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論文PDF - Titech HEP
卒業研究 SEABAS2 モジュールによる 半導体位置検出器の読み出しシステムの構築 東京工業大学 理学部物理学科 陣内研究室 留目和輝 2013 年 2 月 22 日 i 概要 半導体位置検出器は高分解能で位置検出を行うことが出来るため、高エネルギー物理実験において様々 な場面で用いられている。半導体位置検出器を用いる際には、読み出しシステムが必要となるが、中小規 模の実験などでは、臨機応変に信号の取り扱い方を変えられるような読み出しシステムが望ましい。本研 究では、Telescope と呼ばれる半導体マイクロストリップ検出器を用いて、独自の読み出しシステムの構 築に取り組んだ。Telescope 検出器は、新開発の検出器の性能評価試験において、照射ビームの位置測定 に用いられるものであり、高頻度に複数チャンネルを読み出すことが要求される。本研究で構築する読み 出しシステムでは、状況に応じて信号の読み出し方を変えることを想定して、読み出しシステムの期間部 分に、プログラム可能な FPGA チップを搭載した、SEABAS2 というモジュールを用いた。 構築したシステムの評価及び、信号の取り扱い方による分解能の変化についての検討を行う為、3台 の Telescope 検出器を用いて宇宙線の通過位置測定を行った。ここでは、得られた位置情報を用いて、 Telescope 検出器同士の間のアライメントを行うプログラムも作成した。 115 時間の測定で 3927 事象が得られ、それらのデータを用いて、いくつかの方法で分解能の算出を 行った。しかし、いずれの方法で計算された分解能も、設計から期待される分解能と比べると半分ほどの 精度しか得られなかった。その原因についていくつかの検討を行い、その考察を元に事象の選別方法を変 更するなどして分解能の再計算を行ったが、いずれも分解能の向上にはいたらなかった。最終的に得られ た分解能は、いずれの選別方法でも 50µm 程度であった。 ii 目次 概要 第1章 i 序論 1 1.1 実験背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 1.2 SEABAS2 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 1.3 Telescope 検出器 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 1.4 本論文の構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 実験装置 6 2.1 実験系の接続 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 2.2 検出器システム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 2.3 トリガーシステム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10 2.4 読み出しシステム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 第2章 第3章 実験方法 16 3.1 信号の取得 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16 3.2 信号の解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17 結果と考察 23 4.1 ペデスタル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23 4.2 ヒット信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24 4.3 ヒット位置の分布と、TelescopeA と TelescopeC のアライメント . . . . . . . . . . . . 26 4.4 TelescopeB に対するアライメントと、分解能の算出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 28 4.5 分解能改良の為の検討 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 29 第5章 結論 32 付録 A Appendix 33 A.1 ドーターボード回路 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 33 A.2 分散と分解能の関係 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 35 第4章 参考文献 37 謝辞 41 1 第1章 序論 1.1 実験背景 半導体位置検出器は、現在の高エネルギー物理学を含む多くの物理学の実験分野において、欠かせな い存在である。陣内研究室が参加している、欧州原子核研究機構(Conseil Europén pour la Recherche Nucléaire; CERN)の大型ハドロン衝突加速器(Large Hadron Collider; LHC)における ATLAS 検出 器を例に挙げても、陽子ビームの衝突地点に最も近い位置にある内部飛跡検出器のうち、より内側にある pixel 検出器と SCT は、いずれも半導体位置検出器である [1]。これらの検出器は、陽子の衝突直後に生 じた粒子や、その粒子が崩壊してできた粒子を検出し、それらの粒子の飛跡を再構成する為の情報を得て いる。陽子ビームの衝突地点に近い領域での測定であるので、検出対象の粒子は高密度かつ高頻度で検出 器を通過する。これらの粒子の通過位置を特定する為には、10µm 程度の位置分解能を持つ半導体位置検 出器が必要不可欠である。 半導体位置検出器を利用する際、検出器から出力される信号は一般的に何らかの電気信号であるので、 これを計算機上で処理できるような形式にして、計算機へと読み出すシステムが必要となる。先述した ATLAS 検出器における例のように、粒子の飛跡の検出を目的とするような場合、複数の検出器の情報が 同時に必要になる為、読み出しシステムでは多チャンネルの信号を同時に読み出す必要がある。また、有 限な時間内に出来得る限り多くの統計量を得るためには、高頻度での信号読み出しが可能であることが望 ましい。更に、開発の段階や、小規模な実験においては、信号の取り扱い方を変更できるようにしておく ことが必要である。そこで、読み出しシステム内では信号を加工せず、そのまま計算機へと読み出せるシ ステムが必要とされる。 本研究では、これまでに述べた • 多チャンネルの信号を同時に読みだす。 • 読み出しシステム内で信号の加工をしない。 • 高頻度での信号読み出しが可能である。 を満たすような、読み出しシステムの開発を行う。 第 1 章 序論 2 1.2 SEABAS2 本研究では、SEABAS2(Soi EvAlution BoArd with Sitcp 2) というモジュールを用いて、読み出しシ ステムの構築を行う。本節では、この SEABAS2 に関する紹介を行う。 SEABAS2 は、高エネルギー加速器研究機構で開発された、高速読み出しの為の汎用ボードである(図 1.1)[2]。SEABAS2 には、16ch の ADC(Analog to Digital Converter)や、4ch の DAC(Digital to Analog Converter)、4ch の NIM OUT、2ch の NIM IN などのインターフェイスと、FPGA(FieldProgrammable Gate Array)チップが搭載されている。また、イーサネットを介して、PC とデータの やり取りを行うことができる。FPGA チップに対し、PC から Verilog HDL のコードを使って書き込む ことで、先述したインターフェイスをどのように繋ぐかや、インターフェイスで受け付けた信号をどのよ うに処理するかを指定することができる。なお、Verilog HDL コードの開発や、FPGA チップへの書き 込みは、XILINX 社の ISE WebPACK 開発ソフトウェアを用いる [3]。 図 1.1 SEABAS2 本研究では、SEABAS2 の ADC を用いて、複数の半導体位置検出器の信号電圧を同時に読みとり、読 みとった信号電圧を、1.1 の指針に従い、極力加工しない状態で PC へと送信するようなシステムを構築 する。 第 1 章 序論 3 1.3 Telescope 検出器 本研究では、半導体位置検出器の一つである Telescope 検出器を対象とした、読み出しシステムの構築 を目指す。本節では、半導体位置検出器及び Telescope 検出器に関する基本的な性質を説明する。また、 読み出し対象として Telescope 検出器を選んだ理由を説明する。 Telescope 検出器は、センサー部分に半導体マイクロストリップ検出器を用いた、位置検出器である (図 1.2)。Telescope 検出器のセンサー部分には、図 1.3 のような構造の半導体マイクロストリップ検出 器が、互いに垂直な方向の位置が測定できるように配置されている。それぞれの半導体マイクロストリッ プ検出器は、図 1.3 に示したように、384 本のストリップ電極が、50µm 間隔で配置されている。また、半 導体の深さは 300µm である。センサー部分に荷電粒子が入射すると、飛跡に沿って半導体内で電子ホー ル対を生成する。これをストリップ電極で読み出すと、粒子の通過した位置を中心にいくつかのストリッ プ電極で電荷が読み出される。 2cm 2cm センサー部分 図 1.2 Telescope 検出器のセンサー部分 ストリップ電極 p型半導体 #1 #2 #3 #382 #383 #384 50μm 300μm n型半導体 2.1cm 図 1.3 半導体ストリップ検出器の構造 一般的な半導体マイクロストリップ検出器では、閾値以上の電荷が読みだされたら 1、そうでなければ 0 を出力するような、バイナリ読み出しが行われる。しかし、Telescope 検出器では、収集電荷量に比例 したアナログ信号を出力する。飛跡に近ければ近いほどこの収集電荷量は大きくなるので、各ストリップ 電極で集められた電荷量の重心を計算すれば、荷電粒子が入射した位置をより良い精度で算出することが 第 1 章 序論 4 できる。*1 ただし、電子ホール対は粒子の飛跡に沿って生じるので、荷電粒子の入射角度が急な場合、電 荷が読みだされるストリップが広がってしまい、実際の入射位置と異なる位置が入射位置として算出され てしまうことがある。従って、粒子の入射角度によって、位置情報の分解能は異なる。 図 1.3 のような半導体ストリップ検出器は一次元の位置情報しか得ることができないが、先述したよう に、Telescope 検出器にはこの半導体ストリップ検出器が2枚用いられており、それぞれで直行した方向 の位置情報を得ることができるので、2枚の情報を合わせることで2次元の位置情報を得ることができ る。一般的に図 1.3 のような構造の半導体ストリップ検出器を2枚用いて垂直に入射した粒子の2次元 √ の位置情報を測定した場合、その分解能はバイナリ読み出しなら 50/ 12 ≃ 14µm、アナログ読み出しを し、ストリップ間の電荷分配分布による計算をすれば 5µm 程度になるとされている [4]。 この Telescope 検出器は、5µm という高い分解能を持っているので、他の位置検出器の性能試験等で用 いられる。性能試験では、試験対象である位置検出器に粒子ビームを照射し、「ビームが実際に通過した 位置」と、位置検出器が判定した通過位置を比較することで、どれほど正確に粒子の通過位置を特定でき たかを求めることができる。Telescope 検出器は性能試験においては、図 1.4 のように配置され、複数の Telescope 検出器の情報から、「ビームが実際に通過した位置」を求める為に用いられる。もし Telescope 検出器の分解能が向上すれば、より精度の高い性能試験を行うことができる。また、より高頻度での測定 が可能になれば、より短時間でより多くのデータを取得することができ、統計的な精度の向上にも貢献で きる。 Telescope検出器 Telescope検出器 これらの情報から「ビームが実際に通過した位置」を求める 荷電粒⼦線 試験対象の位置検出器 図 1.4 Telescope 検出器を用いた性能試験 従来、Telescope 検出器を使う際には、IRAM という Telescope 専用に開発された CAEN 社製のモ ジュールを用いていた。このモジュールは、信号の取り扱い方が固定されており、Telescope 検出器から どのような信号が出力されたかについては得ることができない。また、読み出しシステムの仕様によっ て、信号の読み出し頻度が制限されている。SEABAS2 を用いた読み出しシステムを構築することができ れば、FPGA チップへの書き込みによりシステムの調整が可能なので、Telescope 検出器からの信号をそ のまま取り出して取り扱うことができ、取り扱い方を工夫すれば分解能が向上する可能性もある。また、 読み出し頻度についても、信号の取り扱い方次第で向上する可能性がある。 以上のような同期で、本研究では、SEABAS2 を用いた Telescope 検出器の読み出しシステムをの構築 を行う。 *1 分解能においてはアナログ読み出しが有利であるが、アナログ読み出しを行う場合、どうしても 1 回毎の信号読み出しに時 間がかかってしまう。従って、測定頻度に関しては、一般的にバイナリ読み出しの方が有利である。 第 1 章 序論 5 1.4 本論文の構成 本節では、本章以降の本論文の構成について述べる。 まず 2 章では、読み出しシステムを構築する実験装置についてそれぞれ説明する。次に 3 章では、読み 出しシステムを通して PC に出力された信号の処理の仕方と、その信号を用いて Telescope 検出器の分解 能を算出する方法を説明する。続いて 4 章では、3 章までで説明した方法で得られた信号を実際に解析し た結果を、考察を交えて示し、更に分解能の改善方法についても検討する。最後に、5 章で本研究で得ら れた結果と課題をまとめる。 6 第2章 実験装置 本章では、読み出しシステムを構築する実験装置に関して述べる。まず、実験系全体における信号の流 れと、それぞれの部分の役割について説明する。続いて、各部分を構成する実験装置についてそれぞれ 個々に説明する。 2.1 実験系の接続 本節では、実験系全体を通した信号のおおまかな流れについて述べる。 実験系は、図 2.1 のように接続される。まず、トリガーシステムで信号を取得するタイミングを決定し、 検出器システムにトリガー信号を送る。検出器システムは、トリガー信号を受けると、粒子が通過した位 置に関する情報をアナログ信号で読み出しシステムに出力する。読み出しシステムでは、検出器システム から出力された信号を、デジタル信号に変換し、PC へ送信する。まず、検出器システムについて 2.2 に ついて説明する。続いて、トリガーシステムについて 2.3 説明し、最後に読み出しシステムについて 2.4 で説明する。 トリガーシステム プラスチックシンチレータ によるトリガーシステム クロックジェネレータ トリガー信号 検出器システム Viking Timing Unit Telescope アナログ信号 読み出しシステム SEABAS2 デジタル信号 PC 図 2.1 実験系における信号の流れ daughter board 第 2 章 実験装置 7 2.2 検出器システム 検出器システムは、外部トリガーを受けて Telescope 検出器用のトリガー信号を作る Viking Timing Unit というモジュールと、Telescope 本体からなる。まず Telescope 検出器の信号について説明してか ら、続いて Viking Timing Unit について説明する。 2.2.1 Telescope 検出器 ここでは、Telescope 検出器の出力する信号について説明する。 Telescope 検出器は、Viking Timing Unit からのトリガー信号が入力されると、ストリップ電極で収 集された電荷量の情報を含む信号を順番に出力する。ただし、ストリップ電極で収集された電荷量が 0 の 場合も、ストリップ電極毎に固有のペデスタルと呼ばれる、基準値となる電圧値が出力される。ストリッ プ電極で電荷が収集された場合は、収集された電荷量に比例した電圧値がペデスタルに上乗せして出力さ れる(図 2.2) 。そこで、あらかじめペデスタルの値を取得しておき、その後粒子が通過した際に出力され た信号(ヒット信号)から、ペデスタルの値を差し引いて、重心計算をすることで、センサーのどこを粒 信号電圧 子が通過したか求めることができる(図 2.3)。 収集電荷量に ⽐例した値 ペデスタル ストリップ番号 図 2.2 Telescope 検出器からの信号 xに関する領域 yに関する領域 ペデスタルのみの信号 ヒット信号 左がペデスタルのみの信号、右がヒット信号。白く囲った中が左の信号と異なる。 それぞれの値の差から、粒子の通過位置に関する情報を得ることができる。 図 2.3 ペデスタルと、ヒット信号 なお、先述したように Telescope 検出器には x 方向を測定する為の半導体マイクロストリップ検出器 と、y 方向を測定する為の半導体マイクロストリップ検出器が搭載されている。Viking Timing Unit か 第 2 章 実験装置 8 らのトリガー信号が入力されると、この 2 枚の半導体マイクロストリップ検出器に関する情報が連続して 出力される。具体的には、図 2.3 の左に示したように、まず x 方向に関する情報が出力され、続いて y 方 向に関する情報が出力される。 Telescope 検出器からの信号は、同じ大きさで正負が違う信号がそれぞれ出力される。これは、信号に 乗るノイズを極力減らすためである。信号に乗るノイズは 2 つの信号に同じように乗るので、信号を利用 する際に 2 つの信号の差を取って用いることで、そのノイズを除去することができる(図 2.4) 。2つの信 号の差分は、読み出しシステム内のドーターボードという基盤で取られる。詳しくは、2.4.1 で説明する。 ノイズの乗った2種類の信号電圧 信号電圧 信号電圧 出⼒される2種類の信号電圧 信号電圧 求めたい信号電圧 出⼒ 伝播 差分 ストリップ番号 ストリップ番号 図 2.4 ストリップ番号 出力される信号とノイズ 本実験では、図 2.5 のように、センサー部分が互いに平行に並ぶように 3 台の Telescope 検出器を 配置して用いる。以降では、配置した Telescope 検出器を、上から順番に TelescopeA、TelescopeB、 TelescopeC と呼ぶ。 図 2.5 Telescope 検出器の配置 第 2 章 実験装置 9 2.2.2 Viking Timing Unit Viking Timing Unit は、Telescope 検出器の読み出し用に開発された NIM モジュールである(図 2.6) [5]。Viking Timing Unit が、外部トリガーを受けると、Telescope 検出器専用のトリガー信号を出力す る。Viking Timing Unit 1台で、3台の Telescope 検出器全てに対して Telescope 検出器専用のトリ ガー信号を出力することができる。 図 2.6 Viking Timing Unit 出力する信号の内訳は、スタート信号、ホールド信号、クロック信号、ストップ信号である。それぞれ の信号について説明する。 • スタート信号 · · · Telescope 検出器に、信号取得の開始を伝える信号。 • ホールド信号 · · · この信号が入力されている間、各ストリップの収集電荷量が保持される。 • クロック信号 · · · テレスコープのストリップ信号を出力するタイミングを指定する信号。 • ストップ信号 · · · Telescope 検出器に、信号取得の終了を伝える信号。 上記の信号のうち、最も重要なのはクロック信号である。クロック信号が 1 回入力されると、Telescope 検出器はストリップ電極の信号を 1 ストリップ分出力する。クロック信号は繰り返し入力され、入力され るごとに、順番に次々とストリップ電極の信号が出力される。1.3 で説明したように、Telescope 検出器 のストリップ電極の総数は 384 本 ×2 枚=768 本であるが、クロック信号は一度のトリガー信号で 880 回 出力される。Telescope 検出器は、768 回目より後のクロック信号を受けると、ストリップ電極と無関係 の値を出力する。 第 2 章 実験装置 10 2.3 トリガーシステム トリガーシステムでは、Telescope 検出器が信号を出力するタイミングを決める役割を担う。トリガー システムを担う装置は、ペデスタルを取得する場合と、ヒット信号を取得する場合で種類が異なる。 ペデスタルを取得する際には、粒子の通過の有無に関係なくトリガーを生成したいので、クロックジェ ネレータというモジュールでトリガー信号を作る。詳しくは 2.3.1 で説明する。 ヒット信号を取得する際には、センサー部分を粒子が通過したタイミングでトリガーを生成したいの で、プラスチックシンチレータを用いたシステムでトリガー信号を作る。詳しくは 2.3.2 で説明する。 2.3.1 クロックジェネレータ クロックジェネレータは、任意の周期で任意の幅のトリガー信号を生成することができる NIM モジュー ルである(図 2.7)。本実験では、(株)カイズワークス製、KN270 10MHz CLOCK GENERATOR を 用いて、周期 100Hz、幅 100nsec のトリガー信号を生成した。 図 2.7 クロックジェネレータ 第 2 章 実験装置 11 2.3.2 プラスチックシンチレータによるトリガーシステム プラスチックシンチレータによるシステムは、図 2.8 のようにいくつかの装置を組み合わせることでト リガー信号を生成している。ここではまず、信号の流れについて説明し、続いて各装置について説明する。 プラスチックシンチレータによるトリガーシステムでは、まずプラスチックシンチレータで粒子がセン サー部分を通過したタイミングを知る。このタイミングでプラスチックシンチレータが発光するので、ラ イトガイドを介して光電子増倍管に光を伝え、光子をアナログ形式の電気信号に変換する。光電子増倍管 から出力されたアナログの電気信号は、ディスクリミネーターでデジタルの電気信号に変換され、コイン シデンスモジュールへ入力される。2 枚のプラスチックシンチレータが同時に発光した際には、コインシ デンスモジュールに同時に、デジタル信号が入力される。コインシデンスモジュールでは、そこで、コイ ンシデンスモジュールでは、二つの信号が同時に来るとトリガー信号を生成する。 以上のようにして、2 枚のプラスチックシンチレータが同時に発光したタイミングでトリガー信号が生 成される。 プラスチックシンチレータ ライトガイド 光電⼦増倍管 プラスチックシンチレータ ライトガイド 光電⼦増倍管 ディスクリミネーター コインシデンスモジュール ディスクリミネーター トリガー信号 図 2.8 プラスチックシンチレータによるトリガーシステムの接続 プラスチックシンチレータ 先に述べたように、このシステムの目的は、Telescope 検出器のセンサー部分に粒子が通過したタイミ ングを知ることである。Telescope 検出器のセンサー部分の直上に、センサー部分の大きさ 2cm×2cm よ り大きなプラスチックシンチレータを配置すれば、Telescope 検出器のセンサー部分に粒子が通過したタ イミングでプラスチックシンチレータが発光する。このタイミングでトリガーを生成すればよい。 ただし、プラスチックシンチレータで荷電粒子がエネルギーを落としすぎてしまうと、Telescope 検出 器を通過する前に停止してしまうなどして、測定できない可能性が高まる。そのため、プラスチックシン チレータで落とすエネルギーを最小限にする為、プラスチックシンチレータはなるべく薄いことが望まれ る。以上の条件を踏まえ、本実験では、厚さ 1mm、大きさ 4cm×4cm*1 のプラスチックシンチレータを 2 枚作り、TelescopeA のセンサー部分の真上と、TelescopeC のセンサー部分の真下に配置して用いた。 *1 これは Telescope 検出器のセンサーのサイズに比べ、縦横それぞれ 2cm ずつ大きい。当初センサーのサイズと同程度の大 きさのプラスチックシンチレータを利用する予定であったが、予備実験をしたところ、センサーの位置とプラスチックシンチ レータの位置を合わせるのが困難であり、その為同程度の大きさでは測定効率が落ちてしまうことが分かった。そこで、こ のように余裕をもった大きさにした。これにより目的のタイミング以外でもトリガー信号が出力されてしまうことがあるが、 これに関しては後の解析で除くことができる。 第 2 章 実験装置 12 ライトガイド ライトガイドは、プラスチックシンチレータで生じた光を電気信号に変える為に、光電子増倍管に伝え る為に用いる。 本実験で用いる光電子増倍管は大きさが一般的なものと異なるので、特殊な形のライトガイドが必要と なる。そこで、必要な形状のライトガイドの制作を、(株) シーアイ工業に依頼した。図 2.9 の右側にある のが、そのライトガイドである。 光電子増倍管 受光面の口径が直径 8mm である、 (株)浜松ホトニクス製、H3164-10 光電子増倍管アッセンブリを2 つ用いた。 ライトガイドの大きさは光電子増倍管の口径に合わせて設計してあるので、ライトガイドを介して光電 子増倍管とプラスチックシンチレータを組み合わせ、アルミホイルで覆った上で、光が入らないように遮 光テープを巻き付けた。更に遮光を確実にするため、上から暗幕で覆った。 高圧電源 光電子増倍管に高圧電圧をかける為用いた。本実験では、(株)REPIC 林栄精器製、RPH-030 4ch 高圧 電源を用いて、光電子増倍管それぞれに-1000V の電圧をかけた。 光電⼦増倍管 ライトガイド プラスチックシンチレータ 図 2.9 プラスチックシンチレータ・ライトガイド・光電子増倍管 ディスクリミネーター 光電子増倍管の信号はアナログ信号であるので、これを入力して、設定したスレッショルドを超えた信 号が入力された時、設定した幅のデジタル信号を出力する。本実験では、 (株)カイズワークス製、KN246 OCTAL DISCRIMINATOR を用いた。 オシロスコープで光電子増倍管から出力される信号を確認したところ、-20mV 程度を境に、ノイズと出 力信号が区別できることが分かった。そこで、スレッショルドは-20mV に設定した。デジタル信号の幅 は、100nsec に設定した。これは、2 つの信号が来た際に、信号の伝搬途中で遅れが起こっても、次のコイ ンシデンスモジュールで確実にトリガー信号が出力されるように、かなり余裕を持って設定している。*2 *2 伝播中に生じる遅れは高々数 nsec であると考えられ、また 1nsec 以上コインシデンスが取れれば次のコインシデンスモ ジュールはトリガーを出力するので、実際にはこれほど大きな値である必要はない。しかしながら、ここで偶発的にトリガー 信号を生成したとしても、後の解析でそのようなイベントは取り除くことができるので、かなり余裕をもった設定をした。 第 2 章 実験装置 13 コインシデンスモジュール コインシデンスモジュールでは、ディスクリミネーターを通った光電子増倍管からの信号が入力され る。二つ光電子増倍管からの信号が二つともディスクリミネーターのスレッショルドを超えて、ディスク リミネーターからの信号を同時に入力されると、コインシデンスモジュールは設定した幅の矩形波を出力 する。この矩形波をトリガー信号として用いる。 本実験では、(株)カイズワークス製、KN470 TRIPLE 4-FOLD 1-VETO COINCIDENCE を用い て、矩形波の幅を 100nsec とした。トリガー信号を入力する Viking Timing Unit は、60nsec 以上の矩 形波が入力されるとトリガー信号と判定するので、余裕を持って 100nsec に設定した。 左がディスクリミネーター、右がコインシデンスモジュール。 図 2.10 トリガーシステムの NIM モジュール 2.4 読み出しシステム Telescope 検出器から出力される信号の読み出しは、ドーターボードという自作の回路と、SEABAS2 により行う。それぞれの役割について説明する。 2.4.1 ドーターボード 先述したように、Telescope 検出器からの出力信号は 2 つのアナログ形式で出力される。この2つの信 号電圧の差分を取ることで、ノイズの少ない信号を再現することができる。そこで、ドーターボードとい う自作の回路を用いて、この2つの信号電圧の差分を取り、差分を出力する。 このドーターボードからの出力を SEABAS2 の ADC でデジタル形式に変換して、PC に送りたい。し かし、SEABAS2 の ADC は ±2V までしか読めないが、Telescope 検出器から出力される信号の差分は、 収集電荷量によっては僅かに 2V を超える可能性がある。そこで、ドーターボードにおいては信号電圧の 大きさの調整も行う。 具体的には、ユニバーサル基盤上で、Telescope 検出器からの信号を受け、その差分を半分の大きさの 電圧信号を出力するような差動増幅回路を組んだ。収集電荷量が大きい場合に、差分が僅かに 2V を超え る可能性がある程度で合ったので、信号電圧の大きさを半分にしてしまえば、ADC で読みとれる電圧の 第 2 章 実験装置 14 範囲を超えることはない。 回路図は A.1 に示す。現在用いているドーターボードを、図 2.11 に示す。図 2.11 に示したように、現 在用いているドーターボードはユニバーサル基盤上での自作回路である。*3 図 2.11 ドーターボード 2.4.2 SEABAS2 SEABAS2 では、先述したように、ドーターボードから出力される信号電圧を ADC で受け、イーサ ネットを介して PC とのデータのやり取りを行う。 本実験では、次のようにして信号を PC に送る。(図 2.12)。 1. NIM IN で、トリガーシステムが生成したトリガーを受ける。 2. トリガーを受けると、「Viking Timing Unit で生成したクロック信号」が 880 回入力されるまで、 内部で enable 信号を立てる。 3. enable 信号が立っている間、ADC で「3 枚の Telescope 検出器からの信号」及び「Viking Timing Unit で生成したクロック信号」を同時に 12 ビットの二進数に変換する。 4.「常に 0 の 1 ビット」+「どの Telescope 検出器かを示す値 2 ビット」+「Viking Timing Unit で 生成したクロック信号が 1 か 0 かを示す値 1 ビット」+「Telescope 検出器からの信号の大きさ 12 ビット」を合わせて 16 ビットの信号を作る。*4 5. イーサネットで PC との接続ができている場合は、3 種類の 16 ビットの信号を PC へのデータ送 信用のバッファーへ書き込む。 6. enable 信号が立っている間、3-5 を繰り返す。 本実験の設定では、Viking Timing Unit で生成されるクロック信号に比べ、ADC で信号電圧を読む周 期の方が、約 10 倍短い。従って、同じ 1 ストリップ電極からの信号が出力されている間に、おおよそ 10 回前後 ADC での信号取得が行われる。*5 *3 現在、(有) ジー・エヌ・ディーに基盤を発注している。基盤が完成するまで、図 2.11 に示した、自作した同等の回路で代用 して実験を行った。 *4 PC に送るデータのサイズが 16 ビットで固定されている為、最上位に 0 を付けくわえている。 *5 理想的な実験系では、1 ストリップ電極からの信号を何回測定しても値は変わらないはずなので、1 回だけ測定すればいい。 しかし、実際の実験系では、ドーターボード内の回路を通る時などにノイズが乗ってしまう為、測定するたびに多少値が変化 する。そこで、ここでは複数回の測定を行い、後にこれらの値を平均することでストリップの値としている。また、今回はそ のようなことは行っていないが、この複数回測定した値の分散をモニターすることで、実験系を通してのノイズの振る舞いを 知ることができる。実験系が不安定などの理由で、測定中にノイズの大きさが変化する場合、この振る舞いも記録すること で、系統誤差を議論することができる。 第 2 章 実験装置 enable 信号 クロック Telescope A 信号 時間 トリガー 15 順次PCへ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 常に0の1ビット どのTelescope検出器かを⽰す2ビット クロック信号を⽰す1ビット Telescope Aの信号電圧を⽰す12ビット 図 2.12 SEABAS2 での信号処理の流れ 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 0 0 1 1 1 0 0 0 1 1 1 0 0 0 1 0100000001 0100100100 0100101100 0011100010 0001011110 0011000001 0010110011 0100110001 0011101111 0011001110 0101011110 0100111011 0101101100 0001000001 0100010011 16 第3章 実験方法 ここでは、先の実験装置を用いて得られる信号を、どのように処理して分解能を算出するかを説明す る。まず、粒子通過位置に関する情報を含んだ信号を取得する方法を説明する。次に、集めた信号を解析 する方法を説明する。 3.1 信号の取得 本節では、ヒット信号を取得する方法について説明する。 粒子通過位置に関する情報を含んだ信号を取得するには、まずペデスタルを求めておき、続いてヒット 信号を取得する。まず、信号の取得に全般に関する説明をした後、ペデスタルのみの信号の取得について と、ヒット信号の取得についてそれぞれ説明する。 3.1.1 信号の取得全般 全ての信号の取得は事前に C++ で作成したプログラムで行う。信号を取得する際には、まずイーサ ネットで PC と SEABAS2 間の接続を行う。この際、SEABAS2 の、PC へのデータ送信用のバッファー は一旦リセットされる。その後、プログラムにより PC からデータ受信要求をすると、リセットの後に バッファに書き込まれたデータのうち、最も先に書き込まれた信号が PC に送られる。 PC に送られてきた信号は、次の信号に分けられる。 • Sch · · · どの Telescope 検出器かを示す値 • Sclk · · · Viking Timing Unit で生成したクロック信号を示す値 • Svalue · · · Telescope 検出器からの信号の大きさを示す値 以降の処理は、Sch を元に、各 Telescope 検出器ごとに別の変数で計算される。 Svalue は、先述したように、同じストリップ電極の値が何回か繰り返される。次のストリップ電極に切 り替わる際には、Sclk が 1 になる。そこで、Svalue は、まず足し合わされていく。そして、Sclk が 1 にな ると、それまで足し合わされた Svalue の平均がストリップ電極の値 Si として記録される。(式 3.1) Si = ∑ Svalue (ただし i はストリップ番号で、1 ≤ i ≤ 880。以下同様。) (3.1) 記録されたストリップの番号をモニターして、Viking Timing Unit から出力されるクロック信号の総 数 880 回分のデータが取得されたら、そこまでを 1 回分のイベントのデータとして扱う。 第 3 章 実験方法 17 Sch Sclk Svalue 0 00 0 0100000001 0 00 0 0100100100 0 00 1 0100101100 0 00 1 0011100010 0 00 1 0001011110 0 00 0 0011000001 0 00 0 0010110011 0 00 0 0100110001 0 00 1 0011101111 0 00 1 0011001110 0 00 1 0101011110 0 00 0 0100111011 0 00 0 0101101100 0 00 0 0001000001 0 00 1 0100010011 図 3.1 平均化 Si 0100110000 平均化 0011101111 1 回分のイベントにおける信号の処理の流れ 3.1.2 ペデスタルの取得 ペデスタルの取得時には、クロックジェネレータによりトリガーを生成する。粒子通過と関係なくトリ ガーが入力されるので、この時出力される信号は基本的にペデスタルのみである。*1 実験装置を配置してプログラムを開始すると、事前に設定した回数だけペデスタルのみの信号を取得す る。本実験では 1500 回ペデスタルのみの信号を取得した。 1500 回ペデスタルのみの信号の取得をしたら、それらのデータの平均値 {pi } と分散 {σ(pi )} を計算 し、記録する。以降はこの値を用いて解析を行う。 3.1.3 ヒット信号の取得 ヒット信号の取得時には、トリガーをプラスチックシンチレータによるトリガーシステムで生成する。 このトリガーが生成されたタイミングで出力される信号には、プラスチックシンチレータを発光させた粒 子線の通過位置に関する情報が含まれていると考えられる。この信号を順次記録する。 この段階で粒子線の通過位置を算出し、通過位置の情報を記録するようにすれば、記録される情報は通 過した x,y それぞれの位置と、収集電荷量などの僅かな情報となり、1イベント毎の情報量をかなり節約 することができる。しかし、1.1 でも述べたように、そのような形式で信号を記録すると、後ほど x,y そ れぞれの位置を算出するアルゴリズムの変更などはできなくなってしまう。今回の読み出しシステムで は、分解能の向上を目指して、位置算出のアルゴリズムの変更も行いたいので、得られた信号を全スト リップ電極分そのまま保存する。 3.2 信号の解析 本節では、記録されたヒット信号を元に、分解能を算出するまでの解析方法を説明する。 *1 稀に宇宙線が通過する可能性もあるが、センサーの範囲を宇宙線が通過するのは 15 秒に 1 回程度なので、100Hz でペデス タルを取得している本実験では、1500 回のデータ取得をした時に 1 回含まれる程度であるから、十分無視できる。 第 3 章 実験方法 18 記録されたヒット信号の解析は、まずイベント毎に各 Telescope 検出器のセンサー部分のどこに粒子が 通過したかの判定から行われる。続いて、粒子の通過位置の情報から、3 枚の Telescope 検出器の相対位 置を計算し、距離と角度のアライメント行う。最後に、分解能を算出する。それぞれの方法について説明 する。 3.2.1 粒子通過位置の判定 粒子通過位置を判定する為には、ストリップ電極毎の収集電荷量の値を知る必要がある。この収集電荷 量は、 「Si − pi 」に比例する。従って、 「Si − pi 」大きなストリップを探し、その周辺で重心を計算すれば 良い。この計算は、次の手順で行う。 1. スレッショルドを超えた信号のあるストリップ電極を探す 2. 重心を計算する範囲を決める 3. 重心計算を行う それぞれの手順について説明する。 ステップ 1:スレッショルドを超えた信号のあるストリップ電極を探す 「Si − pi 」の大きな信号を見つける為には、理想的には「Si − pi 」をストリップ毎に計算し、その大き さを基準に探すだけで良い。しかし実際には、ストリップによりペデスタルの値のふらつき方が異なる 為、σ(pi ) が大きいストリップでは、粒子の通過の有無と関係なく「Si − pi 」が大きくなってしまうこと がある。そこで、 「Si − pi 」を σ(pi ) で割った値を「ペデスタルから大きく離れた信号」の判定に用いる。 図 3.2 に、実際にペデスタルがふらついたことによるノイズを含む信号を示す。左のプロットでは、 Si − pi が大きいストリップがあるが、x に関する領域にしかないことから、これはペデスタルがふらつ いたことによるノイズだと考えられる。右の (Si − pi )/σ(pi ) はこのノイズが除去できている。 {S_i-P_i} {sigma(S_i)} ADC Value sigma(S_i) 以降「(Si − pi )/σ(pi )」を、σ(Si ) で示す。 140 120 14 12 100 10 80 8 60 6 40 4 20 2 0 0 100 200 300 400 500 600 700 Channel Number 0 0 100 200 300 400 500 600 700 Channel Number 左図は Si − pi 、右図は (Si − pi )/σ(pi ) 図 3.2 実際のノイズ信号 実際のプログラムでは、ストリップ電極の 1 番から順に σ(Si ) を計算し、設定したスレッショルドを超 えた値のものが見つかると、ステップ 2 に移る。ステップ 2 及びステップ 3 が終わると、ステップ 3 ま での計算に使われたストリップ電極の次のストリップ電極から、再び順に σ(Si ) の計算と、スレッショル 第 3 章 実験方法 19 ドとの値の比較を行う。 ステップ 2:重心を計算する範囲を決める 重心を計算する為には、理想的には x に関する情報を示す範囲全域、及び y に関する情報を示す範囲全 域で計算を行えばよい。しかし、実際には先にも述べたようなふらつきによる値も少なくない為、このよ うな全域を用いた計算は望ましくない。そこで、ステップ 1 で求めたストリップ電極から順に σ(Si ) を計 算し、スレッショルドを超えている連続した範囲を重心計算を行う範囲とする。*2 ステップ 3:重心計算を行う ここまでの計算は、σ(Si ) で行っていたが、ストリップ電極で収集された電荷量に比例するのは、 「Si − pi 」である。従って、先の手順で求めた範囲で、 「Si − pi 」を用いて重心計算を行い、これによって 求まった重心を、粒子の通過位置として用いる。 具体的な通過位置は次のようにして求める。本実験で用いるストリップ間隔は 50µm であるので、まず ∑ (Si − pi ) × i × 50µm ∑ r= (Si − pi ) (3.2) を求める。続いて、r > 384 × 50µm であれば重心が y に関する領域にあるので、r − 384 × 50µm の値 を y の通過位置として記録する。r ≤ 384 × 50µm であれば重心が x に関する領域にあるので、r の値を x の通過位置として記録する。 以上の 3 ステップで粒子の通過位置を判定する。ただし、ステップ 1 でスレッショルドを超えるような 信号が見つからなければ、そのイベントにおいて粒子の通過位置は計算されない。全ての Telescope 検出 器でどこを通過したか計算された場合は、その通過位置の組を記録する。そうでない場合は、 • プラスチックシンチレータのサイズを Telescope 検出器のセンサー部分より大きく取った為、プラ スチックシンチレーターは通過したが、何枚かの Telescope 検出器のセンサー部分は通過しなかっ たか場合 • 宇宙線以外の環境放射線により、偶発的にプラスチックシンチレータが2つとも発光した場合 等が考えられる。いずれにしても、そのようなイベントは分解能の算出に用いることができないので、他 の Telescope 検出器で通過位置が計算されたとしても、記録しない。 また、判定の結果、x や y の領域で、通過位置の候補が複数求まることがある。これは、同時に 2 か所 に荷電粒子が通過したイベントであると考えられる。ここでは、各 Telescope 検出器を通過した荷電粒子 が、どの候補とペアであるか推測する手段がないので、そのようなイベントも通過位置は記録しない。 *2 この方法では、重心を計算する範囲が、x に関する情報を示す範囲と、y に関する情報を示す範囲の両方にかかる場合があ る。これは、アナログ信号を伝搬する間に、近いストリップ電極の信号電圧に影響を受けて、信号電圧が変化してしまうこと があるからである。従って、そのような領域において計算を行った場合も、次のステップで計算された重心が x の領域に来 るようであればそれは x に関する情報、y の領域に来るようであれば y に関する情報として処理した。 第 3 章 実験方法 20 3.2.2 アライメント・分解能の算出 求まった粒子の通過位置の組を用いて、分解能の算出を行う。まず、2 台の Telescope 検出器の位置情 報を結んだ直線から、もう 1 台の Telescope 検出器のどこに粒子が通過したかを算出する。続いて、計算 によってえられた通過位置と、もう1台の Telescope 検出器が判定した通過位置の分布をとり、その分布 から分解能の計算を行う。 ただしここで、Telescope 検出器の相対位置が問題となる。3 台の Telescope 検出器は、極力並行で同 じ位置にセンサー部分が揃うように配置するが、微妙なずれが存在し得る。そこで、まず分解能を計算す る前に、3 台の Telescope 検出器のアライメントを行う。 それぞれについて説明する。 TelescopeA と TelescopeC のアライメント まず、TelescopeA と TelescopeC の、センサー部分の中心を合わせる。今回は、宇宙線の性質を用いて 調整を行う。 測定対象である宇宙線は、主にミューオンの粒子線である。ミューオンは大気中でエネルギーを失い、 エネルギーを失いきった粒子はその場で崩壊を迎える。そのため、ミューオンは移動距離が伸びるに従い 存在確率が減る。これが、一般的に宇宙線の強度 F が、平均自由行程 λ を用いて L F ∝ exp(− ) λ (3.3) と表現できる理由である。 宇宙線は様々な角度から入射されるが、角度が大きくなるほど、大気を通過する距離が長くなる為、地 上にまで辿りつく粒子数は減る。 地上から真上方向の大気の厚さを R と仮定し、真上方向を基準とした、粒子の入射角度を θ とすると、 粒子が通過してきた大気の厚さは L = R/ cos θ となる。従って、 F ∝ exp(− R ) λ cos θ (3.4) により強度は変化する。式 3.4 から分かるように、真上から入射する粒子が最も多くなるはずである。そ こでこの性質を用いて、粒子の入射角度が、θ = 0◦ となるものが最多になるように、センサーの中心を合 わせることができる。 具体的には次のようにアライメントを行う。まず、TelescopeA で判定されたヒット位置と、TelescopeC で判定されたヒット位置の相対座標をプロットする。宇宙線は真上から入射した粒子が最も多いはずな ので、2台の Telescope 検出器にずれが無ければ、ヒット位置の相対座標は原点が最も多いはずである。 しかし、相対位置がずれていた場合は、最も多い点がその分ずれる。そこで、このヒット位置の相対座 標の重心を計算し、この重心が原点に来るように TelescopeC の座標系を調整する。これにより、2 台の Telescope 検出器の中心位置が揃う。 第 3 章 実験方法 21 TelescopeB に対するアライメント 続いて、TelescopeB に対する、TelescopeA と TelescopeC の傾きと、中心同士の相対的な距離を 補正する。*3 ここでは、後の計算を簡単にするために TelescopeB の座標を基準とする。調整するの は、TelescopeA、TelescopeC それぞれについて、中心同士の相対的な距離 zA , zC と、各軸周りの 角 度 θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC で あ る( 図 3.3)。目 視 で あ る 程 度 は 合 わ せ て あ る の で 、大 き く ず れ て いることは考えにくいが、ここでは余裕を持って、距離については ±10mm、角度については ±3◦ 以内のずれを仮定する。正しい (zA , zC , θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC ) の組を推定する方法を考える。ある y TelescopeB φA y φB z ηA zA θA ηB x zB θB TelescopeA x TelescopeC 図 3.3 角度と相対位置のアライメント (zA , zC , θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC ) の組が得られた時、その組で TelescopeA と TelescopeC の座標系を回 転し、回転した座標系でのそれぞれ測定された粒子の通過位置を結ぶと、イベント毎に TelescopeB に おける粒子の通過位置 (xcal , ycal ) が推定できる。TelescopeB においても測定された粒子の通過位置 (xfind , yfind ) が得られているので、これらの差の全イベントでの平方和 ∆2 = ∑ {(xfind − xcal )2 + (yfind − ycal )2 } (3.5) を計算することができる。正しい (zA , zC , θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC ) の組においては、この ∆2 が最小にな ると考えられる。 また、TelescopeB のセンサーの中心のずれもここで補正する。TelescopeB のセンサーが (xfind + δx , yfind + δy ) のようにずれていた場合、∆2 の値は大きくなる。ここでも ∆2 が最小になるような (δx , δy ) の組が正しいずれの値だと考えられる。∆2 を最小にするような組は、全イベントでの (xcal , ycal ) の値を 用いて、 δx = ∑ (xfind − xcal ) イベント数 , δy = ∑ (yfind − ycal ) イベント数 (3.6) により一意的に定まる。 プ ロ グ ラ ム で は 、式 3.6 に よ っ て 求 ま っ た 組 (δx , δy ) で 補 正 し た 後 の ∆2 の 値 を 指 標 と し 、 (zA , zC , θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC ) の組を様々に変え、∆2 を最小とするような組を正しい組とする。具体 的には、次のような方法を用いていた 1. zA と zC を動かし、∆2 を最小にするような値を決める。 *3 精度の低い検出器であれば、この補正は不要である。しかし、今回用いている検出器は 2cm×2cm の範囲で、数 µm 程度の 精度が得られるはずである。この場合、例えば検出器のセンサーのある平面で θ 程度回転すると、1 次の補正のみを考えても √ 最大で 2 2θcm 程度ずれることになり、これを数 µm 程度に抑えるためには、0.01◦ 以下の精度で角度を合わせなければな らない。これは、目視での調整では不可能である。従って、角度の補正が必要となる。 第 3 章 実験方法 22 2. θA と θC を動かし、∆2 を最小にするような値を決める。この時、zA と zC は先の操作で決まった 値を用いる。 3. 同様の操作を残りの変数についても行う。 4. 求まった値を基準として、精度を 10 倍にして同様の操作を行う 5. 精度が 104 倍*4 になったら、そこで求まった値を最良の推定値とする。 分解能の算出 全ての補正が終わったら、分解能の算出を行う。理想的な実験系では補正後の ∆2 が分解能に一致する が、実際には統計数が少ない為、稀に起こる (xfind − xcal )2 + (yfind − ycal )2 が大きなイベントが含まれ ていると、実際の分解能より大きな分解能が算出されてしまう。 そこで、次のように分解能を算出する。まず、補正後の座標系を用いて、xfind − xcal , yfind − ycal それ ぞれでヒストグラムを作成する。続いて、そのヒストグラムを正規分布でフィットすることで、x 方向及 び y 方向の分散 σx′ , σy′ が得られる。この分散は、3 台の Telescope 検出器それぞれの分解能の伝搬によっ て決まる。最終的な 1 台の Telescope 検出器の分解能 σx , σy は、 √ σx = 2 ′ σ , 3 x √ σy 2 ′ σ 3 y により求まる。式 3.7 を算出する為の詳しい計算は A.2 に示した。 *4 この精度になれば、角度や z による誤差が分解能に影響しなくなる。 (3.7) 23 第4章 結果と考察 本章では、信号の解析の流れに沿って、実際に得られた解析結果と、それに対する考察を示す。まず得 られた平均ペデスタルの傾向と、問題のあるストリップついての考察を行う。次に、得られたヒット信号 の傾向に着いて触れる。続いて、ヒット位置の分布と、それを用いたアライメント結果を説明する。更 に、角度のアライメント結果と、得られた分解能について述べ、最後に分解能を改良する方法について検 討する。 4.1 ペデスタル 本節では、得られた平均ペデスタルについて述べる。 図 4.1 に、取得された3台の Telescope 検出器のペデスタル {pi } と、ペデスタルの分散 {σ(pi )} を示 す。緑の線が TelescopeA、青の線が TelescopeB、赤の線が TelescopeC の値である。この {pi } のおお よその振る舞いは、オシロスコープで見られたペデスタルの振る舞いに良く一致している。{σ(pi )} は、 ほとんどのチャンネルにおいて似た値を持っているが、TelescopeC の 190ch 近辺で、他の値の 6 倍程度 の {σ(pi )} が得られた。 オシロスコープでペデスタルの振る舞いを確認すると、このチャンネル付近で、粒子の通過と関係なく 信号電圧がふらついていることが確認された。これは、該当する Telescope 検出器のストリップ電極に何 らかの不具合が起こっており、他のストリップ電極のように一定のペデスタルの値を維持できていないの だと考えられる。従って、該当する Telescope 検出器のストリップ電極では、粒子が通過して収集された 電荷量に比例した値がペデスタルに上乗せして出力されたとしても、ペデスタルの値の推定が困難であ る。そこで、該当するストリップ電極の情報は除くことが望まれる。 本実験の解析では、σ(Si ) に対してスレッショルドを設けているので、該当するストリップ電極の情 報は、他に比べ約 6 倍大きな Si − pi が必要となる。TelescopeB について、通常のストリップ電極での Si − pi の大きさを確認したところ、大きいものでも Si − pi =80 程度であることが分かった。この程度の 値であれば、プログラム上でストリップを指定して除外しなくても、σ(Si ) に対してスレッショルドをか けることで十分除くことができる。従って、以下の解析では σ(Si ) に対するスレッショルドを用いて、全 てのストリップを同様に取り扱った。 第 4 章 結果と考察 24 Telescope {P_i} ADC Value 2200 2100 2000 1900 1800 1700 16000 100 200 300 400 500 600 700 Channel Number ADC Value Telescope {sigma(P_i)} 70 TelescopeA 60 TelescopeB TelescopeC 50 40 30 20 10 00 100 200 300 400 500 600 700 Channel Number 図 4.1 3台の Telescope 検出器のペデスタル 4.2 ヒット信号 本節では、得られたヒット信号の傾向について述べる。 平均ペデスタルを取得した後、115 時間の計測を行い、3927 回のイベントを取得した。スレッショル ドを 3,4,5,6,7,8 にしたところ、それぞれ3台の Telescope 検出器全てでヒット位置が計算されたイベン ト数は表 4.1 のようになった。 スレッショルドを上げれば、イベント数は減っていくように考えられるが、表 4.1 を見ると、スレッ ショルドが 3 から 4 になると、イベント数が増えている。これは、次のような理由だと考えられる。今回 用いたプログラムでは、3.2.1 でも述べたように、ヒット位置の計算の際に候補が2つ以上あれば、その イベントは除外している。スレッショルドを 3 に設定した際には、ノイズもスレッショルドを超えてしま い、実際に粒子が通過した位置と関係ない位置に候補が現れて、結果除外されてしまうようなイベントが あったのだと考えられる。この仮定を検証する為、スレッショルドを 3.5,4.5 にした場合についても確認 したところ、表 4.1 のカッコ内のようになった。この値から、スレッショルドを 3 から 3.5 の間の値にす ると、ノイズを候補として判定してしまうが、それ以上であればノイズを候補とするようなことはないの 第 4 章 結果と考察 25 表 4.1 測定されたイベント数 スレッショルド 3 台とも位置が計算されたイベント数 3 450 (3.5 556) 4 543 (4.5 512) 5 446 6 282 7 148 8 63 だと考えられる。 また、スレッショルドを大きく設定した場合は、直感通りイベント数が減少することが分かった。表 4.1 を見ると、後の解析に意味を持たせるような統計数が得られるスレッショルドは、最大で 6 程度であ ると考えられる。そこで、以下ではスレッショルドを 4,5,6 にして解析を行った。ただし、以降の章では 特筆しない限り、典型例として、最も統計数の多いスレッショルドを 4 に設定した場合の結果について 示す。 代表的なヒット信号の Si − pi 及び σ(Si ) を、図 4.2 に示す。図 4.2 を見ると、それぞれの x に関する 領域と y に関する領域で、明らかに σ(Si ) の値が大きいストリップがあるのが分かる。また、σ(Si ) の値 の大きいストリップの番号は、TelescopeA,TelescopeB,TelescopeC の順に、おおよそ直線に並んでいる ことが分かる。 また図 4.2 から、σ(Si ) の大きなストリップは、一つのまとまりにつき数ストリップ程度であることが 読みとれる。 第 4 章 結果と考察 26 {S_i} 120 ADC Value ADC Value {S_i-P_i} 100 14 12 80 10 60 8 40 6 20 4 0 2 -20 0 100 200 300 400 500 600 {S_i-P_i} 100 200 300 400 500 600 700 800 Channel Number 100 200 300 400 500 600 700 800 Channel Number 100 200 300 400 500 600 700 800 Channel Number {S_i} 120 ADC Value ADC Value 00 700 800 Channel Number 100 14 12 80 10 60 8 40 6 20 4 0 2 -20 0 100 200 300 400 500 600 {S_i-P_i} {S_i} 120 ADC Value ADC Value 0 0 700 800 Channel Number 100 14 12 80 10 60 8 40 6 20 4 0 2 -20 0 100 200 300 400 500 600 700 800 Channel Number 0 0 上から、それぞれ TelescopeA、TelescopeB、TelescopeC の信号。 また、左は Si − pi 、右は σ(Si ) 図 4.2 代表的なヒット信号 4.3 ヒット位置の分布と、TelescopeA と TelescopeC のアライメント 本節では、ヒット信号から算出されたヒット位置の分布と、それを用いたアライメントについて述べる。 まず、アライメント前のヒット位置の分布を、各 Telescope 検出器毎に図 4.3 から図 4.5 に示す。いず れの検出器のヒット位置分布もおおよそ一様であるが、TelescopeB のみ僅かに内側に分布している。 これは、次の理由であると考えられる。今回のヒット位置は、3台の Telescope 検出器全てでヒット 位置が計算されたイベントのみプロットしている。間にある TelescopeB において、センサー部分の端 を粒子が通過した場合、傾きによっては TelescopeA や TelescopeC のある平面で粒子が通過するのはセ ンサー部分の外になってしまう。従って、そのようなイベントは弾かれてしまう。このような理由で、 第 4 章 結果と考察 27 TelescopeB におけるヒット位置分布が僅かに内側に分布したのだと考えられる。 続いて、TelescopeA と TelescopeC の中心のアライメントに用いる、ヒット位置の相対座標を図 4.6 に 示す。この分布の重心は (-0.897019mm,2.42451mm) であった。 Telescope B positon 4 18 3.5 y[mm] y[mm] Telescope A positon 16 5 18 4.5 16 3 14 2.5 12 10 4 14 3.5 12 3 10 2 8 2.5 8 2 6 1.5 4 1 2 0.5 1.5 6 1 4 0.5 2 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 x[mm] 0 0 0 図 4.3 Telescope A のヒット位置分布 4 6 8 10 12 14 16 18 x[mm] 0 図 4.4 Telescope B のヒット位置分布 4 18 3.5 y[mm] from Telescope A to Telescope C Telescope C positon y[mm] 2 7 15 6 16 3 14 12 10 5 2.5 5 2 0 4 10 3 8 1.5 -5 6 2 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 x[mm] 図 4.5 Telescope C のヒット位置分布 2 1 -10 0.5 -15 4 0 1 -15 -10 -5 0 5 10 15 x[mm] 0 図 4.6 Telescope C と Telescope A の相対ヒ ット位置分布 図 4.6 を見ると、外側に行くほど僅かではあるが確かに分布数は少なくなっている。しかし、最頻値を 取っている中心がどのあたりかを分布から読みとるのは難しい。そもそもここで中心が見えると想定され るのは、宇宙線が入射角度が急なものほど少ないからであるが、宇宙線強度は、式 3.4 で示したように、 cos θ で影響を受ける。角度が小さい領域では cos θ は殆ど定数になってしまうので、中心を見つける為に は、広い θ の領域を測定し、その分布をフィッティングするのが理想的である。 しかし、今回のセッティングでは、TelescopeA と TelescopeC の間隔がおおよそ 40mm であるので、 √ 角度は最大でも arctan (20 2mm/40mm) ≃ 35◦ である。この範囲では、端と中心で高々 0.8 倍程度の 第 4 章 結果と考察 28 違いしか見られない。従って、フィッティングによって精度よく中心を求めるには、統計数をもっと貯め なければならない。 フィッティングで中心を求めるのでなく、重心を用いて中心を求めると、偶然中心から大きく離れた イベントなどによって、実際の中心から離れた座標が求まってしまう可能性もある。しかし、実はこの 中心位置のずれは、次のアライメントでは (xcal , ycal ) を等しく同じ向きにずらすことになり、その後の (δx , δy ) の補正により、打ち消され、分解能の算出に影響しない。そこで、ここでは重心を用いたおおよ そのアライメントで問題ないとした。 4.4 TelescopeB に対するアライメントと、分解能の算出 本節では、角度に関するアライメントと、得られた分解能について述べる。 まず、理想的なセッティングの値 (zA , zC , θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC ) = (−20mm, 20mm, 0, 0, 0, 0, 0) (4.1) を初期値として、TelescopeB に対するアライメント調整を行ったところ、最終的に (zA , zC , θA , θC , ϕA , ϕC , ηA , ηC ) =(−22.1421mm, 23.889mm, −2.6067◦ , −3.3333◦ , 0.3333◦ , −1.5333◦ , −0.33546◦ , 0.28806◦ ) (4.2) の組が得られた。また、TelescopeB の補正は (δx , δy ) = (−0.761723mm, 0.450188mm) (4.3) であった。 補正前の (xfind − xcal , yfind − ycal ) の分布を図 4.7 に、補正後の分布を図 4.8 に示す。 Telescope B positon & Calculate B positon 5 3 4.5 2 4 3.5 1 y[mm] y[mm] Telescope B positon & Calculate B positon 3 7 6 2 5 1 3 2.5 0 4 0 3 2 -1 1.5 1 -2 -1 2 -2 1 0.5 -3 -3 図 4.7 -2 -1 0 1 2 3 x[mm] Telescope B が判定したヒット位置と 計算されたヒット位置の差の分布 (補正前) 0 -3 -3 -2 図 4.8 -1 0 1 2 3 x[mm] Telescope B が判定したヒット位置と 計算されたヒット位置の差の分布 (補正後) 補正により、原点付近の分布は、より原点に近づいたことが分かる。 0 第 4 章 結果と考察 29 Telescope B positon & Calculate B positon(X) Telescope B positon & Calculate B positon(Y) 80 80 70 70 60 60 50 50 40 40 30 30 20 20 10 10 0 -0.3 図 4.9 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0 -0.3 0.3 x[mm] -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 y[mm] Telescope B が判定したヒット位置と 図 4.10 Telescope B が判定したヒット位置と 計算されたヒット位置の差の分布の x 軸への 計算されたヒット位置の差の分布の y 軸への 射影 射影 図 4.9 に、図 4.8 の x 軸への射影を、図 4.9 に y 軸への射影を示す。それぞれガウシアンでフィットし た結果、 σx′ = 72.1 ± 3.1µm (4.4) σy′ (4.5) = 64.9 ± 3.0µm と求まった。これを元に式 3.7 を用いて計算された、Telescope 検出器の分散は、 σx = 58.9 ± 2.5µm (4.6) σy = 53.0 ± 2.4µm (4.7) である。表 4.2 に、スレッショルドを変えた場合の結果についてまとめる。 表 4.2 得られた分解能 スレッショルド σx σy 4 58.9±2.5µm 53.0±2.4µm 5 50.0±3.5µm 68.9±3.6µm 6 43.8±3.2µm 58.9±3.6µm 1.3 で触れたように、一般的に今回用いたような構造の半導体マイクロストリップ検出器であれば、ア √ ナログ読み出しなら 5µm 程度、バイナリ読み出しなら 50/ 12 ≃ 14µm の分解能が期待できるとされて いる。これに比べて、今回計算された分解能は、倍以上大きい。この原因については、次節で考察する。 4.5 分解能改良の為の検討 本節では、解析の結果、理論値の倍の値が得られてしまった分解能を、少しでも改良する為の検討を行 う。いずれも、スレッショルドを4に固定した状態で検討を行った。 第 4 章 結果と考察 30 分解能が大きくなった理由の一つとして、まず入射粒子の角度を考えた。1.3 で触れたように、半導体 マイクロストリップ検出器は、垂直に入射した粒子の通過位置判定の精度はいいが、大きな角度で粒子が 入射した場合は、生成される電荷が広がってしまい、通過位置判定の精度が悪くなるとされている。 そこで、TelescopeA と TelescopeC の粒子の通過位置から、TelescopeB における粒子の入射角度を 計算し、その分布を見た。その結果を図 4.11 に示す。図 4.11 を見ると、入射角度は 7◦ 程度を中心とし from Telescope A to Telescope C(theta) 30 25 20 15 10 5 0 0 図 4.11 5 10 15 20 25 theta[degree] TelescopeB における粒子の入射角度分布 て、18◦ まで分布している。一方、図 1.3 に示したように、Telescope 検出器のストリップ間隔は 50µm であり、半導体の厚さが 300µm であるので、粒子の飛跡が 2 本のストリップの領域にまたがる為には、 arctan(50/300) ≃ 9.5◦ より大きければよい。図 4.11 を見ると、9.5◦ より小さい領域でも、十分な統計数 が得られると考えられる。そこで、この角度より小さいイベントのみを対象にして、ここまでの解析を繰 り返した。 しかしながら、結果は σx = 97.4 ± 4.3µm σy = 95.8 ± 4.1µm (4.8) (4.9) となり、より分解能が悪くなってしまった。このことから、分解能を悪くしている原因は、宇宙線の入射 角ではないのだと考えられる。 続いて、重心位置を計算する範囲の決定方法が悪い可能性を考えた。現在の方法が、仮に何らかのバイ アスを招いているのであれば、重心を計算することによって、精度が悪くなっている可能性はある。そこ で、粒子の通過位置を、「スレッショルドを超える信号の重心」ではなく、「スレッショルドを超える信号 のうち、最大の信号を出力したストリップの位置」に変更して、同様の解析を繰り返した。 結果は、 σx = 61.0 ± 2.4µm (4.10) σy = 54.0 ± 2.3µm (4.11) となり、誤差の範囲内で変化がないことが分かった。この方法はいわばバイナリ読み出しを行っているこ √ とになるが、バイナリ読み出しで得られるとされている分解能 50/ 12 ≃ 14µm に達していないことか ら、信号の取り扱い方法でないところに原因があると考えられる。 第 4 章 結果と考察 31 他に考えられる原因としては、アライメントの失敗が挙げられる。今回のアライメントは、8 変数を動 かして、∆2 を最小にするような組を探すという方法で行ったが、動かす変数が多い為、最小の組を探す 方法次第で、求まる組が異なる可能性が考えられる。実際、本実験で用いた方法でも、先にどの組から動 かすかによって、最終的に得られる組が大きく変わることが確認された。 これを解決するには、二つ方法が考えられる。 一つは、アライメントのアルゴリズムを改良することである。現在のアルゴリズムでは、可能性のある 範囲全てで変数を順に動かし、実際に ∆2 がより小さくなるような値を次々選んでいくといった方法を用 いていたが、例えば、初期値の点における ∆2 の微分係数を用いて、どの変数をどの程度動かすのが、∆2 を小さくするのに適しているのか推定するようなアルゴリズムを作ることができれば、その方がより確実 に最小値に辿りつける可能性がある。 もうひとつは、分解能の算出に宇宙線でなく、人工の粒子線を用いるという方法である。今回は測定対 象が宇宙線であった為、個々の入射角度については一切の保証がなかった。しかしながら、人工の粒子線 であれば、粒子線の生成側を工夫することで角度について保証することができる。角度についてのある程 度の保証ができれば、TelescopeA の入射位置から、TelescopeC の入射位置についてある程度の制限をす ることができる。この制限と、TelescopeC が判定した入射位置を比較すれば、制限の中に入射位置が入 るように TelescopeC の座標軸を調整することができる。 32 第5章 結論 本研究では、SEABAS2 モジュールを用いて、半導体マイクロストリップ検出器の一つである Telescope 検出器の複数同時読み出しシステムの構築を行った。更に、構築したシステムで宇宙線の測定を行い、そ の結果から分解能を導出するプログラムを作成した。その際、測定結果から検出器同士の相対座標を補正 するような処理も取り入れることで、より正確な分解能の算出を可能にした。 ヒット位置を算出する為の重心計算に用いる範囲を決めるスレッショルドを変えながら、得られたデー タを用いて分解能を算出した。その結果を、次表にまとめる。これらの分解能は、理論的に推測される分 表 5.1 得られた分解能 スレッショルド σx σy 4 58.9±2.5µm 53.0±2.4µm 5 50.0±3.5µm 68.9±3.6µm 6 43.8±3.2µm 58.9±3.6µm 解能に比べ倍程度であり、何らかの理由で精度が悪くなっていると考えられる。 精度が悪くなった原因として、 • 入射粒子に角度が急なものが含まれていたため、電子ホール対が生成される領域が広がって分解能 を悪くするようなイベントが有った。 • 重心計算を行う範囲の決定の仕方が悪く、これによって分解能が悪くなった。 の二点について検討を行ったが、いずれの可能性についても、分解能を向上させることはできなかった。 他の可能性として、アライメントが上手く行かなかった可能性が考えられる。これについては、今後の 展望として、アライメントを行うアルゴリズムを改良するか、角度に一定の制約が有る粒子ビームを用い た測定を行えば、改善することができると考えられる。 33 付録 A Appendix A.1 ドーターボード回路 次ページ図 A.2 に、ドーターボードの回路図全体を示す。点線で囲った範囲内が、1台の Telescope 検 出器の信号を取り扱う部分である。点線部を拡大したものが図 A.1 である。 Buffer LEMO2pin connector OpeAmp Buffer 図 A.1 ドーターボード回路図主要部 回路の挙動について説明する。まず、Telescope 検出器からの2つの信号は、図 A.1 左の Lemo2pin connector に入力される。そして、2つの信号はそれぞれ中央部のバッファーを通り、その先のオペアン プで差を取られる。ここで、オペアンプから出力される信号は、オペアンプの前後に接続されている抵抗 によって決まる値で定数倍される。具体的には、図??の番号を用いて、 R8 R1 = R2 + R4 R10 + R11 の値で定数倍される。この回路では、電圧差の半分の電圧が出力されるようになっている。 (A.1) A 5 3 4 5 6 1 2 CN9 JK-1(RED) 3 4 5 6 B CN10 JK-1(BLUE) 2 A 1 A CN11 JK-1(BLACK) 1 B 2 T1 JP-4 B 2 A 1 1 B 1 2 CN7 EPG.0B.302.HLN 3 4 5 6 2 C 3 4 5 6 CN3 EPG.0B.302.HLN -3.5V +3.5V T2 JP-4 1 D 2 1 2 T3 JP-4 R25 51 R22 51 R17 51 R14 51 R9 51 R3 51 1 3 4 5 6 4 4 0.1U C18 4 0.1U C16 0.1U C14 0.1U C13 0.1U C12 4 0.1U C10 0.1U C8 4 0.1U C7 0.1U C6 0.1U C4 0.1U C2 4 1 5 -3.5V R20 R24 U7 OPA633 8 U9 OPA633 8 +3.5V -3.5V R16 U6 OPA633 8 +3.5V -3.5V U4 OPA633 8 +3.5V -3.5V +3.5V -3.5V T4 JP-4 R12 R8 U3 OPA633 8 +3.5V -3.5V R1 U1 OPA633 8 6 0.1U 2 1 5 1 5 6 6 6 1 5 1 5 1 5 6 6 4 510 510 510 510 510 510 R26 510 R18 510 R10 510 510 R4 C11 2 3 0.1U C9 510 510 510 R23 C17 0.1U R27 510 2 3 0.1U C15 510 R21 0.1U R19 510 R15 R13 0.1U R11 510 C5 2 3 0.1U C3 510 R2 - + - + - + -3.5V U8 ADA797 6 +3.5V -3.5V U5 ADA797 6 +3.5V -3.5V U2 ADA797 6 +3.5V 7 4 7 4 7 3 4 5 6 1 ドーターボード回路図全体 4 CN2 EPG.0B.302.HLN 3 R6 0 1 CN4 EPL J4 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 1 CN5 EPL 14-5015-064-1-02-861 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 5 4 2 3 +3.5V 5 4 2 3 C1 3 1 CN6 EPL R7 R5 5 4 2 3 4 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 1 CN8 EPL 0 0 FCONE-20 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 CN1 5 4 2 3 図 A.2 2 5 2 2 J1 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 14-5015-064-1-02-861 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 Date: Size A2 Title TEST_BOARD 1 Monday, February 04, 2013 Document Number 1 1 Sheet 1 of 1 Rev 1 A B C D 付録 A Appendix 34 付録 A Appendix 35 A.2 分散と分解能の関係 簡単のため、1 次元で考える。また、3 台の Telescope 検出器の分解能が、同じ σ であることを仮定す る。分解能が σ であるとき、実際の粒子通過位置が x′ であれば、粒子の通過位置が x と判定する確率は、 √ 1 2πσ 2 exp − (x − x′ )2 2σ 2 (A.2) である。 更に、TelescopeA と TelescopeB 間の距離が、TelescopeA と TelescopeC 間の距離とほぼ等しいこ とを仮定し、また xz 平面内でのセンサーのある座標系の回転を無視する*1 と、各 Telescope 検出器で xi (i =A,B,C) と判定されたとき、その 1 イベントにおける残差は、 xA + xC − xB 2 (A.3) となる。このとき、各 Telescope 検出器で実際に通過した位置を xi ′ (i =A,B,C) とする。 これら 2 式を用いて、無限回測定を行った時に、得られるであろう分散 σ ′ は、 2 σ ′2 = ∏ ∫ −∞ i=A,B,C ∫ ∞ dxi ∞ −∞ dxi ′ (xi − xi ′ )2 √ exp − 2σ 2 2πσ 2 1 )( xA + xC − xB 2 )2 (A.4) となる。ただし、積分は第二項まで作用するものとする。xi ′ に関する積分はすぐに実行でき、 ( )2 ′ 2 (x − x ) x + x i i A C exp − = − xB (A.5) dxi √ 2 2σ 2 2 2πσ −∞ i=A,B,C { 2 (x ) (x )2 } ′ 2 ∏ ∫ ∞ (x − x ) x 1 i i A C C exp − = + xA − xB + − xB (A.6) dxi √ 2σ 2 4 2 2 2πσ 2 i=A,B,C −∞ { 2 ( )2 } ′ 2 ∏ ∫ ∞ (x − x ) σ x 1 i i C exp − = dxi √ + − xB (A.7) 2σ 2 4 2 2πσ 2 −∞ ∏ ∫ ∞ 1 i=B,C xA に関する積分をおこない、 { 2 ( )2 } ′ 2 (x − x ) σ x i i C exp − = dxi √ + − xB 2σ 2 4 2 2πσ 2 i=B,C −∞ ( 2 ) ′ 2 ∏ ∫ ∞ 1 σ (x − x ) x2C i i 2 dxi √ = exp − + − xC xB + xB 2σ 2 4 4 2πσ 2 i=B,C −∞ ∏ ∫ ∞ 1 (A.8) (A.9) xB に関する積分をおこない、 ∫ ∞ = −∞ 2 = *1 dxC √ 1 2πσ 2 exp − (xC − xC ′ )2 2σ 2 ( σ2 x2 + C + σ2 4 4 ) σ2 3 σ + + σ2 = σ2 4 4 2 これらの効果を考慮しても、積分結果が数 % から数十 % 変わる程度である。 (A.10) (A.11) 付録 A Appendix 36 よって、σ ′ = 32 σ 2 なる関係があるので、得られたデータから分散 σ ′ が計算されたら、その時 Telescope 2 検出器の分解能は σ = √ 2/3σ ′ となる。 37 参考文献 [1] ATLAS Collaboration「The ATLAS Experiment at the CERN Large Hadron Collider」(2008) [2] Tomohisa Uchida & Yasuo Arai.「SEABAS (Soi EvAluation BoArd with Sitcp) User’s Manual」 http //rd.kek.jp/project/soi/SEABAS/code/SEABAS/SEABASmanualRev02.pdf [3] XILINX 社 「ISE ヘルプ」 http //japan.xilinx.com/support/documentation/sw manuals/xilinx14 2/isehelp start.htm [4] W.R.Leo 「Techniques for Nuclear and Particle Physics Experiments Second Revised Edition」 (1993) [5] A.Rudge 「SOME NOTES ON THE SYSTEM OF READOUT OF THE VIKING CHIP」(1994) 38 図目次 1.1 SEABAS2 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 1.2 Telescope 検出器のセンサー部分 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 1.3 半導体ストリップ検出器の構造 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 1.4 Telescope 検出器を用いた性能試験 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 2.1 実験系における信号の流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 2.2 Telescope 検出器からの信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 2.3 ペデスタルと、ヒット信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 2.4 出力される信号とノイズ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 2.5 Telescope 検出器の配置 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 2.6 Viking Timing Unit . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 2.7 クロックジェネレータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10 2.8 プラスチックシンチレータによるトリガーシステムの接続 . . . . . . . . . . . . . . . . 11 2.9 プラスチックシンチレータ・ライトガイド・光電子増倍管 . . . . . . . . . . . . . . . . 12 2.10 トリガーシステムの NIM モジュール . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 2.11 ドーターボード . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 2.12 SEABAS2 での信号処理の流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15 3.1 1 回分のイベントにおける信号の処理の流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17 3.2 実際のノイズ信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 3.3 角度と相対位置のアライメント . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21 4.1 3台の Telescope 検出器のペデスタル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24 4.2 代表的なヒット信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 26 4.3 Telescope A のヒット位置分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 4.4 Telescope B のヒット位置分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 4.5 Telescope C のヒット位置分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 4.6 Telescope C と Telescope A の相対ヒット位置分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 4.7 Telescope B が判定したヒット位置と計算されたヒット位置の差の分布 (補正前) . . . . 28 4.8 Telescope B が判定したヒット位置と計算されたヒット位置の差の分布 (補正後) . . . . 28 4.9 Telescope B が判定したヒット位置と計算されたヒット位置の差の分布の x 軸への射影 . 29 4.10 Telescope B が判定したヒット位置と計算されたヒット位置の差の分布の y 軸への射影 . 29 4.11 TelescopeB における粒子の入射角度分布 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30 図目次 39 A.1 ドーターボード回路図主要部 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 33 A.2 ドーターボード回路図全体 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 34 40 表目次 4.1 測定されたイベント数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25 4.2 得られた分解能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 29 5.1 得られた分解能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 32 41 謝辞 今回の開発に関しまして、陣内研究室の方々には大変お世話になりました。特に、久保田知徳氏にはお 忙しい中、実験装置の使い方や、一般的な解析方法など、様々なことを教えていただきました。また、本 橋和貴氏、金井翔氏、永井遼氏には、プログラムや解析において、いろいろな面においてアドバイスを頂 きました。 総合研究大学院大学の武田彩希氏には、FPGA のプログラミングについて、丁寧に教えていただきま した。高エネルギー加速器研究機構の池上陽一氏には、ドーターボードの作成において、様々なアドバイ スを頂きました。株式会社シーアイ工業の山品寧氏には、ライトガイドの作成においてお世話になりま した。 最後に、東京工業大学基礎物理学専攻の陣内修先生には、貴重な研究の機会をあたえていただくだけで なく、方針に関するアドバイスや、本論文の指導等、様々な面でお世話になりました。 皆様のご助力のお陰で本研究を終えることができました。この場を借りてお礼を申し上げます。ありが とう御座いました。