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識別根拠の提示が可能なメラノーマ自動識別システムの開発

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識別根拠の提示が可能なメラノーマ自動識別システムの開発
法政大学大学院理工学・工学研究科紀要 Vol.55(2014 年 3 月)
法政大学
識別根拠の提示が可能なメラノーマ自動識別システムの開発
Development of the melanoma classification system capable of presenting the grounds of classification
生馬 悠史
Yuji Ikuma
指導教員 彌冨 仁
法政大学大学院 工学研究科 情報電子工学専攻
Several researchers investigated automated diagnosis for malignant melanomas as known as the
worst skin cancer. Those systems, however, cannot provide grounds and reasons of classification
and therefore reliability of the system still remain as an open issue. In this paper, we developed a
new melanoma screening system based on an adaptive fuzzy inference neural network (AFINN).
AFINN creates fuzzy if-then rules automatically during its training, and provides both of the
final inference result with associated fuzzy rules as the grounds of classification. Our system
developed 88 fuzzy rules in consequence of the learning of 1148 dermoscopy images. Based on
only developed rules, our system achieved a sensitivity of 81.5% and a specificity of 73.9%. Since
this result is almost equivalent to expert dermatologists’ results, we consider the developed rules
are reasonable and this supplemental information improves system reliability.
Key Words : dermoscopy, melanoma, fuzzy neural network
1.
背景
AFINN によって作成されるルールは数値データであり
このままでは可読性に問題が残るため、ルールの提示の際に
メラノーマは極めて悪性度の高い皮膚癌である。早期発
言語化や視覚化を行った。言語化は識別に影響を与えたルー
見の場合予後は良好だが、母斑 (ほくろ) との判別は専門医
ルの重要な特徴量に対して、教師データ全ての平均および標
でもきわめて難しい。このため自動識別に関する研究も進
準偏差を元に数値を「極めて小さい」、「小さい」、「標準」、
められているが、提示結果の根拠や理由を明示できるもの
「大きい」、「極めて大きい」の 5 段階に変換した。また、同
はまだなく、結果に対する信頼性に課題が残されている。本
じ特徴量を教師データの悪性例の平均、標準偏差と良性例の
研究ではファジィif-then ルールを学習により自動的に得る
平均、標準偏差をもとに、悪性を赤、良性を青として色のつ
ことができる、Adaptive Fuzzy Inference Neural Network
いた帯でグラフ上に表現し、視覚化を行った。
(AFINN)[1] をメラノーマ識別に用い、識別に影響を与えた
if-then ルールを根拠として提示する。
2.
方法
本システムはテストデータに対し (1) 領域特定、(2) 特
徴抽出、(3) 特徴選択を行った後に (4)AFINN によってルー
ルを作成し、作成したルールをもとにテストデータの識別を
3.
(1)
結果
特徴選択
全 282 特徴量に対し、SVM のマージンを利用した特徴
選択によって表.1 に示す 9 特徴量が選択された。ただし、
表.1 に示す minT
g は minimum green(g) value inside the
tumor(T) の略である。
(2) AFINN によって作成されたルールの識別能
行う。また、本研究では母斑 980 例、メラノーマ 168 例か
AFINN による学習の結果、88 個の if-then ルールが構
らなる全 1148 例のダーモスコピー画像を教師データとして
築された。その一部を表.2 に示す。ただし、最左列の ID は
用いた。(1) では dermatologist-like tumor area extraction
ルールの通し番号、続く 9 つの値は if-then ルールの前件部
algorithm [2] を用い、腫瘍領域を特定した。(2) では実際に
にあたる各特徴量に対応するメンバーシップ関数の中央値、
臨床で用いられる診断指標を参考に、特定された腫瘍領域か
最右列は if-then ルールの後件部にあたる識別分類を母斑を
ら計 282 特徴量の抽出を行った。(3) では AFINN の識別境
0、メラノーマを 1 としてあらわしている。
界の形状を考慮に入れ、識別境界が類似する SVM で用いら
作成された 88 ルールに基づいて fuzzy 推論を行った際
れる特徴選択法 [3] を用いた。(4) では AFINN により識別
の識別能を leave-one-out cross validation で評価したとこ
ルールの作成や識別を行う。AFINN は入力部と出力部から
ろ、感度 81.5% 、特異度 73.9% となった。
(3) 識別根拠の提示
なる I/O 層と、if-then ルールと 1 対 1 で対応するルール層
の 2 層からなる。入力部とルール層の間にはメンバーシップ
関数が、ルール層と出力部の間には重みがそれぞれ配置され、
Fig.1 (a) から抽出した特徴量を入力した場合の AFINN
の識別結果および、識別に最も影響を与えたルールの適応度
メンバーシップ関数の各種パラメータと重みは学習時に調整
ηj を (c) 、(c) の中で重要とされた特徴量を言語化した結果
される。本研究では入力として選択された特徴量を用い、出
を (d) 、(d) の特徴量を色付きの帯で表し、悪性例の平均、
力として母斑を 0、メラノーマを 1 として学習を行った。
良性例の平均、入力値、選択されたルール、をそれぞれ提示
Table. 1 選択された特徴量
No.
Description
1
Minimum green value inside the tumor
2
Minimum red value in the periphery
3
Minimum difference of green value between skin and tumor
4
Maximum red value inside the tumor
5
Standard deviation of red value inside the tumor
6
Standard deviation of saturation value inside the tumor
7
Skewness of hue value inside the tumor
8
Skewness of blue value in the periphery
Area ratio between original tumor and
tumor brightness 130 or less
9
Addr.
minT
g
minP
r
S−T
ming
maxT
r
S.D.T
r
S.D.T
s
skwT
h
P
skw
b
area130
Table. 2 構築されたルール
ID
minT
g
14
22
25
111.94
-5.36
0.02
S−T
ming
-23.60
-13.94
-80.92
minP
r
200.81
-37.69
103.92
If (former part)
maxT
S.D.T
S.D.T
r
r
s
255.01
11.32
0.13
254.42
74.95
0.23
255.01
57.45
0.09
then
skwT
h
49.45
-1.40
88.92
skwP
b
-0.23
-0.91
-0.07
area130
classification*
0.02
0.77
0.85
0.00
0.99
1.00
* Consequent part of the fuzzy rule [0,1] (0:benign 1:malignant)
(a)
(b)
(c)
abbr.
minT
g
S−T
ming
minP
r
if (former part)
S.D.T
S.D.T
r
s
then*
maxT
r
skwT
h
skwP
b
area130
Extracted
feature
10
125
-24
244
39.86
0.19
10.14
-0.55
0.59
Rule:57
2.94
111.81
-26.61
169.50
14.17
0.25
11.21
-0.39
0.78
fitness
result
ηj
n/a
0.08
72.0
0
0.06
nevus
(d)
ルール ID
57
変数 1
変数名
等級
skwT
h
small
変数 2
変数名
minP
r
変数 3
等級
変数名
等級
normal
S−T
ming
normal
分類
ηj
識別結果
良性
71.96
0.01
nevus
Fig. 1 考案手法
した例を (b) に示す。
5.
結論
本研究では、メラノーマ識別に Adaptive Fuzzy Infer-
4.
考察
ence Neural Network (AFINN) を用いることにより、識別
結果と同時に識別の根拠を提示する事を可能とした。AFINN
の学習の結果、88 個のルールが作成され、それらに基づいて
ルールのみに基づき、AFINN で fuzzy 推論を行った結
推論を行い識別能を評価した結果、感度 81.5% 特異度 73.9%
果、感度 77.4% 特異度 84.6% が得られた。数値上では熟練
という結果を得た。この数値は熟練医と数値上同等であり、
医 (75-84%) と同等の識別能を獲得しているが、自動識別シ
作成されたルールが妥当であると考えられる。
ステムとしては先行研究より劣っているため、実用では他の
モデルとの併用も考えられる。
また、作成されたルールの全体の傾向は診断指標と類似
しており、利用者の認識と隔たりが少ないルールが作成でき
たと考えている。
識別根拠の提示については、一部の特徴量は臨床におけ
る一般的な表現とシステムの提示では意味が異なってしまう
点や、人間に分かりにくい特徴量が含まれる等の問題点が存
在する。前者は段階づけの基準を検討し直すことで改善が期
待できる。後者は今後の検討課題である。
参考文献
1) H.Iyatomi and M.Hagiwara, “Adaptive fuzzy inference
neural network,” Pattern Recognition, Vol. 32, No. 10,
pp.2049-2057, 2004.
H.Oka,
M.E.Celebi,
M.Hashimoto,
2) H.Iyatomi,
M.Hagiwara, M.Tanaka, K.Ogawa, “An improved
Internet-based melanoma screening system with
dermatologist-like tumor area extraction algorithm,”
Computerized Medical Imaging and Graphics, Vol. 32,
No. 7, pp.566-579, 2008.
3) I.Guyon, J.Weston, S.Barnhill, V.Vapnik, “Gene selection
for cancer classification using support vector machines,”
Machine Learning, Vol. 46, No. 1-3, pp.389-422, 2002.
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