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座長集約 もう少し脂肪抑制を確認しよう - 基礎編・復習編 -

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座長集約 もう少し脂肪抑制を確認しよう - 基礎編・復習編 -
MR分野
座長集約
もう少し脂肪抑制を確認しよう
座長 日本海総合病院 放射線部
蛸井 邦宏 (Takoi Kunihiro)
【座長集約】
昨年度に引き続き、脂肪抑制の確認を行った。
昨年度は、各種脂肪抑制法の原理特性の細部に
こだわりすぎ、臨床での使い分けを目的にしたにも
かかわらず、使い分けがわからないとお叱りをいた
だいた。そこで、今回は、新潟中央病院 下田優
氏に臨床での使い分けを理解するための復習を
担当していただき、秋田大学医学部附属病院 桜
田渉氏に臨床で脂肪抑制が必要な検査法と脂肪
抑制法の使い分けを担当していただいた。
我々は、脂肪抑制の検討を進める中で、装置に
よって使用可能な方法が異なる事や、ほぼ同じ技
術を用いていても各社独自の名称を用いているこ
Fig.1 各社の脂肪抑制法の名称と相関関係
とが、脂肪抑制の理解を困難にする一因と考えた。
そこで、『脂肪抑制法の相関関係』を整理した(Fig.1)1)。東北部会ホームページに掲載されている今年度・
昨年度のスライド・昨年度の抄録を併せて参照しつつ、以下の演者の報告内容をご覧いただきたい。
- 基礎編・復習編 新潟中央病院 放射線科
下田 優 (Shimoda Masaru)
【基礎編目的】
脂肪抑制には様々な方法があり、それぞれ原理が異なる。部位や目的によって脂肪抑制の使い分けが
必要な場合があるが、主な方法について以下に簡単に原理・特徴を述べる。
【Opposed phase法】
同一Voxel内に水と脂肪のプロトンが混在している事を条件とし、時間経過とともに互いのプロトンの磁化
の位相がずれる事を利用した脂肪抑制法である2)。時間経過に従ってIn phase(同位相)とOpposed phase
(逆位相)を繰り返すが、MR装置の磁場強度によってその周期は異なる。特徴として、①Voxel内に水と脂
肪のプロトンが混在しなければ脂肪抑制はかからない、②微量の脂肪の鋭敏な検出が可能だが、脂肪量
の推定には向かない、③水と脂肪の境界面が無信号になる(Black line、第2の化学シフトアーチファクト)、
④造影検査時にOpposed phaseのTEにおいてParadoxical suppression3)が生じ、正確な評価が困難、等が
挙げられる。
【STIR法】
脂肪のT1値が水のそれよりも極端に短い事を利用したIR(Inversion recovery)法である。Inversion pulse
により、水と脂肪両方の縦磁化を反転させ、脂肪の磁化がnull pointに達する時間にTIを設定することで脂
肪の信号を抑える非選択的脂肪抑制法である。特徴として、①磁場均一性に左右されず、磁化率変化の
影響も小さいため、安定した脂肪抑制が可能で、低磁場装置でも使用可能、②脂肪と同等のT1値も抑制さ
れるため、Gd造影剤の造影効果が隠蔽されてしまう可能性があり、造影検査に使用不可、③IR法であるた
め、信号の絶対値が小さくなり、SNRの低下を招く等が挙げられる4。)
<実験1>
STIR法において、TIを変化させた際に各物質の信号がどのように変化するかを確認するため、サラダ油、
水および2種類の濃度のGd造影剤希釈液を用いて撮像を行った。撮像条件等は以下の通りである。
使用機器;Signa Horizon LX 1.5T Ver.9.1 M4 (GE) Head coil使用
撮像条件;TR 2000.0ms, TE 106.0ms, TI 75~250ms, FOV 220mm, Matrix size 256×160 Slice 10mm
(結果)
TI(ms)
サラダ油
水
1.5mmol/ℓ Gd
6.0mmol/ℓ Gd
Table 1 STIR 法における TI の変化に伴う各試料の信号値変化
75
100
125
150
175
200
90.0
54.4
23.8
7.7
29.5
53.5
732.7
701.7
673.3
649.3
612.9
577.6
246.0
77.5
80.3
182.8
342.4
425.1
45.4
128.9
274.8
393.5
495.5
577.8
250
91.1
521.3
609.0
713.3
TIを変化させることにより、各物質の見え方、信号値ともに変化していることがわかる(Table 1)。昨年度の
報告同様、脂肪のnull point設定の重要性が確認できた5)。施設によってSTIRの設定は様々であろうが、昨
年度の報告を参考にTEとnull pointとの関係を把握しておくことは大切である。
【CHESS法】
水と脂肪のプロトンの共鳴周波数の差(1.5T装置の場合3.5ppm)を利用し、周波数選択性の脂肪飽和パ
ルスにより脂肪の信号を選択的に抑制する脂肪抑制法である。通常のパルスシーケンスに先立って90º飽
和パルスにより脂肪の磁化のみを倒し、スポイラー傾斜地場によって脂肪の磁化をdephaseさせることで脂
肪の信号を抑制する。特徴として、①脂肪の検出が可能(抑制されれば脂肪であるといえる)、②磁場の不
均一に弱く、部分的に脂肪抑制効果が得られない場合や、水成分が抑制されてしまう場合がある、③狭い
帯域幅のRFパルスを付加として用いるため印加時間が長くなり、TRの延長をきたす、④低磁場装置では
水と脂肪の周波数ピークが非常に近くなり帯域幅を持つRFパルスを照射すると水の磁化にもかかって倒れ
てしまうため、使用が困難、等が挙げられる4)。
【周波数選択的IRパルスを利用した方法】
CHESS法と同様に、付加パルスとして脂肪の共鳴周波数に一致したRFパルスを印加した後、脂肪の縦
磁化がnull pointになるTI後に励起パルスを印加して水のみの信号を得る方法で、STIR法とCHESS法の
hybrid的な脂肪抑制法である。
STIR法と比較した場合、①脂肪抑制方法が周波数選択性なので、脂肪特異性が高い、②多層撮像の
際、実効TRが短縮され、TIも短くなるので撮像時間が短縮される、③周波数選択性のため、水と脂肪の化
学シフトが小さい低磁場装置では使用困難、等の特徴が挙げられる。
CHESS法と比較すると、①フリップ角の容認性が高く、より広範囲に脂肪抑制が効く。脂肪信号を95%す
るのに、CHESS法では90ºパルスが80~101ºの範囲になければならないのに対し、本法では180ºパルスの
許容範囲が113~213ºと広くなる、②周波数選択性IRパルス照射後のTIの時点で抑制効果が生じるが、そ
の前後の比較的長い時間は脂肪の縦磁化が小さいため、飽和パルス照射直後の短時間だけに脂肪抑制
効果が得られるCHESS法と比較し、比較的長時間実質的な脂肪抑制効果が認められる、③TIがCHESSパ
ルスから励起パルスまでの時間より長いため、撮像時間は少し長くなる、等の特徴が挙げられる。
<実験2>
周波数選択的脂肪抑制法を使用する際、検査部位の形状等により磁場が不均一になり、周波数がずれ
る場合があるが、CHESSパルスの中心周波数がずれることによる影響を確認するため、実験1と同様の試
料を用いて、Fat sat法(CHESS法;GE)にて撮像を行った。
使用機器;実験1と同様、Head coil使用
撮像条件;FSE、TR 4000ms、TE 102.0ms、FOV 220mm、Matrix size 128×128、Slice 10mm、ETL=10
(結果)
中心周波数のずれ
サラダ油
水
1.5mmol/ℓ Gd
Table 2 Fat sat 法における中心周波数のずれによる信号値の変化
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
91.8
1572.8
1147.1
60.9
1567.2
1146.3
38.5
1566.6
1144.1
29.2
1567.1
1143.8
19.8
1577.6
1152.8
15.9
1570.2
1144.9
13.6
1569.4
1144.3
20.9
1564.6
1147
31.8
1565.6
1142.6
中心周波数が水のピークからずれていくに従って、脂肪抑制の効きムラが大きくなり信号値にも差が出
てくる(Table 2)。周波数選択的脂肪抑制法は磁場の不均一の影響を大きく受けるので、Shimmingによる磁
場不均一補正やManual tuningでの中心周波数の調整・確認を正確に行う必要がある5)。
<実験3>
撮像対象をガントリー中心、FOV中心に設定して撮像を行うことは磁場の不均一の影響を受ける脂肪抑
制法においては重要である。そこで、ファントムのガントリー内の位置およびFOVの設定位置を変化させる
ことでどのように信号が変化するかを確認するための撮像をFat sat法にて行った。
なお、使用機器、撮像条件は実験2と同様だが、FOVのみ300mmとして撮像した。
(結果)
ファントム位置
サラダ油
水
1.5mmol/ℓ Gd
Table 3 Fat sat 法におけるファントム位置による信号値変化
FOV 中心
FOV 中心
FOV 端
ガントリー中心
ガントリー端
ガントリー中心
8.0
11.2
10.0
698.8
701.7
704.0
510.6
510.3
507.1
FOV 端
ガントリー端
17.7
697.9
509.9
撮像した画像の信号値変化を(Table 3)に示す。本結果から、ポジショニングによる信号値の差について
はっきりとした結論を述べることは難しいが、信号値にばらつきがあることから、ポジショニングやFOV位置
の設定によって脂肪抑制の効きに差が出ると考えられる。磁場の均一性が不良な部位を撮像する際には
特にポジショニングには気を配る必要があると言える。
【選択的水励起法】
水と脂肪の共鳴周波数の位相差を利用した脂肪抑制法4)で、励起する際には2項パルス(Binomial pulse)
を用いる。この2項パルス自体に周波数選択性があるため、付加パルスを印加する必要がない。
2項パルス法は、”パスカルの三角”の法則に従い、1:1、1:2:1、1:3:3:1のように励起パルスを分割して印
加する方法で、例えば励起パルス90ºの場合、1:1パルスでは45º、45ºに分割され、1:2:1パルスでは22.5º、
45º、22.5ºに分割される。各々のパルスの間隔は、水と脂肪の化学シフトに基づいた長さになり、(1.5Tの場
合各パルスの間隔は2.25ms)。最後の分割パルスが照射されると水だけが励起された状態になる。特徴と
して、①励起パルスの分割数を多くすれば脂肪抑制効果が上がるが、TEが延長するため、全体的な信号
低下や画像のボケを招く、②帯域幅の広い励起パルスを使用するので、付加パルスを印加する必要がなく
TRの延長がない、③CHESS法よりは磁場の不均一の影響が小さい、等が挙げられる。
【基礎編結論】
各種脂肪抑制法の原理・特徴を簡単に述べたが、以上に挙げた他にも様々な方法、細かな原理・特徴
が多く存在する。臨床において適切な脂肪抑制を使いこなせるよう、しっかりと原理等を認識しておくことは
非常に大切だと思われる。
- 臨床編 秋田大学医学部附属病院 中央放射線部
桜田 渉 (Sakurada Wataru)
【臨床編目的】
脂肪抑制法の種類、原理、特徴等の
理解は、とても重要だが、適切な使用な
くして十分な検査の達成は難しい。臨床
での脂肪抑制法の使い分けや最適化に
ついてまとめる。
 脂肪抑制の使い分け
1. 部位別磁場均一性
Fig.3 神経芽細胞腫
脂肪抑制の良不良は磁場均一性に左
Fig.2 脂肪肉腫 T2w fat sat
造影 T1w fat sat
右される。磁場均一性不良となる原
因・部位を分類してみる。
1) 形状・磁化率の影響を受ける部位として、頚部・頚椎・胸部・乳房・四肢末梢部など
2) FOVサイズの影響を受けるもの(大きなFOVでの検査)として、脊椎(胸椎など)・下肢など
3) ポジショニングの影響を受けるもの(オフセンターでの検査)として、肩・上肢など
これらの部位においては磁場不均一の影響を強く受けるため、脂肪抑制の使用には注意が必要である。
2. 脂肪抑制の目的別分類
脂肪抑制の目的別分類とともに、代表的な疾患について適応となる脂肪抑制法をまとめてみる。
2-1. 病変部(腫瘍・炎症等)の描出を目的とするもの
2-1-1.軟部腫瘍性病変の描出
軟部腫瘍性病変の描出において、T2強調画像(以下T2wと略す)においては、脂肪はFSEでJ-coupling
効果により高信号化し、軟部腫瘍も高信号となるため、T2強調脂肪抑制(以下T2w fat satと略す)若しくは
STIRが有用である (Fig.2) 。また、造影後のT1強調画像(以下T1wと略す)においては、脂肪は高信号、
造影された軟部腫瘍も高信号となるため、造影後には、T1強調脂肪抑制(以下T1w fat satと略す)が有用
である(Fig.3)。どちらにおいても、背景信号が抑制され軟部腫瘍が明瞭に描出される。また、ダイナミック
レンジの拡大により僅かな信号差の描出も可能となる。脂肪抑制
が効果的な部位としては、皮下脂肪や骨近傍、頭蓋底部、眼窩
部、乳腺等が挙げられる。
特殊な例として、膵腫瘍の描出には造影前T1w fat satが有用で
ある。正常膵は高蛋白を多く含むためT1wにて高信号であり、脂
肪抑制にて膵臓周囲に存在する腹腔内脂肪の高信号を抑制す
ることにより、正常膵の形状が明瞭となる。また、膵腫瘍は低信号
のため、脂肪抑制によるダイナミックレンジの拡大で、正常膵と膵
Fig.4 膵腫瘍 T1w fat sat
腫瘍の境界が明瞭となる(Fig.4) 7)。
Fig.5 a:T1w fat sat(CHESS),b:STIR a|b
Fig.6 骨挫傷 T2w fat sat
Fig.7 骨腫瘍
造影 T1w fat sat
2-1-2.炎症性病変の描出
炎症性病変の描出においても、軟部腫瘍性病変と同様に、T2w fat sat若しくはSTIR、像英語T1w fat sat
が有用である。注意点としては、炎症部位が四肢の筋肉や関節など、比較的磁場不均一の影響を受け
やすい部位である場合が多いことである。そのような時は、T2w fat satの代わりに磁場不均一の影響を受
けにくいSTIR法の使用 (Fig.5) や、CHESS法以外の脂肪抑制法の使用により、脂肪抑制の改善を図る
ことも必要となる。
2-1-3.骨病変の描出
骨髄炎・骨腫瘍・骨転移・骨挫傷・骨折・骨壊死など骨
病変においては、病変部が常に骨と接しているので、
骨髄脂肪の抑制は重要でありT2w fat sat(場合により
STIR)、造影後T1w fat satが有用である(Fig.6,7)。
2-1-4.拡散強調画像
拡散強調画像において脂肪抑制は必須のテクニック
である。SSRF法(水選択励起法)とSTIR法の拡散強調
画像を比較してみると、診断画像としてはSNRが良く解
剖の把握がしやすいSSRF法、DWIBSの元画像としては
a b
Fig.8 脂肪肉腫
背景信号抑制の良いSTIR法が適している(Fig.8)。
c d
a:DWI-SSRF,
b;DWI-STIR,
c;DWIBS-SSRF, d;DWIBS-STIR
2-1-5.その他
頚部リンパ節の描出においては、磁場の不
均一に強いSTIR法が有効である(Fig.9)。内頚
動脈海綿静脈洞瘻の診断において、拡張し
た上眼静脈の描出が重要であり、造影後T1w
fat satが有効である(Fig.10)。
2-2. 病変の質的診断を目的とするもの
Fig.9 頚部リンパ節 Fig.10 内頚動脈海綿静脈
2-2-1. T1w fat sat
STIR
洞瘻造影 T1w fat sat
脂肪・出血・高蛋白成分の鑑別に利用される。
脂肪抑制にて抑制されれば脂肪であり、抑制
されなければ出血・高蛋白成分である。脂肪
腫(脂肪抑制にて抑制される)、チョコレート嚢
胞(脂肪抑制にて抑制されない)(Fig.11)など
が適応疾患である。
2-2-2. T2w fat sat
脂肪の鑑別に利用される。但し、抑制されれ Fig.11 チョコレート嚢胞 a:T1w, b:T1w fat sat a|b
ば脂肪であるといえるが、抑制されなければ
脂肪ではないと言えない8)。
2-2-3.位相差法(opposed phase法)
脂肪を含む病変の検出に利用される。in
phase、opposed phase画像を比較し、opposed
phase画像にて信号低下があれば脂肪を含む
病変となる。副腎腺腫は(Fig.12)は本法にて
評価する代表的疾患である。脂肪を含む悪性 Fig.12 副腎腺腫 a:in phase, b:opposed phase a|b
の副腎腫瘍は稀であり、opposed phase画像
にて信号低下があれば良性の副腎腺腫の可
能性が非常に高い、という診断となる2)。
2-3. 3D処理画像の画質向上を目的
背景信号(脂肪)を抑制し、3D処理画像(造
影MRA、MRCP等)の画質向上に利用される。
2-4. モーションアーチファクトの軽減を目的
Fig.13 モーションアーチファクトの軽減
脂肪が動くために起こるモーションアーチファ
a:T2w ,
b:T2w fatsat
a|b
クトの軽減に利用される(Fig.13)。
 脂肪抑制の最適化
良好な脂肪抑制のためには、磁場不均一の影響を出来るだけ避けることが重要となってくる。T2w fat sat
時の注意点も含め、脂肪抑制の最適化についてまとめてみる。
1. マグネットセンターでのポジショニングを心がける。
マグネットセンターから離れるに従い、磁場は不均一となっていく。マグネットセンターでの撮像が重要であ
る。
2. 一度にあちこち検査しようとせずに、撮像部位を絞る。
広い範囲の検査や左右同時の検査など、臨床の立場からは当たり前と思えることではあるが、このよう
な検査においては、磁場不均一の影響を強く受け、検査の質を落としかねない。検査目的を考慮した、
撮像範囲の決定が重要である。
3. 3D shim , shim volume 等を活用する。
この機能は、FOV内にシミング領域を設定し、脂肪抑制目的部位に合わせたシミングを行うものである。
この機能がない装置でも、脂肪抑制目的部位を小さなFOVでシリーズを作成し、プレスキャンのみ実施
し、そのプレスキャンデータを目的シリーズに利用することで、同様の効果を得ることが出来る。
4. 中心周波数に目を通し、マニュアルチューニングを活用する。
マニュアルチューニングで
は、水のピークを中心周波
数に設定することが基本で
ある。しかしながら、水と脂肪
のピークを判別することが困
難な場合があり、このような
時は、他シリーズのプレスキ
ャンデータを利用することも
Fig.14 T2w fat sat 過度抑制対策
一つの方法である。また、脂
a:ノーマル, b:脂肪抑制度調節, c:TE 調節(短縮) a|b|c
肪優位な部位(乳房など)で
は、脂肪のピークしか確認できないことがある。このような時は、脂肪のピーク周波数に225Hz(1.5T装
置)を足したものを水のピーク周波数とし、中心周波数に設定する方法が有用である。装置によってこれ
らの方法は、異なると思われるので、確認してほしい。
5. ボーラス(sat pad等)を活用する。
磁場不均一を軽減する方法の一つとして、ボーラスの使用がある。頚部など、いびつな形状の部位に
利用される。手軽な方法として、米を使ったボーラスも有効である4)。
6. T2w fat satでの過度抑制を避ける(闇夜のカラスにならないように!)。
T2w fat sat時の注意点として、脂肪抑制による画像信号の極端な低下のため、解剖学的位置関係の
把握が困難となる場合がある(俗に言う『闇夜のカラス』)。対処法として、脂肪抑制度を調節し脂肪信号
を多少残す方法や、TEを短縮する(Pdwの影響を強くする)ことにより筋肉の信号を上げる方法が有効で
ある(Fig.14)。前者は装置の機能に依存するが、後者はどの装置でも手軽に調節が可能である。
【臨床編結論】
持てる知識やテクニックを駆使して脂肪抑制の最適化を図ることは、とても重要なことだと思いますが、ど
うしても脂肪抑制がうまくかからない、そんな場面に遭遇することがあるかと思います。そんなときは、脂肪
抑制にこだわらず、造影前後で同じ撮像をし、画像を丁寧に読影することによって、その検査の目的を達
成できることも結構あるのではないでしょうか。無理な脂肪抑制は行わないことも、MRI検査のテクニックの
一つであると思います。
【おわりに】
以上、2年にわたってしまったが、脂肪抑制を確認した。紹介した内容は、いずれも目新しい話ではない
が、MRを操作する上で最低限度知っておくべき内容と思われる。現在MRに携わっている方もこれから携
わる方も、自分の装置でどの脂肪抑制方法が可能か、各脂肪抑制法の利点・問題点、マニュアルチューニ
ングの方法等確認していただき、技術学会等で諸先輩方が、報告してきた技術を正確な習得を目指してほ
しい。紙面の都合上かなりの内容を割愛しなければならなかった。この原稿に加えて、東北部会ホームペ
ージより掲載しきれなかった詳細な内容の確認をお願いしたい。
【謝辞】
紙面の都合上、ご指導ご協力いただいた皆様のお名前を掲載することができませんが、この4年間演者
としてご協力いただきました皆様、ご指導・ご協力いただいた諸先輩方、各メーカーの皆様に深謝します。
【参考文献・図書】
1) MRIデータブック 土屋 一洋監修 メジカルビュー社
2) 永山 雅子 他:MRIにおける脂肪抑制法,画像診断 Vol.26 No.11, 1440-1451, 2006
3) MRI自由自在 高原 太郎 メジカルビュー社
4) 中塚 隆之 他 : MR撮像法の臨床応用(3) 脂肪抑制法の原理, 日獨医報 52(3) : 371-388, 2007
5) 蛸井邦宏 相間幸治 曽根治:脂肪抑制を確認しよう 日本放射線技術学会雑誌東北部会雑誌
Vol.17
6) MRI完全解説 荒木 力 秀潤社
7) 入江弘幸 他:膵癌のCT/MRIによる検出、鑑別、病期診断、画像診断 Vol.26,No.1, 2006
8) 高原太郎:1.脂肪抑制法、日本放射線技術学会雑誌 Vol.53,No.11
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