...

事業原簿(公開)3(2.20MB) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

by user

on
Category: Documents
6

views

Report

Comments

Transcript

事業原簿(公開)3(2.20MB) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
2.2.6
2.2
参考文献
マグネシウム合金鍛造加工における微細組織と変形機構との関連性の解明
(1)
H.Watanabe, H.Tsutsui, T.Mukai, K.Ishikawa, Y.Okanda, M.Kohzu and
K.Higashi, Mater. Trans., 42(2001), 1200-1205
2.2.1
鍛造素材の組成及び微細組織と鍛造加工性との関係解明
(1) C. Zener and J. H. Hollomon: J. Appl. Phys. 15 (1944) 22–32.
(2)
H. Watanabe, H. Tsutsui, T. Mukai, H. Ishikawa, Y. Okanda, M. Kohzu, K.
Higashi: Mater. Trans. 42 (2001) 1200-1205.
(3) A. Takara, Y. Nishikawa, H. Watanabe, H. Somekawa, T. Mukai and K. Higashi:
Mater. Trans. 45 (2004) 2531–2536.
(4) K. Hirai, H. Somekawa, Y. Takigawa and K. Higashi: Scripta Mater. 56 (2007)
237-240.
(5) R.O. Kaibyshev, A. M. Galiev and B. K. Sokolov: Phys. Met. Metall. 78 (1994)
209–217.
(6) M. Mabuchi, K. Kubota and K. Higashi: Mater. Trans., JIM 36 (1995) 1249–1254.
(7) H. Suzuki: J. Phys. Soc. Jpn. 17 (1962) 322.
(8) M. Suzuki, T. Kimura, J. Koike and K. Maruyama: Mater. Sci. Eng. A387-389
(2004) 706-709.
(9)
H.Saka, Y.Sueki and T. Imura: Phil. Mag, 37 (1978) 273-289.
2.2.2
鍛造素材及び鍛造部材の第二相粒子による高機能化の検討
(1)
D. Duly, J.P. Simon, Y. Brechet, Acta Metall. Mater., 43(1995), 101-106
(2)
M. R. Barnett, Z. Keshavarz, A. G. Beer and X. Ma: Acta Materialia, 56(2008),
5-15.
(3)
H.Watanabe, H.Tsutsui, T.Mukai, K.Ishikawa, Y.Okanda, M.Kohzu and
K.Higashi, Mater. Trans., 42(2001), 1200-1205
2.2.3
鍛造部材のミクロ組織解析と機械的性質との関係解明
(1)
O. Sitdikov and R. Kaibyshev, Mater. Trans. 42 (2001) 1928-1937
(2)
F. J. Humphreys, Mater. Sci. Eng. A 135 (1991) 267-273
(3)
M.Hakamada, A.Watazu, N.Saito and H.Iwasaki, Materials Transactions,
49(2008), 1032-1037
(4) M.Hakamada, A.Watazu, N.Saito and H.Iwasaki, Materials Transactions,
49(2008), 554-558
2.2.4
(1)
鍛造加工マップの整備
H.Somekawa, K.Hirai, H.Watanabe, Y.takigawa and K.Higashi, Mater. Sci.Eng.,
A407(2005), 53-61
(2)
A.Takara, Y.Nishikawa, H.Watanabe, H.Somekawa, T.Mukai and K.Higashi,
Mater. Trans., 45(2004), 2531-2536
Ⅲ-52
2.3
研究開発項目③「マグネシウム合金のリサイクルに係る課題抽出」
マグネシウム合金の構造材としての需要拡大を図るには、他の軽量化材料に比較して価
格優位性のあるマグネシウム地金が安定的に供給されること、循環型素材としてのメリッ
トを発揮することが必要不可欠であり、そのためには、国内で発生・蓄積しているマグネ
シウムスクラップのリサイクルを可能な限り推進することが求められる。
日本のマグネシウム二次精錬では、フラックスを用いて酸化物、金属間化合物などの介
在物を吸収させ、溶湯鎮静によりスラッジとしてルツボ底に沈殿分離する方法が採用され
ており、酸化物や金属間化合物など比較的多量に含有するスクラップを精錬可能である
1 )。
しかしながら、油や塗料などが付着したスクラップをそのまま溶解すると、有毒ガスの発
生や歩留まりの低下に繋がるため、このような不純物は溶解前に完全に除去する必要があ
る 。 ま た 、 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 の 腐 食 に 著 し い 悪 影 響 を 及 ぼ す Cu、 Ni、 Si 等 に よ っ て 溶 湯
が汚染された場合、通常の溶解作業では分離精製が困難と言われており
2 )、 こ れ ら の 混 入
源となる異材・不純物を事前に除去する必要がある。
一方、清浄度が比較的高いスクラップについても、素材コストのさらなる低減を図るた
めに効果的なリサイクル法の開発が必要である。ダイカストやチクソ製品の製造工程では、
湯道や方案部などから大量の工程屑が発生する。現状ではこれらの多くが再溶解によるリ
サイクルが行われているが、こうしたスクラップを再溶解することなく直接再生材を作製
できれば、エネルギーコストの大幅な低減が可能となる。その過程で材料の組織を制御
(結晶粒微細化等)してリサイクル材を高性能化(高強度、高加工性等)することができ
れば、低コスト・高機能鍛造用素材としての活用が期待できる。
また、マグネシウムスクラップのリサイクルを推進する上で、安全対策は避けて通るこ
とのできない課題である。リサイクルプラントでは粉塵爆発災害が多く発生しており、操
業にあたっては大きな注意を払わなければならない。特に、マグネシウム粉塵は爆発性が
大であるので、その爆発特性を十分に検討し評価しておく必要がある。
以上の観点から、研究開発項目③では、再溶解によるリサイクル技術の前処理技術とし
て、切削粉などの工場内スクラップに含まれる有機不純物除去技術の開発、ならびに市中
回収品にも対応できる前処理技術として成分分離技術と無機不純物処理技術の開発を行う。
また、再溶解を経ずにそのまま直接熱間加工に供することでスクラップから高強度マグネ
シウム合金再生材を作製する省エネルギー型固体リサイクル技術開発として、固体リサイ
クル材の鍛造素材化技術の開発を行い、固体リサイクル材の諸特性に及ぼす混入物の影響
について詳細に評価する。さらに、研究開発全体に関わるテーマとして、マグネシウム粉
粒体の発火条件について基礎的検討を行い、処理プロセス内での安全なハンドリング方法
を明らかにするとともに、マグネシウム廃棄物発生の実態調査を行い研究開発の方向性を
検討する。
図 Ⅲ .2.3-1 お よ び 図 Ⅲ .2.3-2 に 本 研 究 開 発 項 目 の 研 究 開 発 内 容 と 検 討 項 目 を 示 す 。 こ れ
ら検討項目を通じて、比較的清浄な未利用工場内スクラップを対象とする研究開発につい
ては実用化技術開発に向けた成果を、性状が不明な市中スクラップを対象とする研究開発
Ⅲ-53
に つ い て は 実 用 化 の た め の 課 題 抽 出 に 繋 が る 成 果 を 目 指 す 。 図 Ⅲ .2.3-3 に は 各 検 討 項 目 間
の関係を示す。このように連携を図りながら、産学官の実施者が一体となって出口を見据
えた研究開発を推進する。
図 Ⅲ.2.3-1 研 究 開 発 項 目 ③における研 究 内 容
図 Ⅲ.2.3-2 研 究 開 発 項 目 ③における検 討 項 目
Ⅲ-54
図 Ⅲ.2.3-3 研 究 開 発 項 目 ③における検 討 項 目 間 の関 係
その達成目標として、中間達成目標では、リサイクル前処理技術及び安全性評価研究に
対して「マグネシウムスクラップ取り扱い時の安全性評価方法に必要な主要因を明らかに
するとともに、工場内スクラップを対象としたリサイクルシステムを構築する」として、
実用化技術開発(研究開発項目⑦)の基盤となるデータを収集する。同時に、固体リサイ
クル技術開発に対して「固体リサイクル材の鍛造用ビレットへの適用可能性を明らかにす
る」として、固体リサイクル材の鍛造素材化に向けた基盤となるデータを収集する。また、
最 終 達 成 目 標 で は 、「 従 来 の カ ス ケ ー ド 型 リ サ イ ク ル ( 低 品 位 素 材 へ の リ サ イ ク ル ) に 代
えて、リサイクル材料が新材料と同等の特性を維持する市中スクラップリサイクル基盤技
術の開発を行うとともに、総合的なマグネシウムリサイクルについての信頼性評価、デー
タ集積を行う」ならびに「大量排出時を想定した市中回収品スクラップの前処理技術(分
別、分離、不純物除去など)の課題摘出し、市中スクラップリサイクル基盤技術を提案す
る」を設定し、マグネシウム合金素材コスト低減に貢献するリサイクルシステムの基盤構
築を目指す。
Ⅲ-55
2.3.1
研 究 開 発 項 目 ③ (1)「 リ サ イ ク ル 前 処 理 技 術 ( 分 離 、 精 製 、 安 全 性 評 価 )」
③ (1)-1 マ グ ネ シ ウ ム 廃 棄 物 発 生 の 実 態 調 査
マグネシウム合金は主に自動車部品やノートパソコンおよび携帯電話の筐体等に使用さ
れ て い る 。 こ れ ら 部 品 の 製 造 過 程 で 発 生 す る す る 屑 を 「 工 場 内 ス ク ラ ッ プ 」、 製 品 寿 命 を
全うしたものを「市中スクラップ」と呼ぶことにし、マグネシウムの生産・需要・価格の
推移、工場内スクラップおよび市中スクラップのリサイクルの現状並びに課題について述
べる。
1) マ グ ネ シ ウ ム の 生 産 ・ 需 要 ・ 価 格 の 推 移
1)
世 界 の マ グ ネ シ ウ ム 生 産 量 の 推 移 を 図 Ⅲ .2.3-4 に 示 す 。 1998 年 40 万 ト ン で あ っ た 生 産
量 が 2007 年 に は 79 万 ト ン と 倍 増 し て い る 。 こ れ は 中 国 の 生 産 拡 大 に よ る も の で あ り 、
2007 年 は 65 万 ト ン (82% )が 中 国 で 生 産 さ れ て い る 。 一 方 米 国 、 ノ ル ウ ェ ー 、 カ ナ ダ 等
では工場の閉鎖が続き、生産量は減少の一途をたどっている。
図 Ⅲ .2.3-5 に 中 国 の マ グ ネ シ ウ ム 需 要 の 推 移 を 示 す 。 中 国 は 生 産 量 の 増 大 と 共 に 需 要 も
急 速 に 拡 大 し て お り 、 2007 年 に は 26 万 ト ン に 達 し て い る 。 用 途 別 で は ダ イ カ ス ト ・ 鋳
物 が 9 万 ト ン 、 ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 の 添 加 が 6 万 ト ン 、 金 属 還 元 (Ti、 Ca 等 )が 4 万 ト ン 、
鉄 鋼 脱 硫 が 3 万 ト ン 等 と な っ て い る 。 ダ イ カ ス ト ・ 鋳 物 分 野 の 需 要 は 日 本 の 10 倍 近 く も
あり、その伸びも著しい。
900,000
300,000
鋳造+ダイカスト
ダクタイル鋳鉄
RE還元
計
800,000
中国
ロ シア
カナダ
その他
イスラエル
米国
ノル ウェー
計
700,000
200,000
Mg生 産 量 (トン
Mg消費量(トン)
250,000
Al合金添加
鉄鋼脱硫
金属還元
その他
150,000
100,000
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
50,000
100,000
0
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
0
1994
2008
年
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
年
図 Ⅲ.2.3-4 世 界 のマグネシウム生 産 量 推 移
図 Ⅲ.2.3-5 中 国 のマグネシウム需 要 推 移
日 本 の マ グ ネ シ ウ ム 地 金 の 需 要 推 移 を 図 Ⅲ .2.3-6 に 示 す 。 2000 年 頃 か ら 延 び 始 め 、
2007 年 の 総 需 要 量 は 46,000 ト ン と な っ て い る 。 そ の う ち ア ル ミ ニ ウ ム 合 金 へ の 添 加 や 、
鉄 鋼 脱 硫 等 の 添 加 剤 (材 )関 係 が 32,000 ト ン あ り 、 ダ イ カ ス ト や 鋳 物 等 の 構 造 材 関 係 は
12,000 ト ン と な っ て い る 。
図 Ⅲ .2.3-7 に 構 造 材 関 係 の 地 金 需 要 推 移 を 示 す 。 構 造 材 関 係 で 最 も 多 い ダ イ カ ス ト は 、
1999 年 か ら 2001 年 に か け て 急 増 し 、 そ の 後 も 増 加 し 続 け て 2007 年 に は 10,000 ト ン に
達 し て い る 。 2002 年 、 2003 年 と チ ク ソ (金 属 射 出 成 形 )用 が 増 加 し た が 、 2007 年 で は
1,000 ト ン に 減 少 し 、 そ の 他 用 (鋳 造 ビ レ ッ ト 、 押 出 し 材 、 圧 延 板 用 等 )と ほ ほ 同 量 と な っ
ている。
Ⅲ-56
構造関係小計
50,000
粉末・防食・その他
40,000
輸出
35,000
合計
12,000
鋳物
その他
10,000
30,000
Mg需要量(トン)
Mg需要量(トン)
ダイカスト
チクソ
構造関係計
14,000
添加剤小計
45,000
25,000
20,000
15,000
8,000
6,000
4,000
10,000
2,000
5,000
0
1995
1997
1999
2001
2003
2005
0
1994
2007
1996
1998
2000
年
2002
2004
2006
2008
年
図 Ⅲ .2.3-7 構 造 材 関 係 の マ グ ネ シ ウ ム
需要推移
図 Ⅲ.2.3-6 日 本 のマグネシウム需 要 推 移
マグネシウムのリサイクルは、主に構造材関係が対象となるが、カスケードリサイク
ル と し て は 添 加 材 も あ る の で 、 添 加 材 と し て の マ グ ネ シ ウ ム 使 用 量 を 図 Ⅲ .2.3-8 に 示 す 。
ア ル ミ ニ ウ ム へ の 添 加 は こ こ 10 年 来 毎 年 20,000 ト ン 程 度 使 用 さ れ て い る 。 ま た 、 2004
年 頃 か ら は 鉄 鋼 脱 硫 用 に マ グ ネ シ ウ ム が 使 用 さ れ 始 め 、 現 在 は 年 間 10,000 ト ン 近 く が 消
費されている。
日 本 の マ グ ネ シ ウ ム 供 給 元 は 中 国 で あ り 、 2006 年 で は 地 金 の 93.3% 、 合 金 地 金 の
92.9% 、 チ ッ プ ・ 粉 末 で は 99.7% が 中 国 か ら の 輸 入 と な っ て い る 。 図 Ⅲ .2.3-9 に 純 マ グ
ネシウム地金およびマグネシウム合金地金の通関価格の推移を示す。最近の金属素材高騰
の 例 に も れ ず 、 2005 年 頃 200 円 /kg で あ っ た 純 マ グ ネ シ ウ ム の 価 格 は 2008 年 1 月 で は
450 円 /kg に 上 昇 し て い る 。
35,000
30,000
アルミ合金添加
鉄鋼脱硫
ノジュラー鋳鉄
Zr・Ti精錬
添加関係小計
単価(円/kg)
Mg需給量(トン)
マグネ塊1(純度99.8以上)
450
マグネ塊3(合金)
400
25,000
20,000
15,000
鉄鋼脱硫
10,000
2008年1月
純Mg 443円/kg
Mg合金 407円/kg
350
300
250
200
5,000
0
1994
500
150
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
100
2003
年
2004
2005
2006
2007
2008
年
図 Ⅲ.2.3-8 添 加 剤 関 係 のマグネシウム需 要 推 移
図 Ⅲ.2.3-9 マグネシウムの通 関 価 格 推 移
2) 工 場 内 リ サ イ ク ル の 現 状 と 課 題
マグネシウム部品にはダイカスト、チクソキャスト、砂型鋳造等のいわゆる「鋳造品」
と 、 鋳 造 ビ レ ッ ト か ら の 「 押 出 品 」、 鋳 造 ビ レ ッ ト ・ 押 出 材 ・ 板 材 か ら の 「 鍛 造 品 」、 板 材
からの「プレス品」とがある。これらのうち、押出品、鍛造品およびプレス品は今後の市
場拡大が期待されるものの、現時点では少量であり、当面のリサイクルは鋳造品が対象と
なる。将来、押出品・鍛造品・プレス品が増えた場合においても、これらの製品は鋳造や
切削工程を経て製作されるので、ダイカスト品・チクソ品で代表されると考え、以下ダイ
Ⅲ-57
カ ス ト 品 ・ チ ク ソ 品 の リ サ イ ク ル に つ い て 述 べ る (砂 型 鋳 造 、 精 密 鋳 造 等 で 航 空 機 部 品 等
が 年 間 100 ト ン 程 度 製 造 さ れ て い る が 、 少 量 な の で 除 外 し た )。
ダイカストによるノートパソコンおよび携帯電話の筐体製造プロセスとマテリアルバラ
ン ス を 図 Ⅲ .2.3-10 お よ び 図 Ⅲ .2.3-11 に 示 す 。 こ れ ら の 図 は マ グ ネ シ ウ ム リ サ イ ク ル 調 査
委員会報告書
2)を 基 に 作 成 し た も の で あ る 。
合金地金
109
溶解・鋳造
278
製品部
139
トリミング
278
鋳放し
比50%
再生地金
169
良 品
111
鋳造歩
留80%
鋳造不良
28
方案部
139
加 工
111
再生歩
留95%
製 品
100
加工歩
留90%
再 生
169
リターンスクラップ
178
切削屑等
11
図 Ⅲ.2.3-10 ノートパソコン筐 体 製 造 プロセスとマテリアルバランス
合金地金
132
溶解・鋳造
741
トリミング
741
製品部
148
鋳放し
比20%
再生地金
609
方案部
593
良 品
111
鋳造歩
留75%
鋳造不良
37
加 工
111
再生歩
留95%
再 生
609
製 品
100
加工歩
留90%
リターンスクラップ
641
切削屑等
11
図 Ⅲ.2.3-11 携 帯 電 話 筐 体 製 造 プロセスとマテリアルバランス
ノ ー ト パ ソ コ ン お よ び 携 帯 電 話 と も 、 合 金 地 金 (新 )と 再 生 地 金 を 炉 に 装 入 し 、 溶 解 ・ 鋳
造後に湯道等の鋳造方案部をトリミングし、製品検査により不良品を選別し、良品は機械
加工した後、必要に応じて化成処理・陽極酸化・塗装等の表面処理をした後製品として出
荷される。一方、方案部、鋳造不良品並びに切削屑等はリターンスクラップとして集めら
れ、再溶解・成分調整後インゴットに鋳造され、再生地金として再び溶解・鋳造工程に戻
される。リターンスクラップの再生は専門の再生業者が行っているが、一部のダイカスト
工場では、自社内で処理している。
図 Ⅲ .2.3-7 に 示 し た ダ イ カ ス ト 用 並 び に チ ク ソ (射 出 成 形 )用 マ グ ネ シ ウ ム 地 金 の 需 要 量
と 図 Ⅲ .2.3-10、 図 Ⅲ .2.3-11 の マ テ リ ア ル バ ラ ン ス を 用 い る こ と で 製 造 工 程 に お け る ス ク
ラップの発生量、リサイクル量の推定が可能となる。
この場合、ノートパソコンと携帯電話製造の場合ではマテリアルバランスが大きく異
Ⅲ-58
なっており、製品の製造割合が必要となる。ノートパソコンと携帯電話でのマテリアルバ
ランスの違いは、製造品の大きさの違いによると考え、ダイカスト用新地金から製造され
る 全 製 品 (自 動 車 用 部 品 も 含 め )と チ ク ソ 成 形 用 地 金 の 30%(ノ ー ト パ ソ コ ン )は 図 Ⅲ .2.310( ノ ー ト パ ソ コ ン ) の マ テ リ ア ル バ ラ ン ス と 同 じ と し 、 チ ク ソ 成 形 用 地 金 の 70% は 図
Ⅲ .2.3-11(携 帯 電 話 )の マ テ リ ア ル バ ラ ン ス に 従 う と し た 。
マグネシウムの製品別需要量の統計は無いが、前述の資料
2)で は
2001 年 の ダ イ カ ス ト
製 品 の 80% 前 後 が 自 動 車 用 と 推 定 さ れ る こ と か ら 、 2006 年 で は ダ イ カ ス ト 用 新 地 金 の
85%が 自 動 車 、 5%が ノ ー ト パ ソ コ ン 、 そ の 他 用 10% と し 、 チ ク ソ 用 新 地 金 は 携 帯 電 話
40%、 ノ ー ト パ ソ コ ン 30%、 そ の 他 30% と し て 2006 年 の マ グ ネ シ ウ ム 新 地 金 の 製 品 別
推定使用量および製造各工程での素材重量、スクラップ発生量を計算した。その結果を表
Ⅲ .2.3-1 お よ び 表 Ⅲ .2.3-2 に 示 す 。 ダ イ カ ス ト 用 新 地 金 9,930 ト ン 、 チ ク ソ 用 新 地 金
1,270 ト ン を 使 用 し 、 湯 道 等 の 鋳 造 屑 20,000 ト ン と 切 削 紛 等 の 加 工 屑 1,100 ト ン が 発 生
し 、 こ れ ら の リ タ ー ン 屑 21,000 ト ン を 処 理 し て 20,000 ト ン の 再 生 地 金 が 生 産 さ れ た と
推定される。
表 Ⅲ.2.3-1 2006 年 の製 品 別 のマグネシウム地 金 使 用 量
分 野
ダイカス ト
自動車
携帯電話
ノートパソコン
その他
チクソ
自動車
携帯電話
ノートパソコン
その他
ダイカス ト+チクソ
鋳 物
その他( 構造用)
Al合金添加
需要割合
(%)
1 00
85
0
5
10
1 00
0
40
30
30
−
1 00
1 00
1 00
*印 : 中 ∼ 大 型 部 品 、 ○ : 小 物 部 品
重 量
( トン)
9,93 0
8,44 0
0
50 0
99 0
1,26 0
0
50 0
38 0
38 0
1 1,19 0
10 0
1,10 0
1 9,00 0
* *印計( トン)
*
*
1 0,3 1 0
* ○印計( トン)
○
8 80
*
○
1 1,1 9 0
表 Ⅲ.2.3-2 2006 年 の製 造 工 程 別 の素 材 重 量 ならびにスクラップ発 生 量
工程
成形法
ダイカス ト
新 地 金
鋳造屑(湯道等)
加工屑( 切削片等)
リターン屑
再生地金
チクソ
重量(t)
9,93 0
1,26 0
計
1 1,19 0
ダイカス ト
1 5,21 0
チクソ
4,81 0
計
2 0,02 0
ダイカス ト
1,00 0
チクソ
11 0
計
1,11 0
ダイカス ト
1 6,22 0
チクソ
4,92 0
計
2 1,14 0
ダイカス ト
1 5,40 0
チクソ
4,67 0
計
Ⅲ-59
2 0,07 0
図 Ⅲ .2.3-12 に 工 場 内 ス ク ラ ッ プ 発 生 量 の 推 移 を 示 す 。 図 Ⅲ .2.3-7 で は 2000 年 頃 か ら ダ
イカスト用地金が急増していたが、これは自動車用への使用割合が増加したためと解釈し、
2000 年 以 前 は ダ イ カ ス ト 用 地 金 の う ち の 自 動 車 用 に 使 用 さ れ る 割 合 を 80%、 ノ ー ト パ ソ
コ ン 用 5% 、 そ の 他 15% と し 、 2001 年 以 降 は 表 Ⅲ .2.3-1 と 同 じ と し た 。 ま た 、 図 Ⅲ .2.37 に 於 い て チ ク ソ 用 地 金 の 使 用 量 が 2002 年 、 2003 年 と 急 増 し 、 そ の 後 1,300 ト ン /年 に
落ちたが、この 2 年の増加分はすべて携帯電話の製造に使用されたと見なした。
工 場 内 ス ク ラ ッ プ は 2003 年 に は 25,000 程 度 発 生 し 、 そ の 後 は 20,000 ト ン 前 後 で 推 移
し て い る と み ら れ る 。 な お 、 図 Ⅲ .2.3-12 は 2010 年 、 2015 年 及 び 2020 年 の 発 生 量 も 予
測 し て い る が 、 こ れ ら は 、 構 造 用 マ グ ネ シ ウ ム 地 金 の 使 用 量 が 1,000 ト ン /年 の 割 合 で 伸
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
切削紛
2015
2007
2005
2003
2001
1999
1997
湯道等
1995
スクラップ発生量(トン)
びると仮定して算出したものである。この根拠については次節で述べる。
年
図 Ⅲ.2.3-12 工 場 内 スクラップ発 生 量 の推 移
工 場 内 ス ク ラ ッ プ は 年 間 20,000 ト ン 前 後 発 生 し て い る と 推 定 さ れ る が 、 処 理 の 実 態 を
調査するためマグネシウム再生業者を訪問した。主要再生業者 7 社のうち 5 社を訪問し
た 。 各 社 と も フ ル 稼 働 と の こ と で 、 訪 問 企 業 の 合 計 処 理 量 は 年 間 9,900 ト ン に な る 。 マ
グ ネ シ ウ ム 再 生 業 者 の 処 理 能 力 は 年 間 21,000 ト ン と さ れ て お り
3) 、 未 訪 問 企 業 お よ び 自
社内でリサイクルしている企業もあることを考慮すると、工場内スクラップのほぼ全量が
再生されていると見られる。
現 在 使 用 さ れ て い る マ グ ネ シ ウ ム 合 金 は 、 大 部 分 が AZ91 お よ び AM60 で あ る 。 ス ク
ラップは 1 トン程度の鉄るつぼ炉を用いて溶解し、フラックスとガスバブリング処理で
の精錬を行っている。溶解は大気中であり、ある程度の酸化ロスは避けられない。将来は
Ca 含 有 合 金 や 希 土 類 元 素 含 有 合 金 が 増 加 す る と 見 ら れ る が 、 何 れ の 業 者 も こ れ ら の 元 素
を 含 む 合 金 の 再 生 処 理 を 経 験 し て い る 。 Ca 含 有 合 金 は 、 Ca の 酸 化 ロ ス は 有 る も の の 、 再
生が可能である。しかし、希土類元素含有合金ではこれら元素の酸化による溶湯汚染等の
問題があるようだ。中国では、この問題のため、希土類元素含有合金の固体リサイクルの
研究を行っている。
再生業者に搬入される工場内スクラップのうち、切削紛についてはいくつかの課題が
残 っ て い る 。 再 生 業 者 に 搬 入 さ れ る 切 削 紛 の 例 を 図 Ⅲ .2.3-13、 図 Ⅲ .2.3-14 に 示 す 。 切 削
Ⅲ-60
油 が 付 着 し た 状 態 や 廃 油 に 浸 か っ た 状 態 で 搬 入 さ れ て お り 、 図 Ⅲ .2.3-14 の 様 に 廃 グ リ ー
スと混じったものもある。廃油等が付着したスクラップは溶解炉に装入すると発煙、発炎、
排ガス等の環境問題が生じるため、付着油を簡便に分離除去する技術の開発が待ち望まれ
ている。
図 Ⅲ.2.3-13 再 生 工 場 に搬 入 されたマグネシウム
切 削 粉 の性 状 1(廃 油 漬 け)
図 Ⅲ.2.3-14 再 生 工 場 に搬 入 されたマグネシウム
切 削 粉 の性 状 2(グリース混 入 )
図 Ⅲ .2.3-15 に 工 場 内 ス ク ラ ッ プ と し て 搬 入 さ れ た
塗装品の例を示す。塗装品を溶解炉に装入すると付着
油と同じく環境問題が生じるので、除去処理が必要と
なる。電子機器筐体の塗料除去は一部で実施されてい
たが、コスト高などの理由で現在は行われていないよ
うであり、簡便で低コストの塗料除去技術の開発が必
要である。この技術は、後述する市中スクラップのリ
サイクルにおいても必須の技術である。
マグネシウム成形工場では、これまで述べた鋳造法
案屑や切削紛以外に、溶解時にドロスが発生するが、
再生工場ではこれらを処理して、金属マグネシウムを
図 Ⅲ .2.3-15 再 生 工 場 に 搬 入 さ れ た
塗 装 品 の性 状
(ノートパソコン;未 破 砕 で搬 入 される)
回収している。
3) 市 中 ス ク ラ ッ プ の 現 状 と 課 題
マグネシウム再生業者やマグネシウム関係者にヒアリングした結果、自動車、ノートパ
ソコンおよび携帯電話に使われたマグネシウム部品の再生は行われていないことが明らか
になった。しかし、市中スクラップは発生しているはずなのでその量がどの程度なのかを
推定してみた。
市中スクラップ量推定のためには、生産時のマグネシウム使用量、生産品の国内出荷量
と輸入量、製品寿命、廃棄品の回収量、回収品からのマグネシウム回収量等々のデータが
必要となる。これらについて、乗用車、ノートパソコン、携帯電話について調査した。
Ⅲ-61
(a)自 動 車 の 生 産 ・ 需 要 ・ 廃 車 ・ 耐 用 年 数
自 動 車 に 使 用 さ れ る マ グ ネ シ ウ ム 部 品 は 、 乗 用 車 (小 型 + 普 通 )の み に 使 用 さ れ て い る と
し、その生産・出荷・輸出・登録・保有・廃車台数につて調査した。
図 Ⅲ .2.3-16 に 示 す 通 り 、 乗 用 車 の 生 産 台 数 は 700∼ 800 万 台 を 推 移 し て き た が 2006 年 、
2007 年 は 800 万 台 を 突 破 し て い る
350 万 台 の 範 囲 を 推 移 し て お り
4)。 一 方 、 図 Ⅲ .2.3-17
4)、 2006
に 示 し た 国 内 出 荷 台 数 は 300∼
年 、 2007 年 の 生 産 台 数 の 増 加 分 は 輸 出 さ れ て い
ることがわかる。
小型四輪
普通車
普通+小型
小型車
計
4,000,000
3,500,000
3,000,000
需要台数
生産台数(千台)
普通
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
1,980
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
1,985
1,990
1,995
年
2,000
2,005
0
1994
2,010
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
年
図 Ⅲ.2.3‐16 乗 用 車 の生 産 台 数 の推 移
図 Ⅲ.2.3‐17 乗 用 車 の需 要 台 数 の推 移
乗 用 車 の 保 有 台 数 な ら び に 廃 車 台 数 の 推 移 を 図 Ⅲ .2.3-18 に 示 す
5) 。 保 有 台 数 は 約
4,300 万 台 で 飽 和 し た と 見 ら れ 、 図 Ⅲ .2.3-19 に 示 す よ う に 廃 車 台 数 (=前 年 末 の 保 有 台 数
− 今 年 末 の 保 有 台 数 + 国 内 出 荷 台 数 + 輸 入 台 数 )も こ こ 数 年 は 300 万 台 で 推 移 し て い る 。
廃 車 の 平 均 使 用 年 数 は 、 従 来 10 年 と 言 わ れ て い た が 、 最 近 は 長 く な る 傾 向 に あ り 、 2007
年 に 廃 車 さ れ た 平 均 使 用 年 数 は 12.9 年 と な っ て い る
43,000
42,800
42,600
42,400
42,200
42,000
41,800
41,600
41,400
41,200
41,000
1996
廃車台数
千
4000
3500
廃車台数
保有台数
千
6) 。
3000
2500
2000
1998
2000
2002
年
2004
2006
2008
1500
1996
1998
2000
2002
年
2004
2006
2008
図 Ⅲ.2.3-19 乗 用 車 の廃 車 台 数 の推 移
図 Ⅲ.2.3-18 乗 用 車 の保 有 台 数 の推 移
(b) ノ ー ト パ ソ コ ン の 生 産 ・ 需 要 ・ 耐 用 年 数
ノ ー ト パ ソ コ ン の 国 内 出 荷 台 数 、 輸 出 台 数 の 推 移 を 図 Ⅲ .2.3-20 に 示 す
7)。 2000
年以降
の 生 産 台 数 は 600∼ 800 万 台 の 間 を 推 移 し て お り 、 そ の う ち 約 100 万 台 が 輸 出 さ れ て い る 。
図 Ⅲ .2.3-21 に 示 す よ う に 、 一 方 国 内 出 荷 と 輸 入 と の 合 計 は 約 1,000 万 台 を 前 後 し て お り 、
2007 年 で は 400 万 台 (40%)が 輸 入 品 と な っ て い る 。 ま た 、 ノ ー ト パ ソ コ ン の 耐 用 年 数 は
5∼ 10 年 と さ れ て い る
8)。
Ⅲ-62
14,000
総数
国内出荷
輸入
12,000
10,000
台数(千)
台数(千)
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
1996
国内
輸出
8,000
6,000
4,000
2,000
1998
2000
2002
2004
2006
2008
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
年
年
図 Ⅲ.2.3-20 ノートパソコンの生 産 ・国 内 出 荷 ・
輸 出 台 数 の推 移
図 Ⅲ.2.3-21 ノートパソコンの需 要 台 数 の推 移
(c) 携 帯 電 話 の 生 産 ・ 需 要 ・ 耐 用 年 数
携 帯 電 話 の 生 産 、 輸 出 、 輸 入 の 推 移 を 図 Ⅲ .2.3-22 に 示 す
7) 。 生 産 台 数 は 近 年 減 少 傾 向
に あ り 、 輸 入 台 数 は 増 加 傾 向 に あ る 。 2007 年 で は 生 産 4,000 万 台 強 、 輸 入 1,000 万 台 弱
と な っ て お り 、 需 要 台 数 (=生 産 台 数 +輸 入 台 数 − 輸 出 台 数 )は 5,000 万 台 と な っ て い る 。 ま
た、携帯電話の耐用年数は 3 年とされている
8)。
70,000
60,000
台数(千台)
50,000
40,000
(a) 生産
(c) 輸出
30,000
(b) 輸入
a+b-c
20,000
10,000
0
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
年
図 Ⅲ.2.3-22 携 帯 電 話 の生 産 ・輸 出 ・輸 入 台 数 の推 移
(d) 一 台 当 り の マ グ ネ シ ウ ム 使 用 量
これらの調査結果を基に、自動車、ノートパソコン並びに携帯電話の一台あたりの使用
量 を 推 定 し た 。 2010 年 以 降 の 値 は 表 Ⅲ .2.3-3 に 示 す 条 件 で 算 出 し た 。
表 Ⅲ.2.3-3 2010 年 以 降 の乗 用 車 ・ノートパソコン・携 帯 電 話 の生 産 ・
供 給 ・廃 棄 ・回 収 および耐 用 年 数
製品名
台数(万台/年)
耐用年数
生産
供給
廃棄
回収
自動車(小型+普通乗用車)
750
300
300
200
13
ノートPC
600
1,000
−
25
5∼10 (7)
4,000
5,000
−
700
3
−
−
−
−
5∼10
携帯電話
家電/電動工具/その他
Ⅲ-63
2000 年 時 点 で 予 測 し た 北 米 、 欧 州 、 ア ジ ア の 自 動 車 一 台 当 り の マ グ ネ シ ウ ム 使 用 量 を
図 Ⅲ .2.3-23 に 示 す
3)。 2007
年 で は 自 動 車 一 台 当 り 北 米 、 欧 州 が 5kg で あ る の に 対 し 、 ア
ジ ア で は 2kg 未 満 と な っ て い る 。 図 Ⅲ .2.3-23 中 の 日 本 の 値 は 、 ダ イ カ ス ト 用 新 地 金 の 使
用 実 績 か ら 推 定 し た も の で あ る 。 2008 年 以 降 は マ グ ネ シ ウ ム 新 地 金 の 需 要 が 2010 年 ま
で は 年 500 ト ン 、 そ れ 以 降 は 1,000 ト ン 増 加 す る と し て 算 出 し た 。 日 本 は 1900 年 代 の
0.3kg/台 か ら 2001 年 に は 0.9kg/台 に 急 増 し た も の の そ の 後 の 使 用 量 は 1kg/台 前 後 で 停 滞
している。今後は、自動車用マグネシウム部材として鍛造品の使用も期待されており、ま
だまだ増加する余地はあると見られる。また、ロボット分野に使用されるマグネシウム部
品 は 、 2015 頃 か ら 年 間 1,000 ト ン ず つ 増 加 す る と の 試 算 も あ り 、 新 地 金 の 需 要 増 1,000
ト ン /年 の 見 積 り は 過 大 な も の で は 無 い と 考 え ら れ る 。
図 Ⅲ .2.3-24 に 自 動 車 、 ノ ー ト パ ソ コ ン お よ び 携 帯 電 話 1 台 当 り の マ グ ネ シ ウ ム 使 用 量
の 推 移 を 示 す 。 2007 年 は 自 動 車 が 0.88kg、 ノ ー ト パ ソ コ ン 0.12kg、 携 帯 電 話 0.0069kg
となっている。なお、ここではノートパソコンならびに携帯電話の使用量はそれぞれ
0.15kg 、 0.010kg で 飽 和 す る も の と し た 。 図 Ⅲ .2.3-23 で 2003 年 の 携 帯 電 話 の 値 が
0.027kg/台 ま で 急 増 し て い る が 、 こ れ は チ ク ソ 用 地 金 需 要 の 急 増 に 対 応 し た も の で あ る 。
しかしながら、携帯電話の生産量はこれに見合ったほどは増加しておらず、この時期につ
いては前記した計算の前提条件が崩れているものと見られる。
7
日本
欧州
北米
アジア
Mg使用量(kg/台)
6
5
4
3
2
1
0
1990
1995
2000
2005
年
2010
2015
2020
2025
図 Ⅲ.2.3-23 世 界 各 地 域 および日 本 における乗 用 車 のマグネシウム使 用 量
使用量(kg/台)
10.00
自動車
PC
携帯
1.00
0.10
0.01
0.00
1990
1995
2000
2005
2010
2015
2020
2025
年
図 Ⅲ.2.3-24 乗 用 車 ・ノートパソコン・携 帯 電 話 の1台 当 りのマグネシウム使 用 量 の推 移
Ⅲ-64
(e) 市 中 ス ク ラ ッ プ の 回 収 率
図 Ⅲ .2.3-25 に 廃 車 処 理 の フ ロ ー と マ テ リ ア ル バ ラ ン ス を 示 す 。 こ の 図 は マ グ ネ シ ウ ム
の リ サ イ ク ル に 関 す る 調 査 報 告 書 (2001 年 ) 2)と ア ル ミ ニ ウ ム の リ サ イ ク ル に 関 す る 調 査 報
告 書 (2002 年 ) 9)を 基 に 作 成 し た も の で あ る 。 廃 車 の う ち 30% が 輸 出 さ れ て お り 、 ア ル ミ
ニ ウ ム 等 の 金 属 が 回 収 さ れ て い る の は 廃 車 重 量 の 65% 程 度 と 見 ら れ る 。
ノートパソコンの回収台数の推移
10)を 図 Ⅲ .2.3-26、 携 帯 電 話 の 回 収 台 数 11)を 図 Ⅲ .2.3-
27 に 示 す 。 パ ソ コ ン は 指 定 再 資 源 化 製 品 で あ り 、 販 売 台 数 に 対 す る 回 収 台 数 の 割 合 は
年 々 増 加 し て は い る も の の 2006 年 で も 2% 強 で あ り 、 か な り 低 い 値 と な っ て い る 。 携 帯
電 話 の 販 売 数 に 対 す る 回 収 台 数 は こ こ 数 年 減 少 し て お り 、 2006 年 は 10%強 と 低 調 で あ る 。
廃車
解体業者
シュレッダー
輸出
1.00
0.85
0.20
0.05
Al,Mg含有金属
未回収
0.15
0.05
Al鋳物
エンジン解体
Al再生
・
0.40
0.50
ダイカスト
0.65
直接
0.15
解体時取外し
0.15
輸出
0.10
中古車輸出
0.15
図 Ⅲ.2.3-25 廃 車 処 理 フロートマテリアルバランス
300,000
回収台数
企業等
家庭
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2001
2002
2.5
2003
2004
2005
2006
2005
2006
回収/販売(%)
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
2001
2002
図 Ⅲ.2.3-26
2003
2004
ノートパソコンの回 収 台 数
Ⅲ-65
台数(百万台)、回収率(%)
80.00
70.00
回収台数
(百万台)
60.00
販売台数
(百万台)
回収/販売
(%)
50.00
40.00
30.00
20.00
10.00
0.00
1999
2000
2001
2002
2003
年
2004
2005
2006
2007
図 Ⅲ.2.3-27 携 帯 電 話 の回 収 台 数
(f) 市 中 ス ク ラ ッ プ の 回 収 量 ・ 発 生 量
こ れ ら の 調 査 結 果 を 基 に 、 表 Ⅲ .2.3-3 に 示 し た 条 件 で マ グ ネ シ ウ ム 市 中 ス ク ラ ッ プ 発 生
量 を 推 定 し た 。 そ の 結 果 を 表 Ⅲ .2.3-4 に 示 す 。
表 Ⅲ.2.3-4 2007 年 の市 場 スクラップ回 収 量
品名
製造年
kg/台
回収量
(トン)
使用量
(トン)
回収/使用
(%)
自動車
1993
0.090
180
670
27
ノートPC
1999
0.0240
10
130
8
携帯電話
2003
0.0266
180
1,580
11
370
2,380
16
計
2007 年 の 市 中 ス ク ラ ッ プ の 回 収 は 自 動 車 、 ノ ー ト パ ソ コ ン 、 携 帯 電 話 で そ れ ぞ れ 180、
10、 180 ト ン 程 度 と 予 想 さ れ る 。 こ の う ち 携 帯 電 話 の 180 ト ン は 前 述 の よ う な 問 題 が あ
り、実際はこれよりも少ないと思われる。これらのマグネシウムスクラップは、非鉄金属
には分別されてはいるが、マグネシウム再生業者には入荷していなので、回収したアルミ
ニウムスクラップに混入したまま、ダイカスト用アルミニウム合金再生に回されているも
のと思われる。
図 Ⅲ .2.3-28 に マ グ ネ シ ウ ム 市 中 ス ク ラ ッ プ の 回 収 量 の 推 移 を 示 す 。 現 状 の 回 収 率 が 続
く と し て お り 、 2007 年 の 回 収 量 300 ト ン が 、 2015 年 頃 に は 1,800 ト ン に 増 加 し 、 2020
年 頃 ま で は 毎 年 2,000 ト ン 程 度 の 回 収 が 続 く も の と 予 想 さ れ る 。 図 Ⅲ .2.3-29 は 発 生 量 (全
量 回 収 し た 場 合 )で あ り 、 2010 年 で 2,000 ト ン 強 、 2015 年 頃 に は 年 4,000∼ 5,000 ト ン の
発生量が見込まれる。
Ⅲ-66
6,000
2,000
自動車(100%)
PC(100%)
携帯(100%)
計(100%)
5,000
自動車(現65%)
PC(現2.5%)
携帯(現14%)
計(現)
Mgスクラップ発生量(トン)
Mgスクラップ回収量(トン)
2,500
1,500
1,000
500
4,000
3,000
2,000
1,000
0
2005
2010
2015
年
2020
2025
図 Ⅲ.2.3-28 市 場 スクラップ回 収 量 の予 測
(現 状 の回 収 率 )
0
2005
2010
2015
2020
2025
年
図 Ⅲ.2.3-29 市 場 スクラップ発 生 量 の予 測
自動車一台当たりに使用されたアルミニウムダイカスト品と鍛工品、マグネシウムダイ
カ ス ト 品 の 重 量 を 図 Ⅲ .2.3-30 に 示 す
12)。 マ グ ネ シ ウ ム の 使 用 量 が 乗 用 車
1 台 当 た り 1kg
な の に 対 し 、 ア ル ミ ニ ウ ム は 鍛 工 品 が 4kg、 ダ イ カ ス ト 品 で は 110kg 使 用 さ れ て い る 。
Al鍛工品
Alダイカスト
Mgダイカス
自動車使用量(kg /台)
1,000.0
100.0
10.0
1.0
0.1
1980
1985
1990
1995
年
2000
2005
2010
図 Ⅲ.2.2-30 自 動 車 一 台 当 りのアルミニウムおよびマグネシウム使 用 量 の推 移
マグネシウムとアルミニウムでは使用量が圧倒的に違うので、自動車のマグネシウムリ
サイクルシステムはアルニウムリサイクルの一環として処理され、最終段階またはそれに
近いところでアルミニウムと分離・回収されることになるだろう。アルミニウムとの分
離 ・ 回 収 を し な い と 、 平 均 的 に は 鋳 造 用 ア ル ミ 再 生 材 地 金 (ADC12)の マ グ ネ シ ウ ム 含 有 量
が 規 格 値 を 超 え (ADC12 は 0.3%以 下 )、 ア ル ミ ニ ウ ム の リ サ イ ク ル に も 影 響 を 及 ぼ す こ と
に な る 。 一 方 、 ア ル ミ ニ ウ ム 展 伸 材 (3000 系 、 5000 系 、 6000 系 )へ の 添 加 は 不 純 物 の 問
題 (ADC12 と AD91 の 混 合 物 が 添 加 さ れ る )が 生 じ る 恐 れ が あ る た め 、 使 用 が 限 定 さ れ る
であろう。将来、マグネシウムスクラップの回収量が増加した場合には、アルミニウムと
マグネシウムの分離・回収は必至の技術となる。アルミニウムとマグネシウムの分離・回
収には、新たな工程を追加すること無く実施することが望ましいが、新たな工程を組み入
れるにしても、その処理コストは安価なもので無ければならない。
Ⅲ-67
ノートパソコンや携帯電話は寿命年数が過ぎた後も家庭内や企業内に退蔵されており、
一部は輸出されているとものと見られる。これらについては、先ず、回収台数を増やす施
策が必要であるが、技術的には「安価な塗料除去技術の開発」が課題として残されている。
現在、電子機器基板からの希少金属回収が関心を呼んでいるが、これと合わせて電子機器
筐体からのマグネシウム回収も同時に行うシステムを構築すべきであろう。
4) ま と め
工 場 内 ス ク ラ ッ プ は ほ ぼ 100km 圏 内 の も の が 再 生 業 者 に 集 め ら れ 、 鋳 造 用 二 次 合 金 と
し て 再 生 さ れ て い る 。 ス ク ラ ッ プ 処 理 量 は 年 20,000 ト ン 前 後 で 、 1 ト ン 程 度 の る つ ぼ 炉
を用い方式が主流であるが、将来処理量が 2 倍程度に増加しても、成形工場内での自社
処理ならびに作業効率の向上で対処可能と推定される。処理コストも現状と同程度で可能
と思われる。
工場内スクラップで問題となっているのは切削屑に付着している油の処理と塗装品の塗
料である。これらは炉に装入すると環境問題が発生するため、簡便で安価な処理方法の開
発が必要である。これらの技術は市中スクラップの再生に際しても必要な技術であり、特
に後者の塗料除去技術は市中スクラップのリサイクルでは必須となる技術である。
市中スクラップのうち、ノートパソコンおよび携帯電話については、販売台数に対する
回 収 台 数 の 割 合 が そ れ ぞ れ 2%と 10%と 低 レ ベ ル に あ り 、 回 収 台 数 を 増 す 施 策 が 必 要 と な
る。
現 時 点 で の 市 中 ス ク ラ ッ プ か ら の マ グ ネ シ ウ ム 回 収 量 は 200∼ 400 ト ン 程 度 と 推 定 さ れ
る。これらはアルミニウムのスクラップに混在した状態で、アルミニウム二次合金に再生
さ れ て い る と 見 ら れ る 。 マ グ ネ シ ウ ム の 市 中 ス ク ラ ッ プ は 、 2015 年 頃 に は 4,000∼ 5,000
トン発生するものと予想され、この時期にはアルミニウムとマグネシウムとの分離・回収
技術が必要となる。
マグネシウムの市中スクラップリサイクルシステムは、先行しているアルミニウムリサ
イクシステムと類似のものとなるが、アルミニウムとマグネシウムの分離・回収工程の付
加と、破砕時に発生するマグネシウム粉末の安全性に対する対応が必要となる。
Ⅲ-68
③ (1)-2
リサイクル前処理技術(分離、精製)
1) 工 場 内 ス ク ラ ッ プ を 対 象 と す る 不 純 物 除 去 技 術 開 発
マグネシウム製品の製造時に発生する切削粉は合金種などの性状が既知であるにもか
かわらず、切削油などの混入が二次精錬の際の障害となるため、その多くがリサイクルさ
れ ず 産 廃 処 分 さ れ て い る の が 現 状 で あ る 。 そ の 発 生 量 は 2006 年 で は 約 1,100 ト ン と 見 積
ら れ て い る が 、 こ れ は 日 本 の マ グ ネ シ ウ ム 構 造 材 向 け 需 要 の 10% 弱 に 相 当 す る 量 で あ り 、
加工現場における再資源化への期待は大きい。有機溶剤等を使用した液体洗浄が可能では
あるが、処理コストや環境負荷の面で問題がある。そこで新規技術開発として、過熱水蒸
気を用いた熱処理による有機不純物除去技術について検討した。
過熱水蒸気とは、操作圧力下で沸騰気化した水(飽和水蒸気)をさらに加熱して沸点
以上の温度とした完全に気体状態の水を意味する。過熱水蒸気を用いた熱処理の利点とし
ては、過熱水蒸気で満たされた空間は酸素濃度が極めて低く燃焼反応が起こらないため、
マグネシウムを取り扱うときに問題となる発火性の観点で安全性が高い方法であること、
従来の熱風乾燥機と比較して熱効率が良く低ランニングコストであり、装置のコンパクト
化が可能なことが挙げられる。
本 実 験 で は 切 削 粉 を 対 象 と す る こ と か ら 、 図 Ⅲ .2.3-31 に 示 す よ う な バ ッ チ 式 の 不 純 物
除去装置を試作した。本装置は過熱水蒸気と粉末の接触性向上の目的から、有機物除去反
応 器 を ロ ー タ リ ー キ ル ン タ イ プ と し た 。 過 熱 水 蒸 気 は 200∼ 500℃ ま で 加 温 で き る 。 キ ル
ン の 傾 斜 角 度 は 3°で 、 0∼ 10rpm の 範 囲 で の 回 転 が 可 能 で あ る 。 実 験 に 用 い た マ グ ネ シ
ウ ム 切 削 粉 は ZK70、 AZ31、 AZ91 合 金 で あ り 、 実 際 の 切 削 工 程 か ら 排 出 さ れ た マ グ ネ シ
ウム切削粉を用いた。マグネシウム切削粉には数%の切削油が付着しているが、リサイク
ル の 後 工 程 と し て 溶 解 炉 に 投 入 す る こ と か ら 考 え て 残 留 炭 素 量 で 0.1wt% 以 下 の 油 分 量 ま
で脱脂することを目標とした。
図 Ⅲ.2.3-31 過 熱 水 蒸 気 利 用 Mg 切 削 粉 脱 脂 装 置
図 Ⅲ .2.3-32 は 本 装 置 に よ る マ グ ネ シ ウ ム 切 削 粉 の 脱 脂 前 、 脱 脂 後 の 外 観 を 示 す 写 真 で
ある。脱脂前には黒っぽい切削粉が脱脂され本来のマグネシウムの輝きを持った切削粉
になっているのがわかる。このように、過熱水蒸気を用いることよって切削油の脱脂を
容易に行うことができる。
Ⅲ-69
脱脂前
脱脂後
図 Ⅲ .2.3-32
Mg 切 削 粉 サンプルの外 観
図 Ⅲ .2.3-33 に 、 本 装 置 を 用 い て マ グ ネ シ ム 切 削 粉 を 脱 脂 す る 際 の 炉 内 温 度 ( 過 熱 水 蒸
気温度)と残留不純物量との関係を示す。図中の油脂量はヘキサンを用いたソックスレ
イ方式にて表面油分を抽出し測定した結果を、カーボン量(残留炭素量)は表面カーボ
ンを燃焼させ赤外線量を検出する燃焼赤外線吸収方式で測定した結果を示している。本
図 か ら 、 過 熱 水 蒸 気 処 理 に よ っ て 、 処 理 前 に 5wt% 以 上 あ っ た 油 分 が 0.5wt% 以 下 ま で 炉
内温度の上昇に対してほぼ直線的に低下することがわかる。油分中に含まれるカーボン
量で評価した場合についても同様の傾向が確認できる。このように、過熱水蒸気温度は、
高温であるほど脱脂に効果を発揮すると考えられるが、温度が高すぎると装置運転コス
トにも大きく影響するばかりではなく、脱脂したマグネシウムの表面性状にも影響を与
える可能性があるためできるだけ低温での操作が望ましい。また、マグネシウム切削粉
の流動状態の制御面からもできるだけ温和な条件での操作を目指すことが肝要である。
付着物除去状況
有機不純物量 (wt%)
6.0
油脂量 %
カーボン量 %
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0
100
200
炉内温度(℃)
300
400
図 Ⅲ.2.3-33 炉 内 温 度 と残 留 不 純 物 量 との関 係
図 Ⅲ .2.3-34(a)に は 、 炉 内 温 度 300℃ 以 上 で の 脱 脂 実 験 結 果 を 示 す 。 こ こ で は サ ン プ ル
と し て AZ31合 金 ( 粗 粉 ) 、 AZ31合 金 ( 細 粉 ) 、 AZ91合 金 ( 細 粉 ) の 3種 類 の 切 削 粉 を
用 い た 。 図 Ⅲ .2.3.34(b)に こ れ ら 切 削 粉 の 粒 度 分 布 を 示 す 。 切 削 粉 の 大 き さ は 素 材 の 延
性などの物性にも依存するが、切削方法による違いが大きく影響する。今回の切削粉は
そ の 大 き さ が ほ ぼ 1mm以 下 で 、 平 均 粒 径 が 0.7∼ 0.9mmの も の を 用 い た 。 図 Ⅲ .2.3-34
Ⅲ-70
(a)に 示 す よ う に 、 各 サ ン プ ル と も 3回 の 脱 脂 実 験 に お い て 、 残 留 炭 素 量 に つ い て 高 い 再
現 性 を 示 し 、 い ず れ の 場 合 に も 目 標 値 と し た 0.1wt% 以 下 の 値 と な る こ と を 確 認 し た 。 A
Z31に つ い て 見 る と 粒 度 分 布 が 細 か い 切 削 粉 の 方 が 、 残 留 炭 素 量 が 大 き い こ と が わ か る 。
AZ91に つ い て は 、 AZ31よ り も 残 留 炭 素 量 が 大 き い 結 果 と な っ た が 、 こ れ は 切 削 油 の 違
いによるものか、素材物性によるものかは明らかにはできなかった。本装置における切
削粉の脱脂特性と、合金種および切削油種との関係については今後の検討課題である。
ま た 、 脱 脂 後 の サ ン プ ル を EPMA分 析 に よ り 観 察 し た 結 果 、 炭 素 の 減 少 と と も に 酸 素 の
増加が見られ、若干の表面酸化が生じていることが示唆された。今後は、排ガス中の酸
素濃度測定を行い処理物酸化の検証を行うとともに、より低コスト化する観点から蒸気
循環方式に改造を進める。さらに、市中スクラップ処理への展開として、多形状の端材
の脱脂、塗装付着物の除去について検討する。
(a)
(b)
粒度分布
残留付着炭素量
0 .1 2
100
0 .1
80
頻度(wt%)
付 着 炭 素 量 (w
AZ-31(粗粉)
0 .0 8
0 .0 6
0 .0 4
AZ-31(細粉)
AZ-91
60
40
20
0 .0 2
0
0
A Z - 3 1 (粗 粉 )
A Z - 3 1 (細 粉 )
A Z -9 1
0.01
0.1
1
10
粒径(mm)
図 Ⅲ.2.3-34 高 不 純 物 除 去 時 の残 留 付 着 炭 素 量 と粒 度 分 布
2) 市 中 ス ク ラ ッ プ を 対 象 と す る 成 分 分 離 ・ 不 純 物 除 去 技 術 開 発
マグネシム合金の市中スクラップのリサイクルを考える上で最も重要な製品は自動車で
ある。廃車からのマグネシウムスクラップの回収は、解体時おける回収と解体後の破砕・
選別処理における回収が考えられるが、本研究開発では、破砕・選別処理されたスクラッ
プの回収について検討した。
廃車の破砕・選別処理施設では、破砕の後、磁力選別により鉄を、風力選別機やエア
テーブル等により樹脂やガラス等の非金属を除き、渦電流選別機等によりアルミニウム、
銅、真鍮、亜鉛等の非鉄金属をミックスメタルとしてまとめて回収し、さらに金属種別ご
とに分離するのが一般的である。ミックスメタルに含まれる金属の選別は現状では主に人
手によって行われており、人件費の安い海外へ輸出して処理されるケースも少なくない。
現在マグネシウムはアルミニウムスクラップとして回収されているものと考えられる。ス
クラップ量が少ないときはこうしたカスケード型のリサイクルが有効であるが、将来の大
量排出時においてマグネシウムとして再生するには、アルミニウム合金との分離や二次合
金特性の悪化要因となる銅・真鍮材、亜鉛の鋳物、ニッケルめっき鋳物などとの分離が必
要となる。
本検討項目では、マグネシウムを含む非鉄スクラップの選別プロセスの低コスト化と回
収物の高付加価値化を図り、国内リサイクルを促進する観点から、乾式で多種金属の同時
Ⅲ-71
分離が可能、かつ同種金属でも鋳造材と展伸材を分離可能な新規乾式密度選別技術につい
て検討した。また、選別後のマグシウムスクラップに混入する銅などの不純物元素の湿式
法 に よ る 除 去 技 術 に つ い て 検 討 し た 。 図 Ⅲ .2.3-35 に 本 開 発 技 術 を 活 用 し た 廃 車 破 砕 ・ 選
別処理プロセスの概念図を示す。
アルミ、銅、真鍮、Ni系ステンレス等
鉄、Cr系ステンレス
粒径大
廃車ガラ
廃車プレス
破砕
磁選
風力選別等
トロンメル
粒径小
軽量物
重量物
非金属
渦電流選別
非鉄ミックスメタル
飛距離大
色彩選別等
新規乾式密度選別
再溶解
不純物
除去
飛距離小
マグネ
シウム
アルミ
鋳造材
アルミ 銅
展伸材
真鍮 亜鉛等
Ni系
非金属
ステンレス
図 Ⅲ.2.3-35 本 開 発 技 術 を用 いた廃 車 の破 砕 ・選 別 処 理 プロセス
(a)
Mg 材 シ ュ レ ッ ダ ー チ ッ プ の 成 分 分 離
図 Ⅲ .2.3-36 に 試 作 し た 選 別 装 置 の 外 観 を 示 す 。 ベ ル ト コ ン ベ ア 、 重 量 計 、 レ ー ザ 3 次
元 計 測 器 、 ア ク チ ュ エ ー タ 、 制 御 用 PC で 構 成 さ れ 、 重 量 と 3 次 元 形 状 に 関 す る 変 数 を 用
いた独自のアルゴリズムによって破砕片の材質を識別し、アクチュエータによって選別が
行 わ れ る 。 分 離 対 象 と し た の は 、 大 手 の 廃 車 シ ュ レ ッ ダ ー 業 者 か ら 入 手 し た 20-200mm
程度の大きさのマグネシウム、アルミニウム、銅(真鍮含む)のシュレッダーチップ(破
砕 片 ) で あ る 。 無 作 為 に 選 定 し た ア ル ミ ニ ウ ム 296 個 、 マ グ ネ シ ウ ム 246 個 、 銅 ( 真 鍮
含 む ) 108 個 を 測 定 サ ン プ ル と し た 。 マ グ ネ シ ウ ム に つ い て は ハ ン ド ル や シ ー ト に 使 用 さ
れ た と 思 わ れ る ダ イ カ ス ト 材 が 多 く 、 ICP 分 析 か ら Mg-Al-Mn 系 合 金 ( AM60 も し く は
AM50) と AZ91 の 存 在 が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 ア ル ミ ニ ウ ム に つ い て は エ ン ジ ン 周 り の 鋳
造材やトラック荷台等の展伸材が、銅については鋳造材の他に熱交換器の部品と思われる
管 状 の 展 伸 材 が 確 認 さ れ た ( 図 Ⅲ .2.3-37)。
Mg
銅・真鍮
図 Ⅲ.2.3-36 Mg スクラップ選 別 装 置
Al 鋳造材
Al 展伸材
図 Ⅲ .2.3-37 実 験 試 料 の一 例
Ⅲ-72
各 破 砕 片 に つ い て 、 コ ン ベ ア 上 で の 配 向 が 異 な る 状 態 で 測 定 を 各 15 回 ず つ 繰 り 返 し て
得 た 見 掛 け 密 度 の 頻 度 分 布 を 図 Ⅲ .2.3-38 に 示 す 。 図 中 の n は 各 分 布 の 総 度 数 で あ る 。 ア
ル ミ ニ ウ ム に つ い て は 鋳 造 材 ( cast)と 展 伸 材 ( wrought) を 別 に 表 示 し て い る 。 図 か ら
本 装 置 で 測 定 さ れ る 見 掛 け 密 度 は 、 破 砕 片 の 種 類 に よ ら ず 真 密 度 ( Al 2.7、 Mg 1.7 、 Cu
7.9-8.9g/cm) よ り も 小 さ い 値 と な る こ と が わ か る 。 こ れ は 、 本 装 置 で は レ ー ザ 光 が 到 達
しない死角域があると、これを体積として余分にカウントすることによる。展伸材に多い
薄手の部材が屈曲した破砕片では、破砕片の内部やコンベアとの隙間に、こうした空隙が
多く生じるため、鋳造材に多い厚手の破砕片と比較して真密度に対する誤差が大きくなる。
図 Ⅲ .2.3.39 に 、 3 次 元 計 測 で 得 ら れ た 破 砕 片 の 形 状 に 関 す る 2 つ の 変 数 に つ い て 、 0.2
g/cm 3 間 隔 の 見 掛 け 密 度 の 区 間 ご と の 平 均 値 を 示 し た 。 S は 破 砕 片 の 鉛 直 上 方 へ の 投 影 面
積 を 、 V は 体 積 を 表 し て い る 。 図 Ⅲ .2.3-39(a) に お い て 、 マ グ ネ シ ウ ム の 破 砕 片 は 概 ね
0.7-1.8 g/cm 3 見 掛 け 密 度 を 示 す が 、 同 じ よ う な 見 掛 け 密 度 値 の ア ル ミ ニ ウ ム 展 伸 材 や ア
ル ミ ニ ウ ム 鋳 造 材 と 比 較 す る と 面 積 値 が 小 さ い 。 図 Ⅲ .2.3-39(b)で は 、 ア ル ミ ニ ウ ム 鋳 造
材 と 銅 と の 見 掛 け 密 度 が 重 な る 1.8 g/cm 3 以 上 で は 、 V/S 値 に 両 者 の 違 い が 認 め ら れ る 。
このことから、同じような見掛け密度となるマグネシウム、アルミニウム、銅の破砕片の
3 次元形状には統計的に見て何らかの違いがあり、その特徴を抽出することでこれらを識
別できる。
50
Cu
Al cast
Al wrought
Mg
30
n = 2775
n = 1620
n = 1665
20
(a)
35
30
25
20
10
(b)
Cu
Al cast
Al wrought
Mg
Cu
Al cast
Al wrought
Mg
2.5
V/S [cm]
n = 3675
3
40
S [cm2]
Frequency [%]
40
2
1.5
15
1
10
0
0.4 0.8 1.2 1.6
2
2.4 2.8 3.2 3.6
0.4 0.8 1.2 1.6
2
2.4 2.8 3.2 3.6
Mearsured density [g/cm3]
3
0.4 0.8 1.2 1.6
2
2.4 2.8 3.2 3.6
Mearsured density [g/cm3]
Mearsured density [g/cm ]
図 Ⅲ.2.3-38 本 装 置 で測 定 した破 砕
片 の見 掛 け密 度 分 布
図 Ⅲ.2.3-39 破 砕 片 の 3 次 元 形 状 に関 する
変 数 と見 掛 け密 度 の関 係
表 Ⅲ .2.3-5 は 、 デ ー タ ベ ー ス に 未 登 録 の 破 砕 片 300 個 に つ い て 、 各 5 回 ず つ 選 別 試 験
を行った結果であり、マグネシウム、アルミニウム、銅を同時に分離する場合の識別的中
率 を 示 し て い る 。 い ず れ も 90% 以 上 の 確 率 で 分 離 可 能 で あ っ た 。 以 上 の 結 果 に 基 づ い て
特許出願を行った。なお、マグネシウム、アルミニウム鋳造材、アルミニウム展伸材の同
時分離でも同様の結果を得ている。ただし、これらは限定されたサンプル数に対する結果
であり、現状は原理的な有効性を見出した段階である。今後は大量サンプルへの適用性や
合金種別分離の可能性など、実用に主眼を置いた検討を開始する予定である。
Ⅲ-73
表 Ⅲ.2.3-5 物 理 選 別 試 験 結 果
試験回数
1500
的中
1379
Mg
0.90( 451/500)
失敗
121
Al
0.92( 462/500)
的中率
0.92
Cu
0.93( 466/500)
材質別的中率
(b) 湿 式 法 に よ る 無 機 不 純 物 除 去
湿 式 法 に よ る リ サ イ ク ル 前 処 理 技 術 と し て 、 不 純 物 と な る 銅 の 除 去 技 術 に 関 し 、 1.熱 力
学 関 係 図 に よ る 考 察 、 な ら び に 、 2.小 型 溶 解 槽 な ら び に 除 去 剤 と し て ア ン モ ニ ア な ら び に
2 価 銅 イ オ ン を 利 用 し た 銅 な ら び に マ グ ネ シ ウ ム 合 金 (AZ31)( 樹 脂 埋 め し た 板 状 試 料 : 2
cm×2 cm) 溶 解 実 験 を 行 っ た 。
不純物である銅のみを除去するには、銅を溶解する一方、マグネシウムに対しては溶
解しない溶液系が必要である。溶液中に特定の金属イオンに配位する錯化剤が存在しない
場合、マグネシウムを溶解させずに銅を溶解させることは困難である。一方、錯化剤とし
て ア ン モ ニ ア を 含 む 溶 液 に お け る 安 定 な 化 学 種 を 示 す 電 位 -pH 図 を 図 Ⅲ .2.3-40 に 示 す 。
銅 は 中 性 か ら ア ル カ リ 性 の 範 囲 に お い て は 、 2 価 銅 ア ン ミ ン 錯 体 (Cu(NH 3 ) 4 2+ )な ら び に 1
価 銅 ア ン ミ ン 錯 体 (Cu(NH 3 ) 2 + )が 安 定 で あ る 。 一 方 、 マ グ ネ シ ウ ム は 水 酸 化 マ グ ネ シ ウ ム
(Mg(OH) 2 )が 安 定 な 成 分 で あ る こ と か ら ア ル カ リ 性 に お い て 不 溶 で あ る こ と が 予 想 さ れ る 。
以上のことから、マグネシウムのデータをマグネシウム合金に代用した場合、両者の関係
よ り 、 銅 の み の 除 去 が 可 能 な 条 件 は pH が 11 か ら 12 の 範 囲 で あ る こ と が わ か る 。
0.8
O2
0.6
Cu2+
Cu(OH)2
電位 / V vs SHE
0.4
Cu(NH3)42+
Cu(OH)2
Cu2O
0.2
選択的溶解の可能性
0
Cu(NH3)2+
-0.2
Cu2O
H2
-0.4
-2.2
Cu
Mg(OH)2
Mg2+
-2.4
Mg
-2.6
0
2
4
6
8
10
12
14
pH
図 Ⅲ.2.3-40 銅 -アンモニア-水 系 ならびにマグネシウム-アンモニア-水 系 の
電 位 -pH 図 (C(Cu)=0.5kmol m - 3 , C(Mg)=1.0kmol m - 3 )
ア ン モ ニ ア 濃 度 5kmol m -3 、 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム 濃 度 1kmol m -3 の 水 溶 液 を 用 い た 場 合 、
銅はわずかながら溶解し、溶液は薄い水色を呈した。これに対し、マグネシウム合金中
Ⅲ-74
のマグネシウムは検出できなかった。従って、このような溶液では銅のみを選択的に除
去可能であることがわかる。なお、銅を溶解するためには酸化剤の存在が必要であり、
上 述 の 実 験 で は 溶 存 酸 素 が 酸 化 剤 の 働 き を し た と 考 え ら れ る 。 表 Ⅲ .2.3-6 に は AZ31、
AZ91 お よ び 銅 に 対 し て 酸 化 剤 と し て 2 価 銅 イ オ ン を 添 加 し た 場 合 の マ グ ネ シ ウ ム お よ び
銅の浸出率を示したものである。この結果からこの溶液ではいずれの合金からもマグネ
シウムの溶解は見られず銅のみが浸出する、つまり銅の選択除去が可能であることがわ
か る 。 図 Ⅲ .2.3-41 は 銅 の 溶 解 速 度 と 攪 拌 翼 の 回 転 数 と の 関 係 を 表 す 。 図 よ り 浸 出 速 度 は
攪 拌 翼 の 回 転 数 の 1/2 乗 に 比 例 し て 増 加 す る こ と が わ か る 。 こ の こ と か ら 溶 解 反 応 の 律 速
段階が液境膜内の物質移動であることを示している。なお、反応は次式で表されると考
えられる。
Cu + Cu(NH 3 ) 4 2+ = 2 Cu(NH 3 ) 2 +
表 Ⅲ.2.3-6 湿 式 法 による銅 の浸 出 率
マグネシウム合金
2価銅濃度(M)
Mg浸出率(%) Cu浸出率(%)
AZ31
0.1
<0.1
90
AZ31
0.5
<0.1
100
AZ91
0.1
<0.1
93
AZ91
0.5
<0.1
100
マ グ ネ シ ウ ム 合 金 (10mm x 10mm x 2mm): 10g
銅 片 (5mm x 2mm x 0.1mm) : 1g
溶解速度/ g m-2 s-1
0.3
0.2
0.1
Cu(II): 0.3M,
NH 3: 5M
(NH 4) 2 SO 4: 1M
0
0
1
2
3
4
1
1
(回転速度) 2 / s - 2
5
図 Ⅲ.2.3-41 銅 の溶 解 速 度 におよぼす回 転 速 度 の影 響
(C(NH 3 )=5 kmol m -3 , C((NH 4 ) 2 SO 4 )=1.0kmol m - 3 )
Ⅲ-75
また、アンモニウム塩として塩化アンモニウムを用いた場合には、銅は硫酸アンモニ
ウ ム の 場 合 と 同 様 に 溶 解 す る と と も に 、 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 も 溶 解 し た 。 従 っ て 、 同 じ pH
においても共存するイオン種によって溶解挙動に大きく差が見られることがわかった。
3) ま と め
過熱水蒸気を用いたマグネシウム切削粉の脱有機物処理について、実験室規模の装置を
用いて基礎的に検討し、以下の成果を得た。
1.
残留不純物量は炉内温度の上昇に従って直線的に減少し、本プロジェクト中間目標値
で あ る 表 面 付 着 炭 素 量 0.1%以 下 を 達 成 可 能 で あ る 。
2.
残留不純物量は切削粉の粒度が細かいほど増加する。また、合金種、切削油の種類に
多少影響を受ける可能性がある。
3.
脱 脂 処 理 物 の 表 面 に 若 干 の 酸 化 が 見 ら れ る ( 2.3.2 で 説 明 )
4.
本 技 術 は 、 再 溶 解 の み な ら ず 固 体 リ サ イ ク ル の 前 処 理 と し て も 有 効 で あ る ( 2.3.2 で
説明)
5.
本技術は、従来の有機溶剤等による洗浄方式と比較し、安価な水を用いての処理であ
りコストメリットが期待出来る。有機溶剤等を使用しないことから環境負荷の軽減も
期待できる。また、同様の方法で洗浄している酸化傾向の高い金属(チタンなど)な
どへの応用が出来る。
今後は以下の方針で検討を進める予定である。
1. エ ネ ル ギ ー コ ス ト 低 減 の 観 点 か ら 過 熱 水 蒸 気 を 循 環 式 に 改 造 す る 。
2. 排 ガ ス 中 の 酸 素 濃 度 測 定 を 行 い 処 理 物 表 面 に 見 ら れ た 酸 化 反 応 を 検 証 す る 。
3. AZX911(AZ91+1wt%Ca)他 の 合 金 を 対 象 と し た 脱 脂 処 理 試 験 を 行 い 、 脱 脂 の 効 果 に 対
する合金種別の影響について検討する。
4. 市 中 ス ク ラ ッ プ 処 理 へ の 展 開 と し て 、 多 形 状 の 端 材 の 脱 脂 、 塗 装 付 着 物 の 除 去 に つ い
て検討し、最終目標の達成に向けた取り組みを開始する。
廃車シュレッダー処理で発生するミックスメタル中に含まれるマグネシウムスクラップ
の分離回収技術ならびに不純物除去技術について検討し、以下の成果を得た。
1.
レーザ 3 次元計測器と重量計を併用した物理選別法によって、マグネシウム−アルミ
−銅の同時分離、ならびにマグネシウム−アルミ展伸材−アルミ鋳造材の同時分離が
可能である。
2.
アンモニア水溶液を用いた湿式処理によって、マグネシウムを溶解させずに銅のみを
浸出させる、銅の選択除去が可能である。
今後は大量サンプルへの適用性や合金種別分離の可能性、湿式法によるニッケルの選択
除去等について検討を進める予定である。
Ⅲ-76
③ (1)-3
単体分離及びハンドリングの安全性評価
マ グ ネ シ ウ ム 材 の 研 磨 、 集 塵 、 破 砕 ( 単 体 分 離 )、 粉 末 製 造 等 の 工 程 に お い て は 、 衝 撃
火花や静電火花等により粉塵爆発が発生する危険性がある。
本検討項目では、リサイクルプラントにおける粉塵爆発と自然発火事故を防止する観
点から、マグネシウム粉末の発火性に及ぼす影響因子について基礎特性を詳細に検討し、
安全な取り扱い条件を明らかにする。また、その結果に基づき、マグネシウムスクラップ
の粉砕、選別、輸送、貯蔵などの単位操作における安全面から見た課題を抽出し、発火防
止など安全なハンドリング方法を提案する。これらにより、市中から回収されるマグネシ
ウムスクラップのリサイクルを促進するための基盤を構築する。
これまでに、マグネシウムの粉塵爆発に関する基礎特性の解明として、放電電極を用
いた着火による試験方法により、爆発下限濃度、最小着火エネルギー、最低発火温度等に
対するマグネシウム粉の粒度、濃度の影響を実験的に検討した。また、共存物質(固体粒
子)の組成、濃度の影響を調べるとともに、浮遊粉塵の流動状態の影響の検討、市中スク
ラップ処理プロセスでの安全性評価モニタリング法の予備的な検討を行った。
1) 実 験 方 法
粉 塵 の 爆 発 下 限 濃 度 は JIS Z 8818 に 規 定 す る 試 験 方 法 と 装 置 を 使 用 し た 。 本 方 法 は 浮
遊粉塵雲を一定空間に形成し、放電火花により着火試験を行い、粉塵の爆発し易さ(粉塵
雲の濃度、着火エネルギー、粉塵雲形成空間のガス組成が爆発に及ぼす影響等)を調べる
の に 利 用 さ れ る 。 試 験 装 置 は 図 Ⅲ .2.3-42 に 示 す も の で あ る 。 粉 体 試 料 は 試 料 皿 上 に セ ッ
トし、均一な浮遊粉塵雲を形成するに適切な圧縮空気をエアタンクから供給して浮遊粉塵
雲を形成する。均一な浮遊粉塵雲が形成されたら、放電電極で放電火花を発生し、浮遊粉
塵雲の爆発発生を調べる。浮遊粉塵濃度は試料皿にセットした粉体の質量を爆発筒の容積
で除して求める。爆発下限濃度は、粉塵濃度を減少して爆発が発生する最小の濃度とする。
最小着火エネルギーは、爆発するに十分な濃度をもつ浮遊粉塵雲を形成し、放電によ
り着火爆発を起こす最小の放電エネルギーを測定して求める。放電エネルギーは、高圧コ
ンデンサーに蓄積した電荷を設定時間放出する単発の矩形波を発生し、その放電電圧、放
電 電 流 、 放 電 持 続 時 間 を オ シ ロ ス コ ー プ で 観 察 し て 求 め る 。 放 電 波 形 の 例 を 図 Ⅲ .2.3-43
に示す。
可燃性浮遊粉塵雲は、存在する空間の温度を上昇させていくと、発火に至る。このと
きの最低温度を最低発火温度、あるいは単に、発火温度という。発火温度はその温度場に
粉塵雲が十分に長い時間存在する場合の値であるが、実験では十分な存在時間をとること
は非常に困難であるので、通常は、一定温度に保った空間に浮遊粉塵雲を形成し、発火す
る最低の温度を求める(日本粉体工業技術協会粉塵爆発委員会編:粉塵爆発火災対策、
p.114∼ 115、 オ ー ム 社 )。 実 験 に 用 い た 測 定 装 置 を 図 Ⅲ .2.3-44 に 示 す 。 試 料 は 粉 塵 ホ ー ル
ダに入れ、一定温度に加熱した炉内へ粉塵を投入し、炉下端からの火炎の有無によって発
火 性 を 判 定 す る 。 加 熱 炉 部 の 内 径 は 約 6 cm、 長 さ 約 53 cm で あ る 。
Ⅲ-77
図 Ⅲ.2.3-42 吹 上 式 粉 塵 爆 発 試 験 装 置
図 Ⅲ.2.3-43
単 発 放 電 波 形 の例
粉塵ホールダ
熱電対
炉内管
金属外枠
加熱電源
図 Ⅲ.2.3-44 浮 遊 粉 塵 雲 の発 火 温 度 測 定 装 置
2) 実 験 結 果 及 び 考 察
マ グ ネ シ ウ ム 粉 塵 ( 純 度 99.5% ) の 粒 度 別 の 爆 発 下 限 濃 度 を 調 べ た 結 果 を 図 Ⅲ .2.3-45
に 示 す 。 こ の 図 よ り 純 粋 な マ グ ネ シ ウ ム 粉 塵 の 爆 発 下 限 濃 度 は 約 90g/m 3 で 、 粒 径 が 約
74μm よ り 大 き く な る と 爆 発 下 限 濃 度 は 約 270 g/m 3 、 粒 径 が 約 125μm 以 上 に な る と 爆 発
下 限 濃 度 は 約 500 g/m 3 と な り 、 粒 径 が 約 74μm 以 上 に な る と 爆 発 性 が か な り 小 さ く な る
ことがわかる。
Minimum explosive concentration (g/m 3)
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
0-20
20-37
37-45
45-74 74-105 105-125 125-149 149-177
Particle size (µm)
図 Ⅲ.2.3-45 マグネシウム粉 塵 の爆 発 下 限 濃 度
Ⅲ-78
粉塵爆発は個々の粒子の燃焼に起因するので、粒子が燃焼しやすいか否かに爆発が影
響される。粒子の燃焼は表面反応であるため、粉塵表面の大小、つまり、単位質量当たり
の表面積(比表面積)の大小が爆発に影響し、比表面積の大きいものほど爆発しやすいこ
ととなる。従って、粉塵は粒度が小さくなるほど、粉塵の爆発に関与する面積が大となり、
粒子の燃焼、爆発が起こりやすくなって、爆発下限濃度が小さくなると考えられる。
粉塵の存在する空間の温度を上昇させていくと粉塵は発火するに至る。発火温度とは、
粉塵雲を構成する個々の粒子が燃焼を開始するときの周囲温度のことであり、これには燃
焼反応が粒子間を伝播するという概念は入っていない。発火温度はその温度場に粉塵
(雲)が存在する時間の長短によって変化するので、定義としては存在時間が十分に長い
場 合 の 値 を い う が 、 実 験 で は 十 分 な 存 在 時 間 が と れ な い の で 、 図 Ⅲ .2.3-44 に 示 し た よ う
な装置を用い、概略の値を求めざるを得ない。発火温度は単一粒子として粉塵が存在する
とき最も高く、粉塵濃度の増加とともに低下する。また、発火温度は粒度によっても変化
する。発火温度が粒度に影響される理由は爆発下限濃度の場合と同じであり、比表面積の
大小により、粒子の燃焼反応に難易がおこる。粒子の加熱が放射伝熱支配の場合、発火温
度が最低となる粒径が存在し、その粒径は粒子の放射吸収係数が大きくなる(1 に近づ
く)ほど小さくなる。
図 Ⅲ .2.3-46 に 、 マ グ ネ シ ウ ム 粉 塵 の 発 火 温 度 、 粉 塵 濃 度 及 び 粒 度 が 発 火 温 度 に 及 ぼ す
影 響 を 示 す 。 マ グ ネ シ ウ ム 粉 塵 雲 の 発 火 温 度 は 粒 径 約 20μm 以 下 の も の が 約 520℃ 、 粒 径
約 150μm 以 上 の も の が 約 630℃ で あ っ た 。 ま た 、 粉 塵 粒 度 が 大 き く な る に つ れ 、 マ グ ネ
シウム粉塵雲の発火温度は高くなり、爆発性が小さくなることが示された。粉塵雲濃度の
増加により、粉塵雲の発火温度は低くなり、爆発性が大きくなることがわかった。
Particle
size (μm):
650
0-20
20-37
o
Ig n itio n te m p e ra tu re ( C )
700
600
37-45
550
45-74
500
74-105
105-125
450
125-149
149-177
400
0
500
1000
1500
2000
3
Dust concentration (g/m )
図 Ⅲ.2.3-46 マグネシウム粉 塵 雲 の発 火 温 度
物質の燃焼・爆発のためには着火源が必要であり、その大きさは一定の値以上なければ
ならない。粉塵雲のごく一部に局所的にエネルギーを与え、粉塵雲を着火・爆発させるに
要するエネルギーの最小値を最小着火エネルギーというが、最小着火エネルギーは粉塵の
Ⅲ-79
種類、粒度、粉塵濃度等によって変化する。
図 Ⅲ .2.3-47 に 、 マ グ ネ シ ウ ム 粉 塵 雲 の 着 火 エ ネ ル ギ ー を 粒 度 別 に 調 べ た 結 果 を 示 す 。
このとき粉塵雲の濃度は爆発下限濃度の 2 倍に設定して試験を行った。図より、粒径が
20μm 以 下 の と き の マ グ ネ シ ウ ム の 最 小 着 火 エ ネ ル ギ ー は 約 4 mJ と な る 。 こ れ は か な り
着火性が大きい粉体と言え、摩擦火花、衝突火花、静電気放電火花等により容易に着火・
爆発に至るものと考えられる。
Minimum ignition energy (mJ)
250
200
150
100
50
0
0-20
20-37
37-45
45-74
74-105 105-125 125-149 149-177
Particle size (µm)
図 Ⅲ.2.3-47 マグネシウム粉 塵 の最 小 着 火 エネルギー
表 Ⅲ .2.3-7 に 、 マ グ ネ シ ウ ム と 他 の 物 質 の 最 小 着 火 エ ネ ル ギ ー を 比 較 し た 。 本 表 に 示 す
ように、有機粉塵や可燃性金属粉塵等は、最小着火エネルギーが小さく爆発しやすい。し
かしながら、本研究に使用したマグネシウム粉塵はこれらよりさらに着火エネルギーが小
さく、より爆発危険性が大きいと言える。
表 Ⅲ.2.3-7 マグネシウムと他 物 質 の最 小 着 火 エネルギー
Material
Size(μm)
MIE(mJ)
Magnesium
<20
4
20-37
5
<20
7
20-37
14
<125
11
<200
26
<74
100
<67
45
Aluminum
Polyurethane
Coal
Shredder dust
(refrigerator)
廃 家 電 等 の リ サ イ ク ル 現 場 に お い て 頻 繁 に 処 理 さ れ る ポ リ ウ レ タ ン ( PUR) 粉 塵 と 、
マグネシウム粉塵が共存した場合の爆発性について検討した。まず、各々の物質が単独で
存 在 す る 場 合 の 粉 塵 濃 度 と 爆 発 確 率 の 関 係 ( 爆 発 曲 線 ) を 調 べ た 結 果 を 図 Ⅲ .2.3-48 に 示
す 。 こ こ で は 、 マ グ ネ シ ウ ム 粉 末 (粒 径 45μm 以 下 ) と ポ リ ウ レ タ ン 粉 末 ( 粒 径 75μm 以
Ⅲ-80
下)の爆発曲線を比較した。図より、マグネシウムとポリウレタンの爆発下限濃度はそれ
ぞ れ 約 90g/m 3 、 約 50g/m 3 で あ り 、 マ グ ネ シ ウ ム の 方 が 大 き な 値 と な る 。 し か し な が ら 、
着火初期の爆発展開率(単位粉塵濃度あたりの爆発確率の上昇量)を比較すると、マグネ
シ ウ ム が 約 4.8、 ポ リ ウ レ タ ン が 約 0.75 で あ り 、 マ グ ネ シ ウ ム の 方 が 格 段 に 大 き い 。 ポ
リ ウ レ タ ン の 場 合 、 粉 塵 濃 度 50∼ 80 g/m 3 の 爆 発 展 開 率 が 小 さ い こ と か ら 、 燃 焼 反 応 の 伝
播性が低いと言え、たとえ着火したとしても爆発へ至る危険性はマグネシウムよりも小さ
い。このことから、マグネシウム粉塵とポリウレタン粉塵が共存しても、マグネシウム粉
塵の爆発性はさほど影響を受けないものと予測される。
Probabiloity of dust explosion (%)
100
90
80
70
60
Mg
50
PUR
40
30
0.75
20
4.8
1
10
1
0
0
50
100
Dust concentration (g/m3)
150
図 Ⅲ.2.3-48 マグネシウム粉 塵 とポリウレタン粉 塵 の爆 発 曲 線
次に、マグネシウム粉塵にポリウレタン粉塵を混合した混合粉塵の爆発下限濃度を調
べ た 。 混 合 粉 塵 の 爆 発 下 限 濃 度 と ポ リ ウ レ タ ン 混 合 比 率 の 関 係 を 図 Ⅲ .2.3-49 に 示 す 。 ポ
リウレタンの混合率が大きくなるに従い、混合粉塵の爆発下限濃度は漸減傾向であるが、
さほど変化せず、ポリウレタンが共存しないときの爆発下限濃度を概ね維持している。
従って、マグネシウム粉塵にポリウレタンと同程度の爆発性を有する粉塵が共存しても、
MEC magnesium-polyurethane dusts mixture
(g/m3)
その空間の粉塵爆発性はさほど変化しないものと考えられる。
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
50
60
Mixing ratio of polyurethane in the magnesiumpolyurethane dusts mixture (wt %)
図 Ⅲ. 2.3-49 ポリウレタン混 合 率 が混 合 粉 塵 の爆 発 下 限 濃 度 に及 ぼす影 響
Ⅲ-81
粉塵の流動が爆発発生の主要因となる着火性に及ぼす影響を検討した。浮遊粉塵雲が
流動していると、爆発発生に必要な熱源の供給状況が粉塵雲の流速に応じた変化をする。
浮遊粉塵雲の流動が無視できる状態下で発生する火源の大きさ、発生熱量、輻射熱の影響
範囲等は、粉塵雲の流動、つまり、ガス流速が変化することにより、粉塵雲との熱授受、
接触領域等が影響を受ける。
浮 遊 粉 塵 雲 が 流 動 し な い と き に 発 生 さ せ る 熱 源 の エ ネ ル ギ ー 量 を E0、 火 源 核 の 直 径 を
d0、 輻 射 熱 の 影 響 範 囲 を D0 と し 、 流 動 が あ る 場 合 の 、 速 度 ( 空 気 速 度 ) を v、 火 源 核 の
大 き さ を d1、 輻 射 熱 の 影 響 範 囲 を D1 と す る と 、 こ れ ら は 空 気 速 度 の 関 数 と な る 。 さ ら
に 、 流 動 す る こ と ( 空 気 流 速 の 発 生 ) に よ り 、 流 動 に 伴 う 放 熱 の 発 生 ( 放 熱 量 を E1 と す
る )、 熱 源 の 冷 却 効 果 ( 放 電 の 場 合 、 放 電 電 極 の 冷 却 効 果 。 冷 却 量 を E2 と す る )、 な ど が
生 じ る 。 粉 塵 雲 流 動 状 態 下 で は 、 爆 発 発 生 に 使 用 さ れ る エ ネ ル ギ ー ( E ) は ( E0–E1–
E2 ) と な る ほ か 、 粒 子 ( ま た は 粉 塵 雲 ) と の 接 触 面 と な る d0 か ら d1 へ の 変 化 、 D0 か
ら D1 へ の 変 化 な ど が 生 じ る こ と に よ る 粒 子 酸 化 領 域 の 変 化 な ど が 生 じ る 。 ま た 、 流 速 の
増 大 に 伴 い 、 d1 や D2 は 小 さ く な る 。 爆 発 に 必 要 な エ ネ ル ギ ー 量 を E ign と す る と 、
Eign = f d1, D1, E1, ,E2 , , ,
と な る 。 E1、 E2 等 は 空 気 流 速 ( v) の 関 数 で あ り 、 v の 増 加 に 従 い 大 と な る の で 、 粉 塵
雲が流動することにより、着火性(つまり、爆発性)は小さくなると考えられる。このこ
とから、実際のリサイクル現場において空気流速をモニタリングすることは、爆発の危険
性を検知する手段の一つになると考えられる。
図 Ⅲ .2.3-50 は 、 本 プ ロ ジ ェ ク ト の 助 成 事 業 ( 研 究 開 発 項 目 ⑦ ) に お い て 、 処 理 対 象 と
し て い る マ グ ネ シ ウ ム 切 削 現 場 で 採 取 し た 粉 塵 ( AZ31) の 写 真 で あ る 。 こ こ に 見 ら れ る
よ う に 、 切 削 粉 粒 子 は 概 ね 1 mm∼ 数 mm 前 後 の フ レ ー ク 状 細 片 で あ っ た 。 こ の 試 料 の
粉塵爆発試験を行ったが、粒子の飛散性が小さく、粉塵爆発に至らなかった。換言すれば、
この程度の大きさの粉塵発生に抑制すれば、マグネシウムの安全なハンドリングが行える
ものと考えられる。
図 Ⅲ.2.3-50 切 削 現 場 で採 取 したマグネシウム粉 塵 (AZ31)
3) ま と め
本研究開発項目では、マグネシウムの基礎的粉塵爆発特性と爆発要因の解明を行い爆発
Ⅲ-82
防止対策に重要な基盤データを取得した。得られた成果を以下に列記する。
1.
マグネシウム粉塵雲が発生する空間で、粉塵爆発が発生しないようにするには、粒度
の 小 さ い 粉 塵 の 発 生 を 防 ぎ ( で き れ ば 粒 径 125μm 程 度 以 上 )、 粉 塵 雲 の 濃 度 は 粒 度 の
小 さ い 粉 塵 ( 約 20μm 以 下 程 度 ) の 場 合 で も 濃 度 を 小 さ く ( 約 90 g/m 3 程 度 以 下 ) す
ることが必要である。しかしながら、現実のマグネシウムリサイクル工程では、この
ような条件は操業上の制約となることが考えられるため、他の爆発抑制対策等を検討
する必要がある。
2.
リサイクル工程では、廃棄物の破砕・粉砕において、摩擦熱、衝突火花等が頻発する
ので、粉塵爆発の着火源となりうるものが多発する。マグネシウム粉塵雲の最低発火
温 度 は 約 520℃ で あ り 、 最 小 着 火 エ ネ ル ギ ー は 約 4 mJ で あ る の で 、 リ サ イ ク ル 工 程
ではマグネシウム粉塵雲爆発災害が発生する可能性が大である。
3.
マグネシウム粉塵と他の物質、たとえば、プラスチック粉塵などが共存する場合、そ
の爆発性は他物質の爆発の展開性の影響を受ける。しかし、マグネシウム粉塵に比べ
て爆発展開率が小さい他の可燃性粉塵が混入しても、全体の爆発性はあまり変化しな
いと考えられる。
4.
粉塵雲が流動することにより、粉塵雲の着火性は小さくなる。その程度は、流速の関
数となり、マグネシウム粉砕現場で空気流があると爆発の発生が困難となるので安全
対策上有利な条件となる。
5.
切 削 粉 塵 が 概 ね 1 mm∼ 数 mm 前 後 の フ レ ー ク 状 細 片 と な る 場 合 、 粉 塵 の 飛 散 性 が
小さく、粉塵爆発に至らない。換言すれば、この程度の大きさの粉塵に抑制すれば、
マグネシウムの安全なハンドリングが行えるものと考えられる。
今後は以下の方針で検討を進める予定である。
1.
AZX911(AZ91+1wt%Ca)他 の 合 金 を 対 象 と し た 粉 塵 爆 発 試 験 を 行 い 、 爆 発 性 に 対 す る
合金種別の影響について検討する。
2.
マグネシウムハンドリングプロセスにおける着火性火花の特性評価と着火性火花の検
知方法について基礎的な検討を行う。
3.
実プロセスを想定した爆発抑制手法の提案し、実用化開発(研究開発項目⑦)を支援
する。
スクラップ処理プロセスでのマグネシウム粉塵爆発災害の防止においては、発塵抑制、
微細粒子の発生抑制、着火源形成防止、爆発抑制装置の起動などが重要である。しかしな
がら、スクラップ処理現場での経済的操業や現場状況等のため、これらの対策がとれない
ことも多い。災害防止のためには、爆発発生条件を把握し、これを操業にフィードバック
し、さらには、爆発を早期に検知することが重要である。このことから、最終目標の達成
に向けた検討としては、着火源の形成防止に着目し、その検知・評価手法の開発を行う。
市中スクラップ処理現場で着火源となる主要なものは、破砕・粉砕にともなう摩擦火花や
衝突火花であるので、これに伴う放熱面温度、電磁波の発生などのモニターを行う手法に
ついて検討を進める。
Ⅲ-83
2.3.2
研 究 開 発 項 目 ③ (2)「 リ サ イ ク ル 材 の 特 性 評 価 」
③ (2)-1
固体リサイクル材の鍛造素材化技術の開発
本研究は、マグネシウムスクラップ材に対する安全かつ省エネルギー型の固体リサイ
クル技術を開発し、従来のカスケード型リサイクル(低品位素材へのリサイクル)に代え
て、新材料と同等の特性を維持するリサイクル材を提供するリサイクルシステムの構築に
貢献することを目的としている。
マグネシウムは安全に溶解することが困難で、アルミニウムのリサイクルに比べて高
コ ス ト に な る 。 そ こ で 、 図 Ⅲ .2.3-51 に 示 す 再 溶 解 を 行 わ な い 固 体 リ サ イ ク ル 方 法 が 提 案
され、リサイクル材の高性能化が図れるとともに鍛造用素材を製造することが可能となる
1) 。
固体リサイクル
工場内スクラップ
切削粉
結晶粒微細化などの
組織制御
再溶解を行わず、押し
出し等によりスクラップ
を直接固化しリサイク
ルする。
リサイクル材の
高性能化
・高強度
・高加工性等など
スクラップから
高性能Mg鍛造用
ビレットを製造
図 Ⅲ.2.3-51
固 体 リサイクルの概 要
1)
研 究 は 、 図 Ⅲ .2.3-52 に 示 す 素 形 材 セ ン タ ー 、 産 総 研 中 部 セ ン タ ー そ し て 産 総 研 つ く ば
センター(東、西)が連携し、進められている。産総研中部センターから提供されたマグ
ネシウムスクラップ材は産総研つくばセンターにおいて固体リサイクルされ、鍛造素材に
加工される。鍛造素材は、中部センターに設置してあるサーボプレスにより鍛造され、製
品の形状、組織、特性等が調べられ、併せて鍛造加工データの集積が図られる。また、鍛
造素材に及ぼす混入物の影響が京都大学で評価され、評価結果は固体リサイクルの前処理、
鍛造素材化、鍛造加工等にフィードバックされ、より高性能な鍛造素材の製造に利用され
る 。 さ ら に 、 実 用 化 技 術 を 研 究 し て い る (株 )タ ナ ベ が 開 発 し た 前 処 理 技 術 、 過 熱 水 蒸 気
による有機物の分解、脱脂技術、により工場内未利用スクラップ材から不純物を除去し、
産総研つくばセンターにおいて固体リサイクルされ、鍛造素材に加工される。それらのプ
ロセスから課題が抽出され、データが集積される。この他に、マグネシウム廃棄物の実態
調査および固体リサイクル技術の現状および将来予測が素形材センターにおいて行われる。
Ⅲ-84
鍛造加工
混入物低減
産総研中部センター
サーボプレスによる
鍛造加工、特性評価
素形材センター
産総研つくばセンター(西)
リサイクル前処理技術の開発
材料組織制御
サーボプレスによる
鍛造加工を依頼
前処理したスクラップ材
の固体リサイクルを依頼
産総研つくばセンター(東)
素形材センター
固体リサイクルプロセスの開発
評価の報告
混入物の影響評価を依頼
京都大学
混入物の影響評価
図 Ⅲ.2.3-52
固 体 リサイクル技 術 を軸 とした鍛 造 技 術 開 発 との連 携
研 究 は 、 図 Ⅲ .2.3-53 に 示 す よ う に 、 ド ラ イ 切 削 粉 に よ る 鍛 造 素 材 化 が 行 わ れ 、 次 に 工
場内未利用スクラップ材の鍛造素材化が行われる。ドライ切削粉の固化成形、素材特性の
評価、鍛造加工の一連のプロセスを行い、鍛造素材を製造するための基礎的データを抽出
する。次に、ドライ切削粉を用いた固体リサイクルプロセスを基盤技術とし、工場内未利
用スクラップ材の固化成形、素材特性評価を行い、鍛造素材化が進められる。最終目標は
市中スクラップ材の鍛造素材化であり、ドライ切削粉や工場内未利用スクラップ材による
鍛造素材化から得られた知見が利用される。
課題抽出による
鍛造素材化技術の開発
固体リサイクルによる工場
内未利用スクラップ材の鍛
造素材化技術の開発
固体リサイクルによるドラ
イ切削粉の鍛造素材化技
術の開発
固体リサイクルに
よる市中スクラップ
の鍛造素材化
図 Ⅲ.2.3-53
固 体 リサイクルの研 究 の進 め方
Ⅲ-85
1) ド ラ イ 切 削 粉 の 鍛 造 素 材 化
マ グ ネ シ ウ ム の 種 類 は AZ91+1wt%Ca そ し て AZ31 で あ り 、 ド ラ イ 切 削 粉 は 帯 鋸 盤 、
旋 盤 そ し て フ ラ イ ス 盤 に よ り 製 造 さ れ た 。 ド ラ イ 切 削 粉 は ホ ッ ト プ レ ス ( HP) さ れ 、 後
方 押 出 し 加 工 に よ り 鍛 造 素 材 化 さ れ た 。 ホ ッ ト プ レ ス 温 度 を 150℃ と 300℃ と し 、 400kN
( 面 圧 : 350MPa) の 荷 重 を 負 荷 し た 。 圧 粉 体 は 、 相 対 密 度 が 97%以 上 を 示 し 、 後 方 押 出
し 加 工 さ れ た 。 後 方 押 出 し に お け る 押 出 し 比 は 3 か ら 22 ま で の 範 囲 と し 、 押 出 し 温 度 は
350℃ と し た 。 押 出 し 温 度 は 、 京 都 大 学 で 得 ら れ た 高 性 能 な 固 体 リ サ イ ク ル 材 を 得 る た め
の 指 針 、 結 晶 粒 径 を 10um か ら 20um 以 下 に す る こ と 、 か ら 決 め ら れ た 。 そ れ ぞ れ の 押
出 し 比 に お け る 最 大 押 出 し 荷 重 は 、 100kN か ら 250kN ま で 変 化 し 、 相 対 密 度 は 99%を 示
した。
(a) 鍛 造 素 材 の 特 性
鍛造素材の特性は、圧縮試験と端面拘束圧縮試験により評価された。圧縮試験では、摩
擦 の 影 響 を 除 去 す る た め テ フ ロ ン シ ー ト ( 厚 さ 0.05mm ) を 試 料 ( 直 径 16mm × 高 さ
16mm) と 圧 板 の 間 に 置 き 、 応 力 ― ひ ず み の 関 係 を 求 め た 。 一 方 、 端 面 拘 束 圧 縮 試 験 は 、
摩 擦 の 影 響 を 評 価 す る た め ス パ イ ラ ル 状 の 溝 を 持 つ 圧 板 に よ り 試 料 ( 直 径 16mm×高 さ
24mm) を 圧 縮 し 、 限 界 据 込 み 率 =( 初 期 高 さ − 破 壊 時 の 高 さ ) /初 期 高 さ ×100%を 求 め
た。
始 め に AZ91+1wt%Ca の ド ラ イ 切 削 粉 か ら 製 造 し た 鍛 造 素 材 の 室 温 か ら 熱 間 温 度 範 囲
に お け る 材 料 特 性 を 表 Ⅲ .2.3-8 に 示 す 。
表 Ⅲ.2.3-8
押出し比
鍛 造 素 材 の特 性 :ドライ切 削 粉 (AZ91+1wt%Ca)
HP温度
/℃
試験温度
/℃
破壊強度
/MPa
破壊ひず
み
限界据込
み率 /%
150
RT
400
0.14
11.6
300
RT
416
0.14
13.5
RT
372
0.39
13.1
150
329
0.96
-
250
126
>1.37
割れ無し
-
5
20
300
押 出 し 比 が 5 に お い て 、 ホ ッ ト プ レ ス 温 度 が 300℃ の 鍛 造 素 材 は 150℃ に 比 べ て 破 壊 強
度 と 限 界 据 込 み 率 が 増 加 し 、 破 壊 ひ ず み が 同 じ 値 を 示 し て い る 。 150℃ の 温 度 で ホ ッ ト プ
レ ス し て も 材 料 特 性 に 大 き な 差 が 生 じ て い な い 理 由 は 、 押 出 し 温 度 を 350℃ と し た た め と
考 え ら れ る 。 ま た 、 ホ ッ ト プ レ ス 温 度 を 300℃ 、 押 出 し 比 を 20 と し て 製 造 さ れ た 鍛 造 素
材の材料特性は、押出し比が 5 に比べ室温における強度が減少するが、破壊ひずみが 2
倍以上増加している。強度の低下は、押出し変形による発熱と動的再結晶によると考えら
Ⅲ-86
れる。試験温度を増加すると強度は減少する傾向を示し、破壊せずに変形が進むようにな
る 。 さ ら に 試 験 温 度 を 250℃ に す る と 、 圧 縮 ひ ず み が 1.4 以 上 に お い て 割 れ が 見 ら れ な
押出し方向→
か っ た 。 こ れ ら の 素 材 の 組 織 観 察 結 果 を 図 Ⅲ .2.3-54 に 示 す 。
HP温度:150℃
押出し比:5
粒径:<10um
図 Ⅲ.2.3-54
HP温度:300℃
押出し比:5
粒径:<20um
HP温度:300℃
押出し比:20
粒径:>20um
鍛 造 素 材 の軸 断 面 組 織 (350℃で押 出 した AZ91+1wt%Ca)
押 出 し 方 向 に 沿 っ た 軸 断 面 を 示 し 、 ホ ッ ト プ レ ス 温 度 が 150℃ の 鍛 造 素 材 で は 微 細 な 結
晶 粒 が 見 ら れ 、 300℃ で は 再 結 晶 化 し た 大 き な 粒 と 微 細 な 粒 の 混 在 し た 組 織 を 示 し て い る 。
一 方 、 押 出 し 比 を 5 か ら 20 に 増 加 す る と 、 動 的 再 結 晶 に よ り 結 晶 粒 の 粗 大 化 が 見 ら れ る 。
このため、強度の減少を招いたと考えられる。これらの結果から、押出し比が 5 程度で
も、押出し温度を制御することで、緻密な組織を有する素材にすることは可能である。し
かし、摩擦の影響を受ける鍛造素材については限界据込み率を大きくする必要があり、
ホットプレス温度および押出し比を大きくする必要がある。
次 に AZ31 押 出 し 材 の ド ラ イ 切 削 粉 か ら 製 造 し た 素 材 の 材 料 特 性 を 表 Ⅲ .2.3-9 に 示 す 。
表 Ⅲ.2.3-9
鍛 造 素 材 の特 性 :ドライ切 削 粉 (AZ31)
試験温度 /℃
破壊強度
σF/MPa
破壊ひずみ
AZ31押出し材
RT
272
0.35
切削粉から製造
した素材
HP温度:300℃
押出し比:5
RT
300
0.46
150
136
>0.79(割れ無し)
250
63
RT
366
0.39
150
162
>1.26 (割れ無し)
250
75
>1.45 (割れ無し)
切削粉から製造
した素材
HP温度:300℃
押出し比:20
Ⅲ-87
>1 (割れ無し)
AZ91+1wt%Ca の ド ラ イ 切 削 粉 か ら 製 造 し た 素 材 の 材 料 特 性 と 比 べ 、 室 温 に お け る 破 壊
強 度 は 低 い 。 し か し 、 破 壊 ひ ず み は 同 等 か 、 そ れ 以 上 を 示 し て い る 。 一 方 、 AZ31 押 出 し
材 に 比 べ 、 室 温 に お け る 強 度 、 破 壊 ひ ず み は 大 き い 。 押 出 し 比 を 5 か ら 20 に す る と 強 度
は 増 加 し 、 割 れ ず に 変 形 が 進 ん で い る 。 ま た 、 組 織 観 察 結 果 を 図 Ⅲ .2.3-55 に 示 す 。
押出し方向
HP温度:300℃
押出し比:5
元材(AZ31押出し材)
の組織
HP温度:300℃
押出し比:20
ドライ切削粉から製造した素材
図 Ⅲ.2.3-55
鍛 造 素 材 の軸 断 面 組 織 (350℃で押 出 した AZ31)
AZ31 押 出 し 材 の 結 晶 粒 に 比 べ て 微 細 で あ り 、 押 出 し 比 が 増 加 す る と 共 に 平 均 粒 径 が 減
少している。マグネシウムは冷間において鍛造加工は難しく、再結晶温度以上の温度で鍛
造 加 工 が 行 わ れ て い る 。 中 間 目 標 と さ れ る 鍛 造 素 材 の 圧 縮 率 が 0.64 で あ り 、 再 結 晶 温 度
域以上の温度において、目標値に達している。
(b) 鍛 造 加 工
ホットプレスおよび後方押出しで得られた鍛造素材は、鍛造プレスおよび後方押出し鍛
造 金 型 に よ り カ ッ プ 形 状 に 加 工 さ れ た 。 鍛 造 プ レ ス の 能 力 は 100tf で あ り 、 毎 分 の ス ト
ロ ー ク は 80 で あ っ た 。 鍛 造 金 型 は 、 内 径 16mm の ダ イ お よ び 外 径 11.3mm( 断 面 減 少
率 : 50%) と 13.4mm( 断 面 減 少 率 : 70%) の パ ン チ で 構 成 さ れ 、 二 硫 化 モ リ ブ デ ン ペ ー
ストを試料表面とパンチ表面に塗布された。
AZ31 押 出 し 材 の ド ラ イ 切 削 粉 か ら 製 造 し た 素 材 を 鍛 造 し 、 カ ッ プ 形 状 に 加 工 し た 製 品
例 を 図 Ⅲ .2.3-56 に 示 す 。 (a)は 断 面 減 少 率 が 50%で あ り 、 (b)は 断 面 減 少 率 が 70%の 強 加
工 を 行 っ た 例 で あ る 。 断 面 減 少 率 が 50%お よ び 70%共 に 、 加 工 温 度 が 100℃ と 150℃ で
は、製品側面に円周方向割れが発生し、押出し方向に沿って層を形成している。これは、
再結晶温度以下のマグネシウムの変形様式が底面すべりのみであり、①パンチ(室温)と
試料(加熱温度)の温度差、②試料とパンチ、試料とダイのそれぞれの接触面における材
料の変形方向の違い、③試料とパンチ、試料とダイのそれぞれの接触面における摩擦潤滑
状態の差、等の理由により、試料とパンチ、試料とダイそれぞれの領域における変形速度
が 異 な り 、 割 れ が 発 生 し た と 考 え ら れ る 。 一 方 、 加 工 温 度 が 200℃ に 達 す る と 変 形 様 式 が
Ⅲ-88
増加し、静水圧の効果も現れ、割れの発生が抑えられたと考えられる。なお、硬さや組織
については観察中である。
パンチ
ダイ
素材
製品
加工前
試料
加工中
100℃
150℃
200℃
(a)断面減少率:50%
試料
100℃
150℃
200℃
(b)断面減少率:70%
図 Ⅲ.2.3-56 鍛 造 加 工 例 :ドライ切 削 粉 (AZ31)
2) 工 場 内 未 利 用 ス ク ラ ッ プ 材 の 前 処 理 お よ び 鍛 造 素 材 化
工場内未利用スクラップの前処理は、スクラップに付着した有機物や油脂を除去し、不
純 物 の 少 な い ス ク ラ ッ プ 材 に す る こ と で あ る 。 そ の た め 、 (株 )タ ナ ベ が 開 発 し た 過 熱 水 蒸
気 を 利 用 し た 方 法 を 用 い て AZ31 ス ク ラ ッ プ 材 の 前 処 理 を 行 っ た 。 そ の 処 理 方 法 を 図
Ⅲ .2.3-57 に 示 す 。
図 Ⅲ.2.3-57 過 熱 水 蒸 気 処 理 システム
前 処 理 は 、 300℃ か ら 400℃ の 温 度 範 囲 で 20 分 間 行 わ れ た 。 前 処 理 後 、 ス ク ラ ッ プ 材
はホットプレス、後方押出し加工され、鍛造素材化された。ホットプレスは、温度を
Ⅲ-89
300℃ と し 、 400kN の 荷 重 を 負 荷 し た 。 後 方 押 出 し 加 工 は 、 押 出 し 温 度 を 350℃ と し 、 押
出し比を 5 とした。押出された鍛造素材は、圧縮試験により室温から熱間までの温度範
囲における材料特性を評価され、また、スクラップ材、前処理されたスクラップ材、それ
ぞれのスクラップ材から製造した鍛造素材の化学分析を行い、残留炭素量および酸素量が
求められた。
圧 縮 試 験 か ら 求 め た 素 材 の 材 料 特 性 を 表 Ⅲ .2.3-10 に 示 す 。
表 Ⅲ.2.3-10
鍛 造 素 材 の特 性 ;工 場 内 未 利 用 スクラップ材 (AZ31)
試験温度 T/℃
破壊強度
σF/MPa
破壊ひずみ
AZ31押出し材
RT
272
0.35
過熱水蒸気処理
したスクラップ材
による素材
HP温度:300℃
押出し比:5
RT
282
0.33
150
150
0.75
250
67
>0.94(未破壊)
RT
300
0.43
ドライ切削粉から
製造した素材
HP温度:300℃
押出し比:5
過熱水蒸気処理されたスクラップから製造された鍛造素材は、室温における破壊強度
と 破 壊 ひ ず み が AZ31 押 出 し 材 と 同 等 の 特 性 を 示 し て い る 。 一 方 、 ド ラ イ 切 削 粉 か ら 製 造
さ れ た 鍛 造 素 材 に 比 べ 、 破 壊 強 度 と 破 壊 ひ ず み は 小 さ い 。 し か し 、 表 Ⅲ .2.3-9 か ら 、 押 出
し 比 を 20 に す れ ば 破 壊 強 度 、 破 壊 ひ ず み が 増 加 す る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 室 温 か ら 熱 間
温度における材料特性を比べると、ほぼ同等の特性を示している。再結晶温度域における
破 壊 ひ ず み は 中 間 目 標 の 0.64 を 上 回 っ て お り 、 中 間 目 標 を 達 成 し て い る 。 ま た 、 過 熱 水
蒸気処理されたスクラップ材から製造された鍛造素材の組織と未処理のスクラップから製
造 さ れ た 鍛 造 素 材 の 組 織 を 図 Ⅲ .2.3-58 に 示 す 。 過 熱 水 蒸 気 処 理 さ れ た 鍛 造 素 材 の 組 織 は
緻密であり、微細な結晶粒が見られる。次に、スクラップ材、過熱水蒸気処理されたスク
ラップ材、そしてそれぞれから製造された鍛造素材の化学分析を行った。その分析結果を
表 Ⅲ .2.3-11 に 示 す 。 そ の 結 果 、 残 留 カ ー ボ ン 量 は 前 処 理 を 施 す こ と で 減 少 し 、 鍛 造 素 材
化の過程でも減少することが明らかとなった。一方、酸素量は前処理を施すことで増加し
ている。また、アルミニウムや鉄の量が多いが、スクラップ材に含まれたアルミニウム板
や鉄の切削粉の影響と考えられる。
Ⅲ-90
断面
軸断面
過熱水蒸気処理無し
図 Ⅲ.2.3-58
過熱水蒸気処理有り
鍛 造 素 材 の組 織 :350℃で押 出 した工 場 内 未 利 用 スクラップ材 (AZ31)
表 Ⅲ.2.3-11
前処理
有り
前処理
無し
化学分析結果
C
O
Al
Zn
Fe
Mn
切削粉
0.23
0.004
11.1
1.49
0.73
0.85 0.01
0.06
鍛造素材
0.19
0.003
11.5
1.48
3.16
0.85 0.01
0.05
切削粉
1.25
<0.001 12.2
1.39
2.93
0.84 0.01
0.01
鍛造素材
0.44
0.002
1.46
0.44
0.83 <0.01 0.07
12.0
Ni
Cu
3) ま と め
結果から、ドライ切削粉および過熱水蒸気されたスクラップ材から製造された鍛造素
材は、ほぼ同等の材料特性を有しており、鍛造加工に適用できることが明らかとなった。
今後、工場内未利用スクラップ材から製造された鍛造素材を用いて鍛造加工を行い、鍛造
プロセス条件が製品の特性に及ぼす影響を検討する。また、その他の工場内未利用リサイ
クル材についても前処理条件の検討、鍛造素材化条件の検討そして鍛造加工を行い、アッ
プグレードリサイクルに向けた課題抽出を行う。
Ⅲ-91
③ (2)-2
固体リサイクル材の諸特性に及ぼす混入物の影響評価
固体リサイクルは、スクラップを再溶解することなくそのまま直接熱間強加工に供する
ことによりリサイクルする方法である。本法の特徴として、再溶解を省くことができため
省エネプロセスであること、リサイクルと同時に組織制御を行うことができるためリサイ
クル材の高性能化が達成できることが挙げられる。特に、後者はアップグレードリサイク
ルの実現を示唆するものであるといえる。
しかし、本法はスクラップ表面に付着している不純物がリサイクル時に内部に混入して
しまうという致命的な欠点を有している。特にマグネシウム合金の場合、スクラップ表面
には強固で厚い酸化膜があり、この酸化膜が不純物としてリサイクル内部に混入すること
が予想される。したがって、鍛造用ビレットへの適応に必要な変形能を確保するためには、
混入物の影響を評価することはきわめて重要である。そこで、本研究では、表面酸化膜量
が 多 い 切 削 粉 か ら 再 生 し た 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 機 械 的 性 質 と 微 視 組 織 (混 入 物 サ イ ズ 等 )を
調 べ 、 混 入 物 の 影 響 を 評 価 し た (「 混 入 酸 化 物 影 響 評 価 」 )。 次 に 、 本 プ ロ ジ ェ ク ト の 中 で
実施されている過熱水蒸気処理されたスクラップから再生された固体リサイクル材の機械
的 性 質 と 微 視 組 織 を 調 べ 、 過 熱 水 蒸 気 処 理 の 有 効 性 の 原 因 を 明 ら か に し た (「 過 熱 水 蒸 気
処 理 有 効 性 評 価 」 )。
1) 混 入 酸 化 物 影 響 評 価
AZ91Mg 合 金 切 削 粉 (切 削 油 付 着 な し 、 長 さ 約 3mm、 幅 約 1mm、 厚 さ 約 0.1mm)を 、
押 し 出 し 温 度 673K、 押 し 出 し 比 45:1 の 条 件 で 大 気 中 で 熱 間 押 し 出 し を 行 い 、 固 体 リ サ
イ ク ル 材 を 作 製 し た 。 ま た 、 AZ91 合 金 イ ン ゴ ッ ト を 同 じ 条 件 で 熱 間 押 し 出 し し 比 較 材 と
し た 。 引 張 り 試 験 に よ り 得 ら れ た サ ン プ ル の 機 械 的 性 質 を 調 べ た 。 ま た 、 TEM や EPMA
等により微視組織観察を行なった。
図 Ⅲ .2.3-59 は EPMA に よ る 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 酸 素 元 素 分 析 結 果 で あ る 。 酸 化 物 が 分
散 し て 存 在 し て い る こ と が わ か る 。 そ の 間 隔 は 約 10∼ 20μ m で あ っ た 。 こ の 酸 化 物 は 、
切削粉表面の酸化膜が熱間押し出し時に内部に混入したものと考えられる。
Extrusion direction
20μm
図 Ⅲ.2.3-59 EPMA による固 体 リサイクル材 の
酸素元素分析結果
Ⅲ-92
図 Ⅲ .2.3-60 に 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 写 真 を 示 す 。 直 径 0.3∼ 2μ m の 粒
子が観察された。このような粒子は、インゴットから作製された比較材には見られなかっ
た 。 EDS 元 素 分 析 の 結 果 、 こ れ ら の 粒 子 に 強 い 酸 素 ピ ー ク が 見 ら れ た 。 し た が っ て 、 こ
れ ら の 粒 子 は 図 Ⅲ .2.3-58 に 見 ら れ た 混 入 し た 酸 化 物 で あ る と 考 え ら れ る 。 混 入 酸 化 物 は
粒 内 に も 一 部 見 ら れ た が (図 Ⅲ .2.3-60(a))、 そ の 多 く は 粒 界 に 見 ら れ た (図 Ⅲ .2.3-60(b))。
図 Ⅲ.2.3-60 固 体 リサイクル材 の透 過 型 電 子 顕 微 鏡 写 真
(a)粒 内 に見 られた混 入 酸 化 物 、(b)粒 界 に見 られた混 入 酸 化 物
図 Ⅲ .2.3-61 は 固 体 リ サ イ ク ル 材 と 比 較 材 の 光 学 顕 微 鏡 観 察 写 真 で あ る 。 固 体 リ サ イ ク
ル 材 の 結 晶 粒 径 は 14.1μ m、 比 較 材 の 結 晶 粒 径 は 13.5μ m で あ っ た 。 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 は
熱間押し出し中に動的再結晶により結晶粒が微細化することが知られている。したがって、
固 体 リ サ イ ク ル 材 、 比 較 材 と も に 13∼ 14μ m 程 度 の 微 細 な 結 晶 粒 組 織 を 示 し た の は 、 熱
間押し出し中に動的再結晶が生じたためと考えられる。本研究の結果、固体リサイクル材
と比較材の結晶粒径はほぼ同じであった。このことから、固体リサイクル材の混入した酸
化粒子は、押し出し中の再結晶挙動および粒成長挙動にあまり影響を及ぼさないことが示
唆される。
図 Ⅲ.2.3-61 固 体 リサイクル材 と比 較 材 の光 学 顕 微 鏡 観 察 写 真
(a)固 体 リサイクル材 、(b)比 較 材
表 Ⅲ .2.3-12 に 固 体 リ サ イ ク ル 材 と 比 較 材 の 室 温 引 張 試 験 の 結 果 を 示 す 。 固 体 リ サ イ ク
ル 材 は 引 張 強 度 348MPa、 0.2%耐 力 255MPa、 破 断 伸 び 12%と ス ク ラ ッ プ か ら 再 生 さ れ
たにも関わらず、高い強度と大きな伸びを示した。これらの値は、インゴットを熱間押し
出しし作製した比較材とほぼ同じ値である。一般にリサイクル材では、混入物が原因で延
Ⅲ-93
性が低下する傾向にある。しかし、固体リサイクル材では混入物による延性低下が見られ
なかった。このことから、固体リサイクル法は高性能な再生材を創製できるリサイクルプ
ロセスであると言える。
表 Ⅲ.2.3-12 固 体 リサイクル材 と比 較 材 の室 温 引 張 試 験 の結 果
(拡 散 が 関 与 し な い )室 温 に お け る ボ イ ド 核 生 成 の メ カ ニ ズ ム と し て 、 応 力 起 因 (stress
criterion)と エ ネ ル ギ ー 起 因 (energy criterion)が あ る (1) 。 本 実 験 結 果 を 詳 細 に 検 討 し た 結
果 、 混 入 酸 化 物 の ボ イ ド 核 生 成 の 機 構 は 応 力 起 因 に 関 係 し て い る こ と が わ か っ た (2) 。 こ の
結果は、混入物の無害化を考える場合応力起因メカニズムが有効であることを示唆してい
る。しかし、破壊挙動はボイドの核生成だけではなく、その成長および連結にも関係して
いる。今後このような視点も考慮に入れて、混入物無害化の指針を提示する必要がある。
図 Ⅲ .2.3-62 に 固 体 リ サ イ ク ル 材 と 比 較 材 の 引 張 強 度 (左 図 )、 破 断 伸 び (右 図 )と 試 験 温
度 の 関 係 を 示 す 。 こ こ で 、 ひ ず み 速 度 は 3.3x10 -3 s -1 一 定 で あ る 。 左 図 か ら わ か る よ う に 、
固体リサイクル材はいずれの温度においても比較材とほぼ同じ引張強度を示した。一方、
伸 び に 関 し て は 、 473K∼ 753K の 範 囲 に お い て 両 者 に 大 き な 違 い が 見 ら れ た 。 例 え ば 、
比 較 材 は 673K で 約 200% の 大 き な 伸 び を 示 し た も の の 、 固 体 リ サ イ ク ル 材 は わ ず か 50%
し か 伸 び な か っ た 。 ま た 、 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 473K-573K に お け る 伸 び 値 は 373K の そ
れ に 比 べ 小 さ く な っ た 。 こ の よ う に 固 体 リ サ イ ク ル 材 は 比 較 材 に 比 べ 高 温 で の 伸 び (延 性
や 加 工 性 )が 低 か っ た 。 以 上 の こ と か ら 、 混 入 酸 化 物 は 高 温 延 性 (鍛 造 性 )に 悪 影 響 を 及 ぼ
すことが示唆される。
図 Ⅲ.2.3-62 固 体 リサイクル材 と比 較 材 の引 張 強 度 (左 図 )、破 断 伸 び
(右 図 )と試 験 温 度 の関 係
Ⅲ-94
図 Ⅲ .2.3-63 は 753K に お け る 固 体 リ サ イ ク ル 材 と 比 較 材 の 最 大 応 力 (左 図 )、 破 断 伸 び
(右 図 )と ひ ず み 速 度 の 関 係 で あ る 。 比 較 材 の 3.3x10 -4 s -1 の ひ ず み 速 度 感 受 性 指 数 は 約 0.3
であった。このことから、比較材の変形は転位クループが支配的であることがわかる。一
方 、 固 体 リ サ イ ク ル 材 の ひ ず み 速 度 感 受 性 指 数 は 約 0.5 と 高 か っ た 。 こ の 高 い ひ ず み 速 度
感受性指数から、固体リサイクル材の変形は粒界すべりが支配的であったことが示唆され
る。このように、固相線温度に近い高温では、固体リサイクル材と比較材の変形機構に違
いが見られた。
図 Ⅲ.2.3-63 753K における固 体 リサイクル材 と比 較 材 の最 大 応 力 (左 図 )、
破 断 伸 び(右 図 )とひずみ速 度 の関 係
伸 び に つ い て 両 者 を 比 較 す る と 、 3.3x10 -3 s -1 以 上 の ひ ず み 速 度 領 域 で は 固 体 リ サ イ ク
ル 材 は 比 較 材 よ り 伸 び が 低 い も の の 、 3.3x10 -4 s -1 に お い て 固 体 リ サ イ ク ル 材 は 比 較 材 と
同 様 の 200%近 い 大 き な 伸 び を 示 し た 。 こ の よ う に 、 固 体 リ サ イ ク ル 材 は 比 較 材 に 比 べ 高
温での伸びは低くなる傾向にあるが、温度を固相線付近まで高くし、かつ変形速度を遅く
することにより、比較材とほぼ同等の伸びを示すようになる。
図 Ⅲ .2.3-64 は 温 度 753K、 ひ ず み 速 度 3.3x10 -4 s -1 の 条 件 で 破 断 ま で 変 形 さ せ た 試 験 片
の表面を走査型電子顕微鏡で観察したものである。両材料とも粒界すべりの痕跡が見られ
たが、固体リサイクル材のほうが比較材に比べ粒界すべりはより多く発生していた。この
こ と は 、 図 Ⅲ .2.3-63 で 述 べ た 高 い ひ ず み 速 度 感 受 性 指 数 の 結 果 と 一 致 す る 。 固 体 リ サ イ
クル材のほうが粒界すべりが生じやすかった理由は、混入した酸化物が粒成長を抑制し微
細結晶粒組織が保持されたためと考えられる。前述したように、固体リサイクル材の伸び
は固相線近傍の高温になると回復する傾向にあった。これは、固体リサイクル材の場合固
相線近傍の高温になっても混入した酸化物が結晶粒成長を抑制し微細粒組織が保持される
ため、粒界すべりが生じやすくなり大きな伸びが得られたためと考えられる。以上のこと
から、リサイクル材を鍛造する場合、固相線にちかい高温で鍛造することにより混入した
不純物の悪影響が無害化できることが示唆される。
Ⅲ-95
図 Ⅲ.2.3-64 温 度 753K、ひずみ速 度 3.3x10 -4 s -1 の条 件 で破 断 まで
変 形 させた試 験 片 の表 面 、(a)固 体 リサイクル材 、(b)比 較 材
2) 過 熱 水 蒸 気 処 理 有 効 性 評 価
産 業 技 術 総 合 研 究 所 か ら 入 手 し た 2 種 類 の AZ31M g 合 金 固 体 リ サ イ ク ル 材 (一 つ は 過
熱 水 蒸 気 処 理 を 施 し た AZ31M g 切 削 粉 か ら 再 生 さ れ た 固 体 リ サ イ ク ル 材 (以 下 、前
材
処理
)、 も う 一 つ は 過 熱 水 蒸 気 処 理 さ れ て い な い 切 削 粉 か ら 再 生 さ れ た 固 体 リ サ イ ク ル (以
下 、非 前 処 理 材
)
の機械的性質を圧縮試験により調べた。なお、ここで使用された切削
粉は実際に操業されている工場から排出されたものであり、切削油の付着が著しいもので
あ っ た 。 ま た 、 光 学 顕 微 鏡 や EPMA に よ り 組 織 観 察 を 行 な っ た 。
図 Ⅲ .2.3-65 に 室 温 圧 縮 試 験 に よ る 真 応 力 ― 真 ひ ず み 曲 線 を 示 す 。 前 処 理 材 の 最 大 強 度
お よ び 0.2%耐 力 、 破 断 ひ ず み は そ れ ぞ れ 357MPa、 153MPa、 22.4%で あ っ た 。 一 方 、 非
前 処 理 材 の 最 大 強 度 お よ び 0.2%耐 力 、 破 断 ひ ず み は そ れ ぞ れ 295MPa、 144MPa、 20.9%
であった。このように、前処理材は非前処理材に比べ強度、破断ひずみともに高い値を示
し 、 過 熱 水 蒸 気 処 理 は 固 体 リ サ イ ク ル 材 の (室 温 )機 械 的 性 質 の 向 上 に 有 効 で あ る こ と が 実
証された。
(a)
図 Ⅲ.2.3-65
(b)
室 温 圧 縮 試 験 による AZ31 合 金 固 体 リサイクル材 の
真 応 力 ―真 ひずみ曲 線 、(a)非 前 処 理 材 、(b)前 処 理 材
図 Ⅲ .2.3-66 は 前 処 理 材 お よ び 非 前 処 理 材 の 試 験 前 の 光 学 顕 微 鏡 観 察 写 真 で あ る 。 い ず
れの材料も押し出し方向と平行に黒い筋が見られた。この黒い筋は、リサイクル時に混入
した不純物と考えられる。本実験の場合、切削油が付着している切削粉を使ったことから、
不純物は酸化物だけではなく炭化物も含まれていると考えられる。
Ⅲ-96
図 Ⅲ.2.3-66 AZ31 合 金 固 体 リサイクル材 の試 験 前 の光 学 顕 微 鏡 観
察 写 真 、(a)非 前 処 理 材 、(b)前 処 理 材
図 Ⅲ .2.3-67 は 図 Ⅲ .2.3-66 に 見 ら れ た 黒 い 筋 を 拡 大 し た も の で あ る 。 非 前 処 理 材 の 黒 い
筋を詳細に観察すると、矢印で示したように、切削粉が十分に接合されておらずクラック
が形成されているように見える箇所が観察された。一方、前処理材においても黒い筋は観
察されたが、非前処理材に見られた切削粉の不十分な接合に起因するクラックの生成はほ
とんど観察されなかった。
図 Ⅲ.2.3-67 図 Ⅲ.2.3-66 に見 られた黒 い筋 の拡 大 図 、(a)非 前 処 理
材 、(b)前 処 理 材
図 Ⅲ .2.3-68 に 各 材 料 の EPMA に よ る 元 素 分 析 の 結 果 を 示 す 。 非 前 処 理 材 で は 酸 素 と と
もに炭素が残存していたが、前処理材では炭素はほとんど残存していなかった。このこと
から、過熱水蒸気処理は炭素すなわち切削油の除去にきわめて有効な手段であることがわ
かる。一方、酸素の残存量は、前処理材のほうが非前処理材よりも多かった。これは、過
熱水蒸気処理の際に切削粉表面により厚い酸化膜が形成されたためと考えられる。このよ
うに、過熱水蒸気処理は切削油の除去には有効であるが、酸化物の混入を助長してしまう
結 果 と な っ た 。 し か し 、 図 Ⅲ .2.3-65 で 示 し た よ う に 、 機 械 的 性 質 を 調 べ た 結 果 、 前 処 理
材のほうが優れた特性を示した。これは、酸化物のほうが炭化物より母相との結合が強い
ためと考えられる。
Ⅲ-97
図 Ⅲ.2.3-68 AZ31 合 金 固 体 リサイクル材 の EPMA による元 素 分
析 結 果 、(a)非 前 処 理 材 、(b)前 処 理 材
図 Ⅲ .2.3-69 に 破 断 面 近 傍 の 微 視 組 織 を 示 す 。 非 前 処 理 材 の 破 断 面 は い び つ で 、 破 面 近
傍にはボイドやクラックが数多く観察された。一方、前処理材の破断面は比較的平坦で、
破面近傍においてもあまりボイドやクラックは見られなかった。このような違いは、図
Ⅲ .2.3-67 で 示 し た よ う に 、 非 前 処 理 材 は 変 形 前 に す で に ボ イ ド や ク ラ ッ ク が 存 在 し て お
り、このような欠陥が破壊挙動に影響を及ぼしたためと考えられる。
図 Ⅲ.2.3-69 破 断 面 近 傍 の微 視 組 織 、(a)(b)非 前 処 理 材 、(c)(d)前 処 理 材
図 Ⅲ .2.3-70 に 573K 圧 縮 試 験 に よ る 真 応 力 ― 真 ひ ず み 曲 線 を 示 す 。 両 材 料 と も ε =1 以 上
変 形 し て も 破 壊 し な か っ た た め 、 試 験 は ε =1 変 形 し た と こ ろ で 中 断 し た 。 前 処 理 材 の 最 大
応 力 お よ び 0.2%耐 は そ れ ぞ れ 58.4MPa、 55.5MPa で あ っ た 。 一 方 、 非 前 処 理 材 の 最 大
Ⅲ-98
応 力 お よ び 0.2%耐 力 は そ れ ぞ れ 52.7MPa、 49.2MPa で あ っ た 。 こ の よ う に 室 温 と 同 様
573K に お い て も 前 処 理 材 は 非 前 処 理 材 に 比 べ 高 い 強 度 を 示 し た 。 し か し 、 そ の 違 い は 小
さかった。
(a)
図 Ⅲ.2.3-70
(b)
573K 圧 縮 試 験 による AZ31 合 金 固 体 リサイクル材 の真 応
力 ―真 ひずみ曲 線 、(a)非 前 処 理 材 、(b)前 処 理 材
図 Ⅲ .2.3-71 は 573K で 変 形 ( ε =1)し た 後 の 微 視 組 織 写 真 で あ る 。 両 材 料 と も 大 き な ボ イ
ドやクラックは観察されず、微視組織に大きな違いは認められなかった。以上のように、
室温に比べ高温では、過熱水蒸気処理の影響は小さくなった。
図 Ⅲ .2.3-71
573K で 変 形 ( ε =1) し た 後 の 微 視 組 織 写
真 、(a)(b)非 前 処 理 材 、(c)(d)前 処 理 材
Ⅲ-99
3) ま と め
固 体 リ サ イ ク ル の 実 用 性 を 検 討 す る こ と を 目 的 に 、「 混 入 酸 化 物 影 響 評 価 」 お よ び 「 過
熱 水 蒸 気 処 理 有 効 性 評 価 」 を 行 っ た 。「 混 入 酸 化 物 影 響 評 価 」 で は 、 切 削 粉 か ら 再 生 し た
固 体 リ サ イ ク ル 材 の 機 械 的 特 性 と 組 織 (混 入 物 の 状 態 )調 べ た 。「 過 熱 水 蒸 気 処 理 有 効 性 評
価」では、本プロジェクトの中で実施されている過熱水蒸気処理されたスクラップから再
生された固体リサイクル材の機械的性質と微視組織を調べた。その結果、以下の結論が得
られた。
1) 切 削 粉 か ら 再 生 さ れ た 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 微 視 組 織 を 調 べ た 結 果 、 混 入 酸 化 物 の サ イ
ズ は 0.3∼ 2μ m で あ っ た 。 ま た 、 リ サ イ ク ル 材 の 結 晶 粒 径 は 14.1μ m と 微 細 で あ っ た 。
2) 室 温 引 張 試 験 の 結 果 、 固 体 リ サ イ ク ル 材 は 比 較 材 と ほ ぼ 同 じ 高 い 強 度 と 伸 び を 示 し た 。
一般にリサイクルにより不純物が混入し延性が低下する傾向にあるが、固体リサイク
ル材では延性低下が見られなかった。
3) 高 温 引 張 り 試 験 の 結 果 、 高 温 に お い て も 固 体 リ サ イ ク ル 材 は 比 較 材 と ほ ぼ 同 じ 引 張 り
強 度 を 示 し た 。 一 方 、 試 験 温 度 が 473K 以 上 に な る と 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 伸 び は 比 較
材より小さくなった。このように、混入酸化物は高温延性に悪影響を及ぼした。しか
し 、 試 験 温 度 を 固 相 線 付 近 (758K)ま で 上 げ る と リ サ イ ク ル 材 の 延 性 は か な り 回 復 し 、
比較材とほぼ同等の伸びを示すようになった。以上のことから、リサイクル材を鍛造
する場合、鍛造温度を固相線付近まで上げることにより混入物の悪影響を無害化でき
ることが示唆された。
4)
過熱水蒸気処理を行った固体リサイクル材は、室温において非前処理材に比べ高い強
度 、 破 断 ひ ず み を 示 し た 。 過 熱 水 蒸 気 処 理 は 固 体 リ サ イ ク ル 材 の (室 温 )機 械 的 性 質 の
向上に有効であることが実証された。
5)
これは、過熱水蒸気処理によって切削油が除去され、炭化物の混入が抑制されたため
と考えられる。
6) 以 上 の 結 果 か ら 、 十 分 な 変 形 能 を 有 す る 固 体 リ サ イ ク ル 材 を 得 る に は 、 混 入 物 を 1∼
2μm 以 下 に ま で 微 細 に し て 分 散 さ せ る こ と 、 結 晶 粒 径 を 10∼ 20μ m 以 下 ま で 微 細 化 す
ること、炭化物の混入を抑制すること、が重要であると結論される。また、固相線に
近い高温で鍛造することが望ましいと言える。
Ⅲ-100
2.3.3
達成度
個別項目
中間目標
③ (1)-2
リサイクル
前処理技術
(分 離 ・ 精
製)
切削粉等の
工場内スク
ラップの含
有 炭 素 を
0.1 % 以 下
にするリサ
イクルシス
テムを構築
し、マグネ
シウムハン
ドリング時
の安全性評
価方法に必
要な主要因
を明らかに
する
③ (1)-3
単体分離及
びハンドリ
ングの安全
性評価
③ (2)-1
固体リサイ
クル材の鍛
造素材化技
術の開発
③ (2)-2
固体リサイ
クル材の諸
特性に及ぼ
す混入物の
影響評価
固体リサイ
クル材の鍛
造用ビレッ
トへの適用
目 的 と し
て、圧縮率
0.64 以 上 の
変形性を発
現させるた
めに必要な
組織および
不純物組成
の限界を明
ら か に す
る。
中間目標達成の
ための自主目標
到達
度
工場内スクラップ
の有機、無機不純
物除去技術につい
て加熱容器などを
組み合わせたバッ
チ式小規模実験に
より検討し、実用
化のために必要な
デ ー タ を 蓄 積 す
る。
○
マグネシウムの粉
塵爆発に関する基
礎特性の解明とし
て、従来の試験方
法により、爆発下
限濃度、最小着火
エネルギー、最小
着火温度等に対す
るマグネシウム粉
の組成、粒度、濃
度の影響を実験的
に明らかにする。
○
マグネシウム粉を
固化成形を行い、
押出し温度、押出
し比などの影響を
調べ、鍛造素材化
のための問題点を
明らかにする。
○
リサイクル材の力
学特性を測定する
とともに、組織観
察を行い混入物の
状態を観察する。
○
最終目標
従来のカスケー
ド型リサイクル
(低品位素材へ
のリサイクル)
に代えて、リサ
イクル材が新材
料と同等の特性
を維持する市中
スクラップリサ
イクル技術の基
盤開発を行い、
総合的なマグネ
シウムリサイク
ル の 信 頼 性 評
価、データ集積
を行う。
大量排出時を想
定した市中回収
品スクラップの
前処理技術(分
別、分離、不純
物除去など)の
課題摘出し、市
中スクラップリ
サイクル基盤技
術を提案する。
Ⅲ-101
達成度および今後
の方策
工場内スクラップに
ついて、表面付着炭
素 量 0.1% 以 下 を 達
成。今後、これまで
に確立した過熱水蒸
気処理技術を市中回
収品の塗料除去技術
へと展開、さらに廃
車スクラップの物理
選別・無機不純物除
去技術を高度化し、
新規前処理技術とし
て提案。
基礎的粉塵爆発特
性、爆発要因の解明
などを行い、爆発防
止対策に重要な基盤
データを取得。今
後、実際のリサイク
ル現場に適用可能な
安全性評価技術とし
て、着火性火花の特
性評価、検知方法に
ついて検討。
前処理の検討、適正
な固化成形プロセ
ス、条件を求めると
ともに、塑性加工性
を評価し、リサイク
ルと高性能化の同時
達成を実現。今後、
スクラップ材の分
別、分離、不純物除
去等、前処理技術の
精度を高め、混入物
の影響を少なくした
固体リサイクル技術
の開発および鍛造素
材製造技術の開発を
行う。
2.3.4 参 考 文 献
2.3
マグネシウム合金のリサイクルに係る課題抽出
1 ) 伊 藤 茂 : 特 集 非 鉄 金 属 業 界 マ グ ネ シ ウ ム の リ サ イ ク ル 、 自 動 車 技 術 、 56 ( 2002 )
p.71-76
2) 鎌 土 重 晴 他 : マ グ ネ シ ウ ム 合 金 の 成 形 加 工 技 術 の 最 前 線 、 シ ー エ ム シ ー 出 版 ( 2005)
p.235
2.3.1
研 究 開 発 項 目 ③ (1)「 リ サ イ ク ル 前 処 理 技 術 ( 分 離 、 精 製 、 安 全 性 評 価 )」
1) マ グ ネ シ ウ ム の 生 産 ・ 需 要 ・ 価 格 等 は 日 本 マ グ ネ シ ウ ム 協 会 の 資 料 か ら 作 成
2) 自 動 車 ・ IT 機 器 ・ 家 電 製 品 用 マ グ ネ シ ウ ム 製 品 の 動 向 と リ サ イ ク ル に 関 す る 調 査 報 告
書 、 平 成 15 年 (2003 年 )3 月 、 経 済 産 業 省 製 造 産 業 局 非 鉄 金 属 課
3) マ グ ネ シ ウ ム 産 業 の 現 状 と 課 題 、 経 済 産 業 省 製 造 産 業 局 非 鉄 金 属 課 資 料 か ら 作 成
4) (社 )日 本 自 動 車 工 業 会 (JAMA)の 統 計 速 報 か ら 作 成
5) (財 )自 動 車 検 車 登 録 情 報 協 会 の 資 料 か ら 作 成
6) (財 )自 動 車 リ サ イ ク ル 促 進 セ ン タ ー の 資 料 か ら 作 成
7) (社 )電 子 情 報 技 術 産 業 協 会 (JEITA)の 資 料 か ら 作 成
8) 鉱 物 資 源 マ テ リ ア ル フ ロ ー
マ グ ネ シ ウ ム (Mg)、 金 属 資 源 情 報 セ ン タ ー (JOGMEC)
平 成 18 年 度 調 査 レ ポ ー ト
9) ア ル ミ ニ ウ ム の 不 純 物 無 害 化 ・ マ テ リ ア ル リ サ イ ク ル 技 術 開 発 事 後 報 告 書 、 NEDO 研
究 評 価 委 員 会 、 平 成 18 年 (2006 年 )2 月
10)パ ソ コ ン 3R 回 収 セ ン タ ー 資 料 よ り 作 成
11)(社 )電 気 通 信 事 業 者 協 会 資 料 よ り 作 成
12)素 形 材 年 鑑 、 (財 )素 形 材 セ ン タ ー の 資 料 等 か ら 作 成
2.3.2
研 究 開 発 項 目 ③ (2)「 リ サ イ ク ル 材 の 特 性 評 価 」
③ (2)-1
1)
馬渕
③ (2)-2
固体リサイクル材の鍛造素材化技術の開発
守(京都大学)提供.
固体リサイクル材の諸特性に及ぼす混入物の影響評価
1) K.Tanaka, T.Mori and T.Nakamura, Philos. Mag. 21(1970)267.
2) Y.Chino and M.Mabuchi, Mater. Trans. 49(2008)1093.
Ⅲ-102
Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて
1.成 果 の 実 用 化 可 能 性
実用化を阻む壁は、素材コスト、加工の困難性、生産性の低さ、及びこれらを主な要
因としてのトータルコストが高いとことにある。また、信頼性に関する指標としての耐食
性、機械特性、安全性のハードルも高いものがあり、これまで産業界での使用実績が少な
いことと相まって、積極的にマグネシウム部材を採用することに躊躇があるのが実態であ
ると考えられる。しかし、これらの問題が解決されれば、基本的な強度特性の面から見て
も、マグネシウムは各種の用途における軽量化部材として、十分に実用化の道が開けてく
るものと期待される。
一 方 、 機 械 特 性 の 目 標 と し て は 、 静 的 引 張 り 強 度 で 現 状 の 250MPa → 350MPa( 伸 び
15%以 上 )、 疲 労 強 度 (10 7 回 )で 現 状 の 120MPa→ 170MPa と い う 、 現 状 の 一 般 的 な ア ル ミ
合金と同等以上の挑戦的な目標を掲げている。疲労強度に関しては材料の評価と評価技術
そのものの検討を開始したところであり、中間評価意向の中心課題となる。
本プロジェクトでは、特殊成分を利用することなく、一般的な組成の素材から塑性加
工により組織制御を行なうことで、上記の目標を達成することを志向し、結果としてマグ
ネシウムの部材コストの大幅な削減による利用拡大を目指すものである。
プ ロ ジ ェ ク ト は 図 Ⅳ .1-1 に 示 す よ う に 、 マ グ ネ シ ウ ム に 係 る 新 規 の 、 あ る い は 普 遍 的 な
ピストン
輸送機器
実用化技術の展開
オイルパン
締結フランジ部が高い締結力を維持
締結フランジ部の構造に対して、アルミ部材の80%
の締結力維持、ADC12並の耐クリープ性
足回り部品
高温での高強度、高疲労強度
引張強度340MPa、疲労強度170MPa以上
耐熱温度200℃,疲労強度80MPa、AC8A材並
耐熱合金の三次元複雑形状鍛造プリ
フォームの鋳造+鍛造(部分強化)
室温での高強度及び高疲労強度、高靱性
引張強度300MPa、伸び15%以上
疲労強度110MPa(10 7 回)
耐熱合金の鍛造プリフォームの
鋳造+鍛造+熱処理
室温強度
高疲労強度
微細結晶粒鍛造用ビレット+鍛造
学術的基礎知識
新規性・普遍性
(物性論)
易成形性
三次元複雑形状鍛造プリフォームの
鋳造+鍛造
高延性
高靭性
高温強度(耐熱性)
表面平滑性
微細結晶粒鍛造用ビレット
(50μm)+強加工処理+鍛造
高塑性流動性
室温での高強度及び高疲労強度、高靱性
引張強度300MPa、伸び15%以上
共通基盤技術
筐体
厚板状鍛造プリフォーム+順送プレスを用いた連続鍛造
平滑度が高く、高いリブを持つ、高精密大型部材の成形
A3サイズ大の高精密大型部材の実用部材を製造する技術を開発
複雑形状高精度部材の成形
抜き勾配ゼロ
部品
情報家電
ロボット部品関係
図 Ⅳ.1-1 マグネシウム鍛 造 部 材 の実 用 化 に向 けた取 り組 み
Ⅳ-1
アーム
ブラケット
学術的知見の深化と応用によって、マグネシウムの特性を活かした鍛造技術の高度化に係
る基盤研究を行って、この成果をマグネシウム鍛造部材の実用化研究開発に反映してきた
が、中間評価時点までの研究開発において、以下のような成果が得られている。
〔鍛造素材技術〕
・ 微 細 凝 固 組 織 を 有 す る 鍛 造 素 材 向 け の 鋳 造 径 φ 50∼ 80μm の 連 続 鋳 造 技 術 の 開 発 (課 題
④)
〔加工技術〕
・ 鍛 造 用 の 実 用 素 材 と し て の 連 続 鋳 造 材 (AZ91 合 金 、 AZX911 合 金 )の 鍛 造 特 性 の 解 明 (課
題②)
・ 素 材 の 組 織 制 御 (結 晶 粒 微 細 化 )と 成 形 を 一 工 程 で 行 な う 鍛 造 プ ロ セ ス の 提 案 と サ ー ボ プ
レ ス に よ る プ ロ セ ス 実 証 (課 題 ① )
・ 素 材 の 組 織 因 子 と 変 形 機 構 及 び 材 料 特 性 等 の 解 明 と デ ー タ ベ ー ス 構 築 (課 題 ① )
・ 第 二 相 粒 子 の 利 用 技 術 と し て の β 相 (Mg 17 Al 12 相 )の 動 的 不 連 続 析 出 を 利 用 し た 動 的 再 結
晶 粒 子 粗 大 化 抑 制 に よ る 高 機 能 化 技 術 の 確 立 (課 題 ② )
〔安全性・リサイクル技術〕
・発火データの拡充とプラスチック、無機物共存下での発火データの集積による実リサイ
ク ル プ ロ セ ス 中 に お け る 安 全 性 評 価 (課 題 ③ )
・リサイクルにおけるバッチ式過熱水蒸気処理雰囲気除去による有機不純物処理技術の確
立 (課 題 ③ )
・市中スクラップ処理を想定した廃自動車シュレッダーサンプルでの無機不純物除去、乾
式 分 離 等 の 前 処 理 技 術 の 検 討 (課 題 ③ )
・ 固 体 リ サ イ ク ル 材 の 諸 特 性 評 価 を 通 じ た 鍛 造 用 素 材 化 ポ テ ン シ ャ ル の 検 討 (課 題 ③ )
〔実用化検証〕
・ 業 界 初 の 鍛 造 用 微 細 結 晶 粒 連 続 鋳 造 ビ レ ッ ト の 量 産 技 術 の 開 発 (課 題 ④ )
・自動車エンジン向けオイルパン締結部の軸力の維持と電食対策を目的に、電食対策コス
ト圧縮、ボルト締結部フランジ肉厚低減、ボルト本数低減等に資するダイキャストに
よるニアネット成形/鍛造一体加工技術の開発と部材の高機能化及び軽量化効果の検
討 (課 題 ⑤ )
・微細凝固組織を有する連続鋳造ビレット素材に対する熱処理と予備変形を組み合わせた
鍛 造 前 処 理 技 術 、 鍛 造 条 件 の 最 適 化 に よ る 高 機 能 鍛 造 技 術 の 開 発 に よ る 高 機 能 化 (高 信
頼 性 自 動 車 部 品 用 に 強 度 25% ア ッ プ の 340MPa を 達 成 )(課 題 ⑤ )
・微細凝固組織を有する連続鋳造ビレット素材鍛造前処理による増延化処理、鍛造工程の
最適化と試作鍛造、鍛造部材の評価による、輸送機器やロボット等の中型部品を想定
し た 事 業 化 の た め の 最 適 鍛 造 工 法 の 開 発 (課 題 ⑤ )
Ⅳ-2
・鍛造技術とダイカスト、またはプレスの加工技術の複合を基盤とし、新規の金型技術及
び 特 殊 な 金 型 コ ー テ ィ ン グ に よ る 摩 擦 特 性 制 御 に よ る 、 薄 板 材 か ら の ボ ス ・リ ブ の よ う
な 複 雑 3 次 元 形 状 加 工 技 術 の 開 発 (課 題 ⑥ )
・過熱水蒸気を用いたマグネシウム合金スクラップに対する表面付着物除去技術は受入基
準 と な る 残 留 カ ー ボ ン 量 及 び 残 留 油 脂 量 を 共 に 0.1% 以 下 を ク リ ア で き る 見 通 し を 得 た 。
(課 題 ⑦ )
以上のような成果を踏まえて、実用化の障害となる問題点に対する技術的到達レベルの
観点から実用化の可能性を概観すると以下のようになる。
(1) 素 材 コ ス ト
業 界 初 の 微 細 結 晶 粒 連 続 鋳 造 ビ レ ッ ト の 製 造 技 術 を 確 立 し 、 従 来 材 (DC 鋳 造 ビ レ ッ ト )
に比べ凝固組織がより微細で均一であることにより、鍛造用素材として優れていることを
明らかにした。このような連続鋳造ビレットは、既存のアルミニウムビレットの例に倣え
ば、格段の製造コストの削減が期待でき、マグネシウム鍛造部材の課題であった素材コス
トの問題が解決することにより、実用化が大幅に近づくと期待される。
(2) 加 工 の 困 難 性
素材の組織因子と変形機構及び材料特性等を考慮した変形機構の解明とデータ集積、
及びこれに基づくデータベース構築により最適加工条件を確立する。これによりマグネシ
ウムの加工性が改善することが期待される。さらにその最適な加工条件を精密に実現する
サーボプレス加工機による実証試験を通じて、マグネシムの加工性に纏わる問題は克服さ
れる可能性がある。また、鍛造用連続鋳造ビレットの量産化により高機能素材が広範に利
用できるようになれば、加工技術とのマッチングによって鍛造部材の量産化が可能になる
と考えられる。
(3) 生 産 性
マグネシウムの変形機構に基づく最適加工条件を容易に実現するサーボプレス機によ
る加工技術が量産レベルで確立することにより、材料特性や形状の面での高歩留まりの加
工が可能となり、また微細結晶粒連続鋳造ビレットの実用化により、素材の塑性加工性付
与のための前工程である押出し加工を不用とする、業界初の押出しレス鍛造を実現した。
これらの技術により、従来技術を凌駕する高い生産性の実現が期待される。
一方、マグネシウム部材を実用するに当たって信頼性の観点からは以下のような間接
的な効果が得られ、これも実用化に向けて重要な要因になると考えられる。
(4) 耐 食 性
一 般 的 に 高 ア ル ミ ニ ウ ム 含 有 量 (6wt%程 度 以 上 )の 合 金 に お い て 耐 食 性 が 向 上 す る こ と
が 知 ら れ て い る 。 現 状 の 主 要 材 料 AZ31 合 金 に 対 し て 、 本 プ ロ ジ ェ ク ト を 通 じ て 、
AZ91D や Ca 含 有 難 燃 性 AZX911 合 金 等 の よ り 高 Al 合 金 の 加 工 も 問 題 な く 可 能 と な っ た 。
このことは耐食性を要求される現実の多くの用途に対しては極めて有用である。
(5) 機 械 特 性
Ⅳ-3
マグネシウムは一定の条件下であれば単なる圧縮加工によっても、静的引張り強度
300MPa 以 上 (伸 び 10%以 上 )(AZ91 材 )が 容 易 に 得 ら れ る こ と を 実 証 し て お り 、 軽 量 高 強
度 材 と し て の 基 本 的 特 性 に つ い て は 問 題 が 無 い 。 ま た 、 疲 労 強 度 (10 7 回 )を 一 般 的 な レ ベ
ル と し て の 現 状 120MPa か ら 170MPa へ 改 善 す る 課 題 に つ い て は 、 そ の 評 価 を 開 始 し た
ところである。疲労特性の評価及び疲労特性向上のための技術開発は中間評価以降の中心
的な研究開発課題として位置づけている。
(6) 信 頼 性
動的再結晶等の組織因子や変形機構を考慮した鍛造条件を厳密に制御することにより、
材料組織が顕著に均質化し、結果として材料特性が安定化することが明らかとなった。こ
のことは鍛造部材にとって基本的な性質として期待されるものであり、実用上、重要な点
である。
(7) 安 全 性
リサイクルにおけるハンドリング技術開発を通じて、マグネシウムの工業的な利用局
面での安全性評価技術の整備したことは、広範な実用における基盤的な技術として重要な
成果であると考えられる。工場内スクラップリサイクル技術についてはほぼ確立しつつあ
り、これは素材コスト改善に大きく反映すると考えられる。また、バンドリング技術につ
いては、実操業上の安全性に直結するプラスチックや無機物質との混合状態における安全
性評価を進め、実用上の安全性を確保できるハンドリング技術を確立しつつある。これら
の安全性保障技術は、実用上は勿論として、ユーザーのマグネシウム部材の広範な導入に
対する心理的な障壁を取り除く効果が大きいものと考えられる。
このように、マグネシウムの主要な問題点が量産レベルで克服できる可能性が開けた
ことで、今後、劇的なトータルコストの削減が期待され、様々なアプリケーションに対す
る実用化の目処が立ったということができる。以下に、主要な応用分野について、実用化
の展望を示す。
〔素材分野〕
微細結晶粒連続鋳造ビレットの実用化により、素材の塑性加工性付与のための前工程
である押出し加工を不用とする、業界初の押出しレス鍛造を実現した。この技術により、
連続鋳造ビレット製造技術は鍛造素材の分野で大きな事業化の可能性が開けたと考えられ
る。
〔輸送機器、ロボット〕
二輪車足回り部品やロボット用アームブラケットのような部材には室温での高強度、
高疲労特性、高靭性などの特性が要求されるが、マグネシウム鍛造部材は、これらの要求
を満足する高機能化を付与することができると期待される。
現在の主要な素形材技術であるダイキャストに比較して、実用レベルの加工コスト達
成 の 目 処 が 立 ち 、 今 後 の 改 善 に よ り 鍛 造 ・プ レ ス 成 形 本 来 の 生 産 性 が 確 立 さ れ れ ば 、 素 形
材技術として主要部分を担う低コストの製造技術へと脱皮する可能性が見えてきた。この
Ⅳ-4
ように、鍛造部材は信頼性と強度を求められる輸送機器に対して広く用途が開けると予想
される。
〔情報機器分野〕
情報機器分野の軽量・薄物部材では、ダイキャストを主とする鋳造部材に対して、高
精度で贅肉の少ない設計ができ、大幅な生産性の向上が期待される。これまで不可能で
あ っ た 温 間 プ レ ス 領 域 で 、 薄 板 材 か ら ボ ス ・リ ブ の よ う な 3D 形 状 の 加 工 が 実 用 化 レ ベ ル
で加工可能となったことにより、この分野での広範な実用化が期待できる。さらに、ニア
ネ ッ ト シ ェ イ プ の ダ イ カ ス ト 材 を 元 材 と し 、 鍛 造 ・プ レ ス す る こ と で 、 設 計 の 自 由 度 を 必
要 と す る 複 雑 形 状 で も 短 期 立 ち 上 げ ・大 量 生 産 す る 技 術 開 発 の 目 処 が つ き 、 短 納 期 で ト ー
タルコストに優れた量産品の供給が不可欠なこの分野での実用の道が開けると考えられる。
〔リサイクル分野〕
近年、切屑の固体リサイクル法等の新方式が提案される等、リサイクル分野の事業化
機運が高まりつつある中で、本研究開発方式では低酸素状態で発火・燃焼の危険性を排除
出来るため、従来よりも安全な処理が可能となり、安全・コスト面で競合技術に対して優
位性を持つと考えられることから、実用化の可能性は高いと期待される。
2.事 業 化 の シ ナ リ オ
上記の技術開発成果を基にして事業化のシナリオを代表的な各分野ごとに以下のように
纏められる。
〔素材分野〕
マグネシウム合金の小径連続鋳造ビレットは、鍛造加工用素材として全くの新規素材
である。従って、本研究開発の成果による溶湯から直接製造可能な連続鋳造ビレットの量
産化は、早期に低コストの小型鍛造用マグネシウム合金素材ビジネスとして事業化ができ
ると期待される。事業化は、プロジェクト終了時点で年商数十トンレベルから開始し、小
型 鍛 造 品 の 市 場 の 新 た な 創 出 と 醸 成 、 拡 大 に 伴 っ て 10 年 後 に は 1,000∼ 2,000 ト ン /年 程
度 に 達 す る と 予 想 さ れ る 。 こ れ に 伴 い 、 素 材 価 格 も 当 初 の 1,500 円 /kg か ら 量 産 効 果 や 設
備 投 資 に よ り 、 鍛 造 業 界 の 目 標 と さ れ る 800 円 /kg 以 下 の 実 現 が 可 能 と 見 込 ま れ る 。
〔輸送用機器、ロボット分野〕
実 用 化 の シ ナ リ オ は 、 1)高 機 能 鍛 造 用 素 材 の 開 発 、 2)プ ロ セ ス 制 御 に よ る 高 生 産 性 の 量
産 鍛 造 技 術 の 確 立 、 3)プ ロ ト タ イ プ 実 証 、 4)製 品 事 業 化 の 手 順 で 進 む も の と 考 え ら れ る 。
こ れ ま で の 成 果 で 明 ら か な よ う に 、 中 間 評 価 段 階 で 1)∼ 3)ま で の 目 処 が 立 っ た こ と に よ
り 、 引 き 続 き プ ロ ト タ イ プ 実 証 を 行 い 、 プ ロ ジ ェ ク ト 終 了 時 点 の 平 成 22 年 度 の 事 業 化 を
目指す。事業化は二輪・四輪自動車等の製造メーカーと一体となって進める。特に既存の
アルミ部材の代替のためにはコスト競争力の確立が事業化の前提であり、低コスト素材の
Ⅳ-5
供 給 と 相 ま っ て 、 ア ル ミ 部 材 と 容 積 換 算 で 同 等 の 製 品 コ ス ト 1400 円 /kg を 立 上 げ 時 の 目
処とする。事業化の主なアイテムは、スポーツ用モータサイクル部品、自動車部品、介護
用 ロ ボ ッ ト 部 材 、 新 幹 線 用 コ ネ ク タ ー 部 品 、 光 学 機 器 (レ ン ズ 筐 体 等 )等 が 視 野 に 入 っ て い
るが、新規アイテムの探索とともに、既存のアルミ鍛造部材の代替に引続き、コスト競争
力の改善とともにアルミ鋳造部材の代替を進めて行く。当面は、実用化ニーズと波及効果
の観点からの絞り込みを進める。
〔情報家電用機器分野〕
プロジェクトを通じた異業種交流による水平連携の構築により、新規の技術開発とビ
ジネスチャンスの拡大が期待される。中間評価段階においては、プレス技術に関して従来
材 か ら マ グ ネ シ ウ ム へ の 転 換 技 術 、 及 び 鍛 造 用 素 材 と し て の ダ イ カ ス ト 材 と 鍛 造 ・プ レ ス
技術を組み合わせた複合鍛造技術が確立しており、まず最初に小型製品である携帯電話等
の機構部品の事業化を目指す。この技術の研究開発の進展に伴って、プロジェクト終了時
点 の 平 成 22 年 度 の 大 型 外 観 製 品 の 鍛 造 ・プ レ ス 技 術 の 確 立 と 、 こ れ 以 後 の で き る だ け 早
い 時 点 で の 大 型 外 観 製 品 (ノ ー ト パ ソ コ ン 筐 体 )の 事 業 化 を 目 指 す 。
〔リサイクル分野〕
マ グ ネ シ ウ ム の リ サ イ ク ル 対 象 と な る ス ク ラ ッ プ の 年 間 発 生 量 は 、 2006 年 で は 約
1,100t と 見 積 も ら れ て お り 、 市 場 規 模 と し て は 現 状 で は ま だ 小 さ い 。 し か し 、 将 来 的 に
はマグネシウムの利用が急拡大するものと考えられており、予測として自動車業界での使
用 量 増 に 伴 っ て 、 使 用 済 み 自 動 車 (ELV)か ら の マ グ ネ シ ウ ム 回 収 が 2020 年 に 6,300∼
18,900t /年 、 2030 年 に 10,400∼ 27,100t/年 と な る と 見 積 も ら れ て い る 。 こ の よ う な 市 場
の成長に伴い、リサイクル処理装置の需要増加も同様に見込まれるため、市場動向に沿っ
た事業化計画の立案と実行を進めてゆくことが重要となる。
3.波 及 効 果 ・ 市 場 規 模
輸送機器へのマグネシウム部材の適用の拡大にともなうマグネシウム製品市場の拡大
は、波及効果として軽量化による消費エネルギーの削減や動作性能の向上が求められる光
学 機 器 (レ ン ズ 筐 体 等 )や 産 業 機 器 (ロ ボ ッ ト ア ー ム 等 )、 福 祉 機 器 な ど の 分 野 に 大 き な 波 及
効果を及ぼすものと期待される。また、量産効果による材料コストの低下や材料としての
実績の蓄積により、各種の情報家電製品やその他のプラスチック代替用途への実用化展開
が可能と考える。
経済的な市場規模については、本研究開発で想定している上記の分野に限って見ても、
研 究 開 発 終 了 ∼ 10 年 後 の 時 点 で 素 材 分 野 で 数 十 億 円 /年 、 輸 送 用 機 器 ・ ロ ボ ッ ト の 分 野 で
は 300∼ 500 億 円 /年 、 そ の う ち ア ル ミ 熱 間 鍛 造 品 か ら の 転 換 が 50 億 円 / 年 (総 需 要 の
10% 転 換 )及 び ア ル ミ 鋳 造 工 法 製 品 か ら の 転 換 で 100 億 円 /年 (総 需 要 の 1% 転 換 )程 度 が
見込まれる。
一方、本研究開発においては、マグネシウムという新しい材料の産業応用を目指し、素
Ⅳ-6
材からエンドユーザーまで一貫した体制で研究開発に取組む過程で、異業種を含む有機的
な水平連携の構築がなされている。これを通じて、技術開発の促進に留まらず、広範な分
野への成果普及、技術の認知度の拡大、新しい技術の社会的な受容促進、さらにはこれら
の結果の総体としての大きな経済的波及効果が期待される。
Ⅳ-7
Ⅴ.成果資料
1. 論文
1. ”Noncombustible Mag9nesium Alloy Processed by Rotary-Die Equal Channel
Angular Pressing Method” , A.Watazu, I.Shigematsu, H.Xinsheng, K.Suzuki and
N.Saito, Materials Science Forum, 544(2007), 419-422
2. ”Dynamic Recrystallization during Hot Extrusion in Mg-3Al-0.1Y Alloy”, T. Noro,
T. Uesugi, Y. Takigawa, M. Tsujikawa, H. Mabuchi and K. Higashi, Advanced
Materials Research, 26-28(2007), 433-436
3. ” Dynamic Recrystallization during Hot Extrusion in AZ31 and AZ80 Alloys”, M.
Honda, T. Uesugi, Y. Takigawa, H. Mabuchi and K. Higashi, Advanced Materials
Research, 26-28(2007), 449-452
4. ”Dynamic recrystallization behavior during compressive deformation in Mg-Al-CaRE alloy”, M.Hakamada, A.Watazu, N.Saito and H.Iwasaki, Journal of Materials
Science, 43(2008), 2066-2068
5. ”Tensile properties of forged Mg-Al-Zn-Ca alloy”, M.Hakamada, A.Watazu, N.Saito
and H.Iwasaki, Materials Transactions, 49(2008), 554-558
6. ” Effects of homogenization annealing on dynamic recrystallization in Mg-Al-CaRE (rare earth) alloy “, M.Hakamada, A.Watazu, N.Saito and H.Iwasaki, Materials
Transactions, 49(2008), 1032-1037
7. "Effect of Initial Grain Size on Dynamically Recrystallized Grain Size in AZ31
Magnesium Alloy", Y. Takigawa, M. Honda, T. Uesugi and K. Higashi, Mater.
Trans., 49 (2008) in press.
8.
“Mechanical properties of AZ31 Mg alloy recycled by severe deformation”,
Y.Chino, T.Hoshika, J.-S.Lee and M.Mabuchi, J. Mater. Res., 21 (2006), 754-760.
9. “Influence of distribution of oxide contaminations on fatigue behavior in AZ31 Mg
alloy recycled by solid-state processing”, Y.Chino, T.Furuta, M.Hakamada and
M.Mabuchi, Mater. Sci. Eng. A, 424 (2006), 335-360.
10. “Fatigue behavior of AZ31 magnesium alloy produced by solid-state recycling”,
Chino, T.Furuta, M.Hakamada and M.Mabuchi, J. Mater. Sci., 41 (2006), 32293232.
11. ”Enhanced corrosion properties of pure Mg and AZ31 Mg alloy recycled by solidstate process”、 Y.Chino, T.Hoshika and M.Mabuchi, Mater. Sci. Eng. A, 435-436
(2006), 275-281.
12. “Ignitability
characteristics
of
aluminium
and
magnesium
dusts
that
are
generated during the shredding of post-consumer wastes” M. Nifuku, S. Koyanaka,
H. Ohya, C. Barre, M. Hatori, S. Fujiwara, S. Horiguchi, I. Sochet, Journal of Loss
Prevention in the Process Industries, 20 (2007), 322-329
Ⅴ-1
13. “Moderation of dust explosions”, P. R. Amyotte, M. J. Pegg, F. I. Khan, M. Nifuku,
T. Yingxin, Journal of Loss Prevention in the Process Industries, 20 (2007) 675687
14. ”Mechanical and corrosion properties of AZ31 magnesium alloy repeatedly
recycled by hot extrusion”、 Y.Chino, T.Hoshika and M.Mabuchi, Mater. Trans., 47
(2007), 1040-1046.
15. “Superior corrosion resistance and mechanical properties of a Mg alloy recycled by
solid-state process”, M.Mabuchi and Y.Chino, Mater. Sci. Forum, 539-543 (2007),
1656-1661.
16. 固 化
成 形 し た Mg 切 削 粉 の 機 械 的 特 性 、 村 越 庸 一 、 初 鹿 野 寛 一 、 松 崎 邦 男 、 粉 体 お
よ び 粉 末 冶 金 、 54(2007), 653-657
17. “Deformation
characteristics
of
recycled
AZ91
Ma
alloy
containing
oxide
contaminants”, Yasumasa Chino and Mamoru Mabuchi, Materials Transactions, 49
(2008), 1093-1100.
2. 解 説 論 文
1.
熱間押出を利用したマグネシウム合金切削屑の新再生法
、千野靖正、馬渕守、軽
金 属 , 57( 2007) 250-255.
2.
固体
リサイクル法によるマグネシウム合金スクラップのアップグレードリサイク
ル 、 千 野 靖 正 、 馬 渕 守 、 ア ル ト ピ ア , 38( 2008), 16-21.
3.
―固 相 リ サ イ ク ル 法 に つ い て 、 千 野 靖 正 、
マグネシウム合金の新リサイクル技術
馬 渕 守 、 工 業 技 術 、 56 (2008), 72-75.
4.
“リ サ イ ク ル や 廃 棄 物 処 理 等 に お け る 粉 塵 爆 発 と そ の 特 性 ”、 荷 福 正 治 、 粉 体 と 工 業 、
41( 2008)
3. 学 会 発 表
1.
Noncombustible Magnesium Alloy Processed by Rotary-Die Equal Channel
Angular Pressing Method
, A.Watazu, I.Shigematsu, H.Xinsheng, K.Suzuki and
N.Saito, The 8th international symposium on eco-materials processing and design
(2007 年 01 月 12 日 )
2.
マ
グネシウム合金の上昇運動支配型クリープにおける耐クリープ性のサーベイと
評価
,上杉徳照、山口昌宏、瀧川順庸、東
健司,軽金属学会
第 111 回 秋 期 大 会
( 2006 年 11 月 19 日 )
3.
圧縮変形に伴う展伸用マグネシウム合金の組織変化,小川健二、徐世偉、鎌土
晴、小島陽,日本金属学会北陸信越支部
重
平 成 18 年 度 連 合 講 演 大 会 ( 2006 年 12 月
2 日)
4.
Mg-Al 系 合 金 の 高 温 圧 縮 変 形 特 性 , 小
川健二、徐世偉、鎌土重晴、小島陽,第
112 回 軽 金 属 学 会 春 期 大 会 ( 2007 年 5 月 11 日 )
Ⅴ-2
5.
Forging properties of Mg-Al alloys at elevated temperatures
, K. Ogawa,
S. W. Xu, S. Kamado and Y. Kojima, 2nd Asian Symposium on Magnesium Alloys
(2007 年 10 月 2 日 )
6.
Dynamic Recrystallization during Hot Extrusion in Mg-3Al-0.1Y Alloy
, T.
Noro, T. Uesugi, Y. Takigawa, M. Tsujikawa, H. Mabuchi and K. Higashi,
PRICM6― the Sixth Pacific Rim International Conference on Advanced Materials
and Processing (2007 年 11 月 7 日 )
7.
Dynamic Recrystallization during Hot Extrusion in AZ31 and AZ80 Alloys
, M.
Honda, T. Uesugi, Y. Takigawa, H. Mabuchi and K. Higashi, PRICM6― the
Sixt
h Pacific Rim International Conference on Advanced Materials and
Processing (2007 年 11 月 7 日 )
8.
Mg-Al 系 合 金 の 高 温 圧 縮 変 形 特 性 , 小 川 健 二 、 徐 世 偉 、 鎌 土 重 晴 、 小 島 陽 , 第
113 回 軽 金 属 学 会 秋 期 大 会 ( 2007 年 11 月 11 日 )
9.
AZ91 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 の 圧 縮 特 性 お よ び 機 械 的 性 質 に 及 ぼ す Ca 添 加 の 影 響 , 小
川 健 二 、 除 世 偉 、 鎌 土 重 晴 、 小 島 陽 , 日 本 機 械 学 会 第 15 回 機 械 材 料 ・ 材 料 加 工 技
術 講 演 会 ( M&P2007)( 2007 年 11 月 18 日 )
10.
Mg-Al-Ca 合 金 の 高 温 変 形 時 の ミ ク ロ 組 織 変 化 , 松 本 尚 也 、 徐 世 偉 、 本 間 智 之 、 鎌
土 重 晴 、 小 島 陽 , 日 本 金 属 学 会 北 陸 信 越 支 部 ・ 日 本 鉄 鋼 協 会 平 成 19 年 度 北 陸 信 越 支
部 連 合 講 演 会 ( 2007 年 12 月 1 日 )
11.
Mg-Al-Ca-RE 合 金 の 動 的 再 結 晶 に 及 ぼ す 均 質 化 熱 処 理 の 影 響 , 袴 田 昌 高 、 渡 津
章 、 斎 藤 尚 文 、 岩 崎 源 , 日 本 金 属 学 会 2008 年 春 期 大 会 ( 2008 年 3 月 27 日 )
12.
AZ31 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 の 動 的 再 結 晶 挙 動 に お よ ぼ す 初 期 粒 径 の 影 響
,本田雅義、
上 杉 徳 照 、 瀧 川 順 庸 、 東 健 司 , 日 本 金 属 学 会 2008 年 春 期 大 会 ( 2008 年 3 月 27 日 )
13. マ グ ネ シ ウ ム 合 金 の 積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー に 及 ぼ す 溶 質 原 子 濃 度 の 影 響 , 内 田 修
平、
本 田 雅 義 、 上 杉 徳 照 、 瀧 川 順 庸 、 東 健 司 , 第 114 回 軽 金 属 学 会 春 期 大 会 ( 2008 年 5
月 10 日 )
14. 高 温
変 形 に 伴 う AZ91 マ グ ネ シ ウ ム 合 金 の ミ ク ロ 組 織 変 化
,松本尚也、徐世偉、
小 川 健 二 、 本 間 智 之 、 鎌 土 重 晴 、 小 島 陽 , 第 114 回 軽 金 属 学 会 春 期 大 会 ( 2008 年 5
月 10 日 )
15.
Contribution
of
Magnesium Alloys
Solid
Solution
Strengthening
in
High
Creep
Resistant
, Y. Takigawa, T. Uesugi, K. Kurushima, H. Tsuda, S. Mori
and K. Higashi, IMRC2008 ― International Materials Research Conference 2008
(2008 年 6 月 12 日 )
16.
“Ignitability characteristics of aluminium and magnesium dusts relating to the
shredding processes of industrial wastes”, M. Nifuku, S. Koyanaka, H. Ohya, C.
Barre,
M.
Hatori,
S.
Fujiwara,
S.
Horiguchi
and
I.
Sochet,
The
Sixth
International Symposium on Hazards, Prevention, and Mitigation of Industrial
Explosions( 2006 年 8 月 28 日 )
Ⅴ-3
17. “Moderation of dust explosions”, P. R. Amyotte, M. J. Pegg, F. I. Khan, M. Nifuku,
T. Yingxin, The Sixth International Symposium on Hazards, Prevention, and
Mitigation of Industrial Explosions ( 2006 年 8 月 29 日 )
18. 固 化
成 形 し た Mg 切 子 の 組 織 と 機 械 的 性 質 、( 社 ) 粉 体 粉 末 冶 金 協 会 平 成 18 年 度
秋 季 大 会 ( 2006 年 )
19.
マグネシウムリサイクルプロセスでの安全性評価 、荷福正治、古屋仲茂樹、大矢
仁 史 、 産 総 研 環 境 エ ネ ル ギ ー シ ン ポ ジ ウ ム ( 2007 年 5 月 21 日 )
20. 熱 間 押 出 し し た AZ31 切 削 粉 の 組 織 と 成 形 性 、 村 越 庸 一 、 初 鹿 野 寛 一 、 松 崎 邦 男 、
( 社 ) 粉 体 粉 末 冶 金 協 会 平 成 19 年 度 春 季 大 会 、( 2007 年 6 月 6 日 )
21. “C o n s o l i d a t i o n o f M g A l l o y C h i p s b y H o t E x t r u s i o n a n d T h e i r M e c h a n i c a l
P r o p e r t i e s ”, Y. M u r a k o s h i , K . H a t s u k a n o , K . M a t s u z a k i , M P 3 2 0 0 7 (2 0 0 7 年
9 月 15)
22.
熱 間 押 出 し AZ31 切 削 粉 の 変 形 挙 動 と 鍛 造 性 、初 鹿 野 寛 一 、 村 越 庸 一 、 松 崎
邦 男 、 第 58 回 塑 性 加 工 連 合 講 演 会 ( 2007 年 10 月 26 日 )
23. “Deformation Behavior and Forgeability of Hot-Extruded AZ31 Chips”, 1 0 t h
A s i a n S y m p o s i u m o n P r e c i s i o n F o r g i n g K . H a t s u k a n o , Y. M u r a k o s h i , K .
M a t s u z a k i , K . S h i n o z a k i ( 2 0 0 7 年 11 月 6 日 )
24.
レーザー3 次元計測を用いた非鉄金属破砕片の識別分離技術 、 古屋仲茂樹、小林
賢 一 郎 、 大 矢 仁 史 、 環 境 資 源 工 学 会 第 119 回 例 会 ( 2 0 0 7 年 11 月 6 日 )
25. 安 全
なリサイクルのためのマグネシウム粉の発火性測定 、荷福 正治、古屋仲 茂
樹 、 大 矢 仁 史 、 環 境 資 源 工 学 会 第 119 回 例 会 ( 2 0 0 7 年 11 月 6 日 )
26.
過熱水蒸気処理されたマグネシウムスクラップ材の固化とその機械的特性 、
村 越 庸 一 、 初 鹿 野 寛 一 、 松 崎 邦 男 、 大 矢 仁 史 、 木 村 正 人 、 (社 ) 粉 体 粉 末 冶 金
協 会 平 成 1 9 年 度 秋 季 大 会 ( 2 0 0 7 年 11 月 1 9 日 )
27.
マ グ ネ シ ウ ム 切 削 粉 の 固 化 成 形 と そ の 機 械 的 性 質 、 初 鹿 野 寛 一 、 第 30 回 半
溶 融 ・ 半 凝 固 加 工 分 科 会 ( 2007 年 12 月 5 日 )
28. 固 化 成 形 プ ロ セ ス が マ グ ネ シ ウ ム 合 金 切 削 粉 の 脱 脂
に及ぼす効果 、 村越庸一,松
崎 邦 男 , 西 郷 宗 玄 , 大 矢 仁 史 , 木 村 正 人 、( 社 ) 粉 体 粉 末 冶 金 協 会 平 成 20 年 度 春 季
大 会 ( 2008 年 )
29.
レーザー3 次元解析を用いた非磁性金属破砕片(銅、アルミ、マグネシウム)の識
別 分 離 、 古 屋 仲 茂 樹 、 小 林 賢 一 郎 、 大 矢 仁 史 、 資 源 ・ 素 材 学 会 春 季 大 会 ( 2008 年 3
月 27 日 )
30.
固 相 リ サ イ ク ル 法 に よ り 再 生 し た AZ91 切 削 屑 再 生 材 の 常 温 ・ 高 温 変 形 特 性 、 馬
渕 守 、 千 野 靖 正 、 日 本 金 属 学 会 2008 年 春 期 ( 第 142 回 ) 大 会 ( 2008 年 3 月 27 日 )
31. 粉 塵
爆 発 に お け る 着 火 性 、 荷 副 正 治 、 大 矢 仁 史 、 古 屋 仲 茂 樹 、 粉 体 工 学 会 2008 年
度 春 期 研 究 発 表 会 ( 2008 年 5 月 20 日 )
32. “Assessment of explosion risk of magnesium dust”, M. Nifuku, H. Ohya
and S.
Koyanaka, The Seventh International Symposium on Hazards, Prevention, and
Ⅴ-4
Mitigation of Industrial Explosions( 2008 年 7 月 8 日 )
4. 特許
1.
特 願 2008-111521
非磁性金属の識別方法及び識別回収装置
5. その 他 ( イ ベ ン ト 出 展 、 セ ミ ナ ー 等 )
1.
爆発の
発 生 に 関 す る 特 性 値 と 予 防 対 策 、 荷 福 正 治 、 国 際 粉 体 工 業 展 2006 粉 塵 爆
発 セ ミ ナ ー ( 2006 年 11 月 9 日 )
2.
粉塵
爆 発 の 基 礎 と 災 害 防 止 、 荷 福 正 治 、 粉 塵 爆 発 セ ミ ナ ー ( 2007 年 4 月 18 日 )
3.
静電
気 の 測 定 と 対 策 技 術 、 荷 福 正 治 、 日 本 粉 体 工 業 技 術 協 会 第 43 回 粉 体 専 門 講 座
( 2007 年 11 月 8 日 )
4.
レーザ
ー3 次元解析を用いた非鉄金属スクラップの識別分離技術 、北海道洞爺湖
サ ミ ッ ト 記 念 環 境 総 合 展 2008( 2008 年 6 月 19-21 日 )
Ⅴ-5
Fly UP