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パワーエレクトロニクスとは

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パワーエレクトロニクスとは
平地研究室技術メモ No.20060823
パワーエレクトロニクスとは
(読んでほしい人:電気系の高専生、大学生)
2006/8/23 舞鶴高専 平地克也
■パワーエレクトロニクスとは
パワーエレクトロニクスとはパワー(Power)をエレクトロニクス(Electronics)で制御する技術
です。
「パワー(Power)
」は日本語に訳せば「力」ですが、電気の世界では「電力」を意味します。
よって、パワーエレクトロニクスはエレクトロニクスで電力を制御する技術です。
(これは余談ですが、Power は数学の世界では「べき乗」です。2 を 3 乗する:raise two to the third power)
パワーエレクトロニクスは今日では電気を用いるおよそあらゆる分野で使用されており、現代の先
端技術を支えています。下記のような製品は全てパワーエレクトロニクス応用製品なのです。
新幹線
ハイブリッドカー
電磁調理器
ノートパソコン
■電力変換の種類
「エレクトロニクスで電力を制御する」を具体的に言えば、半導体を使って電力の形を変えること
を言います。
例:交流を直流に変える、直流を交流に変える、不安定な電圧を安定させる、
・・・・・・
電力の形を変えることを「電力変換」と言います。よって、パワーエレクトロニクスを日本語では「半
導体電力変換技術」とも言います。電力変換には大きく分けて4つの種類があります。
① 順変換
(AC/DC 変換:交流を直流に変える→整流器)
② 逆変換
(DC/AC 変換:直流を交流に変える→インバータ)
③ 直流変換(DC/DC 変換:直流の電圧を変える→DC/DC コンバータ、チョッパ)
④ 交流変換(AC/AC 変換:交流の周波数を変える→サイクロコンバータ)
ほとんどの電気製品はこれらの電力変換技術を巧妙に組み合わせてその性能を発揮しているのです。
■パワーエレクトロニクス応用製品の例
<家電製品>
図 1 に電磁調理器(IH クッキングヒーター)
の回路構成の一例を示します(1)。コイル L1 に
高周波電流を流し、鍋を加熱します。商用電源
→直流→高周波の交流、と電力変換しています。
その他、電子レンジ、インバータエアコン、各
種充電器など多くの家電製品でこのような電
力変換技術が使用されています。
1
<新幹線>
図2に新幹線の回路構成の一例を示します(2)。パンタグラフで高圧の交流を受電して変圧器で降圧
し、PWM コンバータ(高性能の整流器)で直流に変換しています。PWM インバータで平滑コンデ
ンサの直流電圧を交流に変換して誘導電動機に与えています。PWM インバータは誘導電動機に与え
る交流の電圧と周波数を高精度に制御することにより、新幹線の速度を調整しています。
ハイブリッドカーでも新幹線と同様にインバータで巧妙にモータを制御しています。このようなモ
ータ制御はパワーエレクトロニクスの重要な1分野となっています。
図2
新幹線の回路構成
<ノートパソコン>
家電や新幹線やハイブリッドカーがパワーエレクトロニクス応用製品ということは誰でもすぐに納
得できるでしょう。しかし、ノートパソコンのような一見電力とは無関係に思える情報処理装置もパ
ワーエレクトロニクス応用製品と言えば、多くの人は意外な印象を抱くでしょう。しかし、次頁に示
すノートパソコンの電源回路構成を見ればノートパソコンもパワーエレクトロニクス応用製品であ
ることを了解できます。ノートパソコンは充電器と本体に分かれますが、それぞれ次のような電力変
換を行っています。
◎充電器
・商用電源を整流器で直流に変換。
・インバータで 100kHz の高周波に変換。
・変圧器で降圧。
・再度整流して 9V の直流を得て本体の電池を充電。
多くの人は、なぜわざわざこのような複雑な電力変換を行うのか不思議に思うでしょう。しかし、充
電器を小型軽量にするにはこの複雑な電力変換が最も合理的なのです。
2
◎ノートパソコン本体
・電池電圧をインバータと変圧器で 1000V に昇圧して液晶のバックライトを駆動。
・インバータで交流に変換して SM 形 AC サーボモータ(ブラシレス DC モータとも言う)を駆動。
図3ではモータの記号は1つしか書いていませんが、ほとんどのノートパソコンではハードディス
ク、フロッピディスク、CDROM をそれぞれ駆動するために 3 ヶ使用しています。
・電池の DC9V を降圧チョッパで 1.2V に変換して CPU(Pentium)に供給。
インテル社の Pentium は非常にぜいたくな CPU であり、1.2V のような低い電圧で数 10A の電流
を消費します。しかも、降圧チョッパに対して高い電圧精度と高速応答を要求します。
・DC9V を昇圧チョッパで 12V に昇圧して RS232C に供給。
・その他、図には示していませんが、降圧チョッパで 5V、3V などいろんな電圧を作って多数の I
に供給しています。
商用電源
整流器
充電器
高周波 変圧器
インバータ
整流器
DC9V
単相
60Hz
AC100V
DC141V
単相
単相
100kHz
AC100V
100kHz
AC7V
高周波 変圧器
インバータ
ノートパソコン本体
液晶バックライト
DC9V
電池
単相
単相
100kHz
AC7V
100kHz
AC1000V
インバータ
M
SM形 ACサーボモータ
3相
数100Hz
AC7V
降圧チョッパ
DC1.2V
Pentium
図3
ノートパソコンの
電源回路構成例
昇圧チョッパ
DC12V
RS232C(シリアルポート )
<参考文献>
(1) 大森、岩井、中島、
「拡大期を迎えた家電・モバイル機器のエネルギーエレクトロニクス」
、電気学会論文誌D、
Vol.124, No.11, (2004)
(2) 服部、久保田、安東、
「電気機器学の講義と演習」
、森北出版、図 7.12
以上
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