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A StudyontheFunctionofMaterialHandling inLogistics
愛知学院大学 『経営管理研究所紀要J 第四号 2011 年 12 月 4 3 物流におけるマテリアル・ハンドリングの 機能に関する研究 一海外のマテハン動向も踏まえて- AStudyont h eF u n c t i o no fM a t e r i a lHandling i nL o g i s t i c s -Basedontheo v e r s e a sM Hmovement丹下博文 Hirofumi TANGE 和文要旨 物流機能の 一つ に「マテリアル・ハンドリング」があるが,近代のマテハンは早くも米国フォー ド社における自動車の大量生産 で導入された流れ作業で活用されており 物流分野だけでなく製造 業のモノづくり分野でも重要な役割を果たしてきた経緯がある 。 しかしこのマテハンは 1970 年 代ころからシステム化 , 1980 年代ころから IT (情報技術 ) 化 1990 年代ころからグローノ'\' )レイヒが 進み, 21 世紀の 2000 年代に入ってからは環境問題が深刻化して グ リーン化が重要なテーマになろ うとしている 。 他方,物流もロジステイクスから SCM の時代へと進化しつつあり,運搬や荷役の 作業と捉えられる傾向が強かったマテハンにも新しい観点が必要にな って きた 。 その 一つ が米国に 見られる ような 企業経営におけるシステム化や IT 化によって問題解決を図るソリュ ー ション・ビ ジネスに対して,マテハンが威力を発揮するのではないかと考えられる点である 。 21 世紀の今日 では 「マーケテイ ングからロジステイクスの時代へ」とい う時代の潮流を背景に,企業競争力の源 泉となる優れたロジステイクス・システムあるいはサプライチェーンを構築するうえで必要不可欠 となるマテハンのプレゼンスは,今後,飛躍 的に向上するのではないかと予想され, I マテハン ・ ソリュ ーショ ン革命」 が近い将来に起こるのではないかとまで期待される 。 英文要旨 ‘ Material H a n d l i n g 'i saf u n c t i o no fp h y s i c a ld i s t r i b u t i o n . Modernm a t e r i a lhandlingwas p r a c t i c a l l yuseda se a r l ya si nt h eautomobilemass-productionassemblyl i n eo fFordMotori n a t e r i a lhandlinghasplayedav i t a lr o l en o to n l yi np h y s i c a ld i s t r i b u t i o n t h eU . S . A . Thatis , m o n c e r n i n gt h i sm a t e r i a lhandlinghistory , t h esystemュ buta l s oi nm a n u f a c t u r i n g . However , c information orientedhasbecomeanimportants u b j e c ts i n c earoundthe1970s , theIT( h eg l o b a l o r i e n t e dhasbecomes i n c e t e c h n o l o g y )o r i e n t e dhasbecomes i n c earoundt h e1980s , t h eg r e e n o r i e n t e di sbecominganimportants u b j e c taround2 0 0 0 s aroundt h e1990s , andnowt i nt h e2 1 s tc e n t u r ya g a i n s tt h ebackgroundo ft h eg e t t i n g w o r s eenvironmentalp r o b l e m . On h y s i c a ld i s t r i b u t i o ni se v o l v i n gi n t ot h el o g i s t i sandSCMe r a s . Asaresult , t h eo t h e rhand , p m a t e r i a lhandling , whichi si n c l i n e dt oc o n s i d e rt h eworkso fc a r r y i n gands oon , r e a l l yneeds newv i e w p o i n t s . Oneo fthemw i l lbet h ei d e at h a ts o l u t i o nb u s i n e s sd o e sg i v eachancet o d i s p l a y i n gas t r o n gpowero fm a t e r i a lh a n d l i n g .C o n s i d e r i n gt h et r e n do f"ThemarketingEra ,i ti se x p e c t e dt h a tt h ep r e s e n c eo fm a t e r i a lhandlingw i l lbe i se v o l v i n gi n t ot h eL o g i s t i c sEra" tremendaouslyenhanced. A c t u a l l ym a t e i r a lhandlingi si n d i s p e n s a b l et oc o n s t r u c t i n gt h e 1 y e x c e l l en tl o g i s t i c so rs u p p l y c h a i nsystemsa sas o u r c eo fc o r p o r a t ec o m p e t i t i o n . Consequent ' M a t e r i a lHandling( M H)S o l u t i o nR e v o l u t i o n 'i se x p e c t e dt otakep l a c ei nt h enearf u t u r e . 4 4 『経営管理研究所紀要J 第四号 2011 年 12 月 和文キーワード:物流 ロジステイクス SCM( サプライチェーン・マネジメント), MH( マテ リアル・ハンドリング) ,運搬,荷役(にゃく) ,マテハン ・ソリューション革 命 英文キーワード: p h y s i c a ldistribution , logistics , SCM( s u p p l yc h a i nmanagement), M H a t e r i a lhandling( c a r r y i n g ), m a t e r i a lhandling, M H ( m a t e r i a lh a n d l i n g ), m S o l u t i o nR e v o l u t i o n 目次 1. はじめに 2. 海外文献における物流とマテハン 3. 日本工業規格における物流とマテハン 4 . 日本 MH 協会の資料に基づく考察 5. 米国業界の口ジスティクスとマテハン 6 . 21 世紀の日本におけるマテハン 7 . 日本における最新のマテハン情勢 8 . まとめ 大量生産・大量流通を背景に製造業だけでなく 1.はじめに 流通業とも非常に深く関わってきた経緯があ 21 世紀の今日,物流とその進化形としての る。歴史的にも「ピラミッド」ゃ「万里の長城」 ロジステイクスや SCM( サプライチェーン・ といった世界遺産だけでなく,印刷機や飛行機 マネジメント)に対する関心が産業界だけでな などの多くの画期的な製造物も,すべて物流機 く学界においても急速に高まってきているが, 能の一つに含められるマテハンの作業や技術の 物流機能の一つに「マテリアル・ハンドリング J 存在なくしては成し得かった人類の偉業と言っ ( M a t e r i a lHandling: 略称は iMHJ または「マ て過言ではあるまい 。 さらに近代物流への転換 テハン J) がある 。 これは具体的には様々なモ 点の一つが「モータリゼーション J (自動車化) ノを持ち運んだり動かしたり移動したりするた の進展であるが,この自動車の製造工程にも優 めの作業や技術を指し れたマテハンの技術が必要不可欠な点は論じる 現代の物流ではトラッ ク,鉄道,船舶,飛行機による中長距離の物資 までもないであろう 。 の移動を表す「輸送 j とは異なり,空港などの 一方,今日のグローバル化した市場環境のも 特定地域内や倉庫などの特定場所内における短 とでは,製品を販売するマーケティング活動の 距離の物資の移動を取り扱う「運搬 J ,あるい ほうが, はや物資の積み卸しゃ仕分けなどを行う「荷役 テイクス活動より簡単な場合がある, 販売した製品を顧客へ届けるロジス (にゃく )J の作業を指して使われるのが通例と 張されるようになってきた (九 こうしてロジス なっている 。 このため日本では従来からマテハ テイクス重視の傾向が強まるなかで最適なロジ とすら主 ンは,主にトラック輸送に焦点が当てられやす スティクス・システムを構築するために,保管, い物流産業のサポート的存在と誤解される嫌い 搬送,仕分け・ピッキング,情報システムなど があった。 の多様な要素を組み合わせたマテハンの高度で しかしながら,産業革命によって機械工業化 優れた技術が,製造や流通にかかわる幅広い分 が進展する以前は,素材(マテリアル)の加工 野において必須になることは疑う余地がないで や移動といった生産に必要な活動を,人間自身 あろう 。 が手を使うこと(ハンドリング) ,すなわち手 拡大傾向や,高度情報化によるソリューション・ とりわけグローバルイヒによる SCM の 工業によって行っていた 。 この意味でマテハン ビジネスの需要増等を勘案すると,マテハン業 はモノづくりを支える重要技術の一つであり, 界のビジネス・チャンスは今後増大すると予想 4 5 物流におけるマテリアル・ハンドリングの機能に関する研究 される。 語のーっとしてかなり定着している概念と言っ このような現状認識を基に,本研究では従来, てよいであろう。 一般的に馴染みの薄かった物流機能の 一 環とし そこでロジステイクスや SCM に関する海外 てのマテリアル・ハンドリングに焦点を当てて の学術的な専門書を調べてみると,以下の 2 つ 考察を進める。なお,本研究に際しては日本マ の研究成果のなかでマテリアル・ハンドリング テリアル・ハンドリング (MH) 協会(本部は に関する言及が見られる。ただし,マーケテイ 東京都中央区内)やマテハン関連企業などから ング,ロジステイクス. 多くの貴重な情報や資料を提供いただいたの な専門書で、マテリアル・ハンドリングに言及し で,本紙面を借りて御礼申し上げたい。 たものは非常に少なく SCM に関する学術的 この点からもマテハン は実務指向または技術指向が極めて強い分野で 2. 海外文献における物流とマテハン はないかと推測される 。 最初に今から 30 年以上も前の Buxton マーケテイングやロジスティクスと同じよう ( 19 7 5 ) (3) の研究では, I倉庫 管理とマテリアル ・ 語で,的確な日本語訳が見当たらないことから, ハンドリング (Warehouse Managementand M a t e r i a lHandling)J と題する項目のなかで この用語が海外から導入された概念であること マテリアル・ハンドリング活動が次のように説 は容易に推測できる 。 実際, 明されている 。 つまり,物流志向( d i s t r i b u t i o n に「マテリアル・ハンドリング」もカタカナ英 日本では 2008 年 1 月に出版された『広辞苑(第 6 版) J(岩波書 oritented) 店刊)に見出し語として掲載されていないので, マテリアル・ハンドリング活動は,明らかに保 の倉庫( warehouse) いまだ一般的な日本語として定着しておらず, 管 (storage) 専門的な業界用語としてだけ使用されていると 動 (movement) 考えられる。ただし 「マテリアル」とい う見出 動と保管には関連性があり し語はあり, I 材料,素材,物質的」という説 内における よりも倉庫作業の中心となる移 を重視している口実際にも移 われれば行われるほど 移動が効率的に行 保管に時間とスペース 明が加えられていることから,マテリアル・ハ が少なくてすむようになるからである,と 。 そ ンドリングとは材料や物質を取り扱う,すなわ の後に「輸送機能の管理 (Management o ft h e T r a n s p o r t a t i o nF u n c t i o n )J という 項目が続い ち「ハンドリング 」す ることを意味していると 推;測できる。 ていることから,マテリアル・ハンドリングは ちなみに米国で 2007 年に出版された英語の ビジネス用語辞典 (Dictionary Terms) o fB u s i n e s s には「マテリアル・ハンドリング (MA TERIALHANDLING)J という見出し語 主に倉庫内において効率的に移動する手段を指 していたようである。 次に最近の Cecil & H a n d f i e l d( 2 0 0 8 ) (4) の 研究では, I マテリアル・ハンドリン グと包装 が掲載され,次のような説明が加えられている 。 ( M a t e r i a lHandlingandP a c k a g i n g )J と題す つまり「原料から最終製品にいたるまでのあら る項目のなかで次のように記されている。つま ゆる形態の物資を移動,包装,および保管する り , こと。このなかには 入ってくる品物や出てい 倉庫保管,物流情報システムに影響を与えるこ マテリアル ・ハンドリ ングと包装は,輸送, く製品の積み出し,受け取り,加工処理,供給 とがあるために重要である。マテリアル・ハン 業者への返品,および廃棄処理も含まれる」と 。 ドリング・システムには,施設内,施設と輸送 さらに「マテリアル・マネジメント 手段 (transportat i o nmoode) の間,および異 ( MATERIALMANAGEMENT)J なる輸送手段どうしの間(例えば船舶からト という見出 し語では「物資の配置,保管,移動に関するあ ラックへの場合)における物品移動に必要な設 らゆる活動を管理運営すること。このなかには 備や手順が含まれる。フォークリフト,クレー 原料や部品の保管 ン,コンベア・ベルト,およびコンピュータ制 ならびに製造作業施設にお ける人員配置も含まれる」と解説されている (2) 。 御された自動保管補充システム したがってマテリアル・ハンドリングとかマテ automateds t o r a g eandr e t r i e v a lsystems) リアル・マネジメントは が,マテリアル・ハンドリング設備の適例であ 海外ではビジネス用 (ASRS 4 6 『経営管理研究所紀要』第 18 号 2011 年 12 月 る 。 他方,包装はロジスティクスの観点から, 付されている用語が 2 つある 。 その一つは荷役 サプライチェーンを通した物理的,情報的,金 (にゃく)で,次のように定義付けされている。 銭的な流れ (flow) を促進するために物品や物 つまり 「 物流過程における物資の積卸し運搬, 質が梱包される方法を指している,と 。 したがっ 積付け,ピッキング,仕分け,荷ぞろえなどの て,マテリアル ・ ハンドリングと包装は関連性 作業及びこれに付随する作業 。 マテリアルハン の強い分野と捉えられていることが理解でき ドリングともいう」と。他の一つは運搬で,こ れには対応英語として‘ carrylng と‘ materials る。 なお,定期刊行物として米国では rModern handling' の 2 語が当てられ,次のように定 Peerless 義付けされている 。 それは「物品を比較的短い という雑誌が 1946 年に創刊され,現 距離に移動させる作業 。 生産,流通,消費など 在は毎月発行されている 。 この月刊誌は米国に いずれの場合にも用いられる 。 マテリアルハン M a t e r i a l sHandlingJ (発行は Media) おける企業向け (B2B) のマテリアル・ハンド リング業界誌としてトップシェア(約 86 , 0 0 0 部発行)を持っており,その対象にはマテハン ドリングともいう」と。したがって JIS では 荷役と運搬がマテリアル ・ ハンドリングの同義 語と考えられているわけである 。 の自動化および機械化,保管,在庫データ管理, 参考までにマテリアル・ハンドリング,すな 輸送用包装,リフトトラック,その他のサプラ わち荷役や運搬と比較的近い概念または対照的 イチェーンにおけるマテハン関係の付属品など な概念と言える包装,保管,輸送,および配送 が掲げられている 。 は次のように定義されている 。 包装 (packing) とは「物品の輸送,保管,取引,使用などに当 3. 日本工業規格における物流とマテハン たって,その価値及び状態を維持するために, 適切な材料,容器などに物品を収納すること及 物流やロジスティクスの定義に関しては,工 びそれらを施す技術,又は施した状態 。 これを 業標準化法に基づいて制定される日本の国家規 個装,内装および外装の 3 種類に大別する 。 パッ 格 IJISJ (日本工業規格)による物流用語 ケージングともいう」と記されている 。 続いて ( Z 0 1 1 1:2006 , 1985 制定, 1999 改正, 2010 確 保管 (storage) 認) (5) において次のように示されている。最初 いて,品質,数量の保持など適正な管理の下で, に物流 (physical distribution) は「物資を供 ある期間蔵置すること J と記されている 。 他方, 給者から需要者へ,時間的及び空間的に移動す 輸送 (transportation) とは「貨物をトラック, る過程の活動 。 一般的には,包装,輸送,保管, 船舶,鉄道車両,航空機,その他の輸送機関に 荷役,流通加工及びそれらに関連する情報の諸 よって,ある地点から他の地点へ移動させるこ 機能を総合的に管理する活動 。 調達物流,生産 と」と記され,配送 (delivery) 物流,販売物流,回収物流(静脈物流入消費 流拠点から荷受人へ送り届けること J と記され 者物流なと対象領域を特定して呼ぶこともあ ている 。 る 」と 記され,物流機能には包装,輸送,保管, とは 「物 資を一定の場所にお は「貨物を物 さらに上述した荷役の説明のなかにある詳細 荷役(にゃく) ,流通加工,物流情報システム な用語については,それぞれ次のように定義付 の 6 項目が掲げられている 。 他方,ロジステイ けされている。最初に「積卸し J ( l o a d i n gand クス (logistics) は「物流の諸機能を高度化し unloading) 調達,生産,販売,回収などの分野を統合して, 積み込む作業および取り卸す作業,次に「運搬」 とは輸送機器などに対して物品を 需要と供給との適正化を図るとともに顧客満足 (carrying) を向上させ,併せて環境保全,安全対策などを させる作業, はじめとした社会的課題への対応を目指す戦略 規則正しく積み上げる一連の作業, 的な経営管理」と定義されている 。 グ J (picking) この物流用語の定義のなかでマテリアル・ハ とは物品を比較的近い距離に移動 I積付け J (stacking) 取り出す作業 , とは物品を I ピッキン とは保管場所から必要な物品を I 仕分け J (sorting) とは物品 ンドリングの直接的な定義はないものの,対応 を品種別,送り先方面別,顧客別などに分ける 英語(参考)として‘ materials handling' 作業,そして「荷ぞろえ j とは出荷する物品を が 4 7 物流におけるマテリアル・ハンドリングの機能に関する研究 輸送機器にすぐ積み込めるようにそろえる作業 わく「生産及び流通の現場における各種の技術 のことである。 革新の中で,特にマテリアル・ハンドリング 一方,荷役運搬機械 -器具には ,フォークリ (MH) 理論の適用による効果の検証と,さら フトトラックや無人搬送車などの産業車両,ハ にその管理-運用技術の発展並びに会員相互の ンドリフトトラックや産業用キャスタなどの小 交流による一層の進歩・発展を目的」とする,と。 型運搬車,巻上装置などのクレーンをはじめ, そこで同協会(英文名は Japanese M a t e r i a l チェーンブロック・ホイスト・スリング,コン HandlingS o c i e t y :JMHS) の編集で 1987 年(昭 ベヤ,パ レ ットなどが掲げられている (6) 。 この 和 62 年)に出版された『マテリアルハンドリ なかで用語の説明があるものを挙げると次のよ ング便覧J ( in d u s t r i a lv e h i c l e ) うになる。「産業車両 J とは一定の作業現場において,各種の荷役作業 に使用する車両のことで ラック,ハンドトラック フォークリフトト 無人搬送車などがあ り, r 無人搬送車 J ( a u t o m a t i cguidedv e c h i l e ) とは,本体に人手または自動で荷物を積み込み, (日刊工業新聞社刊)にはマテハン の沿革が詳細に論じられており,特に興味深い 記述だけを抜粋すると以下のように列記され る。なお,同協会は発足当初, 日本運搬管理協 会という名称が付されており マテハンも運搬 という訳語から始まったと明記されている(7) . 近代運搬が成立したのは 1950 年代と考 指示された場所まで自動走行し人手または自 えてよいであろう。しかし物を持ち,運 動で荷卸しをする無軌道または有軌道の車両を ぶことは,はるか昔,人聞が樹上から地上 指している。また, r パレット J (pallet) に降りて人間らしくなり始めたときから, とは, ユニ ッ トロードを推進するために用い られ,物 人間の最初の仕事と して行われ,運搬とか 品を荷役,輸送,および保管するために単位数 荷役とか呼ばれてきた。 量に取り まとめて 載せる面をもっ台で,上部構 造物をもつものを含む . と説明されている。 運搬は人間の最も古い仕事である。しか し,物を運ぶということは,あまり高度化 ちなみに,ユニットロード (unit load) は, しなくても,何とか間に合うので,他の仕 事(産業等)に比べて 複数の物品または包装貨物色機械および器具 すっかり遅れてし による取り扱いに適するように,パレットやコ まった。しかし,大いに進歩した機械工業 ンテナなどを使って一つの単位にまとめた貨物 は,実は運搬からスタートしたものである。 を指している 。 さらにコンテナ (container) は, たとえば,ギリシャ機械学は重量物の持ち 物資を収納し反復使用に適する耐久性のある 上げから始まったと言われている。 包装容器で,貨物コンテナ,通い容器,フレキ ・ ピラミッド,万里の長城など,古代の大 シブルコンテナなどをコンテナということがあ 規模運搬の跡を偲(しの)ばせる遺跡は, る, ほとんどが奴隷的人員による人海戦術的手 と説明されている 。 法によって作られたものと思われる。- 近代の運搬管理は 4 . 日本 MH 協会の資料に基づく考察 この人間酷使の悲惨さ から労働者を解放することが,経営にとっ ても,コスト低減になるという点で有利に 日本にはマテリアル・ハンドリング関係では 最大の業界団体となる日本マテリアル ・ ハンド なるということに気がついた。この線から リング (MH) 協会が, 運搬管理が経営に受け入れられる道が開け (財)社会経済生産性 本部を母体として 1956 年(昭和 31 年)に設立 されている 。 同協会の本部は東京都中央区内に た。 ・ 今日の日本の運搬機器の生産は世界最高 あり,関西支部も設置されている 。 2011 年 9 のレベルに達し, MH の技術 や管理手法も, 月現在の法人会員数は 45 社を数え,その代表 一部においては世界最高のレベルに達して 的な企業としては物流機器メーカー最大手の いるという状態であるが, 一 部においては (株)ダイフク(東証 l 部上場企業で本社は大 きわめて原始的な段階にあり, 阪市内)が挙げられるであろう 。 参考までに同 の中に,新旧両極端のプラクティスが同居 1 つの工場 協会の設立目的は次のように記されている 。 い していることが,実は珍しくない 。 4 8 . 『経営管理研究所紀要』第 18 号 2011 年 12 月 運搬としての特別の意識はなかったかも 解となるが, 次のようなコメントが付されてい しれないが,最初に問題とされたのは,人 る 。 いわく 力では動かしにくい物をどうして動かすか 今日においても,ほぼこの通りである 。 これが, ということであった 。 このため,重量物の われわれを 20 年も前に MH 改善に駆り立てた 持ち上げ方法の技術が開発された 。 これが MH のビジョンである」と ( 10) 。 MH 技術の 第 l 期で iMH を広い見地から捉えており, この期の代表的な 5. MH 設備はクレーンであった 。 米国業界の口ジスティクスとマテハン さらに第 2 次世界大戦終結後における日本へ の MH 設備導入の契機が次のように感動的に これまでの考察から日本におけるマテリア 描かれている (8) 。 いわく「終戦後,アメリカ軍 ル・ハンドリングの概念および考え方は,最初 が入ってきたときに フォークリフトトラック は運搬の作業や技術として米国から第 2 次世界 を持ち込んだ 。 このフォークリフトトラックが, 大戦後に導入されたことが分かる 。 そこで本章 日本の産業界に大きな影響を与えた 。 この機械 では実務指向の強い米国の産業界におけるマテ アメリカのコンベア中 リアル・ハンドリング業界にも少し考察を加え 心の流れ作業に敗れたという気持ちとが,ちょ てみたい 。 最初に取り上げるのが,マテハンの うど上昇してきた工業生産の大きな物量を捌 専門家に継続的な教育の提供を創出するために 的取扱いの強い印象と (さば)かねばならないという要求と,ちょう 設立された「マテリアル・ハンドリング管理協 どうまく出会って 会 (Material 意を引き起こした。この傾向は急速に広まって, HandlingManagementS o c i e t y : MHMS )J と称される独立系の専門団体で, 4 0 多くの MH 設備が設置され,運搬の機械化が 年以上も前に米国マテリアル・ハンドリング協 著しく進行した J と 。 会 (American M a t e r i a lHandlingSociety) と MH 設備に対して異常な熱 また, MH 機械化のメリッ トには次 の諸点が 指摘されている 。 それは ①運搬原価が低減で いう名称で創立されている 。 同協会のホームページに掲載された専門用語 o fTerms) によれば,マテリアル・ きる,② 1 人当たり 1 時間当たりの運搬が大き 集 (Glossary くできる, ③作業者の疲労が軽減できる,④安 ハンドリングは「すべての作業工程を通しての 全が向上できる,⑤大きな物,重いものが運搬 製品の保管,移動および安全のことで,その目 できる,⑥運搬速度が増加できる, ⑦取り扱い 的は関連するあらゆるコストを低減するととも 時聞が短縮できる,⑧スペースが活用できる, に,効 率性,生産性,および安全性を向上させ ⑨品物の損傷が減らせる,⑮仕掛かり時聞が短 ることにある 。 ただし くできる,⑪生産量が増加できる , そして⑫再 取り扱いが減らせる,などである (9) 。 なお,マテハンの効果は「運搬にかかる工数 と人体負担とを節約し もっと有効な労働に振 サプライチェーンとロ ジステイクスは同じではないけれども,互換的 に使われることが多い J と ( 11) 。 そこでロジス テイクの説明を見てみると次のように記されて いる 。 つまり 「サ プライチェーンを通しての物 り向ける一方,人体を保護する」と記され,マ 質の管理。 ロジステイクスは施設への内的およ テハンの目的については次の 4 点が掲げられて び外的な流れを管理するほど広いか,あるいは いる 。 その第 l は 運搬方法の改善によって原 個々の工程内の流れを管理するほど狭い場合も 価を引き下げること。第 2 は,運搬の迅速化, ある 。 サプライチェーンとマテリアル・ハンド 面積の効果的利用 レイアウトの改善によって リングは同じではないけれども互換的に使われ 能力を増大すること 。 第 3 は,できるだけ困難 ることが多い」と (ロ)。 さらにサプライチェー な仕事, ンの用言苦解説のなかにもマテリアル ・ハ ンドリ あるいは危険な仕事を少なくして作業 条件を改善すること 。 そして第 4 に , 納品の迅 ングとロジスティクは互換性があることが明記 速化,生産量の増大,生産原価の低減,運搬方 されている(13) 。 したがって米国の産業界では, 法の改善,損害賠償の減少によって,顧客への マテリアル・ハンドリングはサプライチェーン サービスを向上し,流通を改善すること,であ やロジステイクスと互換性を持ってほとんど同 る 。 これに対しては,今から 25 年近く前の見 義で使われることがあるほど重要な概念の一つ 4 9 物流におけるマテリアル・ハンドリングの機能に関する研究 になっていると推測される 。 次に米国で最大のマテリアル・ハンドリング れらは , 計画,標準化,作業,人間工学,ユニッ トロード,スペース活用,システム, 自動化, とロジスティクスに関係する団体である「米国 環境,ライフサイクル ・コ スト マテリアル・ハンドリング産業協会 (Material Standardization , Work , Ergonomic , Unit Load , SpaceUtilization, System , Automation , Environment , L i f eC y c l eCost) である 。 これ HandlingI n d u s t r yo fAmerica:MHIA )J を取 り上げてみたい。同協会の会員数は 800 社ほど (Planning, で,マテハンとロジステイクスにかかわるソ らの原則はマテハンの活動やシステムを分析 リューション (solutions) の主要な提供者(プ 計画・管理する際に役立つことが多く,潜在的 ロパイダー: providers) と位置づけられており, な問題点を把握したりニーズを評価する際の出 この場合のソリューションはサプライチェーン 発点としても役立つ, と主張されている 。 を機能させるためのものであると説明されてい 6 . 21 世紀の日本におけるマテハン る。 参考までに同協会のホームページには「マテ リアル・ハンドリングとロジステイクス」が次 日本では 21 世紀になると 1956 年に創立さ のように定義されている 。 それは「製造,流通, れた前述の日本マテリアル・ハンドリング協会 消費,廃棄のプロセスを通して物資や製品を移 から創立 45 周年を記念し『グローバルマテハ 動,保護,保管,コントロールすること。この ン 10 年考-MH システム機器事例 -j プロセスは,予測,資源配置,生産計画,工程 る冊子が 2001 年に出版された (15) 。そのなかに と題す 管理,在庫管理,顧客への配送,販売後のサポー は第 1 章に MH システム事例(生産システム トとサービス,そしてビジネスの基礎となる他 事例,工場内物流システム事例,精米工場事例, の多くの活動やプロセスを促進する広範囲に配 物流センタ一事例,空港・郵政事例) ,第 2 章 列された設備やシステムを含む」と (14) 。 他方, に MH 機器事例(自動倉庫,仕分けコンベヤ, ソリューションは情報の流れを促進する洗練さ ピッキングシステム, AGV' 走行台車,ロボッ れた技術を含み トパレタイザー,その他の機器) ,第 3 章に情 これには自動位置認識 (RFID:r a d i of r e q u e n c yidentification) およ (satellite t r a c k i n g s y s t e m s ),注文出荷情報の電子通信などがあ び衛星追跡システム る 。 要するに,これらの技術革新が伝統的なマ 報システムおよび情報機器 第 4 章にリサイク ルシステムの事例が掲載されているが,同書の 冒頭には次のような言質が見られる 。 ・ 当時(昭和 31 年ころに「運搬管理」は 生産性向上にむける「残された暗黒大陸 」 テハンとロジステイクスの設備やシステムとと もに,製造,倉庫保管,配送およびサプライ ともいわれ, MH' 物流を中心とする生産 チェーンを機能させるソリューション(解決策) 現場からの 「 ムリ,ムラ,ムダ j の排除と になるわけである。 生産性指導は,産学官が協力してその克服 に立ち向かうきっかけとなるものであり, さらに米国の商務省および労働統計局によれ ば,マテハンとロジステイクスは米国で最大か 国内工場の生産性向上に着実な成果を挙げ っ急成長している産業の一つに数えられ,実際 ることができました。 にマテハンおよびロジステイクスの設備やシス ・ その後の MH 技術の進展は目覚ましく, テムの消費は年間 1560 億ドルを超えるだけで 優れた製品を低コストで生産することを可 なく, 70 万人以上の雇用も創出しているとい 能にしました 。 工場において,また流通現 う 。 このように米国ではマテハンとロジステイ 場において, クスは統計上も合体して使われており,今日で が急速に実現してゆき I 自動化,無人化,情報化」 我が国産業界は世 はほとんど同義と考えてよいのではないかとす 界ーといわれるモノづくりに大きな力を発 ら推測されるほどである 。 揮しました 。 しかしこの「高度成長J は, 「大量消費 参考までに同協会のホームページにはマテハ ンの原則 (Material H andlingPrinciples) が 掲載され,次の 10 項目が指摘されている。そ 大量廃棄」を生み,近年にわ かに環境問題を露呈することになりました 0 ・ MH システム機器は常に世の中の変化に 5 0 『経営管理研究所紀要J 第 18 号 20日年 12 月 対応し最新技術を取り入れ時代と共に成 術 -2j 長してきました。モノを作り,モノを運び\ 最近のマテハン業界の課題が,グローバル化, モノを回収し,顧客満足・社会満足・会社 環境問題,人材育成,技術革新への対応である 満足を実現する快適な社会のインフラの ことが推測できるであろう(16) 。 ベースとして今後ますます重要性を高めて となっており,これらを見ただけでも このなかのグローバル化への対応の一環とし て注目されるのが いくと期待されます。 さらに同書にある日本の市場動向と MH シ 日本 MH 協会と中国最大 の物流団体との提携である 。 日本 MH 協会は ステム ・ 機器の推移を表した図を参照すると, 2011 年 2 月に,中国国家経済貿易委員会が直 次のような MH の動向を想定できる。最初に 接管理する 15 の総合的な協会の一つで, 日本で MH 機器の本格普及期となる 1960 年代 全国的な専門協会と 7 つの事業団体を管理する から 70 年代にかけて(主に昭和 40 年代)は単 中国最大の物流団体である中国物流購買連合会 26 の 品の大量生産・大量販売,すなわち少品種大量 (CFLP) ,マテハンや物流機器分野の中国物流 生産にともなう大量搬送・大量在庫の時代とな 技術協会 (CLTA) ,倉庫分野の中 国物資貯運 り,物流の合理化や省人化が推進され, MH 機 協会 (CMSTA) ,そして北京物資学院内に 09 器もリモート・コントロールを指向するように 年に設置された中国で初めて日本の物流を専門 なる。 1980 年ころになると多品種少量生産の 的に研究するとともに研究交流を推進する日本 時代に移行し,その象徴がジャスト・イン・タ 物流研究センター イムの物流で,この背景には「必要なものを必 では初めて物流領域における協力協議書を締結 要なだけ」という在庫レスの思想があり, MH 機器は電子工学を融合させてメカトロニクス (JLRC) の 4 団体と, 日本 した 。 特に中国物流購買連合会は中国国務院の 許可のもとに設立され,中国政府からは外交, (mechatronics) 化されオンライン・コントロー 業界統計,業界基準の作成等の権限を与えられ, ルを指向するようになる。続いて 1990 年ころ 会員総数 6 , 000 社以上を誇る名実ともに中国最 になると多頻度小ロット配送を目指してロジス 大の物流団体で,実際にも今回の調印は経済発 テイクスが普及し始め 展の著しい中国の物流関係者の間で大きな関心 MH 機器はシステム化 されるようになる。そして 20 世紀から 21 世紀 を集めたそうである 。 の変わり目あたりには情報技術 (IT) やイン 今後の日中間のマテハン ・ 物流分野における交 ターネットの浸透を背景に一括物流や物流共同 流と発展に画期的な役割を果たすのではないか 化を目指すようになり と期待されるわけである 。 ネジメント サプライチェーン・マ (SCM) の時代に移行していくこ 7 . とになるのである。 ところで, 日本における最新のマテハン情勢 日本マテリアル・ハンドリング協 会ではロジステイクスとマテリアル・ハンドリ ングの総合誌として rMH ジャーナル j 2185-9418) したが って ,この提携は (ISSN を季刊で発行しており , 2011 年 日本における最新のマテハンに関する情勢を 分析するうえで参考になるのが, 2009 年に出 版された rPDO ハンドブック一物流センター 7 月号が通巻で 266 号となる。同誌の最近の特 のシステム構築と運用 j 集テ ーマを列記すると次のようになる 。 つまり ろう (17) 。 同書の冒頭には次のような趣旨の記 2010 年 1 月号(通巻 260 号)が 「 マテハンに 述が見られるからである 。 つまり,物流を語る よる低温倉庫の価値向上 j , 場合, 10 年 4 月号(通巻 261 号)が「海外物流の現状 j , 10 年 7 月号(通 巻 262 号)が「“求められる"人材育成 j , 1 0 (流通研究社刊)であ 一 般的にはモノを運ぶ輸配送をイメージ される方が多いかもしれないが,物流は「モノ を運ぶ輸配送に関する物流 j と 「 物流センター 年 10 月号(通巻 263 号)が 「 ここまで進んで 内における物流システムとしての物流」に区分 いる国際物流 j , 11 年 1 月号(通巻 264 号)が「環 され,同書は後者に焦点を当てている, 境戦略への挑戦J. と。 11 年 4 月号(通巻 265 号) さらに物流にかかわる概念のなかで用語的に が「我が社の MH 最新技術 j ,そして 11 年 7 荷役について次のような記述見られる (18) 0 I荷 月号(通巻 266 号)が「我が社の MH 最新技 f支(にゃく) j という 言苦については ,物流センター 5 1 物流におけるマテリアル・ハンドリングの機能に関する研究 を中心とした物流活動現場においてはほとんど 使用されることがないために「マテハン (MH 載されている(19) 。 近年では,物流情報システムなど IT 技 . マテリアルハンドリング )J または,より具体 術との係わりなくして物流やマテリアルハ 的な表現に代えて記述している,と 。なお,上 ンドリングは成り立たない。情報機器を活 述した IJISJ (日本工業規格)の物流用語で 用していかにシステム的に運営するかが企 は「物流センター (distribution c e n t e r )J が 業経営課題であり マテリアルハンドリン 次のように定義されている 。 それは「物流活動 グシステムを構築する上での必須条件でも を構成する諸機能をもっ施設。流通センターと ある 0 もいう。このうち,配送活動に特化した施設を 配送センターという」と。 . マテリアルハンドリング=マテハンとい う活動は,物を効率的に保管・移動するこ とりわけ同 書の第 2 章 「企業経営に係わるマ と,そのものを指し, 1 物を動かすのがマ テリアルハンドリング」という項目のなかで, テハンである」と捉える。即ち,ロジステイ マテハンは次のように説明されている。物流・ クスの中にも,物流の中にも,生産システ 生産活動のいたるところで見られる「物の移動 ムの中にも,あらゆる場面にマテハンが存 や管理J を効率化・自動化するのが「マテリア 在する。マテハンは手法であり,ロジステイ ルハンドリングシステム」であり,同 書の狙い クスは構想である。 は具体的に,①物流管理部門が創設され全社の きょうあい 物流を担当することになった,②狭隆な工場 一方,マテハンに関する最新の統計と して取 り上げたいのが, 日本ロジスティクスシステム のなかで新しい製品を生産することになった, 協会から隔月で発行されている専門誌『ロジス ③以前に計画し検討した物流センターを見直す ティクスシステム j ことになった,④無人化工場を計画することに 年 8 ・ 9 月号(通巻 135 号)に掲載された 12010 なった,等の具体的な課題を持って物流システ 年度物流システム機器生産出荷統計」である (ISSN0918-6689) の 2011 ムの構築に取り組むことになった担当者に対 (20) 。同統計の解説 には「物流(マテハン)シ し,問題解決の手がかりや関連情報を提供し ステム」という表現が随所に使われており,こ より現場に適合したマテリアルハンドリング機 の場合の物流システム機器とは具体的にはマテ 器およびシステムの開発・導入を支援すること ハンの設備・機械を指していると考えられるか にある, らである。この統計は 1985 年度から実施され と 。そのうえで以下の ような見解が掲 図表 1 2010 年度物流システム機器生産出荷統計 (単位:百万円, 設備機器名 自動倉庫 台車系 コンベヤ系 仕分機 ピッキング系 回転棚 移動棚 棚 パレタイザ/ デパレタイザ 垂直搬送機 コンピュータ その{也 メロL 計 売上金額(構成比) 海外向金額(構成比) .7 ) 63 ,982 (21 3 . 7) 40 ,349 (1 6 . 8 ) 27 ,797 (3 5 . 6 ) 26 ,840 (3 6 . 1 ) 77 ,118 (2 . 3 ) 15,737 ( 5 4 . 0 ) 10,552 (1 . 3 ) 2 6 1 (0 . 6 ) 7,746 ( 2 . 8 ) 2,248 ( 0 . 6 ) 4 4 9 (0 . 2 ) 9,582 ( 3 . 8 ) 23 ,061 ( 7 . 9 ) 11 ,407 ( 3 5 1( 0. 0 ) . 0 ) 5,791 ( 2 . 5 ) 25 ,260 ( 8 %) 1 1( 0 . 0 ) 01( 0 . 0 ) . 0 ) 2,276 ( 3 .2 ) 9 2 0( 1 5 ) 13 ,209 ( 4. . 7 ) 2,789 ( 3 ( 4 . 8 ) 3,652 295 ,489 0 0 0 . 0 ) 1 0 0. 0) 75 ,542 ( 資料: r ロジスティクスシステム (Vo1. 20 , 2011 年 8 .9 月号 H 日 本ロジスティクスシステム協会, 2011 年 .71 頁 。 5 2 『経営管理研究所紀要J 第 18 号 2011 年 12 月 ており,その目的は「物流システム機器は生産 況の影響から設備投資の大幅な減少が起きた や流通の効率化,高付加価値化に重要な役割を が, 2010 年度はその反動から設備投資には一 果たしており,我が国経済の発展のためにもそ 定の回復が見られた。一方, の発展と成長が期待されている。そのためには, 前の好況時に契約された受注残が 2008 年度, 関係する企業が適切な経営判断を行えるよう, 2009 年度の売上高を底支えしていたが, 物流システム機器についての定量的で継続性の 年度までにはほぼ消化されていたものと考えら 2008 年度前半以 2 0 1 0 あるデータが不可欠である。このようなことか れる 。 これらの要因によって, 2010 年度の売 ら,物流システム機器の生産出荷状況を定量的 上高は前年度よりも拡大する結果となった。な かっ継続的に把握すること J と明記されている。 お,相対的には,海外売上高,クリーンルーム 同統計における調査対象の設備機器は次のよ 向けの売上高は堅調であった 。業種別に見ると, うに分類されている。つまり,自動倉庫,台車 「電気・精密機器」への売上の回復が目立 った J 系, と。 コンベヤ系,仕分機, ピッキング系,回転 棚,移行棚,棚,パレタイザ/デパレタイザ, 引き続き 2011 年 3 月に勃発した東日本大震 という 災の影響に関し,次のような補足説明も加えら これらを合計した れている。 12010 年度の売上金額等は, 3 月 11 2010 年度の物流システム機器の生産出荷統計 日に発生した東日本大震災の影響を受けてお は図表 I のとおりである。これによると総売上 り,前年度と比較する際に留意が必要である。 金額の約 2 , 955 億円(そのなかで海外向金額 本調査は売上金額を「完成基準」で集計してい は約 755 億円で 26% を占める)のうちで売上 るが,物流システム機器の出荷は,年度末にピー 金額が最も多いのがコンベヤ系(構成比 クを迎える傾向がある。そのため,年度末に完 垂直搬送機,コンピュータ,その他, 12 種類に大別されており 2 6. 1%)で,以下に自動倉庫(同 2 1. 7%) ,台 成・納品予定の製品の製造が遅延しまたは物 車系( 同 13.7%) 流網のす断等によって納品ができずに翌期に繰 と続いている 。 また,時系列 における総売上金額と海外売上金額の推移は図 り越されるなど,マイナスの影響が生じている 表 E のようになっているが,これを見ると物流 と考えられる。一方で,被災した企業の物流施 システム機器の売上金額は現在のところ海外売 設の修理・改修・再建等による売上の増加も想 上高比率が平均的には 25% ほどになる一一た 定されるが, 3 月中に改修等が完了したケース だし は希であり,売上金額へのプラスの寄与はほと 2009 年度の 14% はリーマン・ショック によって例外と考えてよいであろう一一こと と, んどないものと考えられる」と。 2008 年 9 月に勃発したリーマン・ショッ クに起因する世界的な需要減の影響をうけて 8. まとめ 2009 年度の売上高が大きく落ち込んだことが 近代のマテハンは早くも米国フォード社にお 分かる。 なお,全体の推移については次のように説明 されている。いわく 12009 年度は世界同時不 図表 E ける自動車の大 量生産で導入された流れ作業 ( a s s e m b l yline) で活用されており,物流分野 物流システム機器の売上金額の推移 (単位:百万円. 総売上金額 (前年比 ) 海外向け売上金額 (前年比) [総売上高構成比] 2006 年度 2007 年度 2008 年度 2009 年度 2010 年度 452 ,941 ( 1 1 9 ) 448 ,l 28 ( 9 9 ) 389 ,607 ( 8 7 ) 270 ,652 ( 6 9 ) 295,489 ( 1 0 9) 108,321 ( 10 5 ) 99,471 ( 9 2 ) 1 0 7 . 9 1 8 ( 10 8 ) 36 ,741 ( 3 4 ) 7 5. 5 4 2 ( 2 0 6 ) [ 2 3 J [ 2 2 J [ 2 8 J [ l4 J [ 2 6 J 資料 : r ロジステイクスシステム 67 頁および 70 頁。 %) (Vo1. 20. 2011 年 8 ・ 9 月号).J日本ロジステイクスシステム協会. 20日年, 5 3 物流におけるマテリアル・ハンドリングの機能に関する研究 図表 E マテハンのプレゼンス 物流 ζL モノづくり ロジスティクス (製造業) ~ SCM -システム化 (1970年代--) ・ IT 化 (1980年代--) ・グローバル化 (1990年代--) ・グリーン化 (2000年代--) |マテハン・ソリューション革命| ( MHS o l u t i o nR e v o l u t i o n ) だけでなく製造業のモノづくり分野でも重要な 圧迫されるようになってきたという 。 また,今 役割を果たしてきた経緯がある (21) 。 それにも 日の日本には米国の移民や中国の出稼ぎ労働者 かかわらず,マテハンは従来あまり注目されて のような低賃金労働者がいないため,安価な労 こなかった嫌いがある 。 その本質的な理由につ 働力に頼ることができず いては次の記述のなかに示唆されている 。 いわ 自動化が促進され それゆえに機械化や 日本のマテハンのシステム く「マテハンの考え方が工学的に整備されたの や技術は今日世界トップクラスと言ってよい は 1950 年頃にな っ てからである 。 当時倉庫や ほど高度化している 。 工場の中で,人手作業から機械で物を運ぶマテ 1970 年代ころからシステム化, ハンの機械化が本格化してきた。しかし,物を から IT( 情報技術)化, 1990 年代ころからグロー しかしこのマテハンは 1980 年代ころ 運ぶ作業はそれほど高度なことを考えなくても バル化が進み, 何とかできるという側面があり,物の加工や組 らは環境問題が深刻化してグリーン化が重要な み立てなどのような作業と比べ, テーマになろうとしている 。 自動化・機械 化などに取り組む認識が薄かった j と (22) 。 例えば,かつて人件費の非常に安か っ た中国 21 世紀の 2000 年代に入ってか 一方,物流もロジステイクスから SCM の時 代へと進化しつつあり 運搬や荷役の作業と捉 では,機械を使うより人を多く使ったいわゆる えられる傾向が強かったマテハンにも新しい観 人海戦術をとったほうが安あがりになるだけで 点が必要になってきた。その 一 つが米国に見ら なく雇用創出にもつかがるという側面が見られ れるような企業経営におけるシステム化や IT た 。 その中国では現在 人件費の高騰でかつて 化によ っ て問題解決を図るソリューション・ビ の固有企業でさえ機械を導入しなければ利益が ジネスにマテハンが威力を発揮するのではない 『経営管理研究所紀要J 第 18 号 2011 年 12 月 5 4 かと考えられる点である 。 実際にも最近ではソ リューション・ビジネスに加え,ソリューショ ン・サービス,ソリューション・ベンダー, ソ リューション・プロバイダーという用言音が使用 されるようになってきている。 p r o d u c t i o no p e r a t i o nc e n t e r s (3)GrahamBuxton , E f f e c t i v eMα rketing Logistics , TheMacmillanPressLtd. , p p . 9 7 5 . なお,同著はイギリスで出版 125-144, 1 されている。 以上のように物流におけるマテリアル・ハン (4)C e c i lC .Bozarth& RobertB .Handfield , ドリングの機能にかかわる動向を考察してくる Introductiont o Operα tions α nd Supply (SecondEdition), と,結論的に,世界市場の激変によって 20 世 Ch α in Mα n αgement 紀末に「物流を制するものは企業,そして社会 PearsonEducation , Inc. , 2008 , p p .375-376. を制する」とまで唱えられ 21 世紀の今日で なお,同著は米国で出版されている。参考 は「マーケテイングからロジステイクスの時代 までに,マテリアル・ハンドリング・シス handlingsystems) へ」という時代の潮流を背景に,企業競争力の テム 源泉となる{憂れたロジスティクス ・ システムあ の英文は次のように記されている --The るいはサプライチェーンを構築するうえで必要 Equipmentandproceduresneededt omove 不可欠となるマテハンのプレゼンスは今後,飛 goodswithinafacility , betweenaf a c i l i t y (Material の説明 躍的に向上するのではないかと予想され,図表 andatransportationmode , andbetween E に示したようなマテハン・ソリューション革 h i p ュ d i f f e r e n tt r a n s p o r t a t i o nmodes(e.g. , s 命 (MH S olutionRevolution) が起こるので t o t r u c kt r a n s f e r s). はないかとまで期待されるわけである 。 (5)日本規格協会編集 rJIS ハンドブ ック 物流 (2011) j 注記 日本規格協会. 2011 年. 園 1 7 ~27 頁。 (1)丹下博文「ロジステイクス ・ マーケテイン グの提唱 」 愛知学院大学経営管理研究所紀要 (第 17 号 ). 2010 年. 36 頁。 (6)向上書. 5 2 1~ 524 頁 。 (7) 日本 MH 協会編『マテリアルハンドリング 便覧J 日刊工業新聞社. 1987 年. 1~4 頁。 (8)向上書. 5 頁。 ングの概念的融合に関する研究」愛知学院大 (9)向上書. 31 頁 。 学経営管理研究所紀要(第 16 号). 2009 年, (10) 向上書. 52 頁 。 27 頁。 (11) 英文では次のように記されている 一一 The 丹下博文「ロジステイクスとマーケテイ (2)JackP.Friedman , Dictionαry o fB u s i n e s s storage , movementands e c u r i t yo fp r o d u c t s Terms ( FourthE d i t i o n), BARRON'S , 2007 , throughoutthee n t i r eo p e r a t i o n a lp r o c e s s. p. 4 0 7 . Theo b j e c t i v ei st olowera l lc o s t si n v o l v e d 参考までに,マテリアル・ハンドリング w h i l ea l s oi n c r e a s i n gefficiency , p r o d u c t i v i t y の説明の英文は次のように記されている 一一一 ands a f e t y . SupplyChainandL o g i s t i c sa r e moving , packaging, ands t o r i n go fm a t e r i a l s o f t e nusedinterchangeablya l thoughthey i neveryform , rangingfromrawm a t e r i a l s ti n c l u d e st h eshipping , t of i n i s h e dg o o d s .I a r en o tt h esame. (12) 英文では次のように記されている 一一 The receiving , andp r o c e s s i n go fincomingitems managemento fmaterialf l o wthroughout ando u t g o i n gproducts , r e t u r n st osuppliers , t h es u p p l yc h a i n .L o g i s t i c scanbea sbroad andd i s p o s a lo fs c r a p. 続いてマテリアル・マネジメントの説明 a smanaginginboundandoutboundf l o w s t oaf a c i l i t yo ra snarrowa smanagingt h e の英文は次のように記されている 一一 f l o wwithinani n d i v i d u a lp r o c e s s.Supply administrationo fa l la c t i v i t i e sconcerned ChainandM a t e r i a lHandlinga r eo f t e nused witht h eordering , storage , andmovement interchangeablyalthoughtheya r enott h e o fm a t e r i a l s . Thisi n c l u d e st h es t o r a g eo f rawm a t e i r a l sandp a r t sandt h emeaningo f same. (13) 英文では次のように記されている一一 5 5 物流におけるマテリアル ・ ハンドリングの機能に関する研究 MaterialHandlingandL o g i s t i c sa r eo f t e n 本マテリアル・ハンドリング協会, usedi n t e r c h a n g e a b l yalthoughtheya r en o t 月~ 2011 年 7 月 。 . r ロジスティクスシステム t h esame. (1 4) 英文では次のように記されている一一-the movement , protection , s t o r a g eandc o n t r o l 9 月号 )j (Vo1. 20 , 2010 年 1 2011 年 8 ・ 日本ロジステイクスシステム協会, 2011 年 。 o fmaterials andproducts throughout -丹下博文「ロジスティクス・マーケテイング the process o ftheir manufacture and の提唱」愛知学院大学経営管理研究所紀要(第 distribution , consumptionandd i s p o s a l .T h i s p r o c e s si n v o l v e sabroada r r a yo fequipment and systems that aid in forecasting , resourceallocation , productionplanning , 17 号), 2010 年 0 ・丹下博文『企業経営のグローパル化研究〈第 2 版 )j 中央経済社, 2010 年 。 - 丹下博文 ISCM に関する国際経営的視点から f l o wandprocessmanagement , inventory の研究 J r マネジメント・ジャーナル第 2 号』 management , customerdelivery , a f t e r s a l e s 神奈川大学国際経営研究所, 2010 年 0 supportandservice , andahosto fother a c t i v i t i e sandp r o c e s s e sb a s i ct ob u s i n e s s . (1 5) 日本 MH 協会・日本 MH 技術管理士会編集・ 発行 『 グローパルマテハン 10 年考-MH シス の概念的融合に関する研究」愛知学院大学経 営管理研究所紀要(第 16 号), 2009 年 0 . 日本物流学会編集委員会編集『日本物流学会 誌(第 18 号 H 日本物流学会, 2010 年 0 テム機器事例-j 2001 年 。 ( 1 6 ) rMH ・ 丹下博文「ロジステイクスとマーケティング ジャーナル (260 ~ 266 号) j (季刊) 日本マテリアル・ハンドリング協会, 2010 年 ・中田信哉『運輸業の市場開拓と競争J 白桃書房, 2009 年 。 - 苦瀬博仁編著『病院のロジスティクス J 白桃 1 月~ 2011 年 7 月 。 ( 1 7 )RCCI 物流センター構築計画マニュアル」 書房, 2009 年 0 研究会編著 rPDO ハンドブック一物流セン ・ RCCI物流センター構築計画マニュアル」研究 ターのシステム構築と運用 -j 流通研究社, 会編著 rPDO ハンドブック:物流センターの 2009 年 。 システム構築と運用』流通研究社, 2009 年 0 (18) 向上書, 18 頁 。 .(社)日本ロジステイクスシステム協会監修『基 (19) 向上書, 3 0~ ( 2 0 )r ロジスティクスシステム 9 月号 H 2011 年, 本ロジステイクス用語辞典[第 3 版Jj 白桃書房, 31 頁 。 (Vo1. 20 , 2011 年 8 ・ 日本ロジスティクスシステム協会, 6 2~ 2009 年 。 -財団法人鉄道総合技術研究所 12030 年の鉄道」 調査グループ編[鉄道総研の研究者が描く 75 頁 。 (2 1)株式会社ダイフク広報部編集発行 2030 年の鉄道J 交通新聞社, 2009 年 0 rDAIFUKUNEWS(第 195 号) j2010 年 7 月, ・丹下博文「物流の変選に関する国際経営的視 4 頁 。 なお,ここにはダイフクグループのウェ 点からの考察」愛知学院大学経営管理研究所 ブ (Webb) 社がフ ォ ード (Ford Motor) 社 に納めたチェンコンベヤシステムの貴重な写 最新中国物流J 大成出版社, 真が掲載されている 。 ( 2 2 )RCCI 物流センター構築計画マニュアル j 研究会編著,前掲書, 紀要(第 15 号), 2008 年 0 ・(株)日通総合研究所編 『実務担当者のための 2008 年 0 .中田信哉,橋本雅隆,嘉瀬英昭編著『ロジステイ クス概論』実教出版, 2007 年 0 144 頁。 ・孫 工 昇嗣監修,鳥居保徳・早川典雄編著『物 流セキュリティ時代』 成山堂, 2006 年 0 主要参考文献 ・ 日本規格協会編集 rJIS ハンドブ ッ ク 物流J 園 日本規格協会, 2011 年 0 ・日本物流学会編集委員会編集『日本物流学会 誌(第 19 号) j 日本物流学会, 2011 年 0 ・ rMH ジャーナル (260 ~ 265 号) j (季刊)日 ・A. W. ショー著,丹下博文訳・解説『市場流 通に関する諸問題〈新版 }j 白桃書房 2006 年0 ・加 藤勇夫, 賓 多園弘,尾碕異編著『現代のマー ケテイング論J ナカニシヤ出版, 2006 年 。 5 6 『経営管理研究所紀要J 第 18 号 20日年 12 月 -田口美嘉 寄監修 nT 時代の物流サービス 』 成 山堂, . 日本 MH 協会-日本 MH 技術管理士会編集・ 発行『グローバルマテハン 10 年考j 2001 年 。 -日本 MH 協 会編『マテリア ルハンドリン グ便 覧』日刊工業新聞社, ・ Michael Mα rketing Mα 九 α geme π t (Thirteenth E d i t i o n), PearsonEducationlnternational , 2002 年 0 Chαin Mα nαgement Introductiont o Oper α tions Ch α in Mα n αgement 1987 年 0 H. Hugos , 2 0 0 9 . .C e c i lC .Bozarth& RobertB .Handfield , Essenti α ls o [Supply ( ThirdE d i t i o n), John α nd Supply (SecondEdition), PearsonEducation , lnc. , 2 0 0 8. .JackP.Friedman , Dictionα ry o [B usiness Terms( F o u r t hE d i t i o n ), BARRON'S , 2 0 0 7 . 0 1 1 . 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