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小学校6年生のフラッグフットボールの授業における 思考・判断の評価と

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小学校6年生のフラッグフットボールの授業における 思考・判断の評価と
熊本大学教育学部紀要
第65号, 203-208, 2016
小学校6年生のフラッグフットボールの授業における
思考・判断の評価と指導
坂本 一真*・山元 秀太*・則元 志郎
A Study About Assessment and Guidance of Thinking and Judgment
Through Flag Football Games in Elementary School 6th Grade
Kazuma SAKAMOTO*, Shuta YAMAMOTO*, Shiro NORIMOTO
(Received September30, 2016)
Ⅰ.目 的
ボール運動の授業における子どもの現状として吉永は,①ゲーム中に何が起こっているのかがわからない(子
どもたちはゲーム中に何回ボールに触れたか,どのような動きをしていたかがわからない)②なぜその結果が生
み出されたのかがわからない(ゲーム中に何が起こっているのかは理解できるが,なぜそのようになったのかは
わからない.そのため,その状況を改善する方法がわからない)1)と課題を指摘している.
また,バンカーは体育授業の課題として,運動技術に強調点を置いた授業になっている…この授業ではわかる
ことを軽視しているため,柔軟な技術や意思決定が身に付かない…このような授業からゲームにおける戦術的思
考に強調点を置いた授業に移行すること…戦術的思考に強調点を置くことにより,戦術的気づきに基づいた正し
い意思決定行為を学習することでゲームを面白いもの,楽しいものとして理解することができる 2)としている.
このような体育授業の現状を踏まえると,体育授業の課題はどう動いたらよいのかわからない児童に何を教え
るのかを明確にすることであると捉えることができる.この課題を解決するために,岩田は,児童がゲーム状況
の中で求められる「判断」行為に積極的に関与・参加できるようにすることが大事である 3)と述べている.こ
れは言い換えるとゲーム中に適切な状況を判断する力であると考えられる.
本研究での状況を判断する力とは,シュミットによる「状況の認知」
「状況に応じたプレーの決定」4)とし,
技能は作戦どおりの動きの実行と定義した.
以上を踏まえ,本研究ではフラッグフットボールの重要な学習内容として「ゲーム中の状況判断」を設定する
とともに,この内容を評価する提示資料を活用することが,ゲーム中の状況判断力及び技能の向上に有効に作用
するかどうかを検討することを目的とした.
Ⅱ.方 法
1.期間・対象
2016 年 1 月~ 2 月にかけて熊本県菊池市立 A 小学校 6 年生(15 名)を対象に,
ボール運動のゴール型「フラッ
グフットボール教材」の授業(9 時間)を行った.授業を担当したのは,小学校教員 2 名であった.
2.授業実践概要
授業概要を表 1 に示している.第 1 時にオリエンテーション,
第 5 時に事前ゲーム,
第 9 時に事後ゲームを行っ
た.第 2 時~第 4 時については,3 つの基本的防御法(プレス・マン・ゾーン)を学び,第 6 時~第 8 時にそれ
らに対応した攻撃法を実践しながら考えていくといった防御分析法 5)6)を用いた授業を行った. 第 6 時~第 8
時の学習において,実験群はプレー原則及び状況判断力の評価基準を使いながら学習し,統制群は話し合いや練
* 熊本大学大学院教育学研究科
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坂本一真・山元秀太・則元志郎
坂
本 一 真・山 元 秀 太・則 元 志 郎
坂本一真・山元秀太・則元志郎
坂本一真・山元秀太・則元志郎
して学習を行った.
表 1 授業の概要
習を通して学習を行った.
して学習を行った.
して学習を行った.
表1 授業の概要
3.プレー原則及び状況判断力の評価基準
3.プレー原則及び状況判断力の評価基準
3.プレー原則及び状況判断力の評価基準
表1 授業の概要
授業の概要 統制群
時
実験群 表1
3.プレー原則及び状況判断力の評価基準
ケルンによるとゲーム中にプレーヤーが状況判断をする場合,
ケルンによるとゲーム中にプレーヤーが状況判断をする場
ケルンによるとゲーム中にプレーヤーが状況判断をする場合,
ケルンによるとゲーム中にプレーヤーが状況判断をする場合, 1 フラッグフットボールオリエンテーション
ボール,ゴール,オフェンス,ディフェンスの位置関係が判断材料
合,ボール,ゴール,オフェンス,ディフェンスの位置関係が
ボール,ゴール,オフェンス,ディフェンスの位置関係が判断材料
ボール,ゴール,オフェンス,ディフェンスの位置関係が判断材料
2
プレスディフェンスの学習
7)
7)
としている.この前提に立って,プレー選択
として利用される
7)
7)
判断材料として利用される
としている.この前提に立って,
としている.この前提に立って,プレー選択 3
として利用される としている.この前提に立って,プレー選択
として利用される
マンディフェンスの学習
の原則を設定し,これをフラッグフットボールの状況判断力の評
プレー選択の原則を設定し,これをフラッグフットボールの状
の原則を設定し,これをフラッグフットボールの状況判断力の評
の原則を設定し,これをフラッグフットボールの状況判断力の評 4
ゾーンディフェンスの学習
価基準として位置づけた.これらは鬼澤らが開発したバスケット
況判断力の評価基準として位置づけた.これらは鬼澤らが開発
価基準として位置づけた.これらは鬼澤らが開発したバスケット
価基準として位置づけた.これらは鬼澤らが開発したバスケット
5
フラッグフットボール事前ゲーム
8) 9) 10)
を基に
ボールの「プレー原則及び状況判断力の観察基準」
8)
8) 9)
9) 10)
10)を基に
したバスケットボールの「プレー原則及び状況判断力の観察基
ボールの「プレー原則及び状況判断力の観察基準」
ボールの「プレー原則及び状況判断力の観察基準」
を基に
どうやって相手の
どうやって相手の
作成したものである.図1はクオーターバックのランプレーのプ
6
準」8)9)10)を基に作成したものである.図 1 はクオーターバッ
作成したものである.図1はクオーターバックのランプレーのプ
ディフェンスを崩す
作成したものである.図1はクオーターバックのランプレーのプ
ディフェンスを崩す
レー原則及び判断評価基準である.フラッグフットボールのポジ
か を 学 習 す る.
「プ
クのランプレーのプレー原則及び判断評価基準である.フラッ
レー原則及び判断評価基準である.フラッグフットボールのポジ
レー原則及び判断評価基準である.フラッグフットボールのポジ
かを学習する.兄弟
7 レー原則及び状況判
ションは,クオーターバック,センター,ブロック,レシーバーが
グフットボールのポジションは,
クオーターバック,
センター,
ションは,クオーターバック,センター,ブロック,レシーバーが
チームでの話し合い
ションは,クオーターバック,センター,ブロック,レシーバーが
断力の評価基準」を
あるため,それぞれにプレー原則及び状況判断力の評価基準を作
に よ っ て 自 己 評 価,
ブロック,レシーバーがあるため,それぞれにプレー原則及び
あるため,それぞれにプレー原則及び状況判断力の評価基準を作
あるため,それぞれにプレー原則及び状況判断力の評価基準を作
活 用 し, 自 己 評 価,
8
他者評価を行う.
成した.
他者評価を行う.
成した.
状況判断力の評価基準を作成した.
成した.
4.調査内容
9
フラッグフットボール事後ゲーム
4.調査内容
4.調査内容
4.調査内容
1)状況判断力(状況の認知)
1)状況判断力(状況の認知)
1)状況判断力(状況の認知)
1)状況判断力(状況の認知)
図2はあるチームがたてた作戦である.センターとレ
図2はあるチームがたてた作戦である.センターとレ
図
2 はあるチームがたてた作戦である.センターと
図2はあるチームがたてた作戦である.センターとレ
シーバーがディンフェンスの右側をブロックして空い
シーバーがディンフェンスの右側をブロックして空い
レシーバーがディンフェンスの右側をブロックして空
シーバーがディンフェンスの右側をブロックして空い
たスペースをクオーターバックがランをする作戦であ
たスペースをクオーターバックがランをする作戦であ
いたスペースをクオーターバックがランをする作戦で
たスペースをクオーターバックがランをする作戦であ
る.攻撃権が3回あるので,それぞれのプレーが終わる
る.攻撃権が3回あるので,それぞれのプレーが終わる
ある.攻撃権が 3 回あるので,それぞれのプレーが終
る.攻撃権が3回あるので,それぞれのプレーが終わる
たびにそれぞれのポジションのプレーヤーがプレー原
たびにそれぞれのポジションのプレーヤーがプレー原
わるたびにそれぞれのポジションのプレーヤーがプ
たびにそれぞれのポジションのプレーヤーがプレー原
則及び状況判断力の評価基準を使って自己評価を行っ
則及び状況判断力の評価基準を使って自己評価を行っ
レー原則及び状況判断力の評価基準を使って自己評価
則及び状況判断力の評価基準を使って自己評価を行っ
た.また,そのプレーに対して他者評価,教師評価も行っ
た.また,そのプレーに対して他者評価,教師評価も行っ
を行った.また,そのプレーに対して他者評価,教師
た.また,そのプレーに対して他者評価,教師評価も行っ
た.
た.
評価も行った.
た.
プレーの振り返りにおいて,状況の認知ができていな
プレーの振り返りにおいて,状況の認知ができていな
プレーの振り返りにおいて,状況の認知ができてい
プレーの振り返りにおいて,状況の認知ができていな
いと,自分の動きが作戦どおりにできたのかどうかがわ
いと,自分の動きが作戦どおりにできたのかどうかがわ
ないと,自分の動きが作戦どおりにできたのかどうか
いと,自分の動きが作戦どおりにできたのかどうかがわ
図1 クオーターバックのプレー原則及び状況判断力の評価基準
からない.そこで,作戦タイムで自己評価と他者評価,教
図1 クオーターバックのプレー原則及び状況判断力の評価基準
クオーターバックのプレー原則及び状況判断力の評価基準
からない.そこで,作戦タイムで自己評価と他者評価,教
図1
がわからない.そこで,作戦タイムで自己評価と他者
からない.そこで,作戦タイムで自己評価と他者評価,教
図 1 クオーターバックのプレー原則及び状況判断力の
師評価を比較し,状況の認知ができているか確認する学
師評価を比較し,状況の認知ができているか確認する学
評価,教師評価を比較し,状況の認知ができているか
師評価を比較し,状況の認知ができているか確認する学
評価基準
習活動を行った.
習活動を行った.
確認する学習活動を行った.
習活動を行った.
図3はセンターの自己評価である.これを例にあげて自己評価,他者評価,教師評価との比較について説明する.
図3はセンターの自己評価である.これを例にあげて自己評価,他者評価,教師評価との比較について説明する.
図
3 はセンターの自己評価である.これを例にあげて自己評価,他者評価,教師評価との比較について説明す
図3はセンターの自己評価である.これを例にあげて自己評価,他者評価,教師評価との比較について説明する.
1回目の攻撃については,他者評価も教師評価も自己評価と同じ評価であっ
1回目の攻撃については,他者評価も教師評価も自己評価と同じ評価であっ
る.1 回目の攻撃については,他者評価も教師評価も自己評価と同じ評価で
1回目の攻撃については,他者評価も教師評価も自己評価と同じ評価であっ
た.2回目の攻撃も同じように自己評価と他者評価,教師評価が一致していた.
た.2回目の攻撃も同じように自己評価と他者評価,教師評価が一致していた.
あった.2 回目の攻撃も同じように自己評価と他者評価,教師評価が一致し
た.2回目の攻撃も同じように自己評価と他者評価,教師評価が一致していた.
しかし,3回目は自己評価では「ディフェンスにかわされてボールをもってい
しかし,3回目は自己評価では「ディフェンスにかわされてボールをもってい
ていた.しかし,3 回目は自己評価では「ディフェンスにかわされてボール
しかし,3回目は自己評価では「ディフェンスにかわされてボールをもってい
る人とディフェンスの間に入ることができなかった」としているのに対して,
る人とディフェンスの間に入ることができなかった」としているのに対して,
をもっている人とディフェンスの間に入ることができなかった」としている
る人とディフェンスの間に入ることができなかった」としているのに対して,
他者評価では,「ボールを持っている人とディフェンスの間に入ることはでき
他者評価では,「ボールを持っている人とディフェンスの間に入ることはでき
のに対して,他者評価では,
「ボールを持っている人とディフェンスの間に
他者評価では,「ボールを持っている人とディフェンスの間に入ることはでき
たが,そのポジションを維持することができなかった」としている.さらに教師
としている.さらに教師
たが,そのポジションを維持することができなかった」
たが,そのポジションを維持することができなかった」
としている.さらに教師
入ることはできたが,そのポジションを維持することができなかった」とし
評価では,「ディフェンスが走っているコースにはいってブロックできた」と
評価では,「ディフェンスが走っているコースにはいってブロックできた」と
評価では,「ディフェンスが走っているコースにはいってブロックできた」と
ている.さらに教師評価では,
「ディフェンスが走っているコースにはいっ
図2 作戦図
している.この状況の認知のずれについて話し合いをし,動きの修正を行うこと
図2
図2 作戦図
作戦図
している.この状況の認知のずれについて話し合いをし,動きの修正を行うこと
している.この状況の認知のずれについて話し合いをし,動きの修正を行うこと
てブロックできた」としている.この状況の認知のずれについて話し合いを
図 2 作戦図
で,児童は自分の動きについて正確に振り返りを行い,状況を認知することができると考えた.
で,児童は自分の動きについて正確に振り返りを行い,状況を認知することができると考えた.
で,児童は自分の動きについて正確に振り返りを行い,状況を認知することができると考えた.
し,動きの修正を行うことで,児童は自分の動きについて
2)状況判断力(状況に応じたプレーの決定)
2)状況判断力(状況に応じたプレーの決定)
2)状況判断力(状況に応じたプレーの決定)
正確に振り返りを行い,状況を認知することができると考
図2の作戦では,作戦どおりに動くと相手ディフェンスを
図2の作戦では,作戦どおりに動くと相手ディフェンスを
図2の作戦では,作戦どおりに動くと相手ディフェンスを
えた.
崩すことができる.しかし,この作戦を実行する際に各プレ
崩すことができる.しかし,この作戦を実行する際に各プレ
崩すことができる.しかし,この作戦を実行する際に各プレ
2)状況判断力(状況に応じたプレーの決定)
ーヤーは,どのタイミングでブロックするのか,どのタイミ
ーヤーは,どのタイミングでブロックするのか,どのタイミ
ーヤーは,どのタイミングでブロックするのか,どのタイミ
図 2 の作戦では,作戦どおりに動くと相手ディフェンス
ングでランをし始めるのか等,様々な状況に応じて,プレー
ングでランをし始めるのか等,様々な状況に応じて,プレー
ングでランをし始めるのか等,様々な状況に応じて,プレー
を崩すことができる.しかし,この作戦を実行する際に各
を決定することになる.そこで,ポジションごとにプレーの
を決定することになる.そこで,ポジションごとにプレーの
を決定することになる.そこで,ポジションごとにプレーの
プレーヤーは,どのタイミングでブロックするのか,どの
決定の仕方ついてパターンを設定し,パターンごとの出現頻
決定の仕方ついてパターンを設定し,パターンごとの出現頻
決定の仕方ついてパターンを設定し,パターンごとの出現頻
タイミングでランをし始めるのか等,様々な状況に応じ
度を分析した.
度を分析した.
度を分析した.
て,プレーを決定することになる.そこで,ポジションご
パターンの作成においては,ケルンのゲーム中にプレーヤ
パターンの作成においては,ケルンのゲーム中にプレーヤ
パターンの作成においては,ケルンのゲーム中にプレーヤ
とにプレーの決定の仕方ついてパターンを設定し,パター
図3 センターの自己評価
ーが状況判断をする場合,ボール,ゴール,オフェンス,ディフ
図 3 センターの自己評価
図3
図3 センターの自己評価
センターの自己評価
ーが状況判断をする場合,ボール,ゴール,オフェンス,ディフ
ーが状況判断をする場合,ボール,ゴール,オフェンス,ディフ
ンごとの出現頻度を分析した.
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ボール運動における思考・判断の評価と指導の研究
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ボール運動における思考・判断の評価と指導の研究
パターンの作成においては,ケルンのゲーム中にプレーヤーが状況判断をする場合,ボール,ゴール,オフェ
ンス,
ディフェンスの位置関係が判断材料として利用される 7)の考えに依拠し,
自分の動きとまわりの動き(ボー
ェンスの位置関係が判断材料として利用される 7)の考えに依拠し,自分の動きとまわりの動き(ボール,ゴール,オ
ル,ゴール,オフェンス,ディフェンス)を基にどのように状況判断をしたかを基準とした.
フェンス,ディフェンス)を基にどのように状況判断をしたかを基準とした.
表 2 はポジションごとのパ
表
2 プレーの決定の仕方のパターン
表2はポジションごとのパ
表2
プレーの決定の仕方のパターン
ターンの基準である.クオー
クオーター
(以後 Q) ク オ ー タ ー バ ッ ク セ ン タ ー・ レ シ ー レシーバー(以後 R) レシーバー(以後 R)
ターンの基準である.クオー
のランプレー
(以後 Q)のパスプ バ ー( 以 後 C・R) のパスプレー
のランのコースをつ
レー
のブロック
くる動き
ターバックはランプレーとパ
ターバックはランプレーとパ A パターン:自分と コースができるのを パスコースができる ランが成功するよう クオーターバックの動 ディフェンスを引き
まわりの動きを基に
待ってからラン
のを待ってからパス
に
位
置
を
変
え
て
ブ
きに合わせてスペー
寄せてランのコース
スプレー,センターはブロッ
ロックする
スに走り込む
をつくる
スプレー,センターはブロッ 行動を判断
パターン:自分の 自分のタイミングだ 自分のタイミングだ 作戦通りの相手にブ 自分のタイミングで ディフェンスを引き
ク,レシーバーはブロック, B動きを基に行動を判
けでラン
けでパス
ロック
スペースに走り込む
寄せている.
ク,レシーバーはブロック,パ 断
パスキャッチ,ランのコース
パターン:状況判 走るコースはあった 投 げ る ス ペ ー ス が ブロックの位置が悪 スペースに走り込む ディフェンスを引き
スキャッチ,ランのコースを C断が適切でなく動け
がランできなかった あったができなかっ かった
ことができなかった 寄せることができな
をつくる動きに分けて基準を
なかった
た
かった
つくる動きに分けて基準を作 対象外のプレー
走るコースがなかっ 投 げ る コ ー ス が な ブロックする前にプ 味方の動きが原因で ディフェンスを引き
作成した.状況判断する際に
た
かった
レーが終わった
スペースに入ること 寄せる前にプレーが
成した.状況判断する際に味
ができなかった
終わった
味方のミスでプレーが終わっ
方のミスでプレーが終わって
てしまった場合や味方の動きが原因で適切な状況判断ができなかった場合は対象外のプレーとした.
しまった場合や味方の動きが
3)技能(作戦どおりの動きの実行)
原因で適切な状況判断ができなかった場合は対象外のプレーとした.
相手のディフェンスを崩すことができる作戦どおりのプレーができたかどうか動画分析を行った.分析の際に
3)技能(作戦どおりの動きの実行)
は,児童の立てた作戦図と実際の動きを比較しながら行った.なお,フラッグフットボールは攻撃
3 人に対して
相手のディフェンスを崩すことができる作戦どおりのプレーができたかどうか動画分析を行った.分析の際に
それぞれに役割があるため,チームとしては得点につながらなくても,個人が作戦どおりの動きができていれば,
は,児童の立てた作戦図と実際の動きを比較しながら行った.なお,フラッグフットボールは攻撃3人に対してそ
「作戦どおりの動きができている」と判定した.
れぞれに役割があるため,チームとしては得点につながらなくても,個人が作戦どおりの動きができていれば,「作
戦どおりの動きができている」と判定した.
Ⅲ 結 果
Ⅲ 結果
1.状況判断力(状況の認知)
1.状況判断力(状況の認知)
図
4,図 5,図 6 は自己評価,他者評価,教師評価の一致率の変容である.
「プレー原則及び状況判断力の評
図4,図5,図6は自己評価,他者評価,教師評価の一致率の変容である.「プレー原則及び状況判断力の評価基
価基準」を使って学習を行った実験群を見ると,自己評価と教師評価の一致率は
50.0%から
88.8%まで伸び,
準」を使って学習を行った実験群を見ると,自己評価と教師評価の一致率は 50.0%から
88.8%まで伸び,他者評
他者評価と教師評価の一致率は
61.1%から
88.8%まで伸び,自己評価と他者評価の一致率は
55.5%から
77.7%
価と教師評価の一致率は
61.1%から
88.8%まで伸び,自己評価と他者評価の一致率は
55.5%から
77.7%まで伸
まで伸びていることがわかる.一方,プレー原則及び状況判断力の評価基準を使わなかった統制群はほぼ変わら
びていることがわかる.一方,プレー原則及び状況判断力の評価基準を使わなかった統制群はほぼ変わらないまた
ないまたは減少したという結果になっている.
は減少したという結果になっている.
自己評価と他者評価の一致率
図図4
4 自己評価と他者評価の一致率
図5 他者評価と教師評価の一致率
図 5 他者評価と教師評価の一致率
図6 自己評価と教師評価の一致
図 6 自己評価と教師評価の一致
表3 各パターンの出現頻度(事前ゲーム)
表4 各パターンの出現頻度(事後ゲーム)
2.状況判断力(状況に応じたプ
2.状況判断力(状況に応じたプ 表 3 各パターンの出現頻度(事前ゲーム) 表 4 各パターンの出現頻度
(事後ゲーム)
レーの決定)
レーの決定)
Q
Q
C・R
R R コース
Q
Q
C・R
R R コース
事前ゲーム ラン
事後ゲーム ラン
パス ブロック パス をつくる 計
パス ブロック パス をつくる 計
表3,表4は,表2のパターン
表
3,表 4 は,表 2 のパターン
実験群
1
2
3
実験群 3
3
8
3
17
A
A
を使って,実験群と統制群ごとの
統制群 2
1
3
統制群 1
3
1
5
を使って,実験群と統制群ごとの
実験群
3
1
4
実験群
0
各パターンの出現頻度を事前ゲ
B
B
各パターンの出現頻度を事前
統制群 3
4
7
統制群
0
ームと事後ゲームごとにまとめ
実験群
1
4
3
8
実験群
0
ゲームと事後ゲームごとにまと
C
C
統制群
7
7
統制群
1
7
8
たものであり,そのデータをグラ
めたものであり,そのデータをグ
2
1
3
1
1
対象 実験群
対象 実験群
外 統制群 1
外 統制群 4
フ化したものが図7である.
1
1
5
ラフ化したものが図 7 である.
このグラフからわかるように,
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坂坂本一真・山元秀太・則元志郎
本 一 真・山 元 秀 太・則 元 志 郎
坂本一真・山元秀太・則元志郎
このグラフからわかるように,プレー原則及び状
プレー原則及び状況判断力の評価基準を使って学習
況判断力の評価基準を使って学習をした実験群は,
をした実験群は,自分とまわりの動きを基に行動を
プレー原則及び状況判断力の評価基準を使って学習
自分とまわりの動きを基に行動を判断しているA
判断しているAパターンが事前ゲームから事後ゲー
をした実験群は,自分とまわりの動きを基に行動を
パターンが事前ゲームから事後ゲームにかけて大
ムにかけて大きく伸びた.一方,話し合いや練習で動
判断しているAパターンが事前ゲームから事後ゲー
きく伸びた.一方,話し合いや練習で動きの振り返
きの振り返りを行った統制群は,Aパターンは若干
ムにかけて大きく伸びた.一方,話し合いや練習で動
りを行った統制群は,Aパターンは若干増加したも
増加したものの,味方のミスなどによる対象外のプ
きの振り返りを行った統制群は,Aパターンは若干
のの,味方のミスなどによる対象外のプレーが増加
レーが増加した.
増加したものの,味方のミスなどによる対象外のプ
した.
3.技能(作戦どおりの動きの実行)
レーが増加した.
3.技能(作戦どおりの動きの実行)
表5は,事前ゲームと事後ゲームにおいて,作戦ど
3.技能(作戦どおりの動きの実行)
表 5 は,事前ゲームと事後ゲームにおいて,作戦
おりの動きの出現頻度をまとめたものである.事前
図7 各パターンの出現頻度の変化
図 7 各パターンの出現頻度の変化
表5は,事前ゲームと事後ゲームにおいて,作戦ど
表5 作戦どおりの動きの出現頻度
どおりの動きの出現頻度をまとめたものである.事
ゲームの時点では,のべ18回の攻撃のうち,作戦どお
おりの動きの出現頻度をまとめたものである.事前
図7
各パターンの出現頻度の変化
表 5 作戦どおりの動きの出現頻度
前ゲームの時点では,のべ 18 回の攻撃のうち,作
りの動きができた回数は実験群が8回,統制群が7
表5 作戦どおりの動きの出現頻度
ゲームの時点では,のべ18回の攻撃のうち,作戦どお 事前
事後
戦どおりの動きができた回数は実験群が
回,統制
回であった.事後ゲームでは,実験群が
138 回,統制群
りの動きができた回数は実験群が8回,統制群が7 センター レシー クオーター 合計 センター レシー クオーター 合計
群が 7 回であった.事後ゲームでは,
実験群が 13 回,
が5回となった.これをグラフ化したものが図8で
バック
バック
バー
バー
回であった.事後ゲームでは,実験群が 13 回,統制群 実験 4/6
2/6
2/6
8/18
6/6
4/6
3/6
13/18
統制群が 5 回となった.これをグラフ化したものが
ある.実験群において,作戦どおりの動きが増加し,
が5回となった.これをグラフ化したものが図8で 群 (66.7%)(33.3%)(33.3%)(44.4%)(100%)(66.7%)(50.0%)(72.2%)
図 8 である.実験群において,作戦どおりの動きが
統制群においては減少している.
統制
4/6
1/6
2/6
7/18
1/6
3/6
1/6
5/18
ある.実験群において,作戦どおりの動きが増加し, 群 (66.7%)(16.7%)(33.3%)(38.9%)(16.7%)(50.0%)(16.7%)(27.8%)
増加し,統制群においては減少している.
また,表6は実験群と統制群におけるゴール数の
統制群においては減少している.
また,表 6 は実験群と統制群におけるゴール数の
変化である.事前ゲームはどちらも33.3%だったのに
また,表6は実験群と統制群におけるゴール数の
変化である.事前ゲームはどちらも
33.3% だった
対し,事後ゲームでは,実験群が
50.0%に伸び,統制
変化である.事前ゲームはどちらも33.3%だったのに
のに対し,
事後ゲームでは,実験群が 50.0%に伸び,
群が
16.7%に減少した.この結果については,全員が
対し,事後ゲームでは,実験群が 50.0%に伸び,統制
統制群が 16.7% に減少した.この結果については,
作戦どおりの動きができていなくても,ゴールが決
群が 16.7%に減少した.この結果については,全員が
全員が作戦どおりの動きができていなくても,ゴー
まれば成功と判定した.
作戦どおりの動きができていなくても,ゴールが決
表6 ゴール数の変化
ルが決まれば成功と判定した.
まれば成功と判定した.
ゴール数の変化
表 表6
6 ゴール数の変化
ゴール数
事前ゲーム
事後ゲーム
実験群
2/6(33.3%)
3/6(50.0%)
統制群
2/6(33.3%)
1/6(16.7%)
図8 作戦どおりの動きの出現頻度の変化
Ⅳ 考察
図8 作戦どおりの動きの出現頻度の変化
図 8 作戦どおりの動きの出現頻度の変化
Ⅳ 考察
1.状況判断力(状況の認知)について
ボール運動における「作戦を立て,それをゲームで活用する授業」の課題として,鈴木は話し合いによって具体
Ⅳ 考 察
1.状況判断力(状況の認知)について
的な作戦が出てくることは少なく,「声を出す」
「がんばる」
「ぜったい勝つ」などの抽象的・印象的な段階に留ま
ボール運動における「作戦を立て,それをゲームで活用する授業」の課題として,鈴木は話し合いによって具体
11)
るケースがほとんど
と述べ,福ケ迫は作戦を考える時間や話し合いを行ったり,結果についてフィードバック
1.状況判断力(状況の認知)について
的な作戦が出てくることは少なく,「声を出す」
「がんばる」
「ぜったい勝つ」などの抽象的・印象的な段階に留ま
したりする時間が設けられた授業を観察する機会があるが,そこで教師が指導・指示する言葉は,「作戦を立てな
ボール運動における「作戦を立て,それをゲームで活用する授業」の課題として,鈴木は話し合いによって具
11)
るケースがほとんど と述べ,福ケ迫は作戦を考える時間や話し合いを行ったり,結果についてフィードバック
12)
と教師の課題を
さい」や「次のゲームについて気づいたことを話し合いなさい」など,漠然としたものも多い
体的な作戦が出てくることは少なく,
「声を出す」
「がんばる」
「ぜったい勝つ」などの抽象的・印象的な段階に
したりする時間が設けられた授業を観察する機会があるが,そこで教師が指導・指示する言葉は,「作戦を立てな
11)
述べている.
留まるケースがほとんど と述べ,
福ケ迫は作戦を考える時間や話し合いを行ったり,
結果についてフィードバッ
さい」や「次のゲームについて気づいたことを話し合いなさい」など,漠然としたものも多い 12)と教師の課題を
この原因を岡出は,一つは,具体的なフィードバックを与えるための知織を身につけていないこと…二つめは,
クしたりする時間が設けられた授業を観察する機会があるが,そこで教師が指導・指示する言葉は,
「作戦を立
述べている.
12)
これらの知識を知ってはいても,フィールドベースでそれを活用した経験が少ないため,目の前の状況と関連づけ
てなさい」や「次のゲームについて気づいたことを話し合いなさい」など,漠然としたものも多い と教師の
この原因を岡出は,一つは,具体的なフィードバックを与えるための知織を身につけていないこと…二つめは,
13)
てそれらの知識を使えないこと
と指摘している.福ケ迫は,これらの課題を解決するために,学習内容に合った
課題を述べている.
これらの知識を知ってはいても,フィールドベースでそれを活用した経験が少ないため,目の前の状況と関連づけ
12)
を述べ,さらに,段階的な学習課題を設定し作戦を立てさせ,ゲームを行い,
学習カードなどの支援装置の必要性
この原因を岡出は,一つは,具体的なフィードバックを与えるための知織を身につけていないこと…二つめは,
てそれらの知識を使えないこと 13)と指摘している.福ケ迫は,これらの課題を解決するために,学習内容に合った
12)
そしてゲームの分析からどう改普すべきか学習カードを使って話し合うことである
と指摘している.さらにこ
これらの知識を知ってはいても,フィールドベースでそれを活用した経験が少ないため,目の前の状況と関連づ
12)
を述べ,さらに,段階的な学習課題を設定し作戦を立てさせ,ゲームを行い,
学習カードなどの支援装置の必要性
13)
の点について鈴木は,子どもたち自身が,自分たちの現在実施しているゲームの様相や今後のゲームの発展様相に
けてそれらの知識を使えないこと と指摘している.福ケ迫は,
これらの課題を解決するために,
学習内容に合っ
12)
そしてゲームの分析からどう改普すべきか学習カードを使って話し合うことである
と指摘している.さらにこ
11)
12)
ついて,十分に把握できていないことにある
として状況の認知の面から課題を指摘しているが,このことにつ
た学習カードなどの支援装置の必要性 を述べ,さらに,段階的な学習課題を設定し作戦を立てさせ,ゲーム
の点について鈴木は,子どもたち自身が,自分たちの現在実施しているゲームの様相や今後のゲームの発展様相に
12)
いて,子どもたちにとって,複雑に変化するように見えるゲームを的確に把握し,対策を与え出すのは大変難しい
を行い,そしてゲームの分析からどう改普すべきか学習カードを使って話し合うことである
と指摘している.
11)
ついて,十分に把握できていないことにある
として状況の認知の面から課題を指摘しているが,このことにつ
11)
こと
としている.
さらにこの点について鈴木は,子どもたち自身が,自分たちの現在実施しているゲームの様相や今後のゲームの
いて,子どもたちにとって,複雑に変化するように見えるゲームを的確に把握し,対策を与え出すのは大変難しい
11)
これらを踏まえると,ボール運動の授業において,自分たちの動きを的確に把握することができる提示資料を作
発展様相について,十分に把握できていないことにある
として状況の認知の面から課題を指摘しているが,
こと 11)としている.
成し,それをどのように授業で活用するかを考えることは大変重要な課題である.
このことについて,子どもたちにとって,複雑に変化するように見えるゲームを的確に把握し,対策を与え出す
これらを踏まえると,ボール運動の授業において,自分たちの動きを的確に把握することができる提示資料を作
11)
本研究では,状況の認知について,実験群における自己評価と教師評価の一致率が大きく増加したことが確認さ
のは大変難しいこと
としている.
成し,それをどのように授業で活用するかを考えることは大変重要な課題である.
本研究では,状況の認知について,実験群における自己評価と教師評価の一致率が大きく増加したことが確認さ
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ボール運動における思考・判断の評価と指導の研究
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これらを踏まえると,ボール運動の授業において,自分たちの動きを的確に把握することができる提示資料を
作成し,それをどのように授業で活用するかを考えることは大変重要な課題である.
本研究では,状況の認知について,実験群における自己評価と教師評価の一致率が大きく増加したことが確認
された.教師の評価を正確な動きの評価とすると,
この結果から,
「自分はどう動いたのか」
「どこに動けばよかっ
たのか」等,自分の動きを正確に振り返る力が身に付いたと考えられる.また,自己評価と他者評価,教師評価
を比較する場面では,抽象的なアドバイスでなく,どこに動けばよいか,こうしたらどうかといった具体的なア
ドバイスが行われていた.状況の認知の能力が高まったことで,ゲームを観察する具体的な視点も身に付いたと
推測される.
木原は,
「子どもの相互評価と自己評価の組織化―小学校 3 年生のマット運動」14)の中で,
「児童が側方倒立回
転を行い,動きのできばえを自己評価し,それとペアの他者評価と比較する研究」を行っている.その結果によ
ると,自己評価と他者評価が一致していた児童は 39 名中 29 名(74.6%)であった.一致していない 10 名への
指導について木原は,自己評価が他者評価より低い場合は,自らの映像を見せる…自己評価が他者評価より高い
場合は,できていない事実を伝え,それを本人が自覚的に修正しようと試みることで,すぐに修正される 14)と
している.本研究では,自己評価と他者評価の一致率が,事後ゲームにおいて実験群が 77.7%,統制群が 33.3%
であった.今後,本研究において評価のずれを少なくしていくためには,動画で動きを確認させる手立てを取り
入れていくことが有効であると考える.
2.状況判断力(状況に応じたプレーの決定)について
状況判断力について高橋は,3 オン 3 のミニゲームであっても,状況判断やサポートといった「ボールをもた
ない動き」の適切率はきわめて低くなる.状況判断に時間がかかり,味方や相手の動きに即座に対応することが
できないのである 15)と述べ,岡出はゲーム状況の中で常に「判断」的行為と「技術」的行為を同時に発揮しな
ければならないといった難しさが存在している 16)としている.また,岩田はボール運動では多様なプレイ状況
を「判断」しながら技能的・行動的な対応をしなければならないところに大きな特徴がある 17)と述べている.
このように,ボール運動において状況判断をすることの難しさが数多く指摘されている.一方で,鬼澤はよりよ
いゲームにするためには,①ボールを操作する技能②ボールを持たない動き③ボール保持時の適格な状況判断の
3 点の向上を図っていくことが大切となろう 18)とし,
田中はゲーム状況に合わせて適切なプレーを判断する力は,
ボールを扱うテクニックとともに,ボールゲームを楽しむためには欠かすことのできない要素である 19)と述べ
ているように,状況判断の必要性も多く指摘されている.
状況判断を指導する授業づくりのポイントとして田中は,判断する力を育てるためには,まず,子どもたちが
判断しなければならない場面が頻繁に出現する学習環境をデザインすべきであろう.子どもたちが意識しなくて
も目指した行動(判断を伴ったプレー)が生起するような環境を準備することが重要である 20)と述べている.
本研究での検証授業では,フラッグフットボール教材を用いた授業を行った.状況判断の難しさとして指摘さ
れている「判断と技術を同時に発揮する」ことについては,
フラッグフットボール 3on3 は「ボールを持って走る」
又は「ボールを一度だけパスする」といったシンプルなルールのためボール操作の技能の発揮が少なく,より判
断行為に重点を置いた学習ができる教材であると考える.
本研究で状況判断ごとにパターンを設定しその出現頻度を分析した方法は,岩田の「センタリングサッ
カー」21)での分析方法を参考にしている.岩田は,
パターンの基準を状況判断場面ごとに「A:ノーマークでシュー
ト」
「B:マークされている中でシュート」
「C:パスミスやパスカットでボールデッド」としている.単元を通
しての各パターンの出現頻度では,Aパターンが増加(14.2% → 40.2%)し,Bパターンが減少(43.5%
→ 23.4%)したものの,Cパターンはあまり変化がない(42.4% → 34.4%)という結果であった.本研究では,
Aパターンの増加は,実験群 16.7% → 94.4% であった.一方,岩田のCパターンと同じパターンの出現率は
18.3% → 5.6% へと減少している.このことからも「プレー原則及び状況判断力の評価基準」を使って学習した
実験群は状況判断力が大きく伸びたと判断できる.
3.技能(作戦どおりの動きの実行について
吉永は,作戦づくりを授業の中核に据えたゲーム中心の授業が繰り返される傾向もみられるが,立案された作
戦が実際のゲームで効果的に遂行されるケースは非常に少ない 22)と述べ,作戦タイムや班での話し合いが形骸
化していることを指摘している.
本研究では,作戦どおりの動きが実験群は 44.4% から 72.2% まで増加した.一方,統制群は 38.9% から
27.8% まで減少した.統制群は一般的な体育授業で行われているような話し合い活動をしているため,吉永が指
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坂 本 一 真・山 元 秀 太・則 元 志 郎
摘しているような結果になったと考えられる.実験群は,プレー原則及び状況判断力の評価基準を活用したこと
で状況の認知や状況に応じたプレーの決定の能力が高まり,
作戦どおりの動きができるようになったと推測できる.
23)
また,吉永のフラッグフットボールの研究 では,学習内容を明確に位置づけ,それを具現化するための教
材づくり(少人数化やルール改変など)を行うことによって,
作戦の成功率が 4.8%(事前ゲーム)から 37.4%(事
後ゲーム)まで増加したことを報告している.この結果と本研究の結果を比較すると,
実験群は 33.3%(事前ゲー
ム)から 50.0% まで増加しているため,ゲーム中の状況判断を学習内容とし,それを具現化するための教材を
用いたことが技能の向上につながったと考えられる.
Ⅳ 結 論
1.状況判断力(状況の認知,適切なプレーの決定)について
児童は状況の認知が高まり,状況に応じた適切なプレーを決定することができるようになったことから,プレー原
則及び状況判断力の評価基準を活用した学習は,ゲーム中の状況判断力の向上に有効に作用することが示唆された.
2.技能(作戦どおりの動き)について
作戦どおりの動き,ゴール成功数が増加したことから,プレー原則及び状況判断力の評価基準を活用した学習
は,ゲーム中の技能の向上に有効に作用することが示唆された.
文 献
1) 高橋健夫(2003)
「体育授業を観察評価する-授業改善のオーセンティック・アセスメント」大修館書店 p62
2) リンダ・L・グリフィン他著,高橋健夫,岡出美則監訳(1999)
「ボール運動の指導プログラム-楽しい戦術学習の進め方-」
大修館書店 p4
3) 岩田靖(2008)
「本物のボール運動を目指して」
『体育科教育』第 56 巻 2 号 p44
4) リチャード・A・シュミット,調技孝治翻訳(1994)
「運動学習とパフォーマンス」大修館書店 p18-22
5) 則元志郎,林健司(2004)
「ボール運動における戦術(作戦)を教える授業の成立条件」
『たのしい体育・スポーツ』9 月
号 p30-33
6) 則元志郎,林健司(2005)
「中学校のフラッグフットボール-戦術・戦略を学ぶ-」
『たのしい体育・スポーツ』4 月号
p46-51
7) ヤーン・ケルン著,朝岡正雄,中川昭,水上一翻訳(1998)
「スポーツの戦術入門」大修館書店 p86-99
8) 鬼澤陽子,高橋健夫,岡出美則,吉永武史,高谷昌(2006)
「小学校体育授業のバスケットボールにおける状況判断能力
に関する検討-シュートに関する戦術的知識の学習を通して-」
『スポーツ教育学研究』26 号 p11-23
9) 鬼澤陽子,小松崎敏,岡出美則,高橋健夫,齊藤勝史,篠田淳志(2007)
「小学校高学年のアウトナンバーゲームを取り
入れたバスケットボールの授業における状況判断力の向上」
『体育学研究』52 号 p289-302
10) 鬼澤陽子,小松崎敏,吉永武史,岡出美則,高橋健夫(2008)
「小学校 6 年生のバスケットボール授業における 3 対 2 ア
ウトナンバーゲームと 3 対 3 イーブンナンバーゲームの比較-ゲーム中の状況判断力及びサポート行動に着目して-」
『体
育学研究』53 号 p439-462
11) 鈴木理(2008)
「一人ひとりに適切に対応できる指導力を」
『体育科教育』第 56 巻7号 p30
12) 福ケ迫善彦(2008)
「ゴール型ボールゲームで『戦術認識』をどう深めるか」
『体育科教育』第 56 巻 12 号 p26
13) 岡出美則(2007)
「スポーツ科学の知見を授業にどう活かすのか」
『体育科教育』第 55 号 p12 14) 木原成一郎(2010)
「子どもの相互評価と自己評価の組織化―小学校 3 年生のマット運動」
『体育科教育』第 58 巻 8 号
p68-p69
15) 高橋健夫(2009)
「こう変えなければならない『ボール運動・球技の授業』
」
『体育科教育』第 57 巻4号 p16
16) 岡出美則(2008)
「学びを深める教材づくり-第 2 回子どもの積極的参加と学習成果を促す教材づくり-」
『体育科教育』
第 56 巻5号 p52
17) 岩田靖(2008)
「学びを深める教材づくり-第 8 回もっと楽しいボール運動①フィールダーベースボール-」
『体育科教育』
第 56 巻 11 号 p60
18) 鬼澤陽子,高谷昌(2007)
「戦術的行動が『わかり』
,
『できる』につながるボールゲームの実践」
『体育科教育』第 55 巻
2 号 p48
19) 田中雅人(2006)
「ボール運動における状況判断をどう教えるか」
『体育科教育』第 54 巻 6 号 p24
20) 同掲書 19)p26
21) 岩田靖(2008)
「学びを深める-第 9 回もっと楽しいボール運動②センタリングサッカーの教材づくり-」
『体育科教育』
第 56 巻 12 号 p62-p63
22) 吉永武史(2006)
「学習内容を明確にしたボールゲームの授業づくり」
『体育科教育』第 54 巻 6 号 p19
23) 同掲書 22)p23
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