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国際人文学部 推薦卒業論文

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国際人文学部 推薦卒業論文
国際人文学部 推薦卒業論文
国際交流学科
日本と韓国のジェスチャー―アンケート調査をもとに―……………………………… 鈴木 大貴(66)
─ 65 ─
日本と韓国のジェスチャー
―アンケート調査をもとに―
国際交流学科4年 鈴木 大貴
はじめに
3 学年次に「異文化間コミュニケーション論」と言う講義を履修した。その講義は,多文化社会に
おいて,自分とは異なる文化を持った他者を理解し,良い関係を築き,共生していくための知識,思
考,方法,態度を身に付けることを目的としている。そして,その講義の一環で,非言語がコミュニ
ケーションには,欠かせない存在であることを知った。それと同時に,日本,中国,韓国,米国間の
非言語コミュニケーションの相違について学習した。
以前から「私」や「こっちに来て」を始めとする,様々なジェスチャーが,日本と米国間で大きく
異なることは,
先生方のお話やマスメディアからの情報などを通じて,幾度となく耳にしたことがあっ
た。しかし,中国と韓国に関しては,これまでにその様な事柄について聞いたり,見たりした覚えが
ほとんど無かった。それに加え,同じ東アジアに属し,政治,経済,歴史などのあらゆる方面で密接
な繋がりを持つ国同士であることから,無意識の内に,言語及び非言語コミュニケーションの方法に,
際立った違いは無いだろうと言うイメージを抱いていた。そのため,日本と米国を比較した時と同様,
3 国間においても,日頃から頻繁に用いられそうなジェスチャーに,意味の相違があることを学んだ
際は,自分が抱いていたイメージとは異なる実態に驚きを感じつつ,多方面の分野で多くの共通点が
あるからと言って,非言語コミュニケーションの方法も似ているとは限らないことに気付かされた。
ところで,筆者は第二外国語として本学で韓国語を履修している。学習当初は功利的な目的を達成
したいと言う思いが強かったのだが,本学に在籍する先生方のお話や留学生との交流を通じて,言語
だけではなく文化や歴史などに対する興味を持ち始めた。一方で,講義で学んだ韓国語の知識を活か
し,母語話者との積極的なコミュニケーションを図りたいと言う感情も芽生えた。そして,その気持
ちが更に派生し,より円滑なコミュニケーションを図るためには,どうすれば良いのだろうかとも考
える様になった。その方法を考えた際,先程述べた,非言語コミュニケーションの相違点を念頭に置
くことの大切さを思い浮かべた。
したがって本稿では,先行研究をもとに,日本と韓国には,どの様なジェスチャーが存在するのか,
そして,それらが両国間で,どの様な意味として認識され,用いられているのかを一覧表にまとめる。
それに加え,その作成した一覧表を参考に,日本人と韓国人を対象として,実際にアンケート調査を
実施する。次いで,本調査の日本人と韓国人の回答結果とに,並びに,先行研究の結果とアンケート
調査の結果とに,共通点や相違点はあるのか,比較及び考察を行う。なお,本稿は日本と韓国におけ
─ 66 ─
る非言語コミュニケーション,取り分けジェスチャーの共通点や相違点に焦点を当て,それぞれの特
徴を明らかにすることで,お互いの理解を更に深め,より円滑なコミュニケーションを実践できる様
になることを目的とする。
まず第 1 章では,西原(1995)
,喜多(2002)
,小池(2009)他の先行研究をもとに,ジェスチャー
の定義,機能,種類,イメージについて概観する。次に第 2 章では,金山(1983),権(2003),権(2005)
他の先行研究をもとに,日本と韓国のジェスチャー及び各々のジェスチャーが示す意味について述べ
る。また,先行研究からジェスチャーに関する一覧表を作成し,両国の共通点と相違点を明確にする
と共に,その表から何が読み取れるのかについて言及する。そして第 3 章では,先行研究の調査方法
と調査内容を参考に,筆者が作成及び実施した「ジェスチャーに関するアンケート調査」の方法,内
容,分析対象者などについて触れる。更に第 4 章では,本調査の日本人と韓国人の回答結果とを,並
びに,先行研究の結果とアンケート調査の結果とを比較し,各々のジェスチャーの意味に類似する点
や異なる点があるのかなどを考察する。最後に第 5 章では,本稿のまとめ及び今後の課題を述べる。
第 1 章 ジェスチャーとは
この章では,ジェスチャーの定義,機能,種類,イメージについて述べていく。
1.1. ジェスチャーの定義
ジェスチャーとは,
「身振り。手振り。手真似。
」であると『広辞苑』(第六版)に説明されている。
また,喜多(2002:2)は,以下の様にジェスチャーについて述べている。
何かを伝えようという意図のもとに起こる行為の一環としてある身体の動きを発現し,それが
伝えるべき内容に関連のある情報を表すとき,その身体の動きをジェスチャーと呼ぶ。
[中略]
ある程度意識的な身体の動きもジェスチャーであるし,
「はい」といいつつでるうなずきや,な
にか複雑なことを言葉で説明しようとするときに自然と手が何かを表すかのように動いてしまう
というようなものなど,
ほとんど意識しないでも出てくる身体の動きもジェスチャーである。(喜
多 2002:2)
小池(2009:130)は,
「ジェスチャーとは主に手を使った表現を指すことが多い。ことばを使わな
いメッセージ伝達手段といったら,
まず“ジェスチャー”と答える人が多い。それほど一般的でコミュ
ニケーションには重要な手段である」とまとめている。
喜多(2002:2)と小池(2009:130)を換言すると,何かを伝える行動の一環として体を動かし,
その動きが伝える内容と関連があるとき,その行動をジェスチャーと呼ぶ。ジェスチャーには,意識
的な体の動き,無意識的な体の動きの両方が含まれ,手を使った表現を指す場合が多い。それに加え
─ 67 ─
て,言葉以外の意思疎通として,多くの人が,まず初めに思い浮かべるほど一般的な手段であり,会
話において重要な役割を担っている。
御手洗(2000:78)は,
「ジェスチャーは,これまで扱った顔の表情,アイ・コンタクト,姿勢そ
の他に伴うもので,各文化の人間の心理や社会システムの秩序を維持するための行為といえる。つま
り,[中略]ジェスチャーがなければ,我々の日常の社会生活は冷たく機械的になってしまうわけで
ある」と言及している。
つまり,ジェスチャーは,その他の非言語コミュニケーションに付随する。そして,私たちの社会
生活に彩りを与え,円滑な人間関係を築き,それを維持することを可能にする。
ここまでは,ジェスチャーの定義について述べてきた。次の節では,ジェスチャーの機能ついて述
べることとする。
1.2. ジェスチャーの機能
喜多(2002:18-20)は,ジェスチャーの機能に関して,次の 2 つを挙げている。1 つ目の機能は,
相手に何かを伝える行為を助けることである。具体的な手段として,身体の動き自体が伝えたい内容
を直接表す場合,あるいは身体の動きで会話の流れを調節し,スムーズな意思伝達を行う場合の 2 種
類があると論じている。2 つ目の機能は,
ジェスチャー(からだ的思考)を行うことにより,論理,概念,
言語など(分析的思考)とは異なる視点から情報を取捨選択し,1 つにまとめ,発話の生成を支える
ことである。
一方で,権(2003:37:39)は,次の 2 つの機能があると述べている。1 つ目の機能は,「言語代
用の機能」である。例えば,日本の場合,人に何かを頼む時や感謝の意を示す時に,相手に頭を少し
下げたり,手を軽く挙げたり,両手を合わせたりするなどの動作を取ることがある。この様に言語に
代わり非言語が,コミュニケーションの機能を果たすことである。2 つ目の機能は,
「言語の補足機能」
である。その特徴は,ジェスチャーを発話に付随させることで言葉の意味を補足,あるいは強調する
ことである。例えば,
「こっちにきて」と手招きをする,「よろしくお願いします」とお辞儀をするな
どの組み合わせが考えられる。
次の節では,ジェスチャーの種類について,西原(1995)の提案する分類方法に沿って,概観する
こととする。
1.3. 西原(1995)によるジェスチャーの分類
西原(1995:15-21)は,ジェスチャーには,
「①ものの形や動作をまねるしぐさ」
,
「②言語習慣と
して概念を象徴するしぐさ」
,
「③話の内容や理論の展開を象徴するしぐさ」,「④挨拶などの対人機能
を代表するしぐさ」の 4 つのタイプがあるとまとめている。以下,西原(1995)によるジェスチャー
の分類を詳しく見ていく。
まず初めに,
「①ものの形や動作をまねるしぐさ」に関して,例えば,両手を頭にかざすなどして,
ある動物であることを示すこと,両手を合わせ,頬に付け,眠っている様子を表すこと,両腕を体の
─ 68 ─
前で丸め,赤ん坊を抱く動作を表現することなどが挙げられ,日本語と英語の両方において,種類が
豊富で共通するものが多いと,西原(1995)は言及している。
次に,
「②言語習慣として概念を象徴するしぐさ」に関して,「うなずき」による,日・米間の相違
を取り上げている。日本人にとっての「うなずき」は,相手の話への興味や関心を示す,あるいは相
手の会話の継続を促すためのものである。それに対して,米国人にとっては,相手の考えや意見に賛
同していることを伝えるためのものであるため,誤解が生じた例が数多くあると論じている。また,
「ウィンク」の意味の違いも,西原(1995)は取り上げている。米国人の場合は,ある話題に関する
当事者同士の同意や了解を確認するために,
「そうだよね」と言う意味合いで使うのだが,一方で,
日本人の場合は,
「愛のサイン」として用いる傾向がある。そのため,「うなずき」と同様,心得てお
く必要があると述べている。
そして,
「③話の内容や理論の展開を象徴するしぐさ」に関して,話の内容をより明確に理解して
もらうためのジェスチャーであるとし,例えば,文章中の強調したい箇所,考えの筋道,新しい話題
の導入の示唆を表現する様なものであると,西原(1995)は論じている。また,日本語では,この種
のジェスチャーには決まった型が少なく,話題を転換する際に用いる「この話はちょっと置いておい
て……」などが,例になるくらいであるとまとめている。
一方で,
米国人の場合も定型は少ないと述べた上で,人差し指を立てて,強い主張や警告を表したり,
人差し指と中指を鉤の様にして,引用符の形(quotation marks)をまねたりすることなどがあると,
西原(1995)は言及している。
最後に,「④挨拶などの対人機能を代表するしぐさ」に関して,
「hug and kiss(抱擁と接吻)
」に
おける,日米間の違いを取り上げている。親密度によって様々な挨拶の可能性が考えられるが,米国
人同士であれば,相手の奥さんの肩を軽く抱いて,額にキスしたり,頬ずりしたりすることは一般的
である。それに対して,お辞儀文化の中で育った日本人にとって,それらの行為は愛情の表現である
という思い込みから,実際に行動に移すには抵抗感があるため,異文化適応する上での高い壁の 1 つ
であると,西原(1995)はまとめている。
次の節では,ジェスチャーの種類について,喜多(2002)の提案する分類方法に沿って,概観する
こととする。
1.4. 喜多(2002)によるジェスチャーの分類
喜多(2002:17)は,
「①ジェスチャー使用がもたらす社会的作用」,
「②受け手指向性(ジェスチャー
を使って,
相手に情報を伝え様とする意識の高低)
」,
「③形と機能の関係(身体の動きと意味との関係)」
の 3 つの要因を軸として,分類したと述べている(図 1)。
それに加えて,喜多(2002:49)は,ジェスチャーの全てが,図 1 の項目の 1 つに必ず分類される
と言う限りではなく,1 つのジェスチャーが複数の要因を併せ持つ場合,いくつかの種類の中間的存
在の場合もあるとまとめている。
以下,
「喜多(2002)によるジェスチャーの分類(図 1)」を見ていく。喜多(2002)によれば,
「ジェ
─ 69 ─
スチャー」は,
「エンブレム」と「自発的ジェスチャー」に大別される。「エンブレム」には,「遂行
的エンブレム」
,
「単語的エンブレム」
,
「表出的エンブレム」,「メタ談話的エンブレム」,「会話調整エ
ンブレム」
,
「修辞的エンブレム」の 6 種類がある。また,「自発的ジェスチャー」には,「拍子(ビー
ト)
」
,
「表象的ジェスチャー」
,
「直示的ジェスチャー」,
「映像的ジェスチャー」,
「暗喩的ジェスチャー」
の 6 種類がある。
まず初めに,
「エンブレム」と「エンブレム」の下位分類を述べることとする(喜多 2002:18-24)。
図1 喜多(2002)によるジェスチャーの分類
A 遂行的
エンブレム
エンブレム
B 単語的
エンブレム
C 表出的
エンブレム
D メタ談話的
エンブレム
ジェスチャー
自発的
ジェスチャー
a 拍子
(ビート)
b 表象的
ジェスチャー
E 会話調整
エンブレム
F 修辞的
エンブレム
c 直示的
ジェスチャー
d 描写的
ジェスチャー
e 映像的
ジェスチャー
f 暗喩的
ジェスチャー
出典 喜多(2002:48)に基づいて筆者が作成
会釈を始めとするジェスチャーは,発話を伴わなくとも理解可能である。それは,ジェスチャーに
関する知識がグループ内の人々の間で社会的習慣として定まっており,共有されているからである。
この様に,
ジェスチャーの形と意味に対して共通の認識を持っているため,発話への依存度が低いジェ
スチャーを「エンブレム」と呼んでいる。
東山(1993:113-115)は,
「エンブレム」について,それぞれに対応した言葉に翻訳でき,意味が
明確である。それと同時に,同じ意味を示す場合でも文化ごとに異なる動作である傾向が非常に強い
ため,形から意味を推測することは難しいと言及している。
「エンブレム」の例として,首を縦に振
る動作は,
「はい」や「Yes」の意味であることを挙げている。
図 1 の A は,
「遂行的エンブレム」
である。
「遂行的エンブレム」は,社会的行為を達成するためのジェ
スチャーである。このジェスチャーには,挨拶と言う社会的行為を達成する「会釈をする」
,相手へ
の同意を示す「OK サイン」
,
相手への侮辱を表す「あっかんべー」,相手の動作を促す「こっちへ来い」
や「あっちへ行け」などが含まれるとまとめている。
図 1 の B は,
「単語的エンブレム」である。
「単語的エンブレム」は,社会的行為の達成を目的とせず,
発話中に「お金」
,
「愛人」
,
「恋人」などの単語を表すために用いられるジェスチャーである。
図 1 の C は,
「表出的エンブレム」である。
「表出的エンブレム」は,第 1 に自身の感情を表現す
─ 70 ─
ること,第 2 に相手に情報を伝達することを目的とするジェスチャーである。そのため,このジェス
チャーは電話越し,画面越しなど,情報を伝達する相手がいない状況でも使用される特徴を持つ。例
としては,
「ほっと胸を撫で下ろす」
,
「ガッツポーズ」,「恐縮のおじぎ」が挙げられる。なお,社会
的に共通する認識を利用し,自分の心理状態を相手に伝えることを主な目的として「表出的エンブレ
ム」を用いることも可能であると述べている。
図 1 の D は,「メタ談話的エンブレム」である。「メタ談話的エンブレム」は,発話との関係が最
も緊密なジェスチャーで,更に 2 種類のジェスチャーに分類できると論じている。ところで,「談話」
とは,関連性がある発話の連続を指し,
「メタ」とは,一段上の立場から談話がどの様に結び付いて
いるかを表すことであるとまとめている。
図 1 の E は,
「会話調整エンブレム」である。
「会話調整エンブレム」は,
「メタ談話的エンブレム」
を 2 種類に分けた内の 1 つで,
会話の流れに何らかの影響を与える機能を持ったジェスチャーである。
Bavelas(1992:475)は,円滑に会話を行うための「うなずき」,発言を促すための「どうぞ」など
の動作が,このジェスチャーに含まれると言及している。
図 1 の F は,「修辞的エンブレム」である。
「修辞的エンブレム」は,2 種類に分けた内のもう 1 つ
で,自分の発話が全体の流れの中でどの程度重要なのか,発話を補足する機能を持ったジェスチャー
である。
「修辞的エンブレム」の例として,政治家の演説などに見られる,手刀を繰り返し振り下ろ
すことで伝えたい箇所を強調する動作を取り上げている。
次に,「自発的ジェスチャー」と「自発的ジェスチャー」の下位分類を述べることとする(喜多
2002:24-34)
。
「エンブレム」とは対照的に,形と意味とが社会的習慣として完全に定まっておらず,発話と共に
自然と現われるジェスチャーを「自発的ジェスチャー」と呼んでいる。
図 1 の「自発的ジェスチャー」は,
「形と意味との関係が社会的習慣以外の要因によって規定され
るもの」
,
「形と意味との関係に解釈の幅が残されており,発話内容に応じて形を変化させて用いるこ
とができるもの」の 2 種類に分けられる。前者は「拍子(ビート)」(図 1-a),後者は「表象的ジェス
チャー」
(図 1-b)と呼ばれる。
また,砂押(2002:168:178-179)の調査によれば,母語話者同士の会話よりも言語的に大きな制
限があり,意思疎通が困難な状況下では,
「自発的ジェスチャー」に以下の 2 つの機能が認められた
と論じている。1 つ目の機能は,
会話の話題を管理しそれを維持する「水先案内人」の様な機能である。
砂押(2002)は,調査結果(工場で働く日本人と米国人の会話)から,
“assembly(組立)”,
“stamping
(型で打ち出すこと)
”
,
“finish(終了する)
”などの語に,それぞれの意味を示すジェスチャーが付随
していたことを例に挙げている。
2 つ目の機能は,聞き手がジェスチャーを繰り返し使用することで,話し手に会話の内容への理解
が不十分であることを伝え,より明確な表現を求め,意思疎通が可能な段階まで達するための「命綱」
の様な機能である。砂押(2002)は調査結果から,話し手の日本人が“stamping”のジェスチャー
を繰り返すことで,
“stamping”について話をしていることは理解できるが,その先の内容(聞き手
─ 71 ─
が話した内容の詳細)が理解できていないことを聞き手に伝え,それに対して,聞き手の米国人は,
話し手がどの程度会話を理解しているのかを把握し,他の言葉に言い換えてコミュニケーションを図
ろうとする様子を例に挙げている。
図 1 の a は,
「拍子(ビート)
」である。
「ビート」は,上下や左右に刻む様に小さく動くジェスチャー
で,発話の影響を受けて,その形が変わることはない。このジェスチャーは,単体で現われる場合と,
後述の「表象的ジェスチャー」と共に現われる場合があり,前者の場合は膝の上などのジェスチャー
空間の周囲に現れることが多く,後者の場合は「重ね合わせられたビート」と呼ばれ,
「表象的ジェ
スチャー」が空中で保持されている状態(ある方向を指差した状態など)のとき,手が上下に小さく
刻む様に動くものであると述べている。
マクニール(1990:335)によれば,
「ビート」は,
「新しい登場人物の導入」
,
「場面の設定」
,
「話
の筋から逸れた内容の要約や予測」など,現在話されている発話が,会話全体の中で重要な部分であ
ること示す機能を持つと言及している。
図 1 の b は,「表象的ジェスチャー」である。
「表象的ジェスチャー」は,指示対象との空間的な
距離と方向に基づく「直示的ジェスチャー」と,対象物との相似性に基づく「描写的ジェスチャー」
の 2 種類に分けられると論じている。また,
「表象的ジェスチャー」は,表現したい内容に応じて様々
なジェスチャーの形態をとることができると述べている。
喜多(2002:26)とマクニール(1990:344)によれば,「表象的ジェスチャー」を観察することで,
発話者がその表現する内容に対してどの様なイメージや感情を抱いているのかを窺い知ることができ
ると言及している。
図 1 の c は,「直示的ジェスチャー」である。
「直示的ジェスチャー」は,頭,顎,手,目などの身
体の一部をある方向に向け,ある方向,場所,物を指し示すジェスチャーである。例として,人差し
指や親指(親指は身体の後ろの方向を指す場合)を使った指差し,指を全て伸ばした状態で手の平を
斜め上に向ける指差しの「ですます体」の様なジェスチャーを取り上げている。また,手の他にも「頭
を振る」
,
「顎をしゃくる」
,
「視線を送る」ことによる,方向指示も可能であるとまとめている。
図 1 の d は,「描写的ジェスチャー」である。
「描写的ジェスチャー」は,身体の動作と指示対象
との類似点に基づくジェスチャーで,手で何段もある本棚の形を上から順になぞる様に描写する動
作を一例に挙げている。また,
「描写的ジェスチャー」は,更に 2 種類に分類される。表現対象が動
作,または空間的な出来事や状態の場合を「映像的ジェスチャー」と呼んでいる。一方で,抽象的な
物を空間の中に表現する場合を「暗喩的ジェスチャー」と呼んでいる(喜多 2002:29,マクニール
1990:347)
。
図 1 の e の「映像的ジェスチャー」には,4 種類の表現方法があると論じている。まず初めに,
「演
技的表現法」は,
発話者が身体を使って,
ある人物の動作を演じることであると述べている。次に,
「客
体化表現法」は,身体の一部を操り人形の様に動かして,指示対象の位置,動作,形の変化などを表
すことであるとまとめている。そして,
「彫塑的表現法」は,表面をなでる様な動きで,その造形を
表現することであると言及している。最後に,
「輪郭線表現法」は,輪郭をなぞる様な動きで,その
─ 72 ─
造形を表現することであると論じている。
図 1 の f は,
「暗喩的ジェスチャー」である。
「暗喩的ジェスチャー」は,抽象的なものを空間中に
表現するためのジェスチャーである。Kita(2001:128-129)は,マヤ語族の男性がその土地に伝わ
るおとぎ話を語っている際,身体の右側から左側へ右手を動かすことで,夜が明けるまでの時間経過
と言った抽象的なものを表している様子を例に取り上げている。
次の節では,これまでとは異なる視点からジェスチャーを更に知るために,非言語行動像について
述べることとする。
1.5. 言語から見られる非言語行動像(ジェスチャーを含む)
大崎(1998:104)は,受け身表現の有無などから,日本語は「内向的な言語」,韓国語は「外向的
な言語」であると述べている。木村・森山(1992:37-38)は,日本語像について,良く言えば「気配り」,
悪く言えば「対人恐怖症的」であると指摘している。その理由として,中国語の場合は話し手の認識
が談話の基準になるが,日本語の場合は話し手の認識だけではなく,聞き手の認識も談話の中で尊重
する必要があることを取り上げている。
権(2004:77-78)は,言語と非言語は補い合って機能するため,言語的な特徴が非言語行動にも
反映されると論じている。そして,大崎(1998)と木村・森山(1992)の考察を踏まえつつ,自身の
調査結果から,日本人の非言語行動は「気配り」
,
「内向的」な性質であるのに対し,韓国人の非言語
行動は「自立的」
,
「外向的」な性質であると推察している。
ここまで,ジェスチャーの定義,機能,種類,イメージを概観してきた。ジェスチャーの定義と機
能に関しては,御手洗(2000:78)が「ジェスチャーがなければ,我々の日常の社会生活は冷たく機
械的になってしまうわけである」と述べていたことや,喜多(2002)と権(2003)がそれぞれ論じて
いた機能のことを踏まえると,筆者が考えていた以上に,円滑なコミュニケーションを行う上で,ジェ
スチャーは重要な役割を果たしていることが窺える。また,ジェスチャーの種類に関しては,西原
(1995)と喜多(2002)の提案する分類方法が数種類から多岐にまでわたることから,一概にジェス
チャーといえども,それぞれが持つ特徴には様々な違いがあることが言える。そして,言語から見ら
れる非言語行動像に関しては,
権(2004)が,
言語的な特徴が非言語行動にも反映されると論じた上で,
日本人と韓国人の非言語行動の性質を推測しようとする発想が,筆者にとって非常に興味深かった。
次の第 2 章では,金山(1983)
,権(2003)
,権(2005)が実施した,日本と韓国の非言語行動に関
する調査結果及び比較考察について概観することとする。
第 2 章 ジェスチャーに関する先行研究
この章では,金山(1983)
,権(2003)
,権(2005)が実施した,日本と韓国のジェスチャーに関す
る調査結果及び比較考察について述べていく。
─ 73 ─
まず初めに,金山(1983)の「世界 20ヵ国ノンバーバル事典」の調査結果から見ていく。
2.1. 金山(1983)のジェスチャーに関する調査方法,調査内容
金山(1983:3-9)は,1980 年から 1982 年までの 2 年間に渡って,世界 20ヵ国の人々(総数 506 名:
日本人 39 名,韓国人 58 名他)に 50 種類のジェスチャーの絵を見せ,その意味を答えてもらう,ア
ンケート用紙を使った調査を実施したと述べている。
また,
回答結果を踏まえ,
それぞれのジェスチャーの認知度を相対的に示す手段として,
「効果値」
(ほ
ぼ同義の回答数÷総数で得たパーセンテージ)
を使用している。それに伴い,以下の 4 つのカテゴリー
を設け,それらを「効果域」と呼んでいる。
「a ≧ 90 > b ≧ 60 > c ≧ 30 > d ≧ 10」 出典 金山(1983:8)
例えば,
「効果域 a」は回答数が 90% 以上のため,そのジェスチャーを効果的に会話で用いること
ができるとまとめている。それに対して,
「効果域 d」のジェスチャーは,意味が曖昧なため,誤解
が生じる可能性が高いと言及している。なお,
「効果値」が 10% 未満のジェスチャーは「無効ジェス
チャー」と呼び,切り捨てることとしている。
2.2. 金山(1983)のジェスチャーに関する調査結果
金山(1983:125)は,日本と韓国のジェスチャーは共通点が比較的多く,例えば,調査に用いら
れた最初の 10 種類のジェスチャーに関して言えば,10 種類中 6 種類が「ほぼ同じ意味」として認識
されている,あるいは「無効ジェスチャー」であったと言及している。
一方で,
「手で口を覆う」
「人差し指と中指で鼻を挟む」,
,
「人差し指を鼻に向ける」と言った「手と顔」
とが関係するジェスチャーは,日本ではそれぞれ「効果域 c」であるのに対し,韓国では「無効ジェ
スチャー」であったと論じている。そして,それらの結果から,両国の文化が一見似ている様で,微
細な点で確実に異なることを示しているとまとめている。
なお,韓国で「効果域 a」のジェスチャーは,
「親指を立てる=(最高)
」
,
「人差し指を唇に当てる
=(静かに)
」
,
「両手の人差し指を立てて,手をこめかみに当てる=(怒っている)」の 3 種類であっ
たと述べている。
以上の金山(1983)の調査結果から,日本では「手で口を覆う」,「人差し指を鼻に向ける」など日
常的に使用する機会が多いと思われるジェスチャーが,「効果域 a」に達していないことが明らかと
なった。また,韓国では「効果域 a」に達するジェスチャーは,50 種類中 3 種類のみであることが
判明した。ところで,日本は非言語行動の担う役割が大きい高コンテクスト文化である(Edward T.
Hall:91:102 及び Martin Rösch, Kay G. Segler:60)。そして,日本と同様,韓国も高コンテクス
ト文化であるとされる(東 2009:178)
。それらのことを踏まえ,日本でも韓国でもそれぞれジェス
チャーに対する認知度は,比較的高い値であると筆者は予想していたため,どちらも予想外の結果で
─ 74 ─
あった。
次の節では,権(2003)の「非言語的意思伝達に関する少考―韓国人の年代別のジェスチャーを中
心に―」の調査結果を見ていく。
2.3. 権(2003)のジェスチャーに関する調査方法,調査内容
権(2003:35-36:42)は,10 代~50 代の韓国人(男女各々30 名ずつの計 300 名)を調査対象とし,
7 種類のジェスチャーの絵を見せたり,直接その仕草を見せたりして,それらの意味を答えてもらい,
世代別の認識の差を考察したと述べている(図 2)
。
以下の項では,権(2003)が実施した調査の回答結果について述べることとする。
図2 「権(2003)が調査に用いた 7 種類のジェスチャー」
出典 権益湖(2003:43)
2.3.1. 図 2-1 における世代別の回答結果(約束,恋人)
図 2 の 1 番の「小指を立てる」ジェスチャーに関して,10 代~30 代の間ではほとんどの人々が「約
束」の意味として理解していると回答した。一方で,40 代以上の多くの男性は「恋人」の意味として,
40 代以上の多くの女性は「約束」の意味として認識していることが,調査結果から判明したと論じ
ている(権 2003:44)
。
2.3.2. 図 2-2 における世代別の回答結果(最高,恋人,親父,社長)
図 2 の 2 番の
「親指を立てる」
ジェスチャーに関して,10 代~30 代の間ではほとんどの人々が「最高」
と言う意味で捉えていると答えた。それに対して,40 代以上の間では「最高」の他に「恋人」や「親父,
社長」などの意味で用いられていることが,調査結果から明らかになったと言及している(権 2003:
44)
。
─ 75 ─
2.3.3. 図 2-3 における世代別の回答結果(最悪だ,だめ,負けるなど)
図 2 の 3 番の「親指を下に向ける」ジェスチャーは,10 代~20 代の間では「最悪だ,だめ,負け
る(ゲームなどで)
」と言う意味で捉えられている。一方で,30 代の間では上記の意味よりも「(人を)
殺す」との回答が多かった。また,40 代以上の間では「
(人を)殺す」
,
「懲らしめる,いじめる」と
答えた人がほとんどで,30 代を境界線に「10 代~20 代」,
「40 代~50 代」の世代間で,ジェスチャー
に対する認識が大きく異なることが,回答結果から見受けられたとまとめている(権 2003:45)。
2.3.4. 図 2-4 における世代別の回答結果(OK,お金)
図 2 の 4 番の「親指と人差し指を使って円を作る」ジェスチャーは,20 代以下の間では「OK」の
意味として,30 代以上の間では「OK」
,あるいは「お金」の意味として使われている。因みに,20
代以下の人々は図 2-4 の形を反対に向けたり,両手を水平な状態で合わせて,手を開いたり閉じたり
して「お金」を表現すると述べている(権 2003:45-46)。
2.3.5. 図 2-5,図 2-6 における世代別の回答結果(頭がおかしい)
図 2 の 5 番の「人差し指をこめかみの近くで回す」ジェスチャーは,日本と同様,韓国でも「頭が
おかしい」の意味で一般的に理解されている。それに加えて,図 2 の 6 番の「人差し指と中指で鼻を
挟む」ジェスチャーも,20 代以下を中心に同様の意味で認識されている。
その理由について,権(2003:46)は,鼻を指と指で挟んだ際にできる「間」のことを韓国語で사
이코(サイコ)と呼ぶことと,1960 年,1998 年に放映された米国の映画「Psycho(サイコ)」とを
掛け合わせたためであると説明している。それと同時に,そのジェスチャーがいつ頃から流行り始め
たのかは不明だが,現在も使われていると補足している。
2.3.6. 図 2-7 における世代別の回答結果(約束)
図 2 の 7 番の①~⑤まである一連の動作は,
「約束」を意味するジェスチャーである。①のみに関
してではあるが,日本においても韓国と同様の意味で使用されている。
①は「指切り」
,
②はお互いの親指で「判子を押す」様子を表している。③は人差し指で「サインする」
場面,④は「印刷」
,⑤は「コーティングする」動作であると述べている。
30 代以下の間では①~⑤まで認識されているが,40 代以上の間では①~②までの理解に留まった。
「指切り」だけではなく更に数回の確認手続きを踏む様になった理由に関して,現代社会への不信感
を反映しているためであるとまとめている(権 2003:47)。
2.3.7. 図 2-8 における世代別の回答結果(失敗した,自分とは関係がない)
図 2 の 8 番の「両肩をすくめる」ジェスチャーは,「失敗した」,「自分とは関係がない」などの意
味として,10 代~20 代の間で使われている。しかし,30 代以上の間では「舌を見せる」
,
「後頭部を
─ 76 ─
かく」の方が広く用いられていると言及している(権 2003:47)。
図 2 の 5 番と 8 番以外の 5 種類のジェスチャーの意味に関して,30 代を境に意味の捉え方が変化
していく様子が見受けられ,筆者にとってその過程は非常に興味深い。またそれらの事実から,ジェ
スチャーは同じ文化を持つ者同士でも,世代別,性別,あるいはその時代の社会情勢など様々な内外
からの影響によって,その形式や意味を変化させることが推察される。そして,言葉と同様に非言語
行動もまた,普遍的ではないことが言える。
次の節では,権(2005)の「日本語教材の漫画とイラストに見られる非言語行動についての比較考
察―日本・韓国・中国(及び台湾)を対象として―」を見ていく。
2.4. 権(2005)の非言語行動に関する先行研究
権(2005:63)は,韓国と中国(及び台湾)は,他の国と比較して日本語学習者が最も多い国であ
るため,日本人の非言語行動について理解を深めることは日本語教育においても重要であると述べて
いる。そしてそれらを踏まえ,以下の調査を実施したと論じている。
2.4.1. 権(2005)の非言語行動に関する調査方法,調査内容
権(2005:64-65)は,日本と韓国などで最近出版された日本語教材を分析対象とし,それらの漫
画やイラストに描かれている「非言語行動」
,
「エンブレム」等について比較考察を行った。なお,そ
れらの分類基準に関して,特定の意味を表す場合は「エンブレム」
,特定の意味を表さない単なる動
作の場合は「非言語行動」として扱ったと言及している。したがって,こちらの「エンブレム」は,
第 1 章の「エンブレム」とは異なる意味を持つ。
2.4.2. 権(2005)の非言語行動に関する調査結果
前節で述べた分析の結果,日本以外の日本語教材には,各々の国に存在する「非言語行動」,「エン
ブレム」等がそのまま表現されている傾向が見受けられたと述べている(権 2005:65)
。また,後述
の調査結果を踏まえ,金山(1983)と同様,日本と韓国の非言語行動には共通点が多い一方で,文化
的な相違点も多いとまとめている。
以下,
権(2005)の分析で最も出現率が高かった上位 3 種類のエンブレム(「てれる」,
「私」,
「否定」)
に関する類似点,または相違点をそれぞれ詳しく見ていく。
まず初めに,「てれる」に関して,
「頭をかく」動作の大半が,日本と韓国の両国で,「てれる」と
言う心境を表現するために用いられていたと論じている(権 2005:66)。
次に,「私」に関して,日本では「人差し指で鼻を指す」の方が一般的だが,韓国では「手の平を
胸に当てる」の方が一般的と言った相違があると言及している(権 2005:67)。
権(2004:73:76)は,
「人差し指で鼻を指す」非言語行動が存在しない韓国の場合でも,韓国国
内で出版された漫画の中では,その動作が使用されていたと論じている。そしてその理由に関して,
漢字文化圏である日本と韓国は,歴史的に深く関わりがあるのと同時に,言語や非言語行動について
─ 77 ─
もお互いに影響を与え合っているためであると推察している。また,両国の非言語行動には,似てい
る様で微妙に異なるものから非常に異なるものまで数多く存在するため,予想外の誤解が生じる場合
があると述べている。
最後に,
「否定」に関して,
「ダメ・違う・遠慮」をまとめて「否定」として扱った上で,両国とも
に「否定」の多くが,
「手を振る」動作で表現されていたと言及している(権 2005:67-68)。ところで,
「両手の人差し指を交差させる」が示す意味は,日本では「ダメ・失敗・喧嘩」であるが,韓国では「と
める・やめる・休憩」であると論じている(権 2004:72)。
Morris・東山(1999:181)は,
西欧では「胸部を指す」によって,東洋では「鼻を指す」によって,
「私」
を表すと推測している。しかし,金山(1983)と権(2005)の調査結果からは,韓国では「手の平を
胸に当てる」の方が幅広く認識されている様子が伺える。
筆者は,東アジアの国同士に様々な面での深い結び付きがあることから,ジェスチャーの示す意味
にあまり大きな違いはないだろうと言ったイメージを持っていた。そのため,日本で「人差し指を鼻
に向ける」が「私」を意味するならば,
東アジアの他の国でも「私」を意味するだろうと考えていた。
しかし,これまで見てきた先行研究から,日本と韓国においても異なる意味を示すジェスチャーが数
多く存在することを知り,筆者は驚きを感じた。
権(2003:48)は,米国文化の伝播や国際公用語である英語に対する教育熱などにより,韓国の若
い世代は米国からの影響を大きく受けており,ジェスチャーの中にもそれらが随所に表れているとま
とめている。筆者はその意見を踏まえ,韓国において「手の平を胸に当てる」ことが「私」を示す 1
つの要因は,米国文化からの影響であると推察する。
次の節では,
金山(1983)
,
権(2003)
,
権(2005)の調査結果を表にまとめる。そして,ジェスチャー
が示す意味に関して,日本と韓国の共通点と相違点を概観することとする。
2.5. 金山(1983),権(2003),権(2005)の調査結果のまとめ
この節では,本稿の先行研究として挙げてきた,金山(1983),権(2003),権(2005)の調査結果
をもとに,日本と韓国のジェスチャーに関する一覧表を作成して,これまでに述べた情報をもう一度
整理し,類似点と相違点を見直すこととする(表 1)。
なお,表の見易さの関係上,
(A)= 金山(1983)
,
(B)= 権(2003),
(C)= 権(2005)と定義した。
更に,個々の情報の信憑性を高めるために,Morris・東山(1999),東山・Ford(2003),権(2004),
Kirkup・中野(2014)が論じている,ジェスチャーに関する情報を(D)と置き,一覧表に書き加え
た。また,
[ ]内のアルファベットは,効果域を示すものとする。
─ 78 ─
表1 「日本と韓国のジェスチャーに関する先行研究のまとめ」
日本での意味
ジェスチャー
(A)しまった(口を滑らす),笑
手で口を覆う
韓国での意味
(A)意味なし
いを堪える等[c]
(D)驚 き,不安,焦り,笑いを
上品に見せる等
(A)臭い,におう[c]
(A)私,自分[c]
(C)私
(D)私,自分等
(A)OK,最高,男,お父さん等[c]
(D)OK,最高,男性,夫,任せ
て等
(A)静かに,秘密[a]
(D)静かに,内緒
人差し指と中指で鼻を挟む
(A)意味なし
(B)頭がおかしい
人差し指で鼻を指す
(A)意味なし
※存 在 し な い が 韓 国 の 漫 画 に 出
現(権 2004)
親指を立てる
(A)最高,
No.1[a]
,
ボス,
親父[d]
(B)最高,恋人,社長,親父
人差し指を口に当てる
(A)怒っている,鬼[c]
(D)嫉妬
人差し指を立てて,
こめかみに当てる
(A)女子,恋人[a]
(D)女性,(男性の)恋人
小指を立てる
(A)静かに,秘密[a]
(A)怒っている[a]
(A)恋人等[b]
,約束等[d]
(B)恋人,約束
(A)下[d]
(D)失 敗,否定の返事,否定的
評価
親指を下に向ける
(A)OK[a],お金[d]
(D)承諾,
順調,
大丈夫,
準備完了,
お金
親指と人差し指で円を作る
[親指と人差し指が手前]
(A)お金[b]
,OK[d]
(B)お金,OK
※記述なし
親指と人差し指で円を作る
[小指が手前]
(B)お金
※記述なし
両手を合わせて,開閉する
(B)お金
こめかみの近くで円を描く
(A)考える,頭がおかしい[d]
(B)頭がおかしい
(A)考 える,頭がおかしい,能
力[d]
(D)気 がおかしい(逆時計回り
に円を描く)
(A)約束[a]
(D)約束の誓い
(A)分 からない,困った,お手
上げ等[b]
(D)否認
小指と小指を絡める
両腕を広げ,肩をすくめる
─ 79 ─
(A)殺す,下[d]
(B)最悪,だめ,負ける,殺す,
懲らしめる,いじめる
(A)約束[b]
(B)約束
(A)何 も な い, 自 分 に 無 関 係,
分からない[c]
,あきらめ
る[d]
(B)自 分とは関係がない,失敗
した
(A)照れる[c],困惑[d]
頭をかく
(C)照れる
等[d]
(D)照れる
(A)安心,私,驚き等[d]
(C)照れる
手の平を胸に当てる
(D)安心,安堵の気持ち
(A)意味なし
(C)私
(C)否定
(D)否定
(A)ダメ,失敗,間違い[c],喧嘩,
罰[d]
(D)ダメ・失敗・喧嘩
(A)す みません,困惑,照れる
手を横に振る
人差し指を交差させる
(C)否定
(A)とめる,やめる,休憩[d]
(D)とめる・やめる・休憩
出典 金山(1983),権(2003),権(2005)他の先行研究を筆者が表にまとめた
先程述べた分類基準に沿って作成したのが表 1 である。それぞれ詳しく見ていくと,少なくとも
18 種類中 5 種類のジェスチャー(
「手を口で覆う」,
「人差し指と中指で鼻を挟む」
,
「人差し指で鼻を
指す」
,
「手の平を胸に当てる」
,
「人差し指を交差させる」
)が,両国間で異なる意味を示すことが読
み取れる。それと同時に,
「人差し指と中指で鼻を挟む」,
「親指を下に向ける」,
「手の平を胸に当てる」
などに関しては,分析対象が同じ国であるにも関わらず,先行研究毎に,それらの意味に対する人々
の認識が変化していく様子が見て取れる。
前者の事実
(両国間で異なる意味を示すジェスチャーが存在すること)からは,金山(1983),権(2005)
も述べている様に,歴史的背景を理由に文化面での共通点が多い日本と韓国においても,文化の一端
であるジェスチャーに,
微細ながらも相違する部分が存在することが言える。そして,後者の事実(先
行研究毎に結果が異なること)からは,その時々に受ける内外からの影響によって,
「意味が変化す
るジェスチャー」と「意味があまり変化しないジェスチャー」の 2 種類があることが言える。そのた
め,同じ国籍の人々の間でさえ,ジェスチャーに対する認識は普遍的ではなく,流動的である様子が
見受けられる。
次の第 3 章では,これまでに述べた先行研究をもとに,筆者が実際に行うアンケート調査について
述べることとする。
第 3 章 ジェスチャーに関するアンケート調査
この章では,筆者がどの様な調査を実施するのかについて述べていくこととする。
3.1. 調査目的と調査内容
本調査は,本稿の冒頭でも触れた様に,日本と韓国の非言語コミュニケーションの共通点と相違点
を明らかにすることで,両国間の相互理解を更に深め,そして,異文化摩擦を軽減させ,両者に誤解
が生じることなく,円滑な意思疎通を図れる様になることを目的とする。
─ 80 ─
本調査を実施するに当たり,第 2 章で概観した金山(1983),権(2003),権(2005)他の先行研究
を参考にし,
「ジェスチャーに関するアンケート調査」を作成した。
なお,「ジェスチャーに関するアンケート調査」に関して,表 1 の 18 種類の内,「日本と韓国で意
味が異なる」または「先行研究毎に韓国での意味が異なる」ジェスチャー(6 種類)に,「両手を合
わせて,開閉する」ジェスチャー(1 種類)を加えた,合計 7 種類を分析対象とした。その上で,
「そ
れらがどの様な意味を示すのか」
「それらを普段使用するのか」の 2 点を調査することとした(表 2)。
,
また,
「それらを普段使用するのか」について調査する理由は,第 2 章で概観した先行研究のほと
んどが,各々のジェスチャーが示す意味を調査することに留まっていたためである。厳密には,東山・
Ford(2003)が日米間の使用頻度に関して述べており,本調査の「(3)人差し指で鼻を指す」と「(6)
手の平を胸に当てる」の日本人の回答結果とも重なるため,第 4 章の調査結果の比較と考察の際,東
山・Ford(2003)の調査結果についても言及する。
ところで,第 1 章の喜多(2002)の提案する分類方法に沿って,上記の 7 種類のジェスチャーを当
てはめていくと,
「
(1)手で口を覆う(笑いを堪える,笑いを上品に見せる)」,「(7)人差し指を交差
させる(とめる,やめる,休憩)
」に関しては「遂行的エンブレム」であると,「(2)人差し指と中指
で鼻を挟む(頭がおかしい)
」
「
(3)人差し指で鼻を指す(私,自分)」,
「(4)親指を下に向ける(最悪,
だめ,負けるなど)
」
,
「
(5)両手を合わせて,開閉する(お金)」,
「(6)手の平を胸に当てる(私)」,
「(7)
人差し指を交差させる(ダメ,失敗,間違いなど)」に関しては「単語的エンブレム」であると推測
する。一方で,
「
(1)手で口を覆う(驚き,不安,焦りなど)」,「(2)人差し指と中指で鼻を挟む(臭
い,におう)
」
,
「
(6)手の平を胸に当てる(安心,安堵の気持ち,驚き)」については「表出的エンブ
レム」であると,
「
(4)親指を下に向ける(下)
」については「直示的ジェスチャー」であると推察する。
以下,アンケート調査の回答方法を詳しく見ていく。
表 2 「本稿の分析対象(7 種類のジェスチャー)」
(1) 手で口を覆う
(5) 両手を合わせて,開閉する
(2) 人差し指と中指で鼻を挟む (6) 手の平を胸に当てる
(3) 人差し指で鼻を指す
(7) 人差し指を交差させる
(4) 親指を下に向ける
回答方法に関しては,
調査被験者に(1)~(7)のジェスチャーの写真(写真は全て筆者が用意した)
を見てもらい(p45 と p47 を参照のこと)
,それらがどの様な意味を示すのか,あるいはどの様な印
象を持つのかを選択肢の中から選んでもらった(複数回答可)
。また,選択肢については,次の 3 種
類を設け,
「先行研究に記述されていた意味」
・
「その他」(自由記述)・「分からない」の順序で配列し
た(p44 と p46 を参照のこと)
。
「先行研究に記述されていた各々の意味」の中には「ほぼ同義の意味」
であると感じられるものもあったため,筆者の判断で 1 つにまとめ,アンケート用紙に記載すること
とした。それに加えて,日本人と韓国人のジェスチャーを使用する割合を明らかにするため,普段使
用するかと言う質問に,
「はい」または「いいえ」で回答してもらった。
─ 81 ─
金山(1983:3)は,アンケート用紙への記入の際に,以下の点に注意してもらったと述べている。
まず 1 つ目は,
「特別な意味や印象がない場合は記入しないこと」である。次に 2 つ目は,「他の国や
地域で,どの様な意味として認識されているのかを知っていたとしても,それらの記入は控え,回答
者の出身地のことのみを記入してもらうこと」である。
筆者もそれらの注意事項を参考にし,本研究のアンケート用紙に書き加え,信頼性の高い情報が得
られる様に努めた。なお,上記の注意事項に関して,どの程度守られたかは不明であると述べた上で,
アンケート調査の 1 つの限界であるとまとめている(金山 1983:3)。
本調査で使用したアンケート用紙は,末尾の添付資料 1 及び添付資料 2 を参照のこと。
3.2. 被験者の内訳
アンケート調査を実施した日本人と韓国人の被験者数は,以下の通りである。日本人 50 名,韓国
人 60 名の総勢 110 名から,回答を得ることができた。性別では,日本人は男女 25 名ずつ,韓国人は
男女 30 名ずつを対象とした(表 3-A)
。世代別では,日本人は 10 代が 10 名,20 代が 40 名である(表
3-B)
。また,韓国人は 10 代が 4 名,20 代が 37 名,30 代が 8 名,40 代が 5 名,50 代が 6 名である(表
3-C)
。
表 3-A 性別(日本人と韓国人)
日本人
韓国人
男性
25 名
30 名
女性
25 名
30 名
合計
50 名
60 名
表 3-B 世代別(日本人)
表 3-C 世代別(韓国人)
50 代 /6 名
10 代 /4 名
40 代 /
5名
10 代 /10 名
30 代 /8 名
20 代 /40 名
20 代 /37 名
3.3. 調査時期と調査方法
アンケート調査を実施した期間は,2011 年 11 月末から 12 月末までの 1ヵ月である。日本人からの
調査方法については,筆者が本学の学生にアンケート用紙を手渡し,記入して頂いた。それに加えて,
他大学の日本人学生にも協力を仰ぎ,調査を実施した。韓国人からの調査方法については,筆者が本
─ 82 ─
学の留学生や近隣に暮らす方々にアンケート用紙を手渡し,回答して頂いた。また,本学の韓国人の
在学生と卒業生からも協力を得て,調査を実施した。以上が,本稿におけるアンケート調査の概要で
ある。
第 4 章では,アンケート調査の結果を比較及び考察することとする。
第 4 章 調査結果の分析と考察
ここでは,第 2 章で述べた先行研究の結果を踏まえ,日本人と韓国人を対象に実施したアンケート
調査の結果を,それぞれ比較及び考察することとする。
4.1. 調査結果の分析と考察
本調査は,金山(1983)
,権(2003)
,権(2005)他の先行研究を参考にし,アンケート用紙を作成
した。したがって,以降の節では,本調査の日本人と韓国人の回答結果とを比較すると共に,第 2 章
で概観した先行研究の調査結果とも照らし合わせながら,日本と韓国の非言語コミュニケーションの
共通点と相違点を分析していくこととする。
まず初めに,
「
(1)手で口を覆う」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.2. 「
(1)手で口を覆う」の調査結果
以下に掲載した 2 枚の写真が,
「
(1)手で口を覆う」の示す意味を回答してもらう上で,被験者に
見てもらった写真である。写真 A は笑顔の状態で口を覆う様子,写真 B は驚いた顔で口を覆う様子
である。これらの写真は,金山(1983)
,東山・Ford(2003)が調査に使用したイラストを参考にし,
写真を撮影した。
「
(1)手で口を覆う」の写真A
「(1)手で口を覆う」の写真B
「(1)手で口を覆う」の調査結果は,次の通りである(表 4-A と表 4-B)。なお,棒グラフの横と円
グラフの中央にある数字は,
「選択者数」と「全体から見た割合」である。
表 4-C は,「その他」の詳しい内訳である。
「ほぼ同義の意味」であると感じられた回答は,筆者の
判断で 1 つにまとめた。また,複数回答可のため,「その他」の「選択者数」と「回答数」とが一致
しない場合もある(例:表 4-B の選択者は 9 名,回答数は 11 件)。
─ 83 ─
表 4-D は,
『
「
(1)手で口を覆う」を普段使用しますか』と言う質問の回答結果である。
以降の「
(3)人差し指で鼻を指す」
,
「
(6)手の平を胸に当てる」,「(7)人差し指を交差させる」の
調査結果に掲載した,
「表 6-A,表 6-B,表 9-A,表 9-B,表 10-A,表 10-B」に関して,それぞれの
縦の大きさがその他の表とは異なるのは,1 ページの中に情報を出来る限り集約し,調査結果を比較
し易い様にしたためである。
表 4-A 「
(1)手で口を覆う」が示す意味(日本人の回答結果)
驚き
48 名 /60%
14 名 /17%
自己制止[口を滑らせたとき]
笑いをこらえる
笑いを上品に見せる
焦り,戸惑い,困惑
不安
その他
分からない
5 名 /6%
3 名 /4%
3 名 /4%
0 名 /0%
6名
(回答数6件)18%
1 名 /1%
「(1)手で口を覆う」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表 4-A)。最も選択者
数が多かった意味から「驚き」
(48 名 / 60%)
,
「自己制止[口を滑らせたとき]」(14 名 / 17%),「笑
いをこらえる」
(5 名 / 6%)
「笑いを上品に見せる」及び「焦り,戸惑い,困惑」
,
(3 名 / 4%),
「不安」
(0
名 / 0%)の順である。
「その他」については(6 名:回答数 6 件 / 8%),
「分からない」については(1
名 / 1%)である。
表 4-B 「
(1)手で口を覆う」が示す意味(韓国人の回答結果)
42 名 /51%
驚き
笑いをこらえる
自己制止[口を滑らせたとき]
笑いを上品に見せる
焦り,戸惑い,困惑
不安
その他
分からない
13 名 /16%
6 名 /7%
5 名 /6%
4 名 /5%
2 名 /2%
9 名(回答数 11 件)11%
2 名 /2%
「(1)手で口を覆う」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表 4-B)。最も選択者
数が多かった意味から「驚き」
(42 名 / 51%)
,
「笑いをこらえる」
(13 名 / 16%)
,
「自己制止[口を
滑らせたとき]」(6 名 / 7%)
,
「笑いを上品に見せる」
(5 名 / 6%)
,
「焦り,戸惑い,困惑」
(4 名 /
5%)
,
「不安」
(2 名 / 2%)の順である。
「その他」については(9 名:回答数 11 件 / 11%),「分から
ない」については(2 名 / 2%)である。
─ 84 ─
表 4-C 「(1)手で口を覆う」が示す「その他」の意味
日本人の回答結果
韓国人の回答結果
・あくびをしている
(4 件)
・あくびをしている
(4 件)
・あくびを隠す
・写真用の顔
(1 件)
(1 件)
・かわいい振り
・かわいい
・笑いを隠す
・手を自慢している
・爪を手入れしたとき
・自分で写真を撮る
(2 件)
(1 件)
(1 件)
(1 件)
(1 件)
(1 件)
「
(1)手で口を覆う」の「その他」の回答結果は,表 4-C の通りである。日本人の回答結果で,回
答数の多い意味から「あくびをしている」
(4 件)
,
「あくびを隠す・写真用の顔」(1 件)の順である。
それに対して,韓国人の回答結果は,
「あくびをしている」(4 件),「かわいい振り」(2 件),「かわい
い・笑いを隠す・手を自慢している・爪を手入れしたとき・自分で写真を撮る」(1 件)の順である。
表 4-D 『
「
(1)手で口を覆う」を普及しますか』
(左:日本人,右:韓国人)
19 名 /38%
31 名 /52%
31 名 /
62%
はい
いいえ
はい
29 名 /48%
いいえ
『「
(1)手で口を覆う」を普段使用しますか』の回答結果は,表 4-D の通りである。日本人の回答は,
「はい」が 19 名(38%)
,
「いいえ」が 31 名(62%)である。一方で,韓国人の回答は,「はい」が 29
名(48%)
,
「いいえ」が 31 名(52%)である。
次の節では,
「
(1)手で口を覆う」の調査結果を比較及び考察していく。
4.3. 「
(1)手で口を覆う」の調査結果の比較と考察
「(1)手で口を覆う」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓国人の回答結
果を比較すると,
「自己制止[口を滑らせたとき]
」,「笑いをこらえる」の順位が逆ではあったが,そ
れ以外の項目であまり大きな違いは見受けられない。上記の順位の違いについては,どちらの写真に
注目するのかによって,生じた結果であると推測する。
「その他」の意味に関しては,両国ともに「あくびをしている」との回答が多かった。また,日本
人の回答結果の「写真用の顔」の意味を「かわいく見せるための顔」であると捉えるならば,韓国人
の回答結果の
「かわいい振り」
「かわいい」
,
とも一致する。そのため,主に女性が使用するジェスチャー
として,認識されていることが推察される。
─ 85 ─
先行研究との比較について,日本人の回答結果は,「自己制止[口を滑らせたとき]」,「笑いをこら
える」
,
「笑いを上品に見せる」が 30% 未満であったこと,
「不安」の選択者数が 0 名であったこと,
「そ
の他」の意味として「あくびをしている」を挙げていたことなどが異なったが,それらを除く「
(1)
手で口を覆う」が示す意味については,金山(1983),東山・Ford(2003)の先行研究の結果とほと
んど同じ調査結果となった。一方で,韓国人の回答結果は,金山(1983)によれば,特に意味はない
とされていたのだが,今回の調査から,日本人の認識とあまり違いがないことが明らかとなり,異な
る調査結果となった。
『「
(1)手で口を覆う」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,日本の使用する
割合よりも韓国人の使用する割合の方が 10% 高く,それに加えて,日本人の約 3 人に 1 人,韓国人
の約 2 人に 1 人が,日常的に使用していることが読み取れる。ところで,「はい」と回答した割合と
「いいえ」と回答した割合が,日本でも韓国でも 50% に近い数字となった理由は,回答者の男女比が
50% ずつであったためであると考えられる。
次の節では,
「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.4. 「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の調査結果
以下に掲載した写真が,
「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の示す意味を回答してもらう上で,被
験者に見てもらった写真である。この写真は,金山(1983),権(2003)が調査に使用したイラスト
を参考にし,写真を撮影した。
「(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の写真
「(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の調査結果は,次の通りである(表 5-A~表 5-D)
。なお,表を
掲載する順番は「
(1)手で口を覆う」の調査結果と同様である。
─ 86 ─
表 5-A 「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」が示す意味(日本人の回答結果)
27 名 /54%
くさい,におう
頭がおかしい
その他
0 名 /0%
1 名(回答数1件)2%
分からない
22 名 /44%
「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表
5-A)。それぞれの項目の詳しい内訳は,
「くさい,におう」(27 名 / 54%),「頭がおかしい」(0 名 /
0%)である。
「その他」については(1 名:回答数 1 件 / 2%)
,
「分からない」については(22 名 /
44%)である。
表 5-B 「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」が示す意味(韓国人の回答結果)
くさい,におう
頭がおかしい
その他
47 名 /73%
3 名 /5%
4名
(回答数4件)
6%
分からない
10 名 /16%
「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表
5-B)
。それぞれの項目の詳しい内訳は,
「くさい,におう」(47 名 / 73%),「頭がおかしい」(3 名 /
5%)である。
「その他」については(4 名:回答数 4 件 / 6%)
,
「分からない」については(10 名 /
16%)である。
表 5-C 「(2)人差し指と中指で鼻を挟む」が示す「その他」の意味
日本人の回答結果
韓国人の回答結果
・わさびなどで鼻がツーンとしたとき
(1 件)
・鼻がつまる
・友達同士のいたずら
・悪口
・よく見て
(1 件)
(1 件)
(1 件)
(1 件)
「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の「その他」の回答結果は,表 5-C の通りである。日本人の回
答結果は,
「わさびなどで鼻がツーンとしたとき」
(1 件)である。それに対して,韓国人の回答結果は,
「鼻がつまる・友達同士のいたずら・悪口・よく見て」(1 件)である。
─ 87 ─
表 5-D 『「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」を普段使用しますか』(左:日本人,右:韓国人)
5 名 /10%
18 名 /30%
42 名 /70%
45 名 /90%
はい
いいえ
はい
いいえ
『「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」を普段使用しますか』の回答結果は,表 5-D の通りである。日
本人の回答は,
「はい」が 5 名(10%)
,
「いいえ」が 45 名(90%)である。一方で,韓国人の回答は,
「はい」が 18 名(30%)
,
「いいえ」が 42 名(70%)である。
次の節では,
「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の調査結果を比較及び考察していく。
4.5. 「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の調査結果の比較と考察
「(2)人差し指と中指で鼻を挟む」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓
国人の回答結果を比較すると,日本人の回答結果は,
「くさい,におう」
,
「分からない」の選択者数
に大きな違いは見受けられないが,韓国人の回答結果は,
「くさい,におう」の選択者数が大きく上
回る結果となった。それに加えて,
「頭がおかしい」を選択した日本人は 0 名だったことに対して,
韓国人は 3 名だったことも特徴的である。
「その他」の意味に関しては,
「わさびなどで鼻がツーンとしたとき」と「鼻がつまる」を,
「鼻に
何らかの異常が生じた場合」と言う括りでまとめれば,両国の認識に大差はない。ところで,韓国人
からは「友達同士のいたずら」
,
「悪口」と言う回答も挙げられた。そのことから,韓国では「相手を
侮辱する場合」にも用いることが推察できる。
先行研究との比較について,
日本人の回答結果は,
「くさい,におう」の意味を示し,その効果域は[c]
であると述べていた金山(1983)の先行研究の結果と同じ調査結果となった。一方で,韓国人の回答
結果は,
「頭がおかしい」を選択した韓国人が僅かながらも存在する点では,「頭がおかしい」の意味
を示すと言及していた権(2003)と同じ調査結果となった。しかし,「くさい,におう」を選択した
韓国人が多かった点では,
「頭がおかしい」の意味を示すとだけ論じていた権(2003)と異なる調査
結果となった。また,特に意味はないと述べていた金山(1983)の先行研究の結果とも相違する調査
結果となった。
『「
(2)人差し指と中指で鼻を挟む」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,韓
国人の使用する割合の方が 20% 高く,約 3 人に 1 人が日常的に使用していることが読み取れる。そ
して,日本人の約 50% が「くさい,におう」を選択したにも関わらず,普段使用するかと言う質問
に「はい」と回答した人数が,10% だけと少なかった理由については,日本では「親指と人差し指
─ 88 ─
で鼻を挟む」が「くさい,におう」の意味を表すことから,そのジェスチャーを手掛りに意味を想定
し,回答したためであると推測する。
次の節では,
「
(3)人差し指で鼻を指す」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.6. 「
(3)人差し指で鼻を指す」の調査結果
以下に掲載した写真が,
「
(3)人差し指で鼻を指す」の示す意味を回答してもらう上で,被験者に
見てもらった写真である。この写真は,金山(1983),Morris・東山(1999),東山・Ford(2003)
が調査に使用したイラストを参考にし,写真を撮影した。
「(3)人差し指で鼻を指す」の写真
「(3)人差し指で鼻を指す」の調査結果は,次の通りである(表 6-A~表 6-D)。
表 6-A 「
(3)人差し指で鼻を挟む」が示す意味(日本人の回答結果)
50 名 /100%
私,自分
その他
0 名 /0%
分からない
0 名 /0%
「
(3)人差し指で鼻を指す」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表 6-A)
。そ
れぞれの詳しい内訳を見ていくと,
「私,自分」
(50 名 / 100%)である。「その他」については(0 名
/ 0%)
,
「分からない」については(0 名 / 0%)である。
表 6-B 「
(3)人差し指で鼻を挟む」が示す意味(韓国人の回答結果)
50 名 /81%
私,自分
その他
分からない
3 名(回答数4件)5%
9 名 /14%
─ 89 ─
「(3)人差し指で鼻を指す」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表 6-B)。それ
ぞれの詳しい内訳を見ていくと,
「私,自分」
(50 名 / 81%)である。「その他」については(3 名:
回答数 4 件 / 5%)
,
「分からない」については(9 名 / 14%)である。
表 6-C 「(3)人差し指で鼻を指す」が示す「その他」の意味
韓国人の回答結果
・私の鼻
・指示
・日本人が(私)を意味する
(2 件)
(1 件)
(1 件)
「
(3)人差し指で鼻を指す」の「その他」の回答結果は,表 6-C の通りである。日本人の回答結果
は 0 件である。それに対して,韓国人の回答結果で,回答数の多い意味から「私の鼻」(2 件),
「指示・
日本人が(私)を意味する」
(1 件)の順である。
表 6-D 『「(3)人差し指で鼻を指す」を普段使用しますか』
(左:日本人,右:韓国人)
17 名 /34%
31 名 /52%
29 名 48%
33 名 /66%
はい
いいえ
はい
いいえ
『「
(3)人差し指で鼻を指す」を普段使用しますか』の回答結果は,表 6-D の通りである。日本人の
回答は,
「はい」が 33 名(66%)
,
「いいえ」が 17 名(34%)である。一方で,韓国人の回答は,
「はい」
が 29 名(48%)
,
「いいえ」が 31 名(52%)である。
次の節では,
「
(3)人差し指で鼻を指す」の調査結果を比較及び考察していく。
4.7. 「
(3)人差し指で鼻を指す」の調査結果の比較と考察
「(3)人差し指で鼻を指す」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓国人の
回答結果を比較すると,日本人の回答者は,全員が「私,自分」と回答した。それに対して,韓国人
の回答者は,約 80% が「私,自分」と回答し,残りの約 20% は「その他」
,
「分からない」と回答し
たため,韓国人同士の認識にもばらつきが見受けられる。その様な回答の違いが生じた理由は,回答
者の世代が幅広かったためであると推測する。
「その他」の意味に関しては,2 名の韓国人が「私の鼻」の意味であると回答した。また,記載し
た注意事項にはそぐわないが,1 名の韓国人は「日本人が(私)を意味する」と回答した。それらの
回答結果から,このジェスチャーは韓国では元々用いられておらず,馴染みのない韓国人も存在する
ことが推察できる。それに加えて,
「
(3)人差し指で鼻を指す」に対して,「日本人のジェスチャー」
─ 90 ─
と言う印象を抱いている様子も窺える。
先行研究との比較について,日本人の回答結果は,
「私,自分」が 60% 以上であったことを除けば,
「私,
自分」の意味を示すと論じていた金山(1983)
,権(2005),Morris・東山(1999),東山・Ford(2003)
の先行研究の結果とほとんど同じ調査結果となった。一方で,韓国人の回答結果は,金山(1983)に
よれば,特に意味はないとされていたのだが,今回の調査から,多数の韓国人が「私,自分」の意味
として認識していることが明らかとなり,異なる調査結果となった。ところで,このジェスチャーが
韓国でいつから普及し始めたのかは,明らかにすることができなかったが,近年の国際化の流れが,
このジェスチャーに対する認識に影響を与え,今回の調査結果にも反映されたのだと推測する。
『「
(3)人差し指で鼻を指す」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,日本人の
使用する割合の方が約 20% 高く,日本人の約 3 人に 2 人,韓国人の約 2 人に 1 人が,日常的に使用
していることが読み取れる。以上の結果から,このジェスチャーの意味が韓国人の間で広まり,使用
する人の割合が増えつつある様子が見て取れる。また,先行研究の結果を踏まえると,約半数の韓国
人が「はい」を選択したことは意外な結果であったが,その理由については,回答者の多くが日本語
の学習歴のある韓国人であったことが推察される。そして,韓国では元々存在しなかったと考えられ
る「
(3)人差し指で鼻を指す」が,日本との文化的交流を通じて,徐々に韓国の文化の一部となりつ
つあるのだとすれば,言語に「外来語」がある様に,非言語にも「外来語」があるのだと推測する。
なお,東山・Ford(2003:140)の日本人がこのジェスチャーを使用する頻度に関する先行研究は,
次の様な調査結果となった(日本人の学生と社会人の男女 100 名を対象に実施したアンケート調査)。
「よく使う」が 39%,
「時々使う」が 48%,
「使わない」が 13% である。「よく使う」と「時々使う」
を本調査の「はい」とするならば,東山・Ford(2003:140)の結果は 87%,本調査の結果は 66%
となり,約 20% の差が見受けられる。
次の節では,
「
(4)親指を下に向ける」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.8. 「
(4)親指を下に向ける」の調査結果
以下に掲載した写真が,
「
(4)親指を下に向ける」の示す意味を回答してもらう上で,被験者に見
てもらった写真である。この写真は,金山(1983),権(2003),東山・Ford(2003)が調査に使用
したイラストを参考にし,写真を撮影した。
「(4)親指を下に向ける」の写真
「(4)親指を下に向ける」の調査結果は,次の通りである(表 7-A~表 7-D)。
─ 91 ─
表 7-A 「
(4)親指を下に向ける」が示す意味(日本人の回答結果)
25 名 /45%
(人を)殺す
最悪,だめ,負ける
22 名 /39%
3名 /5%
こらしめる
下
0名 /0%
いじめる
0名 /0%
4名(回答数4件)
7%
その他
分からない
2名 /4%
「(4)親指を下に向ける」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表 7-A)。最も選
択者数が多かった意味から「
(人を)殺す」
(25 名 / 45%),
「最悪,だめ,負ける」(22 名 / 39%),
「こ
らしめる」
(3 名 / 5%)
「下」及び「いじめる」
,
(0 名 / 0%)の順である。「その他」については(4 名:
回答数 4 件 / 7%)
,
「分からない」については(2 名 / 4%)である。
表 7-B 「
(4)親指を下に向ける」が示す意味(韓国人の回答結果)
最悪,だめ,負ける
51 名 /75%
(人)を殺す
7名 /10%
下
こらしめる
いじめる
4名 /6%
1名 /2%
0名 /0%
その他
分からない
3名(回答数3件)4%
2名 /3%
「(4)親指を下に向ける」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表 7-B)。最も選
択者数が多かった意味から「最悪,
だめ,
負ける」
(51 名 / 75%),
「(人を)殺す」
(7 名 / 10%),
「下」
(4
名 / 6%)
,
「こらしめる」
(1 名 / 2%)
,
「いじめる」
(0 名 / 0%)の順である。「その他」については(3
名:回答数 3 件 / 4%)
,
「分からない」については(2 名 / 3%)である。
表 7-C 「(4)親指を下に向ける」が示す「その他」の意味
日本人の回答結果
・ブーイング
・地獄に落ちろ
韓国人の回答結果
(3 件)
(1 件)
・ブーイング
・非難する
(2 件)
(1 件)
「
(4)親指を下に向ける」の「その他」の回答結果は,表 7-C の通りである。日本人の回答結果で,
回答数の多い意味から「ブーイング」
(3 件)
,
「地獄に落ちろ」(1 件)の順である。それに対して,
韓国人の回答結果は,
「ブーイング」
(2 件)
,
「非難する」(1 件)の順である。
─ 92 ─
表 7-D 『「
(4)親指を下に向ける」を普段使用しますか』
(左:日本人,右:韓国人)
10 名 /
20%
33 名 /
55%
40 名 /
80%
はい
いいえ
はい
27 名 /
45%
いいえ
『
「
(4)親指を下に向ける」を普段使用しますか』の回答結果は,表 7-D の通りである。日本人の
回答は,
「はい」が 10 名(20%)
,
「いいえ」が 40 名(80%)である。一方で,韓国人の回答は,
「はい」
が 27 名(45%)
,
「いいえ」が 33 名(55%)である。
次の節では,
「
(4)親指を下に向ける」の調査結果を比較及び考察していく。
4.9. 「
(4)親指を下に向ける」の調査結果の比較と考察
「(4)親指を下に向ける」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓国人の回
答結果を比較すると,日本人の回答結果は,
「
(人を)殺す」と「最悪,だめ,負ける」の選択者数が
ほとんど同じであったが,韓国人の回答結果は,
「最悪,だめ,負ける」の選択者数が他の項目より
も非常に多かった。それらを踏まえ,両国ともに否定的な意味を表す点は共通しているが,どの様な
否定的な意味であるかについては,多少の認識の違いがあると言える。また,韓国では「下」の意味
も示す点が特徴的である。
「その他」の意味に関しては,日本でも韓国でも,相手を挑発したり,非を責めたりする様な言葉
や内容が回答として挙げられており,あまり大きな違いは見受けられない。
先行研究との比較について,日本人の回答結果は,「下」の選択者数が 0 名であったため,「下」の
意味を示すと言及していた金山(1983)の先行研究の結果と異なる調査結果となった。それに対して,
「失敗,
否定の返事,
否定的評価」の意味を示すと述べていた東山・Ford(2003)とは同じ調査結果となっ
た。一方で,韓国人の回答結果は,
「下」が 6% であったこと,「こらしめる」と「いじめる」の選択
者数が 1 名と 0 名であったことを除けば,
「殺す,
下」の意味を示すと言及していた金山(1983)とも,
「最悪,
だめ,
負ける,
殺す」の意味を示すと論じていた権(2003)とも,ほとんど同じ調査結果となった。
『「
(4)親指を下に向ける」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,韓国人の使
用する割合の方が 25% 高く,日本人の 5 人に 1 人,韓国人の約 2 人に 1 人が,日常的に使用してい
ることが読み取れる。そして,
「はい」を選択した韓国人の割合が,日本人の割合の約 2 倍であるこ
とが見て取れる。これまで概観してきた「
(3)人差し指で鼻を指す」以外の調査結果でも,韓国人の
使用する割合の方が高かったことから,日本人よりも韓国人の方が,ジェスチャーを日常的に用いる
─ 93 ─
傾向があると推察できる。
次の節では,
「
(5)両手を合わせて,開閉する」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.10. 「
(5)両手を合わせて,開閉する」の調査結果
以下に掲載した 3 枚の写真が,
「
(5)両手を合わせて,開閉する」の示す意味を回答してもらう上
で,被験者に見てもらった写真である。これらの写真は,権(2003:46)の『
「お金」の意味を[中
略]両手を合わせて水平の状態で手を開いたり閉じたりして表現する』と言う文言を参考にした。し
かし,その言葉だけからでは,どの様なジェスチャーなのか判断が付かなかったため,そのことを韓
国人に尋ねたところ,写真の動作を 2 回繰り返すことであると教えてもらった。そして,それらを踏
まえ,アンケート用紙に写真 A~C を載せることとした。なお,写真の動作を 2 回繰り返すことにつ
いては,口頭で伝達する,あるいはアンケート用紙に記載することとした。
「
(5)両手を合わせて,開閉する」の写真(左から順に写真 A,B,C)
「(5)両手を合わせて,開閉する」の調査結果は,次の通りである(表 8-A~表 8-D)。
表 8-A 「
(5)両手を合わせて,開閉する」が示す意味(日本人の回答結果)
お金
その他
0名 /0%
8名(回答数8件)
16%
分からない
42 名 /84%
「
(5)両手を合わせて,開閉する」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表
8-A)。それぞれの項目の詳しい内訳は,
「お金」
(0 名 / 0%)である。
「その他」については(8 名:
回答数 8 件 / 16%)
,
「分からない」については(42 名 / 84%)である。
─ 94 ─
表 8-B 「
(5)両手を合わせて,開閉する」が示す意味(韓国人の回答結果)
お金
4名 /7%
その他
12 名(回答数 12 件)20%
分からない
43 名 /73%
「
(5)両手を合わせて,開閉する」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表
8-B)
。それぞれの項目の詳しい内訳は,
「お金」
(4 名 / 7%)である。「その他」については(12 名:
回答数 12 件 / 20%)
,
「分からない」については(43 名 / 73%)である。
表 8-C 「(5)両手を合わせて,開閉する」が示す「その他」の意味
日本人の回答結果
・拍手
・手拍子
・開く
・本を表す
・話の切り替え
韓国人の回答結果
(3 件)
(2 件)
(1 件)
(1 件)
(1 件)
・拍手
・懇願する
・ノートを開く
・犬にお手をさせる
(7 件)
(3 件)
(1 件)
(1 件)
「
(5)両手を合わせて,開閉する」の「その他」の回答結果は,表 8-C の通りである。日本人の回
答結果で,
回答数の多い意味から「拍手」
(3 件)
「手拍子」(2 件),
,
「開く・本を表す・話の切り替え」(1
件)の順であるのに対し,韓国人の回答結果は,
「拍手」(7 件),
「懇願する」(3 件),
「ノートを開く・
犬にお手をさせる」
(1 件)の順である。
表 8-D 『「
(5)両手を合わせて開閉する」を普段使用しますか』
(左:日本人,右:韓国人)
5名 /
10%
7名 /
12%
45 名 /90%
はい
53 名 /88%
いいえ
はい
いいえ
『「
(5)両手を合わせて,開閉する」を普段使用しますか』の回答結果は,表 8-D の通りである。日
本人の回答は,
「はい」が 5 名(10%)
,
「いいえ」が 45 名(90%)である。一方で,韓国人の回答は,
─ 95 ─
「はい」が 7 名(12%)
,
「いいえ」が 53 名(88%)である。
次の節では,
「
(5)両手を合わせて,開閉する」の調査結果を比較及び考察していく。
4.11. 「
(5)両手を合わせて,開閉する」の調査結果の比較と考察
「(5)両手を合わせて,開閉する」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓
国人の回答結果を比較すると,
アンケート用紙に載せた写真が分かり難かったためか,両国ともに「分
からない」の選択者数が非常に多い結果となってしまった。
ところで,
「お金」と選択した日本人は 0 名だったことに対して,韓国人は 4 名だったことが特徴
的である。
「お金」と回答した韓国人に選択理由を尋ねたところ,身近な人やテレビの出演者などが,
「お金」を表現するために,このジェスチャーを使用する様子を見掛けたことがあるためだと述べて
いた。
「
(5)両手を合わせて,
開閉する」が「お金」を示す理由について,日本では神社で参拝する際,
両手を叩く習慣があるのと同様,
韓国でも同じ様な習慣があるのだと推測する。そして,
「参拝する(拝
む,祈る,願う)
」の意味から,
「金銭的な援助を願う」の意味としても使用される様になったのだと
推察する。
「その他」の意味に関しては,
日本でも韓国でも「拍手」との回答が最も多かった。それに加えて,
「話
の切り替え」や「犬にお手をさせる」などの回答も挙げられた。前者の回答については,相手の注意
を引き付け,本題に入ろうとするとき,このジェスチャーを見掛けることがある。また,後者の回答
については,日本で「犬にお手をさせる」ときに用いるかは定かではないが,動物を呼ぶときに,こ
のジェスチャーを見掛けることがある。そのため,「動物にある行動を促す」と言う括りで捉えるな
らば,ほぼ同義である。
先行研究との比較について,韓国人の回答結果は,
「お金」の選択者数が僅かであったため,
「お金」
の意味を示すと述べていた権(2003)の文言と異なる調査結果となった。
『「
(5)両手を合わせて,開閉する」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,日
本人と韓国人の多くの回答者が,このジェスチャーの示す意味について「分からない」と回答したた
め,
「いいえ」と回答した割合も多くなったことが読み取れる。
今後,今回の様な調査を行う場合には,写真の提示の仕方を更に吟味する必要がある。
次の節では,
「
(6)手の平を胸に当てる」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.12. 「
(6)手の平を胸に当てる」の調査結果
以下に掲載した写真が,
「
(6)手の平を胸に当てる」の示す意味を回答してもらう上で,被験者に
見てもらった写真である。この写真は,金山(1983),東山・Ford(2003)が調査に使用したイラス
トを参考にし,写真を撮影した。
─ 96 ─
「(6)手の平を胸に当てる」の写真
「(6)手の平を胸に当てる」の調査結果は,次の通りである(表 9-A~表 9-D)。
表 9-A 「
(6)手の平を胸に当てる」が示す意味(日本人の回答結果)
安心,安堵の気持ち
34 名 /54%
私
驚き
その他
分からない
22 名 /35%
5名 /8%
0名 /0%
2名 /3%
「(6)手の平を胸に当てる」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表 9-A)。最も
選択者数が多かった意味から「安心,安堵の気持ち」(34 名 / 54%),
「私」(22 名 / 35%),
「驚き」(5
名 / 8%)の順である。
「その他」については(0 名 / 0%)
,
「分からない」については(2 名 / 3%)
である。
表 9-B 「
(6)手の平を胸に当てる」が示す意味(韓国人の回答結果)
安心,安堵の気持ち
36 名 /48%
私
驚き
その他
分からない
29 名 /39%
5名 /7%
1名
(回答数1件)1%
4名 /5%
「(6)手の平を胸に当てる」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表 9-B)。最も
選択者数が多かった意味から「安心,安堵の気持ち」(36 名 / 48%),
「私」(29 名 / 39%),
「驚き」(5
名 / 7%)の順である。
「その他」については(1 名:回答数 1 件 / 1%),
「分からない」については(4
名 / 5%)である。
─ 97 ─
表 9-C 「(6)手の平を胸に当てる」が示す「その他」の意味
韓国人の回答結果
・待たせる
(1 件)
「(6)手の平を胸に当てる」の「その他」の回答結果は,表 9-C の通りである。日本人の回答結果は,
0 件であるのに対し,韓国人の回答結果は,
「待たせる」(1 件)である。
表 9-D 『「
(6)手の平を胸に当てる」を普段使用しますか』
(左:日本人,右:韓国人)
15 名 /25%
22 名 /
44%
はい
28 名 /
56%
45 名 /
75%
いいえ
はい
いいえ
『「
(6)手の平を胸に当てる」を普段使用しますか』の回答結果は,表 9-D の通りである。日本人の
回答は,
「はい」が 28 名(56%)
,
「いいえ」が 22 名(44%)である。一方で,韓国人の回答は,
「はい」
が 45 名(75%)
,
「いいえ」が 15 名(25%)である。
次の節では,
「
(6)手の平を胸に当てる」の調査結果を比較及び考察することとする。
4.13. 「
(6)手の平を胸に当てる」の調査結果の比較と考察
「(6)手の平を胸に当てる」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓国人の
回答結果を比較すると,
それぞれの項目の選択者数がほとんど一致することが見て取れる。そのため,
日本人も韓国人も,共通の認識を持っていることが窺える。
「その他」の意味に関しては,1 名の韓国人が「待たせる」の意味であると回答した。その様な回
答が挙げられた理由については,上記に掲載した写真を見て,期待する気持ちや不安な気持ちを落ち
着かせ,何かを待っている様子を想像したためであると推測する。
先行研究との比較について,日本人の回答結果は,それぞれの選択肢の割合が 10% 以上 30% 未満
ではなかったこと,5 名の日本人が「驚き」を選択したことを除けば,
「安心,私,驚き」などの意
味を示すと言及していた金山(1983)の先行研究の結果とも,「安心,安堵の気持ち」の意味を示す
と論じていた東山・Ford(2003)の先行研究の結果とも,ほとんど同じ調査結果となった。一方で,
韓国人の回答結果は,
金山(1983)によれば,
特に意味はないとされており,権(2005)によれば,
「私」
の意味を示すとされていた。しかし,今回の調査から,「私」の意味の他にも「安心,安堵の気持ち」
や「驚き」の意味として,韓国人が認識していることが明らかとなり,異なる調査結果となった。
─ 98 ─
『「
(6)手の平を胸に当てる」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,韓国人の
使用する割合の方が約 20% 高く,日本人の約 2 人に 1 人,韓国人の 4 人に 3 人が,日常的に使用し
ていることが読み取れる。そして,7 種類のジェスチャーの中では,「はい」と回答した日本人と韓
国人の割合が,2 番目と 1 番目に高いことが言える。
なお,東山・Ford(2003:30)の日本人がこのジェスチャーを使用する頻度に関する調査結果は,
次の通りである。「よく使う」が 13%,
「時々使う」が 44%,
「使わない」が 43% である。
「よく使う」
と「時々使う」を本調査の「はい」とするならば,東山・Ford(2003:140)の結果は 57%,本調査
の結果は 56% となり,ほとんど同じ割合である。
次の節では,
「
(7)人差し指を交差させる」の意味に関する調査結果を見ていく。
4.14. 「
(7)人差し指を交差させる」の調査結果
以下に掲載した写真が,
「
(7)人差し指を交差させる」の示す意味を回答してもらう上で,被験者
に見てもらった写真である。この写真は,金山(1983)が調査に使用したイラストを参考にし,写真
を撮影した。
「(7)人差し指を交差させる」の写真
「(7)人差し指を交差させる」の調査結果は,次の通りである(表 10-A~表 10-D)
。なお,すでに
記載されている選択肢の意味とほぼ同義であると感じられる意味が,
「その他」の意味として記述さ
れている場合があったが,筆者の判断で,いずれかの選択肢の人数に加えた。
表 10-A 「
(7)人差し指を交差させる」が示す意味(日本人の回答結果)
だめ,失敗,間違い
[値]
名 /39%
罰(ばつ)
とめる,やめる,休憩
喧嘩(けんか)
その他
分からない
42 名 /73%
10 名 /7%
3名 /5%
0名 /0%
0名 /0%
3名 /5%
「(7)人差し指を交差させる」が示す意味の日本人の回答結果は,以上の通りである(表 10-A)。
それぞれの詳しい内訳を見ていくと,
「だめ,失敗,間違い」(42 名 / 73%),
「罰」(10 名 / 17%),
「と
める,やめる,休憩」
(3 名 / 5%)
,
「喧嘩」
(0 名 / 0%)の順である。「その他」については(0 名 /
─ 99 ─
0%)
,
「分からない」については(3 名 / 5%)である。
表 10-B 「
(7)人差し指を交差させる」が示す意味(韓国人の回答結果)
だめ,失敗,間違い
とめる,やめる,休憩
罰(ばつ)
喧嘩(けんか)
その他
分からない
38 名 /59%
6名 /9%
1名 /2%
0名 /0%
9名(回答数 11 件)
/14%
10 名 /16%
「(7)人差し指を交差させる」が示す意味の韓国人の回答結果は,以上の通りである(表 10-B)。
それぞれの詳しい内訳を見ていくと,
「だめ,失敗,間違い」(38 名 / 59%),
「とめる,やめる,休憩」
(6 名 / 9%)
,
「罰」
(1 名 / 2%)
,
「喧嘩」
(0 名 / 0%)の順である。「その他」については(9 名:回
答数 11 件 / 14%)
,
「分からない」については(10 名 / 16%)である。
表 10-C 「(7)人差し指を交差させる」が示す「その他」の意味
韓国人の回答結果
・違う
・否定
・~がない,~がいない
・~をしない様に勧める
・~を使わない
(5 件)
(3 件)
(1 件)
(1 件)
(1 件)
「
(7)人差し指を交差させる」の「その他」の回答結果は,表 10-C の通りである。日本人の回答結
果は 0 件である。それに対して,韓国人の回答結果は,回答数の多い意味から「違う」(5 件),
「否定」
(3 件)
「~がない,~がいない・~しない様に勧める・~を使わない」(1 件)の順である。
表 10-D 『
「(7)人差し指を交差させる」を普段使用しますか』
(左:日本人,右:韓国人)
33 名 /
66%
はい
17 名 /
34%
27 名 /
45%
いいえ
はい
33 名 /
55%
いいえ
『「(7)人差し指を交差させる」を普段使用しますか』の回答結果は,表 10-D の通りである。日本
人の回答は,
「はい」が 17 名(34%)
,
「いいえ」が 33 名(66%)である。一方で,韓国人の回答は,
「は
─ 100 ─
い」が 33 名(55%)
,
「いいえ」が 27 名(45%)である。
次の節では,
「
(7)人差し指を交差させる」の調査結果を比較及び考察していく。
4.15. 「
(7)人差し指を交差させる」の調査結果の比較と考察
「(7)人差し指を交差させる」は,どの様な意味を示すのかと言う質問に対する,日本人と韓国人
の回答結果を比較すると,
両国ともに
「だめ,
失敗,
間違い」と回答した人数が最も多かった。また,
「罰」,
「とめる,
やめる,
休憩」の順位が逆であることも見て取れる。それに加えて,日本でも韓国でも「喧嘩」
の選択者数が 0 名であった点も特徴的である。ところで,日本人の回答結果において,
「罰」の選択
者数が 10 名であった理由については,
筆者が作成したアンケート用紙に「罰」ではなく「罰(ばつ)」
と記載したことによって,
「罰する」としてではなく,「バツ」の意味として捉えた日本人がいたため
であると推測する。
「その他」の意味に関しては,記載した選択肢と同様,否定的な言葉や内容が回答として挙げられ
ており,肯定的な意味のジェスチャーではないと言う認識であることが窺える。
先行研究との比較について,日本人の回答結果は,
「だめ,失敗,間違い」の割合が 60% 以上であっ
たこと,「喧嘩」の選択者数が 0 名であったことが異なったが,それらを除く「(7)人差し指を交差
させる」が示す意味については,金山(1983)の先行研究の結果や,権(2004)の文言とほとんど同
じ調査結果となった。一方で,韓国人の回答結果は,金山(1983)
,権(2004)によれば,
「とめる,
やめる,休憩」の意味を示すとされていたのだが,今回の調査から,
「とめる,やめる,休憩」の選
択者数が僅かであったことに加え,
「だめ,失敗,間違い」の意味として,韓国人が認識しているこ
とが明らかとなり,異なる調査結果となった。
『
「(7)人差し指を交差させる」を普段使用しますか』と言う質問に対する回答結果からは,韓国
人の使用する割合の方が約 20% 高く,日本人の約 3 人 1 人,韓国人の約 2 人に 1 人が,日常的に使
用していることが読み取れる。なお,これまで概観してきた 7 種類中 6 種類のジェスチャーについて
は,韓国人の使用する割合の方が高いと言う結果となった。
次の節では,これまでに概観してきた調査結果のまとめを述べることとする。
4.16. 第 4 章のまとめ
第 4 章の「ジェスチャーに関するアンケート調査」の結果を一覧表にまとめた(表 11)。なお,
「全
体から見た割合」が 5% 以上,
または「回答数」が 3 件以上の意味だけを記載した。[ ]内の数字が,
「全体から見た割合」
,
あるいは「回答数」である。また,表の中央にある( )内の数字は,
「そのジェ
スチャーを普段使用しますか」と言う質問に,
「はい」と回答した人数の割合である(左が日本人の
割合,右が韓国人の割合)
。
─ 101 ─
表 11 「本調査結果のまとめ」
日本での意味
ジェスチャー
韓国での意味
・驚き
[60%]
手で口を覆う
・驚き
[51%]
・自己制止
・笑いをこらえる
・あくびをしている
[17%]
[6%]
[4件]
(38%/48%)
・笑いをこらえる
・自己制止
・笑いを上品に見せる
・焦り,戸惑い,困惑
・あくびをしている
[16%]
[7%]
[6%]
[5%]
[4件]
・くさい,におう
[54%]
人差し指と中指で鼻を挟む
(10%/30%)
・くさい,におう
・頭がおかしい
[73%]
[5%]
[100%]
人差し指で鼻を指す
(66%/48%)
・私,自分
[81%]
・(人を)殺す
・最悪,だめ,負ける
・こらしめる
・ブーイング
[45%]
[39%]
[5%]
[3件]
親指を下に向ける
(20%/45%)
・拍手
[3件]
両手を合わせて,開閉する
(10%/12%)
・私,自分
・最悪,だめ,負ける [75%]
・(人を)殺す
[10%]
・下
[6%]
・お金
・拍手
・懇願する
[7%]
[7件]
[3件]
・安心,安堵の気持ち [54%]
・私
[35%]
・驚き
[8%]
手の平を胸に当てる
(56%/75%)
・安心,安堵の気持ち [48%]
・私
[39%]
・驚き
[7%]
・だめ,失敗,間違い [73%]
・罰(ばつ)
[17%]
・とめる,やめる,休憩[5%]
人差し指を交差させる
(34%/55%)
・だめ,失敗,間違い [59%]
・とめる,やめる,休憩[9%]
・違う
[5件]
・否定
[3件]
表 11 を見ていくと,
「手で口を覆う」
,
「人差し指で鼻を指す」,「手の平を胸に当てる」の意味につ
いては,先行研究の調査結果をまとめた表 1 とあまり大きな違いは見受けられない。一方で,
「人差
し指と中指で鼻を挟む」
,
「親指を下に向ける」
,
「両手を合わせて,開閉する」,「人差し指を交差させ
る」の意味については,違いがあることが読み取れる。
また,7 種類中 6 種類のジェスチャーは,韓国人の使用する割合の方が高かったため,日本人より
も韓国人の方が,ジェスチャーを日常的に用いる傾向があると推察できる。
なお,日本人と韓国人のジェスチャーを使用する割合については,第 2 章で概観した先行研究の調
査対象が,ジェスチャーの意味だけであったため,論じられてはいなかった。
以上の結果の様に,本稿の調査対象である 7 種類のジェスチャーを通じて,日本と韓国における
非言語コミュニケーションの共通点と相違点を明らかにすることができた。ところで,金山(1983),
権(2005)は,文化的な共通点が多い日本と韓国においても,文化の一部であるジェスチャーに,微
細ながらも異なる点が確実に存在すると述べていた。その文言の通り,本調査の結果も日本と韓国の
微細な文化の違いを反映したものとなった。
─ 102 ─
次の章では,本稿のまとめ及び今後の課題について述べることとする。
第 5 章 まとめ
この章では,本稿のまとめ及び今後の課題について述べることとする。
5.1. 本稿のまとめ
本稿では,「異文化間コミュニケーション論」での学習内容や韓国人の方々との異文化交流をきっ
かけに関心を持ち始めた,
「日本と韓国のジェスチャー」について述べてきた。
まず第 1 章では,西原(1995)
,喜多(2002)
,小池(2009)他の先行研究をもとに,ジェスチャー
の定義,機能,イメージについて概観した。
次に第 2 章では,
金山
(1998)
,
権
(2003)
,
権
(2005)他の先行研究をもとに,日本と韓国のジェスチャー
及び各々のジェスチャーが示す意味について述べた。また,それらの先行研究を参考にし,日本と韓
国のジェスチャーに関する一覧表を作成した。その結果,
「手で口を覆う」
,
「人差し指と中指で鼻を
挟む」
,
「人差し指で鼻を指す」
,
「手の平を胸に当てる」,「人差し指を交差させる」が,異なる意味を
示すことが明らかとなった。
そして第 3 章では,第 2 章で概観した先行研究の調査方法と調査内容を参考にし,筆者が作成及び
実施した「ジェスチャーに関するアンケート調査」の概要について言及した。
最後に第 4 章では,本調査の日本人と韓国人の回答結果とを,並びに,先行研究の結果と本調査の
結果とを比較し,どの様な共通点や相違点があるのかを考察した。それに加えて,日本人と韓国人の
回答結果を比較し易い様に,それぞれの回答結果を表にまとめた。
「(1)手で口を覆う」の回答結果に関して,
「自己制止[口を滑らせたとき]
」
,
「笑いをこらえる」
の選択者数が異なることを除けば,あまり大きな違いは見受けられなかった。
「(2)人差し指と中指で鼻を挟む」の回答結果に関して,日本人の回答結果と比較し,韓国人の回
答結果は,
「くさい,におう」の選択者数が非常に多かった。更に,「頭がおかしい」を選択した日本
人は 0 名だったが,韓国人は 3 名だったことが特徴的であった。
「(3)人差し指で鼻を指す」の回答結果に関して,日本人は全員が「私,自分」と回答した。一方で,
韓国人の約 80% は「私,自分」と回答し,残りの約 20% は「その他」,
「分からない」と回答しており,
韓国人同士の意味の認識にも相違があることが読み取れた。
「(4)親指を下に向ける」の回答結果に関して,両国とも否定的な意味を表す点は共通していた。
しかし,どの様な否定的な意味であるのかについて,多少の認識の違いがあることが窺えた。また,
韓国では「下」の意味としても用いられていることが推察される。
「(5)両手を合わせて,開閉する」の回答結果に関して,日本でも韓国でも「拍手」との回答が最
も多かった。それに加えて,
僅かな人数ではあるが,4 名の韓国人が「お金」を選択した結果を踏まえ,
─ 103 ─
韓国では「お金」の意味としても使用されていると推測する。
「(6)手の平を胸に当てる」の回答結果に関して,それぞれの項目の選択者数がほとんど同じであっ
たことから,日本人も韓国人も,共通した認識を持っていることが言える。
「
(7)人差し指を交差させる」の回答結果に関して,どちらの国でも「だめ,失敗,間違い」の選
択者数が最も多かった。その他に,
「罰」と回答した韓国人が日本人よりも少なかったことや,どち
らの結果も「喧嘩」の選択者数が 0 名であったことが見て取れた。
5.2. 今後の課題
本稿の調査を通じて,日本と韓国のジェスチャーに関する,共通点と相違点を明らかにすることが
できた。
しかし,
今回の調査で取り扱ったジェスチャーは 7 種類だけと,非常に限定的な範囲であった。
また,被験者について言えば,権(2003)の先行研究の様に,幅広い世代の男女から,それぞれ同じ
数の回答を得られれば,更に信憑性の高い調査結果を導き出せた様に思われる。以上の様に,本調査
を進める過程で,改善すべき点を発見する機会が多かった。そのことを踏まえ,今後,ジェスチャー
に関する調査を行う際には,それらの課題を解決するのと同時に,より多くのジェスチャーの意味を
検証したいと,筆者は考える。そして,その結果が韓国人と交流を図る上で,少しでも役立つことを
願う。
[謝辞]
本研究を進めるに当たりご指導を頂いた,筆者の演習担当である国際人文学部国際交流学科,林千
賀准教授には大変お世話になりました。また,副査を引き受けて下さった綾部裕子客員教授や貴重な
時間を割いてアンケート調査に快くご協力下さった日本人と韓国人の方々にも,この場をお借りして
感謝の意を表したく存じます。皆様のご支援やご協力のもと,今回の卒業論文を書き終えることがで
きました。本当にありがとうございました。
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─ 106 ─
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─ 107 ─
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─ 110 ─
鈴木大貴「日本と韓国のジェスチャー―アンケート調査をもとに―」
推薦文
林 千賀
鈴木大貴さんは,国際交流学科で学ぶ4年間,留学生との交流を盛んに行ってきた。また,異文化
コミュニケーション関連の授業を通じて,異文化理解を深く学んだ。特に非言語コミュニケーション
に強い関心を持ち,本研究では日本人と韓国人のジェスチャーの相違や共通点を明らかにすることを
目的に,先行研究を消化しつつ,アンケート調査を実施し,独自の結論に至った。
第1章では,ジェスチャーとは何か,先行研究をもとにジェスチャーの定義,機能,イメージにつ
いて概観した。第2章では,日本と韓国のジェスチャー及び,それぞれのジェスチャーが示す意味に
ついて先行研究から概観し,日本と韓国のジェスチャーの異なる意味をまとめた。その結果,
「手で
口を覆う」
,
「人差し指と中指で鼻を挟む」
,
「手のひらを胸に当てる」,「人差し指を交差させる」など
は,日韓で意味が異なることを確認した。そこで,先行研究で明らかになった7つのジェスチャーを
分析対象とし,それらを検証するために調査を行うことにし,日本人と韓国人それぞれ 50 名を対象
にアンケート調査を実施した。第3章ではその調査内容やその方法について述べている。最後に第4
章では,本調査の日本人と韓国人の回答結果と先行研究の結果とを比較し,どの様な共通点や相違点
があるのかを明らかにし,それぞれ考察を深めた。先行研究の調査結果と同様の結果もあったが,中
には先行研究では必ずしも明らかになっていない点なども指摘されている。
本研究論文は,構成や内容も充分であり,論文の書き方やデータの出し方も緻密で完成度が高い。
特に,調査方法やデータの分析方法などが優れており,先行研究の調査結果と比較しながら考察を進
め,独自の見解に到達した点が高く評価できる。今後の課題は,本研究で扱った7種類以外のジェス
チャーを分析・考察することである。鈴木さんは,留学生との交流を通じて問題提起をし,研究を行っ
た。韓国人へのアンケート調査を韓国語で実施するなど,学んだ韓国語を駆使して研究に繋げた。そ
の意味で本論文は,鈴木さんの4年間の集大成とも言えるであろう。
─ 111 ─
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