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イントロダクション 社長メッセージ 社長メッセージ グローバルな 垂直型一貫総合エネルギー企業 をめざして 代表取締役社長 09 COSMO REPORT 2016 経営理念に込めた思い 前期の業績と今期の見通し コスモエネルギーグループは「地球と人間と社会の調和 2015年度は、原油価格下落による在庫評価損687億円 と共生を図り、無限に広がる未来に向けて持続的発展を の影響により、経常利益△361億円、および親会社株主に帰 めざす」ことを経営理念としています。 属する当期純利益は△502億円となりました。一方、在庫評 コスモエネルギーグループは、石油製品を扱っている 価を除いた経常利益は326億円となりました。そういったなか、 会社です。普段は必需品として日々の暮らしに入り込ん 千葉製油所と東燃ゼネラル石油の千葉工場とのパイプライン でいますが、災害時には改めてその重要性に気付かされ 建設着手、四日市製油所では昭和四日市石油との事業提携 ます。神戸、東北、そして熊本の震災の際には、必要な物資 を決定するなど、製油所の競争力強化のためアライアンスを や人を運ぶのに不可欠なガソリンや軽油、煮炊きや暖房、 推進しました。石油化学事業では、石油事業とのシナジー追求 照明に使われる灯油やLPガスが人々の命を繋ぎました。 を目的に丸善石油化学を連結子会社化しました。 また、衣服やペットボトル、タイヤなども、石油製品である 2016年度は、原油価格が緩やかに上昇するなか、経常利益 ナフサが原料であり、コスモエネルギーグループは人々の生 675億円、親会社株主に帰属する当期純利益は475億円を 活を支える日常必需品を扱っています。その一方で、コスモ 見込んでおります。一方、在庫評価を除いた経常利益は545 エネルギーグループは様々なステークホルダーを有する 億円を見込んでおります。石油開発事業は、2017年上半期 企業体であり、適正な利益を上げて顧客、株主、従業員、取 の生産開始に向け、既存の生産・出荷設備を活用するなど 引先、地元住民や行政に還元していかなければなりません。 コスト競争力を背景にしたヘイル油田開発が最終段階を迎 世のため人のために人々の日常生活に欠かせないエネル えます。石油事業では、千葉製油所の認定取得による2年 ギーの供給を継続することで、社会に貢献し続ける企業 ロングランに伴う稼働率向上と整備コストの適正化で約 でありたいという願いが、私たちコスモエネルギーグループ 70億円の収益改善を見込んでいます。また、石油化学事業 の経営理念には込められています。 では、千葉製油所と丸善石油化学の千葉工場間の原料・ 燃料の融通、他社とのアライアンスによる高付加価値品 の製造・販売などの検討を開始しました。 在庫評価影響についての詳細はP.22へ 中期経営計画 特集:事業戦略 事業について コーポレート・ ガバナンス 独立社外取締役からの 提言 CSRについて 財務セクション アウトライン コスモエネルギーグループは長期的にめざす姿を「グロー 前期の業績と今期の見通し (億円) バルな垂直型一貫総合エネルギー企業」とし、第5次連結中 期経営計画(13-17年度)では、成長の基礎を固め、盤石な 2015年度実績 2016年度計画 経常利益 △361 経営基盤を確立していく5年間と位置付けています。石油精 675 製事業と石油化学事業では、アライアンスによる合理化・効 在庫評価の影響 △687 130 率化を推進する一方、石油開発事業、リテール事業、風力発 326 545 電事業の3つは成長分野と位置付けて事業拡大を図ってい 在庫評価除き 経常利益 定した収益が見込める事業ポートフォリオを確立していきます。 セグメント別内訳 石油開発事業 186 75 石油事業 58 350 石油化学事業 42 70 その他 40 50 △502 475 (※) 親会社株主に帰属する 当期純利益 一株当り年間配当 40円 為替レート(¥/$) 具体的には、石油精製事業では、千葉製油所での東燃ゼ ネラル石油との共同事業会社設立、および製油所間のパ イプライン建設、四日市製油所においては昭和シェル石油グ ループとの事業提携合意等で製油所の競争力強化を図って います。千葉地域におけるパイプライン完成後には、統合生 産計画に基づいた設備の最適化と製品の付加価値向上な どにより、両社で年間100億円のシナジーが期待できます。 50円(予定) また、石油化学事業では、韓国のヒュンダイオイルバンク (※)連結処理を含む (HDO)と合弁で立ち上げたヒュンダイ・コスモ・ペトロケ ミカル(HCP)でのパラキシレン事業での収益力強化を図っ 参考 ドバイ原油価格($/B) ます。これらにより、原油価格変動等の環境変化に対しても、安 45.7 40.0 120.1 110.0 ています。さらに、2016年3月には丸善石油化学を連結子 会社化し、石油精製事業との一体運営を進めることでシナ ジーを追求していきます。 10 COSMO ENERGY HOLDINGS 第5次連結中期経営計画 イントロダクション 社長メッセージ 社長メッセージ 収益については、中計の施策を着実に実行することにより、 としたローリスクかつ競争力の高い開発事業となっており、 原油価格(ドバイ)は 2017 年度 70ドル/バレル、為替は 開発中のヘイル油田も現在生産中の油田同様にコスト競争 120 円/ドルを前提に、経常利益目標は 1 , 100 億円とし 力の高いプロジェクトです。2017 年上半期のヘイル油田 ています。 の生産開始により、アブダビ石油の生産量は現在の約2倍 になる見込みです。加えて、当社の筆頭株主であるIPIC※1 が出資するセプサ社※2と戦略的包括提携契約を締結、アブ ダビ国営石油会社と3社で定期的にワークショップを開催し、 新規権益獲得をめざしています。 (SS)は現在も競争が激しく、当面は減少が続くことが想 コスモエネルギーグループは石油開発事業、リテール事業、 テナンス、保険等を含めたカーライフ関連の市場規模は約 風力発電事業の3つを成長分野と位置付けています。 1つ目は、石油開発事業です。コスモエネルギーグループ 27兆円と推定されています。コスモエネルギーグループの SSには一日に約50万台と、競合する他業種に比べて圧倒 の最大の強みは、アラブ首長国連邦のアブダビ首長国との 的に多くのお客様が訪れます。お客様との接点を最大限に 定されますが、コスモエネルギーグループが主力としてき たガソリン・軽油以外の、車両販売、カーリース、車検、メン COSMO REPORT 2016 強い信頼関係を基盤に、開発プロセスの主導権を持つオペ 生かし、個人向けカーリース事業を核に、カーライフ関連市 レーターとして、中東地域の権益に参画していることです。 場を開拓しています。コスモエネルギーグループの個人向 主に3つの操業会社があり、そのなかでもアブダビ石油の けカーリース事業は、車検や保険などを含めた費用を月々 プロジェクトは 50 年近く安定的に生産を続けています。 定額でお支払いいただく方式となっており、燃料油割引と コスモエネルギーグループの石油開発事業は、ハイリスク セットにしたビジネスモデル特許も取得しています。特に の探鉱から始めるものではなく既発見・未開発の油田を中心 郊外エリアで「手軽に車に乗りたい」というニーズをお持ち ヘイル油田生産開始による効果 コスモエネルギーグループ原油生産量の推移 ヘイル油田 生産開始 km 75 POINT 60,000 (バレル/日) km 50,000 50 3 隣接する既存の出荷基地・ 生産設備の活用により 投資コストを大幅に抑制 40,000 30,000 ウム・アル・ 25 10,000 0 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 (計画) POINT POINT ムバラス油田 km アンバー油田 20,000 1 11 2つ目はリテール事業です。国内のサービスステーション コスモエネルギーグループの 強みと成長戦略 (計画) 1 ヘイル生産数量は、ピーク時で アブダビ石油の既存3油田と同程度を見込む ニーワット・アル・ ギャラン油田 0k m ムバラス島 ヘイル油田 2 生産量拡大に伴い、 既存油田も含めてコスト競争力強化 アラブ首長国連邦・アブダビ首長国 中期経営計画 特集:事業戦略 事業について コーポレート・ ガバナンス の女性やシニア層のお客様に好評で、累計契約台数は15 年度末に2万7千台を突破しました。 独立社外取締役からの 提言 CSRについて 財務セクション アウトライン コーポレート・ガバナンスの強化 3つ目の成長分野である風力発電事業は、環境対策等で 長期的に成長が見込める分野です。2012 年度から導入 持株会社体制への移行とともに、長期的な企業価値拡大 されたFIT(固定価格買取制度)を追い風に安定的な収益源 をめざしてガバナンス体制の強化を図っています。日本版 となっています。国内の発電容量シェアで3位のコスモエネ コーポレートガバナンス・コードにコンプライするとともに、 ルギーグループのエコ・パワーが新規風力発電設備の開発 社外や石油業界以外の多角的な視点を経営に取り入れる を進めており、2016年度下期には三重県度会町での運転 ため、独立社外取締役を 2 名増員しました。監査等委員会 開始を予定しています。2015年度末に18万4千kWだった 設置会社への移行に伴い、取締役10名のうち、監査等委員 発電能力は、中計最終年度までに約23万kWまで拡大する である2名を含む4名が社外取締役となります。さらに指名・ 予定です。 報酬諮問委員会を設置、業績連動性を高めた役員報酬制度 国内の石油元売業界は再編により、3社体制になると言 われています。刻々と経営環境が変化していくなか、3番手 「株式報酬制度」も導入して、経営の透明性を確保し、説明 責任を強化しました。 となるコスモエネルギーグループにはスピード感のある経営 が必要です。同業他社が規模を拡大していくあいだに、コス モエネルギーグループならではの強みを武器に、持株会社 体制の利点を生かし、他社に負けないスピーディな合理化と、 ビジネス展開における機動力と柔軟性で、成長への道を 切り拓いていきます。 持株会社体制の確立で 経営のスピード感を増す 2015 年 10 月より、持株会社ならびに石油開発、石油 精製・石油化学、石油販売の中核 3 事業会社を中心とした 持株会社体制がスタートしました。その目的は、 ( 1 )安定 配当の実現、 (2)事業会社への責任と権限移譲による迅 速な意思決定、 (3)事業毎のアライアンス強化の3つです。 各事業会社からの分担金と配当により、原油価格下落に 伴う在庫評価損が発生した場合でも安定配当することが 可能になりました。私は部分最適が全体最適に通ずると 期待しており、投資やアライアンスなどの重要な意思決定 に際し、各事業会社における現場目線の提案が増え、事 業施策実行のスピード感も高まってきており、手ごたえを 感じています。 COSMO ENERGY HOLDINGS ※1 アブダビ首長国100%出資のエネルギー関連投資会社 ※2 スペインの大手総合石油会社 12 イントロダクション 社長メッセージ 社長メッセージ 将来を見据えた資本政策 供給構造高度化法の施行を経て需給バランスは適正化に 向かっており、石油事業の収益性は安定していくと考え ています。これに加えて、製油所のアライアンスや 3 つの 堺製油所のコーカー(重質油熱分解装置)やヘイル油田 成長分野における収益拡大、事業のダイベストメントや資産 の開発、HCP のパラキシレン製造装置、風力発電事業な 売却も含めたバランスシートのスリム化なども実行することで、 ど現中計期間を中心に、大型の先行投資が重なりました。 大幅なキャッシュフロー改善を図り、財務体質の改善を進 加えて、原油価格の急落により、2013年度から3年間累計 めてまいります。 で約 1 , 700 億円の在庫評価損を計上したこと、さらには 配当政策はコスモエネルギーグループの資本政策の最重 主力である千葉製油所での震災の影響による費用増と不 要項目と位置付けており、安定配当の方針を継続していき 稼働による機会損失で自己資本が大幅に毀損しました。 ます。2015年度は原油価格下落に伴う在庫評価損の計上 しかし、これまでの大型投資案件は徐々に回収期を迎え で連結経常利益は赤字となりましたが、上記の施策によって ており、ヘイル開発投資がピークを過ぎる 2017 年度以降、 今後は利益の好転が予想されることから、年間40円の配当 投資額は大きく減少する見通しです。収益についても、石油 をお支払いしました。2016年度は50円と増配を予定して 製品の国内販売量は減少が見込まれるものの、エネルギー おりますが、同時に財務体質の改善も進めてまいります。 投資ピークアウトでキャッシュフロー改善へ 13 COSMO REPORT 2016 (億円) 2,000 1,600 在庫評価除きEBITDA(左軸) 投資(左軸) (倍) (右軸) NetD/Eレシオ(格付けベース) 6 ヘイル油田 開発投資 ピーク 原油価格下落による 2013-2015年度の在庫評価損 1 , 687 億円 4 1,200 投資 ピークアウト 800 2 400 0 0 配 当 成長への 大型投資 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度(計画) 20円 0円 40円 50円(予定) ヘイル油田開発 ・ 新規風力発電所など 2017年度(計画) 次期中期経営計画以降 設備投資は減少へ 中期経営計画 特集:事業戦略 事業について コーポレート・ ガバナンス 独立社外取締役からの 提言 CSRについて 財務セクション アウトライン CSR経営の推進 株主のみなさまへのメッセージ 人々の生活に欠かせないエネルギーの安定供給を担う 石油業界を取り巻く環境は厳しく、且つめまぐるしく変化 コスモエネルギーグループですが、主に化石燃料を扱って していますが、コスモエネルギーグループは今後、これま いるため、地球環境に負荷を与える宿命も背負っています。 で行ってきた投資を回収するステージに入ります。会計 コスモエネルギーグループでは、その点を十分に認識し、経営 上の利益が赤字でも安定配当の方針を維持しているのは、 計画とCSR 活動方針が一体となった CSR 経営を推進し 今後の利益やキャッシュフローの回復への自信と受け取って ています。利益を上げることとCSR 活動は一体であり、 いただきたいと思います。コスモエネルギーグループは、 両立させて初めて企業価値の拡大が実現できると考えてい 独自の強みを生かした成長分野へ経営資源を集中するこ ます。CSR 活動のなかでも、安全管理施策の徹底はコス とで業績を伸ばし、社会の公器としての役割を果たしな モエネルギーグループの最も重要な活動であり、製油所部 がら企業価値の拡大を図ってまいります。株主のみなさ 門では従来の取り組みに加え、新たな操業マネジメントシ まにはコスモエネルギーグループの経営理念をご理解い ステムを導入し、世界水準以上の安全操業と安定供給を ただき、今後も末永くご支援いただきますよう、お願い申 実現していきます。また、グローバルコンパクトには2006 し上げます。 年から参加しており、人権・労働・環境・腐敗防止など基本 原則を尊重した CSR 経営の取り組みを推進しています。 ダイバーシティ推進にも積極的に取り組み、様々なバック グラウンドを持つ社員の多様な考え方、意見を取り入れて 14 意思決定をしていくことで、生産性を高めていきます。海 性の活躍なども重要なポイントです。長時間労働を是正し、 「働き方改革」に取り組んでいくことで生産性を向上させ、 更なる企業価値向上をめざしていきます。 2016年6月 代表取締役社長 森川 桂造 COSMO ENERGY HOLDINGS 外駐在員を増やすなどグローバル人材の育成に加え、女