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1. 平成 24 年度の取り組みの概要

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1. 平成 24 年度の取り組みの概要
1. 平成 24 年度の取り組みの概要
1.1 研究科の改組
平成 22 年度より取り組んできた研究科改組が平成 24 年 8 月に認可され,心身発達専攻,教育・学習論専攻,
人間行動専攻,人間表現専攻の 4 専攻を「人間発達専攻」の1専攻にまとめることができた。この改組に伴い,専
修免許状取得のための課程認定審査も受けた。また,人間発達専攻の博士前期課程の入学試験は例年実施し
ている9月には間に合わず,本年度は 11 月実施とした。これらの事情に伴い,同上 4 専攻の関係者のみならず,
将来計画委員会,学部・大学院運営委員会,入試委員会,教務委員会,学部・研究科案内作成ワーキンググル
ープ,情報メディア委員会,オープンキャンパスワーキンググループなど関連委員会は例年に倍増する業務をこ
なした。
人間発達専攻が新設されたことで,平成 25 年度からは人間環境学専攻との 2 専攻体制ができ,本研究科の安
定的運用が予想できるようになった。この場を借りて,研究科改組に協力いただいた内外の関係者に御礼申し上
げたい。
新設の人間発達専攻で行う教育や管理運営の実際については,新専攻準備委員会(委員長:平川人間行動
専攻長,委員:森岡心身発達専攻長,稲垣教育・学習専攻長,塚脇人間表現専攻長)にて審議し,各専攻会議,
教授会での審議,決定した。
1.2. 「大学改革実行プラン」への対応
平成 24 年 6 月に文部科学省より「大学改革実行プラン」が出され,発達科学部及び大学院人間発達環境学研
究科の「ミッション再定義」に取り組んだ。学部,研究科の沿革と理念,教育・研究の強み(実績)と特長等をまとめ
たが,それらは「神戸大学ファクトブック」として公表される予定である。
発達科学部設立より 20 年,大学院人間発達環境学研究科設立より 5 年が経過し,各々の設立時の理念や教
育課程,研究実績,教育・研究環境等々について,改めて点検する機会となった。「ミッション再定義」はエビデン
スを伴う説明を必要とするため,今日までの実績を数値化する作業にかなりの時間とエネルギーを費やした。なか
でも教育に関わっては,量的な実績だけではなく,質的実績を示す必要があり,とりわけ教員養成に関わっては一
般学部である発達科学部が教員養成を行っている意義を示すことが要請された。そのため,教育委員会及び現
職の校長・教頭先生にインタビューを行った。資料として以下に示す。
<資料:本学の教員養成制度に関する聞き取り調査>
【第1回:A校長先生,B教頭先生へのインタビュー(平成 24 年 12 月 12 日 13 時 20 分~14 時 20 分)】
本学部出身の教師への感想:教科の指導以外に,児童の心理面への理解度がきわめて高く,様々なと
ころに気を配る事のできる人が多い。子どもを理解できる先生は,教科指導も優れている。教員採用のため
の受験勉強に特化していない発達科学部の出身者は他大学出身者とひと味違い,手際もよく,子どもとの
交わりができる人が多く,考えの幅が広い。
発達科学部出身者に期待すること:発達科学部出身者は,知的好奇心が高い人が多い。そのため,子
どもにいい刺激を与えている。学習指導要領の改訂に対応できる柔軟性を持っている。第一に,同僚の先
生と良好な関係を作りながら,学校全体の質向上に積極的である。第二に,新しい情報を取り入れながら,
それをまとめていく能力に長けている。大学入学時の偏差値が高いからというのもあるかもしれないが,む
しろ,教員養成だけの勉強をしていないことが,そうした柔軟性を育てているのではないかと考えている。
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【第2回:C校長先生へのインタビュー(平成 24 年 12 月 19 日 13 時 20 分~14 時 20 分)】
本学部出身の教師への感想:教員研修で光っている。研修でのグループ学習において発言に力が
ある教師が多い。大学での学びの結果と思う。学部内 OJT や積極的にボランティアに参加していることが
よいのでは。新任教員でも,神戸大学の出身者は先を見越して行動できる。少々生意気なところもある
が,議論ができ,学びのスピードが速く,学びの質が高い。“のびしろ”が大きいと感じている。
発達科学部出身者への期待:多くの職を選択できるなかから,教師を選んでいるため学校教育に対
するモチベーションは高い。発達科学部ではいろいろな学びができ,受ける刺激が多い。総合大学で唯
一,初等免許を出しているのは神戸大学発達科学部だけであるので,残さなくてはならない。将来の教
育を担う中核となる人材を育てることは,きわめて重要である。数は少なくても優秀な教師を育てる大学
を残しておく必要がある。
【第3回:教育委員会担当者(2 名)へのインタビュー(平成 24 年 12 月 17日 16 時 00 分~17 時 00 分)】
本学部出身の教師への感想:一般的な知識を知らない先生が増えており,子どもや保護者がよく嘆い
ているが,神戸大学出身者は基礎学力がある。神戸大学の学生がボランティアで来ていたが,すごく優
秀で人間的にも良く,子ども達とも丁寧に対応できる学生であった。研究会組織の中では熱心に研究し,
自分で教材を開発する力や適応力があり,指導案の作成やまとめて書いたりする能力の高い人が多い。
自分で授業を創れ,広い視野でものごとを考えており,のんびりしているが幅は大きい。神戸大学には,
地域の教育界をリードしていく人材の輩出を期待している。
1.3. 外部評価の実施
発達科学部設置以来,学部及び研究科の全体が外部評価を受けるのは 10 年ぶりである。発達科学部は平成
4年に設置し,平成 17 年に改組した。また大学院は平成9年に教育学研究科を改組して総合人間科学研究科を
設立し,平成 19 年に人間発達環境学研究科に改組した。この間,改組に次ぐ改組の状況にあり,外部評価を受
けるタイミングが見い出し難かった。本年度は,平成 26 年度に予定されている認証評価の前に外部評価を行う最
後のチャンスであった。小高外部評価実施委員長の下,自己評価委員会が中心になって外部評価のため準備を
進め,「人間発達環境学研究科・発達科学部自己評価報告書 研究・教育の現状と課題 2007(平成 19)年度~
2011(平成 23 年度)」と「人間発達環境学研究科・発達科学部自己評価報告書 2007(平成 19)年度~2011(平成
23 年度)資料編」の2冊を作成した。外部評価委員長は川口潤名古屋大学情報文化学部長,外部評価委員は佐
藤友美子サントリー文化財団上席研究フェロー,中瀬勲兵庫県立大学教授,池内了総合研究大学院大学理事に
務めていただいた。10 月 25 日に公開で外部評価委員会を開催し,現在は外部評価報告書の作成を依頼中であ
る。
1.4. 発達科学部 20 周年記念
発達科学部設立 20 周年記念行事として,①人間発達環境学研究科研究紀要特別号の発行(平成 25 年 3 月),
②卒業生アンケートの実施,③ホームカミングデーへの卒業生特別招待の各々を行った。①の紀要特別号は研
究推進委員会が編集し,発達科学部にまつわる論文4本と報告 1 本が掲載された。②については,平成 24 年 8
月に発達科学部卒業生全員を対象として,発達科学部での教育や学習経験の意義等を問うアンケート調査を実
施した。浅野自己評価委員会副委員長がデータの集約・分析を行い,その結果を「卒業生アンケート分析結果」と
してまとめた。③については,教育学部の卒業生である露の団六師匠をゲストに招き,教育学部・発達科学部の卒
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業生交流を行った。乳幼児を伴った家族ぐるみでの参加者も複数あり,発達科学部らしい交流会となった。
1.5. 教育,研究
教育及び研究の今年度の特長は各項の冒頭に記載しているため,ここでは簡単に述べる。研究については,
科学研究補助費への申請率,採択率ともに順調に伸び,研究科全体の獲得額は1億円を超えた。研究科を横断
するプロジェクト研究やシンポジウム,産官学共同研究も活発化した(「6. 研究」参照)。教員個々人の研究実績に
ついては,外部評価を受けるための資料として「神戸大学大学院人間発達環境学研究科代表的研究集 2007
(平成 19)年度~2011(平成 23)年度」を作成し,いわゆる「見える化」を図った。また,昨年度に起こった人間発達
環境学研究科紀要への不正投稿問題を受け,研究科長,副研究科長,専攻長による「不正防止委員会」を設置
し,学生教育,研究指導体制を見直すなど必要な措置をとった。
震災復興支援ボランティアなど,教育と研究が混在した取り組みは昨年度の成果を引き継き続行されている。
今年度には,岩手県大船渡市の赤崎地区の震災復興に資する事業を円滑に進めるために,赤崎地区公民館の
一角に「神戸大学 HC ムーバブル拠点 (期限付きサテライトオフィス)」を設け,同公民館と本研究科が相互に協力
するための覚書を締結した。
発達科学部の特徴である対話型の双方向性授業や少人数教育は引き続き実施したが,今年度にはエビデンス
としてデータ化することに務めた。また,教育環境の改善のため,各教室のIT環境(特にプロジェクターの設置)を
点検し,整備した。本年度にも紫陽会からの寄付を得て,教室の椅子を更新した。この場を借りて,お礼申し上げ
たい。
1.6. 国際交流
神戸大学のグローバル人材育成推進事業の実施に伴い,学生の国際交流を支援するための拠点として,国際
交流サポートルームをA棟 4 階に設置した。コーディネーター2 名を配置し,室の愛称は COTEI とした。国際交流
や留学の支援を専門的に担うセクションは発達科学部・人間発達環境学研究科としては初めて設置したもので,
今後の発展を期待したい。また,今後の同上事業の円滑な実施を目指して,教員と共に職員も海外の大学に派
遣し,交流協定締結の準備を進めた。また,学術 WEEKS での研究交流だけでなく,兵庫県の HORN 事業の支援
を得て,オーストラリアから 2 名の研究者を長期に受け入れた。
(神戸大学人間発達環境学研究科長・発達科学部長 朴木 佳緒留)
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2. 学部・大学院運営
2.1. 学部・大学院運営組織
神戸大学大学院人間発達環境学研究科及び神戸大学発達科学部は,以下の組織により運営されている。
<教授会>
神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授会,神戸大学発達科学部教授会,
神戸大学大学院総合人間科学研究科教授会
以下に委員会等の組織を列記する。その際,大学院に関係する組織については,その前に付される研究科
名「神戸大学大学院人間発達環境学研究科」を省略し,学部に関係する組織については,「神戸大学」を省略
し「発達科学部」を付した。
<管理運営>
学部・大学院運営委員会,人事委員会,予算委員会,中期計画推進委員会,自己評価委員会,
将来計画委員会,学舎検討委員会,環境管理委員会,交流ルーム運営委員会,機種選定委員会,
安全衛生委員会,ハラスメント防止委員会,学科・専攻運営会議
<研究>
研究推進委員会,研究倫理審査委員会
<教務・学生>
教務委員会,学生委員会,博物館学芸員資格専門委員会,インターンシップ委員会,
発達科学部教員養成機関審査委員会,「発達科学への招待」運営委員会
<入試>
入学試験委員会,発達科学部社会人入試専門委員会,発達科学部編入学試験専門委員会,
発達科学部 AO 入試実施委員会,発達科学部人間表現学科実技検査入試検討委員会,
学生委員会(入学者の募集及び選考に関わる事務)
<国際交流>
国際交流委員会,学術交流専門部会,留学生専門部会,学術 WEEKS ワーキンググループ
<広報>
情報メディア委員会,オープンキャンパスワーキンググループ,学部等案内作成ワーキンググループ
<附属施設等>
附属発達支援インスティテュート運営委員会,心理教育相談室運営委員会,
ヒューマン・コミュニティ創成研究センター運営委員会,のびやかスペースあーち運営委員会,
サイエンスショップ運営委員会,発達科学部キャリアサポートセンター運営委員会,
発達科学部実習観察園運営委員会
2.2. 将来計画
2.2.1. 拡大将来計画委員会
平成 24 年 4 月教授会において将来計画委員 6 名を改選し,これに委員会が必要と認めた委員 1 名に,研究
科長 1 名,副研究科長 2 名,専攻長 5 名を加え,昨年度に引き続き 15 名体制で拡大将来計画委員会を発足し
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た(委員長:朴木研究科長,副委員長:岡田(章)副研究科長,委員:岡田(修)副研究科長,辻本准教授,渡部教
授,前田教授,梅宮教授,伊藤(真)教授,太田准教授,津田准教授,森岡教授,稲垣教授,平川教授,塚脇教
授,平山教授)。
今年度の委員会は,別表のとおり,計 13 回開催された。
前半は,主に前年度から引き継いだ研究科改組にかかる審議(特に入試制度と事前伺いへの対応)を行った。
4 月 27 日には,この件で教員懇談会を開き,構成員からの意見を直接聴取した。なお,今次改革は,8 月 17 日の
文部科学省大学設置・学校法人審議会大学設置分科会運営委員会(以下,設置審)において承認された。
後半は,人間発達専攻設置準備委員会を立ち上げ,新専攻設置にむけた準備作業を進めるとともに,文科省
「大学改革実行プラン」に関わる「ミッションの再定義」への対応について検討した。そのなかで,人間環境学専攻
に WG を立ち上げ,今後の同専攻のあり方に関する議論を開始した。
4 月 20 日
第 1 回委員会
改革の概要(事前伺い)/新専攻の入試制度
4 月 27 日
教員懇談会
5 月 11 日
第 2 回委員会
新専攻の入試制度/教職課程認定申請
5 月 25 日
第 3 回委員会
新専攻の入試制度
6月 8 日
第 4 回委員会
新専攻の入試制度(平成 25 年度学生募集要項)
6 月 22 日
臨時委員会
6 月 29 日
第 5 回委員会
改革の概要
事前伺いの結果とその対応/平成 25 年度入試の日程
事前伺いの結果とその対応/平成 25 年度入試の日程/新専攻案内
リーフレット
7 月 13 日
第 6 回委員会
文科省「大学改革実行プラン」
7 月 27 日
第 7 回委員会
文科省「大学改革実行プラン」についての議論状況/新専攻設置の
ための検討組織
10 月 12 日
第 8 回委員会
学部・研究科の動き/全国の動き/「ミッションの再定義」
11 月 30 日
第 9 回委員会
中期計画に関するヒアリング/グローバル人材育成推進事業/人間
発達専攻設置準備委員会/「ミッションの再定義」
12 月 14 日
第 10 回委員会
人間発達専攻設置準備委員会/人間環境学専攻 WG/「ミッション
の再定義
1 月 25 日
第 11 回委員会
人間発達専攻設置準備委員会/人間環境学専攻 WG/「ミッション
の再定義/人間発達専攻に関わる今後の手続き
3月 1 日
第 12 回委員会
人間発達専攻設置準備委員会/人間環境学専攻 WG/「ミッション
の再定義/平成 25 年度に向けた課題
2.2.2. 今次改革の概要
平成 22 年度より検討を開始した研究科改組の内容は次のとおりである。
本研究科は,平成 19 年 4 月発足以来,5 つの専攻により,「人間それ自身の発達」と「発達を支える環境の発
展」に関わる原理的,実践的な教育・研究を行ってきた。しかし,近年,人間の自由な発達を阻害する状況が拡が
っており,その克服に向け「学術」の総合力を発揮することが強く求められている。本研究科では,こうした今日的
諸課題に対応し,研究科内ですでに進みつつある学問領域複合型人間発達研究を制度的組織的に整備するた
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め,平成 25 年 4 月より,「人間それ自身の発達」に関わる4専攻(「心身発達専攻」「教育・学習専攻」「人間行動専
攻」「人間表現専攻」)を改組し「人間発達専攻」として統合する。
「人間発達専攻」の教育課程編成における特色は,第一に,体系的なコース・ワークを支えるコア科目(前期
課程:「人間発達総合研究Ⅰ」「人間発達相関研究」「人間発達研究(こころ系)」「同(表現系)」「同(からだ系)」
「同(学び系)」,後期課程:「人間発達総合研究Ⅱ」)の設置にある。本専攻では,学生が自らの問題意識に基づ
き固有のコース・ワークを設定するが,そこでの体系性を担保するために,既設の研究科共通科目に加え,専攻
共通科目をコア科目として置く。また,広範な領域に及ぶ専門に関わる科目は,「群」と「系」という二つの区分に基
づき整理し配置することで,個々の学習課題に応じた専門性の確保を促進する。第二の特色は,専門力量の形
成を支援する「特別研究」の実施と複数指導体制の強化にある。既設の「特別研究」では,主指導教員の個別的
指導をとおして論文作成に向けた諸能力を修得するが,同時に,他の教員の指導を受ける機会を積極的に設け
ることで多面的で柔軟なものの見方を身につける。そのため,本専攻では,複数指導教員を 2 名とし,異なる専門
分野でありながら当該研究内容に関連する領域の教員の参加を求める。
本専攻は,博士課程前期課程において「21 世紀の諸課題を実践的に解決する高度専門職業人」を,また博
士課程後期課程において「ヒューマン・コミュニティ創成研究に関わる研究活動を主体的に展開できる研究者,大
学教員」を養成する。その際,人間発達研究の特定分野において特に優れた大学教員・研究者を養成するため,
教員が共同で先端的研究を進める場に学生が参加し協働する「研究道場」を作り,学生が,共同研究の運営に関
わる実践的なマネジメント能力を身につけ,研究者として早期に自立できる素養を修得できるようにする。
【経緯】
今次改革に関しては,平成 24 年度において 3 回にわたり文科省に出向き,内容に関わる打合せを行い,理解
を得てきた。今年度に入り,「事前伺い」のための書類を提出したが(神戸大学本部提出 4 月 19 日),6 月 15 日開
催の設置審において複数の「補正意見」及び「要望意見」が出された。その後,本計画につき細部を見直し,あら
ためて提出した。8 月 17 日開催の設置審において承認された。
また,この改革に伴い,新専攻にかかる教職課程認定(特別支援学校教諭専修免許状,幼稚園教諭専修免許
状,小学校教諭専修免許状,中学校教諭専修免許状(音楽,美術,保健体育),高等学校教諭専修免許状(音
楽,美術,保健体育))についても,文科省での「申請にあたっての事前相談」(6月 4 日)を受けた後,6 月 18 日に
申請書類を神戸大学本部に提出した。その後,若干のやり取りを行ったが,最終的に本年 1 月 30 日付けで文科
省の認定書が発給された。
なお,改革の具体化に向けた準備作業については,人間発達専攻設置準備委員会(委員長:平川教授,委
員:森岡教授,塚脇教授,稲垣教授)を立ち上げ,組織及び運営に関する基本枠組みを確定した。また,共通科
目の内容等については,同委員会のもとに新専攻共通科目内容・運営検討委員会(委員長:増本准教授,委員:
赤木准教授,田村准教授,稲垣教授)を置き,集中的に検討した。
(将来計画委員会副委員長 岡田 章宏)
2.3. 管理運営
2.3.1. 人事委員会
月 1 回の定例委員会を開催し,5 名の採用人事,5 名の昇任人事を行った。本研究科の女性教員採用比率は,
平成 24 年度は 60%(5 名のうち 3 名が女性)となった。神戸大学のポジティブアクションは平成 24 年度半ばまで
は「女性教員の採用比率 20%」としていたが,全学的に 20%を達成したため,30%に引き上げられた。したがって,
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この数値目標は優に達成できた。
大学院後期課程担当人事は,教授については平成 22 年度に,准教授については平成 23 年度に「採用・昇任
のための審査と同時に後期課程担当も審査する」ことを決定している。しかし,既在籍の准教授が大学院後期課
程を担当するためには,別途,審査が必要となり,平成 24 年 12 月の人間発達環境学研究科教授会にて 10 名を
審査し,いずれも承認された。
本年度の特記事項は「女性研究者養成システム改革加速」事業に伴う特命助教を採用したことである。5 年間
の期限付きではあるが,サイエンスショップの事業も担当するという条件で,優秀な人材を得ることができた。サイ
エンスショップは発達科学部・人間発達環境学研究科の特長ある教育・研究活動であり,人的強化ができたことは
研究科の前進となる。なお,当該人事については応募者が相当に多数であったことも付け加えておきたい。
本年度は,本研究科にとっては始めてとなるサバティカル制度を適用する年であり,3 名の応募者があった。うち,
1 名は研修のかたちを取ることになり,2名について平成 24 年度にサバティカル制度を適用することを決定した。
また,平成 25 年度より ESD の大学院サブコース(博士前期課程)を設置することが予定されているため,ESD
担当教員について,引き続き研究科長裁量ポストを宛てることとした。さらに,グローバル人材育成推進事業の一
環として,2 名のコーディネーターを雇用し,国際交流サポートルームに配置した。
本年度には,残念なことに 2 名の現職教員が事故及び病気により逝去した。冥福を祈りたい。
(人事委員会委員長 朴木佳緒留)
2.3.2. 学部・大学院運営委員会
本年度は,本委員会を学部及び研究科運営のための重要案件を審議する会議として位置付けてから 3 年目に
当たる。研究科として意思決定すべき重要案件を検討する体制が整い,文字通り学部・大学院を運営するための
審議機関となった。委員長は研究科長,委員は副研究科長(2 名),専攻長(5 名)で,計 8 名がメンバーである。
委員会は月1回の定例を原則としているが,平成 24 年度は大学院改組,大学改革実行プラン(ミッション再定
義)等の重要案件があり,8 月にも臨時の委員会を開催した。その他の主な案件は,人間発達環境学研究科とし
てのグローバル化方針(グローバル人材育成推進事業への申請参加,非常勤のコーディネーター採用,学生派
遣等),表現学科のコースの見直し,発達科学部 20 周年記念行事,特命助教の職務内容,准教授の大学院後期
課程担当の選考方式等であった。平成 24 年度に審議した主な案件を以下,内容別に示す。
<制度・規則改正関係>
1)研究科改組に伴う諸規程の改正
2)大学院博士論文審査委員会の申し合わせの制定(主査以外の審査委員各々について審査の観点を明記
した資料をつくり,教授会で審議することとした)
<人事関係>
1)「理系女性教員養成システム改革加速」事業に伴う特命助教の所掌事項
2)准教授の大学院後期課程担当に関わる選考方法
3)博士前期課程 ESD サブコースの設置及び ESD 担当教員ポストの 1 年延伸
<運営関係>
1)高度能力教員養成 PJ の研究室
2)三木市との地域連携協定
3)若手教員支援(海外長期派遣については,全学共通科目について非常勤措置を取る)
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4)教職実践演習の担当(人間形成学科に授業案作成を依頼)
5)人間表現学科のコース改編について検討
6)農・工研究科連携のリーディング大学院申請への参加
7)附属中等教育学校 1(明石校舎)の跡地利用
なお,学位の不正取得に関係して,学籍問題についても慎重審議した。
以上の審議事項の他,全学の動向や研究科として対応すべき各種申請,行事,学生の現状等について研究科
長が逐一報告し,周知を図った。
(学部・大学院運営委員会委員長 朴木佳緒留)
2.3.3. 中期計画推進委員会
平成 24 年度は外部評価を実施するため,より一層,PDCAサイクルを回すことを心がけ,4 月委員会において
は改めて中期計画をふりかえるところから始めた。また,文部科学省より示された「大学改革実行プラン」への対応
として「ミッション再定義」を意識しつつ,中期計画の実施,進捗状況を確認し合った。
本委員会のメンバーは,研究科長(委員長・朴木),副研究科長(岡田修一,岡田章宏),国際交流委員会(青
木),研究推進委員会(伊藤篤),教務委員会(伊藤真之),学生委員会(河辺),キャリアサポート委員会(高橋譲
嗣),情報メディア委員会(宮田),自己評価委員会(浅野)であり,事務局として仲田事務長,薦田事務長補佐,
池ノ上係長が毎回,参加した。
委員会では,毎回,研究科長が研究科内外の重要事項を報告し,委員各々の認識共有に務めた。中期計画
に関わる事項としては,以下の事項を研究科長が報告し,意見交換した。
1)人間発達環境学研究科のグローバル化について
・学生のニーズに合わせて,英語圏の学術交流協定校を増す必要があること。
・国際文化学研究科を中心にした平成 24 年度グローバル人材育成推進事業が採択されたこと,短期留学の
ショートヴィジットが可能であること,ECCと業務委託の契約を行い,TOEIC試験対策講座を開催すること,
附属学校との「接続進学」を検討すること,本事業を推進するためにコーディネーターを 2 名採用し,国際
交流ルームを A423 に設置すること。
2)発達科学部 20 周年記念事業について
・人間発達環境学研究科紀要の特別号を発刊
・ホームカミングディの講演者に教育学部卒業生である露の団六師匠を招請
・卒業生アンケートの実施
3)高度能力教員養成プロジェクト研究について
・附属学校部と協同し,大学院生(博士前期課程在籍者)を対象とした高度能力教員養成プログラムを開発
4)「大学改革実行プラン」について
・大学設置・学校法人審議会で研究科改組が承認されたこと
・大学改革実行プランに対する基礎資料の作成
・「優れた教員」輩出のエビデンス整備として,発達科学部の卒業生で教員となった者の評価を教育委員会,
現職校長にインタービューしたこと
・「人間環境学専攻」の内容や意義を外部の人にも分かりやすく説明するために,人間環境学専攻ワーキン
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ググループを設置
本委員会のメンバーである各委員会の活動については,本年次報告書の各委員会報告において記載されるた
め具体的内容については省略するが,PDCAサイクル実施に関わっての特記事項を以下に挙げる。
1)入試委員会では,第3年次編入学生の募集の適正化について検討し,当面は現行の入試方法を維持しつつ,
入試の在り方全般を点検する中で必要な措置をさぐることとした。研究科改組に伴い,入学試験の日程等,
従来とは異なる方策をとった。昨年度に検討したAO入試フォーラムについては,研究科主催として位置付け,
研究科内外の識者のプレゼンテーションを得て,実施できた。
2)教務委員会では,カリキュラムポリシーをチェックし,科目配当を確認した。英語外部試験(TOEIC)を 8 月,
11 月の 2 回にわたり実施し,年度末に成績確認をしたこと,また平成 26 年度に予定されている認証評価に関
連して,専任教員が必修科目を担当することとされ,実際の状況確認を実施。ゲストスピーカーの効果につい
ては,昨年度に作成された実施報告書様式を用いて報告を要請し,効果測定した。
3)学生委員会では,昨年度に行った参加者アンケートの結果を参照して,日本学術振興会特別研究員の説明
会を本年度も 4 月に実施した。また,英語版のアドミッションポリシーを作成した。
4)キャリアサポートセンターでは,新入生に向けて,1 年時から自らのキャリアを気にするべきとアナウンスした。3
年生対象のガイダンスや就職活動対象者の説明会の実施など,例年通りの取組の他,昨年度の各種イベン
ト参加者アンケートの結果に基づき,公務員を志望する学生向けのセミナー,大学院生と留学生対象のセミ
ナーを実施した。
5)情報メディア委員会では,パンフレットのほか,新専攻の設置に伴い研究科改組のリ-フレットを作成し,8 月
下旬にはホームページに研究科改組を記載した。また,ホームページに卒業論文・修士論文の発表会を掲
載し,多くの人の目に触れるよう工夫した。
6)国際交流委員会では,総合人間科学研究科時代に締結した学術交流協定の中に,「休眠状態」にあるもの
が有り,今年度は協定の見直しから始めた。また,学生ニーズに応えて,IUBAT(バングラディシュ),アーケ
シュフース大学教育学部(ノルウエー)と新たに協定を締結した他,将来を見据えてジャカルタ国立大学(イン
ドネシア)との学術協定を検討した。
7)研究推進委員会では,発達科学部創設 20 周年記念として,人間発達環境学研究紀要の特別号を刊行した。
そのため,年間 3 巻の紀要編集が必要となり,昨年度からの課題であった研究推進委員会の仕事内容の点
検については,実施出来なかった。
8)自己評価委員会では,昨年度より授業評価の方法を検討してきたが,今年度にはピアレビューを実施したほ
か,教育業績評価の方法について,教務委員会委員長及びキャリアサポートセンター運営委員会委員長と
意見交換を行い,全学委員会に発達科学部・人間発達環境学研究科としての意見を述べた。9 月教授会で
授業方法論についてのFDを開催し,さらに外部評価委員会を 10 月 25 日に開催した。
(人間発達環境学研究科長 朴木佳緒留)
2.3.4. 自己評価委員会
本年度,8 回の委員会を開催し,下記の諸課題に取り組んだ。
1)教員の研究評価
教員の研究業績評価の観点について 2 回の委員会で審議した。
- 9 -
2)教員の教育業績評価
教員の教育業績評価の観点を 4 回の委員会で審議し,その結果を全学の「教育活動状況把握のための指
標一覧」等に反映させた。
3)教員の社会貢献活動の把握と評価
外部評価に向け,教員の社会貢献活動の実態に関する情報を収集・分析し,評価した。
4)「教員による授業評価アンケート」の分析
昨年度に実施した『教員による授業評価アンケート』の結果を分析し,FDとして報告・討論した。(『資料集』
を参照)
5)ピアレビュー
学部・研究科・学科共通科目を中心に,前期 7 科目,後期 6 科目の授業科目において,ピアレビューを実施
した。
6)voice box
voice box を通して学生の教育環境改善要望を集約し,改善を図った。
7)ファカルティ・ディベロプメント
7 回のファカルティ・ディベロプメントを実施した。(詳細は,『資料集』を参照)
8)卒業生アンケート
発達科学部発足 20 周年に向け,発達科学部の卒業生に対するアンケート調査を実施した。
(詳細は『神戸大学発達科学部卒業生アンケート結果報告書』を参照)
9)「研究・教育・社会活動等に関する質問票」に基づく調査実施,及び KUID 入力支援
全教員を対象に,研究・教育・社会活動等に関する調査を実施し,本年度の活動実績を総体的に把握した。
調査結果は,①『年次報告書作成』に活用するとともに,②各教員の KUID 既入力情報と照合し,未入力情
報については必要に応じてその入力を支援した。
10)外部評価の実施
10 月 25 日,外部評価(公開ヒアリング)を実施した。(詳細は『外部評価報告書』を参照)
(自己評価委員会副委員長 浅野慎一)
2.3.5. 安全衛生委員会
1)平成 24 年委員
武井義明教授(委員長:平成 24 年 11 月急逝),髙見和至准教授(委員長:平成 24 年 12 月~),江原靖人
准教授,加藤佳子准教授,田畑智博講師,田村文生准教授,仲田保夫事務長,池ノ上邦夫総務係長
2)委員会の開催
毎月 1 回原則として第 4 金曜日 15 時 10 分から開催した。
3)定期点検
委員による学舎内共用部点検を,本年度内に 7 回実施した。
4)委員会の概要
①点検事項報告とその対策の検討
②その他改善を要する件の検討
③全学安全衛生委員会の報告
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④その他
5)本年度の実施事項
①平成 24 年度第 8 回安全衛生委員会(六甲台地区事業場:12 月 20 日)にて,産業医職場巡視結果に関
する改善報告を行った。
(対象施設:人間発達環境学研究科 運動場,運動場付属施設,テニスコート,駐輪場)
②安全管理マニュアルの改訂を実施し,冊子の作成と電子ファイル化を行った。
③自衛消防訓練(平成 25 年 1 月 8 日)
④平成 24 年度第 11 回安全衛生委員会(六甲台地区事業場:3 月 28 日)にて,産業医職場巡視結果に関
する改善報告を行った。(対象施設:体育館,プール)
6)課題
①共用部分に陳列されている物品並びに不用品について,緊急時非難の障害にならないように移管又は
処分する必要がある。
②安全管理マニュアルの冊子と電子ファイルの効果的な使用方法を検討し,学生への周知徹底を図る。
(安全衛生委員会委員長 髙見和至)
2.4. 予算
2.4.1.予算に関する特記事項
1)平成 24 年度は学部発足 20 周年を迎えること,及び外部評価を実施することから予算を措置した。
2)TA経費の効果的・効率執行のため,専攻割り分配とすることとした。
3)夏季・冬季の省エネによるコスト削減の方策を実行し(A棟エレベーター1 基停止,正面玄関自動ドアの停
止,網戸の設置),効果を得た。
4)予算追加配分
本年度は上記(3)による省エネ効果や科研費等間接経費の増加等を財源として予算追加配分が可能とな
った。
① 施設整備として実習観察園トイレ改修工事,渡り廊下照明改修工事を行った。
② 学習環境整備としてB104 講義室及びB208 講義室の椅子の更新,BF棟の講義室プロジェクタ 設
置工事を行った。
③ 教員研究費の追加配分については,一律の配分とともに昨年度に引き続き外部資金獲得者に対し
インセンティブ配分を行った。
2.4.2.予算関係の審議等の状況
1)平成 23 年度決算
平成 24 年 5 月 11 日の予算委員会で審議し,5 月 18 日の教授会において承認された。
2)平成 24 年度当初予算再配分
平成 24 年 3 月 19 日の教授会において承認された平成 24 年度当初予算について平成 24 年 5 月1日現
在での各専攻,学科,コース等の学生実員数に基づいて学生当経費の配分の修正及び 3 月 19 日の教授
会での指摘事項の修正を行い,5 月 11 日の予算委員会にて審議し,5 月 18 日の教授会において承認され
た。
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3)平成 24 年度予算追加配分
教員研究費等への予算追加配分について,平成 24 年 12 月 18 日の予算委員会にて審議し,12 月 21 日
の教授会にて承認された。
4)平成 25 年度当初予算配分
平成 25 年度当初予算配分案は平成 25 年 3 月 11 日の予算委員会において審議し,3 月 19 日の教授会
にて承認された。なお,学生当経費は平成 25 年 5 月1日時点の学生実員数をもって修正を加え 5 月開催
の教授会にて審議することとした。
(予算委員会委員長 近江戸伸子)
2.4.3. 外部資金獲得状況(教員及び学生)
本年度は,国際文化学部が責任部局となって神戸大学の文系6学部が共同して申請した「神戸大学グローバ
ル人材育成推進事業」(文部科学省)が採択され,発達科学部も協力学部としての補助金の配分を得た。
平成 24 年度科学研究費補助金の獲得は 57 件(うち新規は 20 件),総額 105,800 千円であった(詳細は資料
編参照)。うち基盤研究Aは3件採択され,新規・継続合わせて半数以上の教員が科学研究費補助金の代表者と
なっている。科学研究費補助金については,平成 22 年度に落ち込んだが,その後,申請率,獲得金額ともに順調
に伸びている。また本年度は学生対象の日本学術振興会特別研究員,特別研究員奨励費には 8 件(うち新規 3
件)が採択された。なお,本年度の日本学術振興会特別研究員には 3 名(DC1が 1 名,DC2が 2 名)採用された。
平成 24 年度の個人獲得ファンドは学外資金では 18 件(12 名)あり,その内訳は企業 7 件,財団 3 件,大学・
研究機関 3 件,基金 2 件,JST2 件,NEDO1 件であった。教員個人が獲得した学外資金も順調に伸び,若手・
中堅教員の活躍が目立った。学内資金としては「災害復興支援・災害科学研究推進活動サポート経費」による補
助金が 3 件,地域連携推進室からの補助金が 2 件採択された。その他,奨学寄付金が 5 件あった。
総じて,外部資金の獲得は順調な伸びを示している,申請状況の個人差が目立ち,今後の課題となっている。
(人間発達環境学研究科長 朴木佳緒留)
2.5. 広報及び情報公開
2.5.1. パンフレット,ウェブサイト等
(1)日本語版ウェブサイトの改装とウェブ上の広報活動
2011 年度に高機能 CMS (コンテンツ管理システム) を学部・研究科ウェブサイトに導入し,情報の一元化,アク
セサビリティ,作業の効率性,安全性を向上させた。2012 年度は,ウェブサイト全体のアクセサビリティを向上させ
るため,大規模な改装を行った。また,研究科 4 専攻(心身発達専攻,教育・学習専攻,人間行動専攻,人間表現
専攻)の改組に伴い,改組に関する案内情報,入試情報,改組後の詳細情報の公開を行った。
2012 年度は特に,研究科が主催する学術 WEEKS の一環として開催されたシンポジウムやキャリアサポートセ
ンターが主催する様々なセミナーの情報を多数公開した。また,学科や専攻を超えた学術交流を支援するため,
各コースなどが主催する卒業論文・修士論文発表会プログラムをウェブ上に公開した。
(2)2014 年度学部・研究科案内 (パンフレット) の作成
2014 年度学部・研究科案内 (パンフレット) は約 130 ページで構成され,学部・研究科や各学科・専攻の特色
をはじめ,各コースでの詳細な教育研究情報などを掲載した。教員,学生,OB・OG 総勢約 70 名からのメッセージ
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を掲載するなど,学部・研究科の受験生に向けの情報を充実させた。学部・研究科案内の編集作業は,各専攻か
ら選抜された合計 5 名のメンバーによるワーキンググループで行われた。また,研究科 4 専攻(心身発達専攻,教
育・学習専攻,人間行動専攻,人間表現専攻)の改組に伴い,リーフレットを作成し,受験生へ配布した。
(情報メディア委員会副委員長 宮田任寿)
2.5.2. 発達科学部 オープンキャンパス
(1)概要
実施日時:2012 年 8 月 9 日(木)13 時 00 分~16 時 30 分
10 日(金)13 時 00 分~14 時 30 分
実施場所:発達科学部学舎(B202 教室,ほか)
参加者数:参加者数は,発達科学部の 1 日あたりの参加募集定員 1200 人に対し次のとおりであった。
1 日目 生徒: 984 人 付添: 285 人 計:1269 人
2 日目 生徒: 974 人
付添: 276 人 計:1250 人
2 日間総計:2519 人
対象者:主として兵庫県・大阪府・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県下高校生を対象とする。付き添い者につ
いては,控室が充分に確保できないため,極力控えてもらうことを要請した。
実施内容:各コース説明,模擬授業,模擬セミナー,作品展示
学科展示,サイエンス・ショップ展示 キャリアサポートセンター展示,ほか
施設見学:人間科学図書館(入館ゲート内は不可),発達ホール,キャリアサポートセンター,
カフェ・アゴラ(飲食可能)
(2)実施組織の構成
実施組織は教員組織として「オープンキャンパス・ワーキンググループ」「オープンキャンパス・コース実施委員」,
担当事務係として教務学生係,学生組織として「オープンキャンパス学生委員会」からなる。これらとは別に,当日
の運営に際して,コースごとに補助学生を若干名雇い上げている。
a) 「オープンキャンパス・ワーキンググループ」は教務学生係と連携してオープンキャンパスの実施計画(「実施
計画書」)及び緊急時マニュアルを作成し,全体的運営に関する業務を所掌する。
主査:梅宮弘光 委員:山下晃一 高田義弘 福田博也
b)「オープンキャンパス・コース実施委員」は,コース企画の運営に関する業務を所掌する。
赤木和重(心理発達論) 岡部恭幸(子ども発達論) 木下孝司(学校教育論) 吉永潤(教育科学論)
松岡広路(発達支援論) 加藤佳子(健康発達論) 長ヶ原誠(行動発達論) 武井義明(身体行動論)
平芳裕子(表現文化論) 田村文生(表現創造論) 関典子(臨床・感性表現論) 寺門靖高(自然環境論)
田畑智博(生活環境論) 岩佐卓也(社会環境論) 桑村雅隆(数理情報環境論)
c)「オープンキャンパス学生委員会」(各コース毎1名選出)は,「オープンキャンパス・ワーキンググループ」の監
督のもと,当日までの準備作業及び当日のオープンキャンパス・ワーキンググループ業務を補佐する。
学部学生:13 名 大学院学生:3 名
d)担当事務係:教務学生係(村井利子)
e)協力:情報メディア委員会(研究科HP広報ページの設置) 山口泰雄研究室(アンケート監修及び集計)
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自然環境論コース(非常時の氷手配対応)
(3)準備日程
4 月中旬:オープンキャンパス・コース実施委員,オープンキャンパス学生委員の選出
各コース実施計画の照会
5 月中旬:第 1 回拡大オープンキャンパス・ワーキンググループ委員会開催(学生企画の検討,ほか)
6 月初旬:各コース実施計画のとりまとめ。企画内容の本部への通知
7 月初旬:第 2 回拡大オープンキャンパス・ワーキンググループ委員会開催(補助学生雇い上げ手続き,危
管理・安全対策の周知)
8 月 8 日:直前準備業務(配布資料等の準備 掲示物掲出,ほか)
(4)会場構成及び要員配置
会場の基本動線は,正門からB棟ピロティに誘導し,同所に設置した受け付けを経由してB棟1階ホールに入り,
そこから各会場に分散するものとした。
B棟ピロティ:受け付け(参加票シール貼付,資料配付,飲料〈500ml ペットボトル1本〉配布)教務学生係,
オープンキャンパス・ワーキンググループ,オープンキャンパス学生委員会
B棟1階ホール:ロビー空間(会場案内図の掲出 休憩用椅子・テーブル 書籍販売ブース アンケート回収)
オープンキャンパス・ワーキンググループ委員(常駐),オープンキャンパス学生委員
コース等別会場
B202,B206:心理発達論 B212(子ども発達論) B210(教育科学論) B108(学校教育論)
F256(健康発達論,行動発達論,身体行動論) F254,F260(人間行動学科合同展示)
F264(表現文化論,表現創造論,臨床・感性表現論) F252(人間表現学科質問コーナー)
A147(人間表現学科作品展示) B104(自然環境論) B208(数理情報環境論) B103(生活環境論)
B106(社会環境論) A120(発達支援論) E251(サイエンス・ショップ) B201(キャリアサポートセンター)
控室:Dルーム 学生食堂 カフェ・アゴラ F251
オープンキャンパス実施本部:非常勤講師控室及び教務学生係事務室
(5)配布資料
次の資料を特製手提げバッグに入れ,受け付けにおいて飲料とともに配布した。
「神戸大学発達科学部オープンキャンパス 2012 プログラム概要」「同 会場案内図」(避難経路図)
「2012 神戸大学発達科学部オープンキャンパス」(オープンキャンパス学生委員会作成の 12 ページ立てパ
ンフレット)。
「2012 神戸大学発達科学部オープンキャンパス」はオープンキャンパス学生委員会の自主企画として作成され
たもので学科別に学生生活や授業内容を紹介したものである。掲載写真中に写っている人物については全員に
「肖像権,著作権,個人情報に関する同意書[在学生用]」により同意を取った。印刷原稿が完成した段階で,オ
ープンキャンパス・ワーキンググループ及び研究科長による校閲を経て印刷発注された。
(6)危機管理・安全対策
緊急(病人等の発生,不審者発見,事故・事件発生)時の対応について「緊急時マニュアル(非常電話配置マッ
プを含む)」「キャンパス内AED配置マップ」「保健管理センターだより(心臓突然死! 防ごう基礎疾患の想起発
見で)」に基づいて確認した。
AEDの使用についてはオープンキャンパス・ワーキンググループ主査が事前に保健管理センター医師のレク
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チャーを受け,推薦のあった映像資料(AEDメーカーHP掲載の動画)を第 2 回拡大オープンキャンパス・ワーキ
ンググループ委員会で視聴した。
開催中は,各コース企画の開始時刻を中心に,オープンキャンパス・ワーキンググループ及びオープンキャンパ
ス学生委員が教室会場の定員超過に留意しながら,巡回コースを定めて巡回した。
看護が必要な事態が生じた場合は健康管理センターとの連携で行うとし,看護婦の配置はしていない。
神戸市交通局に対してオープンキャンパス実施を伝え,増便等の対応を求めた。
(7)アンケートの実施と参加者調査結果
参加者の属性とオープンキャンパスに対する量的評価及び質的評価を明らかにするためにアンケートを実施し
た。配布数は 1958 票,回収数は両日で合計 1148 件(9 日:575 件,10 日:574 件),回収率は 58.6%であった。
回収データは単純集計及びクロス集計を行い,自由記述に関しては参加コースごとに,満足群・不満群。要望
群に分類・整理した。
集計結果は「オープンキャンパス参加者調査 2012」として取りまとめた。
(8)参加者の評価概要
両日を通し,事故等なく無事に終了した。参加者の反応の詳細は前述の「オープンキャンパス参加者調査
2012」に譲るが,満足群に分類される自由記述が他に比して圧倒的に多く,概ね好評を得たと判断できる。
(発達科学部オープンキャンパス WG 委員長 梅宮弘光)
2.5.3. 人間発達環境学研究科 オープン・らぼ
(1)概要
実施日時:2012 年 6 月 30 日(土)13 時 00 分~17 時頃
実施場所:発達科学部学舎(B202 教室,ほか)
目的:人間発達環境学研究科の教育や研究に関する情報提供
対象者:人間発達環境学研究科への受験を希望している方(神戸大学発達科学部在学生以外)
参加者総数(申込者総数):78 名(88 名)
(2)実施体制
オープンキャンパス委員会
協力:情報メディア委員会(研究科HPに開催告知ページの設置),山口泰雄教授(アンケート監修)
(3)実施方法及び内容
広報:5 月初旬より研究科HPに告知を掲載した。
参加申し込み方法:
・申し込みはメールでのみ受け付けることとし,専用アドレスを設定した。
・申し込み時に,氏名,連絡用メールアドレスのほか,現在の所属,指導を希望する教員氏名(2 名まで),希
望教員未定の場合は話を聞いてみたい専攻あるいは研究分野を記してもらうこととした。
・申し込みメールに記された個人情報は目的以外には使用せず,適切に管理する旨を明記した。
参加申し込み期間:2012 年 5 月 25 日(金)~6 月 9 日(土)
内容:
1)全体説明
1-1)人間発達環境学研究科の理念と特色(朴木佳緒留研究科長)
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1-2)国際学術交流協定と留学(青木茂樹国際交流委員会委員長)
1-3)全体説明会出席者の紹介
朴木佳緒留(研究科長) 岡田章宏(副研究科長) 岡田修一(副研究科長) 青木茂樹(国際交流委員
会委員長) 森岡正芳(心身発達専攻長) 稲垣成哲(教育・学習専攻長) 河辺章子(人間行動専攻長
代理) 坂東肇(人間表現専攻長代理) 平山洋介(人間環境学専攻長) 榎本平(自然環境論コース主
任) 高橋譲嗣(数理情報環境論コース主任) 末本誠(発達支援論コース) 伊藤篤(発達支援論コー
ス) 吉永潤(教育科学論コース) 山下晃一(教育科学論コース) 江原靖人(自然環境論コース) 城
仁士(生活環境論コース)
2)専攻別説明
2-1)専攻/コースの説明(各専攻長)
2-2)入試に関する説明(※1)(各専攻長)
3)研究室訪問(※2)
3-1)指導希望教員との個別面談
3-2)研究室在学生等との交流
3-3)施設見学
※1 入試情報については,現時点で公開している範囲内で説明,質疑応答を行う。
※2 個別面談を保証するものではない。教員の都合や希望者多数の場合等によっては個別面談が不可能
な場合がある。その場合は他の方法,あるいは専攻・コースの他の教員による対応になることを前もって
アナウンスした。
(4)配布資料
「オープンらぼ 2012 プログラム」
「学部・研究科パンフレット『神戸大学発達科学部 神戸大学人間発達環境学研究科 2013』」
「リーフレット〈留学のススメ〉」「研究科リーフレット〈2013 神戸大学大学院人間発達環境学研究科〉」
「参加者アンケート用紙」
※「研究科リーフレット〈2013 神戸大学大学院人間発達環境学研究科〉」は 2013 年 4 月の研究科改組予定を
ふまえて新専攻の概要を紹介したもの。
(5)参加状況詳細
参加申込総数:88 名 参加者合計数:78 名 対象外者数(発達科学部在籍者):2 名 当日欠席者:8 名
内訳:
(単一専攻を希望した者)心身発達専攻:47 名 教育・学習専攻:11 名 人間行動専攻: 5 名
人間表現専攻: 6 名 人間環境学専攻: 4 名 未定: 1 名
(複数専攻を希望した者)教育・学習専攻と心身発達専攻:2 名 人間環境学専攻と心身発達専攻:1 名
人間行動専攻と人間表現専攻:1 名
(6)参加者アンケート
回収数は 19 件(回収率 24%)であった。回収数が少数であったため集計は行わず,自由記述を取りまとめるに
とどめた。
(7)参加者の評価概要
〈オープンらぼ〉は,研究室あるいは教員との直接的で双方向のコミュニケーションに主眼を置いたものなので,
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このなかで参加者の疑問は大方解消されたものと想像される。前述のとおり参加者アンケートの回収数が少なか
ったことの要因も,この点にあろう。
回収アンケート 19 件のうち,参加の満足度を訪ねる設問では,「満足した」14 名,「まあ満足した」5 名,当研究
科への入学希望を尋ねる設問では,「思った」16 名,「まあ思った」3 名であった。自由記述では「説明が丁寧だっ
た」「来て良かった」という主旨が大部分で,要望としては「もっと早く開催してほしかった」「もっと長時間であればよ
かった」があった。
全体を通して,所期の目的である「人間発達環境学研究科の教育や研究に関する情報提供」が相互的なコミュ
ニケーションのなかで達成できたと考えられる。
(人間発達環境学研究科 オープン・らぼ WG 委員長 梅宮弘光)
2.5.4. ホームカミングデイ
神戸大学は平成 18 年度より,卒業生に母校を訪ねていただき,新たにスタートを切った神戸大学を知っていた
だくという企画が始まった。今年は第 7 回を迎え,10 月 27 日(土)に開催された。
発達科学部創立 20 周年の今年度は昭和 32 年 ,昭和 42 年,昭和 47 年,昭和 52 年,昭和 62 年,平成 9 年,
平成 10 年,平成 11 年,平成 12 年,平成 19 年及び平成 24 年の卒業生に案内状を送付し,延べ 92 名の出席が
あった。午前 11 時から六甲台講堂で全体企画が行われた後,午後 13 時より学部企画が発達科学部で行われた。
発達科学部では午後 14 時にキャンパスツアーを行い,図書館,体育館,D ルームなどをご覧いただき,変りつ
つある発達科学部の状況を見ていただいたあと,以下の催しを行った。
1)ようこそ発達科学部へ
発達科学部長,紫陽会会長挨拶
「思い出を語る」
14:30〜15:00(F256 教室)
第一期発達科学部卒業生代表
2)発達科学創立 20 周年記念講演会 15:00〜16:00(F256 教室)
「教育学部から発達科学部へ」 露の団六師匠(教育学部卒業生)
3)紫陽会賞授賞式 講演会終了後
(F256 教室)
4)全体懇談会 (参加費:3,000 円) 16:00〜19:00
(発達科学部生協食堂)
5)併設企画 神戸大学よさこいチーム山美鼓演舞 16:30〜16:45(発達科学部生協食堂)
今年度は発達科学部創立 20 周年であったことから,「思い出を語る」と題して第一期発達科学部卒業生の方に
スピーチをしていただいた。さらに,発達科学部創立 20 周年記念の取り組みとして本学の卒業生でもある露の団
六師匠を迎え,「教育学部から発達科学部へ」と題してご講演いただいた。また,第6回から行われている紫陽会
会員(卒業生)と準会員(在校生)に贈られる紫陽会賞の授賞式も行われ,「神戸大学教育学部五十年史」及び
「圖録神戸大学教育学部五十年史」の執筆・編集責任者の船寄俊雄氏(教育学部昭和 54 年卒)と創作ダンスコン
クールなどで活躍・受賞した「神戸大学発達科学部人間表現学科舞踊ゼミ」の 2 団体にクリスタルトロフィーと金一
封が贈られた。
全体懇親会の中では,昨年に引き続き,神戸大学よさこいチーム山美鼓の演舞が行われた。演舞の後は学生
諸君も懇親会に加わり,すばらしい交流の場が持てた。
(第 7 回発達科学部ホームカミングデイ実行委員長 岡部恭幸)
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2.6. 国際交流活動
2.6.1. 学術交流協定
今年度,ノルウェーのオスロ・アーケシュフース大学(本研究科コンタクトパーソンは北野幸子准教授)及びバン
グラデシュの IUBAT*(本研究科コンタクトパーソンは松岡広路教授)とそれぞれ部局間協定を新規に締結した。ま
た,国際文化学研究科あるいは人文学研究科が主導するタイプ2の大学間協定への参画部局としてロシアのモス
クワ教育大学及びドイツのハンブルグ大学との学術交流協定を更新した。ハンブルグ大学との協定更新に際して
は,これまで大学院のみの参画だったところをグローバル人材育成推進事業が今年度より開始することに鑑み,
発達科学部も参画部局に加わり学部学生の留学に際しても協定が適用されるようはからった。
* IUBAT : International University of Business Agriculture and Technology
2.6.2. 留学生
本年度,本研究科で学んだ留学生は計 91 名,概要(性別・国籍別・学年別・専攻別・国費/私費別)は別
表のとおりである。
(1)交流協定校との留学生の交換
受入:華東師範大学 2 名,公州教育大学校 1 名,オーフス大学 1 名,ロンドン大学 SOAS 1 名,
ライデン大学 1 名。
派遣:オーフス大学 2 名,ヨハネスケプラー大学 1 名。
(2) 来年度の派遣留学生募集・決定
10 月 12 日(金)に留学説明会を開催し,交換留学制度を有する大学の紹介,留学先での勉学や生活,応
募手続きなどについて説明を行った。11 月 15 日に面接を実施し,9 名の応募者のうち7名の推薦を決定した
(発達科学部 3 名,国際文化学部 2 名,人間発達環境学研究科大学院生 2 名)。派遣先は,オーフス大学 5
名,華東師範大学 1 名,ナザレ大学大学院 1 名。
(3) 来年度の受入留学生(決定分)
すでに確定している受入留学生は,オーフス大学 1 名,華東師範大学 2 名。
(4) 留学生懇親会
6 月 28 日(木),発達科学部食堂にて,本学部・研究科の留学生全員を対象とした懇親会を開催した。44
名(留学生 24 名,教員 4 名,事務職員 13 名,チューター3 名)の参加を得て,親睦を深めた。
(5) 留学生見学旅行
11 月 17 日,阿波踊り会館,うずしお,大塚国際美術館見学を実施した。26 名(留学生 23 名,教員 1 名,
事務職員 2 名)の参加があった。
(6) チューター説明会
本年度から廃止し,窓口で随時説明することで対応した。
(7) 留学案内情報の改訂
12 月,大学のホームページに掲載中の交換留学生用の部局間協定校の案内(派遣・和文)を改訂した。
(8) 派遣留学生報告書の閲覧
教務学生係にて,過去の交換留学生の報告書をファイルにまとめ,学生を対象に閲覧を開始した。
(9) 来年度に向けて
留学生が直面している課題のひとつとして,就職支援情報の不足がある。受入・派遣ともに一般学生と異な
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る条件下となることが多く,個人での情報収集を余儀なくされる。留学生の増加を図るには,留学中だけでなく,
留学後を見据えた支援が重要であり,大学の留学生ヘルプデスクは東京のため,神戸での窓口を開設するな
ど,大学全体でのさらなる取り組みが求められる。
(留学生専門部会長 浅野慎一)
前期
性別
国籍
学年
専攻
計
女性
58
64
71
男性
17
18
20
中国
62
70
75
韓国
4
3
4
ウクライナ
2
2
2
台湾
2
2
2
キリバス
1
1
1
マレーシア
1
1
1
アメリカ
1
1
デンマーク
1
1
オランダ
1
1
1
キューバ
1
1
ノルウェー
1
1
D3
4
3
4
D2
3
3
3
D1
2
2
2
M2
12
10
12
M1
20
20
20
特別研究学生
4
3
6
研究科研究生
12
22
23
特別聴講学生
3
2
4
学部研究生
15
17
17
心身発達
15
15
17
教育・学習
15
17
21
人間表現
9
12
12
人間行動
2
3
3
34
35
38
国費
2
3
3
私費
73
79
88
75
82
91
人間環境学
国費・私費
後期
計
- 19 -
2.6.3. 「英語による授業」設置準備
英語による授業は,神戸大学のグローバル化を教育においても進めるための全学方針とされている。本
研究科では,神戸大学基金による「英語コース設置準備に係る事業」に「大 学 院 前 期 課 程 ESD サ ブ コ
ー ス の 設 置 準 備 」 を 申 請 し , 平 成 22, 23 年 度 の 2 年 間 , 採 択 さ れ て き た 。 平 成 24 年 度 は 文
部科学省による「グローバル人材育成推進事業」に文系 6 学部が共同して申請した計画が採
択されたため,
「大 学 院 前 期 課 程 ESD サ ブ コ ー ス の 設 置 準 備 」を 同 事 業 の 一 環 と し て 行 っ た 。
平 成 24 年 度 に は , 昨 年 度 に 実 施 し た フ ィ リ ピ ン ( 太 田 准 教 授 担 当 ), 韓 国 ( 津 田 准 教 授 ,
渡部教授,赤木准教授担当)へのスタディツアーに加えて,ノルウエーの幼児教育を学ぶツ
ア ー が 組 ま れ た ( 北 野 准 教 授 担 当 )。
大 学 院 前 期 課 程 ESD サ ブ コ ー ス で は 授 業 の す べ て を 英 語 で 行 い 「
, ESD 研 究 」
( 2 単 位 ),
「 ESD
研 究 演 習 」( 8 単 位 ) の 他 , い く つ か の 授 業 を 「 ESD 基 礎 科 目 群 」 と し て 指 定 し ( 2 単 位 を 選
択 必 修 ),計 12 単 位 を 取 得 し た 者 に は「ESD Advanced Practitioner」の証明書(certification)を与え
ることとした。同サブコースの設置とその内容については 1 月教授会にて審議,了承され,平成 25 年度
より実施される運びとなった。授業は松岡教授,津田准教授,太田准教授を中心に,本研究科教員と他研
究科教員(学部の ESD サブコース運営委員会委員)の 10 数名が担当する予定である。したがって,英語
による授業の準備は平成 24 年度で一応の区切りをつけたことになる。
学部の授業の英語化については今後の課題となるが,まずは大学院(博士前期課程)から始め,今後は
「グローバル人材育成推進事業」の進行に合わせて検討,実施されることを期待したい。
(人間発達環境学研究科長 朴木佳緒留)
2.6.4. 学生・教員の海外派遣
交換留学
2011 年 8 月~2012 年 6 月
萩原 達野 デンマーク オーフス大学
2012 年 1 月~2013 年 12 月
原 可奈子 デンマーク オーフス大学
2012 年 8 月~2013 年 6 月
石橋 杏奈 デンマーク オーフス大学
2012 年 8 月~2013 年 6 月
正木 菜保 デンマーク オーフス大学
2012 年 9 月~2013 年 6 月
土井 将大 ポーランド ヨハネスケプラー大学
学生の国際学会での発表(国際交流運営資金による助成分)
2012 年 7 月 木下 克之 インド マイソール
COSPAR (Committee on Space Research) 2012
2012 年 7 月
山田 真世 シンガポール
Pacific Early Childhood Education Research Association 13th Annual Conference
2012 年 9 月 近藤 龍彰 イギリス グラスゴー
The British Psychological Society, Development Section Annual Conference 2012
2012 年 9 月 山本 卓
ポルトガル ギマランイス
The 41st Textile Research Symposium
教員の派遣(教員個人の研究活動にかかわるものは含まず)
2012 年 10 月 近藤徳彦教授 オーストラリア 西オーストラリア大学
- 20 -
協定大学教員交流プログラム
2012 年 12 月 渡部昭男教授,津田英二准教授
韓国ナザレ大学
交流協定締結校との学生交流支援及び打ち合わせ
2013 年 2 月
松岡広路教授,高尾千秋助教 バングラデシュ IUBAT,ユネスコダッカ事務所他
ESD スタディツアー現地プログラムの視察調査
2013 年 3 月
岡田章宏研究科長,太田和宏准教授 フィリピン サンベーダ大学,フィリピン大
学及び香港 香港大学、 グローバル人材育成プログラムに関する打ち合わせ
2013 年 3 月
勅使河原君江講師 ノルウェー オスロ・アーケシュフース大学
学生スタディツアー同行ほか
2013 年 3 月
平川和文教授,近藤徳彦教授 オーストラリア 西オーストラリア大学及び
エディスコーワン大学、 グローバル教育に係わる内容の検討
2.6.5. 海外研究者の招聘
本年度、招聘した海外研究者は、下表のとおりである。
期日
氏名
所属・職
招聘者
6/13
Michael Bamberg
アメリカ合衆国 クラーク大学・教授
森岡 正芳
6/16
Matt Spencer
カナダ 西オンタリオ大学・ポスドク
近藤 徳彦
10/24~10/29
Keith George
イギリス リバプールジョンムーア大学・教授
近藤 徳彦
11/5~11/17
Stephen Cheung
カナダ ブロック大学・教授
近藤 徳彦
11/17
David Gough
イギリス ロンドン大学社会科学研究所・所長
伊藤 篤
11/25~11/30
Roswith Roth
オーストリア グラーツ大学・名誉教授
加藤 佳子
11/27~12/3
Christine Delory Momberger
フランス パリ第13大学・教授
末本 誠
12/6~12/18
Ziga Virk
スロベニア リュブリャナ大学・助教授
宮田 任寿
11/16~12/23
Ahmad Munir Che Muhamed
マレーシア サインズ大学・上級講師
近藤 徳彦
12/16~12/19
James P. Fisher
イギリス バーミンガム大学・上級講師
近藤 徳彦
12/17
Kazunori Nosaka
オーストラリア エディスコーワン大学・教授
近藤 徳彦
1/22~1/24
高 敬來
韓国 慶州大学校・准教授
鈴木 幹雄
1/22~1/27
安 尚俊
韓国 民族史観高等学校・美術教師
鈴木 幹雄
1/23
施 多慧
韓国 Cheondong 初等学校・講師
鈴木 幹雄
2/2~2/23
Andreas Schwerdtfeger
オーストリア グラーツ大学・教授
加藤 佳子
2/3~2/5
Vincent Lesch
ドイツ ハンブルグ大学・大学院生
加藤 佳子
2/23
Cristine Chen
シンガポール保育学会・会長
北野 幸子
2/23
Morten Solheim
ノルウェー オスロ・アーケシュフース大学・准教授
北野 幸子
2/23
Soyoun Bae Suh
韓国 中部大学校 教授
北野 幸子
3/21~3/24
Jodie Wilkie
オーストラリア エディスコーワン大学・上級講師
近藤 徳彦
- 21 -
(国際交流委員会委員長 青木茂樹)
2.6.6.
スタディツアー
発達科学部,人間発達環境学研究科では従来より,教員が学生を同道してスタディツアーを行ってきた。従来
はいわゆる「ゼミ旅行」と認識されていたが,神戸大学基金による学生を対象とした海外派遣支援事業が開始され
るに伴い,スタディツアーとしてカテゴライズできるようになった。
今年度の一番の特徴は,複数のプログラムの参加者が,互いの学びを,交流を通してシェアするプログラムを設
け,比較の眼を養うことができる教育環境を整えたことである。次年度以後,よりたくさんのプログラムを実施すると
ともに,それらを交差させるプログラムをさらにブラッシュアップさせていく予定である。
本年度に実施されたスタディツアーは以下である。
(1)韓国スタディツアー
2012 年度は 2 回の韓国スタディツアーを行った。
第一回目は 2012 年9月 18 日~23 日で,博士後期課程学生 1 名,博士前期課程学生 2 名,学部学生 2 名の
計 5 名が参加し,教員 2 名が引率した。韓国ナザレ大学,ソウル市立知的障害人福祉館を訪問した。韓国ナザレ
大学において知的障害学生を受け入れている学科を訪れ,授業を参観したりインタビューなどを通じて交流を行
った。事前,事後とも数回ずつ,ナザレ大学の実践事例の検討を行った。
第二回目は 2012 年 12 月7日~10 日で,博士後期課程学生 1 名,博士前期課程学生 2 名,学部学生 2 名の
計 5 名が参加し,教員 2 名が引率した。韓国ナザレ大学において,日韓の学生が相互に英語を用いた研究発表
を行い,意見交換を行った。事前に研究発表に向けた検討会を 3 回,事後にふりかえり 1 回を行った。
(准教授 津田英二)
(2) フィリピンにおけるフェアトレード生産者の生活実態調査
「国際開発論演習」を履修する学生 13 名(4 年生 6 名,3 年生 7 名)を引率し,11 月 19 日から 12 月 3 日まで
フィリピンにおいて調査研究,及び学生交流プログラムを実行した。
約 1 週間はフィリピン,セブ州を拠点にフェアトレード活動に従事する現地 NGO「フェアトレード南のパートナ
ー」Southern Partner of Fair Trade Center を訪問し,そのスタッフ及びそこが組織する農村,漁村,スラム,女性等
のコミュニティに対して,生活条件,生活意識に関する聞き取り調査を行った。聞き取り対象は 7 コミュニティ 120
名におよんだ。この調査に向けては 4 月以降,開発関連文献,フェアトレード関連情報を入手,購読しながら議論
を重ね,調査票の作成にいたるまで学生が中心となって進めた。調査後は,データ整理をしつつ報告論文として
まとめる作業を継続して行っている。
11 月 25 日はフィリピン大学セブ校社会科学部政治学科の学生と“Darna meets Astro Boy”と題する交流会を行
った。フィリピンの学生からの「フィリピン政治社会状況に関する報告」「外国援助に関する報告」をうけて質疑応対
を行った。日本の学生は「ドラエモンの魔法を使って貧困問題を解決する」というテーマで,日本人フィリピン人混
合のグループディスカッションを組織した。その合間に舞踊パフォーマンス,文化紹介等があり,全体として友好を
深める好い機会となった。この交流プログラムに関しては夏前から学生同士が facebook 等を通じて連絡を取り合
い準備していたものの,事前調整がうまくいかず,日本側が用意したプログラムの一部が実行できなかったことは
残念であった。
11 月 27 日から 12 月 3 日はマニラに移動・滞在し,昨年「国際開発論演習」履修者(その約半分が今年の調査
旅行にも参加)が学生交流を行った San Beda 大学を訪れ旧交を温めた。公式プログラムは用意していなかったも
のの,先方学生のみならず教授スタッフの歓迎を受け,フィリピン上院見学,ゴミ山(スモーキー・マウンテン)訪問
- 22 -
などを共に行った。
調査旅行の準備段階,滞在期間,事後整理段階を含めて,参加学生らはその意図をよく理解し,自主的に運
営に参加した。また実際の調査体験,交流体験は学生にとってよい刺激となり,その後の学習意欲の向上にも大
きく貢献しているものと思われる。
なお,この調査研究旅行の参加者は,「ESD スタディツアープログラム」経費から渡航滞在費の一部を補助され
ている。
(准教授 太田和宏)
(3)交流・交差プログラム(ESD スタディツアー・リフレクションプログラム)
2013 年 2 月 14 日(13 時~17 時)に,韓国スタディツアー&フィリピンスタディツアー参加者によるリフレクション
交差ワークを実施。ESD に不可欠な総合性の観点を意識化した。
(4) バングラデシュ・スタディツアープログラム
2013 年 2 月 8 日~16 日に実施。ESD 連携協定大学(IUBAT)などを訪問し,今後の交流プログラムデザインに
ついて協議をした。
(教授 松岡広路)
2.7. 環境設備
2.7.1. 教育・学習環境の整備
(1) Dルームの照明増設等
Dルームのパソコンコーナーの照度が不足していたので,照明を増設し,適正照度とした。また,Dルームの学
習スペースを有効利用し,キャリア支援のためのファイルワゴン 4 台を設置し,キャリア関係資料を整理することに
より,キャリアサポートセンターの相談スペースの充実を図った。
(2) B棟及びF棟の講義室へのプロジェクター設置等
学習環境改善のため,B棟及びF棟の講義室にプロジェクターを設置し,また,B棟 104 及び 208 教室の経年劣
化した椅子を全て更新した。
(3) 国際交流サポートルームの設置
国際交流推進のため,そのコーディネートを行うスタッフ 2 人を採用するとともに,共同利用スペースの点検を行
い,A棟 4 階に国際交流サポートルームを設置した。
(4) 実習観察園のトイレ改修等
実習観察園の和式の便器を温水洗浄便座付きの便器に取り替える等のトイレ改修工事及び実習観察園屋根
の塗り替えを行い,学習環境エリアの改善を図った。
(事務長 仲田保夫)
(5)無線 LAN の整備
本学部・研究科で利用できる無線 LAN は,神戸大学情報基盤センターが管理する全学用無線 LAN と,本研
究科が独自に管理する無線 LAN である。2011 年度までに,全学用無線 LAN は,発達ホール (A 棟 1 階), 図
書館・各会議室 (A 棟 2 階) をはじめ,A 棟,B 棟,D 棟,F 棟,G 棟,食堂,体育館とプール周辺の広い範囲で
利用可能となっている。2012 年度は,国際交流サポートルームの開設に伴い,A 棟 4 階に全学無線 LAN 用アク
セスポイントを新設した。また,学生や教職員向けに,無線 LAN 接続についての講習会を開催したり,コンピュー
タ,ネットワークの利用相談窓口の利用時間を延長するなど,教育用 ICT 利用のための技術支援を充実させた。
- 23 -
(情報メディア委員会副委員長 宮田任寿)
(6) 図書館整備
本研究科・学部に附設された人間科学図書館では,例年と同様,平成 23 年度にも学生用資料の整備・充実に
努め,平成 24 年度以降の学部生・院生の利用に備えた。その結果は,以下の表に示すとおりである。貸出率,回
転率は高い値を示していることから,選定された資料(図書)が良く利用されていることが推測され,本図書館が学
部生・院生の学習にとって大切な役割を果たしている。
表 平成 23 年度学生用資料選定結果:区分ごとの購入実績及び貸出統計
(貸出統計は平成 24 年 1 月~12 月のデータ)
区
分
予算額
購入実績
冊数
金額
A
B
C
D(%)
E(%)
専攻推薦図書
5,400,000
1,166
5,677,864
1,093
591
1,548
54.1
141.6
学生希望図書
280,000
76
226,920
74
42
123
56.8
166.2
継続図書
130,000
109
318,438
66
31
75
47.0
113.6
シラバス掲載図書
280,000
47
147,541
44
25
60
56.8
136.4
検定教科書
200,000
307
198,203
307
92
180
30.0
58.6
学生用選書
53,052
21
59,046
20
15
32
75.0
160.0
6,628,052
1,726
6,628,012
1,604
796
2,018
49.6
125.8
合 計
【注】A:貸出可能冊数 B:貸出図書数 C:貸出延回数 D:貸出率(B/A)E:回転率(C/A)
平成 24 年度には,メール会議も含めて 5 回の委員会を開催した。専攻(学科)等に対する学生用推薦図
書の依頼,検定教科書等の発注など,例年通りの取組に関する協議を行うほか,学生用購読和雑誌の見直
し(和雑誌については平成 24 年度中,洋雑誌については平成 25 年度中に実施),重複図書の廃棄と有効
活用(附属学校への寄贈等)について協議を行った。
(図書委員会委員長 伊藤 篤)
(7) Voice box について
1. 新入生ガイダンスで voice box について周知した。
2. 本年度,13 件の投稿があった。(昨年度 3 件)
3. すべての投稿に対し,2 カ月以内に HP 上で回答した。
4. 投稿中,教育環境の改善に関する事項が 12 件と圧倒的に多かった。具体的な対処・改善に結びつい
た事案(トイレ・ハンドソープ,図書館コピー機釣銭対応,D ルーム利用方法改善等)は 5 件,直ちに対処
が困難な事案(コンセント・自販機等)が 8 件であった。
5. 比較的,深刻性・切迫性が見出しにくい投稿がほとんどであった。またこうした細々した事案について,
HP での個別回答が必要か否か,検討の余地があると思われる。
(自己評価委員会副委員長 浅野慎一)
2.7.2. 生活環境の整備
(1) ゴミ収集場の改善
昨年度に引き続き,ゴミ収集場のゴミ散乱防止とゴミの分別推進及び環境美化を図るための改修を行い,本年
- 24 -
度で完成した。
(2) 禁煙スペースの移設
設置場所が不適切と思われる屋外にあった喫煙スペース 1 箇所を,より適切と考えられる場所に移設した。
(事務長 仲田保夫)
2.7.3. 交流ルーム・アゴラ
A棟 6 階の交流ルーム(カフェ・アゴラ)は学生の交流スペースとして開設 5 年目を迎えた。カフェ・アゴラは,学
内厚生施設であるとともに,障害者雇用や実習の実践の場でもある。昨年度に引き続き,食品衛生責任者の資格
を持つ仲田事務長が店長を務めた。脳性麻痺のあるマスター,知的障害のある従業員,他スタッフ 2 名のサポート
の下に知的障害を持つ実習生 2 名,特定非営利活動法人「工房・彩」(就労継続支援 B 型施設)利用者の実習,
六甲アイランド高校の生徒の実習の受け入れなどを行った。
(1) 本年度の活動状況
1) 行事との連携
学外に対してカフェ・アゴラの活動の趣旨と内容を紹介する目的で,下記の機会にカフェを開店あるいは
活用した。いずれも好評で利用者の本施設における活動への理解が深まった。カフェの増収にも繋がっ
た。
① 保護者会
毎年 5 月に開催される保護者会に,今年度はカフェ・アゴラでのコーヒーサービスを組み込むこととなっ
た。人数の都合上 2 回に分けて,店内で保護者に,マスターと実習生がコーヒー・紅茶の提供を行い,
好評を得た。
② オープンキャンパス
8 月 9,10 両日の開催に合わせてカフェ・アゴラを開店した。店舗以外に,隣接する大学院生研究室を開
放することにより,客席数を平常時の 18 席から 36 席に増やした。マスター,スタッフ,実習生に加えて,
本学部学生アルバイトを雇用し,さらにボランティアの応援を得て人手を補った。2 日間の延べ注文数は
カレーライス 97,飲料が一般 96,学生 77 であった。オープンキャンパス参加者にとっては,6 階からの展
望を楽しむとともに,真夏の暑さをしのぐ憩いの場となった。同時に,実習生の活動と本学部の特色が理
解され,好評であった。
2) 喫茶のサービス提供と利用状況
2012 年 4 月から 2013 年2月末までの 11 ヶ月間の飲料注文数は,一般が 631(昨年度 642),学生が 900
(同 477),食べ物の注文数は 2238(同 1259)であった。全般的に大幅に利用者が増加していることが分か
るが,特に学生の利用が 2 倍近く増えた点に今年度の特徴がある。
3) 展示活動
カフェの持つ展示機能を活かして,交流ルーム運営委員である勅使河原君江准教授のマネジメントにより,
表現学科の大学院生や学部生,教員の作品による展示が 3 期に亘り公開され,アゴラを訪れた人たちを楽
しませた。
はりえ作品展(発達科学部学生の作品展)2012 年 3 月 1 日(木)~9 月 17 日(月)
楽譜展「百頭女」(田村文生作品より)2012 年 9 月 18 日(火)~2013 年 4 月 30 日(月)
4)予算と売り上げ
人件費は障害者雇用分を本部経費から,その他を研究科経費から充当した。食材などの材料費について
- 25 -
は学部予算からの配分額に加えて,その年度のアゴラでの収益の 8 割が大学より戻され加算されている。
食材等の必要経費は約 36 万円であるが,今年度はオープンキャンパス対応などのため,食器類の種類と
数を増やした。喫茶店としての売り上げは 4 月から 3 月の 11 ヶ月間で約 98 万円に達し,人件費分を除く
と大幅な黒字であった。
5)知的障害を持つ実習生への支援と活動
交流ルーム設置当初より実施してきた「知的障害を持つ実習生の現場実習と学生の教育を組み合わせた
キャリア開発プログラム(みのり)」が今年度は転機を迎えた。初年度から訓練を続けてきた実習生 2 名が,
2012 年 4 月より交流ルームの非常勤職員として採用された。これに伴い,「みのり」は実習を中心としたプ
ロジェクトから障害就労支援を中心としたプロジェクトに移行したといえる。非常勤職員として採用された 2
名は,当初は若干の混乱があったものの,仕事としての日々の取り組みに慣れるにしたがって飛躍的に成
長した。
(2) 今後の課題と活動予定
活用する学生が大幅に増加することで交流ルームは活気に満ちた場へと成長してきた。その一方で,障害者就
労と実習という文脈では,若干計画性が薄れた。研究科の特色ある場であり実践であるという特色がさらに生かす
ことができるよう努力することが求められる。
展示活動等,交流ルームの特性を生かした試みが,特に学生主体で推進できる体制が構築されると更によいと
思う。
(交流ルーム運営委員会委員 津田英二)
2.8. 教員研修
2.8.1. FD
研究科教授会開催に合わせてFDを実施する慣行が定着し,本年度も教員は無理なく参加できた。平成 23 年
度のFDテーマである「教育・研究における海外展開力の進展」を本年度も引き継ぎつつ,さらに外部評価の実施
に関わる内容を加えた。また,昨年度には実施できなかったハラスメント関係のFDも実施した。
以下に,平成 24 年度に実施したFDテーマと若干の説明を述べる。
・4 月:平成 24 年度神戸大学年度計画について,浅野自己評価委員会副委員長が報告した。
・5 月:岩佐卓也准教授が若手教員長期海外派遣にてドイツに赴き,研究した内容を報告した。岩佐准教授は
ドイツでの賃金制度の今日的課題について,日本の現状と比較しつつ解説し,併せて長期の海外派
遣の意義を述べた。
・7 月:平成 24 年 10 月に実施予定の外部評価を円滑に行うため,浅野自己評価委員会副委員長が「人間発
達環境学研究科教員による授業評価調査の結果」について報告した。同調査は教員各自が日常の授
業で行っている「自分流の授業評価」を集約することを目的としたもので,平成 23 年度に実施された。
その結果,多くの教員がミニッツペーパーや授業後の感想を書かせる等々の,自分なりの授業評価を
行っていることが分かった。Web アンケートが不調であっても,このような手作りの評価活動を取り上げ
たい旨が報告された。
・8 月:神戸大学情報データベース(KUID)の入力に関する説明が,企画評価室の浅野茂准教授によって行
われた。
・9 月:山下晃一准教授が,大学講義をめぐる私の悩みと模索について報告した。
- 26 -
・12 月:小高外部評価実行委員会委員長が,10 月 25 日に実施した外部評価について報告した。この報告は
11 月教授会にて行う予定であったが,教授会議事が長引いたため 12 月教授会の開催前の時間に実
施した。外部評価委員会で行ったプレゼンテーションを再現する形で報告され,外部評価委員のコメ
ント等々も紹介された。外部評価委員会には研究科の教員全員が参加したわけではないため,教員
各自の共通認識を得る効果があった。
・2 月:「キャンパス・ハラスメント~現状と対策~」と題して,関西学院大学総合政策学部専任講師の吉野太
郎氏が講演を行った。ハラスメント防止に関わるFDであったため,多くの教職員が参加した。講演の
内容は現実に起こったハラスメントの事例を基に日常的に注意すべきこと等が述べられ,参加者の関
心を高めた。
・3 月:神戸大学の男女共同参画推進の取組みについて,男女共同参画推進室副室長である岡田順子准教
授(海事科学部)が解説した。本研究科では,平成 24 年度に「女性教員養成システム改革加速」事業
により採用人事を行ったため,教授会メンバーは今後に繋がる内容として受け止めることができた。
平成 24 年度には,大学改革実行プログラム,外部評価など対応,審議すべき事項が目白押しにあり,さらに次
期の研究科長,副研究科長,専攻長,学科長の選挙も重なり,FDに割くことができる時間が制約された。そのた
めFDは年間 8 回しか実行できなかった。平成 24 年度の特殊事情として,受け止めたい。
(人間発達環境学研究科長 朴木佳緒留)
2.8.2. 初任者研修
毎年,情報メディア委員会では,着任された教員に対して ICT に関連する研修会を行っており,2012 年度は 4
月と 11 月の 2 回,開催した。神戸大学における情報セキュリティポリシーと個人情報保護に関する説明をはじめ,
部局が独自に提供する ICT 関係のサービス (IP アドレス管理システム,無線 LAN,学生へのメール配信システム,
技術サポートなど) ,神戸大学が提供する ICT 関係のサービス (KUID,教務情報システム,会計業務システム,
WeblyGo など),その他,学外 ASP サービス利用の注意点などについて説明を行った。
(情報メディア委員会副委員長 宮田任寿)
- 27 -
3. 入試
3.1. 一般選抜入試
3.1.1. 入学試験委員会
本学部・研究科の入学試験全体を所管する入学試験委員会は,研究科長,副研究科長,専攻長,学生委員会
委員長の計 9 名で構成し,平成 24 年度の委員長を副研究科長の岡田章宏が務めた。
今年度の審議概要(日程と議題)は以下のとおり。
・第 1 回(5 月 9 日)
1. 平成 25 年度神戸大学入学者選抜要項(案)について
2. 平成 25 年度国費外国人留学生(外国政府派遣留学生を含む。)及び私費外国人留学生学部入学者の
選考方法等について
3. 平成 25 年度第 3 年次編入学試験の実施について
・第 2 回(6 月 13 日)
1. 平成 25 年度大学院募集要項について
・持ち回り審議(7 月 10 日~17 日)
1. 平成 25 年度博士課程前期課程学生募集要項(人間発達専攻)について
・第 3 回(8 月 29 日)
1. 平成 25 年度博士課程後期課程人間環境学専攻(第Ⅰ期)入学試験・進学者選考試験合格者の判定に
ついて
2. その他:平成 27 年度入試における大学入試センター試験の教科・科目について
・臨時(9 月 10 日)
1. 平成 27 年度入試における大学入試センター試験の科目について
・第 4 回(10 月 4 日)
1. 平成 25 年度博士課程前期課程(人間環境学専攻)入学試験合格者の判定について
2. 平成 25 年度博士課程後期課程(人間発達専攻)募集要項について
・第 5 回(11 月 12 日)
1. 平成 25 年度博士課程前期課程(人間発達専攻)入学試験合格者の判定について
2. 平成 25 年度大学院・学部(第 3 年次編入学試験,社会人特別試験及び私費外国人留学生特別試験)の
入試情報開示基準について
・第 6 回(12 月 5 日)
1. 平成 26 年度入学者に係る入学試験日程について
2. 平成 28 年度入試における大学入試センター試験及び個別学力検査等の教科・科目について
・第 7 回(1 月 17 日)
1. 平成 25 年度博士課程前期課程教育・学習専攻 1 年履修コース入学試験合格者の判定について
2. 平成 25 年度博士課程前期課程(第 2 次学生募集)入学試験合格者の判定について
3. 平成 25 年度発達科学部入学者選抜に係る原則について
4. 平成 26 年度入学者に係る入学試験日程について
5. 第 3 年次編入学試験について
- 28 -
・第 8 回(3 月 5 日)
1. 平成 24 年度博士課程後期課程入学試験・進学者選考試験合格者の判定について
2. 平成 26 年度入学者に係る入学試験日程について
3. 第 3 年次編入学試験について
4. その他
3.1.2. 一般選抜入試に係る総括と課題
今年度の発達科学部及び人間発達環境学研究科の一般選抜入試に関する業務は,学生委員会をはじめ関係
各位の尽力により大過なく遂行された。入試のあり方については,入学試験委員会を中心に,入学状況等の分析
を踏まえアドミッション・ポリシーとの妥当性を適宜検討してきたが,次の 3 点については,次年度以降も引き続き
特に注視すべき課題として記しておく。
1.平成 25 年度発達科学部入学試験(社会人特別入試,AO 入試を含む)の結果は,入学定員 280 名に対し,
志願者数 1132 名(志願倍率 4.04 倍),受験者数 888 名,合格者数 297 名,入学者数 289 名であり,定員充
足率は 1.04 倍となった(いずれも学部全体の数字。学科別の詳細は『資料編』を参照)。適正な範囲といえる
が,定員超過・定員割れについては厳格な取扱いが指摘されており,今後も注意する必要がある。
2.第 3 年次編入学試験に関し,前年度末,複数の実施コースより本制度運用に関する要望が寄せられた。そ
の時点で本制度のあり方を審議する手続きが明確でなかったため,今年度より入学試験委員会がこれを検
討事項に加えることとした(4 月 20 日発達科学部教授会)。今年度の実施については,拙速な対応を避けた
め従来どおりの運用とし(第 1 回入学試験委員会),試験実施後に担当者会議を開きあらためて意見を聴取
した(2 月 15 日)。第 8 回入学試験委員会では,志願者が見込まれる状況下で制度の存廃を審議すべきでは
ないとの姿勢を確認した上で,得られた意見をふまえ,今後の課題として,より効率的な運用を図る視点から
実施方法の刷新(例えば,学科実施,英語試験の外部化等)を継続的に検討していくこととした。
3.大学院の入試については,研究科改組に伴い,平成 25 年 4 月設置の人間発達専攻の学生募集が今年度よ
り開始された。その実施に関しては,制度の移行を円滑に進めるために事前の検討を入念に行ったこともあり,
博士課程前期課程,博士課程後期課程ともに混乱なく進められた。
平成 25 年度人間発達環境学研究科博士課程前期課程の入学試験結果は,人間発達専攻で,入学定員 52
名に対し,志願者数 130 名(志願倍率 2.5 倍),受験者数 127 名,合格者数 53 名,入学者数 52 名であり,定員充
足率は 1.00 倍となった。また人間環境学専攻で,入学定員 40 名に対し,志願者数 44 名(志願倍率 1.1 倍),受
験者数 43 名,合格者数 37 名,入学者数 35 名で,定員充足率は 0.88 倍であった(第一次募集と第二次募集の
合計)。外数(定員 4 名)としている人間発達専攻(一年履修コース)の入学者数 5 名を加え,研究科全体として捉
えれば,定員 96 名に対し入学者数 92 名,定員充足率は 0.96 倍となっており,入学状況は概ね適性といえるが,
人間環境学専攻については,今回の結果を踏まえ,より厳格な定員管理が求められる。
また博士課程後期課程については,人間発達専攻が,入学定員 11 名に対し,志願者数 20 名(志願倍率 1.8
倍),受験者数 20 名,合格者数 12 名,入学者数 12 名であり,定員充足率は 1.09 倍となった。また人間環境学専
攻では,定員 6 名に対し,志願者数 8 名(志願倍率 1.33 倍),受験者数 7 名,合格者数 7 名,入学者数 7 名であ
り,定員充足率は 1.17 倍となった(第Ⅰ期と第Ⅱ期の合計)。研究科全体としては,定員 17 名に対し入学者数 19
名,定員充足率 1.11 倍となっており,許容可能な範囲とはいえ,やや高めの数字といえる。ここでもまた,より厳格
な定員管理が求められよう。
- 29 -
いずれについても,詳細な数字は『資料編』に掲載する。
(入学試験委員会委員長 岡田章宏)
3.2. 特色ある入試
3.2.1. 社会人特別入試
平成 25 年度社会人特別入試は,例年どおり 4 学科で行った。選抜方法もこれまでと変更なく,人間形成学科が,
英語,小論文,面接(口頭試問),それ以外の 3 学科は英語と面接(口頭試問)による選抜を行った。募集人員は
14 名(人間形成学科 5 名,人間行動学科 2 名,人間表現学科 2 名,人間環境学科 5 名)であった。出願期間は
平成 24 年 8 月 24 日から 8 月 30 日,試験実施は平成 24 年 10 月 6 日,合格発表は 10 月 23 日であった。
結果は,志願者数 8 名(志願倍率 0.57 倍),受験者数 8 名,合格者 0 名であった。この欠員分 14 名は,神戸大
学入学者選抜試験前期日程において補充した。
3.2.2. 3 年次編入学試験
平成 25 年度 3 年次編入学試験は,昨年度と同様に 4 学科 11 コースと発達支援論コースの 12 コースで実施し
た。募集人員は 10 名で,選抜方法はこれまでと変更なく,いずれのコースも,英語,専門科目,口頭試問であった。
出願期間は平成 24 年 8 月 24 日から 8 月 30 日,試験実施は平成 24 年 10 月 6 日,合格発表は平成 24 年 10
月 23 日であった。
結果は次のとおり。志願者数 80 名(志願倍率 8.0 倍),受験者数 65 名,合格者は 10 名,入学者 10 名(人間形
成学科 4 名,人間行動学科 0 名,人間表現学科 3 名,人間環境学科 2 名,発達支援論コース 1 名)であった。
なお,今年度もアドミッション・ポリシーとの適合性,制度のより安定的な運用を確保するため,合格判定の原則
を決定する手続きを確認した。
本入試に対する社会的ニーズは総じて高いと言えるが,コースによって志願者数のばらつきが見られ,そのあり
方について昨年度に引き続き検討し,さらに次年度にも継続していくこととなった。
3.2.3. アドミッション・オフィス入学試験
平成 25 年度 AO 入試は,例年どおり,人間行動学科及び人間環境学科で実施された。今年度は選抜方法に変
更を加えた。人間行動学科で,小論文受験(募集人員 8 人)を廃止し,身体運動受験(募集人員 12 人)のみとした。
人間環境学科で,第 1 次選考及び第二次選考の成績の総合判定としてきた第 2 次選考合格者を,第 2 次選考の
成績のみによる判定とした。
結果は次のとおり。人間行動学科について,募集人員は 12 名に対し,志願者数は 65 名(志願倍率 5.42 倍),
第 1 次選考合格者数 24 名,第 2 次選考合格者(最終合格者)数 12 名,入学者数 12 名,また人間環境学科につ
いては,募集人員は 5 名に対し,志願者数は 14 名(志願倍率 2.8 倍),第 1 次選考合格者数 8 名,第 2 次選考
合格者数 5 名,最終合格者数 4 名,入学者数 4 名,であった。
(入学試験委員会委員長,AO入試実施委員委員長 岡田章宏)
(社会人入試専門委員会委員長,編入学試験専門委員会委員長 河辺章子)
- 30 -
4. 教育
4.1. 教育課程
4.1.1. 今年度の特長
平成 24 年度に開始した新たな取組等,特記すべき事項は以下のとおりである。
(1) 英語外部試験の実施
学部学生が自身の英語学習の進展を客観的に把握し,以降の学習に役立てることを目的として,神戸大学全
学で英語外部試験の受験機会を設ける制度を開始した。発達科学部においては,以下のように実施した。
1) 試験の種類としては,(i) 英語圏の高等教育機関での学修を想定した TOEFL に対して,TOEIC がより
一般的な英語能力評価を目的としていること,(ii) 部局での費用負担が不要であることなどを考慮して,
TOEIC-IP を利用することとした。なお,2 年後にその妥当性を検証し,必要に応じて見直すこととした。
2) 対象学年としては,原則 1 年次生及び 3 年次生とし,初年度にあたる平成 24 年度は,在学生全員に受
験機会を与える趣旨から,特別措置として 4 年次生も対象に含めた。
実施時期は,1 年次生対象の試験が 11 月,3,4 年次生対象の試験が 8 月,これらを受験できなかった学生を
対象とした予備試験が 12 月に実施された。予備試験を含めて,1 年次生については,受験対象人数 280 名に対
して 144 名が受験(申込み者数は 176 名),3,4 年次生については,対象人数 560 名に対して 104 名が受験した
(申込み者数は 167 名)。
今後に向けては,受験率の向上が課題であり,今年度の反省を踏まえて,平成 25 年度には 3,4 年次生を対象
とした試験は,前期授業期間中に実施する方針を決定した。また,上記のように,申込者の中で試験欠席者が多
いことから,次年度以降,正当な理由なく欠席することのないよう学生に注意を促すなどの対応を行うこととした。
(2) グローバル人材育成推進事業の開始
発達科学部を含む神戸大学の人文・人間科学系及び社会科学系学術系全学部を取組学部とする「グローバ
ル人材育成推進事業」(文部科学省)が採択となり,取組を開始した。同事業に係る「グローバル専門科目」(英語
により授業が行われる)として,発達科学部では平成 25 年度より授業科目「異文化理解」を開設することとなった。
グローバル人材育成推進事業に関する詳細は別項に記す。
(3) カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施の方針)
平成 23 年度に策定した学部・研究科のカリキュラム・ポリシーについて,英語版を作成した。また,全学的にカリ
キュラム・ポリシーの記載形式を統一する趣旨の要請に対応し,本学部・研究科においても軽微な修正を行った。
(4) 大学院 ESD サブコースの開設について
学部教育における ESD サブコースの実績を踏まえ,これを大学院に展開する形で,平成 25 年度より人間発達
環境学研究科に ESD サブコースを開設することを決定した。
(5) シラバスへの準備学習・復習に関する情報の記載について
神戸大学全学の方針に従って,平成 25 年度より,学生の授業時間外の学習に関する指針を明示するために,
学部及び研究科の各授業のシラバスに準備学習及び復習に関する情報を記載することとした。
この他,各授業に関係する領域で優れた研究・実践の実績を有する講師を招き授業時間に講義を担当いただ
くゲストスピーカー制度の運用を例年どおり行った。前期 37 件,後期 42 件,計 79 件を実施した。実施報告書の点
検を通じて,受講学生,招聘した講師(ゲスト),担当教員のいずれからも良好な評価が得られており,高い教育効
果を生んでいることを確認した。
- 31 -
(教務委員会委員長 伊藤真之)
4.1.2. 学部,研究科共通科目
(1)
発達科学への招待
1) 授業計画と実際
本学部学生の初年次導入教育として 2005 年度よりスタートした講義「発達科学への招待」(学部共通必修科
目)は,7 年目を迎えた。昨年度よりメンバーと授業内容を一新した。表1に示すように,A「発達科学研究の実践
性」,B「発達科学研究の手法」,C「発達科学研究の学際性」の 3 つのモジュールで構成した。今年度は教員の各
モジュールへの担当を,講義内容に合わせて一部入れ替えた。従来どおり,1 学年 280 名並びに再履修生を学籍
の末尾番号により奇数組と偶数組の 2 組に分け,各モジュール内で同じ授業をローテーションした。ガイダンスや
総合討論の際には,大講義室に履修生全員が会した。
今年度実施した改善点は以下の 3 点である。①講義内容に合わせて編集した「発達科学への招待 資料集」を
活用した授業を行った。②モジュール A 終了後の討論会をシンポジウム形式で全員(2 組合同)で行った。③履修
生へのアナウンスにネット上の本学教務システム「うりぼーネットの掲示板」を大いに活用した。
表1.2011 年度「発達科学への招待」(前期金曜日1限)授業内容
4/13
ガイダンス(運営委員会)
講演「発達科学部で学ぶとは?―繋ぐ力・繋げる力―」(澤宗則)(B202)
奇数クラス(F256)
偶数クラス(F264)
<モジュールA 実践性>
4/20
フィールドワークへの招待(丑丸敦史)
生きるための知識や技能を育てる教育実践
科学的リテラシーを育成する実践と成果評価
(坂本美紀)
4/27
生きるための知識や技能を育てる教育実践
フィールドワークへの招待(丑丸敦史)
科学的リテラシーを育成する実践と成果評価
(坂本美紀)
5/11
ESD の課題と展望
スクールカウンセリングの理論と実際
(松岡広路)
(吉田圭吾)
5/18
スクールカウンセリングの理論と実際
ESD の課題と展望
(松岡広路)
(吉田圭吾)
5/25
合同討論 (松岡・丑丸・坂本・吉田)(B202)
<モジュール B 手法>
実験・調査結果に客観性を(阪本雄二)
6/ 1
ナラティブ・アプローチ (目黒 強)
6/ 8
スポーツにおける動作(技術)の研究方法 今 ナラティブ・アプローチ (目黒 強)
岡からオムツまで (前田正登)
6/15
実験・調査結果に客観性を(阪本雄二)
スポーツにおける動作(技術)の研究方法 今
岡からオムツまで (前田正登)
- 32 -
<モジュール C 学際性>
6/22
感と雑を育てる
(田中洋一)
学際性とメディア論 環境問題を素材に
して
(江口 至洋)*
(田畑暁生)
6/29
学際性について
ファッション研究への招待(平芳裕子)
7/ 6
ファッション研究への招待(平芳裕子)
感と雑を育てる
(田中洋一)
7/13
学際性とメディア論 環境問題を素材にして
学際性について
(江口 至洋)*
(田畑暁生)
シンポジウム準備(白杉)
7/20
7/27
シンポジウム準備(白杉)
シンポジウム(運営委員会&授業担当者)(B202)
*
ゲストティーチャー: 理化学研究所 HPCI 計算生命科学推進プログラム副プログラムディレクター江口至洋さん
に「学際性について スーパーコンピュータ『京』が仲介する生物学と物理学,化学,数学の融合を例に」の題目
で講義して頂いた。卒業生で同研究所勤務の鎌田知佐さんにも「マイキャリアパス」についてお話し頂いた。
②のシンポジウム形式の討論会は,モジュール A の 4 教員がパネリストとなり,教員主導で,実践研究の意義や
研究上の苦労や工夫などを話し合った。最終回の学生主体のシンポジウムのイメージ作りに寄与した。③につい
ては,授業に対する質疑の回答や補足説明,レポート課題,シンポジウムの準備などのアナウンスに活用した。
学生の授業マナーの低下を新入生のうちから防ぐ意味も込めて,遅刻や途中退席等を厳しくチェックした。また,
私語に対し昨年度より厳しい対応で臨んだ。
例年通り,本授業の最終回に「発達科学への招待」全体のまとめと振り返りにあたる「シンポジウム」を学生主体
で開催した。1 週間前の「シンポジウム準備」の授業で,学生は 5~6 名のグループに分かれ,授業の振り返りと感
想の交流をした。その後,シンポジウムで取り上げたいテーマを相談・提案した。シンポジスト,司会者,書記の希
望者を募り,希望する学生が定員を上回ったものについては,抽選により人数を絞った。
今年度選ばれたメインテーマは「学際性とは」であった。本テーマを通して「発達科学とは何か?」を議論するこ
とを最終目的とした。パネリストのテーマは,環境学科の学生による「学際性と専門性の折り合い―現代の課題に
挑む」と「身近な事象から考える学際性」,形成学科学生の「発達科学部の提示する学際性とは」と「専門性・学際
性と教職 ―「教える」のに必要な学際性とは?―」の 4 題であった。活発な意見交換が行われた。
2) 授業評価と今後の改善点
a)学生の授業評価
学生の授業評価の集計結果(回答率 23%)を表 2 に示した。
表 2.学生評価(web アンケート 2012 より抜粋)
① 授業はよく理解できたか?
回 答
② 担当教員の熱意が感じられたか?
人 数
回 答
人 数
そう思う
10
そう思う
34
どちらかといえばそう思う
29
どちらかといえばそう思う
28
どちらともいえない
21
どちらともいえない
6
どちらかといえばそう思わない
9
どちらかといえばそう思わない
5
そう思わない
5
そう思わない
1
- 33 -
③ 関連分野への興味・関心が増したか?
回 答
④ 総合的判断(5 段階評価)
人 数
回 答
人 数
そう思う
20
有益であった
23
どちらかといえばそう思う
24
どちらかといえば有益であった
25
どちらともいえない
18
どちらともいえない
14
どちらかといえばそう思わない
7
どちらかといえば有益ではなかった
9
そう思わない
5
有益ではなかった
3
⑤ 良いと思われる事項
回 答
質問や相談の機会
学生の理解度への配慮
⑥ 改善が必要と思われる事項 (1)
人 数
23
2
回 答
人 数
担当教員の学生に対する接し方
10
担当教員の話し方
19
他の開講科目との関連性
13
板書・OHP,教材,指導書・ビデオ等
12
特色ある授業の工夫
37
授業の進み方
18
教員間の連携
16
授業の計画性
12
特になし
35
その他
特になし
0
20
⑦ 改善が必要と思われる事項 (2)
回 答
人 数
質問や相談の機会
11
学生の理解度への配慮
22
他の開講科目との関連性
教員間の連携
その他
特になし
7
21
3
46
今年度も昨年度と同様に回答率が 1/5 と低かった。回答結果は,例年通り,学生により多様な受け止め方
をしていることを示していた。表 2 ④の総合的判断において,「有益であった」,あるいは「どちらかといえば有
益であった」と回答した者が 65%で過半数を占めていたものの,昨年度の 77%を下回っていた。「有益では
なかった」,「どちらかといえば有益ではなかった」と答えた回答者は 16%(前年度 11%)であった。自由記述
では,「このままでよいと思います。」という内容の回答が複数見られたが,一方で以下の 3 つの意見が要求と
して上がっていた。①「専門的すぎてついていけない。」「様々な分野に興味関心を広げることを目標にした
講義なのだから,もっと専門知識を持たない学生に対する配慮をした内容にしてほしかった。」「文系の学生
には難しい内容があった。」②「(毎回の講義内容を)選択性にしたらよいのにと思ったことがある。」「選択でき
るようにしてほしい。」③「学際性だけでなく専門性の重要さについても扱う機会を増やしてください。」というも
のであった。①については,「研究」内容の紹介を軸にしているので,要求にあるように,専門知識のない学
生にとっては難しい内容もあったと考えられる。この点を補うためには,講義中の話し方の工夫と共に,今年
度作成した資料集にさらに理解が容易になるような説明が必要である。また,統計学などの必要性をもっと伝
- 34 -
える必要がある。②の要望に対しては本講義の趣旨をもっと理解してもらえるような工夫が必要である。③に
ついては,今年度の資料集に「専門性を深めるには」の項目を設け,各授業担当者の分野における専門性
の深め方を記載した。しかし,今後ももっと丁寧に対応していく必要がある。
今年度初めて,全員によるシンポジウム形式の討論会を 2 度行ったが,モジュール A の最後に行った教
員主導のシンポジウムを手本に最終回の学生主体のシンポジウムが行われた。今年度は特に,活発な意見
交換が行われ,シンポジウム直後の感想文では「刺激を受けた。」という感想が多く見られた。
なお,教室などの設備に対して,昨年度までと同様,受講者数に対する教室の狭さを訴える意見があった
が,面積については現状で我慢してもらうほかはない。しかし,空調の冷房の効きの悪さや視聴覚機器の改
善で対応する余地がある。
b) 教員によるピアレビュー
本授業は,委員会や授業担当の教員による参観を毎回行っている。今年度のピアレビューは委員の青木
茂樹教授と授業担当の田中洋一教授によった。
c) テキスト「発達科学への招待 講義ノート」(次年度 4 月発刊予定)の編集
今年度,授業に活用した「発達科学への招待 資料集」の内容を基に,各担当教員がテキストとして書き改
め更新した標記冊子を,かもがわ出版の編集協力を得て,自費出版することになった。本冊子は,予習用テ
キスト,授業を円滑に進めるための資料集・教科書兼書き込み式のノートブック,授業だけでは伝えきれない
内容を補う参考書という 3 つの役割を担っている。次年度は,本テキストを活用した授業により,授業の質の
向上を図る考えである。
(「発達科学への招待」運営委員会委員長 白杉 直子)
(2) ヒューマンコミュニティ創成研究
本年度も,教員と学生の双方向性を重視した授業とすることを心がけ,3 回のワークショップを組み込
んだ。授業の内容は昨年度とほぼ同様としたが,本年度には二つの新たなテーマを組み入れた。一つは,
榎本教授による「エノモト藻」についての講義であり,二つには,浅野教授と指導生による学際研究をめ
ぐる研究意義の検討,である。本年度,新たに入れたこの二つは好評であった。授業後アンケートによる
学生の意見を本文末に掲げる。
実際の授業スケジュールは以下である。
( 1 )4/11 ガイダンス(コーディネーター全員)
( 2 )4/18 「ESD の課題と展望」(松岡)
( 3 )4/25 交流ワークショップⅠ(大学院に期待すること)
(津田・朴木)
( 4 )5/ 9 「市民と科学:サイエンスショップの取り組み」
(伊藤・田中)
( 5 )5/16 「音楽は何のためにあるのか?」(若尾・吉田)
( 6 )5/23 「生物多様性とサステナビリティ」(高見)
( 7 )5/30
「現場の中で理論をどう立ち上げるか」(森岡)
( 8 )6/ 6
「ダンスは何のためにあるか?」(関)
( 9 )6/13
「持続可能な科学とベンチャー起業」(榎本)
(10)6/20
「疫学調査と人間的なるもの」(中村)
(11)6/27
「過去の声を聴く-歴史研究のおもしろさ-」(白水・平野)
- 35 -
(12)7/ 4
「ヒューマン・コミュニティ創成と学際的研究」
(浅野・M2 学生)
(13)7/11
交流ワークショップⅡ(院生ディスカッション:HC 創成の意味は?)(津田・関)
(14)7/18
交流ワークショップⅢ
(15)7/25
まとめ
(津田・朴木)
受講生の感想
「持続可能な科学とベンチャー起業」について
「(前略)何より心を打たれたのは先生の考え方,理念『人のために何ができるか』『お金とかで
はなく,安定してしまうのではなく常に志を持って社会にどう還元し,貢献していくか』,先生
のこのお心がきっとこの素晴らしい研究に巡りあわせ,道をひらかれたのだなあと思いました。」
(HM)
「“持続可能な”というところで,文系・理系という異なる領域であっても,人類が幸せに生きて
ゆくために皆で考えることができることが大切だとあらためて思いました。言葉で表現すること
はできませんが,なにか力がわいてくるような非常に感動した,すばらしい講義でした。」
(AY)
「ヒューマン・コミュニティ創成と学際的研究」について
「基本的には先生のおっしゃることはよく分かり納得しますが,最終的に研究者はどうあるべき
か,実践者はどうあるべきかと考えると,先生のお話も自分の考えもくつがえされるような思い
となった」(OA)
「私の研究はまさに先生が批判されているアクションリサーチだと思います。しかし,そんな(批
判的な)考え方があるとは衝撃でした。」(HM)
本授業は,毎回,コーディネーターが出席し,複数の教員が授業参観しているが,本年度は自己評価委
員会によりピアレビューの対象授業として指定されたため,
うち,2 回分の授業をピアレビュー報告した。
また,コーディネーターは,関講師,津田准教授,朴木が務めた。
(「ヒューマンコミュニティ創成研究」世話人 朴木佳緒留)
4.1.3. 教職教育
平成 23 年度より,中学校教諭,高等学教諭免許状の実務事務は神戸大学学務部教育推進課教育推進グル
ープに移管され,幼稚園教諭,小学校教諭免許状の実務事務を従来通り発達科学部において行う体制で進めら
れている。平成 24 年度の教育実習履修者数を下表に示す。
表 教育実習履修者(単位認定者)数
学校別
履修者(単位認定者)数
幼稚園
12 名(12 名)
小学校
33 名(33 名)
中学校
59 名(59 名)
高等学校
29 名(29 名)
教職教育に関わる本年度の特記事項は以下のとおりである。
(1) 教育職員免許法施行規則の改正に伴い,免許取得に必要な科目として新たに導入された「教職実践演
- 36 -
習」(4 年次生対象)が平成 25 年度後期より開講されることから,平成 24 年度にはその準備が進められた。科目の
内容に係る専門性に鑑みて人間形成学科にワーキング・グループを設置し,中・高等学校及び幼稚園,小学校に
共通する科目であることから,全学教務委員会の教職課程専門委員会とも連絡をとりながら検討が行われた。授
業の詳細の検討は平成 25 年にかけて継続し,全学の教職課程専門委員会内にワーキング・グループを立ち上げ
て進めることとなった。
(2) 平成 25 年 3 月には,教育実習生を受入・指導いただいた附属学校園教員と反省会の機会を持った。附属
学校園において指導を担当した教員からは,5 段階(秀・優・良・可・不可)の成績評価への移行について,評価基
準を提示してほしい旨の希望があり,学部側から,現在大学として評価の基準の検討が進められており,平成 25
年度前半には決定する予定であり,決定次第教育実習校に伝える旨を回答した。
(教務委員会委員長 伊藤真之)
4.1.4. 資格取得
(1) 本年度の活動状況
1) 平成 24 年度博物館実習説明会と各実習の実施
3 年次生に対し,全体事前指導(7/20),見学実習(夏期),「あーち」における本実習(詳細は(2)(3)に記
載),館園実習前事前指導(1/25)を実施した。
4 年次生に対し,全体・館園事後指導(11/30)を実施した。
なお,平成 24 年度入学生からの博物館法施行規則の一部改正に伴い,博物館学芸員資格の取得に関
する授業を 4 学部(文学部・国際文化学部・理学部・発達科学部)合同で実施することとなり,発達科学部に
おいては本年度,「生涯学習論」「社会教育論」「博物館資料論」「教育学概論」「メディア論」が開講された。
同時に平成 23 年度までの事前(6 講義)・事後(1 講義)実習に関しては,事前実習の講義時間数短縮も含め
て,従来の非常勤講師担当ではなく専任教員の担当により実施した。
2) 「あーち」における博物館本実習の運営・マネジメント
博物館実習のうち,本実習については,平成 17 年度よりカリキュラム内容の改訂の一環として開始した「あ
ーち」での博物館実習を今年度も本委員会が企画した。学部内外の講師による協力の下,平成 24 年 9 月か
ら 25 年 3 月にわたり 2 回実施した。3 年次生 4 年次生あわせ 25 名が「あーち」における本実習に参加した。
実習内容は以下のとおりである
平成 24 年度「あーち」における本実習の実施概要
期
第1回
間
24. 9.25〜29,
履修人数
(名)
16 名
展 示 テ ー マ
「海 II」
(版画家・舞台美術家)をお招きし,社会福祉法人たんぽ
10.2〜4
ぽとの連携で実施)
第2回
24. 1.19~ 2.5
9名
「いのちを感じる,つながるいのち」
(一般社団法人「希望の牧場」,任意団体「神戸子どもと
教育ネットワーク」,能勢伸子先生(インスタレーション・ア
ーティスト)との連携で実施。)
- 37 -
3) 平成 24 年度博物館実習単位認定
4 年次生 7 名の単位を認定した。本実習に課せられた2週間のうち1週間は,24 年度の「あーち」におけ
る実習に全員が参加した。
4) 本実習に関わる予算
次年度の「あーち」における実習に関わる経費が必要であるため,予算委員会に本委員会経費として要
求を行った。
(2)今後の課題
1)「あーち」における本実習のマネジメント体制の再検討の必要性
「あーち」の博物館実習は,平成 17 年度より毎年 9 月から 3 月にかけて,自然科学系・芸術系・人文科
学系の各分野に関わる内容を,その都度異なるテーマで開催してきた。8 年目にあたる今年度は,いずれ
の実習も学内外の教員や講師の協力を得る事によって企画と実施が可能となった。今後も「あーち」にお
ける博物館実習を円滑に継続していくためには,実施協力者をさらに増やしていく必要がある。
一方で,実習の運営に関しては,これまでの課題として学生に対するマネジメントの必要性が挙げられ
ていた。例年,問題になるのは,2〜3 月の実習時期と学生の就職活動の時期(もしくは試験期間など)が
重複することである。実習生のほとんどが就職活動を行っている 3 年次生であり,最優先であるはずの実習
期間中に遅刻・欠席する学生も若干名見られた。また,平成 24 年度は前年度に比べて実習希望者が大
幅に増加(25 名)した。そのため,本年度は実習期間中に補助学生を雇用することにより,実習の円滑な
実施に努めた。今後も実習生の増減に柔軟に対応できる企画の立案と実施が課題であると考える。
2)学外の本実習受け入れ施設の開拓
学芸員としての経験を深め,視野を広げるために,本実習 2 週間のうち,1 週間を「あーち」で,もう 1 週
間を学外の博物館あるいはそれに準ずる施設で実施できることが望ましい。国立系博物館・美術館による
実習生受け入れ中止の影響を受け,学外実習先は減少傾向にあり,これまでにも実習先の開拓に努めて
きた。しかしながら本年度の実習生人数の大幅な増加により,学外における本実習受け入れ先のさらなる
開拓が必要であると考えられる。
(博物館学芸員資格専門委員会委員長 平芳裕子)
4.1.5. ESD サブコース
ESD(Education for Sustainable Development)をテーマとするこのコースは,2008 年度に 3 学部(発達・文・経
済)での取り組みから開講した。2011 年度に農学部が加わり,2012 年度からは国際文化学部と工学部の参画を得
て,6 学部での協働運営とし開講した。また(財)三菱 UFJ 環境財団からの支援を受け,寄附講座(冠講座)として
の開講ともなった。
(1)履修状況
2012 年度の履修者は下表のとおりである。ESD プラクティショナー認証者は,発達科学部・経済学部から 5 名
(累計 25 名)となった。
授業科目区分
教養科目
授業科目名
ESD基礎-持続可能な社会づくり)
- 38 -
受講学生数
(2012 年)
130
実践農学入門
49
総合科目Ⅰ(ESD論)
71
ESD演習Ⅰ(環境発達学)
5
ESD演習Ⅰ(環境人文学)
7
ESD演習Ⅰ(環境経済学)
23
フィールド
ESD演習Ⅰ(兵庫県農業環境論)
61
演習科目
ESD演習Ⅱ(環境発達学)
5
ESD演習Ⅱ(環境人文学)
0
ESD演習Ⅱ(環境経済学)
29
ESD演習Ⅱ(実践農学)
23
(2)授業の実施概要
ESD 基礎及び ESD 論では,三菱 UFJ 環境財団からの支援を受け,著名な講師を招聘した授業を組み込んだ。
また,ESD 論では豊島産廃事件の現場,ハンセン病療養所でのボランティア活動や篠山の営農組合等でのフィ
ールドワークを組み込み座学とフィールドワークとを連動させた授業を行うことができた。
ESD 演習Ⅰ(環境発達学)では,サテライト施設「あーち」の活動と六甲山を拠点に神戸市が運営する「こうべ森
の学校」の 2 つのフィールドから組織のスタッフやボランティアの活動のあり様を検討するグループと,賀川記念館
と連携し語り部活動グループへのヒアリングを通じて賀川豊彦を検討するグループに分かれて,授業を実施した。
ESD 演習Ⅱ(環境発達学)では,南あわじ市と連携し,少子高齢化や農家の後継ぎ問題など様々な課題を抱える
地方都市南あわじ市の持続可能性を検討する授業を実施した。
(3)学生の学び・評価
ESD 基礎・ESD 論ともに,毎回の授業終了時に授業受けての「気づき」と「感想・意見」を記入するシートを使っ
て学生の学びや評価を確認している。また,最終日には授業全体を振り返るワークショップを実施している。ESD
基礎の振返りシートの記述を整理した結果では,授業を「楽しい・面白い」との記述が履修生の 19.7%,「有意義・
学びを得た」では 42.6%であった。ESD 基礎の 1 年生女子は,「意識を変えるだけで,普段生活していて気づかな
いような些細な課題が見えてきた。そしてその課題に見方を変えるだけで,新たな解決策が見えてきた」,1 年生男
子は,「自分が今まで考えていた世界というものがとても狭いものであった」,ESD 論の 1 年生女子は「たくさんの価
値観にさわるということ」,といったアクション・リサーチでの学びと学生同士の対話を活用する授業形態に対する評
価が多かった。また,ESD 基礎の発達科学部 1 年生女子は,「前期の授業の中で最も自分の思慮を深めることが
できた授業であった。何か行動しよう,動こうとする気持ち・意志を持ち始めることができた。」,ESD 論の 1 年女子
は「考えるという機会を頂き,行動しようと思う私を発見しました。今年は被災地のため,誰かのため,そして自分の
ために自発的に動こうと思います。」といった「主体性」・「イニシアチブ」が芽生え始めてきていると考えている。
(ESD サブコース運営委員会委員 高尾千秋)
4.1.6. ティーチング・アシスタント等
優秀な大学院学生に対して,教育補助業務を行わせ,学部教育におけるきめ細かい指導の実現や,大学院学
生が将来教員・研究者になるためのトレーニングの機会を提供し,これに対する手当支給により大学院学生の処
- 39 -
遇の改善の一助とすることを目的として,ティーチング・アシスタント(以下,TA と略記する)制度を設け運用してい
る。
平成 23 年度以降,過去(平成 21 及び 22 年度)の任用実績を基に決定した予算額をコース単位に配分し,そ
の枠に従って任用を行っている。運用の在り方については,「人間発達環境学研究科ティーチング・アシスタント
実施要領」に定めており,本年度もこれに沿って運用した。雇用終了後,大学院学生が提出する「実施報告書」,
教員が提出する「雇用報告書」の点検を通じて,大学院学生及び学部学生双方に対して高い教育効果をあげて
いることが確認された。
年度後半に,全学教務委員会による TA の活用状況の点検が行われた。これを通じて,本研究科の運用が概
ね全学のガイドラインに沿って行われていることが確認された。ただし,全学のガイドラインに示される「不測の事態
への対応」について,本研究科の TA に対する心得などを記した配布文書に明示されていないことから,次年度以
降改善することとした。
(教務委員会委員長 伊藤真之)
4.1.7. グローバル人材育成推進事業
神戸大学はグローバル人材育成推進事業に採択され,その事業をとおして,国際社会の持続可能な発展を可
能にする「問題発見型リーダーシップ」を発揮できるグローバル人材の育成を目標としている。そのなか,発達科
学部では,国際的な視野で,開発・人権・貧困・平和・福祉・倫理・健康等に関わるグローバルな諸問題を発見し
たうえでグローバルな協力体制を先導する力量をもち,かつ日本社会に対するアイデンティティーを有する人材,
具体的には,グローバルな視点で課題をとらえ,種々の活動を介して協働的・主体的な学びを組織できる教育力
を有し,異文化を尊重するマインドを持つ教育者・ファシリテーター等の育成をめざしている。
本年度の大きな活動として,韓国,ノルウェー,フィリピンへの学生スタディツアー,学術 WEEKS での海外研究
者の招聘,学部共通科目「異文化理解」(グローバル専門科目)の新設,国際交流コーディネータの採用,交際交
流サポートルームの創設があげられる。
以下に 2012 年 12 月から 2013 年 3 月までの交際交流サポートルームの活動を列挙する。
2012 年 12 月 24 日(月)~27 日(木):「TOEFL-iBT 対策講座」
2013 年 2 月 18 日(月)~21 日(木):「TOEIC 対策講座」
2013 年 1 月~5 月:「ショートビジット派遣 奨学金斡旋」
2013 年 3 月 11 日(月):「第 1 回 English Talk CAFÉ - Fashion」
2013 年 3 月 18 日(月):「スカイプ英会話無料マンツーマンレッスン提供開始」
2013 年 3 月 21 日(木):「第 2 回 English Talk CAFÉ - Food 「手巻寿司 Tasting」
2013 年 3 月 26 日(火):キャリアセンター本部表敬訪問 「今後の学生海外インターンシップ可能性について」
討議
(人間行動専攻 岡田修一)
4.2. 各学科等の教育
4.2.1. 人間形成学科
(1)運営
人間形成学科は,心理発達論コース,子ども発達論コース,教育科学論コース,学校教育論コースにより構成
- 40 -
されている。日常的な運営は,主にコース単位で実施している。学科全体の予算,教育,入試等の議案やコース
間の役割分担等については,学科会議及び学科長とコース主任による学科運営会議において適宜連絡・協議し,
調整を図りながら運営してきた。
(2)予算
予算は大学院を単位として配分され,また,学科共通経費を計上もしていないため,学科として報告すべきこと
は特になかった。
(3)入試
一般入試,社会人入試,第 3 年次編入学試験ともに例年通り行われ,実施運営においてはとくに問題はなかっ
た。ただし,次年度以降の第 3 年次編入学試験の実施及び社会人入試における入試科目の再検討等の課題が
議論され,継続審議となった。
(4)教育
年度当初に人間形成学科の新入生ガイダンスを実施した。また,2 年次からの所属コースの振り分けについて
は,1 年生の必修科目である授業の際に必要な情報を適宜アナウンスすると同時に,その時点でのコース希望調
査を実施し,周知と準備を徹底した。コース振り分けは,2013 年 2 月 14 日に実施され,欠席者を除く全員の所属
が確定した。3 年生のゼミ分けでは,各指導教員が3回以上,既ゼミ生と共にゼミでの教育研究活動について面談
をする機会を設定し,学生の希望とのマッチングに配慮した。
教員の授業改善の試みとしては,「心理学入門」等において昨年度に引き続きピアレヴューを行った。また,「教
職論」「教育政策」「道徳教育論」「教育行政学」「理科教育方法論」「幼児人間関係指導法」等にゲストスピーカー
を招き,講義内容の充実を図った。
卒業研究については,コース単位で構想発表会ないしは中間発表会,最終試験としての最終発表会が実施さ
れた。教育科学論コースでは,例年通り,卒業研究において副査制度を導入し,卒業研究の質の保証に取り組ん
でいる。
教育的な課外活動としては,2012 年 12 月に学校教育論コースによる「学校教育シンポジウム」,2013 年 2 月1
日に子ども発達論コース2年生企画による講演「空間認識の発達について」とワークショップ「空間認識を育む活
動の実際」が開催された。その他,子ども発達論コースにおいて,元厚生労働省専門官,教育委員会指導主事,
市福祉課担当者と学生との交流機会等が企画・提供された。また,学生主導による幼稚園教諭,保育士採用試験
体験報告会や教育実習報告会,小学校教員養成対策講座等が教員の支援により適宜実施された。教職をめざ
す学生の勉強会(計 15 回)や,指導教員に同行しての幼稚園・保育所・小学校における園・校内研修への参加や
見学も実施された。神戸大学附属幼稚園における研究開発校指定研究の研究報告会や,神戸市の「神戸パイロ
ットスクール」実践研究会,西宮市研究開発校指定研究大会等にも指導教員と共に参加する機会が設けられた。
さらに,神戸大学附属幼稚園のインターンシップ制度に2名の学生が1年間参加した。その他,2012 年 9 月には,
学校教育論コースと教育科学論コースによりコース合宿(西はりま天文台)が開催された。
グローバル人材育成への対応としては,主として平成 24 年度グローバル人材育成推進事業等の支援を受けて,
学生がノルウェー4 名(オスロ大学,保育関連施設),米国 2 名(ユタ州立大学,カリフォルニア州学校関連機関),
カナダ 1 名(モントリオール大学),韓国 1 名(ナザレ大学)に渡航し,調査等を実施した。
(5)広報
オープンキャンパスにおいて,学科及び各コースの紹介に努めた。4 つのコースはそれぞれに工夫を凝らして,
模擬授業,ワークショップ,展示,在学生による説明・進学相談など多彩な取り組みを実施した。
- 41 -
(人間形成学科長 稲垣成哲)
4.2.2. 人間行動学科
(1)組織・運営
人間行動学科の教員は 19 名である。構成は,教授 11 名,准教授8名である。教育上の履修コースは,健康発
達論(教員 5 名),行動発達論(教員 5 名),身体行動論(教員 9 名)の 3 つのコースから成る。学科定員は 1 学年
50 名である。入試は,今年度から AO 入試小論文受験コースを廃止し,その定員 8 名分を一般選抜入試前期日
程に移したので,一般選抜入試(前期日程:36 名),社会人特別選抜入試(2 名),3 年次編入学入試(学部として
若干名),及び AO 入試身体運動受験(12 名)で選抜される。
学科の運営は,学科運営会議と学科会議により行われる。他に学科内の委員会として,AO 入試検討委員会,
新入生研修実施委員会,学科教務委員会がある。学科運営会議は学科長と各履修コース主任の計 4 名で構成さ
れる。学科会議は 19 名の学科構成員で構成される。学科運営会議は学科長が招集し,人事及び学科に係る諸
課題について審議する。学科会議は学科に係るすべての事項を審議し,学科としての意思決定をする。本年度は
4 回の学科会議が開催された。
(2)予算
予算は大学院の専攻単位で配分されるので,学科としての予算配分はない。学科の予算に関しては,大学院
人間行動専攻の予算の記載を参照願いたい。
(3)入試
本学科の学生は,一般選抜前期日程入試,社会人特別選抜入試,3 年次編入学入試及びアドミッションオフィ
ス(AO)入試により選抜される。一般選抜前期日程入試は大学入試センター試験(5 科目 7 教科)と神戸大学の個
別学力検査試験により,社会人特別選抜入試は外国語,面接・口述試験により,3 年次編入学入試(行動発達論
コースと身体行動論コースが実施)は外国語,専門科目,面接・口述試験により選抜される。
AO 入試は次の主旨により実施している。人間行動学科のキーワードは身体・行動(運動)・健康・発達であり,こ
れらキーワードと人間の発達について教育・研究している。これらキーワードに係わる能力は,いわゆる主要入試
科目の筆記試験だけでは十分評価できない。そこで本学科では AO 入試を実施し,人間の行動・運動・健康・スポ
ーツに興味・関心があり,且つリーダーシップと基本的な学力を有する学生を選抜することを心掛けている。AO 入
試では,第一次選考(書類審査,身体運動に関する能力の検査 1(実技と筆記)),第二次選考(身体運動に関す
る能力の検査 2(実技,個人・集団面接))及びセンター試験を課し,総合して判定している。今年度の倍率は 5.4
倍であった。
(4)教育
人間行動学科の教育・指導体制は次の如くである。1 年次は全学共通授業科目,学部共通科目及び学科共通
科目を受講し,発達科学部人間行動学科の学生としての基礎を学ぶ。2 年次は「健康発達論コース」,「行動発達
論コース」,「身体行動論コース」のいずれかの履修コースに所属し,学科共通専門及びコース専門科目を学ぶ。
3・4 年次は各履修コースの中の教官にゼミ配属され,興味・関心のあるテーマについて専門教育及び卒業研究を
進めることになる。
すなわち,1・2 年次においては,人間行動学科の教育研究内容を総合的に理解させる。2・3 年次生になると専
門とする履修コースの学問を深める。3・4 年次生になると専門科目に演習及び実験・実習科目が加わり,より専門
的な教育研究へと進む。そして 4 年次になると卒業研究を中心に勉学を深めていくカリキュラム体制である。各学
- 42 -
年における学生指導は,1 年次は学科長が,2 年次はコース主任が,3・4 年次はゼミ教員が中心となって指導にあ
たっている。近年は大学のグローバル化の推進と相まって,オーストラリアやデンマーク等の大学に語学研修や長
期留学する学生も増えている。
学生の教育研究活動が円滑かつ効果的に進むよう,下記のいくつかの行事を実施している。
1)新入生研修会
入学時の 4 月に 1 日かけて,新入生研修会を実施している。これは,新入生と教員の交流・親睦を図ると
ともに,新入生が本学科での大学生活を円滑に送り,より有意義なものにできることを目的として実施してい
る。研修会は,学科長の挨拶として4年間の学生生活の流れ・生活上の留意点・卒業後の進路が,続いて教
務事項の説明がなされ,新入生からの質問に回答し,学生が 4 年間しっかりとした目標をもって学生生活が
送れるよう指導している。ガイダンス終了後,バーベキューやゲーム・自然散策等を通してさらに相互の親睦
が深まるように工夫している。今年度は六甲山にて実施した。
入学時に実施した今年度の新入生が人間行動学科で学びたいことを,アンケート調査結果から示すと以
下の如くである。
心理学関係(14 名),スポーツ関係(10 名),スポーツバイオメカにクス(5 名),人間の本質・理解(5 名),
健康,医療,保健について(4 名),運動の効率(2 名),発達段階の身体・心理面(2 名),スポーツ技術論(2
名),スポーツジェロントロジー,スポーツ医科学,陸上関連,スポーツプロモーション,競技スポーツについ
て,トレーニング科学,運動生理学,武術,食について,ダイエット,タバコについて,笑顔と緊張の関係,体
育教師の資格,日常の反応,社会学,文化,環境のこと,未定(3 名)である。全体的に見ると,新入生の学
びたいことと人間行動学科の教育研究内容には大きなずれはないように思われる。
2)履修コース分け
2 年次からの履修コース分けは,1 年次の 12 月から 2 月にかけて行っている。この作業は学科長が行う。
各コースへの振り分け定員は,教員数を考慮して健康発達論コース及び行動発達論コースは 15 名,身体
行動論コースは 27 名である。振り分け方法は,学生の希望を出来だけ優先するように心掛けている。まず学
生に第一希望から第三希望までの希望調査を行う。その結果,第一希望がいずれのコースの定員内であれ
ば,全員第一希望の履修コースに割り振られる。もしいずれかのコースで定員以上の第一希望があった場
合は,一定期間を置き再度履修コース希望調査を行う。この希望調査を 3 回まで行うことにより,学生の判断
で履修コースの振り分けが行われるよう心掛けている。もし 3 回の希望調査で決まらなかった場合は,1 年次
の学科共通科目の成績を得点化し,得点順に定員まで振り分ける。このように十分時間をかけ,学生が納得
できる履修コースの振り分けに心掛けている。今年度は第 2 回目の希望調査で全員第一希望での履修コー
ス割り振りができた。次年度は履修コース希望調査前に,学生が自由に学科教員を訪ね,話を聞く事の出
来る機会を設定したい。
3)ゼミ配属
3 年次のゼミ配属の方法は,各履修コースによって若干異なるが,基本的には各ゼミの配属学生数の上
限を 3~4 名とし,学生同士で話し合ってゼミ配属を決定している。もし学生間でうまく振り分けられない場合
は教員が介入することにより,各教員に満遍なく振り分けられるように努めている。
4)卒業研究指導
卒業研究指導の流れも履修コースにより若干異なるが,基本的には 3 年次後期からゼミ指導教員のもと,
卒業研究テーマが決定される。そして 4 年次 9 月に卒業研究中間発表会にて進捗状況を口頭発表し,教員,
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院生・学生からの質問・アドバイスを受ける。そして 4 年次 12 月末に卒業論文を提出する。履修コースでは
各卒論の主査(指導教員)と副査を決め,審査に入る。年が明け 1 月に,主査・副査のもと,口頭試問が行わ
れる。そして,口頭試問で指摘された箇所を加筆・修正した後,2 月の卒業研究発表会でプレゼンテーショ
ンをする。それを受けて教員が最終合否判定をする。以上が卒業研究指導の流れである。
人間行動学科としては,プレゼンテーション能力の指導にも力を入れており,毎年立派な卒業研究がなさ
れていると評価している。学生にとっても卒業研究のプロセスは,ある課題に対して確かな見方・考え方を習
得できる学びとなっている。
5)卒業生の進路
平成 23 年度人間行動学科卒業生の進路は以下の如くである。
(株)ワコール(2 名),(株)NTT データ関西,(株)日鉄日立システムエンジニアリング,(株)サウンドクリ
エーター,(株)ヒューマン・ブレーン,(株)関西電力(2 名),(株)大和証券,(株)アイエックス・ナレッジ,
(株)ミズノ(2 名),(株)トヨタ自動車(2 名),(株)サントリーホールディングス,日本放送協会(2 名),(株)
ゴールドウィン,(株)ジェイテクト,(株)東レ,(株)コーベヤ,(株)南都銀行,(株)ビーワークス,(株)カネ
ボウ化粧品,(株)NTT ドコモ,(株)花王カスタマーマーケティング,(株)ニトリ,(株)東京海上日動火災
保険,(株)丸紅,(株)伊藤忠商事,(株)キッセイ薬品工業,(株)リクルートエージェント,明治製菓,ファ
ルマ,(株)電通,(株)京セラ,生駒市職員,長崎市役所職員,大阪府警察,教員,大学院人間発達環境
学研究科(5 名)である。例年多くは一般企業に就職していく。他に教員・公務員,そして大学院進学であ
る。
(5)研究
研究活動に関しては,人間行動専攻と心身発達専攻(健康関連分野)の研究に関する記載を参照願いたい。
(6)広報
人間行動学科の広報活動としては,大学のホームページと学部パンフレットが常時見ることができる広報である。
他にはオープンキャンパスと AO 入試のパンフレットを作成している。他に直接の広報活動ではないが,学生の課
外活動での活躍や教員の地域貢献・社会連携の活動も学科の広報に貢献しているものと思われる。
1)オープンキャンパス
8 月 9 日と 10 日の 2 日間,学部として高校生への大学説明会(オープンキャンパス)を実施した。オープ
ンキャンパスの内容は,学科の概要・特色の説明,各履修コースの概要・特色の説明,入試の説明,質疑応
答,そして各コースの活動内容の展示(測定機器。卒論,研究発表ポスター等)である。今年度は人間行動
学科の説明会場には約 270 名の参加者があった。参加者は,大阪・兵庫・京都等近畿圏の高校生が多いが,
都道府県としては東京から長崎までの参加者であった。参加者には学科独自のアンケート調査を行い,出
身高,学年,希望履修コース調査等を行い,オープンキャンパスでの Q&A 情報とともに,広報の資料として
いる。
2)AO 入試リーフレットの作成
AO 入試実施当初から,AO 入試リーフレットと学生募集要項を全国の高校等に郵送し,広報に努めてい
る。送付対象は首都圏以南から選出した高等学校 1000 校程度と予備校である。その成果か AO 入試受験
生は関東地区から九州と広い範囲にわたっている。
3)学生の活躍
人間行動学科は体育・スポーツ科学も教育・研究の大きな対象としている性格上,課外活動で活躍して
- 44 -
いる学生も多い。例えば人間行動学科の学生が中心となって活躍している課外活動女子タッチフットボール
部は今年度社会人・学生日本一決定戦(サクラボウル)に勝利し,2012 年度の日本一に輝いた。
(人間行動学科長 平川和文)
4.2.3. 人間表現学科
(1)運営
人間表現学科(学部)には,表現文化論コース・表現創造論コース・臨床感性表現論コースの 3 コースが置かれ
ている。学科の委員として,会計,教務,電子情報(兼ホームページ),広報を各 2 名ずつ,入試実技検査(音楽受
験・美術受験・身体表現受験)担当を各 1 名ずつ計 3 名,社会人入試委員 1 名,3 年次編入試委員1名を置き,
運営している。役割によっては,大学院人間表現専攻の用務を兼務している。
(2)予算
本学科では教員数に応じて配分された額はそのまま各教員研究費に配分し,残りの教育経費を専攻・学科共
通予算としている。本年度も教室整備関連の費用を共通予算から拠出した。主たる用途は複写費であった。今後,
音楽系の楽器メンテナンスの費用が増えることが予想され,どう手立てするか大きな課題である。
(3)入試
新学科としては 9 回目の実技検査となる。大きな受験生数の変化は見られない。後期日程を併願する受験生が
多い傾向は同じである。
1) 前期日程実技検査
【音楽受験】
志願者数は 31 名で,昨年よりやや減少した。合格者 12 名。
【美術受験】
入試科目の軽減など,高校生への配慮を検討した結果,4 時間の描写実技検査を実施している。志願者
数は 24 名,受験者数は 23 名(欠席 1 名)であった。合格者 9 名。
【身体表現受験】
募集人員 4 名に対し志願者は 15 名であり,志願者数は一定してきた。合格者 5 名。来年度以降も引き続
き受験生の動向に注意を払い,検査内容や試験場設備などの充実を図っていきたい。
【学科入試】
今年度で 2 年目,学科のみの入試を実施した。神戸大学の入試科目から 1 科目を選択し,センター試験
の点数との合算とした。(志願者 35 名,9 名合格)
2) 後期日程入試
募集人員 6 名に対し志願者 44 名で,受験者は 20 名であった。合格者 11 名。
3) 社会人特別選抜試験
このところ志願者が減じている。本年度の志願者・受験者は1名。合格者 0 名。
4) 第 3 年次編入学試験
試験科目は「人間表現に関する実技」或いは「論述」のいずれかの選択,及び面接の 2 科目が課され,最
終的にはこれらの成績を総合して合否が判定された。論述については,今年は各コースが独自に出題し
た。
表現学科全体の志願者数は 20 名,受験者数は 16 名で,合格者は 3 名であった。昨年度同様,受験者の出身
- 45 -
大学等が多様であった。
(4)教育
1)1年次生への指導体制
新年度開始時に全員参加のオリエンテーションを行った。内容は学科紹介や教員紹介も含めたコース
紹介及び履修等について。6 月には 2 年次生(人間表現学科 2 期生)を中心に新入生を囲む懇親会を発
達科学部食堂にて開催し,学科教員や 2 年次生以上の有志が参加し交流を図った。
2)コース分けについて
平成 24 年 1 月下旬に 1 年次生に対してコース分け説明会を開催し,希望調査を行なった。主に 1 年次
の共通基礎科目の成績を重視してコースへの所属を決定した。結果の内訳は,表現文化論コース 10 名,
表現創造論コース 18 名,臨床・感性表現論コース 12 名となった。コースの希望に偏りは少なかった。
3)3 年次必修授業「人間の発達と表現」としたピアレビューの実施
表現学科では,3 年次必修授業「人間の発達と表現」を卒業研究へのファーストステップと位置付け,論
文のための基礎知識の習得や学生それぞれの興味の在処や作品実践の発表なども奨励している。ゼミ
単位で発表させる形をとり,司会はゼミ教員が当たる。コースごとに実施しているが,コース全教員の出席
でいろいろな角度から意見やアドバイスをしている。また学生レポートは毎回行われ学生どうしの意見交
換も活発に行われている。なお教員によるピアレビューも行われている。本年度も,当該授業の重要性に
鑑み,2 コースでピアレビューを実施した。
表現文化論コース:教員相互のピアレビューを通して,検討すべき「授業の運営形式」「指導内容」「到達
目標」「今後の改善点」の 4 つの観点を抽出し,次年度へ向けて,議論を通じて共通認識を持つこと,
議論の場を定期的に持つこと等を再確認した。なお,授業の場に複数の教員が参加し,相互に(教
員同士,教員と学生,学生同士)指摘し合うという場は,学生からは卒業研究に向けての厳しくも大
変有意義な機会になったとの評価を得ている。
表現創造論コース:当コースにおいては,元来コースの全教員が当該授業に参加している。その趣旨は,
教員相互のピアレビューを通して,学生の卒業研究に向けての(各課題に即した)研究方法の検討
や資料調査の方法,プレゼンテーション方法などについて,領域の違いを超えた認識と実践知を共
有するところにある。学生にとっては,刺激的な議論の場に教員と同席することによって卒業研究に
繋がる問題意識や研究方法を客観的に省察するための格好の機会になっているようである。
4)卒業研究指導教員配属について
表現文化論コース:全てのゼミ配属を 5 月末までに終了し,夏休みまでにそれぞれの研究活動に入れるよ
うに配慮した。
表現創造論コース:2 年次生のゼミ配属を決定するために,平成 2 年 1 月末より 2 月半ばまで,学生が研
究室訪問を行った上で,ゼミ希望調査用紙をコース主任教員に提出し,第 1 希望を優先しつつ調整
を行い,2 月末に発表した。
臨床・感性表現論コース:コース在籍 2 年次生に対して,2 月下旬よりガイダンスや研究室訪問を行い,3
月初旬にゼミ配属を決定した。
5)卒業研究
卒業研究提出者は 2012 年 3 月期は 36 名(表現文化論コース 7 名,表現創造論コース 18 名,臨床・
感性論コース 11 名),9 月期は 3 名(表現文化論コース 1 名,表現創造論コース 2 名)であった。
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6)3 年次選択授業「表現創造演習」について
人間表現学科における授業「表現創造演習」は,選択科目であるが,表現学科ならではの特色ある授
業として学科発足当初から異彩を放っている。この授業では,空間や音のデザイン,体・声・道具による表
現など,それぞれの視点から芸術の一側面を切り取り,それらを総合的に組み合わせる基礎訓練の場とし
ている。表現創造演習 1(空間表現),表現創造演習 2(デザイン表現),表現創造演習 3(サウンドデザイ
ン),表現創造演習 4(器楽表現),表現創造演習 5(声楽表現),表現創造総合演習と,体系化された授
業では,「もの」や「人」から発想し,その性質や可変性について考える機会を得ることにより,芸術を広範
囲に見つめ,様々な選択肢の中から,それぞれの適性を模索する。そして,従来の専門性から脱した領
域で可能な表現方法を見つけるということができた。
人間表現学科発足からこれまで,各年それぞれ,「キャベツ(2008)」「A子(2009)」「ステウルカ(2010)」「箱
入り前(2011)」そして今年は「TABOO(2012)」というタイトルの舞台が上演され,領域横断的な芸術活動の成
果が得られた。それらは,文化の持つ歴史とその相対化によって成り立つ,様々に解釈されうる人間の表現行
為を通じた「価値観を形成するための演習」となったが,同時に,芸術を通じて他者に対する理解をどのように
組み立ててゆくか,また,パフォーマンスとして結実させる際の具体的内容(何をどう行うか)や技術的レヴェル
を得るまでのプロセスや,個人のエフォートをどのように評価するか,様々な能力や知識を持つ仲間のどの部
分を評価・活用し,共同作業として集成してゆくかという,セルフ・マネージメントとトータル・マネージメントの両
立を図るプロセスでもあった。
(5)研究
絵画ゼミ・立体ゼミの学生が集い,2012 年 10 月に元町の高架下スペースにてグループ展「ポリヘドロン」を開
催した。学生が主体となって企画・運営を行い,様々な意見の飛び交う有意義な展覧会となった。
(6)広報
8 月 9・10 日の午後 1 時からオープンキャンパス(大学説明会)を行った。内容は,人間表現学科の理念を中
心とした学科紹介,3 つの履修コースの理念や特徴の紹介,コース別模擬授業,在学生からのコメントなどであ
る。その後,施設設備見学,参加者と在学生との懇談なども,全体又は希望ジャンル別に行われた。総参加数
は 400 名余り(父兄付添を含む)といった多数の高校生及び保護者が参加し,時間をオーバーするほどの活発
な質疑・応答が行われるなど当学科への関心の深さが窺い知れた。
(7)受賞
山中澪(学部 4 年)学生 CG コンテスト(公益財団法人 CG‐ARTS 協会)に入選,賞にノミネートされた。
關典子(教員)2012 年 10 月「神戸大学学長表彰 特別賞」
舞踊ゼミ(学部生院生)
・2012 年 9 月「アーティスティック・ムーブメント・イン・トヤマ 2012
~少人数のための創作ダンスコンクール~」にて「松本千代栄賞」(最高賞)
・2012 年 10 月「紫陽会賞」
・2013 年 1 月「座・高円寺ダンスアワード」入選
・2013 年 2 月「第 32 回 こうべユース賞」
・2013 年 3 月「神戸大学学生表彰」
(人間表現学科長 塚脇淳)
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4.2.4. 人間環境学科
(1)運営
学科に関する意思決定は、例年どおり、人間環境学科・専攻運営会議において行った。本運営会議は、学科長
と各コースの主任の計 5 名から構成される。今年度は、定例会議 16 回を開催し、予算配分、入試、教育等に関わ
る重要案件を審議・決定した。
(2)予算
学科共通経費は用意していない。
(3)入試
特記事項なし。
(4)教育
4 月 6 日,100 名の新 1 年生を迎え,ガイダンスを行った。例年と同じ内容で,学科と各コースの特色,2 年進級
時のコース配属の基準等を説明した。学籍番号により学生を 4 グループに分け,各コースから選出された担当教
員 4 名により履修相談やコース進路相談等を行う指導体制をとった。
また,4 月 5 日には,新 2 年生に向けてコース配属のためのガイダンスを行った。今年度のコース別配属人数は,
以下のとおりであった。自然環境論コース:29 名,数理情報環境論コース:17 名,生活環境論コース:30 名,社会
環境論コース:25 名。
(5)広報
高校生に対する大学説明会(オープンキャンパス)を実施した。
(人間環境学科長 平山洋介)
4.2.5. 発達支援論コース
(1) 「プロジェクト連動型のコース」
本コースは,人間発達環境学研究科及び発達科学部の実践性を特徴とするヒューマン・コミュニティ創成研究
センター(以下,「HC センター」と略)の研究プロジェクトと連動して運営されている。学生は,「子ども・家庭支援部
門」「障害共生支援部門」「ヘルスプロモーション部門」「ジェンダー研究・学習支援部門」「労働・成人教育支援部
門」「ボランティア社会・学習支援部門」の 6 部門の実践的研究に携わりながら,地域・行政・企業・NPO との協働的
研究の実際を学び,現代的研究の原理と方法を修得することとなる。
2012 年度は,昨年同様,各部門の継続的なプロジェクトだけではなく,HC センター主催の「東日本大震災復興
支援プロジェクト」に,多くの本コース学生が参加をした。また,HC センターが核となって実施されている「ESD サ
ブコース」の運営に協力する中で,ESD を組織化する方法論を学んだ学生も少なくない。「HC センターの最先端
の実践的研究に触れながら学びを深める」という本コースの特徴がはっきりと表れたといえよう。
(2) 多様な専門性との「出会いの場」
3 年次に学部のあらゆるコースから進学可能な本コースは,学生集団自体が多様性・異質性を特徴とする。
2012 年度の進学者は 13 人で,2 年次の所属は,こども発達論(1 名),教育科学論(2 名),数理情報環境論(3 名),
生活環境論(2 名),学校教育論(3 名),自然環境論(1 名),心理発達論(1 名)で,編入学者は 1 名であった。4
年生と合わせると,学部生は 29 名(2011 年度は 22 名)になった。本コースは,基本的に学部生の大学院進学ある
いは大学院生と共に学ぶスタイルを推奨しており,大学院在籍者を含めると 50 名の,実に「多様な専門性をもった
学習共同体」となってきた。
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ちなみに,本年度の大学院在籍者は,博士課程(前期)10 名(M1:6 名,M2:4 名),同課程(1 年制履修コース)
4 名,博士課程(後期)7 名(D1 :2 名,D2:2 名,D3:3 名)であった。
(3) 「教師と生徒の共同作業」としての学習プログラムづくり
本コースは,旧所属のカリキュラムに束縛されることなく,研究テーマに応じて自由に学習プログラムを作り上げ
ることができるという特徴もある。学生の問題意識・関心と最新の学問的イッシューが交差しえるように,教員と学生
が共同して学習プログラムを作成する。教員と学生の関係性をいかに対話的に再構築するかという課題が残るが,
学生にとっては「自らの学習過程を自ら創造する」という体験を通して,学習支援の本質を理解することとなる。
このコースは,まだまだ新しいコースであるため,模索が続いているが,6 年目を迎え,少しずつ成果も見えはじ
めた。卒業論文や修士論文は,そのような学習と研究の集約である。卒論と修論に取り上げられた内容は,下記
の通りである。
「デート DV 自己学習教材としての『学習シート』の作成に関する一考察」
「女性が求める働き方とキャリアの考え方」
「女子大学生における家庭観及び就労観に関する研究」
「大学運動部組織における男女比較―神戸大学男女ラクロス部を例に―」
「育児休業取得が父親に与える影響に関する研究」
「発達障害者の就労支援をめぐる現実的課題」
「ボランティア活動を通した 新たなボランティアイメージの生成」
「附属特別支援学校教育実習における実習生の学習過程の検討―『私』のエピソード記述を通して―」
「家事・育児分担と夫婦間の関係性に関する研究」
「過疎地域におけるⅠターン者と地域住民の相互作用に関する研究-移住促進事業を取り組むにあたって
の一提案-」
「就職活動により大学生の自己肯定感の低下について」
「子ども・青年に対する国際協働学習の効果-第4回ひょうご子どもサミットを事例として-」
(4) 多様な社会領域での「ヒューマンキャピタル・ソーシャルキャピタル創成者」
2012 年度学部卒業生(4 年生)の主な進路は,生協関係,障害者人材派遣業,通販会社,スポーツメーカー,
出版社・貿易会社勤務などで,博士課程(前期)修了者は,博士後期課程進学,行政職員,スポーツメーカー勤
務,学校教員などとなっている。
発達科学部・人間発達環境学研究科の全体的な傾向同様,本コースの卒業生・修了生も,多様な社会領域に
進出しているといえる。しかし,とりわけ,学部・領域横断的かつ実践主義的な本コースで学んだ彼らには,現実社
会の輻輳した問題を解決に導く「ヒューマンキャピタル(人的資本)・ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」を,より
豊かにしていく実践者として,各領域において活躍してもらうことを期待するものである。
(発達支援論コース主任 松岡広路)
4.3. 各専攻の教育
4.3.1. 心身発達専攻
(1)運営
心身発達専攻人間発達論講座には 2 つの分野があり,心理発達論に 11 名,健康発達論に 5 名の教員が所属
している。教員の所属である博士課程前期課程には,履修コースとして心理発達基礎論コース,臨床心理学コー
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ス,健康発達論コースの 3 つが設けられている。専攻の運営は,基本的にこれらのコースを単位として行われてい
るが,予算配分や人事,大学院入試などについては,適宜専攻会議において協議・調整を行っている。
なお,心理発達基礎論と臨床心理学の 2 コースは学部における心理発達論コース及び博士課程後期課程の心
理発達論教育研究分野が共通なので,日常のコース運営についての会議は共同で行っている。
(2)予算
とくに専攻全体に係る専攻共通経費は設けていない。なお,心理発達基礎論と臨床心理学の 2 コースについて
は,予算はすべて一本化されて執行されている。
(3)入試
2013 年度 4 月の専攻改組に伴い,博士課程前期課程の入試は受験区分をこころ系A(従来の心理発達基礎論
コース),こころ系B(従来の健康発達論コース),臨床心理学コースの 3 区分に設定して行った。例年の予定とは
異なり,2012 年 11 月の入試であったが,志願者数は例年とほぼ変わらず,臨床心理学コースが突出して多かった
(約 5 倍)。博士課程後期課程の入試はこころ系A(従来の心理発達論コース),こころ系B(従来の健康発達論コー
ス)の 2 区分に設定して行った。2013 年度入試倍率は 1.4 倍であった。
(4)教育
以下のような院生への教育指導の特色が見られた。
・学部 4 年生に博士課程の院生を一人ずつチューターとして割り当て,卒業研究に関する相談指導に当たら
せることによって,学部生の卒業研究をスムーズに進めことを助けるとともに,院生の指導力を高めることを
目指した。
・学術 WEEKS の機会を利用し,院生が主体的に課題に取り組む工夫を試みた。英語での発表を試みた学
生もいて,国際的な場でのプレゼンテーション力を伸ばす経験になった。シンポジウムの運営を通して国
際交流の経験を深めることもできた。
・発達障害のある子どもの臨床指導を通して,さまざまな研究理論の実践的解説及び臨床応用に取り組むと
ともに,ケースカンファレンスを通して発達臨床的アプローチの指導を行い,院生の理解を深めた。
・神戸市教育委員会と連携して,「神戸市特別支援教育支援員配置事業」に取り組んだ。学部生,大学院生
が支援員として活動し,対人援助に関わる実践の場での学びに資することができた。また教員が巡回相談
員として学校に助言し,地域貢献を行った。
(5)広報
2012 年 6 月 30 日に行われた大学院オープンラボに,専攻としても参加した。また同年 7 月に行われた河合塾
主催の大学院入試案内に臨床心理学コースから初めて参加した。
(心身発達専攻長 森岡正芳)
4.3.2. 教育・学習専攻
(1)運営
教育・学習専攻は,前期課程においては,「子ども発達論」「教育科学論」「発達支援論」の 3 つの履修コース及
び 1 年履修コース,後期課程においては,前述の 3 つの教育研究分野から構成されている。これらのコースや教
育研究分野の運営は,基本的に各コース・教育研究分野を単位として実施されているが,専攻全体に関わる案件
については,適宜専攻会議及び専攻運営会議を開催し,協議・調整につとめた。2012 年度では,とくに,専攻再
編・新専攻立ち上げに関わる諸課題について,専攻会議,専攻運営会議等で意見交換を活発に行った。
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(2)予算
予算は,原則的に各教育研究分野に対して,その所属教員数及び学生数に応じて配分された。専攻全体に係
る共通経費はとくに設けていない。
(3)入試
本年度に実施された入試は,2013 年度からの新専攻に対応したものであった。本専攻は,新専攻における学び
系に相当するが,博士課程前期課程の入試では,学び系の受験区分としてみると,従来と同等の志願者数を確
保し,合格者についても合格定員相当数を十分に満たすことができた。博士課程後期課程の入試では,11 名とい
う多数の志願者を得ることができ,合格者は 6 名であった。今後の検討課題として,学び系としての前期課程入試
問題の一部共通化等についての意見交換がなされた。
(4)教育
年度当初に教育・学習専攻の新入生ガイダンスを実施した。各コース・教育研究分野においても詳細な履修指
導,研究指導体制の説明等がなされた。前期課程においては,修士論文の中間審査,最終審査が組織的に実施
され,研究指導の充実を図った。後期課程における研究指導は,研究科全体の指導体制に即して例年通り実施
された。
教員の授業改善の試みとしては,前期課程において,「科学教育カキュムラム特論 I」「科学教育原理特論 I」
「教育人間学特論演習」等,後期課程においては,「教育行政特論 II」「教育人間学特論 II」等でティームティーチ
ングが実施された。また,ゲストスピーカーについても,「科学教育原理特論 I」「科学教育原理特論演習」等で招
聘さており,大学院教育の充実に鋭意努力した。
授業以外においては,大学院生のための研究指導の一環として,講演謝金等を活用して,海外での博士学位
取得者による講演会「幼児の語彙の習得に関する国際研究の動向」,実践研究での博士学位取得者による講演
会「幼児期における音感受教育」等を開催した。また,本専攻の教員を主体として運営された「高度教員養成プロ
グラム」には,前期課程の学生 7 名が参加し,アクション・リサーチに基づく研究に従事し,修了認定を受けた。
その他,子ども発達論では,院生主催の学習会「発達診断ゼミ」「ワロン読書会」等が定期的に開催されている。
また同窓会(紗智会)と大学院生,学部生による研究会が 5 月 19 日,10 月 20 日に開催され,市役所行政職,保
育職,院生等による卒業後の業務や研究に関する発表,学部生・院生による卒論・修士論文の中間報告がなされ
た。
グローバルな人材育成への対応としては,特記すべき事項としては,前期課程の学生 2 名がノルウェー(Oslo
and Akershus University College, Faculty of Education and International College)にて大学院の講義を聴講し,大
学施設見学(図書館,学生支援センター,講義室,教員養成教育実践演習室等),幼稚園 5 園を訪問し,保育教
育実践に関する自然や社会的資源,教材等を 2 週間にわたり調査した。また,学生1名が韓国(ナザレ大学),学
生 1 名が中国(華東師範大学)で開催された国際シンポジウム等に出席した。さらに,後期課程の学生 2 名が米国
カリフォルニア州及びオハイオ州の学校経営・評価,教員養成・研修等について,教育制度の観点からの調査を
実施した。
(5)広報
本専攻の紹介等は,大学院オープンラボ,専攻 HP 等で行った。
(教育・学習専攻長 稲垣成哲)
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4.3.3. 人間行動専攻
(1)運営
人間行動専攻の教員は 14 名で,教授 9 名,准教授 5 名である。講座は人間行動論講座1講座で,教育研究コ
ースは「身体行動論コース(教員 9 名)」と「行動発達論コース(教員 5 名)」の 2 つから構成されている。今年度,准
教授1名が博士後期課程担当教員となった。専攻の大院生定員は前期課程が 6 名,後期課程が 2 名である。
専攻の運営は,専攻運営会議と専攻会議により行われる。専攻運営会議は専攻長と両教育・研究コース主任
の計 3 名で構成される。専攻会議は 14 名の専攻構成員で構成される。専攻運営会議は専攻長が招集し,人事及
び専攻に係る諸課題について審議する。専攻会議は専攻に係るすべての事項を審議し,専攻としての意思決定
をする。本年度は 8 回の専攻会議を開催した。
(3)予算
人間行動専攻の予算は,研究経費と教育経費からなる。研究経費は発達科学部・修士課程研究経費と博士課
程研究経費からなる校費と,各教員の努力による科学研究費・委任経理金等の外部資金獲得経費とからなる。校
費としての学部・修士の研究経費は全教員に一律配分され,それに修士及び博士課程研究指導経費が各教員
の指導院生数に応じて配分される。教育経費は,実験実習費と,それぞれの教育研究履修コースに所属する学
生数に応じて配分される共通経費から成る。
(4)入試
今年度より大学院の改組により入試方法が変更となった。改組の大きな点は心身発達専攻,教育・学習専攻,
人間表現専攻及び人間行動専攻の 4 選考を人間発達専攻 1 専攻にするというものである。それにともなって今ま
で専攻毎にあった定員が人間発達専攻ひとつになり,入試の実施方法も変更された。人間行動学科は新専攻の
もと,次年度から「からだ系講座」という名称になる。
入試は,前期課程(修士課程)が 11 月,後期課程が翌年 3 月に実施された。入試の方法は,前期課程は外国
語,専門科目 2 科目及び口頭試問,後期課程は,研究業績及び博士研究計画の口頭試問である。今年度は前
期課程(修士課程)6 名,後期課程(博士課程)1 名の応募があり,全員合格となった。今年度は例年に比べ応募
者が少なかった。次年度に向けて更なる広報に努める必要がある。
(4)教育
大学院生への教育研究指導は,基本的には指導教員が中心となり,数名の論文副査教員とともに行われる。カ
リキュラム的には専攻間の壁はなく,どの科目でも履修でき,院生自らの興味・関心によりカリキュラムを構成するこ
とが出来る。各科目は特論と演習から成り,多くの学生は両方を受講することにより,理論と実践の有機的結合を
図っている。
多くの院生は活発に学会活動にも参加している。修士論文・博士論文の内容は充実しており,質の高い教育・
研究指導が進められているものと理解している。修了後の進路は,一般企業,教員,進学,研究職と幅広い分野
にわたっている。
人間行動専攻の教育研究内容は,行動,スポーツ,発育・発達,加齢,アクティブライフスタイル等,実社会活
動と直結する学際的分野であり,理論だけでなく実践活動も極めて重要であるため,講義以外の実践を伴った授
業や院生教育も行われている。一例として,以下のような活動で理論と実践の融合化を図っている。
・スポーツイベント,健康プロジェクト等のフィールドワークを実施し,それを通して報告書作成や研究指導を行
っている。
・「加齢」をテーマとし,専門の異なる各院生が研究のアイデアを持ち寄り,ディスカッションを進めながら,それ
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ぞれの専門分野の知見や手法を融合した学際的実験計画をたて,心理,生理,社会的指標の関連性を意
識したデータ解析・発表を行うことで,分野融合的視点から指導を行っている。
(5)広報
専攻の広報活動としては,基本的には大学のホームページと学部・大学院のパンフレットが常時見ることができ
る広報である。他にはオープンキャンパスの一環としてオープンらぼを行い,受験者が希望する教員が質問に応
じる体制が設定している。
(人間行動専攻長 平川和文)
4.3.4. 人間表現専攻
(1)運営
人間表現専攻(大学院)は表現文化論コースとコミュニティアートコースの2コースが置かれている。会議運営に
ついては大学院の専攻と,学部の人間表現学科を専攻・学科会議として合同して運営を行った。毎月2回の定例
会議の開催を基本としている。教員の動向としては,1名が後期より育児休業より復帰した。教員公募の結果,音
楽民族学の採用が決まった。音楽療法は審議継続。
(2)予算
本専攻では各教員研究費から一律に拠出されたものを専攻・学科共通予算としている。その他の主たる用途は
複写費となっている。その内訳は,2台ある複写機のリース基本料及び複写枚数に応じた費用となっている(例外
として,博士後期課程の学生分については,その指導教員の個人研究費よりその概算費用を差し引くことにして
いる)。余った分については,個人研究費等へ戻す措置を取っている。
(3)入試
1)大学院博士課程前期入試
【表現系】の志願者・受験者は19名であり,11名(一般10名,社会人1名)が合格した。
2)大学院博士課程後期入試
表現文化論分野の受験者は1名であったが,不合格だった。
(4)教育
表現文化論コース:7月に博士前期課程2年次生の修士論文の中間指導会を行った。その後提出があった修士
論文5件について,2月に修士論文発表会を行った。
コミュニティーアートコース:例年,2年次生の修士論文中間発表会に1年次生にも研究内容に関するレジメ発表
をさせ,教員全員による指導助言を行っている。2月に修士論文試問会を開催し,今年度の
修士論文提出者は3名となった。
(5)その他
本年度学生・ゼミ活動が次の賞を受賞した。
山﨑 真 (博士前期課程) 第6回神戸新人音楽賞コンクールにて最優秀賞を受賞。
關典子 2012年10月「神戸大学学長表彰 特別賞」
(人間表現専攻長 塚脇淳)
4.3.5. 人間環境学専攻
(1)運営
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専攻運営に関する意思決定は、例年どおり、人間環境学科・専攻運営会議において行った。本運営会議は、専
攻長と各コースの主任の計 5 名から構成される。今年度は、定例会議 16 回を開催し、予算配分、入試、教育等に
関わる重要案件を審議・決定した。
また、今年度は、専攻の将来像を検討し、実施に移すため、ワーキンググループを組織し、各コースを横断する
学際的プロジェクト研究の立ち上げ、修士課程共通科目の新設などに関する検討を開始した。
(2)予算
専攻共通経費は用意していない。
(3)入試
入学定員 40 名に対し、志願者数 44 名(志願倍率 1.1 倍)、受験者数 43 名、合格者数 37 名、入学者数 35 名で、
定員充足率は 0.88 倍であったが、今回の結果を踏まえ、より厳格な定員管理に向けて審議を行った。
(4)教育
院生は修士論文・博士論文の作成を中心目標として勉学・研究を進めることから,指導はそれぞれの指導教員
に負うところが大きい。これに対し,とくに博士前期課程に関しては,専攻共通教育のあり方をどのように考えるべ
きかが検討課題となっている。
教育成果の一端として,院生の以下のような活躍があげられる。
森本幸太郎(博士前期課程)
指導教員:高見泰興
「チョウセンカマキリの性的共食いに伴う交尾時間延長の適応的意義」により優秀ポスター賞受賞。
日本動物行動学会第 31 回大会(2012 年 11 月 24 日,奈良女子大学)。
植松裕太(博士前期課程修了生) 指導教員:丑丸敦史
修士論文をもとにした学術論文が査読付き学術誌に受理。
Uematsu, Y. and Ushimaru, A. (in press) Topography- and management-mediated resource gradients
maintain rare and common plant diversity around paddy terraces, Ecological Applications.
平岩将良(博士課程研究生)・日下石碧(博士後期課程)・松久聖子(博士前期課程)
指導教員:丑丸敦史
第 60 回日本生態学会大会においてポスター賞を受賞。
最優秀賞:平岩将良,新庄康平,掛谷知世,長谷川雅美,石井博,丑丸敦史
「花形質から送粉者相は予測できるか?」
優秀賞:日下石碧,新庄康平,石井博,丑丸敦史
「高山帯立山において柱頭付着花粉相は送粉者によって変化するのか?」
優秀賞:松久聖子,丑丸敦史「雌雄異株植物において開花フェノロジーの性差はなぜ存在するのか?」
片岡遼平(博士前期課程修了生)
指導教員:近江戸伸子
修士論文をもとにした学術論文が査読付き学術誌に受理。
Ryohei Kataoka, Masaki Hara, Seiji Kato, Sachiko Isobe, Shusei Sato, Satoshi Tabata, Nobuko Ohmido
(2012) Integration of linkage and chromosome maps of red clover (Trifolium pratense L.), Cytogenetics
and Genome Research, 137:60-69
(5)広報
大学院に関するオープン・らぼを実施した。受験を検討している参加者が専攻教員と面談し、研究の可能性に
ついて相談する機会となった。
(人間環境学専攻長 平山洋介)
- 54 -
5. 進路
5.1. キャリア形成支援
5.1.1. キャリアサポートセンター
キャリアサポートセンターは, 学部の 1 年生から大学院生にいたるすべての学生を対象として,学生のキャリア
形成を実践的にサポートすることを目的としている。狭義の就職活動の支援はもとより,生涯にわたるキャリア形成
を視野に入れた支援活動を提供している。
就職活動中の学生を対象にしてはセミナー・説明会・ワークショップ等の集団的イベント及び個別的なカウンセ
リングを行い,より広範囲の学生を対象にしては,大学で学ぶことや働くことの意義を自分で考え,自分の人生を
どう生きるかという課題と早い段階から真剣に向き合うように働きかけている。
どのような仕事に就くかを決め, 自分の希望する職をどのようにして得るのかを考えることは学生にとって大きな
転機である。この課題に向き合うとき, 当面の目標を越えて, 個人が生涯にわたって仕事や社会とどのように関わ
りつながって生きていくかという長期的な視点に立つように訴えている。
当センターが企画・実施するイベントの多くは人間発達環境学研究科及び発達科学部の学生のみならず学部
の 1 年生から大学院生にいたる神戸大学のすべての学生に対して開放されている。
現在当センターは
生涯にわたるキャリア形成
就職支援の拡充
大学院生へのキャリア支援
留学生へのキャリア支援
に重点的に取り組んでいる。以下(1)~(4)において, これらの面における今年度の活動を報告する。
最後の(5)において, 今年度実施した就職対策セミナーの一覧を載せる。
(1)生涯にわたるキャリア形成
当センターは,希望する職に就くために必要な知識と技能を伝達することを越えて,包括的に長期的な視野か
ら各自の将来の設計に取り組んでもらうべく働きかけることをめざしている。
各自のキャリア設計における包括的・長期的視野の重要性は必ずしも多くの学生に共有されていない。
このメッセージを, すべての学生に対してなるだけ早い段階に伝えたいと考えている。
昨年度に引き続き, 1 年次生を対象とするいくつかの授業科目内にキャリアガイダンスを組み込ませてもらうこと
により, 上記の目標を達成することを試みた。今年度は, 人間環境学科の必修科目である「人間環境学概論」及
び同学科の選択必修科目のひとつ「数理情報環境概論」において, それぞれ 1 回ずつ授業を担当させてもらっ
た。
人は皆人生の様々な局面で意思決定を迫られる。大学生の場合, 卒業をめざす中で, 数ある授業科目の中か
らどれを履修するのか, 所属学科の中でどの履修コースを選ぶのか, 部活動・サークル活動をするのかしないの
か, どの部活動・サークル活動をするのか, アルバイトをするのかしないのか, どのようなアルバイトをするのか, ど
の研究室で卒業研究に取り組むのか, といったことに関して判断を下し, 卒業後の進路を巡っては, 大学院に進
学するのか就職するのか, 就職する場合はどの分野 (民間企業, 公務員, 教職等) をめざすのか, といった方面
で自分の進むべき道を選択する必要がある。ひとつひとつの意思決定の機会において, 場当たり的に対処するの
ではなく, こういった意思決定の集大成が一生を形作ることを明確に意識した上で大局的な観点に立って真剣に
- 55 -
考えることが重要である。
授業では, 賢明な意思決定のためのツールとなり得るいくつかのキャリア理論を紹介した。「人間環境学概論」
におけるキャリアガイダンス (2012 年 7 月 27 日実施) では, 人生で遭遇する大きな「転機」を乗り越えるためのナ
ンシー・K・シュロスバーグの理論を, 「数理情報環境概論」(2012 年 10 月 5 日実施) では, 人の一生を「役割の組
合せ」という観点から理解しようとするドナルド・E・スーパーの理論及び人生は計画通りに進まないことを逆らわず
受け止めようとするジョン・D・クランボルツの「計画された偶発性」理論を, それぞれ取り上げた。いずれの授業に
おいても, 当該理論の要点を解説したうえで, 自分の過去を振り返る, 自分の未来について考える, 出席学生同
士で対話するといった作業を通して理論の有効性を体験する機会となるように努めた。
出席学生に提出してもらった感想文から判断して, 自分の一生とよりインテリジェントに向き合うためのツールと
してキャリア理論があることに対してほとんどの学生は素直に前向きに反応してくれたと考える。
「人間環境学概論」は人間環境学科の 1 年次生を対象とする必修科目であるので, 人間環境学科の全学生に
長期的な観点からのキャリア形成の重要性を訴えることができた。今後は, 同趣旨のキャリアガイダンスを他学科
の学生を対象とする授業科目の中でも実施することをめざしたい。
(2)就職支援の拡充
学生の就職活動により充実した支援を提供するための取り組みとして, 昨年度研究室への出張ガイダンス及び
グループディスカッション研修を実施した。今年度は, 研究室への出張ガイダンスに替えて 3 年次生全員を対象と
するガイダンスを行い, グループディスカッション研修は大幅に規模を拡大して実施した。
1) 3 年次生全員を対象とするガイダンス
間もなく本格的な就職活動を開始する学生を対象にして,
進路のタイプ ( 民間企業への就職, 教員・公務員としての採用, 大学院への進学) 毎の活動スケジュール
インターンシップについて
神戸大学におけるキャリアサポートの体制
今後のセミナー・ガイダンスの案内
など, 卒業後の進路選択に関して是非心得ておくべき基本的な内容を解説した。
2012 年 5 月に各学科ごとに計 4 回実施し, 計 201 名の学生が参加した。当センターとしては, 対象となる学
生全員に聞いてほしい内容であるが, 1 学年あたりの定員が 280 名であるから, 80 名くらいの学生が漏れたこ
とになる。今後 3 年次生全員にこういった情報が届くことをめざして, 方策を考える必要がある。
2) グループディスカッション研修
採用活動の一環としてグループディスカッションを実施する企業が増えている。複数の参加者が与えられたテ
ーマについて自由に討議するものである。
所属大学・学部・専攻も違えば考え方・性格なども異なる様々なバックグラウンドを持つ学生と初めて会って
一緒に討議するのであるから, 戸惑うのが普通である。前もって模擬体験をしておくことが望ましい。
昨年度は大阪府立大学と合同のグループディスカッション研修を 2 日に分けて計 4 セッション実施した。
のべ 57 名の参加者があった。就職活動にすぐに役立つ実践的な内容であり, 参加者には非常に好評であ
った。
今年度は, 当センター独自の研修を 2 回, 大阪府立大学と合同の研修を 4 回実施し, のべ 148 名の参加者
を集めた。昨年度に比べて参加者が大きく増えたこと, 及び参加者のコメントの内容から, この研修に対する
需要が高いことがわかる。今後も力を入れ発展させていく価値のあるイベントである。
- 56 -
(3)大学院生へのキャリア支援
大学院生・ポスドクへのキャリア支援を充実させることは当センターの重要課題のひとつである。今年度のこの方
面の活動を報告する。
1) OB・OG セミナー
昨年度と同様当研究科の修了生によるセミナーを実施した。
昨年度は文系の分野の修了生にお願いした。今回は, 理系の専門分野で当研究科を修了後, 民間企業
で研究職についている方を招き, 「大学院生の強みと弱み ~企業から見た,学部卒と院卒の違い~」につ
いて講演してもらった。開催日は 2013 年 2 月 8 日であった。
修士課程を経て社会人になった自身の経験及び企業人として新入社員を迎える現在の立場の両面から,
大学院に進む意味合いの分析を聞くことができた。大学院に進学したが不安を感じている学生, あるいは
卒業後大学院に進学すべきかどうか迷っている学部生にとって, 大きな価値のある内容であったことと思
う。
2) 理工系人材(物理関連分野)のためのキャリアフォーラム
(社)日本物理学会キャリア支援センター主催 , (株)アカリクの協力のもとに, 「理工系人材(物理関連分
野)のためのキャリアフォーラム」が神戸大学で 2012 年 11 月 17 日に開催された。当センターもこのイベント
に共催者の一員として参加した。
物理系人材のためのキャリアガイダンス, 物理系人材の活躍フィールドに関する企業関係者による講演,質
疑応答・交流セッションから構成されるイベントであった。
(4)留学生へのキャリア支援
留学生のための就活セミナーを実施した。日本における留学生の事情に詳しい講師を外部から招き,日本の企
業で働くために大切なことについて解説してもらった。開催日は 2012 年 12 月 26 日であった。
留学生を対象とするイベントを企画したのは今回が最初である。参加者は 6 名と少なかった。実施したアンケー
トでは, 今回のセミナー内容に対して好意的な回答を寄せてくれたものの, 留学生に固有のニーズがどういうとこ
ろにあるのかまだ十分に把握しきれない。キャリアに関わる面において留学生との接触を継続的に積み重ねる必
要がある。
(5)就職対策セミナー
例年通り, 狭義の就職活動を支援するための対策セミナーを数多く企画し実施した。教員採用対策セミナー,
企業採用対策セミナー, その他のセミナーに分けてこれらの一覧を記す。
平成 24 年度 教員採用対策セミナー一覧
第1回
第2回
4月 18 日 (水)
教員採用セミナー「大阪府公立学校教員採用選考テストに関する受験説明会」
15:10~16:40
【講師】亀甲知之 氏(大阪府教育委員会)
B101 教室
参加者9名
4 月 20 日 (金)
堺市教育委員会 教員採用試験説明会
13:20~14:50
【講師】藤森
B104 教室
参加者
正造 氏(堺市教育委員会)
5名
- 57 -
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第 10 回
第 11 回
第 12 回
第 13 回
第 14 回
4 月 20 日 (金)
「教育時事」対策セミナー
15:10~17:50
【講師】大槻
B104 教室
参加者
4 月 27 日 (金)
大阪市教育委員会 教員採用試験説明会
13:20~14:50
【講師】岸田
B104 教室
参加者
5 月 11 日 (金)
教員採用セミナー「横浜市公立学校教員採用選考テストに関する受験説明会」
10:40~12:10
【講師】横浜市教育委員会
B201 教室
参加者
5 月 11 日 (金)
「面接試験」対策セミナー
15:10~17:50
【講師】大槻
大会議室
参加者
5 月 18 日 (金)
神戸市教育委員会 教員採用試験説明会
13:20~14:50
【講師】井谷
B104 教室
参加者
5 月 18 日 (金)
「論作文試験」対策セミナー
15:10~17:50
【講師】野中
B104 教室
参加者
6 月 1 日 (金)
「私立学校教員をめざすために~私学と公立の違いとは~」
13:20~14:50
【講師】光延 栄治 氏/株式会社 エデュケーショナルネットワーク イー・スタッフ
B104 教室
参加者
6 月 1 日 (金)
「公立学校教員をめざすために」
15:10~16:40
【講師】伊藤
B104 教室
参加者
6 月
現役教員の先輩による体験談1
5 日 (火)
真侑充氏(東京アカデミー)
41 名
博文 氏(大阪市教育委員会)
3名
7名
真侑充氏(東京アカデミー)
43 名
誠司氏,今泉 拓也氏
28 名
正宏氏(東京アカデミー)
36 名
19 名
憲司氏/東京アカデミー
28 名
18:00~19:30
【講師】吉岡
B201 教室
参加者
6 月
私学教員採用選考について
8 日 (金)
(神戸市教育委員会)
光先生(神戸市立御影北小学校教諭)
11 名
15:10~16:40
【講師】中井
B104 教室
参加者
6 月
先輩からうかがう求められる教師としての資質
15 日 (金)
博之氏(京都共栄学園中学高等学校)
12 名
13:20~14:50
【講師】佐谷
B104 教室
参加者
6 月
洛南高等学校
教員採用説明会
15:10~16:40
【講師】菊地
竜三郎氏(洛南高等学校)
B104 教室
参加者
15 日 (金)
章子氏(親和女子大学 非常勤講師,元神戸市教育センター主任指導員等を経験)
18 名
12 名
- 58 -
第 15 回
第 16 回
第 17 回
第 18 回
第 19 回
第 20 回
第 21 回
第 21 回
第 22 回
第 23 回
6 月 19 日(火)
現役教員の先輩による体験談 2
18:00~19:30
【講師】石川
B201 教室
台風のため中止
10 月 19 日 (金)
私学教員採用についての説明会
12:40~13:10
【講師】矢萩
B208 教室
参加者
10 月 19 日 (金)
西大和学園教員採用説明会
13:20~14:50
【講師】校長
B208 教室
参加者
10 月 26 日 (金)
横浜市教育委員会からの説明会
12:20~13:15
【講師】堤
B201 教室
参加者
12 月 21 日 (金)
2013 年度
12:30~13:10
【講師】矢萩
B212 教室
参加者 29 名
12 月 21 日 (金)
2013 年度
13:20~14:50
【講師】伊藤
B212 教室
参加者 52 名
12 月 21 日 (金)
2013 年度
15:00~16:00
【講師】藤森
B212 教室
参加者 14 名
12 月 21 日 (金)
2013 年度
16:00~17:00
【講師】枝元
B212 教室
参加者 6 名
2月
面接対策ガイダンス「教員採用試験のための面接対策総論」
8 日(金)
萌氏(神戸市立向洋小学校)
由香氏 (株式会社
5名
上村佳永氏,教科部長
西田宗作氏,OB
喜多薫平氏(西大和学園)
3名
達俊氏,森長
秀彰氏(横浜市教育委員会)
5名
私学教員の採用について
由香氏 (株式会社
教員採用ガイダンス&説明会
エデュケーショナルネットワーク)
教員採用試験の傾向と対策
教員採用ガイダンス&説明会
憲司氏(東京アカデミー)
堺市教育委員会からの説明会
教員採用ガイダンス&説明会
正浩氏(堺市教育委員会)
大阪市教育委員会からの説明会
教員採用ガイダンス&説明会
哲氏(大阪市教育委員会)
13:20~14:50
【講師】伊藤
B108 教室
参加者 65 名
2 月
教員採用試験合格者との座談会
8 日(金)
エデュケーショナルネットワーク)
憲司氏(東京アカデミー)
15:10~16:40
神戸大学発達科学部 OB/OG
1B108 教室
有志による座談会の為,キャリアサポートセンターはサポートのみ
平成 24 年度 企業採用対策セミナー一覧
第1回
6 月 15 日 (金)
2013 年卒業予定学生対象
15:10~16:40
【講師】田平
B201 教室
参加者
企業説明会「株式会社大阪めいらく
政澄氏(株式会社大阪めいらく人事)
12 名
- 59 -
めいらくグループ」
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第 10 回
第 11 回
第 12 回
第 13 回
6 月 29 日(金)
インターンシップスタート講座
「自己発見講座」
15:10~16:40
【講師】
F246 教室
参加者
7 月 6 日(金)
インターンシップスタート講座
15:10~16:40
【担当】
大会議室
参加者
7 月 26 日(木)
人事担当者からの会社紹介,質疑応答
12:20~14:20
【講師】木ノ下
B104 教室
参加者
林田 雄太 氏(株式会社リクルート)
31 名
「マナー講座」
宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
34 名
忍氏(堺商事株式会社)
1名
10 月 12 日 (金) 企業説明会「株式会社
13:20~16:40
【講師】人事部
B201 教室
参加者
ゼロワン」
新卒人事担当
川﨑 麻衣 氏
0名
10 月 12 日 (金) 「株式会社
ライフォート」
13:20~16:40
【講師】
人事教育部
年楳 友和
氏
*発達科学部(教育学部)卒業生
B203 教室
参加者
1名
10 月 26 日(金)
グループディスカションから分かる今やるべきこと
13:20~14:50
【講師】笹記
B208 教室
参加者
10 月 26 日(金)
企業の探し方講座~自分にとって良い企業を探す方法~
15:10~16:40
【講師】武田
B208 教室
参加者
11 月 2 日(金)
ビジネスコミュニケーションのススメ
13:20~14:50
【講師】二條氏(アデコ株式会社)
B208 教室
参加者
11 月 2 日(金)
実践!仕事研究の進め方
15:10~16:40
【講師】間瀬氏(株式会社マイナビ)
B208 教室
参加者
11 月 15 日(木)
神大 café ~みんなで行う自己理解ワークショップ~
15:10~16:40
【講師】林田
B104 教室
参加者
11 月 21 日(水)
神戸大学学内就活セミナーin 発達科学部
13:20~17:30
アイ・シー・アール,エスケー化研,大阪めいらく,ライフロード,フジテック,ライフォート,エムケイ
B 棟各教室
参加者
11 月 25 日(日)
神戸大学・大阪府立大学合同グループデスカッション研修
13:30~15:30
【講師】間瀬
就職活動トレーニング
由紀子(キャリアサポートセンター)
32 名
佳久氏(日経就職ナビ)
33 名
31 名
42 名
雄太氏(株式会社リクルートキャリア)
25 名
93 名
清吾氏(株式会社マイナビ),
インテリジェント
八田みどり氏,鳥海亜哉氏(大阪府立大学),宮村聡子(キャリアサポートセンター)
ラボラトリ
参加者 13 名
- 60 -
第 14 回
第 15 回
第 16 回
第 17 回
11 月 25 日(日)
神戸大学・大阪府立大学合同グループデスカッション研修
16:00~18:00
【講師】間瀬
インテリジェント
八田みどり氏,鳥海亜哉氏(大阪府立大学),宮村聡子(キャリアサポートセンター)
ラボラトリ
参加者 18 名
11 月 29 日(木)
【講師】降矢
B104 教室
参加者 51 名
11 月 29 日(木)
【講師】降矢
B104 教室
参加者 51 名
11 月 30 日(金)
11 月 30 日(金)
15:10~16:40
B208 教室
12 月 1 日(金)
15:10~16:40
第 20 回
第 21 回
第 22 回
~面接に向けて~応用編
一朋氏(ダイヤモンド・ビッグアンドリード)
キャリア講座①
就職活動を物語にする~自分らしい就職活動とは~
【講師】大原良夫氏(日本キャリア開発協会
理事)
参加者 16 名
キャリア講座②
NHK キャリアセミナー~放送現場の仕事~
【講師】宮本英樹(日本放送協会総務局人事部主管)
参加者 43 名
キャリア講座「社会に学ぶ」~激動の世の中を生き抜くために~
【講師】木下
一氏
大会議室
参加者 21 名
12 月 11 日
就職活動トレーニング
13:20~14:50
~自己 PR を中心に~基礎編
一朋氏(ダイヤモンド・ビッグアンドリード)
エントリーシート対策
15:10~16:40
B208 教室
第 19 回
エントリーシート対策
13:20~14:50
13:20~14:50
第 18 回
清吾氏(株式会社マイナビ),
【講師】松田
~もう一つの情報収集法~
日経テレコン21
文子氏(日経メディアマーケティング株式会社)
発達科学部 RIE
参加者
12 月 11 日(火)
「女性の働き方」~社会保険労務士からのアドバイス~
15:10~16:40
【講師】秋元
大会議室
参加者 29 名
12 月 23 日(日)
神戸大学・大阪府立大学合同グループデスカッション研修
13:30~15:30
【講師】八田みどり氏,鳥海亜哉氏(大阪府立大学),宮村聡子(キャリアサポートセンター)
インテリジェント
参加者
14 名
慎司氏(ACT 社会保険労務士事務所,キャリアカウンセラー)
14 名
ラボラトリ
第 23 回
12 月 23 日(日)
神戸大学・大阪府立大学合同グループデスカッション研修
16:00~18:00
【講師】八田みどり氏,鳥海亜哉氏(大阪府立大学),宮村聡子(キャリアサポートセンター)
インテリジェント
参加者
18 名
ラボラトリ
第 24 回
12 月 25 日(火)
エントリーシートの書き方講座
15:10~16:40
【講師】宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
B104 教室
参加者 27 名
- 61 -
第 25 回
第 26 回
第 27 回
第 28 回
第 29 回
第 30 回
第 31 回
第 32 回
第 33 回
第 34 回
第 35 回
12 月 26 日(水)
企業が見る留学生と採用
13:20~14:50
【講師】松尾誠二氏(キャリアドゥ)
B104 教室
参加 6 名
12 月 26 日(水)
エントリーシートの書き方講座
15:10~16:40
【講師】宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
B104 教室
参加者 16 名
12 月 26 日(水)
企業説明会
13:00~15:00
【講師】今村
中会議室
参加者 7 名
12 月 27 日(木)
エントリーシートの書き方講座
15:10~16:40
【講師】宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
B104 教室
参加者 29 名
1 月 7 日(月)
就職活動支援セミナー
13:20~15:10
【講師】松尾誠二氏(キャリアドゥ)
大会議室
参加者 18 名
1 月 7 日(月)
就職活動におけるマナー講座
15:00~17:30
【講師】宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
大会議室
参加者 39 名
1 月8日(月)
就職活動におけるマナー講座
10:00~12:30
【講師】宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
大会議室
参加者 19 名
1 月8日(月)
就職活動におけるマナー講座
13:30~16:00
【講師】宮村 聡子(キャリアサポートセンター)
大会議室
参加者 22 名
1 月 18 日(金)
神戸大学 OB・OG 内定者座談会
10:40~12:10
【講師】勅使河原
B104 教室
参加者 8 名
1 月 21 日(水)
企業説明会
15:10~16:40
【講師】今村
B203 教室
参加者 2 名
1月 26 日(土)
文部科学省で働く先輩から伝えたいこと~就職先のひとつとしての公務員~
13:00~15:00
【講師】三木
百年記念館六甲
参加者 11 名
留学生の就活セミナー
スカパーJSAT
晃介氏(スカパーJSAT
衛星運用部
管制 SE チーム)
将氏(株式会社ニトリ),山本起大氏(OB)
,辻元はるな氏(内定者)
スカパーJSAT
晃介氏(スカパーJSAT
仁史氏(生涯学習政策室
ホール
- 62 -
衛星運用部
管制 SE チーム)
教育改革推進室
改革企画係)
第 36 回
2 月 8 日(金)
大学院生の強みと弱み~企業から見た,学部生と院卒の違い~
15:10~16:40
【講師】倉田
B104 教室
第 37 回
参加者
理史氏(株式会社シャルレ
研究開発課)総合人間科学研究科卒
16 名
2 月 17 日(日)
神戸大学・大阪府立大学合同グループデスカッション研修
15:30~17:30
【講師】八田みどり氏,鳥海亜哉氏(大阪府立大学),宮村聡子(キャリアサポートセンター)
インテリジェント
参加者
22 名
ラボラトリ
第 38 回
2 月 17 日(日)
神戸大学・大阪府立大学合同グループデスカッション研修
18:00~20:00
【講師】八田みどり氏,鳥海亜哉氏(大阪府立大学),宮村聡子(キャリアサポートセンター)
インテリジェント
参加者
19 名
ラボラトリ
第 39 回
2 月 28 日(日)
グループデスカッション講座
14:00~16:00
【講師】笹記
B104 教室
参加者
由紀子
12 名
平成 24 年度 その他セミナー一覧
第1回
(3 年生向)
第2回
(3 年生向)
第3回
(3 年生向)
第4回
(3 年生向)
第1回
第2回
5 月 23 日(水)
表現学科
15:10~16:40
【講師】宮村
B212 教室
参加者 25 名
5 月 24 日(水)
行動学科
13:20~14:50
【講師】宮村
B212 教室
参加者 40 名
5 月 25 日(水)
形成学科
13:20~14:50
【講師】宮村
B108 教室
参加者 85 名
5 月 25 日(水)
環境学科
15:10~16:40
【講師】宮村
B108 教室
参加者 51 名
キャリア・ガイダンス
聡子(キャリアサポートセンター)
キャリア・ガイダンス
専門科目入門セミナー
【講師】国税庁合格者
B101 教室
参加者 6 名
【講師】森川
B101 教室
参加者 6 名
~進路選択オリエンテーション~
聡子(キャリアサポートセンター)
14:00~14:40
15:10~17:50
~進路選択オリエンテーション~
聡子(キャリアサポートセンター)
キャリア・ガイダンス
10 月 19 日(金) 公務員対策
~進路選択オリエンテーション~
聡子(キャリアサポートセンター)
キャリア・ガイダンス
10 月 19 日(金) 公務員対策
~進路選択オリエンテーション~
専門科目入門セミナー
筆記試験対策,人物試験対策
浩志氏(東京アカデミー)
- 63 -
第3回
10 月 26 日(金) 公務員対策
第4回
14:00~14:40
【講師】法務省・兵庫県合格者
B101 教室
参加者 2 名
10 月 26 日(金) 公務員対策
第5回
第6回
専門科目入門セミナー(合格者座談会)
専門科目入門セミナー(法律系科目セミナー)
15:10~17:50
【講師】笹川
B101 教室
参加者 6 名
11 月 2 日(金)
公務員対策
14:00~14:40
【講師】法務省合格者
B101 教室
参加者 4 名
11 月 2 日(金)
公務員対策
15:10~17:50
【講師】平井
B101 教室
参加者 4 名
貢氏(東京アカデミー法律系科目講師)
専門科目入門セミナー(法務省格者座談会)
専門科目入門セミナー(経済系科目セミナー)
宏幸氏(東京アカデミー経済系科目講師)
(キャリアサポートセンター運営委員会委員長 高橋譲嗣)
5.1.2. 学振特別研究員申請支援
学生委員会の主催により,「学振特別研究員への応募のススメ」と題した説明会を平成 24 年 4 月 17 日午後 5
時より開催した。まず,青木茂樹教授より,特別研究員制度の概要について説明があり,続いて審査員経験者の
木下孝司教授から,申請書作成やヒアリングなどに関するアドバイスがなされた.その後,人間発達環境学研究科
で採用されている特別研究員 2 名(PD,DC2)による経験談や留意点などの紹介がなされた。
説明会には 27 名の学生及び 3 名の教員(審査員経験者)が聴衆として参加した。参加者のモチベーションは
非常に高く,活発な質疑応答が行われた。閉会後,本企画をより良いものにするためにアンケートを実施した。回
収枚数は 20 枚で,そのすべてに感想・コメントが記載されていた。
平成 25 年度特別研究員採用審査の結果,7 名(DC2‐6 名,DC1‐1 名)に採用内定が決まった。
実施日時・場所
日 時:2012 年 4 月 17 日(火)17:00~18:30
場 所:人間発達環境学研究科大会議室
参加者:27 名
研究員・研究生 3 名,
博士後期課程 4 年 1 名,3 年 2 名,2 年 3 名,1 年 10 名,
博士前期課程 2 年 5 名,博士前期 1 年 2 名,
発達科学部 4 年 1 名
プログラム
1.日本学術振興会特別研究員制度の紹介 /青木茂樹 教授
2.審査・選考の実際~審査経験者の立場から~ 過去の審査経験者による申請書作成やヒヤリングに関す
るアドバイス /木下孝司 教授
3.申請やヒヤリング(面接)の実際~応募者の立場から~ 特別研究員に採用された経験者による留意点等
の解説 /高橋 覚 特別研究員(PD),村上しほり特別研究員(DC2)
- 64 -
4.質疑応答
説明会「学振特別研究員への応募のススメ」への感想・コメント
本企画をより充実したものにするために参加者から得た「コメント・感想」を以下に学年別に記載する.
研究員・研究生
 実際に PD を取られた方の研究に(少し?)具体的に触れられてワクワクした.学振特別研究の説明会と
してとても良いと思いました。
 非常に参考になった。
D4
 学振に出すのみならず,自分の研究について見つめる上で参考になりました。
 高橋さんの話は少し趣旨と違う気がしたので,事前に話をしておいてほしい。村上さんの話は大変参考
になったと思う。
 たぶん質問とかではしにくいと思うので,いくつかグループを作ってそこに先生とか経験者の人を一人
ずつ入れて,5 分ずつ,10 分ずつとかで先生とかを入れ替えてく形で聞きたいことを質問させていったら
いいのではないかと思った。
D2
 さまざまな視点・立場からお話しをうかがえて参考になりました。特に直接お顔を拝して,お話しをうかが
えるのが現実的な空気や雰囲気をひしひしと感じ,今後のモチベーションに刺激となりました。
 書面ではわかりづらい具体的なアドバイスが参考になりました。
 経験者のお二人の実際の例に刺激を受けました。
D1
 一度書類を書いていることもあるが,特にどこに注意して書けばよいか特に採用者の方の話が参考にな
った。
 「書類が不備の無いようにすることが重要」は去年になかった点です。
 とても参考になりました.実際の書類や面接での質疑応答を聞けて良かった。
 学振の枠を超えて,博士論文を書くヒントになりました。今回の話を聴いて,基礎研究的な地味の内容
の研究はよほど興味深い書き方をしないと採用は難しいのではないかと感じました。DC に関しては年齢
制限がありますが,小生は資格から外れてしまうため残念ですが応募できません。年齢の改定の申請等
は学術振興会に意見を出せばよろしいのでしょうか。
 とても勉強になりました。これからの研究活動に役立つと思っています。
 今まで「学振特別研究員」について全然知りませんでした。本日わかりやすく説明していただきまして,
誠にありがとうございました。
 勉強になった点があります。最も印象に残ったのは申請書の書き方などが「素人」でもよんでもらうという
ところで,また自身の研究を語り伝える力を申請書の作成を通して高めることができると思いました。
M2
 要点を伝えていただけたので,自分にとって役に立ちました.何をすべきかという点を沢山盛り込まれて
いたので,意義があったように思います。
 申請のしくみの概要がわかった。
 学振に通った先輩の話を聞けて良かった。
- 65 -
 イメージも沸いてなかったので,大変参考になりました。
 具体的なアドバイスをいただけ,大変参考になりました。また,高橋さんの方からは修士からの研究への
取り組みを聞け,普段の研究においても参考になりました。
M1
 現在 M1 で参考程度に参加しましたが,とても具体的で参考になりました。来年 DC1 で出願してみたい
と思いました。
 学振特別研究員については,初めてこの説明会で知り,大変参考になりました。ドクターへの進学はま
だ正確に決めていないのですが,研究を進めるにあたっての心構えを知ることができたと思います。修
士としての生活が始まったばかりですが,充実した研究ができるよう努力します。
 今後の応募に意義のある会であったように感じております。この回の中でしかわからない,学べない事
柄をすることができ,よい時間を過ごさせていただいたように思います。
 漠然としかつかめていなかった研究生活の今後が具体的に知れて勉強になりました。採用されるかどう
かという意味だけでなく,研究の道を選ぶに当っての自分のテーマや考えの見つめ直しという意味でも
とても良い機会なのだと感じました。ありがとうございました。
 私は修士1年目で全く学術振興特別研究員についての下調べを行っていなかったので,どのお話も非
常にためになるものでした。これから先の自分の研究の方向性や理解の仕方を深めるきっかけにしたい
と思います。
U4
 特別研究員になると給料も出るので,より一層研究に専念できるということで,本気で研究を職業にする
ことを考えるなら,キャリアアップにもつながるので,目指してみるべきだと思いました。まだ研究の経験も
ないので実際に研究をしておられる方の経験談を聴ける貴重な時間となりました。
(学生委員会委員長 河辺章子)
5.2. 卒業・修了後の進路
平成 24 年度の発達科学部及び大学院人間発達環境学研究科修了生の進路は以下の通りである。なお,産業
別就職者数,大学院進学者数などの詳細は『資料編』に記載した。
(1) 人間発達環境学研究科博士課程後期課程修了生の進路
区 分
a
進学者
a/g
割合
心身発達専攻
0.00
教育・学習専攻
0.00
人間行動専攻
0.00
人間表現専攻
0.00
人間環境学専攻
0.00
計
0
0.00
(単位:人・%)
就職者
b
企業
c
公務員
d
教員
e
その他
1
- 66 -
1
h
その他
3
f/g
割合
a+f+h
g計
3
100.00
0.00
1
1
100.00
0.00
1
0
0.00
1
100.00
1
2
2
50.00
2
50.00
4
3
4
40.00
6
60.00
10
1
0
f/g
割合
0.00
100.00
1
0
b+c+d+e
f計
0
(2) 人間発達環境学研究科博士課程前期課程修了生の進路
区 分
心身発達専攻
3
16.67
3
c
公務員
2
教育・学習専攻
3
18.75
1
人間行動専攻
0.00
2
人間表現専攻
0.00
5
2.33
19
人間環境学専攻
1
a/g
割合
(単位:人・%)
就職者
a
進学者
b
企業
1
e
その他
2
b+c+d
e計
8
e/g
割合
44.44
2
3
1
7
2
3
1
d
教員
2
7
f
その他
38.89
18
43.75
6
37.50
16
8
80.00
2
20.00
10
5
62.50
3
37.50
8
28
65.12
14
32.56
43
32
33.68
95
(3) 平成24年度発達科学部卒業生の進路
区 分
人間形成学科
20
人間行動学科
a/g
割合
a+e+f
g計
7
計
7
7.37
30
8
14
4
56
58.95
*その他の内訳:就職希望10 進学希望1 常勤・非常勤講師7 公務員試験受験3 資格試験受験1 帰国1
非常勤職員6 研究生1 教員採用試験受験1 通信教育課程1
a
進学者
f/g
割合
(単位:人・%)
就職者
22.47
b
企業
32
c
公務員
11
3
5.66
39
人間表現学科
6
14.63
人間環境学科
13
12.62
d
教員
9
e
その他
1
b+c+d
e計
53
e/g
割合
59.55
2
4
1
46
22
1
1
49
12
12
f
その他
f/g
割合
a+e+f
g計
16
17.98
89
86.79
4
7.55
53
24
58.54
11
26.83
41
74
71.84
16
15.53
103
計
42
14.69
142
26
26
3
197
*その他の内訳 講師登録15 公務員受験6 就職活動継続11教員採用受験4 研究生1
主婦1 フリー1 進学希望3 不明1 大学入学1 専門学校2 専門学院1
68.88
47
16.43
286
- 67 -
1
6. 研究
6.1. 今年度の特長
今年度には新たに,外部資金によるプロジェクト研究が三つ始まった。一つはアクティブ・エイジングをテーマと
したもので,岡田修一教授を中心に 9 名の教員が灘区と協働して行う実践的研究であり,科学研究費補助金 基
盤研究Aに「多世代共生型コミュニティの創成に資するアクティブ・エイジング支援プログラムの開発」のテーマで
採択された。
同プロジェクト研究は,昨年度には研究科のプロジェクト研究として採択され,その成果が科学研究費補助金の
獲得につながった。研究科のプロジェクト研究は,「本研究科理念の実現と目標の達成に向けた分野横断型の学
際的研究プロジェクトの推進・発展を図ることを目的とする」とされており,本年度は 3 件が採択された。
二つ目は,平成 24 年度文部科学省特別経費「高度な専門職業人の養成や専門教育機能の充実」により支援
を受けた「高度教員養成プロジェクト」である。修士レベルでの高度な能力を持った教員を養成するためのプログ
ラム開発を目的としており,現場(幼稚園,小中学校)視点を重視したアクションリサーチを内容とする。実施責任
者は稲垣成哲教授で,7 名の本研究科教員が附属学校部と共同研究を行った。
三つ目は,地域連携研究であり,三木市と連携した「確かな学力向上プロジェクト」に渡部教授,山下准教授が
参与し,共同研究を開始した。今後,5 年間の共同研究を行う予定である。
各々の研究は,発達科学部・大学院人間発達環境学研究科のアイデンティティの創造,強化に繋がるため,今
後の更なる発展を期待したい。
昨年度に引き続き本年度も,震災復興支援に関わる研究活動が行われた。メンタルケア,復興支援のための調
査研究,大船渡復興支援の 3 つであり,各々外部資金を獲得した。
他機関との共同研究として,本年度の特記事項は以下 3 件である。1 件目は,榎本教授によるボツリオコッカス
の研究が戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(NEDO)に採択され,株式会社 IHI などによる
合同会社と連携して,藻類バイオ燃料事業に関する技術の共同開発が開始されたことである(7.1.参照)。2 件目
は,中川教授と人間環境学専攻の院生,修了生による共同研究が,生体物質を構成する複数の異なるアミノ酸中
の酸素原子近傍の局所的な立体構造の違いを検出することに成功し,スプリング 8 よりプレスリリースされたことで
ある(http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release)。3 件目は,渡部教授の「地域を創る教育福祉
―『障害児教育原論』の授業実践-」が神戸大学附属図書館のダウンロード数第 1 位となったことである(Kernel
通信第 9 号参照)。
研究科内の日常的な研究活動としては,自然環境論セミナー(通算 232 回),社会環境論セミナー(9 回),から
だの仕組みに関するセミナー(4 回),数理情報環境論セミナー及びシンポジウム(2 回),教育学関係の講演会,
シンポジウム(2 回)などが開催され,活発であった。
(人間発達環境学研究科長 朴木佳緒留)
6.2. 学術 WEEKS
学術 WEEKS はその活動を 2008 年にまで遡り,大学院 GP「正課外活動の充実による大学院教育の実質化」
<http://www.h.kobe-u.ac.jp/ja/aew> 及び人間発達環境学研究科の国際交流促進の試みとして創始された。学術
WEEKS2012 では 13 件の企画を開催することができ,参加者数 1,127 名,外国人招聘者数 12 名(8 カ国)にのぼ
る盛大なものとなった。本年度はこれまでの経験と実績を継承し,多彩で新奇性に富んだ学術・国際交流の場を
- 68 -
提供すべく,領域横断的な国際的企画開催を重点的に支援した。学術 WEEKS を通して,学生(大学院・学部)が
仲間とともに知的関心を共有し,具体的な形を与えていく作業の悦びを分かち合える場となったことは特筆すべき
成果であり,各自の関心と研究を見つめ直すよい契機として活用できた。さらに学生たちが各企画の立案・運営・
実施にじかに携わることによって得られた人的交流,運営に必要な技能の習得もまたきわめて貴重な成果といえ
る。
学術 WEEKS2012 の各企画の具体的概要と成果は次の表のとおりである。
企画タイトル
企画教員等
3
4
5
6
7
8
10
11
12
13
53
発達科学部
17
発達科学部
百年記念館
発達科学部
150
中川和道
10 月 27-28 日
11 月 12-18 日
11 月 14 日
伊藤篤
11 月 17 日
発達科学部
78
木下孝司
11 月 21 日
発達科学部
35
武田義明
伊藤真之
田中成典
蛯名邦禎
加藤佳子
11 月 25 日
発達科学部
113
11 月 26-29 日
2 月 3 日-23 日
142
末本誠
森岡正芳
長坂耕作
11 月 29-30 日
12 月 8 日
発達科学部
システム情
報学研究科
百年記念館
発達科学部
発達科学部
鈴木幹雄
塚脇 淳
1 月 21-23 日
発達科学部
129
研究科長
11 月 30 日
発達科学部
70
11 日 23 日
からだの仕組み関する学術交流会 1
近藤徳彦
からだの仕組み関する学術交流会 2
近藤徳彦
運動,運動トレーニング,環境及び健康に関
わる統合生理学の国際セミナー
冨士山アネット 新作のためのワークショッ
プショーイング(発表公演)
東京電力福島第一原子力発電所から放出され
た放射性物質のマッピングについて
イギリスの子育て支援に学ぶⅤ
近藤徳彦
10 月 25 日
10 月 29 日
11 月 7 日
11 月 15 日
12 月 16 日
「困難をかかえた子ども」の発達支援から学
ぶ─発達研究と保育・教育実践が出会うとき
高校生私の研究発表会 2012
ジェンダーと Well-being―男女共同参画社
会における健康増進
ライフストーリー:その可能性を探る
実社会における数式処理
日韓学術文化に心の扉を開く―グローバリゼ
ーション下の芸術教育の困難性とその現代的
可能性を探る
学術 WEEKS2012 レセプション
者数
発達科学部
田村文生
9
参加
290
9 月 23 日
第 1,2 回)
1
開催場所
西宮市立甲
東ホール
兵庫県立芸
術文化セン
ター
発達科学部
佐々木倫子
MucoArt Project vol.1, 2
(ムコアートプロジェクト
2
開催日
関典子
10
34
60
16
(学術 WEEKS2012 ワーキンググループ委員長 白水浩信)
6.3. プロジェクト研究
6.3.1. 健康増進支援プロジェクト研究
(1) はじめに
2009 年から中期計画の一つに健康科学研究の推進が取り入れられ,2011 年度からは本プロジェクトが HC セン
ターのプロジェクトとして位置付けられ研究活動を行ってきた。本年度は研究科シンポジウム経費を獲得し,この活
動を継続した。
- 69 -
(2)主な研究活動
1)研究交流会
子どもの傷害予防のための知識循環教育システム(大野美喜子 本研究科博士課程)という内容の研究交
流会を実施した。
2)学術 WEEKS における研究交流会
a)
ジェンダーと Well-being ‐男女共同参画社会における健康増進‐(加藤佳子)
社会的公正と公平のもとで女性の社会参画を実現し,男女が共に健康な生活を送っていくためには,子育
て支援や女性のウェルネスに注目した社会づくりが必要である。オーストリアではこの点に注目した研究や
取り組みがすでに行われていることから,オーストリアの研究者(Dr. Rosiwht Roth,Dr. Andreas
Schwerdtfeger,University of Graz)とともに青少年を対象に社会的性役割と Well-being に関する研究交流
を行った。
b) からだの仕組みに関する研究交流会(近藤徳彦)
運動継続と心臓の機能適応に関して,イギリスの研究者(Dr. Keith George,Liverpool John Moores
University)とともに研究交流会を実施した。
c)
Integrated physiology to exercise, exercise training, environment and health(運動・運動トレーニング・環
境・健康に対する統合生理学)に関するセミナ−(近藤徳彦)
以下の研究者からの報告をもとに,運動・運動トレーニング・環境変化・健康などに対する身体の調節機能
の仕組みを,筋・循環・体温調節領域から統合的に検討した。
Dr. Ken Nosaka (Edith Cowan University, Australia)
Dr. James Fisher (University of Birmingham, UK)
Dr. Masashi Ichinose (Meiji University, Japan)
Dr. Ahmad Munir Che Muhamed (University of Science Malaysia, Malaysia)
Dr. Narihiko Kondo and Tatsuro Amano (Kobe University, Japan)
3) シンポジウム
2013 年 3 月 23 日に,研究科シンポジウム経費の支援を受け,「大学・企業からみた健康増進支援の現状と
今後−男女の違いを考慮しながら−」というタイトルのシンポジウムを行った。詳細については,「研究科公開シ
ンポジウム」で記述する。
4) 他のプロジェクトとの連携
2012 年度から始まった“アクティブエイジングプロジェクト”と連携をはかり,鶴甲地域住民へのアンケート分
析を行った。これをもとに,2013 年度ではこの地域への健康増進支援を模索する予定である。
5) その他
本プロジェクトの HP:http://hphde.h.kobe-u.ac.jp/HsHde/Welcome.html
(人間行動専攻 近藤徳彦)
6.3.2. 研究科研究推進プロジェクト研究
(1)プロジェクト研究
1)ESD の基盤としてのライフヒストリーによる心理・教育支援(研究代表者:末本 誠)
日本ではまだ,ライフヒストリーの理解が十分ではなく,研究及び実践の方法論的な探求も明確になってい
- 70 -
るとは言い難く,内容やテーマ性に着目するインタビュー調査の一ジャンルに終わっているのが現状である。
本プロジェクト研究は,心理・教育支援の実践的な方法としてライフヒストリーを位置づけ,ESD 教育の基盤と
して洗練させていくことを目的とした。成果として,ナラティブ,ライフヒストリーを共通の方法論とするメンバー
による交流の場づくりをめざした研究会を開催するとともに,臨床心理学を専攻する大学院生向けに,成人教
育領域での研究方法としてのライフヒストリー研究の位置づけを講義する取り組みを行なった。また,学術ウィ
ークス 2012 へ参画し,ライフストーリーに関わる調査法等の集積を行なった。
2)アクティブ・エイジングに根ざした多世代共生型コミュニティの創出(研究代表者:岡田修一)
本プロジェクト研究は,アクティブ・エイジングに根ざした多世代共生型のコミュニティの創出に資するため
に,アクティブ・エイジングの観点から,鶴甲地区住民に対するアンケート調査を実施することによって,鶴甲
地区・住民の抱える「健康」「社会参加」「安全」に関わる課題を探求した。鶴甲連合自治会の協力のもと,鶴
甲地区の約 1900 世帯に対して,多世代共生をもとにした健康・社会参加・安全・安心に関するアンケート調
査を実施した(回収数 500 世帯,801 部;世帯回収率 26.3%)。アンケート集計の結果,1)鶴甲地区は高齢化
率が高く居住年数が長い人が多い,2)健康志向が高い,3)近隣住民との付き合いが少ない,4)世代間交流
が少なく居住地域に対する満足感に世代差がある,5)地域の災害時の安全性に対する満足度が低い,とい
う鶴甲地区・住民の特徴や課題が明らかになった。
3)専門領域複合型「こども教育専門職」育成プロジェクト(研究代表者:國土将平)
本プロジェクト研究は,「健康」「表現」「環境」「言葉」「人間関係」に関わる研究者が共同し,経験主義的ア
プローチによる国内外の養成教育について調査し,0~12 歳の子どもの発達に適した専門職養成教育の開
発をめざし実施した。成果として,絵本とそれに接する子どもの活動を通して,表現,言葉,人間関係の有機
的関連性について明らかにすることができた。また子どもの美術鑑賞教育において,美術資源と学芸員・子ど
もとの関係性や絵を描く活動と数理認識の観点から,表現,環境,人間関係の相互関係性を明らかにするこ
とができ,さらに音楽と体育という異なる領域からも身体の共通理解を通して健康と表現に共通する要素につ
いて確認できた。
以上,本年度 3 件の分野横断型・学際的プロジェクト研究が実施された。特筆すべきは,上記(1)及び(2)にあ
げたプロジェクト研究は,科学研究費補助金・基盤研究(A)に採択され,さらに枠を広げた研究活動へと引き継が
れていることである。
(2) 「研究推進支援経費」研究
1)東日本大震災による喪失経験が生き方や価値観の変化に及ぼす影響について(研究代表者:齊藤誠一)
本研究は,東日本大震災による多様な喪失経験がその後の生き方や価値観にどのような影響を与え
ているかについて,20~50 歳代の被災地及び被災地近隣の 156 名を対象とした調査(被災状況,物理
的・心理的喪失状況,生き方や価値観などに関する尺度や自由記述)によりデータを収集し,量的側
面と質的側面から検討した。成果は,次のとおりである。
a)喪失感には,家や町並みなど物理的存在の喪失,避難などによる人それまでの人間関係の喪失,とりわけ
原発事故により生まれ育った場所を元には戻らないという意味の喪失から構成されていた。
b)そうした失われた中で,困難に立ち向かっていける「ハーディネス」や困難の中で立ち直っている「レリジ
エンス」は福島県民が近隣県民より低かったが,心的外傷後の成長として「人間としての成長」ではより高
く,震災での心理的外傷をプラスの方向に向けていた。
- 71 -
c)他方,人生の中での重要性を問う価値観について,「自立性」「社会的評価」「学歴」で福島県民が近隣県民よ
り低く,具体的復興が伴わない段階でこうしたことをまだ重要であると考えにくいとしていた。
d)個人レベルでは,辛い経験は忘れて前向きに生きたいという思いながらも,自らの意思と関係なく日常に
突然 侵入してくる震災の記憶や感情に翻弄されている傾向があった。
2)教師の資質・能力向上に寄与する教師用指導書に関する研究(研究代表者:山口悦司)
教師用指導書に着目した科学教育研究は,その重要性にも関わらず,空白領域である。このため,現存す
る教師用指導書の中から有効なものを発掘したり,将来に向けて優れた指導書を新たに作り出したりするた
めの拠り所となる学術的な知見が欠落している。本研究では,科学教育分野の研究者と認知発達分野という
異なる専攻の研究者が総合的・学際的にアプローチするうえで, 教師の学習支援という観点から我が国の
教師用指導書の内実を明らかにする試みの第一歩として,小学校第 6 学年「月と太陽」の単元を事例とした
分析を行った。分析対象は,小学校理科教科書を出版している 6 社(学校図書,教育出版,啓林館,信州教
育出版,大日本図書,東京書籍)の教師用指導書(朱書編,資料編)における「月と太陽」の単元であった。
分析の結果に基づいて,「月と太陽」の単元に関する教師用指導書は,教師自身の内容知識の学習だけで
はなく,科学の内容に関する PCK や科学的探究に関する PCK の学習も支援しうるものであると推察された。
3)発達障害児・者に対する生涯発達支援システムの構築:幼小連携及び成人期支援に焦点を当てて(研究代
表者:鳥居深雪
本研究は,幼小のスムーズな接続,及び学校教育から社会への移行期に焦点を当て,発達障害児・者に
対する生涯発達支援システムについて検討を行った。成果は,次のとおりである。
a)神戸市の公立幼稚園1園,公立保育所 1 園を対象に,5 歳児(幼稚園・保育所の 4 歳児クラスに該当)の巡
回相談を行い,要支援児童の早期発見・早期支援モデルを検討した。すなわち,担任によるクラス全員の
行動観察評価をもとに,要支援児童についてアセスメントを行い,その後担任を含む教員集団との協議を
行ったところ,5 歳児巡回相談モデルでは,担任による一覧表を用いることのメリットとして,学級全体の状
況がわかること,その中で何を具体的に行っていくかが理解しやすいことがあった。また,クラスを基本にし
た支援モデルは,「クラス」という環境にも目を向けていること,発達障害のある子どもだけでなく,クラスの
他の子どもにとっても良い支援の在り方を検討できる,といった点が長所であった。
b)エコール KOBE の実践に着目し,そこで学ぶ青年たちの意識についてインタビュー調査を行った。調査協
力者は,エコール KOBE で 2 年間,学んでいる青年の中で,自己成長を語れる発達的前提のある 3 名(男
性 2 名,女性 1 名)とした。3 名は,程度の差はあるものの,それぞれが自己の変化・成長を感じていた。
6.3.3. 研究科公開シンポジウム
(1)発達研究の課題(その 2):「ヴィゴツキー理論」と教育・保育実践(代表者:渡部昭男)
1)日時:2012 年 12 月 15 日(土)10 時~17 時
2)場所:兵庫県学校厚生会館
3)参加者:約 120 名(埼玉県~鹿児島/10~80 歳代/研究者,教員,保育士,福祉職員,心理士,言語聴覚
士,看護師,学生・院生,出版関係者,会社員など)
4)概要と成果
2011 年度に引き続き,「発達研究の課題」に関する公開シンポジウムを開催した。今回取りあげたのは,37
歳という若さで夭逝したロシアの心理学者,ヴィゴツキー(1896-1934)である。彼の研究は,人格や情動の発
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達論,教授―学習論を中心に,今日の心理学・教育学・保育学・障害学などにおいて,少なくない影響を与
えている。
午前中の第一部「入門レクチャー:ヴィゴツキー理論とは何か」では,中村和夫(元神戸大学大学院教授/
京都橘大学教授)・土井捷三(神戸大学名誉教授)の二氏から分かりやすくミニ講義をいただいた。午後の第
二部「ヴィゴツキー理論と教育・保育実践」では,麻実ゆう子氏(元小学校教員/ロンドン大学 Ph.D)が「教育
実践の理論的基礎をなすヴィゴツキーの理論―「発達の最近接領域」の問題を中心として―」,神谷栄司氏
(京都橘大学教授)が「ヴィゴツキー理論が幼児保育実践に示唆するもの」と題した講演をいただいた。その
上で,参加者も交えて総合討論を行った。
彼の没後 80 年を前にして,「ヴィゴツキー理論」を今日の教育・保育実践といかに結んでいくかに焦点をあ
てて企画できた意義は大きく,参加者からも好評を得た。
実行委員は,他に木下孝司,川地亜弥子,赤木和重。
(2)大学・企業からみた健康増進支援の現状と今後−男女の違いを考慮しながら−(代表者:近藤徳彦)
1)日時:2013 年 3 月 23 日(土) 13 時 20 分〜16 時
2)場所:大会議室
3)参加者:約 20 名(教員,研究者,大学院生,企業関係者,一般市民:鶴甲など)
4)概要と成果
まず,本研究科での健康増進支援の取り組みを近藤徳彦教授が説明した。次に植木章三教授が仙台で
行っている高齢者に対する運動プログラム内容を紹介し,運動による地域への介護予防の提案があった。Dr.
Wilkie 講師からはオーストラリアでの子どもの健康問題とその対策についての報告があり,オーストラリア全体
で実施している子どもに対する健康支援の紹介があった。最後に,企業から健康増進を支援する IT 機器に
ついての発表があり,日常生活への IT 機器導入による健康支援の可能性について知ることができた。また,
それぞれの発表では男女の違いという視点からも研究報告を受け,今後,本研究科が実施する健康増進支
援プロジェクトの展開について貴重は情報が得られた。以下にシンポジウムのプログラムを示す。
a)健康増進支援プロジェクトの取り組み(近藤徳彦)
b)地域に対する介護予防運動プログラムの実践から介護予防に資する“運動”を考える(植木章三:東北
文化学園大学)
c)Health Promotion for Children in Australia (Dr. Jodie Wilkie: Edith Cowan University, Australia)
d)健康増進を支援する IT 機器とその応用(橋本英樹:株式会社プロアシスト)
e)総合討論
(副研究科長 岡田修一)
6.3.4. 高度教員養成プログラム
(1) 目的
高度教員養成プログラムは,平成 24 年度文部科学省特別経費「高度な専門職業人の養成や教員養成機
能の充実」,事業名「大学院修士課程における高度教員養成プログラムの開発 −21 世紀型知識基盤社会
をリードできる教員の養成を通して−」の支援を受けて実施された。知識基盤社会をリードできる高度な能力
を備えた教員の養成は極めて重要な課題であり,その解決に資するため,附属校園を活用したアクションリ
サーチなどによる実証的研究を通して,修士課程レベルにおける高度教員養成プログラムを開発することを
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目的としたものであった。
(2)実施体制と参加者
実施体制は,人間発達環境学研究科,発達科学部,附属学校部であり,参加学生は,人間発達環境学
研究科の博士課程前期課程に在籍し,修士論文として,附属校園を活用したアクションリサーチなどによる
実証的研究に取り組むとともに,将来教職を目指すものとした。
(3)プログラムの内容
プログラムの内容は,内外の優れた研究者,実践者,行政職員等を招聘した高度教員養成セミナー8 回,
公開国際シンポジウムを含む特別セミナー6 回,附属校園の観察実習等への参加を基本としながら,学生が
それぞれの研究関心に即して,附属校園や海外においてアクションリサーチを展開し,その成果を内外の学
術学会に発表することであった。
以下には,9 名の参加学生によるアクションリサーチの研究テーマを列挙している。なお,( )内は,連携先
及び調査先である。
・小学 6 年生の意見文作成能力を高める国語科単元の開発(附属小学校)
・Squeak,Dr.GEO を用いた数学授業(附属中等教育学校)
・教員組織における研修の実際(附属中等教育学校及び米国オハイオ州)
・5 歳児の自由遊びにおける基本的動作の種類とその定義(附属幼稚園)
・小学校理科授業におけるデジタル運勢ラインシステムの実践的評価(附属小学校)
・ARCS モデルに基づいた小学校理科授業の方略(附属小学校)
・アーギュメンテーションを促進するための教授方略の研究:静電気を題材とした小学校第 6 学年
の理科授業を事例として(附属小学校)
・幼稚園における自然体験活動(附属幼稚園)
・幼稚園における科学絵本の読み聞かせ実践(附属幼稚園)
(4)修了認定
上記のプログラムへの参加要件を満たした学生には,修了認定書を発行した。本年度は,9 名の参加者全
員が修了認定された。
(5)研究発表等業績
本プログラムからの支援を受けて,国際会議,国内学会等に発表された主要なものは以下の通りであっ
た。
Muratsu, K., Inagaki, S., & Kamiyama, S. (2012, June). Developing argumentation skills in Japanese
elementary schools: A case study of 6th-grade elementary school students (11-12 years old) in science
lessons on ‘static Electricity’. Poster session presented at 2012 Annual Conference of Australasian
Science Education Research Association, Queensland, Australia.
Nakagawa, A., & Kitano, S.(2012, August). Science Picture Books for Early Childhood in Japan: How can
we use from children’s perspectives. 22nd European Early Childhood Education Research Association
Conference "Pre-Birth to Three: identities, learning, diversities", Oporto, Portugal, p.298.
田中一磨・下吉美香(2012,9).ARCS モデルに基づいた小学校理科学習の展開―第 6 学年「電気の利
用」の単元デザイン―,日本理科教育学会全国大会発表論文集,第 10 号,p.265,2012.
若原ひとみ (2012,9). モラルジレンマ課題に対する小学 6 年生の回答分析 ―モラルジレンマ課題の意
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見文指導への適用を目指して―,日本教育心理学会第 54 回総会発表論文集,p.35,琉球大学.
田中孝典,北野幸子(2012,9). 幼児教育における自然体験活動:ノルウェーと日本の比較を中心に
(Nature Activities in Early Childhood Care and Education: The Comparison between Norway and Japan),
国際幼児教育学会第 33 回大会発表論文集,pp.119-120, 函館短期大学・函館大学.
Nakashin, S., Yamaguchi, E., Funaoi, H., Murakami, M., & Inagaki, S. (2012, October). Enhancement and
evaluation of the counting function of the digital fortune line system toward supporting science learning.
Proceedings of E-Learn2012, Montreal, Canada, pp.2044-2049.
河内 亮介(2013, 3).5歳児の自由遊びにおける基本的動作の種類とその定義, 日本発育発達学会第 11
回大会プログラム・抄録集,静岡産業大学,p.83.
(6)社会的に評価された研究
「幼稚園における科学絵本の読み聞かせ実践」については,社会的に注目される研究として新聞報道が
なされた。
科学に親しむ入り口に:関心にあった絵本を,読売新聞関西版(2013 年 2 月 11 日)朝刊 19 面,
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/kansai1335157732988_02/news/20130303-OYT8T00272.htm
(7)広報
本プログラムのすべての内容は,研究科 HP より情報を発信した。
http://www.h.kobe-u.ac.jp/ja/node/1568
(教育・学習専攻長 稲垣成哲)
6.4. 研究推進
6.4.1. 研究推進委員会
平成 24 年度,研究推進委員会は,6 回の会議(引き継ぎ会議およびメール会議を含む)を開催した。会議時間
のほとんどを,定期的に原稿を募集・査読依頼・編集している「神戸大学大学院人間発達環境学研究科紀要」の
刊行に関連する協議に費やしたが,研究科における「研究推進支援経費」「プロジェクト研究経費」「シンポジウム
経費」などへの当委員会のかかわり方や発達科学部 20 周年を迎えた特別号の刊行に関する協議も行った。その
結果,少なくとも平成 24 年度については,当委員会が「研究推進支援経費」の選定にかかわること,「発達科学部
20 周年特別号」を第 3 号(通常の第 1 号・第 2 号に加えて)として刊行するべく,当委員会が執筆者の選定・寄稿
依頼・編集を行うことを決定した。
平成 24 年度に研究推進委員会が編集・刊行した研究紀要の概要は以下の通りである。
・2012 年 9 月 28 日,神戸大学大学院人間発達環境学研究科紀要第 6 巻第 1 号を発行。
研究論文 8 編(査読あり),研究報告 5 編(査読なし)を掲載した。
・2013 年 3 月 28 日,神戸大学大学院人間発達環境学研究科紀要第 6 巻第 2 号を発行。
研究論文 5 編(査読あり),研究報告 4 編(査読なし)を掲載した。
・2013 年 3 月 28 日,神戸大学大学院人間発達環境学研究科紀要第 6 巻第 3 号・特別号を発行。
巻頭論文 1 編,プロジェクト研究論文 3 編,プロジェクト研究報告 1 編を掲載(すべて寄稿)した。
(研究推進委員会委員長 伊藤 篤)
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6.4.2. 研究倫理審査委員会
本年度新規申請で 20 件,再申請 1 件の申請があった。新規申請 20 件のうち,承認が 17 件であり,非該当が 1
件であった。再申請 1 件については承認となった。
なお,研究科 HP に審査申請書作成要領を掲載して以降,申請書類が不備であるケースが激減した。
最後に,本年度の委員長は武井義明教授であったが,ご逝去されたため,年度途中で委員長交代となった。こ
の場を借りて,武井義明先生に哀悼の意を表したい。
(研究倫理審査委員会委員長 中村晴信)
6.5. 各専攻の研究
平成 24 年度において行われた各専攻における特徴的な研究,プロジェクト研究等について記載する。
6.5.1 心身発達専攻
以下のような専攻に特徴的な研究が行われた。
・「東日本大震災と心のケア」に関して,
1) 福島県の養護教諭と連携した「心のケア担当教員に対する支援事業」(国大教支援事業),
「自ら被災者と言えない被災者の精神的健康と今後必要とされる支援の検討」(都市安全研究センタ
ープロジェクト)に関わり,経費を取得し,実践研究を遂行した。
2) 東北大学学生相談所との連携した「東日本大震災に心理的影響と支援のあり方に関する継続的研究」
(神戸大学サポート経費)を行った。以上の事業について,成果を学内シンポジウム 2 件,東北大での
シンポジウム 1 件,日本発達心理学会大会ラウンドテーブル 1 件で公表した。
・ライフスキル形成を基礎とする,いじめ,性行動,喫煙,飲酒,薬物乱用などの思春期の危険行動防止プロ
グラムの開発研究を,新潟市教育委員会,川口市教育委員会,福山市教育委員会,姫路市教育委員会,
兵庫県警などと連携しながら進めている。
・学齢期における生活習慣が体組成に及ぼす影響について,淡路市の小中学校において,二重エネルギー
エックス線法を用いた測定及び生活習慣調査を軸とした縦断研究を展開している。
・自己決定理論に基づき健康な食生活を送る動機づけを測定する尺度を開発し,子どもの頃の食生活との
関連性について検討したところ,子どもの頃の「豊かな食事」,「食事作りへの参加」,「食卓のポジティブな
雰囲気」が内発性に関連していることが示された。
・24 年度のプロジェクト研究支援経費を取得し,学術 WEEKS2012 では,大学院生も企画運営研究発表に参
加した(「ESD の基盤としてのライフヒストリーによる心理・教育支援」代表・末本誠)。
・24 年度の 研究推進支援経費を取得し,「発達障害児・者に対する生涯発達支援システムの構築:幼小連
携及び成人期支援に焦点を当てて」をテーマに取り組んだ。研究成果は,公開シンポジウムを実施して一
般市民にも報告した。
(心身発達専攻長 森岡正芳)
6.5.2 教育・学習専攻
本専攻では,原則的に構成員がそれぞれのテーマに取り組んでいる。本年度では,専攻全体として共同で取り
組まれた研究はないが,教育研究分野を主体とする研究誌の発行,シンポジウム・講演会の企画・運営,教員間
における個別のプロジェクト研究等が展開されている。
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主要なものとしては,教育研究分野のうち,教育科学論では,『教育科学論集』第 16 号を発行し,研究推進を図
っている。シンポジウム・講演会としては,教育科学論が公開シンポジウム「ヴィゴツキー理論」と教育・保育実践
(2012 年 12 月 15 日,参加者約 120 名),子ども発達論が「「困難をかかえた子ども」の発達支援から学ぶ─発達
研究と保育・教育実践が出会うとき」(2012 年 11 月 21 日,参加者 35 名),「参画型保育実践研究のこれから:保育
実践現場と保育研究をつなぐ」(2013 年 2 月 23 日,参加者 120 名)等を開催してきている。専攻の教員を中心に
実施されたプロジェクト研究としては,本研究科の研究推進経費から「教師の資質・能力向上に寄与する教師用
指導書に関する研究」,同「専門領域複合型「こども教育専門職」育成プロジェクト」等があり,専攻内における共
同研究が展開されている。
また,科学研究費補助金による研究も精力的に行われている。まず,専攻の構成員が代表であるものでは,基
盤研究(A)「多世代共生型コミュニティの創成に資するアクティブ・エイジング支援プログラムの開発」,基盤研究
(B)「科学的言語能力育成のための知識構築型アーギュメンテーションの理論と指導法の確立」,基盤研究(B)
「社会関係資本とキーコンピテンシーによる困難事例自己解決コミュティ開発の方法」,基盤研究(C)「「文検」修
身科の研究」,基盤研究(C)「米国における分権改革下の「学校のミクロポリティクス」に関する研究」,基盤研究
(C)「家庭との連携に関する保育者の専門性:家庭教育力向上のための保育実践研究」,基盤研究(C)「小学生
の習熟度レベルに応じた走運動の評価・指導方法の開発」,基盤研究(C)「交渉能力の育成をめざした社会科教
育の理論研究と教育ゲームの開発,実施,評価」,基盤研究(C)「障害児の就学・進学・卒業時における移行支援
システムの構築-市町村ベースの体制整備」,基盤研究(C)「幼児期における教示行為の発達とその認知的基盤:
縦断研究による検討」,基盤研究(C)「明治期における子どもの読書活動に関する歴史社会学的研究」,挑戦的
萌芽研究「科学教育政策の投資効果を評価・予測するための経済学アプローチに関する基礎的研究」,挑戦的
萌芽研究「科学系博物館における聴覚障害者のためのサイエンス・コミュニケーション・デザイン」挑戦的萌芽研究
「コーパスの構築を通した労働・職業関連生涯学習の問題構造の解明」,挑戦的萌芽研究「テーマ型コミュニティ
創成による切れ目のない支援の実践と効果に関する研究,」挑戦的萌芽研究「グローバル・アゴラ・ネットワークに
よる連帯の概念と組織化の方法」等を挙げることができる。
次に,分担のものでは,基盤研究(A)「科学的素養醸成のコミュニケーション・メディアとしての科学絵本教育モ
デルの開発」,基盤研究(A)「学習科学を応用した 21 世紀型スキルを促進する教師教育プログラムの開発」,基
盤研究(A)「保護者—学校間の困難状況解決のためのサポート体制構築に関する学際的・総合的研究」,基盤研
究(A)(一般)「日本人の基礎的動きの標準値及びデータベースの構築」,基盤研究(B)「戦後沖縄における教育
実践史研究」,基盤研究(B)「位置計測技術を応用してフル・ボディ・インタラクションを実現した環境問題学習ゲ
ーム」,基盤研究(B)「理科の授業構成力と実践的指導力を養成する教師教育用ケースメソッド教材の開発」,基
盤研究(B)「人物計測技術を応用し没入感と事後評価定量化とを実現する古生物環境学習システム」,基盤研究
(B)「聴覚障害者とともに楽しめるデジタルモバイルシアターの研究」,基盤研究(B)「ロボットと拡張現実手法を融
合したテーブルトップ協調学習支援環境の構築と評価」,基盤研究(B)「聴取力と批評力を基盤とした音楽鑑賞能
力の育成プログラム開発のための基礎的研究」,基盤研究(B)(海外学術)「欧州における科学技術系博士号取
得者のキャリア形成を支援する事業マネジメントの研究」,基盤研究(B)(海外学術)(海外学術調査)「幼年期の
新世紀型科学教育世界基準の創成へ向けた学術調査研究」,挑戦的萌芽研究「幼児期から科学への憧れと探
究心を育てるための科学絵本デザイン論の構築」,挑戦的萌芽研究「ナノサイエンス準備教育のための初等科学
教育の設計」,挑戦的萌芽研究「高齢者のための歩行を支援する「お散歩ナビ」のデザイン」,挑戦的萌芽研究
「ユビキタスコンピューティングを活用したアクティブシニアの生涯学習モデル」等があり,本専攻の教員が極めて
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幅広い研究に取り組んでいることがわかる。
その他の外部資金では,科学技術振興機構「キーワード群構造に基づくノートとしての知識記録と Web 文書か
らの吸収によるその拡張を支援するモバイルシステムの開発」等も分担として獲得している。
顕著な研究成果としては,北野幸子准教授による「アメリカの保育専門組織による保育改革-全米乳幼児教育
協会(NAEYC)の動向を中心に-」と題した論文が,国際幼児教育学会学術賞(International Association of Early
Childhood Education Academic Research Award 2012)を受賞している(2012 年 9 月 30 日)。
(教育・学習専攻長 稲垣成哲)
6.5.3 人間行動専攻
人間行動専攻の研究活動は,人間の発達と人間の行動の係わりについて学際的視点から研究し,人間行動を
体系化することである。本専攻教員の具体的研究内容としては,「人間行動・身体運動のメカニズム」,「体内・外
的環境の変化に対する心身の適応・発達・加齢現象」,「各ライフ・スパンにおけるアクティブなライフスタイルの構
築」等について研究を進めている。研究体制は,基本的には1教員1分野であり,各教員がそれぞれのテーマで
研究を進めている。各教員の研究内容に関しては,昨年度の年次報告書別冊資料編「教員の代表的研究」を参
照願いたい。
人間行動専攻の研究活動としては,専攻又は教育研究コースでの人間行動に関するプロジェクト研究の推進
が求められている。現在進められているプロジェクト研究の具体的課題として,「各ライフステージにおける健康増
進の総合研究」や「子どもの「遊び」動作からみた基礎的運動スキルの獲得と発達に関するプロジェクト研究」,「子
どものスポーツタレントの発掘・育成プロジェクト研究」,「アクティブ・エイジングに根ざした多世代共生型コミュニテ
ィの創成プロジェクト」が専攻教員が中心となって進められている。
海外との連携も進めている。今年度は准教授1名が研究活動でイギリスに長期留学(平成 24.4~平成 25.3)した。
また専攻としてオーストラリアの西オーストラリア大学とエディス・コーエン大学との交流提携を進めるため,2 名の
教員がオーストラリアに出張した。
(人間行動専攻長 平川和文)
6.5.4 人間表現専攻
平成 24 年度において,理論研究や著作活動,また創作活動が活発に行われたが,各教員の専門分野におけ
る研究,創作活動が主になっている。人間表現専攻では「表現学」の構築を掲げているが,理論的研究と実践的
研究を融合していくためのプロジェクト研究をどのように企画し,推進していくかが課題である。ここでは,専攻の教
員・学生の研究活動について特記事項を記載する。
【田村文生】
■室内楽作品がテグ国際現代音楽祭(韓国),及び Klangwerkstatt Berlin Festival für Neue Musik(ドイツ)に
招待され,初演された。
■埼玉県立川越高等学校,武蔵越生高等学校,光が丘女子高等学校それぞれから 吹奏楽の新作が委嘱さ
れ初演された。
【關典子】
■受賞(教員:關典子)
・2012 年 10 月「神戸大学学長表彰 特別賞」
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■受賞(学生・教育面:舞踊ゼミとして)
・2012 年 9 月「アーティスティック・ムーブメント・イン・トヤマ 2012
~少人数のための創作ダンスコンクール~」にて「松本千代栄賞」(最高賞)
・2012 年 10 月「紫陽会賞」
・2013 年 1 月「座・高円寺ダンスアワード」入選
・2013 年 2 月「第 32 回 こうべユース賞」
・2013 年 3 月「神戸大学学生表彰」
■研究・社会活動(学内外からの参加者多数)
・2012 年 6 月(於:発達科学部 身体表現スタジオ)
神戸大学 平成 24 年度 国際交流促進事業 「トーマス・デュシャトレ&市田京美ダンス・ワークショップ
~コンテンポラリーダンスの源流と未来~」企画・実施
・2012 年 10 月~11 月(於:発達科学部 身体表現スタジオ,百年記念館六甲ホール)学術 weeks2012 企画
「冨士山アネット 新作のためのワークショップショーイング [Research for Siauliai](リサーチ for シャ
ウレイ)」企画・実施
【塚脇淳】
■PENZA 国際彫刻シンポジウムに招待参加し大型野外彫刻を設置した。
■山中澪(学部4年)学生 CG コンテスト(公益財団法人 CG‐ARTS 協会)の賞にノミネートされた。
【佐々木倫子】
■mucoArt project を立ち上げ第 1・2 回のコンサートを行った
mucoArt project:神戸大学大学院人間発達表現学研究科(及び旧教育学研究科),神戸大学発達
科学部(及び旧教育学部)の在学生・卒業生・教員を中心としたメンバーによる,作品・演奏・パフォーマ
ンスの発表の場。若いアーティストの活動の場やアート・マネ ジメントの機会を提供すると同時に神戸大
学と地域社会とコミュニケーションを図ることを主たる目的とする。六甲(ムコ)にちなんで命名
第 1 回 2012.9.23 西宮市立甲東ホール 「M-i/a/e-x/t/d-re-am/me Con-temporary-cert」
第 2 回 2012.11.23 兵庫県立芸術文化センター小ホール 「晩秋に贈るロシア音楽」
【岸本吉弘】
■愛知県美術館が岸本吉弘作「NARAI-Hidden Dragon」縦 218×横 582cm(2007 年作)をパーマネントコレ
クションに加える。2012 年度購入。
■田中美佳(D1)
アートミーツケア学会愛媛大会にてポスター発表「アウトサイダーアートとエイブルアートの境界線」を行
い,医療とアートとつなぐインタビュー映像セッションにおいては関西 6 名の研究者として選抜され意見
公開がされた。
【大田美佐子】
■音楽学ができる社会貢献として,「舞台芸術振興」の分野で
以下のような様々な機会に恵まれた。
・読売新聞での定期的な音楽批評「音楽の窓」
・朝日放送音楽特別番組における解説(「調律師という芸術家」1 時間番組)
・滋賀県びわ湖ホールでのプレレクチャーなど音楽普及活動。
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(レクチャーはびわ湖大津秋の音楽祭参加事業)
・大阪いずみホールでの音楽普及活動。(ウィーン音楽祭に関連した原稿執筆)
・フェニックスホールでのコンサートオーディション審査員。
・大阪市城東区のクラシックカルチャーサロンでの音楽普及活動
・日本芸術文化振興会の舞台芸術調査員として活動
(人間表現専攻長 塚脇淳)
6.5.5 人間環境学専攻
本専攻では,多分野の教員が自身のテーマを発展させ,多彩なプロジェクトに従事していることから,研究展開
のあり方がきわめて多様である。そのなかから,本専攻のメンバーが中心的な役割をはたしている共同研究のごく
一部を以下に紹介する。
高見泰興(自然環境論コース)
共同研究者:曽田貞滋(京都大学)
研究概要:科学研究費補助金にもとづき,交尾器進化による種分化に関して,種間差をもたらす性選択と
遺伝子にとくに着目して,研究を進めている。
高見泰興(自然環境論コース)
共同研究者:曽田貞滋(京都大学)
研究概要:貝食性オサムシと陸貝の多様性,適応,共進化に関して,科学研究費補助金を得て研究を進
めている。
高見泰興(自然環境論コース)
研究概要:種分化関連ゲノム領域に作用する自然淘汰の解析に関する研究を進めた。科学研究費補助
金にもとづいている。
源利文(自然環境論コース)
共同研究者:近藤倫夫(龍谷大学)ほか 4 名程度のグループ
研究概要:科学研究費補助金にもとづき,琵琶湖を中心とした淡水域における脊椎動物群の群集組成を,
環境 DNA を用いて明らかにする手法の開発を行っている。
源利文(自然環境論コース)
共同研究者:近藤倫夫(龍谷大学),益田玲爾(京都大学)ほか 5 名程度のグループ。
研究概要:科学技術振興機構の研究プログラムに基づき,環境 DNA 手法の海洋への適用を目指して,舞
鶴湾をフィールドとした実践的研究を行っている。
江原靖人(自然環境論コース)
共同研究者:大阪大学産業科学研究所
研究概要:科学研究費補助金及び,物質・デバイス領域共同研究拠点の助成にもとづき,「インフルエン
ザウイルス感染阻害能を有する糖鎖修飾核酸の合成」に関する共同研究を推進している。
江原靖人(自然環境論コース)
共同研究者:北海道大学電子科学研究所
研究概要:物質・デバイス領域共同研究拠点の助成にもとづき,「DNA ポリメラーゼを用いた,金属イオン
応答性長鎖二重らせん DNA の合成」に関する共同研究を推進している。
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長坂耕作(数理情報環境論コース)
共同研究者:桐生裕介(Studio Phones)。
研究概要:数学・計算機・芸術の領域を横断する多様なトピックに関してセミナーとワークショップを“Studio
Phones Seminar”として開催し,分野を超える研究発展のあり方を探求している。2012 年度では,
延べ 28 名が講演した。なお,本セミナーは,2013 年度より数理情報環境論の公式プロジェクトに
なり,名称を「Kobe Studio Seminar」として開催予定である。
近江戸伸子(生活環境論コース)
共同研究者:大学評価学位授与機構ほか。
研究概要:科学研究費補助金を得て,欧州における科学技術系博士号取得者のキャリア形成を支援する
事業マネジメントに関する教育社会科学的研究を行った。オランダ,フランス,イギリスでの現地
調査にもとづく研究である。
近江戸伸子(生活環境論コース)
共同研究者:本学農学研究科教員
研究概要:アクアフォトミクスを用いた生体内水分子構造の解析による細胞の生存能力診断に関する研究
を進めた。近赤外分光分析についての分子細胞学的研究である。科学研究費補助金にもとづい
ている。
近江戸伸子(生活環境論コース)
共同研究者:鳥取大学
研究概要:鳥取大学乾燥地研究センター共同プロジェクト研究として,油糧植物ジャトロファの早期開花組
換え体創出に関する研究を行った。植物バイオ燃料に関する基礎研究である。
白杉直子(生活環境論コース)
共同研究者:大村直人(神戸大学大学院工学研究科)ほか
研究概要:JST の先端的低炭素化技術開発(ALCA)の探査研究としての助成を得た共同研究者らによる,
家庭部門の飛躍的省エネを目指した厨房省エネの事前研究に指導助言者として加わり,実質的
に研究の推進に携わった。
平山洋介(生活環境論コース)
共同研究者:佐藤岩夫(東京大学社会科学研究所)ほか
研究概要:三井物産環境基金の東日本大震災復興助成(研究助成)を得て,津波被災地の住宅・都市復
興に関する大規模な調査研究を実施した。
社会環境論コース所属教員
研究概要:科学研究費補助金にもとづき,「東アジアにおける越境的社会圏の可能性と課題」に関する共
同研究を推進している。本年度は,本研究に関して,8 回にわたる社会環境論セミナーを開催し,
分析を前進させた。
(人間環境学専攻長 平山洋介)
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7. 産官学共同・地域連携による教育・研究活動
7.1.ベンチャー創成研究・産官学共同
2004 年 6 月に,自然界・生物界からの有用遺伝子の探索・開発を目的に,神戸大学発ベンチャー企業として株
式会社ジーン・アンド・ジーンテクノロジー(G&GT) を設立した。最近では,持続可能なエネルギー生産と地球規
模での CO2 削減を目指して,重油生産藻類を日本中のダム湖から集め,その品種改良・開発を行っている。化石
燃料に代わるエネルギーの1つとして,重油などのオイルを生産する光合成生物“藻類”が注目を集めているが,
中 でも,乾 燥藻 重量の 50%もの 重油を生 産す る能力 をもつ淡水 性の藻類「ボトリ オ コッカス・ ブラウニ ー
( Botryococcus braunii )」に着目した研究を行っている。中でも 2009 年に石油系炭化水素生産藻「ボトリオコッカ
ス・ブラウニー( Botryococcus braunii )」から育種開発に成功した新品種の藻“榎本藻”は乾燥藻重量の 50%もの
オイルを生産する能力を維持しながら世界最高の増殖速度を持つ品種に改良することに成功した。2012 年より,
この高速増殖型のボトリオコッカス藻“榎本藻”を使って,IHI・ネオモルガン研究所・神戸大学の三者で,藻からオ
イル生産の実用化を目指して,NEDO の資金援助の下,産学連携でさらなる研究開発を行っている。
この藻が光合成によって二酸化炭素 CO2 から生産する石油系オイルは,ジェット燃料,ガソリン,軽油などのエ
ネルギー資源として利用できるだけでなく,プラスチックや化学繊維の原料も供給でき,石油と異なり新たな CO2
排出をしないカーボン・ニュートラルな地球環境に優しい,かつ食料生産とも競合しない“夢のエネルギー生産シ
ステム”である。現在“榎本藻”のさらなる改良・開発,特に他の高速増殖藻にも負けない新たな形質を付与すべく
努力している。特に,遺伝子組み換えシステムの構築は,将来のこの藻の利用に欠かせない技術である。しかし,
現在までに世界のどの研究者もこの石油系オイル生産藻ボトリオコッカスへの遺伝子導入に成功していない。神
戸大学ではこの藻の将来的有用性を考慮し,榎本藻を材料にオイル生産ボトリオコッカス藻への遺伝子導入シス
テムの開発に取り組んでいる。
(人間環境学専攻 榎本平)
7.2. 地域連携
7.2.1. スポーツプロモーション
(1) 「神戸マラソン 2012」
神戸マラソンの基本構想を決める「フルマラソン大会検討委員会」(2009)の委員長を務めてから,「第 1 回神戸
マラソン 2011」「第 2 回神戸マラソン 2012」と継続して,兵庫県と神戸市が主催する都市型市民マラソンの運営をサ
ポートしてきた。「神戸マラソン 2012」においては,神戸マラソン 2012 実行委員会委員を務め,大会参加者のイベ
ント評価に関するランナー調査及び学生ボランティアのコーディネート等を行った。
ランナー調査においては,生涯スポーツゼミ生及び身体行動論コース学生・院生により,フルマラソン・クオータ
ーマラソンのフィニッシュ地点において,質問紙調査を実施した。回収した 1,326 票の調査票のデータ分析により,
大会参加決定における重要性と大会満足度を明らかにし,さらに参加者の大会参加における支出額と市民マラソ
ン大会へのイメージ・参加意欲等を調べ,参加者の性別,参加コース,及び居住地において比較した。
学生ボランティアのコーディネートにおいては,兵庫体育・スポーツ科学学会(山口泰雄会長)と連携・協働を進
め,神戸大学を中心にして,兵庫・大阪における 16 大学・専門学校等に学生ボランティアの派遣を依頼し,432 名
の学生ボランティアが活動を展開した。活動場所は,最もマネジメントが困難な,35 キロ地点から神戸大橋ブロック
を担当した。また,フィニッシュブロックにおいて手荷物返却を,16 大学・専門学校の 18 名の教員と共にランナー
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支援を行い,学生ボランティアの活動評価に関する質問紙調査も実施した。ランナー調査の結果及びボランティ
ア調査の結果は神戸マラソン大会実行委員会で報告し,また兵庫体育・スポーツ科学学会・学会大会及び日本
体育学会・学会大会等において院生・学生が研究発表を行い,市民マラソン大会への地域貢献の成果を公表し
た。
(人間行動専攻 山口泰雄)
(2) マスターズ甲子園プロジェクト
「マスターズ甲子園」は,全国の高校野球 OB/OG が,性別,世代,甲子園出場・非出場,元プロ・アマチュア等
のキャリアの壁を越えて出身校別に同窓会チームを結成し,全員共通の憧れであり野球の原点でもあった「甲子
園球場」で白球を追いかける夢の舞台を目指そうとするものである。全国 200 万人と推計される元高校球児による
各地域での OB/OG 野球クラブの活性化,生涯スポーツとしての野球文化の発展,熟年(マスターズ)世代と共に
高校球児を含めたユース世代にも応援メッセージを発信しながら,活力と夢に満ちた個人・地域・社会・未来への
創造と発展に寄与していくことを開催目的とし,神戸大学発達科学部の教員,職員,学生が中心となって産官学
民の連携体制により 2004 年から第 1 回大会を始動した。大会事務局と主催団体である全国高校野球 OB クラブ
連合の事務局を神戸大学発達科学部内のスポーツプロモーション研究室に併設し,神戸大学による後援のもと,
大学による社会貢献活動とアクションリサーチを展開すると共に,スポーツ振興や生涯教育,老年学等のテーマに
興味を持つ大学生が,成人・中高年のスポーツ活動支援や生きがい創造支援への直接的関与を可能にしていく
ための,学内外における学習機会として機能していくことを目指している。今年度の事務局運営は,大会開催日
(11 月 10 日・11 日)が正式決定する 1 月下旬から始動し,その後,平均して週 1 回の大会運営委員会を開催し,
3 月から 9 月までの期間で開催された各都道府県における地方予選大会支援と並行しながら,甲子園本大会に向
けてのプログラム立案,出場者受付,PR・広報事業,財源の確保,ボランティアマネジメント等の準備作業を進め,
大会前日の総会運営,大会当日運営,大会終了後の事後処理を行った。マスターズ甲子園 2012(第 9 回大会)
には,16 都府県の地方予選大会から代表チーム(計 767 名)が出場し,また,甲子園キャッチボール(元高校野球
関係者,親子,夫婦によるペアによる自由参加プログラム)に 32 都府県から計243ペアが参加した。神戸大学学
生・院生を中心とした全国の学生ボランティア,成人・中高年ボランティア,近畿圏の高校生を含めた計 568 名の
ボランティアがスポーツプロモーションの一環として大会運営を支え,本学部からは,教員3名,大学院生 8 名,学
部生 72 名,本学部卒業生 46 名が参加した。現在,大会事務局が運営する全国高校野球 OB クラブ連合には 33
都道府県,約 2 万人が登録し,各地方組織と本大会を支える各種民間団体や行政組織との連携事業として本プ
ロジェクトを進めていく。
(人間行動専攻 長ヶ原誠)
7.2.2. その他の地域連携
神戸大学の地域連携は地域連携推進室が中心になって実施しているが,同室の経費により推進する事業とし
て,伊藤真之「兵庫県内の市民グループによる科学コミュニケーション活動への支援」(30 万円),松岡広路「ESD
ボランティア育成プログラム拡張支援事業」(45 万円)が採択された。前者はサイエンスショップ,後者は HC センタ
ー事業として行われており,ともに全学的に承認されたことになる。またその他の地域連携については、「8.社会的
活動・震災復興支援」、「9.付属施設」も参照されたい。
ここでは、兵庫県三木市、鳥取県南部町との連携事業についてのみ記す。
(1) 兵庫県三木市との連携事業
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兵庫県三木市と神戸大学とが協定を結んで連携事業を行うことになった。その一環として,三木市の掲げる「次
世代育成プロジェクト事業」には主に本研究科が参加して,2012 年度から「確かな学力向上プロジェクト」がスター
トした。数回の打合せを経て,2013 年 1 月 31 日には「三木市学力向上推進委員会」がスタートした。今後,2017
年度までにわたる共同の取り組みが展開される予定である。
(教育・学習専攻 渡部昭男・山下晃一)
(2) 鳥取県南部町におけるコミュニティスクールの実地訪問
鳥取県南部町は,地域と学校の関係を発展させることを企図して,「コミュニティスクール(地域協働学校)」を展
開している。高齢化が進む南部町では,共働きの多い両親に代わって,祖父母が GTA という学校応援団をつくっ
て積極的に参加している。人間発達と地域の持続的発展との関わりを考究するために,前期科目「教育政策」に
南部町教育委員会の野口高幸課長をお招きして特別講義をいただくとともに,受講生等から有志をつのって現地
訪問を行っている(2011 年度~)。今年度は,2012 年 9 月 11 日に 10 名の学生・院生・教員が現地を訪問し,交流
した。
(教育・学習専攻 渡部昭男)
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8. 社会的活動・震災復興支援
平成23年3月11日の東日本大震災後の支援活動は震災後2年経った今でも,あるいは今だからこそ必要とされ
ている。発達科学部,大学院人間発達環境学研究科に所属する教職員,学生においては,各々が学び,研究す
る専門領域の関係から,むしろ「今だからこそ」の支援活動を行っている。
平成23年度には61名の学生が被災地にボランティアに出向き,震災ボランティアが始まって以来の累計数で
は108名に上った(公欠扱いとした学生数)。公欠扱いとしていない学生数は把握できないため,実際には百数十
名の学生が震災ボランティアとして働いたと思われる(大船渡復興支援プロジェクトへの参加学生数は100名以上
であるが,休暇中の支援参加のため,その大半は公欠扱いとなっていない。後述参照)。
「人間発達」を標榜する学部・研究科に所属する者の立場からは,息の長い支援こそが重要であり,今後も続く
ことを願っている。
平成23年度の本研究科教員による震災復興関連の研究及び支援は以下である。
8.1 メンタルケア関係
(1)心のケア担当教員に対する支援事業
国立大学協会「平成24年度震災復興・日本再生支援事業として採択され,福島県中通り地区で以下の事業を
行った。
セミナー事業: 郡山市内及び福島市内の高等学校教員から生徒・保護者・教員の具体的現状と心のケア担当
教員のニーズをメール及び面接で収集し,3回のセミナーを行った。 ㋐第1回セミナー:24年9月に福島市で実施。
参加した心のケア教員から生徒の心理的状況と心のケアの進め方,苦慮している点などを発表してもらい,齊藤・
吉田がアドバイスを行った。さらに,齊藤が提出された課題についてミニレクチャーを行い,質疑応答に応じた。 ㋑
第2回セミナー:24年11月に福島市で実施。吉田が心のケアに関わる諸問題と対応についてレクチャーを行い,そ
れに関わる質疑応答に応じた。さらに,個別の事例に関わる相談に応じた。あわせて,現状把握のために福島市
内の高等学校を訪問し,学校長及び事務長から説明を受けるとともに心のケアに関する意見交換を行い,校内視
察を行った。㋒第3回セミナー:25年1月にフォローアップセミナーを実施。参加した心のケア教員から個別の事例
に関する相談に応じるとともに,今年度のセミナーの評価と来年度に向けてのニーズを聴取した。
日常的支援: 日常の教育活動において生じる心のケア上の問題については,メール等による相談に応じるとと
もに,学会参加のために来神した教員に対して個別の事例に関わる相談に応じた。
(2)心のケアに関わるシンポジウムの開催
研究科のシンポジウム経費,学術講演経費を得て,シンポジウムを3件行った。㋐「あのとき福島であったこと,
いま福島でおきていること-福島県中通りのあの日から1年11ヶ月-」(25年2月に神戸大学で開催),㋑「東日本
大震災に関わり学生相談所がしてきたこと-学生相談から見えてきた若者のこころ-」(25年2月に神戸大学で開
催),㋒「被災地の心のケアのあり方をめぐって-あの日からもうすぐ2年-」(25年3月に東北大学で同大学生相
談室と共催)。
8.2. 調査研究
本研究科人間環境学専攻・平山洋介教授が東京大学社会科学研究所・佐藤岩夫教授と共同代表をつとめる
研究グループは,神戸大学,東京大学,広島女子大学,神戸学院大学,日本女子大学,東洋大学,千葉大学,
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関西大学,専修大学,岩手大学などから多数の研究者の参加を得て,岩手県釜石市における被災者の生活・住
宅状況とその変化に関する追跡調査を展開してきた。これは,釜石市役所の全面的な協力のもとで実施され,調
査結果とその分析は,市役所に報告され,政策資料として活用されてきた。東北復興に関する調査研究は,学術
研究として有意義であると同時に,現地の状況に配慮し,かつ,その復興に資するものである必要がある。本グル
ープの仕事は,この点を意識し,現地自治体との緊密な連携関係にもとづいている点において,調査研究の一つ
モデルとなっている。
調査は,これまで2011年夏と2012年夏の二回にわたって実施された。最初の調査では大半の被災者が持家再
建を予定・希望していたのに対し,2回目の調査では持家再建を断念し,公営住宅希望が急増したこと等が明らか
になった。また,被災者が高齢化している実態がすでに知られていたが,本調査によって,時間経過につれて世
帯分離が進み,単身高齢者など,より小規模な世帯の比重が高まる傾向が発見された。これらの調査結果は,復
興政策のあり方に対して,重要な示唆を提供するものとなった。このグループは,今後も調査活動を続ける予定で,
研究費(科研費等の外部資金)の獲得にも成功している。
8.3. 大船渡復興支援
平成24年5月1日,発災から継続的に支援してきた岩手県大船渡市赤崎地区公民館と本研究科との間で,同館
を本研究科のムーバブル拠点とする覚書を締結した。また,平成24年5月には,中赤崎地域復興委員会からの協
力要請があり,ヒューマン・コミュニティ創成研究センターの松岡広路教授が委員に就任した。
ボランティア活動としては,平成23年度には中止となっていた地域の「灯篭祭り」の開催支援(7月:ボランティア
バスで訪問,28名参加)や仮設住宅支援(毎月,平均7名程度が訪問)を行うと共に,中赤崎地域復興委員会から
の要請を受けて,住民アンケート調査や個別ヒアリングなどを実施した。また,復興委員会と地域の有志の合同メ
ンバーで組織される「赤崎復興隊」(平成24年11月発足)の組織化・運営支援を行ってきた(月に一度の「復興隊
のつどい」で,ワークショップのコーディネートとファシリテーとを担当)。学生ボランティアと共に,「赤崎復興計画」
の作成を柱としたワークショップ,「未来予想図」の描画補助活動,『赤崎の声宅配便(広報紙)』発行,「子ども復
興隊」支援などの活動を行ってきた。平成25年3月10日には,24名のボランティアで赤崎地区慰霊式典の運営の
お手伝いもした。この1年間だけで参加したボランティア数は,ゆうに延べ100名を超えている。
また,東日本大震災への経済的支援として平成23年7月より実施してきた学生ボランティアによる「11えん募金」
運動も,毎月11日に一回も欠かさず街頭で行ってきた。募金は中赤崎復興委員会及び仮設住宅自治会に寄付さ
れ,公民館活動や自治会活動に役立たれている。他組織のボランティアや外部支援が少なくなる震災3年目も,こ
れまで同様,支援を続けていく予定である。
(人間発達環境学研究科長 朴木佳緒留)
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9.附属施設
発達支援インスティテュート
9.1.
9.1.1. 心理教育相談室
心理教育相談室は,市民を対象とし,地域に開かれた相談室である。臨床心理学や心理療法に関する知見を
生かして,地域の人々の心の健康に貢献することを目的としている。同時に,当相談室は,本研究科心身発達専
攻臨床心理学コースが臨床心理士養成Ⅰ種指定校としての認可を維持するために必要な実習機関であり,コー
ス所属の学生たちの臨床訓練の場として機能する目的を有している。平成 12 年度に,総合人間科学研究科の附
属施設として設立され,平成 17 年度からは発達支援インスティテュートの一部門に位置づけられた。心理教育上
のさまざまな問題について,臨床心理学の立場から専門的な援助を提供する活動を行っている。年間を通じて開
室し(年末年始,お盆の大学の一斉休業期間を除く),カウンセリング,プレイ・セラピーなどの心理療法を中心に,
必要に応じて心理テストを提供するなどの心理臨床実践を行っている。相談は有料である。相談内容は,幼児期・
児童期に家庭や学校でみられる発達教育上の問題,青年期のアイデンティティ形成に絡む課題,成人期のメンタ
ルヘルス,熟年期の家族関係や生き方に関することなど,多岐にわたっている。毎年 30 件弱の新規相談受付が
ある。
新規の相談申込みは,基本的に電話受付によって行われている。この受付業務も,臨床心理学コースの授業
「臨床心理基礎実習」の一環となっており,修士課程1年(M1)の学生たちが相談室スタッフの一員として交代で
臨んでいる。受付時間は土・日・祝日以外の午後 1 時~6 時である(年末年始の 1 週間,お盆前後の 2 週間ほど
は閉室)。
本年度の相談室スタッフは,教員 5 名(臨床心理学コース担当,臨床心理士),博士後期課程心理発達論講座
院生 10 名,前期課程臨床心理学コース院生 24 名(M1:12 名,M2:12 名)である。
平成 22 年度より,『神戸大学大学院発達支援インスティテュート心理教育相談室紀要』が創刊され,院生たちが
心理臨床の実践研究をまとめる場となっている。なお,平成 23 年度心理教育相談室の相談実施件数等は「自己
評価報告書資料編」に記載されている。平成 21 年度から徐々に増加し,平成 23 年度の相談件数は,平成 20 年
度以前の 5 割以上の増加となっており,相談室スタッフの努力が実りつつある。
(心理教育相談室長 河﨑 佳子)
9.1.2. ヒューマンコミュニティ創成研究センター
(1)子ども・家庭支援部門(伊藤 篤)
1. ドロップイン事業「ふらっと」
「あーち」の基盤サービスのひとつ。見守り・子育て相談にあたっては,灘区保健福祉部,灘区公立保育所,神
戸市地域子育て支援センター灘などの協力を得た。
2.
アウトリーチ事業とコネクション・プログラム
早期からの拠点利用を促す支援システム。地域の産婦人科と連携し,そこの助産師が「あーち」を紹介し利用を
促す。「あーち」利用が始まったら,月齢の近い乳児をもつ親同士をつなぎ交流を促す「あーちビギナーズ交流
会」というコネクション・プログラムを実施。利用者が「孤立・依存」から脱し「自立」へ導くための仕組であり,2012 年
度からこのシステムを開始した。
3.
ペアレンティング事業「2011 年度 0 歳児のパパママ交流会」
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はじめて赤ちゃんを育てる家庭への予防的な親教育及び仲間づくりプログラム(5 月より 12 月にかけて月 1 回・
計 7 回)である。募集にあたって灘区保健福祉部の協力を得た。
4.
あーち・コミュニティ・カレッジ事業
1 次予防に加え 2 次予防も視野に入れたターゲット支援として,主に「あーち」の利用者の受講希望者を対象に,
「子育てママのキャリアトーク(10 月 10 日)」「集会所を子どもの居場所に-アリエッティのひろばプロジェクト―(11
月 20 日)」「神戸市ファミリィ・サポート・センターって?(3 月 21 日)」という 3 つのセミナーを実施した。
5.
次世代育成事業「小中高生,高校生の赤ちゃんふれあい体験学習」
上記「2012 年度 0 歳児のパパママ交流会」の親と子(赤ちゃん)と,地域の小中学生及び公立高校の生徒との
ふれあい学習(5 月から 12 月にかけて月 1 回・計 7 回)を実施した。
6.
専門職支援事業「保育士のためのステップアップ・セミナー」
「あーち」との連携関係にある地域の保育士の資質向上を目的として実施したセミナー(11 月 30 日,12 月 10
日)。発達障害に理解と対応に焦点をあてた 2 回シリーズのセミナー(会場は灘区役所)を提供した。子育て支援
センター灘,神戸市灘区保健福祉部,当研究科教員及び「あーち」の発達相談員の協力を得た。
7. 支援者養成事業「まちの寺子屋師範塾」
兵庫県少子局少子政策課及び大学コンソーシアムひょうご神戸との連携により,主に子育て支援でボランティア
を行いたいと希望する成人を対象としたセミナー(全体テーマ:多様な子育て支援と地域とのかかわり:子育て支
援の捉え方と地域,産後家庭訪問と地域,スクールソーシャルワークと地域,ひろばにおけるキャリアサポートと地
域,感覚運動あそびと地域,家族再統合プログラムをテーマにした 6 回シリーズ)を研究科にて実施した(9 月 22
日・23 日)。
8. 専門職支援事業「イギリスの子育て支援に学ぶⅤ」
日本子育て学会第 4 回大会・研究科(学術ウィークス)・神戸大学創立 110 周年事業として実施された特別招聘
講演会。ロンドン大学教育大学院(IOE)から David Gough 教授(Social Science Research Unit 所長)を招聘し
「Children’s welfare, rights and needs:lessons from English child protection system」という演題で,イギリスの児童
養護の歴史と施策から何が学べるかに関するセミナーを 11 月 17 日に開催した。
(2)障害共生支援部門(津田英二)
1. 「のびやかスペースあーち」において,障がい児を中心とした居場所づくりプログラムを,毎週金曜日の午後に
継続実施した。属性や立場が異なる多様な人たちが相互に関心をもちコミュニケーションを活性化するために開
いているプログラムである。プログラム内容は,地域住民や学生が,子どもたちとの親密な関わりに基づいて計画・
実施する。普段は,音楽プログラムや造形プログラム,季節ごとのイベント,料理プログラムなど,多彩なプログラム
を行う。外部団体や「のびやかスペースあーち」における他のプログラムとの連携実施もある。毎年の恒例になって
いるものに,社会福祉法人かがやき神戸の協力によるクラウンパフォーマンスの実施,学童保育つむぎとの連携に
よる夏合宿の実施などを行った。
2. カフェ「アゴラ」において障がい者キャリア教育支援を継続実施した。雇用のチャンスに恵まれない知的障が
い者を実習生として募集し,カフェ「アゴラ」を中心に社会的活動を提供するプログラムである。2 名の実習生が今
年度から「アゴラ」のスタッフとして雇用された。実習中心の実践から,障害者雇用中心の実践に移行した。なお,
今年度も NPO 法人コミュニティサポートセンター神戸との連携により,実習生 1 名を住吉駅駐輪場整備の仕事に
従事させた。また,六甲アイランド高校の生徒を実習等で受け入れた。
3. インクルーシヴな地域社会創成をめざす学童保育つむぎの運営協力を行った。知的障がいのある中学生の
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キャリア開発プログラム「悠々ジョブ」を継続実施し,中学生 1 名を灘の浜高齢者介護支援センターでの作業を見
守り,その成長と周囲との関係を記録した。
4. 韓国ナザレ大学,ソウル市立知的障がい人福祉館との研究・教育交流を促進した。今年度は特に,赤木和重
准教授らとチームをつくり,知的障害者を正規学生として受け入れている韓国ナザレ大学リハビリテーション自立
学科の調査を実施し,共同論文を執筆した。
5. 東北大学教育学研究科の田中真理准教授と連携して,学生・卒業生 6 名と共に,宮城県亘理郡の障がい児
者施設のボランティア活動を行った。今年度は児童デイサービスの「よっちゃんち」での障がい児支援と,「工房地
球村」(障害者作業所)での音楽を介したプログラムを行った。
6. 「のびやかスペースあーち」において,利用者の多様性及び利用者間のコミュニケーションを活性化するため,
「らくがきおばさんがやってくる」「アートセラピー」「あーち博物館」「音楽の広場」といった表現系プログラム支援を
継続して行った。特に今年度は,博物館実習の枠組みによる教育活動ともリンクした「あーち博物館」として,社会
福祉法人たんぽぽ,版画家脇谷紘氏との連携による企画展「海Ⅱ」,及び一般社団法人希望の牧場・ふくしま,神
戸子どもと教育ネットワーク,インスタレーションアーティスト能勢伸子氏との連携による企画展「いのちを感じる,つ
ながるいのち」を実施した。
(3)ボランティア社会・学習支援部門(松岡広路)
1. 「震災復興支援プロジェクト」の企画・実施支援
本研究科 HC センターの活動経費のみならず,「神戸大学復興基金」「震災復興・防災科学研究推進室プロジ
ェクト経費」「都市安全センタープロジェクト経費」により,以下の活動を行った。
1)神戸大学本研究科・赤崎地区公民館の「ムーバブル拠点覚書」締結
2012 年 5 月 1 日に,岩手県大船渡市赤崎地区公民館を「ムーバブル拠点」(プロジェクト連動型の期間限
定的な活動拠点)とする覚書を,赤崎地区公民館運営委員会との間で締結した。地元密着・定着型の活動を
行う環境づくりの一環である。復興のまちづくりのワークショップやボランティア活動などの支援活動に必要な
道具・材料の補完,ミーティング会場,宿泊場所としての協力を得ることになった。
2)中赤崎復興委員会への参加
赤崎町の地域復興委員会である中赤崎復興委員会よりの要請を受け,2012 年 5 月より,松岡広路教授が
復興委員となる。任期は委員会解散時までで,長期的な支援を地元に約束したことになる。
3)「大船渡支援ワークキャンププロジェクト」の推進
前年度に引き続き,過去に蓄積したボランティアマネイジメントの知見・経験を生かし,「被災地の復興への
協力(社会貢献)」・「復興における新たな人間関係の創成(コミュニティづくり)」「活動の中で進む人づくり(学
習・エンパワメント)」の 3 ベクトルが有効に連関し合う「ワークキャンプ方式」での集団的な被災地支援活動を
行った。
a.第 4 次ワークキャンプの実施支援(昨年度からの通算)
2012 年 7 月 15 日~23 日(現地 16 日~22 日),赤崎町において組織的なボランティア活動を実施した。
津波で中断されていた地元のお祭り「灯籠祭」の運営支援,仮設住宅での「交流会」「声かけ運動」,「便利
屋ボランティア」活動,「庇作りワーク」などを実施した。総 27 名(本学教職員 4 名・本学学生 22 名,上武大
学学生 1 名)が参加。過疎化・高齢化した地域の活性化支援としての傾向がやや見えてきた。
b.第 5 次ワークキャンプの実施支援
2012 年 9 月 12 日~19 日(現地 13 日~18 日),ワークキャンプを実施。仮設住宅での「声かけ活動」「ベ
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ンチづくり」「庇作り」に加え,赤崎保育園の運動会支援,消防団との交流などを行った。総 10 名(本学教
員 1 名,本学学生 9 名)が参加。
c.第 6 次ワークキャンプの実施支援
2012 年 12 月 21 日~27 日(現地 22 日~26 日),年末訪問をかねてワークキャンプを実施した。「年末
行事支援」「赤崎復興隊集い支援」「もちつき」などの活動を行った。総 18 名(本学教員 2 名,本学学生 14
名,流通科学大学学生 1 名,部門研究員 1 名)が参加。
d.第 7 次ワークキャンプ(通称:弥生ワーキャン)の実施支援
2013 年 3 月 7 日~14 日(現地 8 日~13 日),震災から 2 年目の式典関係事業及び「赤崎復興隊のつ
どい支援」関連事業を支援するとともに,仮設住宅での「炊き出し交流会」,庇づくり活動などを実施した。
また,「津波跡地の清掃活動」を住民とともに実施したり,「子ども復興隊」企画を学生主導で行った。
総 29 名(本学教員 2 名,本学学生 22 名,上武大学教員 1 名,上武大学学生 3 名,部門研究員 1 名)
が参加。
4)「月一訪問隊」の実施支援
上記,ワークキャンプのほか,ほぼ毎月被災地を訪問しニーズを確認したり,ボランティア活動を継続的に
実施したりしてきた。2012 年 4 月,5 月,6 月,8 月,10 月,11 月及び,2013 年 1 月,2 月(2 回)の計 9 回。
のべ参加者は,60 名をこえた。
5)「希望をつむぐアンケート調査」の実施
中赤崎復興委員会からの依頼を受け,中赤崎地区の高校生以上の全住民へのアンケート調査を 8 月に実
施した。現在・未来の赤崎町への期待・希望を聞き取るものである。アンケート結果は,分析ののち,復興委
員会に提出。大船渡市・大船渡市復興局にも提出した。このアンケートをもとに,後述する「赤崎復興隊」が結
成された。
6)「希望をつむぐつどい」ワークショップの実施
アンケートの作成・実施及び分析において,赤崎町の住民を対象とするワークショップを 4 回(7 月 15 日,8
月 24 日,9 月 15 日,16 日)にわたって実施した。分析ワークショップでは,後の入地区,生形・宿・山口地区,
大洞地区の各地区で実施。「赤崎復興隊」を結成する準備段階になるとともに,住民の復興への意識啓発の
機会となった。
7)ヒアリング調査の実施
「月一訪問隊」の際に,毎回数名の住民へのディープ・ヒアリングを行った。メンバー3 名 1 組で 2 時間程度,
発災時の様子や今後への期待などを聞き取った。現在,13 名のディープ・ヒアリングを終えた。毎回,「赤崎
の声宅配便」(回覧板)に,「学生の感想」という形で話の内容を住民にお返しする工夫を行っている。全体の
まとめを現在試みているところである。
8)「赤崎復興隊」活動支援
2012 年 11 月,中赤崎復興委員会委員有志及び住民有志(公募委員)による「赤崎復興隊」が結成された。
この組織の枠組みづくりの支援や,活動企画づくり,運営支援などを行った。特に,毎月行われた「赤崎復興
隊のつどい」のファシリテーションを松岡及び部門研究員・学生ボランティアが担ってきた。また,ワークショッ
プを通して形作られた赤崎町の未来を描いた「未来予想図」は,学生ボランティアの精力的な支援なくしては
できなかったと思われる。
以上のように,徐々に「災害復旧ボランティア」から「生活支援ボランティア」に,そして,「復興のまちづくり支援
- 90 -
ボランティア」へと,活動の質が変化してきている。とりわけ,「復興のまちづくり」では,ESD(持続可能なまちづく
り)の特質がはっきりとしてきた。環境保全・産業振興・地域文化の復興などの輻輳した課題の解決にむけて,地域
住民とボランティアの協働関係がうまれつつある。
※ 「11 えん募金」活動支援(毎月 11 日に実施)
「11 えん募金」とは,学生たちが中心となって,2011 年 7 月以後,毎月「11 日」に,JR 六甲道,阪急六
甲道,三ノ宮の街頭で行う募金活動のことである。人々が東日本大震災を忘れず,被災地に思いをはせ続
けられることを願って,「11 円から 3 月 11 日ご縁を紡ぎましょう」を合言葉に,学内外に協力を呼びかけてき
た。2012 年度も,一度も欠かすことなく実施された。
集まった募金は,目下,「大船渡市・赤崎地区公民館運営委員会」又は仮設住宅の自治会によって運
用される「中赤崎復興基金」に手渡している。今後は,他の地域の支援としても運用する予定である。また,
ワークキャンプなどの際,地元にプレゼントできる手製のベンチや机,庇などの材料費としても使用してきた。
「11 えん募金」を運動として発展・継続させるべく,学生や関係者と共に,企画会議,運営ミーティング開催,
内容相談を頻繁に実施してきた。
2. ESD ボランティア育成プログラム推進プロジェクトの実施
「ESD ボランティア育成プログラム推進ネット(ぼらばん)支援プロジェクト」も本年で 7 年を経過した。以下のよう
な事業を実施した。
1)ハンセン病療養所邑久光明園との連携事業「邑久ワークキャンプ」支援
2012 年 6 月,8 月,12 月の 3 回,岡山県の長島にある「国立ハンセン病療養所邑久光明園」において「住
民との交流」「将来計画関連事業」「集いの広場開墾事業」などを中身とする「ワークキャンプ」を実施した。登
録メンバーだけではなく,岡山県の中学生,高校生,大学生の参加も得て,各回の参加者はいずれも 30 名を
超え,活動は徐々に定着してきた。
また,ESD サブコース「ESD 論」のオプション・フィールドワーク先として,学生たちを受け入れ,新しい展開
を見せ始めている。上記の「大船渡支援ワークキャンププロジェクト」において中心的な役割を果たしている学
生も,ほとんどが「ぼらばん」のメンバーである。本プロジェクトの成果が表れてきたと考えられる。
2)ESD インターフェース事業「お月見会」「合宿」運営支援
阪神間の 13 の NPO の協力をえて行っている「トリップ(小旅行)事業」を,ESD(持続可能な開発のための
教育)に昇華させることを目的に,毎月,情報交換・リフレクション・活動グループづくりを内容とする「お月見
会」を実施してきた。また,互いの学びの成果をより深めることを目的に,10 月,1 月,3 月に宿泊型学習プロ
グラムを用意した。参加者が,ボランティア活動の内容だけではなく,ファシリテーションスキル,グループマネ
イジメントスキルなどの実際に触れる機会を設けた。
3. ESD 推進関係の事業
1)IUBAT 大学との連携協定の締結
2013 年 2 月に,RCE Greater Dhaka の事務局を務める IUBAT(International University of Business,
Agriculture and Technology)と,研究・教育に関する連携協定を締結した。HC センター教職員 2 名と院生 1
名で協定式に参加した。今後,スタディツアープログラムの共同運営などが期待される。
2)RCE グローバル会議(韓国,トンヨン)への参加
ESD 推進の地域拠点として国連に認証されている世界中の RCE(Regional Centers of Expertise on ESD)が
一堂に会した国際会議が,2012 年 9 月 22 日~25 日,韓国,トンヨンで開催された。HC センタースタッフ 2
- 91 -
名で参加し,日本及び神戸の ESD についての報告を行った。また,2013 年 3 月には,国内 RCE 会議を神
戸で開催し,その支援も行った。
(4)労働・成人教育部門 (末本 誠)
1.
異業種の成人教育関係者による定例研究会の開催
月一回の多業種にわたる成人教育関係の部門研究員を集めた,研究会を継続して開催した。男子高校生の労
働観に関する調査の分析,職業訓練施設における一人親女性の自立支援をめぐる問題,明石市のあかねが丘学
園でのライフヒストリーの応用に関わる実践研究などである。
2.
対外的な成人教育活動支援
あかねが丘学園でバックアップ講座の一環として,ライフヒストリーを用いた高齢者教育支援を行った。また今年
度は同様のカリキュラムを,西宮市の宮水学園の特別プログラムとしても実施した。さらに両市での事業参加者を
対象とした,語りのアニマトゥールの養成講座をHCセンターで実施し,7 名に修了証を手渡した。
3.
成人教育の方法・プログラムの開発
昨年度に作成した,『自分の人生を知るための 66 の問題集』 を改定し,新たに『人生を語るための 55 の練習問
題集』を作成した。この小冊子は,ライフヒストリーを学ぶ資料として大学の授業やあかねが丘学園,宮水学園での
支援事業で活用された。
4.
ライフヒストリーに関する国際的な研究交流
昨年に続いてフランスから,クリスティーヌ・ドロリー・モンベルゲ教授(パリ第 13 大学/ASIHVIF 代表)を招請し
て,4 回目の「ライフヒストリーと成人教育」に関する国際シンポジウムを開催した。今回は,ライフヒストリーを用いた
実践=研究の社会的な広がり,及び ESD を含むその政治社会的意味に重点を置いた。なお,これは人間発達環
境学研究科のプロジェクト研究費による研究活動であり,学術ウィークスの事業の一環として取り組まれた。
末本は,11 月 5 日にパリの CNAM(国立工芸院)で開かれた ASIHVIF の公開研究会で,「ライフストーリー――日
本とフランスにかける橋――」の講演をした。80 名を超える参加者があった。
(ヒューマン・コミュニティ創成研究センター副センター長 末本誠)
9.1.3. のびやかスペースあーち
(1)「のびやかスペース あーち」全体の取組について
2005 年 9 月より神戸市と連携の下,灘区役所旧庁舎(現:灘消防署 2 階)において運営を開始した研究科サテ
ライト施設「のびやかスペース あーち(以下,「あーち」とする)」は,運営を開始して以来,2012(平成 24)年度末
現在で 7 年半が経過する。開設当初からの利用者であった子どもたちはすでに小学生・中学生へと成長をしてお
り,歳月の重みとその過ぎゆく早さを実感させられる。本施設は,「子育て支援を契機とした共生のまちづくり」を目
指して様々な取組及び実践的研究を展開しているが,本年度は,新たに市民ボランティアの育成・活動支援とし
て力点が置かれたのが,主に阪神間で組織されている人形劇団のネットワークづくりであった。これまでの隔月開
催を毎月開催に増やし,毎回,観客やスタッフから感想を書いてもらい,その後の公演のあり方を考えるヒントを得
ている。さらに,「あーち」人形劇団の立ち上げも実現した。一方,開設当初よりこれまで休止することなく継続され
た発達障害児のための療育プログラム『ほっと』が本年度 9 月をもって終了し,また同じく開設当初より提供されて
きた『おりがみあそび』も本年度いっぱいで終了した。『ほっと』の後継プログラムとして,2013 年度より新たに『発達
障害児の保護者向け支援プログラム』を開催する予定であるが,その準備として新しいプログラムリーダーやボラ
ンティア,大学教員で構成される企画会議が開催されるなど,プログラム運営の節目を迎えた年であった。
- 92 -
「あーち」の年間利用者数の詳細は後述するが,29,942 人(延べ数)である。開館日数の 237 日で割ると一日平
均 126 人余りが利用していることになる。一日の利用者数が 100 名を超える実績は 2007 年より続いており,この安
定した利用者数や灘区で生まれた子どもの約 3 割が「あーち」の『おやこ会員』として登録している事実からも,地
域に根ざした施設として周知され,さらなる存続と発展とを期待されていると言えよう。
本年度のプログラム開催状況を集計すると,教員・一般ボランティアが主催するプログラムの実施回数(延べ数)
は 396 回,大学の正規教育プログラムの実施回数(延べ数)は 24 回となる。例年どおり,資格関連科目である博物
館実習も年 2 回開催された。2008 度より引き続き,ESD サブコースの授業に協力し,学部生が実践活動を行う場を
提供した。このように本年度も,「あーち」は学生の教育・実践を支援する機能を果たした。また,学生・院生の卒業
研究・修士研究など,研究活動の場として「あーち」が活用されることも多い。発達支援論コース在籍生による研究
成果(2006~2011 年度)として,卒業論文 3 編,修士論文 7 編が提出されている。
大学に設置されている「のびやかスペース あーち 運営委員会」とは別に,日常的に「あーち」のプログラム等
にかかわっているメンバーが参加する「あーち 連絡協議会」が,例年どおり,5 月,7 月,9 月,11 月,1 月,3 月に
開催された。「あーち」利用者,プログラムリーダーとそのスタッフ,「ふらっと」相談員,一般のボランティア,学生,
教職員が一同に会して,「あーち」の現状・プログラムの近況・新しいプログラム等に関する報告や検討を行ってい
る。3 月の連絡協議会には,神戸市地域子育て支援センター灘(通称:地域子育て応援プラザ灘)の所長,灘区
社会福祉協議会の主幹も出席し,来年度以降のプログラム運営やボランティア紹介などの意見交換を行った。ま
た,学生の卒業・修士論文のための研究など,研究活動の場として「あーち」が活用されるので,この協議会が,学
生による研究計画発表の場・学生からの研究依頼承認の場にもなっている。
プログラム予定表,学生や利用者による絵本の紹介,利用者による取材記事等を掲載する月刊誌を編集する
ために毎月 1 回開催している「あーち 通信編集会議」も開設以来,一度も発刊を欠いておらず,「あーち」のホー
ムページ上で順次公開されている。本年度は,新たに地域のボランティアを迎え,「あーち」通信の連載エッセイを
担当してもらっている。ボランティア自らの育児の困難さを振り返り,どのようにその困難を乗り越えたかという内容
に,読者である現在子育て中の利用者たちは多大な共感を寄せており,人気の連載になっている。この通信はこ
れまで同様,利用者に配布されているだけでなく,灘区役所や灘社会福祉協議会及び各児童館,さらに連携先
の産婦人科クリニックでも配布・設置し,さらに「ふらっと」相談員のひとり(元母子相談員)が,マザーズハローワー
ク三宮,神戸市ファミリー・サポート・センターにも出向き,本通信を設置している。
(2)「あーち」運営の主たる部門の活動について
「あーち」の日常的実践は,ヒューマン・コミュニティ創成研究センターの「子ども家庭支援部門」と「障害共生支
援部門」が担っている。今年度における 2 つの部門の実践内容を以下に整理する(この 2 つの部門の詳細につい
ては,本報告書内の「ヒューマン・コミュニティ創成研究センター運営委員会」の箇所を参照のこと)。
<子ども・家庭支援部門>
従来から実施してきた「ドロップイン・サービス(地域子育て支援拠点事業)」「ペアレンティング・プログラム」「赤
ちゃんふれあい体験学習」などを引き続き実施した。また「赤ちゃんふれあい体験学習」に関しては,これまでの高
校生に加え,六甲道児童館のユースステーションを通じて,灘区内の公立中学校から有志の生徒を迎え,赤ちゃ
んやその保護者とふれあう機会も設けた。
地域における連携活動として,以前から近隣の産婦人科クリニックでも「あーち」の広報を行っている。そのため
乳児期とその親による早期からの「あーち」利用は安定している。また,クリニックに通院しているハイリスク家庭を
「あーち」の相談員につなぐなどの協働関係も継続している。
- 93 -
5 月より,新規プログラムとして「あーち ビギナーズ交流会」を開催した。「あーち」を初めて利用する,もしくは利
用して日が浅い母親を対象とした導入的なコネクション・プログラムであるが,これは,2010 年度に実施した「あー
ち」利用者の悉皆調査の結果(自由記述からの意見)を反映して構想・実践したものである。交流会の対象者は,
試行的に生後 6 か月未満,生後 6 か月以上1歳未満,1歳以上の子どもの 3 段階に分けて開催したが,その結果,
ニーズが多い生後 6 か月未満のプログラムを中心に月 1 回開催している。
本年度も,灘区社会福祉協議会・灘区保健福祉部子育て支援係・地域子育て応援プラザ灘が年間 12 か所に
わたって開催した「ベビーキャラバン」のうち 1 回分の運営について部門が協力した。また,地域子育て応援プラザ
灘及び灘区公立保育所とは以下のような形で連携・協働体制を継続している:①保育士による「おひさまひろば
あーち」での見守り・相談・親子遊び/②地域子育て応援プラザ灘の保育士による乳幼児健診時における「あー
ち」の広報/③当部門による灘区内の公立・私立保育所の保育士向けの子育て支援に関する研修会(2 回シリー
ズ 2012 年 11 月~12 月)の提供/④当部門による地域子育て応援プラザ灘及び公立・私立保育所の主催事業
に関する広報。
最近の「ふらっと」相談のうち,母親の就労やキャリア支援に関する相談が増加していることを踏まえ,それらに
対応するプログラムを「あーち コミュニティカレッジ」の内容に盛り込んだ。また,東日本大震災復興支援事業とし
て,仮設住宅の集会所を利用して「子育てひろば」を立ち上げた石巻市の開成団地(仮設住宅)の自治会長を迎
え,震災時の様子や現在の状況,また子育てひろば常設にむけての課題など,災害が地域にもたらす影響を共
に考えるという目的で,コミュニティカレッジに位置づけた(今年度実施した 4 回のコミュニティカレッジのテーマ等
については「プログラム概要・その他」の項を参照のこと)。
上記の「ふらっと」相談体制のうち,発達相談員,元母子相談員の雇用を引き続き行い,発達相談やキャリア支
援のさらなる充実を図った。他に,以前から,保育士,助産師,NPO からのボランティア,臨床発達心理士が相談
を担当しているが,本年度より灘区の歯科医師会との連携で,月に 1 回,歯科医師による相談日を設けた。
外部機関との連携としては,元母子相談員が中心となり,マザーズハローワーク三宮,神戸市ファミリー・サポート・
センターを連携先とした協働関係が構築されつつある。特に,コミュニティカレッジに神戸市ファミリー・サポート・セ
ンターの協力得て,協力会員からの話を聞く機会を設けることができた。
<障害共生支援部門>
障害共生支援部門では,「のびやかスペース あーち」が利用者の多様性の確保と相互コミュニケーションを促
進することを主旨とする試みを行っている。「らくがきおばさんがやってくる」「アートセラピー」「音楽の広場」など,
そうした試みの一環としてプログラムの実施を専門的な力量をもつ個人や団体に依頼した。
基幹プログラムとして「あーち」設立初期から毎週金曜日に実施している「居場所づくりプログラム」を継続させた。
さまざまな障害のある子どもを中心として,障害のある成人,その他の地域住民や学生が多元的な社会関係を形
成することで,相互のエンパワメントをめざすプログラムである。
プログラム内容は,子どもとの関わりの中から地域住民や学生らが計画・実施する。通常は子どもの関心に沿っ
た遊びを展開しているが,音楽プログラム,造形プログラム,料理プログラムなど,季節ごとのイベントも行った。そ
の他にも,外部団体との相互連携も発展しており,学童保育つむぎとの合同夏キャンプ,神戸大学のサークル(ア
カペラ,大道芸)の公演,研究科の実習農園での芋掘り体験の実施なども行った。
インフォーマルな関係の中から,社会的問題に主体的に関わっていく関係を形成することも隠れた目的として
おり,持ち込まれる諸問題(多くは障害に関する問題)をめぐる活動も付随した。プログラムから派生した個別の問
題に踏み込んで関わることも多くある。教育・研究・実践を三位一体としたインクルーシヴな場づくりをめざすフィー
- 94 -
ルドであるが,地域におけるニーズの高さに比して学生の参加が少ないことが近年の課題となっている。
また,表現活動に基づく相互承認の機会づくりにも継続して取り組んだ。その一環として,本年度も博物館学芸
員課程との連携で博物館展示を行った。9 月 29 日~10 月 4 日は「海Ⅱ」(社会福祉法人たんぽぽ,版画家脇谷
紘氏との連携),3 月 2 日~7 日「いのちを感じる,つながるいのち」(「希望の牧場・ふくしま」「神戸子どもと教育ネ
ットワーク」,インスタレーションアーティスト能勢伸子氏との連携)を開催した。
(3)プログラム概要 <●は継続的・定期的なプログラム/○は単発的・短期的なプログラムを示す>
子どもとその保護者を主な対象にしたプログラム
●ふらっと:地域子育て支援拠点事業(ドロップイン・サービス)として週 5 日開設
●おひさまひろば あーち:神戸市地域子育て支援センター灘の保育士・灘区公立保育所の保育士がドロッ
プイン・サービスの利用者に対し,見守り・相談と親子遊び(ショートプログラム)を提供
●ベビーマッサージ:「あーち」利用者である母親がリーダーとなって行う交流プログラム
●あーち ビギナーズ交流会:「あーち」を初めて利用する,又は利用して日が浅い母親対象の仲間づくりプ
ログラム(子どもの月齢別に 3 段階で開催)
●ほのぼの音ランド:音楽療法士によるリズム遊びプログラム
●おはなしの国:ボランティアによるストーリー・テリングと絵本の読みきかせ
●紙芝居:退職教員による味わいのある紙芝居
●おりがみあそび:日本折紙協会の講師が,やさしい折り紙を親子に伝授
●めだか親子クラブ:退職教員が中心となった手作りおもちゃのプログラム
●らくがきおばさんがやってきた:地域の画家が展開する自由なアート空間
●アートセラピー:草木などの自然のものなどを用いてアートを展開するワークショップ
●人形劇:神戸・阪神間の人形劇グループや高校生による公演
●人形劇団 むー:「あーち」支援者や利用者が立ち上げた人形劇団
発達障害のある子どもとその親を対象にしたプログラム
●ほっと:就学前の発達障害児を対象にした療育プログラムの展開
●ぽっとらっく:発達障害児を持つ親の学習会と発達障害児の遊び場
おとなを主な対象としたプログラム
●筆をもとう:地域の書家による書の初歩を気軽に学ぶプログラム
●0 歳児のパパママ交流会:子育て中の親を対象にとした学習・交流プログラム
●中・高校生の赤ちゃんのふれあい体験学習:中・高校生が 0 歳児とその保護者が毎月 1 回交流する
○保育士のための子育て支援研修会(2 回シリーズ)
○国際セミナー:当研究科「学術 Weeks」と協働して,ロンドン大学教育大学院から講師を招き,大学内でセミ
ナーを開催
○コミュニティカレッジ:女性の就労及びキャリア支援を中心に構成
10 月 子育てママのキャリアトーク
11 月 東日本大震災復興応援講演会
3 月 イイトコサガシ in あーち(障害共生支援部門担当)
3 月 神戸市ファミリー・サポート・センターって?
その他
- 95 -
●居場所づくり:障害のある人たちを中心としたみんなが集うプログラム
●音楽の広場:本研究科の院生が主催する,誰でも楽しめる自由な音楽プログラム
●みんなで歌おう!:地域の作業所スタッフや実習生によるゴスペル
博物館実習
○「海Ⅱ」:2012 年 9~10 月開催
○「いのちを感じる,つながるいのち」:2013 年 3 月開催
会議
●あーち 通信編集会議:利用者や学生を交えて「あーち」通信をつくる場
●あーち 連絡協議会:プログラムリーダー,利用者,教職員等による「あーち」運営に関する会議
(4)「あーち」への見学・視察数
大学のサテライト施設として,社会的責任や地域貢献をはたし,アクション・リサーチの成果を社会に対してモデ
ル提示したり発信したりする手段として,見学者やメディア取材の受け入れをおこなっている。以下は,2012 年 4 月
以降,2013 年 3 月末までの「見学者数」「視察者数」を機関・組織別に整理したものである。
<見学者(総数 98 名)>
大阪市市民 1 名 神戸市市民 1 名 灘区歯科医師会 4 名 えぐさ歯科クリニック 2 名 大同クリニック 1
名 人形劇団 1 名 白鷺人形劇団 4 名 デリペパットシアターひとみ 1 名 NPO 法人フルーツバスケット 2
名 新在家西郷地域ミルミルっこ応援隊 1 名 西宮市親との子のほっとスペースサンタッタ 2 名 まや子ども
の家 2 名 まちの子育て広場 まあま 1 名 MC ままーず 1 名 放課後等デイサービ スムーミンハウス 4
名 コープともしびボランティア振興財団 2 名 神戸市ファミリー・サポート・センター 2 名 兵庫県立人と自
然の博物館 2 名 宝塚市御殿山児童館 2 名 三田市多世代交流館子育て交流ひろば 1 名 芦屋市保健
福祉部こども課子育てセンター 1 名 宝塚市子ども家庭支援センター 4 名 舞鶴市保健福祉部 3 名 尼
崎市こども青少年局 計画調整課 2 名 灘区こども家庭支援課 2 名 神戸市子ども家庭局子育て支援部
保育振興課 1 名 神戸市立平野保育所 3 名 神戸市地域子育て支援センター中央 1 名 神戸市地域子
育て応援プラザ東灘 1 名 灘区社会福祉協議会 1 名 大阪教育大学 学生 2 名 神戸大学工学部 学生
20 名 神戸大学発達科学部 学生 1 名 神戸市看護大学 学生 7 名 兵庫教育大学大学院 学生 2 名
甲南女子大学看護学科 学生 4 名 園田学園女子大学 人間看護学科 教員 1 名 浜松大学 教員 1 名
広島大学 教員 2 名 山口県立大学 教員 1 名 大阪大学大学院 教員 1 名
<視察者(総数 3 名)>
Association for early childhood educations 会長 1 名 オスロー大学 教員 1 名
埼玉大学教育学部 教員
1名
<取材(総数 2 名)>
神戸新聞社 2 名
(5)「あーち」利用者数とその内訳
「あーち」の年間利用者数は 29,942 人(延べ数)である。開館日数の 237 日で割ると,一日平均 126 人余りが利
用している
2012 年度利用者数(2012 年 4 月~2013 年 3 月)
年間開館日数 237 日
年間利用者数 子ども 15,259 人 おとな 14,689 人
合計 29,942 人
- 96 -
表 1 利用者数
2012 年度
月
ふらっと
開館日数
子ども
あーと
こらぼ
利用者数の合計
おとな 子ども おとな 子ども おとな 子ども おとな
合計
4月
19
1,180
1,095
20
27
100
112
1,300
1,234
2,534
5月
20
1,068
1,000
13
14
150
185
1,231
1,199
2,430
6月
21
1,128
1,079
25
23
236
200
1,389
1,302
2,691
7月
21
1,242
1,178
5
10
139
121
1,386
1,309
2,695
8月
18
1,083
980
24
26
44
69
1,151
1,075
2,226
9月
19
1,197
1,146
35
57
123
176
1,355
1,379
2,734
10 月
22
1,315
1,229
30
28
156
216
1,501
1,473
2,974
11 月
19
1,019
946
26
33
138
147
1,183
1,126
2,309
12 月
19
894
831
19
30
187
193
1,100
1,054
2,154
1月
18
1,129
1,061
23
17
131
133
1,283
1,211
2,494
2月
20
996
933
28
37
125
119
1,149
1,089
2,238
3月
21
1,052
979
33
36
146
217
1,231
1,232
2,463
合計
237
13,303 12,457
281
338
1,675
1,888 15,259 14,683 29,942
(6)「あーち」プログラム数及びボランティア数
表 2 は 2012 年度に「あーち」で提供されたプログラム数及びそれにかかわったボランティア(リーダー,スタッフ,
一般,学生・院生)の数である。
表 2 プログラム数及びボランティア数(延べ数)
2012 年度
プログラム数
ボランティア数
大学の授
月
開館
一般の
日数
プログラム
業 & 正 規 プ ロ グ プログラム
教 育 プ ロ ラム
数一日平
グラム( 実 総数
均
プログラム
リーダー
&スタッフ
プログラム
学生
一般
見学者
院生
数
習)
4月
19
29
1
30
1.58
67
32
99
30
5月
20
33
2
35
1.75
90
39
129
53
6月
21
39
2
41
1.95
92
50
142
62
7月
21
33
2
35
1.67
73
50
123
53
8月
18
25
1
26
1.44
58
27
85
18
9月
19
38
3
41
2.16
109
35
144
105
10 月
22
36
3
39
1.77
101
18
119
64
11 月
19
35
2
37
1.95
107
12
119
76
12 月
19
30
3
33
1.74
105
7
112
47
- 97 -
1月
18
27
1
28
1.56
70
11
81
22
2月
20
28
2
30
1.50
88
7
95
45
3月
21
43
2
45
2.14
139
29
168
11
合計
237
396
24
420
1.78
1,099
317
1,416
134
*基盤プログラムである「ふらっと」は毎日開催しているが,上記の数に入れていない
*「あーち」通信編集会議・連絡協議会・他の会議・「ふらっと」勉強会などは入れていない
*比較的ボランティア参加の多いプログラム(順不同):ぽっとらっく・ほっと・居場所づくり・アートセラピー
らくがきおばさん・人形劇・パパママ交流会
(7)「あーち」の運営に関わって獲得した外部資金
神戸市地域子育て支援拠点事業「ひろば型」助成金 4,355,000 円
(8)連携協力関係にある組織・団体など
団体名
連携協力の内容
神戸市市民参画推進局
運営協力
神戸市灘区保健福祉部
0 歳児のパパママ交流会&中・高校生の赤ちゃん
ふれあい体験学習
神戸市灘区まちづくり推進部
なだ桜まつり
地域コーディネーター
神戸市灘消防署
消防訓練 地震津波等防災セミナー
神戸市地域子育て支援センター灘
ふらっと 相談員
(通称:子育て応援プラザ灘)
灘区公立保育所(7 か所)
ふらっと 相談員
灘区地域コーディネーター(元母子相談員)
ふらっと 相談員
神戸市ファミリー・サポート・センター
あーちコミュニティカレッジ 講師
灘区社会福祉協議会
ボランティアコーディネート
灘区内児童館(10 か所)
情報交換
六甲道児童館
情報交換
灘区民ホール
情報交換
社会福祉法人たんぽぽ
博物館実習
社会福祉法人たんぽぽ
みんなで歌おう!
学童保育つむぎ
居場所づくり
カフェ「アゴラ」
社会福祉法人かがやき神戸
神戸ユニバーサルツーリズムセンター
NPO 法人神戸子どもと教育ネットワーク
めだか親子クラブ
チャレンジひがしなだ
筆をもとう
クエスト総合研究所
アートセラピー
NPO 法人マザーズサポータ協会
ふらっと 相談員
日本折紙協会
おりがみあそび
- 98 -
亀田マタニティ・レディース・クリニック
アウトリーチ・サービス
灘区歯科医師会
ふらっと 相談員
パパママ交流会
兵庫県立西宮高等学校
高校生の赤ちゃんふれあい体験学習
人形劇
六甲道児童館ユースセンター
中学生の赤ちゃんふれあい体験学習
神戸市看護大学(灘区保健福祉部から依頼)
地域母子保健実習の場として提供
神戸海星女子学院大学
ボランティア(授業)の場として提供
神戸大学医学部保健学科地域連携センター
ぽっとらっく
神戸大学医学部保健学科地域連携センター
ほっと
他に個人による協力も多数あり
(あーち運営委員会委員長 白水浩信)
9.1.4. サイエンスショップ
サイエンスショップは,(a) 地域社会における広義の科学教育を含む市民の科学に関わる諸活動への支援,及
び (b) 神戸大学学生の主体的研究活動などへの支援を行うことを目的として,平成 19 年度に特別教育研究経
費(教育改革)の支援を受けて設置された。平成 22 年度以降は,発達支援インスティテュートの一部門として位置
づけられている。上記(a)については,科学者等の専門家と市民の対話と協働を通じて,環境問題など科学に関わ
る地域課題への市民の取組や,社会における科学技術の進展とそれに関する政策形成過程などへの市民の参
画を促す仕組みづくりと実践を目指している。
平成 24 年度は,研究科専任教員(室長,副室長,及び室員若干名ほか)と,教育研究補佐員 1 名(非常勤職
員),事務補佐員 1 名(非常勤職員),学外研究員 2 名に加えて,10 月以降は特命助教 1 名が加わる体制で運営
された。
以下に平成 24 年度の主な取組を記す。
(1) 科学技術イノベーション政策への幅広い国民の関与を促すための研究開発プロジェクトの開始
滋賀大学,京都大学,大阪大学,帝塚山大学,鳥取大学の研究者との連携により,独立行政法人科学技術振
興機構 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「科学技術イノベーション政策のための科学」研究開発
プロジェクトとして申請した,「STI(科学技術イノベーション)に向けた政策プロセスへの関心層別関与フレーム設
計」(研究代表者:加納 圭(滋賀大学/京都大学))が採択となり,10 月よりプロジェクトを開始した。神戸大学で
は,サイエンスショップに関わる研究者 4 名が,科学技術に対する関心の高さが異なる市民の階層別の科学技術
政策プロセスへの参加を促す場づくり・仕組みづくりに関する研究・開発を中心に取り組む。平成 24 年度には,科
学技術政策形成過程への市民参加の仕組みの一つのテストケースとして,内閣官房/内閣府により策定され,パ
ブリックコメントが募集された「宇宙基本計画(案)」について,概要を解説し,市民が議論してパブリックコメントとし
てまとめ,提出するというワークショップ「これからの宇宙の『使いかた』を考える」を開催するなどの取組を行った。
(2) 地域社会における市民の科学活動支援
サイエンスショップのこれまでの取組を通じて,姫路市を中心とした播磨地域(「サイエンスカフェはりま」),伊丹
市(「サイエンスカフェ伊丹」),南あわじ市など兵庫県内の各地域で,サイエンスカフェをはじめとした科学に関わ
る活動を主体的に進める市民グループが立ち上がって着実な活動を展開し,サイエンスショップがこれを継続的
- 99 -
に支援している。平成 24 年度には,神戸大学地域連携事業(課題名:「兵庫県内の市民グループによる科学コミ
ュニケーション活動に対する支援」)として学内の支援も受けて取組を進めた。
平成 24 年度のサイエンスカフェ開催状況については年次報告書資料編に掲載するが,以下に本年度の特徴
的な事項等をまとめる。
(a) サイエンスカフェ伊丹
「サイエンスカフェ伊丹」は,伊丹市を中心にサイエンスカフェの開催に取り組む市民グループで,メンバー
には理工系の背景を持つ市民や,中学生,高校生などの保護者の立場の市民も含まれている。いわゆる「理
科離れ」が進む中で,地域の中学校,高等学校等の生徒に理系の魅力を伝え,理系の進路選択を促したい
という理由から,平成 24 年度は,従来から取り組んできたサイエンスカフェの継続的開催に加えて,大学の理
系分野の教員,学生・大学院生と中・高等学校の生徒が触れ合い,研究活動の楽しさなどを伝え,語り合う趣
旨のイベント 3 件が市民グループのイニシアチブで企画・実施され,神戸大学の教員,学生・大学院生が参
加,協力した(「リケジョフォーラム」,「集まれ!リケジョ リケダン サイエンスカフェ in 東中」,「理系の先輩と
語ろう!」)。
また,サイエンスカフェとしては,市民の要望を受けて,ノーベル賞受賞や報道などを通じて社会的にも大
きな注目を集めた iPS 細胞や,ヒッグス粒子の発見などを取り上げた企画に,ゲストの紹介などを通じて協力
した。
(b) サイエンスカフェはりま
「サイエンスカフェはりま」は,姫路市を中心とした播磨地域において,サイエンスカフェを開催する市民グ
ループである。平成 24 年度には,企業の社会貢献活動の一環としての助成を得て,サイエンスカフェやサイ
エンスツアーの実施など,活発に活動を展開した。 サイエンスショップは広報や運営事務の一部を通じて協
力した。
(c) 南あわじ市
南あわじ市においては,従来から連携・支援を行ってきた兵庫県の県民交流広場事業によるコミュニティ活
動「くましろふれあい広場」が平成 23 年度で終了し,その成果も受けて新たに設立された中間支援 NPO「ソ
ーシャルデザインセンター淡路」(略称 SODA)との連携へと発展・移行した。平成 24 年度には,SODA との共
催で,「今はやりの iPS 細胞」というテーマで,京都大学 iPS 細胞研究所からゲストを招き双方向コミュニケーシ
ョンを重視したサイエンスカフェを開催した。
また,同市の神代小学校に設置され現在は稼働していない天体ドームの再建を目指す市民グループ「神
代小学校天体ドーム再建準備会」の活動に天文科学講座 2 回の開催を通じて協力・支援を行った。
この他,公益財団法人ひょうご科学技術協会及び大学コンソーシアムひょうご神戸が主催する「サイエンスカフ
ェひょうご」の企画・運営を担い,神戸市,伊丹市,西宮市,佐用郡,三田市で 5 回を開催した。また,学術組織・
機関との連携・協力として,日本農芸化学会からの依頼を受け,「農芸化学会サイエンスカフェ」を 2 回,及び京都
大学 iPS 細胞研究所(CiRA)からの依頼を受け,「出張 CiRA カフェ・FIRSTin 神戸 iPS 細胞技術を使って神経の
難病に挑む」を,いずれも神戸市において共同開催した。
サイエンスショップの社会に関わる活動については,これまで市民と専門家の対話の促進が占める比重が大き
かったが,今後環境調査・保全などを含む市民による調査・研究活動への支援とその促進を一層進めることを目
指している。このような意図から,平成 24 年 9 月には,新しい試みとして市民参加による神戸大学キャンパス内の
植生調査を行った。
- 100 -
なお,平成 25 年 3 月に兵庫県佐用郡佐用町において開催した「サイエンスカフェひょうご」は,オオサンショウウ
オに象徴される生態系の保全や啓発活動に取り組む市民グループ「佐用川のオオサンショウウオを守る会」との連
携のもとで開催され,人間発達環境学研究科の研究者が,河川水中の DNA を分析することにより特定の生物の
棲息状況が把握できる手法について紹介するサイエンスカフェを行った後,サイエンスショップのスタッフ及び大
学院生が同会の実施したフィールド調査に参加した。この取組を通じて,今後の環境保全・調査活動等へのサイ
エンスショップと同グループの連携の可能性が生まれた。
この他,平成 19 年より,月に 1-2 回のペースで継続している,市民が科学者とともに IPCC(Intergovernmental
Panel on Climate Chang:気候変動に関する政府間パネル)のレポートを読み解く会「市民のための,IPCC レポー
トを根掘り葉掘り読む会」は 12 回(第 70 回から第 81 回)開催された。
(3) 学部・大学院教育
学部授業科目「ESD 演習 II」については,サイエンスショップが平成 19 年度から市民グループの取組に対して
支援・連携を行ってきた南あわじ市を主なフィールドとして,地域の課題を探るフィールドワークや,地域の高校生
とのワークショップなどを含む演習が行われた。
大学院博士前期課程の授業科目「サイエンスコミュニケーション演習」においては,履修者である大学院生がゲ
ストやファシリテータを務める形で,サイエンスカフェ「津波が残した堆積物~過去と未来の津波を考える」及び「こ
れからのエネルギーをどうするか?」を開催した。後者は,東日本大震災を受けて,今後のエネルギー政策の見直
しとそれに向けた国民的議論の必要性から政府が提示した「3 つの選択肢(2030 年における 3 つのシナリオ)」に
ついて概要を紹介し参加者で議論を行った。
この他,学部学生を中心とした正課外の取組として,地域の小学校等で天体観望会の開催に取組む「天文ボラ
ンティアグループ アストロノミア」も,学科の壁を越えて学生が参加して,小学校などでの 5 回の観望会の開催を
中心に活発な活動を展開した。また,昼休みを利用して,学生グループが教員の支援を受けながら,国際的科学
誌 Nature 及び Science の記事を読む取組「Nature & Science をガリガリかじる会」も着実に取組を継続し,参加学
生の英語力向上等に成果を収めた。
このように,サイエンスショップは,大学,大学院におけるアクティブ・ラーニングの場やそれ促す仕組みとしても
機能している。
(4) 地域科学教育への支援と理系人材養成の取組み
平成 24 年 11 月には,兵庫県生物学会と共同で「高校生私の科学研究発表会 2012」を開催した。本年度は部
局の「学術 WEEKS 2012」の企画としても位置付けられ,高校生 76 名を含む約 115 名の参加者があり,活発な発
表,交流が行われた。
平成 25 年 3 月には,神戸大学創立 110 周年記念・第 7 回理系 AO 入試フォーラム「理系 AO 入試が開く科学
者へのトビラ ― 高校・大学・社会の連携による人材の育成をめざして ―」を,発達科学部とサイエンスショップの
主催として実施し,兵庫県内外の高校,大学,企業,行政など各関係者で 21 世紀に求められる理系人材育成ビ
ジョンに関する意見交換と今後の方策についての議論を行った。
このほか,兵庫県立兵庫高等学校の課題探求型授業への大学院生の協力の大学側のコーディネートを行った。
高等学校からは,大学院生による高校生への指導の教育効果が高く評価されている。
(5) その他
サイエンスショップの活動,実践研究の成果発表として,日本科学教育学会第 36 回年会において,「地域・社
会の文脈に根づいた科学と学び―神戸大学サイエンスショップの活動等からの示唆」のテーマで講演を行った。
- 101 -
平成 24 年 7 月には,韓国 Kooming University(国民大学)における学習プログラム Sungkok Global Ambassador
(学生が自ら企画して,国際的に優れた研究や実践を行う機関を訪問・調査する)の取組として,同大学の学生 6
名と教員 1 名が神戸大学サイエンスショップを訪問したのを受け,サイエンスショップの理念や実践について紹介
した。
また,11 月には,カナダ British Columbia 大学の David Anderson 教授の来訪を受けてサイエンスショップの活
動を紹介し,高い評価を受けた。
神戸大学サイエンスショップ 平成 24 年度の主な取り組み
<市民科学活動支援>
・サイエンスカフェの運営と展開(サイエンスカフェ神戸(7 回開催),サイエンスカフェひょうご ほか 県
下各地のサイエンスカフェ開催支援(18 回))
・市民と研究者が協力して気候変動に関する IPCC レポートを精読する勉強会「市民のための,IPCC
レポートを根掘り葉掘り読む会」の定期開催(12 回)
・市民参加による神戸大学キャンパス内の植生調査
・伊丹市市民による理系進路選択支援の取組支援(3 件)
・つるかぶと科学教室開催(5 回:学外研究員による企画)
ほか
<地域の科学教育支援>
・神戸市立鶴甲小学校 PTA からの依頼を受けた児童と保護者を対象とした理科実験教室の開催
・兵庫県立兵庫高等学校における課題探求型授業「創造基礎」への協力(大学院生による研究・実習
等指導)
ほか
<大学教育・学生の活動>
・ESD 演習 II(学部),サイエンスコミュニケーション演習(大学院)等の授業支援
・天文ボランティアグループ「アストロノミア」による天体観望会の開催(神戸市立鶴甲小学校,神戸市
立御影小学校,東大阪市立縄手中学校) ほか
<研究会等の主催・共催>
・「高校生・私の科学研究発表会 2012/兵庫県生物学会 2012 研究発表会」開催(主催: 兵庫県生物
学会,神戸大学サイエンスショップ )
・神戸大学創立 110 周年記念・第 7 回理系 AO 入試フォーラム「理系 AO 入試が開く科学者へのトビ
ラ ― 高校・大学・社会の連携による人材の育成をめざして ―」
<イベント等開催協力>
・サイエンスカフェひょうご(主催:大学コンソーシアムひょうご神戸社会連携委員会,(公財)ひょうご科
学技術協会)神戸市,伊丹市,西宮市,佐用郡,三田市で開催
・サイエンスカフェはりま(主催:サイエンスカフェはりま)姫路市
・サイエンスカフェ伊丹(主催:サイエンスカフェ伊丹)伊丹市
・SODA サイエンス カフェ(主催:ソーシャルデザインセンター淡路)南あわじ市 ほか
<活動を紹介する講演等>
・日本科学教育学会第 36 回年会「地域・社会の文脈に根づいた科学と学び―神戸大学サイエンスシ
ョップの活動等からの示唆」
- 102 -
(サイエンスショップ室長 武田義明, 副室長 伊藤真之)
9.2. 実習観察園
平成 24 年度は, 11 月 16 日に京都教育大学において,近畿教育系大学農場協議会に出席し,他5大学の農
場運営上の問題点,地域連携,環境保全等について話し合った。
平成 24 年度の実習観察園の概要及び活動内容は以下の通りである。
(1)実習観察園施設及び概略図
実習観察園の概略は図1の通りで,前年と変わりはない。網掛けで示した部分は,自然環境論コースの教員が
研究のために設置したビニルハウスである。
管理棟
カキ
ブドウ
ナシ
柑橘園
畑地
ア
ン
ズ
倉庫
水田
水
槽
花壇
ビ
ニ
ル
ハ
ウ
ス
温室
畑地
バ
ラ
園
図1 施設・作付概要
(2)作付面積及び作付植物
作付面積及び作付作物はそれぞれ表1及び表 2 に示した通りである。主として学部生の実習に使用している。
表1 作付面積(㎡)
種 別
畑
果
樹
水
バ
ラ
花
計
面積
備 考
地
352
教 材 ・ 実 習 用
園
255
教 材 ・ 実 習 用
田
70
実 習 ・ 研 究 用
園
35
園内美化・実 習用
壇
25
園内美化・実 習用
表2 作付植物
種 類
植 物
コマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、キュウリ
野 菜
カボチャ、スイカ、トマト、オクラ、ピーマン
イチゴ、ナス、ダイコン、カブ、タマネギ、ニンジン
マメ・穀類
735
果 樹
花 卉
ダイズ、ラッカセイ、ソラマメ、インゲンマメ
ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、イネ
なつみかん、ハッサク、温州みかん、スダチ
ユズ、キンカン、カキ(富有、サエフジ)、ブドウ
(ピオーネ、デラウエア)、スモモ
ナシ(長十郎、菊水)、イチジク
ベゴニア、マリーゴールド、ペチュニア、サルビア
キンセンカ、バーベナ、トレニア、デモルフォセカ
マツバボタン、スベリヒユ、ヒマワリ、アサガオ
ハボタン、チューリップ、ナデシコ、バラ
- 103 -
2012 年春夏
北
2012 年秋冬
北
図2 24 年度畑地作付配置図
(3)教育(実習)活動
本年度も表 3 に示した授業で,学生が活用している。利用の内容は,植物栽培に関すること,すなわち,畝立
て,土作り,草花や野菜の種まき,育苗,鉢上げ,定植,誘引,かき,収穫,挿し芽繁殖,花壇設計・制作などであ
る。これらの他に,プランターや鉢植え栽培による校舎美化の指導も行っている(図 3)。果樹類については,開花
の観察,摘花,摘果,無核化処理などの説明に利用している。
表3 授業としての学生利用数
年度
授 業 名
2008 2009 2010 2011 2012
生活環境 緑化 論1
33
35
46
57
59
生活環境 緑化 論2
37
生 活環 境緑 化論 演習
2
35
5
幼 児 環 境 指 導 法
30
16
26
25
24
植 物環 境学 実験 実習
17
17
17
20
26
4
6
生活環境緑化特論演習
植 物 環 境 学 特 論
9
9
11
13
2
計
89
77
100
158
157
図 3 玄関前の花壇
(4)他機関の利用
1)田植え体験
生活経験,季節感,自然体験が乏しい神戸市灘区の鶴甲幼稚園の園児に,実習観察園で田植えを実践
してもらい,実際に体を動かし,五感を活用した体験の機会を得た。子どもは実際に田んぼに入り,イネの手
植えを行った。指導しながら安全への配慮等についても実践的に行った。
日時:2012 年 5 月 22 日
参加者:鶴甲幼稚園 5 歳児約 82 名,同園教諭等
人間発達環境学研究科 1 名
2)「のびやかスペースあーち」との連携・芋掘り体験プログラム
「のびやかスペースあーち」の基幹プログラムのひとつである「居場所づくり」のイベントとして,農園を利
用した芋掘り体験を行った。特に土と触れ合う機会の少ない障害児が,土の感触や収穫の喜びを経験する
- 104 -
貴重な機会となった。また,サポートした地域住民や学生にとっても,子どもたちと共に喜ぶ機会であり,また
子どもたちの新たな側面を知る機会にもなった。
日時:2012 年 10 月 12 日
参加者:「のびやかスペースあーち」利用者(子どもと保護者)14 名,ボランティア(地域住民,学生)8 名
今後も地域や学校等の要請等も積極的に受け入れ,授業ならびに研究で,利活用を図る予定である。
(実習観察園運営委員長 近江戸伸子)
- 105 -
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