuantifierScope.Tokyo:KuroshioPublishers.
Langacker,Ronald (1991) Foundations of CognitiveGrammar VolumeII: DescriptiveApplication.
Stanford:StanfordUniversityPress.
Langacker,Ronald(1993)Reference-point
constructions.CognitiveLinguistics4(1): 1-38.
Langacker,Ronald(2008) CognitiveGrammar.Oxford:OxfordUniversityPress.
Takami,Ken-ichi(1999) Anaphora:CognitiveGrammarAccountvs. GenerativeGrammarAccount,
EnglishLinguistics16(1):210-236.
Van Hoek, Karen (1995) ConceptualReferencePoints:A CognitiveGrammarAccountof Pronominal
AnaphoraConstraints.Language71(2):310-340.
Van Hoek, Karen(1997) Anaphoraand ConceptualStructure.Chicagoand London:The Universityoi
ChicagoPress.
Van Hoek,Karen(2007) PronominalAnaphora.DirkGeeraertsand HubertCuyckens(eds.) The Oxfom
HandbookofCo¢nitiveLineuistics.890-915.NewYork:OxfordUniversityPress.
一185一
中栄
欽一
Account
for Quantifier
Scope
by Reference-point
Kinichi
Keywords:
Constructions
Nakae
scope, reference-point constructions, prominence, context etc.,
clause-internal topic, specific, non-specific
Abstract
A sentence containing multiple quantified expressions such as "Someone loves everyone" is ambiguous
between the someone > everyone interpretation and the everyone > someone interpretation. In the
framework of generative grammar, the phenomenon of quantifier scope is accounted for by quantifier
raising (QR) and c-command. This phenomenon can be explained by means of reference-point
constructions introduced by Langacker (1991,1993). When someone is chosen as a reference point, the
someone > everyone interpretation obtains. Conversely, when everyone is chosen, the everyone >
someone interpretation obtains. As it is by virtue of salience that an entity is chosen as a reference point,
it is necessary to clarify the characteristics of cognitive salience and how a reference point is determined.
For this purpose, Chapters 2 and 3 examine Kuno and Takami (2002) which accounts for quantifier scope
using a Quantifier Scope Expert System. In Chapter 4, I propose a reference-point construction analysis
of quantifier scope. Karen van Hoek (1995, 1997, 2007) analyzes the constraints on pronominal anaphora
in English in terms of reference-point constructions, but the conditions to be a reference point in the case
of anaphora somewhat differ from the one of quantifier scope. In Chapter 5, I attempt to explain the
reason of this.
(なか え ・きん い ち
一186一
青 山 学 院 大 学 大 学 院)
Fly UP