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AN-1314 アプリケーション・ノート

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AN-1314 アプリケーション・ノート
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最新版英語アプリケーション・ノートはこちら
AN-1314
アプリケーション・ノート
AMR 角度センサー
著者:Robert Guyol
はじめに
異方性磁気抵抗(Anisotropic MagnetoResistive:AMR)
薄膜材料は、今日の位置検出技術においてその重要性
を増しています。磁気抵抗(MR)位置測定は、従来の
技術に比べ数多くの利点を有しています。信頼性、精
度、および全般的なロバスト性が、MR 検出技術の発
展に寄与している主な要素です。低コスト、相対的サ
イズが小さいこと、無接点動作、広い温度範囲、埃や
光の影響を受けにくいこと、動作が広い磁場範囲にわ
たることなどは、すべてロバスト性に優れたセンサー設
計につながります。
MR 効果とは、外部から加わる磁場の方向または大き
さの変化に伴って材料の電気的抵抗が変化する現象で
す。AMR 材料に関しては、高磁場と低磁場という 2 つ
の異なる動作領域があります。このアプリケーショ
ン・ノートでは高磁場アプリケーションについて述べ
ます。高磁場アプリケーションでは、外部から加えら
れる磁場がセンサーの内部磁場よりはるかに大きくなり
ますが、この状態をセンサーが飽和状態で動作してい
ると言います。このモードでの抵抗の変化は、加えら
れた磁場の強さではなく、磁場の方向にだけ依存しま
す。AMR 薄膜の性質上、材料の抵抗変化は方向が逆に
なっても同じですが、これは、センサー自体は S 極と
N 極を区別できないことを意味します。したがって、
単一の双極子磁石が機械的に 1 回転すると、その出力
情報は 2 回繰り返されます。この現象によって測定範囲
は 180°に制限されます。抵抗の変化は次式でモデル化
できます。
R = R0 +ΔR0cos2(α)
ここで、
R はセンサーの抵抗、
R0 は未通電状態でのセンサー抵抗、
ΔR0 はセンサー抵抗の変化量です。
一般に、AMR センサーでは、ΔR0 はブリッジ抵抗全体
の約 3%です。このように抵抗変化が小さいので、出力
信号をさらに増幅して電源電圧に比例した使用可能な
値にするには、計装アンプが必要です。
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利
の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標
は、それぞれの所有者の財産です。※日本語版資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。
Rev. 0
©2015 Analog Devices, Inc. All rights reserved.
本
社/〒105-6891
大阪営業所/〒532-0003
東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル
電話 03(5402)8200
大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー
電話 06(6350)6868
AN-1314
アプリケーション・ノート
目次
はじめに ....................................................................... 1
磁石選択時に考慮すべき事項....................................... 4
改訂履歴 ....................................................................... 2
磁石とセンサーの関係 ................................................. 5
磁石の構成 .................................................................... 3
ミスアライメントとエアギャップの測定..................... 6
リニア型 ....................................................................... 3
診断 .............................................................................. 7
オフ・シャフト型 ......................................................... 3
誤差源........................................................................... 9
軸端型 ........................................................................... 3
校正手順 ....................................................................... 9
ブリッジ構成 ................................................................ 3
レイアウトに関する推奨事項と磁気干渉................... 10
AMR センサー素子 ....................................................... 4
VTEMP 出力 ............................................................... 10
磁気的角度と機械的角度 .............................................. 4
改訂履歴
10/14—Revision 0: 初版
Rev. 0
- 2/10 -
AN-1314
アプリケーション・ノート
磁石の構成
AMR 技術は、直線運動と回転運動両方の位置検出に使
用できます。AMR 角度センサーと組み合わせて使用す
る磁石構成には、リニア型、オフ・シャフト型、軸端型
などを始め多くの種類があります。
リニア型
12487-001
リニア・アプリケーションでは、図 1 に示すようにセ
ンサーと同じ面内に磁石を置く必要があります。磁石
の赤と青は、N 極と S 極の方向を示しています。AMR
センサーは S 極と N 極を区別しないので、この方向は
反対にすることもできます。AMR センサーから最も良
好な直線応答を得るには、センサーと磁石の中心位置
を互いに磁石長の半分だけ離す必要があります。
端型磁石構成では、直径方向に磁化された双極子磁石を
回転軸の先端に取り付けます。センサーは、回転軸と磁
石の下側に置かれます。この機械的セットアップで
は、直径方向磁石の N 極と S 極が、磁石の中心上に均
一な磁場を形成します。磁石と軸が回転すると磁場も回
転します。均一な磁場が検出素子と同じ面になるよう
にセンサーを置きます。軸端型磁石構成を図 3 に示し
ます。
図 3. 軸端型磁石構成
12487-101
軸端型磁石構成は、ブラシレス DC モーターの位置検出
および制御に適しています。ADA4571 あるいは任意の
180°角度センサーの場合、使用するブラシレス DC モ
ーターは偶数極ペアのモーターでなければなりませ
ん。奇数極ペアのモーターでは 360°フルの位置情報が
必要になるからです。
図 1. リニア型磁石構成
オフ・シャフト型
回転測定用の磁石構成の 1 つで、多極リング磁石を使
用します。図 2 に理想的なリング磁石を示します。色
付きの部分は、AMR センサーから見た外側磁場の方向
を示しています。直線応答を実現するには、リニア測
定の場合と同様にリングをセンサーと同一の面上に置
き、互いに極長の半分だけ離す必要があります。このタ
イプの磁石構成でのセンサー応答は、機械的に 1 回転
する間に極数と同じ数だけ繰り返されます。図 2 では 5
個の N 極と 5 個の S 極があるので、センサーから見た
磁極数は合計 10 個です。図に示すリングの AMR セン
サー出力は 1 回転ごとに 10 回繰り返されるので、36°
の絶対情報が得られます。
ほとんどのブラシレス DC モーターの閉ループ制御で
は、ホール・センサーを使用してローター位置をフィ
ードバックし、コイルへの電流を切り替えるための正
しい位置を決定しています。これらのセンサーの精度
には幅がありますが、一般に 5°から 10°程度です。モー
ターの応答をよりスムーズで効率的なものとしてトル
ク・リップルを減らすには、より正確なローター角度
情報が必要です。アナログ・デバイセズの AMR センサ
ーは、標準±0.1°、最大±0.5°というレベルの機械的精度
を実現します。このレベルの精度は、インクリメンタ
ル・エンコーダを使用する従来の方法でも実現できま
す。しかし、インクリメンタル・エンコーダでは、起
動、ストール誤差、環境的影響がより大きな問題とな
ります。アナログ・デバイセズの AMR センサーは、
モーター位置に関係なく、起動時やストール状態でも
絶対位置情報を提供します。この絶対位置情報があれ
ば、はるかに良好なトルク制御、よりスムーズなモー
ター起動、そしてより効率的なモーター起動とストー
ル性能を実現できます。
12487-102
ブリッジ構成
図 2. オフ・シャフト型磁石構成
軸端型
このアプリケーション・ノートで検討する主要な測定
構成が、軸端型と呼ばれるシンプルな磁石構成です。軸
Rev. 0
アナログ・デバイセズの AMR センサーはホイートスト
ン・ブリッジ構成で作られており、単一抵抗素子の場合
と比較してより広い出力電圧スイング範囲を実現する
とともに、大きな DC オフセットを除去できます。単
一の双極子磁石が回転する間に単一ブリッジの出力を
差動測定する場合は、使用可能範囲が 90°に制限されま
す。単一双極子磁石が機械的に 360°回転した時の単一
ブリッジ素子の出力波形を図 4 に示します。それぞれの
- 3/10 -
AN-1314
アプリケーション・ノート
電圧出力レベルに対応する機械的位置は 4 箇所ありま
す。
5
AMPLITUDE (V)
4
3
2
AMR センサー素子
AMR 検出素子のレイアウトはデバイスの最終的な性能
を決定します。アナログ・デバイセズは、実績ある
MR センサーのリーディング・メーカーである Sensitec
社(Sensitec GmbH)の AMR 検出技術を使用していま
す。アナログ・デバイセズ製品に使われている Sensitec
の AMR センサーには、PERFECTWAVE®技術が使わ
れています。PERFECTWAVE センサーは湾曲したセン
サー素子を使用して高次高調波を減らし、精度を向上
させています。
0
0
90
180
360
270
MECHANICAL ANGLE (Degrees)
12487-002
1
図 4. 単一ブリッジ出力
2 つの検出素子を互いに 45°ずらして同じダイ上に置け
ば、そのセンサーの測定範囲を 180°まで拡大できま
す。2 つのブリッジの簡略回路図を図 5 に示します。
α=0
α
DIRECTION OF
MAGNETIC FIELD
磁気的角度と機械的角度
AMR 技術においては、2 つの異なる角度スケール、つ
まり磁気的角度と機械的角度を理解する必要がありま
す。AMR 技術の特性により、ADA4571 は単一双極子
磁石に対する 180°の機械的センサーとなります。互い
に 45°回転させた 2 つの AMR ブリッジの出力は、相対
的位相シフトが 90°の正弦波なので、180°を超える絶対
角度は ATAN2(2 変数逆正接)を計算することによっ
て得られます。
V 
arctan 2 SIN 
 VCOS 
α=
2
12487-003
ATAN2 計算によって集められる情報は単一双極子磁石
の場合 360°で 2 回繰り返され、複数極ペアの磁石ではそ
れ以上繰り返されます。単一双極子磁石に対してこの
ATAN2 計算を行った後の出力波形の例を図 7 に示しま
す。
図 5. ダブル・ホイートストン・ブリッジ・センサーの
簡略回路図
360
5
MAGNETIC
MECHANICAL
CALCULATED ANGLE (Degrees)
AMR センサーの出力は N 極に対しても S 極に対しても
同じです。このため、それぞれのホイートストン・ブ
リッジから各チャンネルを差動的にモニタした場合、
相対的に 45°だけ回転させれば、2 つの正弦波出力の間
に 90°の位相シフトを作り出せます。双極子磁石構成が
機械的に 1 回転した場合に両方の AMR ブリッジから得
られる 2 つの出力を図 6 に示します。
270
180
90
AMPLITUDE (V)
0
90
180
270
MECHANICAL ANGLE (Degrees)
360
図 7. 磁気的角度と機械的角度
ATAN2 計算を行うと、直線的な角度応答が得られま
す。磁気的角度の計算では、絶対電圧も絶対磁場強度も
重要ではありません。磁気的角度では、他の角度センサ
ー技術と比較して、磁場や振幅のシフトおよびドリフト
によるセンサーへの影響が軽減されます。
2
0
0
90
180
270
MECHANICAL ANGLE (Degrees)
図 6. 2 つのブリッジ出力
360
12487-004
1
Rev. 0
0
3
12487-006
4
磁石選択時に考慮すべき事項
AMR センサーを使用する場合、最大限の性能を得るた
めに、センサーを適切な磁石と組み合わせることが重
- 4/10 -
AN-1314
アプリケーション・ノート
12487-007
要です。磁場の方向依存性により、使用する磁石は軸
方向ではなく直径方向に磁化されていなければなりま
せん。このような磁石を図 8 に示します。磁石の青と
赤の部分は N 極と S 極を示しており、磁力線は磁石の
N 極から S 極に向かいます。図 3 に示すように、軸端
型構成では磁石の上に AMR センサーを置く必要があ
りますが、センサーが置かれる面内では磁力線が均一
になります。
図 8. 双極子磁石の極性
一般に、AMR センサーには希土類磁石が組み合わされ
ます。これは、重量あたりの磁気エネルギーが大きいた
めです。しかし、センサーの飽和磁場強度に関する要求
が満たされていれば、より低コストのフェライト磁石を
使用することもできます。ただし、高性能や高温下で
の使用が求められるアプリケーションでは、希土類磁石
を使用した方が性能を向上させることができます。これ
は、AMR センサーの検知対象となる磁場強度が大きく
なるからです。また、大きい磁場強度は、漂遊磁場によ
るセンサー精度への影響を減らす助けとなります。
希土類永久磁石の最も一般的な磁性材料は、ネオジウム
(NdFeB)とサマリウムコバルト(SmCo)の 2 つで
す。これら 2 つの異なる磁性材料を比較し、各材料の主
な利点を示したものが表 1 です。これら 2 つの磁性材料
には異なる等級のものが数多くあるため、ここでは等級
の高い材料の比較を示しました。具体的な特性につい
ては、各等級の材料を個別に検討する必要があります。
磁性材料の等級はその材料のエネルギー積を示すもの
で、これはメガガウス・エルステッド(MGOe)で表さ
れます。この値は、その磁性材料の BH 曲線の最大値を
取ります。一般に、同じサイズの磁石で考えた場合、
MGOe が 2 倍の材料は磁力も 2 倍になります。
表 1. 磁性材料 NdFeB と SmCo の比較
パラメータ
価格
NdFeB
中
SmCo
高
磁場強度
高
中または高
最大温度
80°C~180°C
160°C~300°C
温度係数
−0.08 %/K~
−0.13 %/K
ニッケル(標準)
−0.03 %/K~
−0.04 %/K
不要
腐食保護
AMR 技術においては、強い磁石は常に弱い磁石よりも
優れた性能を発揮します。
AMR センサー素子に加わる磁場強度が強くなれば、そ
れだけデバイスの性能も向上します。デバイスの物理的
Rev. 0
な制約により、AMR センサーには高次高調波が存在し
ます。アナログ・デバイセズ製品に使われている
Sensitec AMR センサーは湾曲構造を採用することで他
の多くのセンサーに存在する 4 次高調波を軽減してお
り、これによって磁場強度が小さくても同等の性能を
得ることができます。
ADA4571 に使われている AMR 検出素子の最小動作磁場
強度は 25kA/m です。さらに低い磁場強度で使用するこ
とも可能ですが、その場合は精度が低下します。より強
い磁場強度で使用すれば精度が向上し、デバイスを損
傷させることもありません。AMR センサーは磁束を測
定するのではなく磁場方向を測定するので、磁場強度
の温度係数が大きくなっても使用でき、その状態でも
デバイスに指定された誤差範囲を実現することができま
す。ただし、磁石の選択にあたっては、極端な動作温度
での磁場強度の低下を考慮しなければなりません。磁
場強度の低下は、公称磁場強度と温度係数から計算で
きます。
磁石とセンサーの関係
AMR センサーの性能を最大限に引き出すには、機械的
なアライメントが非常に重要です。実際のシステムを設
計する際には、留意すべき重要なパラメータがいくつ
かあります。センサーが検出する磁場の方向が希望の方
向となるように、磁石とセンサー間の x-y 方向アライメ
ント誤差を、十分に管理する必要があります。センサー
の中心と磁石の中心の物理的なミスアライメントはシ
ステム全体の誤差を招き、この誤差値はセンサー位置
周辺での磁場のサイズと均一さに左右されます。
ADA4571 の 8 ピン SOIC パッケージでは、磁気センサー
の中心がピン 2 とピン 7 の上端間のパッケージ中央に置
かれています。パッケージング時の位置精度は、公称位
置の各方向±50µm 以内です。具体的なアライメント図
については ADA4571 のデータシートをご覧ください。
制御対象の軸端システムにおける磁気的な軸の中心
は、磁気センサーの中心に合っていなければなりませ
ん。
エアギャップ、つまりz方向の間隔も AMR センサー
の性能にとって重要です。絶対的アライメントは x-y 相
対位置ほど決定的な影響を及ぼしませんが、エアギャッ
プは、センサーの性能を最大限に引き出す要素として
理解する必要があります。仕様に定める AMR センサー
性能を実現するには、少なくともセンサーに最小必要磁
場強度が加わるように磁気的刺激を設計する必要があ
ります。ADA4571 を作動させるために必要な磁場強度
は 25kA/m です。センサーに加わる磁場強度を大きく
する方法の 1 つは、作動時のエアギャップを小さくす
ることです。ただし、磁石との距離を短くすることが、
常にデバイスの性能を向上させる訳ではないことに注意
が必要です。磁石の表面に近くなると、発生する磁場は
均一でなくなります。
エアギャップが動作に影響しないことは、AMR 技術の
重要な特長です。励磁磁場によってセンサーが完全に飽
和している限り、センサーから収集される角度情報が
磁場強度によって変化することはありません。磁場強
度の変動が許容されるということは、振動、応力、経
- 5/10 -
AN-1314
アプリケーション・ノート
ミスアライメントとエアギャップの測定
以下の項では、さまざまな磁石のサイズ、強度、エア
ギャップ、ミスアライメントに対する測定結果につい
て述べます。その他の磁石についても、各項に概要を示
す方法でテストを行いました。特定アプリケーションに
おける磁石選択の詳細については、アナログ・デバイ
セズへお問い合わせください。
測定セットアップ
各磁石はスロットレス型のブラシレス DC モーターに
取り付けられ、3000rpm の一定速度で回転します。
モーターは 2 つのリニア・アクチュエータを持つ可動
プラットフォームに取り付けられていて、一方のアク
チュエーターはセンサーの×方向、もう一方は y 方向の
動きを受け持ちます。図 9 に×方向と y 方向の動きの定
義を示します。
Y
45
VCOS 2
7
VDD
0.4
1.5
0.2
0
1.0
–0.2
–0.4
0.5
–0.6
X
–0.8
GND 3
6
GND
VSIN 4
5
VTEMP
–1.0
1.0
2 個のリニア・アクチュエータは 50µm 刻みで動作し、
全体的な動作範囲は 2mm×2mm です。つまり、AMR セ
ンサーの中心から各方向に 1mm ずつ動きます。この方
法によってテストされた放射状の最大ミスアライメン
トは 1.4mm で、これはスイープ範囲のコーナーにセン
サーを置いた場合の測定値です。
プロット形状をスムーズなものとするために、すべての
結果にはデジタル・フィルタをかけ、アップサンプリン
グを行いました。絶対誤差値は同じです。
磁場強度に関する検討
表 2. 比較 1 の磁石寸法
直径
NdFeB (35 MGOe)
6 mm
SmCo (32 MGOe)
6 mm
厚み
3 mm
3 mm
0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
–0.2
–0.4
–0.6
–0.8
–1.0
X ALIGNMENT (mm)
図 10. SmCo(32MGOe)、エアギャップ 1mm の場合
1.0
2.5
0.8
2.0
0.6
Y ALIGNMENT (mm)
z 方向、つまりセンサーと磁石間のエアギャップは、測
定スイープ全般を通じて固定されています。各測定に
対して示されているエアギャップは、磁石からパッケ
ージ上端までの距離として定義されます。AMR センサ
ーは、パッケージ上端から 0.38mm(公称値)の位置に
±0.025mm の許容差で組み込まれています。ADA4571
パッケージ内の AMR センサー・ダイからの距離を求
めるには、エアギャップ測定値にこの距離を加えてく
ださい。
Rev. 0
2.0
0.6
図 9. ADA4571 パッケージを基準として定義した
アライメント方向
パラメータ
2.5
0.8
12487-010
PD
1.0
0.4
1.5
0.2
0
1.0
–0.2
–0.4
0.5
–0.6
–0.8
–1.0
1.0
0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
–0.2
–0.4
–0.6
–0.8
–1.0
X ALIGNMENT (mm)
12487-011
8
図 10 と図 11 において、カラー・スケールは度数で表
した角度誤差を示します。これらのプロットにおける
最小角度誤差はプロットの中心部に位置し、これは磁
石とセンサーが完璧にアライメントされた場合で、そ
の値は 0.07°です。
12487-009
GC 1
磁場強度の違いがミスアライメントに与える影響を検
討するために、2 個の磁石を使用しました。いずれも直
径 6mm、厚さ 3mm です。一方の磁石は NdFeB 製でエ
ネルギー等級は 35MGOe、他方は SmCo 製でエネルギ
ー等級は 32MGOe です。NdFeB 磁石に対して SmCo 磁
石を使用する別の理由として、SmCo の温度等級が高い
こと、および磁性材料の温度係数が低いことが挙げら
れます。高温アプリケーションにおいては、これらが
より大きく影響します。ここで選択した磁石は、磁場
強度の違いによる影響を示すための例です。この他に
も、さまざまなエネルギー等級の NdFeB と SmCo を使
用した磁性材料があります。
Y ALIGNMENT (mm)
年変化による機械的ドリフトなどで z 軸に多少の動き
が生じても、角度上の精度にはほとんど影響しないこ
とを意味します。許容される変化量は磁石の材料や形
状によって異なりますが、数 mm から 1cm あるいはそ
れ以上の範囲です。
図 11. NdFeB(35MGOe)、エアギャップ 1mm の場合
NdFeB 磁石の場合は磁場強度が大きくなるので、SmCo
磁石と比較して、この磁石はマグネット位置のずれが大
きくなっても高性能を維持します。1mm のエアギャッ
プでこれらの 2 つの磁石を使用した場合のセンサー素子
位置における有効磁場強度は、NdFeB 磁石で約
60kA/m、SmCo 磁石で約 50kA/m です。これよりも大き
い、あるいは小さいエネルギー等級の磁石について以下
の項で検討します。
- 6/10 -
AN-1314
アプリケーション・ノート
1.0
エネルギー等級の大きい磁石と小さい磁石
0.8
0.8
表 3. 比較 2 の磁石寸法
厚み
5 mm
0.6
表 3 の SmCO 磁石を、表 4 に示すようにエアギャップ
2mm、4mm、および 6mm でテスト行いました。このテ
ストで報告された最小および最大誤差(プロットの中心
部と外周部)も同表に示す通りです。
2 mm
0.0774
4 mm
0.1002
6 mm
0.1477
最大誤差
(ミスアライメント
1.4mm)
0.6118
0.7522
0.7074
概算磁場強度(kA/m)
60
最小誤差
35
20
図 12 から図 14 において、カラー・スケールは度数で
表した角度誤差を示しています。これらのプロットの
最大角度誤差は 0.8°です。
これらのプロットの中心部分および表 4 に見られる最
小誤差の増大は、AMR センサーにおける磁場強度が大
幅に低下したことによります(特にギャップ 6mm の場
合)。この磁石は、3mm で 25kA/m の磁場を提供でき
るように設計されたものです。
1.0
0.8
0.8
0.5
0.2
0
0.4
–0.2
0.3
–0.4
0.2
–0.6
0.1
–0.8
–1.0
1.0
表 4. 比較 2 の最小および最大誤差
パラメータ
0.4
0
0.8
0.6
0.4
0
–0.2
–0.4
–0.6
–0.8
–1.0
X ALIGNMENT (mm)
図 14. SmCo(24MGOe)、エアギャップ 6mm の場合
診断
処理後にいくつかの診断を行えば、ADA4571 をモニタ
してシステムが正しく動作するようにしたり、性能をモ
ニタしたりする助けとなります。軸端構成やオフ・シャ
フト構成では、機械的回転の全般を通じて磁場強度が
均一でなければなりません。また、センサーを完全に
飽和させて内部的な磁化を上回るようにするには、こ
の磁場の大きさを 25kA/m より大きくする必要があり
ます。さらにこの条件を満たした上で、正弦チャンネ
ルと余弦チャンネルの出力振幅を 90°の位相差で同期さ
せなければなりません。この出力同期の結果として、温
度が一定であれば半径も一定になります。半径は以下
の式で計算できます。
V RAD = (V SIN −
0.7
0.6
0.2
12487-017
直径
SmCo (24 MGOe)
10 mm
Y ALIGNMENT (mm)
パラメータ
0.7
0.6
V DD 2
V
) + (VCOS − DD ) 2
2
2
Y ALIGNMENT (mm)
0.6
半径 VRAD を外部プロセッサや電子制御ユニット
(ECU)でモニタすれば、公称半径から大きく外れた
場合はシステムに異常があることが分かります。リア
ルタイムの機械的故障やミスアライメント、あるいは
磁場強度の低下などは、この半径計算によってモニタ
できます。
0.4
0.5
0.2
0.4
0
–0.2
0.3
–0.4
0.2
–0.6
–1.0
1.0
0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
–0.2
–0.4
–0.6
–0.8
–1.0
X ALIGNMENT (mm)
12487-012
0.1
–0.8
図 12. SmCo(24MGOe)、エアギャップ 2mm の場合
1.0
0.8
0.8
0.7
0.6
Y ALIGNMENT (mm)
0.6
ADA4571 のゲイン制御(GC)ピンに応じ、許容出力半
径には以下のような境界が設定されます。この範囲は、
図 15 と図 16 ではシェーディングされた領域によって
表されています。−40°C、+25°C、+125°C、および
+150°C の各温度に対する標準的な VRAD の値も示され
ています。最小値と最大値は ADA4571 のデータシート
に示されています。デバイスの温度をモニタリングす
れば、さらに許容範囲を絞り込むことができます。
0.4
0.5
0.2
0.4
0
–0.2
0.3
–0.4
0.2
–0.6
–1.0
1.0
0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
–0.2
–0.4
–0.6
–0.8
–1.0
X ALIGNMENT (mm)
12487-013
0.1
–0.8
図 13. SmCo(24MGOe)、エアギャップ 4mm の場合
Rev. 0
- 7/10 -
5.0
VSIN
+150°C
+125°C
+25°C
–40°C
4.5
4.0
3.5
3.0
VRAD
VSIN
VSIN
VCOS
VCOS
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
UNSATURATED
SATURATED
0
0
0.5
1.0
1.5
2.0
12487-015
VCOS MAGNITUDE (%VDD)
GC ON
VSIN
+150°C
+125°C
+25°C
–40°C
VRAD
VCOS
4.0
4.5
5.0
図 17. 未飽和センサーと飽和センサーの半径
正弦および余弦出力信号の FFT は、センサーの性能検
討や全般的なシステムのトラブルシューティングのた
めの強力なツールとなり得ます。
良好にアライメントされたセンサーの FFT を図 18 に示
します。図 19 は磁心から 1mm ミスアラインされたセン
サーの FFT です。また、図 20 はエアギャップの大きい
未飽和センサーの FFT で、加わる磁場強度を 10kA/m
とした場合の結果です。
VSIN
100
95
90
85
80
75
70
65
60
55
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
3.5
ミスアラインされたセンサーのプロットでも未飽和セ
ンサーのプロットでも、測定ノイズ・フロアは増加し
ています。未飽和センサーの場合、システム内では高
次高調波の方がはるかに大きく影響します。これらの
高調波はセンサー精度を低下させる主な要因となりま
す。
VCOS
100000
10000
図 16. GC をオフにした時の境界半径
正弦信号と余弦信号の振幅は磁場強度とほとんど関係
ありませんが、飽和したセンサーと比較すると、未飽
和のセンサーの出力振幅は低下を示し始めます。
以下に示す半径および高速フーリエ変換(FFT)のプ
ロット(図 17~図 20)は、前述の直径 10mm、厚さ
5mm の SmCo 磁石を使用して作成したものです。セン
サーは 5V 電源でバイアスされ、室温に維持されていま
す。
1000
100
10
1
0.1
0
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
FREQUENCY
図 18. 良好にアライメントが取られたセンサーの FFT
図 17 は、40kA/m で励磁された飽和センサーと、
10kA/m で励磁された未飽和センサーの半径プロットで
す。
Rev. 0
100
- 8/10 -
12487-019
GC OFF
MAGNITUDE
VCOS MAGNITUDE (%VDD)
12487-016
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100
VSIN MAGNITUDE (%VDD)
図 15. GC をオンにした時の境界半径
2.5
3.0
VCOS
12487-018
100
95
90
85
80
75
70
65
60
55
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
アプリケーション・ノート
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
85
90
95
100
VSIN MAGNITUDE (%VDD)
AN-1314
AN-1314
アプリケーション・ノート
100000
での位相遅れが大きくなるので、非同期サンプリング
による誤差が大きくなります。正弦出力と余弦出力の
同期サンプリングを行って位相遅れによる誤差を避け
るには、2 つの別々の ADC を使うか、または同時トラ
ックアンドホールド・アンプを 2 つ搭載した多重化
ADC を使用することを推奨します。サンプリング位相
誤差の程度は、計算電気誤差の大きさに直接影響しま
す。
10000
MAGNITUDE
1000
100
10
校正手順
0.1
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
FREQUENCY
12487-020
1
図 19. ミスアライメントのあるセンサーの FFT
100000
10000
MAGNITUDE
1000
100
10
0.1
0
100
200
300
400
500
600
700
800
FREQUENCY
900
1000
12487-021
1
図 20. 未飽和センサーの FFT
誤差源
センサーの角度誤差を最小限に抑えるには、さまざま
な誤差要因とそれらの校正方法を理解することが重要
です。
オフセット誤差
センサーのオフセットによる誤差はシステムに対する最
大の誤差要因ですが、「校正手順」に示す説明に従っ
て正しい校正を行なえば、オフセット誤差をほぼゼロ
にすることができます。
ADA4571 の性能を最大限に引き出すには、ある校正手
順を実施する必要があります。機械的許容差を固定し
て、磁石とセンサーのアライメントやエアギャップ距
離に関する推奨事項に従い、できるだけ正確に機械的
セットアップのアライメントを取ってください。シス
テムの設定完了後は、センサーのオフセットとオフセ
ット・ドリフトが角度誤差の主な要因となります。実施
できる校正には、ダイナミック校正とシングル・ポイ
ント校正の 2 種類があります。ダイナミック校正はシ
ングル・ポイント校正よりも角度誤差を小さくできま
すが、必要とされるリアルタイム処理が多くなりま
す。
ダイナミック校正は、360°連続アプリケーションと自励
アプリケーションでのみ行うことができます。このモ
ードでは、ADA4571 を校正して、オフセットおよびオ
フセット・ドリフト両方による誤差要因をシステムの
寿命全般および温度範囲全域にわたってゼロにするた
めに、オフセットを継続的に監視することができま
す。センサー出力からオフセット情報を収集するため
の方法はいくつかあります。全体的な波形から最大値
と最小値を収集すれば、オフセットを正確に表すこと
ができます。また、何回かの機械的回転にわたってサ
ンプリングした過去の値を平均しても、正確なオフセ
ット値が得られます。各チャンネルのオフセットは異
なるので、個別に保存する必要があります。
各チャンネルのオフセットを収集したら、コントロー
ラは、ATAN2(2 変数逆正接)計算を実行してデバイ
スから角度情報を集める前に、それぞれのチャンネル
からそのオフセットを差し引く必要があります。
振幅同期誤差
位相誤差
製品のレイアウトが 1 つのダイ上に 2 つの AMR ホイー
トストン・ブリッジを組み込んでいる結果として、正
弦チャンネルと余弦チャンネル間の固有位相誤差は無
視できる程度に抑えられています。しかし、出力を同
期的にサンプリングしない場合、つまり、多重化され
た A/D コンバータ(ADC)使用により位相誤差が発生
します。磁場の回転速度が大きくなると、サンプル間
Rev. 0
ECU/MICRO
COS SINE
VOS VOS
SINE
OUTPUT
–
ArcTangent
(CORDIC)
COS
OUTPUT
PHASE/SPEED
CORRECTION
CALCULATED
ANGLE
–
図 21. ダイナミック校正作業のフローチャート
シングル・ポイント校正は、角度測定位置が機械的回転
の全範囲にわたって移動することがないような、自励ア
プリケーションまたは静的アプリケーションで行うこ
とができます。360°の範囲でシングル・ポイント校正を
行うには、正確なオフセット情報を抽出する前に、偶
数個の電気的回転をキャプチャする必要があります。
- 9/10 -
12487-022
ADA4571 では、整合性能を良好なものとするために、
検出素子とシグナル・コンディショニング回路両方に
対し正弦および余弦チャンネルとも慎重にレイアウト
されています。結果として ADA4571 における振幅同期
による誤差は無視できる程度のもので、振幅不整合誤
差に対する補正は必要ありません。
AN-1314
アプリケーション・ノート
VTEMP 出力
180°動作のアプリケーションでは、正確なオフセット情
報を抽出する前にキャプチャしなければならない電気的
回転は 1 個だけです。オフセット補償を行うために、
各出力チャンネルに関係するオフセット情報をコント
ローラ内に保存します。
ADA4571 は診断用に使用できる簡易的な温度センサー
を内蔵しています。温度測定が必要な場合は、既知の
温度で測定値の初期校正を行う必要があります。温度
情報は、以下の式を使って VTEMP ピンの測定値から
計算できます。
オフセットをキャプチャする方法に関わらず、オフセッ
ト計算には少なくとも 2 回機械的にフル回転させるこ
とを推奨します。このオフセット値は、角度情報を再
び得る前に信号出力から減じます。最初に行うシング
ル・ポイント校正はオフセットによる角度誤差を減ら
す助けとなりますが、センサー誤差を最小限に抑えるた
めに、可能であればダイナミック校正を行ってくださ
い。このダイナミック校正は、AMR センサー固有の温
度によるオフセット・ドリフトを防ぐ助けとなりま
す。
TVTEMP
ここで、
TVTEMP は VTEMP 出力電圧から計算した温度(°C)
VTEMP は動作中の VTEMP 出力電圧
VDD は電源電圧
VCAL は校正時の制御温度下での VTEMP 出力電圧
TCAL は校正時の制御温度
TCO は内部回路の温度係数
TCVTEMP は VTEMP 測定値の直線的な温度係数
AVERAGE PAST
SINE VALUES
AVERAGE PAST
COS VALUES
COS SINE
VOS VOS
–
COS
OUTPUT
–
ArcTangent
(CORDIC)
PHASE/SPEED
CORRECTION
CALCULATED
ANGLE
図 22. シングル・ポイント校正作業のフローチャート
12487-023
ECU/MICRO
SINE
OUTPUT
精度を向上させるために、既知の温度を使用した初期
校正時も実際の運転時も VDD を同じに保つことを推奨
します。TCVTEMP は VTEMP 測定値の線形温度係数で
す。TCVTEMP は使用する電源電圧によって変化します
が、TC = 3.173mV/V/C の場合の標準的な TVTEMP の精度は
±5°C です。システムを使用中か否かを問わず、グラウ
ンドとの間には電磁干渉(EMI)対策用に 22nF のコン
デンサを付ける必要があります。
レイアウトに関する推奨事項と磁気干渉
磁気検出アプリケーションの性質上、センサーの近くに
使用する材料は非鉄性のものか非磁気性のものでなけれ
ばなりません。また、大電流が流れる AC ワイヤや DC
ワイヤ、あるいはトレースも、AMR センサーの近くに
は配置しないようにしてください。大電流が流れるワイ
ヤやトレースにはレンツの法則によって磁気干渉が生
じ、これが検出対象磁場の方向に歪みを生じさせて、
システムに新たな誤差を発生させます。磁場強度は磁石
からの距離の三乗に反比例します。この三乗則によ
り、大電流が流れるワイヤとセンサー間の距離を増や
せば、センサー付近の漂遊磁場量を大幅に減らすこと
ができます。
センサーの近くに大電流を流さなければならない場合で
も、この干渉の問題を緩和する方法がいくつかありま
す。鉄などの透磁性材料を使ってセンサー周囲に磁気
シールドを設けると、磁気センサーと外部環境からの
磁気を分離する助けとなります。また、より強力な磁
石を使用することも、磁場による干渉の影響を最小限
にする上で有効です。
Rev. 0

 VTEMP
   VCAL

VDD  –  
VDD  – TCAL × TCO 

=
TC VTEMP
- 10/10 -
Fly UP