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Untitled - 大学院農学院/大学院農学研究院

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Untitled - 大学院農学院/大学院農学研究院
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農学部本館
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インフォメーション
Information
農学部生の出身地
北海道出身者は 20%,道外出身者は 80%
農学部生の出身地うちわけ(平成 2 年 4 月現在)
731 名(男 527 名,女 204 名)
北海道大学農学部では道外出身者が非常
に多く,北海道出身者は 20%,ほか近畿が
20%,北陸・中部 19%と続いています.北海
道以外の都道府県は多い順に,兵庫県(54 名),
東京都(54 名),大阪府(47 名),愛知県(43 名),
神奈川県(30 名),静岡県(24 名),京都府(21
名),石川県(17 名)となっています.
北海道 166名(男 106名,女 60名)
その他 3名(男 2名,女 1名)
東 北 44名(男 32名,女 12名)
関 東 135名(男 98名,女 37名)
北陸・中部 138名(男 101名,女 37名)
4
近 畿 144名(男 117名,女 27名)
中 国 37名(男 23名,女 14名)
四 国 29名(男 25名,女 4名)
九州・沖縄 35名(男 23名,女 12名)
農学部生の進路
就職内定率がほぼ 100%
農学部卒業生の 68.4%が大学院へ進
学しています.就職は公務員・教員・
研究機関が 5.8%,民間企業が 17.2%
ですが,民間企業就職者の約 56%が研
究開発部門にいます.また,就職希望
者のほぼ 100%が卒業までに内定を決め
ていることも北大農学部の特徴です.
大学院生の進路は修士課程修了生の
14%が進学,公務員・教員・研究機関
が 8.9%を占めています.民間企業に
就職するのは 62.9%ですが,そのうち
約 78%が研究開発部門についており,
学部卒の学生よりもその割合は高くな
っています.
博士課程修了生では,民間企業就職
者の大部分が研究開発部門,その他も
試験研究機関,教員とほとんどが研究
に関係する職業についています.
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過去5年間の学部卒業生1,083名(平成23年4月現在)
過去5年間の修士課程修了生788名(平成23年4月現在)
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Information
取得資格
所定の単位をとることで高等学校・中学校の教員になるた
めに必要な教育職員免許状を取得することができます.取得
希望者は各学科ごとの教科に関する授業と教育実習を含む教
職に関する授業を受講することになります.
また,学科によっては学科特有の取得可能資格があります.
特定の授業を受講,もしくは卒業することで受験資格が認め
られたり,試験を一部免除されたりします.
ほかにも,授業を通して得た知識はさまざまな資格試験に
役立つはずです.
1. 教育職員免許状
免許状の種類
教
科
学科または専攻
中 学 校 1 種
社
会
農業経済学科
高等学校1種
公
民
農業経済学科
理
科
農業経済学科以外
農
業
全学科
農
業
全専攻
高等学校専修
2. 食品衛生管理者及び食品衛生監視員任用資格・・・<生物機能化学科・畜産科学科>
「食品衛生コース」のカリキュラムによる所定の科目の単位を取得することによ
り,任用資格を得ることができる.
. その他の取得資格
1)家畜人工授精師・・・・・・・・・・・・・<畜産科学科>
講習会受講後,試験合格者に証明書を授与する.
2)測量士補・・・・・・・・・・・・・・・・<生物環境工学科>
測量学実習の単位取得を必要とする.
3)樹木医補・・・・・・・・・・・・・・・・<森林科学科>
必要単位を取得した者は,樹木医補の資格が認められる.
4年間の教育スケジュール
卒業研究
学部専門教育
全学共通教育
1年
総合教育部入学
2年
年
学科移行
分野移行
4年
卒業
全学共通教育:全学共通の基礎教育科目
学部専門教育:学部で行う専門教育科目
卒 業 研 究:各分野で行う研究主体の教育
学 科 移 行:1 年生の終りに各自希望する学科を決め,2 年生で移行します.学科の定員が右のページの表にように決っています.
定員を越えた場合は,一年次の成績順に配属されます.
分 野 移 行:分野は右ページの農学部組織表にあるように,より専門的な研究やセミナーを行う研究単位です.学科移行後,基
礎的な知識を修得した学生は,学科内の分野に籍を置き,教員の指導のもとで卒業研究を行います.
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大学入試センター試験
国語,地歴・公民,数学,外国語,理科
一般入試前期日程(総合入試)
数学,外国語,理科 2 科目(物理,化学,生物,地学の中から 2 科目選択)
一般入試後期日程(学部別入試)
理科 2 科目(物理,化学,生物,地学の中から 2 科目選択)
学科別定員
年間行事
総合入試
学部別入試
計
4
生物資源科学科
27 名
9名
名
応用生命科学科
2 名
7名
0 名
生物機能化学科
2 名
9名
名
6
森林科学科
27 名
9名
名
7
畜産科学科
17 名
名
2 名
8
入学式・新入生ガイダンス
2年生オリエンテーション
一学期授業開始
5
大学祭
オープンキャンパス
一学期授業終了
夏季休業(8 月上旬〜 9 月下旬)
生物環境工学科
2 名
7名
0 名
農業経済学科
19 名
名
2 名
9
10
11
12
1
2
3
二学期授業開始
市民公開農学特別講演会
冬季休業(12 月下旬〜 1 月上旬)
大学入試センター試験
二学期授業終了
北大一般入試(前期)
北大一般入試(後期)
学位記授与式
インフォメーション
入学試験科目
農学部
生物資源科学科
作物学研究室
植物遺伝資源学研究室
園芸学研究室
花卉・緑地計画学研究室
作物生理学研究室
植物病理学研究室
植物機能開発学研究室
植物病原学研究室
動物生態学研究室
昆虫体系学研究室
細胞工学研究室
環境分子生物科学研究室
応用生命科学科
植物育種学研究室
応用分子昆虫学研究室
分子生物学研究室
生態化学生物学研究室
遺伝子制御学研究室
分子酵素学研究室
生物機能化学科
土壌学研究室
植物栄養学研究室
生物化学研究室
生物有機化学研究室
食品栄養学研究室
食品機能化学研究室
応用菌学研究室
微生物生理学研究室
根圏制御学研究室
森林科学科
森林生態系管理学研究室
造林学研究室
流域砂防学研究室
森林政策学研究室
樹木生物学研究室
森林化学研究室
木材工学研究室
木質生命化学研究室
森林資源生物学研究室
畜産科学科
家畜改良増殖学研究室
畜牧体系学研究室
家畜栄養学研究室
食肉科学研究室
酪農食品科学研究室
副生物科学研究室
生物環境工学科
土地改良学研究室
生物環境物理学研究室
土壌保全学研究室
農林環境情報学研究室
ビークルロボティクス研究室
食品加工工学研究室
作物生産システム工学研究室
農業循環工学研究室
生物生産応用工学研究室
農業経済学科
農業環境政策学研究室
農業経営学研究室
開発経済学研究室
協同組合学研究室
食料農業市場学研究室
農学部関連施設
北方生物圏フィールド科学センター
森林圏ステーション・研究林
植物園
生物生産研究農場
静内研究牧場
総合博物館
中央ローン
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農学部の風景
ポプラ並木
1903( 明 治 36) 年
に最初の植栽が行わ
れ,現在見ることが
できる形になったの
は 1912( 明 治 45)
年である.このとき
の植栽は,林学科(現
森林科学科)の学生
実習として行われ
た.樹種名は,セイ
ヨウハコヤナギであ
る.
クラーク像
あの「少年よ大志を抱け」で
有名な W・S・クラーク博士は
札幌農学校の初代教頭.1926
年,創基 50 周年事業として寄
金により建立された.太平洋
戦争中,金属献納で鋳潰され
たが,1947 年に再建.羊 ケ 丘
の全身像とともに札幌観光名
所として有名である.
7
時計台
札幌の観光名所の一つとなっ
ている時計台は,1878(明治
11)年,農学部および北海道
大学の前身である札幌農学校
の演武場として設計された.そ
の後,公会堂や事務所,図書
館などとして利用され,1970
年には国指定重要文化財に指
定された.現在は市民ホール
としても利用されている.
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農学部の風景
旧昆虫学および養蚕学教室
札幌農学校が時計台周辺から現キャンパスに移転され
た後,昆虫学および養蚕学教室として 1901(明治 34)
年に建てられた.学内ではモデルバーンに次いで古い建
物である.
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新渡戸稲造像
1997 年 10 月,北大創基 120 周年行事に合わせ
て,ポプラ並木の南端に建立された新渡戸稲造顕
彰碑.「旧五千円札」の肖像として知られる新渡戸
博士は札幌農学校の二期生で,1891(明治 24)
年からの 7 年間は,教授として農学校での教育に
も携わった.台座には博士の英文著作から引用し
た,”IwishtobeabridgeacrossthePacific.”
(わ
れ太平洋のかけ橋たらん)の碑文が刻まれている.
モデルバーン
札 幌 農 学 校 第 2 農 場 は,
1876(明治 9)年マサチュ
ーセッツ農科大学の農場を範
として札幌農学校の開設と同
時に設けられ,これまでに大
型農業のモデルファームとし
て北方圏の農業の発展に先駆
的役割を果たしてきた.その
遺構であるモデルバーン(模
範家畜房など)は,今もキャ
ンパスの北端に保存され,多
くの学生や市民が憩いの場と
して訪れている.
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生物資源科学科
AgrobiologyandBioresources
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細胞核の表層タンパク質と特異的に反応す
る抗体を用いて染色したニンジン培養細胞
(共焦点レーザー走査顕微鏡による光学的断
層像と位相差像の重ね合わせ画像)
生 長 し 増 殖 す る 資 源 の 理 解 と か し こ い 利 用
生物資源科学科の理念は,すべての生物は私たち人間にとって末長く共存し利
用すべき貴重な資源であるという点にあります.環境を乱すことなくこの資源
を利用するためには,分子,細胞,生物個体と集団そして生態系まで幅広い視
点にたって,その特性を理解する必要があります.人間活動が自然環境に深刻
なインパクトを与えている現在,当学科はマルチレベルの思考と技術を身につ
けた若者を育てたいと考えています.生物学をやりたいがまだ具体的なことは
考えつかない人,基礎生物学とその応用科学に橋をかけてみたいと考えている
人,あるいは環境と生物の相互関係に興味のある人に最適な学科です.
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植物遺伝資源学分野で行われているミトコンドリア DNA の解析の一例です.東アジア
の各地を訪れ,ダイズの祖先種であるとされるツルマメの生態を調査し,その酵素タン
パクや DNA の多型を解析して集団内外の遺伝的多様性や分化のパターンとダイズの起
源や分化を明らかにしています.
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生物資源科学科
生物生産研究農場でのバレイ
ショ収穫調査中の作物学分野
の 4 年次学生と大学院生で,
右端はブラジルからの留学生
です.学部生は大学院生と共
同で実際に作物を圃場で栽培
して,作物の研究方法の基礎
を学び,卒業論文としてまと
めます.
生物資源科学科には9つの分野(作
物学,植物遺伝資源学,園芸学,花卉・
緑地計画学,作物生理学,植物病理学,
植物病原学,動物生態学,昆虫体系学)
がおかれ,植物園と生物生産研究農場
でも卒業研究を行うことができます.
自然のフィールド調査,畑で作物を育
成する実験,および室内での培養実験
と遺伝子解析まで広い経験を積むこと
ができます.
食料としての植物を研究する
私たちの主
食はイネとコ
ム ギ で す. 納
豆と豆腐はダ
イズが原料で,
ウシやブタの
餌はトウモロ
コ シ で す. 一
方, 食 生 活 の
バランスを保
って健康を維
持し続けるた
めに大きな役割を担うのが野菜と果実
です.イネの9割が国内で生産されて
いますが,冷害の年には緊急輸入しま
した.ほかの主要穀類の国内生産割合
は2割にすぎず,人口の増加や社会情
勢の急激な変化のため輸入が途絶えた
時や地球温暖化などの気候変動に備え
て,作物の栽培方法を改良する必要が
あります.作物学分野は,人類が飢え
て苦しむことのない社会を作るため
に,国内,国外での食用作物の生産を
維持・増加させる方法を研究していま
す.水田や畑で作物の光合成速度,蒸
散速度,葉や根の量を測定し,冷害や
乾燥害に強い品種の開発や栽培方法の
改良を行うための基礎的な知識を得て
います.園芸学分野は,すぐれた野菜
や果実を作る技術を確立するための研
究を行っています.組織と細胞を無菌
的に培養する「組織培養」などを用い,
優良な個体の大量増殖と品種改良に取
り組んでいます.可食性野生植物の栽
培化も試みています.もちろん,野菜
や果樹の栽培を体験しその技術を身に
つけることができます.
栽培植物の起源と利用を探る
栽培植物を有効利用するためには,
その起源と進化を学び,開発と保全を
育種学的立場から研究する必要があり
ます.植物遺伝資源学分野では,世界
❶
❸
❷
❹
園芸学分野では,有用植物の遺伝資源の超低温(マイナス196度)凍結保存の研究
を行っています.上記の写真は,液体窒素中に凍結保存されていたリンゴ茎頂からの
植物体再生過程を示しています.①融解後培地に植え込まれた茎頂,
②茎頂の肥大(1
ヵ月後),③シュートの伸長(3ヵ月後),④発根(発根培地に移植して1ヵ月後)
.
各地の栽培植物とその近縁野生植物の
DNA やアイソザイム遺伝子を調べて,
系統分化を解明しています.作物の改
良に役立つ遺伝子を探索し,その発現
機構を解析し,作物にその遺伝子を導
入することにも挑戦しています.カイ
コの卒倒菌が生産する殺虫性タンパク
質に着目し,このタンパク質をコード
する遺伝子を形質転換法によりテンサ
イに導入し,食害に対する抵抗性をも
たせる研究を進めています.海外より
いれた多数品種のイネ科牧草の耐凍性
の変異を調べ,低温で誘導される遺伝
子を分子生物学的手法で抽出し,その
発現機構を研究しています.また,野
生植物を保全するため,遺伝的多様性
や生態的特性を研究しています.
住環境としての緑を研究する
私たちは植物を食物として利用する
だけではありません.観賞・緑化植物
として住まいの中やまわりで,また都
市域や自然地域,農地の緑として,多
彩な植物を利用し緑とふれあっていま
す.花卉・緑地計画学分野は,花や緑
化植物の研究と緑地空間の計画・保全
を行ういわゆる造園の研究を通して快
適な環境の創造と保全を目指します.
北方系花卉・緑化用植物の栽培技術な
らびに自生植物の生態と増殖・管理に
関する研究,緑地の計画・景観評価と
自然公園の利用インパクトや収容力に
関する研究などを行っています.
10
花卉・緑地計画学分野が担当する造園学実習
で3年生が都市公園の設計に取り組んでいま
す.4年生は指導教員と相談しテーマを決めて
卒業研究を行い,卒業論文としてまとめます.
都市内や自然地域の緑地が研究の対象である
ため,野外調査などが多くなります.
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「 わ ー, お お き く
なってる .」 作物生
理学分野で蓄積さ
れた組織培養技術
のノウハウを活か
し,希少植物であ
るレブンアツモリ
ソウの無菌増殖を
試みているところ
です.また小さな
畑でいろいろな作
物を育て研究材料
にしています.
季節と作物のライフサイクルを研究する
秋に一粒の種子が地に落ちます.種
子は眠り続けて冬を越し,春に芽が出
て茎が伸び葉が繁ります.夏が近づき
日が長くなると花を咲かせ,秋には実
をつけて枯れ,一生を終えます.作物
をかしこく育成するためには,植物が
どのようなメカニズムで環境の変化を
知り,それに応じた成長をするのかを
明らかにし,応用できるような基礎知
識を身につけることが必要です.作物
生理学分野は,どの遺伝子が働いて茎
が太ってジャガイモができるのか(ト
マトにもイモをつけられるかもしれま
せん),一年生植物はなぜ結実後に枯
れるのか(積極的に自分を枯らしてし
まう未知のホルモンがわかれば安全な
除草剤に使えます),小麦はなぜ収穫
期に雨が降ると穂の上で発芽してしま
うのか(種子の休眠メカニズムがわか
れば穂発芽しない品種を作る手助けに
なります),ソバアレルギーの原因と
なるタンパク質は何か(アレルギーを
起こさないソバがつくれます)を研究
しています.
植物の発病メカニズムと
その治療法を研究する
作物の病気は糸状菌と細菌およびウ
イルス・ウイロイド病原体によってお
きます.病原体が侵入してから感染が
成立し発病するまでの過程で,植物は
防御機構を働かせて発病を抑制しよう
とし,一方病原体は防御機構を打破し
て感染を成立させようとします.病原
11
植物病原学分野ではウイルスの同定・定量を行っています.これは細胞の中に見られる球形ウイル
ス粒子の集塊を電子顕微鏡により 100 万倍で観察したものです.
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私たちの植物病理学分野の研究は 、 まず研究材料である
ます 。微生物ハンターがシャーレを覗いて ,狙った微生
体はタイプによって,軽微な病徴を示
すものと激しく発病させて植物を枯ら
すものがあり,作物には品種によって
感染しやすいものと抵抗性をもち感染
しないものまでさまざまです.作物を
健全に育てるためには,まずこれらの
病原体の性質をよく知り,次に戦う方
法を見つけなければなりません.植物
病理学分野では,植物機能開発学分野
(大学院)と協力して,糸状菌と細菌
を対象とした研究をしています.形態
的および生理的特徴による分類方法に
加え,分子生物学的手法を駆使するこ
とで,対象病原体の特性および自然界
での生態を明らかにしています.また,
作物の根に共存し病害抵抗性を誘導す
る有用微生物の探索や,病害発生を抑
制する対抗作物を利用した土壌伝染性
病害の生物学的防除法の研究を行って
います.植物病原学分野では,細胞工
学分野(大学院)と協力して,ウイル
ス分離株や植物の品種を利用し,感染
を成立させたり,発病させたりするウ
イルス側の遺伝子の同定・解析と,植
物の抵抗性因子の探索をしています.
また,ウイルス耐病性遺伝子の探索や
ウイルス病の診断を目的として,ウイ
ルスの同定・定量法の開発も行ってい
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病原菌,拮
物が期待ど
生物資源科学科
材料である
狙った微生
す.また,血縁選択によるアリの社会
性の進化および DNA の塩基配列を使
った系統進化の研究を行っています.
昆虫体系学分野では,フィールドワー
クを主体として,生物の多様性の問題
を解明するための研究を行っていま
す.昆虫は種数・個体数ともに多く,
生態系の主要な要素を占めており,昆
虫を抜きには多様性の研究は語れませ
ん.しかしながら,いまだに名称がわ
かっていない種がたくさん残されてい
ます.
対象動物の実験室内での
行動をビデオで記録して
いるところです.動物生
態学は動物の個体レベル
以上の生態現象を研究対
象とするため,フィール
ドでのデータ収集以外に
も、室内での飼育実験,
分子実験による遺伝子型
の決定など,様々な手法
による適切なデータ収集
が必要となります.
病原菌,拮抗菌など微生物をあつめることから始まり
物が期待どおりに生育しているかを確認しています.
ます.
環境と多様な動物の関係を探る
野生動物と昆虫は生態系の多様性の
維持に重要な役割をはたしています.
農林業の害獣や害虫を環境へのインパ
クトを最小にとどめながら防除し,ま
た野生動物と昆虫を保全するため,そ
の多様性を体系的に把握したうえで,
行動から進化まで,さまざまな時間ス
ケールにおける相互作用と環境変化に
対する反応を研究しています.動物生
態学分野では,植物寄生性ハダニの社
会性の進化を明らかにするため,日本
各地で採取したダニを飼育し研究する
とともに,その生物的防除を目的とし
てシミュレーション実験を行っていま
昆虫体系学分野では,国
内・ 国 外 を 問 わ ず さ ま
ざまなフィールドに出
か け, 昆 虫 を 採 集 し た
り, 観 察 し た り, 野 外
実験を行うなどの研究
に取り組んでいます.
学科教育
2年次に本学科に移行したのち,
作物学概論,植物遺伝資源学,園
芸学概論,造園学概論,作物生理
学,植物寄生病学,植物病理学概
論,動物生態学,環境昆虫学概論
など各学問分野の基本概念を学ぶ
講義を受けます.生物資源科学実
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験では研修旅行のあとすべての分
野の実験内容を体験します.2年
次の終わりには各分野に配属を決
めます.3年次には食用作物学,
生物実験計画法,工芸作物学,造
園設計・計画論,花卉園芸学,応
用動物学,昆虫体系学など応用を
中心とした各分野の専門科目を学
習するとともに,各分野の専門的
な実験,農場実習と数日間の夏季
野外実習によって実際の研究技術
を学習し,4年次に各自テーマを
決め教員の指導を受けて卒業研究
を行います.
過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
約 7 割の学生が大学院に進
学し,国や北海道の試験研
究機関の研究員,国・地方
公共団体の行政官,民間で
は,農業,園芸関係,各種
コンサルタント会社などに
就職し,専門職あるいは幅
広い知識をもった総合職と
して活躍しています.
公務員
都道府県庁,市役所,農林
産業省(植物防疫所)
,国土
交通省,防衛省
研究機関
種苗管理センター,北海道
立 花・ 野 菜 技 術 セ ン タ ー,
日本食品分析センター,北
海道農業研究センター
農薬会社
シ ン ジ ェ ン タ・ ジ ャ パ ン,
片倉チッカリン,三井化学,
住友化学,カネカ,三菱総
合研究所,昭和産業,北興
化学工業,クミアイ化学工
業
薬品会社
コスモス薬品,日本イーラ
イリリー,ファイザー
園芸種苗会社
下山田園芸,アイリスオー
ヤマ,ユー花園,住化農業
資材,雪印種苗
コンサルタント
パシフィックコンサルタン
ツ
食品会社
森 永 乳 業, ア サ ヒ ビ ー ル,
明治製菓,サントリー,ゼ
ンショー,森永製菓,不二
製油,三和酒造,全国農業
協同組合連合会,石井食品
六 花 亭 製 菓, ミ ツ カ ン,
日清オイリオグループ,フ
ンドーキン醤油,日本製粉,
藤橋商店,カゴメ,ツムラ,
日本ハム,エバラ食品工業,
稲葉,JA 新潟中央会,ヤク
ルト本社,ニチレイフーズ,
札幌ホクレン青果,ホクト,
東洋水産,栃木 JA,ネスレ
日本 その他
博報堂,ぎょれん,全国農
業会議所,ランドコンピュ
ーター,シーズクリエイト,
日 本 テ ト ラ パ ッ ク,HIS,
アサツー DK,アルビオン,
ラ ボ, イ ネ ス, ク オ リ カ,
日立協和エンジニアリング,
工学研究センター,NTT
西日本,新日鉄ソリューシ
ョンズ,ハヤカワ,CGC Japan,住友信託銀行,東
海旅客鉄道,ハートウェル,
トーモク,日本中央競馬会,
ユー・エス・ジェイ,Smith&
Nephewwoundmanagement,
日本航空インターナショナ
ル,新日鉄ソリューション
ズ,セントラル硝子,三笠
産業,NTT 東日本,セイコ
ーマート,札幌市公園緑化
協会,シーアイシー,理研
化学工業,十日町立里山科
学館,インテック
(企業名、団体名は就職当時)
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12
9:44:04
応用生命科学科
AppliedBioscience
1
花粉形成中の組織
生
命
を
分
子
の
鍬
で
開
拓
す
る
生物の営みの中には,将来,人間の暮らしを支えるであろう未知の物質や機能
が無数に潜んでいます.20 世紀が工業によって支えられた時代とすれば,21
世紀は生物の優れた能力を開拓する生命科学の時代です.応用生命科学科は,
人間にとって価値ある生命現象を発見し,利用するため,特に生物生産にかか
わる現象を遺伝子や分子レベルで探求する教育研究分野の集まりです.生命科
学に対する社会的な期待が急速に膨らんでいる中,私たちは第一線でそれに応
えることのできる人材の育成に力を注いでいます.
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13
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酵素のタンパク質モデルと反応
生産されています.従って,人や自然
にも安全な資源でもあり,糖質の有効
利用を図ることも課題の一つです.
生物間の化学情報を探る
植物は動物に食べられる運命にあり
ますが,野山の草木が昆虫やその他の
動物に食い尽くされるということはあ
りません.それは植物が,進化の過程
で動物や微生物と共存する手だてを発
達させているからなのです.たとえば,
ヒトの腸の中で種々の微生物が生存し
ていて,ヒトの健康に役立っているよ
うに,植物の根の周辺では,養分の吸
収を助けたり,病気にかかるのを妨げ
たりする微生物もたくさんいます.そ
のような微生物の中には,新しい抗生
物質を生産したり,根粒菌とマメ科植
北大農学部2012.indd
14
応用生命科学科
BT 菌殺虫性タンパク質の走査
型電子顕微鏡写真
応用生命科学科は6つの分野(分子
酵素学,生態化学生物学,分子生物学,
植物育種学,応用分子昆虫学,遺伝子
制御学)により構成されています.当
学科は,生化学,有機化学,遺伝学お
よび分子生物学を基盤として生物生産
に有益な生命現象の探査,解析,応用
に関する一連の研究を行っています.
私たちは,遺伝子工学的手法や物質構
造解析技術を駆使した最先端の方法を
取り入れていますが,その一方で交配
による遺伝実験や生体物質の抽出など
地道な実験もいとわず実施していま
す.これまでに行われた研究の中には,
実際に役立っている成果も少なくあり
ません.たとえば,イネの遺伝子地図
を世界に先駆けて作成し,イネの品種
改良の効率化に大きく貢献したり,昆
虫に病気を引き起こす細菌(BT菌)
を分離・解析したことで,微生物農薬
の開発に糸口をつくりました.
タンパク質機能を探る
生体には,生命現象をつかさどる多
くの機能分子が存在しており,タンパ
ク質は最も重要な機能分子の一つで
す.生体内のほとんどすべての代謝反
応を触媒したり,DNA の遺伝情報の
発現や生体シグナルの伝達を行うのも
タンパク質の機能です.触媒作用を持
つ酵素タンパク質は試験管の中でもそ
の機能を発揮でき,工業的な応用も盛
んになされています.分子酵素学分野
では,この酵素の機能と分子構造の関
係を明らかにし,さらに遺伝子工学の
技術によって新しい機能を備えたタン
パク質の開発を目指しています.特に,
糖質の代謝反応にかかわる酵素を中心
に研究を行っています.糖質は,生体
内でエネルギーや体構成成分に転換さ
れ,植物が太陽エネルギーを用いて行
う炭酸ガスの固定化反応により膨大に
物のように驚くほど合理的な関係を持
つものもいます.生態化学生物学分野
は,植物に病気を引き起こす微生物,
根の周辺に共生している微生物,種子
や葉の表面で生活している微生物と植
物の相互関係を化学的な視点で研究し
ています.植物の作っているさまざま
な化合物の生理作用や生態系での役割
の解析,植物の生理を制御している仕
組みや外からの刺激に対する植物の応
答にも興味をもっています.大型の分
析機器を駆使して複雑な有機化合物の
三次元構造の解析等も行っています.
広く植物と微生物,植物と植物あるい
は植物と昆虫の間の絆を分子レベルで
解き明かし,その成果を環境と調和し
た 農業に応用することを目指してい
ます.
シロイヌナズナの分子生物学
生命現象はたくさんの生体分子が細
胞あるいは組織の上で有機的に連携し
て織りなす現象です.分子生物学分野
では,種子形成,アミノ酸代謝,ウイ
ルスの増殖,3つの複雑な現象の分子
機構の解明に挑むため,まずシロイヌ
ナズナというモデル植物を使って遺伝
学的にそれらの過程に関与する遺伝子
を同定し,次いでそれらの遺伝子を足
場にしてより詳細を知るというアプロ
ーチを展開しています.シロイヌナズ
ナは植物体が小さく世代時間も短いた
め遺伝学的解析に向いています.また
酵母の約5倍という小さなゲノムサイ
ズをもち,DNA の配列が高等植物で
は最も早く決定されました.作物とし
ては使いようのない植物ですが,シロ
イヌナズナを使って得られた知見を有
用作物に拡張することにより農業に貢
献したいと思っています.
植物を守るカビのアカ
エゾマツ根への共生
14
シロイヌナズナ
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イネの遺伝学
人間は約1万年かけて,多様な栽培
植物をつくりあげてきました.栽培植
物は突然変異が積み重なって改良され
てきた,と今まで思われていましたが,
分子のレベルの研究から突然変異とい
うものを根底から考え直す必要がでて
きました.どんな遺伝子でもその遺伝
子だけでは生物にとってあまり意味は
なく,他の多くの遺伝子と調和のとれ
た‘遺伝システム’が重要であると考
えられます.「イネとムギは何が違う
の?」「たくさんの品種はどうして必
要なの?」 こうした疑問を明らかに
するため,日本で最初の育種学講座と
して設置された植物育種学分野では,
1915 年以降一貫して,いろいろなイ
ネを材料に,異なる環境に適する能力
やその発育について遺伝学の実験を駆
使して研究しています.長い年月の間
に築き上げられてきたこの複雑なシス
テムを明らかにすることは,他の生物
との生存競争や環境の変化に耐えて生
き残る植物の知恵を知ることになるも
のと考えています.こうした研究は,
単に収量を上げるだけでなく,地球の
環境問題を含めた遺伝的管理を考える
上で大切なことなのです.
1
栽培イネ(左)とその祖先野生イネ(右)の花
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15
カイコ染色体 /insituハイブリダイゼーションによる性染色体同定
昆虫機能遺伝子を利用する
近年,医薬領域で昆虫を用いて有用
タンパク質を生産したり,昆虫に病気
を引き起こす微生物を利用して害虫
を防除するといった研究が分子生物学
の進歩と共に飛躍的な発展を遂げまし
た.応用分子昆虫学分野では遺伝子操
作などの手法を用いて,昆虫機能を資
源として利用・応用したり,環境にや
さしい方法で害虫を防除するなどの研
究を行っています.
<昆虫の機能を利用する>昆虫のもつ
有用な機能について遺伝子操作などの
手法を用いて解明するとともに,昆虫
のもつ遺伝子の多様性を研究したり,
昆虫培養細胞ならびに昆虫体内での有
用物質の生産を試みています.
<微生物を用いて害虫を防除する>昆
虫も人と同様病気にかかり,養蚕・養
蜂業に多大な被害を及ぼすことが知
られています.当研究室では,昆虫に
病気を引き起こす微生物の機作を解明
し,それを利用した微生物農薬の研究
を行っています.さらに,作物にこの
機能を導入することで,耐害虫性作物
を作出するといった研究も行っていま
す.
植物遺伝子を利用する
人間は植物の突然変異現象をうまく
生活に取り入れてきました.遺伝子制
御学分野では人とかかわりの深い二つ
の遺伝変異について研究しています.
<花粉のできない突然変異とミトコン
ドリア>植物には花粉をつくることの
できない突然変異体がまれに現れ,大
変役立っています.この変異体を使え
ば,掛け合わせをする際,雌の花から
一つ一つ花粉を除く「除雄」という作
業をしなくてもいいからです.私たち
は雄性不稔と呼ばれるこの種の変異形
質のうち,特に利用価値の高い細胞質
雄性不稔性(母親からのみ伝達される
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応用生命科学科
雄性不稔)の原因を探っています.現
在,その原因がミトコンドリアに存在
する遺伝子の異常によることを突きと
め,原因遺伝子の構造や因果関係を明
らかにしているところです.
<花の斑入りと動く遺伝子>すべての
生物は染色体を蝶のように動きまわる
遺伝子(トランスポゾン)をもってい
ま す. 動 く 遺
伝子は花や葉
の斑をつくっ
た り, 枝 変 り
のような変異
を引き起こす
原因となりま
す. 植 物 で は
突然変異の大
半が動く遺伝
子によっても
た ら さ れ, こ
の動く原因の
解明に期待が
かけられています.
動く遺伝子により斑入りとなったキンギョソウ
の花
テンサイの細胞質雄性不稔株(左)と正常株(右)の花
過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
学科教育
農学部へ入学した学生は,2年次
前期で応用生命科学科に分属後,
3年次後期に各分野への配属が決
まります.専門分野を修得するに
は,まず,生命現象の基本的メカ
ニズムを十分に理解することが必
要です.私たちは遺伝学,有機化
学,生物化学などの基礎理論の理
解を徹底したうえで,次に示すよ
うな専門科目において最新知見の
解説と先端的な実験・実習を行っ
ています.
植物育種学: 生物の遺伝的改良
を人間自らの手で,自然との調和
の下に人間の生活に都合の良い方
向に向けて行こうとするのが育種
です.植物育種学では,生物の遺
伝的管理に関する思考に基づい
て,遺伝的改良の基礎理論を解説
しています.
応用分子昆虫学: 有用昆虫の利
用や害虫の防除など衣・食・住の
様々な場面で我々は昆虫と向かい
合って暮らしています.応用分子
昆虫学では動物種の80%以上を
占めると言われる昆虫と人とのか
かわり,昆虫機能の解明や開発,
利用について論じます.
分子生物学: 生命現象を理解す
る上で,今や分子生物学なくして
語ることはできません.本講義で
は,現在とてつもないスピードで
蓄積しつつある遺伝子の複製や機
能発現の分子機構に関する知見の
一端を紹介します.
生態化学生物学: 生態化学生物
学は植物の生活や植物と植物,植
物と微生物,植物と動物,動物と
動物の間で役割を果たしている化
学物質 ( フェロモンやその他の情
報物質 ) について論じます.また,
植物の二次代謝産物の生物の体の
中における合成のされ方やできた
ものの生理的な作用,生態系での
役割についても紹介します.
遺伝子制御学: 植物のDNA(ゲ
ノム)は核,葉緑体,そしてミト
コンドリアに分散して存在し,そ
れぞれ異なる特徴をもっていま
す.遺伝子制御学ではそれら植物
ゲノムの構造やそこに含まれる遺
伝子の働きを詳細に解説し,生物
生産にかかわる遺伝子の役割とそ
の利用について洞察を与えます.
分子酵素学: 地球上に存在する
多くの生命は,多種の化学反応が
順序よく進むことによって支えら
れ,タンパク質は秩序だった生体
反応を進行させる重要な機能をも
っています.分子酵素学ではその
仕組みを明らかにし,有用な機能
を備えたタンパク質を作製するた
めの基礎理論を解説します.
応用生命科学実験の一コマ
学部卒業生のうち大学院進
学者は8割近くを占めます.
その内の8割は本学大学院
に 進 み ま す が, 他 は 東 大,
京大,奈良先端大などの大
学院に入学しています.
1
公務員
陸 上 自 衛 隊, 海 上 自 衛 隊,
都道府県庁,市役所
研究機関
農業食品産業 技術総合研
究機構,農業生物研究所
教員
大学教員,高校教諭
食品製造業
日本甜菜製糖,ノバルティ
スファーマ,サントリーホ
ールディングス,日清製粉,
ネ ス レ 日 本, メ ル シ ャ ン,
正田醤油,味の素,よつ葉
乳業,サッポロビール,明
治乳業,雪印乳業,日清オ
イリオ,Dongsuh 食品会社,
日本食品化工,日油,日本
製粉,雪印乳業,サッポロ
ビール
農林水産関連
ズコーシャ,住化農業資材,
カネコ種苗,ホクト,雪印
種苗,日本製紙,サカタの
タネ,ホクレン,北海道農
業研究センター,全国農業
協同組合連合会
医薬品製造業
シ オ ノ ギ 製 薬, 花 王,CJ
Corporation,エーザイ,ア
ステラス製薬,アース製薬,
クミアイ化学,資生堂,長
谷川香料,富士レビオ,ツ
ムラ
その他
サキコーポレーション,ト
ヨタ自動車(株),ニトリ,
丸紅,旭川信用金庫,電気
化学工業,三友プラントサ
ービス,三菱東京 UFJ 銀行,
旭 化 成 ア ミ ダ ス,WDB エ
ウレカ,積水化学工業,日
本アレフ
(企業名、団体名は就職当時)
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生物機能化学科
BioscienceandChemistry
17
ヒトの健康にかかわる代表的な腸内細菌をグラム染色し,顕微鏡観察しまし
た.ブルーに太く長く見えるのがアシドフィルス菌,ブルーに細く短く見え
るのがビフィズス菌,ピンク色に見えるのが大腸菌です.(倍率:1000 X)
バ イ オ サ イ エ ン ス と バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー
バイオサイエンスとバイオテクノロジー,これらを共通のキーワードとして私
たち生物機能化学科では最先端の教育と研究が行われています.本学科の研究
分野は大変多岐にわたっています.すなわち,植物,動物,微生物などの生物
の示す生命現象の発現機構に関わる基礎的研究を通じて,食糧,健康,資源エ
ネルギー,環境など,人類の生存にきわめて重要な基本的な課題を解決しよう
というのが,私たちの大きなねらいです.本学科は,バイオテクノロジーなど
を手段としたバイオサイエンスの担い手を育て,遺伝子から地球生態系までを
研究対象として人類の生活の質の向上に貢献することを使命としています.
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AI
P
生物機能化学科
土壌生態系をめぐる地球温暖化ガス
の動態.土壌学分野のホームページ
(http://www.agr.hokudai.ac.jp/env/
soilscience/index.html) にたくさん写
真がありますのでご覧ください.
生物機能化学科は 9 つの分野(植物
栄養学,根圏制御学,土壌学,生物有
機化学,生物化学,応用菌学,微生物
生理学,食品栄養学,食品機能化学)
から構成されています.また,大学院
の基礎環境微生物学分野と微生物新機
能開発学分野とも連携して教育研究に
あたっています.
大地を科学する
多くの生命現象の土台になっている
のは文字通り土壌すなわち
土です.
土壌学分野では土壌の機能
を作物栽培(生物生産)の
面からだけでなく,土壌圏
としての物質の移動,大気
圏,水圏までも含めた生態
系での物質循環の視点から
とらえ,自然の精巧な調節
機構の解明や,環境問題を
解明するための研究を行っ
ています.そのため,土壌
や土壌中の生物ばかりでな
く 土 壌 に 接 し て い る 植 物,
水,大気なども研究の対象
となり,畑,森林,川,湖
などフィールドでの調査研
究が多いことも,この分野
の特徴といえます.一粒の
土壌粒子の反応から,一枚
の畑,一つの河川の流域,全地球規模
の炭素,窒素循環まで,対象とするサ
イズもさまざまです.
植物の栄養生理を地球規模で探求する
地球上には養分が極端に少ない酸性
土壌,半乾燥地域の塩類土壌,有機物
が分解せずに残っている泥炭土壌な
どの不良環境土壌が多く存在していま
す.これらの地域を保全・再生し,作
物生産の向上を図るためには,これま
でのような環境の人工的な改造ではな
く,それぞれの環境に適応している植
物の機能を有効利用することが必要で
す.このような考えに基づき,植物栄
養学分野では根圏制御学分野との連携
により,世界各国と共同して不良環境
に適応している植物の調査や栽培試験
を行っています.特に不良環境土壌で
は養分の供給力が問題となるので,植
物の栄養生理が重要な研究テーマとな
ります.さらにその機能を強化するた
カビの培養液から単離した化合物(Theobroxide)を噴霧することで,アサガオの花芽形成
を誘導することができます(写真右,左は未噴霧).
めに,不良環境条件下での光合成,呼
吸,窒素代謝,植物生育の制限要因と
なりやすいリンの吸収と代謝,毒性が
強く不良土壌に多いアルミニウムやナ
トリウムに対する耐性メカニズムなど
を,生化学,遺伝子工学,植物形態学
的手法を用いて研究しています.
有機化学が解き明かす自然の営み
生物有機化学分野は,生物の営みを
有機化学的に解明することにより,農
業生産,環境問題にかかわっていま
す.「なぜそういう現象が起きている
のか」と不思議に思うことから研究は
出発します.具体的には,生物の現象
にかかわる有機化合物をクロマトグラ
フィー等の方法により単一化合物とし
て取り出す研究があります.この過程
で,その現象を実験室内で再現させる
さまざまなバイオアッセイ法が用いら
れます.化学構造の決定は,化学反応
およびスペクトル解析により行われま
す.決定された構造が正しいことを明
らかにするため,その化合物あるいは
類似化合物を合成します.最後にその
化合物がどのようにして生体内で合成
されているのか,どのようにして生体
内で機能して現象を発現しているのか
が明らかにされます.このようなアプ
ローチにより,日本だけなく,東南ア
ジア,インド亜大陸,アフリカ大陸で
起きている食糧問題,環境問題の解明
にも取り組んでいます.
18
K
ブラジルに生育する植物葉における,アルミニウム,リン,カリウムの分布を示す X 線解析図.光って見える粒子が,対応する元素の存在
を示しています.
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X 線構造解析から得られたアミノ酸分解酵素の立体構造を示しています.酵素タンパク質がホモダ
イマー(2 つの同じサブユニットが相互作用している)として存在していることがわかります.
有用酵素の科学と応用
生物の示す代謝反応はすべて酵素によ
って触媒されています.皆さんは発酵・
醸造食品の製造に麦芽による糖化反応
や,酵母のアルコール発酵など,植物や
微生物に由来する酵素反応が利用されて
いることをご存知のことと思います.そ
して今,酵素の活躍分野は医薬品,洗剤
などの化学製品,環境浄化などにも拡大
しており,人類が健康で豊かな生活を送
るために不可欠なものです.生物化学分
野ではこの酵素を研究対象として,生
19
角が生えたように見える珍しいカビ.東南アジアの植物から分離
された菌株ですが,その未知の機能に興味が持たれます.
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化学,分子生物学,遺伝子工学,タンパ
ク質工学などの幅広い知識と手法を用い
て,有用酵素の構造と触媒反応との関係
を調べています.酵素の構造とは,遺伝
子上の塩基配列に始まり,アミノ酸配列
から高次構造に至るまでを意味していま
す.その情報を基に変異酵素を作製して
触媒反応の能力を向上させたり,有用な
酵素遺伝子を植物に導入して,生産性の
高いトランスジェニック植物の作出も試
みられています.
微生物バイオテクノロジー
生物の中で微生物は一番種類が多く,
地上はもちろん地中,深海など極限環境
にも,ヒトの胃や腸にも生息しています.
多種類なので未知のことが多く,研究課
題が豊富です.農学部では,4分野:応
用菌学,微生物生理学,基礎環境微生物
学(大学院),微生物新機能開発学(大
学院)が,微生物機能を解明し,有用な
性質を最大限に引き出して利用する「微
生物バイオテクノロジー」の幅広い研究
に取り組んでいます.
微生物は具体的にどの様に多様なのか?
を解明するために,他の生物との相互作
用やその生態を明らかにする研究が一つ
の大きな流れです.現在,イネいもち病
菌とイネ,ヒトおよびカメムシの腸内細
ジャーファーメンターによって大腸菌が通気撹
拌培養されている様子.茶色く泡だって見える
のが大腸菌の培養液.大腸菌の増殖に伴って,
培養液の中に有用物質が発酵生産されます.
菌,北極圏の万年氷に存在する微生物を
対象に研究が進んでいます.もう一つの
流れは,有用微生物を自然界から探索し,
その機能を解析し,利用開発する研究で
す.例えば,飼料添加物として有用な酵
素であるフィターゼや,バイオエタノー
ル生産のための糖化酵素,有機合成化学
では難しい反応を触媒する酵素を生産す
る微生物,新規オリゴ糖生産菌の探索研
究などがあります.さらに,コリネバク
テリウムやロドコッカスなどの発酵工業
上有用な微生物の性能をより向上させる
ため,代謝工学にもとづく育種も進めら
れています.一例として,微生物の代謝
機構を巧みに改変して,特定のアミノ酸
や有機酸の生産性を高め,これらの有用
物質を大量生産する発酵生産技術の開発
を行っています.また,タンパク質工学
による機能改変によって有用な酵素を創
出する研究も進行中です.さらに,乳酸
菌やビフィズス菌などの腸内細菌がヒト
の健康を維持増進させるメカニズムの解
明など,食と健康に関わる課題にも,精
力的に取り組んでいます.これらの研究
は,微生物学,生化学,有機化学,遺伝
子工学などの,幅広い知識と技術を駆使
して行われています.
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生物機能化学科
過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
このような教育,研究環境
で育った学部生や大学院生
たちは,醸造,発酵,食品,
化粧品,化学工業,医薬品
などの民間研究所や,大学
教員,公務員として,幅広
い 分 野 で 活 躍 し て い ま す.
また,近年,大学院の重点
化 と と も に, 卒 業 生 の 約
70%が大学院へ進学するよ
うになっています.
公務員
都道府県庁,市役所,北海
道立北見農業試験場
研究機関
国立国際医療センター,栄
養・病理学研究所,農業・
写真は,ラット小腸上皮細胞の蛍光染色像を示しています.
食品産業技術総合研究機構,
黄緑に見える部分が消化管ホルモンの一つコレシストキニン
理化学研究所
を産生しています.それ以外の細胞の核が赤く染色されてい
食品アレルギーの研究に用いている IgE 応答性のブラウン・ノルウェーラット(野性色)
教員・技術職員
ます.
と,一般の栄養・生理学実験に用いるウィスターラット(アルビノ).
大学教員
醸造・醗酵・食品
収や生理作用にどのように影響
食と健康を科学する
ケミン・ジャパン,クノー
ル食品,UCC 上島珈琲,ラ
するのか,ミネラルの吸収や利
近年,高齢化社会の到来と共に,従来
ボ,キッコーマン,ミツカ
用性に対して他の食品成分はど
のように病気になってから薬で治すので
ン,日本甜菜製糖,カルピス,
はなく,食習慣によって病気を予防し, のような影響を与えるのか,食
明治乳業,北海道コカ・コ
ーラプロダクツ,森永乳業,
物繊維などの摂取が大腸ガン
進展をコントロールするという考え方が
フレッシュシステム,カル
の発生を押さえるメカニズムは
重視されています.従って,食品成分と
ビー,サッポロビール,竹
どのようなものか,などのテー
体のかかわり合いを研究することはます
本油脂,双日,アサヒビール,
味の素,日清製粉,すかい
マについて,神経,ホルモン,
ます重要になっています.食品機能化学
らーく,ハウス食品,森永
さらには免疫系の関与を考慮し
分野では食品に含まれる抗酸化物質や各
製菓,グリコ乳業,ホクビー,
宝酒造,雪印乳業,大日本
ながら研究しています.食品機
種酵素阻害物質など健康の維持・増進に
住友製薬,サントリー,高
能・栄養に関する研究は,農学
寄与するような新しい成分を発見した
砂香料工業,日水製薬,よ
と医学の境界領域の研究であ
り,食環境が消化管の機能にどのような
つ葉乳業,日本デルモンテ,
(AH22 /pAAH5) は 日清フーズ(株)
新機能開発の一例.アルコール発酵酵母
,P&G ジ
り,実験動物や培養細胞を用
影響を及ぼすのかを究明することを目的
デンプンを利用できませんが,アミラーゼ遺伝子が導入され ャパン,ゼンショー,ドト
いた生化学,分 子生物学,免 た組換え株 (AH 22/pACG115) は利用できるようになりま ールコーヒー,ロイズコン
に研究しています.また食品栄養学分野
疫組織化学的解析や,有機化 す.写真は,両株をデンプンを含む培地で生育させた後,ヨ フェクト,明治製菓,東京
では,どのようにして体が食品成分を認識
ウ素による染色を行った結果です.組換え株の周囲に見える
(株)
学的手法による新規化合 物の 透明帯は,デンプンが分解されていることを示しています. めいらく,キューピー,
し消化酵素を分泌するのか,ある食品成
菱 食, J - オ イ ル ミ ル ズ,
単離・構造決定などの幅 広い すなわち,デンプン資源からのアルコール生産の可能性が示 昭和産業,協同乳業,メル
分の過剰摂取は脂質代謝をどのように変
シャン
手法を用いて行われています. されているわけです.
えるのか,脂質成分の構造がその消化吸
医薬品等
中 外 医 科 学 研 究 所, 大 正
製 薬, フ ジ タ, 富 士 レ ビ
オ, 帝 人, 小 野 薬 品 工 業,
ADEKA ク リ ー ン エ イ ド,
ホーユー,武田薬品,杏林
皆さんは 2 年次進級と同時に生物
にも大切です.2 年次後期から講
卒業までの一年間,本格的に卒業
製薬,アステラス製薬,ヤ
機能化学科に分属したあと, 年
義と並行して学生実験が始まりま
研究のテーマに取り組むことにな
ンセンファーマ,万有製薬,
次修了までの間,各分野について
す. 年次前期までの 1 年間,通
ります.
塩野義製薬,小林製薬,東
亜薬品工業,シオノギ製薬,
講義を通じて十分な理解を深めま
常午後は毎日実験に割り当てられ
日本曹達
す.このためには,化学,生物学,
ています.この間,皆さんは各分
化粧品 英語等の十分な基礎学力が要求さ
野についての専門性を深めていく
花王,ピカソ美化学研究所,
ピアス
れます.英語は各分野の学術文献
ことになります. 年次後期には
化学工業 理解のためだけでなく,将来皆さ
それぞれの研究室(分野)への所
大日本印刷,昭和産業,東
洋製罐
んが研究室に所属したときには,
属が決まり,講義を受けながら,
商社
海外からの留学生も多いので,お
一方では研究室の一員としての生
伊藤忠商事,東洋エンジニ
2 年次後期の応用菌学分野の学生実験にお
互いのコミュニケーションのため
活が始まります.4 年次になると
アリング,イオン,リクル
ける組換え DNA 実験の一コマです.
ー ト H R マ ー ケ テ ィ ン グ,
山九,中野テック,海外貨
物検査,タキイ種苗,東レ
リサーチセンター,KISCO
その他
北海道農業協同組合中央会,
JT日本たばこ産業,全国
農業協同組合連合会,日本
食品分析センター,日本海
事検定協会,ユニチカ,に
っさく,旭ガラス,住化農
業資材,商工中金,セント
ラル硝子,北海道旅客鉄道,
加 藤 レ デ ィ ス ク リ ニ ッ ク,
北海道放送
20
学科教育
(企業名、団体名は就職当時)
北大農学部2012.indd
20
2011/07/19
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森林科学科
ForestScience
21
日本北限の北海道のブナ天然林.ブナは冷温帯林の代表種
環 境 の 保 全 と 森 林 資 源 の 有 効 活 用 を 考 え る
「森林の破壊,地球温暖化,種多様性の維持…」 皆さんがよく耳にする言葉だ
と思います.今日,私たちにとって,自然環境の保全とリサイクル型の資源利
用が,将来への重要な課題となってきています.こうした課題に答えるため,
多様な森林の育成・利用,またより良い自然・生活環境の保全をめざした総合
的な教育・研究を行っているのが森林科学科です.森林科学科では,自然科学
と社会科学の両分野を基礎に,学内での講義や実験に加えて,広大な研究林を
活用した野外実習により,森林とその生産物の利用について学んでいきます.
森林と人間社会との調和のとれたあり方について考えています.
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森林科学科
森林管理の目標をどう設定するかは森林政策の大きな課題です.
森林を「管理」する
森林から得られる木材も,私たちの
生活には欠かせないものです.しかし,
日本は年間の木材需要量の 8 割を外国
に依存しています.森林の保護はきわ
めて重要ですが,同時に利用していく
ことも考えていかねばなりません.森
林の多様な機能を損なわないように配
慮しながら適切な管理ができれば,私
たちは資源を永続的に利用することが
できます.森林生態系管理学分野では,
このように森林を合理的,計画的に利
用していくための管理システムについ
て検討しています.あわせて,ランド
スケープレベルでの森林管理を実現す
るための解析技術,調査手法について
も研究しています.
北 海 道 駒 ヶ 岳 の1 9 9 6 年 の 小 噴 火 で は 山 頂 付 近 だ
けが火山灰に覆われましたが,それにより地表面の
降雨浸透性が低下したため,通常の雨でも大規模な
土 石 流 が 発 生 し ま し た. 写 真 は 一 回 の 雨 で 形 成 さ れ
た深さ4メートル,幅 メートルの侵食谷です.
森林科学科は 9 分野(造林学,流域
砂防学,森林政策学,森林生態系管理
学,木材工学,樹木生物学,木質生命
化学,森林化学 , 森林資源生物学)で
構成され , 教育研究にあたっています.
「森林」を知る
雌阿寒岳山麓のアカエゾマツ林.樹 森林は多くの種類の樹木から構成さ
木の生活には,樹種によって個性が れ,樹木の本数や大きさも様々です.
あります.アカエゾマツ林は,火山 造林学分野では,それぞれ個性の異な
地帯などに多く分布します.
る樹木や森林の生活の仕方について,
生理的・生態的側面から研究を行い,
多様な森林の育成に貢献し,また地球
環境保全に対する森林の役割について
も研究を行っています.
また樹木は,菌類などの生物や物理
的環境との相互作用をもち,様々な環
境へ適応しています.森林資源生物学
分野では,森林生物群集間に成立する
相互作用系や森林に生息する生物の利
用技術に関する研究を行っています.
森林を「保全」する
地震や噴火,豪雨など自然の猛威と,
人類の土地利用の拡大にともなう自然
の改変は,河川や森林に強いインパク
トを与えてきました.その結果,国土
の環境は著しく劣化し,時には土石流
や地すべりといった自然災害が人々の
命と財産を奪い,生活域を破壊してき
ました.今や,私たちの住む国土(海
−川−山)に“緑”を復元すること
は,人類生存戦略として必須の課題で
す.流域砂防学分野では,土地や水の
動きと森林との相互作用に関する基礎
原理,および治山治水・防災・緑地復元
などの保全システムを解明し,陸域生
物圏(土地・水・生物)である森林の保
全・再生について研究しています.
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森林内での調査風
景( 立 木 の 直 径 を
測定しているとこ
ろ ) で す. こ う し
た地道な調査が研
究の第一歩となり
ます.
「木材」を使う
私たちは,ツーバイフォー工法の住
「社会との関係」を考える
宅からログキャビンまでのさまざまな
社会経済の発展にともない,森林の
木造建築,家具やインテリア製品,楽
破壊が大きな問題となっています.一
器,スポーツ用具や公園の遊具など,
方で,レクリエーション利用や水資源
多くの木材製品に囲まれながら暮らし
の保全,野生動物の生息地保護など, ています.木材は,人類の歴史と共に
森林に対する人々の要求は多様化して
生きてきた大いなる森林の恵みです.
きています.森林政策学分野では,こ
木材工学分野は,この大切な森林の恵
うした森林と人間社会との関係を包括
みを合理的に利用するための技術を考
的に理解することに努めながら,森林
える研究分野です.この研究室では,
の多様な利用と保護を両立させる政策
主として材料や構造物の強度という視
や社会のあり方を探る議論を行ってい
点から,生きている樹木に始まり木造
ます.研究テーマは国際的な森林政策
建築物に至る広い範囲を対象として,
の動向から,環境保全と森林利用,山
木材の強度性能評価や木材を用いた構
村と林業など多岐にわたっています.
造物の合理的設計法などの課題に取り
組んでいます.
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丸太を利用したパ-ゴラの試作.木材には炭素が貯蔵されているので,
木材を長期間利用することは,環境にも好ましいのです.この建物は,
耐久性を調べる目的で試作されたものです.
樹木の「生きる仕組み」を知る
木材は樹木の形成層活動により産出さ
れる木部細胞の集団です.これまでにも
建築物や道具などの原材料,燃料,バイ
オマスエネルギー資源として広く利用さ
れてきましたが,さらに多岐に活用し得
るポテンシャルをもっています.この有
用な生物資源をもっと有効に利用した
り,新たに活用方法を探索したり,資源
樹木を開発したりするためには,樹体形
成の過程・機構や、構成細胞の構造・機
能,さらには樹木の生命活動の仕組みを
知ることが必要不可欠です.このような
立場から,樹木生物学研究室では,樹体
を構成する様々な組織・細胞の微細構造
や機能特性,さらには非常にユニークな
越冬機構といった環境応答のメカニズム
に注目して研究しています.
2
林産物の「生命機能」を探る
人類の永続的発展には , 再生産可能な
木質資源(木材)の工業的利用は必要不
可欠ですが , 森林の地球環境保全機能も
考慮した , 森林資源の活用法を再構築す
る必要があります . 木質生命化学研究室
では , キノコや森林微生物などの森林資
源に着目し , 有用な有機化合物の探索・
デザイン・有機合成を行い , ヒトを含む
動物の細胞内での作用の仕組みを解析し
ています.これらの研究を通じて , 有機
化学 , 微生物化学 , 細胞生物学 , 木材化
学などの学問領域に分子のレベルから個
体のレベルに至るまでの , 新たな知をも
たらすとともに , 人類への貢献を目指し
て研究しています.
森林微生物の培養物
から有用化合物を抽
出している実験風景.
ハリギリ材の 3 本の道管(水の通り道)の走査
電子顕微鏡写真(倍率:45 X).木材に樹脂を
注入・硬化後,細胞壁を化学処理で溶解・除去
することにより作成.
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森林科学科
「木材成分」から新規素材を創製する
化石資源依存型社会を脱却し,持続的
循環型社会を構築するためには,「カー
ボンニュートラル」で地球上に豊富に存
在する木質バイオマスの計画的な再生産
と効率的な利活用が不可欠です.特に現
状では,除・間伐材や建築廃材などの未
利用バイオマスの有効利用法の確立が強
く求められています.森林化学研究室で
は、有機化学、高分子科学及び生化学の
基礎知識と研究手法を駆使して,木質バ
イオマスの主要成分であるセルロース,
ヘミセルロース及びリグニンの生合成・
生分解プロセスを解明するとともに,こ
れらの利用,すなわち,化石資源を原料
とする既存の材料・化成品の代替を目指
して,木質バイオマスの特徴を生かした
新規分子素材の創製を課題とした研究を
行なっています.
早春にシラカンバの幹に孔を開ける
と,無色透明な樹液があふれ出てき
ます.ほのかに甘く,さらっとした
飲み心地のする液体です.この現象
は早春にだけ起こり,溢出機構はま
だ多くの謎につつまれています.
過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
森林科学科を卒業した学生
は,中央官庁や都道府県な
どの公務員,商社,パルプ,
製 紙, 木 材, 住 宅, 楽 器,
緑 化, 化 学 工 業, 化 粧 品,
環境コンサルタントなどの
企業や,教員,報道機関な
どに就職しています.また,
大 学 院 へ の 進 学 者 が 多 く,
最近では 5 割以上の進学率
になっています.
学科教育
2 年次進級にともない森林科学科
に分属します.2 年次前期は,造
林学,砂防学,森林政策学,森林
生態系管理学,木材工学,樹木生
物学,木質生命化学,森林化学,
森林資源生物学,森林空間機能学
などの必修科目を履修します.こ
れらの科目は,自然科学から社会
科学まで広範囲な学問分野を基礎
とする森林科学を理解する上で重
要な講義で,「森林科学とは何か」
についての講義が行われます.2
年次後期からは,さらに専門的な
知識を習得するための選択科目が
始まります.同時に学生実験も始
まり,高度な実験を行うための基
礎的な手法を習得します.また,
総計 70,000 ha の大面積を有する
北方生物圏フィールド科学センタ
ー研究林での実習が始まります.
ります.4 年次になると,各自テ
2 年次夏季に苫小牧研究林で行わ
ーマを決め,本格的な研究を開始
れる実習や冬季に雨龍研究林で行
し,卒業論文を完成させます.
われる冬山実
習などをはじ
めとして,多
くの実習を通
して森林資源
と環境に対す
る認識を深め
ま す. 年 次
後 期 か ら は,
より専門的な
研究を行うた
めに,それぞ
れの分野に所
属し,研究室
の一員として
冬山での学生実習(必修)の様子.スキ-を履いて歩きながら,葉のな
の生活が始ま い季節の樹木の種類の見分け方を実習しています.
公務員
農 林 水 産 省, 都 道 府 県 庁,
市役所
研究機関
土木研究所 寒地土木研究
所
教員
高校教諭
製紙・紙加工
大王製紙,日本製紙,東洋
濾紙,王子製紙
林業・木材・木材加工
物林,都筑木材,住友林業
建築・住宅
開発技建,原創建,ミサワ
ホーム,YKK AP,旭ガラ
ス,大建工業,湘南ミサワ
ホーム不動産,コスモスイ
ニシア,神奈川地所,LIXIL
環境コンサルタント・緑化
野生生物総合研究所,環境
調査技術研究所,森林テク
ニクス,シー・ディー・シー・
インターナショナル,応用
地質,日本工営,タキイ種苗,
シンコンサルタント,ドー
コ ン, 石 勝 エ ク ス テ リ ア,
新日本開発工業,いであ,セ・
プラン
各種団体
ホクレン
NPO 法人 EnVision 環境保
全事務所
その他
住友商事,和弘食品,高砂
熱 学 工 業, ア ン タ ス, 日
本 政 策 金 融 公 庫, 進 学 舎,
ADEKA,岡村製作所,岡谷
鋼機,ロイズコンフェクト,
イビデン,富士紡ホールデ
ィングス,帝人,栗田工業,
ソニーグローバルソリュー
ジョンズ,電通,ハイテック,
日新製糖,ナシオ,インテ
リジェンス,東芝,昭和電
工,農林中央金庫,百五銀
行,キーウエアソリューシ
ョンズ,日立情報 通信エン
ジニアリング,トヨタマップ
マスター,NT T データサー
ビス,アークレイ,日医工,
山本製作所,電源開発,ニ
トリ,オンザプラネット,北
大リサ-チパーク,キッコー
マン
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(企業名、団体名は就職当時)
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畜産科学科
AnimalScience
2
動
物
を
ま
る
ご
と
科
学
す
る
ミルク,食肉,毛皮.私たちは家畜からの「贈り物」に囲まれて日々の暮らし
を営んでいます.1万年前から続けて来た家畜と私たちとのかかわりは,現代
においてその形を大きく変えはしたものの,今後も絶えることなく続いていく
ことでしょう.畜産科学科では,家畜と家畜をとりまく生態系における生命現
象を明らかにし畜産物の有効利用を図ることを目指して,家畜の発生・成長か
ら生産物の利用までを総合的に教育・研究しています.家畜という動物とそれ
を取り囲む環境をまるごと科学する集団が畜産科学科なのです.
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摂取した飼料が牛の体にどのように蓄積され,どのくらい牛乳生産に向けられる
かを調べるために泌乳牛の糞と尿を採取しているところです.この乳牛は 25kg
の牛乳を生産しますが,同時に 40kg の糞と 20kg の尿を排泄します.
反芻胃内の細菌が飼料に付着している様子です.反芻胃には様々の種類の微生物
が存在し,反芻動物と共生関係にあります.
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畜産科学科
畜産科学科には家畜改良増殖学,畜
牧体系学,食肉科学,酪農食品科学,
副生物科学の5分野があり,大学院の
家畜栄養学分野および生態畜産学分野
と連携して教育・研究を行っています.
家畜の遺伝的能力は遺伝子の出会い
(受精)で決まる
人によって繁殖がコントロールされ
ている動物,それが牛,豚,鶏をはじ
めとした「家畜」です.人はそれら家
畜の生産物を利用してきていますが,
同じ飼い方でもおいしい肉となる豚も
いればそうでない豚もいますし,乳を
たくさん出す牛もいればそうでない牛
もいます.その違いは家畜の遺伝的能
力の違いによります.家畜改良増殖学
分野では,「家畜」の遺伝的能力を優
れたものに「改良」し,そうした優良
家畜を「増殖」させるための研究を行
っています.体外受精やトランスジェ
ニック,核移植クローンなどを組み込
んだ分子胚発生学や,DNA レベルで
遺伝的特性を調査する分子遺伝学,さ
らに,コンピューターを使って親から
子,子から孫といった世代を越えた遺
伝子の流れをシュミレーションする統
計育種学など,広範囲の学問に関係し
ています.
体外受精により2細胞期に発生したブタ卵子.卵子は透明な物質(透明帯)で保
護されています.精子たちはいち早くこの障壁を乗り越え卵子と出会います.ど
の精子が受精に成功するかで性別や遺伝的能力が決定されます.矢印は透明帯を
貫通できず,受精できなかった精子たち.
2
土地から牛乳がわき出る
家畜の飼育には飼料作物や牧草の生
産のための土地が必要です.家畜の生
産は,土地からの飼料生産,家畜によ
る飼料摂取,乳・肉の生産,そして糞
尿の土地への還元,これらの要素が物
質の流れを介して相互に関連している
ひとつのシステムです.畜牧体系学分
野では,主に牛および馬といった草食
大型家畜を対象に,家畜生産システム
の各要素の変動にかかわる要因やメカ
ニズムを明らかにし,効率的で持続的
な土地を基盤とした家畜生産システム
を追究しています.
お腹の中を探検する
飼料がミルクや肉へ転換されるに
は,まずお腹の中で細かく砕かれ,多
くの酵素による消化をうけなくてなり
ません.家畜栄養学分野では,主に牛,
羊,鹿,馬などの草食家畜を用い,飼
料がどのように消化されるかを明らか
にし,鍵となるステップを最適化する
ことで,消化向上をはかる研究をして
います.飼料の組み合わせ,添加物の
開発,共生微生物の活性化などを通し,
お腹の中に秘められた力を最大限に引
き出そうというものです.これらの研
究は生物生産研究農場,静内研究牧場,
その他の関連施設を利用しておこなわ
れており,動物個体から細胞・DNA
分子までを見わたす広い視野を育みま
す.
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食肉のおいしさを科学する
食肉は良質の動物性タンパク質の供
給源としてだけでなく,人の生命活動
にとって有用な物質を多く含んだ食
品として注目を集めています.私たち
が食肉として摂取するのは家畜の骨格
筋です.したがって,食肉を生産する
とういうことは家畜を育成・肥育して
骨格筋の量を増大させることです.ま
た,屠畜後に得られた骨格筋は低温で
貯蔵(熟成)することによってはじめ
て軟らかくておいしい食肉へと変換し
ます.食肉科学分野では,家畜の骨格
筋がどのように形成され肥大していく
か,また,食肉を熟成するとなぜ軟ら
かくおいしい食肉となるのかなどにつ
いて研究しています.札幌キャンパス
内には食肉加工工場があり,研究農場
や牧場で飼養された豚や牛から得られ
る食肉を用いて,よりおいしく機能性
の高いハムやソーセージを作るための
基礎的研究も行っています.
乳を中心に自由な発想で科学する
普段,私たちが何気なく口にする牛
乳・乳製品ですが,よく考えてみると
ヒトでもウシでも,また他の哺乳動物
でも生まれたばかりの一定期間,その
新生動物は母親からの乳だけで成長す
るのですから,乳には生命活動にとっ
て必要な物質がいかに多く含まれてい
るかが分かります.これまでの研究で
乳に含まれる個々の成分の構造・機能
性のみならず,乳を発酵させた食品の
機能性・保健効果等が次々と解明され
てきました.酪農食品科学分野では乳
成分に関する未知の機能性を探求する
ことは勿論,発酵性乳製品を造る上で
細菌から酵母,カビなど広範囲の微生
物が深く関わっている点にも着目し,
これらの微生物の潜在能力を多面的に
生かす利用法に関しても検討を行って
います.
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骨格筋の微細構造を透過型電子顕微鏡で詳しく観察すると
縞模様が見られます.これは,骨格筋を構成するタンパク質
が規則正しく配列し高次構造を組んでいるためです.
家畜の体をすみずみまで科学する
家畜の骨格筋は食肉として利用され
ますが,他の部分 骨,皮,内臓,血
液はどうでしょう.直接には口にする
ことが出来ない,これら畜産副生物の
利用法を科学しているのが副生物科学
分野です.革製品やウールといったな
じみのあるものから,食品や化粧品あ
るいは医療品など幅広い分野への利用
が考えられています.当分野では,毛
皮のなめし技術に関する研究をはじめ
として,種々の副生物がどのような細
胞や物質で構成されているのか,そ
してどのような特性をもっているのか
を研究しています.また,屠畜後に副
生物として利用される組織が家畜の生
体内ではどのような働きをしているの
か,成長や老化に伴ってどう変化する
のかという研究も行っています.
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青カビチーズに用いられるペニシリウム・ロックフォルティの
光学顕微鏡写真です.柄(分生子柄)の先が分岐して箒状に梗
子をつけています.この梗子先端に鎖状に着生しているのが分
生子です.
牛の眼球強膜のコラーゲン細線維の走査型電子顕微鏡像.コラ
ーゲンは種々の臓器でこのような線維を形成して動物の体を支
えています.
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畜産科学科
学科教育
まず,家畜に触れること.これが
畜産科学科での教育の第一歩で
す.家畜の発生・成長から生産物
の利用までの基礎理論と応用技術
を体系的に学べるようにカリキュ
ラムが組まれており,畜産教育に
関して日本一充実した施設(研究
牧場および農場)を利用したユニ
ークな実習が行われています.牛
の分娩に立ち会い,子豚を育て,
その豚肉からハムやソーセージを
つくり,牛から搾ったミルクでチ
ーズやバターをつくり,皮を鞣し
て皮革製品をつくる.人類が家畜
と共に営んできた生産技術を体験
することにより,その基礎理論と
応用技術を学び,講義で得た知識
と融合させます.2・ 年次は畜
産科学を総合科学として学ぶ 2 年
間です .
年次後期になると,家畜改良増
殖学,畜牧体系学,家畜栄養学,
食肉科学,酪農食品科学,副生物
科学および生態畜産学のいずれか
の研究室に所属し卒業論文実験に
取り組みます . 家畜の有用遺伝
子を探索する人,家畜育種理論を
コンピューターでシュミレーショ
ンする人,牛の胃袋内の微生物を
調べる人,放牧馬の行動を観察す
る人,骨格筋のタンパク質分子を
解析する人,醗酵食品に関わる有
用微生物を調べる人,換毛周期と
メラトニンの関わりを探る人.研
究の対象や方法は様々ですが,こ
れらの研究の大きな目的は,家畜
という動物の生命現象を理解し生
態系との関わりを考究することに
あります.
過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
研究農場での搾乳実習.家畜生産実習(2・3 年次)では研究
農場および研究牧場を利用し,牛,馬,豚,鶏等の飼養管理
技術を学びます.
研究牧場での乗馬実習.3 年次の夏に行われる牧場実習では馬
および肉牛の飼育管理,草地管理,牧草収穫,乗馬などを行い,
土地・飼料・家畜のつながりを身をもって体験します.
ソーセージの製造実習(燻煙). 畜産物利用学実習(3年次)
では,研究農場で生産された豚を屠畜し,得られた豚肉を材
料に各種ハム,ソーセージ,ベーコン等を製造します.もち
ろん,自分たちの製造した製品を試食することも大事な実習
の一つです.
チーズの製造実習(乳酸菌スターターを添加).畜産物利用学
実習(3 年次)では,研究農場の乳牛から搾乳した牛乳を用い
てチーズ,バターを製造します.
畜産科学科の卒業生の約5
割が大学院に進学していま
す.国家公務員(農林水産
省)
,地方公務員,畜産関連
団体,畜産食品関連企業へ
の就職が多いのが特徴です.
公務員
農 林 水 産 省, 都 道 府 県 庁,
市役所,町役場
教員・技術職員
高校教諭,大学教員
農業団体
ホ ク レ ン, 日 本 酪 農 協 同,
全農研究所,全酪連,全国
農業協同組合連合会,日本
農産工業
乳業会社 明治乳業,協同乳業,サツ
ラク農協,タカナシ乳業
食品会社
伊藤ハム,スターゼン,ニ
チレイフーズ,ロッテ,U
HA味覚糖,日清食品,ホ
クビー,日清フーズ,丸大
食品,サントリー HD,す
かいらーく,マースジャパ
ン,キーコーヒー,サント
リー,ロイズコンフェクト,
日本水産,ミツカン,キッ
コーマン
商社
楽天,伊藤忠商事,北海道
ジェイ・アール商事
飼料会社
協同飼料,ゼノア新薬工業,
明治飼糧,日本農産工業
その他
丸善,
ワコール,
出光興産(ア
グリバイオ事業部)
,バンダ
イ,NTT データ,CGC グ
ループ,セーレン,住友化学,
富士通,青山メインランド,
農林中央金庫,コスモ石油,
兼松,クレイン乗馬クラブ
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(企業名、団体名は就職当時)
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生物環境工学科
BioresourceandEnvironmentalEngineering
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環境のためのテクノロジー〜現在から未来への農業〜
人類が土地を耕し,種を播き,収穫するといった一連の作物生産技術を身につ
けてからすでに5千年以上の年月が経ちました.しかし,生産性の向上だけを
目指した大量の化学肥料投入,地下水の汲み上げは,世界各地で深刻な環境破
壊を引き起こしています.無秩序に生産を続けていけば当然のように生産性は
低下し,草木一本も生えない荒れ果てた土地を将来に残すことになります.地
球環境の悪化が叫ばれている今,将来を見据えた農業を行う必要性が出てきま
した.自然生態系と調和しながら持続的な生産を行うために,環境負荷のない
農業を理工学的な見地から研究するのが生物環境工学です.
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生物環境工学科
土壌改良を行った圃場における土壌
浸入度の測定:客土・混層耕や有材
心破等により土壌の間隙構造の適正
化を図りつつ,適切な潅漑システム
を選択することで土壌水分環境を制
御する方法を検討しています.
農地での気象観測:農地や森林には作物
農産物を生産し,消費者の手元に
や木を育てる働きだけでなく,地域や地
届くまでのプロセスを追っていくこ
球の気象環境を穏やかに保つ働きもあり
とで,農業生産と自然環境のかかわり
ます.例えば気温の上昇を抑えたり,風
が見えてきます.農産物を生産するた
を弱めたり,雨水を貯えたり,CO2 を吸
収したりします.
めには,まず基盤となる土壌 ( 土壌保
全 ),環境 ( 生物環境物理 ),それを取
り巻く農地農村空間 ( 土地改良 ) があ
り,これらを知り環境情報 ( 農林環境
情報 ) とすることが環境を維持するた
めのキーになります.得られた情報を
基に,生産に使用される車両 ( ビーク
ルロボティクス ) や作業機械 ( 作物生
産システム ) は環境を維持しつつ,生
産性を向上させる必要があります.生
産された農産物は貯蔵・加工 ( 食品加
工工学 ) を経て消費者のもとに届きま
す.このような生産過程の環境保全と
同時に,消費するエネルギを再利用し
環境維持 ( 農業循環 ) に貢献する研究
も行っています.農業工学科とは,こ
れら8つのプロセスを研究する分野で
することを目的としています.
構成されています.
「空間」を知る
「土」を知る
農地農村空間とは,かつては人々が
土壌は,太陽や降水の恵みをじか
その地域の資源をうまく利用しながら
に受け入れて食料としての作物の生
営々と築き上げてきた,人工的であり
産の場となると同
ながら自然的要素もふんだんに含んだ
時に,植物根をは
空間でした.しかし急激な人口増加,
じめとした個々の
社会経済や生活様式の変化など,さま
生態系の活動の場
ざまな状況が急速に変化する現代にあ
でもあります.そ
っては,農業にも効率性や合理性が過
の 約 70 % は 間 隙
大に求められるようになってきていま
と呼ばれ,中に空
す.その結果,農業自体が地域の環境
気や水,種々の養
劣化をもたらしたり,地域資源を収奪
分物質を蓄えると
的に利用するなどの面が顕著になって
同時に,太陽の熱
きています.農業と地域が持続的に存
エネルギを受け止
在していくためには,土地と水を適切
めて適当な温度条
に利用していかねばなりません.
件を維持する等の
土地改良学分野ではその土地と水に
機能を持っていま
ついて,農地や河川,湿地をフィール
す.このような物
ドに,農業流域の水環境保全,農業用
理的機能を発揮し
水・排水システムの適正管理,土地利
て,生物の活動に
用と農業・環境,土壌侵食抑制,泥炭
影響を与える水・
地の適正利用と湿原としての保全に関
空気・地温などの
する研究を行っています.
環境を調節する所
か ら,「 母 な る 大
地」とも言われて
きました.
土壌保全学分野は土壌がもつ環境調
節機能の適切な発現と保全に必要な理
論を学び,研究し,Field Science を
実践しています.
「環境」を知る
農地や農業施設の物理学的環境を明
らかにし,これらを改善し有効利用す
ることで,農業の生産性を高め,農業
気象災害を防止・軽減することができ
ます.農地,森林,湿原などでさまざ
まな気象観測を行って蒸発散・光合成・
呼吸にともなう熱,水,CO2 などの
収支を調べ,それぞれの生態系と大気
との間の相互作用を明らかにします.
また,それらの存在がその地域の気象
環境や地球環境にどのような影響を与
えているのかについても明らかにしま
す.
別寒辺牛泥炭地:日本にはかつて広大な湿原が低
生物環境物理学分野は農業生産と自
地に広がっていました.そのほとんどは長い年月
然環境に関するさまざまな問題を物理
をかけて水田として拓かれてきましたが,北海道
学的な方法によって明らかにし,解決
にはまだ湿原が残っています.
0
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環境を「情報」へ
食料生産や環境に関する多様な問題
を解決するために,農地や森林,湿地
や河川などの環境および生態系を,地
域規模から地球規模に及ぶ様々な空間
スケールで計測し,それらを情報化す
ることが求められています .
農林環境情報学分野では,フィールド
センシング・リモートセンシングなど
を用いて環境および生態系の情報を取
得し(情報化),それらを時空間的解
析手法により評価(情報解析)する研
究を行っています . このようなマルチ
アプローチによる情報を提供すること
によって,より良い生態系保全・環境
計画に貢献することを目指しています.
1
自動走行トラクタを
使った実験風景<ア
メリカ,イリノイ大
学との共同研究>:
トラクタの前には作
物列を判断するため
のカメラ,天井には
位置を測るための
GPS が つ い て い ま
す.
「車両」からのアプローチ
農作業負担を減らすための機械化研
究は過去 50 年にもわたって続けられ
てきました.現在ではテクノロジーの
進歩とともに,単に作業を機械化する
だけでなく,知能を持った農用ロボッ
左上:生態系の息吹きを測る-インドネシアの
熱帯泥炭林の二酸化炭素吸収量を連続観
測している様子です.
左下:湖沼環境のフィールドセンシング-阿寒
湖の水生植物や水環境の空間分布を測定
している様子です.
右上:農林環境のリモートセンシング-人工衛
星データ等をレイヤーとして用い農地や
森林の環境を調べます.
いコンピュータ制御を含む作業機構の
トの開発が進められています.最近は
開発から,圃場情報のセンシング,環
環境問題がどこでも話題になっていま
すが,農業における一番の環境問題は, 境面・労力面で持続できる農業を実現
する作業システムの構築(局所栽培管
生産量を増やすことばかりを考えたた
理システム,農作業請負システムなど)
めに,肥料や薬剤を大量に散布したこ
まで,農用作業機械の利活用を取り巻
とにあります.これからの農業に要求
く圃場・作物・労働にかかわる研究を
されているのは,必要なところに必要
進めています.
なだけ肥料や薬剤を散布して,自然に
流出する量をできるだけ減らすという 「食」へのこだわり
農産物は収穫された後,選別・加工・
ことです.これは環境に対する負荷を
貯蔵等のさまざまなプロセスを経て私
減らすだけではなく,コストも抑える
たちの食卓に届きます.食品加工工学
ことができるというメリットもありま
分野ではこれらのプロセスを通じて,
す.
おいしくて安全で健康に良い農産物を
ビークルロボティクス分野は,今や
食卓に届けるための研究を行っていま
農業生産に欠くことのでき
す.
ない車両を主体にし,いか
農産物はそれぞれ個性をもっていま
に効率よく環境保全ができ
す.その中から良い品質のものを選び
るかについて研究を行って
出すための品質測定技術や選別技術の
います.
研究をしています.農産物は生きてい
「作業システムの最適化」
ます.収穫後の良い品質をさらに長期
作物生産システム工学分
間維持するための貯蔵技術や流通技術
野は,主に作物栽培圃場に
の研究をしています.農産物はさまざ
おける農用作業機械の機能
まな食品に加工されます.おいしくて
や種々の作業機を組み合わ
安全で健康に良い食品に加工するため
せた作業システムを研究対
の加工技術の研究をしています.
象としています.
作物・環境・人間に優し
運転者の視野移動頻度から神経的負担を評価するための実験
風景:運転者の頭部に小型ビデオカメラを装着し,運転者の
視野移動を記録・計測しています.
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生物環境工学科
寒冷外気利用による食品の
凍結濃縮および廃水の凍結
希薄清澄化:自然の寒さを
使って連続的に,液状食品
の濃縮化や廃水の希薄清澄
化しようとするものです.
コージェネレーションシス
テム:畜産廃棄物を発酵さ
せたときに発生するメタン
ガスを燃料の一部として発
電するためのエンジン.
機能性バイオマスフィルムの研究:ホタテ貝殻
粉末を利用して抗菌性と鮮度保持機能を有する
食品包装用フィルム開発を目指し研究をすすめ
ています .
土壌硬度の可視化:作物の根の成長が疎外され
たり,排水が悪くなるなどの悪影響を与える締
め固められた部分を計測する装置です.この結
果をもとにどのようにすれば畑が締固められな
いかを研究しています.
そして,「持続型農業」へ
作物を消費すると当然のようにゴミ
が出ます.これをそのままにしてしま
うと,環境に存在するエネルギは土壌
から流出する一方です.このエネルギを
また自然に戻すことで,持続的に生産
を維持するのも農業工学の研究です.
農業循環工学分野は,土壌・作物・
食料・家畜・機械を有機的に組み合わ
せて持続的農業を構築し,それに対す
る工学的解析を行っています.
自然エネルギも含む農業未利用資源
の処理・利用に関する研究としては,
高温好気法による有機性廃棄物の分
解,食堂生ゴミの堆肥化,堆肥化にお
けるアンモニア揮散,病原菌死滅のた
めの家畜ふん尿スラリーの処理,有機
性廃棄物から発生するバイオガスの利
用などがあり,寒冷外気を使った凍結
濃縮技術による食品の濃縮化,廃水の
濃縮・希薄化があります.
また,土壌硬度の三次元可視化手法
コンバインによる水稲収穫実習風景:3 年次の農業機械学実習では,バレイショ,テン菜,トウモ
ロコシ,稲などの播種から収穫までの実習を行っています.
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過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
による土壌踏圧現象解析の研究では,
土壌硬度三次元マップの作成,土壌保
全型耕うん方法の開発などを行ってい
ます.
学科教育
2 年次で生物環境工学科に分属し
た学生は,農業土木学概論,生物
環境物理学,土壌物理学,環境情
報学 I,フィールド情報システム
学,農産物・食品加工工学 I,農
作業学,生物生産環境工学といっ
た農業工学に関する専門知識を学
習します。また,材料力学,応用
数学,情報解析学,測量学の講義
を受け,専門知識の習得に必要な
基礎を学びます。さらに,演習や
実習,基礎実験を通じて,講義内
容の理解を深めます。
年次になると,構造力学,応用
力学,熱力学,電気工学,自動制
御工学,水文学,土質力学,機械
システム設計法,農業水利学,農
村計画学といった専門基礎科目に
加えて,水理学,生物環境気象学,
農地環境工学,環境情報学 II,フ
ィールドロボット工学,農産物・
食品加工工学 II,農業機械学,有
機性廃棄物工学といったさらに専
門性の高い科目を受講します。ま
た,実験や実習では,大学キャン
パスを実際に測量したり,エンジ
ンを分解・組み立てたりします。農
林水産省の事業所や企業,農家な
どでのインターシップもあります。
そして 4 年次になると,それぞれ
に与えられた課題をまとめて卒業
論文を作成することになります。
大学院進学が約6割を占め
ています.就職者中に占め
る国家公務員(農林水産省,
北海道開発局等)および地
方公務員の割合が比較的高
く,これは修了者でも同様
です.
(農業工学科の実績)
公務員
北海道開発局,都道府県庁,
市役所,国土交通省,農林
水産省,経済産業省,防衛省,
外務省
研究機関
北海道環境科学研究センタ
ー, 農 業 環 境 技 術 研 究 所,
(独)中央農業総合研究セン
ター,農研機構生研センタ
ー
教員・技術職員
大学教員,高校教員
コンサルタント
ニュージェック,NTC コン
サルタンツ,ビジネスコン
サルタント,ドーコン
一般製造業
ビーユージー,菱日エンジ
ニアリング,松田産業,小
橋工業,新菱冷熱,東洋製
作所,栗田工業,富士通北
陸 シ ス テ ム ズ, コ ガ ネ イ,
データサービス,データベ
ース,三菱商事,航空測量,
双 日, 松 田 産 業, タ ク マ,
小松ウォール工業,ルネサ
スマイクロシステム,日本
テトラパック,三甲
土木建設業
五洋建設,クマシロシステ
ム設計
農業機械製造業
クボタ,コマツ,キャタピ
ラー三菱,ヤンマー,キャ
タピラージャパン,
自動車製造業
マツダ
食品工業
キッコーマン,理研ビタミ
ン,カルビー,アサヒビール,
パスコ,日本ハム,キュー
ピー,グリコ乳業,ナシオ,
日本甜菜製糖,日清オイリ
オグループ,日清食品,ナ
シオ
サービス業
農 林 中 央 金 庫, セ コ ム,
DOA ホールディングス,セ
イコーマート,郵便局,三
菱東京 UFJ 銀行,三井不動
産, コ ロ ナ, ズ コ ー シ ャ,
ニトリ,ザイマックス
農業団体
日本生活協組合連合会,全
国 酪 農 業 協 同 組 合 連 合 会,
生活協同組合コープさっぽ
ろ,JA 中央
各種法人
日本国際協力センター,リ
モートセンシング技術セン
ター,農村漁村文化協会
その他
東 日 本 電 信 電 話, 自 営 業,
日本放送協会,紀伊国屋書店,
東京ガス,ムトウ,東武緑地
(企業名 , 団体名は就職当時)
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農業経済学科
AgriculturalEconomics
生 産 か ら 消 費 ま で、 農 学 と 経 済 社 会 を つ な ぐ 総 合 科 学
世界の現在の人口は 68 億人,2025 年には 80 億人になると予想されています.
その時,食料や人間をとりまく自然環境はどのようになっているのでしょうか.
飽食の一方で飢餓が生まれる世界経済のゆがみ.食料増産の一方で枯渇する生
物種や土壌・水などの生産資源.豊かな農地を持ちながらも食料を海外に依存
する日本の現状・・・.どのようにしたら,私たちはこうした問題を解決するこ
とができるのでしょうか.これからの時代,多様な農業形態を再評価しながら,
人間と自然との共生を取り戻すことが求められています.そのための問題解決
と新たな枠組みづくりを担っていくこと.これが農業経済学の役割であり,私
たちの研究のめざすところです.皆さんは,本学科のさまざまなゼミナール活
動に参加し,自分の研究課題に取り組みながら,幅広い知識と科学的な世界観
を身につけることができます.
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農業経済学科
省力・環境保全型農業として注目さ
れているアイガモ水稲同時作を実践
している農家の経営状況を調査.外
敵を防除するための「電気柵」が何
となく物々しさを感じさせます.
農業経済学科は,農業環境政策学,
農業経営学,開発経済学,協同組合学,
食料農業市場学の5つの分野から構成
されます.そもそも理系学部に「農業
経済学」という学問分野があること
に違和感をもつ人もいるかもしれませ
ん.農業経済学を定義するならば,農
学の一分野として,農業と食料をめぐ
る経済的諸現象(生産,加工,流通,
消費)や農林業にかかわる環境問題に
ついて,経済学,社会学,政治学,法
学など社会科学の成果を応用して解明
する学問といえます.もちろん,農業
は土地を主要な生産基盤とし,人間の
働きかけによって農作物や家畜といっ
た生物資源を有効に活用しようとする
生産活動です.そこでは他の学科で取
り組まれているさまざまな自然科学の
知識と技術が必要とされます.しかし,
農業は経済活
動として営ま
れているので
すから,農学
の個々の科学
技術を実際に
応用するため
には経営的・
経済的な視点
が欠かせませ
ん.農林業は
環境資源とし
ての機能も有
し て い ま す.
環境資源の管
理と保全においては公的機関の役割が
大きく,その行財政的機能についての
検討も必要とされます.
これらの問題領域はお互いに複雑に
絡み合っており,一つの専門領域に特
化した研究によっては十分に解明しえ
ない性格のものです.つまり,農業経
済学自体が総合的な学問体系なので,
上記の5分野は研究対象の一応の区分
に過ぎません.学生はそのすべての分
農業経済学関係の雑誌は国内外を問わず数多く発行されています.海外の農業事情,国
際的な研究水準をフォローするために洋雑誌のチェックは欠かせません.
す.たとえば,農産物の輸入自由化,
環境問題,エコロジー,村おこし等で
す.当分野では,経済理論(近代経済
学)に依拠しながら,広く社会経済問
題と政策調整に関して,農業と非農業
ならびに日本と外国との「比較」とい
う視点を念頭におきつつ,さまざまな
研究課題に取り組んでいます.最近は,
時代のキーワードである,グローバル
化,情報化,環境調和にこたえる教育・
研究活動を行っています.
生産の現場から農業問題を考える
農業経営学分野では,私たちが毎日
食べている食料を実際に作っている農
家を対象にした研究に取り組んでいま
す.今後も日本の食料生産を担ってい
くことのできる力強い農業経営を確立
していくためにはどのような経営行動
をとればよいか.日本全国にわたって
実際に農家調査を行い,またアジアや
ヨーロッパなどの諸外国とも比較しな
がら研究しています.さらに近年は農
村における情報化も進んでいますが,
農業情報や経営データをいかに蓄積し
利活用を図っていくかについての研究
も行っています.
4
統計処理ソフト(Statistical
Analysis System)を用い
て生産関数のグラフを表示
しました.
野にわたって幅広い知識と研究力量を
培うことが求められます.
農業・農村・食料政策を国際比較する
農業環境政策学分野のルーツは,旧
5千円札にもなっていた新渡戸稲造教
授にあるといわれており,古くて由緒
ある歴史をもっています.研究対象と
する領域は幅広く,私たちが農業・農
村・食料に関連して思いつくこと,マ
スコミ等に取り上げられる「農」がつ
く記事のほとんどにかかわっていま
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農家の土地利用状況をデジタイザを使って地図情報として分析します.近年,衛星通信を
利用した圃場管理技術が脚光を浴びていますが,私たちも経営情報の処理技術として注目
しています.
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インド国境に近いネパール・ジャナカプールで日本
の ODA でつくられた灌漑井戸の利用実態を調査し
ました.
飢餓と飽食の構図から経済発展を考える
私たちの暮らしている地球には,一方
に飢えと食料不足,貧困に苦しむ人々が
たくさんおり,他方では飽食の病に苦し
んでいる人々も少なくありません.どう
して農産物の過剰と不足が発生するの
か,国々や人々の間の貧富の格差はどう
して生ずるのか.いかにして国民一人あ
たりのGNPを増大させ,食料不足や貧
困を克服していくのか.開発経済学分野
ではこのような課題に取り組みます.そ
のためには,世界各地の農業や経済事情
を知る必要があり,外国語の力が必要と
されます.食料の需給動向等を分析する
ためには統計学やコンピュータの知識も
不可欠です.
世界的視野から協同組合の役割を考える
協同組合学分野では,一般企業とは違
う農協や生協などの協同組合セクターが
果たしている社会的な役割について研究
しています.農協といえば,田舎のお店
や金融店舗をイメージしがちですが,米
や野菜や牛肉などの流通にとって欠かす
ことのできない存在です.また,開発途
上国へのODAなどでも,農業近代化の
ために農協の設立が奨励されています.
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他方,生協は消費者の自主的な組織とし
て大きく発展していますが,産直などを
通じて農協との提携も進んでおり,当分
バングラデシュの GDP の 3 分の 1 を占める米.
しかし流通が未整備のため農民の手取りは低く
抑えられています.写真は産地商人が品質をチ
ェックしながら農家からの買取価格を交渉して
いる様子です.
全国各地にある卸売市場では毎早朝,青果物や
花き,魚介類などが活発に取り引きされていま
す.写真は花き市場のセリ取引の様子です.
野でも研究課題として注目しています.
流通サイドから食料・農業問題を考える
種子や農薬,肥料等の生産資材の供給
から,米・青果物・畜産物等の農産物や
加工食品の生産と流通,そして外食や内
食等の消費に至るまで,現代の流通機構
はますます複雑化し,国際化しています.
食料農業市場学分野ではこうした実態に
社会科学のメスを入れます.とくに最近
は,有機農産物流通や地産地消といった
ローカルな市場形成に着目するととも
に,ますます巨大化する農業関連産業(ア
グリビジネス)のグローバルな動向にも
研究の対象を広げています.
情報の蓄積と共有のために
農業経済学科には農学部図書室とは別
に独自の図書室があり,設置当初の蔵書
寄贈者の名前にちなんでウエストコッ
ト・ライブラリーとも呼ばれています.
農業・経済に関する資料を中心に,登録
されている図書が約 1 万冊,他に未登録
の古い図書が収集・保管されています.
また,和雑誌約 100 タイトル,洋雑誌約
30 タイトルも購読しています.専門の
図書職員がいますので,レポート課題や
資料収集に追われる学部生や大学院生は
とても助かっています.
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農業経済学科
過去 4 年間の
学部・大学院卒業生の進路
ゼミナール風景:各教員のゼミは文
献の輪読を中心に幅広い分野の学習
を行います.難解な経済理論も,皆
で議論しながら読み進めれば理解も
深まります.
世界の穀物取引価格を左右する米国
産のトウモロコシ,小麦,大豆の相
場は日々変動しています.
農経図書室:学部生や大学院生が文献や
統計書の調査のためによく利用します.
http://www.agr.hokudai.ac.jp/agecon/
lib/welcome.htm に是非アクセスしてみ
てください.
学科教育
農業経済学を学ぶ上で,経済学はも
ちろん,法学や社会学,歴史学,地
理学,統計学などの基礎科目を修得
することが求められます.その多く
は一般教育課程で履修できますが,
農業経済学科ではこれらの応用科学
を学ぶことになります.農業経済学
科ではさらに農学の基礎学科目をカ
リキュラムの中に組み込んでいま
す.経済学その他の社会科学の勉強
をしても,農業・食料・環境資源等
に関連する自然科学的知識がなけれ
ば現状の正しい把握はできないから
です.生物の生理や自然環境等の制
約を受けざるをえない農業の特殊性
をしっかり理解しておかなければ,
工業と同様に市場メカニズムや競争
原理を導入すれば万事OKとする誤
った論調に引きずられかねません.
基礎学科目の修得ののち,いよい
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よ農業経済学の専門的な勉強に入
ります.2 年次に本学科に分属し,
各専門分野の概論や農村調査実習
等を履修した学生は, 年次進級
の際に計 12 名の教員がそれぞれ
開講するゼミナールを選択するこ
とになります. 年次の間はメジ
ャーとマイナーのゼミを2つ選択
します.なるべく幅広い知識を身
につけるため同じ分野のゼミは選
択できません.必修科目を順調に
履修しておけば,4 年次では自由
な時間がかなり増えますが,その
多くはメジャーゼミで取り組む卒
論研究に費やされることになりま
す.2009 年度卒業生の卒論テー
マをいくつか紹介しましょう.例
えば「気候変動が日本の農業生産
に及ぼす影響」「農産物直売所運
営の傾向と今後の課題」「農業参
入企業の事業継続性に関する一考
察」など道内外の農業・食料問題
を扱ったものが中心です.さらに
「ビル・アンド・メリンダ・ゲイ
ツ財団はGM研究を支援するべき
か」「北朝鮮における農業の展開
と改革の現状」など海外の農業を
取り上げたもの,「所得によらな
い人間の幸せや豊かさの計測−H
DIの構成指標を用いた考察」と
いった農業以外の問題に焦点を当
てたものなど,バラエティに富ん
だ内容となっているのが最近の特
徴です.農業を基軸にしながら,
食品安全性や地域振興,地球環境
問題,途上国開発といったテーマ
へ学生の関心が広がっていること
がわかります.それが本学科の狙
いでもあるわけです.
卒業生は食品流通業や農業
協同組合などの農林水産諸
団体,地方公務員,農林水
産省などの国家公務員のほ
か,銀行などの金融機関や
商社,報道機関,情報ソフ
トウェア産業など,さまざ
まな分野で活躍しています.
経済学部とはひと味違った
応 用 力 を も っ て い る こ と,
理系の知識をバックグラウ
ンドとしていることが評価
されるようです.また大学
院へ進学して,より専門的
な知識を得て,国内外の研
究機関の上級エコノミスト
として活躍したり,大学の
教員になる者もいます.
公務員
都道府県庁,市役所,農水省,
国税専門官
研究機関
江原発展研究院,農林技術
研究所,永田農業研究所
教員
大学教員
農業団体
共 済 農 業 協 同 組 合 連 合 会,
ホクレン,全国農業協同組
合連合会
製造業 北海道糖業,大阪石材工業,
フレッシュシステム,グン
ゼ, 中 部 飼 料, 日 本 製 粉,
サカタのタネ,セブン & ア
イホールディングス,ダイ
ホーズ,日立エンジニアリ
ン グ・ ア ン ド・ サ ー ビ ス,
エクサ,栗本鐵工所,トヨ
タ自動車,東芝エレベータ
ー,日本ビクター,コスモ
スイニシア,日本写真印刷,
日 立 製 作 所, 東 芝, 帝 人,
日本大昭和板紙 KK
流通・運輸 日本コープ共済生活協同組
合連合会,JR東日本,三
菱商事,東芝物流,北海道
旅客鉄道,丸紅,豊田通商,
じょうてつ,東京青果,海
外貨物検査 KK,MC プロデ
ュース
金融
郵貯銀行,日本政策金融公
庫,北海道信連,りそな銀行,
農林漁業金融公庫,農林中
金総合研究所,大和証券S
MBC
その他
日能研,くらコーポレーシ
ョン,住友金属,あらた監
査法人,監査法人トーマツ,
HBA,ヒューマントラス
ト,社会保険診療報酬支払
基金,リンクアンドモチベ
ーション,JICA,北海道未
来総合研究所,バイエル薬
品
(企業名,団体名は就職当時)
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北方生物圏フィールド科学センター
北方生物圏フィールド科学センター
北海道大学には学内共同利用教育研究施設として「北方生物圏フィールド科学センター」があります.北方生物圏フィールド科
学センターでは,森林から耕地,さらには海洋に至る多様なフィールドにおける生態系と人間活動との関係に関する総合的な教育
研究が行われており,農学部学生の実習,実験,卒業論文研究などの場として利用されています.同センターの施設のうち,農学
部の教育研究に関連する植物園,森林圏ステーション・研究林,生物生産研究農場,静内研究牧場について以下に紹介します.
植物園
植物の多様性を科学し保全するフィールド
クラーク博士の提言により 1886 年に開園した植物園です.自然地形を生かした園内には緑の芝生と広葉樹の林のほか,ロッ
クガーデン,北方民族植物標本園,温室,博物館などがあり,市民の憩いの場となっています.赤レンガの道庁の西側に位置す
る 13.3ha の敷地内に,約 4,000 種類の植物が展示・保存されています.
植物園では全学の一般教育演習や農学部生物資源科学科
の学生実習が行われ , 園内での学部生や大学院生の調査
研究も行われています.野生植物の多様性(分類や生態)
に関する知識を体系化することにより生物の多様性を維
持し環境の保全を図ろうとしています.北海道の絶減危
惧植物および絶減が危惧される植生の現状調査や保全策
の提言なども行っています.
9
春の宮部記念館
最近の学生の研究テーマは「北海道の湿原や海岸のフロラおよ
び生態系の解明」,「絶滅危惧植物の集団遺伝解析」,「動物や人
間活動が植生に及ぼす影響」などです.なお植物園の詳しい
説明は,「北大植物園」のホームベージ [http//www.hokudai.
ac.jp/fsc/bg/] で見ることができます.
北方民族が生活に利用した植物を植栽した北方民族植物標本園
絶滅危惧種のレブンアツモリソウ
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北方林を中心とした野外科学の研究・教育フィールド
森林科学をはじめ気象学や環境科学・地球物理学などの,広い範囲の野外科学(フィールドサイエンス)を対象とした研究と教
育のための施設.ユーラシアから北アメリカにつながる北方域を対象として,森林保全研究や環境保全研究のフィールドおよび拠
点研究施設としての整備が進められています.
スノーモービルで森林の調査に向かう
〜天塩研究林〜
北方生物圏フィールド科学センター
森林圏ステーション・研究林
札幌教育研究部・管理部
森林圏ステーション・研究林は,北海道内に 6 箇所・本州に 1 箇
所の合計 7 万ヘクタールにおよぶ森林と,多くの研究・教育施設や
宿泊施設をそなえる,日本最大の大学研究林です.北の大地に広が
る多様な森林,多くの自然をとどめた湖や河川が見られ,たくさん
の野生生物が棲んでいます.これらの営みに人間活動の影響もふく
めて,総合的に科学できるのが研究林のフィールド.教員組織と技
術職員・事務職員による支援組織も強化されています.森林の移り
変わりや環境変化・野生生物などについての長期観測(モニタリン
グ)が行われ,それらの成果を基礎として,多くの研究と教育活動
が展開されています.
40
桧山
研究林
原生林と湖(朱鞠内湖)
〜雨龍研究林〜
中川研究林
和歌山研究林
学生実習や研究,森林の管理などに利用されている施設
〜雨龍研究林〜
森を上から観察するゴンドラ(24m)
〜苫小牧研究林〜
1年生を対象としたフレッシュマン教育や全学教育科目と関連したエクスカーション,学生実習や卒業研究・大学院の修士や博士課程の研
究のフィールドとして,農学部の学生だけではなく,北海道大学全体や他大学の学生にも広く利用されています.また,酸性降下物と森林
の機能・地球温暖化への対応・生物多様性の保全などの多くの共同研究や世界的なプロジェクト研究・海外調査が行われ,学部生や大学院
生の参加が期待されています.
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北方生物圏フィールド科学センター
生物生産研究農場
理論を実証するフィールド
農学の理論を技術化し,その実行性を検証するフィールド,これが研究農場です.北大農場は 1876(明治9)年,札幌農学校
開設と同時に設けられました.初代農場長は,皆さんよくご存知の W.S. クラーク博士です.以来,現在までの 120 余年間にわたり,
多くの諸先輩が学び,日本のみならず世界各国にはばたき,農業を中心とした地域発展に大きく貢献してきました.
現在の研究農場は農学部の西側に隣接する第一農場(35ha),札幌キャンパスの北側に位置する第二農場(23ha),札幌から西
方約 60km の余市町にある余市果樹園(6ha)からなります.農学部の裏玄関を出ると,そこはもう広大な実験・実習の空間,研
究農場です.キャンパス内に,しかも毎日歩いていける範囲にこのように大きなフィールドをもっているのは,全国の大学の中
でも我が北大以外にほとんどありません.農学を学ぶには非常に恵まれた環境です.
第一農場では,各種作物,野菜・果樹・花卉の遺伝・育種・生理・
生態に関する教育研究,農産物の有効利用,蚕の系統維持や遺伝,
農業機械の開発・改良・利用,および土地利用型の豚(50 頭)・鶏
(500 羽)生産に関する総合的な教育研究が行われています.
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第二農場は,23ha の牧草地・飼料作物畑と 50 頭の乳牛を有し,
土地利用型の牛乳生産に関する総合的な教育研究を展開すると
ともに,隣接する乳肉加工施設において各種畜産物(乳,肉,
鶏卵)の加工・有効利用に関する教育研究が行われています.
余市果樹園にはリンゴ,ナシ,ブドウなどが植栽されており,
省力化・わい化栽培や果樹園雑草の生態に関する教育研究が行
われています.
研究農場は,農学部,獣医学部生に対する実習や,1 年生を対象とした農業体験型演習を行うとともに,学部学生,大学院生のフィー
ルド研究の場として広く利用されています.
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家畜生産と生態系を科学するフィールド
日高山脈の山麓に 470ha の広大な牧野を有する静内研究牧場は,牛 150 頭,馬 100 頭を飼養し,国公立大学の中で最大の規模
をもっています.家畜は森林・草地・耕地の3つの生態系と深く関係しながらそれらの土地で育まれた草を食べ,群れで生活し,
発育・成長することで生産活動を続けています.
本研究牧場では,21 世紀の地球環境と食料生産を見据えて,生態系と調和した家畜生産についての総合的な教育研究が年間を
通じて行われています.
北方生物圏フィールド科学センター
静内研究牧場
研究牧場では,1年生のためのフレッシュマン教育や畜
産科学科の学生のための実習が行われています.その内
容には牛馬の飼養管理,放牧地・圃場管理,馬の調教,
乗馬など家畜生産に関するものだけでなく,家畜生産を
取り巻く自然(土壌・森林・林床植物など)に関する実
習も組み込んでいます.また,複雑な系の中で家畜生産
が行われていることから,研究牧場では学内外の多分野
の研究者と連携して家畜生産と生態系の関係についてさ
まざまなプロジェクト研究が進められています.
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乗馬実習:畜産科学科では冬季(2 年次)と夏季(3 年次)
の 2 回にわたり研究牧場で宿泊しながら実習を行います.
北海道和種馬の行動観察:森林の多面的な活用を図るため,和
種馬による林内放牧の可能性を,生態系を構成する土壌・水,
樹木・林床植物,昆虫などへの影響も含めて追究しています.
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共同利用実験施設
農学部には学部の人たちが共同で利用するいくつかの実験施設があります.ここでは主な施設をご紹介します.
生物組織構造解析センター
学内屈指の画像解析装置を備えた共同利用施設です.8台の電子顕微鏡をはじめ,共焦点レー
ザースキャン顕微鏡やフーリエ変換顕微システム等の最新顕微装置を完備し,得られた画像情
報を高精度の画像処理装置 IBAS やマクロカラー画像計測装置等で解析することができます.
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透過型電子顕微鏡
共焦点レーザースキャン顕微鏡
GC-MS ・ NMR 測定室
高分解能質量分析計2台と高分解能核磁気共鳴分光計1台があり,主として生体中の低分子有
機化合物の精密な構造解析に利用されています.また,これらの分析機器を駆使して学部内外
の受託分析および共同研究を行っています.
写真は、低分子有機化合物の分子量を測定する高分解能質量分析計(左)、および精密分子構造を調べる核磁気共鳴分光計(右)を示しています。
生体高分子機能解析室
生命活動に必須な核酸やタンパク質などを対象に,それらの構造と機能の解析に用いる DNA
シークエンサーやプロテインシークエンサー,アミノ酸アナライザー等の精密機器類を備えて
います.これらの最先端設備は研究・教育に広く活用され,生体機能の解明に役立てられてい
ます.
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大学院農学院
大学院農学院
農学部には大学院農学院博士課程(前期・後期)が設置されています.高度の教育研究
指導を受けるために,多くの卒業生が大学院に進学しています.なお,平成 18 年度か
ら教育研究の見直しの方向性の一つとして従来の大学院が教育組織と研究組織に分離さ
れ,教育組織として 4 専攻からなる大学院農学院が開設されました.
共生基盤学専攻
共生農業資源経済学講座
人類生存の社会基盤に関わる食料,資
源,環境などの社会経済学的諸問題に関
する教育を行っています.特にフードシ
ステムの展開と食の安全性,持続的農漁
業生産システムの構築,環境問題を考慮
した循環型社会の形成とパートナーシッ
プ,農業の多面的機能に対応した景観形
成と農村ツーリズム,世界の人口・食料
問題に関する理解を養います.
食品安全・機能性開発学講座
食品の安全性の向上,食料の安全な貯
蔵加工輸送技術の確立,安全な食品素材
の探究や酵素反応等を利用した機能性食
品の開発,健康増進や疾病予防に関連す
る食品や胃腸内圏微生物の機能解析に関
する教育を行っています.
バイオマス転換学講座
化石燃料の消費による大気中の CO2 量
の増加とこれにともなう地球温暖化を軽
減するために,生物の存在環境の基盤を
物理・化学・生物学の視点から解析する
とともに,新資源植物の開発,物理的手
法によるバイオマスの生産系の制御やエ
ネルギー化,化学的手法によるバイオマ
ス資源の高付加価値化に関する教育を行
っています.
生物共生科学講座
動物,植物,微生物などの生物間相互
作用,共生関係のメカニズムを明らかに
し,それらの関係をシステムとして統合
し,近未来における環境重視型の安定・
安全な一次生産の革新的技術開発に関す
る教育を行っています.そのために,動
物の行動生態の解析から生物間の捕食連
鎖・共生関係とそこに働く原理の理解,
植物の根圏環境を生物学・微生物学・化
学の視点から分析し,複雑系を総合的に
理解する能力,また生産系とその周辺環
境との関わりを理解する能力を養います.
生物資源科学専攻
応用分子生物学講座
生物は生命体であり,その特性は自己
複製を行うことです。各種の生物は,自
己複製を行うとともに,新陳代謝を行い,
環境に適応しながら生命体を維持してい
くが,これらの生命体維持の上で重要な
役割を示す複雑な遺伝子発現機構やタン
パク質機能発現の解明を行うとともに,
その成果を生物生産の場に応用するため
の教育を行っています.
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植物育種科学講座
最新の基礎生物科学、分子細胞生物学
および分子遺伝学を主たる学術理論・研
究手法として,高等植物からウイルスに
至る幅広い研究材料を用い,生物機能の
改変を通して,環境と調和した生物の遺
伝的管理を目指す植物育種科学を総合的
に構築する教育研究を行っています.
地域環境学講座
基盤的な自然環境要素である土壌・水・
大気の保全と高度利用,要素間の物質循
環とエネルギーフロー,生物を含めた要
素間の相互作用の解明,総合的な自然環
境情報の効率的取得・解析を通じて,良
質な地域環境基盤の創成と持続的な地域
社会の形成に資する教育を行っています.
作物生産生物学講座
多様な環境条件下での食用および園芸
作物を中心とした植物の生産機能を生理
学的,病理学的ならびに生態学的手法を
用いて解明し,資源の効率的利用と環境
保全を前提とした持続的食料生産の開発
に関する教育を行っています.
森林資源科学講座
森林内諸現象および樹木特有の生理現
象を生態学・生理学・遺伝学・解剖学・
分子生物学・生化学等の関連各分野の理
論と手法により明らかにし,それらを森
林資源の保全と持続的利用に応用すると
共に,木質資源の新たな有効活用と加工
技術の高度化,菌類など未利用森林資源
の探索と利用開発に関する教育を行って
います.
家畜生産生物学講座
家畜の生産と健康におよぼす諸要因(遺
伝,栄養,管理ほか)およびそれらの相
互関連性について,分子レベルから個体・
群レベルまでの幅広い視野で,総合的な
教育を行い,生態系における家畜生産の
重要性を理解させます.
応用生物科学専攻
食資源科学講座
動植物を食資源として包括的に捉え,
それらが有する多様性や機能性を解説し,
その有効活用に関する教育を行っていま
す.これらが消化管から体内へ移行する
際に,単に栄養生理学的な意義だけでな
く生体調節機能を示すことから,その作
用機序を総合的に理解させ,さらにこれ
ら食資源バイオマスの非可食部も対象に
して,それらの利活用に関する能力も養
います.
生命分子化学講座
微生物,植物,動物細胞を研究対象とし,
それらの機能や複合的相互作用を生物化
学,微生物学,蛋白質工学,遺伝子工学,
有機化学的手法を用いて明らかにします.
これらの知見を基に生物機能の制御,新
機能の付与を達成すると共に,生物生産,
バイオプロセスによる有用物質生産,環
境制御,新機能物質や新機能材料などへ
の応用を図る教育を行っています.
環境資源学専攻
生物生態・体系学講座
生物の多様性を,その様式 ( 生態,分類)
と展開(進化)を通して理解させ,陸域
の自然,農地や都市等の人為的環境にお
いて生物をいかに保全・管理あるいは利
用するかについての教育を行っています.
森林・緑地管理学講座
陸域における最大の環境資源である森
林・緑地の機能を自然科学的および社会
科学的手法を活用して解明し,新たな多
目的管理,保全,計画手法の構築,森林・
緑地を取り巻く流域圏を対象として自然
再生,生態系修復技術について教育を行
っています
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生物生産工学講座
食料の生産から利用までを,主として
工学的側面から考究し,環境・人間・社
会を包括する持続的農業生産利用システ
ムの構築を目指しています.そのために,
食料生産手段,農産物や食品の加工貯蔵
法および有機廃棄物の利用と処理法につ
いて,環境・エネルギー・人間労働・食
料安全・持続的食料供給・物質循環など
の面からの解析と新技術開発ついての教
育を行っています.
連携大学院
新しい形態の大学院として設置された
もので,独立行政法人農業・食品産業技
術総合研究機構北海道農業研究センター
並びに独立行政法人産業技術総合研究所
北海道センターと外部連携により教育・
研究を行います.
共生基盤科学特別コース
( 英語コース )
The Special Postgraduate Program in
Bio-SystemsSustainability
北海道大学ではじめて設置された外国人
のための大学院博士・修士課程です.
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教員一覧(2011 年 5 月現在)
■生物資源科学科
作物学
岩間和人(IWAMA Kazuto)東京学芸大付属高校/東京都
柏木純一(KASHIWAGI Junichi)箕面高校/大阪府
実山 豊 (JITSUYAMA Yutaka) 相模原高校/神奈川県
植物遺伝資源学
阿部 純(ABE Jun)村上高校/新潟県
山田哲也(YAMADA Tetsuya)洛西高校/京都府
園芸学
鈴木正彦(SUZUKI Masahiko)横浜翠嵐高校/神奈川県
鈴木 卓(SUZUKI Takashi)大田原高校/栃木県
志村華子(SHIMURA Hanako)札幌旭丘高校/北海道
花卉・緑地計画学
近藤哲也(KONDO Tetsuya)尼崎西高校/兵庫県
愛甲哲也(AIKOH Tetsuya)錦江湾高校/鹿児島県
松島 肇(MATSUSHIMA Hajime)千葉東高校/千葉県
作物生理学
幸田泰則(KODA Yasunori)青山高校/東京都
藤野介延(FUJINO Kaien)六甲学院/兵庫県
山口 夕(YAMAGUCHI Yube)北野高校/大阪府
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遺伝子制御学
三上哲夫(MIKAMI Tetsuo)札幌南高校/北海道
久保友彦(KUBO Tomohiko)旭川東高校/北海道
小野寺康之(ONODERA Yasuyuki)聖光学院高校/静岡県
分子酵素学
木村淳夫(KIMURA Atsuo)六日町高校/新潟県
森 春英(MORI Haruhide)鎌ヶ谷高校/千葉県
奥山正幸(OKUYAMA Masayuki)帯広柏葉高校/北海道
■生物機能化学科
土壌学
波多野隆介(HATANO Ryusuke)四日市高校/三重県
中原 治(NAKAHARA Osamu)千葉南高校/千葉県
倉持寛太(KURAMOCHI Kanta)茨城高校/茨城県
植物栄養学
大崎 満(OSAKI Mitsuru)千歳高校/北海道
渡部敏裕(WATANABE Toshihiro)旭川西高校/北海道
生物化学
松井博和(MATSUI Hirokazu)富良野高校/北海道
佐分利亘(SABURI Wataru)法政大学第一高校/東京都
植物病理学
近藤則夫(KONDO Norio)岩見沢東高校/北海道
秋野聖之(AKINO Seishi)鶴岡南高校/山形県
生物有機化学
鍋田憲助(NABETA Kensuke)清水東高校/静岡県
松浦英幸(MATSUURA Hideyuki)帯広柏葉高校/北海道
高橋公咲(TAKAHASHI Kosaku)大曲高校/鹿児島県
植物病原学
上田一郎(UYEDA Ichiro)成蹊高校/東京都
畑谷達児(HATAYA Tatsuji)塔南高校/京都府
中原健二(NAKAHARA Kenji)札幌西高校/北海道
食品栄養学
原 博(HARA Hiroshi)光陵高校/神奈川県
石塚 敏(ISHIZUKA Satoshi)東工大付属高校/東京都
比良 徹(HIRA Tohru)志布志高校/鹿児島県
動物生態学
斎藤 裕(SAITO Yutaka)宇都宮高校/栃木県
長谷川英祐(HASEGAWA Eisuke)日大第二高校/東京都
食品機能化学
川端 潤(KAWABATA Jun)札幌西高校/北海道
園山 慶(SONOYAMA Kei)出雲高校/島根県
加藤英介(KATO Eisuke)慶応義塾高校/東京都
昆虫体系学
秋元信一(AKIMOTO Shin-ichi)東葛飾高校/千葉県
吉澤和徳(YOSHIZAWA Kazunori)小千谷高校/新潟県
植物機能開発学
増田 清(MASUDA Kiyoshi)千葉高校/千葉県
山岸真澄(YAMAGISHI Masumi) 高岡高校/富山県
細胞工学
増田 税(MASUTA Chikara)五所川原高校/青森県
金澤 章(KANAZAWA Akira)札幌北高校/北海道
犬飼 剛(INUKAI Tsuyoshi)札幌南高校/北海道
環境分子生物科学
有賀早苗(ARIGA Sanae)雙葉高校/東京都
仁木剛史(NIKI Takeshi)富岡西高校/徳島県
■応用生命科学科
植物育種学
貴島祐治(KISHIMA Yuji)修猷館高校/福岡県
高牟礼逸朗(TAKAMURE Itsuro)住吉高校/大阪府
応用分子昆虫学
伴戸久徳(BANDO Hisanori)紫野高校/京都府
浅野眞一郎(ASANO Shin-ichiro)一宮西高校/愛知県
佐原 健(SAHARA Ken)呉宮原高校/広島県
分子生物学
内藤 哲(NAITO Satoshi)東京教育大付属高校/東京都
尾之内均(ONOUCHI Hitoshi)半田高校/愛知県
高野順平(TAKANO Junpei)高志高校/福井県
生態化学生物学
橋床泰之(HASHIDOKO Yasuyuki)山崎高校/兵庫県
橋本 誠(HASHIMOTO Makoto)帯広柏葉高校/北海道
福士幸治(FUKUSHI Koji)函館ラサール高校/北海道
崎浜靖子(SAKIHAMA Yasuko)北谷高校/沖縄県
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応用菌学
浅野行蔵(ASANO Kozo)神戸高校/兵庫県
曽根輝雄(SONE Teruo)藤枝東高校/静岡県
微生物生理学
横田 篤(YOKOTA Atsushi)札幌南高校/北海道
和田 大(WADA Masaru)大阪星光学院高校/大阪府
吹谷 智(FUKIYA Satoru)秋田高校/秋田県
根圏制御学
江澤辰広(EZAWA Tatsuhiro)川越高校/埼玉県
■森林科学科
森林生態系管理学
中村太士(NAKAMURA Futoshi)向陽高校/愛知県
森本淳子(MORIMOTO Junko)洛北高校/京都府
山浦悠一(YAMAURA Yuichi)野沢北高校/長野県
造林学
小池孝良(KOIKE Takayoshi)明石高校/兵庫県
渋谷正人(SHIBUYA Masato)函館中部高校/北海道
斎藤秀之(SAITO Hideyuki)宇都宮高校/栃木県
流域砂防学
丸谷知己(MARUTANI Tomomi)清風南海高校/大阪府
笠井美青(KASAI Mio)筑紫女学園高校/福岡県
森林政策学
柿澤宏昭(KAKIZAWA Hiroaki)栄光学園/神奈川県
庄子 康(SHOJI Yasushi)仙台第一高校/宮城県
樹木生物学
荒川圭太(ARAKAWA Keita)一宮高校/愛知県
佐野雄三(SANO Yuzou)仙台第一高校/宮城県
森林化学
浦木康光(URAKI Yasumitsu)旭川東高校/北海道
幸田圭一(KODA Keiichi)川西緑台高校/兵庫県
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教員一覧
木材工学
平井卓郎(HIRAI Takuro)秋川高校/東京都
小泉章夫(KOIZUMI Akio)洛北高校/京都府
澤田 圭(SAWATA Kei)秋田経済法科附属高校/秋田県
■農業経済学科
農業環境政策学
山本康貴(YAMAMOTO Yasutaka)岩見沢東高校/北海道
中谷朋昭(NAKATANI Tomoaki)川口高校/埼玉県
木質生命化学
生方 信(UBUKATA Makoto)沼田高校/群馬県
農業経営学
志賀永一(SHIGA Eiichi)十日町高校/新潟県
東山 寛(HIGASHIYAMA Kan)札幌西高校/北海道
森林資源生物学
矢島 崇(YAJIMA Takashi)上田高校/長野県
玉井 裕(TAMAI Yutaka)宮崎西高校/宮崎県
宮本敏澄(MIYAMOTO Toshizumi)国立高校/東京都
開発経済学
長南史男(OSANAMI Fumio)札幌開成高校/北海道
近藤 巧(KONDO Takumi)秋田南高校/秋田県
■畜産科学科
家畜改良増殖学
渡邉智正(WATANABE Tomomasa)多治見北高校/岐阜県
川原 学(KAWAHARA Manabu)札幌手稲高校/北海道
協同組合学
坂下明彦(SAKASHITA Akihiko)岩見沢東高校/北海道
朴 紅(PARK Hong)中国黒竜江省
小林国之(KOBAYASHI Kuniyuki)大麻高校/北海道
畜牧体系学
近藤誠司(KONDO Seiji)旭丘高校/愛知県 食料農業市場学
飯澤理一郎(IIZAWA Riichiro)長井高校/山形県
坂爪浩史(SAKAZUME Hiroshi)沼田高校/群馬県
家畜栄養学
小林泰男(KOBAYASHI Yasuo)綾部高校/京都府
上田宏一郎(UEDA Koichiro)大阪明星高校/大阪府
小池 聡(KOIKE Satoshi)国府高校/愛知県
食肉科学
西邑隆徳(NISHIMURA Takanori)虎姫高校/滋賀県
若松純一(WAKAMATSU Junichi)東宇治高校/京都府
酪農食品科学
玖村朗人(KUMURA Haruto)市川高校/千葉県
小林 謙(KOBAYASHI Ken)湘南高校/神奈川県
副生物科学
中村富美男(NAKAMURA Fumio)三池高校/福岡県
福永重治(FUKUNAGA Shigeharu)竜ヶ崎第一高校/茨城県
■生物環境工学科
土地改良学
長澤徹明(NAGASAWA Tetuaki)旭川北高校/北海道
井上 京(INOUE Takashi)奈良高校/奈良県
山本忠男(YAMAMOTO Tadao)鳥取西高校/鳥取県
生物環境物理学
浦野慎一(URANO Shin-ichi)田川高校/福岡県
岡田啓嗣(OKADA Keiji)桜台高校/愛知県
土壌保全学
石黒宗秀(ISHIGURO Munehide)洛星高校/京都府
相馬尅之(SOMA Katsuyuki)函館西高校/北海道
柏木淳一(KASHIWAGI Jun-ichi)山形東高校/山形県
農林環境情報学
平野高司(HIRANO Takashi)豊岡高校/兵庫県
谷 宏(TANI Hiroshi)岩国高校/山口県
王 秀峰(WANG Xiufeng)中国黒竜江省
山田浩之(YAMADA Hiroyuki)高松高専/香川県
ビークルロボティクス
野口 伸(NOGUCHI Noboru)豊浦高校/山口県
海津 裕(KAIZU Yutaka)武蔵高校/東京都
■北方生物圏フィールド科学センター
森林圏ステーション・研究林
笹 賀一郎(SASA Kaichiro)角田高校/宮城県
神沼公三郎(KANUMA Kinzaburo)熊谷高校/埼玉県
佐藤冬樹(SATOH Fuyuki)青森高校/青森県
植村 滋(UEMURA Shigeru)豊中高校/大阪府
門松昌彦(KADOMATSU Masahiko)両国高校/東京都
齊藤 隆(SAITO Takashi)多摩高校/神奈川県
柴田英昭(SHIBATA Hideaki)札幌旭丘高校/北海道
車 柱榮(CHA Joo Young)原州高槁/大韓民国
日浦 勉(HIURA Tsutomu)畝傍高校/奈良県
野村 睦(NOMURA Mutsumi)神代高校/東京都
中路達郎(NAKAJI Tatsuro)厚木高校/神奈川県
吉田俊也(YOSHIDA Toshiya)七里ヶ浜高校/神奈川県
高木健太郎(TAKAGI Kentaro)札幌旭丘高校/北海道
揚妻直樹(AGETSUMA Naoki)仙台第二高校/宮城県
岸田 治(KISHIDA Osamu)室蘭栄高校/北海道
中村誠宏(NAKAMURA Masahiro)大濠高校/福岡県
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植物園
冨士田裕子(FUJITA Hiroko)仙台第一女子高校/宮城県
東 隆行(AZUMA Takayuki)釧路湖陵高校/北海道
加藤 克(KATO Masaru)松蔭高校/愛知県
生物生産研究農場
山田敏彦(YAMADA Toshihiko)多治見北高校/岐阜県
荒木 肇(ARAKI Hajime)岩見沢東高校/北海道
平田聡之(HIRATA Toshiyuki)星陵高校/石川県
星野洋一郎(HOSHINO Yoichiro)沼田高校/群馬県
高橋 誠(TAKAHASHI Makoto)磐田南高校/静岡県
静内研究牧場
秦 寛(HATA Hiroshi)桐朋高校/東京都
■総合博物館
高橋英樹(TAKAHASHI Hideki)静岡高校/静岡県
大原昌宏(OHARA Masahiro)豊多摩高校/東京都
食品加工工学
木村俊範(KIMURA Toshinori)旭川北高校/北海道
川村周三(KAWAMURA Shuso)国泰寺高校/広島県
■連携大学院
基礎環境微生物学分野
田村具博(TAMURA Tomohiro)盛岡第三高校/岩手県
鎌形洋一(KAMAGATA Yoichi)国立高校/東京都
湯本 勲(YUMOTO Isao)大阪清風高校/大阪府
森田直樹(MORITA Naoki )成田高校/千葉県
作物生産システム工学
柴田洋一(SHIBATA Yoichi)苫小牧­­東高校/北海道
片岡 崇(KATAOKA Takashi)旭川東高校/北海道
岡本博史(OKAMOTO Hiroshi)桐蔭学園高校/神奈川県
北海道農業生産基盤学分野
今井亮三(IMAI Ryozou)甲府高校/山梨県
信濃卓郎(SHINANO Takuro)東京学芸大付属高校/イギリス ロンドン
廣田知良(HIROTA Tomoyoshi)廿日市高校/広島県
農業循環工学
近江谷和彦(OHMIYA Kazuhiko)札幌西高校/北海道
清水直人(SHIMIZU Naoto)斐太高校/岐阜県
植物有用物質生産学分野
松村 健(MATSUMURA Takeshi)函館中部高校/北海道
生物生産応用工学
石井一暢(ISHII Kazunobu)札幌西高校/北海道
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旧昆虫学および養蚕学教室
●札幌駅から徒歩 15 分
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Fly UP