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第2章 徳島すぎの特性

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第2章 徳島すぎの特性
第 2章
ンン
ヽ
f
徳島県 では昭和50年代 か ら、増大す るスギ資源 の利用 に対応 し、木材利用研究 を充 実 させ て き
た。昭和59年度 (1984)に は県内林業者 らとス ギ梁材 の実大破壊試験 を国林試で初めて実施 し、
それが きっか け となって、昭和61年度 (1986)に20ト ンの 曲げ試験 に対応 した実大強度 試験機 を
備 えた実大強度試験棟 を整備 し、
住宅構造材 の性能試験 に取 り組 んで きた。また昭和60年代 には、
ス ギ九大 の付加価値 を高 めるための葉枯 らし乾燥試験 を全 国 に先駆 けて実施 し、切旬や伐 採方法
等 を科学的 に裏付 け、そ の成果 を 「
葉枯 らし乾燥 マニュ アルJと して まとめた。
こ う した基礎 デー タの蓄積 か ら、木造住宅 にスギを使 う機運 が 高 ま り、明石海峡大橋 開通 に対
応 した戦略 プ ロ ジェク ト 「
県産木造住宅 (平成 3年 度基本構想)Jが 動 きだ し、 これ を技術 的 に
支援す るため、平成 4∼ 5年 度 には研究所 内に化学処理加 工 施設 や人工乾燥 機、各種性能評価機
器 を備 えた新技術試験棟が、平成14年度 (2002)に は面内せ ん断試験装置等 を備 えた住宅資材性
能試験棟 が建設 された。実大強度試験棟 とあ わせ た 3棟 は木材需要開発 セ ンター と呼 ばれ、開放
型試験施設 (オー プ ンラボラ トリー)と して関連業界 と連携 した技術 開発 が進め られて い る。
こ う したなか、平成 7年 度 (1995)
以 降 には、徳 島す ぎを用 い た家 づ くり
グル ー プ (TSウ ッ ドハ ウ ス、那賀 川
ス ギ共販、 ス ーパ ー ウ ッデ イシス テ ム
な ど)が 組織化 され、全 国 にス ギ梁桁
徳 島す ぎの
等 をふ ん だ ん に用 い た 「
家」 が販売展 開 され、木材需要開発 セ
ンター は住空 間の安全 ・安心 の信頼性
確保 に向けた技術 開発 の場 として役 目
を果た して い る。
木材 需要開発 セ ン ター
( 住宅 資材性 能試験棟 )
この 間、県内外 の大学 との研究 ネ ッ トワー クも広が った。徳 島大学総合科学部 との木構造試験
や足場板 自主基準 づ くり、京都大学木質科学研究所 (現、生 存国研究所)と の構造 ・耐久性試験
をは じめ、平成 12年度 (2000)に徳島大学 工 学部 や徳 島文理大学薬学部 らが加 わつた 「
徳 島す ぎ
高度利用技術研究会Jで は、 これ まで未利用 とされたスギ黒心材 の商品開発 に取 り組 み 、黒心材
の優 れた殺蟻性や抗菌性 を明 らかに した。その成果 はこれ まで価 値 の低 か った黒心材 の再評価 に
とどまらず、徳島で先鞭 をつ けた葉枯 らし乾燥材 の優位性 を証明す ることとなった。 さらに、 こ
の研究会 が 中心 とな り国農林水産技術会議 の採択 を受 け実施 した 「
先瑞技術 を活用 した農林水産
研究高度化事業J(平 成15∼17年度)で は、環境規制強化か ら用途 開発 が 課題 となっていたスギ
バ ー クについ て研究 を進め、農業資材等 へ の利用 に道 をつ け た。
一 方、平成 15年度
(2003)には TSウ ッ ドハ ウス と森林林業研究所 が 、秋 田木高研 、金沢 工 大、
京大防災研 らと大規模 な古民家倒壊実験 (旧海部町)を 実施 し、 ス ギ伝統構法 の耐久 ・耐震性能
につい て解析 を試みた。そ もそ も徳 島す ぎの実大強度試験 の発端 は、県南 の民家 でのスギの使 わ
れ方 であ り、そ の意味で も意義のある実験 となった。
なお、徳 島県 では住宅性能表示制度 に対応 して、平成 13年度 (2001)に 「
徳 島す ぎスパ ン表J
を作成、そ の後 も、 スパ ン表 を補完す るため、前述家 づ くリグル ー プで組織す る 「
徳 島県木 の家
44
第 2章 徳 島す ぎの特性 1概 説
づ くり協会」 らと県産木造住宅工法 に
ついて接合強度試験 を実施 し、構造的
な信頼性評価 を行 っている。その基礎
として、 これ までに蓄積 した徳 島す ぎ
の強度試験 デー タがあることは言 うま
で もない。
さて、本 県 にお いて は平 成17年度
徳島県問伐材等推進計画
(2005)に 「
3カ 年計画Jが スター トしたと同時に
古民家 の倒 壊実験
全国に先がけて、「
林業再生」をキー ワー ドとしたプロジェク トを始 めた。 この林業再生プロジェ
ク トは、山での低 コス トの搬出間伐 を増やす ために、小型スウイングヤー ダ、小型プロセ ッサ、
フォワー ダで構成 される 「
新間伐 システム」 の導入 と現場へ の定着 を行 うとともに、間伐材 を合
板工場へ大量 かつ安定 し供給す
る仕組みを構築 し、木材 の販売
代金 をで きるだけ森林所有者ヘ
返 していこうとす るものである。
こうしたなか、森林林業研究
所 では、スギ合板の性能試験 を
分担する とともに、間伐材 の用
途開発 を進めてい る。平成 16年
度 (2004)には、国土交通省四
国地方整備局や四国四県 の道路
・林業行政担当者や研究機関か
らなる 「
四国木裂防護柵技術検
林業再生プロジェクトのイメージ図
討会」 で四国木裂防護柵仕様書 ( 四国ス タンダー ド) が まとめ られた。その開発 にあたっては、
木材需要開発 センターで流域 ごとのスギ丸大の曲げ試験や保存処理材の含浸試験 を実施 した。今
後、「
林業再生プロジェク ト」が円滑 に推進す るには、スギ間伐丸太 の需要開発 が成功 の鍵 を握
ることとなる ことか ら、木材需要開発 センター を中心 とした研究サ イ ドの技術開発 の役 目は大 き
V`
。
この第 2 章 では、徳 島す ぎの材質特性 を中心 に解説 し、続 く第 3 章 「
徳島す ぎの技術 ・商品開
発事例J で は、現在進 めて い る研究最前線 のデ ー タを掲載 した。今後 の商品開発 の ヒン トになれ
ば幸 いで ある。 ( 網田)
45
第 2章 徳 島すぎの特性 2徳
島すぎの強度
建築基準法 にお い て木材 の許
容応力度 は、基準強度 に必要 に
表 1 木 材 の基準強度
樹 種
区分
等級
応 じて係 数 をかけた値 を用 い て
い る。(表 1,2)
1 級
甲種構造材
Fs(せん断)
34.2
22.8
3 級
1】
扱
乙種構造材
27.0
16.2
27.0
2級
の基 準 は、小 さな無欠点小 試験
13.8
3級
1 級
体 か ら求 め られた値 が使 われ、
甲種構造材
21.6
27.0
2級
25.8
22.2
3 級
す ぎ
1 級
乙種構造材
力値 が設定 されてい た。
ところが 、昭和50年 (1975)
Fb(曲 げ)
引張)
27.0
2 級
べ い まつ
昭和50年代 まで、木材 の強 さ
スギは米 マ ツ等 よ り低 い許容応
基準強度 (単位 N/m面 )
Fc(圧縮)
21〔
6
21.6
2級
2.6
3級
0.8
以 降 にカナダで発表 された一連
H12建 告 1452 建 築基準法 に基 づ く告示 (木材 の基 準強度 Fc、Ft、Fb
注)、
及び F s を 定める件) に よる
の 実大材 強度 試 験 に端 を発 し
表 2 木 材 の 許容 応 力度 ( 建築基準 法 施 行 令第8 9 条)
長期 に生ずる力 に対する許容応力度
( 単位 N / m 面)
引張 り
つい ては大 きく見 直 され ること
1 . l
3
となった。
表 1の 甲種構造材 (梁桁等 の
横架材)で み る と、市場 に多 く
曲げ
せん断
F l
2Fc
3
2Fb
3
S
F 3
2 一
圧縮
1.l Fc
3
短期に生ずる力に対する許容応力度
( 単位 N / m 甫)
圧縮
せん断
ヨ張 り
曲げ
t
F 3
2 一
材強度試験 によ り、 ス ギ強度 に
3
帆
一
3
帥
て、 日本 国内 で も始 まった実大
この表 に おい て、F c 、F t 、F b 及 び F s は 、それぞ れ木 材 の種 類 及 び品 質
に応 じて国土交通大 臣 が定 める圧 縮 、引張 り、曲 げ及 びせん断 に対 す る基 準
強度 ( 単位 N / m 市) を 表 す もの とす る。
注)た だし積雪時の構造計画で、長期許容応力度は13を、短期容応力度は03を乗じた数値
流通 してい る 2 級 材 でべ い まつ とす ぎを比 べ た場合、圧縮 ・引張 ・曲げ強度 ともにす ぎがべ い まつ
を上 回 る。全 国 の試験 デ ー タの分析 か ら、実際の製品寸法 では、 ス ギはマ ツ等 に比 べ 節等 の影響 を
受 けに くい樹種 で あ ることがわか ったか らである。
我が国における こ うした実大
表 3 無 等級木材 の基準強度
材実験 に徳 島県 は大 きく関わつ
樹
種
基準強度 (単位 N/m甫 )
Ft
Fb
て きた。本県 の特 に南 部 では、
あかまつ、 くろまつ及び
ぺ い まつ
22.2
28.2
古 くか ら杉 を梁や桁等 の横架材
か らまつ、ひば、ひのき
及びべいひ
20.7
26.7
として使 って きてお り、経験 的
針葉樹
に杉 が 強 い こ とが 知 られ て い
た。そ こで 、昭和59年 (1984)
に林業 クラブ青年部 (現 :徳 島
広奏相
つ が及 び べ いつ が
25=2
もみ、えぞまつ、とどまつ、
べ に まつ 、す ぎ、べ いす ぎ
及び スプル ー ス
22.2
か し
27.0
くり、 な ら、ぶ な、 けや き
21.0
24.0
29.4
す ぎクラブ) が そ の強 さを実証 しようと、6 0 ∼7 0 年生の杉 中 目丸大 ( 丸太径 1 8 ∼3 2 c l n ) から採材 し
た平角材等 1 2 4 体を国立林業試験場 に持 ち込 んだスギ平角 ( 1 2 c m ×
2 4 c m など) の 曲げ強度 と曲げヤ
ング係数 の平均値 は、それぞ れ4 1 9 k 胡 、9 2 . l t f cで
面あ った。 これ らは、 いず れ も建 築基準法施
行令及 び 日本建築学会で示 された基準 値 ( 曲げ強度2 2 5 k 前 、曲げヤ ング係数7 0 t y 胡) を 大 き く
上回ることとなった。 ( 国林試 中井 ら1 9 8 5 )
ス ギで この よ うな大断面 での実験 は全 国で も初めてであ り、中 目材 の用途 につい ては どこの林業
第 2章 徳 島すぎの特性 2徳
島すぎの強度
産地 で も課題 となってい たことか ら、画期 的な試験 となった。
`
(2)徳 島す ぎ (梁材 )の 曲 げ強度 実験結果
徳 島す ぎについ て県下 の主 要 な河川流域 (吉野川、勝浦 川、那賀川 )の 市場等 か ら無作為 に抽 出
した もの と、品質管理 された もの (伐期60年生以上で葉枯 らし乾燥 され、梁材 として選別 された も
の)に つい て、それぞれ実大材 (梁せい24∼30cm長さ4m)の 曲げ試験 を実施 した。
全デー タの379体の 曲げ強度 について平均値、標準偏差等 を計算 し、 ヒス トグラム (度数分布)
を示 した。分布形 として① 正規分布②対数正規分布③ ワイブル分布 (2母 数、 3母 数)をあてはめ、
最 も適合する分布形か ら信頼率75%の 5%下 側許容限界 を求めた。
全デー タの分布 を図 1に 示す。なお、379体を曲げヤ ング係数 ごとに分けた場合、その分布 は E50
(6%)、 E70(39%)、 E90(46%)、 El10(9%)と
E70と E90が全体 の85%を 占めた (図2)。
な り、
。
5 如
‐
■
3 0
幹
20
10
0
■
‐
E50
E70
E90
、
El10
ヤ ング表示
図 1 徳 島全デ ー タの統計分析
図 2 徳 島全デ ー タのヤ ング係数の分布
試験結果 か ら求めた下限値 を、告示 された基準値 (表 3)と の比較 を表 4に 示 した。徳 島全 デ ー
タ379体の曲げ強度下限値 は25.5N/耐で あ った。この値 は、
告示 のスギ無等級材 の基準強度22.2N/mぱ
を満 た して い た。 また、品 質管 理 された60年生以上 の 高齢級材 83体の下 限値 は31.8N/1nlllで
あ り、
さらに高 い値 を示 した。
平成 13年度 (2001)に作成 された 「
徳 島す ぎスパ ン表」 では安全性 を優先 し、計算 に用 い た下限
値 は無等級材 の告示値 が採用 された。 (坂田)
機械等級
下 限値
(N/m市
)
60年生
以上
(N/m品
)
24. 7
28. 8
平均値
(N加甫)
標準偏差
(N/m品
)
変動係数
(%)
E50
( 6 % )
28.25
4.88
17.3
E70
(39%)
32.96
4`75
E90
(46%)
39.44
5.17
El10
( 9 % )
46.12
4.77
37. 2
36.93
6.76
25. 5
全体
値巾
m
ノ
N
新て
表 4 試 験結果 か ら求めた下限値 と告示 された基準値
デ ー タ数
33. 6
41.0
31.8
(n=83)
22. 2
( 無等級)
参考 ・引用文献】
【
1 『 構造用木材の強度試験法』( 財) 日 本住宅 ・木材技術センター 2 0 0 0 3
2 『 徳島す ぎスパ ン表』徳島県木材協同組合連合会 2 0 0 2 . 3
47
第 2章 徳 島すぎの特性 3徳
島す ぎの乾燥
(1)木 材乾燥 の取 り組 み
徳 島す ぎの乾燥 は天然乾繰が中心 で、人工乾燥 が盛 んに行 われるよ うになったのは最近 で あ る。
人工乾燥機が導入 されたのは、昭和60年代 になって集成材 ラ ミナの乾燥が行 われたの を除けば、平
成 に入 つてか らである。平成 3年 度 (1991)に産官学 か らなる徳 島県乾燥材供給対策協議会 で検討
が なされ、当初 は害J柱銘木 の乾燥 か ら取組みが始 ま り、 さらに平成 7年 度 (1995)頃 か ら住宅構造
用梁材 の強度試験 と平行 して平角の人工乾燥が進め られた。 また、足場板が転 じて、実 (さね)加
工 された内装材 としての利用 が始 まる平成13年 (2001)頃 か らは、寸法精度 へ の要求 か ら乾燥材が
求 め られるようにな り、那賀川流域 を中心 に人工 乾燥技術 の 向上が図 られてい る。
(2)割 柱天乾材 の含水率
乾燥材 の合水率 を測 定す る方法 として もっ とも信頼性 の高 いの は全 乾重量法 であ るが 、 この場
一
合、試験片 を採取す るため材 を切断す る必要 があ り、実際 の製品 には適用 で きない。 方、高周波
含水率計 は取 り扱 いが簡単 で よ く用 い られて い るが、 断面 の大 きな柱材等 は測定部位 で、ば らつ き
が大 きく、精度 の点 で十 分 とはいえない。 このため 、害」
角 な ど製品寸
表
1 柱 材含水率早見表
重量
法 の種類 が少 ない ものは、重量 による含水率推走 が確実 であると考 え
(kq)
含水率 (0/。
)
られ検討 を行 った。
7
定し
徳 島す ぎ害J柱材 10.5cm角22本 を 2か 月間天然乾繰 し、重量 を狽」
全乾重量法 によ り含水率 を求 め、重量 と含水率 の 関係 を調べ た。
その結果、重量 と含水率 との 間には高 い相関関係 が認 め られ、信頼
水準 68%、 標準誤差 10.8%で 含水率早見表 を作成 した。(表 1)
また、天然乾燥 では、辺材部 の乾燥が早 い ものの、そ れぞれの材 の
平均含水率 は心材部 の含水率 に大 きく影響 される ことがわかった。
(3)平
資!10.75× 1075× 301.lcm
寸た
角 の 人 工 乾燥
徳島す ぎ平角 を、蒸気加熱式 イ ン ター ナ ルファン型木材乾
ー
燥機 を用 い、表 2 の スケジ ュ ルで 中温乾燥 し、初期含水率
4 0 ∼9 0 % の 材 を1 2 日間で平均含水率 1 9 . 2 % ( 1 2 . 5 ∼ 4 0 . 5 % )
に乾燥 させ た。
乾燥 ス ケジ ユー ルはスギ材 の乾燥 に関す る既往 の資料 をも
とに、乾燥温度 を2 0 ℃高め、大断面 に対応 させ た。 また、乾
燥 開始時 における材温上昇の遅れ を考慮 し、立 ち上 げ時間 を
長 めに とつた。乾燥 中期 で乾燥温度 を8 0 ℃か ら8 5 ℃に上げた
ところ表面害」
れが生 じた。
(4)平 角人 乾 燥材 の収縮率
表 2 平 角乾燥 スケジ ュール
/ o)
含水率 (°
r障簡)
(2 hr)
(2 hr)
(2 hr)
(2 hr)
ハマ70
70-65
65-60
60-55
55-50
50-45
45-40
40-35
35-30
30-25
25-20
( 6 h r )
乾球温度
℃)
〔
乾湿ポ 温 度差
( ℃)
2
2
2
3
4
5
5
6
6
8
3
断面 の大 きな裂材 品 を乾燥 させ た場合、表層 か ら乾燥が始 ま り徐 々に内部 の含水率 が低下す る。
乾燥終期 にお い て も表層 と内部 の含水率傾斜 は大 き く、表層 では十 分低 くな っている。そのため、
第 2章 徳 島すぎの特性 3徳
島す ぎの乾燥
含水率 の低下 した表層部 によって形状 を固定 し、全 体 の寸法変化 を抑制す ることが考 えられる。
徳 島す ぎ50年生、木 口寸法12側×24clllの
平角38本 を、蒸気加熱式 イ ンターナ ル ファン型人工乾燥
機 を用 い て、乾燥 したのち、室内で桟積 み し、実際の住宅で使用 されて い る状 態 で放置 した。その
間、乾燥終了直後、 2か 月後、 6か 月後 お よび26か月後 の時点 で材 の幅 と厚 さを測定 し、乾燥終了
直後 の寸法 を基準 に収縮率 を算 出 した。その結果、 つ ぎの ことがわか った。
・人工乾燥後 の 時間 の経過 に ともな う含水率 は、 6か 月経過後 に含水率 の バ ラツキが小 さ くな
り、一体 を除 い て含水率が25%以 下 に低下 した。
・2か 月経過後 では、 ほ とん ど収縮 は起 きなかった。26か月後 は含水率 15%か ら25%の 範囲 で仕
上が り含水率 にほぼ比例 して収縮率が増加 し、2500以上ではほぼ一走 の増加 を示 した。収縮率
を0.5%以 下 にとどめるには仕 上が り含水率 を15%以 下 にす ることが必要 で あ った。
・厚 さ方向の収縮 率 をみ る と幅方向 の収縮率 に比 較 して小 さ く、仕上が り含水率30%程 度 で も収
縮率 の増加 は0.5%以 内 に収 まった。
(5)ス ギ厚板の簡易乾燥 スケジュール (タイムスケジュールによる)
足場板 を転用 したスギ厚板 を住宅内装材 として使 うには、ある程度 の乾燥が必要 とされる。 しか
し、 もともと工 事現場 の足場用 として使 われることか ら、人工 乾燥 な ど含水率 の管理 はほ とん ど行
われてこなかったのが実状 で あ る。 この ことか ら初めて人工 乾燥 に取組 む場合 を考慮 し、スギ厚板
の簡易乾燥 ス ケジ ュール を作成 した。
ね らい としては、乾燥 させ る材 の寸法があ る程度決 まってお り、何時間後 にどの程度 の含水率 に
なるかが経験 的 (実験的)に わか っていれば、時間経過 によって含水率 の変化が予測可能 で あ る。
サ ンプル材 を用 い たスケジ ュー ル に比 べ 、あ る程度幅 を持 たせ て あ るため精度 は悪 くなるが、毎 日
サ ンプル材 の含水率 を測 って条件 を変 える とい う作業 か ら開放 される ことで ある。そ こで、過去 に
森林林業研究所 で行 った足場板 の人工乾燥 の試験結果か ら、最小公倍数的な タイ ムス ケジュー ルの
作成 を試みた。乾燥温度 は、従来型 の乾燥機 で も対応 で きるように60℃までに とどめた。 ただ し、
温湿度 コン トロール装置お よび加湿装置 は、最低限装備 されてい る もの とした。
決定 したス ケジ ュールは、表 3の とお りである。乾燥初期 の緩 表 3 足 場板簡易乾燥スケジュール
やか な条件 は短 め に、乾燥後期 の厳 しい 条件 を長 め に とって い
時 間
乾球温度
(℃)
乾湿球温度差
( ℃)
る。初期含水率 のば らつ きをある程度無視 して い るので 、乾燥末
期 でイ コー ライジ ングを兼ね てい る。乾燥時間 は合計 1 4 2 時間 ( 約
6 日 間) と した。 このス ケジ ュー ルで乾燥試験 を行 つた結果、初
期 の含水率低下 は遅 いが、仕上が り含水率 は1 1 . 9 % と 内装材 とし
ての含水率 を十分満足 した。 ( 仁木)
3
参考 ・引用文献】
【
1『 徳鳥スギの乾燥に対する研究 (第1報 )一 スギ柱材の三量による含水率推定について一』仁木龍祐 徳島県
林業総合技術センター研究報告第31号 199312
2『 徳島スギの乾燥に関す る研究 (第2報 )一 構造用製材梁用平角の高温乾燥 について一』仁木龍祐 ら 徳島県
林業総合技術センター研究報告第32号 1996.3
3『 徳島す ぎの低 コス ト急速乾燥技術 の開発一徳島す ぎ平角人工乾燥材 の仕上が り含水率の違いによる収縮率
の変化―』仁木龍祐 ら 徳島県林業総合技術センター研究報告第36号 2000.3
49
第 2章 徳 島すぎの特性 4徳
島すぎ土台角 の耐蟻性
(1)徳 島す ぎを土台 に
住宅 の上 台角 としては、 ヒノキが好 まれ るが 、耐久性 を比べ た場合、 スギが ヒノキ と比 べ て大 き
く劣 っているわけではない。例 えば、心材 の耐朽性 の 区分 で ヒノキは 工 ( 大) に 、 スギは皿 ( 中)
1 。ま
1 。一
に区分 されてい る
方、耐蟻性 の分類 では ヒノキ、 ス ギ ともに中にラ ンク付 けされてい る
た、土壌 に設置 した場合 の主 な樹種の心材 の耐用年数 では、 ヒノキが 7 年 、 ス ギが 6 年 と大差 が な
V`1。
そ こで、実際 に土台 に使用 されている木材 ( スギ、 ヒノキ、そ の他) を イエ シ ロア リに食害 させ、
耐蟻性 を比較 した。
(2)実 験 の方法
ふ材 を用 い た。
供試材料 にはスギ心材及び辺材、 ヒノキ心材 、ベ イマ ツ心材、 ベ イツガ″
所
試験体数 は各 1 0 体、試験体形状 を木 口面1 0 0 m m ×1 0 0 剛、長 さ1 0 0 m m とし、京都大学生存 圏I F y 究
内 のイエ シ ロア リ飼育槽上 に 3 か 月間設置 した。 この
表
1 被 害度の区分
被害状況
区分
飼育槽 内 の環境条件 は、気温2 8 ℃、湿度7 5 ∼8 0 % 、 1
被害無 し、痕跡
部分的 に軽微 な被害
全体的に軽微 な被害
2 に 加 え、部分的 に激 しい被害
全体的 に激 しい被害
被害 により形が崩れる
団体 数 は5 0 ∼1 0 0 万
飼育槽 内 におけるイエ シ ロ ア リのイ
頭 である。
その 間、1 か 月毎 に目視 観察 による被 害度及 び被害
面数 の損」
定 を行 う とともに質量減少率 を求めた。被害
度 は被害度 の 区分 ( 表 1 ) に よ り評価 した。
(3)実 験結果
4
スギ″
ふ材 とヒノキ心材 はシ ロ アリの食痕が痕跡程
5
図 1は 平均被害度 を示 してい る。
0
材 中に含 まれる心材部分 はほ とん ど食害 を受 けてい
1
スギ辺材 につい ては、平均被 害度 2.2であ るが、
Щ帥2禅
3
度 で あ り、 ほぼ無被害 であった。
なか った。
スギ辺材 ス ギ心材 ヒ ノキ ベ イマツ ベ イツガ
材 の種類
ベ イマ ツは、スギ辺材 とほぼ 同 じ平均被 害度2.1
で あ るが 、被害 の特徴 としては接地部分 に被害が 多
図 1 目 視 に よ る平 均 被 害 度
6
い こ とがあげ られ、ベ イツガは平均被 害度3.6で今
評H
は1 0 ハ
5
結果 と同様 の傾 向 で あ り、 スギ 心材 は0.6面、 ヒノ
の面 で被害 を受 け ていたことがわかる。
0
と最 も被害面数が多 く、最初 の 1ケ 月間でほ とん ど
1
2面
キ心材 は0.5面と同程度 であった。 ベ イツ ガは5。
2
部旧3帥鮮
図 2は 平均被害面数 を示 して い る。平均被害度 の
4
回 の試験 では最 も大 きな被害が確認 された。
スギ辺 材 ス ギ心材
ヒ
ノキ
ベ イマツ ベ イツガ
材 の種類
図 2 目 視 によ る平均被 害 面数
50
第 2章 徳 島す ぎの特性 4徳
図 3は 推定質量減少率 を示 して い る。スギ心材、
方、ベ イツガは 3か 月後 では約40%ま で減少 し、大
き く食害 される危険性 がある と考 え られる。
木材 の耐蟻性 による分類 は、試験法や シ ロア リの
種類 によってその順位が変動 しやす く、
1とされて い る
類 は困難
。
一般 的な分
しか し、今 回の試験結果 にお い ては、 スギ及 び ヒ
ノキの心材 ともに食痕 が痕跡程度 であ り、 ほ とん ど
45
︵
ぺ︶
冊 へ慎 帆 則慨 翠
ヒノキ心材 は低 い減少率 で あ ることがわか った。 一
島す ぎ土台角の耐蟻性
35
25
15
5
‐
5
スギ辺 材 ス ギ心材
ヒ ノキ ベ イマ ツ ベ イツガ
材 の種類
図 3 含 水率1 5 % と 仮定 したときの
推定質量減少率
被 害 を受 け てお らず 、耐 蟻 性 に関 して は 同程 度 の性 能 を期 待 で きる こ とが 推 測 され る。 ( 橋本 )
【
参考 ・引用文献】
1 『 改訂 3 版木材工業ハ ン ドブック』改訂 3 版木材工業ハン ドブック編集委員会 九善 ( 株) 1 9 8 2
2 『 シロアリの生態 ―熱帯の生態学入門』安部琢哉 東京大学出版会 1 9 8 9
3 『 木材科学講座1 2 保存 。耐久性』屋我嗣良ら 海青社 1 9 9 7
五感で感 じる木材② ス ギの細胞
熱伝導率 が大 きい材料 では人 の皮膚 か ら熱が逃 げやす くなる。熱が逃 げる と皮膚 の温度が低
下す るので冷 た く感 じられ る。 ス ギの熱伝導率 は コン クリー トの1 / 1 2 、鉄 の1 / 4 8 3 と小 さい こ
とか ら、触 つた とき温か く感 じられる。
外 の温度変化 に対す る室内 の温度変化 の比 を室温 変動比 とい う。
木材 の室温変動比 は コンクリー トや グラス ウール と比 べ 、著 しく小
さいが、 これは木材の熱伝導率が小 さ く体積 あた りの熱容量が大 き
い か らである。
写真 は木材 の電子顕微鏡写真 で あ る。木材 は熟伝導率 の低 い空気
を多量 に含 み、木材 を構成す る成 分 自身 も熟伝導率が低 くな ってい
る。熱伝導率 の低 さは この よ うな細胞構造 による。特 にス ギは、木
材 の 中で も熱伝導率が小 さ く暖か く感 じられ る。
写真 徳 島す ぎの細胞 断面
(徳島森 林研 仁 木 2001)
;2
第 2章 徳 島す ぎの特性 5徳
島すぎ黒心材 の性能
( 1 ) 徳 島す ぎの黒心 を評イ
面する
スギ心材のなかで も黒心 (心材が黒味 を帯 びた茶褐色 を呈する材)は 、色艶が悪 いこ とか ら市場
での評イ
面が低 い ものとなってい る。 ところが、地域 によっては黒心が耐蟻 ・耐朽性 に富 むとも言 わ
れてお り、実際に徳島す ぎの黒心材で製材 された土台角が、 シロアリが多 く生息する沖縄県や南九
州にも出荷 されていた。 このように、経験的に耐久性 に富 むとされる黒心材、 さらにはスギ心材 の
特性 について検証 した。
(2)実 験結果
イエ シ ロ ア リ に 留 ゎた/7772S拘
物 θSα
乃″
S SHIRAKI)を 用 い た抗蟻試験 の結果、徳 島す ぎ黒心材 に
は cryptOmerioneなど新 たな抗蟻活性成分 が 存在 す る こ とが 分 か つた (図 1)。 また、成 分抽 出試
験 では、黒心材 に 砲rruginolなどの抗菌成分が赤心材 よ りも多 く存在 し、黄色 ブ ドウ球菌 は α″″″ざ)
に対 する最小発育 阻止濃度 (MIC)の 値 は小 さ く、優 れた抗菌活性 を示 した (図 2)。
また、徳 島す ぎ黒心材 と赤心材 につい て表面 の殺菌効果 を調べ た。大腸菌 (ど
。
cο
tt K12W3110)
で汚染 した標準培地 を用 い て残存生菌数 を測定 した結果、黒心材 は30分後 に、赤心材 は60分後 にほ
ぼ殺菌 し(図 3)。 これ らの ことか ら、黒心 材が天然 の抗菌材料 としての機能 を発 揮 してい ることが
分 かつた。
さらに、徳 島す ぎ黒心材 と赤心材 の耐蟻性 を比 較す るため 、イエ シ ロア リを用 い た強 制食害試験
を行 つた。そ の結果、そ れぞれの平均質量減少率 は、黒心材力当.5%、 赤心材力光.9%で あ り、 ス ギ
、
辺材 では25.2%で あ った。 この ことか ら、徳 島す ぎ″
亡
材 は黒心、赤心 とも高 い耐蟻性 を有 して い る
ことが分 か った。
(3)結
を 踏 まえて
今 回 の試験 に用 い た材料 は高齢級材 (80∼90年生 )で 3か 月間、山 で葉枯 らしした後、桟積乾燥
された ものである。人工 乾燥 による加熟 は行 ってお らず、成分抽 出 は生薬 の研究 で通常行 われる方
法 を用 い た。す なわち、スギ心材 に揮発性成分が含 まれてい ることか ら、加熟あるい は水系 の溶剤
を使用す る逆 相系 のクロマ トグラフイーではそ うした成分が消失す る可 能性がある。そ こで、成分
精裂 では"頂
相 ク ロマ トグラフイー を用 い、 セスキ テ ルペ ン、 ジテルペ ン等 を単離 した。
今 回の試験結果 は、高齢級 の それ も自然乾燥材 に有益 な成分が木材 中に保持 される可 能性 を示唆
す る ものである。今後、そ う した成 分 が どの時点で揮発す るのか 、村齢 による成分量 に差が あ るの
かな どを確 かめる必要がある。そ して、 この徳 島す ぎ黒心材 の高 い抗菌 ・殺菌作用 を活か した商 品
開発 を進 める とともに、乾燥技術 にお い て もその知見 を活かす必要がある。 (橋本)
【
参考 ・引用文献】
1『 RSP可 能性試験結果報告書』2003.3
2『 公立林業試験研究機関研究成果選集No。
1』2004.3
3『 日本木材保存協会第19回年次大会研究発表論文集』2003.5
第 2章 徳 島すぎの特性 5徳
島すぎ黒心材 の性能
隠 ︶慈 隠 軍 思
︵
経過 日数 (日)
―
CryptOmerione
―
CubebOl
―
Cubenol
―
Sandaracopirnarinol
―
epiCubenol
‐キー
ーー 12-hydroxy-6,7-secoabieta‐
- 16-phy‖
ocladanol
一車
3,11,13-triene-6,7-dial
‐sandaracopirnarinal
一事洋" = T _ c a d i n o l
sヵ物ο
Sα
ttS SHlRAKl)の死虫頭数の推移
図 1 ス ギ黒心材抽出成分によるイエシロアリ にの殉″物夕
帥 ロ
MiC(/g/mL)
1ぴ
劉
1げ
Ferruginol
J ざ ぱ
ロ
単 \慈 胆劇 性ぷ
ロ
6,7‐
d ehydroferruOinol
sandaracopima「
inol
1げ
sug kurol nD
1ざ
0
00
60
接触時間 (分)
19-hydroxyferruginol
図 3 ス ギ心材 表 面 の 大腸 菌 に対 す る殺菌作 用
ο″K12W3110)を
標準増地 (NB)で 汚染 した大腸菌 伍 ご
黒心材及び赤心材に転写 した場合 の残存生菌数
cryptomerione
sug kurol nA
北消 替 憾盆
図 2 ス ギ黒心材抽出成分の黄色ブドウ球菌
/夕
″
s)に 対する最小発育阻止濃度
は α″
53
第 2章 徳 島すぎの特性 6長 伐期材の性能
( 1 ) 徳 島す ぎ長伐期検討委 員会
徳 島県 の林業 は、 ス ギ を長期 に育成 し大径材 に仕 上 げ、そ の元材 か ら害l柱や鴨居長押 な どのいわ
ゆる役物 を生産 し、 2番 ・3番 玉か らは梁材や足場板 を商品化す るな ど、高樹齢材 を素材 としてバ
ラ ンスの 良 い製品づ くりを して きた ところである。 しか しなが ら最近 の需要 ニ ーズの変化 か ら役物
製品 の市況 が悪化 し、大径材 で成 り立 って きた林業経営が成 り立 たな くな ってい る。こ うした中で、
森林機能 を高度 に発揮 させ るために政 策的 に長伐期林 へ 誘導 してい る ものの、伐採齢 など長伐期施
業 の定義 はあ い まいで あ り、そ の意味 を改めて考 える必要が出て きた。
この よ うな技術課題が現場 の林業者 らか ら提起 された ことか ら、徳 島県 では 「
徳 島す ぎ長伐期検
討委員会 (平成 15年度 (2003)∼)」 を組織 し、長伐期材 を材 質 ・利用 ・経営等 の視点 か ら総合 的
かつ科学的 に分析 し、長期 にわたる林業経営 の指針 づ くりを行 う ことと した。
( 2 ) 調 査方法
生スギ林を対象林分 と
生スギ林と那賀町木頭字折宇の1 3 0 年
①表 1 のとおり那賀町沢谷の1 0 0 年
し、 2つ の林分か ら3本 ずつ調査木 を選定 し、
表 1 調 査林分の概況
旧木 沢村 沢谷
旧木頭村 折宇
積
1.3ha
0.4ha
齢
100とこ
伐根位置 か ら採材位置 ごとに4∼ 10個の円盤 を
面
採取 し、樹幹解析 を行 うとともに、加齢 に伴 う
容積密度数、仮道管細胞 の放射径、接線径等 の
樹
133本/ha
立木密度
20∼30年毎
間 伐 歴
変化 を観察 した。
心材部か らn一 ヘ キサ ンを用 いて精油成分 を抽
出 し、液体 クロマ トグラフイーで成分分析 を行
試 料 木
② 130年生 スギ調査木 につい て樹幹解析 に供 した
樹高 m
胸高直径cm
な し
樹高 m
胸高直径cm
32.2
A
B
130とこ
218本 /ha
33.6
C
平均
62.7
い、構幹内における成分量 の比較や別途採 範
取 した48、80年生 との比較 を行 った。
如
③ 地位指数別 の樹高生長曲線 (図 1:徳 島林 _卸
総 セ 宇 水2001)と 南近畿 ・四国地方スギ 聾 :子
林分密度管理図か ら樹齢 ごとの成立本数及
拒
び立木材積 を求め、育林経費 と収穫時 の収
益予想 をし、経営 シミュレー ションを試 み
5
た。
3 ) 試 験結果 と考 察
ー
①樹幹解析 の結果、100年生林分 の調査木 2本 は連年生長量 が60年を過 ぎる頃に ピ クに達 した
後、横 ばい に転 じ、100年生 を越える頃に平均 生長量の曲線に近づいた。 1本 は100年を越 えて
も両曲線は交 わらなかった。(図2)
② 130年生林分では、調査木は樹齢40∼80年生で連年生長量が最大 とな り、100年生 まで平均生長
量 を上回つた。その うち 2本 は100年を越す と両曲線が交 わ り連年生長量 は平均生長量 を下回 つ
たが、1本 は130年を越えても両曲線 は交 わらなかった。(図3)
54
第 2章 徳 島す ぎの特性 6長 伐期材 の性能
③調査木 の容積密度数 は加齢 に伴 い漸減
た。細胞 の接線径 につい ては樹齢 100
年生 までは緩やかに増加 し、その後横
ばいで推移する傾向が見 られた。
007
舎E︶ 叫=樫茶
しつつ も極端 な低下 は見 られ なか っ
008
006
005
004
003
002
0 0 1
④成分分析 の結果、130年生の高樹齢材
0
は48年生 、80年生の材 に比べ てヘ キサ
樹齢 (年)
ン抽出量が多 かった。(図4)
図 2 1 0 0 年 生 スギの 生長 曲線
また、抗 蟻成分 のセス キテル ペ ン
は″
ふ材外層 に向 かって増加す る傾 向が
見 られたが 、抗菌成分 で あるジテ ルペ
ン (ferrugin01、
sandaracopimarin01)
は部位 に よって多寡 の 傾 向 が異 な っ
007
介E︶ 則叫電裡革
(cryptomerione、16-phyllocladan01)
008
006
005
004
003
002
001
000
た。(図 5、 6)
樹齢
高樹齢材 に殺蟻活性、抗菌活性 に富
(年 )
図 3 1 3 0 年 生 スギの生長曲線
む成 分が多 い とい う ことは、長伐期材
の優位性 とな り、商品 の差別化 につ な
300
250
が るもので ある。 また抽 出成分の樹幹
200
内分布 は、 スギ材 の適材適所 の利用 に
150
お い て重 要 な示 唆 を与 え る もので あ
100
る。
50
0
80
樹 齢
図 4 樹 齢別 のヘ キサ ン抽 出量
差
■奮
と
墳
差 鼻 を 空
岳
, : 車碑
静
毒ヨ 露塞 義
最, 車
―
埼 二露
キま
韻
ltg
強
-
1ヨ
.幕
t岳.布
寄 装 荘 車 喜 確 賛 車 ” 掛
軒 譲
章.ね
と
お
,ぉ争中
,表 .言,
11“草こ と予rf
章 士疑
図 5 殺 蟻活性成分 の樹幹内変動
55
第 2章 徳 島す ぎの特性 6長 伐期材 の性能
韓 韓やい 韓 軸 中
類 鯨
建
⑤伐採収 入 と経費 を構成す る
鷲 暮
因子 をぞれぞれ の時期毎 に
試算 し、利益 が プラス にな
る ところを経営的 に最適 な
伐期 とした。
支予測 を し、変動損益計算
お な 熊 韓
費 と伐採収益 か ら将来 の収
始由 韓i韓
時 摯 魯 毒 導 梅 お お
お 客 義 t
費 モデルを設定 し、必要経
懐摩お韓事車壊
1ヘ クター ル あ た りの経
輔
れ
いぶ 様 ど
の手法 を用 いて損益分岐点
生産量 を求め、立木成立本
図 6 抗 菌活性成分 の樹幹内変動
数 で除 した 1本 あた りの素
材材積 を算 出 し、地位指数
ごとに損益分岐″
点に達す る
林齢 を求 めた。(図 7)
⑥ その結果、地位指数22∼26
の 中 の上 ク ラス で は100年
伐期 を設定す るのが適当で
あ った。地位指数 16以下、
す なわち40年生 で上 層木 の
樹高 16メ ー トル以 下 の森林
で は、100年生 まで の 長伐
図 7 ス ギ人工林成立本数 と立木材 積
期化 では経済的 に困難 となる可能性が高 い ことがわかった。
この よ うに、長伐期 にわたる施業方針 を決 める際 には、地位指数 を用 いて4 0 年生時の樹高か
ら将来 の収支見込 み を判断す ることが有効である。
(4)長 伐期 の有効性 は
樹 幹 解析 や細 胞 観 察 か らは、長伐 期 林 は年 齢 を重 ね て も生 長 を続 け て い る こ とが 確 認 され たが 、
周 囲 の 環境 や施 業 に影 響 され る こ とが 示 唆 され た。 また成 分 分析 か らは長伐 期 材 の 優位 性 が 、経 営
岡田)
シ ミュ レー シ ョンか らは地位 指 数 を用 い た経 営 予 狽Jが有 効 で あ る こ とが 明 らか にな った 。 (ネ
参考 ・引用文献】
【
1『 徳島県木頭地方 における100年生スギの成長 と材質』 三好悠 ・野測正 第115回日本林学会大会 20∽
2『 スギ心材成分含有量の樹幹内での比較一 その 1 徳 島県産樹齢130年スギについて』 辻 直 村、梅山明美、
吉川和子、在原重信、網田克明 第55回日本木材学会大会 2005
一
3『 長伐期林 を解明する』 一第 3章 徳 島県長伐期検討会の中間報告から 綱田克明、市瀬雅志 林業普及双
J壬2006.3
第 2章 徳 島す ぎの特性 7徳
島す ぎ内装材 の快適性
( 1 ) はじめ に
温か さな どの快適性評価 には PMV(Predicted
表 1 温 冷感のカテゴ リー スケ ール
PMVの スケール
mean vOte)値 が使 われる。 これは人体 の熱的中
温冷感 カテゴ リー
立温 度 を予 測す る快適方程式 によ り算 出 された温
+ 3
か な り暑 い
熱環境指標 で ある。温熟状 態 を大多数の人の感覚
+ 2
暑い
warm
的評価 に合 う よ うに、0(暑 くも寒 くもない状態、
+ 1
やや暑 い
s‖ghtly warm
い)∼ -3(寒
中立値 )を 中心 に+3(暑
い)の
0
7段 階 に分 け、±0.5の範 囲が′
快適 とされる。PMV
中立
-1
やや寒 い
slightly cOol
の算定 にあた っては居住者 の代謝量、着衣量 を定
-2
寒い
C001
め、室内の作用温度、湿度、気流速度 を波l定 して
-3
か な り寒 い
求 める。 ここで作用温度 とは、気温 と平均放射温度 の影響 を勘案 した総 合的な温熟 指標 で ある。 ヒ
トが感 じる体感温度 は部屋 の気温ではな く身体 か らの熱 の逃 げであることか ら、
作用温度で評価 す
るのが有効 で ある。
(2)オ
フ ィス ビル での 験
快適性 の測定 を徳 島市 内 のオフィス ビル で実施
した。壁面が モル タル仕上 げ、床が ビニ ー ルアス
ベ ス トタイルの部屋 (以下、隣室 と呼 ぶ )と 、徳
島す ぎ厚板30ミリの表面熱圧処理材 (床との 間に30
ミの
リ 根太 を施 工 )を 施工 し、壁 には杉集成材 (厚
さ10ミ
リ
)と 和紙 クロス を貼 った部屋 (以下、木 の
部屋 と呼 ぶ)と で室内気候 を比 較 した。
測定 は、平成12年 2月 7日 ∼ 2月 8日 の 2日 間
徳島すぎで内装 した室 内
で行 った。 2 月 7 日 は 日平均 気温 は7 . 1 ℃と比較的 暖か い 日となった。翌 2 月 8 日 には
冬型 の気圧
配置が強 ま り、徳 島県内 に寒気が流れ込み小 雪 の ち らつ く天候 となった。
2 月 7 日 午前 1 1 時か ら1 0 分間、木の部屋 の P M V 値
は - 0 . 5 か ら+ 0 . 5 近 くまで上 昇 した。 一 方、
隣室 は1 1 時3 0 分か ら1 0 分間、 - 0 . 5 ∼ 中立値 0 の 範 囲 で推 移 した ( 図 1 ) 。 翌 日、午前 1 0 時か ら1 0 分
は 0 ∼ + 0 . 5 の 範 囲 で 推 移 した。 一 方、隣室 の P M V 値 は1 0 時3 0 分か ら1 0
0
.
5
を
分間、
上限 に、低 め に推移 した。 つ ま りやや寒 い状態であった ( 図2 ) 。
間、木 の部屋 の P M V 値
図 3 は 2 月 7 日 の 2 つ の部屋 の床 ・壁 の表面温度 と作用温度 との 関係 をあ らわ した ものである
。
lf
1
t15
ト
= 8
t15
ホ中郡屋
メ
脱
→
-l耳
1削
1出 1 11出
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11 34 1ln3 1既
l tal〕モ
1的 J[11詢 中 Hl■ ■ [l tatlモ
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l J料
1出 r l阻
l t33 11・m
電lt●■[11』‖ [1的 叫 tllJ中
図 1 二 つの部屋 の快適性 ( 冬期 : 暖 房 あ り)
57
第 2章 徳 島すぎの特性 7徳
島すぎ内装材の快適性
15
1
>
05
や A‐
rf一 ゃ す■ 、ィ
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・
木 の部 屋 (暖房 あ り)
4__trキ
― f‐
【ふ す‐曳 ャ す
重 0
木 の部屋 (暖房 な し)
‐
05
‐
―
一ヽ
‐す 、F― ― ‐一・
年
y v
隣室
1
‐
1 5
10:00
10:01
10:02
( 1 0 : 3 0 ) (10:31)
( 1 1 0」)
(10i32)
(11:11)
(11:12)
10:04
10:05
(10i34)
10:07
(10:35)
(1114)
(10:37)
(1lH5)
(1lH7)
図 2 二 つの部屋 の快適性 ( 冬期)
この 日は翌 日に比 べ だいぶ 暖 かかったが、木 の部屋
東
面
と隣室 との差が明 らかである。
︵中
木 の部屋
寒 苺S
F
北面
床面
ぎ 車 まま
ざ﹂
章 ヽ
室
と 隣
床 面
トで 囲 まれた隣室 は、床 ・壁 の表面温度 が低 く、作
媒
鮮
東 面
く、作用温度 も高 くな っている。 一 方、 コンクリー
然
作 用 温度 ℃
す なわ ち、木 の 部屋 で は床 ・壁 の 表 面 温 度 が 高
警
用温度 も低 くな った。表面温度が作用温度 に影響 し
17
19
21
床 ・壁 の表面温度 ℃
た もの と推察 される。
23
図 3 床 ・壁表 面温 度 と作用 温度 の 関係
注)木 の部屋 (床:杉厚板、壁北面 :和紙クロス、
壁東面 :杉集成材)隣 室 (床:Pタ イル、壁 :モルタル)
(3)徳 島す ぎの熱 的特1生
今 回の施 工材料 として用 い た徳 島す ぎ厚板30ミリに
つ い て、熱 伝 導 率 を測 定 し
表 2 徳 島す ぎの熱伝 導率
単位 :W/m・ K(℃ )
ヽ
亡
部)に 比 べ て 赤 身 材 (″
材
材種
さほ ど低下 しなか った。 しか
①有
赤身
(心材)
し、その値 は従来 か ら用 い ら
れ るス ギ 材 の 値 の 範 囲 内 で
あ った。
建築材料 としてスギの需要
展開 を図るためには、 ス ギ厚
板 を供 給 で きる林 業 地 の メ
熱伝導率 の値 だ けでな く、物
理的な厚みや施工性等 によ り
断熟性 を確保す ることな ど、
工 夫 が必 要 である。 (網田)
②無
③有
白大
(辺材)
含水率(0/0) 密度(kg/甫)
④無
20℃
0 コ
1 1 0
0コ100
(40.4)
(19.8)
0.108
0.095
(40.7)
(20.0)
0.100
0.088
(40.7)
(20.0)
0.100
0.087
(40.6)
(20.0)
0℃
0.088
(-0.3)
0.086
(-0.4)
0.081
(-0.6)
298
0.078
(
0 . 0 )
注 1 ) 」i S A 1 4 1 2 - 2 : 1 9 9 9 「
熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法 一第 2
部 : 熱 流計法 ( H F M 法 ) 」により、 ( 財) 日 本建築総合試験所で測定
注 2 ) l k c a y m ・h ・℃ = 1 . 1 6 3 W / m ・K
E>こ鞘紺単憲
0・
リッ トを強調す る とともに、
測定温度条件
40℃
音悟
)、あ る い は無処 理材 に比
べ て熟圧処理材 の熱伝導率 は
圧理
熱処
た。そ の結果、 白太材 (辺材
012
011
011
010
009
008
00乙括
10
20
30
40
50
試験体平均温度 ( ℃)
図 4
徳島すぎの熱伝導率の測定
【
参考 ・引用文献】
1『 徳島す ぎ内装材の快適性評価』網田克明 徳島県林総セ研究報告36号 2001.3
2『 エネルギー ・資源の 自立循凍型住宅 ・都市基盤整備支援 システムの開発』自立循環型住宅開発委員会報告
書 (財)建 築環境 。省エネルギー機構 20倣.3
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