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第 10 章
最貧国の貧困削減への Policy Coherence
10.1. 国際目標としての貧困削減
2000 年 9 月の国連ミレニアム・サミットにおいて、貧困削減を中心とする国連ミレニアム
宣 言 が 採 択さ れ 、 そ の内 容 を 体 現す る も の とし て ミ レ ニア ム 開 発 目標 ( Millennium
Development Goals: MDGs)がまとめられた1。サミットには 147 の国家元首を含む 189 の加
盟国が合意したことから、貧困削減は世界共通の目標と見なされている。
本書の中心概念である「政策一貫性」
(policy coherence)は、国際目標に対して各国の政策
が整合的であるかどうかを問題にしている。この点から言えば、今や世界的な目標と見なされ
ている発展途上国の貧困削減に対して、日本が採っている政策が整合的であるかどうかが問わ
れることとなる。
10.2. 発展途上国の貧困削減
では貧困削減の対象となる貧困者は世界にどのように分布しているのだろうか。図表 10-1
はアジアとアフリカの貧困者数と貧困者比率2を示したものである。この 2 地域を特に取り上げ
たのは、以下に述べるように両地域が 2 つの点において際立っているからである。
図表 10-1:アジアとアフリカの貧困者数と貧困者比率
貧困者数(貧困線=1日1ドル)単位:百万人
1987
1990
1993
1996
1998
2000
417.5
452.4
431.9
265.1
278.3
261
114.1
92.0
83.5
55.1
65.1
57
474.4
495.1
505.1
531.7
522.0
432
217.2
242.3
273.3
289.0
290.9
323
1183.2
1276.4
1304.3
1190.6
1198.9
1100
貧困者比率(同上、単位:%)
地域
1987
1990
1993
1996
1998
2000
東アジア・大洋州
26.6
27.6
25.2
14.9
15.3
14.5
中国を除く
23.9
18.5
15.9
10.0
11.3
10.6
南アジア
44.9
44.0
42.4
42.3
40.0
31.9
サハラ以南アフリカ
46.6
47.7
49.7
48.5
46.3
49.0
世界計
28.3
29.0
28.1
24.5
24.0
21.6
注:1998, 2000 年の値は推計値である。
出典:
(2000 年以外)World Bank, World Development Report 2000/2001;(2000 年)World Bank,
Global Economic Prospects 2004.
地域
東アジア・大洋州
中国を除く
南アジア
サハラ以南アフリカ
世界計
1
2
MDGs は貧困削減を筆頭に、教育、ジェンダーに関する平等、保健、環境等について目標を掲げている。詳
しくは国連開発計画のホームページ(http://www.undp.or.jp/Publications/MDGs.pdf)や富本[2003]、山形
[2003]等を参照のこと。
貧困者や貧困指標の定義については Deaton [1997], chapter 3; 山崎[1998]を参照のこと。
169
第一に、世界の貧困者の過半数が現在もアジアに住んでいる。1987 年には実に世界の貧困
者の 4 分の 3 がアジア人であり、2000 年においてもその比率は 6 割と推定されている。中で
も中国およびインドを中心とする南アジアが貧困者の多くを抱えている。ただし、東アジアの
貧困者数は 1990 年代に目に見えて減少している。貧困者数が年々増加する傾向のあった南ア
ジアにおいてさえ、2000 年には 1987 年の水準を下回る 4 億 3 千万人まで低下したと推定され
ている。このように、アジアは世界の過半の貧困者を抱えているものの、貧困削減はかなりの
速さで進んでいると言うことができよう。
これに対してサハラ以南アフリカ(以下アフリカと略)は、そもそも人口が少ないが故に世
界の貧困者に占める割合も小さいが、
アフリカの人口に占める貧困者の割合は 1987 年で 46.6%
に達しており、
この値は趨勢的な低下を見せることなく 2000 年には 49.0%と推定されている。
なおこの間、貧困者数は継続的に増加し、東アジアの値を上回るに至っている。これは東アジ
アや南アジアの貧困者比率が 1987 年から 2000 年までの間にそれぞれ 10 ポイント以上も低下
しているのと極めて大きな違いである。
まとめて言えば、依然としてアジアに貧困者が数多く存在するものの、特に東アジアにおい
ては貧困削減がかなりの程度進行しており、南アジアの貧困削減が始まった今となっては、世
界的な貧困削減の中心的な努力はアフリカに向けざるを得ない、ということである。本報告書
における分析対象国・地域の大半は東アジアであるが、世界の貧困削減に coherent な態度を
取るためには、アフリカの貧困削減に立ち向かう必要がある。
10.3. 貧困削減へのアプローチ
では貧困削減にはどのようなアプローチがあり得るのだろうか。大きく分けて 2 つのアプ
ローチに分類がなされている。石川[2002]は貧困削減アプローチを、貧困層への公共支出を
中 心 と し た Pro-Poor Targets Approach と 、 経 済 成 長 を 通 じ て 貧 困 削 減 を 達 成 す る
Broad-based Growth Approach に大別している3。両者とも貧困削減にとって不可欠であるこ
とは論をまたない。なぜならば、緊急支援が必要な状況では前者のアプローチをとらざるを得
ない一方で、公共支出は資金なしに永続するわけではないので、その資金を賄うために後者の
アプローチが必要となるからである。
前者を便宜的に公共支出アプローチ、後者を経済成長アプローチと呼ぼう。前者のアプロー
チにおける論争点は、どのような仕組みを用意すればターゲットであるはずの貧困層と、貧困
層を偽装して利益を得ようとするかも知れない非貧困層を区別できるか(ターゲティング問
題)という点に止まる(井伊[1998]
、Lipton and Ravallion[1995]
)
。これに対して経済成
長アプローチには、その意義および、これをどうやって達成できるか、という点に関して大き
な論争がある。
経済成長が貧困削減をもたらすかどうか、は「経済成長の利益が貧困層に均霑(trickle down)
するか」という観点から、長らく開発経済学上の主要な課題とされてきた4。具体的には、各国
3
4
同様の分類は Bhagwati[1988]によってもなされている。Bhagwati は公共支出中心のアプローチを direct
route、経済成長を指向するアプローチを indirect route と呼んでいる。
Baran [1957]は階級闘争の観点から、また Myrdal [1957]は「循環的因果関係」という用語により、富裕層が
経済成長の成果を独占する懸念を表明した。Adelman and Robinson [1988], pp. 952-953 にトリックル・ダ
ウン仮説についての簡単なサーベイがある。
170
の経済成長に trickle down が見られたかを検討することが議論の中心であり、どのような経済
成長が貧困層への trickle down を有効かつ早期に実現できるか、という点に関するコンセンサ
スは形成されるに至らなかった。
近年 Dollar and Kraay[2002]が、各国の家計調査を総合すると、国際的には「ある国の
国民所得が増加すれば、ほぼそれと同じ成長率だけその国の貧困層の所得も上昇する」という
結論を得たことから、trickle down に関する議論が再燃することとなった。近年の議論の焦点
は、
「世界的には一国の所得増が、当該国の貧困層の所得増につながる傾向が見られるのに対
して、そのような trickle down の関係が見られない国には、他国と比べてどのような違いがあ
るのか。どんな戦略の違いが国々の trickle down 実績の違いをもたらしたのか」である。
Trickle down、換言すれば貧困削減を伴う経済成長は、近年 Pro-Poor Growth と呼ばれてい
る(山形[2004a]
、山形・栗原[2003]
)
。上記の問題は、Pro-Poor Growth を実現する条件
は何か、と言い換えることができる。Pro-Poor Growth 研究の多くは、どの国の経済成長が
Pro-Poor Growth と呼ぶに値するか、
という Pro-Poor Growth の判別を中心課題としている5。
これに対して、どのようにしたら経済成長が pro-poor になるか、という観点からの研究は少な
い。どの産業を中心に経済成長を起こすことが貧困削減につながりやすいか、という課題に取
り組んだ研究の回答は大きく二つに分かれる。現在のところ最も多くの論者の支持を受けてい
るのは、
「貧困層が現在数多くすんでいる地域、または数多く雇用されている産業」の成長に
よって牽引される経済成長が Pro-Poor Growth の典型だ、とする見方である。この見方は農村
開発または農業中心の発展戦略に帰着する(Klasen[2001]; Lipton and Ravallion [1995]
)6。
いま一つは、今現在は規模が小さいままであるが、輸出競争力を得て海外に市場を求めること
ができれば、貧困層が数多く雇用されることが予想される労働集約産業を Pro-Poor Growth の
契機にできる、とする考え方である。この考え方は東アジアの輸出指向工業化が顕著になった
時代に注目されたが(World Bank[1990]
)
、Gunnar Myrdal は早くも 1960 年代にこの見方
を表明している(Myrdal[1968]
、chapter 24)
。近年の Pro-Poor Growth の議論の中では大
きく取り上げられていないので、筆者らが議論を提起しているところである(Kurihara and
Yamagata[2003]
)7。
事実、東アジアの経済発展においては、労働集約的製造業品が輸出成長の牽引役となり、経
済成長を達成すると共に未熟練労働力を吸収してきた。労働集約的製造業の発展が経済全体の
労働需要増と賃金の上昇をもたらし、貧困削減が実現したという経緯がある。そこで次節で、
東アジアの貧困削減の推移を統計的に追う。
5
6
7
Kakwani [2000]; Kakwani and Pernia [2000]; Ravallion and Chen [2001]を参照。この他、アジア開発銀行
の雑誌である Asian Development Review の 2000 年第 2 号に経済成長と不平等および貧困に関する特集が
組まれている。
Ravallion and Datt [1996, 1999]はインドを事例として用いて、貧困削減と農業部門の成長が並行して生じる
傾向にあることを示している。
つい最近の動きとして、Jeffrey Sachs が中心となって、ミレニアム開発目標を達成するための戦略を国連事
務総長に提言する Millennium Project が立ち上げられたことが注目される。
このグループは製造業を含む
「都
市の非伝統的産業」の重要性にも言及している(Millennium Project [2004]; Pangestu and Sachs [2004])。
171
10.4. 東アジアの貧困削減 8
東アジアの貧困削減は 1960/70 年代から経済成長に伴って続いているので、公共支出アプ
ローチというよりは経済成長アプローチによって達成されたという側面が強い。東アジアにお
いて貧困層が貧困から脱却するに際して、移転所得によるよりは自らの稼ぎ(非移転所得)が
増加することによって貧困削減が進んだと言うことができる。
では、東アジアにおいて貧困削減は農業が牽引したのだろうか、それとも工業が牽引したの
だろうか。現在の南アジアやアフリカと同様に、東アジアにおいてもかつて貧困層は農村に数
多く居住し、農業に携わっていた。貧困層の雇用はどちらの業種が主導したのであろうか。産
業構造全体としてはペティ=クラークの法則により、経済発展に伴って第一次産業の雇用シェ
アが低下し、第二次産業の雇用シェアが上昇する局面があることが知られている(Clark
[1957]
、Chenery and Taylor[1968]
、鳥居[1979]
、pp.46-50)
。同様の法則が貧困層の雇
用にもあてはまるのだろうか。
ここで貧困層を「教育水準の低い人々」と定義したとすれば、貧困層の産業別雇用者数が人
口センサスや労働力調査によってデータとして利用可能な国・地域がいくつかある。その中で
も経済成長と貧困削減がかなりの程度進んだことが知られている台湾、タイにおける貧困層の
雇用シェアの推移が図表 10-2、10-3 に示されている。これによれば、台湾における貧困層の
雇用シェアは全体としてみれば、農林水産業のシェアを低下させ、製造業のシェアを上昇させ
るように推移したことが見て取れる。また同時に、農林水産業のシェアの低下は製造業のシェ
アの上昇だけでは補いがつかず、それら以外の産業(サービス業、鉱業等)もシェアを伸ばし
たことが窺われる。
図表 10-2:台湾における非識字就業者の産業別雇用シェアの推移
40%
35%
製造業
30%
2000
25%
1985
1995
20%
1983
1990
15%
10%
1975
5%
1966
0%
5%
25%
45%
65%
農林水産業
出典:山形・栗原[2003]
原データ:Directorate-General of Budget, Accounting and Statistics, Executive Yuan, Republic
of China, Report on the Manpower Utilization Survey, Taiwan Area,各年版
これによって以下のようなことが分かる。教育水準の低い人々を貧困層と定義した場合、
1960 年代後半から 1990 年代後半の台湾、タイにおいて、貧困層の主たる就業先は農林水産業
であった。しかし、経済発展が進行したまさにその時期に、農林水産業は貧困層の雇用シェア
を低下させた。対照的に雇用シェアを伸ばしたのは製造業とそれら以外の産業であった。これ
は、貧困層に雇用機会を与えたかどうかという点に関して言えば、貧困削減は農林水産業に牽
引されたのではなく、製造業およびその他産業に牽引されたことを示している。
8
本節の記述は山形・栗原[2003]および Kurihara and Yamagata [2003]に基づいている。
172
図表 10-3:タイにおける非就学就業者の産業別雇用シェアの推移
8%
1995
1980
7%
1999
6%
製造業
1990
1975
5%
1985
4%
1971
1969
3%
65%
70%
75%
80%
85%
農林水産業
出典:山形・栗原[2003]
。
原データ:National Statistical Office, Report of the Labor Force Survey, Whole Kingdom,
各年版(雨期の号).
図表 10-4:モーリシャスにおける非就学就業者の産業別雇用シェアの推移
25%
2000
20%
1990
製造業
15%
10%
1983
5%
1972
0%
40%
45%
50%
55%
60%
65%
農林水産業
注:上記の値は全てモーリシャス島のみに限定したデータによっており、ロドリゲス島
は統計の連続性の観点から除かれている。
出典:山形・栗原[2003]
。
原データ:Central Statistical Office, Ministry of Economic Planning and Development,
Housing and Population Census of Mauritius,各年版.
興味深いことに、この傾向はアフリカの中で貧困削減が進んでいる数少ない国の一つである
モーリシャスにも見られる(図表 10-4)
。モーリシャスでは 1970 年代初めから 2000 年に至る
まで、農林水産業の貧困層雇用シェアが低下し、製造業のシェアが上昇している。注目される
のは、農林水産業のシェアの低下(20%ポイント弱)のほとんどが製造業のシェアの上昇(15%
ポイント)に置き換えられていることである。貧困層の雇用機会創出に関して、製造業が強い
牽引力を発揮したことがわかる。
モーリシャスの製造業の発展は縫製業を中心とする労働集約産業によって担われたことが
知られている(Bonaglia and Fukasaku[2002]
、 Romer [1993]
、 Subramanian and Roy
[2003]
、 Wellisz and Saw[1993]
)
。これは、明治期の日本の製糸、紡織に始まり、他の東
アジア諸国・経済の縫製、電気・電子組み立てに至る労働集約的製造業品の輸出をテコとした
経済発展、貧困削減と軌を一にしている。
いま一つ注目されるのは、このパターンによる製造業の発展と貧困層の雇用吸収が、現在の
いくつかのアジアの最貧国に引き継がれているということである。この点を次節で詳述する。
173
10.5. 低所得国の衣類産業と貧困削減
現在のアジアの低所得国の中には、労働集約産業の輸出が大きく発展している国がある。主
要な南アジア諸国はいずれも衣類や繊維製品に国際競争力を持っているが、中でもバングラデ
シュの衣類の輸出実績は際立っている。バングラデシュの輸出総額の 7 割程度が衣類であるう
え、後述のようにバングラデシュはアメリカ市場でも EU 市場でも世界で 9 位の輸出国となっ
ている。また、東南アジアの最貧国としてはカンボジアも衣類輸出を急増させており、バング
ラデシュと同様に、輸出総額の 7 割を衣類が占めるに至っている。この他、サハラ以南アフリ
カ諸国の中にも、縫製品輸出が大きな伸びを示している国がある。
10.5.1. バングラデシュとカンボジアの縫製業の発展と貧困削減
まずバングラデシュの衣類輸出と貧困削減との関係について見てみよう。図表 10-5 に見ら
れるようにバングラデシュの縫製品輸出は 1980 年代から始まり、現在までほぼ一本調子で成
長してきた。従来バングラデシュはジュートやジュート製品を主要輸出品目とする一次産品輸
出国であったが、1990 年代初めには早くも衣類の輸出額が総輸出額の半分に達し、衣類・繊
維製品以外の輸出額がほぼ一定に保たれたまま、輸出が成長したことが分かる。
図表 10-5:バングラデシュの輸出構造(単位:100 万米ドル)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
総輸出額
02
00
20
01
-2
0
19
99
-2
0
19
97
-9
8
19
95
-9
6
19
93
-9
4
19
91
-9
2
19
89
-9
0
19
87
-8
8
19
85
-8
6
19
83
-8
4
0
衣類輸出
出典:Quddus and Rashid[2000], Table 1, p. 51
縫製業が成長の過程で貧困層に雇用機会を与えてきたことが図表 10-6 に表れている。これ
は 2001 年にバングラデシュの首都ダッカ近郊のニット衣類生産企業に対して行った調査をま
とめたものである。縫製業の主要部門である縫製セクションおよび編み立てセクションにおい
て、最も低賃金の職種である補助工員(helper)の企業平均賃金は 2001 年に約 1000 タカであっ
た。この水準は図表 10-6 の注にあるように、ダッカで計測された貧困線と国際貧困線(1 日 1
ドル)の間に位置する。扶養家族のあるなしにもよるが、補助工員は男女問わずほぼ貧困線水
174
準の賃金を得ており、補助工員であり続ける限りその賃金率は経験年数が上がってもそれほど
増加しない。これに対し、Osmani et al.[2003]によれば 1999/2000 年度の家計調査によれ
ば、農村の貧困層は農業によって、自営の場合には月に 569 タカ、農業労働者としては 833 タ
カであった。非貧困層を含む平均でも自営、農業労働者の場合にそれぞれ 829、846 タカであっ
たので、農村の農業部門に従事する人々にとって、補助工員の賃金は十分魅力的だと考えられ
る。しかも、補助工員が工員(operator)へと昇進すれば、賃金は縫製部門の場合、1.5~3 倍
となる。2003 年にニット衣類・織布衣類生産企業全体に対して行われた調査によれば、補助
工員から工員への昇進に要する平均期間は 8 ヶ月に過ぎないこと、また補助工員と工員の間の
平均学歴に大きな差がないことから、補助工員から工員への昇進には大きな障壁がないことが
示唆されている(Fukunishi et al.[in progress]
)
。このようにバングラデシュの縫製業での
雇用機会を得た貧困層の人々は、まずは補助工員として貧困線レベルの所得で得、その後昇進
によって貧困から脱却していくものと考えられる。
図表 10-6:バングラデシュのニット衣類生産企業の平均賃金(2001 年:タカ)
経験年数
職種
男
女
1-5 年
男
6-9 年
女
男
経営者・管理職
4,000 15,000
9,661 7,500 11,549
その他事務職
3,688
-
5,139 5,673
技術者
4,000
-
作業監督者
4,500
-
工員
2,500
補助工員
1,026
技術者
4,875
事務部門
セーター、
靴下の
編み立て
1 年未満
-
-
10 年以上
女
男
8,333 15,228
男
14,000 12,415
女
男女計
9,210 12,293
7,661 15,000 11,269
-
7,131
8,005
7,142
8,889
10,000
-
8,625
-
8,625
-
5,151
4,800
5,085
5,269
3,454
4,979
-
1,311
1,110
1,213
-
7,203
5,000
7,190
-
4,914 4,000
5,191
4,941
9,000
2,500
4,515 3,271
7,052
3,614
8,000
1,015
1,386 1,166
-
女
平均
-
4,789 5,000
5,862
-
9,161
3,000
-
2,000
3,405 4,684
4,118
4,968
5,179
3,000
3,974
4,738
4,015
工員
1,686
1,600
3,008 3,053
3,343
2,993
4,484
5,500
3,218
3,015
3,153
補助工員
1,051
1,160
1,122 1,178
1,277
1,256
1,583
1,136
1,183
1,158
作業監督者
縫製
-
注:1 タカは約 2 円である。2001 年 8-11 月に筆者らが行ったニット衣類生産企業調査(標本数 249 社)によ
る
(Bakht, Yunus and Salimullah[2002]
)
。
単位はタカ
(US$1≈54Tk)
。
国際貧困線は約 1620Tk(≈US$30)
である。バングラデシュの首都ダッカの貧困線は、2000 年において、食糧のみを換算した場合 649Tk、食
糧以外の必需品も換算した場合 893Tk とされている。
同様の貧困削減のプロセスがカンボジアでも見られる。図表10-7はカンボジアの総輸出額と
衣類の輸出額およびその市場別内訳を示したものである。カンボジアの衣類輸出が始まったの
は1990年代半ばであるが、その後輸出額を急激に増加させ、現在ではカンボジアからの輸出額
の4分の3程度を占めていることが見て取れる。
バングラデシュと異なり、カンボジアの縫製業は比較的少数の企業(約 200 社)が大規模生
産を行う傾向があることから、政府による監視が行き届いており、アメリカの要請に基づいた
高い最低賃金(45 米ドル)が厳格に守られている(山形[2004b]
)
。したがって、カンボジア
の補助工員は 45 ドルというバングラデシュの補助工員の約 2 倍に相当する高賃金を得ている。
当然この賃金水準は国際貧困線、カンボジアの貧困線の双方を上回る高い値である。
175
図表 10-7:カンボジアの輸出構造(単位:100 万米ドル)
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
総輸出額
衣類輸出
米国向け衣類輸出
EU向け衣類輸出
出典:Hach and Acharya[2002].
図表 10-8 はバングラデシュで行われたのと同様の調査(2003 年実施)によるもので、164
社の縫製企業の回答に基づいている。回答した全ての企業が最低賃金法を遵守していると回答
している。これによれば工員に昇進すれば賃金は約 1~2 割増となる。また、補助工員から工
員への昇進に要する平均期間は 10.1 ヶ月であった。補助工員と工員の間に平均学歴に関する差
がないことから、カンボジアにおいても補助工員から工員への昇進には大きな制約がないこと
が推察される。
図表 10-8:カンボジア縫製業:縫製部門の平均賃金
1 年未満
1-5 年
6 年以上
男
女
男
女
男
女
作業監督者
142
101
127
117
238
208
工員
54
51
59
57
67
59
補助工員
45
46
51
50
48
51
注:2003 年 8-10 月に行った縫製企業調査(標本数 164 社)による。単位は米ドルである。カンボ
ジアの Poverty Reduction Strategy Paper(Council for Social Development[2002]
)によれ
ば、カンボジアの貧困線は、プノンペンにおいて月額 19 ドル、地方においては 14 ドルである。
10.5.2. 衣類貿易の現状
このように縫製業に代表される労働集約財生産は貧困削減に大きく貢献する可能性がある
が、ここで注意したいのは衣類を含む繊維製品の貿易は世界的に見ると未だに管理貿易の色彩
が強いということである(浦田[1990]
)
。アメリカ、EU、カナダといった国々は、1970 年代
の取り決めである多国間繊維取極(Multi-Fibre Arrangement:MFA)に基づき、輸入相手国
別、品目別に毎年輸入数量の上限(クォータ)を設定している。数量制限は世界貿易機関(World
Trade Organization: WTO)の精神に反することから、MFA 遺制の数量制限は漸次取り下げ、
2005 年には数量制限が全廃されることになっている(Gereffi and Memedovic[2003]
)
。
176
このような管理貿易によって、世界で最も競争力があるとされる中国の縫製品輸出が抑制さ
れているほか、アメリカ市場には中南米諸国からの輸入が比較的多く、EU 市場には EU 諸国、
中・東欧、中東・北アフリカからの輸入が比較的多い、といった特徴が表れている。
これらの点は図表 10-9、10-10 に明らかである。例えば 2002 年におけるアメリカへの衣類
輸出の第一位はメキシコで、これに中国、香港が続く。東アジア諸国以外にはホンジュラス、
ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラといった中米・カリブ海諸国、およびインド、
バングラデシュ、スリランカといった南アジア諸国が上位に入っている。カンボジアが 20 位
に入っていることも注目される。図表 10-10 には EU への縫製品の主要輸入相手国が掲げられ
ている。中国が 1 位であるが、それ以外 10 位までに入っている東アジア経済が香港だけであ
ることが目を惹く。トルコやチュニジア、モロッコといった中東・北アフリカ諸国以外では、
20 位までにランクされている国々のほとんどがヨーロッパ諸国である。その中でバングラデ
シュ、インドが比較的上位に食い込んでいることが注目される。
図表 10-9:アメリカへの相手国・地域別縫製品輸入
順位(2002 年)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
国・地域
世界計
メキシコ
中国
香港
ホンジュラス
ドミニカ共和国
韓国
インドネシア
インド
バングラデシュ
フィリピン
タイ
エルサルバドル
グアテマラ
カナダ
台湾
スリランカ
イタリア
トルコ
マカオ
カンボジア
2001 年
56460.38
7811.24
4602.35
4211.40
2343.59
2251.65
2181.92
2214.55
1717.10
2101.22
1891.05
1817.45
1611.72
1604.16
1584.92
1811.35
1504.83
1392.89
1044.85
1126.95
934.63
(単位:100 万米ドル)
2002 年
シェア(%): 2002 年
56962.95
100.00
7424.20
13.03
5593.70
9.82
3877.24
6.81
2439.68
4.28
2161.88
3.80
2061.95
3.62
2041.51
3.58
1901.51
3.34
1883.16
3.31
1815.12
3.19
1718.53
3.02
1674.85
2.94
1658.22
2.91
1610.11
2.83
1576.23
2.77
1413.18
2.48
1356.70
2.38
1189.70
2.09
1146.42
2.01
1042.45
1.83
32
レソト
214.81
320.66
0.56
36
モーリシャス
238.19
254.46
0.45
42
南アフリカ
175.08
181.02
0.32
47
ケニア
64.58
125.48
0.22
55
マダガスカル
177.99
89.34
0.16
56
スワジランド
47.96
89.07
0.16
77
マラウィ
11.22
11.43
0.02
81
ナミビア
0.10
6.69
0.01
85
ガーナ
0.24
0.46
0.00
出典:米国政府(Office of Textiles and Apparel, Department of Commerce)のホームページ
(http://otexa.ita.doc.gov/).
177
図表 10-10:EU への相手国・地域別縫製品輸入(2001 年)
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
(単位:100 万米ドル)
額
シェア(%)
66689.632
100.00
6798.343
10.19
5575.662
8.36
5186.298
7.78
4064.547
6.09
3191.933
4.79
3104.453
4.66
3023.949
4.53
2691.459
4.04
2688.320
4.03
2299.387
3.45
2291.082
3.44
2200.485
3.30
1889.494
2.83
1813.477
2.72
1781.433
2.67
1759.792
2.64
1580.881
2.37
972.645
1.46
933.303
1.40
933.165
1.40
国・地域
世界計
中国
トルコ
イタリア
香港
ドイツ
ルーマニア
チュニジア
モロッコ
バングラデシュ
ポルトガル
フランス
インド
ポーランド
インドネシア
オランダ
ベルギー
イギリス
タイ
ハンガリー
ブルガリア
26
モーリシャス
675.589
1.01
45
マダガスカル
267.294
0.40
64
南アフリカ
72.603
0.11
76
ジンバブウェ
20.847
0.03
78
ボツワナ
16.927
0.03
99
レソト
3.234
0.00
102
タンザニア
2.072
0.00
104
コートジボアール
1.957
0.00
105
シエラレオネ
1.949
0.00
108
モーリタニア
1.734
0.00
109
ケニア
1.645
0.00
114
モザンビーク
1.399
0.00
120
マラウィ
0.881
0.00
出典:Personal Computer Trade Analysis System(PC-TAS), version 2.1
を用いて、the International Trade Centre, UNCTAD/WTO が編集
した国連データを加工したもの。
これに対して、日本の衣類の輸入相手国別内訳はその構造がアメリカ、EU と大きく異なっ
ている(図表 10-11)
。というのは、日本の縫製品輸入元は中国に集中しているのである。アメ
リカ、EU の縫製品輸入に占める中国のシェアがせいぜい 10%程度であるのに対して、日本の
場合には中国のシェアが 8 割を超えている。それ以外の国のシェアは小さく、第 2-4 位のイタ
リア、ベトナム、韓国まで加えると 9 割を超えてしまう。背景としては、中国には日本企業が
直接投資して製品を日本に輸出するケースが多いことが考えられる。
背景はともかく、日本は最貧国の貧困削減に貢献しうる労働集約産業の一つである衣類につ
いて、隣のほとんど中進国と見なしうる中国から専ら輸入しており、他の最貧国からの輸入
シェアがほとんど無視し得るほど小さい。これは最貧国の貧困削減に関する policy coherence
という観点でいえば、非常に見栄えが悪いことになってしまっている。
178
図表 10-11:日本の縫製品輸入
(単位:百万米ドル)
順位:2003 年
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
国・地域
世界計
中国
イタリア
ベトナム
韓国
フランス
タイ
アメリカ
インドネシア
イギリス
インド
フィリピン
マレーシア
香港
スペイン
ドイツ
朝鮮民主主義人民共和国
ミャンマー
ルーマニア
ポルトガル
台湾
2002 年
16584.46
13217.81
888.10
458.76
356.33
215.06
201.97
230.20
148.78
101.98
83.04
89.77
62.07
48.26
34.19
35.58
54.39
14.99
17.66
19.16
26.28
2003 年
18388.93
15007.35
936.26
484.54
286.04
223.07
218.10
204.37
125.40
100.01
92.13
84.96
62.92
44.39
41.04
39.65
36.54
32.21
26.64
25.57
23.60
シェア(%): 2003 年
100.00
81.61
5.09
2.63
1.56
1.21
1.19
1.11
0.68
0.54
0.50
0.46
0.34
0.24
0.22
0.22
0.20
0.18
0.14
0.14
0.13
21
トルコ
18.36
22.36
0.12
23
バングラデシュ
18.98
19.30
0.10
24
スリランカ
15.81
17.74
0.10
25
メキシコ
19.58
16.34
0.09
34
カンボジア
5.20
8.29
0.05
40
モーリシャス
3.50
4.16
0.02
70
レソト
0.26
0.73
0.00
80
マダガスカル
0.44
0.39
0.00
95
南アフリカ
0.35
0.14
0.00
100
モーリタニア
0.00
0.11
0.00
104
ニジェール
0.00
0.05
0.00
105
ジンバブウェ
0.03
0.05
0.00
111
カーボベルデ
0.00
0.03
0.00
129
マリ
0.00
0.01
0.00
132
ケニア
0.00
0.01
0.00
133
ブルキナファソ
0.00
0.00
0.00
注:表の下段はアフリカ諸国を中心として、特に注目される貿易相手国・経済の値を挙げたもの
である。
出典:World Trade Atlas によって集計した日本の関税統計。
10.6. 貧困削減に関する policy coherence
アメリカも EU も衣類や繊維製品輸入に関する数量制限を行う一方、歴史的に関係の深い特
定地域の最貧国を優遇する貿易政策を実施している。日本は一般特恵関税制度(Generalized
System of Preferences:GSP)を発展途上国からの輸入に適用しているものの、発展途上国か
らの輸入額が多くないことから、日本の GSP が大きな貧困削減効果を上げているとは見なさ
れていない。
以下では、欧米の衣類輸入に関わる最貧国向け優遇制度として注目されているアメリカの
「アフリカ成長機会法(African Growth and Opportunity Act: AGOA)
」と EU の「兵器以外
の全ての品目の無関税・数量制限なし輸入(Everything But Arms: EBA)
」と「コトヌー協定
(the Cotonou Agreement)
」について説明する。その後、日本がどのような角度から最貧国の
179
縫製業支援が可能であるかを考察する。
10.6.1. 縫製品輸入に関わる欧米の最貧国向け政策
WTO の大原則の一つには「無差別」があり、特定国だけに特別の利益を与えることが禁じ
られている。しかし、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)時代の 1979 年に、東京ラウ
ンドにおいて授権条項(Enabling Clause)が採択され、発展途上国に対しては他国より有利
な待遇を供与できることが合意された。これによって GSP が無差別原則の例外として認めら
れることとなった(高瀬[1995]
;箭内[2003]
)
。
このように発展途上国に対しての優遇措置については WTO も一定の理解を示していること
から、アメリカおよび EU は様々な政治的、外交的、歴史的、経済的理由から、発展途上国へ
の優遇措置を執り、対象国の注目を集めている。
(1) アメリカ
まずアメリカは、その国内法として「2000 年貿易開発法」を制定し、その中で「アフリカ
成長機会法(African Growth and Opportunity Act:AGOA)
」と、1983 年に制定された「米
=カリブ湾・経済復興法(US-Caribbean Basin Economic Recovery Act)
」を組み入れるよう
改編している(Gibbon [2003]; United Nations [2003]
;Yanai[2004]
;福西[2004]
)
。
ここでは貧困問題がより深刻なアフリカ諸国を対象とした AGOA に焦点を絞って、その仕組
みを概観する。
AGOA は条約ではなくアメリカの国内法として、アメリカが一方的にアフリカ諸国に対して
与える特恵を定めている(http://www.agoa.gov/index.html)
。その対象国は、
(1)ガバナンス
等が良好で、
(2)輸出管理制度が整っているサハラ以南アフリカ諸国である。対象国には特定
品目に関し、無関税・数量制限枠なしのアメリカ輸出が認められている。AGOA 対象品目別の
輸出実績に関して言えば、アフリカからの AGOA 対象輸出総額の 8 割が石油関連であるが、
残りの 2 割の約半分(つまり全体の 1 割)は衣類である。石油関連製品は少数の産油国によっ
てのみ輸出されており、他のアフリカ諸国には無縁であることから、後者の国々にとっては
AGOA を通じて衣類をアメリカに輸出できるかどうかが、AGOA 活用の一つの焦点となって
いる。
衣類輸出に関する AGOA 適用については原産地規則(rule of origin)が大きなポイントで
ある。国別の貿易関連優遇措置の適用にあたっては、原産地の確定が第一の要件となる。例え
ば対象品目について優遇対象国で付加された価値額が非常に少なければ、当該品目を優遇対象
国産と見なして優遇措置を与えるわけにはいかない、ということになる。多くの優遇措置は、
優遇措置対象国で発生した付加価値の最低必要割合を定めており、その率を超える割合の付加
価値が優遇措置対象国で発生して初めてその国を「原産地」と認め、当該優遇措置を適用する
こととなる。この「原産地」を決める規則が原産地規則である。
AGOA の対象となる製品を判定するに当たり、原産地規則は低開発国とそれ以外の国に対し
て別個に定められている。
まずサハラ以南アフリカ諸国は
(1)
1998 年に一人当たり所得が 1500
ドル以下であった Lesser Developed Beneficiary Country(LDBC)と(2)それ以外(南アフ
リカ、モーリシャス等)の国に二分される。サハラ以南アフリカのほとんどの国は LDBC に分
類されている。
LDBC は 2004 年 9 月までは、縫製プロセスのみが対象国で行われていれば、AGOA による
優遇措置が適用されることとなっていた。換言すれば、縫製の原材料の布をどこから調達する
180
かは問われなかった。これに対し、非 LDBC は当該国、他の AGOA 対象国、またはアメリカ
で生産された糸・布を用いなければ、優遇措置が受けられない。当初は LDBC 向けの原産地規
則の優遇が 2004 年 9 月を限度とすることとされていたのであるが、2004 年 7 月に制定された
AGOA Acceleration Act of 2004(略称 AGOA III)によって、この優遇措置は 2007 年 9 月ま
で継続されることとなった。
図表 10-12 および図表 10-9 の下段に見られるようにアフリカのいくつかの国々は AGOA を
活用して輸出を伸ばしている。モーリシャス、南アフリカといった非 LDBC は AGOA が適用
された衣類輸出の割合が小さいが、他の LDBCs はアメリカへの衣類輸出のほとんどが AGOA
対象であることがわかる。
図表 10-12:アメリカ向け縫製品輸出に対する AGOA の効果
(単位:100 万米ドル)
国
モーリシャス
レソト
南アフリカ
マダガスカル
ケニア
スワジランド
ジンバブウェ
ボツワナ
その他
アフリカ計
2000 年
総額
245
140
141
110
44
32
18
8
10
総額
238
217
173
178
64
48
14
3
18
747
953
2001 年
AGOA 適用
39
129
30
92
51
8
0
0
0
349
総額
255
321
181
89
126
89
6
-
2002 年
AGOA 適用
107
318
85
75
121
74
4
-
出典:Fukunishi et al.[in progress].
(2) EU
EU はその前身である欧州経済共同体(EEC)が 1963 年に結んだヤウンデ協定、そしてそ
れを継承するロメ協定によって、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP 諸国)との間に協力
関係を築いてきた。2003 年にはロメ協定がコトヌー協定に引き継がれ、ヨーロッパ諸国から
ACP 諸国への非互恵的特恵が与えられている(川崎[2004]
;日本貿易振興会[2001]
)
。ヤウ
ンデ協定下では仏語圏アフリカ諸国が恩恵を受ける傾向にあったが、1973 年にイギリスが
EEC に加盟した後、英連邦諸国を招き入れる形でロメ協定が結ばれるといったように、旧植民
地諸国と旧宗主国の協力関係への指向が底流にある。特にモーリシャスはロメ協定を活用して
衣類の輸出を伸ばしたと理解されている(図表 10-10 の下段を参照)
。
これに加えて EU は、2001 年に GSP をさらに拡張し、後発発展途上国(Least Developed
Countries: LDC )9からの兵器(および農産品 3 品目)以外の全ての品目に関し無関税で数量
規制なしの輸入を認めることとした(Winters[2003]
)
。この制度は Everything But Arms
(EBA)と呼ばれている。これにより、非 LDC である中国やインド、ベトナム製の衣類が EU
市場においてクォータを課せられているのに対して、バングラデシュやカンボジアといった
LDC は、ACP 諸国でなくとも無関税、数量制限枠なしの衣類輸出ができるという特恵を享受
している。
9
これは国連の定義によるものである。詳しくは The Office of the High Representative for the Least
Developed Countries, Landlocked Developing Countries and Small Island Developing States のホーム
ページ(http://www.un.org/special-rep/ohrlls/ldc/default.htm)を参照のこと。
181
10.6.2. 日本は最貧国の縫製業をどう支援できるか
(1) 市場拡大に資することができるか
日本も GSP を採用しており、LDC には一定の品目に対して無関税、数量制限枠なしの輸出
を認めている10。しかし、結果として LDCs からの輸入が目立って増えていないこと、また EU
が LDC からの輸入に対する優遇を「兵器以外は全て無関税、数量枠なし」とわかりやすく提
示している11のに対して、日本の特恵制度は品目毎の扱いが複雑なこともあって、LDCs は日
本が彼らに対して大きな優遇措置を与えているとは認識していないようである。
特に衣類については図表 10-11 に明らかなように、輸入元は中国一辺倒と言ってよいほど
偏っているので、LDC に対していかに寛容な制度を採っていると主張したところで説得力に欠
ける。アメリカ、EU 共に、衣類を含む繊維製品については長い間、競争相手国に対しては輸
入数量制限を課していたので、後発国が参入する余地があったのである。そして、数量割り当
てを増やすことや、関税減免を通じて価格面での優遇を与えることによって、結果的に、貧困
削減に対して coherent な政策を採ってきたことになる。一方日本は、そもそも明治から戦後
にかけて繊維製品の輸出国であり、後発国が日本市場に参入する余地は事実上皆無であった。
消費者も日本製の衣類の仕様に慣れているので、欧米仕様の衣類が日本市場で常に受け入れら
れるとは限らなかった。したがって数量制限はなく、GSP が適用されていたにもかかわらず後
発国からの縫製品の輸入が趨勢的に続く様子はない。せいぜい中国とベトナムからの輸出が目
立つ程度である。このように後発国製衣類の市場としての日本の役割には、現在のままでは大
きな展望が開けていない。
(2) 供給能力増強に資することができるか
そもそも 1970-90 年代の東アジアの経済成長に関して日本は市場としての大きな役割は果た
さなかった。現在の最貧国にも大きな市場を提供できていないのであるが、その傾向は過去か
ら一貫していると言える。
むしろ過去の東アジアの経済成長のプロセスにおいて日本は供給サイドから大きな貢献を
行ったのである。具体的には、東アジア諸国・経済に直接投資を行い生産能力の強化を助けた。
また、資本財や部品を供給して、それら経済の生産増加を促進した。実際、紡機織機、編み機、
ミシン、糸、布等々について、日本から他の東アジア諸国・経済への輸出は顕著であった。直
接投資も資本財・中間財供給も直接・間接の技術移転効果を伴うことがあることから、日本の
貢献は少なくとも供給サイドにおいては多面的であったと考えられる。
翻って現在の後発発展途上国の縫製業の供給サイドに対する日本の存在感は薄まっている。
筆者の 2003 年に筆者らが行った調査によれば、バングラデシュ、カンボジア、ケニアの縫製
業への日本の直接投資件数はかなり少ない。多いのは中国、香港、インド、韓国、台湾等であ
る(Fukunishi et al. [in progress]
、山形[2004b]
)
。また、織機、編み機、についてはシン
ガポール、台湾、韓国製のものが目立っていた。ミシンやファスナー等は日系企業製(日系企
業の海外生産も含む)のものがいまだ支配的であるものの、糸、布についてはかなりの程度、
中国、香港、インド等からの輸入品が目立っており、日本製品の存在感は薄い。
これに対して日本の援助供与側からは、現在の日本が技術的に競争力のある情報通信技術
(Information and Technology:IT)分野で協力ができないか、という声があるが、それは後
10
11
外務省のホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/t_kanzei/)を参照のこと。
実際には農産品 3 品目も例外とされている。
182
発発展途上国においては、まだ具体的な形で結実していない。これらの国々の高学歴層は IT
に関する知識も、それらが重要であるという意識も、情報通新機器を購入する財力も持ち合わ
せているが、それ以外の人々にとっては携帯電話以外の情報通新機器はまだまだ遠い存在であ
り、それらを充分に活用してデジタル・ディバイドを埋めるだけの準備がない。筆者は 2000
年にバングラデシュにおいて主導的地位にある社会科学系研究所に客員として所属しており、
その際に日本の援助関係者が同研究所を訪問して IT 関連の日本の援助の貧困削減に与える可
能性について説いたときの、バングラデシュ側参加者の白けた雰囲気を目の当たりにしたこと
がある。彼らの反応は「貧困削減のためにやるべきことは IT 以外に、まだまだたくさんある
だろう」というものであった。
「日本が出せるもの」を中心に構想された援助計画が受け入れ
国側の需要と必ずしも合致しないことを示す一例であった。
これまで東アジアにおいて、日本が労働集約的産業の輸出拡大に金融・技術支援を行った場
合、それは現地企業の競争力強化を通じて、それら現地企業の取引相手である日系企業の現地
進出や技術貿易、資本財・中間財輸出を促し、日系企業も間接的に利益を上げることに資して
きた。したがってこのタイプの支援は、援助受け入れ国にも日本企業にも利益になるという意
味で日本国民12の支持が得やすかった。日本の繊維産業の比較優位が失われていった頃、日本
は東アジアに移転すべき技術も資本設備も持っており、その際には、繊維産業の比較優位を遙
か以前に失った欧米諸国は提供できるものが市場しかなかった。繊維産業の比較優位を他の東
アジアも失いつつある現在、後発国に移転すべき技術や資本設備を持っているのは香港、韓国、
台湾、シンガポール等であって、どうも日本ではないようである。
これからの後発発展途上国における労働集約的産業の輸出支援は、それが日本企業に対して
もかなりの利益を生み出すということは期待せずに行わなければならないかもしれない。ある
いは、日本が得意としてきた発展途上国の産業への支援は、徐々に比較優位を失うことを自覚
して、他の分野の支援へと重点を移していかなければならないのかもしれない。これまでの日
本の発展途上国産業支援は、他の先進国と途上国の間に比べれば近い技術的距離を活用して有
効に実施したという側面があり、最貧国と現在の日本のように技術的距離がかなり離れてしま
うと、片方が IT 技術を供給しようと思っているときに片方は労働集約的技術を求めるといっ
たように需給が一致しない可能性が高まるように思われる。
10.7. おわりに:欧米の方向性との比較から
日本と最貧国との技術的・文化的距離13は遠いが、それは他の先進国も同じである。彼らは
どのような方針で最貧国支援を行っているのだろうか。
まずアメリカは、多国間関係より二国間関係を重視し、特恵の出し手が誰であるかを明示す
ることで、いわば恩を売り、自国の利益を間接的に得ようとしているように見える。例えばア
フリカの発展を目標としていながらも、それを国連等多国間枠組みの中で達成しようとせず、
AGOA を通してアメリカを強く意識させた形でアフリカの最貧国に特恵を供与している。この
ような傾向は感染症対策についても見られる。アメリカは発展途上国への感染症対策のための
150 億ドルの援助を 2003 年 5 月に決めたが、そのうち国際社会が協調して創設し、国連機関
12
13
ここでは消費者としての日本国民のみならず、財界に代表される生産者としての日本国民も意識している。
ここでは技術、文化の優劣は問題にしていない。
183
が中心となって運営している「エイズ・結核・マラリアのためのグローバル・ファンド(Global
Fund to fight AIDS、Tuberculosis and Malaria:GFATM)
」にはそのうちの 10 億ドル(しか
も条件次第で減額があり得る)を拠出するにすぎない(Economist[2003]
)
。
一方 EU は、自国の利益むき出して援助を行うアメリカの向こうを張って、貧困削減という
正論を吐くことで、国際開発の議論の主導権を握っている。中でもイギリスと北欧諸国は開発
援助を、援助受け入れ国民の貧困削減のみを考慮して供与すると腹を決め、それ以外の国益の
入り込む余地を無くすことで国際社会に存在感を示している。そもそも有償援助が少ないので、
これらの諸国の企業が自国の経済援助を通じて得られる派生利益は少ない。むしろ他国の援助
のアンタイド比率が高まれば、他国の援助プロジェクトの一部を受注することに、これら諸国
の企業は利益を求めていくことになろう。
このような国際情勢の中で、日本はどのようにして世界の貧困削減に coherent な政策を示
すことができるのだろうか。日本にとって地理的かつ歴史的に近いアジアでは後発 ASEAN 諸
国も南アジア諸国も成長の兆しを見せている。となると、貧困削減の主戦場はヨーロッパのお
膝元のアフリカに移らざるを得ない。ある意味でいえば、日本の隣人の貧困削減は成果を上げ
ているので、他地域に目を向けなければならないわけである。日本は遠くかつ慣れない地での
奮闘を余儀なくされる。人脈も信用も強い経済的つながりもない中で国際協力の実を上げるこ
とが求められる。
仮に日本が最貧国の貧困削減と整合的な政策や態度を取ろうとするならば、アメリカと EU
のどちらかを手本にすべきだろうか。筆者は、日本がアメリカを手本にすることはできないと
考える。というのは、憎まれることを織り込み済みで二国間援助を指向するアメリカのやり方
は、他方で平和維持活動での貢献や、軍事介入が行えるだけの軍備の裏付け、そして世界経済
を左右できるだけの経済力があって初めて成り立つと思われるからである。アメリカが自国の
利益を追求していることは誰でも知っているので、今さら隠す必要はない。それを批判する者
がいたとしたら、ただ言わせておくか、または縁を切ればいいのである。
現在の日本は、軍事、政治、経済等々どの分野についても、世界を牛耳るだけの影響力を持っ
ていない。その意味では EU 諸国と立場が近い。貧困削減という正論を吐き、それに整合的な
政策を採り続けていなければ、スケープ・ゴートにされて、開発貢献度指標(Commitment to
Development Index)14で最低の点数をもらうことも充分あり得ることである。
日本が貧困削減に関して独自色を出していくとした場合、一つの可能な選択肢は、世界の誰
もが貧困削減のために必要と考えていながら、ミレニアム開発目標には周辺的にしか取り扱わ
れていない「雇用」を前面に押し出すことである。どこの国も公共部門の効率化に苦しんでい
る現在、当然のことながら公共部門主導で雇用創出を行うわけにはいかない。民間部門主導で
雇用創出を行わざるを得ず、政策としては政府が自ら実需を産み出すというより、進むべき方
向にシグナルを出す程度に留まろう。しかしそれでも、つい十数年前に東アジアで起こった製
造業の雇用創出を通じた貧困削減の経験をシグナルの裏付けとして提示する意義は大きいと
考える。
(山形辰史 日本貿易振興機構・アジア経済研究所開発研究センター・
開発戦略研究グループ長)
14
この指標の詳細についてはこの指標を作成した Center for Global Development(CGD)のホームページ
(http://www.cgdev.org/#)や小浜・澤田[2003]を参照のこと。
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