...

全文 [PDF:1.75MB]

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

全文 [PDF:1.75MB]
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
Color 1000i Press
要
旨
【キーワード】
Color 1000i Pressは、毎分100ページの印刷ス
デジタル印刷、高生産性、用紙汎用性、リモー
ピードを持つゼログラフィー方式のカラーオンデマ
トサービス、メタリックトナー、ゴールドト
ンドパブリッシングシステムである。本商品は、かね
ナー、シルバートナー、クリアトナー
てからプロ市場向けに定評のあるColor 1000 Press
の機能を継承して、オフセット印刷に迫る画質と高い
見当精度を実現している。さらにオプショントナーと
してメタリックトナー(ゴールドトナー、シルバート
ナー)などの特色トナーを選択可能とし、さらなる表
現力の向上を実現している。また、プリントサーバー
には新規ハードウェアと最新のサーバーソフトウェ
アを搭載したPX 1000 Print Server 3を採用し、さ
らなる高速処理と画質改善や機能向上を実現してい
る。本稿では、このColor 1000i Press、および
PX1000 Print Server 3に採用している主な技術に
ついて紹介する。
Abstract
【Keywords】
digital printing, high productivity, versatility of
paper, remote service, metallic toner, gold toner,
silver toner, clear toner
執筆者
箕田
Color 1000i Press is a xerographic color on-demand
publishing system with a printing speed of 100 pages
per minute. This product inherited features from Color
1000 Press—a well-received product in the
production printer market—to achieve good image
quality close to that of offset printing, as well as high
registering precision. Moreover, special color toners
such as metallic toners (gold and silver) are also
optionally available, thereby extending the system’s
range of expression even more. As for a print server,
PX 1000 Print Server 3 has been adopted. This print
server is brand-new hardware installed with the latest
server software for faster processing speeds with
improved image quality and features. This paper
introduces the major technologies adopted for Color
1000i Press and PX 1000 Print Server 3.
淳(Atsushi Minoda)
商品開発本部 第一商品開発部
(Product Development & Program Management I,
Product Development Group)
ほか6名
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
131
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
1. はじめに
2. 商品概要
富士ゼロックスが開発した「Color 1000i
本商品は、毎分100ページを出力可能なプリ
Press」は、従来機「Color 1000 Press」の
ンターエンジンと、高速処理を可能としたコン
持つプロ市場向けのオンデマンドパブリッシン
トローラー、後処理装置、用紙給紙装置を組み
2
グ機能を継承し、350g/m の厚紙でも毎分
合わせた、印刷を主な業務とするカラープロダ
100ページの高速プリントを実現している。従
クション市場向けの商品である。表1にプリント
来機で提供してきたクリアトナーに、新開発の
機能、表2にコントローラーの主な仕様を示す。
メタリックトナーである、ゴールドトナー、シ
ルバートナーを加えた3色の特色トナーから1
色を選択して使用可能とした。本商品で採用し
3. メタリックトナー
たコントローラー「PX1000 Print Server 3」
本商品は、クリアトナーに加えてメタリック
は上記の特色トナーに対応するとともに、従来
トナーを搭載可能である。本章では、メタリッ
機で採用した「PX1000 Print Server 1」と
クトナーの特徴について述べる。
*1
比較してRIP(Raster Image Processor) 性
能を大幅に向上させている。その他の機能でも、
従来機ユーザーの要望に応えて、細かな改善を
3.1
金属光沢感の発現メカニズム
メタリックトナーを使用した画像は、従来ト
行った。本稿では、新商品「Color1000i Press」
ナーの画像と異なり、金属光沢感(メタリック
を支える商品技術であるメタリックトナー
感)を有している(図1)
。画像がメタリック感
(ゴールドトナー、シルバートナー)、プリン
を発現するためには、光を反射する平板状の光
ター部、およびコントローラーについて説明する。
輝性顔料を紙などのメディアと平行に配置する
ことが必要である。光輝性顔料を平行に配置す
ることで、入射光に対する正反射光成分が増加
してメタリック感が発現する(図2)。
表1
プリント機能
Color 1000i Press specifications
項目
内容
形式
コンソールタイプ
カラー対応
フルカラー
書き込み解像度
2400×2400 dpi
階調/表現色
各色256階調(1,670万色)
ウォームアップ・タイム420秒以下(室温23℃)
A4:100ページ/分
連続プリント
速度
A3:50ページ/分
トレイ1、2
用紙サイズ
定形サイズ:最大A3、最小B5、郵便はがき(日本郵便製)
非定形サイズ:182×182mm~330×488 mm
トレイ1、2
用紙坪量
55~350g/m2
標準:2100枚×2トレイ
給紙方式/
オプション:大容量トレイC2-DS 2100枚×2トレイ
給紙容量
最大給紙容量:8400枚[標準+大容量トレイC2-DS]
出力トレイ容量
500枚(A3)
電源
AC200V ± 10%、50A、50/60Hz共用
7.6kW以下
最大消費電力
スリープモード時:100W以下
レディー時:1500W以下
大きさ
幅2995×奥行1107×高さ1865mm
設置スペース
幅4475×奥行3435mm
質量
1410kg
*1
表2
コントローラー[PX1000 Print Server 3]
PX1000 Print Server 3 specifications
項目
CPU
記憶装置
メモリー容量
サーバーOS名
搭載フォント
内容
インテル®Xeon®プロセッサーE5-2637v2(3.5 GHz)×2
ハードディスク:2TB+2TB×3、DVD Multiドライブ
16GB(最大16GB)
Windows® 7 Professional(64ビット)
日本語7書体(リュウミンL-KLTM、中ゴシックBBBTM、
太ミンA101TM、太ゴB101TM、じゅん101TM、見出
ミンMA31TM、見出ゴMB31TM)
Adobe® PostScript® 3TM、PPML、VIPP
ページ記述言語
プリントデータ
PS、PDF、EPS、TIFF、JPEG
フォーマット
Windows Vista®(32ビット)
Windows Server® 2008(32ビット)
Windows® 7(32ビット)
Windows® 8(32ビット)
Windows® 8.1(32ビット)
Windows Vista®(64ビット)
Windows Server® 2008(64ビット)
Windows® 7(64ビット)
Windows Server® 2008 R2(64ビット)
Windows® 8(64ビット)
対応OS
Windows Server® 2012(64ビット)
Windows® 8.1(64ビット)
Windows Server® 2012 R2(64ビット)
Mac OS 9.2.2
Mac OS X 10.6 Snow Leopard
Mac OS X 10.7 Lion
OS X 10.8 Mountain Lion
OS X 10.9 Mavericks
OS X 10.10 Yosemite
インターフェイス Ethernet 1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T
対応プロトコル TCP/IP(LPD、FTP、SMB)、AppleTalk、Bonjour
電源
AC100V±10%、4.0A、50/60Hz共用
最大消費電力
0.4kW以下
大きさ
幅160×奥行562×高さ428mm
質量
21.0kg
RIP:ページ記述用語のコマンドを解読するシステム
132
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
従来混練粉砕製法
EA応用製法
光輝性顔料が
トナー表面に露出
シャープメルト
ポリエステル
樹脂
光輝性顔料
ワックス
光輝性顔料とメディアとの
並列配置が困難
図4
3.3
図1
メタリックトナーサンプル例
Samples of metallic toner
従来混練粉砕製法メタリックトナーとEA応用
製法メタリックトナー
Metallic toner produced by the conventional
pulverization method and EA method
従来トナー製法での課題とEA製法
による改善技術
従来の混練粉砕法トナーでは扁平形状制御や
トナー中の光輝性顔料の配向制御は非常に困難
正反射光
であった。また粉砕時に光輝性顔料がトナー表
入射光
面に露出することで、トナーの電荷の漏えいが
発生し、またシステム内の部材を傷つけること
紙(メディア)
図2
光輝性顔料
金属光沢感の発現
Development of metallic luster
もあるため、ゼログラフィーシステムでの使用
は困難であった(図4)。
今 回 、 当 社 独 自 の EA ( Emulsion
Aggregation)製法を応用し、このような課題
3.2
金属光沢感を実現するトナー要件
を改善したメタリックトナーを開発した。EA製
メタリック画像構造をゼログラフィーシステ
法はサブミクロンのトナー構成粒子を凝集、合
ムで得るためには、トナーを扁平形状とし、光
一することでトナー粒子を形成する。この製法
輝性顔料をトナー長軸方向と平行に配向させて
を応用し、平板状の光輝性顔料とトナー構成粒
含有させる必要がある。トナーが扁平形状のた
子の凝集バランスを精密に制御することで、光
め、ゼログラフィーシステムの転写工程と定着
輝性顔料の周囲にトナー構成粒子を均一に付着、
工程を通過することでメディアに対し平行に配
合一し、トナー長軸方向と平行に光輝性顔料を
置、定着される。これにより図3のようなメタ
含有した扁平トナーの作製が可能となった(図
リック画像構造が形成され、メタリック感を発
5)
。またトナー構成材料で光輝性顔料を均一に
現することができる。
被覆しているため、電荷の漏えいを抑制してゼ
ログラフィーシステムでのハンドリング性を改
定着前
定着後
トナー画像
扁平トナー
光輝性顔料
紙・フィルム
図3
入射光
善した。このような技術により世界初のドライ
ゼログラフィー用メタリックトナーを実現した。
反射光
合一
凝集・付着
紙・フィルム
光輝性顔料
扁平トナーとトナー画像
Flat-shaped toner and toner images
均一付着
トナー化
トナー構成材料
図5
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
メタリックトナーEA製法
EA method for producing metallic toner
133
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
疑似メタリック(CMYトナー + クリアトナー)
デジタル
印 印刷
刷
方
式
メタリックトナー目標値
商業
印刷
オフセット印刷
10
FI 値
0
図8
3.6
20
各印刷方式におけるメタリック感
Metallic property of each printing method
メタリックトナーのFI値設計
本トナーの金属光沢感の目標を設定するため、
トナーとゼログラフィーシステムの技術開発と
並行して、想定した本商品のお客様から必要と
図6
濃色用紙にシルバートナー印刷を行う事例
Sample of silver toner on dark-colored paper
されるメタリック感のレベルについて、デザイ
ナーや印刷知見者にヒアリングを実施した。そ
の結果、被験者の満足度が80%以上得られる
3.4
顔料隠ぺい性によるメディア拡張
FI値を目標値とした。さらにオフセット印刷の
本トナーで使用する光輝性顔料は、表面で光
メタリックガイド色見本サンプルを測定した結
を反射し、光を透過しない。そのため本トナー
果、この目標値はメタリックガイドサンプルの
で作製した画像は隠ぺい性に優れ、下地の影響
範囲内であることを確認した。これまで薄い
を受けにくく、黒紙などの濃色色紙や透明フィ
CMYKハーフトーン画像の上にクリアトナー
ルムなどのさまざまなメディアにメタリック感
を重ねることで、グロス感(光沢感)を活かし
のある画像の形成が可能である(図6)
。
た擬似メタリック画像を提供していた。この擬似
メタリック画像のFI値は1程度であるが、新たに
3.5
メタリック感を表す指標
従来、CMYKトナー画像の見た目の特性は、
開発したメタリックトナー画像はこれと比べて
5倍以上のFI値を発現し、目標を達成した(図8)
。
色再現性と光沢感で管理していた。今回、金属
光沢感を表す指標として、これまでトナー画像
3.7
ゴールドトナーの色設計
評価には使っていなかったFI(Flop Index)値
無彩色のシルバートナーとは異なり、有彩色
とSG(Sparkle Grade)値を新たに用いるこ
のゴールドトナーの色相を決定するため、FI値
とにした。
と同様に、市場の印刷物の色相域調査と市場ヒ
この特性値は、一般にはFI値がメタリック感
アリングを行った。まず市場に流通している雑
を表し、SG値がキラキラ感を表す。メタリック
誌、チラシやパッケージなどの印刷物のゴール
トナーを用いた場合に、どちらが金属光沢感の
ド色について調査し、市場におけるゴールド色
指標として適切かを市場調査した結果、メタ
の色相域を抽出した。次に、市場ヒアリングの
リック感を表すFI値を管理特性として画質設計
結果から、この色相域内において被験者の満足
を行った(図7)。
度が十分に得られるゴールド色の色相を本ト
ナーの目標値とした(図9)。このように、これ
メタリック感(Flop Index)
キラキラ感(Sparkle Grade )
までのオフセット印刷ジョブから代替すること
を狙い、本ゴールドトナーの色相目標値を決定
した。
当たった光が特定の角度で反射さ
れて明るく輝き、角度によっては
明るさや色を感じない
図7
134
当たった光が乱反射されて
キラキラ感じる
メタリック感とキラキラ感
Flop Index and Sparkle Grade
この色相は、光輝性顔料に特定のカラー顔料
を調整添加することで再現している。
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
内やメディアの汚れが発生した。
50
雑誌
チラシ
パッケージ
色相目標
45
b*
40
これを解決するために、メタリックトナー自
体の帯電性向上、キャリア粒子およびトナーに
35
被覆する外添粒子組成の設計を行った。これに
30
より、低帯電のトナーの発生を抑制するととも
25
に、経時ストレスによる帯電性変化も小さくな
20
り、従来のカラートナー同等の帯電性能を得る
15
ことができた(図10)。
10
4.2
5
0
0
5
10
15
20
25
光輝性顔料が用紙面に対して傾き、さらに傾
斜方向にばらつきが生じると、光が特定方向以
a*
図9
光輝性顔料の用紙上への均一配置
ゴールド印刷物の色範囲
Hue angle of printed gold samples
外にも反射するため、メタリック感の損失や面
内ムラとして視認される。
このような問題が発生する印字プロセスは、
4. メタリックトナーに起因する課題
解決
中間転写ベルトからメディアへの転写プロセス
と、定着プロセスである。
転写プロセスにおいて、中間転写ベルトと用
メタリックトナーを使ううえでは、大きく2
紙の移動速度が変動すると、用紙に転写された
つの課題があった。1つめは、従来と異なる平
扁平形状トナーの傾きにばらつきが発生する。
板状の顔料形状によるトナーの帯電特性の確保
しかし、本商品では、ベルト移動速度と用紙搬
で、2つめは、平板状の光輝性顔料を用紙表面
送速度を精度の高い速度制御システムで制御す
と平行にかつ面内に均一に配置することである。
ることで、転写速度を安定化させ、転写プロセ
本章では、この2つの課題を解決するための
スにおいて光輝性顔料の均一な配置を実現した
メタリックトナーの帯電設計と、光輝性顔料の
用紙上への均一配置について説明する。
(図11)。
一方、定着プロセスにおいては、定着器のニッ
プ幅と圧力のパラメーター設計と熱量の制御に
4.1
メタリックトナーの帯電設計
トナーは現像器内で撹拌され、キャリア粒子
と接触することにより、トナー表面が帯電する。
より、生産性を維持しながら、光輝性顔料を用
紙に対して平行に配置することを実現した(図
12)
。
メタリックトナーは、従来のカラートナーよりも
光輝性顔料
帯電分布が広く低帯電のトナー量が多いため、メ
ベルト移動速度
中間転写ベルト
ディアへの転写性の低下や、トナー飛散による機
速度制御
安定化
トナー
メディア
30
存在割合(%)
メディア
メディア搬送速度
低帯電トナー領域
25
20
中間転写ベルト
改善後
改善前
15
速度制御無し
速度制御有り
図11 中間転写ベルトから用紙への転写プロセス
Angles of metallic toner in the transfer process
光輝性顔料
10
5
トナー層
改善後経時
0
メディア
帯電量 q/d(fC/um)
図10 メタリックトナーの帯電分布
Charge distribution of metallic toner
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
図12 メタリックトナー画像断面
Cross section of metallic toner layer
on media
135
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
トナー
> ゴールドトナー、シルバートナー
> EA-Ecoトナー
> EA-Ecoクリアトナー画像表現技術
> VCSEL-ROS
イメージスクリーン
> 大径シ-ムレス中間転写ベルト
> HQデジタルスクリーン
> 高精度レジストレーション
> オーバーコート感光体
> イメージエンハンスメント処理
> デジタル画像位置制御(IReCT)
> 用紙冷却機構
> インラインセンサー
> エアーアシスト機構
> ベルトロール定着機
> ツインデカーラー
図13 Color 1000i Pressを支える主な技術
Color 1000i Press technologies
さらに、メタリックトナー樹脂の溶融特性を
による紙づまり用紙の除去枚数を半減した。さ
最適化することで、用紙上のカラートナーのグ
らに、紙づまり用紙が各モジュール間にまたが
ロス/粒状性などと、メタリック感との両立を
りにくくなるように動作仕様を最適化した。ま
実現した。
た紙づまり発生時には、その箇所を操作パネル
上でより明るく表示させ、発生原因をメッセー
5. プリンター部の性能改善
ジで表示して対処方法の詳細を表示するなど、
操作性の改善も行った。
当社では、全国の営業担当者や保守担当者、
コールセンターなどを通じて日常的にお客様か
ら寄せられた声をVOC(Voice of Customer)
5.2
PC-UI操作性の改善
従来機のVOCから「ストックファイルを探し
として記録している。本商品の開発では、従来機
にくい」、「フィニッシャープロファイルの作成
の技術を流用しつつ、従来機のVOCを元にお客
が難しい」といったことが抽出されている。従
様課題を分析し、改善施策を導入した(図13)
。
来機では、お客様自身で用紙アライメントプロ
本章では本商品で新たに取り組んだ改善項目
ファイルやフィニッシャー接続時の紙折りプロ
を説明する。
ファイル、ストックファイルの作成を行ってい
ただくことが可能である。本商品はそれら機能
5.1
用紙自動排出機能の改善
に加えて、アライメントプロファイルとストッ
従来機のお客様から、
「紙づまりが発生しやす
クライブラリーの設定画面に、スクロール機能
い特殊な印刷用紙を使用する必要があり、紙づ
およびソート機能を追加することで、プロファ
まりの除去に苦労することがある」とのVOCが
イルや各種ストック設定の検索と選択を容易に
あった。
行えるようにした。
従来機は曲率半径の大きい用紙搬送レイアウ
トを採用するとともに、後処理装置接続時には
デカーラ装置(用紙カールを矯正する機構)を
5.3
ストックライブラリー用紙追加
「ストックライブラリーに登録されている用
2つ設置することで、紙づまり対策を施している。
紙の種類が少ない」というVOCに応えて、本商
本商品では、従来機の構成に加えて、用紙自動
品では、ストックライブラリーに15種類の用紙
排出(パージ)機能を実装することで、お客様
を新規に追加した。パール紙やクラフト紙、フィ
136
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
ルム紙
紙、色上質(
(黒)用紙、表
表彰状を想定
定した
用紙な
などを含めた
た。これらの用
用紙とメタリ
リック
トナー
ーとを組み合わ
わせることに
により、効果的
的なア
プリケ
ケーションを可
可能としてい
いる。
5.4
信頼性改善
善
本商
商品には、交
交換インターバ
バルを改善し
した定
着器プ
プレッシャー
ーロール、連続
続印刷時の現
現像剤
劣化を
を抑制する低
低ストレス現像
像器などの信
信頼性
図15 リ
リモートサポートセ
センターによる状態
態監視
Prroduction Remote
e Support Center
改善施
施策を導入し
している。
後述
述するプロダ
ダクションリモ
モートサービ
ビス機
① コールバッ
ックサービス
ス
能によ
よる予兆診断
断と組み合わせ
せることで、さら
プリンター
ーから通知さ
されるアラート(機械状
に安定
定した稼動状
状態を実現して
ている。また
た、紙
態の自動通
通知)を受け
け、リモートサ
サポートセ
粉の多
多い用紙や打
打ち粉を使った
たプレプリン
ント紙
ンターから
らお客様にコ
コールバックし、お客様
でのミ
ミスフィード
ドへ対応するた
ために、紙粉
粉対応
機械の状況
況を確認し、トラブルが発
発生している
清掃マ
マニュアルを
を作成した。さ
さらに、要望
望に応
場合はアド
ドバイスすることで早期解
解決を図る。
じて用
用紙トレイの
のフィードロー
ーラー清掃キ
キット
② 故障診断
故障発生時
時にプリンタ
ターから送付される診断
の提供
供も可能とし
した。
ログ情報を
を基に、エン
ンジニアがお客
客様先を訪
5.5
プロダクシ
ションリモー
ートサービス
ス機能
問する前に
に故障箇所の
の特定をし、交
交換部品を
当社
社は、2011年2月にお客
客様統合サポ
ポート
事前に準備
備することで
で、修復作業時
時間の短縮
センタ
ターを設立し
し、リモートサ
サービス機能
能を活
用して
てお客様のシ
システムや機器
器に対して、監視、
を図る。
③ 予兆診断
プリンター
ーから定期的
的に送付されるログ情報
診断を
を行っている
る。
本商
商品は、PC--UIにリモートデータ送信
信機能
を基に故障
障発生の可能
能性を予測し、
、必要であ
を有し
しており、イー
ーサネット接
接続を行うことで、
ればエンジ
ジニアに訪問
問を指示し、適
適切な保全
暗号化
化したプリン
ンター部の診断ログ情報を
を1日
作業を実施
施することで
で、故障発生によるダウ
複数回
回、リモート
トサポートセン
ンターのサー
ーバー
ンタイムの
の発生を未然
然に防止する。
。
に自動
動送信するこ
ことが可能であ
ある(図14)
)。
プロ
ロダクション
ンプリンターと
として「止め
めない
④ リモートア
アシスタンス
ス
リモートサ
サポートセン
ンターが、プリントサー
サービ
ビス」を実現
現するために、
、リモートサ
サービ
バーやPC
C-UIの画面を
をお客様と共有
有しながら、
スをご
ご契約のお客
客様に対して以
以下のサービ
ビスを
状態監視を
を行うことで
で、お客様の操
操作や運用
提供し
している。
のトラブル
ル解決を支援
援する(図15
5)。
このほかに
に、種々のカウ
ウンター値の
の自動確認、
ファイア
ウォール
モート
リモ
サポ
ポート
セン
ンター
プリン
ンター部
ログ送
送信5回/日
ネット
インターネ
PC-UIからの
P
の保守依頼な
などが可能とな
なっている。
6.
6 コント
トローラー部
部の性能改
改善、画質
改善、機能改善
コントロー
ーラー部では
は、性能改善として処理
ファイアウォール
SS
SL暗号化通信
図14 リ
リモートサービスデ
データ送信
Au
utomatic data sen
nding for Remote Service
S
富士ゼロ
ロックス テクニカ
カルレポート No.2
25 2016
時間の高速化
時
化、画質改善
善としてエッジ濃度の補
正、
正 機能改善
善としてメタリ
リックトナー
ー対応、ワー
クフローの改
改善といった
た対応を行って
ている。次
に詳細を説明
明する。
137
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
500
都度処理
PPMLジョブ
(11000ページ)
76
←Fast
RIP時間(秒)
400
一括処理
300
1096
0
200
400
←Fast
100
800
1200
時間(秒)
図18 指定ページを表示するまでの時間
Time to display a specified page
0
Print Server 1
(従来機)
(従来機)
Print Server 3
(本商品)
図16 RIP性能比較
Comparison of RIP performance
要望に応えるため、PPML(Personalized Print
Markup Language)フォーマットのページ
データ生成方式に「都度処理」方式を追加した。
6.1
データ処理性能改善
従 来 機 の PX1000 Print Server 1 は 、
®
従来の一括処理では全ページの画像生成が完了
するまで指定ページのプレビューが行えず、表
Windows ベースのPCアーキテクチャーを採
示までに時間がかかっていた。そこで都度処理
用したColor 1000 Press用のコントローラー
では、PPML処理をRIPデータ作成とプリント
である。本商品のPX 1000 Print Server 3は
画像作成に分け、RIPデータ作成が完了した時
3代目にあたり、最新のQuad Core CPUを採
点で、プレビュー表示可能とした(図17)。
用することにより、RIP性能が大幅に向上して
指定されたページに必要なパーツを都度呼び
いる。特に、並列処理の高速化、CPUのクロッ
出してプレビュー画像を生成することで、プレ
ク周波数の向上等により、
「RIPを並列で実行す
ビュー表示までの待ち時間を大幅に短縮してい
る」機能を用いたプリントにおいて、従来機と
る(図18)
。
比較して、より高速なRIP処理を実現している。
6.3
(図16)。
画質改善:エッジ濃度の補正
本商品は、画像内における急峻なエッジ部の
6.2
バリアブルプリントの表示時間改善
大量ページのバリアブルプリントの前に、気
軽にプリントイメージをチェックしたいという
濃度低下をRIP処理で補正する、
「エッジ濃度の
補正」機能を搭載した。
プリンター内部に搭載した現像システム内の
現像剤の帯電状態によっては、画像エッジ部に
一括処理方式
合成済みページ
配置情報
PPML
解釈
合成
処理
パーツ
十分にトナーが現像されず、ハーフトーン後端
の濃度が低下してしまう場合がある。
「エッジ濃
度の補正」機能では、エッジ部濃度低下領域を
プロファイルにより補正し、画質を改善してい
HDDに格納
プレビュー画像生成
る(図19)。また、濃度低下範囲と画像パター
ンテーブルを必要最小限に限定し、メモリーア
クセスと計算量を圧縮するなど、最適化するこ
都度処理方式
合成済みページ
配置情報
PPML
解釈
パーツ
とで、処理時間の高速化を実現している。
合成
処理
潰れ
潰れ減少 抜けあり
鮮明
HDDに格納
RIPデータ作成
プリント画像作成
プレビュー画像生成
補正前
補正後
補正前
補正後
図19 「エッジ濃度の補正」の効果
Effect of edge density correction
図17 処理方式の比較
Comparison of the processing methods
138
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
6.4
その他の画質改善
PDFを、中間ファイルへの変換を行わず、その
従来機では、線画や文字を検出し鮮鋭度をあ
げる「白抜き文字の強調」機能を搭載している。
ままPrint Serverに送信できるため、より忠実
なプリント結果を得ることができる。
JDF(Job Definition Format)ワークフロー
この機能により線画や文字の太りや潰れを改善
できるが、本商品ではさらなる画質向上のため、
対応*5では、最新のワークフローRIPに対応し
Kuro100%濃度のテキスト細線品質を高める
た。お客様からの要望に応え、複数ドキュメン
「K100%高精細」機能と「白抜き文字の強調」
ト出力時の順序保証機能の追加といった改善も
機能を同時適用できるように改善を行った。こ
行っている。
れにより、上質紙に明朝文字を印刷する場合で
も、よりすっきりと印刷することが可能である。
その他、ソフトウェアのバージョンアップに
7. おわりに
より、JapanColor2011、JMPA V3(2011)
、
本商品は、2015年初頭よりワールドワイド
ICC V4プロファイルといった最新の標準色プ
で順次発売を開始しており、信頼性、画質維持
ロファイルにも対応している。
性、アプリケーションの拡張性を持った本格的
なデジタル印刷機としてお客様からご好評を頂
6.5
メタリックトナー対応
いている。今後も、お客様のご要望について真
PX1000 Print Server 3では、クリアトナー
摯に耳を傾け、印刷市場のお客様の信頼にさら
に加えて、新規のメタリックトナーに対応した。
に応えるよう、商品開発を進める所存である。
多彩なドキュメント作成を実現するため、特色ト
ナーの使用時には「パターンに載せる」
、
「写真の
みに載せる」
、
「指定版を置換する」
、
「特色/RGB
8. 商標について
/CMYKに載せる」といった再現方法を選択可能
z Adobe 、 PostScript 、 Adobe PDF は 、
としている。また、トナー総量設定についても、
Adobe Systems Incorporated(アドビ シ
お客様のメタリックトナーの運用を考慮した設定
ステムズ社)の登録商標です。
z Windowsは、米国Microsoft Corporation
を行っている。
の米国およびその他の国における登録商標ま
6.6
ワークフローの改善
たは商標です。
PX1000 Print Server 3は、最新ワークフ
z その他の商品名、会社名は、一般に各社の商
号、登録商標または商標です。
ローへの対応と改善を行っている。従来PDF
*2
ワークフロー
®
として、APPE(Adobe PDF
Print Engine) *3 に対応しているが、ソフト
ウェアのバージョンアップにより、最新の
9. 参考文献
1) 森浩隆ほか: “Color 1000 Press・Color
APPE3.5に対応した。
®
800 Press
また、以前からPostScript プリンタードラ
商品技術紹介”, 富士ゼロッ
イバーが苦手としている透明効果やパターンを
ク ス テ ク ニ カ ル レ ポ ー ト , No.20,
使ったオフィス系アプリケーションのドキュメ
pp.108-122, (2011). https://www.
ントを出力するため、PDFプリンタードライ
fujixerox.co.jp/company/technical/tr/
バ ー を 提 供 し て い る が 、 PX 1000 Print
2011/p_01.html (参照日: 2016.03.01)
Server 3では「パススルーモード」を追加した。
®
Adobe 製 ア プ リ ケ ー シ ョ ン
*4
2) 中津貞夫: “お客様への新たな価値を提供
「プロダクションリモートサービス」”, 富
が生成する
士ゼロックステクニカルレポート, No.24,
*2
PDFワークフロー:PostScriptに代わり、PDFを用いて
印刷処理を行うワークフロー
*3
APPE:PDFテクノロジーをベースにした次世代印刷プ
ラットフォーム
*4
Adobe®製アプリケーション:パススルーモードを使用
するためには、対応したアプリケーションが必要
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
*5
JDFワークフロー:印刷ワークフロー用のメッセージ伝
達と工程指示を行うために特化したファイルフォーマッ
トのこと
139
新商品・ソリューション・サービス解説
Color 1000i Press
pp.41-46,
(2015).
https://www.
fujixerox.co.jp/company/technical/tr/
2015/s_06.html (参照日: 2016.03.01)
筆者紹介
箕田
淳
商品開発本部 第一商品開発部に所属
専門分野:商品開発推進、熱工学、システム設計
濱野
弘一
画像形成材料開発本部 化成品開発部に所属
専門分野:高分子工学、粉体工学
浅野
和夫
デバイス開発本部 イメージングプラットフォーム開発部に所属
専門分野:画質設計
池田
美穂
デバイス開発本部 次世代マーキングプラットフォーム開発部に所属
専門分野:マーキング技術開発
星野
勉
商品開発本部 第一商品開発部に所属
専門分野:電気工学、システム設計
奥岡
貴典
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第一開発部
に所属
専門分野:情報工学、コントローラーシステム設計
宮崎
淳
コントローラ開発本部 コントローラプラットフォーム第一開発部
に所属
専門分野:機械工学、コントローラーシステム設計
140
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
Fly UP