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講演概要(PDF形式:293KB)

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講演概要(PDF形式:293KB)
平成26年度防災リーダー研修会実施報告
主催:さいたま市自主防災組織連絡協議会
共催:さいたま市・気象庁 熊谷地方気象台
平成27年2月28日(土)に市民会館おおみや
大ホールにて、気象庁熊谷地方気象台の加藤
敏彦台長、宮崎 浩次長をお招きし、「自然災害
の現状と防災情報の活用について」をテーマに、
ご講演をいただき、地域の自主防災組織・自治会
・防災アドバイザーの皆様から、1,250名の参加が
ありました。
【 講演概要 】
≪ 地震災害について ≫ 宮崎 浩先生
① 世界の震源分布(地震発生のしくみ)
世界の地震の約 10%は日本で起きており、日本は地震大国と言われている。日本国内に
住んでいる限り、どこに住んでいても地震と向き合わなければならない。
プレートは、地球内部で対流しているマントルの上に乗っている。また、プレートはマントル
の流れにより、年数センチ動いており、日本海溝で地下に沈み込んでいる。
日本付近には陸のプレートがあり、太平洋プレートより軽いため、日本海溝で太平洋プレー
トが沈み込むこととなる。また、南海トラフでも同様にフィリピン海プレートが沈み込むことと
なる。そのため、日本付近では地震が多く発生している。
地震は、地下の岩盤がずれ動くことで発生する。岩盤の左右から圧力がかかり、岩盤が割
れ上下にずれ込むことで地震が発生する。
② 日本周辺で発生する地震
日本列島周辺で発生する地震には、内陸の活断層で発生する活断層型地震(平成7年に
発生した阪神淡路大震災、平成16年に発生した新潟県中越地震)、海のプレートと陸のプ
レートとの境界で発生する海溝型地震(平成23年の東日本大震災)がある。
阪神淡路大震災での被害状況写真(野島断層帯・高速道路の倒壊・損壊の激しいビル・
高架とともに崩れ落ちた阪神電車・発生した火災)にて状況説明
新潟県中越地震での被害状況写真(山崩れ・上越新幹線の脱線・高速道路の陥没・土砂
崩れ・土砂崩れからの救出作業)にて状況説明
東日本大震災での被害状況写真(仙台空港に押し寄せる津波・水戸市の那珂川を遡上
する津波)にて状況説明
③ 緊急地震速報
◆地震とは
地震は、地下で岩盤がずれて発生。ずれ始めた場所が震源。地震そのものの大きさがマ
グニチュード。地震による揺れの強さが震度。
地震は、震源に近いほど揺れが大きく、震源に遠いほど揺れが小さくなる。また、地盤が軟
らかい場所ほど揺れが大きくなる。
◆P波とS波とは
地震波にはP波とS波があり、最初に「カタカタ」と揺れるのがP波、その次に「グラグラ」と
揺れるのがS波となる。
地震波の性質として、P波の方がS波より早く伝わり、強い揺れによる被害をもたらすのは
主にS波となる。
◆緊急地震速報のしくみとは
地震が発生し、震源に近い地震計が揺れ(P波)を感知したら、そのデータが瞬時に気象庁
へ送られる。
送られたデータを瞬時に解析し、震源の位置、地震の規模(マグニチュード)、予想される震
度をコンピューターが計算し、緊急地震速報を発表する。
P波は揺れとしては小さいが、後ろからくるS波は揺れが大きいため、震源に近い家ほど緊
急地震速報は間に合わないが、震源から遠い家は緊急地震速報が揺れがくる前から分か
る。
実際に強い揺れが到達するまでの時間は、震源が近ければすぐだが、遠ければ数十秒か
かるので、この間に避難することができる。
予想した震度には±1階級程度の誤差を伴う。
最大震度 5 弱以上が予想された場合に、震度 4 以上の揺れを予想した地域に発表され
る。
緊急地震速報が発表されたら、1分程度は強い揺れに備えて身を守る。
緊急地震速報が発表されたとしても、どの地域においても震度4以上になるというわけでは
ない。
◆緊急地震速報を見聞きしたときは
家庭内や職場では、頭を保護し丈夫な机の下などに隠れ、あわてて外へ飛び出さない。
人が多く集まる施設では、係員の指示に従い、あわてて出口に殺到しない。
街中では、ブロック塀から離れ、看板や割れたガラスの落下に注意する。特にビル街は要
注意。
電車やバスなどに乗車中は、つり皮や手すりにしっかりつかまる。
山や崖付近では、落石やがけ崩れに注意
◆緊急地震速報の入手方法
テレビ・ラジオの他、携帯電話(スマートフォン)、行政が発出する防災行政無線より情報を
入手することができる。
④ まとめ∼地震から身を守るために∼
緊急地震速報が間に合わない場合もあるため、揺れを感じたり、緊急地震速報を見聞きし
たら、まず身の安全を守る行動をとる。
日本では大きな地震がいつ起きてもおかしくない状況である。ふだんから地震への備えを
しておくことが大事である。
≪ 自然災害について ≫ 加藤 敏彦先生
① はじめに
自然は、人の想像を絶する激烈な現象を、しばしばもたらすものである。
② 大雨災害
◆大雨による主な災害
大雨は、次の3つの災害をもたらす。
・土砂災害
・洪水害 ※河川の氾濫によるもの
・浸水害 ※降った雨が溜まって浸水するもの
◆埼玉県における主な気象災害
過去の都道府県別土砂災害発生状況(平成 16 年∼25 年の合計)を見ても、埼玉県
は全国で一番土砂災害の発生数が少ない。
埼玉県の主な災害を歴史的に見てみると、昭和 22 年 9 月 14 日∼15 日にかけて「カ
スリーン台風」が北上し、南海上にあった秋雨前線の影響で大雨となり、甚大な被
害をもたらした過去がある。その際に横瀬町(芦ヶ久保)にて大規模な土砂災害が
発生し、7名が亡くなった。
「カスリーン台風」では、関東地方の広範囲にわたって洪水、浸水被害が発生した。
荒川・利根川が決壊し、東京都まで水が流れた。
◆浸水害(都市型水害)
近年、洪水や土砂災害のハード面での措置が講じられているが、都市型水害として
浸水害が問題となっている。
都市型の浸水害については、以下の理由や特徴がある。
・地面の舗装部分が多くなり、雨水が地下に染み込まない。
・雨水が河川を流れて、中小河川に一度に集まり、そこが浸水する。
・地下街等に流れ込む。
・アンダーパス(道路の低い所)に水が溜まる。
浸水が起きてから行動(避難)するのは非常に困難な状況となるため、浸水前の避
難が必要である。
人が行動できなくなる水の深さとして、子供は水位20センチ、成人女性は水位
50センチ、成人男性は水位70センチが目安となる。
浸水の中、避難するのは非常に危険なので、行動をしてはいけない。ただし、浸水
していても、自宅が安全な状態であれば、垂直避難(上層階へ避難)をする等、自
ら判断して行動することが大切である。
事前に個々で地域特性(どういう場所で、どこで浸水が起こるか、避難が困難な
場合は自宅内のどこに避難するか等)を調査し、理解しておくことが重要となる。
◆大雨による災害から身を守る
大雨は事前に発生の可能性を把握しやすく、水害や土砂災害の危険度は、徐々に高
まる。
河川の水位は目視で確認できるが、上流の大雨による増水は実感しづらく、猛烈な
雨によって一気に増水する場合もある。
土砂災害は、災害発生前に目視で確認することが難しい災害である。濁った水が出
る等、いくつかシグナルはあるが、直前の変化となる。
対策としては、洪水・浸水害や土砂災害が発生する前に避難すること、川や崖など
の場所に近づかない(離れる)ことが大切となる。また、状況によっては、安全な
建物に留まることや屋内の2階以上に移動(垂直避難)することも有効である。
◆大雨時の主な防災気象情報
土砂災害・浸水害・洪水害については、雨の状況により気象台から以下の情報を発
表している。
① 1日位前に「大雨に関する気象情報」を発表
※市町村の対応:職員の体制確立
※住民の対応:情報入手手段の確保、非常持ち出し品の点検等
② 注意報を発表
※市町村の対応:住民への注意呼びかけ
③ 警報を発表
※市町村の対応:避難場所の準備・開設、応急対応体制の確立等
※住民の対応:避難の準備、行政への被害状況の通報等
④ 土砂災害警戒情報・記録的短時間大雨情報を発表
※市町村の対応:避難勧告・避難指示の発令
※住民の対応:状況により避難場所へ避難、在宅避難
⑤ 特別警報を発表
※差し迫っている非常に大きな災害が目の前にきている、若しくはすでに災害が
起こっている場合に発表するため、特別警報が発表されるまでの間は大丈夫と
決して思ってはいけない。
③ 積乱雲に伴う災害
◆積乱雲の発生のしくみ
暖かく湿った空気が地上付近にあると、その空気が急速に上昇して、積乱雲が形成さ
れる。
特に上空に寒気がある場合は発達する。
※積乱雲の下では、竜巻や大雨など様々な災害をもたらす。
※積乱雲は入道雲や雷雲といわれるが、雷雨は英語では THUNDERSTORM(サンダー
ストーム)と呼ばれ雷を伴う嵐であり、時として激しい現象をもたらす。
◆積乱雲がもたらす激しい現象
『落雷』・『急な強い雨(降雹)』・『竜巻などの突風』の3つが、積乱雲によって
もたらされる現象である。
代表的な被害状況
<局地的大雨(河川の急な増水による水難事故)>
2008 年 7 月 28 日午後、局所的な集中豪雨が神戸市灘区を流れる都賀川の流域を急
襲。その結果、川の急激な水位上昇によって、親水施設や遊歩道を利用していた市
民・学童5名の尊い命が失われるという水難事故が発生。
<落雷>
2012 年 8 月 18 日午後、大阪市東住吉区の長居公園の樹木に雷が落ち、木の下で雨
宿りをしていた女性2人が死亡。同年5月桶川市で樹木落雷で雨宿の母娘のうち娘
1名死亡
落雷は開けた場所で、高い所に落ちる(海上にも落雷する)。また、樹木に落ちた雷
が枝や幹を通じうたれる『側撃雷』のため、樹木の下で雨宿りをする行為は、危険で
ある。
雷鳴が聞こえたら、建物や車の中に避難する。建物等が付近にない場合は、低い姿勢
をとる。高い電柱や樹木と枝から少なくとも4メートル以上離れる。
④ 突風による災害
◆突風の種類
突風には、以下の3種類があり、いずれも激しい突風を引き起こす現象である。
・竜巻
・ダウンバースト
・ガストフロント
※突風は沿岸部を中心に、北海道から沖縄までの広い範囲で発生している。
◆竜巻
竜巻は、垂直方向に立っている空気の非常に回転の速い渦巻である。
「漏斗雲」(漏斗状または柱状の雲)が見える場合もあり、漏斗雲の中は風速100
メートルを超えるような風も有りうる。
竜巻の被害としては、建物の倒壊や屋根の瓦などがはがされて飛散、車がひっくり返
される、色々なものが猛スピードで飛んでくる等の被害が起きる。
◆ダウンバースト
積乱雲の中から冷たい空気が上から下に落ちてくる現象
落雷の後、地表では涼しくなるが、これは上空の冷たい空気が一気に降りてきて、そ
れが広がることで気温が下がることがある。ダウンバーストとは、積乱雲から強く下
降する冷たい空気が地表に衝突して爆発的に周囲に吹き出す破壊的な気流である。
風向・風速の広がりから「マイクロバースト(広がりが 4km 未満)」と「マクロバ
ースト(広がりが 4km 以上)」に分類される。
◆ガストフロント
積乱雲の下に溜まった冷たく重い空気が周囲に流れ出し、周囲の空気との間にできる
境界のこと。その先端では気流が乱れていて、激しい突風を伴うことがある。
積乱雲が近づいてきた時に、まだ雨は降っていないが、冷たい風が吹き、急に気温が
下がることがある。ガストフロント通過による場合がある。
◆塵旋風(つむじ風)
上空には積乱雲はない。強い日射により地表付近の空気が暖められると上昇気流が発
生し、その空気が回転しながら上昇するときに発生する。竜巻ほどではないが、強い
風が吹き被害を生じることがある。
◆埼玉県における突風発生状況
北部が 61%、南部が 33%、秩父地方が 6%となり、全国的に見ても、山間部より平野部
において発生しやすい状況となっている。
季節的に発生しやすい時期は、5 月∼9 月となる。5 月∼7 月は特に雷が発生しやすい
時期でもあり、雹が降りやすい時期でもある。8 月・9 月は最も多く発生しており、
台風に伴うものである。
※台風の外側の雨雲(積乱雲)がかかった時に竜巻が発生することがある。
◆竜巻発生のメカニズム
地上付近で回転している空気が、積乱雲の上昇気流で上に吸い上げられると回転の半
径が縮まり、回転速度が速まって竜巻の渦を形成する。
◆竜巻の特徴
以下の種類に分類される。
・非スーパーセル型
地面に風の境目があり弱い渦巻があって、そこに積乱雲がくると、上昇気流により
吸い上げられて、渦巻を強めて竜巻が発生する。
・スーパーセル型
ひとつの積乱雲が大きく回転するもので、その中にメソサイクロンという小さな低
気圧があり、そのメソサイクロンに積乱雲の上昇気流が加わって竜巻が発生する。
◆埼玉県内(越谷市)での竜巻被害
平成 25 年 9 月 2 日 14:00 頃に越谷市で発生した竜巻は、スーパーセル型で強さは
F2、風速50∼69メートルであった。
経路としては、さいたま市岩槻区から始まり、被害の範囲の長さは約 19km、幅は
約 200m、時速40キロで、茨城県坂東市までほぼ直線上で移動した。
被害状況としては、人的被害は負傷者 64 名。住宅密集地を通過した、この規模の
竜巻で亡くなった方がいなかったのは奇跡である。なお、建物被害としては、電柱
や建物の屋根の倒壊等の建物被害が多く、学校施設にも被害があった。
◆竜巻発生の予測
研究は進んでいるが、現時点で実用的な予報は難しい。ピンポイントでの予測は難し
いが、発生しやすい状況については把握・予測することができる。
気象庁では、気象レーダーを利用したナウキャストの情報を提供している。
・降水ナウキャスト
雨が降っている場所や雨の強さを確認できる。
・雷ナウキャスト
雷活動の激しさを活動度で表している。今後、雷が発生する可能性の高い領域も表
している。
・竜巻発生確度ナウキャスト
竜巻が発生している、もしくは発生する可能性が高い領域が分かる。
◆情報の入手方法
大気が不安定な状況は、1 日前から数時間前まで確実な情報を提供できる。
天気予報で「雷を伴う」、雷注意報の中で「竜巻」のキーワードを入れるので、この
場合は突風や落雷に対する注意が特に必要となる。
数時間前から 1 時間以内には、竜巻注意情報が発表されるので、降水短時間予報や気
象レーダーと併せて確認する。
直近では、積乱雲が近づき、黒い雲の発生や冷たい風が吹く。ナウキャストで危険な
地域や移動方向を確認し、空の様子に注意を払いながら、必要な避難をする。
竜巻から身の安全を確保する行動としては、頑丈な建物の中に入り、できるだけ建物
の中心部に入って、窓や壁から離れる。屋外で避難する場所が無い場合は、できるだ
け低い場所で体を伏せて身を守る。
各種気象情報は、携帯電話等で確認できる。気象庁や気象台のホームページでは、そ
の情報の内容についても詳しく解説をしている。
⑤ まとめ∼大雨・雷・竜巻から身を守るために∼
根拠も無く自分自身は災害に巻き込まれないだろうと考えやすい。“正常化の偏見=
正常化バイアス“と言うが、「大雨警報が出ているが大丈夫だろう」、「みんなが避
難していないので大丈夫だろう」等、自分は大丈夫と考えがちである。災害に向き合
う時には、あえてそうではないんだと意識して行動を取っていただきたい。
被害が無くてよかったと思うような対応を取れば、いつか避難していて良かったと思
う時がくる。
あらゆる自然災害(洪水・土砂災害・竜巻・地震・火山噴火・大雪)に遭遇する可能
性がある。日本にいる限り、様々な自然災害に向き合わなければならない。想像を絶
するような激烈な自然現象がまれに起こる。そのことを念頭に置いて冷静な行動を取
ってほしい。
埼玉県は災害の発生が少ない印象を持たれるかもしれないが、油断や安心をせずに、
積乱雲に伴う大雨・雷・雹・突風には特に注意をしていただきたい。
防災情報を有効に活用して、適切な判断・行動をしていただきたい。
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