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自民党神奈川県議会議員団
県政調査報告書
ハノイ・ノイバイ工業団地・五光発條ベトナム㈱にて
日程:平成 26年 11 月 23 日(日)~25 日(火)
ベトナム県政調査の視察先
【11/23(日)】
ロッテセンター・ハノイ LOTTE CENTER HANOI
No. 54, Lieu Giai St. Cong Vi Ward. Ba Dinh, Hanoi
連絡先企業:スターツインターナショナル・ベトナム
Email: <mailto:[email protected]> [email protected]
Mobile:0919-231-383
TEL : (84-4)3936-9884/5
FAX : (84-4)3936-9886
【11/24(月)】
JETRO ハノイ事務所
2nd Floor, 63 Ly Thai To, Hanoi
TEL:84-4-3825-0630
FAX:84-4-3825-0552
ベトナム計画投資省
6B Hoang Dieu Street, Ba Dinh District, Hanoi
Tel: 84 4 8455298
Fax: 84 4 8234453
URL: http://www.mpi.gov.vn
五光発條(株)ベトナム、GOKO SPRING (VIETNAM) CO.LTD
Lot 14, Noi Bai Industrial Zone, Quang Tien, Soc Son, HaNoi
TEL:+84 (4) 582 1617
FAX:+84 (4) 582 1619
<http://www.gokosp.com.vn/jindex.asp>
【11/25(火)】
タンロン工業団地、Thang Long Industrial Park Corporation
Thang Long Industrial park, Dong Anh District, Hanoi
Tel:+84-4-3881-0620
http://www.thanglong-ip.com/
1
自民党県政調査(ベトナム・ハノイ)参加者名簿
Title
Name
神奈川県議会議員
Member of Kanagawa Prefectural Assembly
<Delegation Leader>
嶋 村 ただし
(嶋村
公)
Mr. Tadashi Shimamura
調査団長
②
神奈川県議会議員
Member of Kanagawa Prefectural Assembly
森
正 明
Mr. Masaaki Mori
③
神奈川県議会議員
Member of Kanagawa Prefectural Assembly
国 松
誠
Mr. Makoto Kunimatsu
④
神奈川県議会議員
Member of Kanagawa Prefectural Assembly
内 田 みほこ
Ms. Mihoko Uchida
①
2
訪問先その1
日時
場所
所在地
応対者
調査項目
平成 26 年 11 月 23 日(日)
ロッテセンター・ハノイ
No. 54, Lieu Giai St. Cong Vi Ward. Ba Dinh, Hanoi
スターツ・インターナショナル・ベトナム:泉氏ほか
1 ロッテセンター・ハノイの概要
2 ハノイ周辺における外資系企業の進出状況
1 ロッテセンター・ハノイの概要
(1) 建物の規模・概要
分類
内容
敷地面積
14,094 ㎡
規模
地上 65 階、地下5階
延面積
247,077.5 ㎡
ロッテセンター・ハノイは、プレミアムデパート、スーパーマーケット、ホ
テル、サービスアパート、最先端ビジネスオフィス等を備えた複合施設であり、
現在ハノイ市内では、「京南ハノイランドマークタワー」に次いで2番目に高
いビルとなっている。
建設に係る投資総額は、約 420 億円となっており、ベトナムにおけるロッテ
グループの象徴的な存在となっている。
(2) 各フロアの内容
1F~6F
商業施設(プレミアムデパート、スーパーマーケット)
7F
フィットネスセンター
(レジデンス棟、ホ ビジネスオフィス
テル棟共通)
8F~31F
(レジデンス棟、ホ 緊急避難スペース
テル棟共通)
32F
(レジデンス棟)
サービスアパート
33F~64F
(ホテル棟)
ホテル
33F~62F
3
8Fから64Fまでは、レ
ジデンス棟とホテル棟のツ
インタワーとなっている。
(ホテル棟)
レストラン・バー
63F~64F
(レジデンス棟、ホ 展望台
テル棟共通)
65F
2 各フロアの状況
<ビジネスオフィス>
4
上場企業クラスの支店の入居を想定としていると考えられるモデル・オフィス。
日本のオフィスと比較した場合、部屋のつくりに余裕がある。
<フィットネスクラブ>
入居企業職員はもとよりホテル利用者も利用可能なフィットネスクラブ。
最新のトレーニング機材が整っている。
<サービスアパート>
進出企業の支店長クラスの利用を想定していると考えられるデラックスなサービ
スアパート。ホテル並みの調度品を備えている。
5
<商業施設(プレミアムデパート)>
ハノイでは富裕層をターゲットにしていると考えられるプレミアムデパート。ビル
のオーナーの関係から韓国系企業が多い。
65 階の展望台からのハノイ市内
市内には湖(日本的な感覚では池)が点在しており、護岸整備がなされ、市民憩い
の場となっている。
3 総括的説明及び質疑
ロッテセンター・ハノイは、地震が少ないベトナムでは非常に珍しい本格的
な免震構造を持った施設であり、32 階を境として二層式の免震構造を持ってい
る。
ベトナム政府も大変注目している施設であり、9月に開設式を実施した際に
6
は、政府要人も出席している。
スターツ・インターナショナル・ベトナムは、ロッテセンター・ハノイに入
居を希望する企業との条件折衝等をロッテグループから委託されており、日系
企業を中心に業務を行っている。
ロッテセンターのオフィスは、設計上、鉄骨間のスラブ高を4mと設定して
いるため、執務スペースの広さとともに、天井高についても、かなり余裕のあ
る設計となっていることが特徴である。
当建物に入居している主な日系企業(団体)としては、JAICAが既に入
居している。そのほか、今年の年末から旧正月にかけての間に三井住友銀行が
12 階に入居する予定である。
ロッテセンター・ハノイは、2009 年に建設プロジェクトがスタートしたが、
完成に至るまでに足掛け5年がかかっている。長期化した主な原因としては、
建設に関する許可を取得するための行政機関との折衝の煩雑さがあった。この
問題は、建設許可にかかわらずベトナムにおける許認可制度全体の課題として
言えることである。
日系企業がベトナム進出に二の足を踏む主たる理由もここにある。許認可制
度に係る法整備が不完全なため、手続きに時間がかかる上、昨日までなかった
規制が突然できることも多く、何十億円の資金を投下する対象としては、リス
クが余りにも大きいということである。
同じベトナムでもホーチミン市の方がハノイより法的に安定しているため、
日系企業の多くは、まずホーチミンに拠点を構えるケースが多い。
また、ホーチミンの方が外資に対する抵抗感がないため、規制自体もハノイ
ほど厳しくない。街の発展もホーチミンの方がハノイより 10 年進んでいると
言われている。
一方でハノイは、首都として政府の保護を強く受けており、日系大手企業の
進出先として、国策によりホーチミンではなく、ハノイへの進出を強力に推進
してきたという経緯がある。
私見として、基幹産業については、ハノイへの誘致を推進し、サービス産業
的なものはホーチミンへ誘致するという方針があるのではないかと思われるが、
ベトナム政府は、公式には否定している。
良し悪しはともかく、ハノイはベトナムらしさを強く感じさせる所である。
<質疑応答>
Q: ロッテセンター・ハノイの立地場所は、ハノイ市の中心となるのか。
A: 近隣に政府の主要機関が立地している商業地であり、日本で言えば新宿
に相当する商業地域である。日本食のレストランやカラオケも多く立地し
ており、週末には多くの日本人が集まる地域である。
これまでハノイの富裕層は、郊外のショッピングセンターで買物をして
いたが、ロッテセンター・ハノイの完成により、人の流れも変化が生じて
いる。当センターの完成がベトナム人にも良い影響を与えることを期待し
たい。
Q: ハノイのインフラの状況として、例えば水事情はどうか。
7
A: 飲料に適した水道水ということについて言えば、あまり良好とは言えな
い。インフラ全体がまだ不完全な状態である。
政府としては、世界最高水準の浄水技術力を持つ日本の協力を期待して
いるところである。
Q: ハノイとホーチミンの違いについて説明があったが、その原因は何と考
えられるか。
A: 過去における共産系の北ベトナムと資本主義系の南ベトナムの違いが現
在でも色濃く残っているためではないかと思う。同じベトナム人でもハノ
イの人とホーチミンの人ではお互いに反発する傾向がある。
<まとめ>
躍進著しいベトナムの経済発展を見込んで、韓国資本が最近建設した最先端
のテナントビルを視察した。ベトナムの一般的な所得より少し上の層の利用を
見込んだ高級感のあるショッピングセンターやデパート、ベトナムに進出して
くる外国企業の利用を見込んだオフィス等が入居しているビルだが、こういっ
たビルが続々とハノイ市内に建設されていることを現地で確認し、現在のベト
ナムの経済発展ぶりを肌で感じることができた。
しかしながら、こういった施設が正常に稼動するためには、電力、ガス、水
道の安定供給が不可欠であり、インフラの整備・充実が必要である。その点に
ついては、まだ整備途上にあるようだ。
外国企業の進出に当たっての法制度の不備などのソフト面での課題も多いよ
うだが、ベトナム人が現在英語を熱心に学んでいることからも分かるように、
時流を読むことができる極めて柔軟性に富んだ民族であり、経験を積みながら
よりよい方向に向かっていくと思われる。
8
訪問先その2
日時
場所
所在地
応対者
調査項目
平成 26 年 11 月 24 日(月)
ジェトロ・ハノイ事務所
2nd Floor, 63 Ly Thai To, Hanoi
ジェトロ・ハノイ事務所・川田所長ほか1名
1 ベトナムの投資環境
2 日系企業の進出状況 等
1 日系企業の対ベトナム投資状況
(1) ジェトロホームページにおける国別アクセスランキング
2010 年度
2011 年度
2012 年度
2013 年度
アクセス数
中国
中国
中国
中国
428,581
ベトナム
タイ
タイ
タイ
350,172
インド
ベトナム
ベトナム
ベトナム
330,715
タイ
インド
インドネシア インドネシア
274,877
インドネシア インドネシア インド
インド
250,531
ベトナムは日本の企業、自治体等を問わず非常に関心の高い地域となってお
り、ジェトロにおけるアクセス数では、常にトップ3にランキングしている。
(2) ASEAN日本人商工会議所連合会会員企業数
国
12 年 6 月
13 年 6 月
14 年 1 月
タイ
1,379
1,479
1,534
ベトナム
1,035
1,213
1,294
シンガポール
675
772
802
フィリピン
556
567
581
マレーシア
556
568
577
9
14 年 8 月
1,572
1,360
799
581
585
ベトナムにおける邦人商工会議所会員企業数は、ここ数年で急速に伸びて
おり、日本企業の関心の高さを示している。
(3) 日本からの対越直接投資の最近の傾向
① 近年は円安が定着しており、日系大手企業の進出も一巡していること
から大型投資案件は減少しており、現在は 500 万ドル未満の中小規模の
投資案件が主流となっている。
② ちなみに 2013 年の日本からのベトナムに対する新規投資は 352 件。
うち、製造業が 161 件で全体の半数弱となっている。
それ以外は、コンサルタント、小売流通、ITの合計で 157 件となっ
ている。
(4) 日本からベトナムへの直接投資金額の推移
年
2008
2009
2010
2011
2012
金額
8,036
373
2,209
2,439
5,593
100 万ドル
2013
5,875
2014
1,660
投資件数は、上昇傾向にあるが、大型の投資が減少しているため、金額的
には減少傾向にある。2008 年の投資金額が突出して大きい理由は、この年、
出光興産による過去最大規模の石油精製プラントに対する投資が実施された
ことによる。
現在では、中小企業による小口の投資が主流となっている。
(5) 日系企業のベトナムでの進出先
日系企業のベトナムでの進出先としては、ベトナム国内のインフラの整備
地域が限定的であることから、現在はハノイ、ホーチミンをはじめとする主
要8省・直轄市に集中しており、全体の8割を占めている。
しかし、地方都市でもインフラの整備を精力的に進めており、日系企業の
進出先も広がりつつある。特徴としては、既にベトナム進出を果たし、国の
状況に精通している日系企業が、第二工場等を建設する動きが目立っている。
例えば、ハノイから車で2時間の距離にあるタイビン省に進出していた日
本企業が、さらに5時間ほど奥地にあるゲアン省に進出した例などがある。
高速道路の整備も進んでいることから、今後もこういった動きは活発化し
てくると考えられる。
(6) 日系企業誘致に積極的な主な地方省・市
①
ハイフォン市:本年 12 月にハノイとの高速道路が開通予定であり、
ハノイからの移動時間が約1時間短縮され、1時間余りとなる。ベトナ
ムの主要貿易港であるハイフォン港を抱えていることから、投資対象地
域として有力である。
② クアンニン省:世界遺産に登録されているハロン湾を有する観光地だ
が、観光産業以外にも投資促進に向けて積極的な動きを見せている。
③ ハナム省:省政府内に専用のジャパンデスクを設置して日系企業の誘
10
致に取り組んでいる。
このほか、中部のダナン市でも日系企業誘致に向けた取組みが盛んである。
(7) 近年の日本からの投資の傾向
製造業の進出については、一服感があるが、ベトナム人の生活水準の向上
に伴い、スーパー、レストラン、病院等、サービス産業の進出も活発化して
いる。
投資上の規制はまだ多いが、日系企業の進出に伴って在ベトナム日本人の
数も増加していることから、今後ともサービス産業の進出は活発化してくる
と考えられる。
(8) 進出日系企業の今後の事業展開の方向性
ベトナムに進出している日系企業に対するジェトロのアンケートにおいて、
日系企業の7割が、今後ベトナムにおける事業を拡大させたいと回答してい
る。これは、他のアセアン諸国と比較して高率であり、引き続きベトナムは
アセアン進出における重要拠点であるとの企業認識を示している。
事業拡大の主な理由としては、約9割の企業が「今後の売上の増加」を指
摘しており、非製造業においては、過半が「成長性、潜在力の高さ」を指摘
している。
2 投資先としてのベトナムのメリットについて
電気料金、水道料金が他のアセアン主要都市と比較しても安価であり、最
低賃金も、現時点で月額 150 ドル程度であり、今後の最低賃金法の改定等を
想定しても、依然進出企業のメリットは大きいといえる。
また、人口構成も若い層ほど人口が多い釣鐘状の形状となっており、当分
は若年労働力も豊富と考えられる。
さらに、生活水準の向上に伴い、消費意欲も徐々に高まっている。
3 投資先としての課題
ベトナムに対する投資を促進していく上でのデメリットとしては、
① 法制度の未整備・不透明な運用
② 人件費の高騰
③ 行政手続きの煩雑さ(許認可など)
④ 税制・税務手続きの煩雑さ
4点が指摘されている。特に「法制度の未整備・不透明な運用」について
は、多くの企業が指摘しているところである。
<質疑応答>
Q: 投資先としてのベトナムの概要について説明を受けたが、観光産業の育
成に向けた取組みはあるのか。
A: 観光産業自体はベトナム政府としても重視していると思われる。生活水
11
準の向上に伴い家族単位での旅行も活発化してきている。
国内には美しいビーチ等があるが、国内資本では、なかなかそこまで開
発資金が回らないのが現状。外資が韓国系を中心に一部進出してきており、
ホテルの整備も進んできている。
Q: 海外からの観光客を本格的に誘致する取組みはこれからか。
A: 日本人の観光客は増えているが、一番多いのは陸つづきの中国人である。
現在は反中の世論もあり、中国以外の国からの観光誘致に力を入れ始めた
ところである。
Q: 神奈川県企業の進出状況はどうか。
A: それほど多くはない。
Q: 投資上のリスクについての説明を受けたが、ベトナムに限らず東南アジ
ア一般について言えることではないか。
A: 確かにシンガポールを除けばどこでも同様の傾向はある。
Q: ハノイとホーチミンではどちらが日本企業は進出しやすいといえるか。
A: 平均賃金を比較した場合、ホーチミンの方が高く、外国人が生活しやす
い環境が整っている。ハノイは、良し悪しはともかく、中国の影響が強い。
ベトナム人同士でも、お互いにライバル意識は強いようである。
Q: 韓国企業の進出状況はハノイとホーチミンではどうか。
A: ホーチミンの方が多いと聞いているが、近年韓国系の大企業がハノイに
進出しており、現在はかなり拮抗していると思われる。
歴史的な経緯も有り、もともと資本主義圏であったホーチミンでは多様
な企業進出が見られるが、ハノイは国策による大企業誘致とそのサプライ
ヤーの付帯進出という傾向が強いと考えられる。
Q: 電車網の整備の計画はあるのか。
A: 地下鉄の整備はホーチミンが先行しているが、モノレールの整備等、ハ
ノイでも交通渋滞緩和に向けた取組みは進んでいると考えられる。
12
<まとめ>
ベトナムにとって日本が、経済をはじめとするあらゆる面で極めて大きな存
在であることが実感できた。
日本からの投資が多いにも関わらず、本県企業の進出がいま一つなのは少し
残念だが、まだ多くの潜在力を秘めた国であり、県の施策としてもベトナムへ
の進出を強力に推進していることから、今後の本県企業の展開に期待したい。
13
訪問先その3
日時
場所
所在地
応対者
調査項目
平成 26 年 11 月 24 日(月)
ベトナム計画投資省
6B Hoang Dieu Street, Ba Dinh District, Hanoi
グェン・グェン・ズン投資促進部副部長ほか4名
1 ベトナムの投資政策・投資環境
2 日系企業の進出状況
3 日系企業のベトナム進出に対するサポート体制
等
ベトナムの投資環境等について
ベトナムには、現時点で既に 57 の日本企業が進出している。
進出企業は多岐に及んでおり、近年では、トヨタ、キャノン、ホンダ、三
菱重工といった製造業はもとより、工業化・商業化によるベトナム国民の生
活水準の向上に伴って、金融業(MUFG、SMBC)サービス業(イオン
グループ)等の進出もみられる。
まもなくベトナムの南北を縦貫する自動車専用道路が完成するほか、貿易
に適した大規模な港湾施設の整備も進んでおり、インフラの整備に伴い、更
なる日系企業の進出が進むものと期待している。
近年のベトナムの経済成長率及び外国からの直接投資の状況は次のとおり
である。
ベトナムのGDP成長率及び外国直接投資の状況
指標
2013
2014 目標
GDP(%)
5.42%
5.8%
輸出成長率(%)
15.4%
10%
消費者物価指数
6.6%
7%
14
2014 年半年分実績
5.18%
14.9%
4.77%
直接投資額(登録
額-百万ドル)
直接投資額(実行
額-百万ドル)
22.35
15-16
6.85
11.5
12
5.75
経済成長率に関しては、一時期の8%を越える成長は落ち着いたものの、
2009 年以降も6~5%の安定的な成長を維持している。
また、実行額ベースで見た直接投資額についても、2008 年以降、1千万ドル
を超える水準で安定的に推移している。
このように一時期のような急激な経済成長や、大型投資は沈静化しているも
のの、依然として安定的な経済成長を維持している。
また、ベトナムが日系企業の投資に適していると考えられる根拠として、次
の点が挙げられる。
① 政治的安定性
ベトナムは社会主義国ではあるが、極めて柔軟な政治体制となっており、
日本からの投資を阻害する要因は基本的にはない。また、発展途上国にあり
がちなクーデター等の政治的な不安定要素がないため、安定した投資環境を
提供できる。この点は他の東南アジア諸国と比較してもベトナムが極めて優
位な点である。
② 豊富な労働人口
ベトナムの人口構成は、60 歳までの人口構成が相対的に厚い釣鐘状の構造
となっているため、豊富な労働力を安定的に供給できる。
さらに、20~30 代の若年労働力人口を、男女合計で 800 万人以上有してお
り、比較的高度な技術的作業にも対応可能なことから、大きな魅力となって
いる。
③ アジアの中心に位置
アジア全体を俯瞰した場合、ベトナムはほぼ東南アジアの中心に位置して
おり、アジア全体のビジネス展開を図る上で、戦略的に極めて重要な位置に
ある。
さらに近年、ベトナムの港湾施設等は、急速に整備が進んでいることから、
ベトナムに物流拠点を置く戦略上のメリットが増加している。
④ 文化としての類似性
ベトナムは日本と同様の仏教国であり、勤勉な国民性が日本と類似してい
るといわれているほか、手先が器用で、高度な技術的作業にも対応できる。
勉学意欲も旺盛で、近年多数の留学生が日本で学んでおり、日本語を理解
する層も増加している。また、かつては敵国語であった英語も、現在では盛
んに学習されているなど、日本人に似た現実的な面もある。
さらに、第二次世界大戦による反日感情も余りなく、親日家が多いことで
も知られており、ベトナムに進出した日系企業も極めて好意的に受け止めら
15
れている。
⑤ 戦略的なパートナー
特に北ベトナムは、歴史的に中国の影響を強く受けているが、近年では領
土・領海をめぐる対立から中国との関係が悪化している。
経済的にも中国系資本の進出が活発であることから、中国の経済圏に飲み
込まれてしまうという危機感を持っており、中国に対する防波堤、外国投資
のバランスの維持という観点からも、日本との関係強化及び日本企業の進出
を強く期待している。
<質疑応答>
Q: 近年のベトナムの経済状況について説明してほしい
A: ここ 20 年間順調に発展している。2014 年のGDPは 5.8%であり、
2015 年は 5.56%の見込みである。
Q: 日本企業の進出状況はどうか。
A: 現在ベトナムには 17,219 社の外国企業が進出しているが、日本は進出
企業数、投資額ともにトップクラスである。
日本からの投資プロジェクトの累計は 2,434 プロジェクトであり、2位
の韓国(2,030 プロジェクト)、3位のシンガポールを押さえて第1位と
なっている。
Q: 外国からベトナムへの投資が多い業種は何か。
A: 第1位が製造業であり、10,276 プロジェクト、金額は 305 億ドル、第2
位が不動産業で、34 プロジェクト、金額は 15 億ドル、第3位が建設業で
61 プロジェクト、金額は 11 億ドルとなっている。
Q: 不動産投資の場合、日本人が所有権を取得できるのか。
A: 所有権の取得はできない。50 年間の借地権を取得することになる。これ
は最長 70 年まで延長することが可能である。
Q: ベトナム進出の鍵となるのは人件費だが、労働者の最低賃金はどの機関
が決定しているのか。
A: 計画投資省ではなく、賃金改善のための委員会の勧告に基づき労働省が
決定している。労働者保護という面からの判断なので、必ずしも計画投資
省の思惑とは一致しない面もある。
Q: 計画投資省内に埼玉県はデスクを設置しているようだが、埼玉県からの
投資が多いということか。
A: 埼玉県は、県内企業のベトナムへの企業進出をサポートする独自のデス
クを計画投資省内に設置しており、委託費として 200 万円程支出している。
愛知県、近畿経済圏も同様のデスクを設けている。もちろん、神奈川県の
ようなサポートデスクまで設置していない地域についても、ベトナム進出
について出来る限りのサポートは実施している。
Q: これまでベトナム進出を積極的に進めてきたのは、どちらかというと愛
知より西の関西系の企業が多かったように見受けられるが、今後のベトナ
ムへの投資を促進する鍵は、関東の企業の進出が本格化するかによると考
えられる。
16
わが神奈川県は、日産自動車、富士フィルム、日揮をかかえているが、
特に日産のベトナム進出が本格化すれば、県内の中小企業も含めたベトナ
ム進出が本格化すると考えている。
A: ベトナムの経済訪問団が 11 月 30 日から 12 月 17 日までの日程で日本を
訪問し、農業施設や人材トレーニングセンターを見学するが、その期間中、
神奈川県にも3日間訪問する予定である。ベトナムの投資の優位性につい
て機会があればアピールしていきたい。
Q: 商工業だけでなく、今後は文化や観光での交流も重要だと考える。フエ
やダナンは美しい海や海岸があり、観光資源として有望だと思うが。
また、日本では、カジノの設置の可否が課題となっているが、ベトナム
ではどうか。
A: フエやダナンの観光資源としての有効性については、そのとおりだと思
う。いわゆるカジノについては、ベトナム政府の中でもいろいろな意見が
ある。
Q: 本日女性スタッフが多いが、ベトナムでの女性の社会進出は進んでいる
のか。
A: 職種によって進出状況はまちまちだが、政府としても国策として推進し
ており、保育所やベビーシッターの整備も進めている。
Q: タイは既に人件費が高く、企業進出のメリットが薄くなっている。ベト
ナムはまだまだいろいろな面で有望である。本県企業のベトナム進出のサ
ポートを是非よろしくお願いしたい。
A: 神奈川県からの企業進出について期待している。よろしくお願いしたい。
ベトナム計画投資省の前庭にて
<まとめ>
政府関係者の説明を聴取して、本県企業の進出を期待するベトナム政府の熱
意は十分に伝わってきた。予定していた外国投資庁長官との会見はできなかっ
たが、欠席の理由は外国からの投資に関する法整備の打合せが急遽入ったため
17
ということであり、むしろこの国が現在ダイナミックに動いていることを実感
させられることとなった。
近日中に神奈川県を訪問する予定があるということであり、本県企業とも十
分な接触の機会を持たれることを期待したい。
18
訪問先その4
日時
場所
所在地
応対者
調査項目
平成 26 年 11 月 24 日(月)
五光発條株式会社
Lot 14, Noi Bai Industrial Zone, Quang Tien, Soc Son,
HaNoi
舟橋代表取締役社長ほか1名
ベトナムにおける日系企業の操業環境 等
五光発條ベトナム株式会社の概要
会社名称 GOKO SPRING VIETNAM COMPANY LIMITED
所在地
Lot 14, Noi Bai Industrial Zone, Quang Tien, SocSon,HaNoi
設立
平成7年7月 12 日
本稼動日 平成8年5月1日
敷地面積 10,000 ㎡
事務所
500 ㎡
工場
1,100 ㎡
資本金
1,350,000 USD
年間加工能力 15 億個
立地環境 ハノイ・ノイバイ空港より 10 分(3.5km)
ハノイ市外から 40 分(35km)
事業内容 OA機器、VTR、カメラ、自動車部品等に使用する精密小物ばね
製造及び販売
製品の種類 押しばね、引きばね、ねじりばね、特殊ばね
19
従業員数
130 名(3交代勤務・24 時間体制)
日本人従業員は社長以下3名
主な取引先 キャノン・ベトナム、トンボ・ベトナム、オリンパス・ベトナム
等ベトナムに進出した日系企業の現地法人等
1991 年にタイのナワナコン工業団地への進出を皮切りにタイ国に3工場を設
立し、2005 年7月にはベトナムのハノイ・ノイバイ工業団地内にハノイ工場を
設立、タイ、ベトナム工場とも製造したばねの9割以上を現地の日系企業に販
売している。
特に 2011 年3月にタイのサムットプラカン県で稼動を開始したタイ第3工
場は 24 時間無人でばねを生産することが可能な自動巻き工場となっており、
人件費を最小限に抑えることができるため、近年のタイ国内の人件費の高騰に
もかかわらず理想的な工場経営を実現している。
ベトナム工場は2~3人の日本人で 200 人の現地従業員を雇用しているが、
近年では従業員の離職率も低く、ベテランが増加したため、現地でのOJTで
も安定した品質の維持が可能となっている。
また、ベトナムでは、進出からわずか4年後の 2009 年度から黒字転換を達
成しており、経営上の大きな柱になっている。
工場での操業状況
<質疑応答>
Q: 日本企業としては、ベトナム進出は早いほうであると承知しているが、
進出を決定した経緯は。
A: 当社は、まずタイに合弁で進出していた。これが一定の成功を収めたた
め、次の進出先を検討した結果、中国進出は不適と判断し、早期進出によ
る先取メリットも期待できることから、日本企業がまだ少なかったベトナ
ム進出を決定した。
Q: 24 時間交代勤務を実施しているようだが、導入に当たって問題はなかっ
20
たか。
A: 製造した製品の確認作業が中心作業であり、特に問題はない。
Q: タイとベトナムでは、人の気質等に違いはあるのか。
A: 技術的な面では大差はない。気質としては、ハノイ人はどちらかといえ
ば内向的であり、ホーチミン人は明るいが、多少大雑把な面がある。
Q: 近年ベトナム国内の最低賃金が上昇しているようだが、影響はあるか。
A: ハノイ地区においては、毎年上昇しており、本年度も最低賃金が 270 万
ドンから 310 万ドンに 15%上昇した。この影響は少なからずある。
Q: 法人税はどうか。
A: ベトナムに進出した外資系企業に対しては原則として2減4減という制
度が適用されており、法人税は、赤字のうちは無税で、黒字に転換してか
らも2年間は無税であり、次の4年間は半減させるという制度がある。た
だし、赤字による猶予期間は4年間であり、赤字ならばいつまでも法人税
を払わなくてもよいというわけではない。
Q: 従業員の確保については、特に問題はないか。
A: 現在はどちらかというと不景気と言われており、人の移動は、以前ほど
活発ではない。募集方法は、技術作業員は工業団地内の掲示板、スタッフ
職はインターネットで募集している。
Q: 今後貴社はインドネシアへの進出も予定しているようだが、経緯は。
A: タイ工場で取引がある企業がインドネシアに進出しており、インドネシ
アの状況は以前から分かっていた。近年タイ工場が水害にあったこともあ
り、今後のことも考えてインドネシア進出を決定した。ただし、インドネ
シアでは近年地価の上昇が著しく、企業進出の環境は以前と比較して厳し
くなっている。場所はジャカルタの中心から 40km 西である。
Q: 瀬谷にある会社は、現在は本社機能のみか。
A: デジタルカメラ用のばねの生産を実施している。ただし、国内の経営環
境はあまりよくないので、縮小傾向である。
Q: ベトナム人を日本で雇用するということはないのか。
A: 以前は研修として日本に連れて行った時期もあったが、2008 年頃にハノ
イでストライキが多発した時に思い切った人員整理を実施するとともに、
日本の工場での雇用も中止している。
Q: タイでは賃金の上昇が著しいようだが、ベトナム人は目先の賃金の多寡
で勤め先を変わるということはあるか。
A: 少なからずある。特にワーカーでは著しい。通勤距離の長さを理由に退
職するケースが多いが、それは最初から分かっていることであり、実際に
は他に賃金の良い職場を見つけて離職しているものと考えられる。
Q: タイでは人集め自体も難しいようだが。
A: タイ工場では工場改革が進んでおり、人材も育っているので、少人数で
高い生産性を達成しており、大きな支障とはなっていない。
Q: ベトナム工場では、基本的な人間教育から実践しているようだが。
A: 工場のルールをまず守るように指導している。そのほかバイクに乗る際
にはヘルメットを着用するとか、靴下をきちんと履くとかといった基本的
21
な生活態度について指導をしている。
当社はそれほどでもないが、デンソーの現地法人では、かなり徹底した
社員教育を実践しているようであり、事故の軽減、生産性の向上という意
味からも、当社も参考にしたいと考えている。
<まとめ>
新たな成長の可能性を求めて、まだ不確定要素が多いベトナムに進出した五
光発條の経営姿勢に対して、まずは敬意を表したい。
単に会社の利益を追求するだけでなく、今後のベトナムの発展を見据えた、
地元密着型の経営を実践していることが、この地で受け入れられるファクター
であると考えられる。
日本企業の素晴らしさは、目先の利益にとらわれない、こういったしっかり
とした企業理念にあると思う。
ベトナム進出以来の努力が実り、人材的にも安定してきており、企業として
の本領を発揮するのは、いよいよこれからというところかと思うが、より地元
密着型の経営努力を続けていただきたいと思う。
22
訪問先その5
日時
場所
所在地
応対者
調査項目
平成 26 年 11 月 25 日(火)
タンロン工業団地
(1)タンロン工業団地運営会社
(2)三菱重工エアロスペースベトナム
(3)吉中精工ベトナム
Thang Long Industrial park, Dong Anh District, Hanoi
大塚代表ほか
ベトナムにおける日系企業の操業環境 等
1 タンロン工業団地運営会社
タンロン工業団地運営会社会議室にて
(1)タンロン工業団地の概要
場所
ハノイ(ハノイ市街地より約 30 分)
設立年月日
1997 年2月 22 日
総開発面積
274ha
総投資額
約 90,000,000$
資本金
24,000,000$
ドンアインメカニカルカンパニーが 42%、住友商事 58%
社長
大塚雅康
入居企業
98 社(80 工場、18 事務所)80 工場中日系企業 78 社
※主な入居企業は、下記参照
23
概要
総投資額 2,400,000,000$
従業員
約6万人(日本人 430 人)
2013 年間輸出額 2,900,000,000$(ベトナム全体の 2.2%)
2000 年6月、第1期 121ha 完工・完売
2005 年1月、第2期 74ha 完工・完売
2007 年9月、第3期 79ha 完工・完売
(2)入居企業リスト
①工 場:パーカー加工、三菱鉛筆、キャノン、住友電工、デンソー、TO
A、TOTO、桜井製作所、ドラゴンロジスティクス、松尾製作
所、ハノイスチールセンター、東邦工業、広島アルミニウム、住
電商事、VOLEX、サントーマス、フジキン、KYB、ヤバシ
インターナショナル、オハラ樹脂工業、シード、パナソニック、
村元工作所、安福ゴム工業、菱南電装、千代田インテグレ、東京
マイクロ、渦潮電機、サトー、ダイワプラスティック、HOYA、
サンコール、フジプラスティック、カネパッケージ、いけうち、
ヤマハ発動機
等 80 工場
②事務所:ニューシステムベトナム、きんでん、日本製鋼所、アベイズム、
日本電装、ナカノフドー建設、黒田電気、日本精工、ファナック、
ネットマークス、
等 18 事務所
(3)現在分譲中の第二タンロン工業団地の概要
場所
フンイエン(ハノイ市街地より約 50 分)
設立年月日
2006 年 11 月 17 日
総開発面積
346ha
総投資額
約 102,000,000$
資本金
16,200,000$
住友商事が 74%、住商ベトナム7%
社長
大塚雅康
入居企業
43 社(41 工場、2事務所)全て日系企業
概要
総投資額 1,330,000,000$
従業員
約1万人(日本人 180 人)
2013 年間輸出額 2,900,000,000$(ベトナム全体の 2.2%)
現在第二期販売中
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(4)概要説明
ベトナムは社会主義国ではあるが、それに固執しない全方位外交の立場を取
っている。共産党による一党独裁ではあるが、集団指導体制をとっており、政
治的にもきわめて安定している。
民族的にはキン族が全人口の 90%を占めている。宗教は大乗仏教が主流で、
家族観などは日本に近いところがあり、極めて親日的な民族である。
日本からODAとして年間約 2,000 億円の支援を受けており、ベトナムにと
って日本は最大の支援国である。相互の要人の往来も盛んであり、日越経済連
携協定(EPA)を締結しており、戦略的なパートナーシップの関係を築いて
いる。
人口は約 9,000 万人で、10 代の人口が多く、平均年齢も 30 歳と若い。高い
識字率(90%)をもち、勤勉で、目が良く手先が器用であり、良質な労働力が
豊富に存在する。
タンロン工業団地は、ハノイ中心部から約 30 分と交通至便な場所に位置し
ている。
工業団地内は、インフラ面においてもかなり安定しており、昨年度で言えば、
停電の発生は小規模なものが3回発生した程度で、一般的なベトナムのインフ
ラ事情を考えればかなり恵まれている。
浄水場、下水処理場も当工業団地内に完備しており、一日当たり 8,000tの
供給能力、3,000tの処理能力がある。排水基準は、日本のそれよりむしろ厳
しく、毎日水質検査を実施した上で排出している。
安全対策においては、操業中の安全の確保はもちろん、6万人の従業員が工
業団地内を往来することから、交通安全意識の向上に向けた取組みも積極的に
行っており、現在、秋の交通安全週間を実施中である。
また、税関が常駐する物流センターも団地内で完備しているので、輸出入の
手続きも非常に円滑である。
福利厚生施設についても、食堂、診療所をはじめとして一通り完備している。
住友商事はベトナム国内に現地法人を設立し、タンロン工業団地と第二タン
ロン工業団地を展開しており、タンロン工業団地は分譲地の完売を達成してい
25
る。
住友商事は、東南アジアにおいて、ベトナム以外にも、フィリピン、ミャン
マー、インドネシア、タイ、カンボジアに工業団地を展開しているが、将来の
発展が見込めるベトナムは特に重視しており、当工業団地に次いで第二タンロ
ン工業団地を造成し、現在第二期造成地を分譲している。
<質疑応答>
Q: 当自民党県議団は、与党として知事の政策を支援する立場から、知事が
強力に推進している県内中小企業の海外展開への支援を検証する目的で今
回ベトナムを訪問している。
当工業団地については、知事も訪問している旨承知しているが。
A: 訪問していただいている。工業団地内の各企業から熱心に状況を聴取さ
れていた。
Q: 今回、ベトナム国内に新たな中小企業の進出先を神奈川県は検討してい
るが、当工業団地内に新規で受け入れるキャパシティはあるのか。
A: 当工業団地は既に完売しており、新規で受け入れるキャパシティはない。
現在、第二タンロン工業団地が分譲中であり、当工業団地と同程度の機
能を備えているので、進出先としてご検討していただければ幸いである。
(要望)
タンロン工業団地が充実した設備を持つすばらしい工業団地であることは説
明を聴取して理解した。本県の企業が第二タンロン工業団地に進出することが
あればよろしくお願いしたい。
※後日ベトナム国内への本県企業の新規進出先として、第二タンロン工業団地
が決定。
2 三菱重工エアロスペースベトナム(入居企業)
(1)会社概要
会社名
MHI
設立場所
ハノイ市/タンロン工業団地(敷地:19,000 ㎡)
設立日
2007 年 12 月 28 日
資本金
7,000,000$/三菱重工 100%出資
事業内容
民間航空機用コンポーネントの構造組立
主要製品
① ボーイング 737 用フラップ組立
② ボーイング 777 用ドア組立
人数規模
約 300 名
Aerospace Vietnam Co.,Ltd.
26
投資認可証取得
(2)工場設備概要
・敷地:約 19,000 ㎡
・工場建屋
第1工場:737組立工場(4,500 ㎡・2008 年完成)
第2工場:777組立工場(6,500 ㎡・2014 年完成)
・工場全体の一体空調管理を実施
(3)これまでの歩み
三菱重工は、当初ホーチミンに進出していたが、2000 年代入りハノイへ
の進出が本格化した。
本工場での製品は 100%輸出している。また、部品についても 100%輸
入部品を使用している。
実績として、ボーイング737のフラップについては、過去6年間の稼
動で約 1,000 機分を生産した。
737の生産が一定の成果を挙げたことから、ボーイング777のドア
部分の生産ラインについても、日本からベトナムに移管すべく現在準備中
であり、作業は順調に進んでいる。
生産ラインの技術錬度も向上していることから、今後とも、現在日本国
内のラインで製造している製品について、ベトナムへと移管可能なものに
ついては、順次移管を検討していきたいと考えている。
(4)社員体制
・社長:
1名
・総務部 15名(公用語は英語、大卒主体)
・工作部220名(公用語は日本語、短大卒主体)
・品証部 20名(公用語は日本語、短大卒主体)
・研修生
6名(日本人6名 内数)
三菱重工エアロスペースベトナムにて
<質疑応答>
Q: ここの日本人スタッフはハノイ市内から通勤しているのか。
27
A: そうである。市内の外国人向けアパートに居住している。
Q: 従業員の定着率はどうか。
A: 過去6年間で7割の従業員が残っている。研修の際に特性を見極め、適
所に配置することを心がけている。
事務、組立て、仕上げ、塗装といった区分で配置している。ただし塗装
は男性の希望者のみ配置している。
Q: 社員教育で重視している点は何か。
A: 多くの人の手により、一つの製品を作り上げることから、チームワーク
を重視している。
3 吉中精工ベトナム(入居企業)
(1)会社概要
会社名
社長
会社設立
営業項目
資本金
資本構成
取引会社
建築面積
取引銀行
従業員数
Y.H SEIKO VIETNAM JSC
吉中 一夫
2011 年8月
金型の設計、製作、成形
890,000$
㈲吉中精工
出資比率:70.34%
㈱日嶋精型
出資比率:19.77%
㈱兼松KGK 出資比率: 9.87%
SEWS-COMPONENTS VIETNAM CO.LTD
HAMADEN VIETNAM CO.LTD
OHARA PLASTICS VIETNAM CO.LTD
VIETNAM TOYO DENSO CO.LTD
DAIWA PLASTICS THANG LONG CO.LTD
その他
500 ㎡
TOKYO-MITSUBISHI UFJ
VIETCOM BANK
28 名(2014 年1月現在)
(2)これまでの歩み
2011 年8月 ハノイ・タンロン工業団地に進出
2012 年3月 総投資金額を 890,000$から 3,560,000$に変更
ライセンス変更を実施
2012 年 12 月 事業内容の変更を実施
・精密金型設計、製作、メンテナンス
・金型部品の設計、製作、メンテナンス、金型関連業務
・成型業務
2013 年6月 「日越金型クラブ」入会
28
(3)当社がベトナム進出を決定した経緯等
リーマンショック以降、先進国経済が停滞する中で、アセアン各国は着実
な経済発展を続けており、多くの日本企業がアセアン進出に進出した。
そのため、現地の日系企業に部品を提供するサプライヤーチェーンの需要
が高まったが、現地の企業の多くは金型成型の技術力が低く、日系企業の多
くは、部品について日本からの輸入に頼らざるを得ない状況となっていた。
当社は、福井市に本社を置く有限会社吉中精工が母体である。日本国内に
おける部品の生産では、もはや成長には限界を感じており、海外進出を模索
していたが、アセアンに工場を立地すれば域内関税が免除となるほか、海外
進出をきっかけとして、新規取引先の開拓の可能性が出てくるなど多くの利
点が期待できることから、アセアン進出を決断した。
ベトナムのタンロン工業団地に進出を決定した理由としては、この工業団
地では、当方が必要としている 500 ㎡程度のレンタル工場が比較的安価で借
りることができるということで、多くの設備投資の資金が用意できないとい
う当方の事情とも合致したことによる。
進出当初は、日本ではとても採算が取れないような簡単な金型成型からス
タートしたが、現在では徐々に技術水準も向上しており、付加価値の高い製
品も徐々にではあるが生産可能となっている。
進出以来、現地の日本大使館、ジェトロ、日越金型クラブ等から、通関上
の手続き等において積極的な支援をいただき、平成 25 年には黒字化を達成
した。
当社の社員教育は、日本の本社でのOJTにより実施している。日本での
研修のほうが効果的であり、研修実績も上がると考えるからである。
<質疑応答>
Q: 日本でのOJTにより研修を実施しているとのことだが、実施して特に
問題はないか。
A: 当方は日本でのOJT研修を踏まえて技能検定を受検させ、その評価を
成果とした上でベトナムに戻したいと考えているが、技能検定の受験レベ
ルに達しない者、技能検定に合格しても、ベトナムに帰ってからすぐに辞
めてしまう者も多く、従業員の定着化については、まだまだ検討の余地が
あると考えている。
29
<まとめ>
三菱商事が開発した大規模な工業団地であり、全体で一つの街といってよい
ほどの大規模なものである。
進出各企業は、ベトナム経済の発展とあいまって、活発な活動を展開してい
る。
ただ単に職場を提供しているというだけでなく、食堂や医療施設といった福
利厚生施設も完備しており、こういった点も地元に広く受け入れられている要
因ではないかと考えられる。
また、進出各企業も、真にベトナム経済の発展を願って、ものづくり、ひと
づくりを進めている点も好感が持てた。しかし、この点については、まだベト
ナム人に伝わりきれていない点もあるようだ。
工業団地の敷地は、元は水田であったということだが、団地内の各企業の配
置もきわめて余裕のあるものとなっており、操業環境は快適である。
タンロン工業団地が好評であったことから、第二タンロン工業団地では、新
規分譲も開始しているようだが、日系企業をはじめとする外国資本の積極的な
参加を期待したい。
30
<県政調査を終えて>
今回の県政調査の目的の一つは、県が、県内中小企業のベトナム進出を後押
しする目的で立ち上げたインダストリアルパーク構想に関する事前調査という
ことがあった。
帰国後、インダストリアルパークの進出先として、第二タンロン工業団地に
決定したと聞いている。
今回の視察については、外務省の協力を受けるにあたって、星野つよし衆議
院議員に大変お世話になったほか、本県の東南アジア事務所の駐在員及び国際
ビジネス課の職員に視察先の設定等において大変なご尽力をいただいた。この
場を借りて御礼申し上げたい。
特に、通常あまり接することのない東南アジア事務所の駐在員の仕事の一端
を今回の県政調査を通じて垣間見ることができ、その必要性についても再認識
した次第である。
また、今回報告書に記載した正式な視察先以外にも、外務省及び経済産業省
職員、東芝プラント、日揮、日立テクノの現地責任者、ロッテセンター関係者
と夕食会を持つことができ、実際に現地に進出している企業関係者からでなけ
れば聞くことのできない、貴重な裏話をうかがうことが出来たことも申し上げ
ておきたい。
県としてインダストリアルパーク構想を推進する以上、ベトナム進出を希望
する企業に対して一定の責任があるわけであるが、ベトナム政府による外資誘
致策の内容、ベトナムの国民性等について、事前に十分な情報を提供する必要
があるのではないかと思われる。
特に、ベトナムは社会主義国であり、外国資本による土地の所有は認められ
ず借地となること。税制度が頻繁に変わること。労働者の定着化を図るには、
相応の努力が要ること。日本人と似ていると言われているベトナム人ではある
が、国民性においては、日本人とは厳然たる相違点があることなどをしっかり
と説明する必要がある。
現地に進出している企業関係者も、ベトナムに進出することは、それなりの
苦労も覚悟すべきとの意見であった。
国の税制や行政に関わる問題については、今回進出先として決定した第二タ
ンロン工業団地などは、設置者である住友商事やジェトロといった日本政府関
係機関のバックアップを受けることが期待でき、多くの問題を解決する糸口も
見つけやすいと考えられるが、国民性に関わる問題は、実際に現地で雇用して
みて初めて分かることも多いと考えられる。
単なるお付き合いの相手ではなく、従業員として雇用する場合、あるいはビ
ジネスパートナーとして成立するかといった領域まで踏み込んだ場合、慎重な
検討を求められる場合も多いとの現地日系企業の意見もあった。
このようにベトナム進出に慎重な意見もあるが、今後多くの可能性を秘めた
国であることは間違いなく、親日的な国でもあるので、ベトナム進出を希望す
る企業に対して、行政として出来る限りの支援をしながら、日越両国にとって
よりよい方策を、今後とも継続して検討していく必要があると思われた。
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