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Focus of “Euro BLECH 2014”

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Focus of “Euro BLECH 2014”
TOPICS
Euro BLECH2014 の 焦 点
∼『自動化』
『 省エネ』と『ICT 技術』がテーマ
部分最適から全体最適―プロセス・イノベーションを目指す
欧州勢∼
㈱ アマダ CR 部門長兼企画部長 石 川 紀 夫
最大規模、1,573 社が出展
板金加工技術の発展に貢献してきたドイツ
10 月 21 日から 25 日までの 5 日間、ドイツ・ハノー
もともと鉄板などの薄板に穴あけ加工をしたり、折
バーで Euro BLECH2014 が開催された。38 か国から
り曲げたりする板金加工技術は塑性加工技術の一貫で
過去最高の 1,573 社が出展。展示総面積は 86,500 ㎡に
ある。板金加工機械の代表であるパンチプレスは、調
及び、メッセ会場の 8 ホールを使って最新の技術や製
達コストが高額で、製作工期も長い金型を使って、転
品、サービスが紹介された。前回との比較でみると出
写加工するプレス機に対応して、調達コストが比較的
展者数で 5%、展示面積で 3% 増加した(写真 1)。
リーズナブルな標準パンチを、製品の加工形状に応じ
出展企業が多いのは地元ドイツだが、ドイツ以外の
て、NC 制御で金型交換して加工に応用することで、
国からの出展者は 52%(前回は 48%)となり、初めて
多品種少量生産を可能にした。それによって、板金加
ドイツ以外の国からの出展者数が半数を超えた。ドイ
工市場が拡大していったという経緯がある。こうした
ツ以外ではイタリア、中国、トルコ、オランダ、スペ
加工技術のルーツをたどると、ドイツで製造されたニ
イン、オーストリア、アメリカの順となった。期間中
ブリングマシンに遡ることができる。それだけに、ド
の来場者総数は 59,600 名で、このうちドイツ以外か
イツが板金加工技術の発展に貢献してきた役割は大き
らの来場者数が 38% となり、前回の 34% を上回った。
い。さらに近年、市場を拡大しているレーザ技術は、
ドイツ以外ではオランダ、オーストリア、スイス、イ
1960 年にアメリカのセオドア・メイマンによって実
タリア、ポーランド、スウェーデン、トルコ、チェコ、
用化された。しかし、集光した光を増幅し、加工用の
アメリカなどからの来場者が目立った。
ビームとして熱加工に適用、切断や穴あけ、溶接、表
主催者は今回の Euro BLECH に関して、「多くの出
面改質などの産業用に応用し、自動車業界を中心に普
展者は成果に大変満足しており、来場者や出展者が国
及に貢献してきた国がドイツ。それだけにレーザ加工
際的になったことにも満足していた」と総括している。
を含めた板金加工技術に関し、ドイツは世界には負け
写真 1 Euro BLECH2014 の会場入口
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写真 2 パンチプレスは次第にレーザマシンに置換されている
TOPICS
TOPICS
ない、という強い意識がある。Euro BLECH の開催
ツは中国市場に力を入れることで経済発展の活路を見
国として、世界の板金業界をリーディングすることに
出そうとしている。しかし、中国経済も政権内部の腐
国全体が関心を持っている(写真 2)。
敗防止の徹底、不動産バブル崩壊の危機、シャドーバ
現在、ドイツ国内にはレーザジョブショップを含め
ンキング問題、地方政府の債務超過など多くの課題を
ると、おおよそ 30,000 社から 33,000 社の板金サプラ
抱え、経済は減速。それだけにドイツ経済の先行きに
イヤーがあるといわれており、日本に比べても、サプ
は、国内外で強い警戒感が生まれている。
ライヤーの数が多い。当然、工業出荷額に占める板金
製品の占める割合も高く、板金加工とその産業は、ド
経済の減速を示す兆候はなかった
イツを支えるサポートインダストリーとなっている。
しかし、Euro BLECH2014 では世界経済の減速を
EU の盟主、ドイツの「光」と「影」
示す兆候を見ることはなかった。出展者の多くが来場
ドイツは EU の盟主として、持続的な経済成長を
者の反応に手応えを感じていた。それは厳しいメガコ
ンペティションが影響しているからだ。
続けてきた。EU 内の失業率を見ても域内の平均が
欧米先進国で適地適産、地産地消が進み、産業構造
12%、中でもギリシャ、スペインは 25% 超えの高数字
が激変する中で、ボーダーレス競争はますます激化し
となっているにもかかわらず、ドイツは 5%、雇用環
ている。その結果、ドイツをはじめとして世界中の板
境も恵まれている。また、雇用が安定していることか
金サプライヤーは生き残りを賭け、積極的な設備投資
ら個人消費も堅調で経済成長を下支えし、ドイツ経済
を計画、Euro BLECH を訪れる目的も、設備力強化
は EU 経済全体を押し上げていた。
に対応する加工機、システムの視察となっていた。
ところが、そのドイツはウクライナへの対応を巡っ
そうした背景の中で、来場したサプライヤーの関心
ての EU とロシア間の相互制裁の動向など、地政学上
は『自動化』と『省エネ』、そして、それを実現する『情
のリスクによる影響で、14 年下期以降は民間の設備
報(ICT; Information Communication Technology)
投資は慎重になっている。
技術』。
ドイツ工作機械工業会(VDW)によると、2014 年
第 3 四半期の受注高は前年同期比 8% 減となったこと
から、通年の受注・生産見込みを下方修正するなど、
『自動化』への関心の背景
産業界にも景況感見通し悪化の兆しが表れ、ロシアへ
EU 域内の人件費の上昇率はここ数年、年率 2% 以下
の経済制裁の影響が影を落とし始めている。
の上昇にとどまっているが、ドイツは 12 年以降、2.5 ∼
そしてさらなる懸念材料が中国経済の動向。14 年
2.8% と EU 平均を上回る上昇率で賃金が上昇してお
10 月、中国の李克強首相がドイツを訪問、そのタイ
り、法定福利費などを含めた総人件費で見ると、板金
ミンでダイムラー社が北京に新工場を建設するなど少
業界で働く作業者の平均的な時給は 5,000 円∼ 7,000
なくとも 4,000 億円の対中国投資契約が結ばれ、ドイ
円。それに引き換え、ポーランドをはじめとした東欧
ツから中国への投資はこの 4 年で 2 倍に増えた。ドイ
地域の工場作業者の時給は、ドイツの 40% 程度。そ
の結果、数のあるリピート品の生産は東欧に流れ、ド
イツには試作品や小ロットの製品しか残らなくなって
いる。しかも、限られた仕事を過密な同業者間で競争
しなければならない。競争に勝つためにはコスト競争
力を備え、徹底した『自動化』を進めなければなら
ない。さらに、試作や小ロット品が増えることによっ
て多品種少量生産になるため、段取り換えをはじめ
とした間接作業が増える。こうした作業を内段取りで
行っていたのでは稼働率に影響するので、内段取り作
業を「外段取り化」するとともに、板金全工程の最適
化を図ることが重要になる。そこで、CAD/CAM、生
1995 年から 2014 年までのドイツの工作機械業界の受注・出荷統計推移
(出典;VWD ドイツ工作機械工業会)
産管理(ERP システム)を統合する一元管理システ
ムへの要求が高まっている。
図 1 ドイツの工作機械受注・出荷統計
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『省エネ』の背景は電力料金の高騰
載したメーカーは 5 社にとどまり、出展機のすべてが
次が『省エネ』への関心。ドイツでは 2012 年時点
4kW 以上で厚板の高速切断を PR した。全体を通じ
で、全エネルギーに占める再生可能エネルギーの割
8 kW ファイバーレーザ発振器を搭載、出展したメー
合は 22%(日本は 13 年で 2.2%)。2050 年までに電力
カーも 1 社あった。また、Trumpf 社は 8kW ディス
の 8 割を再生可能エネルギーで供給する体制を整える
クレーザ発振器を搭載した、TruLaser-5030 を出展。
ことを目標に、これまで設備の新設を後押しする優遇
軟鋼 25mm、SUS40mm、Al25mm、銅、真鍮 10mm
措置をとってきた。その結果、2000 年当時の平均的
の切断を PR した。発振器の高出力化は高速加工と厚
な家庭の電気料金が、現在では 2 倍以上に高騰。その
板切断への対応が、強く求められているからと思わ
結果、アンゲラ・メルケル首相は昨年 1 月、再生可能
れる。
エネルギーの新設設備に対する優遇措置を縮小する方
ファイバーレーザ発振器に関しては 70% 以上が IPG
針を明らかにした。わが国でも昨年 9 月に九州電力を
社製を搭載していた。しかし、アマダが JDSU との共
はじめとした 4 電力会社が、太陽光発電で発電された
同開発で発表した自社製発振器を開発、搭載したのと
電力の接続を保留することを発表。それとともに、買
同様に、今回は Bystronic 社が、3 kW のファイバー
取り価格も最盛期の 42 円から、20 円台へと大きく下
レーザ発振器を発表。軟鋼 20mm、SUS、Al15mm、銅、
落した。早急な再生可能エネルギーへの転換は社会経
真鍮 10mm までの切断に対応できることを PR した。
済に大きな影響を及ぼすことになる。再生可能エネル
今回の Euro BLECH2014 にレーザマシンを出展
ギーを普及させるために電力会社に高い固定価格で買
したメーカーは 28 社。前回の 24 社に比べて微増と
取らせるものの、電気料金に価格を転嫁させないとい
なった。
ても発振器の出力は 70% が 4 kW で、中には IPG 製
うことになると、電力会社は倒産という事態を迎える
ことになる。負担が巨額になる買取り制度の継続は難
しく、再生可能エネルギーを導入することで、電気利
出展機の 70%がファイバーレーザ、DDL
用者の負担増は膨大になっていく。その結果、電気料
電力料金が高額になっているのでレーザの効用を認
金の上昇はこれからも避けられない状況だ。
めつつ、消費電力量の少ないレーザへの要求は高い。
その結果、6 年ほど前から消費電力量が少ないファイ
エネルギー効率からファイバー、ダイオー
ドレーザに関心高まる
バーレーザが拡大してきた。それまでの CO2 レーザ
に比べてエネルギー効率が 2 ∼ 3 倍高いファイバー
今回の Euro BLECH では、待機電力や加工に多く
レーザを搭載したレーザマシンが今回も 70% 以上を
の電力を要するレーザ加工の省エネ化が大きな問題と
迎え、出展されたファイバーレーザマシンは 20 台以上
なってきた。
に及んだ。しかし、ファイバーレーザマシンの登場は
また、Trumpf 社を除くメーカーがすべてファイ
逆に、機械メーカーにとっては落とし穴にもなった。
バーレーザマシンを出展。エネルギー効率の点から
今回も IPG 社製発振器が 70% を占め 1 人勝ちとなっ
ファイバーが主流となった。CO2 レーザ発振器を搭
ている。その結果、ファイバーレーザ発振器と加工ヘッ
占めた。この傾向は 2 年前の Euro BLECH でピークを
ド、NC 装置さえ手に入れば、どのメーカーでもファ
イバーレーザマシンを製造することができ、レーザマ
シンのコモディティ化は一気に進んだ。2 年前の Euro
8kW
2kW
6kW
5kW
BLECH から東欧、トルコ、ポーランド、インドなど
から出展されたファイバーレーザマシンが、それまで
の価格の半分以下で提供されるようになり、価格競争
3kW
4kW
に陥った。
そうした中でアマダや Bystronic 社など、トップメー
カーが相次いで自社製を発表してきたのも、コモディ
ティ化に対応して、発振器をマシン一体で開発するこ
とによる加工機能の高度化と付加価値改善による差別
化を狙っていると思われる。さらに、こうしたトップ
図 2 Euro BLECH2014 に出展されたレーザマシンに
搭載された発振器出力別の割合
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メーカーは、ブランク材を速く加工できても、後工程
がボトルネックとなって滞留しては生産最適化を実現
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できないと考えており、部分最適よりも全体最適を重
視する傾向となっている。
アマダが発表した DDL に関心が集まる
そのような中で注目を集めたのが、アマダが参考
出展した米国の半導体レーザメーカー、JDSU と共
同で開発したダイレクト・ダイオード・レーザ(DDL)
と呼ばれる半導体レーザで板金を加工する技術。こ
れ ま で の 主 流 で あ る CO 2 レ ー ザ に 比 べ、 省 エ ネ ル
ギー効率や高速加工などに優れ、加工時の電気代を
半減、切断速度を板厚1mm のアルミニウムで 75%
写真 5 エネルギー効率の高い DDL の実演加工には多くの
来場者が集まって熱心に見学していた
速めることができた。DDL を高出力で板金加工に適
用したのはアマダが世界で初めてだ。2015 年に同技
DDL の 電 気 − 光 変 換 効 率 は 40%。CO2 レ ー ザ の
術を搭載したレーザマシンを製品化、3 年をめどに
10%、ファイバーレーザの 30% に対して高いエネル
CO2 レーザマシンの半数を占める量販製品に育てる
ギー効率を持っている。ゆくゆくはレーザマシンの
という。今回は DDL を紹介するためのコンセプト
主流は DDL に置き換わる可能性が高い。米国の業界
マシン、ExC を出展した(写真 3、4、5)。
調査会社ストラテジズ・アンリミッテド(Strategies
Unlimited)によると、DDL は金属加工で従来の CO2
レーザに置き換えるソリューションの 1 つとして成長
しており、2012 ∼ 2017 年の間は年平均 15.3%で成長、
2017 年には 2 億 3700 万ドルの市場規模に達す、とい
うレポートを発表している。
エネルギー効率を巡る戦い
これまで DDL は溶接など一部の分野には使われて
いたが、ビーム品質が悪く切断には向かないとされ
ていた。しかし今回、アマダと JDSU は高効率ダイ
写真 3 アマダが機械メーカーとしては世界初で発表した
2kW DDL による切断加工を実演した ExC
オードのビーム品質を大幅に改善、切断に対応できる
ようにした。発表された DDL は 2 kW だが、今後は
4kW、6kW をシリーズ化する計画。
一 方、DDL 開 発 で は 世 界 に 先 が け て き た 米 国・
TeraDiode 社はブース内に 2kW の DDL を出展(4kW
をアメリカで発表)。切断への応用ができることを強
写真 4 2kW DDL 発振器
写真 6 テーブルキャビネット方式でレーザの反射光を遮
蔽、安全と操作性をアピールしたファイバーレーザ
複合マシン LC-C1AJ
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調、ファイバーレーザと比較しても高いエネルギー効
率の高さを PR した。こうした両社の動きに対して、
ファイバーレーザのトップメーカー IPG 社は、従来の
ファイバーレーザよりもエネルギー効率を 40% まで
改善したエコ仕様のファイバーレーザ発振器を発表、
DDL と遜色のないエネルギー効率を PR した(写真 6、
7、8、9、10)。
写真 10 Bystornic は自社開発の 3kW ファイバーレーザ
発振器を発表した 『Industrie4.0』を意識する出展傾向
『自動化』視点では、材料や仕掛かり品の保管、加
工機へ搬出入するマニプレータと棚を組み合わせた加
工セルが、数多く出展されたことも大きな特長となっ
た。また、マシンの加工スピードに対応して、材料の
写真 7 出展されたファイバーレーザマシンの 70% が採用
した IPG 社製の発振器はエネルギー変換効率を 40%
まで改善した新タイプのエコシリーズを発表した
搬出入が遅いと、そこがボトルネックとなるため、周
辺装置の高速化も目立っていた。また、棚に格納し
た材料や仕掛かり品を ERP システムで管理するため
に、バーコードや IC タグで管理する手法を採用した
装置の出展も目立った。ドイツをはじめとした欧州で
は ERP システムのシェア No.1、SAP(エスエーピー)
社のシステムが、工場で数多く運用されており、セル
化による自動化も生産情報と加工情報を一元管理した
運用を望むサプライヤーが多い。
そのために、工場内にあるマシン、棚、周辺装置、
金型など加工に必要な機器をネットワークで接続、作
業の進捗を確認するとともに、マシンで加工するのに
写真 8 LVD は 2 kW から 6 kW までの発振器を搭載できる
ファイバーレーザマシン ELECTRA シリーズ FL-3015
を出展した 必要な加工データを、必要な時に必要なマシンに転送。
その加工データは発注元の製品データからシームレス
で CAD/CAM システムで作成。ブランク、曲げ、溶
接までの全工程をシングルソースでネットワーク運用
するスマートファクトリーを目指す指向が顕著になっ
てきた(写真 11、12、13、14)。
写真 9 PrimaPower は 4kW ファイバーレーザ発振器を搭
載した三次元 5 軸レーザマシンを発表。欧州の自動
車メーカーでは成形加工後のホット材のトリム加工
に三次元 5 軸ファイバーレーザマシンがラインで多
用されている
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写真 11 Trumpf 社は板金設計からプログラム作成まで
をシングルソースで行うことのできる TruTops
Boost を発表すると共に、部品から製品までのエ
ンジニアリングを PR した
TOPICS
ることで、不良を撃退し、加工データの 2 度づくりを
やめ、技術伝承を実現できることを実証してきた。
アマダは今回の Euro BLECH で、これまでの VPSS
をさらに進化させた「VPSS 3i」を発表した。オープ
ン環境で受取った三次元モデルから板金部材を抽出し
て、板金属性を再定義してバラシ、展開からブランク、
曲げ、溶接まで一貫データを作成するとともに、その
プロセスに、技術伝承によって蓄積された、現場のエ
キスパートが持っているさまざまな加工ノウハウを流
写真 12 Bystronic は設計からプログラムまでの統合型
ソフトを発表した
入させることで、高効率で高品質な製品ができるプロ
セスを紹介していた。
Euro BLECH ではこうしたコンセプトに生産管理
情報をリンク、必要なときに、必要な製品を、必要な
数だけつくるという JIT(リーン)生産に対応したシ
ステムの出展が目立った。
Industrie4.0 への関心
Trumpf 社、Bystronic 社、LVD 社といった欧州
の有力メーカーが、こうしたシステムを出展した背
景にあるのが、2011 年からドイツ政府が産官学の総
力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロ
ジェクト第 4 の産業革命―「Industrie4.0」が進んで
いることだ。
写真 13 Euro BLECH2014 で目立ったネスティング
「Industrie 4.0」は、2006 年からドイツ政府 が 強
力に推進してきた「高度技術戦略」の中で生まれて
きた。この戦略の目的は、革新的な研究を重ねるこ
とで技術的なイノベーションを生み出しドイツの高
い競争力を堅持することにある。ドイツがグローバ
ルな課題に対して解決策を与えられるリーダーの地
位を維持するために、この目標の達成が必須条件だ
と位置付けている。アンゲラ・メルケル首相自ら、
この活動を推進し、産官学が構成するワーキンググ
ループに思い切った予算を振り分けている。
写真 14 スケジュールやファミリー単位で歩留りを最適化
できるネスティング加工ができることを、加工後
のスケルトンを展示してアピール(Bystronic 社)
スマートファクトリー目指す欧州メーカー
このシステムが目指すモノづくりが、工程作業を
行うマシン、ロボット(ワークステーション)が、ネッ
アマダの VPSS が先行
トワークであらゆる情報にリアルタイムにアクセス
すでにアマダは十数年前に、「不良撃退」「2 度づく
でき、情報に応じて自由に生産方式や生産するモノ
などを組み替えて、最適な生産を行うという構想。
り防止」「技術伝承」を目指した、
「VPSS(バーチャル・
客先ごと、製品ごとに異なるデザインや構成、注文、
プロトタイプ・シミュレーション・システム;バーチャ
計画、生産、配送を、ムダなく円滑に実現すること
ル試作システム)を発表。内段取り作業を外段取り化
を可能にしようとしている。生産の直前、あるいは
することで、機械稼働率を大幅に改善させる一方で、
生産中であったとしても仕様変更などに対応できる
上流で作成した展開図(加工図)データを抜き、曲げ、
というのが理想で、究極のスマートファクトリーを
溶接までの全工程において、シングルソースで活用す
目指そうとしている。
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ドイツ板金工場の ERP システムには、欧州最大の
との連携のあり方を含め、将来構想を描き、① 標準化
ソフト開発会社 SAP(エスエーピー)社の ERP シス
② 技術開発等についてアクションプランを策定・実
テムが広く導入されていることから、今後は SAP 社
行していく必要がある」(2014.12.24,日本の「稼ぐ力」
と連携したソフト開発が進むことが考えられる。
創出研究会,ビッグデータ・人工知能がもたらす変革
Trumpf 社をはじめとした欧州メーカーは多品種少
を日本の稼ぐ力とするために,経産省経済産業政策局)
量生産に対応して、歩留りを考えたネスティング加工
といった報告書も出ており、Iindustrie4.0 の動向に注
を例に挙げ、機種の異なる製品を効率よくネスティン
目し始めている。
グ加工、その後の曲げに対応したプログラムを外段取
市場ニーズに連動した多品種少量生産 , 変種変量生
りで作成し、着手・完了のステータス情報を生産の進
捗情報に取り込む仕組みをアピールしていた。また、
マシンの加工状態をマシンに内蔵したカメラ画像など
産への対応が関迫られる中で、『自動化』・『省エネ』・
『ICT 技術』への関心が板金業界でもますます高まっ
ていることを強く感じた。
でリアルタイムに遠隔診断、加工の最適化と遠隔サ
ポートを図ることができるサポートシステムも PR し
ていた。
こうした国を挙げたドイツの取組みに対して、わが
国でも経済産業省が「『ロットサイズ 1、設計のリー
株式会社アマダ ドタイム・在庫ゼロ』など AI(人工知能)
・ビッグデー
〒 259 -1196 神奈川県伊勢原市石田 200
Tel. 0463 - 96 - 3475 Fax. 0463 - 96 - 3594
http//www.amada.co.jp
タ時代を勝ち抜くことのできる生産・販売システムの
実現に向け、「Industrie4.0」や「Industrial Internet」
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