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卒論発表会・追いコンのご案内 農の博物館の収蔵物の
発行 東京農業大学昆虫学研究室 OB 会 〒243-0034 神奈川県厚木市船子 1737 東京農業大学昆虫学研究室室内 2014 年 1 月 17 日 No. 85 Tel: 046-270-6443 農の博物館の収蔵物の 引っ越しが始まりました 卒論発表会・追いコンのご案内 OB・OG の皆様、あけましておめ でとうございます。ますます寒さの厳し い季節となって参りましたが、皆様いか がお過ごしでしょうか。 さて、本年度は卒論発表会および追い コンを下記の日程で行います。OB・OG の皆様のご参加を研究室員一同お待ち 致しております。 また、発表題目は昆虫学研究室のホー ムページにて掲載予定です。 新年を迎え、さすがにこれ以上のんび りしていられないと標本箱の移動作業 が始まりました。本音をいうとあまりに も膨大な数なので全部業者にお任せし たいのですが、標本棚の移動だけで全体 予算の 2.5 倍も見積もり請求された(情 報提供:総務課山本さん)という事態で すので,可能な限り経費を節約しなけれ ばなりません。棚本体以外は3年生以下 の学部生が中心になって移動させるこ とにしました。仕事が多い割に労働力を うまく配分できないと三田先生はいつ も半ギレで檄を飛ばされていますが、 我々学生の志は高く、そんなことではく じけません。年末から 3 週間かけて、イ ンロウ箱を平積みしても崩れないよう 5–6 箱1単位として縛り続けました。そ れがひと段落したので、先週よりついに 引っ越し先の研修センターへ運び出し が始まりました。軽トラに箱を積んでは 降ろしともう 2,000 箱は運んだのでし ょうか。それでもインロウ箱すらかなり 残されている状況で、ドイツ箱について はまったくの手付かずです。全部運べる までまだ当分時間がかかりそうです。 (談:藤澤侑典 三田の聞き書きによ る) 記 日 時: 2 月 15 日(土) 卒論発表会: 9:00~17:05(予定) 農大厚木キャンパス 講義棟 2 階 1204 教室にて 追 い コ ン: 18:00~20:00 研究棟 2 階 形態系実験室にて 会費 5000 円(予定) 以上 追いコンに出席される方は 2 月 10 日 (月)までに幹事の藤澤までご連絡くだ さい。 連絡先 昆虫学研究室 採集記 Tel:046-270-6443 ~伊藤直哉の沖縄事件簿②~ 学部 4 年 伊藤 直哉 ケータイ、カメラを失くした私は、高 牟礼と澤木と別れ、夕刻過ぎに 1 人よう E-mail:[email protected] 藤澤 侑典 E-mail: [email protected] Tel:090-8995-4976 E-mail:[email protected] 1 やく宮古島に到着した。 その日は、本遠征初の台風(23 号) が宮古島に接近しており、那覇から飛行 機が飛ぶか心配されたが、なんとか飛ん でくれた。しかし、飛行機内で「台風 24 号、25 号が立て続きに沖縄地方に接 近しているので、皆様お気をつけくださ い。」とのアナウンスが流れた。客席が ざわめく。え?24 号は数日前に発生し たと聞いてはいたが、25 号だと?誰も がそう思ったはずである。沖縄の台風シ ーズンはハンパないわ…ってか調査に ならなくね!?(汗) 不安な気持ちいっぱいでレンタカー を借り、前回宮古島に来たときにもお世 話になった、ヒダマリというゲストハウ スに向かった。 宿に着くと、今回の登場人物であるろ っかくさん(前回宮古島に来たときにも お世話になった宿のスタッフの方。京都 で仕事をしていたが、退職し、思い切っ て 宮 古 島 に 移 住 し て き た ら し い 。 26 歳。)が出迎えてくれた。 「久しぶりー! あれ!?めっちゃ痩せたなー?(汗)」 確かに、ろっかくさんの言う通りである。 前回来たときから 13 キロほど体重が落 ちていたので、大変驚いていた。いい反 応だ。前回は金銭的に余裕がなく数日間、 1 日おにぎり 1 個の生活をしたので、今 回は何とかしたいものである。 その日はすでに日が暮れていたので、 ゆっくり休むことに…。明日から始まる 調査はどうなるのやら。 (次号へつづく) ~地中トラップを仕掛けて~ 学部 3 年 真嶋 豪 昨年開かれた日本甲虫学会のゴミム シ分科会において、「地中トラップ」と いうものの存在を知った。それ以来、地 下浅層性昆虫に興味を持った私は、この 地中トラップを実戦に用いてみようと 企むようになった。 2013 年 12 月 13 日。私用で長野県の 実家へ帰ることになった。これ幸いとば かりに地中トラップに必要な道具を鞄 に詰め、長野行きのバスに乗る。 翌日、100 円ショップで売られている 大小 2 個入りの PET 容器を切り貼りし て、自分なりの地中トラップを作成する ことにした。記念すべき初号機は 30 分 程で完成したが、初めて作ったというこ ともあり、かなり不格好なものとなって しまった。早くも期待感が下がる。 早速、出来上がったばかりの地中トラ ップとバールを持ち、実家の裏山へ向か った。それから、餌となるさなぎ粉を持 って。……?………おや?さなぎ粉が、 ない。確かに入れたと思ったのに……。 しかし、いくら探せども、荷物の中にさ なぎ粉の姿はなかった。どうやら厚木の アパートに置き忘れてきてしまったら しい。仕方なく実家のキッチンを荒らし て回ると、かつお節、味の素、そしてト リガラスープの素を発見。その後もしば らく探してみたが、結局それら以外の昆 虫を呼び寄せそうなものは見つからず、 その 3 つに塩を練り混ぜた物を餌とし た。……期待感が更に下がる。 それでも、作製したものは仕掛けなく ては、と実家の裏山を歩きながら、地面 の様子を見ていく。そのうち、過去に重 機が入って削られたのであろう場所を 見つけた。 表面の土をどけると、もろく、間隙の 多い岩盤が姿を見せた。「もうここでい いだろう」と場所選定を妥協して、バー ルで岩盤を突き崩すようにして掘り進 2 める。あっという間に軍手と上着の袖が 泥まみれになった。冬は屋内でも氷点下 になることが当たり前の場所であるた め、冷たいことこの上ないが、気にして はいられない。 岩盤と格闘することおよそ 40 分。深 さ 50cm、入り口の直径 20cm の穴がで きた。直径が大きすぎる気もするが、慣 れていないので仕方がない。トラップを 仕掛ける部分は直径 10cm ほどだから 大丈夫だろう。と心の中で言い訳してみ る。穴の底に餌と保存液を分けて入れた 地中トラップを置き、紐をトラップに結 びつけて目印とした上で、大きい石から 順に積み上げて埋める。この時点で既に 2 時間ほどが経過しており、材採集など も計画していたのだが、時間もないので 泣く泣く下山することにした。 標高の高い所では冬季にトラップを しかけても入らない、という話を聞いて いたので春先まで待つ予定だったが、 12 月 30 日、私の気が変わった。という よりも、我慢ができなくなっていた。正 月休みが始まり、再び帰省したはいいが、 オサムシを掘ろうにもオサムシが入り そうな場所はどこも凍ってしまってい る。カミキリなどを採集しようと材を拾 おうにも、ほとんどが雪の下。しかし、 地中トラップをしかけた場所は日があ たり、雪が積もらない場所だというのを 知っていた。 そこで大晦日。2 週間ほどしか経って いない上、様々な理由により昆虫がかか っていることなど期待できないにもか かわらず、私は地中トラップの様子を見 に行った。 案の定地中トラップをしかけた場所 に雪は積もっていなかった。目印となる ロープもすぐに見つかった。バールでそ っと土と石をどけ、トラップを掘り起こ す。トラップには予想以上に土が入り込 んでしまっており、容器の中はよく分か らない。しかし、なにやら白いモヤのよ うな物が入っているのは確認できた。 白……?ゴミムシやハネカクシなら 黒色か飴色だろうと思っていたので疑 問に思いながらも中身を開け、土をよけ て白いモヤの正体を確かめる。 白色に近い半透明の体、長い触覚と脚、 片方は切れてしまっているものの、一対 の尾毛……。体長 1 センチにも満たない ものの、それはまぎれもなくガロアムシ の若虫だった。 生息しているのは知っていたが、初め て仕掛けたトラップ(それも不格好な出 来で、餌も適当な物で、冬季に、短期間) で採集できたので、喜びもひとしおであ る。 液浸標本となったそれを眺めながら、 大変良い気分で 2014 年を迎えることが できた。 3 翌日、午前中に名護入りし、レンタカ ーで食料や雑甲虫向けトラップの材料 の買出しを終えた後、早速国道 58 号線 を北上し、目的のヤンバル北部へ赴いた。 早朝からパラついていた小雨が次第 に雨音を増す。嵐の中、これから毎晩流 す林道の下見を一本ずつ丁寧にしてい った。とりあえず大国林道、県道 2 号線、 安波林道、奥与那線、佐手辺野喜線、奥 1 号線、奥 2 号線、宇嘉林道、伊江林道 といった有名どころを一通り巡る。 最後に、ギネス騒動で一躍有名になっ た伝説のチヌフク林道の終点(伊江林道 との分岐点)に差し掛かると、台風の影 響であろう、道を遮るリュウキュウマツ の倒木を見つけた。「チッ」と自然に舌 打が出る。というのもチヌフク林道は総 長 7.4km の大変長い林道であり、58 号 と繋がる起点側に回るだけでも一苦労 なのである。「どかしてみますか?」こ こで助手席の長野のトンデモ発言。「ど かしましょう!」一瞬耳を疑ったがどう やら彼は本気だったらしく、バンッと車 の扉を開けて嵐の中へと突入していっ てしまった。突然の行動に呆然としたが、 ついに私も覚悟を決め、倒木処理に向か うことを決心した。30 分ほどで林道は 開通したが、この奇行が本当に正しかっ たのかどうかは不明である。とりあえず 風邪は引いたな、と全身ズブ濡れの状態 でそう感じた。 チヌフク林道を抜けた後は沖縄本島 最北端の辺戸岬の駐車場まで行き、今晩 に期待を込め、着替えた後に体力温存の ため眠りについた。 目覚めた頃には天気も回復しており、 日も傾き始めていたため、一旦辺野喜ダ ムに行き、東屋の下で夕食を平らげた。 そして日没後、気合を入れてアクセル を踏み込む。ひたすら林道と睨めっこを しながら丸々12 時間、平均時速 30km で走り続けるという鬼畜な長い夜がと うとう始まってしまったのである。 ~鬼畜な長い夜。オキマル修行~ 学部 3 年 宮尾 真矢 2013 年 10 月 9 日。奄美大島から帰 還して 1 ヶ月が過ぎた頃、私は「オキナ ワ」の地を踏んでいた。 南西諸島特有の、あの生温い秋風が肌 身に染みる。同行する学部 2 年の長野は 前もって頭に磨きをかけてきており(文 字通りのスキンヘッド)、気合十分とい ったところ。今回も空の便にジェットス ターを選んだが、いくら那覇まで 5000 円で飛べるとは言え、厚木から電車を乗 り継いで成田まで行くのは正直しんど い。二人とも長旅の疲労を隠しきれず、 また、那覇入りが既に夕刻過ぎというこ ともあり、国際通りの良さ気な雰囲気の 民謡居酒屋に入って高々と三ツ星をか ざした。 今回のターゲットはズバリ、ヤンバル の宝石ことオキナワマルバネクワガタ。 我々の沖縄本島での滞在期間は 9 日~ 18 日の 10 日間で、実際に採集に充てた 期間は 8 泊 9 日。アママルやヤエマル を狙う際の、深夜のスダジイ原生林に突 入する、いわゆる「木採り」であれば、 過去に経験がある分落ち着いて採集に 望むことができるのだが、ヤンバル北部 での「林道流し(林道をひたすら車で走 って、歩いて道に出てきたオキマルを拾 うというもの)」に至っては完全に未知 の領域で、随分言い方が悪いが本当にそ んなアホな採集法で採れるのかと、不安 で不安で仕方がなかった。実際、我々よ りも一週間ほど前にオキマル流しをさ れていたコロさん(同誌連載中の沖縄事 件簿の伊藤先輩のアダ名「コロッケ」の 略)たちが不発であったとの連絡を受け ていた分、余計に緊張感が高まる。結局、 カプセルホテルに到着するも虫屋震い で寝付けず、厚木の有隣堂で予め購入し ておいた沖縄県の林道マップと睨めっ こをしたまま、「オキナワ」の夜は更け ていった。 4 た。時刻も 2 時半を回っており、流石に ボーズを意識し始める。同じように県 2 を往復する同業者の車のスピードにも 焦りが見えてきている。 3 時過ぎ頃だろうか、側溝の淵の茂み の部分を中心にルッキングをしている と、ヒラタでもゴミムシでもない大きな 黒い塊が目に付いた。ビニル袋の切れ端 とも異なるし、プラスチック類の破片と も異なる。それはこれまでに見てきた (騙されてきた)モノとは明らかに存在 感が違う。フェアの時に聞いた「いたら 分かるよ。」というM社のI島さんの言 葉は本当だった。 いたら分かる。…奇声。本当にソレが、 いた!…発狂!夢にまで見た、あの、オ キナワマルバネが、いた!…デスボイ ス!からのシャウト!しばらくの間、声 が枯れるまで叫び続けた。先月のアママ ル採集の時も流石にこんなには叫んで いなかっただろう。 我に返り、改めて採集したオキマルを 見てみると、立派な完品♂であったもの の、案外小型の個体だった。しかし、嬉 しいことに違いはない。 その後も県 2 を攻め続け、今度は 5 時前頃に♀のオキマルを採集した。結局 朝 6 時まで歩き続けたが、それ以上の追 加個体を得ることはなかった。最後の力 を振り絞り、なんとか国頭のファミマに 辿りつく。腹を満たし、夕方近くまで目 覚めることのない深い眠りについた。 初日の採集から以下のことを学んだ。 ①車で流すだけではなく、しっかり歩い て側溝のみならず茂みの中も観察する べき。②朝まで流せばボーズは防げるが、 昼間は思うように体が動かなくなる。 要するに、昼間動けなくなるほど完徹 でヘトヘトになりながら探し続ければ 必ず採れるということだ。なんだか滅茶 苦茶な採集法だが、この時期のオキマル を採るためにはこれしか方法はない。そ の結果、朝まで流して、2 日目の晩は中 辺野喜ダムを北上し、低速でチヌフク 林道へ向かう。ダムを出て 500m で大歯 が抜かれる前例もあるので、見落としの 無いように慎重に流していく。珍虫ヤン バルクロギリスやマダラゴキブリ、カタ ツムリの類は良く見かけるのだが、開始 1 時間が経つも肝心のオキマルは姿を 現さない。林道に散らばる小石の影がそ れとなくオキマルに見えたりもするた め、一旦停止しては確認して、という所 作を繰り返しながら前進する。 58 号に抜け、奥 1 号線に入ってみる が、超低速で流しているはずなのに気づ いた時にはもう終点に出ているという 始末。伊江も宇嘉も回り、辺野喜ダムの 橋を何度渡ったことだろうか。 あっという間に日付も変わっていた が、成果はゼロ。厳しい。私が「やっべ ー…飽きてきたかも。」などと愚痴をも らす度に「がんばりましょう!」と気合 を入れ直してくれる長野。ひとまず自販 機に寄ってコーラを煽る。ストレッチを した後にヨガの真似事でしばし瞑想を してみる。ここで一つ、奇抜なアイデア が思いつく。それは県道 2 号線をひたす ら徒歩で往復し、側溝をチェックし続け るというものだ。県 2 の側溝は意外にも 整備が施されており、他の林道のものと 比べても断然観察がし易いように思え る。期待を込めてテナガコガネの横断幕 からフンガー湖までの間を、朝まで徒歩 で往復することにした。 しかし見つかるのは例のごとくヤン バルクロギリス、マダラゴキブリ、カタ ツムリの類ばかり。キラリと黒光りする 虫影に目が覚めるも、その正体はオキナ ワヒラタであったり、沖縄サイズのオオ スナハラゴミムシであったりする。また、 徳之島で見たオビトカゲモドキの原名 亜種、沖縄県指定の天然記念物クロイワ トカゲモドキも高い頻度で姿を見せる。 「本当にオキマルなんているんです かねえ。」と長野も弱気な発言をしてい 5 歯型の♂1 頭、3 日目と 4 日目の晩に中 歯型の♂が 1 頭ずつ、5 日目の晩は瀕死 の♂2 頭、6 日目の晩は大歯型の♂1 頭 (64mm)と中歯型の♂1 頭と♀1 頭、 そして 7 日目と 8 日目の晩に大歯型の ♂が 1 頭ずつ(63mm,62mm)採集す ることができた。 9♂♂2♀♀の計 11 頭。こうして書く と何やら簡単に採集できそうな昆虫と 見ることができるかもしれないが、その 様に思った方には是非とも、実際に 1 日 12 時間の林道流しを 8 晩連続で行っ てみて頂きたい。「修行」と称される理 由が痛いほど分かるはずである。レンタ カー返却の際、総走行距離が 2000km 弱であったのを知り、思わず噴出してし まった。 「オキナワ」最終日、A&W でキンキ ンに冷えたルートビアを何杯も煽った 後、那覇空港の石垣島行き搭乗口で同期 の川村と落ち合い、出発の時を共に待ち 侘びる。ヤンバルでの採集報告や石垣島 での採集計画について熱く語っている うちに、CA の機内アナウンスとジェッ ト機のエンジン音が響いてきた。さあ。 行こう、次なる地「ヤエヤマ」へ。 6 個体を採集したかったのだが、結局この 日は採集できなかった。 この日は狙いのクモは採集できなか ったものの、メインではないが密かに狙 っていたヤエヤマサソリを 2 匹ほど採 集した。サソリというと外産種をイメー ジしがちであるが、湿った倒木の樹皮下 で彼らを発見したときは、とても感動し た。 3 日目。再び、昨日攻めた林道へ向か う。実は昨日の帰り道に自動車のトラブ ルに巻き込まれてしまい、この日以降は 自転車による移動となってしまった。お そらく体力的にも、於茂登岳方面へ採集 に行くのはこれで最後になるだろう。 昨日は怖くて突入することができな かった林内の採集にも気合を入れて挑 戦した。僕は極度の方向音痴に悩まされ ており、正直林内は怖い。昼間ではあっ たが、慎重に目印をつけながら入る。途 中、セマルハコガメに出会った。そして ついに、何本も倒木を引き起こしていく とようやくオオクロケブカジョウゴグ モに出会うことができた。漆黒のボディ にタランチュラを思わせる太くて毛む くじゃらな脚に、威圧するような赤い顎。 正直、採るのが怖いくらいの、迫力ある 風貌だった。さらに倒木を引き起こし続 けていくと、ヤエヤマジョウゴグモも捕 獲。こちらはオオクロケブカジョウゴグ モに比べて小さく色も褐色掛かってい る。腹部の矢筈模様が印象的だった。 林内の採集が怖くなってしまったの で何とか脱出し、今度は林道沿いの崖を 崩すことにした。早速、ヤエヤマトタテ グモを 2 匹採集。また、イシガキキムラ グモを 6 匹ほど採集した。帰り道の林道 の脇でオオジョロウグモを発見。その大 きさは僕の手の指を広げた大きさより も大きく、驚愕した。 ~石垣島採集記‐クモ編‐~ 学部 2 年 長野 宏紀 2013 年 9 月 3 日。僕は同期の吉田君 と共に石垣島へ採集に来た。前回の屋久 島の時とは違い、今回の採集は先輩とで はなく、同期だけの採集であったため、 新しい第一歩を踏み出すことへの期待 と同時に、自己責任・自己管理への不安 を抱いていた。 今回の採集対象は、キシノウエトタテ グモ属のヤエヤマトタテグモ、ジョウゴ グモ科のオオクロケブカジョウゴグモ、 ヤエヤマジョウゴグモである。ヤエヤマ トタテグモは内地に生息するキシノウ エトタテグモ(農大厚木キャンパスにも 生息)と生態が酷似しているため、恐ら く採集できるだろうと思われる。しかし、 オオクロケブカジョウゴグモとヤエヤ マジョウゴグモは不安だ。なぜなら、ジ ョウゴグモ科の仲間は国内では八重山 諸島に分布する先述の 2 種に加え、奄美 大島と徳之島に分布するアマミジョウ ゴグモの 3 種のみしか存在しないので ある。つまり、ヤエヤマトタテグモのよ うに内地での実践予習ができず、図鑑や 論文の生態に関する記述を頼りに探さ なければならないということだ。果たし て、本当に採集できるだろうか…。 翌日から採集を始めた。まずは於茂登 岳が見える林道へ向かい、採集を開始。 しかし採れない。キシノウエトタテグモ 属は湿った土手に巣を作っているはず なのだが、彼らがいそうな土手を探して も一匹しか採ることができなかった。ジ ョウゴグモに関しても、図鑑では地中や 石の下、腐木に巣を作るとされていたが、 実際に姿を現すのは、脚を入れても 3cm にも満たないオオクロケブカジョウゴ グモとみられる幼体ばかり。オオクロケ ブカジョゴグモは、メスで体長 20~ 26mm で脚を入れると 7cm を超える国 産トタテグモ下目においては超大型種。 憧れの種であるだけに、とことん大きな 石垣島の採集自体は 9 月 10 日までで あったのだが、狙いのクモを採集できた 7 場所と期間がこの 2 日間だけであった ため、他の日の事柄は割愛させて頂く。 今回採れたクモは、ヤエヤマトタテグ モ 3 匹とオオクロケブカジョウゴグモ が成体 2 匹、亜成体 3、そして幼体と思 われる個体 7 匹の計 12 匹と、ヤエヤマ ジョウゴグモ 2 匹、おまけでイシガキキ ムラグモ6匹とオオジョロウグモ 1 匹 であった。 今回の採集における反省点は、2 日目 の自動車トラブルや、林内で方向感覚を 失い結局迷ってしまったことなど、ほん の気の緩みによって危険を招いてしま ったことである。次回からは安全面に十 分配慮したい。 また、採集個体数が全体的に少なかっ た。石垣島はいつか必ずリベンジするつ もりだ。 編集後記 学部 3 年の宮尾、真嶋です。 日に日に気温が下がり、朝布団から離 れるのが辛い時期となって参りました。 今号も、前号と同じく昆研味を帯びた 南西諸島の採集記を中心に掲載させて 頂きましたが、いかがだったでしょうか。 今後の OB 会ニュースでも、諸連絡だけ でなく採集記も充実させていこうと考 えていますので、よろしくお願いします。 卒論発表会・追いコンで皆様とお会い できますことを楽しみにしております。 私の標本箱 2013 6/14 長崎県対馬市厳原町豆酘 ツシマオオカメムシ Placosternum esakii Miyamoto, 1990 対馬三珍カメムシのうちの一種であ る。竜良山においてライトトラップに飛 来したところを採集した。初の離島遠征 で採集した思い出深い昆虫だ。(川村) 8