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The Potential Role of Oral Fluid in Antidoping

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The Potential Role of Oral Fluid in Antidoping
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The Potential Role of Oral Fluid in Antidoping Testing
Sebastien Anizan1 and Marilyn A. Huestis1,*
Author Affiliations
1
Chemistry and Drug Metabolism, Intramural Research Program, National Institute of Drug,
Abuse, NIH, Baltimore, MD.
* Address correspondence to this author at: Chemistry and Drug Metabolism, IRP, National
Institute on Drug Abuse Biomedical Research Center, 251 Bayview Blvd., Rm. 05A-721,
Baltimore, MD 21224. Fax 443-749-2823; e-mail [email protected].
Clinical Chemistry 2014;60:307-322
ドーピングテストにおける口腔液の潜在的役割
概要
背景:現在、世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency:WADA)によって
認定されている検査試料は尿と血液のみである。尿と血液を用いたドーピング検査の有用
性は既に明らかになっているが、あるクラス分類の物質や競技会時の禁止物質の監視的な
測定に関しては依然として課題が残っている。口腔液(oral fluid:OF)は、これらの課題に
対しての代替試料として解決策になり得る。OF は、性別にかかわらず、非侵襲的で容易に
採取でき、直の観察下で採取するので不純物の混入(尿検体における問題点)の防止も可
能である。OF は、労働現場、臨床中毒学、刑事裁判および薬物依存(リハビリ)プログラム
におけるモニタリングの試料としてすでに実績があり、スポーツにおけるドーピング検査
における血液や尿試料の役割を補完する可能性を持っている。
内容:本稿では、WADA で規定されて各クラス分類された物質の OF 使用に関する優位性
と限界、そしてドーピング検査の代替試料として使用するために必要とされる研究につい
て総説する。
1
要約:ドーピング検査対象物質には、常に禁止されている物質と、競技会時のみに禁止さ
れている物質がある。常に禁止されている物質について参照できる OF のデータは極めて少
ないが、競技会時での禁止物質については、競技会直近の物質の使用による代謝産物や分
析のカットオフ値に関して、データが十分に揃っている場合もある。禁止薬物の OF 中への
分泌を証明するためには更なる研究が必要であり、OF の採取方法の確立と OF 中の禁止物
質の安定性について、ドーピング検査の測定に OF を使用するために特に検証が必要とされ
ている。
アスリートは、自らの競技能力を上げるために、数世紀にも渡って薬物を使用してきた(1)。
古代ギリシアのアスリートは、競技前に自身を強化するための特別な食物を摂取し、刺激
性の水薬を飲用していたという。19 世紀には、耐久性競技の選手は、その能力を向上させ
るためにコカインやカフェインのような刺激物を摂取していた。1928 年には国際陸上競技
連盟が全ての刺激物の摂取を禁止したが、ドーピング検査が初めて可能となったのは、1966
年の国際自転車競技連合と国際サッカー連盟においてである。1998 年にツール・ド・フラ
ンス・スキャンダルがあった後に、国際オリンピック委員会(International Olympic
Committee:IOC)はドーピング規制のために、第一回スポーツにおけるドーピングに関す
る世界会議を招集して、世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency:WADA)
を組織した(2)。2003 年には WADA 規定(WADA code)が、ドーピング規制を必要とする
スポーツ競技におけるルールとして採用された(2)。この規定は4年毎に修正され、新規定
は 2015 年1月に適用される。
2004 年以降、毎年出版されている禁止物質のリストには、その物質ならびにドーピング
に関する方法が含まれている (3)。この物質は(競技中・競技外を問わずに)常に禁止、競
技会時に禁止、そして特定の競技においてのみ禁止という3つに分類されている。これら
の3つのカテゴリーにある禁止物質は、物理化学的・生物学的特性に基づいて、更に異な
るクラスに分類されている。
1994 年のリレハンメル・オリンピックにおいて、初めて血液によるドーピング検査が実
施されたが、それ以前には尿を唯一の検体として実施していた。尿は、簡易で非侵襲的に
採取でき、多項目の分析に十分な量が得られ、元のドーピング薬物の代謝物を含めると検
知ウィンドウが長いという利点を有する。一方で、希釈や不純物の混入が容易であること、
運動後の脱水により検体採取が困難な場合があること、競技会時に使用が禁止されている
物質を検出するためには、検知ウィンドウが長いことは欠点として挙げられる。競技会時
に禁止される物質(クラス S6~S9)は、例えば慢性的な大麻使用者における尿中カンナ
ビノイドのように、尿中においては長期間に渡って検出される(4)。向精神作用を有するΔ9
テトラヒドロカンナビノール(THC)は、活性のない 11-nor-9 カルボキシΔ9 テトラヒドロ
カンナビノール(THCCOOH)に代謝され、慢性的な大麻使用者では約 30 日間、尿中に排
泄される。間欠的な大麻使用者においては、15 μg/L をカットオフとした場合に、尿中で
2
は5日間程度は検出される。このことから、競技会時のみの禁止薬物の検査においては、
尿よりも検出ウィンドウの短い代替試料を使用することが望ましい。
薬物検査のための血液の採取は侵襲性を伴い、またその薬物の検出過程は多数の細胞や
蛋白成分の存在のため、尿と比べてより複雑である。現行のドーピング検査では、ヒト成
長ホルモン(hCG)のような尿中において検出不能な物質については、血液を用いて測定し
ている。アスリートの血液指標を経時的に監視する強力な武器として生体パスポート
(Athlete Biological Passport:ABP)というのがある。ABP では血液指標を繰り返し測定し
ており、これはアスリート自身による自律に用立てられ、また個体内変動を明確にし、禁
止物質を検出しやすくする(5)。
OF は現行の血液や尿の代替試料として、薬物摂取における独自の情報源となり、過去 20
年間にわたり、法医学、中毒学、そして臨床医学において、その有用性が認められてきた(6)。
しかし、この新規の試料をドーピング検査で使用する前に、変化をもたらす沢山の論点が
あるため、血液や尿試料と比べて利点と欠点を考量する研究が求められるであろう。
この総説では、それぞれのクラスの禁止物質における OF についての現時点での知見を紹
介し、ドーピング検査における OF の優位性と限界(表1)について議論したい。ドーピン
グ検査における新たな試料として OF を採用する上での、OF について埋めなければならな
いギャップとその解消に向けた研究を特に採り上げていきたい。
OF 中への薬物の移行
遊離した薬物の血液から OF への移行は、薬物毎の物理化学的性質(分子量、pKa、蛋白
との結合、脂溶性)に依存する(7)。一般に脂溶性(親油性)で分子量の小さい(<500Da)
、
非結合型の分子は、濃度の勾配に従って細胞膜を通過して受動拡散する。ペプチドやタン
3
パク質からなるドーピング物質を除いた殆どの薬物は、受動拡散により移行する。グルク
ロン酸抱合物や硫酸抱合体のような、より極性を有する代謝物になると、OF 中への受動拡
散による移行は少ないため、通常は摂取された元の薬剤と比較して、OF 中では低濃度とな
る。高分子化合物は、膜貫通型タンパク質に結合し、エネルギーを要する能動輸送により
OF 中へ移行している可能性がある(8)。エタノールのような 100Da 未満の小分子は、細胞膜
の細孔を限外濾過により通過して、OF 中に移行しているかもしれない。ただし、グルクロ
ン酸抱合物と硫酸抱合体は 1900Da までの高分子であり、これらが同様に限外濾過で移行で
きたとしても OF 中では低濃度となる。
口腔粘膜全体あるいは OF への混入(コンタミネーション)は、喫煙、もしくは経鼻腔内・
経口の薬物投与によって発生する(9, 10)。OF の pH は一般に5~7程度であるが、これは
薬物濃度においては重要な規定要因である。この pH では、非イオン化物質のみが細胞膜を
通過して血液と唾液腺の間を移行し、両者間で平衡化する。しかし OF の pH が低い場合に
は、塩基性の薬物がイオン化し、OF 中で塩基性薬剤はより高濃度化する、いわゆるイオン
捕捉が生じる。高濃度重炭酸ソーダによる OF の流出刺激は pH を 8 まで上昇させ、イオン
捕捉の影響を低減させる(7)。
多くのドーピング物質は pKa が 8.5 以下の弱塩基であるため、
こうした現象はドーピング検査において運用上、重要な意味を持つ。OF の流出刺激のため
に、検体採取前にガムを噛む、あるいはクエン酸を投与することで OF の pH が低下し、塩
基性の薬剤の濃度が低下し、偽陰性の検査結果になってしまう可能性がある。pKa>8.5 の塩
基性化合物、pKa<5.5 の酸性化合物または中性化合物においては、イオン化あるいは中性の
形で出現する割合は pH の軽度な変化で影響されにくいため、OF の pH がこれらの物質の OF
中の濃度に与える影響は小さいと考えられている。
競技会時の禁止物質
競技会時の禁止物質に対するドーピング検査の目的は、競技会直近の薬物使用を検知す
ることである。検体試料は競技終了直後に採取される。競技会開始よりはるか以前の薬物
使用を検出しないように、比較的短期間の検出ウィンドウを持つ検査が望ましい。ドーピ
ング検査において OF を使用する利点の一つとして、分析物とそのカットオフ値を短期間の
検出ウィンドウで検知できるということが挙げられる。これに関して、それぞれの規制物
質を投与した研究について表示した(表2)
。このクラスの大抵の禁止物質は違法な乱用薬
物であり、OF におけるこれらの薬物動態の特性は既に知られている。
4
5
6
7
S6:興奮薬
WADA 監視プログラムにある誘導体や外用のイミダゾール系誘導体を除いて、興奮性の薬
物は競技会時に禁止される対象である。そして、尿中においてμg/L の濃度レベルで監視さ
れている。2011 年のドーピング検査で認定された興奮薬物は5種類であり、メチルヘキサ
ンアミン、アンフェタミン(AMP)、コカイン、メチルフェニデート、ならびにエフェドリン
であった。
15 mg と 40 mg のコカインを経静脈的に投与して、血漿と OF 中のコカインの分布を 48 時
間まで分析した研究がある(12)。GC-MS アッセイにおいて、5μg/L の検出限界(Limit of
Quantification: LOQ)で測定すると、いずれの投与量であってもコカインの半減期は 30
分であり、5時間(最終検出時)後までは検出できた。血漿と OF での濃度は一時的にみる
と相関するが、OF での個体間変動は大きく、OF の濃度からの血漿中濃度の予測は容易とは
言えなかった。
別の研究では、コカインを経静脈的に 25 mg、経鼻で 32 mg、吸入で 42 mg の用量で投与
し、OF と尿を試料にして、12 時間後と 72 時間後にその濃度を測定した(13)。8 μg/L を
カットオフ値として測定したところ、OF 中でのコカインとベンゾイルエコグニン
(benzoylecgonine:BE、コカインの不活性代謝物)の最終検出時間(平均)は4~8時間
であった。尿中においては、100 μg/L あるいは 150 μg/L のカットオフ値で測定したとこ
ろ、いずれであっても 40 時間以上は検出できた。最近の報告であるが、70 kg の体重あた
り 75 mg と 150 mg のコカインを皮下投与した後の、OF 中のコカインの最終検出時間(LOQ:
2.5μg/L)は、75 mg のコカインの投与後では 11.5 時間、150 mg の投与後では 17.7 時間
であった(図1)
。同様に、BE は 75 mg の投与時には 32 時間で、150 mg の投与時には 47
時間が最終検出時間であり、またエコグニンメチルエステル(ecgonine methyl ester:EME)
は 75 mg の投与時には 28 時間で、
150 mg の投与時には 32 時間が最終検出時間であった(14)。
薬物、アルコール、そして医薬品の影響下における運転(Driving Under the Influence of
Drugs, Alcohol and Medicine: DRUID)ならびにアメリカ薬物乱用・精神衛生管理庁
(Substance Abuse and Mental Health Services Administration:SAMSHA)の規定では、
それぞれの測定カットオフ値を 10 μg/L と 8 μg/L とした場合、コカインの低用量と高用
量における検出ウィンドウは、各々が 8 時間と 9.8 時間とし、同様に BE の検出ウィンドウ
は 28 時間と 32 時間、EME では 24.1 時間と 26 時間としている。コカインと BE の測定は検
出ウィンドウの点で重要であるが、EME の測定はこの点であまり寄与しないと考えられた。
8
図1 75 mg/70 kg(低用量)または 150 mg/70 kg(高容量)のコカインを単回皮下投与し
た後の、OF と血漿中でのコカイン、BE、エコグニンメチルエステル(ecgonine methyl ester:
EME)濃度の中央値(低容量では OF は 19 人で、血漿は 17 人で測定;高容量では OF は 14
人で、血漿は 13 人で測定)
棒線は四分位範囲を示す。*は全ての検体におけるコカイン濃度が 2.5 μg/L 未満であっ
たことを示す。点線は以下のカットオフ値を意味する:
(Limit of Quantification: LOQ 2.5
μg/L)
、SAMSHA(8 μg/L)
、DRUID(10 μg/L)。Scheidwelier らの論文をもとにして許可
を得て引用(14)。
16 日間に渡り、1日あたり連続5時間のコカインの経口投与(25 mg の増量で最大の累
積で2 g まで)による試験が行われた (13)。経口投与で増量し、心血管系指標の安全基準
に基づいてその投与も中止され得た。クエン酸‐酸味キャンディの刺激による OF 試料の採
取を 120 時間後まで行った時、8 μg/L をカットオフ値として、OF 中のコカインと BE の
検出ウィンドウの平均は 21 時間と 50 時間であった。尿中では、100 μg/L をカットオフ値
として、BE の検出ウィンドウは 105 時間であった。3 mg のコカインを経口投与したある
9
女性においては、カットオフ値を 10 μg/L として、OF 中のコカイン、BE、EME の検出ウィ
ンドウは順に1、3、10 時間であり、一方で尿中では4 、36、36 時間であった(15)。
1 mg/kg と 1.6 mg/kg のメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)を経口投与したと
ころ、50 μg/L のカットオフ(SAMSHA)では、OF 中における MDMA とその代謝産物 3,4-メ
チレンジオキシアンフェタミン(MDA)は 47 時間と 29 時間まで検出できた(7日間はモニ
タリングが継続された)(16)(図2)
。これらの短時間の検出ウィンドウは、カットオフ値
を 25 μg/L とする SAMSHA 基準の修正に貢献しており、DRUID の興奮薬物に対する 25 μg/L
の基準とも一致した。ただし、OF 試料では4-ヒドロキシ3-メトキシメタンフェタミンと
4-ヒドロキシ3-メトキシアンフェタミンは検出できないとされた。
図2 MDMA を使用している健康な成人に対して、1.0 または 1.6 mg/kg の MDMA を単回に経
口投与して 0.25~71 時間後に喀出を経て得られた OF 中の MDMA と MDA の検出率(陽性率%:
1.0 mg/kg は 27 人に対して、また 1.6 mg/kg は 25 人に対して測定された)
LOQ(5 ng/mL)と3つの推奨カットオフ値により判定した検出率;Talloires:フランス・
Talloires での国際会議
(2006 年9月)においては 20 ng/mL(16)、
DRUID においては 25 ng/mL、
SAMHSA においては 50 ng/mL。その検出率が、より高いカットオフ値相当である場合にはグ
ラフは表示されない。Barnes らの論文をもとにして許可を得て引用(16)。
10
SAMSHA の提唱するカットオフ値(2004 年)の≥50 μg/L に AMP の LOQ の≥2.5 μg/L を加
えてみると、10 mg と 20 mg のメタンフェタミン(METH)の経口投与では、検出ウィンドウ
はそれぞれで 11.5 時間と 24 時間であった(17)。低用量と高用量の投与後、11.5 時間後に
は OF 試料のそれぞれで 29%と 60%が陽性の判定であり、24 時間後にはそれぞれで 0%と 20%
が陽性であった。10 または 20 mg の用量で7日以内に4回の投与をした場合には、最終投
与から 24 時間後では、33%と 80%の検体がそれぞれに陽性を示し、最終投与の 48 時間後に
は陽性を示すことはなかった。
モダフィニル(100 mg)
、セレギリン(10 mg)
、crotetamide/cropropamide(いずれも 50
mg)
、ペンテトラゾール(100 mg)
、エフェドリン(12 mg)、シブトラミン(10 mg)を経口
に投与して、24~48 時間後 の OF での、また 72 時間後の尿中での分布を5人の女性で研究
したところ(15)、シブトラミン以外のすべての薬剤は、投与後最初の1時間後に測定でき
た。最終検出時間は OF では尿中よりも短く(OF では3~48 時間で尿では4~72 時間)
、競
技会時禁止物質の検査法として OF のほうが向いていることが示唆された。ただし、シブト
ラミンとその代謝物は OF 中では検出できなかった。また、4名ずつの男女に 60 mg と 120 mg
の偽エフェドリン(エフェドリンの立体異性体)を経口投与したところ、OF でのピーク時
間は2~4時間後にみられた(18)。OF を 24 時間、また尿を 32 時間ほど観察した時、偽エ
フェドリンの検出ウィンドウについて5 μg/L をカットオフ値とした場合、個体間変動は
大きかったが、OF で 10~14 時間で、尿中では 28~32 時間であった。また、カチン(向精
神薬)は、OF からは検出されない一方で、尿では 32 時間、検出された。
これらの興奮薬物の投与研究の全体から分かることは、OF での検出ウィンドウは時間単
位から数日間レベルで、比較的短期であるということであり、競技会時の禁止物質を検出
する試料として OF は有用性を持つであろうというよい証拠を提示している。その他の一般
的な興奮薬物であるメチルヘキサンアミンやメチルフェニデートに対する OF 中の分布につ
いては更なる研究が必要である。これらの塩基性の興奮薬物は一般的に OF に高濃度で存在
しているため、OF での検討はそれほど困難なことではないだろう。
S7 :麻薬
天然の麻薬(モルヒネ)と合成麻薬(オキシコドン)は、ドーピング検査の検体からは、
非典型的または有害な物質の所見報告の 0.4%程度にみられるまれな物質である(11)。2名
の男性に 10 mg と 20 mg のモルヒネを筋肉内に単回投与したところ、OF 中の最高モルヒネ
濃度は 0.5 時間後にあり、それぞれで 10.8 μg/L と 37.8 μg/L であり、投与 24 時間後ま
で OF 中に検出された。一方で尿中においては、同じ RIA 法で LOQ を 0.6 μg/L とした場合
に、投与後6日間は検出された(19)。12 mg のヘロインの経鼻吸入では、1 μg/L の LOQ
で、ヘロインは1時間、6-アセチルモルヒネ(6AM)は3時間、モルヒネも3時間、検出
された(20)。検出ウィンドウは、使用量と経路(方法)に依存する:すなわち、3 mg のヘ
ロインの低用量の経静脈投与ではその検出ウィンドウは5分と短く、10.5 mg を吸入した場
11
合には2時間であった。6AM とモルヒネの濃度も同様のパターンであったが、次のような
経静脈投与法において(各々が 120 分、30 分、5分で投与)
、モルヒネは6AM やヘロイン
よりも長時間の検出ウィンドウとなった(21)。血漿と OF のヘロイン濃度は1:1と強い相
関性があるというが、これらの検討は旧く、OF はクエン酸刺激で採取されており、塩基性
薬物の検知ウィンドウを短くした可能性がある。OF の採取デバイス、ならびに OF 中の麻薬
濃度の検出を安定化させるバッファーについての更なる研究が必要である。
S8:大麻
大麻は、蛋白同化ステロイドや興奮薬に次いで、ドーピング物質としては3番目に多く
みられるドーピング対象物質である(11)。現在は、大麻の使用については、尿中の THCCOOH
を、15 μg/L の閾値で判定している。この値を用いると、THCCOOH は長期間に渡って体
内に存在しており、頻回の大麻吸入者の尿中では約 30 日間以上、検出される(5、22)が、1
日1回未満の大麻吸入者においての尿中では5日間程度、検出される(23)。尿中の THC グ
ルクロン酸包合物であるカンナビジオール(CBD)とカンナビノール(CBN)は、最近の
大麻吸入に対する良好な指標であるが、スクリーニング向きであって除外判定には適用で
きない。これらの指標が検出された場合、常習者であってさえも最近の吸入が示唆される。
ただし、こうした反応は短時には尿試料で得られることであって、あらゆる試料で得られ
るわけではない。
OF の分析では高感度の検出が要求され、それは、THC、CBD、CBN に対してはμg/L、
そして THCCOOH に対しては ng/L のレベルである。我々は 2-dimentional GC-MS 法を初め
て開発し、
(OF の採取方法に依存はするが、)その LOQ は THC と CBD では 0.25-0.5 μg/L、
CBN では1 μg/L、さらに THCCOOH では5-7.5 ng/L であることを報告した(24)。10 名の
大麻常習者に対して、20 mg から連続的に増量[40-120 mg/日の合成 THC(マリノール)を
8 日間以上]した THC の経口投与試験では、OF は喀出または Quantisal 唾液デバイス TM に
より採取され(25、26)、OF 中の THC、CBN、CBD の最高濃度が初回の採取で既にみられた。
この検出は、試験時に投与された薬物によるのではなく、試験前の大麻の自己吸入による
ことを意味した。CBN と CBD は投与後 11 時間までにしか検出できず、マリノールは経口
(と増量)投与後には OF に検出できなかった。THC の経口投与後に THCCOOH は増加し
たが、THC は減少した:OF では、THC 投与から THC は平均で 23 時間、THCCOOH は 185
時間後まで検出された。最終投与の 23 時間後における THCCOOH の平均濃度は、喀出によ
る OF 採取では 96 ng/L で、Quantisal 唾液採取では 134 ng/L であった。
6.8%の THC 入りたばこを喫煙した大麻常用者において、その 22 時間後に、喀出ならび
に Quantisal デバイスで採取した OF(80 検体)について調べると、THC は 95.2%、CBD は
69.3%、CBN は 62.3%、そして THCCOOH は 94.7%に検出された(9、10)。喫煙後6時間後
に喀出で採取した OF では、10 人中8人が、THC(0.9-90 μg/L)と THCCOOH(17-151 ng/L)
において陽性であったが、CBD(0.5-2.4 μg/L)と CBN(1-3 μg/L)では4人が陽性を
12
示した。22 時間後には THC、THCCOOH、CBD ならびに CBN について、順に 1 人、5人、
1人、ならびに0人が陽性を示した。Quantisal 法で採取された 22 時間後の OF では、THC
(0.5-5.5 μg/L)の陽性は4人で、THCCOOH(9-103 μg/L)の陽性は5人で、CBD と
CBN の陽性はみられなかった(10)。CBD と CBN の最終検出時間は6時間以下であった(図
3)
。それぞれの異なった大麻類検出指標のカットオフ値は、異なった薬物検査のプログラ
ムの必要性に応じて設定される(図1を参照、この補足データはオンライン版でアクセス
できる:http://www.clinchem.org/content/vol60/issue2)
。THC の≥1または2 μg/L と
THCCOOH の≥20-30 ng/L の場合を用いて、この単独あるいは組み合わせで評価すると、少
なくとも 22 時間後までは陽性となった。CBD を≥0.5 μg/L または CBN を≥1 μg/L として
用いると、検出ウィンドウは0~6時間であった。
図3 6.8%の THC 入りたばこの単回喫煙後の THC、CBD、CBN ならびに THCCOOH の濃度(6
時間後までは 10 人で、22 時間後までは6人で測定)
エラーバーは四分位範囲を示す。挿入図は、THCCOOH 濃度の中央値に対する詳細を示す。Lee
らの論文をもとにして許可を得て引用(10)。
OF 中における大麻類の残留に関しては、28 人の常習者において、研究室における 30 日
間の大麻禁止期間を経て研究され、THC は、禁止して 48 時間後には 28 人中 24 人で検出不
能となり、
CBN と CBD は禁止直後のみに検出でき、THCCOOH は 19.6 日間まで検出された (27)。
更なる検証は必要であるものの、THCCOOH/THC 比 が≤4 ng/μg であることは、最近の大麻
使用についての潜在的な指標となるという。
大麻喫煙では、口腔粘膜への SativexTM スプレー(カンナビノイド系のがん疼痛治療薬)
は口腔粘膜上で混入を来し、OF 中の THC、CBN、CBD の濃度を上昇させてしまう(28)。この
13
口腔粘膜スプレーは大麻使用の陰性化を防止し、THC の経口投与による生物学的利用を促進
するが、この投与の 15~60 分後に OF への混入は生じる。合成 THC をセサミオイルととも
にカプセル化した製剤であるドロナビノールは、OF 中に混入しなかった(25)。
OF を用いた大麻の分析法で特に問題となるのは、環境による大麻の混入である。コーヒ
ーショップで、3時間の大麻の環境曝露を受けた 10 人の対象者について、屋外で採取した
OF を調べたオランダの研究がある(29)。LOQ を THC と CBN で 0.5 μg/L、CBD で1 μg/L 、
THCCOOH で2 μg/L とした場合に、曝露の3時間後に THC は全員に検出され、また SAMSHA
で提唱されたカットオフ値の2 μg/L では、70%に検出された(29)。曝露の 12~22 時間後
には、先の LOQ で、THC は 20%で検出されたが、2 μg/L のカットオフ値では検出されな
かった。CBN については、先の LOQ で、曝露3時間後に 10 人中3人で検出された。オラン
ダの大麻には CBD 含有量が少ないためであろうか、CBD は全く検出されなかった。THCCOOH
は、大麻には含有されておらず、検出されなかったが、このことから、大麻類の環境曝露
による混入の問題を回避する分析物として活用できると思われる。
このような研究成果は、DUID(Driving Under Influence Drug)の検査、事故調査、そ
して競技会時ドーピング検査において重要視される最近の大麻の使用の検出に関する、OF
を用いた検査の解釈と対策のためのデータベースとなっている。合成大麻類(例えば
JWH-018 や AM2201)も、同様にドーピング検査において問題となる物質で、尿や OF で検出
される(30)。タバコ(500 mg)と濃度不明の合成大麻類を含有する商業ハーブ製品 500 mg
との混合物を3回吸入した後に、Biophor RapidEASE デバイスを用いて採取した OF におい
て、少なくとも6時間は大麻が検出され、0.2 μg/L の LOQ では 90 時間を超えて検出され
た。合成大麻類の OF への分布を明らかにするための更なる研究が必要とされている。
S9:グルココルチコステロイド
この種の極性を持つステロイドホルモンは、スポーツにおいては抗炎症効果と疲労軽減
効果を期待して広く用いられ、尿検査で監視されている。内因性のグルココルチコイドと、
外因性に投与された天然のグルココルチコステロイド(コルチゾンとコルチゾール)の識
別、あるいは合成グルココルチコステロイドの同定は、現行の課題である。コルチゾール
は、唾液流に依存することなく自由に唾液腺に拡散する(9)。コルチゾールをコルチゾンへ
酸化する作用を持つ 11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素が存在するために、OF 中のコ
ルチゾール濃度は1-10 μg/L と低い。また OF 中のコルチゾールは、変動しやすい:例え
ば、若年のサッカー選手において、唾液中のコルチゾールは 19-21 nmol/L から、練習後 90
分で増加した(31)。コルチゾンとコルチゾールの使用を区別できる OF のドーピング検査を
確立するには、内因性のグルココルチコステロイドと外因性に投与量をコントロールされ
た場合の、OF 中の濃度に関する研究が必要である。
2011 年になされた WADA の報告によると、グルココルチコステロイドの AAF(Adverse
Analytical Findings、
「違反が疑われる分析報告」
)では合成薬であるブデソニドが最も多
14
い。5人の健常者に 200 mg のブデソニドを吸入投与したところ、LOQ を5 μg/L とした場
合、12 時間後までは尿中にブデソニドの代謝産物が検出された(32)。2人の健常者に3 mg
のブデソニドを経口投与したところ、同じ LOQ では 24~48 時間後においても尿中にブデソ
ニドの代謝産物が検出された。現在まで、合成グルココルチコステロイドについて参照可
能な OF のデータはないが、これらは投与後にも口腔内での薬物貯留を経て検出されるかも
しれない。従って、最近の使用と区別するための、合成グルココルチコステロイドの OF 中
の薬物動態学的な研究は必要である。
常に禁止されている物質
S0:不承認物質
不承認物質とは、人体への治療目的での使用が、現時点でどの政府保健医療当局でも承
認されていない物質である。S0には、臨床開発中、あるいは更なる考慮を必要として臨床
開発が中止となった薬物、動物用医薬品が含まれる。従って S0物質のドーピング検査にお
いては、全物質に対する新しい分析法の開発が望まれている。OF 中の S0物質について解
析したデータは現時点では未だない。これらの物質の pKa が塩基性である場合には、OF 中
に蓄積する傾向が予想されるため、血液での検査よりも OF での検査が利点を示す可能性は
ある。この他に、このクラスの物質の監視に OF を用いることに利点があるとすれば、ドー
ピング物質として使用された新規の薬物の尿中代謝(や代謝物)しばしば未解明であるた
めに、尿で検査することには問題があり、OF 中では元の薬物を標的に検出できる点にある。
S1:蛋白同化薬
蛋白同化薬には、蛋白質保持や筋肉増強の作用を有する合成アンドロゲンと内因性ステ
ロイドが含まれる。蛋白同化薬は、ドーピング検査で検出される最も一般的な物質の一つ
である(11)。内因性ステロイドのドーピングの検出には課題が残されている。現時点で、
テストステロン、エピテストステロンおよび他のステロイドについては尿中で測定されて
いる。>4のテストステロン/エピテストステロン(T/E)比(WADA 閾値)であるような場
合には、次いで、ガスクロマトグラフィー/燃焼/質量分析によるアイソトープ比率
(GC/C/IRMS)で炭素と水素の同位体比(13C/12C または 2H/1H)を測定することにより、内因
性と外因性のテストステロンの区別を行う。
T/E 比は変動するし、その差も大きい。すなわち、通常時の比が低値のアスリートにおい
ては、ドーピング行為があっても>4の T/E 比とはならないかもしれない(偽陰性となる可
能性)
。通常時の T/E 比が高値のアスリートにおいては偽陽性となる可能性もあり、
GC/C/IRMS 法で結果を確認する必要がある(33)。尿中ステロイドのパスポートとは、繰り返
し収集された個人のステロイドプロフィールであるが、血液の生体パスポートと同様に作
成されている(34)。このステロイドプロフィールは、ステロイド濃度の個人変動を記録し
15
ているために、異常なステロイド濃度の変化を検出可能とする。パスポート法による検査
は、通常、T/E 比が高いまたは低いアスリートにおいて、変化を検出できる方法である。
IRMS 法は正確であるが、判定までに時間を要し、高価であり、分析感度を上げるために
大量の尿検体を必要とし、例えばδ13C を正確に測定するためには5~10 μg/L の分析対象
物を含んだ 18 ml の尿検体を必要とする(35)。OF 中のステロイド濃度は低く、OF の採取量
も制限があるために、OF の GC/C/IRMS による解析をして内因性ステロイドの乱用を確定す
ることは、現時点では困難である(分析対象のアイソトープ検査のために大量の尿検体に
より判定しているのが現状である)
。OF 中の内因性ステロイド濃度、その日内変動、個体内・
個体間変動については、沢山の研究がされてきた(9、36)。遊離の、結合していないステロ
イド[テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)
]は、受動拡散によって血
液から OF 中へ移行するが、フェーズⅡのステロイド代謝物である硫酸 DHEA の移動は限外
濾過に限られている(9、37)
。成人女性における OF 濃度は<57 ng/L であり、血液中と OF
中のステロイド濃度の相関性は弱い。しかし、成人男性の OF 中の総テストステロン濃度は
72-172 ng/L であり、血清テストステロンとの比はおよそ1:90 である。唾液腺の 17β-ヒ
ドロキシステロイドデヒドロゲナーゼは、テストステロンをアンドロステンジオンに変換
して、OF 中のテストステロン濃度は低下する。唾液中のステロイド(テストステロン、DHEA、
硫酸 DHEA)の挙動は競技が異なると様々である(9)。10~16 歳のサッカー選手においては、
90 分の練習の後に OF 中のテストステロン濃度は 97 ng/L から 118 ng/L までに増加したが
(31)、プロのラグビー選手[25(+/-3)歳]においては持久練習後に唾液中テストステロン
濃度の変化は認められなかった。このことは、テストステロン濃度の個体内変動の差異の
存在を示唆している(38)。
1.5 mg/kg のテストステロンを3週間に渡って経皮(ゲル)投与して、その投与前後で運
動した 19 人の健康男性に対して、OF 中のテストステロン濃度と尿中の T/E 比を調べた (39)
ところ、OF 中のテストステロン濃度は投与前の 50 ng/L から初回投与後には 5000 ng/L と
増加し、この上昇は最終投与直後と少なくともその1週間後まで続いた(図4)
。尿中の T/E
比も増加したが、4を上回ることはなかった。OF 中のテストステロン濃度と尿中の T/E 比
の間には中等度の相関性は認められた。さらに、ELISA により測定された OF 中のテストス
テロン濃度は、投与前後で運動による影響を受けなかった。他の DHEA のようなステロイド
については、テストステロンの抗体に対して交差反応を来す可能性があり、LC-MS のような
より特異的な分析法の確立が必要である。
16
図4 唾液によるテストステロン濃度の平均(標準偏差)値
Ex はエクササイズ(運動)
、T はテストステロンの投与量(1.5 mg/kg 体重)
*は有意(p<0.05) Schonfelder らの論文から許可を得て転載(39)。
テストステロン、エピテストステロン、ジヒドロテストステロン、DHEA、アンドロステ
ロン、エチオコラノロン、そしてα-ならびにβ-アンドロスタネジオールについて、
Quantisal デバイスにより採取された OF の同時分析が実施されたが、結果は公表されてい
ない(40)。10 ng/L という低値の LOQ の設定下でも、α-ならびにβ-アンドロスタネジオー
ル(40 ng/L)以外の項目の測定については達成されてきた。男性においては、テストステ
ロンでは 12~32 ng/L で、DHEA では 24~52 ng/L で検出され、女性では DHEA のみが検出さ
れ、その範囲は 28~520 ng/L であった。エピテストステロンを含むその他の分析物は、い
ずれの性別でも、OF では検出されなかった。
これらの初期の研究は、OF を試料として天然ステロイドの乱用を検出する目的で行われ
た。しかし、OF でエピテストステロンが検出できないことから、OF における T/E 比の利用
もできないことが分かった。OF のテストステロン濃度の陽性判定の基準や、LC/MS 法によ
る OF 中ステロイドプロフィールの解析には、更なる研究が求められている。分析感度の向
上が必要であるが、こうした努力は既に尿中で明らかにされてきたような、広範囲なステ
ロイドプロフィールの作成を可能にするであろう(41)。さらに血液で測定すると、経時的
にはステロイドの変動は限定的であった(42)。OF と血液の濃度の相関性がみられるため、
その経時的変動幅の性質は、OF でステロイド検査をする潜在的な利点の根拠になるかもし
17
れない。
合成タンパク同化薬(筋肉増強薬)は、一般的には尿中で検出されており、OF で検出し
た報告は少ない(43、44)。合成テストステロン誘導体であるオキシメトロン(50 mg)を3
人の女性[28(+/-3.5)歳]に経口投与し、24 時間後まで血漿と OF を採取して、GC/MS 法で
オキシメトロンを測定したところ(43)、最初の OF(30 分後)でのオキシメトロン濃度は 11.3
μg/L であったが、1時間後にはもはや検出されなかった。血漿では 24 時間後でも測定で
きた。
最近、
オキシメトロンの尿中代謝物が新たに同定されてきており、
3人の男性に 50 mg/
日のオキシメトロンを5日間連続で経口投与したところ、その尿中での検出ウィンドウは
投与後、約 20 日であった(45)。オキシメトロンや、おそらく他の合成ステロイドの OF で
の検出ウィンドウが短過ぎることは、これらの物質を検査するのに OF が有益であるとは言
い切れないことを示唆している。
尿中のチボロン薬物動態学の研究において、3人の健康な閉経後女性に、2.5 mg の [14C]
チボロン(ナンドロロン様の 19-ノルステロイド)が経口投与された。放射性は 192 時間後
まで陽性であり、尿中においては長期の検出ウィンドウを示した(46)。OF におけるチボロ
ンのデータについては1つの研究で調べられた(44)。チボロン(2.5 mg)は 27 歳の女性に
経口投与され、投与後1時間まで5分毎に OF は採取された。OF のチボロンの最高濃度は、
投与して5分後で4 μg/L であり、1時間後までの全測定で陽性であった。
S2:ペプチドホルモン、成長因子と関連物質
OF 中のプロテオームは精力的に研究され (47)、いくつかのペプチドホルモン、成長因子
や関連物質の検出について報告されてきた(48)。リコンビナント・エリスロポイエチン
(rhEPO)や第3世代 EPO として知られる持続性エリスロポイエチン受容体活性化薬(CERA)
のようなエリスロポイエチン刺激性薬物も、尿や血液では、通常、低濃度ながら検出され
る(49)。外因性と内因性の EPO は等電点分離によって判別される。等電点電気泳動ゲル検
査によって規定される rhEPO および CERA の分析感度は<40 pg である。この感度は、1 mL
の血清で 50 ng/L、18 ml の尿で3 ng/L に相当する。生理的に存在するような EPO は成人・
小児ともに OF 中に検出され、血中濃度と良い相関性があるとされている(OF/血清比は1:
4)(50)。OF の EPO は、唾液腺からの直接分泌による移行なのか、能動輸送によるのかに
ついては分かっていない。OF 中で rhEPO と CERA が同定できるかどうかの研究は必要とされ
ている。OF 中では低濃度であることが予想され、OF の採取量に限界があるために、等電点
電気泳動法レベルでの検出は困難であることは推測される。
遺伝子組み換えヒト成長ホルモン(rhGH)も、内因性 hGH とは異なる hGH アイソフォー
ムを認識して結合する特異抗体を使用して、血液中で区別される。2004 年のアテネオリン
ピックにおいて、hGH の血液検査が導入された。全アイソフォーム濃度は、遺伝子組み換え
アイソフォームのみに存在する 22kDa のアイソフォーム濃度と比較された(51)。rhGH が<0.1
μg/L でない場合に、22kDa のアイソフォームと他の全アイソフォームとの比が、以前に確
18
立されたレベルあるいは多様な人口集団から算出された閾値を超えた時に、rhGH の乱用に
対して陽性と判断された。液体クロマトグラフィー-タンデムマス質量分析(LC-MS/MS)法
は rhGH の検出のために適応されたが、現時点では必要とされている分析感度を満たすほど
ではないようである(51)。
23 人の男性と 28 人の女性において、
OF 中の hGH が測定された(52)。
女性の hGH 濃度(12.8
mU/L)は、男性の濃度(3.4 mU/L)と比較して有意に高値であり、その OF:血清の hGH 比
はおよそ1:1000 であった。この低い hGH 濃度と OF/血清比のために、hGH はおそらく OF
中に分泌されておらず、血液中から受動拡散または能動輸送で移行していると推測された。
ドーピング検査の目的を考慮すると、rhGH と hGH の OF 中における ng/L 単位の低濃度に対
して、現行の検出法では不十分な感度と言わざるを得ない。
rhGH の乱用を検出する別のアプローチとして、バイオマーカーを利用する方法がある。
この方法は、インスリン様成長因子(IGF-1)のような rhGH 投与によって影響を受ける他の
生体分子の測定に基づいて行われる(51)。ヒトの OF において、遊離型 IGF-1はμg/L の低
濃度で定量化されたが、循環血漿中の濃度とは明らかな相関性はみられず、ラットにおけ
る研究で、IGF-1は OF 中に直接分泌されていることが示唆されている(53、54)。
インスリンもまた、スポーツにおいて誤用されているペプチドの一つである。臨床的な
OF の測定において、インスリンはイムノアッセイ法により高感度に定量化されている(1.2
ng/L)(55)。マウスにおいてインスリンは唾液腺でも合成されるが、ヒトにおいては血漿
と OF でのインスリン濃度に良い相関性があり、このことからは血液から OF 中へのインス
リンの限外濾過の移行機序が存在すると推定される(56、57)。スポーツにおけるインスリ
ンの乱用においては、天然のヒト由来インスリンとは異なるアミノ酸配列の合成型あるい
は動物由来のインスリンが使用され得る(58)。現在の OF に対する臨床的なイムノアッセイ
では、異なるタイプのインスリンに対する交差反応が生じて、内因性と外因性インスリン
の区別が困難な可能性がある。実際、1型糖尿病患者においてインスリンを投与して 2.5
時間後の OF 中のインスリン濃度は 1.2 μg/L に増加していた。しかし、これらのデータは
イムノアッセイ法で検査され、内因性と外因性インスリンの両方が測定された結果であっ
た(59)。ドーピング管理においては、質量分析を用いて尿中または血漿インスリンを検出
しているが、この方法でのみ外因性(乱用が推定される)と内因性の区別が可能である(58)。
OF に適用できるこうした方法こそ開発が望まれる。多くの S2物質に対する OF のデータは
ないが、これらは低濃度であり、現行よりも高感度の分析法の開発が期待されている。血
液 ABP と、将来的にはおそらくは OF のパスポートは、S2物質または関連分子の経時的な
測定における優位性のある方法となっていくであろう。
S3:β-2作用薬
β-2作用薬は、気管支喘息やこの他の肺疾患の治療薬として使用されている。最も一般
的なβ-2作用薬といえば、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロールが挙げら
19
れる。β-2作用薬は、治療目的の吸入を除いて禁止されている。尿中のサルブタモール濃
度が1 mg/L で、フォルモテロール濃度が 40 μg/L 以上の場合に、AAF は発行される。サ
ルブタモール投与についての喘息患者と非喘息のアスリートの対照研究は複数あり、治療
目的で使用される最高推奨吸入用量(1600 mg、24 時間)を投与した後の、尿での濃度は
WADA の閾値を超えなかった (60、61)。経口投与法(禁止されている投与法であるが)では、
尿中サルブタモール濃度は 3000 μg/L にも達しており、閾値を大きく超えていた。喘息患
者と非喘息被験者に対する、単回ならびに繰り返しの 18μg のフォルモテロール吸入投与
では、尿中濃度が 40 μg/L を超えることはなかった(62)。
現時点で、OF 中のβ-2作用薬濃度について報告されたデータはない。これらの薬剤は、
アミン官能基を有するために比較的塩基性で、OF では検出できる濃度にあると予想される。
しかし、β-2作用薬の経口腔内投与により、口腔粘膜全体での混入が生じ、OF は吸入投与
直後の検査試料としては向かないであろう。経時的に繰り返し測定した場合の OF 中のβ2作用薬の濃度、OF と血液中における濃度の関連、OF での閾値の決定、吸入と全身投与の
ような異なる投与経路でのβ-2作用薬の OF の検出時間に関する研究は必要である。
S4:ホルモン調節薬と代謝調節薬
このクラスには、アロマターゼ阻害薬(例としてアンドロスタトリエンジオン)
、選択的
エストロゲン受容体調節薬(例としてタモキシフェン)
、抗エストロゲン作用を有する薬物
(例としてクロミフェン)
、ミオスタチン阻害薬、代謝調節薬(例としてペルオキシソーム
増殖因子活性化受容体δ作動薬)が含まれる。中でも、タモキシフェンは、2011 年に、こ
のクラスの物質に対する AAF の約 50%を占め、最頻であった (11)。タモキシフェンは、男
性アスリートがアンドロゲン産生を刺激するために使用するが、現在の測定法では尿を用
いて、LC-MS/MS 法または GC-MS 法による代謝物の直接測定とステロイドプロファイリング
によって検出されている(63)。現時点では、タモキシフェンとその他の S4クラスの物質に
対して利用できるような OF のデータはないが、タモキシフェンはアミン基を有しており、
OF で検出できるであろう。S4クラスの物質については、OF 中の濃度や検出ウィンドウを
決めるための沢山の新たな研究が必要である。
S5:利尿薬とその他の隠蔽薬
利尿薬は尿量を増加させ、尿を希釈するが、利尿薬の OF 量に対する影響はよく分かって
いない。マンニトールのような血漿増量薬は、ヘモグロビン濃度の変化、循環血液量と組
織・筋肉への酸素運搬量の増加によって、血液 ABP を変化させる隠蔽薬である。これらの
物質は競技成績を直に向上させる作用はないかもしれないが、他方で尿中における他のド
ーピング物質を隠蔽するかもしれない。監視を要するような隠蔽物質が OF 中にみられる可
能性はある。大抵の S5クラスの物質は極性を有しており、>100 μg/L の分析濃度で LC-MS
法によって検査することを考えると尿は良い試料である(64)。高い極性のために、隠蔽物
20
質の OF 中への受動拡散は難しいかもしれない。試料としての OF の妥当性、あるいはこれ
らの物質の OF 中での濃度について明らかにする研究は必要である。
特定の競技において禁止される物質
P1:アルコール
アルコールについては、2011 年のドーピング検査においての AAF はわずか5つであった
(11)。アルコール(エタノール)の検出は、呼気または血液で効果的に分析されている。
しかし、OF もまた適した検体である。例えば、0.5 g/kg のエタノールの摂取後に、OF での
検出時間は血液とほぼ同等であり、0.06 g/L のカットオフ値で 3.5 時間まで検出可能であ
った(65)。同じ量の摂取後の、エタノールのグルクロン酸抱合物(EtG)については、OF で
は 4.4 μg/L をカットオフ値とした場合、血液よりも短期の検出ウィンドウを示した(3.5
時間対 11.5 時間)
。より高用量の1 g/kg では、OF でのエタノール検出ウィンドウはやは
り血液よりも短期間であった(5.5 時間対 8.5 時間)が、OF と血液での EtG の検出ウィン
ドウはほぼ同等で 11.5 時間であった。エタノールの揮発性を考慮すると、EtG は、モニタ
リングにおいて、より適した分析対象と言えるであろう。
P2:β遮断薬
β 遮断薬は、スキージャンプ、フリースタイルスキー、スノーボードのようなハイリス
クの競技、そして振動や体動が競技上の不利益となるアーチェリーや射撃のような競技で
は禁止されている。これらのスポーツでは、β 遮断薬は心拍数、アドレナリン放出、また
震えを抑制するので有利となり得る。WADA で求められる LOQ は、尿を用いて、LC-MS/MS ま
たは GC-MS 法で<100 μg/L として規定されている(66)。これらの物質について OF で分析
した報告はない。これらの物質は比較的脂溶性で、OF への移行が容易である。これらは特
段の事情がない限りにおいて競技中の使用だけが禁止されており、最近の使用のみを検出
するのに、比較的短期の検出ウィンドウを示す OF は、ドーピング検査の試料としては有益
なはずである。
薬物検査の一般的な利点と限界
OF での薬物の安定性
OF における薬物の安定性は、検査結果に影響する重要な要因の一つであり、アスリート
は再分析を要求する権利を持っている。採取デバイスと安定化バッファーの工夫は、OF を
試料とする際の薬物安定性を促進する。安定化バッファーを添加していない OF でのコルチ
ゾールの測定の安定性は-20℃で3か月間、また-80℃で1年間(Salivette による OF の採
取)であり、テストステロンでの安定性は-20℃で1か月間であった(喀出による OF 採取)
21
(67、65)。
バッファーを添加した OF では、THC の安定性は採取デバイスに依存した(69)。Quantisal
デバイスによる OF の採取では、THC とその他の大麻類の測定は4℃で1か月間は安定であ
ったが、喀出による OF の採取では、大麻類の測定の安定性は非常に乏しく、THC の酸化に
よる CBN への変化にために THC は減少し、CBN は増加した(70)。OF の検査結果の解釈を複
雑にするのは、6-AM からモルヒネへ、あるいはコカインから BE へ、といった薬物の変質
の問題である(71)。pH4のクエン酸バッファーや 0.1%のアジ化ナトリウムのような防腐剤
の添加によって、薬物の変質を防ぐことはできる。Cozart Rapiscan 採取パッドで OF を採
取した時には、メサドンは4℃で2か月間安定していたが、その代謝物の2‐エチル‐1, 5ジメチル-3,3 ジフェニルピロリン酸は時間が経過するにつれて減少していった(72)。
バッファーの無添加で、喀出で採取された OF 中のインスリンの短期間の安定性に関する
研究によれば(55)、インスリン濃度は2~8℃で、7日後に 29.8%減少した。しかし同じ期
間、-20℃で保管した場合には濃度変化を認めなかった。
他のドーピング物質についての OF 中での安定性に関するデータはなく、検査結果を正確
に解釈するためには、全てのドーピング物質に対する OF 中での安定性を評価する研究が必
要である。長期間(≥1年間)の安定性については特に研究を要し、これは後日に再検査を要
する場合に求められる。
検体採取
血液や尿と比較した場合の OF を使用する最大の利点は、検体採取が簡易なことにある。
OF は、医療スタッフの関与なしに、プライバシーも保たれ、性別にかかわりなく採取可能
な試料である。これらの利点によって、採取後の検体の変質や入れ替えといった危険は減
少する。いくつかの OF の採取法はあるが、重大な欠点(例えば、被検者と検体採取担当者
の不快感、喀出採取された OF の不安定性)を考えるに、唾液の自然流出や喀出による採取
は推奨されない。OF の採取量とデバイスからの薬物の回収率については、採取デバイスに
よる変動(影響)が大きい(69)。刺激物の摂取や治療薬物の影響による口腔の乾燥は、OF
の流出量を減少させる可能性がある(9、10)。激しい運動競技後の脱水もまた、同様に OF
を減少させる。OF の採取は、OF による検査の導入に際しては重要な過程である。現在まで
に、OF の採取に関して標準化された方法はない。OF の検査がドーピング検査にルーチンで
導入される前に、OF の最適な採取法を決定するための研究が必要である。例えば、尿比重
に応じて薬物濃度を補正するのと同様に、OF 中の濃度を補正する指標はあり得るだろう
か?
OF の分析
薬物と代謝物を明確に同定できるので、質量分析はドーピング試験に一般的に採用され
ている。GC-MS 法は、複雑で、時間がかかり、高価な誘導体をしばしば必要とする。LC-MS
22
法もまた制限はあるが、誘導体なしで複数の物質の同時測定が可能である(73)。高感度で
特異性の高い分析機器があれば、OF では薬物濃度が低いという問題点は解決できる。ドー
ピング検査への OF の登用を支持するには、正確で高感度でルーチンな OF の分析を達成し
た分析技術こそが活用できる。
OF の検査結果は、食物、飲料、洗口液、練り歯磨きによる影響を受ける可能性がある。
洗口液、オレンジジュース、練り歯磨き、コーヒー、豆乳、水道水の影響についての研究
では、添加物なしの OF と先の物質を摂取したボランティアから5分および 30 分後に採取
した OF を用いて調査したが、これらの OF の間で、Immunalysis sweat/OF direct ELISA
法を用いたところ、何らの差違を認めなかったという(74)。健康ボランティアに対する別
の研究では、コーヒー、コカコーラ、フルーツジュース、オレンジ、辛い食べ物、練り歯
磨き、食用酢を摂取直後に InterceptR デバイスを用いて採取した OF を Orasure microplate
immunoassay で測定した結果、陽性と推定される結果になる可能性があったという(75)。し
かし、スクリーニング検査で陽性と推定された検体に対して、質量分析を用いた検査では
偽陽性という結果は認められなかった。3つ目となる研究では、10 mg のコデインを投与し
て 30 分後または 180 g のケシの実入りマフィンを摂食して、1時間後に洗口してから
Oratect デバイスで採取した OF 中では、opiate の濃度は2~3倍ほど減少することが示さ
れた (76)。最後に、OF の溶出バッファーは分析対象物質を安定化させ、採取パッドからの
薬物検出を可能とするが、GC-MS のセプタ、ライナー、カラムそしてソースの頻回な交換が
必要となる。LC-MS の測定では、不適切なサンプル処置をした場合には、そのバッファーに
よって高いマトリックス効果が生じることが報告されている(69、77)。
結 論
この総説においては、それぞれのクラスのドーピング物質について、OF の利用可能なデ
ータについて記述した。表2には OF の分析を行った禁止薬物の投与研究をまとめた。そし
て、競技会時の禁止物質(例えば大麻、興奮薬)に対して、OF には適切な分析対象があり、
カットオフ値を設定可能で、薬物摂取後に短期間の検出ウィンドウを示すので、価値ある
試料となることを特記した。しかし、他のクラスの物質においては、OF の研究は不足して
おり、ドーピング検査において、有用な代替試料になることを証明する研究が必要な現状
である。最近では、毛髪がドーピング検査の代替試料として提案されている(78)。しかし、
環境からの毛髪への薬物混入の可能性、毛髪色による薬物濃度の個体間差、検出ウィンド
ウの広さから、毛髪のドーピング検査への適用には問題が多い。このため、OF のドーピン
グ検査における利点と限界、知見のギャップなどを明らかにするための研究が進んできた。
これらについては表1に示している。尿や血液検査でみられる特定のドーピング検査にお
ける課題について、OF 検査も万能ではないが、解決策を提示できる可能性がある。毛髪検
査についても、このことは主要な課題であり得る。実際に比較的少数の禁止薬物が、OF 中
で測定されてきた経緯がある。OF をドーピング規制の試料として導入すると、第3の検体
23
の採取が必要となり、尿、血液、OF の3つの検査結果の解釈はより複雑になってくる。ど
の試料の結果が、特定のドーピング物質に対して、決定的な所見を与えるのかを明確に指
示する必要性も生まれてくるであろう。
最後に、以下のようないくつかの課題が OF 検査のルーチン化導入の前に残っている。
どのように OF を採取すべきなのか。尿検査において規定されているように、標準化(特定
の採取デバイス、輸送、保存、採取量、OF 濃度の補正)を確立すべきか。
OF において、どの禁止物質を監視するのが最適か。
それぞれの物質において、適切な OF の閾値はどうするか。
OF の劣化は重大な危険をはらむか。
これらの知見の乖離に対して、まさに多様な領域での研究が必要とされている。全ての
ドーピング物質における正確な結果と、OF での測定の安定性を得るために、OF の採取法は
標準化されなければならないだろうと思う。規制物質投与の研究や OF 中への分泌について
の研究は、薬物の検出ウィンドウと直近の使用の指標を決めるために必要である。そうは
言いながらも、尿を用いた監視的な測定と比較して、OF は特に競技会時の禁止物質の測定
については、基本的に利点があると認識してよいと考えられる。
(訳者:小谷 和彦)
Footnotes
2
Nonstandard abbreviations:
WADA,
World Anti-Doping Agency;
THC,
Δ9-tetrahydrocannabinol;
THCCOOH,
11-nor-9-carboxy-Δ9-tetra-hydrocannabinol;
hGH,
human growth hormone;
ABP,
athlete biological passport;
OF,
oral fluid;
i.v.,
intravenous;
AMP,
amphetamine;
LOQ,
limit of quantification;
BE,
benzoylecgonine;
EME,
24
ecgonine methyl ester;
DRUID,
Driving Under Influence of Drugs, Alcohol and Medicines;
SAMSHA,
Substance Abuse and Mental Health Services Administration;
MDMA,
3,4-methylenedioxymeth-amphetamine;
MDA,
3,4-methylenedioxyamphetamine;
METH,
methamphetamine;
AAF,
adverse (and atypical) analytical finding;
6AM,
6-acetylmorphine;
CBD,
cannabidiol;
CBN,
cannabinol;
2DGC-MS,
2-dimensional GC-MS;
T/E,
testosterone/epitestosterone;
GC/C/IRMS,
gas chromatography/ combustion/isotope ratio mass spectrometry;
DHEA,
dehydroepiandrosterone;
rhEPO,
recombinant human erythropoietin;
CERA,
continuous erythropoietin receptor activator;
rhGH,
recombinant human growth hormone;
LC-MS/MS,
liquid chromatography–tandem mass spectrometry;
IGF-1,
insulin-like growth factor-1;
EtG,
ethanol glucuronide.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content
of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the
conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting
or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all
authors completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: None declared.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
25
Honoraria: None declared.
Research Funding: Intramural Research Program of the National Institute on Drug Abuse,
NIH.
Expert Testimony: None declared.
Patents: None declared.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of
enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication May 9, 2013.
Accepted for publication August 14, 2013.
© 2014 The American Association for Clinical Chemistry
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