...

分析電顕を用いた Nb–Cr–Ti 三元系合金の組織評価 - J

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

分析電顕を用いた Nb–Cr–Ti 三元系合金の組織評価 - J
日本金属学会誌 第65巻 第 5 号(2001)389–396
特集「分析電子顕微鏡法による材料評価」
分析電顕を用いた Nb–Cr–Ti 三元系合金の組織評価
吉 田 光 彦1
八重樫 祟1,
進 藤 大 輔2
高 杉 隆 幸3
村 上 恭 和2
1宮城工業高等専門学校材料工学科
2東北大学素材工学研究所
3大阪府立大学大学院工学研究科材料工学分野
J. Japan Inst. Metals, Vol. 65, No. 5 (2001), pp. 389–396
Special Issue on Materials Characterization by Analytical Electron Microscopy
 2001 The Japan Institute of Metals
Evaluation of Microstructures of Nb–Cr–Ti Alloy System by Means of Analytical
Transmission Electron Microscopy
Mitsuhiko Yoshida1, Takashi Yaegashi1,, Yasukazu Murakami2,
Daisuke Shindo2 and Takayuki Takasugi3
1Department
2Institute
of Materials Science and Engineering, Miyagi National College of Technology, Natori 981–1239
for Advanced Materials Processing, Tohoku University, Sendai 980–8577
3Department
of Metallurgy and Materials Science, Osaka Prefecture University, Sakai 599–8531
The phase diagram of Cr–rich portion of ternary Nb–Cr–Ti alloy system at 1523 K is investigated by means of X–ray diffraction, optical microscopy and analytical transmission electron microscopy.
In the region of single phase of (Nb, Ti)Cr2 intermetallics, Laves phase shows C36 dihexagonal structure in the Nb concentration between 0 molNb and 4 molNb. In the range of the Nb concentration more than 12 molNb, Laves phase shows C15
face centered cubic structure. On the other hand, the region of duplex structure consisting of C36 and C15 phase is within the
range of the Nb concentration between 4 molNb and 12 molNb. The solubility limit of Nb in Cr solid solution is as small as
less than 0.5 molNb. The maximum solubility limit of Cr in Laves phase equilibrated with Cr–b.c.c. solid solution is in a range of
about 67~69 molCr depending on a content of Nb and Ti elements. The eutectic path on the Cr–rich portion of the ternary
Nb–Cr–Ti alloy system lies in the Cr concentration line between 75 molCr and 80 molCr, and ends at the point of Nb concentration between 10 molNb and 15 molNb.
(Received November 17, 2000; Accepted January 19, 2001)
Keywords: Laves phase, phase diagram, microstructure, niobium–chromium–titanium alloy system, electron–despersive X–ray
spectroscopy
織の観察や微小領域の定性および定量分析が可能な分析電子
1.
緒
言
顕微鏡(分析電顕)を用いて,Nb–Cr–X (X =Mo, V, W )三元
系状態図の高温等温断面図も明らかにしてきた10,11).
ラーベス相金属間化合物は AB2 の組成をもち,結晶構造
一 方 , TiCr2 ラ ー ベ ス 相 を 含 む Ti–Cr 合 金 , あ る い は
は元素の組み合わせに応じて C14 型( MgZn2 型), C36 型
Nb–Cr–Ti 合金は将来の構造材料,機能材料として有望視さ
(MgNi2 型)および C15 型(MgCu2 型)の三つの構造に分けら
れ,微細組織12) や機械的性質に及ぼす水素の影響13) をはじ
る.それぞれ,HCP, DIHCP および FCC 型の結晶構造をと
めとして高温変形挙動や破壊靭性に関して多くの研究14–19)
る.これらラーベス相金属間化合物に関しては超伝導1)や水
がある.
素吸蔵2)等の研究があるが,一方で,C15 構造のラーベス相
従来の研究によれば, Ti は NbCr2 において Nb と置換す
は高融点でもあり,また対称性の良い FCC の結晶構造を組
る こと が知ら れて いる20,21) . 一方 , 1673 K にお ける Nb–
むことから高温における高い変形能が期待され,高温変形挙
Cr–Ti 三元系合金の等温断面図に関しては D. J. Thoma22)の
動が研究されている3–5).
報告がある.彼等の結果と従来得られている Nb–Cr, Nb–Ti
筆者等はラーベス相の中で NbCr2 が高融点(2043 K )で低
および Ti–Cr 二元系状態図23) を合わせて Fig. 1 に示す.し
密度(7.7×103 kg /m3 )であり,優れた耐酸化性6)を有するこ
かし,1673 K 以下の温度での組織制御に必要な状態図に関
とに注目し, C15 型 NbCr2 ラーベス相単相材7,8) や BCC 固
する知見は未だ得られていない.
溶体相との 2
相材の高温変形挙動を調べてきた9).また,組
現在京都工芸繊維大学大学院生(Graduate
Institute of Technology)
Student,
Kyoto
本研究では,以下の点に着目し分析電顕を用いて組織評価
 1523 K における TiCr2–NbCr2 擬
を行ったので報告する.

二 元 系 の C15 相 と C36 ( C14 ) 相 と の 共 存 領 域 の 決 定 . 
390
第
日 本 金 属 学 会 誌(2001)
65
巻
Fig. 1 Binary phase diagrams of Nb–Cr, Nb–Ti and Ti–Cr alloy systems and isothermal section in ternary Nb–Cr–Ti alloy system at
1673 K22,23).
 Cr 富化
ラーベス相と Cr 固溶体相との相境界線の決定.
側の Nb–Cr–Ti 三元系における Nb および Ti 添加量の増減
に伴う共晶組成の変化.
2.
実
験
方
法
Nb ( 99.5 mass ) , Ti ( 99.9 mass ) , Cr ( 99.99 mass )の
溶解原料を秤量し,非消耗型タングステン電極を用いたアー
ク炉にて溶製した.配合組成は Cr 濃度 66.7 mol以上の Cr
Table 1 Nominal chemical compositions (mol) of the alloys
used in this work.
Alloy
Cr66.7Nb10Ti23.3
Cr80Nb15Ti5
Cr75Nb20Ti5
Cr90Nb5Ti5
Cr80Nb10Ti10
Cr75Nb15Ti10
Cr80Nb5Ti15
Cr75Nb10Ti15
Cr70Nb10Ti20
Cr70Nb5Ti25
Cr
Nb
Ti
66.7
80
75
90
80
75
80
75
70
70
10.0
15
20
5
10
15
5
10
10
5
23.3
5
5
5
10
10
15
15
20
25
富化側の組成を選んだ.本研究で用いた Nb–Cr–Ti 三元系
合金の組成は Table 1 に示す.これらの試料の作製に際して
は,組成の均質化,濃度偏析を防ぐ目的で,ボタン状インゴ
各合金の構成相の同定には光学顕微鏡(光顕)や X 線回折
ットはアーク炉内にて 5 回ないし 6 回にわたって溶解をく
を利用した.X 線回折には Cu–Ka 線を用い,粉末状試料を
り返した.得られた約 30 g のボタン状インゴットは真空中
準備して加速電圧 40 kV, 35 mA の条件で行った.光顕観察
Pa )1523 K の温度にて 86.4 ks 保持し,炉中にて室
は通常の光顕の他微分干渉顕微鏡も用いた.試料は鏡面研磨
温まで冷却した.溶解前後のボタン状インゴットの質量変化
した後,過塩素酸 –メチルアルコール溶液にて電解腐食を行
(~ 10-3
は 0.3 以下で,また均質化熱処理後の質量変化も十分小さ
い,光顕観察に供した.微細組織観察には透過電子顕微鏡
いことから,所定の合金組成が得られたとして以後の実験に
(電顕) JEM–2000EX を加速電圧 200 kV で用いた.構成相
供した.
中の元素分析には JEM–3010 分析電顕を使用し,加速電圧
第
5
号
分析電顕を用いた Nb–Cr–Ti 三元系合金の組織評価
300 kV で組織観察および定量分析を行った.
電顕観察用試料は 0.15 mm の厚さまで機械的に研磨した
391
れている部分(矢印 a )と平坦な部分(矢印 b )が観察される.
Fig 3 にはその試料から得れれた X 線回折ピークを示す.
後,約 200 K の温度に冷した過塩素酸–メチルアルコール溶
C15, C14 および C36 相の回折ピークは互いに重なり合うた
液で電解研磨して作製した.
め C15 相の回折ピークと重複しない HCP 相 C14 と C36 相
のピークに矢印 h を記し,C15 相固有の620反射ピークには
3.
実験結果および考察
矢印 f を記した. Fig. 3 に示す通り C15 固有の反射ピーク
620が出現したことから C15 相の存在は認められたが,C14
Fig. 2 にラーベス相単相材 Cr66.7Nb10Ti23.3 の光顕観察組
や C36 相が存在するかは不明であった.このことを明らか
織を示す.微分干渉法で観察した結果,微細な線状組織が現
にするため電顕を用いて微細組織観察を行った.Fig. 4 にそ
の結果を示す. Fig. 4 ( a ), ( c )の明視野像では類似な組織に
見えるが,制限視野回折図形は Fig. 4 ( b )と( d )で異なって
Fig. 2 Optical microscope image of the Cr66.7Nb10Ti23.3 alloy
with microstructure consisting of C15 phase and C36 Laves
phase.
Fig. 3
X–ray diffraction pattern of Cr66.7Nb10Ti23.3 alloy.
Fig. 4 Bright–field images and corresponding SADPs in Cr66.7Nb10Ti23.3 alloy. Note that the images were taken from (a) a region
consisting of C15 phase, and (c) a region of C36 phase.
392
日 本 金 属 学 会 誌(2001)
第
65
巻
いる.解析の結果, Fig. 4 ( b )は FCC 構造から得られるパ
たことから,Nb 量の置換が約 4 mol 以下の場合は C36 単
ターンであり,典型的な双晶から得られる回折図形であった.
相領域であることも分かった.一方,後述するように Cr66.7
Fig. 4 ( b )中の矢印 t で示されたスポットは双晶による回折
Nb10Ti23.3 組成以外の合金では, Cr70Nb5Ti25 合金を除きす
スポットである.また,Fig. 2 の矢印 a で示された線状組織
べての合金が Cr 固溶体相と C15 相から構成されていること
は電顕観察の結果, C15 相内の微細双晶組織に対応してい
から,TiCr2–NbCr2 擬二元系の 66 molCr のもとでは約 12
た.一方,回折図形 Fig. 4(d)は C14 相から得られる回折図
mol  Nb 以上の組成では C15 単相領域であると理解でき
形24) と異なり, HCP
格子の二階建て構造, dihexagonal 構
た.また,Nb 元素が 4 mol<Nb < 12 molの組成範囲で
造を有する C36 相であることが分かった.この組織は Fig.
は,Cr 濃度が C15 と C36 相を結ぶ共役線上の組成を取る領
2 の平坦に見える光顕組織(矢印 b )に対応していた. Fig. 4
域では C15 と C36 相が共存することも明らかとなった.
で観察された C36 相は Nb–Cr–W 三元系合金でも同様に観
察されている11) .なお, Fig.
4 に矢印で示した場所は EDS
Fig. 6 に Cr70Nb5Ti25 の 試 料 か ら 得 ら れ た 光 顕 写 真 を 示
す.ラーベス相内に少量の Cr 固溶体相が観察される. Fig.
分析した測定箇所の痕跡である.この痕跡の大きさから,分
析領域は直径 40~200 nm の大きさと推定される.
Cr66.7Nb10Ti23.3 合金組織内の C15 および C36 相の領域か
ら得た各元素の EDS スペクトルと分析結果を Fig. 5 に示
す.測定点として同一相内の 5 箇所ないし 6 箇所を選び,
各元素の分析値は得られた値の平均値として求めた.組成の
定 量 化 は Cr–Ka ( 5.41 keV ) , Nb–La ( 2.17 keV )お よ び Ti–
Ka(4.51 keV )の特性 X 線強度を解析して行った.各種元素
の定量化に用いた k 因子は,DES システム(オックスフォー
ドインストゥルメンツ社製・ Link ISIS )に付属のデーター
ベースの値( Si を標準試料とした場合の数値)を採用した.
具体的には kCrSi = 1.100, kNbSi = 1.699 および kTiSi = 1.054 で
ある.その結果,C15 ラーベス相と C36 相中の Cr, Nb およ
び Ti の 組 成 割 合 は そ れ ぞ れ ( Nb12.1, Ti21.8 ) Cr66.1 お よ び
(Nb3.6, Ti30.3 )Cr66.2 であり,C15 および C36 のいずれのラー
ベス相も Cr 元素は約 66 mol  Cr の値を示した.このこと
から互いに平衡する C15 と C36 相を結ぶ共役線は Cr 濃度
に対してほぼ水平であることが分かった.また,Cr 濃度 66
mol のもと, Nb 濃度 4 mol 以下の合金の電顕観察では
C36 相のみが観察され C14 および C15 相は観察されなかっ
Fig. 6 Optical microscope image of Cr70Nb5Ti25 alloy with
microstructure consisting of C36 Laves phase and Cr–rich solid
solution.
Fig. 5 X–ray spectra obtained from Cr66.7Nb10Ti23.3 alloy with microstructure consisting of C15 Laves phase and C36 Laves phase,
showing the compositions in C15 and C36 Laves phase, respectively.
第
5
号
分析電顕を用いた Nb–Cr–Ti 三元系合金の組織評価
7 に同一試料 Cr70Nb5Ti25 合金から得られた X 線回折ピーク
を示す. Cr 固溶体相の回折ピークはその体積分率が少ない
393
のピークが確認される.
Fig. 10 は Cr80Nb10Ti10 の試料から得られた C15 相および
ため現れてはいない.また, C15 固有の 620 回折線( 2 u =
Cr 固溶体相の電顕像を示す. C15 相中には多くの微細な双
)は観察されず,X 線回折実験では C15 相の存在は認
88.46 °
晶が観察される.一方, Cr 固溶体相の組織には双晶は観察
められなかった.しかし, Fig. 7 に示すように C36 相固有
されず,ラーベス相と Cr 固溶体相との熱膨張率の差異12)で
の107, 209, 20 11および317の回折線の出現より Cr70Nb5Ti25
生じたひずみによって導入されたと思われる転位が観察され
合金の組織は Cr 固溶体相の他に C36 のラーベス相から構成
る.これらの組織から得られた各元素の EDS スペクトル
されることが明らかとなった.分析電顕によって得られた
C36 ラーベス相および Cr 固溶体相の各元素の組成はそれぞ
れ(Nb2.60, Ti29.8 )Cr67.6 および Cr88.6Nb0.13Ti11.3 であった.な
お , 回 折 ピ ー ク の 解 析 に は NbCr2 に 関 す る Thoma,
Perepezko25)の回折線強度計算から得られた結果を用いた.
Fig. 8 には Cr80Nb10Ti10 の試料から得られた組織を示す.
Cr 固溶体相の体積分率は,Fig. 6 に示した Cr70Nb5Ti25 合金
よりも増加していることが分かる.この組織より得られた
X 線回折ピークを Fig. 9 に示す. Fig. 9 によると, C36 相
の回折ピークは消失し,Cr 固溶体相の回折ピークや C15 相
Fig. 9 X–ray diffraction pattern of Cr80Nb10Ti10 alloy with
microstructure consisting of C15 Laves phase and Cr–rich solid
solution.
Fig. 7 X–ray diffraction pattern of Cr70Nb5Ti25 alloy with
microstructure consisting of C36 Laves phase and Cr–rich solid
solution.
Fig. 8 Optical microscope image of the Cr80Nb10Ti10 alloy with
microstructure consisting of C15 phase and Cr–rich solid solution.
Fig. 10 Bright field images of C15 Laves phase and Cr–rich
solid solution phase in Cr80Nb10Ti10 alloy.
394
第
日 本 金 属 学 会 誌(2001)
65
と 分 析 結 果 を Fig. 11 に 示 す . C15 相 の 組 成 は ( Nb18.5,
Ti12.4 ) Cr69.1 で あ っ た が , こ の 場 合 も Cr 固 溶 体 相 中 で は
Cr70Nb5Ti25 合金と同様に Nb の固容量は極めて少なく固溶
体相の組成は Cr93.6Nb0.48Ti5.92 であった.他の合金から得ら
れた結果も Table 2 に示す.この Table から判るように,
合金 Cr66.7Nb10Ti23.3 と Cr70Nb5Ti25 合金を除き,用いた合金
は C15 相と Cr 固溶体相から構成されている.また, Cr 固
溶体相と平衡するラーベス相の Cr 濃度は約 67 mol から
69 mol の値を示す.一方, Cr 固溶体中の Nb 固溶濃度は
約 0.2 mol から 0.5 mol と非常に少ない.これらの組成
に基づき作成した 1523 K の等温相境界線図を Fig. 12 に示
す.各合金の配合組成点およびラーベス相と Cr 固溶体相と
の共役線も併せて示してある.なお,TiCr2 と NbCr2 のラー
ベス相の合金組成はそれぞれの二元系状態図23) から引用し
て示した.また, Ti および Nb 富化側の相境界線は破線を
Fig. 12 Isothermal phase diagram of the Nb–Cr–Ti ternary alloy system at 1523 K determined in this work. (●) maximum
solubility points in each phase; (◯) prepared alloy compositions; (-) tie lines.
Fig. 11 X–ray spectra obtained from C15 Laves phase and Cr–rich solid solution phase in Cr80Nb10Ti10 alloy, showing the compositions in C15 phase and Cr solid solution, respectively.
Table 2
Chemical composition (mol) of Laves phase and Cr solid solution (Crss) in Nb–Cr–Ti allys by EDS.
Alloy
Cr66.7Nb10Ti23.3
Cr75Nb20Ti5
Cr90Nb5Ti5
Cr80Nb10Ti10
Cr75Nb15Ti10
C15 Laves phase
C36 Laves phase
Nb
Cr
Ti
12.1±0.92
66.1±0.71
21.8±1.3
C15 Laves phase
3.6 ±0.21
66.2 ±0.22
30.3 ±0.19
Crss
Nb
Cr
Ti
Nb
Cr
Ti
Nb
Cr
Ti
Nb
Cr
Ti
27.6±0.62
68.6±0.36
3.81±0.39
20.9±0.35
68.7±0.31
10.4±0.17
18.5±0.70
69.1±0.38
12.4±0.74
24.0±0.42
67.8±0.38
8.23±0.45
0.5 ±0.09
96.9 ±0.10
2.59 ±0.04
0.26 ±0.14
95.6 ±0.35
4.15 ±0.36
0.48 ±0.07
93.6 ±0.27
5.92 ±0.22
0.41 ±0.04
93.5 ±0.13
6.05 ±0.11
Alloy
Cr80Nb5Ti15
Cr75Nb10Ti15
Cr70Nb10Ti20
Cr70Nb5Ti25
C15 Laves phase
Crss
Nb
Cr
Ti
Nb
Cr
Ti
Nb
Cr
Ti
10.2±0.35
67.7±0.33
22.2±0.25
16.6±1.6
66.9±0.33
16.5±1.4
13.9±0.73
67.5±0.42
19.3±0.8
C36 Laves phase
0.33 ±0.16
91.8 ±0.39
7.9 ±0.27
0.27 ±0.09
93.1 ±0.19
6.56 ±0.15
0.15 ±0.08
90.5 ±0.37
9.35 ±0.34
Crss
Nb
Cr
Ti
2.60±0.54
67.6±1.03
29.8±0.53
0.13 ±0.05
88.6 ±0.34
11.3 ±0.38
巻
第
5
号
分析電顕を用いた Nb–Cr–Ti 三元系合金の組織評価
用い仮想相境界線を示した.
と こ ろ で , Nb–Cr 二 元 系 状 態 図 の Cr 富 化 側 に は
395
されている.しかし,Fig. 13(b)では共晶組織は観察されず,
Cr 固溶体相中に析出したラーベス相が観察された.従っ
の 共 晶 組 成25) が 存 在 す る . こ の 共 晶 組 成 が
て,共晶組成線は Cr 濃度 75 mol Cr と 80 molCr との組
Nb–Cr–Ti 三元系合金の Cr 富化側でどのように変化するか
成線の間に存在し, Nb 濃度 10 mol  Nb から 15 mol  Nb
Cr81.5Nb18.5
検討を行った. Fig. 13 には合金組成とそれらに対応した光
の間で途切れるような軌跡を辿るものと思われる.この結果
顕写真を示す. Fig. 13 ( c )では初晶の Cr 固溶体相と共晶組
を分析電顕で得られた相境界線図と共に Fig. 14 に示す.
織が,Fig. 13(d), (e)では初晶ラーベス相と共晶組織が観察
1523 K における等温状態図おいて共晶組成線が途切れた
Fig. 13 (a) Alloy compositions prepared to observe the microstructures and optical microscope images of (b) Cr80Nb10Ti10,
(c) Cr80Nb15Ti5, (d) Cr75Nb15Ti10 and (e) Cr75Nb20Ti5 alloys.
396
日 本 金 属 学 会 誌(2001)


第
65
巻
Nb–Cr–Ti 三元系合金において Cr 富化側固溶体相と
ラ ーベ ス相 との 相境 界 線が 判明 した . Cr 固 溶体 の Nb の
固溶 量は 0.5 mol  Nb 以内で あった.また , Cr 固溶体 相
と 平 衡 す るラ ー ベ ス 相の Cr 濃 度 は約 67 mol  Cr か ら 69
molCr の値を示した.


Cr 富化側におけるラーベス相(Nb, Ti)Cr2 と Cr 固溶
体相の共晶組成は Cr 濃度で, 75 mol  Cr と 80 mol  Cr と
の間に存在し,Nb 濃度では,10 mol Nb から 15 mol Nb
の間で途切れるような組成線を示した.
文
Fig. 14 Isothermal phase diagram of Nb–Cr–Ti ternary alloy
system at 1523 K showing the phase boundaries and eutectic
path determined in this work.
理由は以下のように理解できる.Ti–Cr 二元系状態図では高
温部では全率固溶型であり,Ti–66.7 molCr 近辺にラーベ
ス相が存在し,ラーベス相の生成温度(1643 K)以下では Cr
固溶体中にラーベス相が析出する23) .一方, Nb–Cr 二元系
ではラーベス相の融点は 2043 K であり,共晶組成と共晶温
度はそれぞれ Nb–81.5 molCr と 1893 K である25).ここで,
Nb, Cr, Ti の融点はそれぞれ 2783 K, 2163 K, 1953 K で Ti
が一番低い.融点の低い Ti の添加量を増やしたことでラー
ベス相中の Ti の占める割合が増加した結果,( Nb, Ti ) Cr2
の融点あるいは生成温度が下がり,ラーベス相が Nb–Cr–Ti
固液相線から離脱し,Ti–Cr 二元系状態図型23)へ移行したも
のと考えられる.その結果,合金組成 Cr80Nb10Ti10 の試料
では冷却時,溶融状態から Cr 固溶体相が晶出し,凝固組織
が完全に Cr 固溶体相におおわれた後,温度の低下に伴い Cr
固溶体中にラーベス相が析出した組織(Fig. 13(b))が観察さ
れたものと理解できる.
結
4.
言
本研究では 1523 K における Nb–Cr–Ti 三元系合金の Nb,
Ti 添加量の増減に伴う組織変化および相境界を組織観察,
X 線回折および分析電子顕微鏡を用いて調べ,以下の結果
を得た.


TiCr2–NbCr2 擬 二 元 系 に お け る C15 + C36 二 相 共
存領域は Cr 量一定条件(約 66 mol  Cr )のもとでは,約 4
mol  Nb から約 12 mol  Nb の間の組成範囲であった.一
方 , Nb 量 が 4 mol  Nb 以 下 と 12 mol  Nb 以 上 の濃 度 で
は,ラーベス相の結晶構造はそれぞれ C36 と C15 構造であ
った.
献
1) F. Chu, Z. W. Chen, C. J. Fuller, C. L. Lin and T. Mihalisin: J.
Appl. Phys. 79 (1996) 6405–6407.
2) K. Aoki, X–G. Li and T. Masumoto: Acta Metall. Mater.
40(1992) 221–227.
3) J. D. Livingston and E. L. Hall: J. Mater. Res. 5(1990) 5–8.
4) M. Takeyama and C. T. Liu: Mater. Sci. Eng. A132(1992) 61–
66.
5) J. H. Xhu, C. T. Liu and P. K. Liaw: Intermetallics 7(1999)
1011–1016.
6) H. J. Goldschmidt and J. A. Brand: J. Less–Com. Met. 3(1961)
44–61.
7) T. Takasugi, S. Hanada and M. Yoshida: Mater. Sci. Eng.
A192/193(1995) 805–810.
8) T. Takasugi, M. Yoshida and S. Hanada: Acta Metall. Mater.
44(1996) 669–674.
9) M. Yoshida and T. Takasugi: Mater. Sci. Eng. A224(1997) 77–
86.
10) M. Yoshida and T. Takasugi: Mater. Sci. Eng. A224(1997) 69–
76.
11) M. Yoshida and T. Takasugi: Mater. Sci. Eng. A262(1999)
107–114.
12) K. C. Chen, S. M. Allen and J. D. Livingston: J. Mater. Res.
12(1997) 1472–1480.
13) T. Sugiyama, H. Hosoda and S. Hanada: J. Japan Instit. Metals,
63(1999) 1535–1544.
14) R. L. Fleischer and R. J. Zabala: Metall. Trans. A. 21A(1990)
1951–1957.
15) R. L. Fleischer and R. J. Zabala: Metall. Trans. A. 21A(1990)
2149–2154.
16) K. S. Chan and D. L. Davidson: JOM. (9)(1996) 62–67.
17) D. L. Davidson and K. S. Chan: Scr. Mater. 38(1997) 1155–
1161.
18) K. S. Chan, D. L. Davidson and D. L. Anton: Mater. Trans. A
28A(1997) 1797–1808.
19) D. L. Davidson, K. S. Chan and D. L. Anton: Mater. Trans. A
27A(1996) 3007–3018.
20) H. Okaniwa, D. Shindo M. Yoshida and T. Takasugi: Acta
Metall. Mater. 47(1999) 1987–1992.
21) P. G. Kotula, C. B. Carter, K. C. Chen, D. J. Thoma, F. Chu and
T. E. Mitchell: Scr. Mater. 39(1998) 619–623.
22) D. J. Thoma: Ph. D. Thesis, University Wisconsin, Madison,
Wi, (1992) available from University Microfilms, Ann Arbor,
MI.
23) T. B. Massalski, J. L. Murray, L. H. Bennett and H. Baker: Binary Alloy Phase Diagram, (A.S.M, Metal Park, OH, 1986).
24) C. W. Allen, P. Delavignette and S. Amelinckx: Phys. Status
Solidi, (a) 9(1972) 237–246.
25) D. J. Thoma and J. H. Perepezko: Mater. Sci. Eng. A156(1992)
97–108.
Fly UP