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車酔い発症を抑える車載ディスプレイの開 発 - MIUSE

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車酔い発症を抑える車載ディスプレイの開 発 - MIUSE
Master's Thesis / 修士論文
車酔い発症を抑える車載ディスプレイの開
発
辻, 仁志
三重大学, 2008.
三重大学大学院工学研究科博士前期課程情報工学専攻
MIUSEでの公開にあたり図s2-2∼図s2-5を削除
http://hdl.handle.net/10076/10915
凝 写 再
修 士論 文
車酔 い発症 を抑 える
車載 デ ィスプ レイ の開発
平成 20年 度修 了
三重 大学 大学 院 工学研 究科
博 士前 期課 程
辻
情報 工学 専攻
仁志
三重大学大学院
工学研究科
・
要 旨・
要旨
[
目的】 近年の車載ディスプ レイ装置の普及は,車内に便利 さと快適 さを もた らしているO
しか し,後部座席での映像視聴の機会が増加す ることにより,車酔い発症者の増加が懸念
され る。そのため,車載ディスプ レイ視聴により生 じる車酔いを抑制す る映像表示法の開
発が必要 とされ る。映像視聴による車酔いの発症原因は,車の動 きの情報が視覚に与えら
れないために,視覚情報 と平衡感覚情報 との間に矛盾が生 じることにある と考 えられ る。
そこで本研究では,感覚の矛盾を減少 させ,車酔いを抑制す ることを 目的に,車の動きの
情報を視覚に与 える映像表示法を考案 した。そ して, 1
3種類 の映像表示法について,実車
実験によ り,映画を視聴 した際の車酔い抑制効果 を検証 した。
[
実験】 車の加減速,Yaw 角速度,遠心力に対処 した車酔抑制対策 を考案 し,実車実験で被
験者 に視聴 させた。 これ らの手法を比較するために,対策 を施 さない映像視聴,映像を視
聴せず に乗車,についても同様の実験を行った。実験場所 には,信号がな く交通量の少な
い道路を選び,加減速対策の実験では,直線道路を 2
0分間,カーブ対策,複合対策ではカ
ーブの多い山道 を 21分間,8-1
0人乗 りの車両で走行 した 車載デ ィスプ レイで被験者 に
。
映画を視聴 させ,不快感 を 1分間おきに答えさせた。その際,不快感評価 は整数値で,「
0」
を一切不快でない状態,「
1
0」を吐く限界状態 と考えてこの数値の間ができるだけ等間隔に
なるよ うに答 えさせた。
【
結果】 被験者 ごとに車酔いに対す る感受性が異なることを考慮 して,各実験条件 におい
て車酔い不快感 に感受性の補正を加 えた。補正後,範噂判断の法則 に Thur
s
bneのケース
Ⅲを適用 し,評定尺度か ら距離尺度値に変換 した。対策 を施 さない時の不快感 と比較 して,
普通乗車時の不快感まで減少効果が得 られた時を対策の改善率 1
00% とす ると,加減速対策
では 6
9%,カーブ対策では 33%,複合対策では 74%の改善結果を得た
。
【
考察1 それぞれ考案 した映像表示法により,平衡感覚 と視覚情報の矛盾が減少 され,車酔
いが抑制 され ることを確認 したO これ よりYaw 角速度,前後 ・遠心加速度の情報 を視覚に
与 えることで,感覚情報の矛盾を打ち消 し,車酔いを抑制す ることができた と考 える。本
研究の車酔い対策は視覚刺激によ り知覚 され る 自己運動感覚には個人差があるので,個人
ごとに車酔い対策の映像の動きの大きさを最適化できれば,更なる抑制効果が期待 され る。
Ⅰ
車 人 草 人芋粧
T
∵予研 究 科
目次
は じめに
1.
2
本研 究 の 目的
車酔 い抑制 対策案 の基本 的 な考え方
車酔 い不快感 の解析
1
5
2
5
3
5
第 6章
実車実験
実験結果
右左 折 時 に生 じる車酔 い に対す る対策
対策案
実車実験
実験結果
右左折 ,及 び加 減速 時 に生 じる車酔い に対す る対策
対策案
実 車実験
実験結果
考察
参 考文献
学 会 発 表 リス ト
1 6 8
2 2 2
1 2 3
4 4 4
第 5章
対策案
2 6 7
1 1 1
1 2 3
3 3 3
第 4章
加 減 速 時 に生 じる車酔 い に対す る対策
2
1
第 3章
3 4 8
1 2 3
2 2 2
対策案
3
第 2章
2
1
.
1
1
序論
l
第 1章
一付録 -
3
0
5 3
5 6
5 6
1
. 予備 実験
1
.
1 車 両 を用 い た 予備 実験
1
.
2 回転 装 置 (コ リオ リマ シ ン)を用 いた予備 実験
2. 船酔 い抑制 対 策
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
車 人 草 人 草杭
巨
予研
究 科
ー
第1
章 序論 ・
第 1章
序論
1
.
1 は じめに
一般的に車酔いな どの乗 り物酔い と呼ばれ る動揺病(
mo
t
i
o
ns
i
c
kne
s
s
)とは,船,馬車,
鉄道, 自動車,航 空機 な どの交通機 関が発達す る中において も変わ らず存在 しつづけてお
り,小児か ら大人に至 るまで多 くの人々に耐え難い苦痛 を与 えている。
近年,カーナ ビや車載デ ィスプ レイの普及により,走行 中に車内で TV ゲームや映画鑑賞
をす る機会が増 えてきた。しか し,車内で TV視聴 をす ることで車酔い発症者 の増加 が懸念
され る。走行 中に車内で TV視聴 を した場合,TV視聴 しない時 と比較す ると,車酔い不快
感が 2倍悪化す るとい うことが分かっている【1】。
走行 中のTV視聴が車酔いを発症 させ る原因 として,一般的に 『
感覚矛盾説』が知 られて
。感覚矛盾説によると,前庭器官情報(
半規管,耳石器)
,視覚情報(
視器)
,体性感覚
いる【2】
情報(自己受容器)
か らの情報が矛盾す ることより,動揺病が発症す ると考 えられている。
前庭器官 とは加速度,及び回転角速度 を感知する受容器か ら構成 され,主に人間の平衡
感覚を感知す るための働 きをす る。前庭器官は半規管及び耳石器 内にある卵形嚢,球形嚢
軸の回転角加速度 を感知 し,卵形嚢,
中の有毛細胞 によって構成 され ている。半規管では 3
球形嚢では直線加速度 を感知 している。
走行 中,前庭器官は車の急発進や急停止,カーブを走行す ることにより刺激 を受 ける
。
しか し,視覚器官はデ ィスプ レイを注視することによ り車の動きの情報を感知できない。
そのため,前庭器官 と視覚器官の間で競合が生 じ,車酔いを発症す る と考 えられてい る。
感覚矛盾 によ り生 じる車酔いを抑制す る方法 として,耳の後部 に電気刺激 を加 えること
が考 え られ るが,車内で
で前庭器官を刺激 し,前庭器官情報 を視覚情報 と一致 させ る方法【3】
この対策 を行 うのは困難 である。 また,視覚に車の動 きの情報 を与 えることで視覚情報 を
if
f
i
n&
前庭器官情報 に一致 させ るこ とで車酔い を低減 させ る手法が提案 されてい るo Gr
Ne
wma
n【
4
】
は,車の前方 にカメラを取 り付け,その映像をデ ィスプ レイに表示す る装置 を使
用 し,乗員 に走行 しなが らその映像を視聴 させ,車酔い低減効果の検証を行 ったOしか し,
車酔い低減効果は得 られず,逆 に車酔いを悪化 させた。 これはカメラやデ ィスプ レイが振
動 したため と考察 してい る また車の加減速時に生 じる車酔いの抑制対策 として,走行 中
。
の車載 TV視聴時に,車の ピッチ運動 によりディスプ レイの上下に移動 した分だけ,TV映
像 を反対方 向に移動 させ て表示す ることで,乗員 とデ ィスプ レイ との相対運動 をキャンセ
ルす る手法が報告 されているO静止画を TV映像 として表示 した際には,有意な車酔い抑制
6】
O
効果が見 られた【5]が,動画を表示 させた際には有意な車酔い抑制効果が得 られなかった【
動画像の視聴 を した際には,動画の映像 自体が上下移動 してい るのか,対策 によ り上下 し
ているのかを,乗員が知覚できなかったため, と考察 している。
1
・
第1章 序論・
は,TV 映像の表示部を縮小 し,その周辺に車の運転に応 じた動きをする
また,森本 ら【7】
映像を表示することで,視覚誘導 自己運動感覚を発生 させて感覚情報の矛盾を減少 させ,
車酔いを抑制する対策を考案 している。 これはカープ時の対夷のみであるが,車が右左折
す る際に生 じる,Yaw 角速度に応 じて周辺映像を表示す ることで顕著な車酔い抑制効果を
得ている。
1
.
2 本研究の 目的
本研究では,車酔い発症の原因と考えられる,『
感覚矛盾説』に基づき,車酔い抑制対策
案 を考案 した。この車酔い抑制対策は,走行中,T
V視聴 と同時に,視覚に車の動きの情報
を運動感覚 として与えることで視覚 と平衡感覚の感覚情報の矛盾を失 くし,車酔いを軽減
させ る, とい うことが基本的な考え方である。車の動きの大部分を前後加速度,遠心加速
皮,Yaw 角速度が 占めていることから,この 3つを入力 とした対策案を考案 し,1
)
加減速
時に生 じる車酔い対策,2
)
右左折時に生 じる車酔い対策,3
)
加減速時,及び右左折時に生 じ
る車酔い対策,に分けて実車実験を行い,動揺病低減効果を検証 した.
2
三重大学大学院
工学研究科
一
第2
章 車酔い対策案の基本的な考 え方-
第 2章
車 酔 い抑制対策案 の基本的な考 え方
走行 中にT
V視聴す ることによ り車酔い (動揺病) を発症 しやす くなる.そ こで,車酔 い
を抑制す るための映像 呈示法を考案 した。
また,考案 した車酔い抑制対策の効果 を検証す るために行 った実車実験の概要,お よび
デー タの解析方法を第 2草で説明す る。
2.
1 対策案
車酔い対策表示部(
背景)
走行 中、
T
V視聴 による車酔いの発
症 メカニズムは感 覚矛 盾説 に よ り説
明できる。人間の平衡器官は、
車の加
速や減速、カープな どの刺激を受ける。
それ に対 して、
視 覚器 官は、デ ィスプ
レイを注視 しているため、
画面上での
動 きによる刺激 を受ける。これ よ り,
平衡感覚情報 と視覚情 報 の間に競合
が生 じ、
動揺病が発症す ると考 えられ
る。
車酔い抑制対策 として,T
V視聴 し
なが ら視覚に運動感覚 を与えるよ うな
図2
.
1 対策映像の詳細図
映像 をT
V映像 に付加す ることで視覚 と
平衡感覚の矛盾 を失 くし,車酔いを抑制す る, とい うよ うな映像呈示法を考奏 した。
車酔い対策を施 した映像 の概略図を図21に示す。これは,デ ィスプ レイ映像表示部の縦横
80%に縮小 した大きさにT
V映像 を表示 し,残 りの外側20% (図2.
1の掩色部分)に車酔い対
.
2の様 な仮想空間を用いた。ディスプ レイの垂直
策の映像 を表示 した。 この映像表示は図2
de
g】
,水平撮像画角Oo=73.
8t
deg】と定めた。視点か らⅣ 映像が映っているス
撮像画角は60t
1【
L]
) としたO車酔い対策表示部には,車の動 きと一致 した
ク リー ンまでの距離を単位 (
V映像を視聴 しなが ら視覚に車の
自己運動感覚を与 えるよ うな背景映像 を与 えることで,T
動 きの情報を与 えることで感覚の矛盾を減少 させ ようとした。
車酔い抑制対策 として,加減速時に生 じる車酔いに対す る対策 を第3
章,カープ時に生 じ
る車酔いに対す る対策 を第4章,加減速時 とカープ時の複合対策 を第5章で説明す る。
一
第2
章 車酔い対策案の基本的な考え方-
l
L
]
,
0.
8xt
n(
a
O
o
/
2)
T
V映像の表示範囲
図 2.
2 車酔い対策の仮想空間 (
上か ら見た図)
2.
2
実車実験
2.
2.
1 実鼓車両
20
07年は トヨタ自動車のハイエースグラン ドキャビン (
実験車 1
)
,2
(
氾8年は トヨタ自
動車のアルファー ド (
実験車 2) を使用 して実車実験を行 った。
0人乗 りの車(
全長 5
,
3
80l
m m】
,
幅1
,
880l
m m】
,
高 さ2
,
285l
m m】
)
実験車 1は 4列 シー トの 1
で,実験では 1
-5名の被験者を 2-4列 目シー トに,実験車 2は 3列シー トの 7人乗 りの
,
800l
m m】
,
幅1
805l
m m)
,
高さ 1
935l
m m]
)で,実験では 1
-4名の被験者を 2-3
車 (
全長 4
列 目に座 らせて走行 した。
横2
4.
3km】
,縦 1
3.
7【
C
血】
,ディスプ レイの解像度は 8
00×4
80【
dod)は,被験
車載 TV (
者か らの距離が約 6
0km1
,水平視角が約 2
3【
de
g
l
の位置に設置 し,走行中,及び停車中に
被験者に視聴 させた。T
V視聴はス トー リー性の高い映画を選び,音声は実験車 1では車両
の後方上部,実験車 2では後方下部に取 り付け られた 2台のステ レオスピーカーか ら再生
4,実験車 2の車両,車内の様子を図 2.
5,
した。実験車 1の車両,車内の様子を図 23,2.
2.
6に示す。また 3軸の加速度 と 3軸の角速度を出力するセンサを実験車の後部座席下に設
置 した。
L
T
Lノ
、一
L
i
'
一人 J
l
;p
,
;
I
_
'
F
'
研
先n
・
第2
章 車酔い対策案の基本的な考え方・
3
図 2.
図 25
実験車 1
-ハイエース
図 2.
4 実験車 1の車内の様子-ハイエース
実験車 2
- アルファー ド
図 2.
6 実験車 2の車内の様子- アルファー ド
実車実験での運転は,実験の試行 ごとの運転のばらつきを最小限に抑えるために, 1つ
の実験につき 1人の運転手に固定 して実験を行った.
2.
2.
2 実験 走 路
実車実験では 2種類の走路を使用 した。実験 コース 1は信号のないカープの多い山道で,
1周約 3分のコースを計 7周,約 21分間走行 した (
図 2.
7,図 2.
8)
。実験 コース 2は,信
0分間走行 した (
図
号がなく,直線が長 く続 く 1周約 4分のコースで,これを計 5周,約 2
2.
ll)
。 このコースは加減速時に生 じる車酔いの抑制効果を検証す る実験で使用 したため,
ほぼ9
0【
d
e
g
】
に左折する場所が 4か所あるが,Y
a
w角速度,遠心力が生 じないようにゆっく
りとカープを し,直線の道では 60【
km/
S
】
まで加速 し,数秒間等速運動をした後,ほぼ停車
0回の加減速 を
す るまで減速を し,再び加速をする,とい う運転 を 1周につき 1
0回,計 5
a
w加速度,前後加速度 と遠心加速度,
行った。実験 コース 1を走行 した際に生 じた車の Y
0,実験 コース 2では Y
a
w角速度,遠心力はほとんど生 じなかったため,車
を図 29,21
1
2に示す。(
車の動きのデータは実験終了後に実験車 とは
の前進加速度 と遠心加速度を図 2.
異なる車でデー タ収録 したため実験車のデー タとは若干異なる可能性がある。)
5
・
第2章 車酔い対策案の基本的な考え方・
図 2.
7
図 2.
8 実験 コース 1のコース図
実験 コース 1のカープ例
時間 I
M叫
図 2.
9
実験 コース 1の走行時 (
1周)に生 じる Yaw 角速度
︻
S
.
s
J
∈
]
世ガ
ロ只
時間【
mi
n
】
図 21
0
実験 コース 1の走行時 (
1周)に生 じる前後 ,遠心加速度
・
r
t人 J
l
l
;
r人 ■
)
I
:V
J
'
L
-
l
.7 研 究 H
・
第2
章 車酔い対策案の基本的な考 え方・
図 211実験 コー ス 2のコース図
r
s
,
s
J
uJ
]
F増
長
時間 I
ml
n】
図2
.
1
2 実験 コース 2の走行時 (
1周)に生 じる前後加速度
2.
2.
3 被族者
被験者は健康な 2
0歳前後の男女で,実験前に実験の主 旨 ・内容,手順,評価方法を説明
し,書面による承諾を得た上で実験 を行 った。承諾を得 る上で被験者 に確認 したのは,
・ 実験 中に動揺病が生 じ不快感が伴 う可能性 が予見 され る。
・ 被験者 の希望によ り,実験-の参加 を延期 あるいは中断できる。
・ 実験 を続行できないと感 じた時はいつで も中断できる。
・ プライバ シーの保護,な どであったO
実験 中に被験者 の不快感 が高ま り, これ以上実験が続 け られない状態になった場合 はす
ぐに停車 し,実験 を中断 した。
なお,本実験は,三重大学院工学研究科 ・工学部実験倫理委員会の承認 を得て実施 した0
7
・
第2
章 車酔い対策案の基本的な考え方・
2.
2.
4 計測項 目
動揺病による不快感強度 を計測 し,その評価には評定尺度法による主観的評価を用いた。
大学を出発 し,実験場所 に到着 した後,車を停 めたまま 1
0分間映画を視聴 させ,その後走
行 しなが ら映画を視聴 させた。その際,走行開始 1
0分前 と 5分前,また走行開始時と開始
不快感が全 くない状儀)
∼1
0(
これ以上続 け
か ら 1分 ごとに不快感 を答 えさせたO不快感は 0(
0の評価値が等間
ると吐きそ うとい う限界状態)
までの 11段階で評価 させた。その際,0-1
隔になるように指示 したDまた不快感強度が
r
l
OJ に近 くなった被験者は続行できるか を
尋ね,希望に応 じて下車 させた。
不快感の計測のほか,呼気二酸化炭素分圧 と心臓 自律系活動,車体運動も計測 した。
2.
3 車酔 い不快感の解析
23.
1 感受性補 正
不快感の強度を比較す るために,各呈示条件 の間で被験者の感受性 の偏 りをなくす必要
があるOそこで感受性補正を行ったb ここで感受性を求める手順を説明す る。
叱
地
各刺激で得 られた② よ り被験者の平均傾 きを求
めた。
2
③
片
(
丑を平均値で除 して正規化 した。
単
各刺激の種類毎に全被験者での平均傾きを求め,
) 簡
②
鉄
(
赤)を推定 し,その傾きを求めた。
4
り,各被験者の 1試行毎に原点を通る回帰直線
(
也
(
D 図2
.
1
3のように縦軸に不快感,横軸に時間をと
0
8
1
0
1
5
20
時間【
mi
n】
(
彰 これを各被験者毎の感受性 とした。この値が高い
図 2
.
1
3 不快感推移 (
1試行)
ほど感受性が高いことを表す。
まず解析に使用す るか否かを決定す るため,Gr
ubbs
I
Sml
r
nOV棄却検定 (
8)
を利用するととも
No) とし,解析か ら除外 し
に, どの呈示条件 に対 しても全 く酔わない被験者 を感受性 N (
た。次に被験者の感受性の分布か ら昇順にソー トし,試行数がほぼ 3等分になるように感
受性 によって L (
I
J
OW),M (
Mュ
dd
l
e),H (
Hl
h )の 3段階にクラス分けした。そ して各
g
実験全体の L,M,H の比 と呈示条件の L M,H の比が等 しくなるように各呈示条件 ・各
時刻の不快感評価値の分布に重み付けを行った。 この重み付けを した分布を使い,次の距
離尺度化 を行った。
F
r
L人 √人 Jr
J
I
. t′ 研 先 f
L
・
第2
章 車酔い対策案の基本的な考 え方-
2.
3.
2 距離尺度化
被験者は評定尺度法で不快感の強度を評価 してお り,これは順序尺度であるため定量的
なデータ処理をす ることができない。そのため,間隔尺度に変換す る必要がある。 これ を
)【
91
を適用 した。こ
距離尺度化 とい う。距離尺度化 を行 うにあた り範噂判断の法則 (
条件 B
∫
s
t
o
ne【1
0
】
のモデル (
ケースⅢ)に相 当する。
れは Tbu
2 5 1 5
0 」 O. O
o
a
確率密度
0 1234 567 8 9 1
0
不快 感(
距離尺度)
図 2.
1
4 距離尺度化の説明 (Ⅰ)
図 21
4はある条件,ある時刻の評定尺度による不快感の分布を取 り出して.距離尺度に
変換する過程を表 した ものであるO各条件の各時刻における刺激に対する反応 (
不快感強
度)は,距離尺度で表 され る心理学的連続体上で正規分布すると仮定す る.各カテゴ リー
の評定尺度の比率に等 しい確率を持つ よ うに,心理学的連続体上で各カテゴ リーの距離尺
度を標準正規分布の Z借 を用いて与えた。ここで,確率の誤差に対する Z借の変動が分布の
e
r
・
Ur
banの荷
平均値付近 とそれか ら離れ るところでは著 しく異なってくる。そこで,Muu
重 を用いて実測値に対 して重み付けをす ることで,Zに対する効き方を修正 したD
9
・
第2章 車酔い対策案の基本的な考え方-
図 2
.
1
5 距離尺度化の説明 (Ⅱ)
その後,正規分布の平均値をその時刻の不快感強度 とし,図 2.
1
5に示す ように各時刻に
5の★の部分が各時刻の不快感強度の平均値である。
ついて算出した。図 21
次章以降で実験結果 として示す グラフは,不快感強度の平均値 を呈示条件別 に,走行開
始か ら 1分毎にプロッ トしたものである。
∴
6は評定尺度 と各カテ ゴ
なお,図 21
リーの平均値を距離尺度で表 した とき
の対応 を表 したグラフである。距離尺度
-1の間隔が他の区間に比べ広いの
の0
は,被験者が不快感強度
「
1
」 と答 える
のにためらいがあるか らと考えられ る。
全 く不快感 を感 じていない状態」
また,「
から 「
少 しでも不快感を感 じた」と自覚
するまでの しきい値が高いためと考え
られ るo
評定尺度
図 2
.
1
6 評定尺度
vs 距離尺度
1
0
∼
_r
r
L
_人 /
i
Z
'人一
'
fF
,
.
.
1・
1
1
:研 先 約
一
第2
章 車酔い対策案の基本的な考 え方・
233 車酔 い抑制改善率
対策案の車酔 い抑制効果を表すために,対策案 の改善率 を定義 した。感受性補正後 に,
距離尺度化 して,各実験条件 ごとに得 られた平均不快感強度の時間推移を最小 二乗法に よ
。
り原点に直線回帰 した
TV視聴時の回帰直線 の傾 きが ,TV視聴 な しの普通乗車時の傾 き
まで抑 えられた時を改善率 ,1
00% と定義 した (
図2
.
1
7)
。
L
D
(嘩
,r
.
叱
避
r:
室
2
皿 叫 )髄
1
に
0
5
1
0
1
5
20
時間【
分】
図 21
7 改善率の概要図
ll
第3章 加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
第 3章
加減速時に生 じる車酔 いに対する対策
車酔いは加速時や減速時,またはカープ時に発症 しやすいと言われている。第 3章では
加減速時に生 じる車酔いを低減す る対策案 と,実車実験の結果か ら対策案の有効性 を検討
した。
3.
1 対策案
加減速時に生 じる車酔い対策を 3種類考案 した。
3.
1.
1
加減速対策 1
TV 映像の周辺に白黒格子縞の映像を上下
左右の 4面に トンネル状に表示 させた。車の
加速度に応 じて,周辺映像を前後に移動 させ
るこ とで視覚に 自分が動 いている とい う視
覚誘導 自己運動感覚 (リニアべクシ ョン)を
発生 させた。加速時は前向きの リニアべクシ
ョンを,減速時は後ろ向きの リニアべ クショ
ンを発生 させた。
(t
)
l
m/
S
2]に比例
対策案 1は図 32の様な仮想空間を用いている。前向きの加速度 aI
した速 さで周辺映像を前後に移動 させた。周辺映像の (
前後の)移動速度を vf
(I)
【
L/
m】
とす ると,c
L
x
(t)とvf(t)の関係式は(
3.
1
)
で表 され る。
vf(
t
)ニーkfXC
L
x(
t
)
(
kf‥比例係数) (3.
1)
また,加速時は手前に映像が迫っている感覚を与えるため背景を伸長 (
図 3.
3),減速時
.
4)
O映像の伸緯度合
は遠方に映像が遠 ざかる感覚を与えるために背景を伸縮 させた (
図3
い r(
t
)は,式(
3.
1
)
の様 に車の加速度に比例 させた。
(
k,・比例係数) (32)
比例係数は予備実験によりkfは 0・
2
4,k.は 3・
0と定めた.
1
2
_L
r
L人
)人 )
'院
T′J研
N
L
.柿
・
第3
章 加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
デ ィス プ レ イ 表 示
範囲
図3
.
2 対策 1の対策モデル を上か ら見た図
図 33 加速 時の映像
図 3.
4 減速時の映像
1
3
ー
第3章 加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
3.
1
.
2
加減速対策 2
加減速対策案 2は前後-流れる背景映像を
見せ ることで リニアべ クシ ョンを与える手法
である。加速時は背景映像を視点に近づけるこ
I
T V 映
像
とで前向きの リニアベ クションを,減速時は背
景映像を視点か ら遠 ざけることで後ろ向きの
リニアベ クションを発生 させた。前向きの加速度
図 3・
5 加減速対策 2の概略図
c
L
x(t)[r
r
J
s
2]に比例す る速 さで周辺映像を移動 させたD
背景の前後の移動速度を v
f
(t)【L/
m 】とす ると,αx
(t
)とV
.
(I)の関係式は (
3.
3)で表
/は予備実験の結果・0・
1
0と定めた。
され る。比例係数 k
vf
(
t
)--kfXαx(
t
)
(kJ .比例係数)
(
3・
3)
1
5
×
t
a
n
(
O
o
/
2
)
【
L
]
低
速時の
移動方 向
妄
図 3.
6 対策 2の仮想空間を上か ら見た図
1
4
二・
r
t
:人7人'
l
j
一院
T
_'
y研 先 日
・
第3
章 加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
進行方向 ◆
加速度 qx
(
t
)
加減速対策 3
3.
1.
3
加減速対策案 3 は車の加減速感覚を傾斜感覚で与える手法で
ある。加速度が持続す るとき,前向きの加速度 と重力加速度の合
ベ ク トルの方向を重力加速度方向 と知覚 し,身体が傾斜 している
.
7
)
。そこで車の加減速に合
よ うに感 じる, と考えられ る (
図 3
わせて周辺映像を Pi
t
c
h候斜 させたDまた,加速時には背景映像
王力加速度 g
を下向きに,減速時には上向きに移動 させた (
図 38,3.
9)
。
図3
・
7 加速時の
1
0のよ うな仮想空間を用いて映像表示を した。
図 3.
合成ベ ク トルの説明図
図 38 加速時の対策案 3の映像
図 3.
9減速時の対策 3の映像
・
7のような前向き加速度 と重力加速度方 向との合力による角度 も had】を算出 し,
図 3
8
g
,に比例 させて背景映像 をピッチ傾軌
no
a
g
X
(I
)-ax
(t
)
/g
t
お よび上下移動 させた。
より
0(
Op(
t
)-t
anl
l
(
nl
(t)/ど)
O(
とな り,背景の Pi
t
c
h傾斜角を , I
)【
r
a
d】 ,上下移動角を l t)【
r
a
d】とす るとその関係
3・
4)(
3・
5)で表 される・比例係数 k.
Iksは予備実験の結果 0・
5
8・0・
69と定めた。
式は (
O。
(t)ニーk。×t
an1
転 (
t
)
)
(
k,:比例係数)
(
3・
4)
06(t)ニーkBXt
a
n1(
oB
l
(
t
)
)
(
ks・比例係数)
(
3・
5)
図 3.
1
0加減速対策 3の仮想空間を横か ら見た図 (
加速時)
1
5
・
第3
章 加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
3.
2 実車実験
加減速対策の効果を検証するために 3種類の実車実験 を行った。
3.
2.
1 加減速対策実験 1
加減速対策 1の車酔い抑制効果の検証をするため,実験 1を行った。実験走路は実験 コ
ース 1の山道 を使用 した。
3.
2.
1.
1 実験環境
被験者は健康な 2
0前後の男性 39名,女性 1
4名の計 53名 を用いて実車実験を行った。
実験車は,2.
2.
1で説明を した実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いた。
3.
2.
1.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は
【
1
1加減速対策 1を施 した TV視聴
【
21車酔い対策を施 さない TV視聴
【
3】何 も視聴せずに普通乗車
の 3つの条件で実験 を行った。条件 ごとの試行数 を表 1に示す。
表 1 実験 1の条件毎の試行数
乗車条件
試行数
加減速対策 1
41
TV 視聴
49
普通乗車
44
3.
2.
2 加減速対策実験 2
加減速対策 2,
および 3の車酔い抑制効果の検証をす るため,
加減速対策実験 2を行った。
実験走路は 2.
2.
2で説明 した実験 コース 2の直線道路を使用 した。
3.
3.
2.
1 実駿環境
被験者は健康な 2
0前後の男性 33名,女性 1
5名の計 48名 を用いて実車実験を行った。
実験車は,2.
2.
1で説明を した実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いた。
1
6
二重 入 学 大 学 院
工学研究科
・
第3章 加減速時 に生 じる車酔いに対す る対策・
3.
3.
2.
2 刺激 条 件
視 覚刺激 の条件 は
【
1
1 加減速対策 2を施 した TV視聴
【
2
】 加減速対策 3を施 した TV視聴
【
3】 車酔 い対策 を施 さない TV視聴
【
4】 何 も視聴せず に普通乗車
の 4つの条件 で実験 を行 ったO条件 ご との試行数 を表 2に示す.
表 2 実験 2の条件 毎 の試行数
乗 車条件
試行数
加減速対策 2
46
3
47
加減速対策
TV 視聴
46
普通乗 車
44
3.
3 実験結果
考案 した 3種類 の加 減速対策 の効果 を検証す るた めに行 った実験 結果 を示す 。 実験結果
.
3不快感 の解析 で説 明 した よ うに,個人 ご との感受性 に差が あ る ことを考慮 し,まず 各
は2
対策 の試行数 と個人 ご との感受性 の高 さに対応 した補正 を加 えた。 その後 ,範噂判 断の法
則にT
hu
r
s
bn
eのケー スⅢ を適用 し,評定尺度 か ら距離尺度値 に変換 した結果 の不快感 強
度 の時間推移 をグラフに示 した。 また,実験条件 ごとに走行 中の不快感強度 の時間推移 の
回帰直線 の傾 き と,改善率 を示す。
3.
3.
1 加 減 速 対 策 実 験 1の結 果
図3
.
1
1は加減速対策 実験 1の不快感 の平均強度 の時間推移 を示す。 図の点線 は条件 毎 の
回帰直線 ,点 は 1分毎 の不快感 の平均値 を示す。 3条件 ともに不快感 は 21分 間の乗車時 間
にほぼ比例 して高 まったO加減速対策 1は,TV視聴 時 に と比べて不快感 を抑制 した。表 4
は実験条件毎 の回帰直線 と改善率 を示す。 改善率 は 26.
2%で あった 。
各試行毎 に評定尺度 で の動揺病不快感 の総和 を AUC法 (
Ar
e
aUnd
e
rCuⅣeMe
t
h
o
d
)
で
算 出 し、各乗 車条件毎 の動揺病不快感 の経 時的変動 を
Wi
l
c
o
x
o
nの順位 和検定
(
両側検定)
p>0.
05)
0
で検定 した結果 ,
加減速対策 1と TV視聴 との条件 間に有意 な差は見 られ なか った (
1
7
・
第3
章 加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
6
5
(世
4
叱
嶺
3
2
簡蕃 片
山噌)
0
5
1
0
1
5
時間[
分]
20
図3
.
1
1 加減速対策実験 1の車酔い不快感の時間推移
表 4 加減速対策実験 1の改善効果
実験条件
回帰直線 の傾 き
改善率【
%】
加減速対策 1
0.
206
26.
2
TV視聴
0.
246
-
普通乗車
0.
092
-
1
8
r
r
L人 1人 ′ド
′
t
. l J研 先 fL
一
第3
章 加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
3.
3.
2 加減速対策実験 2の結果
図3
.
1
2は加減速対策実験 2の不快感の平均強度の時間推移を示す。図の点線は条件毎の
回帰直線,点は 1分毎の不快感の平均値 を示す。4条件 ともに不快感は 2
1分間の乗車時間
にほぼ比例 して高まっていた。加減速対策 2,3は,TV 視聴時に と比べると不快感は抑制
されていたO
表 別ま実験条件毎の回帰直線 と改善率を示す。
加減速対策 2,
3の改善率 21.
3%,
67.
1
%であった。
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和 を AUC法(
Ar
e
aUnd
e
rCuⅣeMe
t
b
.
o
d
)
で
算 出し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動を Wi
l
c
o
x
o
nの順位和検定 (
両側検定)
で検定 した結果,
加減速対策 2では TV視聴条件 に比べて p<0.
05で有意な差が見 られたが,
加減速対策 3では p>0.
05で有意な差は見 られなかった。
1
9
・
第3
華 加減速時に生 じる車酔いに対す る対策-
5
4
(
雌叱 山哨)墳 蕃 片
3
義
2
一
l
0
5
1
0
15
20
時間[
分]
図3
.
1
2 加減速対策実験 2の車酔 い不快感 の時間推移
表 5 加減速対策実験 2の改善効果
実験条件
回帰直線 の傾 き
改善率【
%】
加減速対策 2
0.
1
34
67.
1
加減速対策 3
0.
1
74
21
.
3
TV視聴
0.
1
93
-
普通乗車
0.
1
05
-
2
0
E
T
t人 7 人 I
f院
1
.
'
i
-研 先 fL
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対する対策-
第 4章
右 左折 時に生 じる車酔 いに対す る対策
第 4 章では右左折時に生 じる車酔いを抑制する対策案 と,実車実験の結果か ら対策案の
有効性を検討 した。
4.
1 対策案
右左折時に生 じる車酔い抑制対策案を 6種類考案 した。
4.
1.
1 カー ブ対策 1
カープ対策 1は車がカープする時に生 じるY
a
w回転に
対処 した呈示法である。画面を水平方向の中心を軸に し
v
e
r
t
l
C
a
la
x
l
S
て映像が車の挙動に合わせて鉛直軸回転 (
r
o
t
at
i
o
n)しているかのように見せ ることで,車が Ya
w
.
1 カープ対策 1の映像例
図4
回転 している情報を視覚に与えた。
2のような仮想空間を用いた。これは仮想空間を上
このような映像を表示す るために図 4.
a
w角速度に応 じてカメラを回転移動 させている。 このカメラの動 きを
か ら見た図で車の Y
(
41
)
式に示すO(
Jは Y
a
w角速度 【
d
e
g
/
S
】
,Ooはカメラの撮影画角【
d
e
g
】
,O
mA
Xはカメラの最
kは時定数を示す。
om。
xx(
1
-e k )
3=
(
u≧o)
0.
(
t
)-
ヽ
4
_
ei
i!
P'
d
e
g
1
,0.
(t
)
はカメラの回転角度 【
d
e
g
】
,
大回転角【
竺坦
1 ma
xx(
1
-ek)
3:
(
O<o)
0
・(
4.
1
)
10と定め
時定数 kは予備実験を行 った結果,1
4
.
1
)の式のよ うに Y
a
w角速度 o(
I
)に応 じ
た。(
.
1
てカメラ位置を回転移動 させ ることで,図 4
のように TV 映像が回転 しているように見える
(
左カープ時)
。
一
J
一亡 I 二/
図 42 カープ対策 1の仮想空間を
上か ら見た図 (
左カープ時)
21
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対する対策・
4.
1.
2
カー ブ対 策 2
車がカープをす る時には,Y
a
w 角速度 とともに遠
心加速度 も生 じている。そこでカープ対策 2は,
Ya
w
角速度に対処 したカープ対策 1に加 えて,カープ時
に生 じる遠心加速度 (
遠心力)にも対処 させた。
TV映像の周辺に白黒格子縞の映像を上下左右の
4
面に トンネル状の映像 を表示す る仮想空間を用 いた
.
4)
。遠心加速度に比例 させて上下の トンネル部
(
図4
3 カープ対第 2の映像例
図 4.
分の位置を左右 に移動 させることで,視覚に遠
心加速度の情報を与えたo遠心方向の加速度を
積分 し,遠心方 向の速度 を算出 している。式
(
4.
2
)は, 1フ レーム当た りの トンネル位置の
左右-の移動速度 Vy(t)
【L/
sJ
を遠心方向の加
y(t)
【
L/
S
】で比例 させて計算 している了 も
速度 Q
01
2 と決定 し
比例係数 k,は予備実験の結果 0・
た。
c
L
,(t
)
V,
(t)=-k,×
(
4.
2)
図 44は車が左 にカープをす る時の様子を示
している。車が左にカープをする時は周辺映像
ト
ニ
ー
′
一
亡
の模様 を右に移動 させ、右にカープをする時に
一
図4
.
4 カープ対策 2の仮想空間を
は模様 を左に移動 させた。
上か ら見た図 (
左カープ時)
4.
1
.
3 カー ブ対 策 3
カープ対策 3は,カープ対策 2と同様に車の
Ya
w角速度,遠心力の情報を視覚に与えるよ う
5)。
な映像表示を行った (
図 4.
4のように仮想空間の
カープ対策 2では図 4.
カメラを回転移動 させていたが,カープ対策 3
では図 4.
6のように仮想空間のカメラは固定 し
V映像表示部を Ya
w角速度 ol
r
a
d
/
s】に
て,T
図 45 カープ対策 3の概略図
4.
3)
は TV映像表示部の
応 じて回転させた。式(
回転角度 0.
(
t
)を表す。
L
ノ
ーL
T
t人 ・
㌢人 i:
I
L
l/
iuf先 FL
2
2
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対する対策・
右 カーブ時 には
1
.
6×t
a
n(
OJ2
)【
L]
0,
(
t
)=-k,
a
we×a(
t
)
W。:比例係数)
(
k,
。
・
・
(
4・
3
)
またカー プ対策 2 と同様 に遠 心加 速度
佃景
改
号
、
a,(t)
【Us2
1 に応 じて背景映像 を右 カープ
時 に は左 に , 左 カ ー プ 時 に は 左 に 速 さ
vc
.n(
t)で移動 させた(
4・
4式)
a
v0n
(t)--k0nxc
L
y
(
t
)【
L/S2】
(
ke
e
n:比例係数) .
・
・
(
4
.
4
)
a
WOは 0・
441
8,
比例係数は予備実験を行い,ky
図 4.
6 カーブ対策 3の仮想空間を
kc
e
nは 0.
0062に決定 した。
上から見た図
4.
1
.
4 カー ブ対 策 4
カープ対策 4は,カープ対策 2
,
3と同様に車の Ya
w角速度,遠心力の情報を視覚に与 え
5)
。
るような映像表示を行った (
図 4.
カープ対策 4では,カープ対策 3と同様に仮想空間のカメラは固定 して,TV映像表示部
(t
)LI
Js2
1に応 じて回転 させたoまた Y
a
w角速度 olf
a
d
/
s】に応 じて背景
を遠心加速度G,
.
W(t)で移動 させた。TV映像の回
映像を右カープ時には左に,左カープ時には左に速 さV,
(
t
)は式(
4,
5
)
.背景映像の速 さV,
。
W(t)は式(
41
6)
で求めた。
転角 0,
O,
(
t
)ニーk肝。
。×t
an1
(
a,
(
t
)
/
ど
)
(
k托。
o:比例係数) -・
(
4.
5
)
V,
a
w(
t
)ニーk,
a
wxo(
t
)
(
k,
a
w:比例係数) ・
・
・
(
4
・
6
)
比例係数は予備実験を行い・kcen
oは 0684・k,
a
Wは 01
0551
3に決定 した。
4.
1
.
5 カー ブ対 策 5
カープ対策 5 は遠心加速度 に応 じて背景映像を
Rol
l方向に傾斜 させ る手法である(
図 4.
7)
O遠心加速
度が持続するとき,
遠心加速度 と重力加速度の合ベク
トルの方向を見かけの重力加速度方向と知覚 し,
身体
u方向に傾斜 しているように感 じると考えられ
が Ro
。そこで式(
4.
7
)
のように,車の遠心加速
る (
図 48)
(
t
) に合 わせ て 背 景 映 像 を ロー ル 方 向 に
度 Qy
0,
o
u
(
t
)だけ,右カープ時には右に,左カープ時に
7 カープ対策 5の概略図
図 4.
は左に傾斜 させたb
ニーkmu xtan-I(a,(
t
)/
g)
0,
。
u(
t
)
(
k,
o
u.比例係数)-・(
47)
23
一
第4
章 右左折時に生 じる車酔いに対する対策一
遠 心加 速 度
a
,(
i
)
与 えたo予備実験の結見 比例係数 k,o
uは,0.
3786に決定
した。
遠心 加 速 度
また・カーブ対策 4と同様に・Yaw 角速度に応 じて背景映
俊を左右に移動 させることで,視覚に Yaw角速度の情報を
g
図 4.
8 カープ時の
合成ベ ク トルの説明図
4.
1
.
6 カー ブ対 策 6
カープ対策 6は,Yaw 角速度に応 じて背景映
像 を左右に移動 させ ることで視覚に回転 している
とい う自己運動感覚を与えるような対策である (
図
4
.
9
)
。これまでの対策 と異なる点は,背景映像を丸
身を帯びた表示に した点 と,車の動きに対 して比例
した動きではなく,非線形な動きで背景映像を移動
させ る点である。
まず・背景映像の模様 は以前より暗 く,T
V視聴 して 図 4
.
9カープ対策 6の概要図
いて気にならないようなテクスチャに変更 したO加えて,
背景映像を奥行きのある,丸みを帯びた表示にすることで,視覚に回転感覚を与えやす く
0,4.
11に示す。図 4.
11にあ
なると考えた。映像 を表示するために用いた仮想空間を図 41
るよ うに,円筒に縦横縞 のテクスチャを貼 り付 け、円筒の中心か ら仮想カメラで撮影す る
.
9のような映像表示を実現 し,円筒を回転 させ ることで背景映像を左右に移動 し
ことで図 4
ているように表示 している。
これまでの対策は Yaw 角速度に比例 した速 さで背景映像 を左右に動か していた。カープ
対策 6 では,背景映像の動 く速 さを決めるパラメータは,回転装置を用いた室内の予備実
験を行 った。回転装置に被験者を座 らせ ,Yaw 角速度 5,1
0,1
5,20,2
5【
d
e
g
/
s
e
c
]
の 5条
件の回転を与え,それぞれの Yaw 回転の速 さごとに平衡感覚 と自己運動感覚が一致す る適
付録 1,
2参照)
。そ して,求めた点か ら最小二乗法を
切な背景映像の Yaw角速度を求めた (
t
)が微小なときは背景映像の回転
用いて指数関数に近似 した。また,Yaw 回転の角速度 O(
A
W
L(
t
)hadJ
s
】
を求める式 (
4・
8)を示
が小 さくなるように処理 を した,背景映像の角速度 V,
す。 この式に応 じて円筒 を回転 させた。
vy
a
wA(
t)-(
1-exp-k
・
×
山t̀
'
2)×k,
a
wAXO(
t)
k
y
8
-B
(
kl・ky
a
WA,k,
8
WB :
比例係数) I
.
・(
4・
8)
比例係数 kl・ky
a
WA・ky
a
WBは予備実験の結果-400,0・
5・0・
7に定めた。
24
-1
T
L人 '
7人 ′
(
'
'院
lr
l
/
'研 究 fL
第 4章 右左 折時に生 じる車酔 いに対す る対 策・
上 :図 4.
1
0
カープ対策 6の仮想空間を上か ら見た概略図
左 ・図 4.
l
l
カープ対策 6の仮想空間を横か ら見た図
(
佼想カメラはイメージ図)
25
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対す る対策・
4.
2 実車実験
右左折時に生 じる車酔い対策の効果を検証するために 3種類の実車実験を行ったO
4.
2.
1 カー ブ対策実験 1
カープ対策 1
,及び 2の車酔い抑制効果の検証をするため,カープ対策実験 1を行った。
実験走路は 2.
2.
2で説明 した実験 コース 1のカーブの多い山道を使用 した。
4.
2.
1.
1 美浜環境
被験者は健康な 20前後の 65名を用いて実車実験を行った。 実験車は,2.
2.
1で説明を し
た実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いた。
4.
2.
1.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は,
【
1
】 カープ対策 1を施 した TV視聴
【
21 カープ対策 2を施 した TV視聴
【
3】 車酔い対策を施 さない TV視聴
【
4
1 何 も視聴せずに普通乗車
の 4つの条件で実験を行った。 条件 ごとの試行数 を表 3に示す。
表 3 カープ対策実験 3の条件毎の試行数
4
乗車条件
試行数
カープ対策 1
41
カープ対策 2
37
TV 視聴
49
普通乗車
44
合計
1
71
カープ対策 3,4,5の車酔い抑制効果の検証をするため,カープ対策実験 2を行った。
実験走路は 2.
2.
2で説明 した実験 コース 1の山道を使用 した。
26
三重大学大学 院
工学研究科
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対す る対策・
4.
2.
2.
1 実験環境
被験者は健康な 2
0前後の男性 3
2人,女性 1
0人の計 42人を用いて実車実験を行ったO
実験車は,2.
2.
1で説明をした実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いた。
4.
2.
2.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は,
【
1
】 カープ対策 3を施 した TV視聴
【
2
1 カープ対策 4を施 した TV視聴
【
3】 カープ対策 5を施 した TV視聴
【
4】 車酔い対策を施 さない TV視聴
【
5
1 何 も視聴せずに普通乗車
の 5つの条件で実験を行った。条件 ごとの試行数を表 4に示す。
表 4 カープ対策実験 1の条件毎の試行数
4
乗車条件
試行数
カープ対策 3
27
カーブ対策 4
29
カープ対策 5
28
TV 視聴
2
8
普通乗車
24
合計
1
3
6
4.
2.
3
.
1 実験環境
被験者は健康な 2
0前後の 7
6名 を用いて実車実験を行った。 実験車は,2.
2.
1で説明を し
た実験車 2の 8人乗 りのアルファー ドを用いた。
4.
2.
3
.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は,
【
1
1 カープ対策 6を施 した TV視聴
【
21 車酔い対策を施 さない TV視聴
【
3】 何 も視聴せずに普通乗車
の 3つの条件で実験 を行った。条件 ごとの試行数 を表 5に示す。
27
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対す る対策・
表 5 カープ対策実験 3の条件毎の試行数
TV 視聴 .
.
草通乗車
令?
+
7
0
・
元
1
73
4.
3 実験結果
4.
3.
1 カー ブ対策案鹸 1
図 4.
9はカープ対策実験 1の不快感の平均強度の時間推移を示す。図の点線は条件毎の回
帰直線,点は 1分毎の不快感の平均値 を示す04条件 ともに不快感は 21分間の乗車時間に
ほぼ比例 して高まっていた。カープ対策 2は,TV視聴時にと比べると不快感は抑制 されて
いたが,カープ対策 1は TV視聴時 と不快感はほぼ等 しく,車酔いを抑制することはできな
かった。表 6は実験条件毎の回帰直線 と改善率を示す。カープ対策 1
,2の改善率はそれぞ
れ1
.
3%,21
.
6%であった。
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和 をAUC法(
Ar
e
aU血
d
e
rCu
r
v
eMe
ho
t
d)
で算
出 し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動に Wi
l
c
oxonの順位和検定 (
両側検定)を
行った結果,
カープ対策 1
,
2は TV視聴 との条件間に有意な差は見 られなかった (
p>0.
05)
0
2
8
三重大学大学院
工学研究科
一
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対する対策-
6
5 4 3 2 1
(
雌叱叢皿
叫)
憤窒 片
0
0
1
0
5
1
5
20
時間[
分]
図4
,
9 カープ対策実験
1の車酔い不快感の時間推移
表 6 カーブ対策実験 1の改善効果
実験条件
回 帰 直線 の傾 き
改善率【
%】
カー プ対 策
1
0.
2
44
1
_
3
カー プ対 策
2
021
3
21
.
6
TV視聴
0.
24
6
-
普 通乗 車
0ー
0
92
-
2
9
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対する対策・
4.
3.
2 カー ブ対策実験 2
図4
.
1
0はカープ対策実験 2の不快感の平均強度の時間推移を示すO図の点線は条件毎の
回帰直線,点は 1分毎の不快感の平均値を示す。 5条件 ともに不快感は 21分間の乗車時間
,4は,TV視聴時にと比べると不快感は抑制
にほぼ比例 して高まっていたOカープ対策 3
されていたO表 6は実験条件毎の回帰直線 と改善率を示すOカーブ対策 3,4、5の改善率
33.
0%,2
2.
9%,4.
2%であった。
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和をAUC法仏r
e
aUnd
e
rCur
v
eMe
t
ho
d
)
で算
出 し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動に Wi
l
c
o
x
o
nの順位和検定 (
両側検定)を
3つの対策においてTV視聴条件 との間に有意な差は見 られなかった (
p>0.
05
)
。
行った結果,
3
0
三重 大 学 大 学 院
工学研究科
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対す る対策・
7
6
5
4
3
り
︼
(
雌叱毒血
叫)
簡華に
1
0
0
10
5
15
20
時間[
分]
図 41
0 カー プ対策実験 2の車酔い不快感 の時間推移
表 7 カープ対策実験 2の改善効果
実 験条件
回帰 直線 の傾 き
改善率【
%】
カー ブ対策 3
0.
241
33.
0
カー プ対策 4
0.
264
22.
9
カー プ対策 5
0.
304
4.
2
TV視聴
0.
31
4
-
普 通乗車
0.
094
-
31
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対す る対策・
4.
3.
3 カー ブ対策実験 3
図 4.
1
1はカーブ対策実験 3の不快感の平均強度の時間推移を示す
。
図の点線 は条件毎の
回帰直線,点は 1分毎の不快感の平均値 を示す。3条件 ともに不快感 は 21分間の乗車時間
にほぼ比例 して高まっていた。カーブ対策 6は,TV視聴時にと比べ ると不快感 は抑制 され
.
1
%で
ていた。表 8は実験条件毎の回帰直線 と改善率を示す。カープ対策 6の改善率は 31
あった。
Ar
e
aUnd
e
rCu
veMe
r
t
h
o
d
)
で算
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和 をAUC法(
l
c
o
x
o
nのP
樹立和検定 (
両側検定)を
出 し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動 に Wi
p>0.
05)
0
行 った結果,
カープ対策 6は TV視聴条件 との間に有意な差は見 られなかった (
3
2
三重大学大学院
工学研究科
・
第4章 右左折時に生 じる車酔いに対す る対策・
6
「
冗
.
4
E
V
?
2
叱遊 山叫)簡YJ
'
片
(世
/@
0
5
1
0
1
5
20
時間[
分]
図 4.
1
1 カー プ対策実験 3の車酔い不快感の時間推移
表 8 カープ対策実験 3の改善効果
回帰 直線 の傾 き
改善率【
%】
0.
21
4
31.
1
TV視聴
0.
264
-
普 通乗車
0_
1
01
-
実 験条件
カー ブ対策 6
3
3
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
第 5章 右左折,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策
第 5章では,第 3華加減速対策,お よび第 4章カープ対策を合わせた複合対策を考案 し,
実車実験の結果か ら対策案の有効性 を検討 した。
5.
1 対策案
加減速 とカープ時に生 じる車酔い抑制手法の複合対策を考案 した。
5.
1
.
1 複 合対策 1
TV 映像の周辺に白黒格子縞の映像を上下左右の
4面に トンネル状に表示 させた (
図 5.
1
)
。3.
1.
1の車
の加速度に比例 した速 さで前後に周辺映像を移動 さ
1
.
2の車の Yaw 角速度に応
せる加減速対策 1と,4.
V 映像 を回転 させ,遠心加速度に応 じて周辺
じて T
映像を左右に移動 させるカープ対策 2を組みわせた
図 5.
1 複合対策 1の概略図
手法が複合対策 1である。
5
.
1
.
2
複合対策
2
3.
1.
2 の加速度 に応 じて前後に周辺映像が移動
す ることで リニアベ クシ ョンを発生 させ る加減速
4.
1.
3の Yaw角速度で TV映像を回転,
対第 2と,
遠心加速度に応 じて周辺映像を左右に移動 させ る
カーブ対策 3を組み合わせた複合対策 2を考案 し
た。加減速対策で用いた背景映像のテクスチャは
3.
1.
2 の加減速対策 2 の時には茶色の枠を用いた
.
1
.
3の
が,複合対策 2では緑色の枠を用いた。また 4
2 複合対策 2の概略図
図 5.
カープ対策 3では 1枚の緑色の板を背景映像のテクスチャに用いたが,カープ対策用に網
目状の背景映像を用いることで,網 目の隙間か ら加速度対策の緑色の枠 も視覚に与えるこ
とが可能 となる。
3
4
.・
T
t人I
T
'人p
,
・
'
'院
II
.
i
:研 究 科
一
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
5,
1
.
3 複 合対策 3
TV映像の周辺に 1枚 のテクスチャで,車の加
減速,遠心加速 ,Yaw 回転の情報 を視覚に与 える
手法が複合対策 3 (
図 5.
3)である。3.
1
.
3の加速
度 に応 じて周辺映像 を Pl
t
C
h回転 させ る加減速対
策 3と,4.
1
.
5の Yaw角速度に応 じて周辺映像 を
左右 に移動 させ,遠心加速度に応 じて周辺映像 を
Ro
u回転 させ るカープ対策 5を合成 して背景映像
を表示 しているbまた,カープ対策 5の背景映像 の
図 53 複合対策 3の概略図
テ クスチャは視運動刺激 としては明るく,刺激 が強す ぎる可能性 がある.そ こでカー プ対
策 5の時 よ りも明るさを落 とした背景映像に変更 した.
5.
1
.
4 複 合対策 4
複合対策 4は,車の前後,及び遠心加速度に対 して P】
t
c
h回転,Ro
l
l回転の傾斜感 覚 を
与 え.Yaw 回転 に対 しては背景映像 を左右 に移動 させ ることで 自己運動感覚 を誘発す る複
合対策 3 と同様の車酔い抑制対策 を用いている。異なる点 として,背景映像 の明るさ,管
景映像の表示方法,車の動 きに対す る背景映像 の動か し方がある。背景映像は T
V視聴 を班
げない よう,これまでの対策 よ りも明るさを落 とし,目立ちす ぎないよ うに施 した。また,
背景映像を奥行 きのある,丸みを帯びた表示 にす ることで,視覚 に回転感覚 を与えやす く
図 4.
1
0,
なると考えた。そ こで,
カープ対策 6と同様の仮想空間を用いて映像表示を行 った (
ll)。Ya
w 回転に関 して も,カープ対策 6で用いた手法 と同様に,図 411の ような円筒 に
4,
縦横縞のテクスチ ャを貼 り付け、円筒の中心か ら仮想カ メラで撮影す ることにより,図 5.
5.
5のよ うな映像表示 を実現 した。そ して,円筒 を回転 させ ることで背景映像 を左右に移動
しているように表示 したo
複合対策 4の予備実験では,走行 中に予期 され る範囲で,あ らか じめ設定 した Yaw角速
度 を与える刺激を回転装置 を用いて 5点ずつ与えることで,平衡感覚 と一致 した 自己運動
感覚 を誘発す る背景映像の動 く大 きさを与 えるパ ラメー タを 5点得た。前後 の傾斜 を与え
る予備実験 も同様 に行 った。それ ぞれの刺激に よ り得 られた点か ら最小二乗 法を用いて指
数関数 に近似 したo遠心力 に応 じた映像 の動 きはカーブ対策 5で用いたパ ラメー タを用い
て遠心加速度 に比例 した動 きを与 えた. また,車の Yaw角速度,前後 ・遠心加速度の動 き
が微′
トな ときは,背景映像の動 きもそれぞれ小 さくなるよ うに処理 を した。
t
c
h 回転 させ る 0 。
(t
)【
r
adJを式 (
5・
1),上下 させ る
前後加速度 に応 じて背景映像 を Pi
83(t)l
r
ad]
を式 (
5.
2),カープ対策 5で用いた遠心加速度に応 じて Ro1
1回転 させ る 0 ,
d
.(t)
l
r
ad]を式 (
5.
3),カープ対策 6で用いた Yaw 角速度 に応 じて円筒 を回転 させ る V,a,A(
t
)
t
r
ad/
s
】
を式(
51
4) に示すO前向き加速度 と重力加速度方 向 との合力 による角度を Og
x【
r
ad]
・
遠 心加速度 との重力加速度方 向 との合力 に よる角度 を O
g
,l
r
ad
]とし,Yaw 角速度は O(
t
)
35
一
第5章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
]
レad/
sとした。
O。(t)-(
1-exp k
l
X
t
WI
(
o
pt̀
'
)
2)×kplt
ChOA
X 〈t
an ll
(
ogx(
t
)
Db・
-
-(
51
)
o
(-
〈
t
a
n1
(
og(t
)
》
k
p
t
k
岨
-(
5.
2)
or
.
u(t)-(
1-exp kl
X
血T
'
(
O
g'
t
'
)
2)×k,。.
.
oX a
n
I
(
oy(t
)
)
t
・(
5.
3)
-kl
X
`
Jt
'
'
2)×ky
。
wAX(
0(
t)
〉
k
-E
vy
。
wA(
t)-(
1-exp
・(
54)
s t) (
1-expk
l
dwI(
o
四`
t
'
)
2)×k。
.
t
c
h
AX
x
l
比例係数 k ,k,
l
k
he
A,kp
l
k
hO
B・k,.
bh
A,k,l
k
h
B,k,one,k,
a
w
A・k,
A
W
Bのそれぞれの
値は次に述べる。対策 41
,42は背景映像のテクスチャと背景映像の動きを調節するパ ラ
メータの値が異なる点以外は,同 じ手法を用いている。
1の概略図
図 5A 複合対策 4-
図 5.
5 複合対策 41
2の概略図
5.
1
.
4.
1 対策 41
対策 4・
1は図 5.
4のよ うな映像表示である。上記の式の比例係数は予備実験により
k
l
=1
00, kp
l
b
he
A=08・kp
l
k
he
B=07,kpl
kh
A=05,kp
l
k
h
B =0・
7,kmuo
=o・
3
8・
7と定めた。
k,
,
"A-045・
k,
a
W
B-0・
5.
1
,
4.
2 対策 42
対策 4・
2は図 5.
5のよ うな映像表示である。上記の式の比例係数が対策 4・
1と異なるのは
2点で,加減速により背景映像を上下移動にす る大きさを小 さくす るため kpI.Ch
A-0・
5・Yaw
角速度を遠 くす るために ky
a
w
A=057と定めた。
36
・
T
.人 J
・人 rF
T
,
L
r l研 先 約
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
5.
2 実車実験
加減速対策 とカープ対策を合わせた複合対策の車酔抑制効果を検証するために 3種類の
実車実験を行ったO
5.
2.
1 複合対策実験 1
複合対策 1の車酔い抑制効果の検証をす るため,複合対策実験 1を行った。実験走路は
2.
2.
2で説明 した実験 コース 1のカーブの多い山道を使用 したO
5.
2.
1
.
1 実験環境
被験者は健康な 2
0前後の男性 3
4名、女性 1
5名の計 49名 を用いて実車実験を行った。
実験車は,2.
2.
1で説明をした実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いた。
5.
2.
1
.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は,
【
1
1 複合対策 1を施 した TV視聴
【
21 車酔い対策を施 さない TV視聴
【
31 何 も視聴せずに普通乗車
の 3つの条件で実験を行った。条件 ごとの試行数 を表 6に示す。
表 6 複合対策実験 1の条件毎の試行数
普通乗車
・
44
5.
2.
2 複合対策実験 2
複合対策 2,及び 3の車酔い抑制効果の検証をするため,複合対策実験 2を行った。 実験
走路は 2.
2.
2で説明 した実験 コース 1の山道を使用 したO
5.
2.
2.
1 実験環境
被験者は健康な 2
0前後の男性 24人,女性 1
1人の計 35人を用いて実車実験 を行った。
実験車は,2.
2.
1で説明を した実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いたO
37
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
5.
2.
2
.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は,
【
1
1 複合対策 2を施 した TV視聴
【
2
】 複合対策 3を施 した TV視聴
【
3
1 車酔い対策を施 さない TV視聴
【
4】 何 も視聴せずに普通乗車
の 4つの条件で実験を行った。 条件 ごとの試行数 を表 7に示すO
表 7 複合対策実験 2の条件毎の試行数
乗車条件
試行数
複合対策 2
21
複合対策 3
2
0
TV 視聴
2
3
普通乗車
2
0
5.
2.
3 複合対策実験 3
複合対策 4,5の車酔い抑制効果の検証をす るため,複合対策実験 3を行った。 実験走路
は2
.
2.
2で説明 した実験 コース 1のカープの多い山道を使用 した。
5.
2.
3
.
1 実験環境
被験者は健康な 2
0前後の 7
6名を用いて実車実験を行った。 実験車は,2.
2
.
1で説明を し
た実験車 2の 8人乗 りのアルファー ドを用いた。
5.
2.
3.
2 刺激条件
視覚刺激の条件は,
【
1
1 複合対策 4・
1を施 した TV視聴
【
2
1 複合対策 42を施 した TV視聴
【
3
1 複合対策 4・
1の背景映像の動きを反対に施 した TV視聴
【
41 複合対策 4・
1の背景映像の動きの大きさを 2倍に施 した TV視聴
【
51 車酔い対策を施 さない TV視聴
【
6
1 何 も視聴せずに普通乗車
の 5つの条件で実験 を行った。条件 ごとの試行数 を表 8に示す。
3
8
三重 大 学 大 学 院
工学研究科
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
表 8 複合対策実験 3の条件毎の試行数
乗車条件
試行数
複合対策 4
1
42
複合対策 42
3
0
動 き :反対
3
9
動 き :2倍
35
TV 視聴
62
普通乗車
71
5.
3 実験結果
5.
3.
1. 複合対策実族 1
図5
.
4は複合対策実験 1の不快感 の平均強度の時間推移 を示す。図の点線は条件毎の回帰
直線,点は 1分毎の不快感 の平均値 を示す0 3条件 ともに不快感 は 21分間の乗車時間にほ
ぼ比例 して高まっていた。複合対策 1は,
TV視聴時に と比べ ると不快感は抑制 されていた。
表 9は実験条件毎の回帰直線 と改善率を示す。改善率は 25.
6%であった。
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和 を AUC法 (
Ar
e
aUnd
e
rCu
r
v
eMe
也o
d
)
で
l
c
o
x
o
nの順位和検定 (両側検 定)
算 出 し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動を Wi
有意な差は見 られなかった (
p>0.
05)
0
で検定 した結果,
複合対策 1は TV視聴 との条件 間に,
3
9
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対す る対策・
6
5
(
嘩 叱 蕃山叫 憤 窒 tJ=
4
3
)
2
1
0
0
1
5
1
0
5
20
時間[
分]
図5
.
4 複合対策実験 1の車酔い不快感 の時間推移
表 9 複合対策実験 1の改善効果
実 験 条件
回帰直線 の傾 き
改善率【
%】
複合 対策 1
0,
207
25.
6
TV視聴
0.
246
-
普 通乗 車
0.
092
-
4
0
.E
r
L人・
l
f人 i
'院
1.
L
i
!研 先 手ト
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
5.
3.
2. 複合対策実験 2
図
5
.
5は複合対策実験 2の不快感の平均強度の時間推移を示すO図の点線は条件毎の回
帰直線,点は 1分毎の不快感の平均値 を示す。4条件 ともに不快感は 21分間の乗車時間に
ほぼ比例 して高まっていた。複合対策 2,3は,TV 視聴時にと比べ ると不快感は抑制 され
ていた.表 1
0は実験条件毎の回帰直線 と改善率を示すO複合対策 2,3の改善率はそれぞ
れ3
2.
3%,73.
6%であった。
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和を AUC法 (
Ar
e
aUnd
e
rCu
veMe
r
t
h
o
d
)
で
算出 し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動を Wi
l
c
o
x
o
nの順位和検定 (
両側検定)
05で有意な差が見 られた。 し
で検定 した結果,複合対策 3は,TV視聴条件 との間に p<0.
か し,複合対策 2と TV視聴条件 との間に有意な差は見 られなかった (
p>0.
05)
0
41
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策-
6
5
4
3
2
(
世叱蕃山
噌)
墳登に
0
5
1
5
1
0
20
時間[
分]
図5
,
5 複合対策実験 2の車酔い不快感の時間推移
表1
0 複合対策実験 2の改善効果
実験条件
回帰直線の傾 き
改善率【
%】
複合対策 2
0.
21
6
32.
3
複合対策 3
0.
1
42
73.
6
TV視聴
0.
275
-
普通乗車
0.
094
-
42
・
T
t
_人 .
L
P人 '
l
I
'
'院
lノ
;
∠
●uf先 fl
・
第5
章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対する対策・
5.
3.
3. 複合対策実験 3
図 5
.
6は複合対策実験 3の不快感平均強度の時間推移を示すO図の点線は条件毎の回帰
直線,点は 1分毎の不快感の平均値を示す。6条件 ともに不快感は 2
1分間の乗車時間にほ
ぼ比例 して高まっていた。複合対策 4・
1
,4・
2は,TV 視聴時にと比べると不快感はわずか
に抑制 されていたが,顕著な抑制効果は確認 されなかった。対策映像 4・
1の対策 とは反対 向
きに映像が動 く逆方向の条件,また 2倍の動 きをする条件 において も,TV 視聴時に比べ,
わずかに車酔いが抑制 されていた。表 1
1は実験条件毎の回帰直線 と改善率を示す。複合対
策4
・
1,4
・
2の改善率 1
1
.
5
%,1
5
.
6%,逆方向,2倍の大きさでは 25
.
9%,2
0.
9%であった。
各試行毎に評定尺度での動揺病不快感の総和を A
UC法 (Ar
e
aUnd
e
rCur
v
eMe
t
ho
d
)
で
算出 し、各乗車条件毎の動揺病不快感の経時的変動を Wi
l
c
o
x
o
nの順位和検定 (
両側検定)
で検定 した結果,複合対策 4・
1,4・
2,逆方向,2倍の動きをする実験条件 と TV視聴条件 と
の間に有意な差は見 られなかった (
p>0.
0
5
)
0
43
・
第5章 右左折時,及び加減速時に生 じる車酔いに対す る対策 ・
6
5
4
3
2
(
世 叱蕃山叫)
墳窒 片
0
1
0
5
1
5
20
時間[
分]
図5
.
6 複合対策実験 3の車酔い不快感の時間推移
表1
1 複合対策実験 3の改善効果
回帰直線 の傾 き
改善率【
%】
複合対策 41
0.
246
ll
.
5
複合対策42
0_
234
1
8.
7
動 き :反対
0.
222
25.
9
動 き :2
倍
0.
230
20.
9
TV視聴
0.
264
-
普通乗車
0.
1
01
-
実験条件
4
4
_・
r
L
人 ソー人 p
i
i院
17 研 究 村
・
第 6章
第 6章
考察・
考察
6.
1 加減速対策
加減速対策 1は 2
6.
2%,加減速対策 2は 67.
1
%,加減速対策 3は 21
.
3%,それぞれの対
策で車酔い抑制効果が得 られた。 これ らより,視覚に車の前後加速度の情報を与えること
により,感覚情報の矛盾 を減少 させ,車酔いを抑制することができた。
加減速対策実験では,
対策案 1は実験 コース 1のカープの多い山道で行ったが,
対策案 2,
3では実験 コース 2の直線の長 く続 く道路で行った。実験 コース 1のカーブの多い山道 を走
行す る際は,2章の図 2.
1
0,2.
1
1にあるような Ya
w角速度や遠心加速度が生 じていたo実
験 コース 2の直線が長 く続 くコースを走行す る際は,Yaw角速度,遠心力が生 じない よう
に注意 して運転を行い,アクセルやブ レーキ操作による前後加速の刺激を受けるが, Yaw
回転や遠心加速の刺激はわずかである。 しか し,カーブの多い山道 を走行する際は,アク
セルやブ レーキに加え,ハ ン ドル操作による Yaw 回転や遠心加速の刺激 も受けることにな
るOこれ らより,カーブの多い山道を走行中に TV視聴す ることで,車酔いを発症 しやす く
なることが言 える。
加減速対策 2
,3では実験 コース 2の加減速が長 く続 くコースで実験を行い,予備実験
も同 じコースで行 った。 走行中には,減速時の加速度のほ うが加速時の速度 より大きかっ
た。予備実験 (
付録 1.
1) では,加減速を知覚 した平衡感覚 と対策映像により生 じる自己運
動感覚が一致す るような背景映像の動きの大きさを調節す る際,加速時よりも減速時に周
辺映像の動きを調節す る傾向があった。それ により,対策映像は減速時には,車の動 き と
一致 した 自己運動感覚を誘発す る周辺映像の動きをしたが,加速時には適切な自己運動感
覚が生 じず,感覚情報の矛盾を打ち消す ことができなかった可能性がある。また,加減速
対策 3は,周辺映像が明るすぎることで,視覚刺激が強 くな りすぎ,車酔い抑制効果が上
が らなかった可能性 も考えられ る。
6.
2 カー ブ対策
カーブ対策実験では,カーブ対策 2,3,4、6に関しては,それぞれの対策で車酔い抑制
効果が得 られた。 これ らより,視覚に車の Ya
w角速度,遠心加速度の情報を与えることに
より,感覚情報の矛盾が打ち消 され,車酔いを抑制することができた と言える。 しか し,
他の対策ではあま り効果が見 られなかった。
45
・
第 6章 考察・
カーブ対策 1に関 して,顕著な車酔い抑制効果は得 られなかったが,森本 らの報告では
同様の対策を用いて 70% を超える車酔い抑制効果を得ている。今回,抑制効果が得 られな
かった原因として,TV映像の外側 に枠を用いなかったことがあげ られる。森本 らの対策で
は TV 映像表示部 を灰色の線で囲 うことで,TV映像の周 りに枠があるような映像を表示 し
ている。この枠を用いることで,TV映像の回転が視覚にはっき りと知覚 され るため,自己
運動感覚 も誘発 Lやすかった と考える。カープ対策 1では枠がないため TV 映像 とそれ以外
の部分の境界が唆味にな り,TV映像の回転が視覚に伝わ らず,車酔いを抑制できなかった
可能性がある。
カーブ対策 2は周辺映像に トンネル状の白黒模様の柄 を用いたO この映像表示は視点の
近 くに周辺映像,遠 くに TV 映像が表示 されている(
3章の図 4.
4参照)
。前景 よりも後景に
視覚刺激を与えたほ うが視覚誘導性 自己運動感覚を誘発 させやすい【11】
ことが知 られてお り,
カープ対策 1,2では車の動きの情報を与えるための視覚刺激を前景に配置 したため,最適
な 自己運動感覚を誘発できなかった と考えられ る。
カープ対策 3
,4では,車のカープ時には Ya
w角速度 とともに遠心力が発生するため,
Ya
w角速度に加 えて遠心加速度を視覚刺激に取 り入れたが,改善率は 3割前後であった。
その原因 として,遠心加速度 と Ya
w角速度の関係は遠心加速度を al
m/
82
1
,カープの回転半
径 を rl
m]
,Ya
w角速度を ol
r
a
d
/
s
】とすると a
=r
oBであ り,遠心加速度は Ya
w角速度の 2乗
に比例す るため,わずかな Ya
w角速度の変化が遠心加速度に影響を及ぼ した可能性が考え
られ る。
また,カープ対策 3,4,5で用いた背景映像は加減速対策 3の考察でも述べたように,
明るす ぎて視覚刺激が強 くな りすぎたために車酔い抑制効果が上が らなかった可能性があ
る。
上記の対策では Ya
w角速度,遠心加速度に比例 させた速度で周辺映像を表示 したが,カ
ープ対策 6では,
Ya
w角速度,遠心加速度に対 して非線形な速度で周辺映像を移動 させた。
車酔い抑制効果は得 られたが,先行研究を超 えるような結果は得 られなかった。原因 とし
て,周辺映像の模様 と予備実験で得 られた値が考えられる。カープ対策 6で用いた周辺映
像の緑色の縞模様が左右 に移動す る際,縞模様の細い部分が波打つ よ うに見え,車酔い抑
制効果が上が らなかった可能性がある。また,カーブ対策 6では周辺映像に奥行きのある
映像表示をしているO これは円筒の中心に設置 したカメラか ら円筒の内面図に緑色の模様
を見ているような映像を表示 している (
付録 1
.
2参照)。 このカメラの画角を増加 させ ると
周辺映像の奥行きが増 し,より丸みを帯びた周辺映像になるが,画角 を小 さくすることで
丸みのない平 らな周辺映像になる。 この画角を求める予備実験では,回転装置を用いて 5
種類の Ya
w角速度を与え,適切な画角を求めたが,実車では Ya
w角速度だけでなく回転装
置では得 られない強い遠心力 も受けるため,回転装置での視聴では適切な回転感覚を与え
ていた周辺映像が,走行 中の車内での視聴では,周辺映像の視覚刺激が適切な 自己運動感
覚を誘発できなかった可能性が考えられ る。
46
三重 大 学 大 学 院
T_学 研 究 科
・
第 6章
考察・
6.
3 複合対策
車の加減速,カーブ時の複合対策実験では,複合対策 1
,2,3,41
,4・
2の全てにおい
て,車酔い抑制効果が得 られたO これ らより,視覚に車の前後,遠心加速度,Yaw 角速度
の情報を与えることによ り,感覚の矛盾を減少 させ,車酔いを抑制す ることができた。
複合対策 3は,加減速対策 3とカープ対策 5を合わせた手法で,7割を超 える車酔い抑制
効果を得た。それぞれ単独の対策では顕著な改善効果は得 られなかったが,この 2つの対
策 を合わせることで相乗効果を起 こし,車酔いを抑制することができた と思われる。また,
背景映像の明るさを落 としたことで,最適な視覚刺激を与えることができた可能性 もあげ
られる。
逆に顕著な車酔い抑制効果を得た加減速対策 3とカープ対策 3を合わせた複合対策 2で
は,車酔い抑制効果は 3
0%程度で,複合対策 3を大きく下回る結果 となった。 複合対策案
3は視覚か ら 3種類の運動ベク トル (
前後加速度,遠心加速度,Yaw 角速度)を 1枚の背
景映像で与えたO-方,複合対策案 2は映像を回転 させ, さらに 2種類の運動ベ ク トル を
それぞれ別の背景映像の組み合わせで表現 した。そのため,3種類の個別の背景映像が重な
り合い複雑な動きに感 じられたことで視覚か らの刺激が強 くな り,平衡感覚 との感覚情報
が一致 しなかった と考えられる。
複合対策 1では, トンネル状の白黒模様の柄 を用いた。 これまでの考察でも述べたが,
この映像表示は視点の近 くに周辺映像,遠 くに TV 映像が表示 されているが,前景 よりも後
景に視覚刺激を与えたほ うが視覚誘導性 自己運動感覚を誘発 させやすい, とい う点か ら複
合対策 1では最適な 自己運動感覚が発生 しなかった と考えられる。
これまでの実験で背景映像の明るさを上げす ぎるとTV視聴の妨げにな り,かつ視覚刺激
も強 くな りすぎるため,複合対策 4・
1,42に関 しては,明るさを落 とした背景映像を用い
た。 しか し,結果は複合対策 4・
1
,4・
2ともに顕著な車酔い抑制効果を得ることができなか
った。対策 4・
1,42,背景映像が逆向きの動き,背景映像が 2倍の動 き,TV視聴時の 5つ
の条件で実験を行った不快感の推移が類似 していることか ら,視覚に自己運動感覚を誘発
す ることができなかった可能性があげられ る。 自己運動感覚が生 じているな らば,対策の
逆向きに背景映像 を動かす と,平衡感覚情報 と視覚情報の矛盾が さらに悪化 し,TV視聴時
の不快感 よりも重度な車酔いを招 くはずである。適切な自己運動感覚を誘発できなかった
原因 として,背景の明るさを落 としすぎて,視覚刺激が弱まった可能性があげ られ る。
また,対策 4・
1,4・
2では奥行のある,丸みを帯びた背景映像に したが,この奥行のある映
像はカメラの画角 を大きくす ることで丸みを増 し,画角を小 さくす ることでより平 らな背
deg
】
に定めたが,森本 らの研究で
景映像 となる。今回の対策は予備実験により,画角を 45【
は白黒模様のテ クスチャを張った円筒の中心か らカメラで撮影 し,Yaw 角速度に応 じて背
景映像を移動 させ ることで 7
0%を超 える車酔い抑制効果を得ている。図 6.
1はその対策の
4
7
第 6章
考察・
映像表示図で,画角は 60【
deg
】
であった。図 61では画角が対策 41,42よりも大きいが,
1,2は,背景映像に横線が含まれているため
わずかに丸みを感 じる程度であった。対策 4・
1の映像 とは大きく異なる。この背景映
丸みを感 じやすい映像 とな り,改善効果を得た図 6.
像は,回転装置を用いた予備実験で,様々な Yaw角速度の回転を被験者に与え.その際に
画角を変 えて視聴 させ,最適な値 として得 られた画角を用いて表示 した。 しか し,顕著な
w 角速度に応 じて回転す
車酔い抑制効果を得ることはできなかった。複合対策 4は車の Ya
る円筒の中心か ら撮影 しているが,車載 TV のような小 さなディスプ レイでは円筒の-部 し
か表示 されないため,円筒の中心にいる感覚を与えられなかった可能性があげ られ る。 ま
た,実車でカープ走行時に発生す る遠心力が回転装置では発生 しない ことか ら、予備実験
でも実車を使って走行中に比例係数 を決定す るほ うが望ま しい と思われ るO これは画角 に
w 角速度,前後,遠心加速度に関係す る予備実験において
関す る予備実験だけでな く,Ya
も同様であると思われ る0
1
5
# 1
0
駐
Fu 5
0
02 0.
3 0.
4 05 0.
6 0.
7 08
比例係数
図 6.
1 森本 らの対策映像
図 6.
2 予備実験での比例係数の個人差
6.
4 今後の課題 とまとめ
今後の課題 として,平衡感覚 と-敦す る自己運動感覚を誘発す る対策の周辺映像の動き
の大きさには個人差がある。図 62は,平衡感覚 と自己運動感覚が一致 した際の対策映像の
パ ラメータの値 をヒス トグラムでグラフ化 し,被験者 ごとにグラフの色を変えて表 したb
グラフより個人により適切だと感 じる値に差があることが分かるOそのため個人によって
動きの大きさを最適化す ることができる手法が求められる。 また,本研究では,対策の背
景映像のテクスチャを変 えて実験を行ったが,背景の明るさや形状の影響で,適切な視覚
刺激 を与 えることができなかったため, 自己運動感覚が誘発 されず,車酔いを抑制できな
かった可能性がある。TV視聴の妨げにならず,かつ適切な自己運動感覚を誘発す ることが
できる効果的なテクスチャの作成が求められる。
本研究では,視覚に車の動きに応 じた視覚刺激を与え,視覚情報 と平衡感覚情報の矛盾
0%以上を抑制す るとい う効果が得 ら
を減少 させることで,TV視聴時に生 じる車酔いの 7
00% を超 える車酔い抑制効果を得ることが期待 さ
れたが,前述 した課題 を解決することで 1
れ る。
48
・
T
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・
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II
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I
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I
・
謝辞-
謝辞
本研究を行 うに当たって,有益なご指導,助言を頂いた井須 尚紀教授には深 く感謝致 し
ます。井須教授には,部活動 と研究の両立を認 めていただき,充実 した大学生転を送 らせ
ていただきま した。 さらに企業 との共同研究を通 じて,大変貴重な経験をさせて頂きま し
た。心か ら感謝致 します。また,本論文の執筆にともない,有益な ご指轟を頂きま した,
河合敦夫准教授,児玉哲司准教授,桝井文人助手,な らびに田中事務官に心より感謝いた
します。
多大な不快感が伴 うにもかかわ らず貴重な時間を割いて実験にご協力いただきました被
験者の方々,そ して不快感 と闘いなが らも共に実験を行った,森本明宏氏, 日高教孝氏,
朴丹氏,小山哲弘氏,中西窓花氏,杉浦友香氏,堂西幸紀子,浜 田悠生氏に深 く感謝いた
します。さらには研究で忙 しい中,嫌な顔せずに予備実験の被験者 としてご協力いただき,
さらにはこの三年間を忘れ られない思い出としてくれた碗究室の先輩,同郵 こも心より感
謝いた します。特に森本明宏氏には,研究だけでなく就職活動,大学生活においても多大
なるご支援をいただきま した。心か ら深 く感謝致 します。
最後に,大学院まで准学 させて頂き、様 々な面でいっ も支えて くれた両親,家族に心か ら
感謝 します。
4
9
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参考文献・
参考文献
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Pe
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n,1
6,
pp.
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7・
22,1
987
5
0
三重大学大学院
工学研 究科
ー
学会発表 リス ト
学会発表 リス ト
【
1
1辻仁志,森本明宏,日高教孝,朴丹,小 山哲弘 桝井文人 河合敦夫 井須 尚紀 ;
TV視聴
時の車酔いを低減す る映像表示法,
2
0
0
7年電子情報通信学会
基礎 ・境界 ソサイエテ ィ
大会講演論文集 ,
A2
0・
1
5
,
2
0
07
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9.
【
2
1辻仁志,森本明宏,井須 尚紀;車載 TV視聴 時に生 じる車酔いの低減対策,宇宙航空環境
4
4:1
02
,
2
0
0
7.
医学,
【
3】森本 明宏,辻仁志,中西窓花 杉浦友香,堂西幸紀子,桝井文人 河合敦夫,井須 尚紀;
加減速 に伴 う車酔い発症 に対処 した車載 T
V表示法,
2
0
0
8年映像情報 メデ ィア学会年次
大会,福岡,
2
0
0
8.
9.
【
41中西窓花 森本明宏,辻仁志,堂西幸紀子,杉浦友香,桝井文人,河合敦夫,井須 尚紀;
車酔い対策を施 した車載デ ィスプ レイの開発 ,
2
0
0
8年映像情報 メデ ィア学会年次大会,
2
0
0
8.
9.
福岡,
【
5】辻仁志,葛巻 弓,小川博也,河合敦夫,桝井文人,井須 尚紀;自動車が横揺れす る際の乗
り心地 に視覚が与 える影響 ,
2
0
0
8年映像情報 メデ ィア学会年次大会,福岡,
2
0
0
8.
9.
【
61辻仁志,小川 博也,河合 俊岳,井須 尚紀;横揺れ時の乗 り心地 に視覚が与 える影響,
第5
4回 日本宇宙航空環境 医学会総会,東京 ,
2
0
0
8.
ll.
【
7】中西窓花 森本 明宏,辻仁志,井須 尚紀;車酔いを抑制す る車載デ ィスプ レイの開発,
第5
4回 日本宇宙航空環境医学会総会,東京 ,
2
0
0
8.
ll.
51
・
付録・
一 付良一
1.予備実験
2.船酔 い抑制対策-2
006-2
00
8年度
5
2
:
.重 大 学 大 学 院
一
二学 研 究 科
・
付録 ・
1.予備実験
本論文の車酔い対策案は,車載ディスプ レイ を通 じて,車の動きと一致 した 自己運動感
覚 を視覚に与えることで,視覚 と平衡感覚の矛盾を失 くし,車酔いを抑制す ることが 目的
である.平衡感覚で知覚 され る車の動きと,視運動刺激により生 じる視覚誘導 自己運動感
覚を一致 させ ることが重要である。そこで,車酔い対策背景映像の適切な動きを求めるた
め,実車による予備実験 と室内の回転装置を用いた予備実験を行った。
1.
1 車両を用いた予備実験
車酔い対策映像の適切な動きを求めるため,実車実験を行い,加減速対策の式(
3.
3
)
,(
3.
4)
,
k,
,kp・ks,カープ対策の式
.
n,km ,ky。W ,k,。u を求めた。
係数 k,aw ,kc
(
4・
3
)
,(
3・
5
)の比例係数
(
4・
4)
,(
4・
5
)
,(
46)
,(
47
)
の比例
o
1
.
1
.
1
実験環境
0前後の男女 8名を用いて実車による予備実験を行 った。実験車は,
221
被験者は健康な 2
で説明をした実験車 1の 1
0人乗 りのハイエースを用いたb実験 コースは,加減速対策は
2.
2.
2で説明 した実験 コース 2の直線道路,カープ対策では実験 コース 1のカープの多い山
道を用いた8
1.
1
.
2
実験方法 と結果
走行中にそれぞれの対策映像を視聴 しなが ら,平衡感覚で知覚 され る車の動きと,視運
動刺激によ り生 じる視覚誘導 自己運動感覚が一致するまで,背景映像 の動き (
比例係数)
を被験者にポテンシ ョメー ター(
図 S
・
1
)
で調整 させた.調整終了後にポテンシ ョメーターの
値 を記録 し,これ を繰返 した。その際,ポテンシ ョメー ターの借はあ らか じめ設定 された
最小値,または最大値に合わせてか ら試行 を行 った。
k,
,kp,k8に関 してはすべて 33回・
ky WO,km ,kα n
o,
kyaw ・k,。u は 37・17,15・
試行数は比例係数
a
比例係数
38,48回であった。これ らの条件 ごとに得 られた値の平均値,
・
2に加減速対
もしくは中央値を用いて比例係数 を定めた。図 S
・
3カープ対策の予備実験の結果をヒス トグラムで示す。
蘇,図 S
図 sl1 ポテンショメーター
53
・
付録 ・
比例係数
a
) 加減速に比例 して前後す る比例係数
k
f
18
15
点 駐 滋
12
9
6
3
0
_
- __ _ _
比例俵 政
≡
b
) Pl
t
C
h角に比例 して回転す る
丁
0 0
.
20
.
4060
.
8 1 1
.
21
.
41
.
6
比例係数
C
) Pl
t
Ch角に比例 して上下する
比例係数 k
8
比例係数 kp
図 sl
・
2 加減速対策の予備実験の ヒス トグラム
54
L
r
t人 ;
ケ人ノ
アk
LT uf究 fr
一
付録 -
上
山
I
・ .
i血
L
O2 03 04 05 06 07 08
⊥
Q♂ QQQんQQObQQQbQP010㌔
比例係赦
L
QP
daQ・
QtQPlt
比例係数
b) 遠心加速度 に応 じて
a) Yaw 角速度 に応 じて
左右 に移動 させ る km
a
w
o
回転 させ る比例係数 ky
餐 虻 FB
・
二
日
L
05 06 07 08 09
1
畑
.
山
Q軒
Q鈴
l
。ph b5
3
b Q申
比el
C
tk
c
)
L
C.
5
3
1 。申
C.
申
Q・
t
比例係数
d
) Yaw 角速度 に応 じて
遠心加 速度 に応 じて
左右 に移動 させ る k,aw
回転 させ る比例係数 kc
e
no
1
5
#1
0
i
E
h
i5
0
」
止
し
02 0.
3 04 05 06 0.
7
比例係数
e
)遠 心加速度 に比例 して傾斜 させ る比例係 数 k,
o
u
図 sl
・
3 カーブ対策の予備実験の ヒス トグラム
55
・
付録 ・
1
.
2 回転装置(
コリオ リマシン)
を用いた予備実験
室内の回転装置 (
図S
4)を用いて,車酔い対策映像を表示する仮想空間上のカメラの最
適な撮影画角,及び平衡感覚で知覚 され る車の動きと,視運動刺激により生 じる視覚誘導
自己運動感覚を一致 させ る背景映像の最適な動 きの大きさを求めるため,恒常法 と呼ばれ
a
w角
る心理学実験 を行ったO室内の回転装置は遠心加速度を与えることは難 しいため,Y
速度 と前後加速度に応 じた背景映像の最適な動きを求めた。
l
・
4回転装置
図s
1
.
2.
1 実鼓環境
被験者は撮影画角を定める予備実験では健康男女 1
0名.
,
Ya
w角速度に応 じた背景映像の
移動速度を定める予備実験は 1
0名,前後加速度に応 じた背景映像の動 く大きさを定める予
4名で,室内の回転装置を用いて,実験を行 った。被験者か ら約 6
(
九m の距離に
備事件は 1
車載 TVを設置 した。
1
.
2.
2 実族方法
被験者を回転装置(
図s
l
4,S
・
5
)
に座 らせ,走行 中に予期 される範E
f
I
で,あらか じめ設定 し
a
w角速度,前後加速度になる正弦波状の回転刺激を与えることで,平衡感覚 と一致 し
たY
た 自己運動感覚を誘発す る背景映像の動きの大きさを与えるパラメー タを得た。
1
,
2.
2.
1 撮影画角
a
w回転
撮影画角を求める予備実験の条件は,回転装置を用いて決められた正弦波状の Y
を被験者 に与え,輯影画角を 3
0
,4
0,5
0,6
0【
d
e
g
】
に変更 した対策映像をランダムに与え,
試行後に背景映像が感覚 よりも丸みを帯びているか どうかを答えさせた。試行数は 3
0回で
あった。
5
6
-l
f
1人 I
t
7人 ′
1
;
t
I院
1
.
1
1
7
-研 究 iL
・
付録 ・
1
.
2.
2.
2 Ya
w 角速度 に応 じた移動速度
w 角速度を求める予備実験の条件は,回転装置を用いて 5,1
0,1
5、2
0,
背景映像の Ya
2
5【
d
e
g
】
の正弦波状の Ya
w回転を被験者に与え,背景映像の角速度を変更 した 5つの対策映
像 をランダムに与えた。試行後に感覚よ り背景映像の回転が速いか どうかを答 えさせた。
試行数は 3
0回であった。
1
.
2.
2.
3 前後加速度に応 じた傾斜角度 と上下移動角
t
C
h方向の傾斜角度,上下移動角度を求める予備実敦の条件は,回転装置 を
背景映像の Pl
,2,3,4l
m/
6
2
】
の加速度を与える正弦波状の Pi
t
c
h回転を被験者
用いて後向きの振幅が 1
に与え,背景映像の便斜角,上下移動角を変更 した 5 つの対策映像をランダムに与えた。
試行後に感覚よ り背景映像が大きい.または上下移動が大きいどうかを答えさせた。1試行
0回であった。
につき,便斜角か上下角の どちらかを答 えさせ,それぞれ行 った試行数は 3
1.
2.
3 実験結果
1
.
2.
3.
1 撮影画角
図8
5は縦軸に背景映像が感覚より丸みを帯びていると感 じた割合,横軸に撮影画角 を示
l
l
e
r
・
Ur
b
a
n法を用いて荷重を行い,最小二乗法により推定値 を求
す。この得 られた値 に Mu
めた。その結果,最適な画角を 4
6.
0【
d
e
g
】と定めた。
仙
角
'
-■
■
J
g
払
切
-0
蒜
撮
l
rI■ ■ t
■ l
0
l
.
⊃
L
J
t
2
l
L
n
7
[
%]% r
S
図s
l
・
5 背景映像が感覚 より丸みを帯びていると感 じた ヒス トグラム
1
.
2.
3.
2 Ya
w 角速度に応 じた移動速度
図S
・
6は横軸に回転装置で与えた Ya
w角速度,縦軸に背景映像の Ya
w角速度,また 5つ
l
l
e
r
・
Ur
ba
D法を用いて荷重を行い,
最小二乗法により
の点は刺激条件毎に得 られた値に Mu
刺激条件毎に推定 した値である。曲線は得 られた 5 つの推定値を用い,指数関数に回帰 し
た ものである。
5
7
・
付録 -
2
9 6
3
︻
s
JBap] 世 職 嘆 き^
e
壁 菖 畔鞭
e
5(
7.
07)
1
0(
1
41
) 1
5(
212) 20(
28.
4
) 25(
354
)
回転装置 のYaw角速度 【
deg/
S
】
:実効値 (
最大値)
図 S16 予備実験により得 られた Yaw 回転による背景映像の最適な角速皮
1
.
2.
3.
3 前後加速度に応 じた傾斜角度 と上下移動角
7は横軸に回転装置で与えた Yaw 角速度,縦軸に背景映像の Yaw 角速度,また 5つの
図S
ll
e
rUr
baJ
)法を用いて荷重を行い,最小二乗法により刺
点は刺激条件毎に得 られた債に Mu
激条件毎に推定 した値である。曲鰍 ま得 られた 5つの推定値を用い,指数関数に回帰 した
7)
。
ものである。同様に上下移動角 も求めた (
図S
2
2
1
とd
︽LP Q
) 菖 畔牡
]
︻
Bap
1
車
0
2
1
3
4
回転装置を傾斜させて与えた前後加速度 【
m/
82
1
図 sl・
7 予備実験によ り得 られた前後加速度による背景映像の最適な Pl
t
C
h角
5
8
_L
r
1人 7人
i
i院
l'
L
;
I
'研 究 書[
・
付録 -
5
0
[Ba
p
]︽ 粛波 iT
Q
)
車 菖畔 軒
0
1
2
3
4
回転装置を傾斜させて与えた前後加速度 【
m/S2】
図s
l
・
8 予備実験により得 られた前後加速度による背景映像の最適な上下移動角
5
9
・
付録 -
2.船酔い抑制対策
2.
12006年度
日程 .2
0
06
/
6
/
5-6
/7伊勢湾 および熊野灘周辺
対策 .
a
)鉛直方向の加速度 a
,
(
t
)
に応 じて背景映像を速 さ Vu
。
(
I
)
で上下移動 させ る。
b)船の Ro
u角 α(
t
)
【
r
ad
】
に応 じて,主映像の角度を 8r。
u【
r
ad】
Rol
l回転 させる。
)船の Rol
l角 α(
t
)
【
r
ad
】
に応 じて.背景映像の角度を OrQ
uhad]
Rol
l回転 させ る。
C
t
C
h角 α(
t
)
ha
d]
に応 じて,
主映像の角度を 0,1.
R
hha
d]
pi
t
c
h回転 させ る。
d
)船の Pl
上記の値は下記の式で求める。また比例係数 K は実験中に調整 した。
Vu。(t)-ku。×a,(
t
)
Or
.
u(t)=kr
o
ux
O
a(
t
)
p
.
t
c
h(t)=k。
i
t
c
hXa
(
t
)
船のロール回転に応じて
主映像をロール傾斜
船の鉛直方 向の加速度で
背景映像を上下
a)加速度に応 じて背景映像を上下
b)ロール回転に応 じて主映像をロール傾斜
船のロール回転に応じて
背景映像をロール傾斜
船のピッチ回転に応じて
主映像をピッチ傾斜
画
C
)ロール回転に応 じて背景映像をロール傾斜
d
)ピッチ回転に応 じて主映像をピッチ傾斜
図 S2
・
1 2006年度の船酔い抑制対策
6
0
L
r
L
.人 ;
;
'人 一
j
∠院
I・
i
fuf'
先付
付録 ・
2.
22007年度
3 伊勢湾お よび熊野灘周辺
○ 日時 ・2007/
5/
21-2
○対策 :
・船の Ro
l
l角 α(
t
)
had】
に応 じて,背景映像の角度を Or
o
ul
r
ad
]
Ro
l
l回転 させる。
t
C
h角 α(
t
)
【
r
ad】
に応 じて,背景映像の角度を 0 。lt
L
h【
r
ad
】
pl
t
C
h回転
・船の Pl
上下移動角度 0,
.
t
c
h
_
U
,l
r
ad】とする。
t
)
m /S21
l
に応 じて,背景映像を角速度 Vy
.
W(
t
)
【
L/
S
】
で回転 させ る。
・船の Yaw 角速度 W(
(
船上では Yaw 回転はほとんど生 じず,不必要な可能性あ り)
・
船の上下移動-背景映像を上下移動 (
プログラム上の問題 .
積分誤差が拡大-未使用)
上記の値を下記の式で表す。
0.
0
1
.
(
t
)
=kr.1.×α(
t
)
0
。
1
.
C
h(t)=k。
.
.
c
hX6(
t
)
0
。
l
t
du
。(t)=
kp
l
t
C
hXB
(
t
)
Vy
8
W(t)-k,
a
wxo(
t
)
比例係数は K.
a
:2
.
0,Kp
l
t
d
..2.
0,Kp
.
t
L
h
T
u
P:2.
0,Ky
A
W:1
.
0で実験を行った。
国S
22 2007年度の船酔い抑制対策
61
・
付録 ・
232008年度
○ 日時 :2
008.
6.
23-27 伊勢湾お よび熊野灘周辺
○対策 :
・船 の Ro
l
l角 a(
t
)
【
r
ad
]に応 じて,背景映像の角度 を Or
.
uhad】
Rol
l方向に回転 させ る。
t
c
h角 α(
t
)
ka
d
】
に応 じて,背景映像の角度 を 0,It
c
hhad
]
pi
t
c
h方向に回転,
・船 の Pi
上下移動角度 β。
l
t
丸u
。
【
r
ad】とす る。
・船の上下移動時 に生 じる鉛直方向の加速度 a
(
t
)
m/
l
S
2
】
に応 じて,背景映像 を Vu
,
(
t
)
l
L/
S
]
。(加算積分で算出)
で上下移動 させた
上記 の値 を下記の式で表す。
O
r
.
l
l
(t)-k
r
.
.
I
Xa(
t
)
0。
l
t
d(
t)≡kp
.
.
AX6(
t
)
0。
l
t
C
h
_
u
。
(t)-k,
1
.
C
h
_
u
。×8(
t
)
。×a(
t
)
Vu
.(t)-ku
比例係数は映画視聴 中,被験者にボ リュー ムを用いて適切な値 に調整 させた。
図8
2
3 後景 に赤 く細い線 を配置 し,前景 を透明化 した船酔い抑制対策
62
・
T
t人 一
7 人 7-院
1
.
'
L
i
シ研
先叫
付録・
図s2・4
図8
2・
4後景に赤く太い線を配置した船酔い抑制対策
後景に赤 く太い線 を配置 した船酔い抑制対策
し
ヽ
図s2・5
図 S2・
5前景に赤く細い線を配置した船酔い抑制対策
前景に赤 く細い線 を配置 した船酔い抑制対策
63
6
3
Fly UP