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掘削性― Excability
連載 土工機械の話 掘削性― Excability ― 第 4 回 山﨑建設 (株) 技術部長 岡本 直樹 法で、ショベル&ダンプトラック工法に適した工法で 4-1 はじめに ある。また、ブルによるエサ出し(切崩し)とローダ 前回は機械土工の基本となる土工計画について施工 積込みの場合の組合せは、両工法の併用である。図 2 業者の立場で手法を紹介し、施工性(掘削性・積込み性・ は発破ベンチカットの施工図である。図中のケーブル 走行性・締固め性)を重視した検討の必要性を述べた。 式パワーショベルは、国内では姿を消しているが、海 今回は掘削について、特に掘削機械の機種選定と生産 外鉱山ではまだ超大型が使われている。国内ではロー 性で問題となる掘削性を中心に記すこととする。 ダかバックホウ積込みとなり、鉱山では大型油圧ロー ディングショベルも使われている。 さて、掘削法にはこのほか、機種ごとのオペレーティ 4-2 掘 削 ングレベルのものがあるが本稿では触れない。 4-2-1 掘削法 4-2-2 掘削機構の分類 機械土工の基本的な掘削法には、山の取り方による 掘削機には掘削 分類があり、ダウンヒルカット工法(傾斜面掘削)と 機構から分類する ベンチカット工法 (階段式掘削) がある。ダウンヒルカッ と図 3 のようなも ト工法は、傾斜面の下り勾配を利用して掘削を行う方 のがある。 法でブルドーザやスクレーパ系の掘削に適する工法で ①ディッパ方式 ある。ベンチカット工法は、階段状に掘削を進める方 ②ドラグ方式 ③グラブ方式 図 3 掘削機構の種類 3) ① ② ④ ③ ④ブレード方式 図 1 ダウンヒルカット工法 ⑤スクレーパ方式 作業始点 ⑥リッパ方式 下り勾配削土 ⑦連続掘削方式 掘削積込み作 ⑤ 業や掘削運搬を兼 ねる機種について ⑥ は、今回は取り上 げない。 ⑦ 図 2 ベンチカット工法 2) (1)削岩 クローラドリル (2)ハッパ 4-2-3 掘削性の“はかり” 岩の硬さを表す“はかり”として、計画時に入手し (3)積込み パワーショベル やすい情報には、岩そのものの硬さを示す一軸圧縮強 きれつ 度、岩層の亀裂の程度を表す RQD、両者を含めてマ クロ的に捉える弾性波速度がある。また、軟岩以下で (4)運搬 は N 値も利用できる。施工中には、簡易なシュミット ダンプ トラッ ク 連載 土工機械の話 69 図 4 機種別適用範囲 4) 削工法の選定基準の例を図 6 に示す。 4-2-5 低公害岩掘削工法 環境面から岩掘削工事において発破が制限さ れ、振動・騒音を抑制した制御発破や無発破工法 の採用例が増えている。振動・騒音を低減した低 公害岩掘削法はいろいろあるが、整理すると図 7 のように分類できる。 図 7 低公害掘削法の種類 図 5 工法別適用範囲 ハンマも利便性が高い。 掘削性の判定には弾性波速度がよく使われ、 道路土工指針では汎用的な機械の大まかな掘 削性の適用範囲を示している(図 4) 。 4-2-4 岩掘削工法の選定 岩掘削の各種工法の適用範囲を示すとおお むね図 5 のようになる。インパクトリッパは リッパとブレーカを合体させたもので、硬岩 領域に踏込み生産性が高かったが、消耗が激 しいためか生産中止となっている。次に岩掘 図 6 岩掘削工法選定の例 4-3 無発破工法 岩掘削工法 上図の低公害掘削工法の 転岩 岩質? 中から主な機械掘削工法を 硬岩 以下に紹介する。 軟岩 不能 3 No 3,000m 以下 全切土量 かつ、硬岩 Yes 別途積算 ブレーカ 普通発破 の適用? リッパ 特殊発破 規模大 無発破工法の機械掘削工 < 50,000m3 < 10,000m3 小規模発破 4-3-1 リッパ工法 法には、軟岩から中硬岩領 域まで掘削可能で生産性の 通常発破 高いリッパ工法がある。 (1)リッパの種類 U:アーバナイト C:CCR 70 JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 図 11 リッパビリティ 図 8 油圧リッパ (1)ジャイアントリッパ (2)マルチシャンクリッパ 図 9 リッパの貫入力 牽引力 リッパは、21t 級以上 押付け力 図 12 リッパ能力 10) のブルドーザ後部に装着 貫入力 される図 8 のような油圧 式の岩破砕装置で、マル チシャンク式のものとシングル式のジャイアントリッ 式、アジャスタブル式の3種類があったが、現在の国内 機種は可変式のアジャスタブル式のみとなっている。ま た、15 t級ブルドーザ等に装着されている小型のもの かき はリッパスカリファイアと称し、硬土の掻起こし用であ 作業量 m3/h パがある。リッパの貫入機構にはヒンジ式とパラレル る。 (2)リッピングのメカニズム リッピングとは、ブルドーザのリッパ刃先にかける けんいん 押付け力と牽引力との合成力である貫入力で、刃先を く 岩盤に喰い込ませながら、岩盤組織を破壊し、破砕す る作業である。リッピングによる地盤起砕の状況を模 弾性波速度 m/s 式的に示すと図 10 のようなタイプがある。 (3)リッパビリティ :Rippability 38 ~ 100t 級 図 10 リッパによる起砕 10) のリッパ付ブル (b) (a) (d) (c) 4-3-2 ブレーカ ドーザの岩種別 ブレーカは、転石破砕や発破後の二次破砕として リッパビリティ 使われていたが、環境面からの発破制限や小割の細粒 を図 11 に示す。 化要求から多用されるようになっている。欠点は生 図 12 は、38 ~ 産性が低いのと騒音である。このため騒音対策として 100 t 級 の 生 産 コンクリート破壊機(ニブラ)も利用されている。ま 性の比を示してい た、これだけ普及しているにもかかわらずその生産性 る。実際の作業量 を示すオーソライズされた文献資料がない。わずか は岩質等の係数を 1,300kg 級が国交省の標準歩掛値としてあるだけであ 掛けて求める。 る。参考にブレーカの能力比較と転石破砕能力関係の 連載 土工機械の話 71 図 13 ブレーカ能力比較 7) 図 15 ブレーカ転石破砕能力 10) 図 14 ブレーカ能力比較 10) 図 16 油圧割岩機の割岩手順 10) 石灰石 雲母片岩 ドロマイト 黒雲母花こう岩 角閃石片麻岩 花こう岩 石灰質砂岩 コンクリートコケラ (丸石) 一次破砕 m3/8h 班れい岩 長石砂岩 風化玄武岩 安山岩 花こう岩 片麻岩 粘板岩 輝石閃緑岩 黒雲母片麻岩 リオライト 角閃石花こう岩 閃緑岩 角閃石片岩 新玄武岩 風化輝緑岩 生産性 長石けい岩 輝石けい岩 未風化輝緑岩 ブルドーザで二次破砕を行う場合の割岩ピッチと弾性 波速度の関係を示すと図 17 のようになる。割岩機に は油圧式の他にドロップハンマ式がある。 公表資料を転載する。図 13 はトンネル工事での実測 4-3-4 切削系 値、図 14 はメーカ提供の理論曲線である。2 つのメー カから同様の資料が提供されている 参考資料である旨がただし書にある。 図 15 は転石破砕の能力である。 4-3-3 油圧割岩機 図 17 弾性波速度と割岩ピッチ 10) ピ�チ が、クラス別の生産性比較(比率)の P×2の範囲を2自由面にする 3 2 自由面破砕 (P) � 1.5m 以上 2 せんこう 油圧割岩機は、ドリルで穿孔した孔 くさび に油圧楔 を挿入して割岩するもので、 ドリルとの一体式と単体式があり、施 1 1 自由面破砕 (m) 工は図 16 のような手順で行う。 BP500 で割岩し、70t 級リッパ付 0 2 中硬岩 72 JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 3 硬岩 4 超硬岩 5 → VP(km/s) 図 20 ツインヘッダの純切削能力 10) (1)自由断面掘削機 切削系の掘削機には自由断面 掘削機と面掘削機、トレンチャ があり、自由断面掘削機は主 にトンネル工事用で、メーカご との呼称としてロードヘッダ、 ブームヘッダ、カッタローダ、 スライスローダ、アルピネ、パ ワーカッタ等がある。参考に理 論掘削能力による掘削性を示す と図 18 のようになるが、実作 業能力はこれらの値の 5 ~ 6 割程度と考えられる。類似の切 削機にバックホウのアタッチメ 図 21 岩盤トレンチャの形式 9) ントとしてのツインヘッダがあ る。 (2)面掘削機 そのほかにマイナ系の面切削 チェーン式 ドラム型 円盤型 機に、サーフィスマイナとロー ドマイナがある。類似機械にはスタビライザやコー 図 18 自由断面掘削機の切削能力 8) ルドプレーナもある。サーフィスマイナの掘削能力は BWE(Bucket Wheel Excavator)とともに図 19 に スライスローダ、カッタローダ 示す。 (3)ツインヘッダ ツインヘッダは、汎用的なバックホウに装着して岩 を切削できるので、比較的利便性が高い。メーカ提示 の掘削能力は図 20 のとおりである。 (4)岩盤トレンチャ トレンチャは古くからある機種であるが、近年、岩 盤 ト レ ン チ ャ が 注 目 さ れ、 英 Mastenboek 社 や 米 Torencor 社のものが輸入され、岩盤のパイプ埋設掘 削やトンネルの中央排水溝掘削に利用されてい る。そのバリエーションは図 21 のようなチェー 図 19 大型連続掘削機の掘削性能 10) ン式、円盤型、ドラム型がある。 発破 4-3-5 バックホウ 汎用土工機械 サーフィスマイナ バックホウは軟岩の掘削が可能であるが、大 型化に伴ってどの程度の硬さまで掘削可能なの か、またそのときの生産性はどうなのか? そ トラック BWE ういう資料は少ないが、参考になるものとして 70 ~ 180t 級のバックホウの掘削性能を図 22 に示す。掘削力から求めた理論曲線に実績値を BWE 圧縮強度 MPa プロットしている。 土砂 亜炭 固結土 亜瀝青炭 軟泥岩 泥灰岩 無煙炭 泥岩 軟砂岩 石灰石 鉄鉱石 砂岩 連載 土工機械の話 73 図 22 大型バックホウの掘削能力 10) 関係で省いた資料も多いが、掘削能力・生産性を示す 図表をできるだけ数多く載せるように努めた。メーカ による理論計算値が多いので、経験値からの割掛が必 要であるが、おおむね実作業量は半分くらいであろう。 さて、次回は、搬土関係の話とします。 4-4 おわりに 次回は掘削機の掘削性にポイントを絞った。紙幅の 74 JOURNAL for CIVIL ENGINEERS 2009.10 参考文献・資料 1)岡本:施工計画、山﨑建設、1980.5 2)伊藤雅夫:ベンチカット工法、地人書館 1969.2 3)米倉・久野:土と岩の施工論、理工図書、1981.4 4)道路土工―施工指針、日本道路協会、1986.11 5)土木工事積算基準、JH 6)振動騒音ハンドブック、JCMA 7) 重 永 晃 洋: 大 型 ブ レ ー カ に よ る 岩 石 破 砕、 建 設 機 械、 1997.11 8)竹林ほか:土工事ポケットブック、山海堂、2000.4 9) 下 半 切 削 に 関 す る 報 告 書、 ジ ェ オ フ ロ ン テ 研 究 会、 1998.11 10)Caterpillar、ヤマモトロック、コマツ、Krupp、三井三池 (製) 、日立建機の各社技術資料 11)土工教室 /,http:///www.yamazaki.co.jp