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食用作物学II (イネについて)
2014/1/7 JIRCAS‐ 日本における国際農学研究機関 国際農林水産業 研究センター (JIRCAS) 現所長:岩永 勝 博士 CYMMITの所長も務 められた方. 食用作物学II (イネについて) 熱帯又は亜熱帯に 属する地域その他 開発途上地域にお ける農林水産業の 研究を包括的に行う 我が国唯一の研究 機関 (http://www.jircas.a ffrc.go.jp/index.sjis.h tml) 第十回 国際研究機関とプロジェクト 作物学研究室 柏木純一 生物的硝化抑制(BNI)を利用した育種素材の開発と 作付け体系への応用 土壌の窒素循環のうえで重要で ある土壌微生物によるアンモニア の硝化作用は,脱窒による窒素肥 料の損失だけでなく亜酸化窒素に よる地球温暖化の原因となる 植物によっては,根 から硝化抑制物質を 分泌し,これにより生 物的硝化抑制作用 (Biological Nitrification Inhibition, BNI)を有する イネ(Oryza sativa L.)遺伝資源における 生物的硝化抑制能を 評価し,BNIに優れる IAC25を同定した http://www.jircas.affrc.go.jp/program/ProA_5.html イネ系統IAC25の硝化抑制作用 機能遺伝子同定および組み換え技術を利用した環 境ストレス耐性作物の作出(もう少し詳しく) ストレスに対する複数の遺伝子の 発現をまとめて調節しているマスター 遺伝子「DREB」の遺伝子組み換え個 体の作出により,環境ストレス耐性 作物を作出 ストレス誘導性プロモーター (rd29A)を利用することにより,通常 栽培時における「DREB」の過剰発現 を抑え,ストレス環境下においての みの発現を可能とした 水稲における土壌水分欠乏-メカニズムの復習 日中,大気飽差が大きくなると(=空気が 乾く),と葉からの蒸散に根からの吸水が追 い付かず,イネは水分欠乏状態となる 土壌に充分に水分があるにもかかわらず, 吸水できない理由は,根の構造による 乾 http://www.jircas.affrc.go.jp/program/ProB_2.html 遺伝子組み換えによりDREB遺伝子を導入したイネ(キタアケ) https://dummiesguide2b1witplants.wikispaces.com/Absorption+of+Water+and+Minerals+by+Roots 1 2014/1/7 水稲における土壌水分欠乏-シンプラスト輸送 アクアポリン アクアポリン(水チャンネル) 濃度・圧力勾配による受動的な水移動 (エネルギー移動を要しない)を行う. 水分子を厳密に識別し,20億分子/秒 という高速で,水分子を通過させる. 水移動の盛んな部位に,偏在する傾 向がある. 水(浸透圧)ストレス反応タイプと,ス トレスにかかわらず存在するタイプとが ある. アクアポリン遺伝子を過剰発現させ ると,葉からの蒸散が活発となり,気孔 数も増え,生長が促進されたが,乾燥 ストレスには弱かった.このことは,ア クアポリンが吸水時の水輸送で重要な 役割を果たしていることを示唆している 細胞内 水分子 細胞膜,液胞膜 国際的農業研究・支援機関 Asian Development Bank (ADB)-融資 World Bank (WB)-融資 下部組織 Consultative Group for International Agricultural Research (CGIAR) -研究 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2009/tohoku 09-33.html International Rice Research Institute 8 IRRIのプロジェクト http://beta.irri.org/ 1960年にロックフェラー財団の出資によ り、フィリピンに設立。現所長はアメリカ人 のZeigler, Robert S.博士 邦人の派遣研究員数名 運営予算:5200万ドル およそ10万系統を有するジーンバンク 60年代にアジアでの緑の革命を推進 IR8(短稈で高い収穫指数と直立葉の草型) →IR36の育成と普及 伸長型系統 SUB1系統 研究課題 1)Raising productivity in rainfed environments: attacking the roots of poverty(育種) 2)Sustaining productivity in intensive ricebased systems: rice and the environment(栽培 管理) 3)East and southern Africa: rice for rural incomes and an affordable urban staple(東・南 アフリカでの育種) 4)Rice and human health: overcoming the consequences of poverty(公衆衛生) 5)Rice genetic diversity and discovery: meeting the needs of future generations for rice genetic resources(遺伝資源) 6)Information and communication: convening a global rice research community(教育) 7)Rice policy support and impact assessment for rice research(政策) http://farm3.static.flickr.com/2035/2198756329_48b60ce13d.jpg http://beta.irri.org/news/bulletin/2007.11/bullimg/From%20Hemmi1.JPG 川野、坂上 (2008) JIRCAS Working Report 57: 25-35 1)Raising productivity in rainfed environments: attacking the roots of poverty(育種) 冠水抵抗性、旱魃抵抗性、塩害抵抗性 Xu and Mackill (1996) Mol. Breeding 2:219-224. 南・東南アジアの稲作地域の1100万haが短期の冠水害を受 ける 短期の冠水害:1週間程度の冠水→酸素獲得のために節間 伸長して葉を水面に出す[効率の悪い嫌気呼吸]→炭水化物の 著しい消費→水が引く→光合成再開→明反応系で活性酸素が 生じる[抗酸化物質(アスコルビン酸)が必要=炭水化物が必 要]→炭水化物が欠乏している系統は枯れる Sub1:第9染色体に座上するQTL 水没→植物体内エチレン濃度上昇→ABA減少→ジベレリン 感受性増→節間伸長 IRRIのプロジェクト × IRRIのプロジェクト 4)Rice and human health: overcoming the consequences of poverty(公衆衛生) 2)Sustaining productivity in intensive ricebased systems: rice and the environment(栽培 管理) 途上国では、ビタミンA(失明の原因とな る)の著しい摂取不足が深刻な問題となっ ている。そこで遺伝子組み換えにより、胚 乳にβ-カロチンを含むイネ(ゴールデンライ ス)を普及する 稲作栽培における最大の支出は肥料代で しかし、 http://www.goldenrice.org/ 南・東南アジアでの稲作栽培環境は変異に 富む 稲作農家の教育レベルも多様 ↓ ★画一的な栽培管理指導や普及指導が困難 IRRIが蓄積した栽培管理データに基づいて、 施肥管理用コンピュータシミュレーターを開発 ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP) × フィトエン × ゼータカロチン フィトエン合成酵素(psy) フィトエン・デサチュラーゼ (crt1) 胚乳の鉄・亜鉛含量が高いイネ系統を IRRIの遺伝資源から同定し、これらの栄養 素を多く含むイネ系統の開発と普及(バン グラデシュ) リコピン α-カロチン イネは、食用部位である胚乳ではpsyお よびcrtを合成しないので、前駆物質である GGPPからβ-カロチンを合成できない psyおよびcrtを合成するための遺伝子を 形質転換で導入した β-カロチン 2 2014/1/7 Africa Rice Center ARCのプロジェクト http://www.africarice.org/ 1970年にUNDP等の支援を受けて、 リベリアに設立。その後、同国の政情 不安によりコートジボアールに移転 (1978年)、さらに同国の政情不安によ り、ベナンのIITA支所に移転(2007年)。 現所長は、セネガル人のPapa Abdoulaye Seck博士 数名の邦人研究者 運営予算:1068万ドル(日本からの 拠出は20%) アフリカで稲作を普及するため、地域 に適応した品種の育成(アジアイネ、ア フリカイネ)、種子増殖・配布、農家の 教育 近年は、特にNERICAの育成と普及に力 を入れている 研究課題 1)Genetic Diversity and Improvement (遺伝 資源・育種) 2)Sustainable Productivity Enhancement (栽培管理) 3)Learning and Innovation Systems(教育・ 普及) 4)Policy and impact (政策) 1)Genetic Diversity and Improvement (遺 伝資源・育種) http://www.jbfa.org/shopping/p4.html NERICA (New Rice for Africa)の開発普 及 アジアイネ(Oryza sativa L.)を母親として、 アフリカイネ(Oryza glaberrima Steudel)を花 粉のとして交配した後代より選抜されたイネ 系統の一群で、1994年の初リリースされた。 以来、現地からの問題点に対応した水稲系 統、陸稲系統が次々と育成されている IRRIと連携して、Sub1遺伝子を導入した NERICAの育成が進められている 種子増殖システムや普及システムには、日 本政府の支援を受けたJICAが精力的に行っ ている http://www.africarice.org/warda/aboutus.asp http://www.sangiin.go.jp/japanese/ugoki/h20/080828.html 3