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第 7 回アジアアクションラーニングフォーラム 演習

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第 7 回アジアアクションラーニングフォーラム 演習
 高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ ■第 7 回アジアアクションラーニングフォーラム 演習 高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 日時:平成 24 年 11 月 9 日(金)14:15~16:15
場所:立教大学池袋キャンパス
主催:日本アクション・ラーニング協会
共催:立教大学経営学部リーダーシップ研究所
後援:株式会社ラーニングデザインセンター
■ 発表者 小林昭文氏 埼玉県立越ヶ谷高等学校 教諭 (ご意見ご質問大歓迎です。[email protected]) 〇小林氏(以下、敬称略):
初めまして。埼玉県立越ヶ谷高校と
いう公立の学校で、理科といっても最
近は物理しか教えてない、物理担当の
小林と申します。
第7回アジアアクションラーニングフォーラム
〜~質問によるリーダーシップ〜~
2012.11.09
⾼高校物理理における
「アクティブラーニング(能動的学習)」
型授業の展開
〜~アクションラーニングの理理論論とスキルが
学校の「授業」を変える〜~
松田さんがずっと話をしてくれたの
で、その話につなげていこうと思いま
埼⽟玉県⽴立立越ヶ⾕谷⾼高等学校 教諭
す。あ、その前に聞かなきゃと思って
⼩小林林 昭⽂文
いたのですけど、
「 アクションラーニン
グ・セッション(質問会議)」の経験のあ
る方は何人いらっしゃいますか?誰もい
ない。きょう午前中のマーコード教授の
お話を聞かれた方は何人? これは皆さ
ん。ありがとうございます。
そしたら、その辺につなげていきま
しょう。私はきょうのマーコード教授の
⽬目次
1 このワークショップの3つの狙い
2 ⾃自⼰己紹介&学校教育の現状と課題
3 アクションラーニングを「⾼高校物理理」
の中にどう組み込んだか?
4 体験!「⾼高校物理理」
5 質問による学び
6 振り返り・質疑応答
話を聞いてすごくうれしかったのは、質
2
問によってリードしていく、あるいは質問することによって、「リーダーも成長していく、
1 / 42
高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 学習していく」、ということです。その仕組みが授業とか、あるいは企業内における人材育
成の中で回り始めたら、お互いにとって、生徒と先生にしても、社員と上司にしてもとて
もハッピーな関係ができるだろうと思いました。
私は最初、「アクションラーニング・セッション(質問会議)」を学びました。「アクショ
ンラーニング・セッション」は 6~8 人ぐらいで会議をやります。そのうちの 1 人はコー
チです。そのやり方や考え方は素晴らしいなと思いました。しかし、学校の授業は 1 対 40
なのでそれをそのまま使えない。どうすれば授業に活用できるかと色々考え、試行錯誤し
てきました。ようやく、乗り越えたかなと感じているところです。
「アクションラーニング・セッション」では、自分や自分たちの経験を振り返って、新
たな視点からの気づきを得ることで問題解決が進む、ということがしばしば起きます。物
理でも探求的な活動ではこれが必要なのですが、大半の授業ではそうはいきません。高校
の物理の授業ですから、教えなきゃいけないこと、覚えてもらわなきゃいけないことがた
くさんあるからです。教え込むとか覚えてもらうということを、やりつつ、
「協同的な学び」
もつくっていくにはどうすればいいか、という点で、いろいろ工夫をしてきました。そん
なことを今日はちょっとだけ体験していただいた上で、いろんなお話し合いをしていただ
ければいいなと思っています。
振り返り
この狙いを実現するために、色々な仕組み
と介入方法を考えてきました。皆さんの職場
でも、たぶん使えるだろうと思っています。
マーコード教授も盛んに言ってましたが、
質問の効果は、いろいろ気付くこと、リフレ
クションを起こすことです。そこで、皆さん
以下の⼿手順で振り返ります
1 模擬授業の中で
「⽣生徒の⽴立立場で感じたこと」は何ですか?
2 「教師の⽴立立場で振り返ってみて
気づいたこと」
は何ですか?
3 みなさんの授業で、
「すでにやっている」
「まずはやってみよう」
「ちょっとだけやってみよう」
「そのうちやってみよう」
と思ったことは何ですか?
⻩黄⾊色のカー
ドに書いてく
ださい。
⻘青⾊色のカードに
書いてください。
⾚赤⾊色のカードに
書いてください。
「リフレクションカード」
4 今⽇日の研修会で
に書いてください。
「わかったこと・
気づいたこと」
「やろうと思ったこと」は何ですか?
4
のテーブル上に三色のポストイットカードが
あります。授業中に生徒の立場で感じたことは黄色いカード、それから教師とか指導者の
立場で気付いたことは青いカード、
それから皆さんのお仕事の場面で
⾃自⼰己紹介1
物理理学(相対性理理論論と宇宙論論)
を志した中⾼高、⼤大学⽣生時代
何かやってみようと思ったことが
空⼿手の修⾏行行に明け暮れた
⼤大学⽣生時代→30代後半
あれば赤いカードに、途中でもい
いですからちょっとメモしておい
⾼高校教師になってから勉強した、
カウンセリング、キャリア教育、
コミュニケーション教育
てください。後で話し合いの時に
2 / 42
現在の研究の中⼼心は…
「ワークシートによるグループワーク」
「メンタリング」
「アクションラーニング」
「選択理理論論」 「サーバント・リーダーシップ」
「アクティブラーニング型の物理理の授業」 6
高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 役に立ちます。
自己紹介はできるだけ簡単
に。物理科にいまして、でも
実は大学の時は空手ばかり
やっていて、教員になったの
はだいぶ遅かったんですが、
それからカウンセリングとか
キャリア教育とかの勉強をし
てきて今の授業につながって
きました。この辺は後で読ん
⾃自⼰己紹介2
新しい授業に挑戦するまで
1988〜~1999(A⾼高校)
「荒れる学校」に勤務。
カウンセリングを学ぶ。
特にグループ理論に興味。構成的グル ー プ
エンカウ ンター は得意。非構成エンカウ ンター グル ー
プやTグループなども経験した。
「ワークシートによるグループワーク」を開発。
1999〜~2004(B⾼高校)
⽣生徒はとても楽しく取り組み、成⻑⾧長する。
「総合的な学習の時間
「普通の授業でもできるのでは?」
(キャリア教育)」を担当。
→物理理の授業でもやってみよう!
2004〜~2007(C⾼高校)
単著を上梓。アクションラーニングとの出会い。
物理理の授業にチャレンジ 苦⼿手の⽣生物→パワーポイントに習熟
ロジャーズ「
学習者中⼼心の教育」
に出会う。
試⾏行行と基礎⼒力力蓄積
2007〜~現在(越ヶ⾕谷⾼高校)
プロジェクター騒動、新任S先⽣生の刺刺
激、中堅M先⽣生の刺刺激、管理理職の理理
物理理の授業にチャレンジ。
周囲の刺刺激と理理解に⽀支えられる。 解、⽣生徒の理理解と協⼒力力
7
外部からの評価と⽀支援
でおいていただければ充分で
す。
実は日本では大学の先生たちがいっぱい授業研究をしています。私はそれらを基にして
始めました。
現在の私の授業の目的は
「科学者になる」、目標は「科
⾃自⼰己紹介3
新しい授業へのチャレンジ
学的対話力の向上」と設定し
ています。
本校は 65 分授業なので、
15 分ぐらい説明して、あとは
生徒たちが問題演習をやって
確認テストとリフレクション
カードを書く。こんなやり方
「学び合い」
⼩小林林の
(⻄西川純・
上越教育⼤大学教授)チャレンジ
「協同学習LTD」
⽬目的
「科学者になる」
⽬目標
「科学的対話⼒力力
の向上」
(安永悟・久留留⽶米⼤大学教授)
「学びの共同体」
「教えて考えさせる授業」
小林の解説
(15分間)
「効果10倍の〈教える〉技
術」
生徒同士のピアラーニング
(
35分間)
(佐藤学・東京⼤大学教授)
(市川伸⼀一・東京⼤大学教授)
(吉⽥田新⼀一郎郎)
「学習者中⼼心主義」
(ロジャーズ)
をやっています。
確認テスト・相互採点
リフレクションカード記入
(15分間)
8
物理室がこういう状態で、大きなホワイトボードに
なってるので、左半分にスライドを映して、必要なと
きには右半分に書くという授業をやっています。これ
は何か質問されて答えてるところですね。
学校教育の世界では、高校では今年度の高校 1 年生
9
から新学習指導要領に移行しました。世界の流れにつ
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ なげようということで、次の2つ
⽂文科省省
の動き1
が目玉だといわれています。1つ
は「授業中に言語活動を重視しな
さい」、2つ目が授業中に「思考力、
判断力、表現力の育成をしなさい」
というものです。これは画期的な
んです。お分かりいただけます
12
か?授業中に言語活動をしていた
のは今まで誰でした?
〇参加者:先生。
〇小林:先生しかしてないん
ですね。なぜなら私
語はいけないとい うのが大原則です から、だからこれは
大変なことなんで
す。
その文部科学省が出している資
⽂文科省省
の動き2
料をちょっと編集しました。こん
な大胆なことを言っています。
「一
斉授業だけではなくて、意見交換
や話し合いをしましょう」。これっ
てやんわり言ってますけど、要す
るに「一斉授業だけは駄目よ」と
言っています。
さらに、「先生が説明するだけ
13
⽂文科省省
の動き2
でも駄目」ですよと。生徒が発表
したり、こういうことやりましょ
う。それから、これなんかは強烈
ですよね。
「 板書をノートに写すだ
4 / 42
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ けは駄目よ」と言ってるのです。
ところが、実際にはほとんど現場の先生たちは、
「そんなのできない」という悲鳴が上が
るんです。ほとんどの悲鳴の中身は、
「今でも授業中精いっぱいしゃべって教え込んで教科
書ようやく終わってるのに、その上に更に話し合いの時間をとったり発表の時間をとった
ら、教科書が終わらないじゃないか。成績下がるぞ」という悲鳴なんですね。
それに対して、私は、何とか乗超えています。雑誌に紹介してもらったのでその記事か
ら抜粋します。これは授業中の「問
⼩小林林の物理理1
題演習」をやってる場面です。こ
問題演習の時間。話
し合う生徒、一人で考
えている生徒、立ち歩
く生徒…様々です。
こは 3 人ぐらいで今話し合ってま
す。何やってる時なのかな。この
子は今 1 人で勉強してる。これは
たまには私が質問に
答えて、説明すること
もあります。
立ち歩いて何かやってる。こんな
テーブルに貼っ
てある模造紙。
大事なコミュニ
ケーションツー
ルです。
別名
「
なごみ
ペー パー」
ことが同時に起きています。
それからたまに私が説明する。
これはテーブルに貼り付けてある
16
模造紙です。話し合いが始まると、
すぐそこに書きながら話ができま
⼩小林林の物理理2
す。漫画もいっぱいですけどね。
これは「物理演習」という講座
の場面です。いわゆる問題演習の
時間なんですが、プレゼンテー
ションの練習を兼ねてやっていま
す。その右が、さっき松田さんが
ちょっと紹介してくれましたが、
リフレクションカード。きょうの
授業について話し合いができたか
とか、分かったこととか、そのほ
かのことというのを書かせてます。
毎回出させて、私はほとんど検印
を押して、たまにちょっと何か書
「
物理演習」
の授業では担当の生
徒が問題解説をします。
「
説明用答案」
を実体投影機+プロ
ジェクターでホワイトボードに投影。
ポインターを使って説明します。生
徒の手元には印刷したものも配布
してあります。
授業の終わりには毎回リフレクション
カードを提出させています。
17
自分の頭の中で考える授業で
す。しかもその場で理解できるように
なります。考えに詰まることもありま
すが、そんなときはちょうど良く小林
先生がきてくれるんです。授業中に
『
時計を見なくなった』
のが一番の特
徴です
隣の人をはじめ、まわりにわ
からないことを気軽に聞けるの
が、すごくいいです。席が遠くて
もわかる人に聞きにいけるよう
5 / 42
になりました。数学をやりたいと
思っていたのですけれど、今は、
数学と物理を学べる数理科学
科を進路に考えるようになりま
した
⼩小林林の物理理4
私が今の形の授
業を始めたのは
55歳のときでした。
『
学習』
と『
成長』
に、年齢的な限界
はないと思ってい
ます
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ いて返すだけですけど、これをずっとやっています。
その結果、どういう感想が出てきているかと言うと、
「普通の授業だと眠くなることもあ
るけど、この授業ではこれっぽっちも眠くなりません」。それから「自分も何だろうと考え
たり、質問したり教えられたりする中で考えが広がったり深まったりする」とかですね。
ライターさんが非常に喜んでこれはぜひ入れたいと言ったのは、
「授業中に時計を見なく
なった」。これは私もとてもうれしいです。あと何分で終わりというふうに思わないという
ようなことがあります。
あと私が「ぜひ書いてねと」言ったのはここです。これを始めたのは私が 55 歳の時で
した。ベテランの先生たち諦めないでねというのも言いたいところなんですね。
もう1つ、海外の動きはもっと進んでます。オックスフォード大学ではもう講義を無く
すというふうに言ってるんですね。 また「フリップト・クラスルーム(Flipped
Classroom)」、反転授業とか逆転授業とか言ってますが、ということも始まっているよ
アメリカの動き2
うです。 この図は分かりや
すいですね。今までの
授業の形式は、先生が
こうやって授業中に教
えます。
(生徒は)家に
戻ってから問題演習を
やったりするというこ
とだったんですが、そ
れをひっくり返そう。
この指導者像の転換、”guide on the side”から「
学習者に寄り添う導
き手」
への転換が重要になります。では、その技法は?
ここにALコーチの様々な役割、特に「
質問による介入」
が必要になっ
22
てきます。
つまり家で、あるいは
ネット環境のある所で情報を入れてきて、集まった時にはグループ学習とかディベートと
かプレゼンテーションをやろう、ということなんです。 そうすると、先生の役割が変わ
りますよというところが大事なんです。
今までの先生は「sage on the stage(=壇上の賢人)」だった。上から下に教えてます。だ
けど、図の右側では、先生は下りてきてますよね。そばにいる。「guide on the side(学習
者に寄り添う導き手)」なんです。これがちょうど「アクションラーニング・セッション」の
コーチの役割にとても似ている。その辺の転換をしていけばうまくいくだろうと思ってい
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ ます。私がやってることはこれを具体的に実践に移そうとしているということです。
私の授業の大まか
⼩小林林の物理理の授業プロセス
な流れはこんなふう
になっています。 最初の 15 分は板
書とノートがほとん
ど無い。説明の内容
も短いので、あっと
いう間に終わっちゃ
います。次の「問題
演習」がメインです。
板書も
ノートもな
い→時間
の効率化
1 学習内容の説明( 15分間)
(1)パワーポイント&プリント配布
(2)インタラクティブ・インストラクション
(
双方向のやりとりを重視)
質問、お
しゃべり、
立ち歩き
自由。
2 問題演習( 35分間)
(1)問題と解答・
解説プリントを配布
(2)ピア・ラーニング
満点が
目標!
必ず目
標を基に
振り返る。
3 振り 返り ( 15分間)
(1)確認テスト
(2)相互採点
(3)リフレクション・
カード記入
教師の役割
(1)ルール・
目標
を提示する。
(2)コンテンツより
プロセスを重視。
(3)安全・
安心の
場をつくる。
(4)生徒の自主性
を促す。
教師の
働き かけ
(1)質問中心。
(2)気づき(
リフレ
クション)
を促す。
(3)全体、グルー
プ、個人に対し
て適切な介入を
する。
23
ここはとにかく教室
の中にいれば何やってもいいんです。おしゃべり、立ち歩きは自由ですから。
目標地点はここ(「3(1)確認テスト」)なんですね。確認テストで全員が 100 点を取れる
ように協力してということでやっています。
この間、私がやっていることをここ(右側、「教師の役割」「教師の働きかけ」)にざっと
書いてますが、これはアクションラーニング・セッションのコーチがやってることとほと
んど同じことです。コンテンツ、中身に入って私がやることはなるべく減らして、学習の
プロセスを整えるということ
をやっています。
ど ん な 質 問 を し て る か を
ちょっと並べてみました。こ
ういう質問をやっています。
例えばスタートに、「きょ
うのテーマはこういうことで
す。何を知ってますか?」と
質問して話し合わせます。
「ど
授業中の質問による
リーダーシップの例例
どんな話が
出ましたか?
ここまでの説明でどんな
ことを感じましたか?
今⽇日のテーマについて知って
いることは何ですか?グルー
プで2分間話してください。
問題演習に⼊入る前に質
問しておきたいことはあ
りませんか?
(盛り上がりすぎ?のグループに)
確認テストまであと15分ですが、
順調ですか?
「チームに貢献する」は
(「全部わからない」に)
守られていますか?
わかるところはどこですか?
(各グループに)
順調ですか?
「チームで協⼒力力する」は
守られていますか?
今⽇日の授業で気づいたこと
は何ですか?
んな話が出ましたか?」と導
いたり、「問題演習」の途中では、「順調に進んでますか?」と質問します。これはとても
役に立ちます。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 生徒達はしばしば余計な話に花を咲かせます。そこに「余計な話をするな!」というと
大体雰囲気が壊れちゃいます。そこで、
「確認テストまであと 15 分だけど、順調ですか?」
と質問すると、大体気付いてくれるんですこんな風に質問を中心に介入をしているという
ことです。
その結果、生徒たちは「楽
しくやる気ができる」とか「難
実験的授業の効果
(⽣生徒達の声)
1時間集中し
てできた☆
しい問題が分かった」とか。
私はこの辺が面白いなと思っ
楽しく勉強でき
るからやる気
がでる。
うがよく分かる」。あるいは
「今更先生に聞けないことも、
先生に教えられて気づ
くよりも、自分で考えて
わかった喜びの方が
大きかった。
⾃自分たちでやりか
たを発⾒見見したこと。
生徒同士で質
問するから、両
方が学べること。
やっと1人友
達できた。
たのは、
「 先生に教えられて気
付くよりも、自分で考えたほ
よくわかっ
た!
まわりの人が教
えてくれた♡ 楽し
かった!!!
難しい問題
がわかった。
今さら、先⽣生に聞
けないことも友達
に聞けた!
教えること
でもっと良良く
理理解できた。
クラスの雰囲
気が和む。
25
友達なら聞ける」。
それとすごくうれしかったのは、教えている側の生徒達のコメントです。
「 教えることで、
よく分かる。自分のためにも良かった」という感想を必ずいっぱい出してくれます。これ
をシェアすると、
「僕はいつも質問してばっかで申し訳ない」と思ってる子も、自分がチー
ムに貢献してるんだという自信を持てます。これもとてもいいですよね。
あとこの色が変わってる(黄色の吹き出し)のは、人間関係が構築されたというコメント
です。私の学校は、2 年生と 3 年生は全部選択授業なんで、講座に集まる生徒のクラスは
ばらばらなんですね。その中で、講座で友達ができているというようなメリットもあるわ
けです。
成績も少なくとも下がっては
いないと言えると思っています。
それよりも、選択性なので選択
者がどんどん増えている方が、
私は大きな成果じゃないかと思
うんですね。この授業を始めた
のが 5 年前ですけど、そのとき
に比べて物理選択者は 2 年生で
2 倍、3 年生で 3 倍になってる
実験的授業の効果
(変化・学んだこと)
⽣生徒の⾃自発的学習の場
「ふぃじ★かふぇ」
誕⽣生
「センター物理理Ⅰ」の
平均点向上
偏差値43.9 47.6
物理理選択者数増加
30名 80〜~90名
マスコミが紹介「⽇日本経済新聞」
「ガイドライン」「
SA-CLASS」
授業の進度度向上
11⽉月に教科書終了了
外部への出前授業
「The授業リンク」
外部からの授業⾒見見学
「関東第⼀一⾼高校」
東京⼤大学⼤大学院
「⼤大阪学芸⾼高校」
早稲⽥田⼤大学⼤大学院
「沖縄キャリアセンター」
産業能率率率⼤大学
「神奈奈川県⽴立立相模向陽館⾼高校 ⽇日本教育⼤大学院⼤大学…
26
「⿇麻⽣生塾(博多・
専⾨門学校)
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ んです。これは大きな成果だと思います。
もう一つ一番うれしかったのは、左上の吹き出しです。この授業を始めたら、すぐに 3
年生が私のところに来て「放課後、物理室を開けてほしい」と言ってきまして、
「でも、会
議が多くていないことが多いんだけど」って話をしたら、「先生がいなくてもいいんです。
授業中のように勉強したいんです。でも、図書室はしゃべっちゃいけないので、物理室を
開けといてくれれば俺たち勝手にやります」と。
「ああ、それならいいよ。物理室には模造紙もあるしホワイトボードもあるしいろんな道
具もあるんで、どうぞご自由に」と言ったら、それからずっと毎年、2 月から 3 年生は自
宅研修に入って登校しなくな
ると、途端に 2 年生が「僕た
ち来ていいですか」って来て
代替わり。私が帰る 6 時とか
7 時とかぐらいまで 10 人、20
人残ってます。これがある日
の状態、そういう様子なんで
すけど、ここら辺で集まって
たり、ホワイトボードに書き
27
ながら授業をしてたり、こっ
ちのほうにもいますね。これが私は一番大きい効果かなと思ってるところです。
ざっと説明するとこんなところなんですが、ここまでで質問はありますか。
〇参加者:いいですか。
〇小林:はい、どうぞ。
〇参加者:オックスフォード大学のこの反転授業というのは、今先生がおっしゃったよう
に 15 分の説明みたいなものはやっているんですか。
〇小林:どうでしょうか?具体的なことはわかりません。全ての講座については若干の違
いがあるらしいんですけども、オックスフォード大学全体としては、講義はや
めようということらしいです。
〇参加者:自由に自分でやらせる。
〇小林:はい。その反転授業に関する話題をもう1つ。高校でやってるのは、先生の説
明部分だけをパワポに音声をのせて、それをネットに上げておいて、それを生徒
9 / 42
高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ が見てくるというふうなことは始めているようですね。もともとは欠席した生徒
のためにやり始めたら、それは先にやったほうがいいよって話になって広がり始
めているらしいです。
〇参加者:ありがとうございました。
〇小林:うちの生徒にもこれやろうかなと思って、3 年生にこの間聞いたんです。もし、 そうやったらみんなは何かのかたちで見ることができるのかと言ったら、3 年生は
すごいですね、全員できると手を挙げました。家のパソコンかスマホか何かででき
る。そしたら面白いことを言う子がいて、「先生、それをぜひやってくれ。そした
ら俺は来る途中の電車の中で見てくる」と。確かに 15 分ぐらいの説明ですから電
車の中で見れちゃうというのがあって、何とかチャレンジしたい。
ほかにいかがですか。ないですかね。
じゃ、とにかく実際に物理の授業を体験していただきましょう。ここから先は大きいサ
イズのプリントを使っていきます。
と、言いながら、導入時の話を少ししておきます。2 年生の最初の授業の時には授業の
目的・目標を説明して、科学者になることだと言うんですけども、科学者って職業的な科
学者の意味じゃないですよという説
明をします。
授業を始める前に‥
「科学者は、何を毎日やってると
1 この授業の⽬目的は「
科学者になる」
です。
ここで⾔言う「科学者」とは
職業のことではありせん。
科学的な考える⼒力力を持った⼤大⼈人に
なって欲しいという願いです。
思いますか?」という質問をして、
時にはグループで話し合いをさせる
んですね。書き出させるんです。こ
れは何回やっても生徒たちは結構ま
ともで、科学者は毎日何をやってる
2 では科学者は何をしているでしょうか?
計算ばかりしている?
⼭山奥に閉じこもって研究している?
最近はそんな科学者は
いなくなりました。
31
かと思うかと言うと、
「 本を調べてい
る」とか「チームで協力してる」と
実際の科学者はこんなことをしています‥
か「素人に向けて説明する」とか「講
3 わからないことを本などで調べる
他の科学者に質問する
難しいことをわかりやすく⼈人に教える
⼊入⾨門的な講義をする
チームで研究する
世界中の科学者と協⼒力力する
演だよ」とか、結構コミュニケーショ
ンに有することがいっぱい書いてあ
るんですね。
ま さ に そ の と お り で 、 い わ ゆ る
4 だから‥
私たちもこれを⾒見見習いましょう!
科学者がやっていることを
10 / 42授業中にやりましょう。
それを通して
物理理の知識識を⾝身につけましょう
32
高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ マッドサイエンティストなんか今はいないんです。ちょっと皮肉っぽく言えば、
「科学者の
中で一日に 5 時間も 6 時間も、40 人もの人が周りに人がいるのに見向きもせずお話もせず、
ただ目の前に流れてくる文字を写している」、そんな活動をしてる科学者はきっといない。
そうですよね。
だけど、生徒たちは毎日それをやってるわけですよ。隣にいる子に見向きもしないで、
おしゃべりもしないで、出てくる文字をただひたすら写すという活動をやっている。これ
は結局、科学者としての活動につながらないですよね。だから、将来、科学者としてみん
ながやるようなことを、この授業中にやろうよ。そうやりながら、ついでに物理が分かっ
たらいいよねという話をします。さらにしつこく話し合ったほうがどれだけメリットがあ
るかというのを感じてもらうゲームをやります。
これはご存じでしょうか?「NASA ゲーム」ってご存じの方はいらっしゃる? これは
すごく面白いです。状況設定は、みなさんは月に探検に行ったチームです。母船から降り
て小さい探査船か何かで探検
これは紹介だけ。
していたら、壊れて動けなく
なった。仕方ないので、100
キロ離れた所にいる母船まで
歩いて戻らなきゃいけなくな
りました。探査船に残ってる
モノはマッチとか食料とか
ロープとかピストルとがあり
ます。さて、どれを持って行
きますか?優先順位をつけて
コンセンサスゲーム
(NASAゲーム)
1.コンセンサスゲーム(
合意
形成ゲーム)
は話し合って
チームの合意を作り出すワ
ークです。
2.個⼈人で出した結論論とチーム
で出した結論論を得点化するこ
とで、話し合いの効果を実感
できます。
3.今年年度度最初の物理理の授業
で実践し、⽣生徒には好評でし
た。
4.別紙ワークシートで⾏行行いま
す。
「月からの脱出」
◎グループでよく話し合って、みんなが納得できる結論をだしましょう。
1.同じグループの人の名前を聞いて書きましょう。
2.次の文を読んで、まず個人で必要順位をつけましょう。
3.次にグループでの順位を話し合って決めましょう。
「じゃんけん」「多数決」は不可です。「みんな」で話しあって合意(コンセンサス)を得
ましょう。喋りすぎる人や発言しない人がないようお互いに協力しましょう。
※「科学的対話力向�上のために」①発言は「結論」→「理由」の 順で。②短い説明、短い質問。 ③人の話を良く聴く。④チームとして協力する。⑤なるべく「○○くん・さん」と呼びかける。
あなたがたは宇宙船の乗組員です。月の探検を終えて、あなた たちの宇宙船は迎え
に来た母船がいるところにむかっていました。ところが、母船まで100 kmのところ
で、宇宙船が故障して動けなくなりました。
そこで母船まで自力でたどり着かなくてはなりません。幸い、宇宙船の備品は壊れ
ていませんでした。この中から母船にたどりつくまでに必要なものを持って行きます。
その優先順位を考えてください。残っているものは下の表の10個です。
グループの
備品
人たち
(持って行く物)
自分
の結
論
グルー
プの結
論
マッチ
食料(宇宙食)
ナイロンのロープ
ピストル
酸素45kg入�りボンベ
月から見た星図
救命ボート
20リットルの水
救急箱
太陽電池式の無線�機
4.この時間の感想を書きましょう。(科学者ノートに書きましょう)
33
くださいというゲームです。
最初は個人作業でやってね。そして、それを自分でつけたら、じゃチームで話し合って
グループの結論を出してください。ただ、この話し合いのルールがあって、じゃんけんや
多数決は駄目よ。それから誰かが仕切っても駄目。みんなで必ず、うん、それ 1 番ね、そ
れ 2 番ねとやってちょうだい、という説明をして話し合いをさせます。
これをやる意図の1つはアイスブレイク、つまりグループの雰囲気を和らげることなん
です。面白いのはこれには答えがあるんですよ。なので、結論が出た後で、専門家の出し
た答えを提示して点数をつけさせます。そうすると、ほとんどの生徒が自分 1 人でやった
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ ときの結論よりも、グループで
やったときのほうが点数が上が
「科学者になる」ために「
科学的対話⼒力力」
を⾼高めるための時間です。
るんです。それで、だから話し
席は⾃自由です。
できるだけ⾊色々な⼈人と
話せるようにしましょう。
合ったときのほうがわれわれは
真実に近づくんだというのがも
プリントをとって、
教科書・筆記具を⽤用意して、
各テーブルごとに
リラックスできるような雰囲気を
作っておいてください。
のすごく説得力があって、次の
時間から生徒は、
「よし、頑張っ
て話そうと」、言ってくれるんで
チャイム終了了と同時に
解説を始めます。
す。
今日はこのあたりのことはも
34
う終わっているということでいきましょう。大体いつも、これを生徒が入ってくるときに
は提示してます。
毎回、2種類の目標を設定しています。1つは「態度目標」です。「しゃべる」「質問す
る」
「説明する」
「動く」
「チーム
で協力する」「チームに貢献す
る」。これはアクションラーニン
グセッションの時も同じように
毎回メール設定をするのに習い
ました。これでいきますよ。
きょうの「内容目標」は「光
の性質」ということです。太陽
から出ている光には色がたくさ
んあるってことは皆さんご存じ
ですか。ご存じですよね。専門
この時間の⽬目標
1.〈態度度⽬目標〉
しゃべる、質問する、説明する、動く、
チームで協⼒力力する、チームに貢献する
2.〈内容⽬目標〉
理理解すること
(1)〈⽤用語を理理解する〉
光の速さ、偏光、
第3章 光
①光の性質
(2)〈イメージを描く〉
光の波⻑⾧長と⾊色の関係
A 光とその種類
1.可視光線 ⽬目に⾒見見える光のこと
波⻑⾧長によって⾊色が異異なる。
2.⽩白⾊色光 ⾊色がない光
3.単⾊色光 1つの波⻑⾧長からなる光。
家もいますしね。
さて、光の色というのは波長
によって違います。波長の長い
やつは赤、短いやつは紫、と覚
えておいてください。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 次に、光の速さなんですが、皆さんこれはご存じですか、光の速さがどれぐらいか。秒
速約 30 万 km。昔はよく地球を 1 秒間に 7 回半回るなんて言っていました。これを測定し
ようとしたのはガリレオなんで
す。すごく乱暴な実験でして、
遠くにお弟子さんを置いておい
て、ランプの光を布で隠すんで
B 光の速さ
1.光の速さ→c=3.0× 108[m/s] 秒速約30万キロメートル
2.17世紀にガリレオが測定しようとしたが失敗した。
3.1849年年、フィゾーが⻭歯⾞車車を⽤用いてほぼ正確な値で測定した。
4.1862年年、フーコーが鏡を⽤用いて更更に精度度をあげた。
すね。ぱっと俺が見せるから、
おまえ向こうで鏡持ってこっち
に向けておけと、行って戻って
くるのを測ろうとした。この時
代ってまだ振り子時計の時代で
すから、測れるわけがない。で、
失敗してるんですけども。
ちょっとこれから皆さん話し
合ってほしいんですが、フィ
ゾーという人が非常に正確な実
験をしてる。この図か、こっち
の図のほうが分かりやすい。
ちょっとグループでこれを読ん
でみて、どうやって測ったのか
理解していただければ。どうぞ。
〇参加者:実は知ってるので。
〇小林:知ってる方がいらっしゃるところは、ぜひ教えていただいて。こっちのグループ
だけに詳しい方がいらっしゃる。
(グループ話し合い/00:20:42~00:23:48)
〇小林:ありがとうございます。
じゃ、大体何となく分かっていただいたぐらいに。また後で練習問題で出るから。
今日の話はもう 1 個ありまして、「偏光」ということについて少し理解していた
だこうと思います。物理の授業では、この前の時間に波の話をやっているので復
習で特別にやりますけども、皆さん波には「縦波」と「横波」とあるという話は
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ どのぐらい理解していただけてますかね?
イメージとしては、正確ではないんですが、水の波というのはこういう波が伝わってい
くじゃないですか。波が進んでいく方向に対して上下に振動しますよね。あれを「横波」
といいます、あのかたち。それに対して、こういう振動をしていくのがあるんです。波が
向こうに進んでいくのに対して、一つ一つの場所はこういう振動をしている。つまり進ん
でいく方向と振動する方向が同じという波を「縦波」といってます。
ここでは今それほど大事なことではないんですが、光はその中では真空の中を伝わって
いく横波です。なので、イメージとしてはこういうふうに波が、こういう振動が伝わって
いきますよ。光というのはこういうものです。
その光の振動面なんですけ
ども、振動面がどれだけある
C 偏光
1.光は横波〜~振動⾯面は全ての⽅方向
2.偏光〜~ある⽅方向の振動⾯面だけを持つ光
3.偏光板による現象
下図、偏光グラス、3D映画
かと言うと、全ての面だと。
こういうふうに振動していく。
斜めのこういう振動。もう全
部の方向に振動してます。
偏光板が面白いのは、その
たくさんの振動面のうちのあ
る一つの振動面だけの光を通
復復習
(1)波には
「縦波」と
「横波」がある。
(2)固体中は
縦波・横波共に
伝わる。
(3)液体・気体中
は縦波のみ
伝わる。
(4)光は真空中
を伝わる横波。
り抜けさせるんです。なので、
この場合、この振動面とこの振動面は一緒になってますから、この場合は通り抜けます。
でも、下は横向きになってる。通り抜けないんです。
なんて説明は、実際に見てもらえば一番いいと思うんですね。これが偏光板です。今こ
の偏光板を通して私の顔が見えてますかね。これをこう回していきます。そうすると見え
ないです。もっと回すと見えますよ。この状態が、これの下の状態。見えてた状態がこう
いう状態。あとでテーブルに回しますから試してみてください。
この偏光というのは、いっぱい私たちの周りには使われています。その例です。右の写
真と左の写真はどこが違うか分かりますか。魚が、これは体全体がよく見えてると思うん
です。こっちはぼやけてますよね。これはここに書いてありますが、偏光板を通して見た
ときと直接見たときの違いなんです。偏光板を使うと水中がよく見えるということです。
その理由は私たちの目には水中から来る光と、水面で跳ね返る光が見えているからなん
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ です。反射する光が邪魔をす
るので水中からの光がよく見
えないというわけです。
この水面で跳ね返ってく
る光は、これは偏光なんです。
つまりある特定の面だけしか
振動してない。そこで、それ
を偏光板でカットしてやれば、
水中からの光だけになり、中
がよく見えるということにな
ります。
この中で釣りをやる方はいらっしゃいますか。釣りがお好きな方。釣りをやる人はそれ
をよく知っているので、サングラスが違うんです。ここに似たようなサングラスが二つあ
りますが、これは普通のサングラスです。これは、見ていてください。私がかけたほうが
いいか。こうやってみます。たぶん全然色が変わらないですね。これは普通のサングラス
です。釣りをやってる人が使ってるサングラスはこういうサングラスでして、これは偏光
板なんです。なので、こうやってくと暗くなりませんか。これはちょっと薄いので見えちゃ
いますけども、分かります? これも後で確かめてみてください。
それからもう 1 個。偏光で面白いのは、携帯電話ですね。ちょっと携帯電話を出してみ
てください。携帯電話の液晶から出ている光は偏光なんです。なので、それに偏光板を当
てて回してみてください。どこかで暗くなります。暗くなりましたか。試してみてくださ
い。皆さんでやってみると面白いんですが、実はたまにそれでもよく見えるやつがありま
す。それは何でって考えるとまた面白いんですけども。
この偏光の応用の1つが立体映画、3D はこれを使ってます。この図でお分かりいただ
けますかね。こっちから出してる光が 2 種類あるんです。これは横向きになってます。横
向きの振動面で左という絵を写してます。縦向きの振動してる偏光で右ってやつを写して
ます。見る側に、映画館へ行くと眼鏡をかけさせられるじゃないですか。あれは、この方
向の光だけを右側は受け止めるんです。横は左側、これだけを受け止める。ので、この絵
は右目だけに入ってきます。この絵は左目だけに入ってきます。頭の中で右と左でちょっ
とずれた映像が入ってくるので、頭の中では立体的に見える。これが映画館の 3D の原理
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ です。
〇参加者:じゃ、右と左と違 うんですか。
〇小林:そうなんです。外し
て見ると、ぼやけて
るのはご存じ?
〇参加者:はい。
〇小林:あれはずれた映像を重
ねちゃってるから、外
3D映画の原理理の1つ
パッシィブ・ステレオ⽅方式
41
して見ると二重に見
えちゃうんですね、ぼやっと。
だけど、最近困ったのがテレビですよね。3D のテレビがあって、あれは眼鏡を使わな
くても立体的に見えるじゃないですか。あれはご存じですか。あれはすごいことをやって
るんです。
あれは偏光を使ってないんで
す。眼鏡にシャッターが付いて
るんです。テレビの画面という
のは、1 秒間に 50 回から 60 回
画面が変わってきますから、そ
の中で右目用の画面と左目用の
3Dテレビの原理理の1つ
アクティブ・ステレオ⽅方式
画面を交互に変えるんですね。
それに合わせて、この眼鏡の
シャッターが変わります。そう
42
すると右目には右目の映像だけ
が、左目には左の映像だけが入ってくるので、あとは脳が統合して立体的に見える。
さらに困っちゃうのは、最近眼鏡無しでゲーム機が立体的に見えるんですね。実は 3D
の仕組みっていっぱいあってとても面白いんですが、きょうはこの偏光の話だけ。これは
付録です。
〇参加者:これだと、どこに寝転がっても、例えば眼鏡をかけて。
〇小林:そう、寝転がってもこれだと大丈夫です。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 〇参加者:大丈夫。
〇小林:はい。ゲーム機は駄目なんですよね。眼鏡をかけないでやるあのゲーム機は、寝
転がっちゃうとあまり見えなくなっちゃう、ちょっと仕組みが違うので。これは
大丈夫です。これは寝転がってもちゃんと立体的に見える。
どうでしょう。何かこの辺で質問はありますか。
ついでの話ですが、きょうは持ってこなかったんですが、CD やカセットのケースの上
に偏光板を乗っけるとこういうのが見えます。これはプラスチックを成型、形の中に流し
込んで固めるときに、どうも
プラスチックって一つ一つの
まとまりごとに凍ってくとい
うか固まっていくので、その
ときに光を通す性質が変わっ
ちゃうみたいなんですね。そ
れでこういうのが見える。
なんて具合に、われわれの
身近には案外、偏光を利用し
たのがたくさんあるんだって
ことを見ていただけるといいか
なと。これは同じようなプラス
チック製のものを見てる写真。 偏光の話ばかりしてきましたけ
ども、ここまで何か質問ある方。
こんな説明をざっとして、練
習問題をやりましょう。皆さん
のお手元に練習問題というプリ
ントと、それの回答と解説とい
うプリントとあります。この中
から二つ問題を選んで、15 分後ぐらいに確認テストをやります。
なので、これから皆さんグループで話し合っていただいて、全員が確認テストで 100 点
を取れるように頑張ってください。ルールは「しゃべる」
「話す」
「質問する」
「動く」
「チー
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ ムで協力する」
「チームに貢献する」ということになります。進め方はいかがでしょう。ご
質問はありますか。
〇参加者:2 問選ぶのは、共通の問題で 2 問?
〇小林:確認テストですか。私が勝手に選んだのを今作ってありますから。この後に確認
テストは配りますから。それは内緒です。よろしいですか。
じゃ、どうぞ話し合って、全員が 100 点を取れるようにしてください。どうぞ。あの黒
い時計で 3 時 10 分ぐらいから、10 分から確認テストをします。1 番の問題はセンター試
験の問題。それをやりながら、どうぞさっきお渡しした道具も確かめてみてください。
(グループ話し合い/00:35:39~00:49:57)
〇小林:あと 10 分ぐらいで確認テストをやろうと思います。
あと 5 分で確認テストにしようと思います。
じゃ、皆さん時間ですから確認テストをやります。実は確認テストはたぶん簡単だと思
うんですが、一応何も見ないでやってみてください。すみません、大学の先生にこれをや
らせるのは大変恐縮なんですが、大学の先生にどこまでやらせるんだろうと。よろしくお
願いします。
ぜひじっくり考えてください。覚えちゃってるのもあると思いますんで。繰り返せば簡
単でしょ? でも、きちんとなぜというのをちゃんと復習して。
この 1 番の問題は、何年か前の大学のセンター試験の物理の試験の問題。こんな問題が
出てました。
(確認テスト/00:50:04~0056:40)
グループの方が全員終わったら、確認テストを右回りか左回りでずらしてもらって、採
点して、点をつけて返してもらってください。待ってる間に、ポストイットに何か気付い
たこと、生徒の立場で気付いたこととか、自分、指導者の立場で気付いたこととかあれば
記入してください。
〇小林:確認テストそのものの問題って皆さん終わってらっしゃいますかね。
じゃ、1 回採点しましょう。交換して採点して、時計回りでも左、反対でも。子
どもたちはとても喜んで、100 点は花丸をつけますよ。皆さんはご存じですか。
〇参加者:解答はもらってない。
〇小林:解答はさっきと同じ問題なので、さっきの解答を見てください。
(確認テスト採点/00:57:13~01:05:28)
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 〇小林:ありがとうございました。
じゃ、一区切りして、どうしましょう。終わりは 4 時半の予定であと 1 時間ぐらいある
んですが、休憩したほうがいい? 休憩しないほうがいい?じゃ、続けましょう。
ありがとうございます。いろんな気付きも書いていただいてるところなんですが、先に
ちょっと解説的な話をして、それから皆さんの質問やご意見を伺いながら、もっと深めて
いこうかなと思います。
これは、中学、高校辺りでの
キャリア教育というところでは
よく使ってる図なんです。3 年
ヒント1
この授業は「
キャ
リア教育」として
の全ての要素を
持っている。
ぐらい前は別のキャリア教育の
図解がありまして、それが新し
く変わったんです。キャリア教
育としては、こういう基礎的・
汎用的能力4つと、それから想
像力と思考力と能力と、こうい
「社会的・職業的
⾃自⽴立立、社会・職
業への円滑滑な移
⾏行行に必要な⼒力力」
の要素
51
う柱立てで、この上に専門的な知識、議論を乗っけていくようなことですよというふうに
文科省は言っています。
そうは言いながら、でも多くの学校でやってるキャリア教育というのは、ロングホーム
ルームとか総合的な学習の時間を使ったり学校行事で別の時間を使ったりしているんです
が、そうすると教員はどんどん忙しくなってたまらないので、なるべくならば教科科目の
授業の中でこういったことをやれればいいのになと私は前から思ってましたし、最近は文
科もそういうことを言い始めました。
私の物理の授業は、うまくやるとそういうことにもつながっていくだろうと思ってるん
ですね。これは授業の構造・しくみつくり方と私の介入の仕方にもよりますけど。実際に
生徒たちの感想を見ていると、例えば「友達ができる」とか「一生懸命考えた」とか「面
白くなった」とか、この辺のことは結構アップしてきているので、こういう効果もあると
思っています。
それから、これは皆さんご存じですか。
「ラーニングピラミッド」と呼ばれている、アメ
リカのナショナル・トレーニング・ラボラトリーズ(National Training Laboratories)
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ というところの研究成果で、最近ネット上では氾濫してますけども。 記憶に残る割合がワン
ウェイの講義で聞いてたと
ヒント2
この授業は学習理理論論の研究
成果とも合致している
きは、5%しか残らないん
聞いたとき 5%
だそうです。実に無駄だと
いうことです。効率が悪い。
⾒見見たとき 10%
見たり聞いたりするとその
聞いて⾒見見たとき 20%
割合が高くなってきて、体
話し合ったとき 40%
験すると 80%、一番大きい
体験したとき 80%
のは教えたときに 90%も。
教えたとき 90%
記憶に
残る割合
52
私は、これを、ここら辺
のことを授業中にできたらいいなと思ったんです。今みたいなかたちでやってると生徒同
士でわいわいしゃべるんで、教えることがいっぱい出てくるんですね。質問して、
「え、分
からないから教えてよ」、「こうだよ」って教える。そういう中で、教えた子たちはますま
す理解を深めていく。教えてもらった子も分かっていくという、これはとても、この理論
は役に立ったと思います。
あとは、興味のあるところ
を見ていただければいいかな。
これは生徒がよく言うんです。
ヒント5
キャリア教育の視点から「
理理論論武装」をしておくと役⽴立立つ
この解説は不不親
切切だよ。なんで
これ使うの?
⼤大学や⼤大⼈人になって学ぶ専⾨門書はこん
なものだよ。だから、この程度度の説明を
もとに話し合ったり、調べたりして理理解
するトレーニングが役⽴立立つよ。
もっと時間があ
ればいいのに‥
仕事はいつも時間制限。「
プロとは与え
られた条件の仲で⽬目的を達成する⼈人」。
「完成することより、時間内でどうつくる
か」が⼤大切切なんだよ。
この問題の解説の説明が良く
ない、もっと詳しく書け。実
は前の学校にいた時に、それ
に対して丁寧な全部手書きで
問題集 1 冊分書いたことがあ
⼈人と⼀一緒はいや。 1⼈人で研究している科学者はいない。世
1⼈人でやりたい
界中の誰とでも「ある程度度」
の話し合い
な‥
ができる⼒力力が不不可⽋欠なんだよ。
55
るんです、200 題ぐらい。と
ころが、駄目なんですね。それを書いても、結局生徒はちゃんと読まないんです。労力を
かけた割には効果は大したことなかったですね。
で、生徒たちにはこういう説明をしてるんです。
「みんなが大学に行って専門課程で勉強
する時の教科書の説明は、もっとひどいもんだ。なかなか 1 人だと分からない。だからこ
の程度のことを一緒にみんなで勉強しながら、教え合って分かってくという訓練をすると
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 役に立つよ」と言っています。あとは、こんなこと(ヒント 6)をやってますね。
それから、こういう子がいます。人と一緒は嫌だ、1 人でやりたいという子は必ずいま
す。さっき松田さんの話もあったんですけども、私はグループをつくってないんですね。
それは、物理を選択してくる生徒たちの中にはどうしても毎年おたくっぽい子がいて、話
せない子がいるんですよ。それを無理やりグループにするとかなりストレスを感じると思
うんです。なので、席は自由にしています。
そうすると 4、5 人、多いときは 7、8 人でわあっとなってるグループと、1 人でやって
る子とがいます。それは私はオーケーだと言ってます。
「人間に性格の違いがあるし、能力
の違いもあって、それによって学習スタイルも違うんだ。みんなでわいわいやったほうが
分かる人と、じっくり本を読んだほうが分かる人と、歩き回りながらのほうが分かる人と
がいるから、それは尊重しましょう。だけど、1 人で研究できる科学者というのはいない
から、必要なときには誰かに質問にいくとか、あるいは誰かが質問に来たら分かりやすく
答えてあげるとかいうぐらいのことはやりましょう」という話をしています。
もっと極端なときは、ほんとにしゃべれない子もいるんで、その子とは個人的に話をす
るんです。
「何ができるの?」って話を。最悪でも、
「私になら質問できるの?」というと、
「先生なら大丈夫だ」と言ってくれるんで、「じゃ 1 時間に 1 回は私に質問してね」とい
う約束をして、そこから始めようということにします。実際には私が行って、随時行って
「どう?」とか聞くわけですよ。で、質問してきます。
少しやりとりができるようになってきたら、何回目かに質問したときに、
「その話はさっ
き A 君に教えたんだけど、
彼に来てもらって教えて
もらってもいいか」と言
うと、
「いい」って言った
ら教えてもらう。少しず
つ広げていって、私の目
標は、生徒達の大半は 2
年生、3 年生と取ります
から、2 年間かけて大学
に行ったら友達に質問が
ヒント6
代表的な不不安と解決案
⽣生徒たちを⾃自由にお
しゃべりさせたら、収拾拾
がつかなくなりそう‥
今でも進度度がきついの
に、話し合いの時間を
いれたら、教科書が終
わらない‥
受験に対応できるの?
進学校ではできるの?
底辺校ではできるの?
できるようにしようとし
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1 ゴール設定と時間を意識させるしくみをつ
くることが大事。
2 介入の構造化が大事。①全体をリード、
②全体に介入、③グループに介入、
④個別に介入。
3「
気づきを促す質問」
で介入する。
1 板書、ノート、プリント配布、「
起立、礼」な
どを省く。
2 説明は穴だらけで充分。先生が話してい
ると生徒は考えられない→理解できない。
3 楽しく勉強するようになれば、自主的に学
習するから成績は向上する。
1 説明の内容を生徒のレベルに応じて調節
する。
①時間配分、②内容の調節
2 練習問題のレベルを調節する。「難しい問
題」がグループワークを活性化する。
3 最初はていねいにリフレクションカードを
分析し、共有する。
56
高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ ています。
あとこれは、多くの先生たちが心配するのはここなんですよね。生徒たちを自由にさせ
ると収拾がつかなくなるだろうという不安ですね。今日はだいぶ皆さんには急がせちゃっ
てますけども、実際には 35 分かけて 4 題やらせてますから、かなり生徒はゆったりなん
ですね。ゆったりなので、もう余計な話に花が咲くグループはしばしば出てくる。
どうするかと言うと、さっきちょっと私が言ってますけども、
「あと 10 分で確認テスト
だけども、大丈夫ですか」という質問をするんですね。そうするとちょっと横道にそれて
るグループは、
「あ、ちょっとやばいよね」と、すっと戻る。質問で介入してくというのは、
こういうときにはものすごく便利です。
そんなところですね。あとは見て、どうですかね。大体こんなところで、ちょっと資料
をぱらぱら見ながら、全体を通していかがですか、いろいろご意見やご質問がありそうな
気がしてるので。はい。
〇参加者:今ので、ちょうど面白かった。教えるときが一番多いというか、学ぶというん
ですけど、最近の学ぶというところの考え方で言うと、総合構築という他者と
の関係ということを考えると、だから学ぶってことが別に頭の中に何か記憶を
つくるということじゃなくて、関係づくりだということで考えると、それはそ
うなんだろうなということを思いますね。
〇小林:ほんとにそうですね。
〇参加者:それとグループにならない子って、1 人で考えるという子も、実はそれはほん
とはやっぱり相互関係してるというか。
〇小林:そうです、そうです。
〇参加者:むしろ、見えないけれど、やっぱり他者との関係があるんだというふうに見い
だしてあげないとかわいそうだなと。
〇小林:そう思いますね。
〇参加者:必要なときに誰か他者を要求するというか、誰かに相談したいなと考えるとい
うのは自然なことで、無理やりグループをつくらせるほうがむしろちょっと無理
があるんじゃないかなというふうに思ってます。
〇小林:そうですね、私もそう思ってます。時々生徒にはその話をするんです。
「私たちは、
みんな性格が違うように能力のバランスも違うから、だからそれをお互いに認め合
おうよ。ただ、自由でとてもいいのは、そういういろんなタイプの人たちが集まっ
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ て一緒にできる。私たちは、いずれ大学や社会人と連携するときに、自分とは違う
タイプの人たちと協力しなきゃいけないことがあるんだから、自分とは違うタイプ
の人たちと協力する。こういうタイプの人たちもいるのだということを理解広める
ためには、授業は役に立つんだ」という話をしていて、これは何度も私はしつこく
言ってるんで、生徒たちは徐々に理解してくれてる気がします。その辺はすごく大
事な気がしてるんですけど。ありがとうございます。
他にいかがですか、質問。どうぞ。
〇参加者:企業のメーカーで FMEA を扱っていますけど、今、FMEA とか FTA とか、そ
ういう故障解析にあたっても、教育とかそういう場をつくろうと言っているんです
けども、時間の制約で、オフサイトトレーニングやワークショップの場を取るって
いうのがなかなか難しかったり。
〇小林:うん、そうですよね。
〇参加者:ある程度 OJT でやったりとか、何かあったときに相談されることがあります。
そのときにたぶん自己の問題が、クラス全体の中に組織があって、縦割りの役割
とか責任の割り当てがついてくる。要は集まってないですよね。何かついてくる。
そうなったら、それを外せば、立場や役割を外せばたぶんうまくいくんでしょう
けど、そういうのがある程度ついてる場合というのは、これを何かもうちょっと
そういうふうにしないと、これをちょっと実際やるのは難しいのかなという気が
結構ありますけど。
〇小林:両方のメリットを活かしてやっていけばいいんじゃないですかね。
〇参加者:両方の。
〇小林:両方の。つまり皆さんのそれぞれの立場を意識して話し合ってください。あるい
は、それぞれの立場で、この問題は何だと思いますかとか解決策、「それぞれの立
場からどう思いますか」という質問を投げるという場面と、「立場はちょっと取り
除いて考えてみましょう。自分の肩書きは今一瞬無しにして、どうですか」という
質問をしてみたり、それをやると皆さんの頭は結構柔軟になりませんかね。
〇参加者:ああ、そうですね。
〇小林:私も学校の職員研修なんかに行って懸案事項をとりあげるときに、実際の係分担
の委員会とかの中での話に入るときに、それは起きます。非常に面白くて、皆さん
がそれぞれの代表で出てきていて話をしてるときに、行き詰まると、
「それをちょっ
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ と取っ払ってみましょうか」と言うとうまく進む。逆に、「それぞれの立場で、ど
んな問題かどんどん言いましょう」と言うとそれがうまくいくこともあります。そ
れはそのときで使い分けるし、案外どっちがいいかってメンバーに聞くといいんで
すよ。「立場を意識して話したほうがいいと思いますか。立場をちょっと抜きにし
て話したほうがいいと思いますか」って皆さんに聞いて、選んでもらったほうがい
いですよ。
〇参加者:そうですか、はい。次からは。ありがとうございました。
〇小林:ありがとうございました。ほかにいかがですか。
〇参加者:大学のほうは 1 点だけは指導要綱によって、ある程度知識を与えますね。今ま
ではずっと一方通行だから、寝る学生も出ちゃうところもあって、こういう手法をあ
る程度入れて、半分ぐらいは授業を計画して、半分はちょっとみんなで考えてみましょ
うとするということを今何となく考えてるんですね。
〇小林:ああ、いいですね。
〇参加者:そういう中で、生徒たちがある程度自由な主題を選べる可能性というのはある
んですか。やっぱり高校だと決まった課題は常に与えないといけないんですか。
〇小林:そうなんです。
〇参加者:時間的な余裕で?
〇小林:時間的な余裕もあるし、教科書をちゃんと終わらせないと、やっぱり生徒や保護
者の不安が大きいんですよね、今。不安はしばしば不満や怒りに転化するので仕方
ないですね。
でも、私の授業は毎回この形でやってるんですよ。一年中この形でやってて、こ
としで 6 年目ですがどんどん早くなってく。3 年生の物理Ⅱは、今 11 月、今月あと
2 週間ぐらいで終わっちゃう。ものすごく早いです。
〇参加者:授業内容について、生徒はある程度予備知識はあるんでしょうか。
〇小林:ありがとうございます、いい質問です。この今日使ったプリントがありますよね。
実はこのプリントを毎回、その次の授業のプリントを渡してるんです。宿題とは
言ってないんですけど、一応渡す。そうすると、ちょっと暇だった生徒とか気が向
いた生徒がやってくるわけです。全部練習問題も解いてくるわけです。
そうすると、練習問題になったときに教えるわけですよ、彼は。
「何でおまえそん
な分かるんだい?」
「俺予習してきたもん」とか涼しい顔をして言う。そうすると、
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ あ、やってくると分かるんだって、これが少し伝わってくるんで、私は強制してな
いんですけども、時々時間のある生徒がやってくる。その程度です。
〇参加者:それは効率がいいですね。
〇小林:いいですよ。
〇参加者:ありがとうございます。
〇小林:なかなか高校生はあれなんです、英語と数学の宿題が多過ぎて、物理までやれな
いので、こっちで宿題を出すと大変だと思ってて、そういうやり方をしてます。前
もってやるといいですよ。そうすると、ちょっと余裕のある子や興味のある子は見
てくる。見てきただけでもずいぶん違いますよ。
〇参加者:いいですか。
〇小林:はい。
〇参加者:先生に質問して申し訳ないけど、アクションラーニングってそもそも何がきっ
かけでこういうのが始まったんですか。
〇小林:ああ、一応、「日本アクションラーニング協会が」言ってることに沿って言うと、
イギリスのレグ・レバンスという物理学者が始めたらしいです。炭鉱問題かなん
かの調査研究をやったり、それから有名なところではタイタニックの沈没の原因
のためのインタビュー調査をやったりしたんだそうです。
その中で、質問、疑問を表明できるかどうかということが、事故の問題点を把
握するかどうかということが大きく左右しているということで、質問をメーンに
した話し合いをつくろうということになったらしいんですね。
私が知ってる範囲だと、イギリスではレグ・レバンスがつくった非常に素朴
なアクションラーニングというのがいまだに続いてるらしくて、たまたまイギリ
スの大学院に留学していた人から聞いたら、向こうでは大学院のゼミナールはア
クションラーニングだそうです。
ただ、マーコード教授がやったみたいなこんなシステムティックな方法ではな
くて、ものすごくのんびり長時間かけてやるんだそうです。例えばグループでゼミ
をやりますよね。誰か 1 人が何か自分の意見を出す。それをみんなが聞いて質問し
ては答えていく、質問しては答えていくというのをずっとやって、ひととおり終わ
ると、じゃ次の人というようなそういうかたちで、素朴なアクションラーニングは
そういうものだったみたいですね。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ アメリカに渡って、いろんな企業が企業内で独自のかたちのアクションラーニン
グのセッションをつくっていった。そのうちの一つがマーコード式ということも言
える。
〇参加者:カウンセリングの上級者コースで傾聴なんかをやりますね。
〇小林:はい。
〇参加者:あれとの関係はあまりないんですか。
〇小林:重要な基礎スキルになっていると思います。つまり質問をするとか、傾聴してい く、どういう観点で質問するかとか、傾聴するというのはどういうことなのかとか、
あるいは質問して相手が黙ってる時間はとても貴重なので、そんなの黙って聞いて
ろとか待ってろとか、そういうところはカウンセリングとかコーチングとかの基礎
スキルがとても役に立ちますね。
〇参加者:特に理論そのものは関係し合ってるわけじゃないんですか。
〇小林:対人関係の基礎スキルという意味では同じだと思います。違うのは、カウンセリ
ングやコーチングは基本は 1 対 1 なんですよね。カウンセラーとクライアント、
コーチとクライアント。
でも、アクションラーニングは 1 対チームなので、アクションラーニングコー
チの役割というのは特定の人をサポートしている役割ではなくて、チームの力を
支えていく役割なのだというところに、きちっとマーコード方式だと分けている。
従って、なるべくコンテンツ、内容には入らないようにしよう。その問題解決
はこうだよとかアドバイスをするのではなくて、それは皆さんで考えてください
という対応をしましょうというところが大きな違いでしょうかね。
それは、たぶん学校の授業とか企業における人材育成にとっては非常に役に立
つと思うんです。リーダーが次々に問題を解決していくのではなくて、チームに、
メンバーに任せていく。そうするとだんだん主体性が育っていく気がします。
〇参加者:ほとんど先生が質問したんですけど、やっぱり使い分けなんじゃないかという
感じがしたんですけど。先生はだからこういう成長をさせるとか、そういうイノ
ベーティブな場をつくる。これはそれなりに使ったら役立ちそうですね。そうい
う使い方ってどう考えますか?
〇小林:相手の個人、あるいはグループの成長段階によって違ってくると思います。知識
も意欲も低い人たちの場合と、知識は高いけど意欲が低いとか、そういう段階に
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ よっても違ってくると思います。
そこら辺は、私はメンタリングの理論で非常に役に立ちました。メンタリン
グプロセスの分析は意欲と能力とのバランスを分けていますよね。あれはとても
役に立ちました。
ほかにいかがでしょう。どうぞ。
〇参加者:私もこの大学で今年から教え始めて、こういうアクションラーニングの少人数、
30 人ぐらいのクラスと、あと大講義で 200 人ぐらいで一斉にやる授業と両方あ
るんですが、アクションラーニングを少しずつ大講義に活かしてみたいと思って
て、最近ちょっと隣同士ペアになって今やった問題を話し合ってくださいという
のを少しずつ取り入れているんですが、考えを深める場面でホワイトボードとか
発表とか。これをどこまで大講義で実験的に少しずつ。
アメリカの先生方も、ある一定のところまですると、一方的にやっぱり 1 人の
講師がしゃべってる。今おっしゃったように全然入ってないので、だからグルー
プとか隣同士で、分かってる人が分からない人に教え合って、知識の確認をやる
という、大講義でやってらっしゃる。そういうのを取り入れると、いいと思いま
す。最初から取り入れたいんですけど、ほかに大講義でもできるような。
〇小林:そういう道具?
〇参加者:ちょっと先生に、違う……。
〇小林:ハーバード大学の物理の先生がやっていて今注目されてるのが「クリッカー」で
すよね。ご存じですか。あれですよ、クイズ番組なんかでみんなが 1 番とか 2 番と
か押したら、ばっと 1 番押した人は何人とか出てくるじゃないですか。それを大学
で使えるようにした道具でクリッカーというのがあるんですよ。
ハーバードの物理で、簡単な物理の問題を出すんですね。答えが A、B、C、D、
E って5つか6つぐらいある。まず読んで、「どうなると思う?」、みんながぱっ
と押す。そうすると A が何パーセント、B が何パーセント。じゃ、それぞれ近所
の人で、なぜ私は A だと思ったか、私は B だと思ったか話し合ってもらう。しば
らく話し合わせて、
「はい、もう 1 回」と言うと変更する人が出てくるんですね。
「何で?」とかそういうことやってるというのは、今ちょっと話題になってます。
あとは、そういう発表するときに高校の先生が使ってるのは、100 円ショップ
に行くと A3 サイズぐらいのちっちゃいホワイトボードがある。結構安い。500
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 円もしないかな。もしかしたら 100 円かな。それを使って小グループで話し合っ
て、ここに書いて、こうだよねってお話をしたり、各グループに出せと言って説
明するとか。あれは結構、ちっちゃいホワイトボードを使います。
〇参加者:逆に大ホールで。
〇小林:そうそう。200 人だと大変か。
あとどこかの大学の先生がやってたのは、ネット上に掲示板か何かつくってお
いて、そこに書き込ませて、それをプロジェクターで映してく。そうすると、例
えばツイッターみたいなかたちにして、
「いろんな意見を出せ」と言って書き込ま
せて、それをずっと流していくとか。あるいはその中で、今この授業に対しての
理解度、
「分かったという人は何人?」とかいうのを流す。そんなことをやってる
先生もいます。そういう道具をある程度使うと結構役立ちますね。
でも、200 人で話し合いをさせるのって面白いですよね。私は一番多かったの
は 1100 人ぐらいだったかな。大ホールで講演をやらせてもらったときに、一方
通行でしゃべるのが嫌だと言って、県の教育委員会の主催だったんですけど、県
教委に頼んで、こういうことをやりたいと。協力してくれました。
途中で 3 回か 4 回ぐらい、「このことについて、ちょっとグループで話し合っ
てください」。できるかなと思ったら、やっぱり皆さんやりますね。隣で話したり
前後で話したりするし、話しにくいところは外に出て、階段があるじゃないです
か、階段のちょっとスペースなんかに皆さん集まって腰掛けて話すんです。それ
だけで全然雰囲気が違うんです。1100 人ぐらいいて、誰も寝ないという。あれは
面白かったです。ぜひチャレンジしてみてください。
〇参加者:それをやると、経営学部なんで普段から話し合うのが好きだから、大変仲良く
なってくるともう、1 回そういうのを取り入れると、その後静かにさせるのにす
ごく難しいものなんです(笑)。だから最後にだけやって、あとその後終わりにや
るんですね。だから最後 10 分、15 分課題を出して。
〇小林:静かに、どうやってやめさせてるんですか、「はい、話やめて」というのは。
〇参加者:だから途中で入れないんです。なるべく最後に。
〇小林:なるほどね。いい方法があるんですよ。最初に約束しておくんです。
「話が終わり
になったら、私が手を挙げます。私が手を挙げたのを見た人は、手を挙げて話をや
めてください」という約束をするんです。そうすると意外とばっと静かになる。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 私がその 1100 人相手にしたときに、やっぱり止め方が問題なんですね、何回も
やると。それでさすがに私 1 人が手を挙げても見えないだろうなと思ったんで、県
教委のお偉いさんをつかまえて 2 人フロアに立ってもらって、その 2 人はいつも私
を見ててちょうだいね、と頼んでおきます。私が手を挙げたら、まず 2 人が手を挙
げる。みんなに、「私たちの誰かが手を挙げたのを見たら、手を挙げて話をやめて
ちょうだい」という約束をしてやって、すごかったです、1100 人を黙らせるのに
30 秒ぐらいですから。
〇参加者:それは皆さん大人の?
〇小林:大人です。
〇参加者:しかも興味があって来てる。
〇小林:学生さんだから 2 分ぐらいかかると思いますけど。
いや、でも面白いので、手を挙げて黙るという動作が入ると、若い人たちは結構乗
るんですよ。真っ直ぐ手を挙げるだけでつまらなかったら、例えば手を回すとか。
若い人たちほど動作があるほうが喜ぶので。でも、一生懸命あれですよ、こうやっ
てアピールするとかやってくれますから。止め方は大事ですよね。ありがとうござ
います。どうぞ。
〇参加者:今ここの大学で物理の 1 年生に力学等を教えているんですけど。
〇小林:ご苦労さまです。
〇参加者:頭の中で、そういう力学でアクションラーニングを取り入れたらどうなるかシ
ミュレーションしてたんですけど、あまり困難がそこに浮かばないんですけども、
教室の物理的な配置がちょっと、机が固定してあったりそういうのがあるんです
けど。
〇小林:ああ、はい。
〇参加者:それ以外に何か問題として何かありそうなものってありますか?
〇小林:障害。難しいことですね。どうでしょう、自由に動ける場をつくってあげたら、
あとは問題の設定ですね。問題の設定によって話し合いが弾むかどうかは変わりま
すね。
今日、実はちょっと急いでたんで、普段の配置とちょっと違っていたんで説明し
なきゃいけないんですけども、普通は私は 4 題の問題を、1 番目は 9 割の生徒が 1
人で解ける問題と考えて作ってます。それで 2 番、3 番はだんだん難しくしてって、
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 最後の問題は 9 割の生徒が 1 人で解けない問題を出す。そうすると少なくとも 4
番目にいったときは、話し合いが広がるんです。やっぱり 1 人じゃ解けない問題を
出すというのが大事なんですね。
だから、そこら辺は試行錯誤なんですよ。このグループにどれがいいかといっ
たら、やってみないと分からないときがあって、私も最初はかなり失敗したんで
すけども、やさし過ぎたり難し過ぎたり。だけど、ある程度分かってくると、こ
のグループはこのぐらいだなというのが見えてくると、たぶんずっとうまくいく
から、その問題の選び方がこつかもしれませんね。
〇参加者:4 番というのは経験値なんですか。
〇小林:経験値です。
〇参加者:ちょうどいい。
〇小林:いろいろやったんですよ。これは苦労した。
どうしても、やっぱり自分のほうもたくさん教えたいんですよね。だから最初
はできるだけいっぱい問題を出そうと思ったんですよ。そしたら生徒は真面目だ
から、私が 6 題出すと一生懸命やるんです、6 題解かなきゃいけない。話し合い
なんかしないんですよ。私は「話し合いすれば?」、生徒は「先生、こんなに問
題あったら話し合いする時間なんか無いよ」「あ、そうか」。それで 6、7 題出し
てたときもあるし、1、2 題にしたこともあるし、いろいろやってったんですが、
大体 4 題ですかね。
〇参加者:1 時間 4 題でずっとやり続けて、その後全体が終わるんですか。
〇小林:はい、終わります。終わりますというか、あ、教科書が終わるか?
〇参加者:教科書が。
〇小林:年間計画を作るときに、1年間で終わるように、1 時間ごとの分量を作ってます。
それが最初に組んだときよりも今早く進むようになったんです。それはやってみて
分かったことがあるんです。というのは、私が物理の内容を説明してるときに、つ
まらなそうな顔をする生徒が結構いるんですよね。何でつまらないかと言うと、
「聞
いてても分からない」、それから「読めば分かる」という二つの意見が出たんです
よ。
「読めば分かることを先生が何度もしゃべったってつまらないよ」というのと、
聞いて理解するのが得意じゃない子たちがいるんですね。
それが分かってきたので、ああ、私がしゃべってる時間って無駄なんだと思いま
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ した。それで説明はするんだけど、私の説明としては、「この法則、公式が出てく
る理由はここに書いてあるから、後で練習問題を解くときに見てね」というぐらい
の説明で終わりにしたんです。
そしたら、そのほうが生徒たちは喜ぶんですよ。そうすると生徒たちは自分の性
格に合わせて一生懸命本文の説明を読む子もいれば、プリントの練習問題をぱっと
見て解く生徒もいるし、友達とわいわいやりながら解き始める子もいるし、そのほ
うが一人一人の生徒の実情に合うんですね。これは大きな発見でしたね。
だから極端な理解で言えば、私たちが一生懸命説明してるときには、ほとんど生
徒の頭は働いていないんじゃないかと。生徒たちは、自分で考え始めたときに、話
し合い始めたときに頭が働き始めてるというのが最近感じてることですね。
〇参加者:先生が言っているのは、問題にするやつというものは、聞いても分からないよ
うなテーマを中心にして、読んで分かるものはもう「読みなさい」でもう終わっちゃ
う?
〇小林:そうです。
〇参加者:ああ、そうですか。
〇小林:だから最近、次の教材を作るときに、去年のデータを見ながらどうしようかなと
思ってるのは、いつも考えてるのは、これは俺が説明しなければいけないことなん
だろうかという問いですよね。たぶんこれは私が説明しなくても読めば分かるだろ
うなと思うのは、去年は説明したけどことしは説明しないとかいうふうにしていっ
たら、どんどん早くなって。
それでも、こぼすところはあるんですよ。それはリフレクションカードに出てく
るんで、ここが分からなかったというのが出てくるから、それはまた改めてどこか
で取り直して説明をすることはやってます。だからリフレクションカードを取るの
もすごく大事だと思ってます。そうすると何をやってもいいけども、フィードバッ
クがくるんで、これは失敗したなというのは後でそこで取り戻せる。
生徒が書いてくることについて、こっちがオープンマインドのスタンスをとって
ることが大事だと思うんですよ。何を書いてきても、「ふざけるな」とか言わない
のです。生徒たちは自由に、「きょうの説明は長過ぎる」とか「きょうの説明は分
からない」とか「ここのところはもうちょっと別の問題をやりたい」とかいう意見
がいっぱい出てくるので、それをちゃんとこっちが「いい意見ありがとうね」と書
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ いてフィードバックするというのが大事だと思うんです。
もともと実はこの授業は、生徒たち側で自分たちがつくった方法なんですよ。ス
タートが。
4 月に赴任して当初はよく分からなかった。そのころプロジェクターを使ってはい
たので、プロジェクターを使って説明する授業を 65 分やりました。今まで自分は 50
分に慣れてましたから、65 分は長くて嫌だなと思ってて、中間テストが終わったとこ
ろで、答案返却のときに「やり方変えましょう」という提案をしたんです。
その時に私が提案したのが、上越教育大の西川純先生がやってる「学び合い」に似
たことをやろうと思って、
「一切私は説明しません。みんなでやってちょうだい。そう
いう授業をやりたいんだ」という提案をしたんです。そしたら生徒がみんな、
「そんな
の冗談じゃない。できるわけないや」って猛反対したんですよね。
それで困ったなと思って、私が提案したのは、
「じゃ、3 回トライアル授業をやりま
しょう。やって、みんなの意見を聞いて次に修正してやって、それを 3 回やって、3
回終わったところまでに、おおむねみんながこれならいいよというかたちができたら
続けよう。それもみんなが賛成しないんだったら、元のかたちに戻しましょう」とい
うんで始めた。
3 回というのはちょうど 1 週間なんだけど、大変だったんです。でも、それで生徒
たちとやりとりしながら、じゃ説明はこのぐらいの時間とか、問題演習はこのぐらい
の時間とか作ったので、それはとても良かったです。
その後も、だから生徒たちは自分たちの意見を出すと、先生は取り込んで修正して
くれる。これがずっと続いてるので、そういうふうに尊重することが大きな力になっ
たかなという気がします。今でもよく、いっぱい意見を言います。
ほかにいかがでしょうか。
〇参加者:すみません。定期テストは、ここでやった問題の中に。
〇小林:ありがとうございます。確認テストの問題を大体 3 割ぐらい出してます。あとは
4 割から 5 割ぐらいを、生徒たちに渡してある問題集があるんですけど、その問題
集の中から出してます。ただ、これは私はほとんど授業で説明してないので、生徒
たちは自分で勉強することになります。2 割ぐらいを、その辺の問題集に載ってな
いやつを出すというふうにしてます。だから、もう赤点さえ取らなきゃいいという
人は確認テストだけを復習しておいてねというやり方をしてます。はい。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 〇参加者:実際にこれをやっていってグループをやっているときにリーダーみたいに先生
のお手伝いできるような生徒が育ってくるとか、それは意識的にそういう風な働き
かけみたいにやられていることはあるんですか。
〇小林:意識的にリーダーの育成というのはしていないですね。それで、そのことについ
て言うと、普通の小中学校でやってるいわゆるグループ学習と、私の授業で起きて
ることがずいぶん違うらしいんです。お母さんたちが見学に来てくださる時に気付
いたんですね。小学校、中学校の子どもを持つお母さんたちが 10 人ぐらいがこの
授業を見にきてくれてたことがありました。私は、実は小中学校ってグループ活動
やってるから、かえってばかにされるんじゃないかと思って嫌だったんですけど、
来ちゃったからしょうがないやと思って。
終わって話を聞いたら、この時のお母さんたちが言ったことがすごくうれしかっ
た。それは、「これは私たちが小学校、中学校で見たグループ活動の学習とは違い
ます」と。「何が違うの?」と聞いたら、小中学校でやってるグループ活動という
のは、各グループにリーダーが必ずいる。サブリーダーもいる。できない子たちも
いる。お荷物の子もいる。
各グループでどんなことやってるかと言うと、大体リーダーとサブリーダーでい
ろんなことをやっちゃう。その中間クラスの子たちに、これ持ってこいとか下働き
的なことをやらせて、1 人ぐらい残ってるお荷物の子はただ呆然と見ているという
ことをやっていて、上意下達があちこちに起きてるんですね。
ところが、お母さんたちは私の授業を見て「感動した」と言ってくれたんです。
「何で?」って聞いたら、A 君が B 君にさっき教えてたかと思ったら、次の瞬間今
度は B 君が A 君に教えたりする。あるいは 4、5 人集まって対等に議論する。「そ
れはすごいですよ」と言ってくれて、たぶんそれが大きな違いだと思います。
何でそれができるかと言うと、たぶんさっき午前中のマーコード教授の話にも
あったと思うんですけども、私が質問したり答えたりすることのモデルとして、な
るべく質問する、あるいは質問したことについてまた質問したり答えたりしてます
よね。だんだん生徒たちはそういうのを見てくるんですよ。そうすると非常に丁寧
な話し合いができるようになってくる。
あともう 1 個。私がかなりプッシュするのは、あるところで A 君が B 君に教えて
るときに、B 君に私は後押しするんですよ、
「分からなかったら分からないと言えよ」
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ と。その説明じゃ僕は分からないって言え。何でそうなるのって質問しろ。そのこ
とが A 君に対して貢献する。あるいはチームに対する貢献になるから、ぜひ「分か
らない、どうして?」質問しようねと。そうすると、グループの中でそれがいっぱ
い起きてくるんですよね。それが大変いいことだと私は思います。そんなことで質
問に答えたり、面白いですよ。
たぶん職場でも同じじゃないですかね。何かそういう雰囲気ができると、皆さん
が非常に気楽に分からないことを質問できる。あるいは教えて褒めてもらえるとか
いうんで変わってくるというのか。
ほかにいかがでしょう。
〇参加者:いいですか。途中から来たので事実を認識してないかもしれないんですけども。
〇小林:大丈夫です。
〇参加者:マーコードモデルのコンセプトは使いながらも、テンプレートは使ってないと
いう理解でよろしいですか。
〇小林:そういうことですよね。そもそも、セッションできないですもん、6~8 人ですか
ら。
〇参加者:もう一つ質問があって、であるとすると、これってマーコードモデルだけじゃ
ないと思うんですけど、リーダーシップ・サイエンスとそれから課題の解決という
両方に役立つ、そんな気が。
〇小林:そうですよね。
〇参加者:今回の目的は、あるラーニングポイントをちゃんと理解させるため、これが目
的ですよね。一方で、三つのことを生徒が使ってるうちに、だんだん自分の学習に
対する態度であったり、他者に対する態度についてもだんだん明らかになってきて、
それだけまとめて何か学期に 1 回ぐらい面談とかしたり、そんな活用はされたりし
てるんですか。
〇小林:きちんとした予定を立ててやってることはないんですが、偶発的に起きることは
しばしばあります。放課後よく集まってますから、そこに私が暇な時にのぞきにい
くと、そこで生徒たちが私に話しかけてくれて、この授業はこういうことがいいよ
ねとかいうような話に。
そうなると、私も楽しいので「なぜそう思うの?」とか「おまえはどうなの?」
とか聞いてると、自分がどんなふうに変わってきたかという話をしてくれるんで、
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ それはものすごく深いですね。
最近立て続けにあって、なるほどなと思ったのは、
「この授業に出なかったら、た
ぶん話しかけなかったタイプの友達と友達になれた」という意見が結構出てくるん
ですよ。あるいは、「自分の問題の解き方と違う解き方をしてる人の説明を聞ける
ようになった。昔だったら、自分と違うことをやってる人の話は聞けませんでした」
とか、そういうのが出てきてて、そういうのは偶発的に起きる範囲ではやってます。
本当は定期的に何かやるともっといいのかもしれませんけどね。大学なんかの少
人数だったらできるんじゃないですか? 時々そういうふうに。
〇参加者:そうですね。
〇小林:私は、最後に 3 年生が卒業の時に、最後の試験があるんですよ。これは嫌なこと
に、1 月の末に卒業試験があるんですね。生徒たちはセンター試験の結果が出て2
次試験に向けて大忙しの時に何でテストをやるんだろうと思ってるんです。私は
ちょっと反抗して、上からはやれと言われたらやるんですが、中身はレポートなん
ですね。
そのレポートは、「来年この物理の授業を取る 2 年生の後輩に、私の物理の授業 について紹介しなさい。1 番は、小林の物理がどういう形式でやってるかというの
を書け。2 番目は、小林の物理をうまく利用するにはどうしたらいいかというのを
書け」。それをびっしり書かせるんです。3 番目に、私に向けて、この授業を受けて
良かったことは何かを書いてね。
それは、卒業レポートみたいになって私のところにいっぱい返ってくるんですが、
それはものすごくうれしいですね。2 年間この授業を受けて、こんなことができる
ようになった。反対に、「でも、この授業は嫌い」と書いてる子もいるんですよ。
50 人ぐらいの中で毎年 1 人か 2 人ぐらい。「でも、私はグループで話すのは苦手で
す」とか。「だけど、役に立ったと思う」と書いてきたりして、それは面白いです
ね。
〇参加者:さっきの質問の話と似てるんですけど、若い人たちが質問してるときに、この
質問って正しい質問なのかとか、もしかしたらあほな質問じゃなかろうかってちゅ
うちょするケースがすごい多いんですよ。グループ内でやると、恐らくそういった
あほな質問でも気楽にできるから質問ができるというのがあるんですけど、結局そ
こで質問しても、例えば先生に質問しづらいというのは起こると思うんですけど、
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ そこら辺の壁を取り除くようなうまい方法とか、そういったことは?
〇小林:もう全部褒める。
〇参加者:全部。
〇小林:褒め方って、「本気で褒める」と「具体的に褒める」というのが原則なんですね。
本気で褒めるのは「いい質問だね」とか「鋭いね」とかいう言い方で何とかになるん
ですけども、具体的にといったときに、なるべく自分の知識を駆使して、それって物
理学のこういう発見に匹敵するぐらいの鋭い観点だよねとかいうことをかなり大げさ
に入れて褒めます。とにかくどんな質問でも褒める。
「いい質問だね。誰も思いつかな
いような質問だね」とか、そうするとだいぶ質問してくるんですね。
〇参加者:教師から逆に生徒に何か質問をよくするということはしますか。
〇小林:します。こっちから質問するのですごく役に立つのは、誰かが質問したときに、
その質問を、
「という質問は面白そうだよね。この質問に対して君はどう思う?」ある
いは「この質問が出てきたのはなぜだと思う?」そういう振り方はします。で、答え
てくれればそれでいいし、でもそれもなかなか一対一は答えにくいでしょ、みんなも。
なので、最近私がうまくいくなと思ってるのは、
「この質問が出てきた理由はなぜだ
と思いますか。ちょっとグループで 3 分間話してくれますか」。そうすると今度は、
わあっとしゃべり出すんですよ。そのしゃべってるのを時間がきたら止めて、
「このグ
ループはどんなふうに思ったの? ちょっとみんなに言って」と言ってシェアをして、
そうすると質問がまた続けて出ます。そういう工夫はしてますね。
大人の場合でもそうですけど、やっぱりたったこれだけでも、さあ、どうぞといっ
てぱっと質問するのってちょっと抵抗があるじゃないですか。ちょっとこの辺でわ
あっとしゃべった後だと、しやすい。それは、
「ちょっとみんなで話してね」といった
ほうが質問は出る。
あとは物理学はいっぱいあるじゃないですか、そういう大発見につながった疑問と
か質問って。そういうのを教えてるんです。
生徒がすごく喜んだのはあれかな、「夜空はなぜ暗いか」。これは宇宙論の大発展に
つながった質問なんですよ。宇宙が無限に広がっていたら、無限に同じ密度で星があっ
たら、夜空は輝くはずなんですよね、つまりずっとどこまでもどこまでも星があるわ
けですから。それが暗いのは、宇宙には限界がある。ある所から向こうにはもう宇宙
が無い、星が無い、だから暗いのだというふうにつながっていって、昔のスタティッ
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ クな静的な宇宙論が転換する非常に大きな問いになってるんです。
なんて話を生徒にもうちょっと分かりやすくつなげて、そうすると、へえって思っ
てくれるので、そういう話は時々織り込んで。そういうのは物理の歴史の中にはいっ
ぱいありますよね。物理としてやる。
〇参加者:いいですか。
〇小林:はい。
〇参加者:昔は、割と人に聞くって依存心なんかであまり良くない、勉強は自分でするべ
きだという・・
〇小林:ええ、ええ。
〇参加者:あと、自分で努力しないと、ビジネスの世界では信頼されない感じが結構ある
んですけど、そういうものに対しての質問というのはほとんど逆のような気がしま
す。自分で調べて何かという姿勢というのとどう区別するというか、関係する感じ
なんですか。
〇小林:生徒に納得させるためには?
〇参加者:むしろ生徒自身が両方身につけるべきだと思うんですよね。分からないことを
聞いちゃう。で、正解はこうだ。何でも聞いてたら、「おまえそんなことまで聞く
のかよ」って実際ビジネスの世界では起きるわけですね。
今までの流れというのは、基本的には教えないと。ビジネスの世界ではね。基本
的に自分で調べろということが割と主流になってたわけですけど、確かにあえてこ
れをやっていったほうが活気があってモチベーションがいい感じがして、確かに今
の世界はそういうコミュニケーションが一番求めにくい感じになってることは確
かで、一方で自分で調べるというのをどう身に付けさせるかみたいな、両方の兼ね
合いはどんなふうにすれば。
〇小林:一つは、学習理論の中に、昔はなんていうかな、知識をいっぱい持ってる人が少
ない人に教え込むという、客観主義といわれてるところがあって、それが構成主義
とか社会構成主義とかって進んできてるんですね。社会構成主義というのは、要す
るに私たちが何か知識を得るときに、それを理解するのは自分が既に持っている知
識とつなげるのだと、構成主義ってつなげていって関連で理解する。これが私の頭
の中だけで起きるのではなくて、一つのつながりの中でそれが起きてくるんだとい
う、一つのつながりの中で起きるよというのを社会構成主義といってるんですね。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 〇参加者:構成するにはどうするんですか。
〇小林:そういう学習理論の発達は、つまり 1 人でずっと考えたり調べたりするよりも、
社会構成主義的な学習の仕方のほうが早く、しかも深く学べるんですよということ
は学習理論的には分かってきているので、そういう話を一つは伝えてあげることが
役に立つと思ってるんですね。
なので、最初にちょっと紹介しました NASA ゲームなんかをやって、生徒たちに
話し合ったほうがわれわれは点数が上がるでしょというのも、それを体感させよう
と思ってるんですけども、実はあの NASA ゲームで点数が下がる子がいるんですよ。
40 人の中で 2 人か 3 人ぐらい下がるんです。なぜだと思いますか。いかがですか。
下がる子はなぜだと思いますか。
〇参加者:下がる。後でその人が、下がる人が出る?
〇小林:いえいえ、要するに個人でやったときの得点とチームでやったときの得点が、個
人でやったときのほうが高い子がいる。
〇参加者:それはグループシンクと同じような感じじゃないですか。みんなで考えるより
1 人のほうが深く考える。
〇小林:これは大体2つ原因があって、1つはその子がグループの中で自分の意見を言な
かった。自分では正しいと思ってるんだけど、でもグループの中で言うのが恥ずか
しいか言いにくかったか、ほかの人の意見を聞いてたら自信が無くなっちゃったか。
もう1つの理由は、せっかくその子が言っていたのに周りが聞いてくれなかった。
こういう話をちょっと入れると、結局私たちの学習というのは 1 人で分かるという
のはなかなか難しくて、みんなで分かってあげるとか、みんなに分かってもらおう
とするとかいう活動が大事なんだということも説明をしてるんですけども、そうい
う学習の仕方の今まで私たちが持ってたイメージを変えてく必要は一つあるかな。
〇参加者:そしたらイメージというのは、1 人でいいというのか、調べてもらうとか、あ
まり強制しなくていいんですか。
〇小林:学習、リフレクションという意味ではそう。だけど、知識を集めるということに
ついては、これは 1 人でやったほうが早い。だからそこは、例えばインターネット
の検索能力を上げるとかいうようなことは必要ですね。あるいは道具を使うリテラ
シーを上げてくとかいうようなことは必要なんで、そこはそこで生徒たちに教える
べきですね。いかにたくさんの本を読んだり、あるいはインターネットを使えるよ
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ うにしていくとか、あるいはどこに行けばどういう専門家がいるかを知っておくと
か、そういう所に出かけていくというようなことは、情報収集能力は上げなきゃい
けませんよという話はする。でも、その情報をどういうふうにさらに深く自分の知
恵に転化していくかということになったら、1 人では無理ですよということでしょ
うね。
実はキャリア教育に関係して私が盛んに生徒に言ってるのは、
「現場に行け」とい
うやつですね。キャリア教育の理論がいろいろありますけども、クランボルツは皆
さんご存じですかね。クランボルツという学者が、かなり過激なキャリア発達理論
を出してまして、
「キャリアなんて偶然決まる」と言うんですよ。偶然の出会いで、
私たちの人生は決まっていく。だけど、偶然の出会いを活かせるかどうかは、自分
の可能性や興味を小さく限定しないで、いろんな興味や可能性を広げて、アンディ
サイデッド、決定しないで温存しておいて、チャンスがあればその関連の人に会い
にいくとか、そういう場に行って何か見たり聞いたりするとかいう活動を盛んにや
りなさい、と言ってるんですね。
で、生徒たちにそれも絡めて私がよく言ってるのは、「情報収集には現場に行け」
と。
「自分の興味のある仕事とか興味のある音楽とか映画でも、何でもいいから行っ
てこい。そうすれば本で調べたりネットでは調べられないことがある」、これは盛
んに言ってます。
ものすごく面白いことが 2、3 年前にあって、私のクラスの女の子が「女性消防
士になりたい」と言ってきたんです。女性消防士ってご存じですか。その子がやり
たいのは、
「火を消しに行きたい」ってわけですよ。ご存じですか、そういう仕事。
私ね、分からなかったんです。
それで、質問されて分からないから、
「それはどうすればいいと思う?」と聞いた
ら、生徒がうーんと考えて、「やっぱり、先生、消防署行ったほうがいいかな」と
言うから、「それでいいんじゃない。俺はそのほうが絶対いいと思うよ。ただ、行
き方だけを教えるね。一応前もって電話しろ。電話して約束の時間をとって行って
こい」、それだけアドバイスして。
そしたら、しばらくしたら行ってきました。行ったら、何と女性消防士がいたん
ですよ。しかも後で分かったのは、法律が変わって女性消防士という枠ができたば
かり。それまでは無かったんですね。5、6 年前は無かったんです。でも、たまたま
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ 彼女が行ってみたら、女性消防士の資格を持ってる人がいて、会えて、いろいろ聞
いて、大学でどうすればいいんだ、どの学部でもいいよとか聞いて意欲的になった。
そういうことをつくるというのが大事なのかなと思いますね。
話がちょっと広がっちゃいますね。4時半までですよね。あと一つぐらい質問に
答えられそうですが、いかがですか。はい、どうぞ。
〇参加者:じゃ、最後に質問。こういう感じでやってると、先生というのは支援ほする必
要があるとわかったんですが、そうした場合はプロフェッョナリティーっていうの
はどういうところなのか。今までですと知識が大事という感じになってますけど、
これからのプロフェッショナリティーってのは何が問われるんですか。
〇小林:今盛んに言われてるのは、やっぱりファシリテーション能力ということになると
思います。だけど、コンテンツに関する知識はやっぱり絶対必要だと思いますね。
例えば私が物理を教えていて、物理のことをろくに知らなかったら、やっぱりそ
れは生徒の信頼を失いますよね。ある程度は、時々「いや、俺それ知らない。調べ
ておくね」と言っても、基本的にこいつはおおむね知ってるだろうというふうに感
じさせることは必要だろうと思ってるので、基礎的な知識や理論は必要だけども、
実際に生徒を育てたり人材育成の場面では、それプラス、ファシリテーションのほ
うが大事だろうなって気がします。
生徒は、よく問題を解いて分からなくなって質問に来ます。これは学校中で繰り
返されてる場面なんですけども、先生の所へ持っていって、「先生、この 5 番の問
題が分からないんです」と言ったら、先生が「ん? どこが分からないの?」「全
部分かりません」。そうすると先生は何をやるかと言うと、全部説明し始めるんで
すよね。おかげで、そういう説明を丁寧にしてくれる先生のところには行列ができ
ちゃうんです。
私はこれは良くないなと思って、いろいろ考えて最近やり始めたのは、それも質
問です。「どこが分からないの?」「全部分からない」。次に私は「分かってるのは
どこなの?」って、これは効くんですよ。「分かってるのはどこなの?」と言うと、
「ええと」って説明し始めてくれることもあるし、そこで止まっちゃうこともある
ので、「じゃ問題文の上からいこうか。問題文の最初の 1 文は分かるの?」「あ、先
生、それは分かるよ」
「じゃ次は分かるの?」って、こうやって一つずつ文章を追っ
かけてくんですね。
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ そうすると面白いのは、7 割から 8 割方、
「次の文章は?」と私が質問してるだけ
で、「先生分かりました」と言うんです。「先生、分かった、分かった」と言っても
う帰ろうとするから、私がとっつかまえて、「ちょっと待て。何が分かった?」「い
や、条件見落としてました」なんてことを言う。
それで帰ろうとすると、またさらにつかまえて、
「なるほど。今私とのやりとりの
中で私は質問しかしてないのに、君は分かったよな。これは何が起きたの?」と言
うと、彼は「あ、先生、僕は問題文をちゃんと読まない。飛ばして読んじゃう癖が
あるってことが分かりました」。「じゃ、どうするの?」と聞くと、「次から鉛筆で
ちゃんと追っかけて読みます」とか言うわけですよ。これはアクションラーニング
のセッションで最後の行動計画の時にコーチがやる質問と全く同じなんですね。そ
ういうことを覚えたらできますね。
そういうときに私が全部説明しちゃうと、結局分からない、生徒は。でも、そう やって私が質問してることによって、自分の学習の仕方の癖を知ったり、修正が可
能。そういう点でファシリテーションが、あるいはマーコードが言うように質問に
よるリーダーシップというのはとてもいい概念だなと思います。
すみません、ほんとはもうちょっと、せっかくポストイットを書いていただいた
んでそれをやろうかなと思ってたのが、質疑応答で終わってしまいました。リフレ
クションカードをあと 6 分ぐらいで書いていただいて、その間に私は回っていきま
すから名刺交換でもさせていただいて、この後ぜひやりとりをさせてください。も
し良かったら、そのポストイットに書いていただいたことを裏側でも貼っておいて
いただければ、とてもありがたいです。
じゃ、あと 5 分ぐらいで、リフレクションカードを書きながら、名刺交換をさせ
てください。
(リフレクションカード記入・名刺交換/02:06:17~02:13:04)
〇小林:皆さんありがとうございました。最後は上でクロージングらしいので、リフレク
ションカードは今終わっていればください。そうでなければ、向こうで終わってから
でもいいですけども、行ける方がいらっしゃれば。
ということで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
〇女性:ありがとうございました。小林先生、ありがとうございました。
今ありましたように、もう間もなく 3 階でクロージングが始まりますので、もし、
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高校物理における『アクティブラーニング(能動的学習)』型授業の展開 ~アクションラーニングの理論とスキルが学校の「授業」を変える~ お時間があります方はぜひご参加をお願いいたします。
(拍手)
(以上/02:13:38)
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