...

蛋白質核酸酵素:概日時計をもとに季節を計る分子メカニズム

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

蛋白質核酸酵素:概日時計をもとに季節を計る分子メカニズム
ShortReview
概 日時計 をもとに季節 を計る
分 子メカニズム
光周性花成 における新 たな符合 の重要性
The molecular
mechanism
by which
澤 真 理 子・Steve
plant
determines
flowering
timing
with
circadian
clock
A. Kay
日長の変 化 に応 答 した花 芽形 成過程(光 周性花 成)に お いては,CO遺 伝 子の時 間特異的 な発 現 と,CO蛋 白質の光
による安定 性 および活性制 御 が重要 である ことが知 られて いた.CO遺 伝子 の発現制 御 にかかわ る因 子 と して,こ
れ まで にGI蛋 白質,FKF1蛋 白質 な どが報告 さ れてい る.今 回,筆 者 らは,CO遺 伝 子の 発現 制御 機構 におい て,
GIとFKF1が 複 合体 を形成 しCO遺 伝 子発現 の時 間情報 を担 っている ことを明 らか に した.さ らに,GI-FKF1複 合
Database Center for Life Science Online Service
体 の形成 時期 は,概 日時計 によるGIとFKF1の 発現 制御 と,FKF1に よ る光 受容 とい う2つ の分子 メカ ニズム によ
って制御 されていた.本 稿 で は,こ れまで に知 られ ていた光周 性花成 のメカニズ ムの概 要 と,新 たに得 られた知見
を紹 介す る.
Key words・
シ ロイ ヌナズナ・ 概 日時計・
光 周性 花成
ぶ れ の小 さい 環境 要 因 で あ り,日 長 の変 化 に個 体 の 成 長 過
は じめ に
程 を適 合 させ る こ と は理 にか な った 選 択 とい え よ う.実 際
赤 道 直 下 を 除 き,1日
の う ちの 明期 と暗 期 の長 さ は,地
に,花 成 時 期 を決 定 す る要 因 と して 日長 の変 化 を用 い る植
球 の 公 転 に よ り1年 を通 じて 変化 して い る.日 長 の変 化 に
物 が さ ま ざま にみ られ る.日
季 節 の 移 ろい を感 じる こ と も多 くあ る.た
とえ ば,夕 方 の
の は長 日植物 と よば れ,モ デ ル 植 物 で あ る シロ イ ヌナ ズ ナ
6時 な の に まだ 明 る い とこ れ か ら夏 が 来 る こ とを知 る よ う
は長 日植 物 で あ る.イ ネ の よ うに 日が短 くな る と花 を咲 か
に,時 刻 を も とに 日長 の 変 化 を判 断 し,そ こか ら季 節 の移
せ る植 物 は短 日植 物,日
り変 わ りを予 測 す る こ とが で きる.地 球 上 の さ ま ざ まな 生
もの は 中性 植 物 とよ ばれ て い る.
物 は,日 長 の 変化 を感 知 して環 境 の 変 化 に行 動 パ ター ンや
が長 くな る と花 を咲 か せ る も
長 の変 化 に よ らず に花 を咲 か せ る
で は,こ れ らの植 物 は どの よ うに して 日長 の 変 化 を感 知
成 長 段 階 を適 応 させ て い る.こ の現 象 は光 周 性 と よ ば れ,
して い る ので あ ろ うか?冒
そ の メ リ ッ トは,日 長 の 変 化 に よ り環 境 の 変 化 を予 測 し,
物 もわれ われ と同 じ よ うに,時 刻 を基 準 と して 日長 の 変 化
備 える こ とが で きる こ とで あ る.
を感 知 して い るの で あ る.で
今 回,紹 介 す るの は,日 長 の変 化 に よ って 花 の 咲 く時期
ってい るの であ ろ うか?そ
頭 にふ れ た よ うに,実 は,植
は,ど の よ うに して 時 刻 を計
れ に は概 日時計 とよばれ る,生
が 決 まる とい う光 周性 花 成 の 分 子 メ カニ ズ ム で あ る.植 物
体 内 にあ る時 計 を用 い て い る.概
の成 長 は,光 の量 と質(波 長),日 長,温
度,湿 度,栄 養 条
に よ らず に約24時 間 の周 期 で観 察 され る,シ ア ノバ ク テ リ
件 な ど,外 界 の環 境 に大 き く影 響 を受 けて い る.こ れ らの
アか らヒ トに いた る まで種 を こえ て見 い だ されて い る メカニ
な か で,天 文 学 的 な シグ ナ ルで あ る 日長 の 変 化 は もっ と も
ズ ムで あ る.植 物 は概 日時 計 に よ り制 御 され る因 子 を指 標
日時 計 とは外 界 の 光 条件
に時 を知 り,そ の時 間情 報 と光 の 有 無 と を組 み合 わせ て 日
長 の変化 を感 知 して い るの で あ る.
Mariko
Sawa,
米 国California大
Steve
学San
A.
Kay
Diego校
E-mail:[email protected]
URL:http://biology.ucsd.edu/labs/kay/
今 回,筆 者 らは,光 周 性 花 成 にお い て時 間情 報 を制 御 す
る機構 と して,概
日時 計 に よる発 現 制 御 と光 に よ る蛋 白質
相 互 作 用 の 制御 が重 要 で あ る こ とを 明 らか に した.本 稿 で
は,こ れ まで に明 らか に され て きた 植 物 の概 日時 計 を も と
蛋 白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
739
に した 光 周 性 花 成 の 分 子 メ カニ ズ ム と,最 近,筆 者 らが 明
遺 伝 子 発 現 がONと
な り,茎 頂 分 裂 組 織 にお い て花 芽 形 成
らか に した知 見 を概 説 した い.
が 促 進 され,植 物 は生 殖 成 長 期へ と移 行 す るの であ る.
植 物 に とっ て花 を咲 か せ る こ とは,世 代 の継 承 を 意 味 す
I
花成 と光周性
る重 要 な段 階 で あ る.さ ら に,花 を咲 か せ る 時期 が受 粉 に
適 した環 境 で あ る こ とや,受 粉 後 に種 子 が 成 熟 す る まで の
植 物 の成 長段 階 は 栄 養 成 長 期 と生 殖 成 長 期 の2つ に大 き
く分 け られ る1)(Column).栄
養 成 長 期 とは発 芽 して葉 が形
Database Center for Life Science Online Service
成 され る期 間で あ る.植 物 に とって,葉
あ い だ に適 した 環 境 と十 分 な時 間 とが 必 要 とな る.よ っ て
植 物 は,こ れ か ら起 こ る環 境 変 化 を考 慮 した うえ で,い つ
は光 エ ネ ルギ ー を
花 を咲 かせ るか を決 定 しな くて は な らな い.こ の花 芽 形 成
もと に二 酸 化 炭 素 を固 定 して 有 機 物 を合 成 す る光合 成 を行
時 期 を決 定 す るの に 日長 の変 化 が重 要 な情 報 とな る こと(光
な う場 で あ る と同 時 に,植 物 の 成 長 にか か わ る光,温
周 性 花 成)は,1920年
度と
以 降,さ
まざ ま な植 物 種 で 報 告 され
い った 外 的 情 報 を感 知 す る器 官 で もあ る.光 につ い て は量
て きた.日 長 の変 化 に成 長 段 階 を同調 させ る とい う光周 性
と質(波 長)と い う要 因 に分 け られ,さ ま ざ まな波 長 を もつ
現 象 は,植 物 のみ で な くほか の 生 物 種 で もみ られ,こ れ ま
光 の なか で,植 物 はお もに赤 色 光,遠
で に光 周 性 現 象 を説 明 す るた め の い くつ か の モ デ ル が提 唱
赤 色 光 と青 色 光 に応
答 して い る2).一 定 の 栄 養 成 長 期 の あ い だ 栄養 を 蓄 え外 界
され て きた.ひ
の環 境 が 適 した状 況 に な る と,生 殖 器 官 で あ る花 を咲 かせ
合 モ デ ル,も
る生 殖 成 長 期 へ と移 行 す る.植 物 は茎 の頂 と根 の 先 端 に 成
的符 合 モ デ ル で あ る(図1).外
長 を続 け る未 分 化 組 織 を もち,上 下 方 向へ 成 長 す る こ とが
あ る周 期 的 シグ ナ ル と外 界 か らの シ グナ ル が あ る 日長 条件
で きる.そ
養 成 長 期 か ら生 殖 成 長 期 へ の 移 行 は,
での み一 致 した と きに,誘 導 シ グナル(も し くは,抑 制 シグ
茎 の頂 に あ る茎 頂 分 裂 組 織 にお け る 遺伝 子 発 現 の 変換 に よ
ナ ル)が 発 せ られ る とい う もの で あ る.内 的 符 号 モ デ ル と
って 決 定 され る.栄 養 成 長 期 に は茎 頂 分 裂 組 織 で は葉 が 産
は,体
生 され る.外 界 の環 境 変 化 に応 じて 花 成 誘 導 因 子 が 葉 で合
あ る現 象 が促 進 また は抑 制 され る とい う もの で あ る.い ず
成 され茎 頂 分 裂 組 織 に運 ば れ て くる と,花 芽 形 成 の た め の
れの モ デ ル にお い て も,要 とな る因 子 が"い つ"発 現 す るか
740
して,栄
蛋 白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6 (2008)
とつ は,植 物 の 世 界 か ら提 唱 され た外 的 符
うひ とつ は,昆 虫 での 研 究 か ら提 唱 され た 内
的 符 合 モ デ ル とは,体 内 に
内 にあ る複 数 の周 期 的 シ グ ナ ル が合 致 した と きに,
ShortReview
とい う時 間情 報 が 光 周 性 現 象 を担 う鍵 とな って い る.
シ ロ イヌナ ズナ は,1日
の うちで 明期 が 暗 期 よ り も長 くな
る長 日条 件 下 で花 芽 が 形 成 され る長 日植 物 で あ る.こ の光
周 性 花 成 にお い て,葉
で 長 日条 件 特 異 的 な 花 成 誘 導 因 子
FLOWERING
T (FT)蛋
LOCUS
白質 が 産 生 され る こ とが
鍵 とな る3-5).FTの
発 現 を担 うの がCONSTANS(CO)遺
伝 子 で あ る.CO遺
伝 子 の発 現 は 日周 期 性 を示 し,夕 方 に
ピー ク を迎 える よ うに制 御 されて い る.さ らに,CO蛋
白質
は発 現 ピー ク時 の 安 定 性 と活性 が,赤 色 光 お よび遠 赤 外 光
受 容 体 であ る フ ィ トクロ ムAと 青 色 光 受 容 体 で あ る ク リプ
トク ロム2を 介 した光 シグ ナ ル に よっ て制 御 され て い る6).
つ ま り,CO遺
CO蛋
白 質 の機 能 が光 依 存 的 で あ るた め,長
みCOは
Database Center for Life Science Online Service
伝 子 の発 現 ピー クが 夕 方 で あ り,な お か つ,
日条 件 下 で の
機 能 し,発 現 ピー クがす で に暗 期 にな ってい る短 日
条 件 下 で はCO遺
伝 子 の発 現 はみ られ る もの のCOと
能 が はた されず,花 成 誘 導 因 子FTが
ま り,CO-FT誘
導 経 路 は,COの
して機
誘 導 され ない7,8).つ
発 現 時 期 と光 シ グナ ルの
図1
符 合 とい う外 的 符合 モ デル に合 致 した分 子 機 構で あ り,CO
光 周 性 現 象 を 説 明 す る外 的 符 合 モ デル と内 的 符 合 モ デル
(a) 外的符合 モデル,概 日時計により発現が制御されている因子と,光 など
遺 伝 子発 現 の時 間情 報 が 日長 を識 別 す る要 因 とな って い る
の外的要因が一致 したときに誘導 シグナルが発生する.光 周性花成 における
の であ る.
CO蛋 白質 によるFT蛋 白質の発現制御機構は,CO遺 伝子の時間特異的発現
とCO蛋 白質の光による安定化 という外的符合モデルによって説明される.
(b) 内的符合モデル.い くつかの異なる位相 をも った因子の発現 が一致 した
II 概日時計の分子機構
ときに誘導 シグナルが発生する.
どち らのモデルにおいても,鍵 となる因子 がいつ発現 しているのかということ
で は,"い つ"と い う時 間情 報 はい か に構 築 され てい る の
で あ ろ うか?生
物 の生 体 現 象 の なか に は,約24時
が重要である.こ の日周期的な時間情報は概 日時計 によって制御 されている.
間 を周
期 と した概 日 リズ ム を示 す ものが あ る.哺 乳 類 の体 温 変 動
さ れ て い る.こ
や 睡 眠サ イ クル な どが よ く知 られて い る.こ れ らのサ イ クル
物 に お け る概 日 時 計 の 基 本 メ カ ニ ズ ム の 一 端 を 紹 介 し た い
は外 界 の変 化 に影 響 されず,温 度 や光 条 件 が一 定 で あ って
(図2).
も周 期 性 を示 す.こ の よ うな外 界 の環 境 に よ らない概 日 リ
れ まで に明 らか に され て きた植
植 物 の 概 日 時 計 の 基 底 を な す 機 構 は,Mybド
ズ ム を生 み 出 して い る のが概 日時 計 で あ り,"い つ"と い う
写 因 子CCA1
時 間情 報 の発 信 源 で あ る.シ ロ イ ヌ ナ ズナ のCO遺
ED 1)蛋
伝子 が
こ で は,こ
(CIRCADIAN
AND
白 質 お よ びLHY
CLOCK
(LATEE
メ イ ン型 転
ASSOCIATLONGATED
1日 の うちであ る決 まった 時 間 に発 現 す るの も,概 日時 計 に
HYPOCOTYL)蛋
よ り制 御 され て い るか らで あ る.で は概 日時 計 の 実 体 は,
白 質 に よ る 遺 伝 子 発 現 の フ ィ ー ドバ ッ ク ル ー プ で あ る9,10).
い った い な んで あ ろ うか?時
CCA1とLHYは
計 とは時 を計 り,時 を知 ら
白 質 とTOC1
現 を抑 制 す る.午
して 現 わす こ と もで きる.こ の場 合,周
少 を は じめ,TOC1の
とい う時刻 を,周 期 の 回転 数 が 時 間 の経 過 を示 す.概
日時
はCCA1お
計 にお け る時 間 の周 期 は,時 計 を構 築 す る"時 計 因子"の 遺
伝 子 発 現 と蛋 白質 の 安 定 性 や 蛋 白 質 修 飾 を含 め た周 期 に よ
な く な り,TOC1が
って 説 明 され る.そ
CCA1お
の の,概
日時 計 の もっ と も基 本 的 な メカ ニ ズ ム は遺 伝 子 発
現 の フ ィー ドバ ックルー プ であ る こ とは広 く種 を こえて保 存
後 に な る とCCA1とLHYの
っ て,CCA1お
よ びLHYの
発 現 を 間 接 的 にONに
よ びLHYに
発現量 は減
す る機 能 を も
よ る遺伝 子 発 現 の抑 制 が
発 現 ピ ー ク を 迎 え る よ う に な る と,
発 現 が 再 び 促 進 され,し
の 発 現 は 抑 制 さ れ 収 束 に む か う11).こ
ー ドバ ッ ク ル ー プ が
発
発 現 が 促 進 され る よ う に な る.TOC1
よ びLHYの
つ.よ
して,時 計 因子 自体 の保 存 性 は低 い も
CAB1)蛋
午 前 中 に 発 現 の ピ ー ク を 迎 え,TOC1の
せ る もの と考 え る こ とが で きる.時 は物 理 的 な周期 運 動 と
期 の位 相 が"い つ"
(TIMING OF
,1日
だ い にTOC1
の遺 伝 子 発 現 の フ イ
の 周 期 を 刻 む 概 日時 計 の 基 盤 と な
蛋白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
741
っ て い る.実
際 に は,さ
ら に 多 くの 時 計 因 子 が か か わ る こ
と が 明 ら か に な っ て い る12,13).た と え ば,TOC1と
リ ー を 形 成 す るPRR5
TOR
5)蛋
とLHYに
(PSEUDO-RESPONS
白 質,PRR7蛋
よ り遺 伝 子 発 現 が 促 進 さ れ,一
III これまでに報告 された
CO遺 伝子の発現制御機構
白 質 は,CCA1
方 で,そ
れ らの発
くつ か の フ ィ ー ドバ ッ
光 周 性 花 成 を 担 うCO遺
れ ま で にCO遺
そ して,概
(GIGANTEA)蛋
日時 計 を構 築 す る時 計 因子 は それ ぞ れ 時 間 的 に
白 質,FKF1(Flavin-binding,
F-box
お け る時 の概 念 を生 み 出 して い るの で あ る(図2).
蛋 白 質,ELF3(EARLY
protein 1)蛋
RFI2(RED
AND
期 性 の 発 現 を 示 し,概
時 計 因 子 の解 明 とそ の 相 互 関 係 の 解 明 が 進 め られ て い る.
とFKF1の
ま た,時
見 い だ され,CCA1やLHYと
う遺 伝 子 の 発 現 も制 御 し て い る16).CCA1とLHYは,タ
ー
element;EE)と
よ ば れ る特 定 の 配 列(AAATATCT)を
識 し 発 現 を 抑 制 して い る.こ
びCCA1お
よびLHYの
の 配 列 は,TOC1の
認
よ うに再
発現 に作 用 し遺 伝 子 発 現 の フ ィー ド
白 質 や,
2)蛋
日時 計 の 制 御 下 に あ る.と
遺 伝 子 プ ロモ ー ター領 域 に は イ ブニ ン グ配列 が
い った概 日時計 の 中心 的役 割
を担 う蛋 白 質 に よ っ て 直 接 に 制 御 さ れ て い る 可 能 性 が あ る.
実 際,GIとFKF1は
夕方 に発 現 ピー クを迎 え る.GIは
い だ され て い な いが,概
日時 計 の基 本 メ カ ニズ ム にお い て
重 要 性 が 示 唆 され て い る.ま た,gi機
CO遺
植物
らか な ドメイ ン構 造 は見
能 欠損 型 変異 体 で は
伝 子 の発 現 誘 導 が 長 日条 件 下 お よび 短 日条 件 下 で ま
った く観 察 され な い こ とか ら,GIはCO遺
も見 い だ され,そ れ らの 因 子 はTOC1の
い て必 須 な蛋 白 質 で ある と考 え られ る7,21).FKF1は,植
よ うに夕 方 に発 現
白質 が
く に,GI
バ ックルー プ内 で はた ら く時 計 因 子 だ けで はな く,出 力 系 に
の ピー クを迎 える こ とで 日周 期 的 現 象 を担 って い る.
1)
れ ら の 蛋 白 質 は す べ て 日周
に特 異 的 に み られ る蛋 白質 で,明
ゲ ッ ト と な る プ ロ モ ー タ ー 領 域 の イ ブ ニ ン グ 配 列(evening
Factor
3)蛋
FAR-REDINSENSITIVE
報 告 さ れ て い る7,17-20)(図2).こ
日 時 計 の 制 御 下 に あ る 現 象(出 力 系)を 担
Dof
FLOWERING
で,こ の遺 伝 子発 現 の フィー ドバ ックルー プ を成 り立 たせ る
か りで は な く,概
Kelch,
白 質,CDF1(Cycling
ンピュ ー タに よる モデ リ ングを は じめ さ まざ まな アプ ロー チ
計 因 子 は こ の よ う な 時 計 の 基 本 周 期 をつ か さ ど る ば
日
伝 子 の 発 現 制 御 に か か わ る 因 子 と して,GI
異 な る発 現 パ ター ン(位 相)を 示 し,そ の こ とが概 日時 計 に
日時 計 の全 貌 は 明 らかで は ないが,コ
伝 子 の 発 現 の 時 間 情 報 は,概
時 計 に よ っ て ど の よ う に 制 御 さ れ て い る の だ ろ う か?こ
ク ル ー プ が 重 な っ て 概 日時 計 を 形 成 し て い る と 考 え られ る.
現 在 の とこ ろ,概
Database Center for Life Science Online Service
EREGULA-
白 質,PRR9蛋
現 を 抑 制 す る14,15).こ の よ う に,い
フ ァミ
伝 子 の発 現 にお
物
の 青 色 光 受 容 体 で あ る フ ォ ト トロ ピ ン に見 い だ され る青 色
光 受 容 を担 うLOVド
Kelchリ
メ イ ン,Fボ
ックス ドメ イ ン,お よび,
ピー トか らな る蛋 白 質 で,青 色 光 受 容 経 路 で の機
能 と,ユ ビキチ ン リガー ゼ で あ るSCF複
図2
合 体 を介 した蛋 白
植 物の概 日時計
概 日時計は周期的な遺伝子発現 により成り立っ
ている,そ の発現は互いにフィー ドバ ックルー
プを構成 している.植 物 の概 日時計はおもに,
朝方 に発現 するCCA1遺
伝子およびLHY遺 伝
子が午後から発現 するTOC1遺 伝子の発現を抑
制 し,一 方,TOC1遺
CCA1遺 伝子,LHY遺
伝子,LUX遺
伝子 は
伝子の発現を促進すると
いうフィー ドバ ックループから成 り立 っている.
概 日時計はさまざまな遺伝子の発現を制御 し,
生体現 象において概 日リズム を生み 出 してい
る.光 周性 花成を担うGI遺 伝子,FKF1遺
子,CDF1遺
伝子,CO遺
計の制 御下 にあ り日周期的発現を示す.
742
蛋 白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
伝
伝子の発現も概 日時
ShortReview
質 分 解 経路 で の機 能 を もつ もの と考 え られ て い る.fkf1機
能 欠 損 型 変 異 体 で はCO遺
伝 子 の発 現 自体 は観 察 され るが,
長 日条 件 下 で み られ る午 後 の発 現 ピー クが 喪 失 す る こ とが
報 告 されて い る18).FKF1のKelchリ
ピー トに対 す る結 合
蛋 白 質 の ス ク リー ニ ング で 見 い だ され たCDF1は,GI,
FKF1と
は異 な り,明 け方 か ら発 現 し午 前 中 にそ の 発 現 ピ
ー ク を迎 え,午 前 中 のCO遺
伝 子 の 発 現 を抑 制 して い る こ
とが 示 され てい る19).
図3
GIとFKF1のin vivoで
TAPタ
IV CO遺 伝子の発現機構における
新たな知見
1.GIとFKF1は
Database Center for Life Science Online Service
った.さ
よび
CDF1の
類似
相 互 関係 を解 析 した22).ま ず,GIとFKF1は
伝 子の発現誘 導にか
A抗 体 によ り免
植 物 体 内 で 結 合 してい る こ とが わ か
らに,こ の 結 合 は光(と く に,青 色 光)依 存 的で あ った.サ
光 照 射 開始 後0∼16時
分 子 メ カニ ズ ム を明 らか にす る た め に,GI,FKF1お
過剰 発 現 した 形 質
グを 認 識 す る抗Protein
疫 沈 降 を行 な っ た とこ ろ,GIとFKF1は
伝子 の発現の制御機構 における
の発 現 パ ター ンを示 し,と も にCO遺
グ で標 識 したFKF1を
変 換 体 の細 胞 抽 出 液 を用 い,TAPタ
光 依 存 的 に複 合 体 を形 成 す る
今 回,筆 者 らは,CO遺
の 結 合22)
グ で標 識 したGIお よ びHAタ
ン プル は
間 の あい だ に回 収 した.
ー クは ほぼ 一 致 し,複 合 体 の 形 成 期 間が 明 期 下 に存 続 して
いた.一 方,短
日条件 下 で はGIの 発 現 ピー クがFKF1よ
り
も早 ま り複 合 体 の形 成 期 間 が 短 くな って い る こ とが わか っ
た(図4).短
日条 件 か ら長 日条 件 に移 行 す る と,そ れ に と
か わ る こ とか ら,こ の 二 者 に お け る 結 合 解 析 を,GIと
もないFKF1とGIと
FKF1を
と もに過 剰 発 現 す る形 質 変 換 体 植 物 を用 い て行 な
さ きに,短 日条 件 か ら長 日条 件 に移 行 す る とCO遺
った.す
る と,GIとFKF1はin vivoで
発 現 期 間が延 び る こ とが 報 告 され て い た18,23).FKF1とGI
らか に な った(図3).さ
結 合 す る こ とが 明
らに,こ の 結 合 は光 依 存 的 で あ っ
た.植 物 の 成 長 は光 の な か で も赤 色 光,遠 赤 外 光 と青色 光
に応 答 して い る.赤 色 光 お よび遠 赤 外 光 の 受 容 体 と して フ
ィ トク ロ ムA∼Eが,青
ム1,ク
色 光 受 容 体 と して は ク リプ トクロ
リプ トク ロム2,フ
ォ ト トロ ピ ンが知 られて い る2).
の 複 合 体 の 形 成 に延 長 が み られ た22).
が複 合 体 をつ くる時 間 とCO遺
伝 子の
伝 子 の発 現 の 時 間 情 報 が 一
致 してい る もの と予想 され た.
GI遺 伝 子 とFKF1遺
伝 子 の機 能 依 存 性 を調 べ る ため に,
gi fkfi二 重 機 能 欠損 変 異 体,こ の 変異 体 に お け る片 方 の過
剰 発 現 体,GIお
よびFKF1の
二 重 過 剰 発 現 体 を作 製 し,そ
そ こで まず,結 合 にか か わる光 の波 長 を調 べ て み た ところ,
れ ぞれ の花 成 表 現 型 を観 察 した.筆 者 らは花 成 表 現 型 の指
青 色 光 の影 響 が 大 きい こ とが わ か っ た.さ
標 と して,花 芽 が形 成 され て さ らに茎 が1cm長
らに,既 存 の 光
に なっ た と
受 容 体 が 存 在 しない よ う組 換 え蛋 白質 を用 い たin vitro系
きの ロゼ ッタ葉(栄 養 成 長期 に形 成 され る葉 で,地 に は うよ
にお け る結 合解 析 にお い て も,GIとFKF1の
うな形態 を とる)の 数 を数 え て い る.ロ ゼ ッタ葉 の数 と花 芽
結 合 が確 認 さ
れ た.青 色 光 受 容 ドメイ ンと考 え られ るFKF1のLOVド
メ
形 成 までの 日数 に は相 関が あ り,花 芽 形 成 が 遅 くな る ほ ど
イ ンに 変異 を導 入 す る と,こ の 結合 が 阻 害 され た.こ の よ
ロ ゼ ッタ葉 の 数 が多 くな る.野 生 型 の シ ロ イ ヌナ ズ ナ は長
うに,in vitroで 結 合 が再 構 築 され た こ と とLOVド
日条件 下 で は,花 芽 が 地 上 か ら1cmの
メイン
高 さに伸 長 した時 点
の 変 異 が 結合 を阻外 した こ とか ら,既 存 の光 受 容 体 を介 し
で ロ ゼ ッタ葉 が13∼15枚
た シ グナ ル に依 存 す る の で は な く,FKF1が
青色光 受容体
体 な ど花 成 シ グナ ルが 誘 導 され ない 変 異 体 で は花 芽 形 成 が
と して直 接 に光 シグナ ル を受 け と り,さ らに はGIと の 蛋 白
著 し く遅 くな り,ロ ゼ ッ タ葉 が70枚 近 く形 成 され る.こ の
質 結 合 とい うか た ち に シ グナ ル を還 元 して い る もの と考 え
よ うに野 生 型 に比 べ て,花 芽 形 成 まで に形 成 され る ロゼ ッ
られ た22).
タ葉 の数 が 多 い もの を遅 咲 き表 現 型,少
2.GI-FKF1複
CO遺
合 体 を形 成 す る タ イ ミ ン グ が
伝 子 の 発 現 の 時 間 情 報 を担 う
さ らに,FKF1お
発現 のピ
異
ない もの を早 咲 き
表現 型 とみ な して い る.二 重 機 能 欠 損 変 異 体 はgi単 独 変 異
体 とほ ぼ同 様 に,長
日条 件 下 で 著 しい 遅 咲 き とい う表 現 型
を示 した.二 重 機 能 欠 損 変 異 体 にFKF1を
よ びGIの 内 在 性 発 現 パ ター ン と複 合 体
の形 成 時期 をみ た.長 日条 件 下 で はGIとFKF1の
形 成 され て い る.一 方,gi変
過 剰 発 現 させ て
も長 日条件 下 での 遅 咲 き とい う表現 型 は相 補 され なか った.
一方
,GIを 過 剰 発 現 させ る と,gi変 異 体 にGIを 過 剰 発 現
蛋白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
743
図4
異 な る 日 長 条 件 下 に お け るGIとFKF1の
発
現 と 結 合 様 式22)
(a) それ ぞれ の 内在 性 プ ロモー ター に よ り発現 が 制御 さ れて
い るTAP標
識GIお よ びHA標
識FKF1を
発現 する 形質 変 換
体 にお け る,GIお
よびFKF1の
よる免 疫 沈 降,短
日条 件(8時
び 長 日条 件(16時
間 明 期 ・8時 間 暗期)に お け る結 果 を示
す.**:発
発 現 と抗Protein
間 明 期・16時
A抗 体 に
間 暗 期)お よ
現 の ピー ク.
(b) 内 在 性 発 現 パ ター ン の模 式 図.GIの
日条 件 下 で は 早 ま り,FKF1と
発 現 の ピー ク が短
の 複 合 体 形成 が長 日条 件 下
Database Center for Life Science Online Service
に比べ る と短 時 間 に限 られて い る.
図5
CDF1の
(a) CDF1の
分 解 に はGIが
型)に お けるCDF1の
(b) CDF1の
花 が 咲 い た.つ ま り,FKF1の
は完 全 に はFKF1に
異 体 よ りも早 く
機 能 はGIに 依 存 す るが,GI
は依 存 せ ず に,長
日条 件 下 で はCO遺
伝子は野生
発 現.
過 剰 発 現 さ せた 形 質 変 換 体 に,gi機
変 異体 を導 入 した もの,CDF1の
させ た もの よ りは花 成 は 遅 れ た が,fkf1変
必 要 で あ る22)
過 剰 発 現 さ せた 形 質 変 換 体(GI遺
能欠損型
分 解 が抑 え られ てい る.
の発 現 を維 持 した状 態 で まっ た く 日周 期 性 を示 さな い こ と
が わ か った22).
以 上 の こ とか ら,CO遺
伝 子 の発 現 制 御 にお い て は,ま
伝 子 発 現 を促 し うる もの と考 え られ た.し か し興 味 深 い こ
ずGI-FKF1複
と に,片 方 の過 剰 発 現 体 で は短 日条 件 で の遅 咲 き とい う表
に,複 合 体 を形 成 す る タイ ミ ングがCO遺
現 型 が相 補 され なか った.つ
間情 報 を担 う重 要 な要 因 とな る と考 え られ た.GI-FKF1複
ま り,GIは
単独 で は,CO遺
合 体 形 成 が重 要 で あ る と考 え られ た.さ
伝 子の発現の時
伝 子 の発 現 を早 い 時 間 帯 か らつ ね に亢 進 す る こ とはで きな
合 体 形 成 は概 日時 計 に よるGI遺 伝 子 お よびFKF1遺
い の で あ る.短
発 現 制御 と,く わえ てGIとFKF1と
CO遺
日条 件 下 で は 明 期 が 短 縮 さ れ て い る の で,
伝 子 を介 した花 成 を誘 導 す る ため に は,CO遺
伝 子の
ら
伝子の
の結 合 が光 に依 存 す る
とい う二 重 の符 合 機 構 に よ り制 御 され て い た.こ の 二 重 の
早 い時 間帯 か らの発 現 が必 要 とな る.と こ ろが,FKF1と
制御 機 能 の結 果,GI-FKF1複
GIを とも に過 剰 発 現 させ る と短 日条 件 下 で も早 咲 きに なる
下 で あ る長 日条件 下 で は 明期 に十 分 な量 が 形 成 され,一 方
とい う表 現 型 が 観 察 され た.さ
らに,こ の二 重 過 剰 発 現 体
で,花 成 非 誘 導 条 件 下 で あ る短 日条件 で は複 合 体 の形 成 期
伝 子 の1日 の 発 現 量 を調 べ てみ る と,一 定 量
間 自体 も短 く,さ らに,明 期 で の複 合 体 の形 成 が 短 期 間 に
にお け るCO遺
744
蛋白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
合 体 の形 成 は,花 成 誘 導 条 件
ShortReview
図6
3段
階 の 符 合 が 光 周 性 花 成 を担 って い る
(a) 新 た に明 らか にな ったCDF1,FKF1お
Database Center for Life Science Online Service
遺 伝 子 の 発 現 を 抑 制 する.GI-FKF1複
よびGIのCO遺
伝 子 発 現 に お ける 相 互 関 係.午
合 体 に よ りCDF1が
分 解 さ れ る とCO遺
前 中 に発 現 ピー クを 迎 え るCDF1は,CO遺
伝 子 の 発 現 が促 進 さ れ る.GI-FKF1複
伝 子 プ ロモ ー ター 上 でCO
合 体 の形 成 の タイ ミ ン グがCO遺
伝 子 の発 現
の 時 間 情 報 を 担 う.
(b) FKF1-GI複
合 体 の 形成 の タイ ミ ング は,FKF1と
ナの 光 周 性 花 成 は,CO遺
光 とい う外 的 符 合 と,FKF1とGIの
伝 子 の発 現 と光 とい う外 的 符 合 と をあ わせ る と,3段
抑 え られ て い た.こ の こ とが,CO蛋
白質 の発 現 ピー クが 明
発 現 時 期 と い う内 的符 合 によ り制 御 さ れて い る.よ
って,シ
ロイ ヌナ ズ
階 の符 合 によ り制 御 され て いる とい え る.
日時 計 に よ り制御 され たCO遺
伝 子 の発 現 と,光 に よるCO
期 にあ るか 暗 期 にあ る か とい う,光 周 性 花 成 の要 とな る分
蛋 白 質 の安 定性 と活 性 の制 御 とい う,外 的符 合 の重 要性 が
子 機 構 を担 って い る もの と考 え られ る.
知 られて い た.今
3.GIとFKF1の
FKF1はFボ
子 発 現 にお い て は,FKF1と
複 合体 形 成 の意 義
な ぜGIとFKF1は
FKF1の
複 合 体 を形 成 す る の だ ろ う か?
ック ス蛋 白質 でCDF1の
回,筆 者 らの解 析 か ら新 た に,CO遺
分 解 を促 進 す る こ と
はす で に 明 らか で あ っ た.そ こで,FKF1のCDF1分
解へ
光 とい う外 的 符 合 と,GIと
発 現 パ ター ン とい う内 的符 合 の2つ の符 合 に よ り制
御 され た,GI-FKF1複
さ れ た(図6b).で
FKF1遺
伝
合 体 形 成 の タイ ミングの 重 要 性 が 示
は,概
日時 計 に よ っ て,GI遺
伝子 と
伝 子 は どの よ うにそ の 発 現 が 制 御 され て い るの だ
の 関 与 にGIが 必 要 か どうか を調べ るた め に,gi機 能 欠損 変
ろ うか?そ
異 体 にお け るCDF1の
CO遺 伝 子 発 現 の 抑 制 因子 であ るCDF1の
分解 を担 う こ と
が明 らか とな ったが,ど の ように してCO遺
伝 子 の発 現 は促
で はCDF1の
安 定 性 を調べ た.す る と,gi変 異 体
分 解 が抑 え られ て い た(図5).ク
疫 沈 降 法(ChIP法)に
よ り,FKF1,GIお
ロマ チ ン免
よびCDF1は,
の 詳 細 は未 解 明 で あ る.GI-FKF1複
進 され るのか?こ
れ らの 問 い に対 して は,FKF1遺
合体 は
伝 子,
CO遺 伝 子 の プ ロモ ー ター上 で 近接 す る領 域 に存 在 す る こ と
GI遺 伝 子,CO遺
が 明 らか に な った22).CDF1は
午 前 中 に発 現 の ピー ク を迎
蛋 白質 の検 索 か ら,遺 伝 子 発 現 を促 進 す る蛋 白 質 につ なが
伝 子 の発 現 を抑 制 す る蛋 白 質 で あ る19).こ れ らの
る新 た な知 見 が 得 られ る こ とが 期 待 され る.発 現 制 御 の鍵
えCO遺
結 果 をあ わせ て考 え る と,午 前 中 にはCO遺
CDF1に
よ り抑 え られ,GIお
光 依 存 的 にFKF1とGIが
よびFKF1が
発 現 し,さ ら に
複 合 体 をつ くってCO遺
モ ー ター 上 に移 行 す る と,FKF1がCDF1を
てCO遺
伝 子 の発 現 は
伝 子 プロ
分 解 し,や が
伝 子 の発 現 が 促 進 され る,と い うモ デ ル が 考 え ら
れた(図6a).
お わ りに
これ ま で,光 周 性 花 成 の鍵 とな るメ カ ニズ ム と して,概
伝 子 そ れ ぞ れの プ ロモ ー ター に結 合 す る
とな る蛋 白質 がGI-FKF1複
合 体 に時 間依 存 的 に結 合 して い
る 可 能性 も考 え られ る.よ っ て,生 化 学 的 な アプ ローチ か
ら も新 たな進 展 が 期 待 で きるで あ ろ う.
本 稿 で は,シ ロ イ ヌナ ズ ナ に限 った 光 周 性 花 成 の分 子 機
構 につ い て概 説 したが,短
蛋 白質 お よびFT蛋
日植 物 であ る イ ネにお い て もCO
白質 の 相 同 蛋 白質 が 類 似 の 機 能 を担 っ
て い るこ とが知 られて い る24).さ らに,ポ プ ラの 開 花 時期 の
決 定 に も,CO-FT経
路 が重 要 で あ る とい う報 告 が あ る25).
と くに ポ プ ラの研 究 報 告 の なか で,花 成 を誘 導 す る 限界 日
蛋白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
745
長 が 高緯 度 に なる ほ ど長 くな る,と い うお も しろ い 知 見 が
示 され た.光 周 性 花 成 の分 子 機構 は植 物 の なか で 広 く保 存
14) Farre, E. M. et al.: Curr. Biol., 15, 47-54 (2005)
15) Mizuno, T., Nakamichi, N.: Plant Cell Physiol., 46, 677-685 (2005)
され て い る と同 時 に,植 物 が 生 息 す る場 所 に巧 妙 に適応 す
16) Hotta, C. T. et al: Plant Cell Environ., 30, 333-349 (2007)
17) Fowler, S. et al.:EMBO J., 18, 4679-4688 (1999)
るた め の基 本 メ カニ ズ ム となっ てい る とい え よ う.
18) Imaizumi, T. et al.:Nature, 426, 302-306 (2003)
19) Imaizumi, T. et al.: Science, 309, 293-297 (2005)
文
20) Chen, M., Ni, M.: Plant J., 46, 823-833 (2006)
21) Mizoguchi, T. et al.: Plant Cell, 17, 2255-2270 (2005)
献
1) Baurle, I., Dean, C.: Cell, 125, 655-664 (2006)
2) Jiao, Y., Lau, O. S., Deng, X. W.: Nature Rev. Genet., 8, 217-230
(2007)
3) Abe, M. et al.: Science, 309, 1052-1056 (2005)
22) Sawa, M. et al.: Science, 318, 261-265 (2007)
23) Yamaguchi, A. et al.:Plant Cell Physiol., 46, 1175-1189 (2005)
24) Hayama, R., Coupland, G.: Plant Physiol., 135, 677-684 (2004)
25) Bohlenius, H. et al.: Science, 312, 1040-1043(2006)
4) Wigge, P. A. et al.: Science, 309, 1056-1059 (2005)
5) Corbesier, L. et al.: Science, 316, 1030-1033 (2007)
6) Valverde, F. et al.: Science, 303, 1003-1006 (2004)
7) Suarez-Lopez, P. et al.: Nature, 410, 1116-1120 (2001)
Database Center for Life Science Online Service
8) Yanovsky, M. J., Kay, S. A.: Nature, 419, 308-312 (2002)
9) Alabadi, D. et al.: Science, 293, 880-883 (2001)
10) Alabadi, D. et al.: Curr. Biol.,12, 757-761 (2002)
11) Strayer, C. et al.: Science, 289, 768-771 (2000)
12) Gardner, M. J. et al.: Biochem. J., 397, 15-24 (2006)
13) McClung, C. R.: Plant Cell, 18, 792-803 (2006)
746
蛋白質 核酸 酵素
Vol. 53
No. 6
(2008)
澤 真 理 子
略 歴:2005年
東 京大 学 大 学院 理 学 系研 究 科 生物 化 学 専 攻 修
了,同 年 日本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員(PD),2006年
米国
Scripps研 究 所 博 士 研 究 員,2007年
よ り米 国California大 学
San Diego校
博士 研 究員.
研 究 テ ーマ:概 日時計 が つか さどる生命 現 象の 分子機 構 の解 明.
Fly UP