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研修会要旨(PDF:272KB)

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研修会要旨(PDF:272KB)
新時代に対応した高等学校教育改革推進事業
研修会「発達に困難を抱えた生徒への支援の在り方」の実施(記録)
1.実施日時
平成 21 年 11 月 6 日
2.実施場所
県立天羽高等学校
3.講
子どもと親のサポートセンター
師
15 時 45 分から 16 時 45 分
指導主事
中山雪江
4.参 加 者
・「就職支援・キャリア教育校内体制研究委員会」委員
・「カリキュラム開発研究委員会」委員
・県立天羽高等学校職員
5.内
等
容(要旨)
目の前にいる生徒の姿、どうしてそんな行動を取ったり、そうなってしまうのかということ
を、精神的な発達の状況や問題行動の見立てなどを中心に話をしたい。
○生徒を見立てる
(1)生徒の精神的な発達段階
ア)エリクソンの発達課題
高校生は、「青年期」のアイデンティティ
獲得の時期である。「自分というのは一体な
んだろう」ということをもう一度定義し直す
時期であると言える。
ところが、
それまでの発達課題が 4 つあり、
この 4 つの発達課題をきちんとクリアーして
いないと、このアイデンティティの獲得が大変難しくなってしまう。
先生方の目の前にいる生徒の皆さんは、このアイデンティティの獲得がちょっと難しい、
ちょっと大変だという葛藤状態にいるお子さんたちが多いのではないかと思う。
この表を見ていただくと老年期まで発達課題がある。つまり、人間は死ぬまで精神的に
成長していくということで、心の発達は死ぬまであるらしいというのがエリクソンの考え
た発達課題の考え方となっている。
イ)事例
実際どんなことがあるか、経験したことを
話してみる。まず、担任をしていると朝HR
に行くが、
・遅刻が多くてHRに 10 人位いない。朝連
絡できなかった場合は、休み時間に教室に
行って探す、ということをやっていた。
・連絡事項を聞くことが出来ない。何で聞か
ないのというと「みんなに言われても分か
らない」と良く言われた。
・急な時間割の交換や予定の変更を非常に嫌がった。
・なぜか、朝HRに行くと、教卓の周りに生徒が集まっていた。教卓の周りに生徒が集ま
っているので、「HRが始まっているから席に着きなさい」と注意すると、みんな渋々
席に戻る。それを繰り返していて、どうも変だと思って、試しに「どうしたの?」と聞
いてみた。そうすると「先生、私、実は朝お腹が痛かったんだけど、頑張って来たの」
とか「今日の調理実習の代金忘れてごめんね」などと言う。
「そうだったの頑張ったね」
と言うと、ニッコリして席に戻っていた。
これらはどういうことなのかと考えてみた。
例えば、
「教卓の周りに人が集まって、1 対 1 で話したい」というのは、発達課題で言う
と最初の「基本的信頼」
。これは、赤ちゃんの時のことだが、
「おぎゃー」と泣くとおしめ
を代えてくれたり、ミルクを飲ませてくれたり、抱っこしたりしてくれるが、成長してい
くときに、そこでつまずいている。二者関係を学校でも求め、1 対 1 の関係になると安心
する。つまり、お母さん、又はお母さんに代わる非常に近い関係の人との関係が満たされ
ていない、というふうに考えていただいて良いのではないかと思う。
同じように、「遅刻が多い」というのも、色々な要因が考えられるが、ただの寝坊・怠
けというのもあるし、生活のリズムそのものが崩れていて、何時に起きて、朝ご飯を食べ
て、というようなことが出来ない。または、親が先に家を出てしまっていて、何も構って
くれないで、そのまま寝過ごしてしまう。又は、学校に来るのがイヤでイヤでたまらない
ので、仕方なく起きてくる。このように「遅刻する」という行動の裏には、色んなことが
考えられる。
「連絡事項を聞くことが出来ない」というのも、ある意味二者関係を求めているという
か、一人ずつに言うとうれしそうに聞く。だから、一人ずつ呼んで話をしたりするような
こともあった。
「急な時間割の変更や予定の変更を嫌がる」ということについて、いつも同じ予定が良
いと生徒たちは言っていた。穏やかな日常というのが、自分たちの生活にあまりない生徒
もいるのかもしれない。毎日同じ予定で、日々が過ぎていくというのを求めているという
ことも考えられる。逆に言えば、それだけ日常が大変であるということかもしれない。
先ほどの「遅刻」のことだが、同じ時刻に起きられないというのは、色々なことが重な
っているが、小学生の頃に「勤勉性」の獲得というのがあり、どうもそのあたりでつまず
いているらしく、「毎日同じことを繰り返す」とか「私も色々学んでみたい」
「働きたい」
というようなことを考えていく発達課題が、うまくクリアー出来ていないという状態だと
予想される。
このように、日常で「なんか変だ」
「何でこんなことが出来ないの」
「当たり前じゃない
の」というようなことが先生方はあると思うが、それは発達に問題を抱えていると考えて
いただけると良いかもしれない。
生徒は時間割を覚えていない。時間割を貼ってあるが、その時間割を見て、次の時間は
こうだなと思って、用意するということが出来なかった。つまり、学習の構えが出来てい
ない。授業の時ってどういうふうにやったら良いか、ということが出来ないというふうに
考えていただいて良いと思う。だから、ノートを忘れた生徒には、紙をあげていた。これ
に書きなさいといわないと書かない。とりあえず書くということをさせたりしていた。
(2)生徒の抱えている困難
ア)問題行動に関わる
このように、順調に成長や発達をしていれば当然出来ることが、どうもどこかでつまず
いてしまっていて、出来ない状態である生徒たちが、先生方の周りに結構いるのではない
かと思う。そして、様々なことを問題行動としてやっているのではないかと思う。
まず、
「頭髪指導に従わない」ということだが、
(以前の勤務校は)茶髪にこだわる学校
で、やたら検査するが、生徒は直してこない。ある時、「茶髪だと帰す」ということを始
めたが、生徒の方が上をいっていて、早退したいときは茶髪で来て「茶色だから帰れるだ
ろう」と言う。結局、生徒と教員の関係がどんどん悪くなるだけで、決まりを守るという
ことが出来なくなっていた。規範意識を育てることが出来なかった。私は、その時、教育
相談係だったので、「規範意識が内面化していくためには、まず先生方と良い関係になら
ないと絶対言うことを聞かない」ということを何度も話したが、「そんなの待ってられな
いから」と言われてしまって、そういう意見は取り入れられなかった。実は規範意識を育
てていくというのは、大人と良い関係・信頼関係を作っていくのがベースにないと、なか
なか決まりだけと言っても、イタチごっこの繰り返しになってしまう。
(別の学校で)特別指導がとても多い学校で、年間 100 件を超えていた。多かったのが
「教職員に対する暴言」だった。言ってはいけないことを言うので、特別指導の対象にな
るが、どうも同じ生徒がよくやっていた。なぜか言われる人も同じだった。相性が悪いと
いうか、人間関係を作るのがお互い苦手だったのだろうか。生徒の方は不信感ばかり出て
きて、いつもくすぶっているから、何かの折りに注意されると、バーッと出てしまう。生
徒たちは人間関係を作るのに時間がかかるし、非常に難しいという状況があるのではない
かと思う。
良くロッカーとかを蹴飛ばしていた。色々な不安がある。生徒たちは、テストのことと
か授業のこととかすごく心配で、特に試験前になると大変になって、心配なら勉強すれば
良いのだが、勉強しないでその不安を心の中に持ち続けられなくて、行動に出てしまいロ
ッカーを蹴飛ばすということをやっていた。
また、女子生徒の間では、よくグループの中で仲間外しのようなことをよくやっていた。
人間関係を作るのがあまり上手ではないが、誰かと一緒にいないと居場所がないから、グ
ループが出来ている。でも、つながりがすごく薄いから、それを強くしないといけないと
思うわけだが、それが変な方向にいってしまって、誰かをターゲットにいじめる。そうす
ると、1 対何人かに分かれて、それでグループの結束力を強める。そんなことで、いじめ
というのもずいぶんあった。人間関係の作り方がなかなかうまく出来なくて、ベターっと
くっつくか、又はすごく離れてしまうかのどちらかで、もう少し適当な距離を取れば良い
と思うが、どうもそうはいかないようだった。
霧よけのある 5 階建ての学校で、生徒が廊下ではなく霧よけで走って移動していた。何
人かの生徒がやっていたので、ある時呼んで「危ないから、落ちたらどうするの。やめな
さい」と言ったら、
「平気だよ。怖くないもん」と言う。
「落ちて死んでしまったらどうす
るの」と言うと、大抵そういう時には「死んでも良い」と答える。何でそんなことをして
いるかというと、すごく危ないことをして、命の危険にさらされるような場面で、生きて
いると実感する。死にそうなときに、生きていると感じる。それくらい普段の生活という
のは、自分を大事にしてくれる人がいなくて、大変で、そんな風にしなければいけないよ
うな状況だと考えられると思う。
それから、荷物の整理が出来なくて、忘れ物が多いという生徒がクラスにすごく多かっ
たが、机の引き出しに教科書・ノートが入らない。常用漢字のテストの時に、その生徒は
違う席でやっているので「自分の席に戻りなさい」と言うと、椅子の上にも荷物が重なっ
ていて、やるところがない。それ位荷物を整理できなかった。「だらしがない」と怒った
ら、その生徒は大変困っていた。後から考えたら、発達障害だったのかなと思う。もう少
し整理の仕方を教えてあげれば良かったと今は反省している。
忘れ物の多い生徒も多くて、忘れ物をしない工夫をこちらですれば良かったが、発達障
害であるということも考えられるし、ネグレクトの場合もある。ほとんど家の人に構われ
ていないということも考えられる。
見ていると、何でこんなことが出来ない、何でこんなことをしちゃうんだろうというこ
とを、先生方ずいぶん目にすると思うが、それをせざるを得ないような状況におかれてい
る生徒もいる。
イ)問題行動を見立てる
経済的な状況がかなりせっぱ詰まっている子どもたちが多くて、でも家が困っていると
は言わないので、分からなかった。
例えば、
「毎朝、就職模試の結果を聞きに来る生徒」について。3 年になると就職模試を
やるが、やった次の日から、朝「先生、あの結果どうなったの」と喧嘩を売るみたいに言
うので、
「2 週間位かかるかな」と言うと、その生徒は「何でそんなにかかるんですか」と
怒る。毎朝来るので、副担任が就職模試の担当だったので、「副担任の○○先生のところ
に行って」と言ったら、正直にその先生の所に行っていた。何で、あの子、あんなに怒っ
て聞くのかなと思ったら、経済的にとっても大変で、就職しなければいけない状況だった
らしい。そう言えば良いのだが、怒って来るので分からなくて、こちらも困ってしまった。
ちなみに 10 月に就職試験に受かったら、コロッと変わって、とっても穏やかになった。
就職しなければいけないということが、いかにその生徒にとってストレスであったかとい
うことが、その後良く分かった。
「米や実習代を持ってこない生徒」だが、家庭科の教員だったので、調理実習の時はお
金を集めたり、お米を集めたりするのだが、お米を持ってこない生徒がいて、あまり持っ
て来ないので「持ってきなさい」と言った。それも二者関係で言わなければいけないので、
掃除の時間とかに「○○さん、何回分お米持って来ないんだけど」と言ったら、
「だって、
お母さんに、お米持っていくと言ったら、家で食べる米が無くなるからダメって言われた」
と言う。そうか困ったなと思ったら、同じクラスに農家の長女がいて、「何だ、うち米い
っぱいあるよ。一俵しょってきてやっても良いや」というから、その子がその分を持って
きていたが、非常に大変だった。専門学科だったので、実習代などもまとめて何千円か持
ってこなければいけないのだが、これもためてしまった生徒がいて、3 年生の時だったが、
2 月にバイトして自分で稼いで未納分を払ってくれた。いくらでもないお金なのだが、そ
れでも払うのが大変な子どもたちがいるというのを、改めて認識した。
私もそうだが、先生方も、すごく経済的に困窮して、水道やガスを止められてしまった
とか、明日食べる物にも困るというような状況は、多分経験されていないと思う。なので、
私も頭では分かるのだけれども、実感としてはなかなか分からなくて、どうも対応の仕方
を間違えてしまったということがずいぶんあった。
それから、「生育歴を知る」ということで、特に気になるお子さんについては、小学校
や中学校の情報というのは、大変貴重である。もしかしたら、その時に、(両親が)離婚
されていたとか、家庭の中ですごく大きな変化があったとか、色々なことが子どもたちの
中で起こっている。そういうことを知って、色んな問題行動を見立てるというのは、大変
大切なことではないかと思う。それを先生方の間で共有するというのも、また大切である。
あと「家族関係を知る」と書いたが、結構、複雑な家庭環境の子どもたちが多いので、
安定していない環境だと子どもたちの心も不安定になるので、色んなことをやる。結構正
直なので、ちょっとしたことで出る。高校って女性の職員が少ないので、良くトイレ掃除
の担当になった。トイレ掃除をやっていて、野球部の生徒と喧嘩しながら(掃除を)やら
せていた。ある時、雰囲気がおかしくて、心ここにあらずという感じで上の空でやってい
たので、
「何かあったの?」と聞いたら、
「お祖母ちゃんが入院した」と言っていた。そん
な出来事がきっかけでも、子どもたちの様子は変わってしまう。家庭の状況を知るという
ことは、大変大事なのではないかと思う。
ウ)生徒の実態を知る
私たちはいつも目の前に生徒を見ていると、生徒のことを分かっているような気持ちに
なるが、実は私たちが認識している生徒像と実際の生徒一人ひとりというのが違っていて
ギャップがあるということが結構ある。
県内のある高校で、数年に渡ってアンケート調査を実施しているが、昨年度のデータを
一部見ていただきたい。1 年生の 1 学期末に毎年実施している。
・
「今、不安に思うことがありますか?」ということに対して、あると答えた生徒は 51.0%
であり、その中で「家庭の経済的なこと」が不安であるというのは 30.9%である。それ
から「授業のこと」が 56.4%、
「進路のこと」が 54.5%である。学校のことも家のこと
も心配である。
・「将来のあなたにとって、高校時代に次のようなことをしておくのは大切ですか?」に
「はい」と答えた生徒の割合だが、
「自分の進路を真剣に考える」が 85.7%であり、結
構考えている。
「遅刻せずに登校する」が 82.7%、そこの学校の先生方は意外であった
ようだが、結構大事だと思っている。
「ずっとつきあえる親友を見つける」が 81.6%、
仲間を求めている。それから、
「社会のルールやマナーを身に付ける」が 80.6%、頭髪
指導に従わなかったり、ルールを守ろうとしない子どもたちでも、そういうのは身に付
けないといけないという気持ちはある。
・「自分にあてはまると思いますか?」に対して「友だちとのつきあいが下手だと感じる
ことがある」が 61.2%、
「自分は落ちこぼれだと感じることがある」が 62.2%。友だち
とつきあうのがあまりうまくいかなくて、何となく劣等感があるというような生徒像が
見えてくるのではないかと思う。
・一番気になるのは、「小・中学校で教わった先生と会話をした。」に対して、「いいえ」
が 23.5%。だから、23.5%の子どもたちは、一度も話をしたことが無かったというふう
に答えている。
このような生徒像が、もしかしたら先生方が考えていらっしゃる姿と違うかもしれない
と思う。
○学校での支援の仕方(「育てる視点」でかかわる。)
アイデンティティの獲得に失敗していると言ったが、高校生はまだ周りのサポートによって、
まだまだ育つ可能性は十分にある。そこで、6 つ支援を書いてみた。こんな考えもあるのかと
ヒントにしていただければと思う。
(1)学びへの支援
小学校や中学校の時のどこかの学習でつまずいている。基礎的な知識や技能というのは、
実は経験を通して機能的に習得される。
どういうことかというと、漢字を覚えるというときに、漢字を 10 回ずつ練習して覚え
るというのではなく、例えば「釣り」に興味があったら、「釣り」に関する本を読むがそ
れで漢字を覚えてしまうというようなことがある。
先生方と話をしていると、基礎学力は下から積み上がっていくというようなイメージを
お持ちの方が大変多いが、どうもそうではないらしい。というのは、そのとき分からなく
ても、その先を学んだら、後のことが分かった、ということがないだろうか。例えば簡単
な例で言うと、小学校の算数で三角形の面積の求め方をやるが、その後台形の面積の求め
方を勉強すると、三角形の面積の求め方を改めて認識できる、深く理解できるということ
を経験したのではないかと思うが、そのように学力は下から積み上がるのではなく、上か
ら引っ張り上げるということがイメージとしては起こりうるということであるらしい。そ
の時には、たった一人で努力するというよりも、周りの人(先生方や仲間)との関わりの
中で、質問しあったり、話しあう中で習得していく、模倣して習得し内化していくという
過程を取るらしい。
なので、色々な経験をしていくということ。実際に体験していくことで習得していくよ
うなことも非常に多いと考えていただければと思う。
(2)規範意識を育てるために
まず、お互いの信頼関係である。そして、信頼関係というのは「もしかしたら、こうい
う困ったことをするのは、生徒が何か抱えている・困っているのではないだろうか」と考
えてみること。そういう思いは伝わるので、「なんか俺のことを考えてくれている、分か
ろうとしている」みたいな気持ちを感じる生徒もいて、そこで関係は出来てくる。
その関係がベースになって、ルールを守れるようになるのだが、いつも学校現場にいて
「おかしいな」と思ったのは、ルールの重みが世間の常識と違うこと。例えば、頭髪の色
には厳しいのに、お金がなくなっても(盗難)そのままになっていた。ルールの重みとい
うのも考えていかなくてはいけないと思うし、そのルールを守らせる意味というのも、先
生方で検討していただいて、同意していただき、コンセンサスを得て、なおかつ生徒が納
得できるルールを明示する必要があると考えている。
ルールに重みをつけることと、納得したルールということが、規範意識を育てていくた
めにぜひ必要なことと思う。
(3)コミュニケーション能力を育てる
コミュニケーション能力というとソーシャルスキルと言われるが、スキルを教えるだけ
では十分ではない。というのは、方法を教わっても使おうと思わなければダメで、人と関
わることの心地よさというのを体験していない生徒は、方法だけ教えても使おうとしない。
これは、他者と関わることで育つ。
まずは、先生方との二者関係から。例えば、家庭科の調理実習などで生徒たちが相談し
ながらやっているのはうまくコミュニケーションを取っている。実技科目であるとか、掃
除の場面でも、文化祭の準備の場面でも良いが、他の人と関わることで「分かってくれた」
とか「相手が喜んでくれた」という経験をたくさんすることで、コミュニケーション能力
というのは育ってくる。これは、今の学校の教育活動の中で十分育てることが出来る。
(4)学校行事の在り方
教育相談係をやっていたとき、文化祭と修学旅行の後、不登校が増えて困っていた。ど
うしてかと思ったら、何でもクラス単位で、それがつらくなってしまうみたいで、特に人
間関係を作るのが下手でクラスに居場所がない生徒は、どうして良いか分からなくなって
しまう。なので、クラスの縛りを弱くする、クラス参加でもなくて良いような方法を作っ
てみるのも良いのではないか。
毎日同じ予定で、同じことを繰り返す学校生活の方が良いと言っていた生徒もいた。こ
れは人によって色々だと思うが、学校行事をこなすだけですごく大変な生徒たちがいる。
サポートセンターにも、文化祭がきっかけで不登校になってしまったという子どもたちが
ずいぶん相談に来ている。(学校行事で)苦しくなってしまう子どもたちも中にはいる、
ということを頭のどこかに留めていただき、学校行事の数・やり方を考えていただければ
と思う。
修学旅行も子どもたちにとっては、楽しみでもあり、大変でもある。特に部屋決めは大
変だった。生徒たちにとっては、とっても難しい課題である。24 時間一緒というのは生徒
たちにはつらい。
遠足についてだが、私は常々遊園地への遠足には疑問を持っている。すごく経済的に大
変な子どもたちがディズニーランドに行くというのは、どういう意味があるのか。物を消
費する、お金を使う場所である。私が支援で行っている学校の先生が「どうも経済観念が
おかしい」と言っている。どういうことかというと、お財布はブランド物を持つ。中身は
あんまり入っていないのだが、お財布にはこだわる。いつも経済的に苦労しているから、
そういうものを持ちたい。そういうときに消費を刺激する場所に行くことが果たして妥当
かどうかということも、ぜひ検討していただけたら良いと思う。
(5)朝のSHRでの連絡事項の伝達の仕方
担任をやっていたとき、連絡事項が 5 つあると 1~2 個必ず忘れてしまう。連絡事項の
数を減らせたら良いのかなと思う。というのは、朝のHRは、生徒一人ひとりの様子を見
たいのだが、5 分しかなくて、連絡事項が盛りだくさんあって、あまりうまくいっていな
かったと思う。何か、システムとして工夫できればと感じていた。
(6)保護者に対する支援
退学届けの名前を書くのに何十分もかかってしまう保護者がいた。「授業料減免申請」
の書類について取り上げてみたが、学校説明会の時に事務の方が説明し、事務室で書類を
もらって入学式の時に提出ということになるが、あれでは本当に必要な人が申請し忘れて
いる可能性もあると思う。なので、小学校・中学校と修学援助金をいただいていた家庭が
あると思うが、そういう情報が何らかの形で学校に来ると、もう少しスムーズにいくかな
と思う。
児童相談所から出向してきている所員がいるが、彼が関わったケースで、(年度)途中
で減免申請したそうだが、その申請はその時点からで 4 月に遡ってというのは出来ないと
いうことで、出しそびれてしまい、そのままになってしまったということがあった。
申請の手続きもそうだが、問題は書類である。1 枚目にたくさん注意事項等が書かれて
いて、読むのが大変な方がいるかもしれない。事務の方に聞いたら、取り敢えず市役所で
もらってもらう書類だけ持ってきてくれれば、代わりに書いてあげていると言っていたが、
保護者の方への支援というのも、生徒への支援も含めて考えていかなければならないので
はないのかと思う。
日々先生方、御苦労されていると思うが、いつも、こういう話をすると思い出す生徒がいる。
女子生徒だが、いわゆるギャルで、いつも終業式が終わると通知票を見せに来ていた。
「先生、
通知票もらっちゃった」と来る。
「どれどれ」と言うと、
「数学がちょっと怠けちゃったから点
数悪かったけど、2 学期頑張るんだ」とか色々言って、とっても不思議だった。その子の家は、
(その子が)中学生の時離婚していて、3 人姉弟だったが、その子が一番上で、下に弟、一番
下に妹がいて、お母さんは下の妹だけ引き取って暮らしていた。その生徒はお父さんに引き取
られて、弟と 3 人暮らしで、主婦代わりをしていた。家事も全部やっていたので、時々疲れて
休んでいた。就職希望だったが、良く家庭科準備室に来て「就職で書類出すのに封筒忘れた」
と言うから封筒をあげたりしていたが、私、お母さんみたいだなと思いながらやっていて、そ
うかお母さんなんだなと後で気がついた。就職が決まったので、「初任給もらったらどうする
の」と、派手な子だったのでブランド物やお化粧品を買うのかなと思って聞いてみたら、「お
母さんと妹と一緒に暮らすんだ」と言っていた。父親は新しい恋人を作っていたから、父親と
はもういいと思っていたのだろう、「私は、お母さんと一緒に、それから妹も一緒に、姉妹み
んなで生活出来るようにしたいと思っている」と言っていた。その後、卒業してしまったので、
どうなっているか分からないけれども、ぜひ自分がしたいと思っている生活が出来ていると良
いと思う。何度も欠席が多くなって辞めそうになっていたが、そうやって通知票を見せに来ら
れるような先生が一人でもいれば、生徒はつながっていく。
先生方も色々な生徒と関わっていて大変だと思うが、先生方は生徒を救えると思う。想像を
絶するような別世界で生徒たちは暮らしていると思う。だから、信頼出来る大人も周りにいな
かったり、温かい言葉をかけてくれる大人もいないお子さんも多いと思う。でも、学校に来て、
担任の先生が心配してくれたり、ある教科の先生の授業が好きだったりするだけで、子どもた
ちにとっては学校が居場所になって、そして成長していって、高校を卒業すれば自立していけ
る。
ぜひ、先生方、そんな大事な役割を負われているから、日々大変だと思うが、ぜひ子どもた
ちを育てていただければなと思う。
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