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産業廃棄物であるカキ殻の土木材としての特性
【13】 全地連「技術e-フォーラム2005」仙台 産業廃棄物であるカキ殻の土木材としての特性 (株)菊池技研コンサルタント 1. はじめに ○久保田 鈴 木 高 橋 光 喜 真 理 司 試験は砂置換法で行った。密度は表-2に示すように転圧 岩手県では年間約1万トンのカキ殻が生産され,その の回数が増えるほど乾燥密度が高くなる。締固まり度は ほとんどが産業廃棄物として野積みされており,有効な 1回転圧で管理基準(最大乾燥密度1.06の90(%)程度) リサイクル方法の確立が急がれている。 γd=1.0(g/cm3)に締固まり,路床に十分な90(%)以上 本試験は, カキ殻材を活用するにあたり,カキ殻の土 の密度が得られ,締固まり易い材料である 表-1 木材料としての特性を把握することを目的として実施し 含水比 試験は一般の土質材料試験を適用し,締固め特性,C 2. カキ殻材の特性 試験に用いたカキ殻は,野積みされている一般的なも のを使用した。締固め試験は JIS 規格で定められた B-b (g/cm ) (g/cm ) 1.266 0.972 91.3 3回転圧 31.7 1.405 1.068 100.3 5回転圧 30.5 1.456 1.115 104.7 7回転圧 29.8 1.569 1.209 113.5 (%) (2) 粒度特性 カキ殻材は脆く締固めに伴なって粉砕されて細粒化す るため,粒度変化の状況を確認した。 試験対象とした試料は,突固め用ランマーで粉砕した。 試験結果は図-2のとおりである。細粒化の状態は, (1) 締固め特性 ① ①室内試験結果 平均粒径D50 を基準した変化 20(mm) → 10(mm) →5(mm) →4(mm)→ 2(mm) カキ殻材の締固め密度は,図-1に示すように,乾燥密 ② 度ρd=1.03~1.06(g/cm3)の範囲でばらつき,曲線は らつきは3%程度と小さいため,同じ締固めエネルギー では含水比に関係なくほぼ一定の密度が得られるという いる。 100 ことが言える。最大乾燥密度γd=1.06(g/cm ),管理基 90 3 準は路体並み密度ρ80=0.90(g/cm ),路床並み密度ρ85 80 3 =0.95(g/cm )である。 無粉砕 17回 突 固 42回 突 固 67回 突 固 92回 突 固 通過質量百分率(%) 70 1.10 1.09 1.08 25(%) →45 となっており,突固め回数が増えるごとに細粒化して 3 乾燥密度-含水比曲線 粒径 10(mm) を基準とした変化 (%) →65(%) →70(%) →80(%) 一般土砂で示すような凸型を示さない。しかし,そのば 60 50 40 30 1.07 20 1.06 10 3 ) 締固め度 3 30.3 CBR試験,設計CBR試験を準用し,17回,42回,67 回,92回の4種類とした。 乾燥密度 3 (%) 法を採用した。締固め特性およびCBR,透水性の把握 のため,突固め回数を変化させて試験した。回数は修正 最適含水比W=30.4(%) 湿潤密度 1回転圧 BR値および透水性,細粒化の程度を確認した。 乾燥密度ρd(g/cm 現場密度試験結果 最大乾燥密度γd=1.065(g/cm3) たものである。 1.05 0 1.04 1 10 粒 径 ( mm) 1.03 図-2 1.02 カキ殻材の粉砕状況 1.01 1.00 (2) 締固め密度と CBR、透水係数の関係 0.99 0.98 10 15 20 25 30 35 40 45 含水比(%) 図-1 締固め試験結果 ②現場密度特性 現場での転圧は,重機(バックホー12t)で行った。密度 図-3に示すように,密度およびCBR値は突固めの回 数が増えるほど高い値を示す。 透水係数は,突固め回数が多くなるほど(密度が高くな るほど)透水性は悪くなっていくが,k=1×10-2~10-4 と良好な透水性を示す。 100 全地連「技術e-フォーラム2005」仙台 泥濘化する。また,草類が繁茂するため走行性や景観が 突固め回数(回) 0 20 40 60 80 100 1 × 1 00 悪化する。 ⅲ.表層部が泥質化することによって透水性が悪くなり 1 0 - 11 透水係数(cm/s) 水溜りとなる。 1 0 - 22 したがって,トラフィカビリティの改善など短期的改 1 0 - 33 善や道路盛土材や路盤材として長期的に使用する場合に 1 0 - 44 は,舗装をするなど表層を覆う必要がある。 1 0 - 55 ③土壌改良材 軟弱な土砂にカキ殻材を混合し, 改良材として用いる。 1.4 3 乾燥密度(g/cm ) また,表層部に敷き詰める(敷き砂利の代用)ことによっ て,重機やダンプトラックの走行性(トラフィカビリテ 1.2 ィ)の改善が可能である。ただし,施工後の地耐力の確認 1 を原位置で平板載荷試験を行って確認する必要がある。 サンドマットに求められる透水性は,透水係数k≧1× 0.8 10-3(cm/s)でありカキ殻材では重機転圧5回以下(バック 50 ホー12tでの目安)で得られる。 CBR(%) 40 ④フィルター材として使用 30 カキ殻は,転圧の程度によって礫材~砂質土と同等の 20 透水性 (k≧1×10-4(cm/s)) を有するため湧水対策用の 10 フィルター材や暗渠の代用として使用できる。 0 0 20 40 60 80 100 ④ 舗装材料として使用 カキ殻は透水性が高いため排水性がよく,透水舗装で 図-3 求められる透水係数(k≧1×10-2(cm/s)) を確保できる。 密度と CBR,透水係数 そのため,透水性舗装の代用として有効である。ただし, (3) 現場施工の概略値 試験結果から,重機(バックホー12t)転圧を行ったと きの密度等の概略値を表-2に示す。 表-2 細粒化の進まない場所に適している。 現場転圧回数と密度,CBRの関係(目安) 乾燥密度 4.今後の課題 締固め度 透水係数k CBR(%) (%) (cm/sec) 重機転圧 回数 (g/cm3) 1.0 90 10 - 3回転圧 1.1 100 15 1×10-2 5回転圧 1.15 105 20 1×10-3 25 -4 1.2 115 1×10 今回の調査では細粒化の状況,締固め特性と密度およ びCBR値を把握することができた。今後の課題として 1回転圧 7回転圧 細粒化するため,一般車両の駐車場や歩道,散策道など 以下が挙げられる。 ① 盛土材として使用した場合の長期圧縮性 盛土材(路体や路床、サンドマットなど)として使用し た場合,長期間の荷重に対しての圧縮の程度が問題とな る。このため,盛土に使用した箇所の長期の沈下観測を 3.土木材としての適応性 実施する必要がある。 ①盛土材 ② 材料としての劣化度 少ない転圧回数でも高い密度に締固まり,強度もでや 長期間放置されるカキ殻材の劣化による強度低下や舗 すいため良質な材料であるといえる。また,単位体積重 装材として利用した材料の劣化による変状,盛土材とし 量は,γ=1.4(g/cm )(締固め度 100%のとき)と軽く, て利用した場合の劣化による盛土の沈下などの問題があ 軽量盛土として有効である。 る。このため,スレーキング試験などの浸潤・乾燥繰り ②路盤材 返し試験などを実施する必要がある。 3 CBR 値は数回の転圧で20(%)以上と硬く,クラッシャ ーランの代用が可能である。また,透水性が良いため凍 《引用・参考文献》 上抑制層としても有効である。しかし,細粒化するため 1) 地盤工学会編:土質試験の方法と解説,2000.3 表層部に敷き詰めたまま(敷き砂利の代用)では, 2) 地盤工学会編:地盤調査法,1995.9 ⅰ.表層の細粒化が進み強度が低下するため,わだち掘れ や窪みが発生し走行性が悪くなる。 ⅱ.雨水や車両による泥の流入や持込で表層部の汚れや