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微細藻からの有用成分抽出のコア技術としての 新
平成 23 年度農林水産省緑と水の環境技術革命プロジェクト事業 微細藻からの有用成分抽出のコア技術としての 新開発技術の実証 平成 24 年 3 月 微細藻有用成分抽出技術実証試験共同事業体 (スメーブジャパン株式会社) (株式会社共生資源研究所) 目次 1 はじめに .............................................. 4 1.1 事業背景 ...................................................................................................... 4 2 目的と技術の紹介 ...................................... 9 2.1 本実証事業の目的 ........................................................................................ 9 2.2 亜臨界水の性質とそれによる処理の特徴 ..................................................... 9 2.3 研究例1:亜臨界水処理による藻からの油分抽出 ..................................... 10 2.4 研究例2:亜臨界水処理によるナンノクロロプシスからの油分抽出 ......... 11 3 方法 ................................................. 13 3.1 KSBW 法における反応装置と応用実績例の概要 ....................................... 13 3.1.1 反応装置の主な仕様 ............................................................................ 13 3.1.2 KSBW 法の応用実績 ........................................................................... 13 3.2 供試料の主な特性と抽出条件..................................................................... 15 3.3 亜臨界水処理による抽出条件..................................................................... 18 3.4 爆砕による前処理 ...................................................................................... 20 3.5 分析方法 .................................................................................................... 21 3.5.1 脂肪酸分析方法 ................................................................................... 21 3.5.2 アミノ酸分析方法 ............................................................................... 22 4 結果 ................................................. 23 4.1 可溶成分の抽出結果 ................................................................................... 23 2 4.1.1 粉末試料の処理結果 ............................................................................ 23 4.1.2 ペースト状試料の抽出処理結果 .......................................................... 27 4.2 脂質、脂肪酸、EPA の抽出結果 ................................................................ 30 4.2.1 脂質の抽出結果 ................................................................................... 30 4.2.2 脂肪酸及び EPA のの抽出結果 ............................................................ 32 4.3 遊離アミノ酸の抽出結果............................................................................ 32 4.4 電顕観察結果 ............................................................................................. 33 5 考察 ................................................. 35 5.1 温度の効果 ................................................................................................. 35 5.2 爆砕処理の効果 .......................................................................................... 35 5.3 技術的成果 ................................................................................................. 35 5.4 実証面での課題 .......................................................................................... 36 6 まとめ ............................................... 37 3 1 はじめに 1.1 事業背景 表 1 油分収量の比較(Chisti 2007) ) 油分収量の比較( 微細藻を利用したバイオ燃料がエネルギー 品目 油分収量 革命の切り札として急速に注目されてきてい ( L/ha/year) る。特に米国において商業化の動きが加速し ており、大規模な投資がなされている。微細 トウモロコシ 172 ダイズ 446 ナタネ 1,190 ナンヨウアブラギリ 1,892 ココナツ 2,689 アブラヤシ 5,950 藻からのバイオ燃料はトウモロコシや大豆と 比べて数百倍もの高い生産性を持つという特 徴を有している(表 1)。日本においても微細 藻の研究は行われているものの、生産につい ては屋内施設や小規模野外施設での操業にと どまり、米国やイスラエルの最先端企業にお いて大規模な資金の投入による商業化計画が 低油分微細藻 58,700 高油分微細藻 136,900 本格化している状況と比較して、かなり遅れ ている。 図 1 屋外培養施設(シームビオテック社) 4 スメーブジャパン㈱は、微細藻事業を展開するために設立されたもので、世界最先端の 微細藻事業を展開するために設立されたもので、世界最先端の 微細藻培養技術を持つイスラエルのシームビオテック社( 微細藻培養技術を持つイスラエルのシームビオテック社(図 1)で確立された技術を日本 )で確立された技術を日本 へ導入し発展させることで、日本での屋外大量培養施設の早期確立を目指す。対象となる へ導入し発展させることで、日本での屋外大量培養施設の早期確立を目指す。対象となる 微細藻は、比較的低温を好みオメガ を好みオメガ 3 を豊富に含有するナンノクロロプシスで、日本では 種苗培養や魚介類の餌料として、従来既に重要な役割を担ってきている。 昨年度の「農林水産省緑と水の環境技術革命プロジェクト事業」では、 昨年度の「農林水産省緑と水の環境技術革命プロジェクト事業」では、ナンノクロロプ シス培養に適した環境である東北沿岸域に シス培養に適した環境である東北沿岸域に対して、循環培養システムの導入による内陸部 テムの導入による内陸部 耕作放棄地を利用する事業化の可能性について 耕作放棄地を利用する事業化の可能性について調査した。 耕作放棄地は現在約 40 万ヘクタールに達しており、これは埼玉県にほぼ相当する面積で ある(図 2) 。スメーブジャパン スメーブジャパンの提案する微細藻培養事業はこの耕作放棄地や耕作不適地 の提案する微細藻培養事業はこの耕作放棄地や耕作不適地 を有効活用するビジネスとして提案している。 循環培養システムとはスメーブジャパン スメーブジャパンが独自に提案している培養方法であり( が独自に提案している培養方法であり(図 3)、 培養海水を循環利用することで海水の取水・排水に係るコストを削減するとともに、内陸 部での事業展開を容易にすることを目標としている。 図 2 耕作放棄地面積の推移 図 3 屋外培養システムと循環培養法 (農林水産省) 5 この前年度事業では、関連する組織が連携してコンソーシアムを組み、事業にあたった。 スメーブジャパンが全体のとりまとめと市場・技術開発調査を担当し、事業化可能性調査 を㈱循環社会研究所、市場調査分析をジェイ・フェニックス・リサーチ㈱が担当した。油 分抽出技術については東北大学工学部、培養の基礎については石巻専修大学理工学部との 連携により研究を進めた。施設の設置予定地は宮城県石巻地区であり、石巻市や宮城県水 産技術総合センター、産業技術総合センターとも連携をとり、調査を進めた。 以下に、その概要をまとめる。 ① 培養システムの検討 ナンノクロロプシスの培養実験を石巻専修大学にて行った。15-25℃で安定した高い 増殖を示し、10℃でも良好な結果を得たが、5℃での増殖は緩慢であった。一方、細胞体 積は低温下で増加する傾向がみられた。 培養システムの日本への導入には、冬場の低温、梅雨期の降雨、異物混入等の影響等 が懸念されるが、以下のような検証結果を得ている。降雨による低塩分化が本種の成長 に及ぼす影響は小さいことは、培養試験結果より明らかとなった。本種は塩素に強く、 次亜塩素酸による殺菌も可能であり、また高密度培養による異物混入の影響抑制効果が 期待できる。 ② オメガ 3 抽出技術の検討 東北大学工学部との連携によりオメガ 3 抽出技術の検討を行うこととし、溶媒抽出に よる方法と超臨界二酸化炭素による抽出の二方法について試験を行った。前者では、煩 雑ではあるが、酵素処理や高温処理等を併用することにより、含有油分のほぼ全量を抽 出できた。超臨界二酸化炭素による抽出試験は、前処理としてエタノールを添加した爆 砕法を併用することで油分抽出の効率化が図られたが、抽出に数時間を要する点や脂質 の抽出率が 50%未満である点で課題が残った。 6 ③ 商品化開発・市場調査 魚介類餌料、オメガ 3、家畜飼料、 、家畜飼料、バイオ燃料の 4 商品開発の方向性について 開発の方向性について調査し た。養殖用種苗餌料としては既にマーケットは存在しており、またサプリメント等への 養殖用種苗餌料としては既にマーケットは存在しており、またサプリメント等への オメガ 3 の需要は高く、事業化から 1~2 年の間での収益化が見込める。特に EPA・DHA 市場は世界的に需要が高まり、市場は拡大を続けている( 4)。一方、バイオ燃料に関 市場は世界的に需要が高まり、市場は拡大を続けている(図 一方、バイオ燃料に関 しては、培養コストの低下に加え、油分抽出部門での低コストで大量生産を可能とする 技術の飛躍的な進展が不可欠である。 進展が不可欠である。 図 4 世界の EPA・ ・DHA 市場動向(GNG 調べ) 市場動向( 7 ④ 事業化可能性調査 耕作放棄地を利用した事業展開についての可能性を調査するために、フェーズ 1 とし て海水の取排水が容易な地域の 選定、フェーズ 2 として海水循 環システムを利用した場合での 地域選定を行った(図 5) ) 。海水 循環システムを導入した場合、 新たな海水を運ぶために可能な 運搬距離は沿岸部から 45km と 推測された。これは概ね、宮城 県内の主な水田地帯をカバーす る範囲となる。 生産販売ベースでみると、面 積 10a 当たりの収入は米作によ る農業所得を上回るものと推測 され、培養事業による生産性の 高さがうかがわれた。事業化に よる収益は、培養槽面積で 4,000m2 と 40,000m2 の 2 種類に ついて検討したが、いずれも事 たが、いずれも事 図 5 宮城県での事業展開可能エリア 業収支としてプラスとなり、事 業性が高いことが期待でき いことが期待できた。 結論として、本事業で検討した循環型培養システムを導入することで、微細藻培養事 本事業で検討した循環型培養システムを導入することで、微細藻培養事 業は宮城県内の耕作放棄地の利用方法として高い期待が持てるものとなることが示唆さ れた。さらに、バイオ燃料の商品化 バイオ燃料の商品化にはバイオマスコストおよび更なる抽出技術の開発 にはバイオマスコストおよび更なる抽出技術の開発 等課題があるので、 、まずは高付加価値製品としてのオメガ 3 と種苗餌料で収益化を図り、 その中で生産規模を拡大し、燃料化へ向けた低コスト化を図る戦略が考えられる。 8 2 目的と技術の の紹介 2.1 本実証事業の目的 目的 前年度の事業化可能性調査では、微細藻から油分の抽出技術について課題が残った。そ こで本事業では、抽出技術の延長として 水産系有機物からのエキス抽出に実績を上げつ こで本事業では、抽出技術の延長として、水産系有機物からのエキス抽出に実績を上げつ つある、亜臨界水処理技術に基礎を置く KSBW 法の実証性を検証することとした。 2.2 亜臨界水の性質とそれによる とそれによる処理の特徴 水は、1 気圧(約 0.1MPa)下では、 )下では、100℃(約 373K 絶対温度)で沸騰する。すなわち、1 絶対温度)で沸騰する。すなわち、 気 圧下では、100℃で、液体の水と気体の水蒸気 ℃で、液体の水と気体の水蒸気 は平衡関係にあり、100℃を超えると、液体の ℃を超えると、液体の 水は全て気体の水蒸気へと変化する。しかし、 たとえば、圧力鍋の要領で圧力を掛けると、沸 騰点はより高温へ移動し、水は、より高温まで 液体状態を保つことが来る。すなわち、液体と 気体が共存する沸騰点は、図 図 6 の水の温度-圧 力状態図に示されるように、飽和蒸気圧線に沿 って移動し、例えば、圧力を 10MPa に高める と、約 585K(310℃)でも水は液体状態を保つ。 でも水は液体状態を保つ。 図 7 は、この状況を密度の変化で見たものであ 図 6 水の状態図 図 7 水の気-液相の密度と温度、圧力の関係 9 る。室温でほぼ1g/cm3 の液体水の密度は、300℃付近では、0.71 の液体水の密度は、 g/cm3 まで低下するが、水 蒸気のそれは、85 気圧の加圧のために 0.05 g/cm3 まで急増する。 さらに高温・高圧操作を続けると、ついには両相の密度は等しくなり、両相間の界面が を続けると、ついには両相の密度は等しくなり、両相間の界面が 消失して、渾然一体となる臨界点に達する。これ以上の高温、高圧条件にある超臨界水は 火力発電所で広く実用され、 、その他の分野でも、例えば、有機性廃棄物処理への応用等 有機性廃棄物処理への応用等が 検討されている。しかし、超臨界水は極めて酸化力が高いため、本来、機能面での有効利 用ができるはずの有機物が熱利用レベルに止まる 用ができるはずの有機物が熱利用レベルに止まることになる。その上、苛烈な反応条件に 、苛烈な反応条件に 耐える必要性から極めて高価な装置となり、実用性には乏しい。 他方、臨界点以下の亜臨界水状態 では、室温レベルの水を特徴付ける 高い誘電率は、図 8 にみるように、 温度上昇につれ、急激に低下し、 200℃を超えると、室温時のメタノー ℃を超えると、室温時のメタノー ルやアセトンと同程度になる。その 結果、疎水性物質の溶解度が増す。 その上、イオン積が二桁以上増大し て加水分解力が高まるため、有機物 の分解が促進される。 結果として、有機物の低分子化と 水への回収という操作が可能になり、 3.1.2 に後述するように、ホタテ加工 後述するように、ホタテ加工 図 8 水の誘電率とイオン積 Kw に及ぼす影響 場廃棄物中の蛋白質のアミノ酸レベ 質のアミノ酸レベ ルへの分解とエキスとしての回収が KSBW 法により実証された。 2.3 研究例1:亜臨界水処理 亜臨界水処理による藻からの油分抽出 上述のような亜臨界水の特性を微細藻からの油分抽出に活用する試みは、1990 年頃から、 幾つか試みられている。1) 対象となった微細藻としては、ボトリオコッカス、ドゥナリエラ、 スピルリナ、ミクロシスティスなどであり、亜 スピルリナ、ミクロシスティスなどであり、亜臨界水処理の条件は、200 200~350℃、反応時 間は 5~60min である。総括的なまとめによると、バイオオイルの収率は、おおむね 35~ 65wt%とされる。回収されたバイオオイルの発熱量は 。回収されたバイオオイルの発熱量は 35~50MJ/kg で、石油並みとされる が、N 分(~6wt%)と O 分(~12wt%)がともにかなり高いという問題もある。 分(~ %)がともにかなり高いという問題もある。 1) Sawayama, S.; Minowa,, T.; Yokoyama, S. Biomass Bioenergy 1999, 17, 33–39. 33 10 2.4 研究例2:亜臨界水処理によるナンノクロロプシスからの油分抽出 本事業の対象であるナンノクロロプシスは、多くの藻の中でも光合成生産速度がかなり 高く(~0.2g/リットル/日)、かつ、脂質含有量も約 30wt%と高い 2)ことから、バイオオイル 生産の対象候補として注目されている。米国、ミシガン大学の Brown ら 2)は、ナンノクロ ロプシスへの亜臨界水処理による油分抽出試験を初めて系統的に実施し、脂肪酸分析や元 素分析により詳細に適用性を検討している。 彼らが使用したナンノクロロプシス試料はペースト状(水分 79%)で提供されたもので、 その成分を表 2 に示す。 表 2 ミシガン大学の亜臨界水試験に用いられたナンノクロロプシス試料成分 (Brown et al. 2010) ) 元試料状況 ペースト 元素分析結果(wt%) たんぱく質 52 C 43.3 脂質 28 H 6 灰分 O 25.1 糖質 12 N 6.4 食物繊維 S 0.5 いずれもドライベース(wt%) 反応容器は、図 9 に示すような内容積 35ml のスエージロック付の 316 ステンレス製チュ ーブである。反応条件は 200~500℃、反応時間は 60 分で、流動層槽方式のサンドバス (fluidized sand bath)を用いている。亜臨界水処理条件(374℃以下)では、反応容器に 4.27g (ドライベースで≦0.90g)のペースト状試料を装入し、95%の容器空間を水が占める条件 を与えている。 図 9 超・亜臨界水処理試験に用いられた反応容器 (Brown et al. 2010) 反応終了後は、冷却後、まず発生ガスをガスクロマトグラフィーに通して分析した後に、 ジクロロメタンと水を等量含む溶液 30ml で、3 回にわたり振とう洗浄を繰り返して,内容 物を回収し、定法の操作を行って、最終的に、GC - CS(質量分析ガスクロマトグラフィー) 2) Tylisha M. Brown, Peigao Duan, and Phillip E. Savage*:Hydrothermal Liquefaction and Gasification of Nannochloropsis sp.;Energy Fuels 2010, 24, 3639–3646) 11 で成分を同定している。また、一部の試料を元素分析に用いている。 分析した結果を表 3 に示す。ここで、バイオオイルの回収率とは、脂質成分として定量 された固相重量を、原試料の乾燥重量で除した数値である。 表 3 バイオオイルの回収率と発熱量(Brown et al. 2010 バイオオイルの回収率と発熱量( 温度(℃) 回収率(wt%) 発熱量(MJ/kg) 25 22 39 200 27 39 250 38 38 300 32 38 350 43 39 400 40 39 450 38 39 500 16 37 室温で抽出した場合にも、原試料の 22%に達する重量がオイル成分として抽出されてい る。 一方、原試料中の脂質含有量は 28%であるが、200℃において既にそれに匹敵する量が抽 出されており、それ以上では原試料の脂質分以外も脂質と一緒に抽出されていることにな る。これは、高温度下で蛋白質や糖質の分解が進み、それらに由来する成分が「バイオオ イル」として回収されたことによるものと思われる。 この高い「バイオオイル」の回収率が、亜臨界水処理の魅力であると考えられる。しか し、蛋白質や糖質の分解が 200℃以上の高温度でないと進行しないという事であれば、それ を実現させる反応装置のコストとのバランス評価が問題となろう。この課題の解決に向け た研究開発が、亜臨界水によるバイオ燃料抽出技術において大きな意味を占めよう。 他方、微細藻中の EPA などの脂肪酸類に絞った抽出回収を目的とする場合には、200℃以 上の高温度処理は、目的の脂肪酸に不要成分を付加する結果になる。つまり、EPA を中心 とした有用脂質成分を選択的に抽出したい場合、200 度以下での亜臨界水処理は効率的な分 離を可能とすることを示唆している。いずれにしても、亜臨界水処理では目的に応じた処 理温度の選択が必要となってくる。 12 3 方法 3.1 KSBW 法における反応装置 反応装置と応用実績例の概要 3.1.1 反応装置の の主な仕様 本山振興株式会社は、株式会社共生資源研究所との技術契約の下に、 本山振興株式会社は、株式会社共生資源研究所との技術契約の下に、KSBW 法による 亜臨界水処理装置の小型実証機 MP-01 を製作した。その概要(図 10) )とフローダイア グラム(図 11)を示す。 を示す。 図 10 実用型亜臨界水処理装置 MP-01 図 11 フローダイアグラム その基本仕様は、反応容器 25L×2 個、常用使用温度 160℃、圧力 8 気圧(最大 180℃、 10 気圧) 処理能力 1 トン/日で、この装置に蒸気を供給するボイラーの能力は、最高使 トン 日で、この装置に蒸気を供給するボイラーの能力は、最高使 用圧力 0.98MPa、蒸発量 、蒸発量 300kg/hr であったが、大きな改良が 2 度実施されて現状に至っ 度実施され ている。 現在の仕様は、はボイラー はボイラーが 20k 仕様(最高 1.96MPa 500 kg/hr の蒸気を発生) 、反応 容器が 20k 仕様(耐圧 1.96MPa、容量 1.96MPa 45L)である。 3.1.2 KSBW 法の の応用実績 上記の亜臨界水処理を用いた KSBW 法の応用例として、ホタテ加工場廃棄物(ホタ ホタテ加工場廃棄物(ホタ テウロ)からのエキスの抽出と抽出エキスの概要を紹介する。 ホタテ貝は、貝柱とその周囲にあるえら、生殖器、中腸線、ひもなどから構成される が、中腸線(ウロと通称される)にカドミウムが濃集しているために、ホタテの加工場 では、多くの場合、貝柱以外は廃棄物として処理される。その量は東北地域だけでも年 間 5 千トンに達し、そのほぼ ほぼ全量が焼却に回され、処理に係わる費用は 1 億円を超える。 株式会社共生資源研究所では、 株式会社共生資源研究所では、KSBW 法を用いてホタテ加工場廃棄物からカドミウム 13 を分離除去し、ホタテエキスとして回収することで を分離除去し、ホタテエキスとして回収することで、ホタテ廃棄物の有効利用への道を 有効利用への道を 3) 開くことに成功した 。すなわち、ホタテ加工場からのカドミウムを含む加工残渣を亜 。すなわち、ホタテ加工場からのカドミウムを含む加工残渣を亜 臨界水処理することによりカドミウムを分離除去すると同時に、 臨界水処理することによりカドミウムを分離除去すると同時に、蛋白質成分を分解して 質成分を分解して 各種のアミノ酸を含むエキスを回収し、嗜好性の高い飼料を製造するための飼料添加物 や植物の各種機能を強化するための植物活性剤として活用を図っている。 図 12 は、含有されるアミノ酸の種類や量を市販のアミノ酸強化液肥と比較したもの で、タウリンなどをも含んでいるホタテエキスの圧倒的優位性が明らかである。 含んでいるホタテエキスの圧倒的優位性が明らかである。 図 12 ホタテエキスと市販液肥中のアミノ酸量の比較 現在は、さらに、イカや鯖の内臓等の加工残渣への応用を開発中であり、アミノ酸類 に加え、EPA などの機能成分を含むエキスの抽出が進められている。 この KSBW 法の微細藻への適用には、図 法の微細藻への適用には、 13 のような効果が期待される。すなわち、 原料藻の乾燥工程を省略した有用成分の抽出工程や、発酵や特殊有機溶剤を用いない細 胞壁破壊工程など、工程の単純化とそれによる低コスト化への期待である。 3) 梅木千真、吉井盛詞、齋藤真敏、今間典子、徳田昌則: 「ホタテガイ中腸腺を含む加工 残渣からの亜臨界水処理によるカドミウム分離」 残渣からの亜臨界水処理によるカドミウム分離」日本水産学会誌:76(2), (2), 204-209 204 (2010) 14 図 13 微細藻利用の現状工程と KSBW 法による改善の可能性 3.2 供試料の主な特性 特性と抽出条件 抽出試験の試料には、イスラエルの は、イスラエルの Seambiotic 社から購入したナンノクロロプシスの粉 社から購入したナンノクロロプシスの 末試料とペースト状試料を用いた。 試料とペースト状試料を用いた。 試験には大量のナンノクロロプシス試料が必要であるが、日本国内では確保が困難なた 試験には大量のナンノクロロプシス試料が必要であるが、日本国内では確保が困難なた め、技術提携先の Seambiotic 社から取り寄せた。 ペースト状試料は、屋外培養池 試料は、屋外培養池から遠心分離器により脱水濃縮したものである。 遠心分離器により脱水濃縮したものである。一般に 成分抽出処理工程においては、この後に藻の乾燥粉末化が不可欠であるが、亜臨界水処理 は水自体を溶媒として利用するために対象の乾燥工程を必要とせず、低コスト化に繋がる は水自体を溶媒として利用するために対象の乾燥工程を必要とせず、低コスト化に繋がる 大きなメリットとなる。 粉末試料は、濃縮後の藻を淡水により減塩処理を施し、その後スプレードライヤにて噴 は、濃縮後の藻を淡水により減塩処理を施し、その後スプレードライヤにて噴 霧乾燥したものである。これを使用した理由の一つは、今回の試験に供する十分な量のペ ースト状試料の確保が難しかったことがあるが、同時に乾燥粉末試料による抽出とペース 試料の確保が難しかったことがあるが、同時に乾燥粉末試料による抽出とペース ト状試料による抽出との違いを確認するためである。乾燥粉末工程を経た細胞には何らか 試料による抽出との違いを確認するためである。乾燥粉末工程を経た細胞には何らか の変化があり、亜臨界水による抽出率に変化があるものと想定した。 また、粉末試料の一部では、細胞を物理的に破砕した試料も使用した。この試料は、遠 の一部では、細胞を物理的に破砕した試料も使用した。この試料は、遠 心分離後のペーストをダイノーミルにかけて破砕し、その後スプレードライヤで粉末化し たものである。破砕による成分の抽出効果を非破砕 たものである。破砕による成分の抽出効果を非破砕の粉末試料と比較するのに用いた。 試料と比較するのに用いた。 15 それらの成分例は表 4 の通りである。 表 4 ナンノクロロプシス試料の成分例 試料番号 資料情報 含有率( wt%) 水分 タンパク質 脂質 灰分 糖質 食物繊維 脂肪酸含有率(wt% ) 全脂肪酸 C12:0 C14:0 C14:1 C15:0 C16:0 C16:1 C16:2 C17:0 C17:1 C18:0 C18:1c C18:2c C18:3c C20:2 C20:3n-6 C20:3n-3 C20:4n-6 C20:4n-3 C20:5 (EPA) 未同定 出典 0 非洗浄 非破砕 粉末 1 洗浄 破砕 粉末 5.00 39.00 14.80 21.40 20.00 8.60 3.80 50.60 20.80 7.40 5.80 11.70 0.20 3.30 0.40 0.20 17.10 24.50 0.20 3.70 0.60 0.20 14.50 22.00 0.30 0.30 0.40 0.40 2.40 2.80 0.20 0.30 0.30 5.80 2.80 0.30 0.30 0.70 0.40 1.10 7.10 6.40 0.20 32.30 39.80 4.00 4.50 スメーブジャパン 2 洗浄 非破砕 ペースト 3 洗浄 非破砕 粉末 4 前処理 無し 粉末 5 前処理 有 粉末 5.00 47.20 21.00 6.80 20.00 6 ペースト 52.00 28.00 12.00 13.85 15.24 2.97 3.16 5.00 1.00 4.80 1.40 12.31 21.08 12.88 20.32 20.30 23.90 20.30 25.10 1.87 1.99 4.43 3.25 0.60 7.90 3.20 0.40 6.00 2.70 6.17 3.90 4.70 0.00 1.16 6.12 50.32 43.18 シームビオテック 21.00 24.00 13.20 10.60 スメーブジャパン 文献2 この中で、試料番号 1~3 の粉末試料ならびにペースト状試料を試験対象として用いた。 脂質の全量やその中の脂肪酸組成を比較してみると、試料によりかなりばらつきがあるこ とが確認できる。 これら供試試料の一部を電子顕微鏡で観察した結果を図 14 に示す。 16 2μ m 10μ 10μm 図 14 ペースト状 ペースト状試料内のナンノクロロプシスの電子顕微鏡写真 ペースト状試料についての結果で、 についての結果で、2μm 前後の細かい個体が一部緩やかな凝集状態を作 りながら、散在しているように観察される りながら、散在しているように観察される(図 14)。拡大して観察すれば、表面は必ずし 。拡大して観察すれば、表面は必ずし も固いなめらかな状況ではないものが多いように見える。 一方、図 15 には破砕処理をしていないとして提供された粉末 処理をしていないとして提供された粉末試料の写真を示す。 の写真を示す。 10μ 10μm 10μ 10μm 図 15 スプレードライヤによる乾燥噴霧処理後のナンノクロロプシス電子顕微鏡写真 図 14 のペースト状試料の写真に比べ、 の写真に比べ、粒子の分散状態に大きな違いがあるように観察され の分散状態に大きな違いがあるように観察され る。直径 10μm 強の粒子が数多くみられる一方、そのすぐ左側に見える小さな が数多くみられる一方、そのすぐ左側に見える小さな が数多くみられる一方、そのすぐ左側に見える小さな粒子も散在 するが、ペースト状試料のよう のように全体としての分散状況はなく、むしろ図 15 右図のような 17 凝集状態が多いように見える。これは、粉末試料中の藻が、スプレードライの処理過程で 凝集したためであると考えられる。 3.3 亜臨界水処理による抽出条件 3.1 に述べた亜臨界水処理装置を用い、試料に対して所定量を加水した後、120~200℃の 温度条件で 10~30 分間反応させ、その後急冷操作により処理済み試料を採取容器に回収し た。反応容器を所定温度よりやや高めに予熱しておき、試料投入後直ちに過熱水蒸気を吹 き込んで昇温させた。3 分未満で所定温度に到達してから所定の反応時間を経過後、一部を 減圧し、その後バルブを開放して試料受け器に試料を回収した。50℃以下に冷却されるま での時間は、ほぼ 10 分であった。 ペースト状試料(表 5)と粉末試料(表 6)のそれぞれの処理条件について次に示す。 これは、後続の試験結果の表と対応させているので、比較の便宜のために、いずれの表に おいても最上段には未処理試料を配している。粉末試料の場合は、非破砕試料と破砕試料 として、2 回に分け受け入れている(表 6)。非破砕試料の分析値は、表 4 に示した試料 番号 3 に対応している。また、表 6 中の No.34~36 が、表 4 の試料番号 1 の破砕試料に対 応している。 18 表 5 ペースト状試料の処理条件 No サンプル 31 無希釈 未処理 略称 希釈 率 NSC 無 7 無希釈 120℃-5min爆砕 B 無 8 無希釈 120℃-15min爆砕 D 無 9 無希釈 160℃-5min爆砕 F 無 H 無 10 無希釈 160℃-15min爆砕 11 無希釈 120℃-5min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-15min亜臨界水処理 B-1 4 12 無希釈 120℃-5min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-30min亜臨界水処理 B-2 4 13 無希釈 120℃-15min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-15min亜臨界水処理 D-1 4 14 無希釈 120℃-15min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-30min亜臨界水処理 D-2 4 15 無希釈 160℃-5min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-15min亜臨界水処理 F-1 4 16 無希釈 160℃-5min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-30min亜臨界水処理 F-2 4 17 無希釈 160℃-15min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-15min亜臨界水処理 H-1 4 18 無希釈 160℃-15min爆砕品を 4倍 稀釈で180℃-30min亜臨界水処理 H-2 4 未-1 未-2 4 4 19 4倍希釈180℃-15min処理 20 4倍希釈180℃-30min処理 19 表 6 粉末試料の処理条件 No 33 1 2 3 4 5 6 サンプル 略称 10倍希釈 未処理 40倍希釈 120℃-0min 1回目爆砕 40倍希釈 120℃-0min 2回目爆砕 40倍希釈 120℃-0min 3回目爆砕 40倍希釈 120℃-5min 1回目爆砕 40倍希釈 120℃-5min 2回目爆砕 40倍希釈 120℃-5min 3回目爆砕 40倍希釈 120℃-5min 3回目爆砕品 21 4倍希釈120℃-10min処理 40倍希釈 120℃-5min 3回目爆砕品 22 4倍希釈120℃-30min処理 40倍希釈 120℃-5min 3回目爆砕品 23 4倍希釈180℃-10min処理 40倍希釈 120℃-5min 3回目爆砕品 24 4倍希釈180℃-30min処理 25 160倍希釈 120℃-10min亜臨界水処理 26 160倍希釈 120℃-30min亜臨界水処理 27 160倍希釈 160℃-10min亜臨界水処理 28 160倍希釈 160℃-30min亜臨界水処理 29 160倍希釈 180℃-10min亜臨界水処理 30 160倍希釈 180℃-30min亜臨界水処理 32 10倍希釈 200℃-30min亜臨界水処理 34 破砕 40倍希釈 200℃-30min亜臨界水処理 35 破砕 40倍希釈 120℃-30min亜臨界水処理 36 破砕 10倍希釈 120℃-30min亜臨界水処理 3.4 NSC 12-0-1 12-0-2 12-0-3 12-5-1 12-5-2 12-5-3 爆砕 SC-A 爆砕 SC-B 爆砕 SC-C 爆砕 SC-D SC-E SC-F SC-G SC-H SC-I SC-J SC-K 破砕 SC-L 破砕 SC-M 破砕 SC-N 希釈 率 10 40 40 40 40 40 40 160 160 160 160 160 160 160 160 160 160 10 40 40 10 爆砕による前処理 爆砕に関しては、当初計画していた専用装置を用いることが出来なかったために、7L の 反応容器を 200L のドラム缶に接続し、手動でバルブを調節して 0.2~0.6Mpa の容器内圧力 を開放し、内容物を噴出させる手法で実施した。 20 3.5 分析方法 3.5.1 ① 脂肪酸分析方法 試料の調整 亜臨界水処理にて得られた試料を遠心分離(テーブルトップ遠心機 2410 型【クボタ 商事株式会社製】4,000rpm、10min)で固相と液相とに分離し、分析試料とした。 ② 脂肪酸の定量 脂肪酸の定量は、GC-17AAT (FID) (島津製作所製) を用いて行った。 固相と液相を凍結乾燥し,乾燥品 1 g (液相は全量) を遠沈管に採取した後クロロホル ム、メタノール、水の混合液 (1:2:0.8 (v/v)) を 15 ml 加えて振とう、遠心分離 (3,000 rpm, 5 min) を行い、上澄みを回収した。また、この操作を 3 回繰り返した後、水及びクロロ ホルムを 36 ml 加えて振とうし、クロロホルム層を回収した。クロロホルム層をろ過し てエバポレータにより乾固し、重量を測定した (粗脂肪量)。粗脂肪 50 mg 当たり 0.5 ml のクロロホルムを加えて 50 mg 相当量のクロロホルム溶液を蓋付き試験管に採取し、乾 固させた。その後、ジエチルエーテル 1 ml,0.5 M ナトリウムメトキシド 1 ml を加え、 80 ℃の湯浴に入れ反応させ、ヘキサン 2 ml、飽和食塩水 5 ml を加えて良く振り混ぜ、 遠心分離 (3,000 rpm,5 min) 後、ヘキサン層を分析に供した。分析に供する際、10 mg/ml ヘプタデカン酸メチルを加え、内部標準とした。測定条件を表 7 に示す。 表 7 脂肪酸の分析条件 注入量: 2.0μl カラム: DB-WAX (30m×0.250mm,内径 0.50µm) キャリアガス: He 流量: 0.7 ml/min インジェクション温度: 250 ℃ カラム温度: 60℃ → 250℃ 検出器温度: 250 ℃ 21 3.5.2 ① アミノ酸分析方法 試料の調整 亜臨界水処理にて得られた試料を遠心分離(テーブルトップ遠心機 2410 型【クボタ 商事株式会社製】4,000rpm、10min)で固相と液相とに分離し、分析試料とした。 ② アミノ酸の定量 アミノ酸の定量は、UPLC-PDA (Waters 社製,H class)を用いて行った。 固相のアミノ酸分析:固相サンプルを規定量(1g)採取し、エタノールを加えホモジ ナイズ、50 倍希釈した後に遠心分離(3,000rpm、10 分)を行い、上澄みを 0.2μmのメ ンブランフィルターでろ過して分析に供した。 液相のアミノ酸分析:液相サンプルを規定量(1ml)採取し、エタノールを加え、ホモ ジナイズ、3 倍希釈した後に遠心分離(3,000rpm、10 分)を行い、上澄みを 0.2μmのメ ンブランフィルターでろ過して分析に供した。 また、本測定はポストカラムオルトフタルアルデヒド法により行った。 定量方法は標準物質としてアミノ酸混合標準液(Waters 製)を用い、それを 25pmol/μl に調整した。そして上で調整した抽出液を検量線の範囲に収まるよう希釈して分析を行 い、各アミノ酸の量を算出した。測定条件を以下の表 8 に示す。 表 8 アミノ酸の分析条件 注入量: 10μl カラム: CAPCELLPAK NH2 UG80(Ö4.6×250mm) 溶離液: 0.5Mリン酸アンモニウム(pH3.0) :アセトニトリル=95:5 流量: 10ml/min カラム温度: 40℃ 測定波長: 254nm 22 4 結果 4.1 可溶成分の抽出結果 粉末試料並びにペースト状試料のそれぞれについて、可溶成分の抽出状況を表 9 および 表 10 に示す。 4.1.1 粉末試料の処理結果 ここでは、これら表中の A~E の列のデータを対象とする。この中で、A(液相比)と B(固相比)とは、回収した処理済み試料に対して遠心分離操作を行い、液相と固相に 分離した際のそれぞれの割合を重量比で示している。これら液相及び固相の一部をそれ ぞれの分析試料としているが、分析に際しては、それらをまず凍結乾燥している。その 凍結乾燥により回収された固形分の重量割合が C および D の各列の数値である。 そこで、 亜臨界水処理により各処理温度で亜臨界水相に溶出した成分は、室温に冷却された状態 でも溶解もしくは懸濁状態で水溶液相に存在するものとすれば、亜臨界水処理により藻 から水相に溶出した成分の割合、すなわち液相への分配率 E は、 E = A × C / ( A × C + B × D ) で求められる。 このようにして求めた数値 E を、亜臨界水処理による可溶成分の抽出率とみなして、 E 列にまとめている。 表 9 の最上段にあるように、未処理試料においても、水相への可溶成分が 16%台も存 在するという点が注目される。 23 表 9 粉末試料の処理結果 固液両相 成分率と液相 への分配率 A B C D E 希釈 液相比 固相比 液相中 FD後 液相へ (%) (%) 成分率 固相率 の分配 No 試料名 率 全脂肪含有率と脂肪中の脂肪酸、EPA含有率及びそれらの液相分配率 F G H I J K 液相 FAT 脂肪 酸率 EPA 固相 FAT 脂肪 酸率 EPA FAT 液への 脂肪酸 液への EPA 液への 率% 分配 率% 分配 率% 分配 L M N O P Q 33 未処理 10 76.0 24.0 2.0 32.0 16.6 2.4 2.4 1.1 6.9 38.4 12.3 6.2 6.6 36.1 0.4 11.6 0.6 1 12-0-1 40 92.4 7.6 0.4 23.8 17.9 21.1 3.3 0.9 12.3 21.2 7.3 13.9 27.2 16.3 5.5 5.5 4.3 2 12-0-2 40 92.1 7.9 0.6 24.3 22.9 9.7 14.6 4.5 7.4 23.4 8.0 7.9 27.9 20.9 19.5 7.0 18.0 3 12-0-3 40 91.5 8.5 0.6 22.9 23.2 18.1 7.6 1.9 7.9 16.8 5.8 10.2 41.0 13.0 23.8 4.2 18.7 4 12-5-1 40 91.8 8.2 0.4 28.5 13.2 18.9 3.9 1.6 8.0 23.5 8.5 9.4 26.5 18.3 5.6 6.6 6.4 5 12-5-2 40 93.9 6.1 0.6 33.9 21.6 18.0 11.0 3.8 7.1 21.0 7.5 9.5 41.1 16.9 26.8 5.9 26.0 6 12-5-3 40 94.4 5.6 0.9 21.7 42.3 7.4 20.0 7.0 5.9 22.3 7.6 6.5 47.9 21.2 45.2 7.3 45.7 160 96.7 3.3 0.2 24.2 17.7 6.6 7.6 3.8 8.3 27.4 8.4 8.0 14.7 24.5 4.6 7.7 7.2 160 97.1 2.9 0.2 24.8 18.4 17.8 10.0 2.4 9.5 29.0 8.8 11.0 29.7 23.4 12.7 6.9 10.2 160 97.8 2.2 0.3 24.4 31.5 8.4 7.1 2.1 15.7 24.9 6.1 13.4 19.7 21.4 6.5 5.3 7.9 160 98.4 1.6 0.4 46.1 32.7 8.2 9.2 1.9 15.9 21.0 5.8 13.4 20.1 18.6 10.0 5.0 7.5 25 SC-E 160 97.6 2.4 0.1 25.7 17.3 30.7 0.0 0.0 8.6 30.1 9.4 12.5 42.8 17.2 0.0 5.4 0.0 26 SC-F 160 97.4 2.6 0.1 26.8 17.0 32.4 1.2 0.4 8.1 32.0 9.8 12.3 44.8 18.2 3.0 5.6 3.5 27 SC-G 160 97.2 2.8 0.2 32.6 16.5 28.1 2.0 0.4 3.2 28.6 8.4 7.3 63.8 11.6 11.0 3.3 7.2 28 SC-H 160 97.9 2.1 0.2 25.8 25.1 27.1 1.8 0.0 28.8 7.8 29 SC-I 160 98.2 1.8 0.3 23.5 42.6 19.9 4.5 0.6 13.3 22.6 6.0 16.1 52.6 13.1 18.0 3.2 9.5 30 SC-J 160 98.1 1.9 0.4 23.3 43.9 15.0 3.4 0.5 10.4 21.4 5.8 12.4 53.0 11.8 15.1 3.0 8.1 32 SC-K 10 92.6 7.4 6.7 42.8 66.4 2.6 0.6 0.2 12.2 22.0 5.0 5.9 29.7 15.6 1.1 3.6 1.8 40 97.5 2.5 4.8 36.4 83.9 3.8 9.9 3.0 5.9 19.9 6.0 4.2 77.3 12.2 62.8 3.7 62.9 40 92.3 7.7 2.3 25.6 51.3 9.3 23.5 7.3 3.9 30.0 9.6 6.7 71.8 25.3 66.6 7.9 66.0 10 73.0 27.0 9.6 25.4 50.5 9.3 26.3 9.2 4.0 29.4 10.1 6.7 70.2 27.3 67.8 9.4 68.1 爆砕 SC-A 爆砕 22 SC-B 爆砕 23 SC-C 爆砕 24 SC-D 21 破砕 SC-L 破砕 35 SC-M 破砕 36 SC-N 34 以下、この E 列の結果を中心に、亜臨界水処理の効果を検証する。 24 ① 処理温度の効果 抽出率は、120℃の処理温度では未処理の場合の抽出率とほとんど変化がないようであ ℃の処理温度では未処理の場合の抽出率とほとんど変化がないようであ る(図 16)。処理時間を 10min から 30min に延長しても効果は認められない。160℃に処 に延長しても効果は認められない。 理温度を上げた場合には、処理時間を延長することにより 抽出率の向上がやや認めら 理温度を上げた場合には、処理時間を延長することにより、抽出率の向上がやや認めら れる。しかし、180℃に処理温度を上げると、 ℃に処理温度を上げると、抽出率は 2 倍近くの大幅な向上がみられる。 ただし、反応時間延長の効果は少ない。さらに、 ただし、反応時間延長の効果は少ない。さらに、200℃に上げることにより、抽出率は ℃に上げることにより、抽出率は 70%近くに達しており、180 180℃以上への処理温度上昇が抽出率向上に大きく効いている。 ℃以上への処理温度上昇が抽出率向上に大きく効いている。 図 16 粉末試料の 粉末試料の成分抽出率に及ぼす処理温度の効果 成分抽出率に及ぼす処理温度の効果 25 ② 爆砕の効果 以下に試料ごとの爆砕処理について説明する。 図 17 の試料 No.1 は、反応容器に投入後に昇温し、120℃に到達と同時に圧を開放す る爆砕操作をした後に、冷却した水相に溶出した試料成分の抽出率である。回収した試 料を再度反応容器に挿入し、再び昇温-爆砕-冷却操作を繰り返したのが No.2 で、No.3 は 同じ操作を 3 回繰り返した。No.4 の試料は、120℃の到達後に 5min この温度に維持し、 その後爆砕操作をしたもので、No.5 と 6 はこの操作をそれぞれ 2 回、3 回と繰り返した。 図の右側の No.21 と 22 は、試料をまず 120℃,5min で爆砕処理した後、あらためて反応 容器に挿入し、120℃で 10 もしくは 30min かけて亜臨界水処理を行った。No.23,24 は、 同様に 120℃で爆砕処理した試料について、180℃で亜臨界水処理を行った。 図 17 によれば、120℃に達すると同時に爆砕する方法(No.1~3)では、爆砕回数を増 やしても効果はあまり見られない。一方、爆砕前に 5 分間保持した操作では(No.4~6) データのばらつきが極めて大きいが、爆砕を 3 回繰り返した No.6 の試料において抽出率 がかなり高かった。水の浸透を図ることで、比較的低温でも効果が高くなるものと思わ れる。 45.0 40.0 35.0 抽出率(%) 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 未処理 33 0-1 0-2 0-3 5-1 5-2 5-3 爆砕120 爆砕120 爆砕120 爆砕120 120 120 120 120 120 120 120-10 120-30 180-10 180-30 1 2 3 4 5 6 21 22 23 24 爆砕条件と試料No. 図 17 粉末試料の 粉末試料の成分抽出率に及ぼす爆砕の効果 成分抽出率に及ぼす爆砕の効果 これらに対して、前処理として爆砕を施し、その後亜臨界水処理をした No.21~24 の 結果を見ると、低温ではその効果は見られず、高温で始めて爆砕効果が認められた。 26 ③ 試料の破砕 試料の破砕効果 破砕効果 粉末試料からの成分抽出や消化率を向上させるために、ビーズミルなどで機械的に細 胞壁を破壊することが Seambiotic 社より提案されている。ここでは、破砕処理を施した 試料を用いて亜臨界水処理による抽出を行い、その効果を検討した。 図 18 によれば、破砕試料の場合は 120℃の亜臨界水処理でも 50%の抽出がなされて おり、破砕処理が 120℃の低温下でも亜臨界水処理を有効にしている。ただ、反応時間 の 10min から 30min への延長でもほとんど抽出率の向上効果が見られず、その有効性は かなり限定的とも言える。むしろ、温度を 200℃に高めることによる効果が高い。 図 18 粉末試料の成分 粉末試料の成分抽出率に及ぼす破砕の効果 成分抽出率に及ぼす破砕の効果 4.1.2 ペースト状試料の抽出処理結果 ペースト状試料に対する処理結果を表 10 に示す。ペースト状試料は藻の収穫後に乾 燥工程を経ずに出荷しているもので、プラスチックバッグへ回収される。表中の未処理 試料のデータからも分かる通り、水分の含有量は 80%に近く、通常のペーストと言うよ りは液状に近い。このため、3.3 の表 5 に示す通り、まず、加水なしの状態で爆砕を試 み、爆砕処理後の試料について処理温度の効果を見ている。尚、比較のために、爆砕を 行わない処理も 2 条件(No. 19, 20)で行った。 27 表 10 ペースト状試料の抽出処理結果 ペースト状試料の抽出処理結果 ① 処理温度の効果 処理温度の効果 図 19 は処理温度および処理時間の効果を比較している。 処理温度が 120℃もしくは 160℃ のレベルでは効果はほとんど見られず、処理時間の効果もない。しかし、180℃に挙げた場 合には、抽出率は 2 倍以上に上昇しており、明確な効果が認められた。また、反応時間の 効果も認められるようである。なお、この図に示した試料 No.7~10 の各試料は、所定時間 にて処理後に爆砕操作を行って、表 10 にあるように、それぞれ No.11~18 の亜臨界水処理 用の試料としている。 ② 爆砕処理の効果 図 20 に爆砕処理の効果を示した。爆砕処理は、試料 No.7~10 の各条件で行った。 試料 No.15 の場合を除き、爆砕処理をした試料は処理無しの試料に比べ、短時間の抽出で 効果を発揮しているように思われる。 28 60.0 50.0 抽出率(%) 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 未処理 120-5 120-15 160-5 160-15 180-15 180-30 31 7 8 9 10 19 20 処理温度、時間と試料No. 図 19 ペースト状試料の成分 ペースト状試料の成分抽出率に及ぼす処理温度の効果 成分抽出率に及ぼす処理温度の効果 70.0 60.0 抽出率(%) 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 無 無 無 No.7 No.7 No.8 No.8 No.9 No.9 No.10 未処理 180-15 180-30 180-15 180-30 180-15 180-30 180-15 180-30 180-30 31 19 20 11 12 13 14 15 16 18 爆砕条件、反応時間、試料No. 図 20 ペースト状試料の成分 ℃ ペースト状試料の成分抽出率に及ぼす爆砕処理の効果 成分抽出率に及ぼす爆砕処理の効果 処理温度 180℃ 29 4.2 脂質、脂肪酸、EPA EPA の抽出結果 4.2.1 脂質の抽出結果 抽出結果 供試ナンノクロロプシス試料中の脂質含有量は、 供試ナンノクロロプシス試料中の脂質含有量は、3.2 の表 4 に見るごとく、14~20% に見るごとく、 の幅がある。さらに、文献値によれば 28%というケースもあるようで、藻の生育環境や %というケースもあるようで、藻の生育環境や 生育条件で大きな差が生じる 生じる。 亜臨界水処理で抽出された亜臨界水への可溶成分中の脂質割合は、粉末試料である試 亜臨界水処理で抽出された亜臨界水への可溶成分中の脂質割合は、粉末試料である試 料 3 の組成を基準にした場合、多くのケースで基準値を下回っている(図 ( 21、図 22)。 その結果、脂質の抽出率も、ほとんどのケースで 50%を下回っている。 %を下回っている。 一方、破砕試料の場合には、脂質の抽出率はかなり高くなっているが、脂質の含有量 試料の場合には、脂質の抽出率はかなり高くなっているが、脂質の含有量 が極端に低いという問題がある。 が極端に低いという問題がある。(図 22: 試料 No. 34, 35, 36)これに対して、 これに対して、図 23 に 示すペースト状試料の場合は、脂質の割合は 場合は、脂質の割合は原試料 2 の組成と比較して大きな差は見ら の組成と比較して大きな差 れない。抽出率で見れば、 抽出率で見れば、低・中温度での爆砕処理だけでは抽出率は極めて低いが、爆 低・中温度での爆砕処理だけでは抽出率は極めて低いが、爆 砕後 180℃で亜臨界水処理した場合には脂質の抽出率はほぼ ℃で亜臨界水処理した場合には脂質の抽出率はほぼ 50%を超えており、 %を超えており、70%近 いケースもある。 図 21 粉末試料からの脂質、脂肪酸、EPA の抽出状況(試料 3) ) 粉末試料からの脂質、脂肪酸、 30 図 22 粉末試料からの脂質、脂肪酸、EPA 粉末試料からの脂質、脂肪酸、 の抽出状況(試料 3, 1) ) 図 23 ペースト状試料からの脂質、脂肪酸、EPA ペースト状試料からの脂質、脂肪酸、 の抽出状況 31 4.2.2 脂肪酸及び び EPA のの抽出結果 粉末試料の試料 3 の系列では、脂質の抽出率が低いことに加えて、脂肪酸と の系列では、脂質の抽出率が低いことに加えて、脂肪酸と EPA の抽 出率も低い水準にある。一方、何らかの理由で脂質含量が低い試料 1 の破砕試料の場合 の には、脂質のみならず、脂肪酸や EPA の抽出率が高いという特徴がある。 これに対して、ペースト状 これに対して、ペースト状試料の場合は、粉末試料のケースと比べて明かな特徴があ のケースと比べて明かな特徴があ る。すなわち、脂肪酸と EPA の抽出率が B, D, F, H の爆砕前処理を施したシリーズで軒 並み高くなっていることである。このことは、 ℃処理ではあっても、爆砕前処理をし 並み高くなっていることである。このことは、180℃処理ではあっても、爆砕前処理をし ていない未-1,未-2 の結果と比べて明らかである。 4.3 遊離アミノ酸の抽出結果 抽出結果 粉末試料の亜臨界水処理時に抽出される遊離アミノ酸の状況を の亜臨界水処理時に抽出される遊離アミノ酸の状況を図 24 に示す。極めて 特徴的なことは、遊離アミノ酸類は未処理試料に最も多く含まれており、亜臨界水処理 時に分解して濃度が下がったことである。唯一の例外はメチオニンで、これは高温時に ことである。唯一の例外はメチオニンで、これは高温時に 増加した。遊離アミノ酸の主要成分はシスチンであり、高温 。遊離アミノ酸の主要成分はシスチンであり、高温時に濃度が下が 濃度が下がった。プロ リンも同様で、高温時にほとんど消失 ほとんど消失した。 図 24 粉砕藻からの遊離アミノ酸の抽出 魚肉類の蛋白質は、180 180℃の亜臨界水処理ではかなりの割合で分解し、大量のア ℃の亜臨界水処理ではかなりの割合で分解し、大量のアミノ酸 類が生成する。しかし今回の 。しかし今回の藻の場合は、50%程含まれるはずの蛋白質 %程含まれるはずの蛋白質が本処理条件で ほとんど分解していないようである。したがって今回の結果では、脂質部分のみを取り 、脂質部分のみを取り 出す目的には都合がよいが、蛋白質を分解して油分に溶解させ油分の回収率を高める目 32 的には、200℃以下の本処理条件は適していないと判断される。 4.4 電顕観察結果 粉末試料 No.32 の処理後の電顕写真像を図 25 に示す。10μm 以上の大きな粒子が散在し ており、周囲に 1μm 程度の小粒子が見られる。右図が拡大図であり、小粒子の凝集により、 巨大粒子を形成しているのが見て取れる。 10μ 10μm 図 25 粉末試料 No.32 の亜臨界水抽出後の電子顕微鏡写真 一方、爆砕処理を施した上で亜臨界水処理を行った、試料 No.13 の電顕下の状況を図 26 に示す。 写真左上に見える大粒子は小粒子の凝集体に見えるが、右上の写真は、小粒子がさらに 融合するように密着し、不規則な形状をしている。 33 5μm 20μ 20 μm 2μ m 図 26 爆砕処理後に亜臨界水抽出を行った後の電子顕微鏡写真 34 5 考察 5.1 温度の効果 ナンノクロロプシスの亜臨界水処理では温度の効果は非常に大きく、本試験においては、 180℃以上の温度域での亜臨界水処理で、脂質の抽出率が 70%以上となり得ることが示され た。Brown ら 2)は、200~500℃での亜臨界水及び超臨界水の条件でナンノクロロプシスから の抽出試験を行っているが、200℃で脂質のかなりの割合が抽出され、それ以上では蛋白質 の分解による油分増加があることを示唆している。 高温度により細胞壁の破壊が促進されることを想定しているが、本試験で目標にしてい る 200℃以下の温度域では、抽出率の向上に 60~70%付近で頭打ちとなる傾向も見られ、 粒子の凝集固着などの現象が抽出の阻害要因になる可能性もあり得ることが、電顕観察な どから推定される。 大量処理などの条件で、このような凝集現象がどのように全体の円滑な反応遂行に係わ ってくるか検討する必要がある。 5.2 爆砕処理の効果 全体反応の加速と処理温度の低下を目標に、120℃近辺を中心とした爆砕処理の効果を検 討した。 可溶化の促進という点で、ある程度の効果の確認は出来たが、処理温度の大幅低下をも たらすほどの効果の把握には至らなかった。しかし、脂肪酸や EPA の抽出率の向上には貢 献し得ることも認められた。今回の試験では、爆砕現象の最適化を設備の面から把握する 時間的余裕はなかった。今後は、設備面の検討を加えながら、爆砕効果のより適正な把握 を進める必要がある。 5.3 技術的成果 従来行われている 200~500℃という、超・亜臨界水処理温度領域と比較すれば、低温 度域においても、70%レベルでの有用成分の抽出実績が得られた。これは、前年度の事業 化可能性調査結果における超臨界 CO2 法による 50%レベルの抽出率に比べれば、十分に高 い数値と言える。 また、KSBW 法による抽出法は所要時間を 30 分以下に抑えることができ、従来試みら れている溶媒抽出や超臨界 CO2 法が抽出に 6 時間程度を要することと比較すると、非常に 効率的である。加圧を 200℃以下に抑えることで設備コストも大幅に抑えることができ、油 35 分抽出の技術としては、実用化の点で大いに有利であることが示された。 5.4 実証面での課題 今回の実証試験ではナンノクロロプシスからの抽出条件を明らかにし、今後、石巻など での培養システムと連結した抽出システムの確立に貢献するデータの蓄積を図るという目 標がある。 今回使用した試料はイスラエルから提供されたものであり、実際に石巻にて日本産の藻 を独自の環境で育てた場合は、その成分等に大きな違いが出てくるものと予想される。ま た、イスラエルから試料を空輸するために、ペースト状試料は凍結状態で輸送しており、 微細藻が凍結により死滅している。実際、一部の試料には独特の臭気も見られ、製品の劣 化も確認された。現地で生産・加工する場合は、濃縮した生細胞を用いることが想定され ており、以上の点から現地生産物を利用した追試験は不可欠である。石巻での実証生産の 早急な実現が待たれる。 36 6 まとめ 微細藻からの有用成分抽出のコア技術としての新開発技術の実証を目指し、亜臨界水処 理によるナンノクロロプシスを対象とした試験を行った。 亜臨界水処理については、従来から幾つかの先行事例があり、Brown ら 2)も 200~500℃ という温度範囲で行っているが、35ml という極小規模の反応容器によるものであり、本事 業における実用機に近い規模のものはない。それは、200℃以上、とくに、250℃以上の反 応温度を採用しようとすれば、汎用の材料や部品を使うことは不可能で、極めて高価な装 置となるためである。このような事情を踏まえ、本実証事業では、微細藻からの有用成分 抽出を実用化の視点を重視して、200℃以下の亜臨界水処理としてはかなりの低温域で実証 することを目指した。 その結果、180℃~200℃の温度範囲で、微細藻中脂質成分の 70%以上の抽出が可能であ ることを示すことが出来た。これは、前年度事業化可能性調査で試みた超臨界 CO2 による 抽出結果の 50%レベルと比較すれば、十分に高い数値と言える。しかも、抽出時間を比較 すると、従来の有機溶媒や超臨界 CO2 抽出で数時間を要するものが 30 分以下で済むという 点で、実用上極めて有利であるといえる。 さらに、低温化を図るための前処理として爆砕を試み、その可能性を見出すことが出来 た。さらに実効性を高めるには、装置面での工夫が必要と思われる。一方で、機械的な破 砕法を用いたより適切な前処理法がある可能性も示唆された。 脂質以外の有用成分について言えば、蛋白質については、試験温度範囲での抽出は極め て少ないと思われる。このことは、脂質分をまず抽出した後に蛋白質由来の有用成分を利 用するという二段処理法により、それらの分離抽出する可能性を示唆している。 以上の結果は、イスラエルにおいて培養された藻を対象に行ったものであるが、藻の特 性は生育条件やその後の保存条件などで変化する。日本での工業的生産を展開する場合に は、独自の環境で培養した自前の試料で実証データを蓄積しておく必要があり、石巻での 実証生産の早急な実現が待たれる。 37