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米国ヒスパニックの動向 - So-net

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米国ヒスパニックの動向 - So-net
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第 32 回 FTS 2014 年 4 月 24 日
米国ヒスパニックの動向
スピーカー:内多允(元 JETRO)
「1」米国における人口動向とヒスパニック
1) 米国におけるヒスパニックの人口
米国の人口グループはマジョリティ(majority)とマイノリティ(Minority)に 2 大別さ
れる。前者が最大人口規模を有する白人である。後者が白人以外の人種やエスニック・グ
ループで構成される。ヒスパニックはマイノリティ・グループに含まれる。
(なお、米国のセンサスではヒスパニックは単一の人種としての分類ではない。その理由
はヒスパニックには先住民、白人、黒人、アジア系、その他の人種に加えて、さまざまな
人種の混血の人々もいる。ヒスパニックは自己あるいは先祖がスペイン語圏に属するラテ
ンアメリカ出身であるという出自についての概念である。米国のセンサスでは人種とは別
の回答の選択肢として、ヒスパニックという項目が設けられている)
米国の人口増加には、移民の増加が影響している。移民の民族構成は第 2 次世界大戦前は
やアジアからの移民が増加した。特にヒスパニック(中南米出身)が激増した。米国政府が 10
年毎に実施するセンサス(人口調査)によれば、総人口に占める移民(センサスの定義で
は米国国籍を有しない外国生まれ)の割合は 2000 年には 2 桁台(11.1%)に達し、2010
年には 12.9%に上っている。なお、米国の総人口(2012 年)は約 3 億,1,400 万人である。
移民の中でも年を追って目立って増加してきたのが、ヒスパニックである。この傾向を 10
年ごとのセンサスで見ると、1980 年にはヒスパニックの移民は 440 万人で、1970 年の 180
万人に比べて 2.4 倍の増加である。移民総数に占めるヒスパニックの比率は、1980 年には
3 割台に上り、2010 年には 53.1%に達した。1960 年から 2010 年の 50 年間における移民
総数の増加数は、3,040 万人であるが、その 68%がヒスパニックの増加分(2,030 万人)で
ある。
最大の人口規模を有するマイノリティーは 1900 年代までは黒人であったが、2000 年代か
らはヒスパニックが黒人を上回る傾向が定着したといえる。これには、米国内における自
然増加率に加えて、圧倒的な移民の増加による影響が大きい。
2000 年から 2010 年におけるヒスパニック人口の増加率は 43%で、総人口(9.7%)や黒人の
それ(12.3%)を上回っている。
ヒスパニックの増加数(1,517 万人)は総人口のそれ(2,732 万人)の約 56%を占めた。
ヒスパニックの出身地別の内訳では、メキシコ系が最大の人口規模を有している。2011
年におけるヒスパニック人口(約 5,200 万)の 65%(約 3,400 万人)がメキシコ系である。
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ヒスパニックの出生地は外国生まれ(つまり、移民)よりも、米国生まれが 6 割台を占め
ている。米国生まれと外国生まれのいずれも、メキシコ系が最も多い。
2) 就労人口増加に貢献するヒスパニック
ヒスパニック人口の増加傾向は、労働力人口の構造にも反映している。労働力人口にお
いても、2000 年代には最大のマイノリティグループは黒人からヒスパニックに移っている。
米国政府の予測によれば年間人口増加率は 2012 年から 2027 年の期間は 0.7%台であるが、
2028 年から 2034 年には 0.6%台に、さらに 2046 年から 2060 年は 0.5%に低下する。同期
間中にはマイノリティーの人口が増加する一方、マジョリティである白人の人口が減少す
る傾向が顕著になる。白人は依然としてマジョリティではあるが、総人口に占める比率は
2012 年の 63.0%から 2020 年から 2042 年の期間では 50%台に低下、2043 年からは 40%台
となり、2060 年の同比率は 42.6%と予測している。
マイノリティでは最大の人口を有するヒスパニックの総人口に占める比率は 2012 年 17.0%、
2035 年 23.4%、2060 年 30.6%で、白人のシェアとの差が狭まる傾向が顕著になっている。
将来の人口増加の有力な要因となる若年層(18 歳以下の年齢層)人口に限れば、白人がマジ
ョリティの地位を維持することが危うくなっている。2012 年はまだ白人が同年齢層の過半
である 52.7%を維持するものの、2060 年には 32.9%に低下する結果が出ている。一方、同
年齢層のヒスパニックは 2012 年の 23.9%から、2060 年には 38.0%に上昇して、白人に代
わってマジョリティに逆転すると推計される。人口構造の高齢化については、高齢者(65 歳
以上)の増加傾向が明らかになった。これによれば高齢者は 2012 年では 7 人に 1 人である
が、2060 年には 5 人に 1 人となる。高齢者人口の主要なエスニック・グループ別比率は白
人 56.0%、ヒスパニック 21.2%、黒人 12.5%となっている。
米国における移民の就労者総数(2011 年調査)2,185.9 万人の 55%(1,197.5 万人)が、ヒ
スパニック就労者である。ヒスパニック就労者の 55%(653 万人)が、メキシコ系就労者
である。メキシコ系移民就労者は移民就労者全体の約 3 割を占めている。
3)ヒスパニックの就労構造
次に、ヒスパニック移民の就労構造を紹介する。2011 年のデータによれば、移民就労者
総数(約 2,186 万人)の 55%がヒスパニック移民の就労者(約 1,198 万人)である。メキ
シコ系移民就労者(653 万人)はヒスパニック系の 55%、移民就労者全体の 30%をそれぞ
れ占めている。就労分野別の就労者数構成の特色としては、経営・専門職分野の構成比が
メキシコ系を含むヒスパニックでは他分野に比べて低い。また、移民就労者に占める比率
でも少数グループに止まっている。これはヒスパニックには、専門職に要求される大学以
上の高学歴者が他のエスニック・グループに比べて少ないことが影響している。
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一方、低学歴層でも就労機会が得られる職種(販売や生産の現業部門)には、ヒスパニ
ックが進出している。メキシコ系就労者が圧倒的に多い分野としては、農業部門が特異な
地位を占めている。農林水産部門の就労者(実態は農業労働者が多数)総数 33.7 万人の内、
ヒスパニックが 32.4 万人に上る。そして、メキシコ系が 28.2 万人を占めている。メキシコ
系が同部門就労者の 84%、ヒスパニックの 87%をそれぞれ占めている。米国農務省の統計
(Agricltural Statistics 2012)によると、2011 年における農業労働者 78.8 万人の 46%(36.5
万人)がヒスパニックである(なお、センサス局や労働省の就労関係の統計対象年齢は 16
歳である。農務省統計では 15 歳以上が対象である。農業労働者統計は毎月の平均人数から
年間人数を計上している)。メキシコ系移民の農林水産への就労者構成比率は 4.3%で、移民
全体や他のヒスパニックのそれらを上回っている。これらの数字から、米国農業がメキシ
コ系の労働力への依存度が高いことがうかがえる。 米国農業がメキシコ人の労働力に依
存している実態は、H2A ビザの発給の実態に表れている。同ビザは季節農業労働者に供与
される入国ビザで、これは移民扱いではない。米国政府の 2012 年会計年度(2011 年 10 月
1 日―2012 年 9 月 30 日)H2A ビザ発給統計によれば、発給総件数 6 万 5,345 件の 94%(6
万 1,324 件)が、メキシコ人向けである。国土安全保障省(U.S.Department of Homeland
Security)の統計(2011 Yearbook of Immigration Statistics)によれば、2011 年会計年度
(2010 年 10 月 1 日―2011 年 9 月 30 日)における同ビザによる滞在者 18 万 8,411 人の内、
メキシコ人が 93%(17 万 4,898 人)を占めた。
(4)メキシコ系移民の変化
メキシコ・米国間の移住動向に 2005 年以降、変化が表面化した。メキシコから米国への
移民が減少し始めた。その年間数は 2000 年の 77 万人から、2005 年 55 万人、2008 年 25
万人、2009 年 15 万人、2010 年 14 万人と減少傾向をたどった。5 年間における移民動向の
比較によれば、2005 年―2010 年に期間は 1995 年―2000 年とは逆の傾向が顕著になった。
つまり、メキシコから米国への移民は 294 万人から 137 万人へ、53%減少した。一方、米
国からメキシコへの移住は 66.7 万人から 139.3 万人へ倍増した。
この 5 年間におけるメキシコ移民の累計結果は、差し引き 2.3 万人の流入超過であり、ネッ
トでは米国への移民はゼロとなった。
米国への移民が減少した理由としては、米国における不況が移民の雇用環境を悪化させ
たことが響いた。移民ビザの発給も抑制され、不法移民の摘発と国外退去処分も強化され
た。米国当局によるメキシコとの国境地帯における不法越境の摘発は、2005 年の 100 万人
以上から、2011 年には 28.6 万人に減少した。
メキシコ側の調査によれば、米国から強制送還されたメキシコ人は 2010 年には、20%が米
国への再入国を断念したが、2005 年の調査では断念者の割合は7%であったという。メキ
シコの少子化も移民減少に影響している。典型的なメキシコ人女性の例では、生涯に産む
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子供の平均人数は 1960 年には 7.3 人であったが、2009 年には 2.4 人に減少した。
メキシコ人の米国への移住停滞には、米国の不況の影響も受けている。この傾向は移民
や出稼ぎ労働者によるメキシコへの送金額の低迷に表れている。送金総額はリーマン・シ
ョックが起こった 2008 年から 2012 年にかけて、2007 年の水準に回復していない。
(5)もはや無視できないヒスパニック就労者
移民の受け入れの賛否をめぐって、さまざまな意見が論じられている。米国でも移民政
策に関して対立があるとは言え、経済発展に必要な労働力を移民にも依存せざるを得ない
ことは広く認識されているだろう。ヒスパニックについても、メキシコ系移民の増加傾向
に陰りが見られるとはいえ、既に米国の人口を構成する主要なエスニック・グループを構
成している現状を踏まえて、期待されていることも無視できない。特にメキシコ系移民の
就労者が多い農業では、移民の拡大と不法移民の合法化による地位の安定を求めている。
農業で移民の就労者が多い理由として、米国内で農業への就労希望者が極めて、少ないこ
とが指摘されている。
米国では少子高齢化の傾向に伴って、経済のみなら、さまざまな分野における発展の活
力を維持するために、国外からの移民に対する期待がある。特に総人口に占めるヒスパニ
ックについては、若年層の比率が高いこともあって、米国社会に重大な影響を与えていく
だろう。経済分野についても、ヒスパニックの高学歴化とこれに伴う所得水準の上昇が、
米国が必要とする人材の確保と国内市場の活性化に貢献することが期待される。
*注記:以上の「1」については、下記の拙稿から、関係部分を抽出した。
「人口規模を拡大する米国にヒスパニック」『季刊 国際貿易と投資 2014 年春季号』
pp.162-176,
一般財団法人国際貿易投資研究所、2014 年 2 月。
URL: http://www.iti.or.jp より全文ダウンロード可能
「2」拡大する米国ヒスパニックの消費市場
ヒスパニックが人口減少と高齢化の傾向が著しいマジョリティ(白人系)に代わって、
労働力としての期待が高まっている。同時に米国内の消費市場を拡大していることも注目
されている。米国における消費購買力(可処分所得)の中で、ヒスパニックの消費購買力
の成長が注目されている。全米の消費購買力に占めるシェアは、2010 年の9%から 2013
年には 9.6%に拡大して、2018 年には 10.5%になると予測されている。なお、米国ヒスパニ
ックの市場規模に関連するデータの出所は次の資料。
Jeffery M.humphreys,“The Multicultural Economy 2013”Selig Center for Economic
Growth,Terry College of Business,The University of Georgia,U.S.A.
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米国政府の統計によれば、ヒスパニック世帯の所得水準はマジョリティ(白人)のそれ
よりは低い。それにも拘わらず、ヒスパニックの消費購買力が高い伸び率を維持している
要因としては、次のような状況があげられる。先ず、既に指摘したようにヒスパニック人
口の年齢構成が若年層が多いことが、消費を押し上げていると考えられる。若年層の世帯
が多いことが、出生率が高めて子供のための支出を増やしている。また、将来の生活設計
を勘案した住宅や、耐久消費財への支出も増やすことも想定される。学歴が収入に影響す
ることから、ヒスパニックも高等教育への関心を高めている。ヒスパニック(25 歳以上)
のハイスクール(高等学校)卒業者の比率は、1990 年の 51%から、2000 年 57%,2012 年
65%に達している。学士号保持者の比率も、1990 年 9.2%,2000 年 10.6%,2012 年 14.5%と
高まってきた。
ヒスパニックが自営業を開業する比率が高いことも、その所得水準を高めることに貢献
している。これについては、米国センサス局が 5 年毎に発表する Survey of Business Owner
の最新版(2007 年)で、ヒスパニックが経営する企業(但し、農業部門を除く)について
次のように報告している。同報告では、米国全土でヒスパニックが約 230 万企業を所有し
ている。この企業数は 2002 年に比べて 43.7%増加した。ヒスパニック企業は調査対象企業
の 8.3%、全被雇用者の 1.6%、全企業収入の 1.1%を占めた。メキシコ系ヒスパニックは 100
万企業を所有(ヒスパニック全企業の約 43%)している。従業員を雇用しているヒスパニ
ック所有企業数は、約 25 万でその従業員数は 190 万人(対 2002 年 25.7%増)で、給与支
払い総額は、546 億ドル(同 48.7%増)に上った。同企業の年間収入額は、2,745 億ドル(同
52.9%増)を計上した。このように企業数に比べて、雇用されている従業員数が少ないこと
から、企業所有者が単独で経営する小規模企業が圧倒的に多いことがうかがえる。
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