Comments
Description
Transcript
【フランス電力】据置:AA+/安定的 - 日本格付研究所
14-I-0043 2014 年 9 月 4 日 株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。 フランス電力 (証券コード:−) 【据置】 外貨建長期発行体格付 格付の見通し 債券格付 AA+ 安定的 AA+ ■格付事由 (1) 原子力発電を中核とする世界最大級の発電能力を擁するフランスの電力会社。格付は、フランス政府のエ ネルギー政策の根幹を担う電力会社として享受している政府からの極めて強力な支援、国内の極めて強固 な事業基盤および安定した収益力などを評価している。一方、格付は原子力発電関連を中心とした高水準 の設備投資、国内規制下にない国外事業の保有などにより制約されている。格付の見通しは安定的。フラ ンス政府からの出資に係る新たな法律が施行されたものの、現状では当社への影響は限定的とみられる。 当社のフランスの電力セクターにおける重要性に変化はなく、政府からの強い支援は中期的に維持されて いくと思われる。財務構成は、ハイブリッド債発行による資本強化や負債の削減を行うなど、改善してい る。当面は高水準の設備投資が続くものの、安定した収益力を背景に現状の財務構成を維持すると JCR ではみている。 (2) グループ全体の発電容量は 140.4GW と世界最大規模であり、欧州の主要な送電会社からなる欧州調整連 合会(UCTE)の総設備容量の 10%超を占めている。当社はもともと全ての発電および送配電事業を国有 企業に集中させる国の方針により、電力の独占事業者として商工業公益事業体の形態で 1946 年に設立さ れた。原子力を利用したエネルギー自給率の改善という政府の目標に基づき、70 年代から原子力発電が 中心となっている。国内発電量の 4 分の 3 程度を供給する 19 カ所、58 基の原子力発電所を所有するなど、 原子力を中心とした国のエネルギー政策の根幹を担っている。04 年に株式会社化され、翌 05 年に株式が 上場された後も政府が大株主となっており(出資比率は 13 年 12 月末現在 84.49%) 、その出資比率は法 律により 70%以下に引き下げることができないこととなっている。14 年 3 月に政府の出資に関わる新た な法律である“Florange”法が施行されたものの、現状では当社への影響は限定的とみられる。この法律 により政府の議決権比率が今後高まるが、政府が出資比率を下限まで引き下げた場合でも、現状程度の議 決権比率が維持される見通しである。18 名から構成される取締役会のうち 6 名を政府代表が占めるなど、 政府との関係も極めて強固である。 (3) 国内事業は発電、送電、配電、小売供給の全てにおいて最大のシェアを有するなど、極めて強固な事業基 盤を保持している。規制事業で収益性が高い送配電事業も子会社を通じて実質保有している。10 年 12 月 の電力市場新組織法施行後も 16 年までは国内消費電力の約 8 割に規制料金が課される見込みであり、競 争圧力の緩和という恩恵を受けている。オランド政権はエネルギー転換法を公表し、2025 年までに発電 構成における原発依存度を引き下げる方針(75%→50%)である。同政権が公約としていた 16 年のフッ センハイム原子力発電所の運転停止については具体的な進展はない。同法案は 14 年秋に議会で審議され る予定であり、今後の動向を注目している。国外事業は売上高の 5 割弱を占めており、特に英国、イタリ アで強固な事業基盤を有している。英国では完全子会社 EDF Energy を通じて発電、供給事業を行い、発 電市場で最大の市場占有率を有している。また、ヒンクリー・ポイントにおける EPR 建設について EDF を中心とするコンソーシアムは英国政府と合意し、建設コストの 65%に政府保証(英国財務省傘下の Infrastructure UK)が付与されることとなった。投資総額は 160 億ポンドとなる予定であるが、EDF の投資 負担は 35 億ポンド以下に収まる見込みである。イタリアでは 12 年に電力・ガス大手の Edison を完全子 1/3 http://www.jcr.co.jp 会社化し、発電市場の 6.7%、ガス市場の 22.5%のシェアを有している。その他の事業では再生可能エネ ルギー発電子会社 EDF Energies Nouvelles を通じて再生可能エネルギー発電の強化を図っており、北米や 欧州を中心に風力発電や太陽光発電などのプロジェクトに投資している。また、中国台山で中国広核集団 との合弁で EPR を 2 基建設中である。 (4) 収益は極めて強固な事業基盤を有する国内事業に牽引され、欧州経済が低迷する中でも堅調に推移してき た。収益性の高いフランスにおける原子力発電の発電量は、安全対策を強化するための運転停止期間の増 加のため若干減少し、403.7TWh となったものの、発電量全体では収益性の高い水力発電の増加を受けて 前年比 1.7%増となった。13/12 期の売上高は、フランスの寒波による電力需要拡大、フランスにおける 規制価格の引き上げおよび電力価格上昇による英国事業の収入増加を主因に前年比 2.9%増(比較可能ベ ース)の 756 億ユーロとなった。費用は、燃料調達費用などが増加したものの、その他の対外費用が減少 したことやコスト削減策 Spark を通じて目標の 10 億ユーロを上回る 13 億ユーロのコストを削減したこと などから、全体としては、売上高の増加を下回った。これにより EBITDA は 168 億ユーロと前年比 5.5% 増(比較可能ベース)となった。当社は 14 年の EBITDA を 3%超増加させること(Edison 除く)を目標 としており、14/12 期第 2 四半期累計の EBITDA(Edison 除く)は、原子力発電の発電量の増加などから 前年同期比 5.3%増となっている。 (5) 財務構成は、ハイブリッド債の起債による資本強化策や負債の削減などを通じて改善している。純有利子 負債は、12/12 期末の 416 億ユーロから 13/12 期末に 355 億ユーロ、14/12 期第 2 四半期末には 306 億ユ ーロに減少した。14/12 期第 2 四半期末の純有利子負債/EBITDA 倍率は 1.9 倍と 13/12 期末の 2.1 倍から 低下し、当社の目標としている 2.0-2.5 倍の範囲を若干下回っている。設備投資については、原子力発電 所の安全対策強化や欧州型加圧軽水炉(EPR)の第 1 号機(16 年運開予定)やダンケルク LNG ターミナ ルの建設など、当面は高水準で推移するが、安定した収益力を背景に現状の財務構成を維持すると思われ る。また、当社は多額の流動性(14/12 期第 2 四半期末:284 億ユーロ)を有しており、国際資本市場へ の良好なアクセスを維持している。 (担当)内藤 寿彦・幾島 真 ■格付対象 発行体:フランス電力 (Electricitéde France S.A.) 【据置】 対象 外貨建長期発行体格付 対象 第 1 回円貨社債(2009) 第 2 回円貨社債(2009) 第 1 回変動利付円貨社債(2009) 格付 見通し AA+ 安定的 発行額 450 億円 441 億円 50 億円 発行日 償還期日 2009 年 7 月 9 日 2009 年 7 月 9 日 2009 年 7 月 9 日 2014 年 10 月 9 日 2016 年 7 月 8 日 2014 年 10 月 9 日 (注)3 ヶ月円 LIBOR に 0.80%を加えた利率。 2/3 http://www.jcr.co.jp 利率 1.63% 2.00% (注) 格付 AA+ AA+ AA+ 格付提供方針に基づくその他開示事項 1. 信用格付を付与した年月日:2014 年 9 月 1 日 2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本 主任格付アナリスト:内藤 寿彦 幸一 3. 評価の前提・等級基準: 評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類 と記号の定義」 (2014 年 1 月 6 日)として掲載している。 4. 信用格付の付与にかかる方法の概要: 本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、 「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」 (2013 年 3 月 29 日) 、 「電力」 (2011 年 7 月 13 日)として掲載している。 5. 格付関係者: (発行体・債務者等) フランス電力 (Electricitéde France S.A.) 6. 本件信用格付の前提・意義・限界: 本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。 本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性 の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外 の事項は含まれない。 本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入 手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。 7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者: ・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表 ・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明 8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要: JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、 独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、 当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。 9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし ■留意事項 本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、 的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、 金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因 のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として 発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。 ■NRSRO 登録状況 JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。 ■本件に関するお問い合わせ先 情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026 3/3 http://www.jcr.co.jp