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金融論A 資料 3 金融市場

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金融論A 資料 3 金融市場
金融論A 資料 3
担当:楠美 将彦 e-mail:[email protected]
http://www.takachiho.ac.jp/˜mkusumi/index.html
3
金融市場
キーワード
CD市場
CP市場
TB・FB市場
相対型取引
アンカバーの金利裁定
アンダーライター業務
インターバンク市場
オープン市場
オプション・プレミアム
カバー付きの金利裁定
為替スワップ取引
為替のリスクヘッジ
為替持高操作
為替レートの決定メカニズム
起債調整
コール・オプション
コール市場
顧客市場
債券現先市場
債券貸借市場
市場型取引
セリング業務
短期金融市場
短期政府証券
長期金融市場
通貨オプション
デ ィーラー業務
手形売買市場
東京オフショア市場
取引所集中義務
日本版ビッグバン
プット・オプション
ブローカー業務
ユーロ円市場
3.1
日本の金融市場の概観
金融市場
表 1: 日本の金融市場
短期金融市場 インターバンク市場
( 市場型取引)
コール市場
手形市場
ド ル・コール市場
オープン市場
債券現先市場
CD 市場
CP 市場
TB・FB 市場
ユーロ市場
東京オフショア市場
債券貸借(レポ )市場
長期金融市場
公社債市場
公社債発行市場
公社債流通市場
株式市場
株式発行市場
株式流通市場
29
金融市場の分類( 期間)
• 短期金融市場( 残存期間が 1 年未満)
短期金融市場(マネー・マーケット )の分類( 市場参加者の範囲)
– インターバンク市場( 銀行間市場)
:金融機関と証券会社のみ参加
– オープン市場( 公開市場)
• 長期金融市場( 残存期間が 1 年以上)
– 証券市場
– 債券市場
証券市場と債券市場
• 発行市場
• 流通市場
金融市場の分類( 金融資産の性格)
相対型の取引市場
個々の顧客が特定の金融機関と一対一で交渉し 、取引内容を決定する市場( 貸出
市場、預貯金市場、など )
市場型の取引市場
不特定多数の市場参加者による競争を通じて、取引条件が決定する市場(オープ
ン市場の大部分)
3.2
3.2.1
短期金融市場(マネーマーケット )
インターバンク市場
インターバンク市場は、金融機関が相互の資金の運用と調達を行う場であり、取引参加者は金融機
関に限定されている。
(コール市場、手形市場、ド ルコール市場( 非居住者は参加できない。オフショ
ア市場創設により減少傾向))
コール市場
• 明治 30 年代に始まる最も古い短期金融市場
• 各種金融機関や証券会社の一時的な資金不足を調整する機能
30
コール・ローン 資金の出し手(信託銀行、地方銀行、保険会社など )からみて、コール市
場に供給する資金
コール・マネー 資金の取り手( 都市銀行など )からみて、コール市場から調達する資金
有担保コール
有担保コールは、担保(日銀適格担保)のもとに行われる取引である。
( 日銀適格担保:日
銀からの借入の担保に使用できるもの( 国債など ))
有担保コールでは、短資会社はデ ィーリング取引( 自己売買取引)を行っている。資金の
取り手( 借りる側)に対するリスクは、短資会社が負う。
無担保コール
無担保コールでは 、短資会社はブローキング取引を行っている。ブローキング取引とは 、
短資会社が、オファー・ビッド 方式における、資金の出し手と取り手の出合いを仲介する取
引である。資金の取り手( 借りる側)に対するリスクは、資金の出し手( 貸す側)が負う。
オファー・ビッド 方式とは、資金の出し手・取り手の双方が 、短資会社に取引条
件( 取引金額・レート・期間など )の提示を行い、条件の合致により出合いが成
立する取引方法
無担保取引が主流( 金融機関の破綻( 昭和 2 年)により長い間有担保のみであった )
1985 年 7 月 自由化・国際化により無担保コール市場が創設→現在では有担保市場の規模
を上回る状況
商品構成
半日物 取引の当日に決済されるもの( 有担保のみ )
翌日物 原則として取引の翌日に決済されるもの
期日( ターム)物 取引日を含め 2 日間以上の確定期間据え置くことを条件とする( 有担
保は 6 日物まで、無担保は1週から1年ものまで ))
翌日物がコール取引の中心 取引形態
短資会社を経由するもの こちらがほとんど
直接に行うもの(ダイレクト ・ディーリング )
31
コール・レート の決定方法:オファー・ビット 方式
市場参加者がその希望する取引条件( 取引期間、取引希望レート、金額など )を短資会社
にオーダー( 注文)を出し 、出し手と取り手の間で取引条件が合致した時点で約定が成立
し 、その条件にしたがって資金の受渡しが行われる方式
無担保コール翌日物金利
• 短期金利市場情勢を敏感に反映
• 日本銀行の金融調節における誘導対象
手形市場
1971 年 5 月にコール市場の比較的期間の長い取引( 1ヶ月以上)を吸収する形で創設
手形オペの導入
1972( 昭和 47 )年、政府の金融調節手段として、手形オペが導入された。
( 手形オペ:日銀と金融機関の間で手形を売買することで行われる金融調節)
売りオペレーション 日銀が手形を売却することで資金を吸収し 、金融引き締め
を行う
買いオペレーション 日銀が手形を買い取ることで資金を供給し 、金融緩和を行う
取引形態
手形金額から満期日までの利息などを控除した金額を売り手に支払う手形割引の形態
売買対象手形
1. 金融機関以外の企業が振り出した優良な商業手形、工業手形および単名手形( 原手形)
2. 国債、政府保証債などの公社債を担保として金融機関が振り出した自己引受・短資会
社あての為替手形( 表紙手形)←こちらが中心
期間以外はコール市場とほとんど 同じ( 手形の期間は最短 1 週間から最長 1 年物までの 15 種類)
現在の手形売買取引は民間と日本銀行との間でのみ行われている(プロパー残高は消滅しつつある)
• 企業の手形取引自体が減少( 無担保コール市場や債券貸借市場(レポ市場)などの台頭のため )
3.2.2
オープン市場
一般の事業法人が自由に参加できる市場
32
債券現先市場
一定期間後( 10 日∼3ヶ月が多い )に 、はじめに定めた一定の価格で債券を買い戻すか 、または売
り戻すことをあらかじめ約束した「条件付き債券売買取引」の市場
実質的:国債などの債券を担保をする短期の資金貸借取引である
証券会社の重要な資金調達手段として、オープン市場で最初に発達した取引( 証券会社は、
売り現先を行うことで資金を調達している)
買い現先( 現先) 資金運用のため
売り現先( 逆現先)資金調達のため
債券保有者による分類(ディーラーか否か )
自己現先
債券デ ィーラーが自己の資金調達のために、自己の保有する債券を担保に、手持
ちの債券を買い戻し条件付で売却する取引
委託現先
債券デ ィーラー以外の売り手が 、その保有債券を債券デ ィーラーを通じて買い戻
し条件付で売却する取引
TB 発行、FB の公募入札開始、有価証券取引税の撤廃などから再び市場規模が拡大している
債券貸借(レポ )市場( repurchase agreements:RP )
• 「買戻し条件付き取引」
:現金を担保に債券を貸し借りする
• 1989( 平成 1 )年に創設された貸債(かしさい)市場を発展させて、1996( 平成 8 )年 4 月に創
設( 貸債市場は、空売りした国債の手当てのために、国債を貸し借りする市場であった。)
• 実態は、債券を担保とした現金の貸付( または借入れ )であり、
「現金担保付き債券貸借取引」
• 債券現先市場にあった税制面の障害( 有価証券取引税、ただし 99 年 4 月廃止)を回避できた
• 米国ではレポ市場が短期金融市場の中核
資金の貸し 手 (債券の借り手)「付利金利−貸借料」のレートで資金を運用する
資金の借り手 (債券の貸し手)「付利金利−貸借料」のコストで資金を借りる
※ 「付利金利−貸借料」のことをレポ金利と呼ぶ( 付利金利とは現金担保からの金利)
債券に品薄感がある場合などの債券の貸借料が高いときには、レポ金利がマイナスとなり、マイナ
ス金利で資金を調達することも実質的に可能となる
33
参考)債券現先取引との違い
債券現先取引 債券を担保に現金を貸し借りする。
( 主に証券会社が自社の債券を担保に資
金を調達する市場)
債券レポ市場 現金を担保に債券を貸し借りする。
( 銀行、証券会社など 、すべての金融機
関が自由に参加できる市場。債券レポ市場は、債券現先市場にかわって市場を拡大さ
せている。)
債券と現金のど ちらに注目しているかの違いだけで、実質は同じ取引である。
CD( Negotiable Certificate of Deposit:譲渡性預金証書)市場
譲渡可能な定期預金である譲渡性預金
• 1979( 昭和 54 )年 5 月に証券会社の債券現先取引に対抗して、自由金利による金融機関の新た
な資金調達の場として創設( 現在は、オープン市場の中で最大規模) • 銀行が企業の余裕資金を吸い上げる手段として考え出された取引
• 現在では主として金融機関による資金運用市場あるいは短期的な資金調達の場として利用される
傾向
• CD の発行主体:預金業務を営む金融機関のみ
• CD の小口発行が容認( 98 年 6 月:5000 万円以上枠の撤廃)
CD の取引方法
無条件売買
買切りないしは売切り
条件付売買( CD 現先) 一定期間後に一定価格での反対売買を約束して行う CD の購入( 売却)取
引( 現在は、こちらが中心)
CP ( Commercial Paper:コマーシャルペーパー)市場
優良な一般企業や金融機関が短期の資金を調達するためにオープン市場で発行する無担保の約束手形
• CP 発行企業は、企業の信用力を反映した金利で資金調達を行うことができる
• 無担保で発行できる(バックアップ・ラインの設定または金融機関による保証を求められるケー
スがある)
• ディーラーが発行企業からCPを引き受けて、投資家に販売する引き受け発行が大部分
• 1987( 昭和 62 )年 11 月に創設。
1989( 平成 1 )年 5 月には、日本銀行による公開市場操作( CP オペレーション )が導入された。
34
• 企業やノンバンクの売掛債権などを証券化して小口化する証券化が進む( ABCP(アセットバッ
ク・コマーシャルペーパー)
:特定の債券を裏付けに発行する CP )
TB・FB 市場
割引短期国債( Treasury Bills:TB ) 1970 年代後半から発行された大量の国債償還に対応するための借換債として発行
国債の、償還・借換えを円滑に行うための資金繰りとして、1986( 昭和 61 )年 2 月か
ら公募入札方式で発行されている。
最低発行単位は 1000 万円、期間は 3ヶ月、6ヶ月、1年、日銀の引き受けは認められ
ない
政府短期債券( Financing Bills:FB ) 国庫の一時的な資金不足を補うための資金繰債として発行
最低発行単位は 1000 万円、期間は 2ヶ月、3ヶ月、従来は日銀がほぼ引き受けていた
1999(平成 11 )年 4 月に、発行条件と買取希望額を公募する公募入札方式へと移行し
ている。
(それ以前は、日銀全額引受から、政府が発行条件を特定して買取希望額を公
募する定率公募発行になっており、応募額が発行額に満たない場合は、日本銀行が引
受けを行っていた。)
TB と FB 政府の債務であるため信用度が高い
( 今後、日本の短期金融市場の中核となるにふさわしい金融商品であると期待される)
政府短期証券 (FB) の統合
• 一般会計が発行する大蔵省証券( 蔵券)
• 食糧管理特別会計が発行する食糧証券( 糧券)
• 外国為替資金特別会計が発行する外国為替資金証券( 為券)
1999( 平成 11 )年 4 月に 3 つを「政府短期証券」として統合
ユーロ円市場
日本以外で取引される円建ての金融資産であるユーロ円が取引される市場
ロンドン 、シンガポール 、香港、ニューヨークなどに市場が存在するが 、ロンドン市場が
ユーロ市場がユーロ円の中心的な市場を形成している
近年の拡大理由
35
1. 国内取引に課せられる各種の規制(たとえば預金準備率)の適用を受けないほか、税制面で有利
( 利子源泉徴収課税の適用外)である
2. 国際金融取引に関する情報やノウハウの集中・蓄積により、リスクの分散、コストの削減が可能
で、革新的な金融商品の開発が容易である
日本の金融機関はユーロ円市場からの円資金調達依存度を高めている
ユーロ円取引
非居住者
1. 海外輸出業者による円建て輸出代金の受け取りなど
2. 円建て貸付けもしくは円建て外債発行代わり金
3. 他国通貨からの転換
居住者
1. 本店勘定を通じる国内店からの海外円送金
2. 国内非金融機関による海外円送金
ユーロ円預金取引中心( 通常はブローカー経由で、金融機関を中心に取引されている)
東京オフショア市場( JOM:Japan Offshore Market )
• 1986( 昭和 61 )年 12 月に国内に特別に設けられた市場 • 非居住者を取引相手として資金の運用、調達を金融・税制上の制約がきわめて少ない自由な環境
下で行うことのできる市場( 金利規制、預金準備規制などがない)
• 内外分離型の市場(ニューヨーク市場と同じ )
( ロンドン市場は一体化している)
税制・金融上の優遇措置
1. 支払利子については源泉所得税を非課税とする
2. 預金保険制度の対象外とする
3. 準備預金制度上の準備率を課さない(ただし 、オフショア勘定から一定勘定への資金
振替残高については準備率を適用する)
取引に参加できる国内の主体
取引相手方
銀行、長期信用銀行、信用金庫、など
非居住者と他のオフショア勘定
実務的には、東京オフショア市場の円建て取引とユーロ円取引とは、一体のものとみなされ 、国内
インターバンク市場の補完的な役割を担っている
36
3.3
3.3.1
証券市場
証券市場の機能
証券市場( 資本市場)
債券や株式などの「有価証券」が新たに発行されたり、すでに発行された有価証券が売買される市
場である。
債券市場 公社債( 国債、地方債、普通社債など )が取引される
株式市場 株式が売買される
債券 企業、政府などの発行主体が通常、長期の資金を調達するために発行する一種の債務証書( 借入
証書)
• 期限がある
• 期中は確定した利子を支払う
• 満期時には元本を償還する
株式 企業( 株式会社)が自己資本を調達するために発行する証券
• 株主は、企業の経営に参加する権利( 株主総会議決権)
• 利益が生じたときには配当を受け取る権利( 利益配当請求権)
毎期の配当は企業業績に応じて変動
• もし 企業を解散するときには残余資産の分配を請求する権利( 残余財産分配請
求権)
• 満期がない
参考)
劣後債 企業が倒産するとき、元利金の支払いが劣後する( 普通社債より高い利子)
優先株 普通株より配当が高い、残余資産を優先的に受け取れる、などの優先権が付与され
ている(ただし 、議決権がないなどの制約も付く)
発行市場
発行される有価証券の募集が行われる市場
証券会社( 引受業者:アンダーライター)の役割
• アド バイザー( 助言者)かつオリジネイター( 起案者)
• 発行主体に証券の種類、期間、発行条件、発行の時期などに関して適切な助言を与え、具体的な
発行の立案を行って発行主体に証券を発行させる
• 不特定多数の投資家に売り捌く(セリング業務)
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• 「残額引受」や「総額引受」によって売れ残るリスクを引受業者自らが負担( 発行額を保証する)
• 売れ残りのリスクの分散を図るため、複数の引受業者が構成する「引受シンジケート団」を組織
する
流通市場( secondary market )
発行された有価証券が売買される市場が流通市場
証券会社の業務
ブローカー業務( 委託売買業務)投資家の自己判断による売買注文に対し 、ほかの反対注
文を仲介する業務であり、証券会社は価格変動のリスクを負わない( 証券の売り手と
買い手の情報を探索し 、取引を円滑に成立させるという仲介サービ ス)
ディーラー業務( 自己売買業務)証券会社みずから一投資家として価格変動リスクを負っ
て有価証券の売買を行う業務のことである。
取引形態
取引所取引 株式については取引所が中心(「市場集中の原則」)
店頭取引( OTC:over the counter )債券の売買については長期国債などを除いて店頭
取引がほとんどを占めている( 債券の銘柄がきわめて多い反面 各銘柄の発行残高が
小さいため )
流通市場で形成される有価証券の価格がその発行価格を規定し 、発行主体の資金調達コストに大き
な影響を及ぼす
発行市場の需給関係によって決定される価格が 、流通市場での価格決定に大きな影響を及ぼす。
→ 両市場のバランスのとれた発達が不可欠
有価証券の保有者が 、いつでもその時々の市場価格で売却できるという厚みと広がりをもった流通
市場が存在しなければ 、その証券を大量に発行することは不可能である
3.3.2
債券市場
国債
• リスク・フリーの資産
• 売却して流動性を確保できる準備資金
• 金利体系のベンチマーク( 指標)
発行方法
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シ団引受方式 国にかわって国債に関する事務を取り扱う日本銀行が金融機関および 証券
会社により構成されるシンジケート団との間で、募集の取り扱いおよび残額引受契約
を結んで国債を発行する方式( 10 年長期利付き国債、5 年中期割引国債)
公募入札方式 多数の応募者による競争入札を通じて発行条件と発行額を決定する方式( 20
年超長期国債、中期利付き国債、短期国債)
価格競争入札コンベンショナル方式
あらかじめクーポン・レート(表面金利)を決定したうえで、入札参加者(応
募者)から発行価格に関する入札申込みをを受け、入札価格( 応募価格)の
高いものから順次割り当て、発行予定額に達するまで募集する発行方式
社債
プロポーザル方式 もっとも有利な条件を提示した証券会社が幹事会社に指名される( 1985 年 5 月に
導入)
均一価格販売方式 市場情勢に基づいて決定された発行価格によって投資家に売り捌く
引受団を構成する証券会社に対しては、引き受けた社債を募集期間中は値引きせずに発行価格で
投資家に販売することを義務づける
債券の発行 • 受託業務を行う受託業者が必要( 銀行、信託会社のみ、証券会社は許されていない)
• 1970 年代の国債大量発行まで 、国債はシンジケート団によって引き受けられ 、保有する国債の
うち1年を経過したものについては、大半が日本銀行の買いオペレーションによって吸収された
1977 年 国債の市中転売が容認
→ 流通市場と発行市場の一体化が進む
日本の社債市場の発達は遅れていた
適債基準 起債関係者( 起債会)が社債発行希望企業の資本金、純資産額、自己資本比率、配当率など 、
特定の財務指標に基づいて設定する発行基準であり、社債の発行はこの基準を満たす企業にのみ
認める
理由
長期国債をはじめ各種公社債の公募者利回り( 発行金利)が市場実勢よりも低く設定され
てきたうえ、長期国債の応募者利回りを下限として、政府保証債、地方債、事業債の順に応募者
利回りが高くなるという厳格な序列関係が維持されてきたため ( 人為的低金利政策)
社債市場拡大のための市場整備の進展
• 無担保社債の発行
• 引き受け・受託手数料の引き下げ
39
• 均一価格方式の導入
• 適債基準の緩和・撤廃
• 社債発行限度額の撤廃
3.3.3
株式市場
増資( 新株発行)
資金調達のために行う場合が多いが 、自己資本比率を向上させ、企業の財務基盤を強固にするため
にも行う
「有償増資」
額面発行 新株発行価格を額面価格をするもの
時価発行 新株式の市場価格あるいはそれに近い価格で発行するもの
中間発行 額面価格と市場価格の中間に新株発行価格を決定するもの
「無償増資」
• 有償増資と違って企業の資産の実質的な増加はない
• 既存株主に対する利益配当( 株主配当)として実施されることが多い
新株発行先別の分類
株主割当
第三者割当
公募
既存の株主を対象に新株引受権を付与する( 1970 年代までの中心)
既存株主以外の第三者( 企業と縁故にある者など )に新株引受権を付与する
不特定多数を対象に多額の資金調達ができ、近年の主流。
「ブックビルディング方
式」を用いる
※ ブックビルディング方式:公開株を引き受ける証券会社が目安となる価格帯
を提示し 、機関投資家などから事前にいくらの価格でどれくらい買うつもりか
を聞き取り、全体の購入希望数が予定株数を超えた水準で公開価格を決定する。
株式公開
同族または特定の少数者に保有されていた株式が不特定多数の投資家に保有されるように、一般か
ら株主を募集すること
( 通常は、証券取引所の上場するか、日本証券業協会に店頭登録することを指している) メリット
• 資金調達力の増大
• 財務体質の強化
• 社会的信用の増大
40
機関化現象
投資信託、信託銀行、保険会社、年金基金など 、いわゆる機関投資家の株式売買額や株式
保有量が株式市場で大きなシェアを占め、逆に、個人のシェアが低下している現象
大量の資金を集めることによって、国内外にわたる広範囲な金融資産に分散投資し 、また専門的な
情報収集・分析能力や運用技術を活用して高い運用成果を追求している
証券市場の活性化を図る一連の措置
• 銀行による投資信託の販売解禁( 1998 )
• 証券業務の免許制から登録制への移行( 1998 )
• 取引所集中義務の撤廃( 1998 )
• 株式売買手数料の完全自由化( 1999 )
取引所集中義務のない米国では、上場株式の店頭市場や機関投資家同士が直接取引きする私設取引
システム( PTS:Proprietary Trading System )ないし代替的取引システム( ATS:Alternative Trading
System )と呼ばれるシステムが発達し 、
「取引所外取引」が活発化している
3.4
3.4.1
外国為替市場
外国為替取引と為替レート
外国為替取引
自国通貨と外貨との取引交換( より一般的に言えば 、異種通貨の交換取引)のこと
外国為替市場( 外為市場)外国為替取引が行われる場
外国為替相場( 為替レート )市場で成立する2つの通貨の交換比率
対顧客市場
商社、メーカーなどの輸出業者や生命保険会社、投資信託などの機関投資家が取引主対象
対顧客相場( 対顧客レート )
インターバンク市場において成立する為替レート( インターバンク・レート )を基準に決
定される
TTS( Telegraphic Transfers Selling Rate ) 電信為替売り相場:顧客が銀行から外貨を買う( 銀行が売る)場合の為替
レート
TTB( Telegraphic Transfers Buying Rate ) 電信為替買い相場:顧客が銀行に外貨を売る(銀行が買う)場合の為替レート
41
インターバンク市場( 銀行間市場)
( 通常の為替市場はこちらを指す)
銀行の売り買いの注文を結びつける専門業者としての外国為替ブローカー( いわゆる為替
ブローカー)を媒介にして取引が行われる
(これ以外に、ダ イレクト・デ ィーリング( 国内の銀行同士の外国為替の直接取引)も認
められている)
24 時間取引可能
外貨ブローカーは、売買注文を海外の銀行につなぐ 業務( インターナショナル・
ブローキング )を認可されている
為替平衡操作( 為替市場介入)
日本銀行が財務大臣の代理人の資格で参加し 、為替レートの安定を図る目的 で、
「外国為替資金特別会計」の資金を用いて外貨の売買を行っている
銀行の為替持高操作
ロング・ポジション 銀行の外貨の購入残高がその売却残高を上回る
ショート ・ポジション 銀行の外貨の売却残高がその購入残高を上回る
スクエア・ポジション 銀行の外貨の購入残高と売却残高が一致する
為替持高操作( 為替ポジション調整、カバーをとる)
銀行にとっては為替リスクを回避するため為替持高をスクエア( square )にしようとする
外貨の買い持ちの時 インターバンク市場で外貨を売却する
外貨の売り持ちの時 インターバンク市場で外貨を購入する
銀行みずから将来の為替レートの予想に基づいて、為替差益の獲得を狙いとして積極的に
為替持高を買持ちにしたり、売持ちにしたりするような調整も含まれる
インターバンク市場における外貨の需要と供給が等しくなるように為替レートは決定される
42
為替レート の概念
自国通貨建て( 邦貨建て、円建て)1 ド ル = 100 円 ( 日本の場合こちらが一般的)
外貨建て 1 円 =
1
ドル
100
対顧客レート 外国為替取引を行う銀行の側からみると、外貨の小売価格
インターバンク・レート 外国為替取引を行う銀行の側からみると、外貨の御売価格
直物為替レート( 直物相場)売買契約がなされるとただちに売買の実行が行われる取引
先物為替レート( 先物相場)将来の一定時点において、あらかじめ契約した一定の為替レートで外貨
を売買する取引( 売買の実行が時間の遅れを伴う)
基準相場( 基準レート )日本は、円の対米ド ルレートを外為法上の基準外国為替相場としている
裁定相場( 裁定レート )基準レートに基づいて、間接的に算定される他の外貨との為替レートを裁定
→ 1 ポンド = 150 円)
レートという( 例.1 ド ル= 100 円、1 ポンド = 1.5 ド ル 3.4.2
為替リスクのヘッジ
為替先物予約
為替レート変動のリスクをヘッジ( 回避)したい
• 為替持高をスクエアにする
• 先物取引を利用する(もっとも伝統的でポピュラーなもの )
先物取引の例
今、為替レートが 1 ド ル= 100 円、3ヶ月先物為替レートが 1 ド ル= 95 円とする。
3ヶ月後の為替レート
1 万ドルの価値
先物( 95 円)を利用したときの価値
110 円( 円安)
110 万円
95 万円
90 円( 円高)
90 万円
95 万円
輸出予約 先物ド ル売り・円買い(ド ルの受け取り予定がある、円高予想) → 90 万円の受け
取りが 95 万円になった
輸入予約 先物ドル買い・円売り(ドルの支払い予定がある、円安予想) → 110 万円の支払い
が 95 万円になった
43
為替スワップ取引と金利裁定
アウト ライト 取引
直物為替又は先物為替を 単独 で売買する取引
スワップ 取引
直物ドル買いと先物ドル売りの組み合わせ、あるいは直物ドル売りと先物ドル買いの組み合わせ
など 、直物取引と先物取引を同時に組み合わせて行う取引
外国為替先物取引は、ほとんどがスワップ取引の形で実行
スワップ 取引の例 (外貨による資金調達( 100 万ド ルを借入))
• 円の資金が必要( 1 億円)
• 100 万ド ルのインパクト・ローンを借り、円に転換する( 1 ド ル =100 円)
• 先物のド ル買い・円売りを行う( 返済に必要な円の金額が確定する。)
円による返済代金を確定できる( 先物レートが 1 ド ル= 100 円なら、元本部分は 1 億円の返済)
もし 、スワップをしていないと
1 ド ル =120 円 元本部分は 1.2 億円が必要
1 ド ル = 80 円 元本部分は 0.8 億円が必要
※ インパクト・ローン:銀行が調達した外貨をその調達金利に一定の利ざやを乗せて貸
し出すもので、借り手にとっては使途に制限のない外貨資金のこと
スワップ 取引の例 (外貨での資金運用( 10 万ド ルを運用))
• 1000 万円でド ルを購入し 、ド ル( 年 8 %)で 3ヶ月運用する( 1 ド ル= 100 円)
• 先物のド ル売り・円買いを行う
円による運用結果を確定できる( 先物レートが 1 ド ル= 100 円なら、1020 万円)
もし 、スワップをしていないと
1 ド ル =120 円 1224 万円の運用結果
1 ド ル = 80 円 816 万円の運用結果
直物レートと先物レートが同じである場合(これを「直先フラット 」という)
、金利が高い方に資金
を投下する方が有利である。 → 資金の流出入がおきる
金利裁定取引
金利差を利用して、利ざやを稼ご うとする取引
44
カバー付きの金利裁定
金利裁定取引によって、直先レートと先物レートに乖離が生じ 、その乖離幅は、2 国間の金利差に一
致するようになる
1+i
f
e
f
−1
e
f −e
e
f −e
e
直先スプレッド
1
(1 + i∗ ) f
e
=
1+i
1 + i∗
=
=
=
(1)
(2)
1+i
−1
1 + i∗
1 + i − (1 + i∗a )
i − i∗
=
1 + i∗
1 + i∗
=
i − i∗
=
両国の金利差( 年率%)
(3)
直先スプレッド( 先物マージン ) ド ルの先物レートと直物レートの差の直物レートに対する
割合
f( 先物レート )< e( 直物レート )ド ルの先物は直物に対してデ ィスカウント i < ia (アメリカ)
f( 先物レート )> e( 直物レート )ド ルの先物は直物に対してプレミアム i > ia (アメリカ)
※ このような条件は、規制やコストなどがないケースのみに成り立つ
外国為替市場での先物取引のことは正確には「先渡取引(フォワード 取引)」とよぶ。
( 相対取引)
アンカバーの金利裁定
ある一定期間後の期待為替レートを f e
1+i
=
1
(i + i∗ ) f e
e
fe − e
=
e
為替レートの期待変化率 =
i − i∗
両国間の金利差
1. 日本の金利 上昇 → 為替レート 上昇( 円安)
2. 米国の金利 下落 → 為替レート 上昇( 円安)
3. 期待為替レート 低下( 円高予想をする) → 為替レート 低下( 円安)
45
(4)
(5)
通貨オプション
オプション 権利を行使したり放棄したりすることが自由にできる。プレミアム( 予約金)を事前
に支払う必要がある
先物( 先渡し ) 必ず契約した為替レートで外貨を購入ないし 売却する( 取引執行義務がある)
オプション取引の例 (輸出代金をド ルで受け取る)
• 円高・ド ル安を予想し 、円高リスクを回避したい
プット・オプション(ド ルプット・円コール )の購入( 100 円/ド ルを売る権利)
90 円=1 ド ル 100 円/ド ルでオプションを権利行使できる
110 円=1 ド ル オプションを権利行使せず、110 円/ド ルで取引する
オプション取引の例 (輸入代金をド ルで支払う)
• 円安・ド ル高を予想し 、円安リスクを回避したい
コール・オプション(ド ルコール・円プット )の購入( 100 円/ド ルを買う権利)
90 円=1 ド ル オプションを権利行使せず、110 円/ド ルで取引する
110 円=1 ド ル 100 円/ド ルでオプションを権利行使できる
行使価格( 先渡し価格)
行使価格(先渡し価格)
0
0
期首の支払い額
期首の支払い額
3.4.3
為替レート の決定メカニズム
外貨の需要と供給
ド ルに対する需要と供給
D
= P ∗ M ( P[+] , e[−] , Y[+] )
46
(6)
S
=
P
X( P[−] , e[+] ) + K( r[+] )
e
D
ド ルに対する需要
P∗
M
米国の価格水準(ド ル表示)
P
e
日本の価格水準( 円表示)
Y
S
日本の実質国民所得
(7)
日本の輸入量
円建ての為替レート(?円/ド ル )
ド ルの供給
X
K
日本の輸出量
r
日本の金利水準
米国から日本への資本の純流入額( 日本の資本収支、ド ル表示)
需要サイド
日本の価格水準( 円表示)相対的に外国製品の競争力を増すため、輸入増加
日本の実質国民所得 経済活動水準の上昇を通じて、輸入増加
円建ての為替レート(?円/ド ル )外国製品の輸入価格を上昇させるため、輸入減少
供給サイド
日本の輸出量
日本の価格水準( 円表示)相対的に国内製品の競争力を低下させるため、輸出減少
円建ての為替レート(?円/ド ル )日本からの輸出製品の外国での価格 (P/e) を低下させるため、輸
出増加
米国から日本への資本の純流入額( 日本の資本収支、ド ル表示)
日本の金利水準 純流入は増加する
資本流出( 日本の投資家が米国の国債を購入) → ド ル需要拡大
資本流入( 日本の投資家が米国の国債を購入) → ド ル供給拡大
円高・ドル安 → 輸入増加 → ド ルの需要減少( 需要曲線が右下がり)
円安・ドル高 → 輸出増加 → ド ルの供給増加( 供給曲線が右上がり)
47
結果として、ド ルという商品もほかの商品と同じく、安い時に多く需要され 、高い時には多く供給
される
( 参考) 米国の所得増加:日本の輸出増加を通じて、ドルの供給曲線を右側にシフトさ
せる( 円高・ド ル安に動く)
e
D
S
S’
国内金利上昇
O
D,S
図 1: 為替レートの決定
資本移動と為替レート
為替レート への影響
内外の資本移動に基づく資本収支の動きが輸出入よりも大きい影響を持つ
日本の金利が高くなる( 日本の資本収支は国内金利の増加関数)
→ド ルの供給が増加
→円高・ド ル安になる
外国為替市場に日銀が介入する理由
為替リスクの発生や企業などの経済計算の困難化などを通じて、経済活動に望ましくない効果をも
たらすため( 為替レートの安定化を目指す)
為替レート 安定のための日銀の行動
ド ルを買い 円がド ルに対して高すぎ る時
ド ルを売る 円がド ルに対して低すぎ る時
中央銀行が為替レートを一定の水準に誘導することには限りがある
48
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