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・犬は祖先のオオカミ同様、群れ社会で生きる動物であり、群れには

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・犬は祖先のオオカミ同様、群れ社会で生きる動物であり、群れには
高山 仁志 立命館大学文学部人文学科心理学専攻
(Dog Life Design ocean style 代表 ドッグトレーナー)
家庭で飼われている「ペットの犬」のしつけや、いわゆる「問題行動」の改善を生業とする者を、一般
にはドッグトレーナーと称する。そして、多くのトレーナーが「しつけ」や「問題行動の改善」にあたり、基
本的な指針としているのが、俗に「リーダー論」と呼ばれる考え方である。
ドッグトレーナーという職業が持つ機能・文脈と照らし合わせたとき、この「リーダー論」は成立するの
か。「そんなリーダー論で大丈夫か?」 実は、大丈夫ではない。
20%
・飼い主は、「犬を飼う」ことで広がるはずであった行動の選択
肢が狭まったとき、すなわち飼い主の「行動的 QOL」(望月,
1995)が低下したときに、「トレーナー」に依頼する(図 1)。つま
り、「ドッグトレーナー」とは、「行動的 QOL が低下した飼い主」
の依頼を受けて、成り立つ職業である。
・日本の犬のしつけでは「飼い主が犬のリーダーになりなさい」
という、「リーダー論」と呼ばれる考え方が一般的だが、果たし
てそれでよいのか。
・2006 年~2010 年の間に出版された「犬のしつけ関連書籍」
から無作為に 30 冊を選び、以下の 2 点を調べた。
1. いわゆる「リーダー論」は本当に一般的であるのか?
2. いわゆる「リーダー論」はしつけをどのように考るのか?
成犬からのしつけ
(問題行動の改善)
子犬からのしつけ
(問題の予防)
80%
図1.全体の相談者数に占める、予防と改善の割合。
2007年11月~2010年4月
23%
リーダー論
非リーダー論
77%
・2006 年~2010 年の間出版された「しつけ関連書籍」の割合
から、「リーダー論」は一般的であることがわかった(図 2)。
図2.しつけ関連書籍における、「リーダー論」を基本とした
考え方の割合。2006年~2010年。
・犬は祖先のオオカミ同様、群れ社会で生きる動物であり、群れにはリーダー(ボス)が必要である
・飼い主が犬のリーダーにならないと、犬が問題行動を起こす→犬の問題行動の原因は、飼い主の責任
「飼い主がトレーナーに依頼する」のは…
…「何か困ったことがあって、それを解決したい」→行動の選択肢の拡大の依頼=しつけ支援
しかし、「リーダー論」とは…
…しつけがうまくいかない原因=飼い主がリーダーになれていない→「飼い主の自己責任」
「飼い主のしつけ支援」という機能・文脈に、「自己責任論」は成立しない
「犬のしつけ」とは、「行動修正」にほかならず、トレーナーとは「飼い主を支援する」という機能・文脈を持っ
た職業である。また、そもそも「リーダー論」には科学的根拠がない。「根拠がない」「ドッグトレーナーの機
能・文脈」にそぐわない「リーダー論」ではなく、ABA などの科学的検証に耐えうる方法論を採用すべき。
望月昭(1995),行動的 QOL:「行動的健康」へのプロアクティブな援助,行動医学研究,6(1),pp.8~17.
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