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インターナビ・フローティングカーシステムと 渋滞予測について

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インターナビ・フローティングカーシステムと 渋滞予測について
39
インターナビ・フローティングカーシステムと渋滞予測について
● 交通における予知・予測/報告
特集 インターナビ・フローティングカーシステムと
渋滞予測について
今井 武*
柘植正邦 菅原愛子***
**
現在、VICS情報は主要幹線など限られた路線しか提供されていない。そこで、従来の
VICS情報に加えて会員の車がVICS情報の提供されていない道路を走行した際の走行状況
を収集し、よりきめ細かい交通渋滞情報を提供するフローティングカーシステムを自動車
メーカーとして世界で初めて2003年9月に実用化した。
*
**
***
特に力を入れているのが、渋滞情報の提供である。
1.はじめに
たとえば他のカーナビでは得られない脇道などの渋
インターナビ・プレミアムクラブは、Hondaが提
滞情報も、Honda車どうしで走行情報を共有するシ
供しているテレマティクスを中心としたドライブサ
ステム(世界初「インターナビ・フローティングカ
ポートサービスである。カーナビと携帯電話を利用
ーシステム」)で取得し、より短時間のルートを案
して車とインターナビ情報センターをつなぎ、先進
内するなど、渋滞回避のための情報精度をどこまで
のさまざまな情報サービスを行っている。なかでも
もつきつめている。人のストレスを解放すると同時
* 本田技研工業㈱インターナビ推進室室長
Gene
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* * 本田技研工業㈱インターナビ推進室技術主任
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* * * 本田技研工業㈱インターナビ推進室
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原稿受理 2
0
06年1月1
0日
IATSS Rev
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3
1,No.
1
に、渋滞の解消で燃費を向上し、経済的なロスをな
くすことにより、社会のストレスも解放することが
目的である。
2.インターナビ道路交通情報システム
インターナビ道路交通情報システムとは、ユーザ
ーからのリクエスト型であるオンデマンド交通情報
提供サービスのことである。このサービスは200
2年
39
( )
June,
2006
4
0
今井 武、柘植正邦、菅原愛子
1
0月から「インターナビVICS」というサービス名で
運用開始をしている。
現在のVICS(Veh
i
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ommun
i-
た最適ルートをユーザーに提供するものである。
3.インターナビ・フローティングカーシステム
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t
em)情報は、FM多重放送による都道府
Hondaは従来のVICS情報に加えて、ユーザーが
県単位の主要道路の情報提供や、光・電波ビーコン
VICS情報の提供されていない道路を走行した際の
による限られたエリアでの情報提供である。このた
走行状況を収集し、よりきめ細かい交通渋滞情報を
めルート探索に必要な、主に交差点間やインターチ
提供するインターナビ・フローティングカーシステ
ェンジ間の所要時間である区間所要時間(リンク旅
ムを、自動車メーカーとして世界で初めて工場純正
行時間)の情報が、高速道路はFM多重放送や電波
HDDナビで20
03年9月に実用化した。
ビーコンから提供されるものの、一般道では光ビー
このフローティングカーシステムとは、まず交通
コンから狭い範囲(1
0∼30km)でしか提供されない
情報が必要と思われるにもかかわらずVICS情報が
ため、県をまたいだ目的地までドライブするような
提供されていない路線・区間(リンク)をあらかじめ
時は、出発時に最短時間ルートがわからず途中で情
設定し、計測対象とする。次にその計測対象リンク
報を取りながらルート変更をしていた。そこでイン
をユーザーが走行した際の所要時間情報をナビで自
ターナビ道路交通情報システムでは、VICSセンタ
動メモリし、次回ユーザーが交通情報を入手するた
ーとインターナビ情報センターをオンラインで結び、
めに、インターナビ情報センターにアクセスした際、
リンク旅行時間を含めた全国の道路交通情報が携帯
これまで蓄積された情報が同時にセンターに送信さ
電話を通じて得られることでユーザーの目的地が全
れるG
i
ve & Takeの仕組みとなっている
(Fig.1参照)
。
国どこでもベストなルートを案内することを可能と
情報センターでは、その情報をもとに統計値化し、
した。しかしながら、VICS情報は主要幹線など限
リンク旅行時間および渋滞度(渋滞・混雑・順調)
られた路線しか提供されておらず、また現時点の情
情報としてユーザーに提供する。
報しかないため交通状況の変化に対応しきれていな
渋滞度を表す表示色はVICS情報に準拠している
い。そこで、情報提供がされていない路線に関して
が、リアルタイム情報との区別をつけるため点線表
は「フローティングカーシステム」にて対応して、
示とした。フローティングカーシステムの対象リン
また、時間的変化については「渋滞予測情報」を提
クは、独自に設定した区間以外にも、現在、VICS
供することにより,面的にも時間的変化にも対応し
情報の中でリンク設定はされているものの情報がな
インターナビ
情報センター
情報をアップ
センターから情報を入手
VICS情報未提供道路
(所要時間計測区間)
メンバーB
計画開始地点
計測終了地点 メンバーA
Fig. 1 フローティングカーシステムの概念
Fig. 3 フローティングカー情報+V
I
CS情報の対象道路
10分
24分
3分
3分
9分
30分
20分
6分
実際の所要時間
Fig. 2 従来V
I
CS対象道路
国際交通安全学会誌 Vo
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3
1,No.
1
6分
6分
14分を
移動配分
所要時間提供イメージ
Fig. 4 車線別情報の仕組み
( 40
)
平成18年6月
41
インターナビ・フローティングカーシステムと渋滞予測について
いリンクや、渋滞度は提供されているがリンク旅行
始から、20
06年3月現在、2年7ヶ月経過し、ユー
時間が提供されていないリンク(全国で約5/6)
ザーから累積約1億kmのFCDを収集した(Fig.5参
も計測対象としている(Fig.2、3参照)。
照)。
このように、インターナビ・フローティングカー
平日約2
0万km、土日約4
0万kmのデータが日々ア
システムは、メンバーが交通情報収集に参加し、そ
ップされている。
の情報をメンバー間で共有する画期的なシステムで
実際の蓄積状況を東京都霞ヶ関周辺の地図上に表
ある。情報は、メンバーが走行すればするほど収集
したのがFig.6、7である
(対象道路脇に点線表示)
。
され、日々情報精度が上がる仕組みとなっている。
Fig.6は収集前、Fig.7は現在FCDがアップされてい
る状況を表している.これにより、多くの情報が集
4.車線別情報
まっていることがわかる。
さらにインターナビの新たなサービスとして、
2
00
4年1
0月から、車線別情報を世界で初めて提供し
6.FCD統計データの評価
ている。
VICS情報が提供されていない道路は、カーナビ
これは、フローティングカーシステムを活用した
で静的リンク旅行時間という固定値を用いて計算さ
ものである。都市高速でのジャンクションで向う方
向により車線ごとに所要時間(リンク旅行時間)が大
きく異なる場合がよくあるが、現在のVICS情報で
は1区間
(リンク)のリンク旅行時間は一つしか提供
されないため、車両感知器などから得られた情報を
基に、全車線の平均または片側のみのリンク旅行時
間で提供されている。
万km
11,000
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
このため、車線によっては提供されているジャン
クションまでの所要時間が、実際の所要時間より速
3,000
2,000
1,000
内ができていなかった。
/3
06 2
/
06
2
/1
05
0
/1
05
/8
05
/6
05
/4
05
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2
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04
0
/1
04
/8
04
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04
/4
04
/2
04
2
/1
03
0
/1
03
0
い車線と遅い車線が生じてしまい、的確なルート案
Fig. 5 FCD累積距離グラフ
そこでインターナビの車線別情報は、フローティ
ングカーシステムを応用することでこの問題を解決
することとした。
Fig.4に示すように、分岐点までは短い所要時間
の車線データを用い、長い所要時間の車線データと
の時間差分を、分岐先の所要時間が長い方のリンク
に時間配分することにより、ジャンクションにおけ
る車線各々のリンク旅行時間を考慮したルート探索
ができる。これにより、到着予想時間も従来のカー
ナビに比較してより精度の高い情報提供が可能であ
Fig. 6 霞ヶ関周辺のFCD収集前
る。
またこの車線別情報は、統計処理したフローティ
ングカーデータ
(以下、FCDと略す)を用いルート探
索をしているもので、カーナビ画面上にはどちらの
車線が速いと表示されるわけではなく、あくまでも
目的地に速く到着できるルート表示をするためのも
のである。
5.FCD収集状況
インターナビ・フローティングカーシステムの開
IATSS Rev
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ew Vo
l.
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1,No.
1
41
( )
Fig. 7 霞ヶ関周辺のFCD収集状況(2006/0
1)
June,
2006
4
2
今井 武、柘植正邦、菅原愛子
1200
できていなかった。これに対して、こ
1000
のFCDを活用することで、時間帯に
800
よる実際の交通状況の変化に応じたよ
り現実的なリンク旅行時間の生成がで
600
400
きるようになった。
六本木交差点から飯倉片町交差点間
ナビの静的旅行時間
のリンク旅行時間について、サービス
200
0
開始1年後と2年後各々の、FCDの
0:00-0:15
0:45-1:00
1:30-1:45
2:15-2:30
3:00-3:15
3:45-4:00
4:30-4:45
5:15-5:30
6:00-6:15
6:45-7:00
7:30-7:45
8:15-8:30
9:00-9:15
9:45-10:00
10:30-10:45
11:15-11:30
12:00-12:15
12:45-13:00
13:30-13:45
14:15-14:30
15:00-15:15
15:45-16:00
16:30-16:45
17:15-17:30
18:00-18:15
18:45-19:00
19:30-19:45
20:15-20:30
21:00-21:15
21:45-22:00
22:30-22:45
23:15-23:30
リ
ン
ク
旅
行
時
間
︵
秒
︶
れているため交通状況の変化には対応
平均旅行時間(秒)
UP旅行時間
Fig. 8 サービス開始1年後
時間経過とともにFCDが増え、平均
値が収斂してきたことがわかる。
ナビに提供している主なリンク旅行
時間は、ある一定時間幅の平均値を提
1200
平均旅行時間(秒)
UP旅行時間
供しているが、次に示す北海道の滝川
1000
リ
ン
ク
旅
行
時
間
︵
秒
︶
1
5分刻みの平均値をFig.8、9に示す。
から富良野間のように、FCDのアッ
800
プ数が少ないリンクに対しては、おお
むねデータのばらつきが少ないため、
600
通常の時間幅よりも広げた範囲の平均
400
値をナビに提供している。Fig.10より、
ナビの静的旅行時間
ナビの静的速度35km/hに対し、FCD
200
0:00-0:15
0:45-1:00
1:30-1:45
2:15-2:30
3:00-3:15
3:45-4:00
4:30-4:45
5:15-5:30
6:00-6:15
6:45-7:00
7:30-7:45
8:15-8:30
9:00-9:15
9:45-10:00
10:30-10:45
11:15-11:30
12:00-12:15
12:45-13:00
13:30-13:45
14:15-14:30
15:00-15:15
15:45-16:00
16:30-16:45
17:15-17:30
18:00-18:15
18:45-19:00
19:30-19:45
20:15-20:30
21:00-21:15
21:45-22:00
22:30-22:45
23:15-23:30
により59km/hに補正した速度の方が、
0
Fig. 9 サービス開始2年後
道での結果を示す(Fig.11、Table 1)。
この結果からもわかるように、この
FCDにより補正した速度(59km/h)
フローティングカーデータ(FCD)
40
区間の実走行所要時間に対しFCDの
30
20
誤差は2.
4%程度であった。
ナビの静的速度(35km/h)
10
7.渋滞予測情報
0:00-0:15
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15:45-16:00
16:30-16:45
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18:45-19:00
19:30-19:45
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21:45-22:00
22:30-22:45
23:15-23:30
0
次に、実際にFCD対象道路を実走
た。FCD対象道路である川越街道旧
60
50
かる。
行したときの旅行時間の精度を評価し
70
速
度
︵
km
/
h
︶
より実用的な値になっていることがわ
7−1 渋滞予測の仕組み
VICS情報の不足に対応するFCDと
は別に、時間的な変化に対応する渋滞
Fig. 10 北海道の滝川−富良野間
予測情報について説明する。
これは目的地までの最短時間ルート
1
を計算する時に、時間的変化を考慮し
2
スタート地点
3
4
Table 1 統計処理したFCDに対する実走行結果
所要時間
スタート地点から①まで
スタート地点から②まで
スタート地点から③まで
スタート地点から④まで
ゴール地点
Fig. 11 川越街道旧道(FCD対象道路)
国際交通安全学会誌 Vo
l.
3
1,No.
1
( 42
)
FCD(秒)
552
716
971
1349
実走(秒)
458
692
916
1382
平成18年6月
43
インターナビ・フローティングカーシステムと渋滞予測について
て算出し、到着予想時間を高精度に予測するもので
(予測時間)のデータを予想値とする(Fig.14参照)。
あり、情報センターのサーバーで計算し、ユーザー
次に、数時間先よりも遠い目的地のリンク旅行時
の携帯電話を通じて交通情報をナビに送る時に提供
間の予測に関しては、過去のVICS情報およびFCD
される。
の曜日・時間帯を考慮した統計値を用いている。
予測方法は、まず現在時刻から数時間先までは、
さらに、年末年始・ゴールデンウィークやお盆な
直前までのリンク旅行時間の変化パターンに対して、
どの、大型連休および3連休に関しては、毎年、過
過去の膨大なVICS情報の中から、曜日・時間帯を考
去のパターンと、その年の曜日との兼ね合いを考慮
慮した最も似たパターンを検索し、それを現在時刻
して渋滞予測をしている。
以降のリンク旅行時間として用いる。検索方法は,
これにより、従来のナビでは出発時に表示される
予測対象の時刻(tb)を設定して、直前の特定時間幅
到着予想時間の精度があまりよくなかったのに対し
を比較のための検索元データ(マッチング時間幅;
て、インターナビの渋滞予測情報は高精度の到着予
tm)とし
(Fig.12参照)、履歴データの中から最も差
想時間を提供するとともに時間的変化に対応した最
分が少ない近似値を検索する計算を行う。全ての履
短時間ルートを提供している。
歴データを対象に計算すると処理が多くなることも
この機能は、20
03年1
0月よりHDDナビで、世界
予想されるため、検索対象時間(サーチ時間幅:t
s)
で初めて運用開始した。
として計算範囲を設定、その範囲内で計算すること
7−2 渋滞予測の評価
とした。そして、最も差分の少ない近似データ列を
いくつかのタスクコースを、予測無しの従来ナビ
検索後(Fig.13参照)、抽出されたデータ列のその後
と予測有りのナビと走行比較した結果をFig.15に示
す。この結果からわかるように、予測無しの従来ナ
ビに対し予測ありのナビは、到着予測時間について、
リ
ン
ク
旅
行
時
間
どのコースにおいても約15ポイントの改善が見られ
ベース時刻 : tb
た。
予測したい時間帯
0:00
比較対象時間 : tm
8.FCD、渋滞予測情報の応用
24:00 時間帯
20
06年6月よりFCD、渋滞予測情報を応用し、ユ
ーザーに配信しているインターナビオーナー向けホ
Fig. 12 渋滞予測の仕組み1
ームページに、出発時刻を推奨する「出発時刻アド
バイザー」のサービスを開始した。これは、目的地
への希望到着日時を入力することで、リアルタイム
ベース時刻 : tb
渋滞予測情報とFCDを加味した出発推奨時刻とル
リ
ン
ク
旅
行
時
間
ートを提供するものである(Fig.16参照)。1ヵ月前
から利用できるが、当日事故や規制による渋滞発生
履歴データ
など、突発事象による交通状況の変化があった場合、
その内容を出発時刻前に、メールで携帯電話など任
0:00 比較対象時間帯
(サーチ時間 : ts)
24:00
時間帯
意のアドレスに通知するお知らせメール機能も付帯
した(Fig.17参照)。これにより、ユーザーは出発に
Fig. 13 渋滞予測の仕組み2
予測先旅行時間
リ
ン
ク
旅
行
時
間
ベース時刻 : tb
予測
0:00
24:00
時間帯
: 実際のリンク旅行時間のデータ
: 予測のために履歴から抽出されたリンク旅行時間のデータ
Fig. 14 渋滞予測の仕組み3
IATSS Rev
i
ew Vo
l.
3
1,No.
1
平
均
所
要
時
間
誤
差
︵
%
︶
40
35
30
25
20
15
10
5
0
東北道
首都高
阪神高速
環八
R1
Fig. 15 渋滞予測の効果
43
( )
June,
2006
4
4
今井 武、柘植正邦、菅原愛子
C
O
2
排
出
量
︵
%
︶
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
10km/h
20km/h
30km/h
平均車速
出典)日本自動車研究所資料より。
Fig. 18 平均車速に対するCO2排出量
Fig. 16 出発時刻アドバイザーサービスイメージ
渋滞が予測以上に増減する傾向がある場合でも、改
めてセンターから交通情報を送りナビでルートを再
探索する仕様とした。これは交通状況に変化がなけ
ればセンターからの交通情報データ送信がないため、
通信費用を抑えることができる。
1
0.おわりに
我々はナビゲーションシステムの本来の目的であ
る、より早く的確なルートを提供できるシステムを
目指して努力をしている。日本自動車研究所の調
Fig. 17 お知らせメールサービスイメージ
査によると、自動車から排出されるCO2は,平均車
最適な時刻とルートをあらかじめ確認することがで
速が10km/hから20km/hに上がれば約35%削減
き、効率のよいドライブプランを立てることができ
でき、20km/hから3
0km/hに上がれば約1
3%削
減可能だとされている(Fig.18参照)。よりスムーズ
る。
な交通流になることで、排気ガス低減に繋がり環境
9.ルート状況タイムリー配信
にも貢献できることになる。
インターナビ道路交通情報システムは、携帯電話
実際にインターナビユーザーが主に利用している
の通信料金をなるべく抑えるために、あらかじめ設
時間帯および地域
(東名阪の都市周辺)
で100サンプ
定した地点や必要な時にしか通信をして情報を取ら
ル摘出し、インターナビ道路交通情報システム(フ
ない工夫をしている。しかしながら、事故などの突
ローティングカーデータや渋滞予測など)を利用し
発事象や急に渋滞が激しくなるなどの場合は、情報
た場合に対し、インターナビ道路交通情報システム
を取るタイミングによってはどうしても遅れが発生
を利用しなかった場合と、VICSなどの交通情報を
することもあった。それを避けるためには、短い周
何も考慮しない場合とで、ルート計算をし、目的地
期で情報センターへ接続し交通情報を入手する必要
までの所要時間とCO2排出量をシミュレーションか
があったが、これでは通信費がかかってしまう。そ
ら求め、その効果を比較した。
こで、新型ステップワゴンの純正ナビからは、ナビ
CO2の算出には、環境庁「自動車排ガス原単位及
で選んだルートを情報センターで監視し、定期的に
び総量に関す調査」より以下の式を用いた。また、
ナビから情報センターへ交通状況に変化がないか確
今回は旅行速度の代用として、スタート地点からゴ
認し、もし状況変化があればセンターから交通情報
ール地点までの平均旅行速度を用いた。
を送り、ナビにてルート再計算をすることにより、
突発事象や渋滞が激しくなった時にも、ルート変更
CO2排出量(kg/km)=
がタイムリーに行えるようにした。また、ルートの
2
3.
1×
(0.
61
9+0.
0
035
8×旅行速度−0.
18
4×
監視は渋滞予測も考慮しているため、目的地までの
l
n
(旅行速度))
国際交通安全学会誌 Vo
l.
3
1,No.
1
( 44
)
平成18年6月
インターナビ・フローティングカーシステムと渋滞予測について
45
インターナビ道路交通情報システムを利用しなか
り、大きく育つものになって行くと信じている。テ
ったナビに対して、インターナビは所要時間で平均
レマティックスは携帯電話などの通信手段があって
6.
8%短縮、CO2は平均5.
6%削減(最大34.
0%削減)
はじめて成立するものである。より使い勝手が良く
しているという結果となった。また、VICSなどの
安心して使えるB
l
ue
t
oo
th携帯電話などは、日本で
交通情報を何も考慮しないナビに対しては、インタ
は普及が遅れているので、是非通信業者の協力も強
ーナビは所要時間で平均1
7.
2%短縮、CO2は平均
く望みたい。
1
2.
8%削減
(最大43.
9%削減)しているという結果と
なった。この結果は、あくまでもシミュレーション
参考文献
結果であるため、今後、実走行試験を行い、さらに
1)社団法人日本自動車工業会「京都議定書目標達
精度の高い削減率を算出する予定である。
成に向けて」『JAMAGAZINE』Vo
l.
39、pp.
始動したばかりのテレマティックスであるが、こ
2‐
5、2
005年
のように本質的なところを目指し推進することによ
IATSS Rev
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3
1,No.
1
45
( )
June,
2006
Fly UP